JP6425420B2 - 細胞培養チャンバーとその製造方法、細胞培養チャンバーを利用した細胞培養方法および細胞培養キット - Google Patents

細胞培養チャンバーとその製造方法、細胞培養チャンバーを利用した細胞培養方法および細胞培養キット Download PDF

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本発明は、細胞培養チャンバーとその製造方法、細胞培養チャンバーを利用した細胞培養方法および細胞培養キットに関する。
創薬および動物実験代替法の研究には、様々な機能細胞を用いて生体を反映した3次元組織モデルを簡便に構築できる培養システムの開発が長く求められてきた。特にコラーゲンゲルを細胞の培養担体に用いる3次元培養技術は、血管新生モデル、癌浸潤モデル、上皮間充織モデルなどを再構築するのに有用であるが、幅広く普及するには至っていなかった。
その理由としては、従来のコラーゲンゲルは、低密度の線維で構成されるため柔らかく取り扱いが困難であること、また、不透明であるため培養細胞の位相差顕微鏡観察は必ずしも容易でないこと等が考えられてきた。
このような問題を解決するため、本発明者は、低温でゲル化(gelation)に至適な塩濃度と水素イオン濃度(pH)を付与したコラーゲンのゾルを培養シャーレ内に注入して、さらに至適な温度に保温することでコラーゲンのゾルをゲル化した後、低温で十分に乾燥させることで自由水のみならず結合水も徐々に除去してガラス化(vitrification)し、さらに再水和(rehydration)することで、コラーゲンゲルの物性を、強度と透明性に優れた薄膜に再現性良く変換する技術を確立している(特許文献1)。
そして、ハイドロゲルであればコラーゲン以外の成分のゲルでも、ガラス化した後に再水和することで、ゲルを安定した新しい物性状態に変換することができるので、このガラス化工程を経て作製された新しい物性状態のゲルをビトリゲル(vitrigel)と命名している(非特許文献1、登録商標:第5602094号)。
特に、これまでに開発してきたコラーゲンビトリゲル薄膜は、生体内の結合組織に匹敵する高密度のコラーゲン線維が互いに絡み合った厚さ数十マイクロメートルの透明な薄い膜であり、優れたタンパク質透過性及び強度を有しているという特徴がある。また、作製工程のコラーゲンゾルには様々な物質を添加できるので、添加した物質の特性をコラーゲンビトリゲル薄膜に反映することができる。さらに、例えば、環状ナイロン膜支持体を包埋したコラーゲンビトリゲル薄膜は、ピンセットで容易に取り扱うことができる。
そして、本発明者らは、このコラーゲンビトリゲル薄膜に関する技術をさらに発展させ、コラーゲンビトリゲル薄膜の透明性、作製再現性を向上させるための技術(特許文献2)や、コラーゲンビトリゲルを膜形状ではなく糸状あるいは管状の形状に作製する技術(特許文献3)や、磁気を利用してコラーゲンビトリゲルを固定あるいは移動する技術(特許文献4)なども提案している。
また、本発明者は、所望の形状に成形可能であり、取り扱い性に優れたビトリゲル膜乾燥体を迅速かつ大量生産するための方法を創案している(特許文献5)。この方法によれば、ビトリゲル膜乾燥体を培養シャーレに付着させることなく膜状態で取得することができるため、その取り扱い性、加工性を利用して、従来困難であったビトリゲル膜乾燥体の新たな用途を確立することができる。
そして、本発明者は、特許文献5の方法を応用して、ビトリゲル膜乾燥体を利用した細胞培養チャンバーを創案している。さらに、この細胞培養チャンバーを利用して、化学物質のADMET(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)の評価等が可能な3次元組織モデルの構築にも成功している(特許文献6)。
さらに、この細胞培養チャンバーで作製した3次元組織モデルを使用して、腹膜透過解析や眼刺激性試験への適用が試みられており、その有用性が明らかになっている(非特許文献3、4)。また、この他にも肝代謝試験、肝毒性試験、角膜透過性試験、皮膚感作性試験等の様々な試験法の開発が、この細胞培養チャンバーを利用して精力的に行われている。
特開平8−228768号公報 WO2005/014774 特開2007−204881号公報 特開2007−185107号公報 WO2012/026531 特開2012−115262号公報
Takezawa T, et al., Cell Transplant. 13: 463-473, 2004 Takezawa T, et al., J. Biotechnol. 131: 76-83, 2007 Aoki T, et al., Am. J. Physiol. Renal. Physiol. 306: F116-122, 2013 Yamaguchi H, et al., Toxicol. Sci. 135: 347-355, 2013
しかしながら、特許文献6の細胞培養チャンバーによって細胞を培養する際、チャンバー内部に培養液などの液体を注入すると、水和したビトリゲル膜が下方に弛んでしまう場合があり、これによって、チャンバー内に供給された細胞がビトリゲル膜の中央に集まってしまうことが確認された。この場合、細胞同士の凝集性が低く、取扱いが比較的容易な細胞(例えば、マウス胚性線維芽細胞(NIH3T3)、ヒト結腸癌由来細胞(Caco-2)、ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)など)を用いた組織モデルの構築では大きな問題にはならないが、例えば、ヒト肝癌由来細胞(HepG2)などの凝集しやすい細胞の場合には中央に凝集塊が形成され、ビトリゲル膜上で均一な細胞層を構築することが難しいことが改善すべき点として見出された。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ビトリゲル膜乾燥体を備えた細胞培養チャンバーにおいて、ビトリゲル膜の弛みを抑制し、ビトリゲル膜上で細胞を均一に分散させて培養することができる細胞培養チャンバーを提供することを課題としている。また、この細胞培養チャンバーの製造方法、細胞培養チャンバーを利用した細胞培養方法および細胞培養キットを提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の細胞培養チャンバー、細胞培養チャンバーの製造方法、細胞培養方法、細胞培養キットを提供する。
