JPWO2019244999A1 - アルミニウム基複合材 - Google Patents

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Abstract

基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に存在するMg酸化物7bの面積率が4〜15%である時に、良好な機械的特性を得ることができる。Mg酸化物7bの面積率が小さいと、Al酸化物9とMgとの反応が十分でなく、基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に、膜状のAl酸化物が残る可能性がある。このようにAl酸化物9が残ると、機械的特性を悪化させる。また、Mg酸化物7bの面積率が大きくなると、Mg酸化物の凝集が進み、Al同士の焼結を阻害し、機械的特性を悪化させる。

Description

本発明は、強化材である炭素繊維を基地組織中に含有するアルミニウム基複合材に関し、より詳細にはアルミニウム粒子同士が固相接合してなる基地組織中に炭素繊維が分散したアルミニウム基複合焼結体に関するものである。
内燃機関搭載車のCO排出量削減や、電気自動車およびハイブリッド自動車等の航続距離延長のニーズを背景として、各自動車メーカーは、車両の軽量化を推進している。軽量化手段の1つとして、アルミニウム合金の採用が拡大しているが、低ヤング率(低剛性)による重量増加、スペ−スの確保、乗り心地の低下等の問題を有している。このため、軽量かつヤング率の高い構造部材および機能部品向け材料が求められている。
このような材料として、カーボンナノチューブで補強されたアルミニウム基複合材が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
中国特許第101818280号 特開2006−265686号公報 WO2009/054309
しかし、発明者らは、従来の方法では、引張強度、伸びおよびヤング率のいずれもが一定以上の値を示す優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材を得ることができず、さらなる改良の必要があることを知見した。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、引張強度、伸びおよびヤング率のいずれもが一定以上の値を示す優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、本発明は、強化材である炭素繊維を基地組織中に含有するアルミニウム基複合材であって、前記炭素繊維を1〜5質量%有し、前記基地組織は、Mg0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなり、前記基地組織中に、Mgを含有する酸化物を有し、任意の断面において、前記基地組織を構成する結晶粒界および前記基地組織と前記炭素繊維との界面に存在する前記Mgを含有する酸化物の面積率が4〜15%であることを特徴とするアルミニウム基複合材である。
前記炭素繊維がカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであることが望ましい。
任意の断面において、前記基地組織を構成する結晶粒界および前記基地組織と前記炭素繊維との界面に存在する円相当径が100nm以上の前記Mgを含有する酸化物が、5個/μm以下であることが望ましい。
前記アルミニウム基複合材の空隙率が0.2%以下であることが望ましい。ここで、空隙率とは、(1−(p/p0))×100(%)で定義される数値であり、数式中pは、見かけ密度(g/cm)、p0は真密度(g/cm)を指す。
JIS Z2241に準拠し、試験片形状が、全長 L=67mm、標点距離 L=25mm、平行部長さ L=31mm、径 d=5mm±0.02mm、肩部半径 R=3mm、掴み部長さ L=15mm、掴み部径 d=7.8mmである試験片を使用し、クロスヘッド速度1mm/minで引張試験を行った破断後の引張方向に沿う試験片の断面において、破断面(以下、引張試験後の破断面と言う場合がある。)から20〜100μmの範囲において、任意に設定した複数視野に存在する前記基地組織と前記炭素繊維との界面の周長をL1、当該界面に存在する空隙の外周の周長をL2としたとき、L2/L1が0.3以上の炭素繊維の割合(以下、空隙発生率と言う場合がある。)が50%以下であることが望ましい。
任意の断面において、任意に選択した炭素繊維の円相当径をdとしたとき、当該炭素繊維の外周縁から0.1dの範囲に存在するMgを含む酸化物の面積率(以下、Mg酸化物占有率という場合がある。)が80%以下であることが望ましい。
本発明によれば、任意の断面における、アルミニウム基複合材の基地組織中のMg酸化物の面積率を所定の範囲とすることで、十分な機械的特性を得ることができる。
特に、炭素繊維がカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであれば、基地組織中に炭素繊維が分散し、効率よく、基地組織を強化することができる。
また、アルミニウム基複合材の空隙率が0.2%以下であれば、より高い機械的特性を得ることができる。
また、上記引張試験後の破断面から20〜100μmの範囲において、前記基地組織と前記炭素繊維との界面の周長をL1、当該界面に存在する空隙の外周の周長をL2としたとき、L2/L1が0.3以上の炭素繊維の割合が50%以下であれば、より高い機械的特性を得ることができる。
さらに、任意の断面において、任意に選択した炭素繊維の円相当径をdとしたとき、当該炭素繊維の外周縁から0.1dの範囲に存在するMgを含む酸化物の面積率(Mg酸化物占有率)が80%以下であれば、より高い機械的特性を得ることができる。
本発明によれば、引張強度、伸びおよびヤング率のいずれもが一定以上の値を示す優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材を提供することができる。
アルミニウム基複合材の組織を示す概念図 引張試験後の空隙(ボイド)を示すSEM写真 アルミニウム基複合材の製造工程を示すフローチャート 押出用金型を示す概略図 引張試験用試験片の形状を示す図
まず、本発明の実施の形態にかかるアルミニウム基複合材について説明する。本発明の実施形態にかかるアルミニウム基複合材は、強化材である炭素繊維を基地組織中に含有するアルミニウム基複合材であって、前記炭素繊維を1〜5質量%有し、前記基地組織は、Mg0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなり、前記基地組織中に、Mgを含有する酸化物を有し、前記基地組織を構成する結晶粒界および前記基地組織と前記炭素繊維との界面に存在する前記Mgを含有する酸化物の面積率が4〜15%であることを特徴としている。なお、炭素繊維としては、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであることが望ましい。以下、本実施形態のアルミニウム基複合材の各構成要素について、詳細に説明する。
[基地組織組成]
基地組織を構成するアルミニウム合金としては、Mg0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなり、例えばAl−Mg系の5000系合金が望ましく、JIS(Japanese Industrial Standards) H4000で規定されるA5083アルミニウム合金(以下、JIS A5083合金などと言う場合がある。)等を適用可能である。Mg量が多すぎると、加工性や伸びが低下する。一方で、Mg量が少なすぎると、強度が低下し、また、後述するように焼結工程中のアルミニウム酸化物のMgによる還元作用が充分に発揮できず、その結果、Mgを含む酸化物(以下、Mg酸化物と言う場合がある。)の生成量が少なくなる。このような組織形態のアルミニウム基複合材では、アルミニウム合金からなる基地組織を構成する結晶同士の結晶粒界(界面)または基地組織と炭素繊維との界面における密着性が低く、それらの界面にボイド(空隙)が生じやすいため、所望の機械的特性を実現することができない。その他の添加元素として、Mn:0.05〜1.0質量%、Cr:0.05〜0.40質量%を含有してもよい。MnおよびCrはAlなどとともに化合物(析出物)を形成して再結晶する際の結晶粒の成長を抑制するため強度を上げる効果がある。
[炭素繊維含有量]
基地組織中に分散した状態で含有する炭素繊維は、アルミニウム基複合材に対する質量割合を1〜5質量%とする。アルミニウム基複合材の機械的特性は、基本的に、強化材として含有せしめる炭素繊維の割合により制御され、基地組織を構成するアルミニウム合金及び炭素繊維の各々の機械的特性と炭素繊維の割合に基づき凡そ複合則により設定することが可能である。炭素繊維が1質量%未満であると炭素繊維による基地組織の強化能を発揮できず、炭素繊維が5質量%を超えると、加工性が悪くなるとともに伸びが低下する。なお、炭素繊維の含有率は、JIS Z2615で規定される赤外線吸収法(積分法)に準拠し測定することができる。
[Mg酸化物面積率]
次に、本発明にかかるアルミニウム基複合材のミクロ組織について説明する。図1(a)は、焼結工程前におけるミクロ組織を示す概念図であり、図1(b)は、焼結工程後のミクロ組織を示す概念図である。なお、製造工程の詳細については、後述する。
焼結工程前のミクロ組織を示す図1(a)に示すように、表面に炭素繊維を吸着したアルミニウム合金からなる金属粉末を成形した成形体2では、成形された金属粉末からなる基地組織前駆体3aと、当該基地組織前駆体3aに配置される炭素繊維5とが接触している状態となっている。この際、基地組織前駆体3aを構成する金属粉末中には、元素としてのMg7aが分散している。
アルミニウム合金は非常に酸化しやすい材料であり、通常、当該アルミニウム合金を原料とした金属粉末の表面は、例えばAl等のAlを有する酸化物(以下、Al酸化物と言う場合がある。)からなる層(以下、Al酸化物層9と言う場合がある。)で、その全面がほぼ覆われている。したがって、上記成形体2において、基地組織前駆体3aを構成する金属粉末同士の接触面や金属粉末と炭素繊維5との接触面には、Al酸化物層9が介在している。このように金属粉末同士の接触面にAl酸化物層9が存在すると、焼結時の金属粉末間における固相拡散が抑制され、金属粉末の焼結固化を阻害する。また、金属粉末と炭素繊維5の界面に存在するAl酸化物層9は、金属粉末からなる基地組織前駆体3aが焼結されてなる基地組織と炭素繊維との密着性を阻害する。
一方で、本発明では、金属粉末に適量のMgを含有させることで、図1(b)に示すように、焼結時に、上記のように接触面に介在するAl酸化物層を、Mg7aによって還元して消失または減少せしめることができる。このため、金属粉末同士は、Al酸化物層により阻害されることなく、それらの接触面で焼結固化する。これにより、基地組織前駆体を構成する金属粉末同士が焼結してなる基地組織3が形成されるとともに、基地組織3に分散する炭素繊維5が基地組織3と密着した所望のアルミニウム基複合材1を得ることができる。そして、上記のようにAl酸化物層を還元した後のMgは、Al酸化物中の酸素と結合することにより粒状のMg酸化物7bを形成する。すなわち、アルミニウム基複合材1の基地組織3中に、Mg酸化物7bが分散する。なお、Mg酸化物7bは、必ずしもMgOである場合に限られず、例えばスピネル(MgAl)など少なくともMgを含む酸化物である。
一方で、本発明の発明者らは、基地組織3に含まれるMg酸化物7bも、アルミニウム基複合材1の機械的特性に大きな影響を与えることを見出した。具体的には、金属粉末が過度に酸化され、焼結工程前の金属粉末がMg酸化物を多量に含む場合には、得られるアルミニウム基複合材は、多量のMg酸化物を基地組織中に含む態様となり、その機械的特性が悪化する。すなわち、後述するように、焼結工程前の金属粉末の酸素量が所定の値以下となるよう金属粉末の酸化を制御し、酸化による金属粉末中のMg酸化物の生成量を低減することにより基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に存在するMg酸化物7bの面積率が4〜15%となり、良好な機械的特性を得ることができることを見出したのである。なお、ヤング率および引張強度いずれも優れたアルミニウム基複合材を得るためには、Mg酸化物面積率の下限値が5.0%、より好ましくは7.2%、上限値が13.7%、より好ましくは11.2%であることが望ましい。
