JPWO2019189786A1 - 細胞培養用シート並びに三次元組織体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シートを提供する。

Description

本発明は、細胞培養用シート並びに三次元組織体及びその製造方法に関する。
近年、生体外で細胞の三次元組織体を構築する技術が開発されている。例えば、培養細胞の表面全体が接着膜で被覆された被覆細胞を培養することによって、三次元組織体を製造する方法(特許文献1)、ポリ乳酸等を材料とした足場に細胞を播種して三次元組織体を製造する方法(非特許文献1)等が提案されている。また、本発明者らはこれまで、コラーゲンを含む被膜でコートされた細胞を三次元に配置して、三次元組織体を形成することを含む、三次元組織体を製造する方法(特許文献2)、細胞の表面に被膜が形成された被覆細胞を形成すること、及び被覆細胞を三次元に配置することを含む三次元組織体の製造方法であって、被覆細胞の形成は、被膜成分を含有する液に細胞を浸漬させること、及び浸漬させた細胞と被膜成分を含有する液とを液透過性膜によって分離することを含む、三次元組織体の製造方法(特許文献3)等を提案している。このような三次元組織体は、実験動物の代替品、移植材料等としての利用が期待されている。
特開2012−115254号公報 国際公開第2015/072164号 国際公開第2016/027853号 特開2007−228921号公報
Nature Biotechnology, 2005, Vol.23, NO.7, p.879-884 Biomaterials, 2007, Vol.28, p4378-98 Circulation Research, 2002, Vol.90, issue3
ところで、三次元組織化技術の発展により、生物の有する様々な組織をインビトロで再現する試みが盛んとなっている。実際の生体内の組織はその種別毎に多様な形態的パターン及び機能を呈するため、上述した数々の三次元組織化技術を用いてもその再現は必ずしも容易ではない。例えば、大動脈血管壁においては動脈の内側から内皮細胞(内膜)―平滑筋細胞(中間層)―繊維芽細胞(外膜)といった構成を有するが、それぞれの細胞が存在する領域内及び領域間において固有の形態及び組成で細胞外マトリックス成分が介在しているために、単にこれらの細胞からなる層を3層積層しただけでは十分にその形態を模倣できているとは言えない。例えば、上述の大動脈血管壁モデルの平滑筋細胞を含む細胞集団の層等においては、平滑筋細胞からなる細胞集団の層と細胞外マトリックスを主成分とする層が交互に重ねられて層状構造が形成されている。層状構造の三次元組織化技術としては、例えば細胞集団の層の上に、細胞外マトリックス成分を含む物質をコートし、更にその上に新たな細胞集団の層を形成していく方法(特許文献4)、細胞シートを形成しそれを積層していく手法(非特許文献3)等がある。
しかしながら、上記いずれの技術においても、細胞集団の間に形成される層は、組織形成に応用できるほど充分な膜厚で形成できていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、充分な厚さを有する細胞培養用シート及び当該細胞培養用シートを用いて構成された三次元組織体の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下に示す発明によって、上記課題が解決できることを見出した。
本発明は、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シートに関する。本発明は細胞外マトリックス成分を含んでいるため、充分な厚さを有する細胞培養用シートが提供される。
細胞外マトリックス成分は、断片化細胞外マトリックスを含んでいてよい。この場合、充分な厚さを有する細胞培養用シートがより形成されやすくなると共に、耐屈曲性及び加工性、並びに水の透過性がより優れたものとなる。
細胞培養用シートの厚さは、5μm以上であってよい。細胞外マトリックス成分は、天然由来であってよい。
細胞外マトリックス成分は、エラスチン、コラーゲン、断片化エラスチン及び断片化コラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。この場合、充分な厚さを有する細胞培養用シートがより形成されやすくなる。
細胞外マトリックス成分は、エラスチン及び断片化エラスチンからなる群より選択される少なくとも1種のエラスチン成分を含んでいてよい。この場合、エラスチン成分の含有量は、細胞外マトリックス成分全量に対して、50質量%以上であってよい。細胞外マトリックス成分の少なくとも一部は、架橋されていてよい。
本発明はまた、細胞外マトリックス成分を含む複数の細胞外マトリックス(ECM)層と、ECM層の間に存在する細胞と、を含み、ECM層の厚さが5μm以上である、三次元組織体に関する。細胞は、血管上皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
本発明はまた、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シート上に細胞を播種することを含む、三次元組織体の製造方法に関する。当該製造方法は、細胞培養用シート上に播種された細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シートを更に積層することを含んでいてよく、細胞培養用シート上に播種された細胞を培養することを含んでいてよい。
本発明によれば、充分な厚さを有する細胞培養用シート及び当該細胞培養用シートを用いて構成された三次元組織体の提供が可能となる。
図1(A)、(B)及び(C)は、細胞培養用シートの製造方法を説明するための図である。 図2は、ヘマトキシリン・エオシン染色した断片化エラスチン(EMF)を含むシートの断面図を示す顕微鏡写真である。 図3は、動脈由来平滑筋細胞(AO−SMC)の1日間培養後の観察結果を示す写真である。図3(A)は、断片化エラスチン(EMF)及びコラーゲンの混合物(Mix)を含むシートを用いて細胞培養した結果を示す写真である。図3(B)は、断片化エラスチン(EMF)を含むシートを用いて細胞培養した結果を示す写真である。 図4は、動脈由来平滑筋細胞(AO−SMC)の2日間培養後の観察結果を示す写真及び当該写真の簡略図である。図4(A)及び(B)は、それぞれ細胞培養後の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの上面及び側面を示す図並びにそれらの簡略図であり、図4(C)及び(D)は、それぞれ細胞培養後の断片化エラスチン(EMF)及びコラーゲンの混合物(Mix)を含むシートの上面及び側面を示す写真並びにそれらの簡略図である。 図5は、ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)の1日間培養後の観察結果を示す写真である。図5(A)は、細胞培養後の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの上面を示す写真であり、図5(B)は、細胞培養後のEMF及びコラーゲンの混合物(Mix)を含むシートの上面を示す写真である。 