以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳しく説明する。なお、本開示の実施形態は、電子たばこ,加熱式たばこ及びネブライザーを含むが、これらに限定されない。本開示の実施形態は、ユーザが吸引するエアロゾルを生成するための様々なエアロゾル生成装置を含み得る。
図1Aは、本開示の一実施形態に係るエアロゾル生成装置100Aの構成の概略的なブロック図である。図1Aは、エアロゾル生成装置100Aが備える各コンポーネントを概略的且つ概念的に示すものであり、各コンポーネント及びエアロゾル生成装置100Aの厳密な配置、形状、寸法、位置関係等を示すものではないことに留意されたい。
図1Aに示されるように、エアロゾル生成装置100Aは、第1の部材102(以下、「本体102」と呼ぶ)及び第2の部材104A(以下、「カートリッジ104A」と呼ぶ)を備える。図示されるように、一例として、本体102は、制御部106、通知部108、電源110、センサ112及びメモリ114を含んでもよい。エアロゾル生成装置100Aは、流量センサ、圧力センサ、電圧センサ、電気抵抗センサ、温度センサなどのセンサを有してもよく、本開示においてはこれらをまとめて「センサ112」とも呼ぶ。本体102はまた、後述する回路134を含んでもよい。一例として、カートリッジ104Aは、貯留部116A、霧化部118A、空気取込流路120、エアロゾル流路121、吸口部122、保持部130及び負荷132を含んでもよい。本体102内に含まれるコンポーネントの一部がカートリッジ104A内に含まれてもよい。カートリッジ104A内に含まれるコンポーネントの一部が本体102内に含まれてもよい。カートリッジ104Aは、本体102に対して着脱可能に構成されてもよい。あるいは、本体102及びカートリッジ104A内に含まれるすべてのコンポーネントが、本体102及びカートリッジ104Aに代えて、同一の筐体内に含まれてもよい。
貯留部116Aは、エアロゾル源を収容するタンクとして構成されてもよい。この場合、エアロゾル源は、例えば、グリセリンやプロピレングリコールといった多価アルコール、水などの液体である。エアロゾル生成装置100Aが電子たばこである場合、貯留部116A内のエアロゾル源は、加熱することによって香喫味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物を含んでいてもよい。保持部130は、エアロゾル源を保持する。例えば、保持部130は、繊維状又は多孔質性の素材から構成され、繊維間の隙間や多孔質材料の細孔に液体としてのエアロゾル源を保持する。前述した繊維状又は多孔質性の素材には、例えばコットンやガラス繊維、またはたばこ原料などを用いることができる。エアロゾル生成装置100Aがネブライザー等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源はまた、患者が吸入するための薬剤を含んでもよい。別の例として、貯留部116Aは、消費されたエアロゾル源を補充することができる構成を有してもよい。あるいは、貯留部116Aは、エアロゾル源が消費された際に貯留部116A自体を交換することができるように構成されてもよい。また、エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体でも良い。エアロゾル源が固体の場合の貯留部116Aは、空洞の容器であっても良い。
霧化部118Aは、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成するように構成される。センサ112によって吸引動作が検知されると、霧化部118Aはエアロゾルを生成する。例えば、吸引動作は、流量センサや流速センサによって検知されてもよい。この場合は、ユーザが吸口部122を咥えて吸引することで生じる空気取込流路120内の空気の流量や流速の絶対値や変化量が既定の条件を満たせば、流量センサや流速センサは吸引動作を検知してもよい。また例えば、吸引動作は、圧力センサによって検知されてもよい。この場合は、ユーザが吸口部112を咥えて吸引することで空気取込流路120内が負圧になるなどの既定の条件が満たされれば、圧力センサは吸引動作を検知してもよい。なお、流量センサ、流速センサ及び圧力センサはそれぞれ空気取込流路120内の流量、流速及び圧力を出力するのみで、その出力に基づいて制御部106が吸引動作を検知してもよい。
また例えば、押しボタンやタッチパネル、または加速度センサなどを用いることで、吸引動作を検知することなく、または吸引動作の検知を待たずに、霧化部118Aはエアロゾルを生成してもよく、または霧化部118Aは電源110からの給電を受けてもよい。このような構成とすることで、例えば霧化部118Aを構成する保持部130や負荷132、またはエアロゾル源そのものの熱容量が大きい場合であっても、実際にユーザがエアロゾルを吸引するタイミングにおいて、霧化部118Aは適切にエアロゾルを生成できる。なお、センサ112は押しボタンやタッチパネルに対する操作を検知するセンサや、加速度センサを含んでいてもよい。
例えば、保持部130は、貯留部116Aと霧化部118Aとを連結するように設けられる。この場合、保持部130の一部は貯留部116Aの内部に通じ、エアロゾル源と接触する。保持部130の他の一部は霧化部118Aへ延びる。なお、霧化部118Aへ延びた保持部130の他の一部は、霧化部118Aに収められてもよく、あるいは、霧化部118Aを通って再び貯留部116Aの内部に通じてもよい。エアロゾル源は、保持部130の毛細管効果によって貯留部116Aから霧化部118Aへと運ばれる。一例として、霧化部118Aは、電源110に電気的に接続された負荷132を含むヒータを備える。ヒータは、保持部130と接触又は近接するように配置される。吸引動作が検知されると、制御部106は、霧化部118Aのヒータ又は当該ヒータへの給電を制御し、保持部130を通じて運ばれたエアロゾル源を加熱することによって当該エアロゾル源を霧化する。霧化部118Aの別の例は、エアロゾル源を超音波振動によって霧化する超音波式霧化器であってもよい。霧化部118Aには空気取込流路120が接続され、空気取込流路120はエアロゾル生成装置100Aの外部へ通じている。霧化部118Aにおいて生成されたエアロゾルは、空気取込流路120を介して取り込まれた空気と混合される。エアロゾルと空気の混合流体は、矢印124で示されるように、エアロゾル流路121へと送り出される。エアロゾル流路121は、霧化部118Aにおいて生成されたエアロゾルと空気との混合流体を吸口部122まで輸送するための管状構造を有する。
吸口部122は、エアロゾル流路121の終端に位置し、エアロゾル流路121をエアロゾル生成装置100Aの外部に対して開放するように構成される。ユーザは、吸口部122を咥えて吸引することにより、エアロゾルを含んだ空気を口腔内へ取り込む。
通知部108は、LEDなどの発光素子、ディスプレイ、スピーカ、バイブレータなどを含んでもよい。通知部108は、必要に応じて、発光、表示、発声、振動などによって、ユーザに対して何らかの通知を行うように構成される。
電源110は、通知部108、センサ112、メモリ114、負荷132、回路134などのエアロゾル生成装置100Aの各コンポーネントに電力を供給する。電源110は、エアロゾル生成装置100Aの所定のポート(図示せず)を介して外部電源に接続することにより充電することができてもよい。電源110のみを本体102又はエアロゾル生成装置100Aから取り外すことができてもよく、新しい電源110と交換することができてもよい。また、本体102全体を新しい本体102と交換することによって電源110を新しい電源110と交換することができてもよい。
センサ112は、回路134の全体又は特定の部分に印加される電圧の値、負荷132の抵抗値に関する値又は温度に関する値などを取得するために用いられる1つ又は複数のセンサを含んでもよい。センサ112は回路134に組み込まれてもよい。センサ112の機能が制御部106に組み込まれてもよい。センサ112はまた、空気取込流路120及び/又はエアロゾル流路121内の圧力の変動を検知する圧力センサ又は流量を検知する流量センサを含んでもよい。センサ112はまた、貯留部116Aなどのコンポーネントの重量を検知する重量センサを含んでもよい。センサ112はまた、エアロゾル生成装置100Aを用いたユーザによるパフの回数を計数するように構成されてもよい。センサ112はまた、霧化部118Aへの通電時間を積算するように構成されてもよい。センサ112はまた、貯留部116A内の液面の高さを検知するように構成されてもよい。制御部106及びセンサ112はまた、電源110のSOC(State of Charge,充電状態)、電流積算値、電圧などを求める又は検知するように構成されてもよい。SOCは、電流積算法(クーロン・カウンティング法)やSOC−OCV(Open Circuit Voltage,開回路電圧)法等によって求められてもよい。センサ112はまた、ユーザが操作可能な操作ボタンなどであってもよい。
制御部106は、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータとして構成された電子回路モジュールであってもよい。制御部106は、メモリ114に格納されたコンピュータ実行可能命令に従ってエアロゾル生成装置100Aの動作を制御するように構成されてもよい。メモリ114は、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの記憶媒体である。メモリ114には、上記のようなコンピュータ実行可能命令のほか、エアロゾル生成装置100Aの制御に必要な設定データ等が格納されてもよい。例えば、メモリ114は、通知部108の制御プログラム(発光、発声、振動等の態様等)、霧化部118Aの制御プログラム、センサ112により取得及び/又は検知された値、霧化部118Aの加熱履歴等の様々なデータを格納してもよい。制御部106は、必要に応じてメモリ114からデータを読み出してエアロゾル生成装置100Aの制御に利用し、必要に応じてデータをメモリ114に格納する。
図1Bは、本開示の一実施形態に係るエアロゾル生成装置100Bの構成の概略的なブロック図である。
図示されるように、エアロゾル生成装置100Bは、図1Aのエアロゾル生成装置100Aと類似した構成を有する。但し、第2の部材104B(以下、「エアロゾル発生物品104B」又は「スティック104B」と呼ぶ)の構成は第1の部材104Aの構成とは異なっている。一例として、エアロゾル発生物品104Bは、エアロゾル基材116B、霧化部118B、空気取込流路120、エアロゾル流路121、吸口部122を含んでもよい。本体102内に含まれるコンポーネントの一部がエアロゾル発生物品104B内に含まれてもよい。エアロゾル発生物品104B内に含まれるコンポーネントの一部が本体102内に含まれてもよい。エアロゾル発生物品104Bは、本体102に対して挿抜可能に構成されてもよい。あるいは、本体102及びエアロゾル発生物品104B内に含まれるすべてのコンポーネントが、本体102及びエアロゾル発生物品104Bに代えて、同一の筐体内に含まれてもよい。
エアロゾル基材116Bは、エアロゾル源を担持する固体として構成されてもよい。図1Aの貯留部116Aの場合と同様に、エアロゾル源は、例えば、グリセリンやプロピレングリコールといった多価アルコール、水などの液体であってもよい。エアロゾル基材116B内のエアロゾル源は、加熱することによって香喫味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物を含んでいてもよい。エアロゾル生成装置100Aがネブライザー等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源はまた、患者が吸入するための薬剤を含んでもよい。エアロゾル基材116Bは、エアロゾル源が消費された際にエアロゾル基材116B自体を交換することができるように構成されてもよい。エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体でも良い。