焼結時においてAl酸化物層とMgとの反応が十分でない場合には、得られたアルミニウム基複合材1のMg酸化物7bの面積率が4%未満となり、基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に、Al酸化物層9が残る可能性がある。このようにAl酸化物層9が残ると、基地組織3を構成する結晶同士の焼結を阻害するとともに、基地組織3と炭素繊維5の密着性が低下し、機械的特性を悪化させる。一方、金属粉末の酸化が過多で、Al酸化物、Mg酸化物を金属粉末が過度に含む場合には、得られたアルミニウム基複合材1のMg酸化物7bの面積率が15%を超え、Mg酸化物7bの凝集が進みやすく、基地組織3を構成する結晶同士の焼結を阻害するとともに、基地組織3と炭素繊維5の密着性が低下し、機械的特性を悪化させる。
上記Mg酸化物7bの面積率は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X−ray spectrometry:EDX)を使用した元素マッピングによるMgとOの分布を取得し、MgとOの共存領域をMg酸化物7bの存在領域と見なして、画像解析により計算することができる。(詳細は、後述する。)
より好ましくは、基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に存在する円相当径が100nm以上のMg酸化物(以下、粗大Mg酸化物という場合がある。)が、5個/μm以下であることが望ましい。粗大なMg酸化物が多くなると、前述したように、金属粉末同士の焼結を阻害するとともに基地組織3と炭素繊維5の密着性が低下し、機械的特性を悪化させるためである。なお、Mg酸化物の円相当径と個数は、前述したEDXに基づく画像解析によって測定することができる。(詳細は、後述する。)なお、ヤング率および引張強度いずれも優れたアルミニウム基複合材を得るためには、粗大Mg酸化物の密度の下限値が0.5個/μm、上限値が3.8個/μmであることが望ましい。
[空隙率]
Al酸化物層が残っていると考えられる条件でアルミニウム基複合材1を作製すると、基地組織3を構成する結晶粒界および基地組織3と炭素繊維5との界面に、微小な空隙(ボイド)が生じる。このボイドは、外力が作用した際に、クラックの起点となり、また、伸びを大きく低下させる要因となる。
このため、本実施形態のアルミニウム基複合材1としては、その空隙率が0.2%以下であることが望ましい。ここで、本発明における空隙率とは、(1−(p/p0))×100(%)で定義される。なお、pは、見かけ密度(g/cm)であり、p0は真密度(g/cm)である。見かけ密度は、アルキメデス法により測定することができる。
[空隙発生率]
図1(b)に示す炭素繊維5と基地組織3との密着性が低いと、外力が作用した場合に、炭素繊維5と基地組織3の剥離が生じ、両者の界面に空隙(ボイド)が発生する。図2は、後述する比較例1で得られたアルミニウム基複合材の引張試験後の破断面近傍の引張方向(紙面において上下方向)に沿う断面のSEM写真である。図2に示すように、炭素繊維と基地組織の密着性が低いと考えられる比較例1のアルミニウム基複合材では、引張試験後に、炭素繊維5(図中Y)と基地組織3との界面にボイド(図中X)が発生している。
このため、図1(b)に示す本実施形態のアルミニウム基複合材1としては、引張試験後の炭素繊維5と基地組織3との界面における空隙(ボイド)が所定量以下であることが望ましい。ここで、引張試験後の基地組織3との界面における空隙(ボイド)量は、以下のように定義される。まず、JIS Z2241に準拠し、図5に示す形状の試験片11を使用し、クロスヘッド速度1mm/minで引張試験を行う。なお、試験片11の各部寸法は以下の通りである。
全長 L=67mm
標点距離 L=25mm
平行部長さ L=31mm
径 d=5mm±0.02mm
肩部半径 R=3mm
掴み部長さ L=15mm
掴み部径 d=7.8mm
破断後の引張方向に沿う試験片11の断面において、破断面から20〜100μmの範囲において任意に設定した複数視野に存在する基地組織と炭素繊維との界面に空隙(ボイド)の発生した炭素繊維を確認する。この際、基地組織と炭素繊維との界面の周長をL1、当該界面に存在する空隙(ボイド)の外周の周長をL2としたとき、L2/L1が0.3以上の炭素繊維の個数割合(空隙発生率)が50%以下であることが望ましい。
なお、上記空隙発生率の確認方法としては、まず、引張試験後の上記試験片11の破断部の任意の位置から破断面を含むよう切り出した測定片を樹脂埋めした後、引張方向に沿う測定片の断面を走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)にて倍率×20kで観察し、破断面から20〜100μmの範囲において任意に設定した複数視野における組織写真を取得する。次に、得られた組織写真の画像の解析によって、組織写真中の複数個のそれぞれの炭素繊維に対して、上記長さ(L1、L2)を測定することで、空隙発生率を算出することができる。(詳細は、後述する。)
上記空隙発生率を悪化させるような炭素繊維と基地組織との密着性の低下は、下記で詳述するように、炭素繊維を酸液に浸漬して炭素繊維の表面に官能基を形成する炭素繊維酸処理工程において、炭素繊維が過度に酸処理され表面に多数の欠陥が生成されることも要因と考えられる。すなわち、前述したように、基地組織と炭素繊維の密着性は、金属粉末に含まれるMgの還元作用によりAl酸化物層が減少または消失せしめることにより確保できるが、炭素繊維の表面の健全性(当該表面の欠陥の少なさ)にも依存する。つまり、炭素繊維の表面に過度に欠陥が存在すると基地組織との密着性が阻害され、炭素繊維と基地組織との界面に微小な空隙(ボイド)が形成され、空隙発生率が高くなるものと推定される。
[Mg酸化物占有率]
上記したように、金属粉末中のMgは、焼結工程において金属粉末表面のAl酸化物を還元し、基地組織を構成する結晶粒同士および基地組織と炭素繊維の密着性を高める一方で、Al酸化物の還元過程でMg酸化物が多量に生成されると、得られるアルミニウム基複合材の機械的特性が低下する。特に、炭素繊維の周辺にMg酸化物が偏在すると、炭素繊維と基地組織の密着性が低くなり、強化材として添加した炭素繊維の効果が充分に発揮されず、アルミニウム基複合材のヤング率や強度が低下する恐れがある。
したがって、炭素繊維の外周縁よりも外側の外周部(外周縁含む)に存在するMg酸化物の量は一定水準に制御されていることが望ましい。具体的には、任意の断面において、任意に選択した炭素繊維の円相当径をdとしたとき、当該炭素繊維の外周縁から0.1dの範囲に存在するMg酸化物の面積率(Mg酸化物占有率)が80%以下であることが望ましい。Mg酸化物占有率の下限値は特に限定されないが、Mg酸化物面積率が下限値(4%)となる場合には、Mg酸化物占有率は8%程度となる。なお、ヤング率および引張強度いずれも優れたアルミニウム基複合材を得るためには、Mg酸化物占有率の下限値が12%、上限値が70%であることが望ましい。
以上のように、Mgの含有量と、Mg酸化物の面積率を所定の範囲とすることで、優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材を具現することができる。例えばJIS A5083合金からなる基地組織を有するアルミニウム基複合材の場合には、引張強度350MPa以上、伸び5%以上、ヤング率80GPa以上と引張強度、伸びおよびヤング率の何れも一定以上の水準を有する優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材とすることができる。
本実施形態のアルミニウム基複合材の製造方法について説明する。上記説明したアルミニウム基複合材の製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法により好適に製造することができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、
炭素繊維を酸処理し、炭素繊維の表面に官能基を形成する炭素繊維酸処理工程と、
前記炭素繊維酸処理工程で酸処理された炭素繊維を溶液中に添加し炭素繊維スラリーを形成する炭素繊維スラリー形成工程と、
樹脂を含む溶液に金属粉末を添加し、表面に水酸基が形成された金属粉末を含む金属粉末スラリーを形成する金属粉末スラリー形成工程と、
炭素繊維スラリー形成工程で得られた炭素繊維スラリーと金属粉末スラリー形成工程で得られた金属粉末スラリーとを炭素繊維の含有率が金属粉末に対し1〜5質量%となるよう混合し、炭素繊維表面の官能基と金属粉末表面の水酸基を介して金属粉末の表面に炭素繊維を吸着させ、炭素繊維吸着金属粉末を得る炭素繊維吸着工程と、
炭素繊維吸着工程で得られた炭素繊維吸着金属粉末を加熱処理し、炭素繊維吸着金属粉末に含まれる樹脂を除去する加熱処理工程と、
加熱処理工程で得られた炭素繊維吸着金属粉末を焼結する焼結工程と、を有し、
金属粉末スラリー形成工程で使用する金属粉末が、Mg0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなり、
加熱処理工程で処理された後の炭素繊維吸着金属粉末の酸素量が3.5質量%以下であることを特徴としている。以下、図3に示すアルミニウム基複合材の製造工程のフローチャートを用いて、上記各工程および上記各工程に更に付加される好ましい工程について詳細に説明する。
[炭素繊維準備工程:ステップ100]
まず、使用される炭素繊維を準備する(ステップ100)。原料となる炭素繊維の種類、繊維径は特に限定されるものではないが、カーボンナノファイバー(carbon nanofiber:CNF)やカーボンナノチューブ(carbon nanotube:CNT)などを使用することが好ましい。カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブ(炭素繊維)の好ましい純度は90%以上、好ましい平均直径は200nm以下、好ましい平均長さは0.5μm以上である。純度が90%より低いと炭素繊維自体の特性が低下し、平均直径が200nmより大きく、平均長さが0.5μmより短いとアスペクト比が小さくなり繊維強化材としての効果が低下する。なお、炭素繊維の平均直径の下限値、平均長さの上限値は特段限定されないが、工業生産的に適正なコストの炭素繊維を得るためには、各々0.5nm以上、1000μm以下であることが望ましい。
[炭素繊維酸処理工程:ステップ101]
次に、この炭素繊維に対して酸処理を行う(ステップ101)。炭素繊維酸処理工程(以下、酸処理工程という場合がある。)においては、金属粉末表面に炭素繊維が吸着するように、炭素繊維表面に官能基を形成する。酸処理工程では、硫酸、硝酸、塩酸、混酸などの酸液に炭素繊維を浸漬させて、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、カルボニル基(−C=O)などの官能基を形成させることができる。このように官能基が形成された炭素繊維は、水や有機溶媒等の溶液との親和性が向上し、それらの溶液中での分散性も向上する。
酸処理工程は、上記酸液中に炭素繊維を添加した後、炭素繊維を含む酸液を撹拌することで行われる。この際、炭素繊維を50〜90℃の温度の酸液中に10〜90分間保持することが望ましい。酸液の温度が低い場合や酸液への保持時間が短い場合は、官能基の形成が不十分となり、酸液の温度が高い場合や酸液への保持時間が長い場合は、炭素繊維の表面に過度の欠陥が形成されたり、炭素繊維が細くなる。
上記炭素繊維の酸処理後の表面状態(欠陥の生成状態)は、ラマン分光分析で測定されるDバンドの強度IdとGバンド(グラファイト構造)の強度Igの比率Id/Ig比で評価できる。つまり、酸処理により炭素繊維の欠陥が増加するほど、Id/Ig比が増加する。酸処理後のId/Ig比は0.1〜0.7が望ましい。酸処理工程における酸液の温度が低い場合や酸液への保持時間が短い場合にはId/Ig比が0.1より小さくなり、酸処理不足で官能基の形成が不十分となる。一方で、酸処理工程における酸液の温度が高い場合や酸液への保持時間が長い場合にはId/Ig比が0.7より大きくなり、酸処理過多で炭素繊維の欠陥が多くなりすぎ、炭素繊維の強度が低下するとともに得られたアルミニウム基複合材において炭素繊維と基地組織との密着性が低下する。このため、いずれの場合も、アルミニウム基複合材の機械的特性が低下する。
[炭素繊維スラリー形成工程:ステップ102]
ステップ101で酸処理された炭素繊維を用いて炭素繊維スラリーを形成する(ステップ102)。ステップ102においては、分散剤が0.5〜1.5質量%添加された水溶液にステップ101で得られた酸処理後の炭素繊維を0.5〜1.5質量%添加して分散処理を行う。分散媒(溶媒)には、水の他にエタノールなどのアルコール類も使うことができる。