図6は、ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)の1日間培養後の観察結果を示す写真及び当該写真の簡略図である。図6(A)及び(C)は、細胞培養後の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの上面を示す写真及びその簡略図であり、図6(B)は、細胞培養後の断片化エラスチン(EMF)及びコラーゲンの混合物を含むシートの上面を示す写真及びその簡略図である。 図7は、実施例における三次元組織体の製造方法を説明するための図である。 図8(A)及び(B)は、それぞれ実施例における三次元組織体を示す写真及びその部分的な拡大写真である。 図9(A)、(B)及び(C)は、実施例における耐屈曲性及び加工性の評価結果を示す写真である。 図10(A)及び(B)は、実施例における透明性の評価結果を示す写真であり、図10(C)は、実施例における透明性の評価結果を示すグラフである。 図11(A)及び(B)は、実施例における接触角(疎水性)の評価結果を示す写真であり、図11(C)は、実施例における接触角(疎水性)の評価結果を示す写真である。 図12は、断片化エラスチン(EMF)を含むシート及び断片化コラーゲン(CMF)を含むシートのSEM写真である。図12(A)は、靭帯由来の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの写真であり、図12(B)は、血管由来の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの写真であり、図12(C)は、断片化コラーゲン(CMF)を含むシートの写真である。 図13は、断片化エラスチン(EMF)を含むシートの光学顕微鏡位相差画像である。図13(A)は、靭帯由来の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの写真であり、図13(B)は、血管由来の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの写真であり、図13(C)は、血管由来の断片化エラスチン(EMF)を含むシートの写真(図13(B)の拡大写真)である。 図14(A)は、断片化エラスチンを含むシート(EMFシート)を示す写真であり、図14(B)は、細胞を播種したEMFシートを積層した三次元組織体を示す写真である。 図15は、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)により染色した三次元組織体の顕微鏡観察結果を示す顕微鏡写真である。 図16は、作製した三次元組織体の上面(top)、及び側面(side)の顕微鏡写真並びに3D構築写真(3D constructed image)を示す。 図17は、作製した三次元組織体の細胞生存性の評価結果を示すグラフである。 図18は、非架橋の細胞外マトリックス成分又は一部が架橋された細胞外マトリックス成分を含むシートの形状を示す写真である。 図19は、細胞外マトリックス成分を含むシートの重量の時間変化を示すグラフである。 図20は、細胞外マトリックス成分を含むシートの引張強度及び延伸比の測定方法を説明するための写真である。 図21は、細胞外マトリックス成分を含むシートを用いて測定した引張強度及び延伸比の結果を示すグラフである。 図22はリン酸緩衝生理食塩水に浸漬させた細胞外マトリックス成分を含むシートを示す写真である。 図23は、リン酸緩衝生理食塩水に浸漬させた細胞外マトリックス成分を含むシートを用いて測定した引張強度及び延伸比の結果を示すグラフである。 図24は、リン酸緩衝生理食塩水に浸漬させた細胞外マトリックス成分を含むシートを示す顕微鏡写真である。 図25は、コラーゲン(SC)を含むシート(2mg/cm)を示す顕微鏡写真である。 図26は、細胞外マトリックス成分を含むシートの写真及び当該シートのエラスチカ・ワンギーソン染色による観察結果を示す顕微鏡写真である。 図27(A)は、細胞外マトリックス成分を含むシート上で細胞を1〜7日間培養したときの細胞数の計測結果を示すグラフであり、図27(B)は、細胞外マトリックス成分を含むシート上で培養した細胞の観察結果を示す顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔細胞培養用シート〕
本実施形態に係る細胞培養用シートは、細胞外マトリックス成分を含む。細胞培養用シートは、その上で細胞培養(細胞生育)可能なシートである。細胞培養用シートは、細胞培養用の足場材として利用することができる。また、細胞培養用シートは、細胞外マトリックス成分を含んでいるため、三次元組織体(詳細は後述する)の構成成分として、好適に利用することができる。
細胞外マトリックスは、複数の細胞外マトリックス分子によって形成されている、細胞外マトリックス分子の集合体である。細胞外マトリックスとは、生物において細胞の外に存在する物質を意味する。細胞外マトリックス成分は、1種又は2種以上の細胞外マトリックスを含むものであり、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の成分を用いることができる。細胞外マトリックス成分は、動物の細胞外マトリックス成分であることが好ましい。細胞外マトリックス成分は、天然由来であってよい。天然由来である細胞外マトリックス成分は、天然の細胞外マトリックス成分そのもの、及び天然の細胞外マトリックス成分を機械的又は熱的に処理したものを意味する。天然由来の細胞外マトリックス成分には、化学的処理により天然の細胞外マトリックス分子の構造を改変した成分は含まれない。化学的処理としては、例えば、アルカリ処理による加水分解等が挙げられる。天然由来の細胞外マトリックス成分を用いることにより、細胞との相互作用がより自然の状態に近い細胞培養用シートを形成させることができる。そのため、天然由来の細胞外マトリックス成分を含む細胞培養用シートは、生体組織モデルを作製するための細胞培養用シートとして好適である。
細胞外マトリックスの具体例としては、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、及びプロテオグリカン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞外マトリックスは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
エラスチンは、血管壁、靭帯等の弾性組織の成分をなす硬タンパク質である。エラスチンは、デスモシンとイソデスモシンというピリジン誘導体により橋かけ結合がつくられ、そのためにゴム弾性を示すタンパク質である。細胞外マトリックス成分にエラスチンを用いる場合、水中でも形状を保つ細胞培養用シートが得られやすくなる。
コラーゲンとしては、例えば、線維性コラーゲン又は非線維性コラーゲンが挙げられる。線維性コラーゲンとは、コラーゲン線維の主成分となるコラーゲンを意味し、具体的には、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン等が挙げられる。非線維性コラーゲンとしては、例えば、IV型コラーゲンが挙げられる。細胞外マトリックス成分にコラーゲンを用いる場合、水に対する溶解性の高い細胞培養用シートの作製が可能となる。