<1>筒状のチャンバー本体と、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体と、支持体とを備えた細胞培養チャンバーであって、前記チャンバー本体には、対向する両端に開放端面が形成されており、このうちの一方の開放端面には、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側が当接した状態で固定されており、かつ、このビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側には前記支持体が配設されており、前記支持体は、接触角が70°以上であることを特徴とする細胞培養チャンバー。
<2>前記支持体は、プラスチック製の薄膜であることを特徴とする前記<1>の細胞培養チャンバー。
<3>前記支持体は、シリコン処理PET薄膜であることを特徴とする前記<1>の細胞培養チャンバー。
<4>以下の工程:
対向する開放端面が両端に形成されている筒状のチャンバー本体の一方の開放端面に、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側を当接させて固定し、前記開放端面を被覆する工程;および
前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側に、接触角が70°以上である支持体を配設する工程
を含むことを特徴とする細胞培養チャンバーの製造方法。
<5>以下の工程:
前記<1>から<3>のいずれかの細胞培養チャンバーの前記チャンバー本体内側に1種また2種以上の細胞を供給する工程;
前記ビトリゲル膜乾燥体が再水和されたビトリゲル膜が前記支持体に支持された状態において、前記ビトリゲル膜上で細胞を培養する工程;および
前記ビトリゲル膜から前記支持体を取り外す工程
を含むことを特徴とする細胞培養方法。
<6>筒状のチャンバー本体と、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体と、支持体とを含む細胞培養キットであって、前記チャンバー本体は、対向する両端面が開放された開放端面を有し、この開放端面のうちの一方には、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側が当接した状態で固定されており、前記支持体は、接触角が70°以上であり、かつ、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側に配設されるものであることを特徴とする細胞培養キット。
本発明の細胞培養チャンバーは、ビトリゲル膜の弛みを抑制し、ビトリゲル膜上で細胞を均一に分布させて培養することができる。これによって、ビトリゲルの特性(高分子透過性、タンパク質等の生理活性物質の徐放性、透明性、生体に近い線維密度、安定性等)を利用して、生体内の組織、器官ユニットを反映した様々な組織モデルなどをより確実に構築することができる。
本発明の細胞培養チャンバーの一実施形態を例示した断面概要図である。 本発明の細胞培養チャンバーの写真である。 本発明の細胞培養チャンバーのビトリゲル膜の経時変化を示した写真である。 本発明の細胞培養チャンバーのビトリゲル膜の経時変化を示した写真である。 本発明の細胞培養チャンバーに微粒子を添加した場合の分散状態を示す写真である。 本発明の細胞培養チャンバーによって培養した、培養2日目のHepG2細胞の様子を示す写真である。
図1は、本発明の細胞培養チャンバーの一実施形態を例示した断面概要図である。
細胞培養チャンバー1は、筒状のチャンバー本体2と、ビトリゲル膜乾燥体3と、支持体4とを備えている。
この実施形態では、チャンバー本体2は、内部に細胞を保持するための空間を有する略円筒状であり、対向する両端(上面および底面)がそれぞれ開放された開放端面2a、2bを有している。
この開放端面2b(図1における底面)には、ビトリゲル膜乾燥体3の一方の面側(図1において上側)が当接して固定されており、チャンバー本体2の開放端面2b(底面)が被覆されている。チャンバー本体1の材料は、細胞培養に適した材料を適宜選択することができ、例えば、アクリル製やポリスチレン製の円筒チューブを好ましく例示することができる。
また、チャンバー本体2の開放端面2a(図1における上面)の外周縁部には、外側へ突出する係止部5が設けられている。係止部5は、例えば、プラスチック材料等によって棒状、フランジ状などの形態とすることができる。
さらに、このビトリゲル膜乾燥体3の他方の面側(図1における下側)には支持体4が配設されている。支持体4は、チャンバー本体2の内径と略同程度、または内径よりも大きく、ビトリゲル膜乾燥体3の下側の面を覆っている。したがって、ビトリゲル膜乾燥体3を培養液などで再水和させ、チャンバー本体2内部に細胞を供給して培養しても、ビトリゲル膜が支持体4によって支持され、弛みが抑制され、ビトリゲル膜上で細胞を均一に分布させて培養することができる。したがって、ビトリゲル膜上で細胞の凝集塊などが形成されるのが抑制され、ビトリゲルの特性(高分子透過性、タンパク質等の生理活性物質の徐放性、透明性、生体に近い線維密度、安定性等)を利用して、均一な細胞層を有する組織モデルなどをより確実に構築することができる。