霧化部118Bは、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成するように構成される。センサ112によって吸引動作が検知されると、霧化部118Bはエアロゾルを生成する。霧化部118Bは、電源110に電気的に接続された負荷を含むヒータ(図示せず)を備える。吸引動作が検知されると、制御部106は、霧化部118Bのヒータ又は当該ヒータへの給電を制御し、エアロゾル基材116B内に担持されたエアロゾル源を加熱することによって当該エアロゾル源を霧化する。霧化部118Bの別の例は、エアロゾル源を超音波振動によって霧化する超音波式霧化器であってもよい。霧化部118Bには空気取込流路120が接続され、空気取込流路120はエアロゾル生成装置100Bの外部へ通じている。霧化部118Bにおいて生成されたエアロゾルは、空気取込流路120を介して取り込まれた空気と混合される。エアロゾルと空気の混合流体は、矢印124で示されるように、エアロゾル流路121へと送り出される。エアロゾル流路121は、霧化部118Bにおいて生成されたエアロゾルと空気との混合流体を吸口部122まで輸送するための管状構造を有する。なお、エアロゾル生成装置100Bにおいては、エアロゾル発生物品104Bは、その内部に位置する又はその内部に挿入される霧化部118Bによって、その内部から加熱されるよう構成されている。これに代えて、エアロゾル発生物品104Bは、自身を包囲又は収納するように構成した霧化部118Bによって、その外部から加熱されるよう構成されていてもよい。
制御部106は、本開示の実施形態に係るエアロゾル生成装置100A及び100B(以下、まとめて「エアロゾル生成装置100」とも呼ぶ)を様々な方法で制御するように構成される。
エアロゾル生成装置においてエアロゾル源が不足しているときにユーザが吸引を行うと、ユーザに対して十分なエアロゾルを供給できない。加えて、電子たばこや加熱式たばこの場合、意図しない香喫味を有するエアロゾルが放出され得る(このような現象を「意図しない挙動」とも呼ぶ)。本願発明者らは、エアロゾル源が枯渇又は不足するときに適切な制御を実行するエアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを発明した。以下では、主として、エアロゾル生成装置が図1Aに示す構成を有する場合を想定して、本開示の各実施形態について詳しく説明する。但し、必要に応じて、エアロゾル生成装置が図1Bに示す構成を有する場合についても併せて説明する。エアロゾル生成装置が図1A及び図1Bの構成以外の様々な構成を有する場合にも本開示の実施形態を適用できることは当業者にとって明らかであろう。
<第1の実施形態>
図2は、本開示の第1の実施形態による、エアロゾル生成装置100Aの一部に関する例示的な回路構成を示す図である。
図2に示す回路200は、電源110、制御部106、センサ112A乃至D(以下、まとめて「センサ112」とも呼ぶ)、負荷132(以下、「ヒータ抵抗」とも呼ぶ)、第1回路202、第2回路204、第1電界効果トランジスタ(FET,Field Emission Transistor)206を含むスイッチQ1、変換部208、第2FET210を含むスイッチQ2、抵抗212(以下、「シャント抵抗」とも呼ぶ)を備える。なお、センサ112は、制御部106や変換部208などの他の構成要素に内蔵されていてもよい。例えばPTC(Positive Temperature Coefficient,正の温度係数特性)ヒータやNTC(Negative Temperature Coefficient,負の温度係数特性)ヒータを用いることで、負荷132の電気抵抗値は温度に応じて変化する。シャント抵抗212は、負荷132と直列に接続され、既知の電気抵抗値を有する。シャント抵抗212の電気抵抗値は温度に対して実質的に不変であってもよい。シャント抵抗212は負荷132より大きな電気抵抗値を有する。実施形態に応じて、センサ112C、112Dは省略されてもよい。FETだけでなく、iGBT、コンタクタなどの様々な素子をスイッチQ1及びQ2として用いることができることは当業者にとって明らかであろう。
変換部208は、例えばスイッチング・コンバータであり、FET214、ダイオード216、インダクタンス218及びキャパシタ220を含み得る。変換部208が電源110の出力電圧を変換して、変換された出力電圧が回路全体に印加されるように、制御部106は変換部208を制御してもよい。また、図2に示した降圧型のスイッチング・コンバータに代えて、昇圧型のスイッチング・コンバータや昇降圧型のスイッチング・コンバータ、又はLDO(Linear DropOut)レギュレータなどを用いてもよい。なお、変換部208は必須のコンポーネントではなく、省略することも可能である。さらに、制御部106とは別体の不図示の制御部が、変換部208を制御するように構成されていてもよい。この不図示の制御部は、変換部208に内蔵されていてもよい。
図1Aに示される回路134は、電源110と負荷132とを電気的に接続し、第1回路202及び第2回路204を含み得る。第1回路202及び第2回路204は、電源110及び負荷132に対して並列接続される。第1回路202はスイッチQ1を含み得る。第2回路204はスイッチQ2及び抵抗212(及び、オプションとして、センサ112D)を含み得る。第1回路202は第2回路204よりも小さい抵抗値を有してもよい。この例において、センサ112B及び112Dは電圧センサであり、それぞれ、負荷132及び抵抗212の両端の電圧値を検知するように構成される。しかし、センサ112の構成はこれに限定されない。例えば、センサ112は既知抵抗を用いた又はホール素子を用いた電流センサであってもよく、負荷132及び/又は抵抗212を流れる電流の値を検知してもよい。
図2において点線矢印で示すように、制御部106は、スイッチQ1、スイッチQ2等を制御することができ、センサ112により検知された値を取得することができる。制御部106は、スイッチQ1をオフ状態からオン状態に切り替えることにより第1回路202を機能させ、スイッチQ2をオフ状態からオン状態に切り替えることにより第2回路204を機能させるように構成されてもよい。制御部106は、スイッチQ1及びQ2を交互に切り替えることにより、第1回路202及び第2回路204を交互に機能させるように構成されてもよい。
第1回路202はエアロゾル源の霧化に用いられる。スイッチQ1がオン状態に切り替えられて第1回路202が機能するとき、ヒータ(すなわち、ヒータ内の負荷132)に電力が供給され、負荷132は加熱される。負荷132の加熱により、霧化部118A内の保持部130に保持されているエアロゾル源(図1Bのエアロゾル生成装置100Bの場合、エアロゾル基材116Bに担持されたエアロゾル源)が霧化されてエアロゾルが生成される。
第2回路204は、負荷132に印加される電圧の値、負荷132の抵抗値に関連する値、負荷132の温度に関連する値、抵抗212に印加される電圧の値等を取得するために用いられる。一例として、図2に示すように、センサ112B及び112Dが電圧センサである場合を考える。スイッチQ2がオンであり第2回路204が機能しているとき、電流はスイッチQ2、抵抗212及び負荷132を流れる。センサ112B及び112Dにより、それぞれ、負荷132に印加される電圧の値及び/又は抵抗212に印加される電圧の値が得られる。また、センサ112Dにより取得された抵抗212に印加される電圧の値と、抵抗212の既知の抵抗値Rshuntとを用いて、負荷132を流れる電流の値を求めることができる。変換部208の出力電圧Voutと当該電流値とに基づいて、抵抗212及び負荷132の抵抗値の合計値を求めることができるので、当該合計値から既知の抵抗値Rshuntを差し引くことにより、負荷132の抵抗値RHTRを求めることができる。負荷132が温度に応じて抵抗値が変わる正又は負の温度係数特性を有している場合、予め知られている負荷132の抵抗値と温度との間の関係と、上述のようにして求められたと負荷132の抵抗値RHTRとに基づいて、負荷132の温度を推定することができる。負荷132を流れる電流の値に代えて、抵抗212を流れる電流の値を用いても負荷132の抵抗値や温度を推定できることが当業者に理解されよう。この例における負荷132の抵抗値に関連する値は、負荷132の電圧値、電流値等を含み得る。センサ112B及び112Dの具体例は電圧センサに限定されず、電流センサ(例えば、ホール素子)などの他の素子を含み得る。
センサ112Aは、電源110の放電時又は無負荷時における出力電圧を検知する。センサ112Cは、変換部208の出力電圧を検知する。あるいは、変換部208の出力電圧は、予め定められた目標電圧であってもよい。これらの電圧は、回路全体に印加される電圧である。
負荷132の温度がTHTRであるときの負荷132の抵抗値RHTRは、以下のように表すことができる。
RHTR(THTR)=(VHTR×Rshunt)/(VBatt−VHTR)
ここで、VBattは回路全体に印加される電圧である。変換部208を用いない場合、VBattは電源110の出力電圧である。変換部208を用いる場合、VBattは変換部208の目標電圧に該当する。VHTRはヒータに印加される電圧である。VHT Rに代えて、シャント抵抗212に印加される電圧を用いてもよい。
図3は、貯留部116A(又は、エアロゾル基材116B)内のエアロゾル源が十分にあるとき及びエアロゾル源が枯渇しているときのそれぞれについて、スイッチQ1がオフにされて負荷132(ヒータ)への給電が停止した後の負荷132の冷却過程を概略的に示す。横軸は時間を示し、縦軸は負荷132の温度を示す。
曲線302は、エアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。エアロゾル源が十分にある限り、負荷132の温度は、電源110から負荷132に給電を継続しても、ある温度(以下、「正常時に到達するエアロゾル源の最高温度」や「エアロゾル生成温度」とも呼ぶ)付近で収束する。つまり、負荷132への給電が停止されたときの負荷132の温度は、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度である。これは、負荷132およびエアロゾル源の昇温に用いられていた熱エネルギーが、エアロゾル源の蒸発(相転移)に用いられるために生じる現象である。エアロゾル源が単一溶媒から構成される場合、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度は、当該溶媒の沸点と一致する。一方、エアロゾル源が混合溶媒から構成される場合、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度は、混合溶媒を構成する各種溶媒の組成とそのモル比に応じて変化する。混合溶媒における正常時に到達するエアロゾル源の最高温度は、実験によって求めてもよいし、ラウールの法則などを用いて解析的に求めてもよい。一例として、図3に示すように、スイッチQ1がオフにされて負荷132への給電が停止されたときの負荷132の温度は約200℃である。負荷132の温度は曲線302で示すように時間の経過とともに低下し、室温(ここでは、25℃)に達する。
曲線304は、エアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。エアロゾル源が枯渇しているので、負荷132への給電が停止されたとき、負荷132の温度がエアロゾル生成温度よりも高いため、負荷132は過熱状態にある。一例として、図3に示すように、負荷132の温度は350℃に達し得る。給電が停止すると、負荷132の温度は曲線304で示すように時間の経過とともに低下し、やがて室温に達する。
RHTR(t=0)は、負荷132への給電が停止されたときの負荷132の電気抵抗値を示す。RHTR(THTR=R.T.)は、負荷132の温度が室温に達したときの負荷132の電気抵抗値を示す。
図3に示すように、エアロゾル源が枯渇しているときに負荷132の温度が室温まで低下するのに要する時間は、エアロゾル源が十分にあるときに負荷132の温度が室温まで低下するのに要する時間よりも長い。負荷132は主に空冷効果によって冷却されるところ、エアロゾル源が枯渇しているときは、エアロゾル源が十分にあるときに比べてスイッチQ1がオフにされて負荷132への給電が停止されたときの負荷132の温度が高いためである。なお、エアロゾル源が十分にあるとき、負荷132は、負荷132より低温なエアロゾル源や貯留部116Aから新たに供給されるエアロゾル源によっても冷却され得るため、エアロゾル源が枯渇しているときと十分にあるときで、負荷132の温度が室温まで低下するのに要する時間に違いが生じやすい。