プロテオグリカンとしては、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書における「細胞外マトリックス成分」には、天然の細胞外マトリックスに加えて、断片化細胞外マトリックスも含まれる。断片化細胞外マトリックスとは、細胞外マトリックス分子の結合を切断することなく、細胞外マトリックスを解繊して得られるものであってよい。すなわち、断片化細胞外マトリックスは、解繊された細胞外マトリックス(解繊細胞外マトリックス)ということもできる。
細胞外マトリックス成分は、断片化細胞外マトリックスを含むことが好ましい。細胞外マトリックス成分が断片化細胞外マトリックスを含む場合、厚みのある細胞培養用シートの作製がより一層容易になる。天然由来の断片化細胞外マトリックスを用いる場合には、天然由来成分でありながら、より厚いシートの作製が可能となる。
断片化細胞外マトリックスの由来となる細胞外マトリックスは、一種類であってもよいし、複数種の細胞外マトリックスを併用してもよい。一般に、細胞外マトリックスは、化学的処理を施さない自然に近い状態では水に対して不溶性であり、高濃度の細胞外マトリックスを水溶媒中に溶解することは必ずしも容易ではないが、下記の様に断片化した細胞外マトリックスであれば、細胞外マトリックス自体に特段の化学的改変を加えなくとも水溶媒中により多量に分散可能となる。
断片化細胞外マトリックスの平均長は、100nm〜400μmであることが好ましく、4μm〜200μmであることがより好ましく、9μm〜200μmであることがさらにより好ましい。断片化細胞外マトリックスの平均直径は、50nm〜30μmであることが好ましく、0.5μm〜30μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることがさらにより好ましい。
断片化細胞外マトリックスは、断片化エラスチンであってよい。「断片化エラスチン」とは、線維性エラスチン等のエラスチンを断片化したものを意味する。
断片化エラスチンの由来となるエラスチンが平行繊維束由来である場合、断片化エラスチンの平均長は、100nm〜400μmであることが好ましく、22μm〜200μmであることがより好ましく、100μm〜200μmであることがさらにより好ましい。断片化エラスチンの由来となるエラスチンが平行繊維束由来である場合、断片化エラスチンの平均直径は、50nm〜30μmであることが好ましく、4μm〜30μmであることがより好ましく、20μm〜30μmであることがさらにより好ましい。このような平行繊維束由来のエラスチンとしては、例えば靭帯由来のエラスチンが挙げられる。
断片化エラスチンの由来となるエラスチンが網状薄膜由来である場合、断片化エラスチンの平均長は、100nm〜80μmであることが好ましく、4μm〜40μmであることがより好ましく、9μm〜200μmであることがさらにより好ましい。断片化エラスチンの由来となるエラスチンが網状薄膜由来である場合、断片化エラスチンの平均直径は、50nm〜30μmであることが好ましく、0.5μm〜30μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることがさらにより好ましい。このような網状薄膜由来のエラスチンとしては、例えば血管由来のエラスチンが挙げられる。
断片化細胞外マトリックスは断片化コラーゲンであってもよい。「断片化コラーゲン」とは、線維性コラーゲン等のコラーゲンを断片化したものであって、三重らせん構造を維持しているものを意味する。断片化コラーゲンの平均長は、100nm〜400μmであることが好ましく、22μm〜200μmであることがより好ましく、100μm〜200μmであることがさらにより好ましい。断片化コラーゲンの平均直径は、50nm〜30μmであることが好ましく、4μm〜30μmであることがより好ましく、20μm〜30μmであることがさらにより好ましい。
断片化細胞外マトリックスの平均直径及び平均長は、電子顕微鏡又は光学顕微鏡等によって個々の断片化細胞外マトリックスを解析することによって求めることが可能である。
細胞外マトリックス成分を断片化する方法(細胞外マトリックス成分を解繊する方法)は、特に制限はなく、例えば、超音波式ホモジナイザー、撹拌式ホモジナイザー、及び高圧式ホモジナイザー等のホモジナイザーを用いて細胞外マトリックスを断片化してもよい。撹拌式ホモジナイザーを用いる場合、細胞外マトリックスをそのままホモジナイズしてもよいし、水、エタノール等の水性媒体中でホモジナイズしてもよい。ホモジナイズする時間、回数等を調整することでミリメートルサイズ、ナノメートルサイズの断片化された細胞外マトリックスを得ることも可能である。また、凍結融解により、細胞外マトリックスを断片化してもよい。
細胞外マトリックス成分の少なくとも一部は、架橋されていてよい。細胞外マトリックス成分は、細胞外マトリックス成分を構成する細胞外マトリックス分子の分子内又は分子間で架橋されていてよい。細胞外マトリックス成分の少なくとも一部が、架橋されている場合、細胞培養用シートの安定性をより一層向上させることができる。
架橋する方法としては、例えば、熱、紫外線、放射線等の印加による物理架橋、架橋剤、酵素反応等による化学架橋等による方法が挙げられるが、その方法は特に限定されない。細胞外マトリックス成分が天然由来であることが好ましいため、物理架橋が好ましい。架橋は、共有結合を介した架橋であってよい。
細胞外マトリックス成分がコラーゲンを含む場合、架橋は、コラーゲン分子(三重らせん構造)の間で形成されていてもよく、コラーゲン分子によって形成されたコラーゲン細繊維の間で形成されていてもよい。架橋は、熱による架橋(熱架橋)が好ましい。熱架橋は、例えば、真空ポンプを使って減圧下で、加熱処理を行うことにより実施することができる。エラスチン又はコラーゲンの熱架橋を行う場合、細胞外マトリックス成分のアミノ基が、同一分子内又は他の分子のカルボキシ基とペプチド結合(−NH−CO−)を形成することにより、架橋されていてよい。
細胞外マトリックス成分は架橋剤を使用することによっても、架橋することができる。架橋剤は、例えば、カルボキシル基とアミノ基を架橋可能なもの、又はアミノ基同士を架橋可能なものであってよい。架橋剤としては、例えば、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシド系及びイミダゾール系架橋剤が経済性、安全性及び操作性の観点から好ましく、具体的には、グルタルアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド・スルホン酸塩等の水溶性カルボジイミドを挙げることができる。
架橋度の定量は、細胞外マトリックス成分の種類、架橋する手段等に応じて、適宜選択することができる。架橋度は、1%以上、2%以上、4%以上、8%以上、又は12%以上であってよく、30%以下、20%以下、又は15%以下であってもよい。
細胞外マトリックス成分中のアミノ基が架橋に使用される場合、架橋度は、Acta Biomaterialia,2015,Vol.25,pp.131−142等に記載されているTNBS法に基づき定量することが可能である。
架橋度は、カルボキシル基を定量することにより、算出してもよい。例えば、水に不溶性の細胞外マトリックス成分の場合、TBO(トルイジンブルーO)法により定量してもよい。