この支持体4は、再水和されたビトリゲル膜上で細胞を培養する際、培養開始後、所定の時間が経過して細胞がビトリゲル膜上に接着した後に、剥離させて取り外すことができる。これによって、ビトリゲル膜を通じて栄養成分や酸素を透過させて細胞に供給することができる。したがって、支持体4は、ビトリゲル膜乾燥体3(再水和後のビトリゲル膜)に対して適度な接着性と剥離性を併せ持っていることが望ましい。例えば、ビトリゲル膜から支持体4が剥離し難い場合、支持体4の取り外す際に、ビトリゲル膜が破けたり、伸びてしまったりする恐れがある。
支持体4の材料は、プラスチック、ゴム、ガラス、金属やこれらの複合材を好ましく例示することができる。具体的には、シリコン処理PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリプロピレン、アクリル、塩化ビニル、シリコン処理ガラス、ガラス、シリコン処理ステンレス、フッ素樹脂処理ステンレス、ステンレスなどを例示することができる。適度な接着性と剥離性が望まれるという観点から、なかでもシリコン処理PET、PET、ポリエチレン、PTFE、シリコン樹脂が好ましく、なかでも特にシリコン処理PETが好ましい。シリコン処理PETは、撥水性に優れ、ビトリゲル膜乾燥体(再水和後のビトリゲル膜)に対しての適度な接着性と剥離性が実現される。なお、「シリコン処理PET」とは、PETフィルムの片面または両面がシリコンで被覆されているものをいう。図1に例示した支持体4はPETフィルム41の片面がシリコン42で被覆されている形態であり、シリコン42側の面をビトリゲル膜乾燥体3と当接させて接着している。
支持体4の形態は、ビトリゲル膜乾燥体と当接する面が平滑であればよく、特に限定されない。具体的には、支持体4は、例えば、膜状(薄膜状)や、チャンバー本体2の端部に嵌合するキャップ状などの形態を例示することができる。
例えば支持体4が薄膜状である場合には、その厚さは特に限定されないが、その種類などに応じて、例えば10μm〜20000μm程度の範囲で適宜設計することができる。また、支持体4は、撥水性を有していることが好ましく、具体的には、接触角が70°以上であることが特に好ましい。支持体4の接触角が70°以上であると、ビトリゲル膜乾燥体(再水和後のビトリゲル膜)に対して適度な接着性と剥離性が実現される。
また、ビトリゲル膜乾燥体3に支持体4を配設する方法としては、例えば、チャンバー本体内に水溶液を供給してビトリゲル膜乾燥体を再水和させてビトリゲル膜に変換し、このビトリゲル膜と支持体とを当接させた後、乾燥させることで、ビトリゲル膜乾燥体に支持体を接着させる方法を例示することができる。
さらに、本発明の細胞培養チャンバーにおけるビトリゲル膜乾燥体の乾燥、再水和などの処理は、WO2005/014774公報に記載の方法と同様の方法を適宜採用することができる。
また、本発明の細胞培養チャンバーの別の実施形態としては、例えば、特許文献6に記載の2室型細胞培養チャンバーのビトリゲル膜乾燥体の一方の面(1室側または2室側の面)に、支持体が配設されている形態を例示することができる。
次に、本発明の細胞培養方法について説明する。
本発明の細胞培養方法は、以下の工程を含む。
細胞培養チャンバーのチャンバー本体内側に1種また2種以上の細胞を供給する工程。
ビトリゲル膜乾燥体が再水和されたビトリゲル膜が前記支持体に支持された状態において、ビトリゲル膜上で細胞を培養する工程。
前記ビトリゲル膜から前記支持体を取り外す工程。
本発明の細胞培養方法では、細胞培養チャンバー内のビトリゲル膜乾燥体上に、1種また2種以上の所望の細胞を供給する。細胞を含む懸濁液や培養液の添加によって、細胞培養チャンバーのビトリゲル膜乾燥体は再水和されてビトリゲル膜へと変換される。図1に例示したように、ビトリゲル膜乾燥体から変換されたビトリゲル膜が支持体に支持された状態において、ビトリゲル膜上で細胞を培養する。培養開始後、所定の時間が経過して細胞がビトリゲル膜上に安定的に接着した後に、支持体を剥離させて取り外して培養を続けることができる。この場合、ビトリゲル膜の特性を利用して、液相-液相界面培養または、液相-気相界面培養などを行って、組織モデルなどを構築することができる。
細胞培養チャンバーは、支持体を備えているため、ビトリゲル膜の弛みが抑制され、ビトリゲル膜上で細胞を均一に分散させて培養することができる。このため、例えば、凝集しやすい細胞であっても凝集塊が形成されるのが抑制され、ビトリゲル膜上で均一な細胞層が形成された組織モデルなどを確実に構築することができる。
ここで、「組織モデル」とは、生体内の細胞状態、組織、器官を模したものをいい、例えば、組織(細胞)に対する化学物質や生理活性物質(各種医薬品等の薬剤、栄養成分、増殖因子など)等による影響を検定することができる。組織モデルは、例えば、各種の哺乳動物由来の細胞等を播種、培養することで構築することができるが、好ましくは、ヒト由来の細胞である。ヒト由来の細胞による組織モデルによれば、ヒトに対する化学物質のADMET(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)を検討するに際し、種差の問題のない評価系を確立することができる。
