JPWO2019235613A1 - 薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御装置および鋳型内流動制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2018年6月7日に、日本に出願された特願2018−109150号、および、2018年11月9日に、日本に出願された特願2018−211091号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
(1)本発明の第一の態様は、メニスカス部の短辺厚みが150mm以下、鋳造幅が2m以下の鋼の薄スラブ鋳造に用いる鋳型内流動制御装置であって、
鋳型幅方向の全幅において、鋳型厚み方向に向かう直流磁場を付与するコアを有する直流磁場発生ユニットと、前記鋳型幅方向の両側面に形成された吐出孔と、これらの吐出孔の底部と連ねて外部に開口するように底部に形成されたスリットとを有する浸漬ノズルと、を備え、前記吐出孔及び前記スリットは、前記直流磁場発生ユニットの前記コアが存在する高さ領域である直流磁場帯に存在し、前記直流磁場帯の磁束密度B(T)と、前記浸漬ノズルの下端から前記コアの下端までの距離L(m)とが、下記(1)式及び(2)式を満足する
ことを特徴とする鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御装置である。
0.35T≦B≦1.0T ・・・(1)式
L≧0.06m ・・・(2)式
D/8≦δ≦D/3 ・・・(3)式
δ≦d≦2/3×D ・・・(4)式
(3)上記(1)又は(2)に記載の鋳型内流動制御装置では、前記吐出孔は、吐出流が前記浸漬ノズルの軸方向に対し垂直方向となるように形成されてもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の鋳型内流動制御装置は、さらに、鋳型内の溶鋼表面で旋回流を付与することのできる電磁攪拌ユニットを有してもよい。
(5)上記(4)に記載の鋳型内流動制御装置では、前記鋳型の長辺壁を構成する銅板の厚みDCu(mm)、鋳片の厚みT(mm)、前記電磁攪拌ユニットの周波数f(Hz)、前記銅板の電気伝導度σCu(S/m)が下記(7A)式、(7B)式を満足するように調整されてもよい。
DCu<√(2/(σCuωμ)) ・・・(7A)式
√(1/(2σωμ))<T ・・・(7B)式
ただし、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ=4π×10-7:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度である。
L≧LC=(ρV)/(2σB2) ・・・(5)式
0.1×B√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6)式
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。
ことを特徴とする鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法。
L≧LC=(ρV)/(2σB2) ・・・(5)式
0.1×B√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6)式
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。
DCu<√(2/(σCuωμ)) ・・・(7A)式
√(1/(2σωμ))<T ・・・(7B)式
ただし、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ=4π×10-7:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)である。
(9)上記(8)に記載の鋳型内流動制御方法では、鋳型内溶鋼表面の溶鋼攪拌流速VRが、下記(8)式を満たしてもよい。
VR≧0.1×B√((σDV)/ρ) ・・・(8)式
ただし、溶鋼攪拌流速VRは鋳片断面のデンドライト傾角に基づいて定める。
本発明者らは、二次冷却帯のスプレーのような平板状のジェットでかつ鋳型内全幅にわたって運動量を形成できるノズル吐出流を形成することについて検討した。
構成a:図4の(A)に示される、両側面にノズル吐出孔3を設けた浸漬ノズル202
構成b:図4の(B)に示される、複数のノズル吐出孔3をノズル底面に設けた浸漬ノズル302
構成c:図4の(C)に示される、ノズル吐出孔3とノズル底部のスリット4を含む浸漬ノズル2