細胞外マトリックス成分は、エラスチン、コラーゲン、断片化エラスチン及び断片化コラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
細胞外マトリックス成分は、エラスチン及び断片化エラスチンからなる群より選択される少なくとも1種のエラスチン成分を含んでいてよく、また、コラーゲン及び断片化コラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種のコラーゲン成分を含んでいてよい。細胞外マトリックスは、上記エラスチン成分と、上記コラーゲン成分と、を含んでいてよい。細胞外マトリックス成分が、上記エラスチン成分と、上記コラーゲン成分とを共に含む場合、細胞外マトリックス成分は、断片化エラスチンと、上記コラーゲン成分とを含んでいてよく、断片化エラスチンと、コラーゲンと、を含むことが好ましい。
細胞外マトリックス成分が上記エラスチン成分を含む場合、上記エラスチン成分の含有量は、細胞外マトリックス成分全量に対して、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよく、90質量%以下、又は80質量%以下、75質量%以下であってよい。
細胞外マトリックス成分が上記コラーゲン成分を含む場合、上記コラーゲン成分の含有量は、細胞外マトリックス成分全量に対して、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよく、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
細胞外マトリックス成分中のエラスチン成分及びコラーゲン成分の含有量は、既存のタンパク質定量方法を適用して測定することができる。例えば、当該細胞外マトリックス成分を水溶媒中に分散させた分散液を用いて、ELISA等のイムノアッセイ等により、測定することができる。
一実施形態において、細胞培養用シートは、細胞外マトリックス成分のみからなっていてもよく、エラスチン成分及びコラーゲン成分のどちらか一方のみからなっていてもよく、エラスチン成分及びコラーゲン成分からなっていてもよい。また、一実施形態に係る細胞培養シートは、細胞外マトリックス成分以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。
細胞培養用シートの厚さは、その用途に応じて適宜定めることが可能であり、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30であってもよく、250μm以下、又は220μm以下であってもよい。細胞培養用シートの厚さは、例えば、デジタルノギスにより測定することができる。また、高い測定精度を必要とする場合には、原子間力顕微鏡(AFM)等によって細胞培養用シートの厚さを測定してもよい。
細胞培養用シートは、図1に示すように、例えば、細胞外マトリックス成分と水性媒体とを含む液状組成物を準備する準備工程、液状組成物を収容可能な基材に、液状化合物を添加する添加工程(図1A参照)、添加工程の後に、液状組成物の水性媒体を揮発させる揮発工程(図1B参照)と、を含む方法により製造することができる。添加工程及び揮発工程は、この順で繰り返して実施してよい(図1C参照)。液状組成物中の細胞外マトリックス成分の含有量、並びに、添加工程及び揮発工程を繰り返す回数を調整すること等により、得られる細胞培養用シートの厚さを調整することができる。
水性媒体とは、水、水と相溶し得る溶媒、又はこれらの混合物を意味する。水と相溶し得る溶媒としては、例えば、エタノールが挙げられる。
液状組成物を収容可能な基材は、その材質を適宜設計の範囲で選択することができる。液状組成物を収容可能な基材は、例えば、細胞外マトリックス成分の吸着度の低さ、加工性及びシートへの基材成分混入のリスクが低い等の観点から、シリコーンゴム等のシリコーン基材であってよい。
細胞培養用シートは、その上で細胞培養可能である。したがって、本実施形態に係る細胞培養用シートは、三次元組織体における細胞外マトリックス成分を含む細胞外マトリックス層(ECM層)として利用することができる。
〔三次元組織体〕
本実施形態に係る三次元組織体は、細胞外マトリックス成分を含む複数の細胞外マトリックス(ECM)層と、ECM層の間に存在する細胞と、を含む。ECM層の厚さは5μm以上であることが好ましい。ECM層としては、上述の細胞培養用シートを用いることができる。
本明細書における「三次元組織体」とは、細胞外マトリックス成分を含む層と細胞とが、三次元的に配置されている組織体であり、細胞培養によって人工的に作られる組織体を意味する。三次元組織体の形状としては、例えば、シート状、中空の円筒状、球状、培養容器等の形状に依存したブロック状、又はそれらの組み合わせによる形状等が挙げられる。ここで、生体組織は、血管、汗腺、リンパ管、脂腺等を含み、構成が三次元組織体より複雑である。そのため、三次元組織体と生体組織とは容易に区別可能である。
三次元組織体は、実験動物の代替品等として利用することができる。例えば、本実施形態に係る三次元組織体は、細胞外マトリックス成分を含む層及び細胞を含む層が交互に積層された組織(大動脈血管壁等)を模倣する材料として利用可能である。すなわち、本実施形態に係る三次元組織体は、人工血管、動脈硬化モデル等として好適に用いることができる。
細胞外マトリックス成分として、上記例示した成分を用いることができる。ECM層の厚さはその用途に応じて適宜定めることが可能であり、例えば1μm以上、3μm以上、5μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30であってもよく、250μm以下、又は220μm以下であってもよい。例えば、前述した大動脈血管壁モデルにおけるECM層を再現したい場合等は、5μm以上の厚さを持つECM層を形成することが好ましい。ECM層の厚さは、例えば、三次元組織体を形成させた後(三次元組織化後)、通常の組織切片の作成及び観察により測定することができる。組織切片の観察により、ECM層の厚さを測定する場合、ECM層の厚さは必ずしも完全に均一ではない可能性があるが、ECM層全体のうち少なくとも一部が上記厚さの下限値以上であることが好ましい。
三次元組織体において、複数のECM層の間には、細胞が存在する。ECM層の間に存在する細胞は、例えば、三次元的に配置されていてよい。
細胞は、特に限定されないが、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の動物に由来する細胞であってよい。細胞の由来部位も特に限定されず、骨、筋肉、内臓、神経、脳、骨、皮膚、血液等に由来する体細胞であってもよく、生殖細胞であってもよい。細胞は、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)であってもよい。また、細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の培養細胞であってもよい。一種類の細胞を用いてもよいし、複数種類の細胞を組み合わせて用いてもよい。細胞としては、例えば、神経細胞、樹状細胞、免疫細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、線維芽細胞、肝癌細胞等の癌細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、組織幹細胞、平滑筋細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。細胞は、好ましくは、線維性コラーゲン等の細胞外マトリックス成分を分泌する細胞外マトリックス成分分泌細胞を含む。細胞外マトリックス成分分泌細胞としては、例えば、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞等の間葉系細胞が挙げられ、好ましくは、線維芽細胞である。好ましい線維芽細胞としては、例えば、ヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)、ヒト心臓線維芽細胞(NHCF)及びヒト歯肉線維芽細胞(HGF)が挙げられる。