組織モデルの形態は限定されないが、例えば、被蓋上皮細胞や腺上皮細胞などを培養して構築できる上皮組織モデル、線維芽細胞や脂肪細胞などを培養して構築できる結合組織モデル、筋芽細胞や心筋細胞や平滑筋細胞などを培養して構築できる筋組織モデル、および神経細胞やグリア細胞などを培養して構築できる神経組織モデル、さらに、その他、2種類以上の組織に由来する細胞を組み合わせて構築できる器官様モデルなどが挙げられる。ここで、用いる細胞は正常な成熟分化細胞に限定されるものではなく、胚性幹(ES;Embryonic Stem)細胞や体性幹(Somatic Stem)細胞や人工多能性幹(iPS;Induced pluripotent Stem)細胞などの未分化細胞、癌細胞などの病巣由来細胞、あるいは外来性遺伝子を導入したような形質転換細胞であってもよい。このように適宜、用いる細胞を選択することで、正常の組織モデルのみならず、発生あるいは再生過程にある組織モデル、癌をはじめとする病巣の組織モデル、あるいは人工的に形質を転換した細胞から構成される組織モデルなどの形態を創出することができる。特に、医薬品、生理活性物質、化粧品あるいは洗剤等の化学物質の生体に対する作用を外挿できる組織モデルの形態としては、生体に暴露あるいは投与された化学物質の移行経路の反映できる組織モデルの構築が重要となる。この視点からは、化学物質が最初に暴露される上皮細胞あるいは内皮細胞のみで構成される「組織シート(1種類細胞)」モデル、上皮細胞あるいは内皮細胞の次に化学物質に暴露される間充織細胞まで含めた上皮細胞と間充織細胞あるいは内皮細胞と間充織細胞の2種類の細胞で構成される「器官様プレート(2種類細胞)」モデル、さらに化学物質の移行に伴い暴露が進行する上皮細胞と間充織細胞と内皮細胞の3種類の細胞で構成される「器官様プレート(3種類細胞)」モデル等を例示することができる。このような組織モデルには、具体的には、化学物質の経皮吸収モデル、角膜透過性モデル、腸管等の消化管吸収モデル、肺等の気道吸収モデル、血管透過性モデル、肝代謝モデル、腎糸球体濾過排泄モデルをはじめ、化学物質の毒性評価に有用な皮膚、角膜、口腔粘膜、神経、肝臓、腎臓など各器官の成熟組織モデルおよび化学物質の発生毒性の評価に有用な胚組織モデル、あるいは薬剤開発に有用な血管新生モデルや癌浸潤モデルなどが含まれる。
組織モデルの検定方法は具体的に限定されないが、例えば、チャンバー内に化学物質を直接添加する方法や、ビトリゲル膜の透過性を利用して化学物質を細胞に作用させる方法などを例示することができる。
次に、本発明の細胞培養キットについて説明する。
本発明の細胞培養キットは、筒状のチャンバー本体と、ビトリゲル膜乾燥体と、支持体とを含む。筒状のチャンバー本体、ビトリゲル膜乾燥体および支持体については、図1に例示した形態と同様であるため説明は省略する。
図1に例示したように、チャンバー本体は、対向する両端面が開放された開放端面を有し、この開放端面のうちの一方には、ビトリゲル膜乾燥体の一方の面側が当接した状態で固定されている。一方、支持体は、ビトリゲル膜乾燥体の他方の面側に配設されるものであるが、ビトリゲル膜乾燥体とは別体とされている。
本発明の細胞培養キットによれば、例えば、実験者が細胞培養チャンバーによって細胞を培養する際に、ビトリゲル膜乾燥体をビトリゲル膜に変換し、このビトリゲル膜に適宜支持体を取り付けた後、ビトリゲル膜上で細胞を培養することができる。
次に、本発明の細胞培養チャンバーに使用されるビトリゲル膜乾燥体の作製方法およびビトリゲル膜乾燥体をチャンバー本体に配設する方法について説明する。
ビトリゲル膜乾燥体は、特許文献5に記載の方法に準じて作製することができる。また、ビトリゲル膜乾燥体をチャンバー本体に配設する方法については、特許文献6に記載の方法に準じて行うことができる。
以下、本発明の細胞培養チャンバーに使用されるビトリゲル膜乾燥体およびビトリゲル膜乾燥体の固定方法などの一実施形態について詳しく説明する。
本発明の細胞培養チャンバーに使用されるビトリゲル膜乾燥体は、例えば、以下の工程(1)〜(5)を経ることによって作製することができる。
(1)基板上にビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルムを敷き、このフィルム上に配置した壁面鋳型内部にハイドロゲルを形成し、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる工程、
(2)壁面鋳型を基板上から除去する工程、
(3)ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する工程、
(4)ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する工程、
(5)ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する工程、
ここで、「ハイドロゲル」とは、高分子が化学結合によって網目状構造をとり、その網目に多量の水を保有した物質を指し、より具体的には、天然物由来の高分子や合成高分子の人工素材に架橋を導入してゲル化させたものをいう。
また、「ハイドロゲル乾燥体」とは、ハイドロゲルから自由水を除去してガラス化させたものをいう。さらに、「ビトリゲル膜」とは、このハイドロゲル乾燥体を再水和させたものをいう。なお、上記の通り、「ガラス化(vitrification)の工程を経て作製できる新しい安定状態のゲル」は、本発明者によって「ビトリゲル(vitrigel)」と命名されている。そして、「ビトリゲル膜乾燥体」とは、このビトリゲルを再びガラス化したものをいう。ビトリゲル膜乾燥体は、必要なときに再水和することで、ビトリゲル膜に変換することができる。
以下、各工程について説明する。
工程(1):基板上にビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルムを敷き、このフィルム上に壁面鋳型を配置する。そして、この壁面鋳型内部にゾルを注入してゲル化した後、ハイドロゲル内の自由水の一部を基板と壁面鋳型の間隙から流出させる。