図4は、本開示の一実施形態による、負荷132の冷却過程を監視し、エアロゾル源が枯渇しているか否かを判定するための処理のフローチャートである。ここでは、制御部106がすべてのステップを実行するものとして説明を行う。しかし、一部のステップがエアロゾル生成装置100の別のコンポーネントによって実行されてもよいことに留意されたい。
図4の処理の前まで、ユーザによるエアロゾル生成要求が継続している。処理はステップ402において開始し、制御部106は、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定する。一例として、制御部106は、圧力センサの出力等に基づいて、ユーザによる吸引が終わったか否かを判定してもよい。別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンが押されなくなったか否かに基づいて、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定してもよい。また別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンの押下などのユーザ・インターフェースに対する操作を検知してから、所定時間が経過したか否かに基づいて、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定してもよい。
エアロゾル生成要求が続いている場合(ステップ402の「N」)、処理はステップ402の前に戻る。エアロゾル生成要求が終わると(ステップ402の「Y」)、処理はステップ404に進む。ステップ404において、制御部106は、スイッチQ1をオフにし、負荷132への給電を停止する。
処理はステップ406に進み、制御部106はタイマを起動する。制御部106は、タイマの値を初期値t=0に設定してもよい。
処理はステップ408に進み、制御部106は時間が所定の値Δtだけ進むのを待つ。また別の例として、後述するステップ416からステップ408に戻ってきた場合、制御部106は、ステップ416を実行した最新の時間からの経過時間をΔtとして、tに加算(インクリメント)してもよい。
処理はステップ410に進み、制御部106は、スイッチQ2をオンにして、第2回路204を機能させる。制御部106は、図2に関連して述べたような方法で負荷132の電気抵抗値RHTR(t)を計測することができる。ステップ412において、制御部106は、負荷132の電気抵抗値を検出するセンサから電気抵抗値を取得してもよい。あるいは、制御部106は、電気抵抗に関連する電気的な値(電流値など)を検出するセンサから取得した値を用いて電気抵抗値を求めてもよい。次いでステップ414において、制御部106はスイッチQ2をオフにする。
処理はステップ416に進み、制御部106は、ステップ412において得られた値R HTR(t)が所定の値RHTR(THTR=R.T.)に等しいか否かを判定する。図3に示すように、負荷132がPTCヒータならば、負荷132の抵抗値は、スイッチQ1がオフにされた時点での温度に対応する値RHTR(t=0)から、時間の経過とともに小さくなる。負荷132の温度が室温に達すると、負荷132の抵抗値はRHTR(T HTR=R.T.)になる。したがって、ステップ416において実行される、負荷132の抵抗値に関する上述の判定により、負荷132の温度が室温まで低下したか否かを判定することができる。
負荷132の抵抗値が所定の値に達しない場合(ステップ416の「N」)、処理はステップ408の前に戻る。負荷132の抵抗値が所定の値に達した場合(ステップ416の「Y」)、処理はステップ418に進む。ステップ418において、制御部106は、このときのタイマの値t(すなわち、スイッチQ1がオフにされてから経過した時間)が所定の閾値Threを超えるか否かを判定する。図3に示すように、Threは、エアロゾル源が十分にあるときに負荷132の温度が室温に下がるまでに要する冷却時間である。
タイマの値が閾値を超える場合(ステップ418の「Y」)、処理はステップ420に進む。これは負荷132の温度が室温に下がるまでに閾値Threを超える時間を要したことを意味するので、図3の説明からも分かるように、スイッチQ1がオフにされた時点で負荷132は過熱状態にあったと理解される。したがって、ステップ420において、制御部106は、エアロゾル源が枯渇していると判定する。
タイマの値が閾値以下である場合(ステップ418の「N」)、処理はステップ422に進む。ステップ422において、制御部106は、エアロゾル源の残量が十分であると判定する。
図4の実施形態によれば、センサ112により検出される値の時系列的な変化に基づき、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷が昇温した後の負荷の冷却過程を監視することができる。この監視は、センサ112により検出される値の時系列的な変化と負荷の温度の低下とが相関関係を保持する態様で実施される。例えば、負荷132がPTCヒータならば、負荷132の電気抵抗値の変化と負荷132の温度は相関関係を有し、負荷132の温度が時間の経過とともに低下すると、負荷132の電気抵抗値も低下する。このような構成により、専用の温度センサを用いなくても、負荷(ヒータ)の冷却過程を高精度に観測できる。
また、図4の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程に基づき、貯留部116A又はエアロゾル基材116Bにおけるエアロゾル源の枯渇の発生を判断するよう構成される。したがって、ユーザによる吸引などの外乱が少ない状態でエアロゾル源の枯渇を検知することができる。
図5は、サージ電流(又は残留電流)の発生により、計測される負荷132の抵抗値が大きく変動し得ることを示す。曲線502はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線504はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。参照番号506はサージ電流(又は残留電流)が収まるのに要する時間を示す。回路134は少なからずインダクタ(誘導)成分を有するため、スイッチQ1をオフにした直後は、第1回路202を流れる電流が急変することにより、電流の急変の度合い(時間微分値)とインダクタンスの積に応じた大きさを持つサージ電流が発生する。したがって、スイッチQ1をオフにした直後にスイッチQ2をオンにして負荷132の抵抗値を測定すると、抵抗値計測用の電流にサージ電流が重畳される。これにより、測定される負荷132の抵抗値が大きく変動するなどの不都合が生じる。換言すれば、前述した負荷132の電気抵抗値の変化と負荷132の温度が持つ相関関係が保持されず、これらが乖離する虞がある。したがって、負荷132の冷却過程を精度よく観測することや、負荷132の温度が室温に達するまでの時間を正確に測定することが困難になる。なお、回路134はインダクタ成分に加えてキャパシタ(容量)成分も少なからず有するため、スイッチQ1をオフにした後に回路を流れる残留電流も、サージ電流と同様に不都合を生じさせる虞がある。
図6は、上記の問題を解決し得る、本開示の一実施形態による処理を示すフローチャートである。ステップ602及び604の処理は図4のステップ402及び404の処理と同様であるので説明を省略する。
ステップ606において、制御部106は、所定時間(例えば、10msなど)の間、スイッチQ1及びスイッチQ2の両方をオフにしたまま待機する。すなわち、負荷132の冷却過程の開始時又は開始直後に、冷却過程の監視が行われないか又は監視された冷却過程に基づく枯渇の発生の判断が行われない不感帯が設けられる。このときの所定時間は、例えば、図5において示される、サージ電流が収まるまでの時間506であってもよい。前述した通り、サージ電流は電流の給電の度合い(時間微分値)に応じた大きさを持つため、時間経過と共に徐々に低減する。同様に、残留電流も時間経過と共に徐々に低減する。当該時間に関する情報は予めメモリ114に格納されていてもよし、センサ112の出力値に応じて可変的に設定されてもよい。不感帯を設けることにより、図5に示すようにスイッチQ2をオンにするタイミングが上記所定時間だけ遅れる。ステップ608から624の処理は図4のステップ406から422の処理と同様であるので説明を省略する。なお、ステップ608の処理はステップ606の前に実行されてもよい。
図6の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程の開始時又は開始直後に、冷却過程の監視が行われないか又は監視された冷却過程に基づくエアロゾル源の枯渇の発生の判断が行われない不感帯を設けるよう構成される。したがって、冷却過程の開始時又は開始直後に負荷132の抵抗値を計測した場合に生じ得るセンサ112の出力値の揺らぎを観測しにくくなるので、負荷の冷却過程の観測精度が向上する。
不感帯は、給電の終了時に生じる残留電流とサージ電流のうち少なくとも一方の電流値が閾値以下になるまで設けられてもよい。一例として、制御部106は、センサ112に含まれる磁気センサによって、残留電流やサージ電流が生じさせる電磁波ノイズを観測し、このノイズの大きさに基づき、残留電流とサージ電流のうち少なくとも一方の電流値を判断するよう構成されてもよい。これにより、残留電流やサージ電流がセンサ112の出力値に重畳された状態において冷却過程が観測されることを防止できるので、観測精度が向上する。
不感帯の時間の長さは、エアロゾル源の枯渇が発生しない場合に冷却過程が完了するまでの時間の長さより短くてもよい。一例として、不感帯の時間の長さは、図5のThreの長さより短くてもよい。これにより、過剰に長い不感帯が設定されて冷却過程の観測が妨げられることを抑制できる。
図7は、サージ電流(又は残留電流)の発生が及ぼす影響を軽減するための本開示の実施形態を概念的に示す。曲線702はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線704はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。参照番号706はサージ電流(又は残留電流)が収まるまでの時間を示す。この例では、負荷132への給電が終了した時に生じる残留電流とサージ電流のうち少なくとも一方の電流値が閾値以下になるのに必要な時間(参照番号706で示される時間)より長い周期Tで、冷却過程の監視中に、負荷132の電気抵抗値に関連する値がセンサ112によって検出される。なお、一番左の点線の時点(サージ電流発生時点)においては、上記検出を行ってもよいし、行わなくてもよい。
図8は、図7に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ802から808の処理は図4のステップ402から408の処理と同様である。
ステップ810において、制御部106は、タイマが示す時間tが上述の周期Tの整数倍であるか否かを判定する。tがTの整数倍でない場合(ステップ810の「N」)、処理はステップ808の前に戻る。
tがTの整数倍である場合(ステップ810の「Y」)、図7において点線で示される計測のタイミングに到達したことになる。処理はステップ812に進み、スイッチQ2がオンにされ、負荷132の電気抵抗値又は電気抵抗に関連する値が計測される。ステップ812から824の処理は図4のステップ410から422の処理と同様である。
図7及び図8の実施形態によれば、制御部106は、給電の終了時に生じる残留電流とサージ電流のうち少なくとも一方の電流値が閾値以下になるのに必要な時間より長い周期で、冷却過程の監視中にセンサ112によって電気抵抗値に関連する値を検出するよう構成される。したがって、負荷132の冷却開始時又は冷却開始直後に負荷132の抵抗値を計測した場合における、センサ112の出力値の揺らぎを観測しにくくなるため、冷却過程の観測精度が向上する。
図9は、サージ電流の発生が及ぼす影響を軽減するための本開示の一実施形態を概念的に示す。曲線902はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線904はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。この例では、冷却過程の開始時又は開始直後にセンサ112によって検出される値が、当該値の時系列的な変化を平滑化することによって補正される。一例において、図9に数式で示すように、ある計測時点から別のある計測時点までに測定された負荷132の抵抗値の平均値をその計測時点における負荷132の抵抗値として決定してもよい。例えば、図9で示された数式においてN=5として、図9に示される5つの点線のうち最後の点線に対応する時点における抵抗値は、当該時点及び以前の4つの時点を含む5つの時点で計測された5つの抵抗値の平均値として求められてもよい。なお、ある計測時点(始点)から別のある計測時点(終点)まで測定された負荷132の抵抗値の平均値は、終点におけるものとして求めず、始点におけるものとして求めてもよいし、始点と終点の間に含まれる時点のものとして求めてもよい。