細胞は、血管上皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
ECM層は、2層以上であればよく、例えば、3層以上、5層以上、又は10層以上であってもよく、例えば、50層以下、又は20層以下であってもよい。
ECM層が2層以上である場合、それぞれのECM層上に存在する細胞の種類は、同種であってもよく、異種であってもよい。
〔三次元組織体の製造方法〕
本実施形態に係る三次元組織体の製造方法は、細胞外マトリックス成分を含む細胞培養用シート(細胞外マトリックス(ECM)層)上に細胞を播種することを含む。本実施形態に係る三次元組織体の製造方法は、細胞培養用シート上に播種された細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シートを更に積層することを含んでいてよく、細胞培養用シート上に播種された前記細胞を培養することを含んでいてよい。
一実施形態に係る三次元組織体は、例えば、ECM層(一つの細胞培養用シート)上で細胞を培養する工程(培養工程)と、ECM層上の細胞が存在する側に、細胞外マトリックス成分を含む、別のECM層を積層する工程(積層工程)と、を含む方法により、製造することができる。別のECM層とは、別途製造されたECM層であればよい。
培養工程では、ECM層の主面上で細胞を培養する。細胞は、ECM層の片面又は両面上で培養してよい。培養工程は、通常の方法により、ECM層上に細胞を播種及び培養することにより、実施することができる。細胞を培養する方法は、特に制限はなく、培養する細胞の種類に応じて好適な培養方法で行うことができる。例えば、一般的な細胞培養用シャーレ等の培養基材上に、前述した細胞培養用シート等のECM層を載置し、そのECM層上に細胞を播種し、培養基材を培地で満たすことにより培養することができる。また、細胞培養は、培養容器内(リアクター中)で行ってよい。ECM層の両面上での細胞培養は、例えば、培養容器にECM層の両面が接しない状態(培養容器からECM層の両面を離した状態)で培養することにより、実施することができる。培養温度は、例えば、20℃〜40℃であってもよく、30℃〜37℃であってもよい。培地のpHは、例えば、6〜8であってもよく、7.2〜7.4であってもよい。培地は特に制限はなく、培養する細胞の種類に応じて好適な培地を選択できる。培地としては、例えば、Eagle’s MEM培地、DMEM、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RPMI、及びGlutaMax等が挙げられる。培地は、血清を添加した培地であってもよいし、無血清培地であってもよい。培地は、二種類以上の培地を混合した混合培地であってもよい。培養時間は、例えば、1日〜2週間であってもよく、1週間〜2週間であってもよい。この培養時間は、培養工程において、細胞を播種した時点から、細胞上にECM層を積層するまでの時間である。培養工程において、播種する細胞数は、培養する細胞の種類、培養空間の容積、組織中に占める細胞の割合、ECM層の細胞を培養する面の面積及び細胞培養の目的等に応じて、適宜設定することができる。例えば、播種する細胞数は、3.5×10cells/cm個以上であってよく、7.0×10cells/cm個以下であってよい。
積層工程では、ECM層上の細胞が存在する側に、別のECM層を積層する。ECM層上で、細胞からなる細胞集団の層が形成されている場合、細胞集団の層上に、別のECM層を積層してよい。細胞集団の層は、細胞核同士が重ならないようにして、水平方向に配置された複数の細胞から構成される細胞層を含んでいる。細胞集団の層は、複数の細胞層で構成されていてもよい。
ECM層の積層は、例えば、培地を除去した後、ピンセット等でECM層(細胞培養用シート)を積層することにより実施することができる。これにより、ECM層と、ECM層間に存在する細胞と、を含む三次元組織体を製造することができる。積層後、遠心してから、培地を添加することにより、ECM層間に存在する細胞を更に培養してもよい。また、ECM層の積層は、例えばECM層を略円筒状の原反等に巻き取っていくことで積層してもよい。この様な積層方法の場合、先に巻き取られる方から後に巻き取られる方にかけて細胞の種類及び/又は分布を変えることにより、内側から外側にかけて層構成の異なる積層組織を形成することができる。原反は、細胞外マトリックス成分、生分解性物質等の生体適合性材料を用いて積層組織の一部としてもよいし、巻き取り工程の途中もしくは最後において積層組織から除外してもよい。この様な方法でECM層を積層する場合には、ECM層には巻き取りに耐え得る程度の基材としての一定の強度及び厚みを有することが好ましい。
また、細胞が存在する、1又は複数のECM層を、上記別のECM層として、ECM層間に細胞が存在するように積層してもよい。
〔細胞培養用シートの用途〕
本実施形態に係る細胞培養用シートは、その上で細胞培養可能であり、かつ、水の透過性に優れていることから、細胞培養用の足場材として好適に利用することができる。
また、本実施形態に係る細胞培養用シートは、耐屈曲性及び加工性に優れている。したがって、当該細胞培養用シートは、例えば、培養基材、培養容器等の形状に応じた所望の形状に加工することも容易であるし、細胞を曲面上で培養するための基材や、逆に、培養した細胞を曲面上に積層するための基材としても好適に利用することができる。また、本実施形態に係る細胞培養用シートは、透明性が低いことから、例えば、光の遮蔽を必要とする条件下での細胞培養に用いられるシート、又は光保護用シートに利用することもできる。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔細胞外マトリックス(ECM)成分の準備〕
ECM成分として、以下の材料を準備した。
エラスチンA(ウシ靭帯由来エラスチン、Elastin Products Company製、商品名:Elastin E60)
エラスチンB(ウシ血管由来エラスチン、Elastin Products Company製、商品名:Bovine AorticElastin SB87)
コラーゲン(ブタ皮膚由来I型コラーゲン、日本ハム株式会社製、凍結乾燥品)
(断片化繊維(マイクロファイバー(MF))の調製)
断片化エラスチン(エラスチンマイクロファイバー、以下「EMF」ともいう。)の分散液を以下の方法により製造した。