基板と壁面鋳型は、70%エタノールあるいはオートクレーブ等による滅菌に耐えられる材料を適宜使用することができる。具体的には、ポリスチレンやアクリル等のプラスチック、ガラス、あるいはステンレス等を例示することができる。
ビトリゲル膜乾燥体が剥離可能なフィルムとしては、パラフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、シリコン、サランラップ(登録商標)、ビニール等の非吸水性フィルムを例示することができ、特にパラフィルムが好ましい。パラフィルムは、パラフィンを原料とした熱可塑性フィルムであり、伸縮性・粘着性をもち、気密性、防水性にも優れているという特徴がある。以下、単に「フィルム」と記載する。
壁面鋳型は、例えば、上面、底面を有していない筒状の枠体とすることができ、壁面鋳型の形状は、所望のビトリゲル膜の形状と同形状に設計することができる。具体的には、例えば、円形のビトリゲル膜を作製する場合には、壁面(枠)が環状のもの(円筒状)を使用することができる。また、矩形のビトリゲル膜を作製する場合には、壁面(枠)が矩形状のもの(角筒状)とすることができる。
そして、基板上に敷かれたフィルム上に壁面鋳型を配置する。このとき、フィルムが敷かれている領域は壁面鋳型の断面より大きく、フィルムと壁面鋳型の底面とが当接状態となるが、物理的には、フィルムと壁面鋳型の表面の凹凸により自由水を流出させることができる程度のわずかな間隙が形成されることになる。なお、所望の数のビトリゲル膜に応じて、フィルム上に壁面鋳型を複数配置することができる。
ハイドロゲルの作製に用いられる原料としての天然物由来高分子は、例えば、コラーゲン(I型、II型、III型、V型、XI型など)、マウスEHS腫瘍抽出物(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンなどを含む)より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、ゼラチン、寒天、アガロース、フィブリン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどを例示することができる。それぞれのゲル化に至適な塩等の成分、その濃度、pHなどを選択しハイドロゲルを作製することが可能である。原料を組み合わせることで、様々な生体内組織を模倣したビトリゲル膜を得ることができる。
また、ハイドロゲルの作製に用いられる合成高分子としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、poly(II-hydroxyethylmethacrylate)/polycaprolactoneなどが挙げられる。また、これらの高分子を2種以上用いてハイドロゲルを作製することも可能である。ハイドロゲルの量は、作製するビトリゲル膜の厚さを考慮して調節することができる。
なかでも、ハイドロゲルの原料はコラーゲンが好ましく、コラーゲンゲルを用いる場合には、コラーゲンゾルを、基板上に配置された壁面鋳型に注入し、インキュベーターでゲル化させたものを使用することができる。
コラーゲンゾルを使用する場合を例に説明すると、コラーゲンゾルは、至適な塩濃度を有するものとして、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank's Balanced Salt Solution)、基礎培養液、無血清培養液あるいは血清含有培養液などで調製することができる。また、コラーゲンのゲル化の際の溶液のpHは、6から8程度が好ましい。
ここで、コラーゲンゾルの調製は4℃で行うのが望ましい。その後、ゲル化する際の保温は、用いるコラーゲンの動物種に依存したコラーゲンの変性温度より低い温度でなければならないが、一般的には37℃以下の温度で数分から数十分でゲル化できる温度に保温して行うことができる。
また、コラーゲンゾルはコラーゲンの濃度が0.2%以下になると希薄すぎてゲル化が弱く、0.3%以上になると濃厚すぎて均一化が困難になる。したがって、コラーゲンゾルのコラーゲンの濃度は0.2〜0.3%が好ましく、より好ましくは0.25%程度である。
このように調整されたコラーゲンゾルを壁面鋳型内部に注入する。前記濃度のコラーゲンゾルは粘性を有しているため、コラーゲンゾルを壁面鋳型内部に注入して迅速に保温すれば、コラーゲンゾルは基板と壁面鋳型との間隙から流出することなく数分以内にゲル化することができる。
そして、形成されたコラーゲンゲルは基板と壁面鋳型に密着するが、所定の時間放置することで、時間の経過とともに、コラーゲンゲル内の自由水の一部が基板と壁面鋳型の間隙から壁面鋳型の外側へ流出する。ここで、壁面鋳型を上下等に僅かに動かすことで、ゲルと壁面鋳型間の接着が解除されて僅かな間隙が生じるので、自由水の流出を促進することができる。
工程(2):壁面鋳型を基板上から除去する。
基板に敷いたフィルム上にハイドロゲルを残して、壁面鋳型を取り除く。ハイドロゲルは、自由水が流出しているため、フィルム上で変形等することなく、壁面鋳型に保持された形状を維持することができる。
工程(3):ハイドロゲルを乾燥させて残留する自由水を除去し、ガラス化したハイドロゲル乾燥体を作製する。
乾燥により、完全にハイドロゲル内の自由水を除去しガラス化する。このガラス化工程の期間を長くするほど、再水和した際には透明度、強度に優れたビトリゲル膜を得ることができる。なお、必要に応じて短期間のガラス化後に再水和して得たビトリゲル膜をPBS等で洗浄し、再度ガラス化することもできる。
乾燥方法としては、例えば、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。例えば、風乾の方法としては、10℃40%湿度で無菌に保たれたインキュベーターで2日間乾燥させる、もしくは無菌状態のクリーンベンチ内で一昼夜、室温で乾燥する等の方法を例示することができる。