浸漬ノズル302を用いる構成bの場合、構成aと同様にノズル吐出孔部では電流パスは形成されず、また、隣接したノズル吐出孔間でも電流パスは形成されない。そのため、ノズル外で電流パスを形成することになる。
一方、浸漬ノズル2を用いる構成cの場合、ノズル吐出孔3とスリット4を含んだ全体でノズル吐出流12を形成することができる。このような構成によれば、ノズルの制約なく電流パスを形成することができるので、浸漬ノズル2内の吐出流に直流磁場23を作用させたときに誘導電流26を誘起することができ、制動力を作用させることが可能になる。
L≧LC=(ρV)/(2σB2) ・・・(5)式
ただし、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。
E=(ρV2)/2 ・・・(5A)式
と表現できる。また、磁束密度Bの磁場内を流速Vで横切る導電性流体にかかる制動力Fは
F=σVB2 ・・・(5B)式
となる。制動力Fによって流体の流速を流速Vから流速ゼロに制動するに必要な制動距離を必要コア距離LCとすると、
LC=E/F=(ρV)/(2σB2) ・・・(5C)式
となることが予想される。そこで、薄スラブ鋳造の鋳型内溶鋼プールと浸漬ノズルを模擬したモデル実験の装置を用いて、導電性流体としてSn−10%Pb合金の液体を用いてノズル吐出流周囲に直流磁場を印加する実験を行った。具体的には、図4の(C)に示すような、2孔の吐出孔3とスリット4を施した浸漬ノズル2と、図4の(A)に示すような、スリットを有しない通常の2孔の吐出孔の浸漬ノズル202とを用いて、かつ磁束密度B=0.35T、浸漬ノズル下端からコア下端までの距離L=0.06mの条件で、コア下端から0.2m下方位置での短辺近傍下降流速を調査した。短辺近傍下降流速は、超音波ドップラー流速計を用いて測定した。なお、測定は各条件について1分間行いその時間平均値を測定値とした。流速計は厚み中央で短辺の内壁から20mmの位置にセットした。液体の温度を220℃としており、液体の電気伝導度σ=2100000S/m、液体の密度ρ=7000kg/m3である。上記(5C)式で計算されるLC=0.018mであり、L≧LCである。2種類の浸漬ノズルについて、磁束の有無の影響を調査した結果を、図5に示す。なお、図5の縦軸の「短辺流速比」は、測定した短辺近傍下降流速を平均流速(平均流量をプール断面積で除した値)で除した値を示しており、短辺流速比が1であればコア下端近傍において下降流速が鋳型幅方向で均一となっていることを示している。図4の(C)に示すような浸漬ノズル2を用いることで、短辺下降流速が磁場を印加しない条件においても低減できることに加え、上記(5)式を満足するように磁場を印加した条件では流速比がほぼ1、すなわち図1のプラグフロー29が形成されていることが明らかである。上記結果を踏まえ、溶鋼の場合の磁束密度B、ノズル内平均流速Vと、必要コア距離LCとの関係について、図6に示す。
鋳型内の溶鋼プール中に直流磁場を付与し、この直流磁場中に浸漬ノズルからの吐出流が流れるに際し、流動溶鋼中に誘導起電力が発生し、流動溶鋼中に誘導電流が流れる。誘導電流は閉ループとなる必要があることから、流動溶鋼の外側の静止溶鋼に流れ、閉ループの電流を形成する。静止溶鋼中に流れる誘導電流と直流磁場との作用で静止溶鋼には吐出流と反対方向に力が働き、前述したジェットの端部ではジェットを制動するための誘導電流がその周囲を逆向きに加速し、吐出流と逆向きの流れが生まれる。この流れは一般的に対向流と呼ぶ。その対向流はノズル吐出流に沿って形成され、ノズル側面に到達するとノズル側面に沿って上方に流れる。
まず、低融点合金実験を行い、対向流の観察を行った。前述した低融点合金実験の条件で、ノズル周囲の液面近傍の状況が、印加する磁場、ノズル内流速、浸漬ノズル内へのArガス吹き込み有無によってどのように変化するかを詳細に観察した。その結果、印加する磁束密度を上げていくとある条件で、ノズル周囲の側面(2孔ノズル直上)に上昇流(対向流)が観察された。また、Arガス吹込み(液体金属の10%の体積流量)を行った条件では対向流が顕著となった。特に下向きジェットとともに吹き込まれたAr気泡がそのままノズル周囲で浮上することと、対向流とともにAr気泡が浮上することによる。薄スラブ鋳造ではノズル内にArガスを吹き込まないため、液体金属の流動と磁場の相互作用による流動のみを考えればよい。なお、ノズル周囲に形成される対向流はメニスカスまで上昇し、その後、ノズルから短辺に向かって流れる。