なお、分散剤には、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸などが、分散処理には、超音波処理機、湿式ビーズミル、湿式ジェットミルなどを用いることができる。この処理を施すことにより、バンドル状に絡み合った炭素繊維でもほぐれて炭素繊維が分散したスラリーを得ることができる。この炭素繊維スラリーに含まれる炭素繊維の好ましい粒度はD90で0.15〜8μmである。
[金属粉末準備工程:ステップ103]
炭素繊維の準備と並行して、または前後して、金属粉末を準備する(ステップ103)。原料となる金属粉末の成分、形状、平均粒径は特に限定されるものではない。金属粉末の組成の好ましい範囲は、Mg:0.5〜7質量%であり、残部Alおよび不可避不純物である。その他の添加元素として、Mn:0.05〜1.0質量%、Cr:0.05〜0.40質量%を添加してもよい。Mgは基地組織の強度を上げ、MnおよびCrはAlなどとともに化合物(析出物)を形成して再結晶する際の結晶粒の成長を抑制するためアルミニウム基複合材の強度を上げる効果がある。
[金属粉末鱗片化工程:ステップ104]
上記金属粉末について、鱗片化処理を行う(ステップ104)。金属粉末鱗片化処理工程(以下、鱗片化工程という場合がある。)では、略球状の金属粒子を潰して偏平化し、金属粉末を鱗片化する。鱗片化処理によって、金属粒子の比表面積を増加させ、金属粉末への炭素繊維の吸着量を増加させることができる。なお、鱗片化処理後の金属粉末(以下、鱗片粉と称する場合がある。)の好ましい比表面積は、1.0〜10m/gである。また、鱗片粉の好ましい厚さは、0.1〜10μm程度である。
金属粉末の鱗片化処理には、ボールの衝撃で金属粉末を押しつぶすアトライター、遊星ボールミル、振動ボールミルなど各種ボールミルが使用できる。ボールミルで鱗片化処理を行う場合、ボールミルのチャンバー内で結露が生じると溶媒(例えば、エタノール等の有機溶剤)中の水分濃度が上昇して、鱗片化中に現れる金属粉末の新生面が酸化し、Al酸化物が生成する。このAl酸化物の生成を抑制するため、チャンバー内が結露しないよう、チャンバー内の温度を、露点以上に維持することが望ましい。加えて、温度が高すぎると鱗片粉の酸化が進むため、チャンバー内の処理温度としては、20℃以下が望ましい。すなわち、鱗片化処理の温度や雰囲気(酸素濃度)を調整することで、鱗片粉内の酸素濃度を調整することができる。
なお、鱗片化工程において、金属粉末が酸化されると、鱗片粉の酸素濃度が上昇し、鱗片粉表面にAl酸化物が生成するおそれがある。さらに金属粉末が過度に粉砕されると、生成した鱗片粉が小さいほど比表面積は大きいゆえに、鱗片粉が小さいほど体積あたりのAl酸化物の比率も大きくなる。このため、使用されるエタノール等の溶媒に対して、潤滑(すなわち過度の粉砕の防止)と酸化防止を目的に粉砕助剤を加えることが好ましい。粉砕助剤は鱗片化の過程において金属粉末の表面に結合して保護層を形成し、さらなる反応を防止することにより、鱗片粉の酸化を防止し、また、鱗片粉が他の鱗片粉や鱗片化に用いるボールなどの衝撃媒体と結合(凝着)することを防止する。粉砕助剤としては、有機酸であるステアリン酸やオレイン酸、界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸やラウリル硫酸ナトリウムなどを用いることができるが、中でもチタネート(有機チタン酸エステル)が優れている。チタネートはチタン酸(Ti(OH))の4つのOH基が、有機酸あるいは有機リン酸、有機スルホン酸などと反応してエステル結合した化合物である。この化合物が、Al酸化物表面や、鱗片化処理によって生成した新生面に接触すると、4つのエステルのうち2つが分解してAl−O−Tiの結合を2つ生成する。すなわちチタネートは2つの結合手によってAlと結合し、残る2つの結合手はエステル結合によって有機酸あるいは有機リン酸、有機スルホン酸などと結合した状態で存在する。前記した2つの結合手とエステル結合を形成している有機酸あるいは有機リン酸、有機スルホン酸を粉砕助剤として用いることもできるが、チタネートとして用いる方がAl−O−Tiの結合が強固であることから鱗片粉表面に安定に存在し、酸化防止ならびに潤滑の機能は優れている。
粉砕助剤としてチタネートを使用すると、鱗片化工程における鱗片粉の潤滑および酸化防止、並びに、鱗片化工程の後に行われる後述する炭素繊維吸着金属粉末洗浄工程および加熱処理工程におけるチタネートの除去を両立できる点で好ましい。さらに、粉砕助剤としてチタネートを使用する場合には、鱗片粉の原料である金属粉末100質量部に対し、チタネートが1.0〜5.0質量部となるよう溶媒に添加することが好ましい。チタネートの添加量が1.0質量部未満だと鱗片粉の潤滑および酸化防止を充分に行うことができない。一方で、5.0質量部を超えても潤滑および酸化防止の効果が平衡化することに加え、鱗片化工程の後に行われる後述の加熱処理工程におけるチタネートの除去が不十分となり、得られるアルミニウム基複合材の機械的強度が低下する恐れがある。なお、チタネートの添加量の下限値は、金属粉末100質量部に対し、好ましくは1.4質量部、より好ましくは1.8質量部である。また、上限値は、金属粉末100質量部に対し、好ましくは4.1質量部、より好ましくは3.2質量部である。
また、上記ボールミルで使用する溶媒としては、エタノール以外に、例えばメタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、ミネラルスピリット等の石油系の混合溶剤を使うことができる。また、鱗片粉の乾燥時には、真空またはAr雰囲気など雰囲気中の酸素濃度が低い非酸化雰囲気にすることが望ましい。また、乾燥後の鱗片粉は、真空保管して酸化を防止することが望ましい。これら鱗片化工程における酸化防止対策により、金属粉末の酸化が抑制され、鱗片粉表面に生成されるAl酸化物が低減する。
[金属粉末スラリー形成工程:ステップ105]
金属粉末(上記鱗片化工程を経た場合は、金属粉末を鱗片粉と読み替えることができる。以下の他の工程についても、同様。)に、ステップ101(炭素繊維酸処理工程)で形成された官能基を表面に持つ炭素繊維が容易に吸着できるように、金属粉末のスラリーを形成する(ステップ105)。ステップ105においては、樹脂を溶解した水溶液に金属粉末を5〜15質量%添加し浸漬して樹脂で被覆し、表面に水酸基が形成した金属粉末のスラリーを得る。この樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体(EOPO)などから選択された1種類または複数種類を用いることができる。
[炭素繊維吸着工程:ステップ106]
ステップ102(炭素繊維スラリー形成工程)で得られた炭素繊維スラリーと、ステップ105(金属粉末スラリー形成工程)で得られた金属粉末スラリーとを混合して、金属粉末へ炭素繊維を吸着させる(ステップ106)。この際、炭素繊維表面の官能基と金属粉末表面に形成された樹脂膜の水酸基との結合(例えば水素結合)を利用して、金属粉末表面に炭素繊維を吸着させることで、得られるアルミニウム基複合材に対する質量割合で炭素繊維の含有量が1〜5質量%となるよう炭素繊維が吸着した金属粉末(以下、炭素繊維吸着金属粉末という場合がある。)を得ることができる。炭素繊維スラリーと金属粉末スラリーの混合比率は、得ようとするアルミニウム基複合材の炭素繊維含有量に応じて選択される。混合及び吸着には、スターラーや撹拌羽根を用いることができ、撹拌の回転数は500〜800rpm、時間は30分程度である。
[炭素繊維吸着金属粉末洗浄工程:ステップ107]
必要に応じて、炭素繊維吸着金属粉末を洗浄する(ステップ107)。後述するステップ108(加熱処理工程)において、炭素繊維吸着金属粉末に残る樹脂を加熱処理で除去するが、加熱処理の前に洗浄して樹脂の一部を除去しておけば、加熱処理時間を短縮することができる。
炭素繊維吸着金属粉末洗浄工程(以下、粉末洗浄工程という場合がある。)は、純水や有機溶剤を用い、炭素繊維吸着金属粉末を吸引濾過しながら洗浄する工程である。この場合、洗浄液による吸引濾過を複数回行ってもよい。なお、粉末洗浄工程で使用される洗浄液は、炭素繊維吸着金属粉末の酸化を抑制し、金属粉末に生成されるAl酸化物を低減する面から、有機溶剤であることが望ましい。また、有機溶剤の使用量を削減するためには、最初の洗浄を純水で行い、最後の洗浄を有機溶剤で行ってもよい。また、複数回の洗浄を行う際には、洗浄と洗浄の間に炭素繊維吸着金属粉末が大気と触れ合い、酸化するおそれがあるため、洗浄液を連続して供給しながら吸引濾過することが望ましい。この際、例えば、洗浄開始時には純水を供給しながら吸引濾過を行い、所定時間後に、純水から有機溶剤の供給に切り替えて吸引濾過を行ってもよい。このようにすることで、有機溶剤の使用量を抑えるとともに、洗浄時における酸化を抑制することができる。
洗浄に用いられる有機溶剤には、エタノール、メタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、ミネラルスピリット等の石油系の混合溶剤を使うことができる。なお、粉末洗浄工程は、必ずしも必須の工程ではない。
[加熱処理工程:ステップ108]
加熱処理によって、ステップ106(107)で得られた炭素繊維吸着金属粉末に含まれる余剰の樹脂を除去する(ステップ108)。この加熱処理は、金属粉末が酸化し、金属粉末にMg酸化物が生成しないよう、初期炉内酸素濃度1000ppm以下、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満の低酸素濃度とした不活性ガス雰囲気などで、炭素繊維吸着金属粉末に含まれる樹脂を除去する。ここで、「初期」とは、金属粉末の所定温度での加熱開始時のことを指し、「最終」とは所定温度での加熱終了時のことを指す(以下説明する、焼結工程について同じ)。加熱処理は、加熱温度350〜500℃、保持時間1〜24時間で行うことが好ましい。加熱温度が350℃より低い場合や保持時間が1時間より短い場合は樹脂の除去が不十分となる。また、加熱温度が500℃より高い場合や保持時間が24時間より長い場合は金属粉末(鱗片粉)に含まれるMgによるAl酸化物の還元が進み、その結果、金属粉末に過度のMg酸化物が生成する。したがって、いずれの場合も得られるアルミニウム基複合材の機械的特性が低下する。加熱処理工程後の炭素繊維吸着金属粉末に含まれる残存樹脂量は、熱重量分析(例えば、BRUKER製TG−DTA2000SA)によって測定することができる。また、加熱処理工程後の炭素繊維吸着金属粉末に含まれる酸素量は不活性ガス融解法で測定でき、その酸素量の好ましい範囲は3.5質量%以下である。
[圧粉体成形工程:ステップ109]
必要に応じて、炭素繊維吸着金属粉末の圧粉体を成形する(ステップ109)。圧粉体成形工程は、ステップ108(加熱処理工程)で得られた炭素繊維吸着金属粉末をプレス機などを用いて低温で加圧成形し圧粉体を得る工程である。この時の好ましい条件は、温度は300℃以下で、圧力は200〜800MPaである。この成形処理により圧粉体の相対密度が増加するため、次工程の焼結時間を短縮することができる。なお、圧粉体成形工程は、必ずしも必須の工程ではない。
[焼結工程:ステップ110]
樹脂を除去した炭素繊維吸着金属粉末または上記圧粉体成形工程で得られた圧粉体のバルク化を行うため、焼結処理を行う(ステップ110)。焼結は、初期炉内酸素濃度1000ppm以下、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満の不活性ガス雰囲気中で加熱して570〜620℃で2〜10時間の条件で行われる。この焼結処理では、金属粉末同士の固相接合が進む。この時、前述したように、金属粉末の表面を覆っているAl酸化物層は、金属粉末に固溶しているMgによって還元されて除去され、Alが露出した金属新生面が現れるため、金属粉末同士の固相接合が促進される。この焼結工程では、加圧力をかけながら焼結を行うホットプレスやスパークプラズマ焼結を使ってもよい。
[塑性加工工程:ステップ111]
必要に応じ、得られた焼結体を塑性加工する(ステップ111)。上記焼結工程で得られた焼結体が充分な機械的特性を有する場合には塑性加工工程は必須ではないが、塑性加工によって、アルミニウム基複合材の密度向上、基地組織の微細化、形状付与を行うことができる。塑性加工には、押出、鍛造、プレスなどの加工方法があるが、高密度で均一な微細基地組織を得るためには、押出成形が適している。押出成形を適用する場合の好ましい条件は、被加工体である焼結体の加熱温度350〜500℃、押出比が20〜30、押出速度が0.2〜10.0mm/sである。なお、押出比は、下記式で算出することができる。