工程(4):ハイドロゲル乾燥体を再水和してビトリゲル膜を作製する。
ハイドロゲル乾燥体をPBSや使用する培養液などで再水和することでビトリゲル膜を作製することができる。ここで、再水和する液体には、生理活性物質などの各種の成分が含まれていてもよく、例えば、生理活性物質としては、抗生物質をはじめとする各種医薬品、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、レクチン、またはゲル化しない細胞外マトリックス成分としてファイブロネクチン、ビトロネクチン、エンタクチン、オステオポエチン等が挙げられる。また、これらを複数種含有させることも可能である。
工程(5):ビトリゲル膜を再乾燥させて自由水を除去し、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製する。
乾燥方法は、工程(3)と同様に、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。
ビトリゲル膜を再乾燥させることで、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を作製することができる。このビトリゲル膜乾燥体は、必要な時に再水和することで、再度ビトリゲル膜に変換することができる。
このビトリゲル膜乾燥体は、剥離可能なフィルムと重層化しているため、ビトリゲル膜乾燥体はフィルムとともに自由に取り扱うことができるとともに、ガラス化したビトリゲル膜乾燥体を任意の形に切断加工することが可能である。
なお、「ハイドロゲル乾燥体」と「ビトリゲル膜乾燥体」に含まれる成分は必ずしも同じではない。「ハイドロゲル乾燥体」は、ハイドロゲルの成分を含んでいるが、「ビトリゲル膜乾燥体」は、ハイドロゲル乾燥体を再水和した際の水溶液で平衡化されたビトリゲル膜に残存する成分を含んでいる。
また、工程(5)のビトリゲル膜乾燥体を再水和することで得られるビトリゲル膜は、工程(4)で得られるビトリゲル膜と比較して、ガラス化の期間が長いため、強度および透明性に優れている。
さらに、ガラス化の期間は「ハイドロゲル乾燥体」の状態で長くすることも可能であるが、「ハイドロゲル乾燥体」はハイドロゲル作製時の成分が全て共存している状態であり、ハイドロゲル乾燥体を維持し続ける際あるいはビトリゲル膜を利用する際には不必要となる成分も混在している。一方、「ハイドロゲル乾燥体」を再水和して不必要な混在成分を除去した後のビトリゲル膜については、その乾燥体においても不必要な成分は除去されている。したがって、ガラス化の期間を長く維持する必要がある時は、このビトリゲル膜乾燥体の状態で維持し続けることが好ましく、ビトリゲル膜乾燥体を再水和して得られるビトリゲル膜には不必要な成分が混在しない点で優れている。
さらに、ビトリゲル膜乾燥体は、例えば、ゲル化する前のゾル溶液に、含有させたい生理活性物質を混合し、その後、ゲル化・ガラス化等のビトリゲル膜の作製工程を経て作製することもできる。生理活性物質を含有するビトリゲル膜乾燥体は、細胞の接着・増殖・分化などに必要な因子をビトリゲル膜側から供給することができるので、より良い培養環境を実現することができる。また、含有させた生理活性物質の細胞に対する影響を調べる試験を行うのに非常に有用である。また、生理活性物質を含んだビトリゲル膜は、体内へ移植することで薬物送達システムとしても機能し得る(非特許文献2)。さらに、ビトリゲル膜は、分子量の大きな生理活性物質を透過することが可能であり、それにより、このビトリゲル膜の異なる2つの面に播種された各々の細胞の間での生理活性物質を介した相互作用の試験・研究に大きく貢献できる(非特許文献2)。
以上の方法によれば、ビトリゲル膜乾燥体を培養シャーレに付着させることなく膜状態で取得することができる。また、このビトリゲル膜乾燥体は切断加工が容易であるため、本発明の細胞培養チャンバーに利用することが可能である。
次に、本発明の細胞培養チャンバーの製造方法の一実施形態について説明する。
本発明の細胞培養チャンバーの製造方法は、以下の工程を含む。
対向する開放端面が形成されている筒状のチャンバー本体の一方の開放端面に、ビトリゲル膜乾燥体の一方の面側を当接させて固定し、前記開放端面を被覆する工程。
前記ビトリゲル膜乾燥体の他方の面側に支持体を配設する工程。
具体的には、この細胞培養チャンバーの製造方法では、例えば、チャンバー本体の一方の開放端面に接着剤を塗布し、ビトリゲル膜乾燥体の一方の面を当接させ接着固定する。フィルムと重層化しているビトリゲル膜乾燥体を使用する場合には、ビトリゲル膜乾燥体側をチャンバー本体と接着した後、フィルムを剥がして取り除くことができる。接着剤は、接着性、細胞毒性を考慮して適宜選択することができ、具体的には、ウレタン系接着剤を好ましく例示することができる。例えば、ゴム系、シアンアクリレート系、アクリル系は、細胞毒性を示す場合があり、ホットメルト系は、ビトリゲル膜乾燥体を熱変性させる場合があるため好ましくない。また、その他、ビトリゲル膜乾燥体とチャンバー本体とを接着固定する方法としては、ビトリゲル膜乾燥体とチャンバー本体との間に両面テープを介在させて接着固定する方法や、ヒートシーラーや熱板、超音波、レーザーなどを用いてビトリゲル膜乾燥体とチャンバー本体とを熱溶着する方法などを例示することができる。
さらに、チャンバー本体の一方の端面に接着固定されたビトリゲル膜乾燥体は、チャンバー本体の端面と略同形状に切断加工することができる。フィルムと重層化しているビトリゲル膜乾燥体は、切断加工が容易であるため、チャンバー本体の開放端面からはみ出した余分な部分を切断することができる。この場合も、ビトリゲル膜乾燥体の切断加工後には、フィルムを剥がして取り除くことができる。これによって、チャンバー本体の開放端面にビトリゲル膜乾燥体を配設することができる。