そこで次に、実際の溶鋼の薄スラブ連続鋳造において、ノズルから短辺に向かう流れを対向流とし、その流速を測定した。測定においては、以下の溶鋼流速計を用いた。流速計はモリブデンサーメット棒を溶鋼中に浸漬し、その端部に張り付けられたひずみゲージにより、浸漬部に作用する慣性力を測定し、流速に換算する。なお、測定は各条件について1分間行いその時間平均値を測定値とした。流速測定箇所はノズル側面から50mmの位置でメニスカスから50mm深さまで上記流速計を浸漬し測定した。鋳型サイズは、鋳造幅は1.2m、鋳造厚さ(メニスカス部の短辺厚み)は0.15mである。浸漬ノズル内平均流速Vは1.0又は1.6m/sとした。磁場の磁束密度Bを0.1〜0.5Tの範囲で変化させ、Arガス吹き込みの有無の条件と対向流の流速Uとの関係について調査した。浸漬ノズル2として、ノズル内径(浸漬ノズル2の鉛直方向直管部の内径)D、2孔の吐出孔3(孔径d)とスリット4(スリット厚みδ)を有し、d/D=0.5、δ/D=0.2である浸漬ノズルを用いた。浸漬ノズル2における吐出流12と対向流13の関係模式図を図7に示す。測定結果を図8に示す。対向流13の流速Uは、ノズル内平均流速Vの平方根に比例し、磁束密度Bに比例して変化すること、さらに、Arガス吹き込みを行った条件では対向流速がより顕著となることがわかる。ノズル内径Dを変化させて実験した結果、対向流の流速Uは、ノズル内径Dの平方根に比例することが判明した。なお、浸漬ノズル2の直管部の内周が真円ではない場合(例えば、楕円形又は矩形)、同じ断面積の円相当径をもって浸漬ノズル内径Dとする。
これらの結果から、磁束密度B、ノズル内平均流速V、ノズル内径D、液体金属の密度ρ、電気伝導度σを用いて、対向流の流速Uが以下の(6A)式のaB√((σDV)/ρ)によって決まることがわかった。ここでaはパラメータであり、Ar吹き込みを行わない条件では0.1、Ar吹き込みを行う条件では0.5とすると実験結果とよく対応した。また、対向流の流速Uを0.1m/s以上とすることにより、対向流起因の上昇流をメニスカスへの熱供給手段として活用できることもわかった。
U=aB√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6A)式
Arガス吹き込みなし:a=0.1、Arガス吹き込みあり:a=0.5
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。
0.1×B√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6)式
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。
また、本発明者らは、ノズル吐出孔からの吐出流が浸漬ノズルの軸方向に対し略垂直方向(85°〜95°)となるように形成される場合に、対向流をより好適に発生させることができ、メニスカスへの熱供給手段及び介在物浮上促進手段として好ましいことも見出した。
本実施形態に係る鋳型内流動制御装置は、メニスカス部の短辺厚みが150mm以下、鋳造幅が2m以下である薄スラブ鋳造に用いられる。メニスカス部の短辺厚みの下限は特に限定されるものではないが、100mm超であってもよい。
本実施形態に係る鋳型内流動制御装置は、直流磁場発生ユニット5と、浸漬ノズル2とを有する。
直流磁場発生ユニット5は、鋳型1の幅方向全幅において、鋳型1の厚み方向に向かう直流磁場を付与するコア6を有する。
浸漬ノズル2は、鋳型1の幅方向の両側面に形成された吐出孔3と、これらの吐出孔3の底部と連ねて外部に開口するように底部に形成されたスリット4とを有する。
浸漬ノズル2の吐出孔3及びスリット4は、直流磁場発生ユニット5のコア6が存在する高さ領域内である直流磁場帯に存在するように配置される。
0.35T≦B≦1.0T ・・・(1)式
L≧0.06m ・・・(2)式
ここで、スリット4の厚みδ、浸漬ノズル2内径D、2孔部(吐出孔3)の吐出孔径dと、吐出孔3及びスリット4からの吐出流12の流速の好ましい関係を調査するため、水モデル実験を行い検討した。側面の吐出孔3の形状は円形+スリットであり、円形部とスリット部合計の面積を求め、同じ断面積の円相当径を吐出孔径dとした。また、矩形の吐出孔の場合にも同じように取り扱えばよい。実験ではノズル吐出孔3、スリット4周囲の流動状況を観察するとともに、それぞれの吐出孔、スリット前面の流速測定を行った。2孔部(吐出孔3)前面の流速Vaとノズル下端のスリット4前面の流速Vbを測定した。浸漬ノズル2のノズル内径部分の水の平均流速をVとする。その結果、スリット厚みδおよび2孔部の吐出孔径dとノズル内径Dとの関係は以下の関係式を満足することで、平板状のジェットでかつ鋳型内全幅にわたって運動量を付与するノズル吐出流を安定して形成できる。
D/8≦δ≦D/3 ・・・(3)式
δ≦d≦2/3×D ・・・(4)式