図10は、図9に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ1002から1014の処理は図4のステップ402から414の処理と同様である。
ステップ1016において、制御部106は、所定の整数Nを増加(インクリメント)させる。Nの初期値は0であってもよく、ステップ1016においてNの値が1だけ増加されてもよい。このNは図9に示される数式の右辺に登場するNに対応する。
処理はステップ1018に進み、制御部106は、Nが所定の閾値Thre1と等しくなったか否かを判定する。一例において、5つの計測された抵抗値の平均値を制御に用いる抵抗値として使用する場合、N=5である。
Nが閾値に達しない場合(ステップ1018の「N」)、処理はステップ1008の前に戻る。Nが閾値になった場合(ステップ1018の「Y」)、処理はステップ1020に進む。ステップ1020において、制御部106は、例えば図9に示される式に基づいてRave(t)を算出する。処理はステップ1022に進み、制御部106はNをゼロにリセットする。その後のステップ1024から1030の処理は図4のステップ416から422の処理と同様である。
図9及び図10の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程の開始時又は開始直後にセンサ112によって検出される値を、センサ112により検出される値の時系列的な変化を平滑化することによって補正し、補正された値に基づいて冷却過程を監視するよう構成される。図9及び図10の例においては、複数の得られた値の単純平均を行っているが、別の例において、複数の計測値の移動平均を求めてもよい。これらの構成によれば、ユーザの吸引などの外乱の影響が少ない状態でエアロゾル源の枯渇を検知できる。また、制御部106は、平均化処理とローパスフィルタのうち少なくとも一方を用いて、センサ112によって検出される値を補正するよう構成されてもよい。これにより、より簡便な方法で平滑化処理を実現することができる。
図11から図15を参照しつつ、負荷の冷却過程を監視するための値の適切な計測タイミングについて説明する。図2に関連して述べたような負荷132の電気抵抗値を計測する方法によれば、専用の温度センサを用いずに負荷132の冷却過程を監視することができる。しかし、負荷132の電気抵抗値を計測しようとすると回路134へ通電する必要があるため、負荷132の電気抵抗値の計測の度に、自身を流れる電流によって負荷132が少なからず発熱する。従って、不適切な計測タイミングによる負荷の冷却過程の監視は外乱となり、負荷の冷却過程の観測精度を低下させてしまう虞がある。
図11は、本開示の一実施形態による、負荷の冷却過程を監視するための値の計測タイミングを概念的に示す。曲線1102はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線1104はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。図4の実施形態と同様に、冷却過程の監視は、センサ112により検出される値の時系列的な変化と負荷132の温度の低下とが相関関係を保持する態様で実施することができる。例えば、負荷132がPTCヒータならば、負荷132の電気抵抗値の変化と負荷132の温度は相関関係を有し、負荷132の温度が時間の経過とともに低下すると、負荷132の電気抵抗値も低下する。このとき、一例において、図11に示すように、冷却過程の監視中にセンサ112が電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値を検出する周期Tは、制御部106が達成可能な最小値Tminより大きくてもよい。給電の終了から所定の時間が経過した後に冷却過程の監視が開始されてもよく、当該所定の時間は制御部106が達成可能な最小値Tminより大きくてもよい。このような構成により、負荷の冷却過程を監視するための値の計測タイミングが適切になるため、専用の温度センサを用いなくても、負荷の冷却過程を高精度に観測できる。
図12は、本開示の一実施形態による、負荷の冷却過程を監視するための値の計測タイミングを概念的に示す。曲線1202はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線1204はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。図示されるように、t=0の時点で負荷132の電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値を計測した後、所定の期間の不感帯を設け、当該不感帯の終了後に値の計測を再び行ってもよい。不感帯中は、値を計測しなくてもよい。あるいは、不感帯中も値を計測する一方で、不感帯中に計測された値をエアロゾル源が枯渇したかどうかの判断に用いなくてもよい。不感帯終了後に値を計測する周期Tは、制御部106が達成可能な最小値Tminより大きくてもよいし、Tminであってもよい。また、給電の終了から所定の時間が経過した後に冷却過程の監視が開始されてもよい。
図13は、図12に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ1302から1308の処理は図4のステップ402から408の処理と同様である。
ステップ1310において、制御部106は、タイマが示す時間が不感帯の所定の期間tdead_zoneを超えたか否か(すなわち、不感帯が終了したか否か)を判定する。不感帯が終了していない場合(ステップ1310の「N」)、処理はステップ1308の前に戻る。不感帯が終了した場合(ステップ1310の「Y」)、処理はステップ1312に進む。ステップ1312から1324の処理は図4のステップ410から422の処理と同様である。図12及び図13の実施形態によれば、不感帯を設けることで、負荷の冷却過程を監視するための値の計測タイミングが適切になるため、専用の温度センサを用いなくても、負荷の冷却過程を高精度に観測できる。
図14は、本開示の一実施形態による、負荷の冷却過程を監視するための値の計測タイミングを概念的に示す。曲線1402はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線1404はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。図示されるように、t=0の時点で負荷132の電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値を最初に計測したときから2度目に値を計測するまでの時間は、2度目の計測時点と3度目の計測時点との間の時間より長くてもよい。図示されるように、その後も、隣接する計測時点間の時間は徐々に短くなるように設定されてもよい。
図15は、図14に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ1502から1506の処理は図4のステップ402から406の処理と同様である。
ステップ1508において、制御部106は、図14に示す計測周期Tの値を決定する。一例において、ステップ1508に示すように、計測周期Tは、所定の係数αとその時点の負荷132の抵抗値との積として求められてもよい。負荷132がPTCヒータならば、負荷132の温度が低下すると負荷132の抵抗値は小さくなるので、上記の例によれば、値が計測されるたびにTは短くなる。上述のTの算出方法は一例にすぎない。別の例として、計測周期Tは、冷却過程の開始からの経過時間と反比例するように計算されてもよいし、既に行われた計測の回数に反比例するように計算されてもよい。
ステップ1510の処理はステップ408の処理と同様である。処理はステップ1512に進み、制御部106は、ステップ1508におけるTの更新後に時間が当該更新されたTだけ経過したか否かを判定する。時間がTだけ経過していない場合(ステップ1512の「N」)、処理はステップ1510の前に戻る。時間がTだけ経過した場合(ステップ1512の「Y」)、処理はステップ1514に進む。ステップ1514から1520の処理はステップ410から416の処理と同様である。
負荷132が室温に達していないと判定される場合(ステップ1520の「N」)、処理はステップ1508の前に戻り、新たなTが設定され、ステップ1508から1520の処理が繰り返される。負荷132が室温に達したと判定される場合(ステップ1520の「Y」)、処理はステップ1522に進む。ステップ1522から1526の処理はステップ418から422の処理と同様である。
図14及び図15の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程の監視中にセンサ112によって電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値が検出される周期を段階的に短くするよう構成され得る。制御部106は、センサ112によって検出される値に対応する負荷132の温度が低いほど、冷却過程の監視中にセンサ112によって電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値を検出する周期を短くするよう構成されてもよい。このような特徴により、適切な計測頻度を設定することができ、負荷132の冷却過程に及ぼす影響が僅かになる。
図16は、本開示の一実施形態による、負荷への給電及び給電停止後の負荷の冷却過程を概略的に示す。曲線1602はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線1604はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。図16中の星印は、エアロゾル生成開始前又は給電開始直後の負荷132の抵抗値に対応する負荷132の温度を示す。
図17は、図16に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ1702において、制御部106は、エアロゾル生成要求があったか否かを判定する。一例として、制御部106は、圧力センサの出力等に基づいて、ユーザによる吸引が開始されたか否かを判定してもよい。別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンが押されたか否かを判定してもよい。
処理はステップ1704に進み、制御部106は、スイッチQ1をオンにする前に、スイッチQ2をオンにする。次いでステップ1706において、制御部106は、既に述べた様々な方法で負荷132の電気抵抗値又は電気抵抗に関連する電気的な値を計測する。ここでは、負荷132の電気抵抗値が計測されるものとして以下説明する。制御部106は、ステップ1706において計測された電気抵抗値を初期値として保持する。ステップ1708において制御部106はスイッチQ2をオフにする。処理はステップ1710に進み、制御部106はスイッチQ1をオンにして負荷132への給電を開始する。
ステップ1712から1724までの処理はステップ402から414までの処理と同様である。
処理はステップ1726に進み、制御部106は、ステップ1722で計測された抵抗値RHTR(t)がステップ1706で計測された初期値と等しいか否かを判定する。両者が等しくない場合(ステップ1726の「N」)、処理はステップ1718の前に戻る。両者が等しい場合(ステップ1726の「Y」)、処理はステップ1728に進む。ステップ1728から1732の処理はステップ418から422の処理と同様である。