R=A0/A
ここで、
R:押出比
A0:押出前の被加工体(焼結体)の押出方向に直交する方向の断面積
A:押出後の被加工体の押出方向に直交する方向の断面積
以上説明したように、本発明に係るアルミニウム基複合材の製造方法によれば、金属粉末の酸化防止、特に、金属粉末の表面に付着した余剰の樹脂を加熱処理によって除去する加熱処理工程(ステップ108)において加熱雰囲気、加熱温度および保持時間を制御することで、金属粉末の過度な酸化を抑制することができる。また、鱗片化工程では、チャンバー内の温度を適切な範囲に制御することにより、チャンバー内の結露を抑制し、金属粉末(鱗片粉)の酸化による、Al酸化物の生成を抑制している。加えて、鱗片化工程で粉砕助剤として溶媒に添加されるチタネート等の粉砕助剤の量を適切に制御することにより、金属粉末(鱗片粉)の酸化を抑制することができる。このように、本発明では、金属粉末の酸化を抑制し、その酸素量を一定水準以下とすることにより、金属粉末の酸化で形成されるMg酸化物を低減して金属粉末中のMgの消費を抑制し、Al酸化物層の還元に必要なMgを金属粉末中に残存させている。その結果、焼結時に、金属粉末(鱗片粉)同士の接触面に介在するAl酸化物層は、Mgによって充分に還元され消失または減少し、金属粉末同士は、Al酸化物層により阻害されることなく、それらの接触面で焼結される。加えて、所定の組成を有する金属粉末を使用し、上記のように当該金属粉末の過度な酸化を抑制することにより、Mg酸化物の面積率を所定の範囲に制御しているので、炭素繊維が基地組織に分散した所望の機械的特性を有するアルミニウム基複合材を得ることができる。
次に、実際に各種条件によってアルミニウム基複合材を作製し、機械的強度等を評価した。
(実施例1)
実施例1では、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる基地組織に炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を以下のように作製した。
[炭素繊維準備工程]
炭素繊維としてカーボンナノファイバー(昭和電工社製VGCF(登録商標)、平均外径150nm、平均長さ6μm、純度99%以上)を用いた。この炭素繊維をラマン分光装置(レニショー製inVia Qontor)で分析し、1350cm−1付近のDバンドと呼ばれるピークの強度Idと、1570cm−1付近のGバンドと呼ばれるピークの強度Igの比(Id/Ig)を確認したところ、0.03であった。なお、以下説明する炭素繊維のId/Igについても、同様な方法で確認した。
[炭素繊維酸処理工程]
次に、炭素繊維の酸処理を行うため、硫酸150gと硝酸50gを混合して混酸を調合し、その中に炭素繊維を2g添加して、70℃に加熱したウォーターバススターラー(アズワン製EWS100RD)内にて温浴し、100rpmで60分間撹拌した。
その後、純水およびエタノールで炭素繊維を洗浄し、吸引濾過して80℃で乾燥し、カルボキシル基が表面に形成された炭素繊維を得た。酸処理後の炭素繊維のId/Igを確認したところ、0.47であった。
[炭素繊維スラリー形成工程]
次に、ラウリル硫酸ナトリウム(昭和化学製濃度99%以上)、純水および超音波処理装置(ブランソン製超音波ホモジナイザーDCX S20:1.25)を用意した。純水200mlにラウリル硫酸ナトリウムを2g添加した溶液に、前述した酸処理後の炭素繊維を2g添加して、超音波処理を行い、炭素繊維スラリーを得た。なお、上記超音波処理の条件は、720Wで10分→360Wで2時間→720Wで10分とした。
[金属粉末準備工程]
金属粉末としては、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用いた。なお、上記アトマイズ粉の成分は、誘導結合プラズマ(Inductively coupled plasma:ICP)発光分析法(島津製作所製 ICPS−8100)で確認した。なお、本実施例では、後述するように金属粉末を鱗片化処理し鱗片粉を形成するので、本工程で準備される金属粉末(アトマイズ粉)は、鱗片粉のための原料である(以下説明する他の実施例および比較例について同様)。
[金属粉末鱗片化工程]
上記アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール、助剤としてのチタネート(味の素ファインテクノ製プレンアクト238S)およびボールミル(ユニオンプレス製アトライターHD−01)を用意した。エタノール300mlにチタネートを5g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート2.3質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。
なお、鱗片化処理は、略球形の金属粒子を偏平化させて平らに押しつぶした形状にするものである。鱗片化処理の際のチャンバー内温度は15℃であり、また、チャンバー雰囲気の室温は20℃、湿度は50%であり、露点温度は9.3℃であった。すなわち、チャンバー内を露点以上、20℃以下の温度で鱗片化処理を行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.7質量%の鱗片粉を得た。
鱗片粉の厚さは、樹脂埋めした鱗片粉を研磨し、その断面を走査型電子顕微鏡(Scanning
Electron Microscope:SEM、日立ハイテクノロジー製SU−70)の画像で測定し、鱗片粉の平均直径D50はレーザ回折式粒子径分布測定装置(堀場製作所製LA−960)で測定した。また、鱗片粉の比表面積は比表面積計(島津製作所製トライスターII3020)で測定した。また、鱗片粉の酸素濃度は、酸素窒素(ON)分析装置(LECO製ON836)で測定した。なお、以下説明する鱗片粉(金属粉末)の酸素濃度については、同様な方法で確認した。
[金属粉末スラリー形成工程]
次に、金属粉末スラリーを形成した。純水およびポリビニルアルコール(デンカ製ポバール(登録商標))を用意した。95℃に加熱したウォーターバススターラー(アズワン製EWS100RD)内に純水1000mlを満たした容器を温浴し、撹拌しながらポリビニルアルコールを30g添加して、450rpmで1時間撹拌を行った。
上記ポリビニルアルコール溶液1000mlを10℃まで冷却し、前述した鱗片粉110gを添加し、温度を維持しながら1000rpmで60分間撹拌した。
その後、純水を加えて遠心分離および吸引濾過にてポリビニルアルコールで被覆した金属粉末スラリーを得た。遠心分離の条件は、4000rpmで3分間を3回繰り返すこととした。
[炭素繊維吸着工程]
次に、鱗片粉(金属粉末)に炭素繊維を吸着させた。PVAが付着した鱗片粉を100g含む金属粉末スラリーを純水1200mlに添加して、スターラー(東京硝子器械製F−205D)を用いて750rpmで撹拌しながら、前述した炭素繊維を2g含む炭素繊維スラリー200mlを添加し、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、炭素繊維が吸着した鱗片粉を得た。
[炭素繊維吸着金属粉末洗浄工程]
次に、炭素繊維が吸着した上記鱗片粉に純水およびエタノールを加えながら吸引濾過し、濾紙に残った鱗片粉を85℃で乾燥した。
[加熱処理工程]
次に、粉末洗浄工程後の鱗片粉を、熱処理炉内雰囲気をアルゴン雰囲気(初期炉内酸素濃度312ppm、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満)にて450℃で2時間加熱し、当該鱗片粉からポリビニルアルコールを除去した。その後、鱗片粉の炭素量を、JIS Z2615の赤外線吸収法(積分法)に準拠し、炭素硫黄(CS)分析装置(LECO製CS844)で測定した。加熱処理後の鱗片粉(炭素繊維吸着金属粉末)の炭素量は1.9質量%であった。なお、以下説明する鱗片粉の炭素量は、同様な方法で確認した。また、加熱処理後の鱗片粉の酸素量を確認したところ、2.6質量%であった。さらに、鱗片粉の表面Mg量を、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS、PHI社製Quantera II、線源は単色化Al、取出し角45度)で測定した結果、表面Mg量は13.4質量%であった。なお、XPS分析すると、Al、Mg、C、Oが検出された。このうちCは大気中で付着した汚染と考えられ、試料が置かれていた環境や時間によって異なるので、表面組成の計算からは除外した。即ち、Al、Mg、Oの合計に対するMgの割合を表面Mg量とした。また、以下説明する鱗片粉の表面Mg量は、同様な方法で確認した。
[圧粉体成形工程]
次に、200℃に加熱した内径40mmのプレス用金型に、加熱処理工程後の鱗片粉を75g充填して、2000kNのプレス機(アサイ産業製EFP−200)を用い、圧力600MPaで加圧し、直径40mm、高さ22mmの圧粉体を得た。
[焼結工程]
次に、得られた圧粉体を、熱処理炉において、初期炉内酸素濃度300ppm、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満のアルゴン雰囲気中、600℃で、10時間保持して焼結体を得た。
[塑性加工(押出成形)工程]
次に、2000kNのプレス機(アサイ産業製EFP−200)、図4に示す押出用金型10を用いて押出成形を行い、上記焼結体を成形し、直径が8.0mmの円柱形状のアルミニウム基複合材を得た。押出用金型10は、入側の内径(図中A)が40.5mm、出側の内径(図中B)が8.0mmで、ダイス角度(図中C)は45°である。直径40mm、高さ22mmの焼結体を、450℃で予熱した後、450℃に加熱した押出用金型10に挿入して、押出比25、押出速度5.0mm/sで押出成形を行った。
押出成形で得られた実施例1のアルミニウム基複合材の基地組織について、その成分を、ICP発光分析法(島津製作所製 ICPS−8100)で確認した。実施例1のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であった。また、アルミニウム基複合材の炭素量を、JIS Z2615の赤外線吸収法(積分法) に準拠し、CS分析装置(LECO製CS844)で測定した。実施例1のアルミニウム基複合材の炭素量は、1.9質量%であった。
実施例1の円柱形状のアルミニウム基複合材について、空隙率(全体の空隙率)を求めた。前述したように、空隙率は、(1−(p/p0))×100(%)(p:見かけ密度(g/cm)、p0:真密度(g/cm))で定義され、見かけ密度は、比重計(島津製作所製 UW4200H)を用いてアルキメデスの原理により測定した。実施例1の空隙率は、0.02%であった。なお、以下説明する実施例および比較例でも、アルミニウム基複合材の空隙率は、同様な方法で確認した。
また、実施例1のアルミニウム基複合材について、機械的特性を評価した。機械的特性は、押出成形後のアルミニウム基複合材から加工して作製した図5に示す下記寸法の試験片を用い、JIS Z2241に準拠し、クロスヘッド速度が1mm/minとなるよう設定した万能試験機(インストロン製5982)で引張試験を行って求めた。なお、試験片の中心軸と、押出成形の押出方向は一致させた。実施例1の機械的特性は、ヤング率92GPa、引張強さ400MPa、破断伸び8.3%であった。
試験片形状
全長 L=67mm
標点距離 L=25mm
平行部長さ L=31mm
径 d=5mm±0.02mm
肩部半径 R=3mm
掴み部長さ L=15mm
掴み部径 d=7.8mm
また、得られたアルミニウム基複合材の基地組織を構成する結晶粒界および基地組織と炭素繊維との界面に存在するMg酸化物の面積率を以下のようにして確認した。すなわち、上記試験片の掴み部の断面の任意の3視野をSTEM(日立製HD−2100)にて倍率2百万倍で測定し、当該3視野それぞれについてEDXマッピングによりMg元素およびO元素の分布を取得した。各視野について、画像解析ソフト「AT−image」によりMgおよびOの分布をモノクロ変換後、輝度反転し、MgとOの共存領域をMg酸化物の存在領域と見なし、MgおよびOの分布の論理積をとった。なお、Mgの分布像は、Mgの原子濃度が14.3%以上の領域を抽出し、14.3%未満の領域を除外して2値化した。Oの分布像は、Oの原子濃度が57.1%以上の領域を抽出し、57.1%未満の領域を除外して二値化した。ここで、2値化に用いた閾値(Mg:14.3%、O:57.1%)は、スピネル(MgAl)におけるMgおよびOの原子濃度であり、それ以上のMgおよびOを含む領域を抽出している。そして、視野ごとに、画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析モードにより自動で二値化して、手動で結晶の粒子同士を区切り、視野中のMg酸化物の面積を視野全体の面積で割ることによりMg酸化物の面積率を計算し、3視野の平均値をMg酸化物の面積率とした。実施例1のMg酸化物の面積率は、10.7%であった。なお、以下説明する実施例および比較例でも、アルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、同様な方法で確認した。