エラスチンBをMilliQに1質量%の濃度となるように加えた後、ホモジナイザーを用いて5分間ホモジナイズすることにより、断片化エラスチンBを含む分散液を得た。
断片化エラスチンBの平均長は、59.9μm±44.0μmであり、断片化エラスチンBの平均直径は、10.1±2.7μmであった(サンプル数:50)。
エラスチンAをジメチルスルホキシド(DMSO)に1質量%の濃度となるように加えた後、ホモジナイザーを用いて3分間ホモジナイズした。得られた分散液をMilliQで遠心置換した後、ホモジナイザーを用いて5分間ホモジナイズした。これにより、断片化エラスチンAを含む分散液を得た。
断片化エラスチンAの平均長は、9.47±4.77μmであり、断片化エラスチンAの平均直径は、1.27±0.40μmであった(サンプル数:50)。
断片化コラーゲン(コラーゲンマイクロファイバー、以下「CMF」ともいう。)の分散液を以下の方法により製造した。
コラーゲン(凍結乾燥体)を70体積%エタノール溶液に1質量%の濃度となるように加えた後、ホモジナイザーを用いて5分間ホモジナイズした。得られた分散液を100%エタノールによる遠心置換を2回行い、断片化コラーゲンを含む分散液を得た。
断片化コラーゲンの平均長は、22.5μm(最小:9.9μm、最大78.6μm、標準偏差11.0)であり、断片化コラーゲンの平均直径は、4.4μm(最小:0.95μm、最大:16.8μm、標準偏差:2.6)であった(サンプル数:391)。
断片化繊維(断片化エラスチン及び断片化コラーゲン)の平均長及び平均直径は、電子顕微鏡によって個々の断片化繊維を解析することで求めた。
〔シートの作製〕
シートの作製には、ECM成分を含む分散液として、断片化繊維を含む分散液、又は、断片化エラスチン(靭帯由来)及びコラーゲン(非断片化繊維)の混合物を含む分散液を用いた。断片化エラスチン及びコラーゲンの混合物(質量比1:1)を含む分散液は、断片化エラスチンを含む分散液と、コラーゲン(非断片化繊維)の溶解液とを、質量比1:1となるように混合することにより、調製した。尚、「非断片化繊維」とは、上述した断片化処理を行わないという点においての記述であって、コラーゲン繊維が一切溶解しないか、または分散せずにコラーゲン繊維の塊として存在することを意味するものではない。
コラーゲン(非断片化繊維)の溶解液は、以下の方法で調製した。まず、コラーゲンを70体積%エタノール溶液に1質量%となるように加えて、10分間攪拌し、遠心沈降後、上澄みを除去した。風乾により、エタノール及び水を揮発させ、MilliQをコラーゲンが1質量%となるように加えた。その後、氷冷とボルテックスを繰り返して、コラーゲンを溶解させた。これにより、コラーゲン(非断片化繊維)の溶解液を得た。
シートの作製には、シリコーン枠が設けられたシリコーン基材を用いた。シートの作製は、水平に保たれたガラス台上で実施した。シリコーン枠及びシリコーン基材としては、アズワン株式会社のシリコーンゴムシート 1t 300角を用いた。
それぞれ4mg/mL、10mg/mL、20mg/mL又は40mg/mLの濃度でECM成分を分散させた溶液を用いて、以下の操作1及び2を行うことにより、単位面積当たりのECM成分量(理論値、単位:mg/cm)が、1mg/cm、2.5mg/cm、5mg/cm又は10mg/cmである、ECM成分を含むシートを作製した(図1(A)〜(B)参照)。
1:シリコーン枠内に、ECM成分を含む分散液を、滴下量250μl/cmで、滴下する(図1(A)参照)。
2:37℃での乾燥により、滴下した分散液の溶媒を揮発させる(図1(B)参照)。
作製した各シートについて、FT−IRにより、適切なピークの存在を確認した。これにより、ECM成分に性質変化が起きていないこと及び不純物(シリコーン等)の混入がないことを確認した。
〔シートの厚さの測定〕
表1に、ECM成分量2.5mg/cm、5mg/m又は10mg/cmに調整した各種シートの厚さの測定結果を示す。シートの厚さは、デジタルノギス(MITUTOYO製、Absolute digimatic)を用いて測定した。断片化エラスチン(血管由来)については、ECM成分量1mg/cmであるシートの厚さも測定した。
Figure 2019189786
図2は、ヘマトキシリン・エオシンにより染色(HE染色)した断片化エラスチン(血管由来)を含むシート(ECM成分量:1mg/cm)の断面図を示す顕微鏡写真である。図2に示すとおり、断片化エラスチンを含むシートは、ECM成分量2.5mg/cm以上において、いずれのシートも厚さ10μm以上であり、充分な厚さを有していた。
〔細胞生育の確認〕
まず、得られた各種シート上で、動脈由来平滑筋細胞(AO−SMC)が生育可能であるかを評価した。断片化エラスチン(靭帯由来)を含むシート(ECM成分量:2.5mg/cm)又は断片化エラスチン(靭帯由来)及びコラーゲンの混合物(Mix)を含むシート上に、AO−SMCを、2×10cells又は1×10cells播種した。COインキュベーターにより37℃で1日間培養後、10%ホルムアルデヒドで固定後、各種染色試薬(蛍光標識試薬)で染色した。培養は、6mm(直径)の円形シートを用いた。培地として、平滑筋細胞用培地(Lonza CC-3182 smooth muscle growth medium 2)を用いた。
エラスチンファイバー(EMF)は、エラスチン(elastin)に由来する自家蛍光を有する。したがって、EMFの存在は、エラスチン由来の自家蛍光により、観察した。なお、コラーゲンは、蛍光を発しないため観察できていないが、図3(A)並びに図4(C)及び(D)では、観察した細胞培養用シート中にコラーゲンは存在している。
平滑筋細胞マーカーとしては、αSMAを用いた。蛍光標識試薬として、αSMA一次抗体(抗α平滑筋アクチン抗体、BioLegend社製)、二次抗体(Goat anti-Mouse IgG (H+L)Cross-Adsorbed Secondary Antibody, Alexa Fluor 546、Invitrogen)、及びTO-PROTM-3 Iodide(製品番号:T3605、Invitrogen)、CellTrackerTM Red CMTPXDye(製品番号:C34552、Invitrogen)を用いた。
図3は、AO−SMC(播種細胞数2×10cells)の1日間培養後の蛍光測定による観察結果を示す。図4は、AO−SMC(播種細胞数1×10cells)の2日間培養後の蛍光測定による観察結果を示す。図4(A)〜(D)は、観察結果を示す写真(左)及び当該写真の簡略図である。図4の簡略図中、白抜きの領域はEMF(エラスチンの自家蛍光)、斜線の領域はαSMA(平滑筋細胞マーカー)、点描で記載した領域は細胞核を示す。
図3〜4に示すとおり、断片化エラスチン(EMF)を含むシート並びに断片化エラスチン及びコラーゲンの混合物を含むシートにおいて、シート上で細胞の接着が見いだされたことから、各種シート上での細胞生育が可能であると判断した。
次に、得られた各種シート上で、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が生育可能であるかを評価した。細胞として、HUVEC、培地として内皮細胞増殖培地(Lonza CC-3162 Endothelial cell growth medium 2)を用い、播種細胞数2×10cells、培養期間1日間の条件下、ECM成分を含むシート上で、上記と同様にして、細胞培養を行った。