d/D=0.4で一定としつつスリット厚み比δ/Dを変化させ、Vb/Vの関係を図9にプロットした。また、δ/D=0.25で一定としつつ吐出孔径比d/Dを変化させ、Va/Vの関係を図10にプロットした。Vb/V、Va/Vのいずれも、0.8〜1.3の範囲内にあれば、均一な流れを安定して実現することができる。図9、10から明らかなように、上記(3)式、(4)式を満足することにより、Vb/V、Va/Vのいずれも、0.8〜1.3の範囲内とすることができるので好ましい。
一方、鋳型内表面の幅中央では、浸漬ノズル左右側面に沿って上昇した流動がぶつかるため、同じく図11の(A)に示すように、淀み点30を形成する。淀み点30は溶鋼温度が低下することや介在物捕捉の起点となるため好ましくない。
鋳型内溶鋼表面に溶鋼の旋回流を形成することができれば、淀み点30を解消できる可能性がある。しかし、前述のように、薄スラブ鋳造においては、一般的なスラブ連続鋳造において用いられる鋳型内電磁攪拌は使用されていなかった。そこで、さらにメニスカス部に旋回流を形成する方法について検討した。
そのためには、まず、電磁攪拌ユニット8によって形成される交流磁場の表皮深さを鋳型長辺壁17を構成する銅板の厚みDCuよりも大きくすることが重要である。この条件は下記(7A)式で規定される。すなわち、導体中での電磁場の表皮深さが銅板厚みDCuよりも大となることが重要である。
DCu<√(2/(σCuωμ)) ・・・(7A)式
√(1/(2σωμ))<T ・・・(7B)式
上記(7A)式、(7B)式において、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ:真空の透磁率(N/A2)、DCu:鋳型銅板厚み(mm)、T:鋳片厚み(mm)、f:周波数(Hz)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)、σCu:銅板電気伝導度(S/m)である。
(7B)式で規定されるような高い周波数で電磁攪拌を行うことによりはじめて、鋳片厚みが150mm以下の薄スラブ鋳造において、鋳型内に十分な流速の旋回流を形成することが可能となった。従来の鋳型内電磁攪拌においては、鋳型銅板でのエネルギーロスを低減するため、低い周波数を用いることが一般的であった。尚、溶鋼の電気伝導度と銅板の電気伝導度は、市販の電気伝導率計(電気伝導度計)を用いて測定すればよい。
このように、薄スラブ鋳造において鋳型内に電磁撹拌ユニットを設置し、さらに電磁攪拌ユニットに印加する交流電流の周波数を適正化することで、鋳片厚みが150mm以下の薄スラブ鋳造においても湯面レベル近傍で旋回流が形成される。これにより、淀み点30の発生を解消し、溶鋼温度が低下することや介在物捕捉の起点となることを防止することができる。
VR≧U=0.1×B√((σDV)/ρ) ・・・(8)式
鋳型内の溶鋼表面に攪拌流を形成するための電磁攪拌ユニット8については、鋳造方向におけるコア厚さが100mm以上であれば好ましい。そして、メニスカス部14がコア上端から下端の範囲内に入るものとする。メニスカス部14は通常は鋳型上端から100mmの位置となるので、コアの上端が鋳型上端から100mm位置を含んでその位置から上方であればよい。コアの下端位置については、電磁攪拌ユニット8の下方に配置される直流磁場発生ユニット5に干渉しない位置として定まる。
図1に示す鋳型内流動制御装置を有する薄スラブ連続鋳造設備を用いて低炭素鋼を連続鋳造した。鋳型1のサイズは、1200mm幅、150mm厚であり、矩形鋳型形状である。鋳型内における鋳造速度3m/分で鋳造した。図1の(A)は鋳型内辺15を含む水平断面の模式図、図1の(B)は縦断面の模式図である。浸漬ノズル2は、図2に示すように、浸漬ノズル2の鋳型幅方向11両側面に吐出孔3を有し、浸漬ノズル2の底部と2つの吐出孔3の底部を連ねて外部に開口するスリット4(スリット厚みδ)を有する。ノズル側面の吐出孔3の形状は円形+スリットであり、円形部とスリット部合計の面積と同じ断面積の円相当径を吐出孔径dとした。ここではノズル形状を変化して鋳造した。
鋳造条件は、浸漬ノズル内径D(浸漬ノズルの垂直方向に向かう直管部の内径)を100mmとしたため、ノズル内平均流速Vは1.16m/sとなる。条件の選定ならびに結果の評価にあたり、溶鋼の電気伝導度σ=650000S/m 溶鋼の密度ρ=7200kg/m3とした。薄スラブ鋳造であって浸漬ノズル内へのArガス吹き込みは行わないので、(6A)式においてa=0.1とした(6)式を用いた。
鋳片表面の欠陥指数については、全幅×鋳造方向長さ200mmのサンプルを鋳片の上面、下面それぞれから切り出した。そして、全幅×長さ200mmの表面内における介在物を表面から1mmおきに厚み20mmまで研削した。そして、100μm以上の介在物個数を調査し、その個数総和を指数化したものを欠陥指数とした。スリットを設けない2孔ノズルを用いて電磁力を印加しない条件で鋳造を行った際の比較例(比較例No.8)の条件を10としてその比で表示し、欠陥指数6以下を必要条件とし、欠陥指数5以下が良好、6超を不良とした。