また、上記と同様の手順で、粗大Mg酸化物の発生密度を確認した。すなわち、視野ごとに画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析モードにより自動で二値化し、手動で結晶の粒子同士を区切り、Mg酸化物の円相当径と個数を自動で算出し、各視野の円相当径が100nm以上の粗大Mg酸化物の単位面積当たりの個数(密度、個/μm)を計算し、3視野の粗大Mg酸化物の密度の平均値を粗大Mg酸化物の単位面積当たりの個数(個/μm)とした。実施例1の粗大Mg酸化物の密度は、2.3個/μmであった。なお、以下説明する実施例および比較例でも、アルミニウム基複合材の粗大Mg酸化物の密度は、同様な方法で確認した。
また、Mg酸化物占有率は、次のようにして確認した。まず、上記のように測定した3視野の視野ごとに、視野中における各画素の輝度を、当該画素位置におけるCの濃度に比例させた、Cの分布像を作成した。次に、当該Cの分布像を微分し、輝度変化(すなわちCの濃度変化)が最も大きい画素を結んだ閉曲線を求める輪郭(外周縁)抽出処理を行った。この閉曲線が、炭素繊維の輪郭(外周縁)である。また、視野中に含まれる各閉曲線、すなわち炭素繊維の外周縁内の円相当径dを個々に求めた。そして、炭素繊維の輪郭(外周縁)上に中心を有し、上記炭素繊維の円相当径dに対し直径が0.1dである円が掃く領域、すなわち炭素繊維の外周縁から0.1dの範囲(外周領域)に存在する上記Mg酸化物の面積を求め、求めたMg酸化物の面積を外周領域の面積で除することによりMg酸化物占有率を個々の炭素繊維ごとに求めた。そして、3視野に含まれる複数の炭素繊維の外周部のMg酸化物占有率の平均値をMg酸化物占有率(面積%)とした。なお、原料として外径が150nm程度のカーボンナノファイバーを使用した実施例1の場合、各視野に含まれる炭素繊維の円相当径dは130〜150nm程度であった(以下説明する各実施例および比較例でも同程度であった)。実施例1のMg酸化物占有率は、45%であった。なお、以下説明する実施例および比較例でも、アルミニウム基複合材のMg酸化物占有率は、同様な方法で確認した。
また、上記試験後の破断面における、炭素繊維と基地組織の界面における空隙発生率は、以下のようにして求めた。引張試験後の上記試験片の破断部の任意の位置から破断面を含むよう切り出した測定片を樹脂埋めした後、引張方向に沿う測定片の断面を観察できるように湿式研磨し、イオンミリングで仕上げた。当該測定片の断面について、SEM(日立製 S−4800)により2万倍の倍率で、破断面から20〜100μmまでの範囲を観察し、当該範囲において4×6μmの視野で任意に設定した3視野の組織写真を取得した。次いで、各視野の組織写真ごとに、視野中に炭素繊維全体が含まれる(つまり、視野の外縁により画像が途切れない炭素繊維)全ての炭素繊維ごとに、画像解析ソフト「Quick grain pad」により、炭素繊維と基地組織の界面の全体の周長(具体的には、炭素繊維の全周の周長)L1と、当該界面において炭素繊維と基地組織が剥離している部分である空隙(ボイド)の外周の周長L2を算出して、L2/L1を算出した。そして、3視野中に含まれる全ての炭素繊維について、上記のようにL2/L1を算出し、(L2/L1が0.3以上の炭素繊維の個数/全炭素繊維数)、により空隙発生率(%)を算出した。実施例1の空隙発生率は、30%であった。なお、以下説明する実施例および比較例でも、アルミニウム基複合材の空隙発生率は、同様な方法で確認した。
(実施例2)
実施例1と同様の金属粉末および炭素繊維を用いたが、以下に示すように、炭素繊維の酸処理条件、金属粉末の鱗片化処理条件および加熱処理条件を変更した。
実施例2の炭素繊維の酸処理では、硫酸150gと硝酸50gを混合して酸液を調合し、その中に炭素繊維を2g添加して、90℃に加熱したウォーターバススターラー(アズワン製EWS100RD)内にて温浴し、100rpmで70分間撹拌した。
その後、実施例1と同様に炭素繊維を洗浄・乾燥し、カルボキシル基が表面に形成された炭素繊維を得た。酸処理後の炭素繊維のId/Igを確認したところ、0.67であった。
金属粉末の鱗片化処理の際のチャンバー内温度は20℃とした。チャンバー雰囲気の室温は22℃、湿度は85%であり、露点温度は19.4℃であった。すなわち、チャンバー内を露点以上、20℃以下の温度で鱗片化処理を行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、実施例1と同様の手順で乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が2.1質量%の鱗片粉を得た。
次に、実施例1と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させた。また、得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を、アルゴン雰囲気(初期炉内酸素濃度696ppm、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満)にて500℃で3時間加熱し、鱗片粉からポリビニルアルコールを除去した。その後の鱗片粉の炭素量は1.5質量%であった。また、鱗片粉の酸素量を確認したところ、2.9質量%であった。また、実施例1と同様に鱗片粉の表面Mg量を測定した結果、表面Mg量は15.1質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例2のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例2のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.5質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例2のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.1%であった。
また、実施例2のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率85GPa、引張強さ355MPa、破断伸び5.6%であった。
また、実施例2のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、11.6%であり粗大Mg酸化物の密度は、4.0個/μmであり、Mg酸化物占有率は、72%であった。
また、実施例2のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、45%であった。
(実施例3)
実施例1と同様の金属粉末および炭素繊維を用いたが、以下に示すように、加熱処理条件を変更した。
実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理および金属粉末の鱗片化処理を行った後、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、得られた鱗片粉を、アルゴン雰囲気(初期炉内酸素濃度6.7ppm、最終炉内酸素濃度0.1ppb未満)にて450℃で2時間加熱し、鱗片粉からポリビニルアルコールを除去した。その後の鱗片粉の炭素量は2.0質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.3質量%であり、表面Mg量は10.9質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で、圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例3のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例3のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は2.0質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例3のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.01%であった。
また、実施例3のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率96GPa、引張強さ410MPa、破断伸び9.2%であった。
また、実施例3のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、7.8%であり、粗大Mg酸化物の密度は、0.5個/μmであり、Mg酸化物占有率は、15%であった。
また、実施例3のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、0%であった。
(実施例4)
実施例4は、Mg5.9質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる金属粉末を用い、金属粉末の鱗片化処理におけるチタネート添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg5.9質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを3g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート1.4質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が2.3質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。得られた鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、3.3質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例4のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例4のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg5.9質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例4のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.17%であった。
また、実施例4のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率88GPa、引張強さ455MPa、破断伸び5.0%であった。
また、実施例4のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、14.7%であり、粗大Mg酸化物の密度は、4.8個/μmであり、Mg酸化物占有率は、78%であった。
また、実施例4のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、50%であった。
(実施例5)