図16及び図17の実施形態によれば、制御部106は、センサ112により検出される値が定常状態になるまでの冷却過程に基づき、エアロゾル源の枯渇の発生を判断するよう構成される。負荷132の温度が定常状態になるまで冷却過程が観測されるので、冷却過程を適切な終点まで監視することができる。一例において、制御部106は、給電を実行する前にセンサ112により検出される値と、冷却過程においてセンサ112により検出される値との比較に基づき、センサ112により検出される値が定常状態に至ったかを判断するよう構成されてもよい。これにより、エアロゾル生成前の抵抗値に基づいて定常状態に至ったか否かが判断される。したがって、既定の閾値に基づいて判断を行う場合と比較して、負荷132の固体差を考慮することができ、定常状態に至ったか否かの判断の精度が向上する。また、エアロゾル生成装置100の使用環境における温度が、一般的な室温(例えば、25℃)と異なる場合でも、冷却過程の終点を適切に観測できる。
なお、上述した実施形態に代えて、センサ112の測定誤差を考慮し、ステップ1726において、ステップ1722で計測された抵抗値RHTR(t)が、ステップ1706で計測された初期値又は給電を実行する前にセンサ112により検出される値に微小な所定値Δを加えた値と等しいか否かを判定してもよい。
図18は、本開示の一実施形態による負荷の冷却過程の監視方法を概念的に示す。曲線1802はエアロゾル源が十分にあるときの負荷132の冷却曲線を示す。曲線1804はエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの負荷132の冷却曲線を示す。この例では、負荷132の温度が完全に室温(例えば、25℃)にまで下がる理想的な冷却時間に代えて、負荷132の温度が室温よりも高い温度(例えば、25℃+Δ)にまで下がる近似的な冷却時間を、定常状態に至った時間として用いる。
図19は、図18に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ1902から1914までの処理はステップ402から414までの処理と同様である。
ステップ1916において、制御部106は、ステップ1912において計測された負荷132の抵抗値を、上記近似的な冷却時間が経過した後の負荷132の抵抗値(RHT R(THTR=R.T.+Δ))と比較して、両者が一致するか否かを判定する。後者の抵抗値は、メモリ114に予め記憶されていてもよい。両者が一致しない場合(ステップ1916の「N」)、処理はステップ1908の前に戻る。両者が一致する場合(ステップ1916の「Y」)、処理はステップ1918に進む。ステップ1918から1922の処理はステップ418から422の処理と同様である。
図18及び図19の実施形態によれば、制御部106は、センサ112により検出される値が定常状態になるまでの冷却過程に基づき、エアロゾル源の枯渇の発生を判断するよう構成される。一例において、制御部106は、室温より既定値だけ高い温度に対応するセンサ112により検出される値と冷却過程においてセンサ112により検出される値との比較に基づき、センサにより検出される値が定常状態に至ったかを判断するよう構成される。
図18及び図19の実施形態において用いられるΔの値は、センサ112の誤差に起因する、センサ112により検出される値から得られる負荷の温度の誤差より大きくなるように設定されてもよい。一例として、センサ112が電圧センサである場合、ゲイン誤差、オフセット誤差、ヒステリシス誤差などの当該電圧センサについて分かっている測定誤差の値から、当該電圧センサを用いて測定することができる抵抗値の誤差を求めることができる。さらに、測定できる抵抗値の誤差と、負荷132について分かっている温度−抵抗特性の誤差とから、負荷132について推定できる温度の誤差を求めることができる。この場合、Δを、当該推定できる温度の誤差よりも大きくなるように設定すればよい。これにより、室温に相当する25℃などの既定の閾値に基づいて判断を行う場合と比較して、負荷132の固体差を考慮することができ、定常状態に至ったか否かの判断の精度が向上する。
図20は、本開示の一実施形態による負荷の冷却過程の監視方法を概念的に示す。曲線2002は負荷132の冷却曲線である。RHTR(tn−6)、RHTR(tn−5)、・・・、RHTR(tn)は、それぞれ、tn−6、tn−5、・・・、tnの時点において計測される負荷132の抵抗値を表す。抵抗値に代えて、負荷132の抵抗に関連する電気的な値を用いてもよい。負荷132について計測されるこれらの値の時間微分値、偏差及び分散は、例えば図20に示す数式を用いて算出することができる。この例では、負荷132の推定される温度が室温+Δに未だ達しなくとも、上記時間微分値、偏差又は分散が所定の条件を満たしたか否かに基づいて、負荷132の抵抗値又は抵抗値に関連する電気的な値が定常状態に至ったか否かが判定される。
図21は、図20に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ2102から2116までの処理は図19のステップ1902から1916までの処理と同様である。
ステップ2116において、負荷132が所定の定常状態に達していないと判定されると(ステップ2116の「N」)、処理はステップ2118に進む。ステップ2118において、制御部106は、負荷132の抵抗値(又は、抵抗値に関連する電気的な値)の時間微分値の絶対値が所定の閾値より小さいか否かを判定する。絶対値が閾値以上である場合(ステップ2118の「N」)、処理はステップ2108の前に戻る。絶対値が閾値より小さい場合(ステップ2118の「Y」)、処理はステップ2120に進む。なお、ステップ2118における条件は、さらに、上記時間微分値がゼロ以下であることを含んでもよい。これにより、冷却曲線2002が振動してその傾きがプラスになるときに、定常状態に達したと誤って判断することを避けることができる。ステップ2120から2124の処理はステップ1918から1922の処理と同様である。
図22は、図20に関連する本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ2202から2216までの処理は図21のステップ2102から2116までの処理と同様である。
ステップ2216において、負荷132が所定の定常状態に達していないと判定されると(ステップ2216の「N」)、処理はステップ2218に進む。ステップ2218において、制御部106は、負荷132の抵抗値(又は、抵抗値に関連する電気的な値)の分散が所定の閾値より小さいか否かを判定する。分散の代わりに偏差が判定に用いられてもよい。分散が閾値以上である場合(ステップ2218の「N」)、処理はステップ2208の前に戻る。分散が閾値より小さい場合(ステップ2218の「Y」)、処理はステップ2220に進む。ステップ2220から2224の処理はステップ2120から2124の処理と同様である。
図20、図21及び図22の実施形態によれば、制御部106は、センサ112により検出される値の時間微分値、偏差又は分散に基づき、センサ112により検出される値が定常状態に至ったかを判断するよう構成される。センサ112により検出される値自体を用いる場合と比較して、値の時間変化を考慮するので、定常状態に至ったことを判断し易くなる。
以上述べたように、本開示の第1の実施形態によれば、制御部106は、負荷132の温度と電気抵抗の値又は電気抵抗に関連する電気的な値とが乖離しないタイミング、又は、冷却過程における負荷132の冷却を妨げない頻度で、冷却過程の監視中、センサ112によって値を検出するよう構成することができる。したがって、専用の温度センサを用いなくても、負荷の冷却過程を高精度に観測することができる。
また、本開示の第1の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程のうち、負荷132の冷却開始時又は冷却開始直後よりも後、かつ負荷132が室温に至るよりも前の、センサ112により検出される値の時系列的な変化に基づき、貯留部116A又はエアロゾル基材116Bにおけるエアロゾル源の枯渇の発生を判断するよう構成することができる。一例において、制御部106は、センサ112により検出される値又は該値の時系列的な変化に基づき、センサ112により検出される値が定常状態に至ったかを判断し、センサ112により検出される値が定常状態に至るまでの冷却過程に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成することができる。したがって、専用の温度センサを用いなくても、負荷の冷却過程を高精度に観測することができる。
上述の説明において、本開示の第1の実施形態は、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置を動作させる方法として説明された。しかし、本開示が、プロセッサにより実行されると当該プロセッサに当該方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実施され得ることが理解されよう。
<第2の実施形態>
負荷132(又は、ヒータ)が冷却するとき、便宜上、負荷132、毛細管効果を利用して貯留部116Aから負荷132へエアロゾル源を運ぶ部材(例えば、保持部130。以下、「ウィック」と呼ぶ)とウィックが保持するエアロゾル源、大気の間のみで熱交換がなされると仮定すると、ニュートンの冷却の法則を用いて以下の式が成り立つ。
ここで、QHTRは、負荷132の熱量である。αwick、αliquid及びαa irは、それぞれ、ウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気の熱伝達率である。Swick、Sliquid及びSairは、それぞれ、ウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気に対する負荷132の表面積である。THTR、Twick、Tliquid及びTairは、それぞれ、負荷132、ウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気の温度である。
また、負荷132の熱量については、以下の式が成り立つ。
ここで、CHTRは、負荷132の熱容量である。
式(1)と式(2)をまとめると、以下の式が成り立つ。
簡略化のため、以下の式(4)〜(6)で緩和時間τを定義する。
式(4)〜(6)を用いれば、式(3)は以下のように書き換えられる。
さらなる簡略化のため、式(7)を以下のように書き換える。
なお、上記の書き換えにあたっては、以下の式(9)と式(10)で定義される数式を用いた。
微分方程式(8)を解くため、以下の式(11)を用いて、新たな変数T1を導入する。
式(11)を用いて、微分方程式(8)を変数変換する。
負荷132の冷却過程で、ウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気は、負荷132に対してその熱容量が十分に大きいと仮定すれば、負荷132の冷却過程におけるウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気の温度変化は無視できるほどに小さい。従って、微分方程式(12)の左辺第1項は0と見做すことができるため、微分方程式(12)は、以下のように変形できる。
変数分離を用いて、微分方程式(13)を解くと、以下の式を得られる。
ここで、Cは、積分定数である。
式(11)を時間tの関数をみなし、t=0の時の値を求めると、以下の式を得られる。
ここで、THTR(0)は、t=0の時すなわち負荷132の冷却過程開始時における負荷132の温度である。式(15)を、式(14)の境界条件に用いれば、以下の式が成り立つ。
式(11)と式(16)を用いれば、以下のように式(14)をTHTR(t)について解くことができる。
本願発明者らは、式(17)を時間微分すれば、負荷132の温度の時間微分(冷却速度)を以下の式で近似できることを発見した。
前述した通り、負荷132の冷却過程におけるウィック、ウィックが保持するエアロゾル源及び大気の温度変化は無視できるほどに小さいならば、負荷の温度の時間変化はTH TR(0)によって大きく影響を受ける。すなわち、冷却過程開始時における負荷の温度が高いときほど、負荷の温度は下がりやすいことがわかる。
以上の考察から、本願発明者らは、負荷132の冷却速度を用いてエアロゾル源が枯渇したか否かを判定するという技術的思想に想到した。
図23は、エアロゾル生成装置100において負荷132への給電を停止した後の負荷132の冷却過程を概略的に示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は負荷の温度を示す。ここでは、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度が200℃であると仮定し、エアロゾル源が枯渇したときに過熱状態となった負荷132が達する温度の一例を350℃とする。