図5及び6は、細胞培養後の各種シートを抗CD31抗体で免疫染色した写真である。図6(A)〜(C)は、観察結果を示す上面写真及び当該写真の簡略図である。図6の簡略図中、白抜きの領域はEMF(エラスチンの自家蛍光)、点描で記載した領域はHUVEC(CD31による染色部分)を示す。
図5及び6に示すとおり、細胞としてHUVECを用いた場合においても、断片化エラスチンを含むシート並びに断片化エラスチン及びコラーゲンの混合物を含むシート上で、細胞生育可能であることを確認した。
〔三次元組織体の製造1〕
図7は、三次元組織体の製造方法の概略図を示す。3つの断片化エラスチン(EMF)(ECM成分量:2.5mg/cm)を含むシート(EMF sheet)を準備し、これらのシート上に、細胞(AO−SMC)を、1×10cellsで播種した。細胞を平滑筋細胞用培地で、37℃で1日間、COインキュベーターで培養した。培養後、EMFを含むシートを積層させた。積層後、遠心(条件:1000rpm、5分間)してから、平滑筋細胞用培地で、2日間培養した。培養後に、得られた試料を顕微鏡観察に供した。図8は、HE染色した試料の顕微鏡観察結果を示す。
図8に示すとおり、EMFを含む層と、層間に存在する細胞を含む三次元組織体が得られた。
〔耐屈曲性及び加工性の評価〕
ECM成分を含むシート(図9(A)参照)の屈曲性及び加工性を評価した。屈曲性及び加工性の評価では、EMF(血管由来)を含むシート(ECM成分量:5mg/cm)を用いた。図9(B)に示すとおり、EMFを含むシートは、屈曲可能であった。図9(C)に示すとおり、EMFを含むシートは、パンチによる加工が可能であった。以上より、EMFを含むシートが、耐屈曲性及び加工性に優れることが示された。
〔透明性の評価〕
ECM成分を含むシートの透明性を目視及び顕微鏡並びに紫外可視赤外分光光度計(V−670 日本分光社製)を用いて取得した透過率のパラメータにより評価した。透明性の評価では、EMF(ウシ靭帯由来)を含むシート(ECM成分量:2.5mg/cm、又はECM成分量:5mg/cm)、及びCMFを含むシート(ECM成分量:5mg/cm)を用いた。
図10(A)及び(B)は、それぞれCMFを含むシート及びEMFを含むシート(ECM成分量:5mg/cm)の目視画像及び顕微鏡画像を示す写真である。図10(C)は、各シートにおける透過率(縦軸)を示す。横軸は、波長(nm)を表す。
図10(A)〜(C)に示すとおり、断片化繊維を含むシートは透明性が低いことが示された。
〔接触角(疎水性)の評価〕
EMFを含むシートと、EMF及びコラーゲンの混合物(Mix)を含むシートの水の接触角の測定を行った。結果を図11に示す。図11中、縦軸は接触角を示し、横軸は時間(単位:秒(s))を示す。なお、水の接触角は、協和界面科学株式会社製のDrop Master(商品名)により測定した。
図11(A)〜(C)から、EMFを含むシートは、水の透過性が高い(水の接触角が小さく変化する)ことが示された。また、EMFとコラーゲンとを混合することにより、得られるシートの疎水性が変化することが示された。
〔EMFを含むシートの顕微鏡観察結果〕
図12は、EMFを含むシート(ECM成分量:5mg/cm)及びCMFを含むシート(ECM成分量:5mg/cm)のSEM写真である。図12(A)は、靭帯由来のEMFを含むシートの写真であり、図12(B)は、血管由来のEMFを含むシートの写真であり、図12(C)は、CMFを含むシートの写真である。
図13は、EMFを含むシート(ECM成分量:5mg/cm)の光学顕微鏡位相差画像を示す写真である。図13(A)は、靭帯由来のEMFを含むシートの写真であり、図13(B)は、血管由来のEMFを含むシートの写真であり、図13(C)は、図13(B)の拡大写真である。
図12(A)及び(B)並びに図13のとおり、断片化繊維を含むシートには、隙間(ポア)が存在していた。図12(A)に示すEMF(靭帯由来)を含むシート中のEMFの平均直径(太さ)は10〜20μmであり、図12(B)に示すEMF(血管由来)を含むシート中のEMFの平均直径(太さ)は1〜2μmであった。図13(A)に示すEMF(靭帯由来)を含むシートの平均直径(太さ)は10μmであり、図13(C)に示すEMFを含むシートの平均直径(太さ)は1.1±0.1μmであった。以上のとおり、EMFは、シート化前後で繊維径に大きな変化はみられなかった。
図12及び13に示すような構造を有していることから、断片化繊維を含むシートは、溶液に対する透過性を示す、生体の状態に比較的近い等の利点があると考えられた。
〔三次元組織体の製造2〕
3つの断片化エラスチン(EMF)(ECM成分量:1mg/cm)を含むシート(EMFシート)を準備し、各シート上に、ヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)を、2×10cellsで播種した。図14(A)は、EMFシートを示す写真である。EMFシート上のNHDFを37℃で2日間、COインキュベーター内で培養した。培養後、EMFを含むシートを積層させた。図14(B)は、EMFシートを積層したときの写真である。積層後、遠心(条件:1100rpm、5分間)してから、2日間培養した。培養後に、クローニングリングで、得られた三次元組織体を囲み、測定用試料とした。得られた試料は、固定化してから顕微鏡観察に供した。図15は、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)により染色した試料の顕微鏡観察結果を示す。
図15に示すように、EMFシートを用いれば、EMFを含む層を有する多層構造の三次元組織体が形成できることが示された。
〔細胞の生存性の評価〕
3つの断片化エラスチン(EMF)(ECM成分量:2mg/cm)を含むシート(EMFシート)を準備し、各シート上に、NHDFを、1×10cellsで播種した。次いで、EMFシート上のNHDFを37℃で2日間、4日間、又は6日間COインキュベーター内で培養した。培養後に得られた試料は、10%パラホルムアルデヒド水溶液(p−PFA)を用いて固定化した後に、共焦点顕微鏡で観察した。図16に測定した試料の上面図及び側面図並びに3Dイメージを示す。図16では、EMFを含むシート上に細胞が存在している。
細胞生存率(Cell viability)、及び細胞数の時間変化は、次の方法により測定した。EMFシート上にNHDFを播種した後、当日(すなわち0日目)、2日目、4日目、6日目にシートを回収した。細胞数の時間変化は、それぞれの回収したシートからDNeasyBlood&Tissueキット(QIAGEN製)を用いてDNAを抽出することにより、抽出されたDNA量によって評価した。また、シート上に播種していない1×10cellsのNHDFからも同様にDNAを抽出し、コントロールとした。また、細胞生存率は、2日目に回収したシートからトリプシン溶液によって細胞を剥離し、トリパンブルーによって死細胞を染色したのちに、生存している細胞数を数えることにより算出した。また、シート上に播種していない1×10cellsのNHDFを2日間培養したものをコントロールとした。
図17に示すとおり、EMFシート上に播種された細胞の生存性が十分に長いことが示された。また、細胞の生存性はコントロールと比較しても同程度であったことから、EMFシートが細胞の生育に悪影響を与えないことが示された。