そして、ビトリゲル膜乾燥体の他方の面側(図1における下面側)に支持体を配設する。
ビトリゲル膜乾燥体に支持体を配設する場合、例えば、チャンバー本体内に水溶液を供給してビトリゲル膜乾燥体を再水和させてビトリゲル膜とし、このビトリゲル膜と支持体とを当接させた後、乾燥させることで、ビトリゲル膜乾燥体に支持体を接着させることができる。また、これとは別に細胞培養チャンバーの製造方法として、先に支持体をビトリゲル膜乾燥体に接着させ、その後、チャンバー本体の一方の開放端面に接着剤を塗布し、支持体の接着したビトリゲル膜乾燥体の一方の面を当接させ接着固定することもできる。
本発明の細胞培養チャンバーの形態や作製方法などは、上記の形態に限定されることはなく、例えば、特許文献5、6などの記載を考慮して適宜設計することができる。
以下、本発明の細胞培養チャンバーおよび細胞培養チャンバーの製造方法、細胞培養方法について実施例とともにより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>シリコン処理PET薄膜(Si-PET)の検討
(1)特許文献6に記載の方法に準じて、筒状のチャンバー本体の開放端面にビトリゲル膜乾燥体が配設され細胞培養チャンバーを作製した。
さらに、同様の方法で作製された細胞培養チャンバーのチャンバー本体にPBSを供給して、10分間ビトリゲル膜乾燥体を再水和してビトリゲル膜に変換し、再水和に使用したPBSを除去した。シャーレの上に、シリコン(Si)処理面を上側に露出させたシリコン処理PET薄膜(Si-PET)を載置し、その上に、空気が入らないように細胞培養チャンバーを乗せてビトリゲル膜と当接させた。その後、クリーンベンチ内で一晩乾燥させてビトリゲル膜を乾燥させ、ビトリゲル膜乾燥体に、薄膜状の支持体(以下、支持薄膜と記載する)であるSi-PETが配設された、本発明の細胞培養チャンバーを作製した(図2)。
(2)次に、Si-PETを配設したことによる効果について検討した。具体的には、Si-PET(厚さ:25μm、50μm、75μm、100μm)を配設した細胞培養チャンバーのチャンバー本体内にPBS1.0mLを加え、12ウェルプレートに吊るした状態で経時的に弛みを検査した。また、比較として、支持薄膜を配設していない従来の細胞培養チャンバーの弛みも同様の条件で検査した。
結果を図3に示す。
図3に示したように、支持薄膜を配設していない従来の細胞培養チャンバーの場合、時間の経過とともに、ビトリゲル膜が下方にやや弛んでいることが確認された(0.8mm(0日目)→1.0mm(7日目))。一方、Si-PETを配設した細胞培養チャンバーは、いずれの場合も弛みは観察されなかった。細胞培養チャンバーのビトリゲル膜を下方から支持する支持薄膜を配設することで、ビトリゲル膜の弛みが抑制されることが確認された。
<実施例2>その他の支持薄膜の検討
実施例1と同様の方法で、PET(厚さ75μm)、ポリエチレン(厚さ80μm)、ポリカーボネート(厚さ1000μm)、ポリスチレン(厚さ400μm)、PTFE(厚さ100μm、300μm、1000μm)、シリコンゴム(厚さ100μm、500μm、1000μm)を支持薄膜とした細胞培養チャンバーについて、ビトリゲル膜の弛みなどについて検討した。
結果を図4に示す。
図4に示したように、PET(厚さ75μm)、ポリエチレン(厚さ80μm)、ポリカーボネート(厚さ1000μm)、ポリスチレン(厚さ400μm)、シリコンゴム(厚さ100μm、500μm、1000μm)については、ビトリゲル膜の弛みは観察されなかった。一方、PTFE(厚さ100μm、300μm、1000μm)については、時間の経過とともに、PTFEが剥がれてしまう場合があった。
<実施例3>微粒子の分散についての検討
実施例1、2で作製した細胞培養チャンバーについて、12ウェルプレートに吊るした状態で、チャンバー本体内に、粒径が44〜105μmの球状セルロース微粒子(関東化学株式会社製:セルロファイン KANTO GH-25)を添加し、その分散の様子を観察した。
結果を図5に示す。
図5に示したように、支持薄膜を配設していない従来の細胞培養チャンバーの場合、下方に弛んだビトリゲル膜によって、球状セルロース微粒子がチャンバーの中央に集まってしまうことが確認された。したがって、細胞を培養する場合には中央に凝集塊が形成されてしまう恐れがあり、均一な細胞層を形成できない場合があることが分かる。
一方、Si-PET(厚さ:25μm、50μm、75μm、100μm)、PET(厚さ75μm)、ポリエチレン(厚さ80μm)、ポリカーボネート(厚さ1000μm)、ポリスチレン(厚さ400μm)、PTFE(厚さ100μm、300μm、1000μm)、シリコンゴム(厚さ100μm、500μm、1000μm)については、ビトリゲル膜の弛みが抑制されているため、球状セルロース微粒子は、ビトリゲル膜上で均一に分散していることが確認された。
<実施例4>接触角の測定
細胞培養チャンバーの支持薄膜について接触角を測定した。具体的には、各支持薄膜を直径18mmに切り取り、その上にMQ水を50μL滴下し、横からその液滴を撮影して、接触角を測定した。
その結果、Si-PET(厚さ25μm)は97°、Si-PET(厚さ50μm)は100°、Si-PET(厚さ75μm)は100°、Si-PET(厚さ100μm)は98°であった。