上述のように、負荷132の温度が高いときほど、負荷132の温度の低下速度は大きい。したがって、図23の例においてエアロゾル源の枯渇を検知するためには、領域2302A及び2302Bなどの、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度を超える温度を含む領域において負荷132の温度変化の速度を計測することが望ましい。反対に、領域2304のように正常に到達するエアロゾル源の最高温度以下の温度のみ含む領域は、エアロゾル源の枯渇を検知するために負荷132の温度変化の速度を計測するのには適していない。
図24は、実際の負荷132の冷却速度を示す図である。図24の(a)は、エアロゾル源が十分にあるときの冷却速度を示している。図24の(b)は、エアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの冷却速度を示している。図24の(a)と(b)において、横軸は時間を示しており、縦軸は負荷132の電気抵抗値を介して観測した負荷132の冷却速度を示している。なお、図24の(a)と(b)において、縦軸のスケールは同じである。
約4.8秒付近で負荷132の加熱が停止した後、負荷132の冷却過程の観測を、時系列順に領域2402、領域2404、領域2406に分けると、次のことが言える。
領域2402では、負荷132の加熱が停止した直後のため、負荷132の冷却速度は、前述したサージ電流や残留電流などによる外乱の影響を強く受ける。従って、負荷132の電気抵抗値を介して冷却速度を観測する場合、領域2402における負荷132の冷却速度を、エアロゾル源が枯渇したか否かを判定するために用いることは困難である。なお、専用の温度センサを用いて負荷132の冷却速度を観測する場合、このような懸念が生じにくいことは、当業者にとって明らかであろう。
領域2404では、(a)のエアロゾル源が十分にあるときの冷却速度と、(b)のエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの冷却速度とが、大きく異なっている。これは、前述した負荷の温度の違いが、冷却速度に有意な差をもたらしているためだと考えられる。従って、領域2404における負荷132の冷却速度は、エアロゾル源が枯渇したか否かを判定するために好適である。
領域2406では、(a)のエアロゾル源が十分にあるときの冷却速度と、(b)のエアロゾル源が枯渇している(又は、不足している)ときの冷却速度は、殆ど同じである。これは、前述した正常に到達するエアロゾル源の最高温度以下の温度における冷却速度を観測しているためだと考えられる。従って、領域2406における負荷132の冷却速度は、エアロゾル源が枯渇したか否かを判定するために不適当である。
図25は、負荷132の冷却速度を計測するのに適したタイミングについて説明する図である。図23に関連して述べたように、スイッチQ1がオフにされて負荷132の冷却が開始してからできるだけ早いタイミングで冷却速度を計測することにより、エアロゾル源が枯渇したか否かをより正確に判断することができる。しかし、参照番号2502で示すようにスイッチQ1をオフにした直後にスイッチQ2をオンにすると、サージ電流などの影響により、計測される負荷132の温度に関する値が大きく変動する。したがって、冷却速度を正確に計測することが困難である。他方、参照番号2506で示すように負荷132の温度がエアロゾル源の沸点以下となるタイミングでスイッチQ2をオンにして計測を行っても、エアロゾル源が枯渇した場合とエアロゾル源が十分にある場合との間で有意な差が生じにくい。これらのことから、本願発明者らは、参照番号2504で示すように、スイッチQ1をオフにしてから所定の時間だけ経過した後(設定された不感帯を過ぎた後)に、エアロゾル源の枯渇が発生するときにのみ到達可能な温度域に負荷132の温度が属し得るタイミングで冷却速度を計測することが望ましいとの見解に至った。
図26は、本開示の一実施形態による、エアロゾル源の枯渇を検知する処理のフローチャートである。ここでは、制御部106がすべてのステップを実行するものとして説明を行う。しかし、一部のステップがエアロゾル生成装置100の別のコンポーネントによって実行されてもよいことに留意されたい。
処理はステップ2602において開始し、制御部106は、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定する。一例として、制御部106は、圧力センサの出力等に基づいて、ユーザによる吸引が終わったか否かを判定してもよい。別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンが押されなくなったか否かに基づいて、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定してもよい。また別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンの押下などのユーザ・インターフェースに対する操作を検知してから、所定時間が経過したか否かに基づいて、エアロゾル生成要求が終わったか否かを判定してもよい。
エアロゾル生成要求が続いている場合(ステップ2602の「N」)、処理はステップ2602の前に戻る。エアロゾル生成要求が終わると(ステップ2602の「Y」)、処理はステップ2604に進む。ステップ2604において、制御部106は、スイッチQ1をオフにし、負荷132への給電を停止する。
処理はステップ2606に進み、制御部106は、所定時間の間、スイッチQ1及びスイッチQ2の両方をオフにしたまま待機する。すなわち、負荷132の冷却過程の開始時又は開始直後に、冷却過程の監視が行われないか又は監視された冷却過程に基づく枯渇の発生が判断されない不感帯が設けられる。不感帯は、サージ電流が減衰した後の時点であって且つ負荷132の温度がエアロゾル源の沸点以下になるときよりも前である時点まで、設けられてもよい。
処理はステップ2608に進み、制御部106はタイマを起動する。制御部106は、タイマの値を初期値t=0に設定してもよい。
処理はステップ2610に進み、制御部106は、スイッチQ2をオンにして、第2回路204を機能させる。処理はステップ2612に進み、制御部106は、センサ112を用いるなどして、時刻t1において、負荷132の温度に関連する値を計測する。当該センサ112は、負荷132の温度、電圧、抵抗値などを検知して出力するように構成されてもよい。ここでは、負荷132の電気抵抗値RHTR(t1)が計測される。処理はステップ2614に進み、制御部106はスイッチQ2をオフにする。
処理はステップ2616に進み、制御部106は、スイッチQ2を再びオンにして、第2回路204を機能させる。処理はステップ2518に進み、制御部106は、時刻t2において、負荷132の温度に関連する値、例えば負荷132の電気抵抗値RHTR(t2)を計測する。処理はステップ2620に進み、制御部106はスイッチQ2を再びオフにする。
処理はステップ2622に進み、制御部106は、RHTR(t1)、RHTR(t2)、t1及びt2の値に基づいて、負荷132の冷却速度を求める。次いで、ステップ2624において、制御部106は、得られた冷却速度を所定の閾値と比較する。冷却速度が閾値よりも小さい場合(ステップ2624の「Y」)、処理はステップ2626に進み、制御部106は、エアロゾル源が枯渇していると判定する。他方、冷却速度が閾値以上である場合(ステップ2624の「N」)、処理はステップ2628に進み、制御部106は、エアロゾル源が十分に残っていると判定する。
このように、図26に示す実施形態によれば、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後の冷却過程における、センサ112の出力値から導出される冷却速度に基づき、貯留部116A又はエアロゾル基材116Bにおけるエアロゾル源の枯渇の発生を判断するよう構成される。冷却速度に基づいてエアロゾル源の枯渇が発生しているか否かが検知され、エアロゾル源の枯渇が発生しているか否かを迅速かつ高精度に判断することができる。なお、ステップ2614とステップ2616を省略し、ステップ2610でオンにしたスイッチQ2は、ステップ2620までオンにされ続けてもよい。
また、上述の実施形態によれば、制御部106は、冷却過程のうち、エアロゾル源の枯渇が発生するときの冷却速度と該枯渇が発生しないときの冷却速度との間の差が閾値以上である時間帯(例えば、図23における領域2302A又は2302Bに対応する時間帯)における冷却速度に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成される。あるいは、制御部106は、冷却過程のうち、枯渇が発生する時のみ到達可能な温度域に負荷132の温度が属する時間帯(例えば、領域2302Aに対応する時間帯)における冷却速度に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。冷却速度に有意差がある区間において導出された冷却速度に基づいて、エアロゾル源の枯渇が発生しているか否かが判断される。したがって、枯渇が発生しているか否かの判断をより高精度に行うことができる。
また、上述の実施形態によれば、制御部106は、センサ112の複数の出力値から冷却速度を導出し、センサ112の複数の出力値のうち少なくとも時間軸で最先の値を、冷却過程のうち、枯渇が発生する時のみ到達可能な温度域に負荷132の温度が属する時間帯において取得するよう構成されてもよい。あるいは、制御部106は、センサ112の複数の出力値を、冷却過程のうち、枯渇が発生する時のみ到達可能な温度域に負荷132の温度が属する時間帯で取得するよう構成されてもよい。これらの構成によれば、測定期間の始点さえ有意差がある領域に属すればよいので、不感帯の設定を厳格に行わずに済み、さらに、制御周期が極端に早い高性能なマイコンを制御部106として用いることが不要となる。
本開示の第1の実施形態に関連して既に述べたように、負荷132は、温度に応じて電気抵抗値が変化してもよい。センサ112は、負荷132の温度に関連する値として、電気抵抗値に関する値を出力してもよい。この場合、負荷132の抵抗値から温度が導出されるので、高価な専用の温度センサが不要となる。また、制御部106は、冷却過程の開始時又は開始直後に、電気抵抗値に関する値がセンサ112によって取得されないか若しくは冷却速度が導出されない不感帯を設けるように構成されてもよい。あるいは、制御部106は、センサ112の出力値の時系列的な変化が平滑化されるように補正された、冷却過程の開始時又は開始直後のセンサ112の出力値に基づき冷却速度を導出するよう構成されてもよい。この構成によれば、冷却開始時又は冷却開始直後の抵抗値が用いられないので、センサ112の出力値の揺らぎを観測しにくくなり、冷却過程の観測精度が向上する。
一例において、制御部106は、冷却過程の前に電源110から負荷132へ給電される電力が段階的に減少又は漸減するように、電源110から負荷132への給電を制御するよう構成されてもよい。これにより、エアロゾル生成段階の終期において、回路を流れる電流を小さくすることができる。したがって、前述したサージ電流や残留電流などによって出力値が揺らぐ期間を短くできるので、冷却速度により顕著な有意差が生じる区間を観測することが可能となる。
一例において、上述の不感帯は、給電の終了時に生じる残留電流とサージ電流のうち少なくとも一方の電流値が閾値以下になるまで続くように設けられてもよい。これにより、不感帯は、サージ電流又は残留電流が消滅するまで又は無視できるほどの大きさになるまでの時間より長くなる。したがって、冷却過程は、残留電流又はサージ電流がセンサの出力値に重畳された状態において観測されないので、観測精度が向上する。
一例において、不感帯は、枯渇が発生していない場合に冷却過程が完了する長さより短くてもよい。これにより、不感帯が、エアロゾル源が十分にあるときの冷却時間より短くなる。したがって、過剰に長時間の不感帯を必要としないので、冷却過程の観測が妨げられることを抑制できる。