実施例5は、金属粉末の鱗片化処理におけるチタネート添加量を変えた以外は、実施例4と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg5.9質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを4g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート1.8質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例4と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が2.1質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。得られた鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、3.0質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例5のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例5のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg5.9質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例5のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.11%であった。
また、実施例5のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率90GPa、引張強さ414MPa、破断伸び5.3%であった。
また、実施例5のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、13.7%であり、粗大Mg酸化物の密度は、4.2個/μmであり、Mg酸化物占有率は、70%であった。
また、実施例5のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、45%であった。
(実施例6)
実施例6は、Mg6.8質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる金属粉末を用いた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg6.8質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを5g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート2.3質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.8質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。得られた鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.7質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例6のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例6のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg6.8質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例6のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.14%であった。
また、実施例6のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率89GPa、引張強さ439MPa、破断伸び5.2%であった。
また、実施例6のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、13.5%であり、粗大Mg酸化物の密度は、4.5個/μmであり、Mg酸化物占有率は、65%であった。
また、実施例6のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、45%であった。
(実施例7)
実施例7は、Mg1.0質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる金属粉末を用いた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg1.0質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを5g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート2.3質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.6質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。得られた鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.5質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例7のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例7のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg1.0質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例7のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.01%であった。
また、実施例7のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率93GPa、引張強さ390MPa、破断伸び9.5%であった。
また、実施例7のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、5.1%であり、粗大Mg酸化物の密度は、0.7個/μmであり、Mg酸化物占有率は、8%であった。
また、実施例7のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、15%であった。
(実施例8)
実施例8は、酸処理の条件を変えた(酸処理条件を実施例1と同様にした)以外は、実施例2と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。実施例8の炭素繊維の酸処理では、硫酸150gと硝酸50gを混合して酸液を調合し、その中に炭素繊維を2g添加して、70℃に加熱したウォーターバススターラー(アズワン製EWS100RD)内にて温浴し、100rpmで60分間撹拌した。
その後、実施例2と同様に炭素繊維を洗浄・乾燥し、カルボキシル基が表面に形成された炭素繊維を得た。酸処理後の炭素繊維のId/Igを確認したところ、0.47であった。
次に、実施例2と同様の手順で、炭素繊維吸着処理及び加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量を確認したところ、2.9質量%であった。また、実施例1と同様に鱗片粉の表面Mg量を測定した結果、表面Mg量は15.1質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例2と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例8のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例8のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例8のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.09%であった。
また、実施例8のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率90GPa、引張強さ399MPa、破断伸び5.9%であった。
また、実施例8のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、11.2%であり粗大Mg酸化物の密度は、3.8個/μmであり、Mg酸化物占有率は、53%であった。
また、実施例8のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、35%であった。
(実施例9)
実施例9は、鱗片化工程におけるチタネート添加量と、炭素繊維スラリー形成工程における炭素繊維(CNF)添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを6g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート2.8質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.5質量%の鱗片粉を得た。
また、炭素繊維の酸処理を行うため、硫酸150gと硝酸50gを混合して酸液を調合し、その中に炭素繊維を4.5g添加して、70℃に加熱したウォーターバススターラー(アズワン製EWS100RD)内にて温浴し、100rpmで60分間撹拌した。
その後、純水およびエタノールで炭素繊維を洗浄し、吸引濾過して80℃で乾燥し、カルボキシル基が表面に形成された炭素繊維を得た。酸処理後の炭素繊維のId/Igを確認したところ、0.47であった。
次に、ラウリル硫酸ナトリウム(昭和化学製濃度99%以上)、純水および超音波処理装置(ブランソン製超音波ホモジナイザーDCX S20:1.25)を用意した。純水200mlにラウリル硫酸ナトリウムを2g添加した溶液に、前述した酸処理後の炭素繊維を4.5g添加して、超音波処理を行い、炭素繊維スラリーを得た。上記超音波処理の条件は、720Wで10分→360Wで2時間→720Wで10分とした。
次に、実施例1と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は4.3質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.4質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例9のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例9のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は4.3質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例9のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.02%であった。
また、実施例9のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率110GPa、引張強さ477MPa、破断伸び5.0%であった。
また、実施例9のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、9.6%であり、粗大Mg酸化物の密度は、1.9個/μmであり、Mg酸化物占有率は、31%であった。
また、実施例9のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、20%であった。
(実施例10)
実施例10は、鱗片化処理におけるチタネート添加量を変えた以外は、実施例3と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを7g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート3.2質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例3と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.3質量%の鱗片粉を得た。
次に、実施例3と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、1.9質量%であり、表面Mg量は10.9質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例10のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例10のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例10のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.01%であった。