鋳片内部の介在物指数については、上面側1/4厚部の幅中央を挟んで左右1/4幅部、1/2幅部からサンプルを切り出し、介在物個数をスライム抽出法で調査した。スリットを設けない2孔ノズルを用いて電磁力を印加しない条件(比較例No.8)で鋳造した条件を10として、その比で示し、介在物指数6以下が必要条件とし、介在物指数5以下が良好、6超を不良とした。
また、鋳造中の湯面レベルの変動や地金張り等の湯面状態についても併せて調査した。
比較例10、比較例11、比較例12はいずれも、磁束密度が(1)式を下限に外れている。そのため、比較例10、11は、浸漬ノズル下端からコア下端までの距離(ノズル下コア距離)Lの要件に関し、(2)式は満足したが、流動制御方法の要件である(5)式は満足しないものであった。比較例No.12のノズル下コア距離は、(2)式、(5)式のいずれも確保できなかった。その結果、比較例10〜12のいずれも、ノズル吐出流の制動が不十分な結果となるとともに、対向流速Uも不十分であった。
比較例No.15では、浸漬ノズルの下端位置がコア上端の上方に外れた条件である。比較例No.16は浸漬ノズルの下端位置がコア下端の下方に外れた条件である。これらの条件においては、吐出孔及びスリットは、コアが存在する高さ領域である直流磁場帯に存在しなかったため、いずれも本発明の効果を発揮することができなかった。
前記実施例1で採用した条件に加え、鋳片厚みT=150mmの鋳型内メニスカス部位に電磁攪拌ユニット8を配置し、鋳型内溶鋼に旋回流を形成することにより、メニスカス部で攪拌流16を形成し、効果を確認した。そのために、鋳型銅板材質、鋳型銅板厚みDCuは表2に示す条件とし、電磁攪拌ユニットに通電する交流磁場の周波数fを表2のように変化させた条件で通電し鋳造した。(7A)式の右辺を「鋳型表皮深さ」、(7B)式の左辺を「溶鋼電磁力表皮深さ」として表2に示した。
浸漬ノズル2、直流磁場発生ユニット5の条件は、表1の発明例13の条件を採用した。浸漬ノズル内径D=100mm、スリット厚みδ=23mm、2孔ノズルの吐出孔径d=65mm、直流磁場発生ユニットで形成する磁束密度B=0.4Tとした。(6A)式にa=0.1を代入して算出した対向流速U=0.12m/sとなった。
鋳片表面の欠陥指数については、全幅×鋳造方向長さ200mmのサンプルを鋳片の上面、下面それぞれから切り出し、全幅×長さ200mmの表面内における介在物を表面から1mmおきに厚み20mmまで研削し、100μm以上の介在物個数を調査し、その個数総和を指数化したものを欠陥指数とした。2孔ノズルを用いて電磁力を印加しない条件で鋳造を行った条件(表1の比較例No.8)を10としてその比で表示し、介在物指数5以下が良好、それ以上を不良とした。
鋳片内部の介在物指数については、上面側1/4厚部の幅中央を挟んで左右1/4幅部、1/2幅部からサンプルを切り出し、介在物個数をスライム抽出法で調査した。2孔ノズルを用いて電磁力を印加しない条件で鋳造した条件(表1の比較例No.8)を10として、その比で示し、介在物指数5以下が良好、それ以上を不良とした。また、鋳造中の湯面レベルの変動や流動状態についても併せて調査した。
表2の発明例No.A0は鋳型内電磁攪拌を行っていない条件であり、表1の発明例No.13に対応する。
2 浸漬ノズル
3 吐出孔
4 スリット
5 直流磁場発生ユニット
6 コア
7 直流磁場帯
8 電磁攪拌ユニット
11 鋳型幅方向
12 吐出流
13 対向流
14 メニスカス部
15 鋳型内辺
16 攪拌流
17 鋳型長辺壁
21 導電体
22 耐火物
23 直流磁場
24 溶鋼流
25 誘導起電力
26 誘導電流
27 制動力
28 リターンパス
29 プラグフロー
Claims (9)
- メニスカス部の短辺厚みが150mm以下、鋳造幅が2m以下の鋼の薄スラブ鋳造に用いる鋳型内流動制御装置であって、
鋳型幅方向の全幅において、鋳型厚み方向に向かう直流磁場を付与するコアを有する直流磁場発生ユニットと、
前記鋳型幅方向の両側面に形成された吐出孔と、これらの吐出孔の底部と連ねて外部に開口するように底部に形成されたスリットとを有する浸漬ノズルと、
を備え、
前記吐出孔及び前記スリットは、前記直流磁場発生ユニットの前記コアが存在する高さ領域である直流磁場帯に存在し、
前記直流磁場帯の磁束密度B(T)と、前記浸漬ノズルの下端から前記コアの下端までの距離L(m)とが、下記(1)式及び(2)式を満足する