さらに、PET(厚さ75μm)は78°、ポリエチレン(厚さ80μm)は91°、ポリカーボネート(厚さ1000μm)は78°、ポリスチレン(厚さ400μm)は80°、PTFE(厚さ100μm)は105°、PTFE(厚さ300μm)は98°、PTFE(厚さ1000μm)は110°、シリコンゴム(厚さ100μm)は99°、シリコンゴム(厚さ500μm)は102°、シリコンゴム(厚さ1000μm)は、100°であった。
<実施例5>引張り強度の測定
実施例1、2で作製した、本発明の細胞培養チャンバーについて、チャンバー本体をクリップで挟んだ状態で市販の引張り強度測定器(日本電産シンポ株式会社製:デジタルフォースゲージ FGPX-0.2)のフックに引っ掛け、支持薄膜を剥がすときの強度を測定した。細胞培養チャンバーについては、ビトリゲル膜乾燥体をPBSで再水和してビトリゲル膜に変換したもの(水和(+))、及び、再水和していないもの(水和(−))の両方を使用した。
結果を表1に示す。
表1に示したように、ポリカーボネート(厚さ1000μm)とポリスチレン(厚さ400μm)は引張り強度が高く、ビトリゲル膜と強く接着していることが確認された。支持薄膜は、細胞が接着した後に剥離させて取り外すため、ポリカーボネート(厚さ1000μm)とポリスチレン(厚さ400μm)については、支持薄膜を取り外す際に、ビトリゲル膜の損傷や伸びが生じないように留意する必要があると考えられる。
一方、それ以外の支持薄膜(Si-PET(厚さ:25μm、50μm、75μm、100μm)、PET(厚さ75μm)、ポリエチレン(厚さ80μm)、PTFE(厚さ100μm、300μm、1000μm)シリコンゴム(厚さ100μm、500μm、1000μm))については、引張り強度が高くなく、薄膜を容易に取り外すことができることが確認された。
<実施例6>細胞培養チャンバーを利用した細胞培養
実施例1で作製した、ビトリゲル膜乾燥体に支持薄膜としてのSi-PET(厚さ75μm)が配設された細胞培養チャンバーを、10cm dish内に置き、チャンバー本体内に培養液200μLを加え、細胞の播種直前までそのままの状態を維持した。
そして、細胞の播種直前にチャンバー本体内の培養液を除去し、HepG2細胞を細胞密度5.0×104 cell/cm2で播種した(培養0日目)。これをCO2インキュベーター(37℃、5% CO2 / 95% 空気)内で静置培養した。
次に、液相-液相界面培養または、液相-気相界面培養を開始するため、培養2日目に培養液またはPBSをチャンバー本体内またはSi-PET上に注ぎ、Si-PETを軽く動かしてSi-PETの除去を試みたところ、容易にSi-PETを剥離させることができた。
培養2日目のHepG2細胞の様子を図6に示す。
顕微鏡観察したところ図6に示したように、HepG2細胞は凝集塊を形成することなく、ビトリゲル膜上で均一に分散して培養されていることが確認された。
1 細胞培養チャンバー
2 チャンバー本体
3 ビトリゲル膜乾燥体
4 支持体

Claims (6)

  1. 筒状のチャンバー本体と、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体と、支持体とを備えた細胞培養チャンバーであって、
    前記チャンバー本体には、対向する両端に開放端面が形成されており、このうちの一方の開放端面には、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側が当接した状態で固定されており、かつ、このビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側には前記支持体が配設されており、
    前記支持体は、接触角が70°以上であることを特徴とする細胞培養チャンバー。
  2. 前記支持体は、プラスチック製の薄膜であることを特徴とする請求項1の細胞培養チャンバー。
  3. 前記支持体は、シリコン処理PET薄膜であることを特徴とする請求項1の細胞培養チャンバー。
  4. 以下の工程:
    対向する開放端面が両端に形成されている筒状のチャンバー本体の一方の開放端面に、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側を当接させて固定し、前記開放端面を被覆する工程;および
    前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側に、接触角が70°以上である支持体を配設する工程
    を含むことを特徴とする細胞培養チャンバーの製造方法。
  5. 以下の工程:
    請求項1から3のいずれかの細胞培養チャンバーの前記チャンバー本体内側に1種また2種以上の細胞を供給する工程;
    前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体が再水和されたビトリゲル(登録商標)膜が前記支持体に支持された状態において、前記ビトリゲル(登録商標)膜上で細胞を培養する工程;および
    前記ビトリゲル(登録商標)膜から前記支持体を取り外す工程
    を含むことを特徴とする細胞培養方法。
  6. 筒状のチャンバー本体と、ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体と、支持体とを含む細胞培養キットであって、
    前記チャンバー本体は、対向する両端面が開放された開放端面を有し、この開放端面のうちの一方には、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の一方の面側が当接した状態で固定されており、前記支持体は、接触角が70°以上であり、かつ、前記ビトリゲル(登録商標)膜乾燥体の他方の面側に配設されるものであることを特徴とする細胞培養キット。
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