[細胞外マトリックスシートの熱架橋]
断片化エラスチン(EMF)、コラーゲン(SC)、又は断片化コラーゲン(CMF)を含むシートを準備した。これらのシートを減圧下、200℃、12時間の条件で加熱することにより、熱架橋を行った。図18に得られた熱架橋前後のシートの写真を示す。熱架橋を行ったことによる外観上の変化はなかった。
図19(A)は、熱架橋を行っていないEMFシート、SCシート及びCMFシートの重量の時間変化を示すグラフであり、図19(B)は熱架橋を行ったEMFシート、SCシート及びCMFシートの重量の時間変化を示すグラフである。
シートに含まれる細胞外マトリックスを熱架橋することにより、シートの長期安定性が増し、重量の時間変化がより抑制しやすくなることが示された。
〔機械特性の評価〕
サイズ1cm×1cm、厚さ20μmの正方形状の断片化エラスチン(EMF)、断片化コラーゲン(CMF)、コラーゲン(CS)、又はEMF及びCSを1:1の質量比で含むシート(Mixシート)と、これらのシートそれぞれを上記同様の方法で熱架橋したシートを評価用シートとして準備した。熱架橋されていない評価用シート(no treatment)と、熱架橋された評価用シート(Cross−linked)の引張強度(tensile strength、単位:MPa)を測定した。引張強度は、室温で、小型卓上試験機(島津製作所製、EzTest/CE、負荷容量:500N)を用いて、小型平面掴み具により0.5mmの間隔をあけて評価用シートの両端を固定し、試験速度1mm/minで測定した。引張強度の測定結果を図21(A)に示す。破断するまでに評価用シートが伸びた割合を示す延伸比(Strech ratio)を図21(B)に示す。引張強度及び延伸比は、機械特性評価用のシートを図20で示す方向に引っ張ることにより評価した。
断片化エラスチンのシートでは、ヒト大動脈に近い引張強度を有していた(ヒト大動脈の引張強度:2.5〜5MPa程度)。
引張強度の測定の前に、図22に示すように評価用シートをリン酸緩衝食塩水に浸漬させたこと以外は、上記同様にして、引張強度及び延伸比を測定した。リン酸緩衝食塩水に浸漬させた後に測定した評価用シートの引張強度及び延伸比の試験結果を図23(A)及び(B)に示す。図22(A)は、CMFのシートをリン酸緩衝食塩水に浸漬させたときの写真であり、図22(B)は、熱架橋したCMFのシートをリン酸緩衝食塩水に浸漬させたときの写真である。図24は、リン酸緩衝食塩水に浸漬させた各種評価用シートの走査型電子顕微鏡による写真を示す。
熱架橋された評価用シートは、乾燥した状態では引張強度と延伸比が小さかったが、リン酸緩衝食塩水に浸漬させたことにより、乾燥した状態では引張強度と延伸比が増大した。シートに用いる細胞外マトリックスの種類の選択、架橋の実施、リン酸緩衝食塩水への浸漬等により、引張強度及び延伸比が調整できることが示された。
〔コラーゲンを含むシートの顕微鏡観察〕
断片化していないコラーゲン(SC)を含むシート(2mg/cm)の顕微鏡観察結果を図25に示す。断面観察に厚さを測定した結果、SCを含むシートの厚さは約5μmであり、断片化したコラーゲンを含むシートの厚さよりも明らかに薄かった。
〔細胞吸着率の評価〕
基材上に、EMFシート、CSシート、又はEMF及びCSを1:1の質量比で含む混合物(Mix)を含むシートを作製し、37℃、24時間の条件でインキュベーションした。図26は、EMFシート、CSシート、又はEMF及びCSを1:1の質量比で含む混合物(Mix)を含むシートの写真及びエラスチカ・ワンギーソン染色による観察結果を示す顕微鏡写真である。各シートにおいて、エラスチカ・ワンギーソン染色により、エラスチン及び/又はコラーゲンを示す染色が確認された。
基材上に配置された上記シート上に、ヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)1×10cells播種した。各シートのサイズは1cmとした。各シート上に播種された細胞を37℃、5%COの条件で、1〜7日間培養した。培養後の各試料に対し、蛍光観察及びDNAアッセイを実施した。
図27(A)は、培養後の試料の細胞数の計測結果を示す。図27(B)は、NHDFを播種された各シートの蛍光観察結果である。図27(A)に示すように、培養7日目においても高い細胞吸着率が維持されていた。EMFシート、CSシート、又はEMF及びCSを1:1の質量比で含む混合物(Mix)を含むシートは、長期的に高い細胞吸着率で細胞培養可能であるため、細胞培養用シートとして優れた機能を有している。図27(B)において、各シート上にNHDFが存在することが確認された。

Claims (12)

  1. 細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シート。
  2. 前記細胞外マトリックス成分が、断片化細胞外マトリックスを含む、請求項1に記載の細胞培養用シート。
  3. 前記シートの厚さが5μm以上である、請求項1又は2に記載の細胞培養用シート。
  4. 前記細胞外マトリックス成分が天然由来である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養用シート。
  5. 前記細胞外マトリックス成分が、エラスチン、コラーゲン、断片化エラスチン及び断片化コラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞培養用シート。
  6. 前記細胞外マトリックス成分が、エラスチン及び断片化エラスチンからなる群より選択される少なくとも1種のエラスチン成分を含み、かつ、前記エラスチン成分の含有量が、前記細胞外マトリックス成分全量に対して、50質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養用シート。
  7. 前記細胞外マトリックス成分の少なくとも一部が架橋されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養用シート。
  8. 細胞外マトリックス成分を含む複数の細胞外マトリックス層と、前記細胞外マトリックス層の間に存在する細胞と、を含み、
    前記細胞外マトリックス層の厚さが5μm以上である、三次元組織体。
  9. 前記細胞が、血管上皮細胞及び平滑筋細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の三次元組織体。
  10. 細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シート上に細胞を播種することを含む、三次元組織体の製造方法。
  11. 前記細胞培養用シート上に播種された細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む、細胞培養用シートを更に積層することを含む、請求項10に記載の三次元組織体の製造方法。
  12. 前記細胞培養用シート上に播種された前記細胞を培養することを含む、請求項10又は11に記載の三次元組織体の製造方法。
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