また、実施例10のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率93GPa、引張強さ380MPa、破断伸び9.0%であった。
また、実施例10のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、5.6%であり、粗大Mg酸化物の密度は、0.9個/μmであり、Mg酸化物占有率は、12%であった。
また、実施例10のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、15%であった。
(実施例11)
実施例11は、Mg4.5質量%−Mn0.9質量%−Cr0.35質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる金属粉末を用いた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg4.5質量%−Mn0.9質量%−Cr0.35質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを5g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート2.3質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.7質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は2.0質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.6質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例11のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例11のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.9質量%、Cr0.35質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は2.0質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例11のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.02%であった。
また、実施例11のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率92GPa、引張強さ446MPa、破断伸び5.6%であった。
また、実施例11のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、9.8%であり、粗大Mg酸化物の密度は、2.3個/μmであり、Mg酸化物占有率は、40%であった。
また、実施例11のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、30%であった。
(実施例12)
実施例12は、鱗片化処理におけるチタネート添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを9g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート4.1質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.3質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.2質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた実施例12のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。実施例12のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、実施例12のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.18%であった。
また、実施例12のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率82GPa、引張強さ362MPa、破断伸び6.1%であった。
また、実施例12のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、4.1%であり、粗大Mg酸化物の密度は、0.2個/μmであり、Mg酸化物占有率は、20%であった。
また、実施例12のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、55%であった。
(比較例1)
実施例1と同様の金属粉末および炭素繊維を用いたが、以下に示すように、金属粉末の鱗片化処理条件および加熱処理条件を変更した。
比較例1では、金属粉末の鱗片化処理の際のチャンバー内温度は9℃であった。また、チャンバー雰囲気の室温は20℃、湿度は50%であり、露点温度は9.3℃であった。すなわち、チャンバー内の温度が露点以下の条件で鱗片化処理を行った。
鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、実施例1と同様の手順で乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が2.5質量%の鱗片粉を得た。
次に、実施例1と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させた。また、得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を、真空中(初期炉内酸素濃度79ppm、最終炉内酸素濃度79ppm)にて450℃で2時間加熱し、鱗片粉からポリビニルアルコールを除去した。その後の鱗片粉の炭素量は2.0質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は3.6質量%であった。また、鱗片粉の表面Mg量は20.5質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例1のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例1のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は2.0質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、比較例1のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.3%であった。
また、得られた比較例1のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率74GPa、引張強さ323MPa、破断伸び3.4%であった。
また、比較例1のMg酸化物の面積率は、16%であり、粗大Mg酸化物の密度は、10個/μmであり、Mg酸化物占有率は、94%であった。
また、比較例1のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、60%であった。
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対して使用する金属粉末を変更した。
比較例2の金属粉末としては、Mg0.02質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用いた。なお、基地組織を構成する金属粉末の成分は、ICP発光分析法(島津製作所製 ICPS−8100)で確認した。
上記アトマイズ粉の鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、実施例1と同様の手順で乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.7質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.6質量%であり、表面Mg量は0.06質量%であった。
実施例1と同一の手順で得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例2のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例2のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg0.02質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、比較例2のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.5%であった。
また、得られたアルミニウム基複合材について、実施例1と同様に機械的特性を評価するために、図5に示す試験片の加工を行ったところ、強度が弱く、加工を行うことができなかった。このため、機械的特性および空隙発生率を評価することができなかった。このように試験片を得ることができなかったため、比較例2のMg酸化物の面積率は、押出加工後のアルミニウム基複合材そのものの断面の任意の3視野で、実施例1と同様の手順でMg酸化物の面積率を計算し、3視野の平均値をMg酸化物の面積率とした。この結果、比較例2のMg酸化物の面積率は、0.04%であった。
また、同様に、上記断面において、実施例1と同様の手順で粗大Mg酸化物の発生密度を確認したころ、粗大Mg酸化物の密度は、0個/μmであり、Mg酸化物占有率は、2%であった。
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対して使用する金属粉末を変更した。
比較例3の金属粉末としては、Mg7.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用いた。
上記アトマイズ粉の鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、実施例1と同様の手順で乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.8質量%の鱗片粉を得た。
実施例1と同一の手順で得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例3のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例3のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg7.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、比較例3のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.25%であった。
また、得られた比較例3のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率75GPa、引張強さ450MPa、破断伸び4.5%であった。
また、比較例3のMg酸化物の面積率は、17%であり、粗大Mg酸化物の密度は、8.5個/μmであり、Mg酸化物占有率は、62%であった。
また、比較例3のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、40%であった。
(比較例4)
比較例4は、炭素繊維スラリー形成工程における炭素繊維(CNF)添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。まず、実施例1と同一の手順で酸処理および鱗片化処理行った。
ラウリル硫酸ナトリウム(昭和化学製濃度99%以上)、純水および超音波処理装置(ブランソン製超音波ホモジナイザーDCX S20:1.25)を用意し、純水200mlにラウリル硫酸ナトリウムを2g添加した溶液に、酸処理後の炭素繊維を0.6g添加して、超音波処理を行い、炭素繊維スラリーを得た。上記超音波処理の条件は、720Wで10分→360Wで2時間→720Wで10分とした。