一例において、給電の終了からセンサ112による電気抵抗値に関する値の取得の開始までの時間と、センサ112が電気抵抗値に関する値を取得する周期とのうち少なくとも一方は、制御部106が達成可能な最小値より大きくてもよい。これにより、抵抗値を介して負荷132の冷却過程を観測する際には、観測タイミング又は観測の頻度が意図的に低下させられる。したがって、専用の温度センサを用いなくても、負荷の冷却過程を高精度に観測することができる。
図27は、本開示の一実施形態による、エアロゾル源の枯渇を検知する処理のフローチャートである。ステップ2702及び2704の処理は図26のステップ2602及び2604の処理と同様である。
処理はステップ2706に進み、制御部106は、スイッチQ2をオンにする。スイッチQ2は、スイッチQ1がオフにされた直後にオンにされてもよい。次いでステップ2708において、制御部106は、スイッチQ2をオフにする。スイッチQ1がオンであるときに負荷132を流れる電流と比較して、スイッチQ2がオンである時に負荷132を流れる電流は小さい。したがって、ステップ2706及び2708におけるスイッチQ2のオン及びオフの後に生じるサージ電流は、図25において参照番号2502で示した例において生じるサージ電流よりも小さくなる。なお、ステップ2704から2708は、ステップ2702よりも先に行ってもよい。これにより、冷却過程を開始直後から観測できる。
ステップ2710から2732の処理はステップ2606から2628の処理と同様である。
本開示の第2の実施形態によるエアロゾル生成装置は、一例において、図2に示す回路200を備えてもよい。回路200は、電源110と負荷132の間に直列接続され、第1開閉器(スイッチ)Q1を有する第1回路202と、電源110と負荷132の間に直列接続され、第1回路202と並列に接続され,第2開閉器Q2を有し,第1回路202より電気抵抗値が大きい第2回路204と、を含んでもよい。制御部106は、第1開閉器Q1と第2開閉器Q2を制御し、第1開閉器Q1と第2開閉器Q2のうち、第2開閉器Q2のみをオンしている間のセンサの出力値に基づき、冷却速度を導出するよう構成されてもよい。この構成は、専用の高抵抗の抵抗値計測用回路を有する。したがって、抵抗値の計測時に負荷の冷却過程に及ぼす影響を小さくすることができる。図27に関連して述べたように、制御部106は、冷却過程の直前に第2開閉器Q2をオンするよう構成されてもよい。これにより、第1開閉器Q1と第2開閉器Q2が交互にオンにされる。したがって、冷却過程開始時におけるサージ電流と残留電流を緩和することができる。
図28は、本開示の一実施形態による、エアロゾル生成装置が備える回路を概略的に示す。回路2800は、第2回路204を備えていない点で図2の回路200と相違する。図28の例において、エアロゾル生成装置は、負荷132の温度を検知して出力する温度センサ112Eを備えてもよい。この場合、例えば、制御部106は、図26におけるステップ2606から2622の処理を行わずに、時点t1及びt2における負荷132の温度を温度センサ112Eによって直接的に測定し、測定された温度に基づいて冷却速度を求めてもよい。
さらに別の例において、エアロゾル生成装置は、図28に示す回路2800と同様の構成の回路を備えてもよく、温度センサ112Eではなく、図2に示されるような、負荷132の両端の電圧値を検知する電圧センサ112Bを備えてもよい。この場合、エアロゾル生成装置はスイッチQ2を備えない。制御部106は、図26の処理と同様の処理を実行してもよい。但し、この場合、制御部106は、ステップ2606の代わりに、所定時間、スイッチQ1をオフにして待機する。制御部106はまた、ステップ2610及び2616の代わりにスイッチQ1をオンにし、ステップ2614及び2620の代わりにスイッチQ1をオフにする。
上述の説明において、本開示の第2の実施形態は、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置を動作させる方法として説明された。しかし、本開示が、プロセッサにより実行されると当該プロセッサに当該方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実施され得ることが理解されよう。
<第3の実施形態>
貯留部116A又はエアロゾル基材116B内のエアロゾル源が枯渇しているときにエアロゾル生成要求が行われると、ヒータ(負荷132)は大気中に暴露された状態で加熱される。したがって、負荷132を構成する材料によっては、負荷132が化学変化を起こし、その物性が変化し得る。一例において、酸化などの現象によって負荷132の表面に保護膜が形成され、その結果、負荷132の電気抵抗値が変化し得る。本願発明者らは、このような現象を利用してエアロゾル生成装置におけるエアロゾル源の枯渇の発生を検知するという技術的思想に想到した。以下、本実施形態について具体的に説明する。
図29は、本開示の一実施形態によるエアロゾル源の枯渇の発生を判断する手法を概念的に示す。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は負荷132の電気抵抗値を示す。負荷132の電気抵抗値は、本実施形態において用いられる負荷132の物性に関連する値の一例にすぎない。エアロゾル源の枯渇に起因して変化し得る負荷132の様々な物性に関連する値を本実施形態において用いることができることが当業者に理解されよう。
RHTR(t0)は、負荷132への給電が行われる前の時刻t0における、室温(ここでは、25℃)(又は、定常状態)での負荷132の抵抗値を示す。スイッチQ2をオンにして第2回路204を機能させることにより、RHTR(t0)を計測することができる。
この例では、時刻t1においてエアロゾル生成要求が行われる。当該要求に応じて、スイッチQ1がオンにされ、負荷132への給電が開始される。第1の実施形態及び第2の実施形態に関連して述べたように、負荷132にPTCヒータを用いるならば、負荷132の温度が上がるにつれて、負荷132の抵抗値RHTRは大きくなる。図29における曲線2902は、エアロゾル源が十分にあるときの負荷132の抵抗値の変化を示す。曲線2904は、エアロゾル源が枯渇しているときの負荷132の抵抗値の変化を示す。
エアロゾル源が十分にある場合、曲線2902で示されるように、負荷132の温度が正常時に到達するエアロゾル源の最高温度(ここでは、200℃)に達すると、負荷132の抵抗値は上昇しなくなる。そして、時刻t2においてエアロゾル生成要求が終了し、スイッチQ1がオフにされると、負荷132の温度が低下し、負荷132の抵抗値は下降する。負荷132の温度が室温(又は、定常状態)に達すると、抵抗値は負荷132の加熱前の値RHTR(t0)に戻る。
エアロゾル源が枯渇している場合、曲線2904で示されるように、負荷132の温度は、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度を超え、エアロゾル源の枯渇が発生するときのみ到達可能な温度(例えば、350℃)へとさらに上昇する。この際、負荷132の材料によっては、負荷132の物性が変化し得る。例えば負荷132の表面に保護膜が形成されることもある。この例では、時刻t2における負荷132の温度は350℃以上にまで達している。スイッチQ1がオフにされると、負荷132の温度が低下し、それに伴って負荷132の抵抗値も減少する。しかし、図29に示されるように、負荷132の温度が室温(又は、定常状態)に戻っても、上述した物性の変化の影響により、負荷132の抵抗値は加熱前の値には戻らず、当該値よりも大きくなる。本実施形態では、時刻t3における負荷132の抵抗値RHTR(t3)と元の抵抗値RHTR(t0)との間の差分ΔRが所定の閾値以上になるか否かに基づいて、エアロゾル源が枯渇しているか否かが判定される。ここで、t3−t2は、エアロゾル源が十分にあるときに負荷132が室温(又は、定常状態)に戻るのに要する時間Δtcooling以上になるように設定されてもよい。
図30は、図29に関連する、本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ここでは、制御部106がすべてのステップを実行するものとして説明を行う。しかし、一部のステップがエアロゾル生成装置100の別のコンポーネントによって実行されてもよいことに留意されたい。
処理はステップ3002において開始し、制御部106は、ヒータ(負荷)の接続を検知したか否かを判定する。例えば、制御部106は、カートリッジ104Aが本体102に接続されたことを検知したとき、ヒータの接続を検知したと判定する。
ヒータの接続が検知されない場合(ステップ3002の「N」)、処理はステップ3002の前に戻る。ヒータの接続が検知された場合(ステップ3002の「Y」)、処理はステップ3004に進む。ステップ3004において、制御部106は、スイッチQ2をオンにして、第2回路204を機能させる。スイッチQ2をオンにするタイミングは、図28における時刻t0からエアロゾル生成が開始される時刻t1までのいずれかの時点とすることができる。スイッチQ2をオンにするタイミングは、後述するステップ3010においてエアロゾル生成要求があると判定した時点でもよい。
処理はステップ3006に進み、制御部106は、負荷132の物性に関連する値を計測する。例えば、制御部106は、電圧センサを用いて負荷132の両端に印加される電圧を測定し、当該電圧に基づいて負荷132の電気抵抗値を計測してもよい。図30の例では、このようにして負荷132の抵抗値RHTR(t0)が計測されるものとして以下説明する。処理はステップ3008に進み、制御部106はスイッチQ2をオフにする。
処理はステップ3010に進み、制御部106は、エアロゾル生成要求があるか否かを判定する。一例として、制御部106は、圧力センサの出力等に基づいて、ユーザによる吸引が開始されたか否かを判定してもよい。別の例において、制御部106は、負荷132への給電を行うためにエアロゾル生成装置100に備え付けられているボタンが押されたか否かを判定してもよい。エアロゾル生成要求がない場合(ステップ3010の「N」)、処理はステップ3010の前に戻る。エアロゾル生成要求があった場合(ステップ3010の「Y」)、処理はステップ3012に進む。ステップ3012において、制御部106は、スイッチQ1をオンにして負荷132への給電を開始する。
ステップ3014から3020までの処理は図4のステップ402から408までの処理と同様である。
処理はステップ3022に進み、制御部106は、タイマの値tが図29に示すΔtc ooling以上であるか否かを判定する。条件が満たされない場合(ステップ3022の「N」)、処理はステップ3020の前に戻る。条件が満たされる場合(ステップ3022の「Y」)、処理はステップ3024に進む。
ステップ3024において、制御部106は、スイッチQ2をオンにして、第2回路204を機能させる。次いでステップ3026において、制御部106は、負荷132の抵抗値RHTR(t3)(図29を参照)を計測する。次いで、ステップ3028において、制御部106はスイッチQ2をオフにする。
処理はステップ3030に進み、制御部106は、RHTR(t3)とRHTR(t0)との差分が所定の閾値以上であるかどうかを判定する。差分が閾値以上である場合(ステップ3030の「Y」)、処理はステップ3032に進み、制御部106は、エアロゾル源が枯渇していると判定する。他方、差分が閾値未満である場合(ステップ3030の「N」)、処理はステップ3034に進み、制御部106は、エアロゾル源が十分に残っていると判定する。
図31は、負荷132(ヒータ)の製造に用いることができる様々な金属の酸化還元電位及び酸化被膜の形成され易さを示す表3100を示す。酸化還元電位が小さいほど酸化被膜が形成され易く、酸化還元電位が大きいほど酸化被膜が形成されにくい。表3100においては、Alが酸化被膜が最も形成され易く、Auが酸化被膜が最も形成されにくい。本実施形態においては、エアロゾル源の枯渇が発生するときにのみ到達可能な温度において負荷132の物性が変化する現象が、エアロゾル源の枯渇の発生の検知に利用される。したがって、表3100に示される金属のうち、酸化被膜が形成され得るAl、Ti、Zr、Ta、Zn、Cr、Fe、Ni、Pb及びCuが、負荷132の製造に適している。したがって、負荷132は、銅の酸化還元電位以下の酸化還元電位を持つ金属を含んでもよい。一例として、上記の金属のほか、負荷132はNiCrを含んでもよい。また、酸化が妨げられないよう、負荷132は、その表面に不動態被膜を有さないように構成されてもよい。換言すれば、表面に不動態被膜が形成されるステンレスなどは、負荷132の製造に適していないと言える。