ことを特徴とする鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御装置。
0.35T≦B≦1.0T ・・・(1)式
L≧0.06m ・・・(2)式 - 前記浸漬ノズルの側面に開口する部分の合計断面積と同じ断面積の円相当径である前記吐出孔の吐出孔径d(mm)、前記スリットのスリット厚みδ(mm)、及び、前記浸漬ノズルの内径D(mm)が、下記(3)式及び(4)式を満足する
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳型内流動制御装置。
D/8≦δ≦D/3 ・・・(3)式
δ≦d≦2/3×D ・・・(4)式 - 前記吐出孔は、吐出流が前記浸漬ノズルの軸方向に対し垂直方向となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳型内流動制御装置。 - さらに、鋳型内の溶鋼表面で旋回流を付与することのできる電磁攪拌ユニットを有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳型内流動制御装置。 - 前記鋳型の長辺壁を構成する銅板の厚みDCu(mm)、鋳片の厚みT(mm)、前記電磁攪拌ユニットの周波数f(Hz)、前記銅板の電気伝導度σCu(S/m)が下記(7A)式、(7B)式を満足するように調整される
ことを特徴とする請求項4に記載の鋳型内流動制御装置。
DCu<√(2/(σCuωμ)) ・・・(7A)式
√(1/(2σωμ))<T ・・・(7B)式
ただし、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ=4π×10-7:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)である。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳型内流動制御装置を用いた薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法であって、
浸漬ノズル内平均流速V(m/s)に対して、印加する直流磁場の磁束密度B(T)及び前記浸漬ノズルの下端から前記コアの下端までの距離L(m)が下記(5)式及び(6)式を満足する
ことを特徴とする鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法。
L≧LC=(ρV)/(2σB2) ・・・(5)式
0.1×B√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6)式
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。 - 請求項4又は請求項5に記載の鋳型内流動制御装置を用いた薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法であって、
浸漬ノズル内平均流速V(m/s)に対して、印加する直流磁場の磁束密度B(T)及び前記浸漬ノズルの下端から前記コアの下端までの距離L(m)が下記(5)式、(6)式を満足することを特徴とする鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法。
L≧LC=(ρV)/(2σB2) ・・・(5)式
0.1×B√((σDV)/ρ)≧0.1(m/s) ・・・(6)式
ただし、D:浸漬ノズル内径(m)、ρ:溶融金属の密度(kg/m3)、σ:溶融金属の電気伝導度(S/m)である。 - 鋳型長辺の銅板厚みDCu(mm)、鋳片厚みT(mm)、前記電磁攪拌ユニットの周波数f(Hz)、銅板電気伝導度σCu(S/m)が下記(7A)式、(7B)式を満足するように調整される
ことを特徴とする請求項7に記載の鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法。
DCu<√(2/(σCuωμ)) ・・・(7A)式
√(1/(2σωμ))<T ・・・(7B)式
ただし、ω=2πf:角速度(rad/sec)、μ=4π×10-7:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)である。 - 鋳型内溶鋼表面の溶鋼攪拌流速VR(m/s)が、下記(8)式を満たす
ことを特徴とする請求項8に記載の鋼の薄スラブ鋳造における鋳型内流動制御方法。
VR≧0.1×B√((σDV)/ρ) ・・・(8)式
ただし、溶鋼攪拌流速VR(m/s)は鋳片断面のデンドライト傾角に基づいて定める。
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