次に、実施例1と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は0.5質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.6質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例4のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例4のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は0.5質量%であった。また、比較例4のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.02%であった。
また、比較例4のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率71GPa、引張強さ345MPa、破断伸び15.5%であった。
また、比較例4のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、10.5%であり、粗大Mg酸化物の密度は、2.7個/μmであり、Mg酸化物占有率は、43%であった。
また、比較例4のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、31%であった。
(比較例5)
比較例5は、炭素繊維スラリー形成工程における炭素繊維(CNF)添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。まず、実施例1と同一の手順で酸処理および鱗片化処理行った。
ラウリル硫酸ナトリウム(昭和化学製濃度99%以上)、純水および超音波処理装置(ブランソン製超音波ホモジナイザーDCX S20:1.25)を用意し、純水200mlにラウリル硫酸ナトリウムを2g添加した溶液に、酸処理後の炭素繊維を6.0g添加して、超音波処理を行い、炭素繊維スラリーを得た。上記超音波処理の条件は、720Wで10分→360Wで2時間→720Wで10分とした。
次に、実施例1と同様の手順で、鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は5.7質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、2.6質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例5のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例5のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は5.7質量%であった。また、比較例5のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.02%であった。
また、比較例5のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率116GPa、引張強さ486MPa、破断伸び2.9%であった。
また、比較例5のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、10.2%であり、粗大Mg酸化物の密度は、2.6個/μmであり、Mg酸化物占有率は、29%であった。
また、比較例5のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、21%であった。
(比較例6)
比較例6は、実施例1に対して使用する金属粉末を変更した。
比較例6の金属粉末としては、Mg0.4質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用いた。
上記アトマイズ粉の鱗片化工程の後、懸濁液を取り出し、実施例1と同様の手順で乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が1.5質量%の鱗片粉を得た。
実施例1と同一の手順で得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例6のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例6のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg0.4質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、比較例6のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.03%であった。
また、得られた比較例6のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率91GPa、引張強さ330MPa、破断伸び4.5%であった。
また、比較例6のMg酸化物の面積率は、3.8%であり、粗大Mg酸化物の密度は、0.2個/μmであり、Mg酸化物占有率は、19%であった。
また、比較例6のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、20%であった。
(比較例7)
比較例7は、鱗片化処理におけるチタネート添加量を変えた以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維が分散されたアルミニウム基複合材を作製した。
金属粉末として、Mg4.5質量%−Mn0.5質量%−Cr0.1質量%−残部Alおよび不可避不純物からなる平均粒径(D50)が約10μmのアトマイズ粉を用い、当該アトマイズ粉を鱗片化処理した。エタノール300mlにチタネートを2g添加した後、上記アトマイズ粉220g(アトマイズ粉100質量部に対し、チタネート0.9質量部)を添加し、鋼球(SUJ2、直径10mm、総量で3.25kg)を使用したボールミルにて366rpmで5時間処理した。なお、上記以外の鱗片化処理条件は、実施例1と同様の条件で行った。
鱗片化処理工程の後、懸濁液を取り出し、大気中で85℃、2時間乾燥し、厚さ約1〜4μm、平均直径(個数頻度でのD50)が約24μm、比表面積約4.5m/g、酸素濃度が2.7質量%の鱗片粉を得た。
また、実施例1と同様の手順で、炭素繊維の酸処理を行い、その後鱗片粉に炭素繊維を吸着させ、加熱処理を行った。その後の鱗片粉の炭素量は1.9質量%であった。また、鱗片粉の酸素量は、3.9質量%であり、表面Mg量は13.4質量%であった。
実施例1と同一の手順で得られた炭素繊維が吸着した鱗片粉を用い、実施例1と同様の条件で圧粉体成形、焼結および押出成形を行った。押出成形で得られた比較例7のアルミニウム基複合材について、実施例1と同様にその基地組織の成分、炭素量の測定を行った。比較例7のアルミニウム基複合材の基地組織の成分は、Mg4.5質量%、Mn0.5質量%、Cr0.1質量%、残部Alおよび不可避不純物であり、アルミニウム基複合材の炭素量は1.9質量%であった。また、実施例1と同様に確認した、比較例7のアルミニウム基複合材の空隙率は、0.35%であった。
また、比較例7のアルミニウム基複合材の機械的特性は、ヤング率74GPa、引張強さ338MPa、破断伸び4.0%であった。
また、比較例7のアルミニウム基複合材のMg酸化物の面積率は、18.8%であり、粗大Mg酸化物の密度は、12.5個/μmであり、Mg酸化物占有率は、97%であった。
また、比較例7のアルミニウム基複合材の空隙発生率は、65%であった。
以上の結果を表1〜表3に示す。
Figure 2019244999
Figure 2019244999
Figure 2019244999
本発明に係る実施例1〜11によれば、金属粉末(鱗片粉)が含有するMg量および金属粉末の酸素量を適切に制御し、アルミニウム基複合材に含まれるMg酸化物の面積率を4〜15%としたので、いずれの実施例においても、ヤング率が80GPa以上、引張強度が350MPa、伸びが5%以上となった。このように、本実施例の元素組成からなる基地組織を有するアルミニウム基複合材の場合に、引張強度、伸びおよびヤング率のいずれもが一定以上の値を示す優れた機械的特性を有するアルミニウム基複合材を実現できることが判った。なお、上記したMgによるAl酸化物の還元効果および金属粉末の酸化防止効果の説明から理解できるように、Mg酸化物の面積率の適正化は、基地組織を構成するアルミニウム合金が上記実施例の元素組成の場合に限定されず、Mg:0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなる場合にも有効に作用する。
一方で、比較例1は、鱗片化処理を露点以下の温度で行い、また、加熱処理の最終炉内酸素濃度0.1ppb未満の低酸素濃度の要件を満たさないため、Mg酸化物の生成量が増加した。また、比較例2、6は、Mg量が少ないため、Mg酸化物が十分に生成されなかった。また、比較例3は、金属粉末のMg量が高いため、最終製品でのMg酸化物の生成量が増加した。また、比較例4は、炭素繊維の添加量が少なすぎるため、最終製品での炭素量が少なくなった。また、比較例5は、炭素繊維の添加量が多すぎるため、最終製品での炭素量が多くなった。また、比較例7は、チタネートの添加量が少ないため、鱗片粉末の酸素濃度が上昇し、鱗片粉表面にAl酸化物が生成したため、Mg酸化物の生成量が増加した。このように、Mg酸化物の面積率が本発明の範囲外となる比較例1〜3、6、7では、所望の機械的特性を有するアルミニウム基複合材を得ることができなかった。同様に、炭素繊維が本発明の範囲外となる比較例4、5では、所望の機械的特性を有するアルミニウム基複合材を得ることができなかった。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………アルミニウム基複合材
2………成形体
3………基地組織
3a………基地組織前駆体
5………炭素繊維
7a………Mg
7b………Mg酸化物
9………Al酸化物層
10………押出用金型
11………試験片

Claims (6)

  1. 強化材である炭素繊維を基地組織中に含有するアルミニウム基複合材であって、
    前記炭素繊維を1〜5質量%有し、
    前記基地組織は、Mg0.5〜7質量%、残部Alおよび不可避不純物からなり、
    前記基地組織中に、Mgを含有する酸化物を有し、
    任意の断面において、前記基地組織を構成する結晶粒界および前記基地組織と前記炭素繊維との界面に存在する前記Mgを含有する酸化物の面積率が4〜15%であることを特徴とするアルミニウム基複合材。
  2. 前記炭素繊維がカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム基複合材。
  3. 任意の断面において、前記基地組織を構成する結晶粒界および前記基地組織と前記炭素繊維との界面に存在する円相当径が100nm以上の前記Mgを含有する酸化物が、5個/μm以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材。
  4. 空隙率が0.2%以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材。
  5. JIS Z2241に準拠し、試験片形状が、
    全長 L=67mm、
    標点距離 L=25mm、
    平行部長さ L=31mm、
    径 d=5mm±0.02mm、
    肩部半径 R=3mm、
    掴み部長さ L=15mm、
    掴み部径 d=7.8mm
    である試験片を使用し、クロスヘッド速度1mm/minで引張試験を行った破断後の引張方向に沿う試験片の断面において、破断面から20〜100μmの範囲において任意に設定した複数視野に存在する前記基地組織と前記炭素繊維との界面の周長をL1、当該界面に存在する空隙の外周の周長をL2としたとき、L2/L1が0.3以上の炭素繊維の割合が50%以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材。
  6. 任意の断面において、任意に選択した炭素繊維の円相当径をdとしたとき、当該炭素繊維の外周縁から0.1dの範囲に存在するMgを含む酸化物の面積率が80%以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材。
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