図32は、本開示の一実施形態によるエアロゾル源の枯渇の発生を判断する手法を概念的に示す。RHTR(t1)は、スイッチQ1がオンにされて負荷132への給電が開始されたときの時刻t1における、室温(ここでは、25℃)(又は、定常状態)での負荷132の抵抗値を示す。曲線3202は、エアロゾル源が十分にあるときの負荷132の抵抗値の変化を示す。曲線3204は、エアロゾル源が枯渇しているときの負荷132の抵抗値の変化を示す。
図29の例と同様に、エアロゾル源が十分にある場合、曲線3202で示されるように、負荷132の温度が正常時に到達するエアロゾル源の最高温度(ここでは、200℃)に達すると、負荷132の抵抗値は上昇しなくなる。時刻t2においてエアロゾル生成要求が終了し、スイッチQ1がオフにされると、負荷132の温度が低下し、負荷132の抵抗値は下降する。負荷132の温度が室温(又は、定常状態)に達したときの抵抗値R HTR(t3)は、加熱前の値RHTR(t1)と略等しい。
図29の例と同様に、エアロゾル源が枯渇している場合、曲線3204で示されるように、負荷132の温度は、正常時に到達するエアロゾル源の最高温度を超え、エアロゾル源の枯渇が発生するときのみ到達可能な温度へとさらに上昇する。このとき、負荷132の材料によっては、負荷132の物性が変化し得る。スイッチQ1がオフにされると、負荷132の温度が低下し、それに伴って負荷132の抵抗値も減少する。しかし、負荷132の温度が室温(又は、定常状態)に戻っても、物性の変化の影響により、負荷132の抵抗値RHTR(t3)は加熱前の値RHTR(t1)よりも大きくなる。
図33は、図32に関連する、本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ3302から3316の処理は図30のステップ3014から3028の処理と同様である。
処理はステップ3318に進み、制御部106は、定常状態に戻ったときの負荷132の抵抗値が所定の閾値Rthre以上であるか否かを判定する。当該閾値Rthreは、エアロゾル源が十分にある場合における定常状態の抵抗値と、過熱により負荷132の物性が変化した場合の負荷132の抵抗値について予め分かっている増加量との合計値である。換言すれば、当該閾値Rthreは、過熱により負荷132の物性が変化した場合の負荷132の抵抗値である。閾値Rthreは、予めメモリ114に記憶されていてもよい。ステップ3318において、上記の処理に代えて、制御部106は、図32における時刻t1においても抵抗値を計測し、時刻t3において計測された抵抗値と時刻t1において計測された抵抗値との間の差分が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。当該所定の閾値は予めメモリに記憶されていてもよい。ステップ3320及び3322の処理はステップ3032及び3034の処理と同様である。
図29及び図30の実施形態又は図32及び図33の実施形態において、負荷132の冷却中に、負荷132の温度が室温又は定常状態にまで低下する前にエアロゾル生成要求が再度生じると、負荷132の温度及び抵抗値は再び上昇する。この場合、エアロゾル源が枯渇しているか否かを図30又は図33の処理によって正確に判断することが困難になる。この問題の解決策として、制御部106は、負荷132の抵抗値が定常状態に戻るまで、負荷132によるエアロゾル源の霧化を禁止してもよい。一例として、制御部106は、図29及び図32に示すΔtcoolingの間にエアロゾル生成要求が生じても、当該要求に応じなくてもよい。
図34は、本開示の一実施形態によるエアロゾル源の枯渇の発生を判断する手法を概念的に示す。図32の場合とは異なり、この例では、時刻t3よりも前の時刻t4の時点で負荷132の抵抗値を計測し、エアロゾル源が枯渇しているか否かを判断する。時刻t4は、エアロゾル源が枯渇している場合に、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後、負荷132の温度が定常状態にまで下がる時点よりも前の時点である。
図35は、図32に関連する、本開示の一実施形態による処理のフローチャートである。ステップ3502から3508の処理は、図33のステップ3302から3308の処理と同様である。
処理はステップ3510に進み、制御部106は、タイマの値tが図34に示す代替的な冷却時間以上になったか否かを判定する。条件が満たされない場合(ステップ3510の「N」)、処理はステップ3508の前に戻る。条件が満たされる場合(ステップ3510の「Y」)、処理はステップ3512に進む。ステップ3512〜3516の処理は、図33のステップ3312から3316の処理と同様である。
処理はステップ3518に進み、制御部106は、ステップ3514で計測された負荷132の抵抗値RHTR(t4)が所定の値以上であるか否かを判定する。所定の値は、一例としてR’HTR(t3)+(R’HTR(t3)−RHTR(t1))−Δ(図34を参照)であってもよい。これは、センサ112による負荷132の抵抗値の分解能が、R’HTR(t3)−RHTR(t1)よりも小さければならない点と、補正項としてのΔを考慮したものである。すなわち、定常状態に至る前の負荷132の抵抗値と、枯渇が発生した場合の定常状態における負荷132の抵抗値に既定値を加えた値とが比較される。後者の値は予めメモリ114に記憶されていてもよい。あるいは、定常状態に至る前の負荷132の抵抗値から既定値を減じた値と、枯渇が発生した場合の定常状態における負荷132の抵抗値とが比較されてもよい。
条件が満たされる場合(ステップ3518の「Y」)、処理はステップ3520に進み、制御部106は、エアロゾル源が枯渇していると判定する。条件が満たされない場合(ステップ3518の「N」)、処理はステップ3522に進み、制御部106は、エアロゾル源が十分に残っていると判定する。
以上述べたように、本開示の第3の実施形態によるエアロゾル生成装置は、貯留部116A又はエアロゾル基材116Bにおけるエアロゾル源の枯渇が発生する時のみ到達可能な温度で加熱されると物性が変化する負荷132を備える。負荷132の物性に関連する値がセンサ112によって出力される。制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後のセンサ112の出力値に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これにより、エアロゾル源の枯渇に伴う負荷132の物性の変化に基づき、エアロゾル源の枯渇が検知される。したがって、エアロゾル源の枯渇の発生を高精度に検知することができる。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後の定常状態におけるセンサ112の出力値に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これにより、定常状態における負荷132の物性に基づいてエアロゾル源の枯渇が検知される。したがって、誤った検知がなされる可能性が低減される。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132を昇温させる前後におけるセンサ112の出力値の変化量に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これにより、負荷132への給電の前後の負荷132の物性の変化量に基づいて、エアロゾル源の枯渇が検知される。したがって、給電終了後の物性を閾値と比較する場合と比べて、負荷の固体差による影響を受けにくくなる。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132を昇温させる前後の定常状態におけるセンサ112の出力値の差に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これにより、給電前後の定常状態における物性の変化量に基づいてエアロゾル源の枯渇が検知される。したがって、給電後の物性を閾値と比較する場合と比べて、負荷132の固体差による影響を受けにくくなる。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後、センサ112の出力値が定常状態に至るまで、負荷132によるエアロゾル源の霧化を禁止するよう構成されてもよい。これにより、定常状態に至るまでのインターバルが規定される。したがって、エアロゾル源の枯渇を判定する頻度を増加することができる。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後の冷却過程において、定常状態に至る前のセンサ112の出力値と、枯渇が発生した場合の定常状態における負荷132の物性に関連する値に既定値を加えた値との比較に基づき、枯渇の発生を判断するように構成されてもよい。あるいは、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後の冷却過程において、定常状態に至る前のセンサ112の出力値に既定値を減じた値と、枯渇が発生した場合の定常状態における負荷132の物性に関連する値との比較に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これにより、定常状態に至る時点よりも前の時点で負荷132の物性が測定される。したがって、エアロゾル源の枯渇が生じたことを、より早期に特定することが可能となる。
また、上述のように、センサは、負荷132の物性に関連する値として、負荷132の電気抵抗値に関する値を出力してもよい。これにより、負荷の抵抗値から温度が導出される。したがって、高価な専用の温度センサが不要となる。
また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132が昇温した後のセンサ112の出力値と、負荷132の表面に保護膜(例えば、酸化被膜)が形成された場合の負荷132の抵抗値に関連する値との比較に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。また、上述のように、制御部106は、エアロゾル源を霧化することができる温度以上まで負荷132を昇温させる前後におけるセンサ112の出力値の変化量と、負荷132の表面における保護膜の形成による負荷132の抵抗値に関連する値の変化量との比較に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。これらの場合、保護膜部分に相当する値が閾値となる。当該閾値は予めメモリ114に記憶されていてもよい。したがって、保護膜の形成による抵抗値の変化、すなわちエアロゾル源の枯渇の発生を適切に検知できる。
本開示の第3の実施形態によるエアロゾル生成装置は、一例において、図2に示す回路200を備えてもよい。回路200は、電源110と負荷132の間に直列接続され、第1開閉器(スイッチ)Q1を有する第1回路202と、電源110と負荷132の間に直列接続され、第1回路202と並列に接続され,第2開閉器Q2を有し,第1回路202より電気抵抗値が大きい第2回路204と、を含んでもよい。制御部106は、第1開閉器Q1と第2開閉器Q2を制御し、第1開閉器Q1と第2開閉器Q2のうち、第2開閉器Q2のみをオンしている間のセンサの出力値に基づき、枯渇の発生を判断するよう構成されてもよい。この構成は、専用の高抵抗の抵抗値計測用回路を有する。したがって、抵抗値の計測時に負荷の冷却過程に及ぼす影響を小さくすることができる。
上述の説明において、本開示の第3の実施形態は、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置を動作させる方法として説明された。しかし、本開示が、プロセッサにより実行されると当該プロセッサに当該方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実施され得ることが理解されよう。
以上、本開示の実施形態が説明されたが、これらが例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態の変更、追加、改良などを適宜行うことができることが理解されるべきである。本開示の範囲は、上述した実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるべきである。