以下、本発明の実施の形態による電気駆動車両としてダンプトラックを例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図3は、第1の実施の形態によるダンプトラック1を示している。ダンプトラック1は、前輪8L,8R、後輪9L,9R、走行用モータ14L,14R、速度センサ18L,18R、インバータ24L,24R、ブレーキ抵抗器25、抵抗器温度センサ30、走行装置制御部40を備えている。
図1および図2に示すように、車体2は、フレーム構造体を構成する。車体2の上側には、ホイストシリンダ4によって後部側を支点として傾転(起伏)可能なベッセル3(荷台)が搭載されている。
キャブ5は、ベッセル3の前側に位置して車体2の前部上側に設けられている。キャブ5は、例えば車体2の左側に位置して平板状の床板となるデッキ部2A上に配設されている。キャブ5は、ダンプトラック1の運転者(オペレータ)が乗降する運転室を形成している。キャブ5内には、運転席、エンジンスイッチ、シフトレバー、操舵ハンドル(いずれも図示せず)が設けられると共に、アクセルペダル6、リタードペダル7が設けられている。
アクセルペダル6は、車両を加速させるときに、オペレータによって踏込み操作される。アクセルペダル6には、アクセルペダル開度センサ6Aが取り付けられている。アクセルペダル開度センサ6Aは、踏込み量に応じたアクセルペダル6の開度Pa[%]を検出する。アクセルペダル開度センサ6Aは、開度Paに応じた信号を、走行装置制御部40に出力する。このとき、開度Paは、アクセルペダル6が無操作なときに0%となり、アクセルペダル6が最大操作されたときに100%となる。
リタードペダル7は、車両を減速させるときに、オペレータによって踏込み操作される。リタードペダル7には、リタードペダル開度センサ7Aが取り付けられている。リタードペダル開度センサ7Aは、踏込み量に応じたリタードペダル7の開度Pr[%]を検出する。リタードペダル開度センサ7Aは、開度Prに応じた信号を、走行装置制御部40に出力する。このとき、開度Prは、リタードペダル7が無操作なときに0%となり、リタードペダル7が最大操作されたときに100%となる。
前輪8L,8Rは、車体2の前部下側に回転可能に設けられている。前輪8L,8Rは、従動輪となっている。前輪8Lは車体2の左側に配置されている。前輪8Rは車体2の右側に配置されている。これら左,右の前輪8L,8Rは、運転者によって操舵(ステアリング操作)される舵取り車輪となっている。これらの前輪8L,8Rは、後輪9L,9Rと同様に、例えば2〜4m程度のタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
後輪9L,9Rは、走行用モータ14L,14Rによって駆動される駆動輪となっている。後輪9L,9Rは、車体2の後部側に回転可能に設けられている。後輪9Lは車体2の左側に配置されている。後輪9Rは車体2の右側に配置されている。左,右の後輪9L,9Rが回転駆動することにより、ダンプトラック1は走行駆動する。
エンジン10は、傾動可能なベッセル3(荷台)の下側に配置されている。具体的には、エンジン10は、キャブ5の下側に位置して車体2内に設けられている。エンジン10は、例えば大型のディーゼルエンジンによって構成されている。エンジン10は、主発電機12および副発電機13を駆動する。また、エンジン10は、油圧ポンプ(図示せず)等を駆動する。エンジン10には、エンジン回転速度を制御するエンジン制御装置11が設けられている。
主発電機12および副発電機13は、エンジン10に機械的に接続されている。主発電機12は、エンジン10によって駆動され、3相交流電力を発生させる。副発電機13も、エンジン10によって駆動される。このとき、副発電機13の発電電力は、主発電機12の発電電力よりも小さい。副発電機13は、送風機27等の駆動回路28に接続され、送風機27等に駆動電力を供給している。
走行用モータ14L,14Rは、電動機である。走行用モータ14L,14Rは、車体2にアクスルハウジング(図示せず)を介して設けられている。走行用モータ14Lは、減速機構15Lを介して左側の後輪9Lに機械的に接続され、後輪9Lを駆動する。走行用モータ14Rは、減速機構15Rを介して右側の後輪9Rに機械的に接続され、後輪9Rを駆動する。走行用モータ14L,14Rは、主発電機12から電力変換機21を介して供給される電力によって回転駆動する。
各走行用モータ14L,14Rは、電力変換機21によって制御され、それぞれ独立して回転駆動する。電力変換機21は、走行装置制御部40からの制御信号に基づいて、車両の直進時に左,右の後輪9L,9Rの回転速度を同じにし、旋回時に旋回方向に応じて左,右の後輪9L,9Rの回転速度を異ならせる等の制御を行う。
前輪8L,8Rおよび後輪9L,9Rには、機械ブレーキ16がそれぞれ取り付けられている。機械ブレーキ16は、機械的な摩擦力を利用して制動力を発生させる各種のブレーキによって構成されている。機械ブレーキ16は、機械ブレーキ出力装置17から供給される圧油に応じて、前輪8L,8Rおよび後輪9L,9Rに制動力を付与する。機械ブレーキ出力装置17は、走行装置制御部40からの制御信号に基づいて、機械ブレーキ16に制動力を発生させる。
機械ブレーキ16は、走行用モータ14L,14Rによる回生制動と連動してもよく、走行用モータ14L,14Rによる回生制動とは別個に、制動力を発生させてもよい。機械ブレーキ16を独立して動作させる場合、機械ブレーキ16は、キャブ5内に設けられた専用ペダル等によって操作されてもよい。この場合、専用ペダルの操作に応じて、機械ブレーキ出力装置17は動作する。
走行用モータ14L,14Rには、速度センサ18L,18Rが取り付けられている。速度センサ18Lは、走行用モータ14Lの回転速度VLを検出し、回転速度VLに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。速度センサ18Rは、走行用モータ14Rの回転速度VRを検出し、回転速度VRに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。回転速度VL,VRは、車両速度Vに対応している。このため、速度センサ18L,18Rは、車両(ダンプトラック1)の速度(車両速度V)を取得する車両速度センサとなっている。
走行用モータ14L,14Rには、電流センサ19L,19Rが取り付けられている。電流センサ19Lは、走行用モータ14Lに供給される電流の電流値ILを検出する。電流センサ19Lは、電流値ILに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。電流センサ19Rは、走行用モータ14Rに供給される電流の電流値IRを検出する。電流センサ19Rは、電流値IRに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。
次に、ダンプトラック1に搭載された走行駆動用システムについて、図3を参照して説明する。
電力変換機21は、後述の走行装置制御部40と共に走行用モータ14L,14Rの力行動作と回生動作とを制御する。電力変換機21は、キャブ5の側方に位置して車体2のデッキ部2A上に立設されたコントロールキャビネット20に収容されている。電力変換機21は、コンバータ22、インバータ24L,24Rおよびチョッパ29を備えている。
コンバータ22は、主発電機12に接続され、主発電機12の出力する電力を変換する変換器を構成している。具体的には、コンバータ22は、主発電機12が出力する交流電力(U相、V相、W相の3相交流電力)を直流電力(p相、n相の直流電力)に変換する。コンバータ22は、例えばダイオード、サイリスタ等の整流素子を用いて構成され交流電力を全波整流する整流器22Aと、整流器22Aの後段に接続され電力波形を平滑化する平滑コンデンサ22Bとを備えている。コンバータ22は、一対の直流母線23A,23Bを用いてインバータ24L,24Rに接続されている。
インバータ24L,24Rは、走行用モータ14L,14Rを制御する。インバータ24L,24Rは、例えばトランジスタ、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた複数のスイッチング素子(図示せず)を用いて構成されている。インバータ24Lは、走行用モータ14Lに接続されている。インバータ24Rは、走行用モータ14Rに接続されている。インバータ24L,24Rは、走行装置制御部40からの制御信号に基づいて動作する。
ダンプトラック1の走行時には、インバータ24L,24Rは、直流電力を可変周波数の3相交流電力に変換し、走行用モータ14L,14Rを力行動作させる。このため、インバータ24L,24Rは、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、コンバータ22から出力された直流電力をU相、V相、W相の3相交流電力に変換し、この3相交流電力を走行用モータ14L,14Rに供給する。
一方、ダンプトラック1の減速時には、インバータ24L,24Rは、3相交流電力を直流電力に変換し、走行用モータ14L,14Rを回生動作させる。このため、インバータ24L,24Rは、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ14L,14Rで回生された3相交流電力からなる起電力を直流電力に変換し、この直流電力をブレーキ抵抗器25に向けて出力する。
ブレーキ抵抗器25は、リタードペダル7の操作に応じて走行用モータ14L,14Rを回生制御するときに、発電された電力を熱として消費する。ブレーキ抵抗器25は、直流母線23A,23Bを介してインバータ24L,24Rに接続されている。ブレーキ抵抗器25は、インバータ24L,24Rから供給される直流電力に応じて発熱し、走行用モータ14L,14Rで回生される起電力を消費する。
ブレーキ抵抗器25は、角筒状をなすグリッドボックス26内に配設されている。送風機27は、グリッドボックス26に取付けられている。送風機27は、電動モータによって構成され、例えばインバータ等からなる駆動回路28を介して副発電機13に接続されている。送風機27は、副発電機13からの給電によって駆動する。送風機27は、例えばブレーキ抵抗器25の発熱動作に応じて駆動し、ブレーキ抵抗器25に向けて冷却風を供給する。このため、送風機27は、ブレーキ抵抗器25を冷却する冷却装置となっている。なお、冷却装置は、冷却風によってブレーキ抵抗器25を空冷する送風機27に限らず、例えば冷却水によってブレーキ抵抗器25を水冷するラジエータでもよい。
図3に示すように、ブレーキ抵抗器25と直流母線23A,23Bとの間には、チョッパ29が設けられている。このチョッパ29は、例えば半導体素子を用いた各種のスイッチング素子を用いて構成されている。ダンプトラック1の減速時には、チョッパ29は、直流母線23A,23Bに印加される直流電圧を、所定の電圧値以下まで低下させる。即ち、チョッパ29は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ14L,14Rによる回生電力を所定の電圧値以下まで低下させて、ブレーキ抵抗器25に供給する。これにより、ブレーキ抵抗器25に電流が流れて、ブレーキ抵抗器25は、電気エネルギを熱エネルギに変換する。一方、ダンプトラック1の走行時には、チョッパ29は、遮断状態となり、直流母線23A,23Bとブレーキ抵抗器25との間を電気的に遮断する。
ブレーキ抵抗器25には、抵抗器温度センサ30が取り付けられている。抵抗器温度センサ30は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbを取得する。即ち、抵抗器温度センサ30は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbを検出する。抵抗器温度センサ30は、温度Tbに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。
グリッドボックス26には、冷却風温度センサ31が取り付けられている。冷却風温度センサ31は、例えば送風機27の冷却ファンに備えられる温度センサによって構成されている。冷却風温度センサ31は、外部から送風機27に取り入れられ、ブレーキ抵抗器25に供給される冷却風の温度Taを検出する。冷却風温度センサ31は、温度Taに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。このとき、冷却風の温度Taは、冷却装置の冷媒の温度となっている。このため、冷却風温度センサ31は、冷却装置の冷媒の温度を取得する冷媒温度センサとなっている。なお、冷媒温度センサは、冷却風温度センサに限らず、例えばブレーキ抵抗器25を水冷する場合には、冷媒としての冷却水の温度を検出する水温センサでもよい。
ダンプトラック1は、積載質量センサ32および路面勾配センサ33を備えている。積載質量センサ32は、車両の積載質量を取得する。このとき、積載質量センサ32は、ベッセル3に積載された積載物の質量Wを検出する。具体的には、積載質量センサ32は、例えば、前輪8L,8Rのサスペンションと、後輪9L,9Rのサスペンションとに取り付けられている変位センサによって構成されている。積載質量センサ32は、サスペンションストロークの変位量を測定し、その変位量からベッセル3に積載された積載物の質量Wを演算する。積載質量センサ32は、質量Wに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。
路面勾配センサ33は、ダンプトラック1が走行している路面の勾配θを検出する。具体的には、路面勾配センサ33は、車両の駆動輪(後輪9L,9R)が接地する路面の勾配θを取得する。路面勾配センサ33は、例えばダンプトラック1に備えられている傾斜センサによって構成されている。路面勾配センサ33は、車両の傾斜角度を測定し、その傾斜角度から路面の勾配θを演算する。路面勾配センサ33は、勾配θに応じた信号を走行装置制御部40に出力する。
なお、路面勾配センサは、傾斜センサに限らず、サスペンションストロークを検出する変位センサによって構成してもよい。この場合、路面勾配センサは、サスペンションストロークの変位量から車両の傾斜角度を演算して、傾斜角度から路面勾配を取得することができる。路面勾配センサは、路面の勾配情報を含む地図データが格納されたコントローラと、車両の位置情報を取得する位置情報取得システムとによって構成してもよい。この場合、路面勾配センサは、車両の位置情報に基づいて、現在地の路面の勾配情報を参照することができる。
走行装置制御部40は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。走行装置制御部40は、電力変換機21と一緒にコントロールキャビネット20に収容されている。走行装置制御部40は、機械ブレーキ出力装置17に接続され、機械ブレーキ16の動作を制御する。走行装置制御部40は、電力変換機21に接続され、走行用モータ14L,14Rおよびブレーキ抵抗器25の動作を制御する。これに加えて、走行装置制御部40は、エンジン制御装置11に接続され、エンジン10の動作を制御する。
走行装置制御部40は、メモリ40Aを備えている。メモリ40Aには、図11に示す車両速度Vを制限する制御処理プログラムが格納されている。走行装置制御部40は、図11に示す制御処理プログラムを実行する。走行装置制御部40は、インバータ24L,24Rを用いて走行用モータ14L,14Rの速度を制御するコントローラとなっている。走行装置制御部40は、抵抗器温度センサ30によって取得したブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、車両の最大速度を演算する最大速度演算部としての速度制限演算装置41を備えている。走行装置制御部40は、最大速度を超過しないように走行用モータ14L,14Rの速度を制御する。
次に、電気的な走行駆動に係る走行装置制御部40の具体的な構成について、図4を参照して説明する。
図4は、走行装置制御部40のうち電気的な走行駆動に関する部分の詳細なブロック図を示している。走行装置制御部40は、速度制限演算装置41、アクセル/リタード信号演算装置42(以下、A/R信号演算装置42という)、トルク指令演算装置43、INV−PWM信号演算装置44,45、直流電圧指令演算装置46(以下、DC電圧指令演算装置46という)、CHOP−PWM信号演算装置47を備えている。
速度制限演算装置41は、抵抗器温度センサ30によって検出されたブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを演算する。速度制限演算装置41は、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを、A/R信号演算装置42に出力する。速度制限演算装置41は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、車両の最大速度(前進速度制限値Vflim、後進速度制限値Vrlim)を低下させる。具体的には、速度制限演算装置41は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、前進速度制限値Vflimの絶対値を低下させ、後進速度制限値Vrlimの絶対値を低下させる。
A/R信号演算装置42には、アクセルペダル開度センサ6Aによって検出されたアクセルペダル開度Paと、リタードペダル開度センサ7Aによって検出されたリタードペダル開度Prと、速度制限演算装置41から出力された前進速度制限値Vflimおよび後進速度制限値Vrlimとが入力される。A/R信号演算装置42は、アクセルペダル開度Paと、リタードペダル開度Prと、前進速度制限値Vflimおよび後進速度制限値Vrlimとに基づいて、アクセル/リタード信号Sar(以下、A/R信号Sarという)を演算する。このとき、A/R信号Sarは、例えば車両を加速または減速させる信号である。車両を加速させるときには、A/R信号Sarは、正の値となる。車両を減速させるときには、A/R信号Sarは、負の値となる。A/R信号演算装置42は、A/R信号Sarを、トルク指令演算装置43と、DC電圧指令演算装置46とに出力する。
トルク指令演算装置43は、A/R信号Sarに基づいて走行用モータ14L,14Rに対するトルク指令Tqを演算する。トルク指令Tqは、走行用モータ14L,14Rに発生させるトルクに応じた値になっている。
INV−PWM信号演算装置44には、トルク指令演算装置43から出力されたトルク指令Tqと、電流センサ19Lによって検出された電流値ILと、速度センサ18Lによって検出された走行用モータ14Lの回転速度VLとが入力される。INV−PWM信号演算装置44は、トルク指令Tqと、電流値ILと、回転速度VLとに基づいて、インバータ24Lに出力するPWM信号を演算する。インバータ24Lのスイッチング素子は、INV−PWM信号演算装置44から出力されるPWM信号に応じてオン/オフする。
INV−PWM信号演算装置45には、トルク指令演算装置43から出力されたトルク指令Tqと、電流センサ19Rによって検出された電流値IRと、速度センサ18Rによって検出された走行用モータ14Rの回転速度VRとが入力される。INV−PWM信号演算装置45は、トルク指令Tqと、電流値IRと、回転速度VRとに基づいて、インバータ24Rに出力するPWM信号を演算する。インバータ24Lのスイッチング素子は、INV−PWM信号演算装置45から出力されるPWM信号に応じてオン/オフする。
DC電圧指令演算装置46は、A/R信号Sarに基づいて、DC電圧指令Vdcを演算する。DC電圧指令演算装置46は、DC電圧指令VdcをCHOP−PWM信号演算装置47に出力する。
なお、DC電圧指令Vdcは、走行用モータ14L,14Rの出力電圧制御にも利用されている。このため、コンバータ22から出力される直流電圧は、DC電圧指令Vdcに基づいて、所望の電圧値となるように制御される。
CHOP−PWM信号演算装置47には、DC電圧指令演算装置46から出力されたDC電圧指令Vdcが入力される。CHOP−PWM信号演算装置47は、DC電圧指令Vdcに基づいてチョッパ29に出力するPWM信号を演算する。チョッパ29のスイッチング素子は、CHOP−PWM信号演算装置47から出力されるPWM信号に応じてオン/オフする。
走行装置制御部40は、A/R信号Sarに基づいて、走行用モータ14L,14R力行と回生を制御し、車両の速度を調整する。また、走行用モータ14L,14Rの回生制御により発電された電力は、ブレーキ抵抗器25で主に熱として消費される。このように回生制御による発電電力をブレーキ抵抗器25で熱として消費する一連の動作は、発電ブレーキの一例として挙げられる。なお、発電ブレーキは、発電電力を蓄電装置(図示せず)に蓄える動作によって実行してもよい。
次に、A/R信号演算装置42の具体的な構成について、図5ないし図7を参照して説明する。
図5は、A/R信号演算装置42の詳細なブロック図を示している。A/R信号演算装置42は、アクセルペダル開度Pa、リタードペダル開度Pr、前進速度制限値Vflim、後進速度制限値Vrlim、回転速度VL,VRに基づいて、A/R信号Sarを演算する。A/R信号Sarを演算するときには、アクセルペダル開度Paを正の値とし、リタードペダル開度Prを負の値とする。
A/R信号演算装置42は、A/R信号Sarの基準信号P0を算出する基準信号算出部51と、A/R補正信号ΔPを算出する補正信号算出部52と、加算器53と、第2リミッタ54とを備えている。
基準信号算出部51は、アクセルペダル開度Paとリタードペダル開度Prとに基づいて、基準信号P0を出力する。基準信号算出部51は、リタードペダル開度Prを負の値に反転させる反転器51Aと、選択スイッチ51Bとを備えている。
選択スイッチ51Bには、アクセルペダル開度Paの信号P1とリタードペダル開度Prを負に反転させた信号P2とが入力される。選択スイッチ51Bは、信号P2が負のとき、即ちリタードペダル7を踏み込んでいるときには、信号P2を基準信号P0として出力する。このとき、基準信号P0は、リタードペダル開度Prの大きさを有し、負の値となる。選択スイッチ51Bは、信号P2が負以外のとき、即ちリタードペダル7を踏み込んでいないときには、信号P1を基準信号P0として出力する。このとき、基準信号P0は、アクセルペダル開度Paの大きさを有し、正の値となる。
補正信号算出部52は、前進速度制限値Vflim、後進速度制限値Vrlim、回転速度VL,VRに基づいて、A/R補正信号ΔPを出力する。補正信号算出部52は、車両速度演算装置52A、減算器52B,52C、選択スイッチ52D、PI制御部52E、第1リミッタ52Fを備えている。
車両速度演算装置52Aには、回転速度VL,VRが入力される。車両速度演算装置52Aは、回転速度VL,VRに基づいて、車両速度Vを演算する。具体的には、車両速度演算装置52Aは、例えば、回転速度VLと回転速度VRを比較し、速度絶対値が大きい方を、車両速度Vとして出力する。なお、車両速度演算装置52Aは、回転速度VLと回転速度VRの平均値を、車両速度Vとして出力してもよい。車両速度Vは、ダンプトラック1が前進しているときに正の値となる。車両速度Vは、ダンプトラック1が後進しているときに負の値となる。
減算器52Bは、前進速度制限値Vflimから車両速度Vを引いた値を、減算値ΔVfとして出力する。このとき、前進速度制限値Vflimは、正の値である。このため、ダンプトラック1が前進(V>0)している場合であって、前進速度制限値Vflimが車両速度Vよりも大きい(Vflim>V)ときには、減算値ΔVfは正の値となる。ダンプトラック1が前進(V>0)している場合であって、前進速度制限値Vflimが車両速度Vよりも小さい(Vflim<V)ときには、減算値ΔVfは負の値となる。即ち、車両の減速が必要なときには、減算値ΔVfは負の値になる。
減算器52Cは、車両速度Vから後進速度制限値Vrlimを引いた値を、減算値ΔVrとして出力する。このとき、後進速度制限値Vrlimは、負の値である。このため、ダンプトラック1が後進(V<0)している場合であって、後進速度制限値Vrlimの絶対値が車両速度Vの絶対値よりも大きい(|Vrlim|>|V|)ときには、減算値ΔVrは正の値となる。ダンプトラック1が後進(V<0)している場合であって、後進速度制限値Vrlimの絶対値が車両速度Vの絶対値よりも小さい(|Vflim|<|V|)ときには、減算値ΔVrは負の値となる。即ち、車両の減速が必要なときには、減算値ΔVrは負の値になる。
選択スイッチ52Dには、減算値ΔVfと減算値ΔVrとが入力される。選択スイッチ52Dは、車両速度Vが負のとき、即ちダンプトラック1が後進しているとき(V<0)には、減算値ΔVrを速度差ΔVとして出力する。選択スイッチ52Dは、車両速度Vが負以外のとき(V≧0)、即ちダンプトラック1が前進または停止しているときには、減算値ΔVfを速度差ΔVとして出力する。これにより、車両前進時には、A/R信号演算装置42は、前進速度制限値Vflimによって車両速度Vを制限することができる。また、車両後進時には、A/R信号演算装置42は、後進速度制限値Vrlimによって車両速度Vを制限することができる。
PI制御部52Eは、選択スイッチ52Dから出力される速度差ΔVに基づいて、基準補正信号ΔP0を演算する。具体的には、PI制御部52Eは、速度差ΔVの比例演算値と、速度差ΔVの積分演算値とを加算して、基準補正信号ΔP0を算出する。このとき、PI制御部52Eの比例ゲインと積分ゲインは、例えばA/R信号Sarの入力に対する電動機トルク出力の応答速度とトルク出力に対する車両の慣性重量を主に考慮して、制御が発散しないように設定される。
第1リミッタ52Fは、例えば図6に示すマップM1を有し、基準補正信号ΔP0を、0%から−100%までの間の値に制限する。このとき、リミッタの上限は0%、リミッタの下限は−100%としている。このため、基準補正信号ΔP0が0%よりも大きい(ΔP0>0)ときには、第1リミッタ52Fは、0%となったA/R補正信号ΔPを出力する。基準補正信号ΔP0が−100%よりも小さい(ΔP0<−100)ときには、第1リミッタ52Fは、−100%となったA/R補正信号ΔPを出力する。基準補正信号ΔP0が0%から−100%までの間の値のときには、第1リミッタ52Fは、基準補正信号ΔP0と同じ値となったA/R補正信号ΔPを出力する。
なお、第1リミッタ52Fの下限は、アクセルペダル開度Paの正の値を負に反転させた値としてもよい。この場合、A/R補正信号ΔPの下限が、現在のアクセルペダル開度Paを負にした値となる。これにより、A/R信号Sarの最終出力が負の値となるのを避けることができる。
加算器53は、基準信号P0とA/R補正信号ΔPとを加算し、これらの加算値P3を出力する。第2リミッタ54は、例えば図2に示すマップM2を有し、加算値P3を、100%から−100%までの間の値に制限する。第2リミッタ54は、A/R信号Sarを出力する。
加算値P3が100%よりも大きい(P3>100)ときには、第2リミッタ54は、100%となったA/R信号Sarを出力する。加算値P3が−100%よりも小さい(P3<−100)ときには、第2リミッタ54は、−100%となったA/R信号Sarを出力する。加算値P3が100%から−100%までの間の値のときには、第2リミッタ54は、加算値P3と同じ値となったA/R信号Sarを出力する。
このとき、A/R補正信号ΔPは、0%以下の値となっている(ΔP≦0)。このため、車両速度Vが前進速度制限値Vflimを超過している場合、または車両速度Vが後進速度制限値Vrlimを超過している場合に、A/R信号演算装置42は、基準信号P0からA/R補正信号ΔPの絶対値を減じた値を、A/R信号Sarとして出力する。これにより、A/R信号演算装置42は、前進速度制限値Vflimまたは後進速度制限値Vrlimを超過しないように、車両速度Vを制御することができる。
次に、速度制限演算装置41について、図8ないし図10を参照して説明する。図8は、第1の実施の形態による速度制限演算装置41のブロック図に示している。
速度制限演算装置41は、前進最大速度となる前進速度制限値Vflimを演算する前進速度制限演算部41Aと、後進最大速度となる後進速度制限値Vrlimを演算する後進速度制限演算部41Bとを有している。前進速度制限演算部41Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、前進速度制限値Vflimの絶対値を低下させる。前進速度制限演算部41Aは、前進最大速度マップMf1を備えている。前進最大速度マップMf1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、前進速度制限値Vflimを演算する。
また、後進速度制限演算部41Bは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、後進速度制限値Vrlimの絶対値を低下させる。後進速度制限演算部41Bは、後進最大速度マップMr1を備えている。後進最大速度マップMr1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、後進速度制限値Vrlimを演算する。
ここで、前進最大速度マップMf1について、図9を用いて説明する。
前進最大速度マップMf1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと前進速度制限値Vflimとの関係を示す特性線41A1を有している。特性線41A1に示すように、前進速度制限値Vflimは、ブレーキ抵抗器25が下限温度TfLよりも低いときには、最大速度Vfmaxで一定となる。前進速度制限値Vflimは、下限温度TfLから上限温度Tfhまでの間は単調減少する。前進速度制限値Vflimは、上限温度TfHよりも高いときには、最小速度Vfminで一定となる。
最大速度Vfmaxは、例えば電動機(走行用モータ14L,14R)の最大出力や機械的な許容入力に基づいて設定される。最小速度Vfminは、例えば車両が退避のために移動させるときに最低限必要な速度に設定される。これに限らず、最小速度Vfminは、例えばブレーキ抵抗器25の過熱に基づいて電動機の出力制限を行ったときに、電動機が駆動できる最大速度に設定してもよい。また、最小速度Vfminは、停止速度(Vfmin=0)に設定してもよい。
上限温度TfHは、ブレーキ抵抗器25を加熱から保護する必要が生じる保護温度である。例えば、この上限温度TfHまでブレーキ抵抗器25が加熱されると、車両はワーニング等を発する。一方、下限温度TfLは、以下に示す方法で設定されている。
例えば、最大速度Vfmaxでモータの最大回生トルクをかけ続けたときには、ブレーキ抵抗器25の温度Tbは、保護温度(上限温度TfH)を超過する。そこで、ブレーキ抵抗器25の保護温度が超過するような使用条件で、ブレーキ抵抗器25の温度上昇速度ΔTb/Δtを見積る。この温度上昇速度ΔTb/Δtに基づいて、保護温度を超過する時点よりも所定時間Δts前に車速を制限するようにする。所定時間Δtsは、少なくとも車速を回生制動が不要となる速度まで十分に低下させることが可能な時間を設定する。
例えば、周囲温度を最大使用温度とし、ブレーキ抵抗器25の温度Tbを保護温度とし、最大速度Vfmaxで電動機(走行用モータ14L,14R)の最大回生トルクをかけ続けた条件を考える。この条件下で、ブレーキ抵抗器25の温度上昇速度ΔTb/Δtを見積る。以下の数1の式に基づいて、この温度上昇速度ΔTb/Δtに所定時間Δtsを乗算して、所定時間Δts後の温度上昇分ΔTb(Vfmax)を求める。所定時間Δtsは、例えば30秒程度の値に設定される。
以下の数2の式に基づいて、この温度上昇分ΔTb(Vfmax)を保護温度である上限温度TfHから減算することによって、下限温度TfLを求める。
車両速度Vが最大速度Vfmaxよりも小さい速度についても、同様にこの速度におけるブレーキ抵抗器25の温度上昇速度を見積り、この温度上昇速度に所定時間Δtsを乗算して、温度上昇分を求める。この温度上昇分を上限温度TfHから減算することによって、想定した速度で速度制限が必要となる下限の温度を求める。これにより、前進速度制限値Vflimとブレーキ抵抗器25の温度Tbとの関係が求められるから、この関係に基づく前進最大速度マップMf1が作成される。この前進最大速度マップMf1を用いて車両の前進速度を制限した場合には、前進速度制限値Vflimは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが保護温度で平衡状態になる速度となる。しかしながら、車両を早期に低速状態にするためには、より小さい速度を、前進速度制限値Vflimとして設定してもよい。
図10に示す後進最大速度マップMr1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと後進速度制限値Vrlimとの関係を示す特性線41B1を有している。後進最大速度マップMr1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと後進速度制限値Vrlimとの関係を示す特性線41B1を有している。特性線41B1に示すように、後進速度制限値Vrlimは、ブレーキ抵抗器25が下限温度TrLよりも低いときには、絶対値が最大となった最大速度Vrmaxで一定となる。後進速度制限値Vrlimは、下限温度TrLから上限温度Trhまでの間は、絶対値が単調減少する。後進速度制限値Vrlimは、上限温度TrHよりも高いときには、絶対値が最小となった最小速度Vrminで一定となる。
後進最大速度マップMr1は、前進最大速度マップMf1と同じ考え方で設定されている。例えば、後進最大速度マップMr1は、前進最大速度マップMf1を横軸で反転させたマップとしてもよい。即ち、特性線41B1と特性線41A1とは、横軸に関して線対称としてもよい。なお、後進時の最大速度Vrmaxは、後進時におけるオペレータの視認性の低下を考慮して、前進時の最大速度Vfmaxよりも小さい値に設定してもよい。これに伴って、後進時の下限温度TrLは、前進時の下限温度TfLと異なる値でもよい。また、後進時の上限温度TrHは、前進時の上限温度TfHと同じ値でもよく、異なる値でもよい。
図9に示す前進速度制限演算部41Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、前進速度制限値Vflimの絶対値を連続的に低下させるものとした。本発明はこれに限らず、前進速度制限演算部41Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、前進速度制限値Vflimの絶対値を段階的に低下させてもよい。同様に、後進速度制限演算部41Bは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、後進速度制限値Vrlimの絶対値を段階的に低下させてもよい。
次に、速度制限演算装置41およびA/R信号演算装置42による車両速度Vを制限する制御処理について、図11を参照して説明する。なお、図11に示す制御処理を実行する時点で、速度制限演算装置41には、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが入力されており、A/R信号演算装置42には、アクセルペダル開度Paの信号P1と、リタードペダル開度Pbの信号P2とが入力されている。また、A/R信号演算装置42は、走行用モータ14L,14Rの回転速度VL,VRに基づいて、車両速度Vを取得している。
まず、ステップS1では、車両速度Vが0以上か否かを判定する。ステップS1で「YES」と判定したときには、車両速度Vが0以上であり(V≧0)、ダンプトラック1は前進している。このため、ステップS2に移行して、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、前進速度制限値Vflimを演算する。続くステップS3では、減算器52Bを用いて前進速度制限値Vflimから車両速度Vを減算する。そして、選択スイッチ52Dを用いて、減算器52Bから出力された減算値ΔVfを、速度差ΔVに設定する。
一方、ステップS1で「NO」と判定したときには、車両速度Vが0よりも低下しており(V<0)、ダンプトラック1は後進している。このため、ステップS4に移行して、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、後進速度制限値Vrlimを演算する。続くステップS5では、減算器52Cを用いて車両速度Vから後進速度制限値Vrlimを減算する。そして、選択スイッチ52Dを用いて、減算器52Cから出力される減算値ΔVrを、速度差ΔVに設定する。
ステップS3,S5が終了すると、ステップS6に移行する。ステップS6では、速度差ΔVに基づいて、A/R補正信号ΔPを演算する。具体的には、PI制御部52Eおよび第1リミッタ52Fを用いて、速度差ΔVからA/R補正信号ΔPを算出する。
続くステップS7では、リタードペダル7が操作されているか否かを判定する。具体的には、リタードペダル開度Prを負に反転させた信号P2が負の値か否かを判定する。ステップS7で「YES」と判定したときには、リタードペダル7が操作されて、信号P2が負の値となっている(P2<0)。このため、ステップS8に移行して、選択スイッチ51Bを用いて、信号P2を基準信号P0に設定する。
一方、ステップS7で「NO」と判定したときには、リタードペダル7が操作されておらず、信号P2は0となっている(P2=0)。このため、ステップS9に移行して、選択スイッチ51Bを用いて、アクセルペダル開度Paとなった信号P1を、基準信号P0に設定する。
ステップS8,S9が終了すると、ステップS10に移行する。ステップ10では、加算器53を用いて、基準信号P0とA/R補正信号ΔPとを加算する。続く、ステップS11では、第2リミッタ54を用いて、加算器53から出力される加算値P3からA/R信号Sarを演算する。
次に、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて車両速度Vを制限した場合の一例について、図12を参照して説明する。
まず、車両(ダンプトラック1)が下り勾配の路面をある一定速度で前進したときを考える。このとき、一定速度は、前進最大速度マップMf1のブレーキ抵抗器25の温度T1以下での前進速度制限値Vf1よりも小さいと仮定する。また、説明を簡略化するために、速度変化のための一時的なトルク変化(増加または減少)によるブレーキ抵抗器25の温度変化は、トルク変化している時間が十分短いと考えて、無視する。
路面の下り勾配が大きいので、車両速度Vを一定に保つため電動機(走行用モータ14L,14R)には負のトルクが定常的に発生する。このとき、ダンプトラック1は、トルクと電動機の回転速度VL,VRとの積となる発電電力をブレーキ抵抗器25で熱として消費する。この発電に伴う熱により、ブレーキ抵抗器25の温度Tbは、上昇していく。
そして、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが温度T1を超過すると、前進最大速度マップMf1に従って、前進速度制限値Vflimが小さくなる(時点t1)。前進速度制限値Vflimに比べて車両速度Vが大きくなったとき、前進速度制限値Vflimに追従するように、A/R信号Sarが減じられ、車両速度Vが減少する。車両速度Vの減少は、電動機の回転速度VL,VRの減少を意味する。そのため、電動機の発電電力は小さくなり、ブレーキ抵抗器25での発熱も小さくなる。これにより、ブレーキ抵抗器25の温度上昇速度は緩やかになる(時点t1から時点t2の区間)。
車両速度Vを低下させない場合には、図12中の破線Aで示すように、ブレーキ抵抗器25の温度Tbは、保護温度(上限温度TfH)を超過してしまう。これに対し、本実施の形態によるダンプトラック1は、速度制限により車両速度Vを小さくしている。これにより、ブレーキ抵抗器25の発熱が小さくなるから、最終的なブレーキ抵抗器25の平衡温度は、保護温度以下に抑えられる(時点t2から時点t3の区間)。
次に、時点t3から時点t4の区間では、下りの路面勾配が小さくなる。このとき、車両が下って行く方向の力が小さくなるので、電動機から出力する負のトルク(減速トルク)は小さくなる。よって、さらに発電電力が小さくなり、ブレーキ抵抗器25の発熱もより小さくなるので、ブレーキ抵抗器25の温度Tbは低下していく。
そして、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが下限温度TfLよりも小さくなったとき、前進速度制限値Vflimは、最初の速度(最大速度Vfmax)まで戻る(時点t5)。このとき、アクセルペダル6またはリタードペダル7の操作に応じて、車両速度Vを最初の速度まで戻すことが可能となる。
時点t6で最初の車両速度Vに戻った後は、この車両速度Vと減少した負のトルクにより、ブレーキ抵抗器25の発熱が決まる。このとき、ブレーキ抵抗器25は、任意の熱平衡温度へ収束する。
図12に示すように、第1の実施の形態によるダンプトラック1では、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに応じて、前進速度制限値Vflimが変化する。前進速度制限値Vflimに対して車両速度Vが超過した場合に、A/R信号Sarが減少し、車両速度Vが前進速度制限値Vflimよりも小さくなるように制御される。従って、ブレーキ抵抗器25の温度上昇に伴い、車両速度Vは減少するように制御される。このとき、車両速度Vの減少によってブレーキ抵抗器25の発熱が小さくなるので、最終的にはブレーキ抵抗器25の熱平衡温度が低く抑えられる。よって、前進最大速度マップMf1および後進最大速度マップMr1を適切に設定すれば、ブレーキ抵抗器25の熱平衡温度が保護温度を超過しないように、車両速度Vを制御することができる。
かくして、第1の実施の形態によるダンプトラック1は、走行用モータ14L,14R(電動機)の速度を制御する走行装置制御部40(コントローラ)を備えている。走行装置制御部40は、抵抗器温度センサ30によって取得したブレーキ抵抗器25の温度Tbに基づいて、車両の最大速度(前進速度制限値Vflimおよび後進速度制限値Vrlim)を演算する速度制限演算装置41(最大速度演算部)を備え、最大速度を超過しないように電動機の速度を制御する。
即ち、例えばダンプトラック1の前進しているときには、速度制限演算装置41はブレーキ抵抗器25の温度Tbに応じて前進速度制限値Vflimを演算する。このとき、速度制限演算装置41は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが高くなるに従って、最大速度となる前進速度制限値Vflimの絶対値を低下させる。これにより、前進速度制限値Vflimに対して車両速度Vが超過した場合には、A/R信号Sarが減少して、車両速度Vが前進速度制限値Vflimよりも小さくなるように、ダンプトラック1は制御される。そのため、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに応じて変化する前進速度制限値Vflimを超過しないように、車両速度Vは常に制限される。この点は、ダンプトラック1が後進しているときも同様である。従って、ブレーキ抵抗器25の発電ブレーキだけで、車両速度Vを最小速度Vfmin,Vfminまで低下させることができ、機械ブレーキ16を緊急時以外には使用する必要がなくなる。この結果、機械ブレーキ16の使用頻度を抑えられるので、機械ブレーキ16に係るメンテナンスコストを低減することができる。
次に、図13ないし図15は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、速度制限演算装置は、ブレーキ抵抗器の温度に加えて、冷却風温度センサによって取得した冷却風の温度に基づいて、車両の最大速度を演算することにある。第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態による最大速度演算部としての速度制限演算装置61は、抵抗器温度センサ30によって検出されたブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、冷却風温度センサ31によって取得した冷却風の温度Taに基づいて、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを演算する。このとき、冷却風の温度Taは、冷却装置(送風機27)の冷媒の温度である。速度制限演算装置61は、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを、A/R信号演算装置42に出力する。
速度制限演算装置61は、前進最大速度となる前進速度制限値Vflimを演算する前進速度制限演算部61Aと、後進最大速度となる後進速度制限値Vrlimを演算する後進速度制限演算部61Bとを有している。前進速度制限演算部61Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび冷却風の温度Taに応じて、前進速度制限値Vflimを出力する。具体的には、前進速度制限演算部61Aは、前進最大速度マップMf2を備えている。前進最大速度マップMf2は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび冷却風の温度Taに基づいて、前進速度制限値Vflimを演算する。
前進最大速度マップMf2は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと前進速度制限値Vflimとの関係を示す特性線61A1を有している。このとき、特性線61A1は、第1の実施の形態による特性線41A1とほぼ同じである。但し、特性線61A1は、冷却風の温度Taに応じて、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。具体的には、冷却風の温度Taが常温(例えば25℃)よりも上昇すると、その上昇分に応じて、特性線61A1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。このため、冷却風の温度Taが常温よりも高くなるに従って、下限温度TfLは低下する。即ち、冷却風の温度Taが常温よりも高いときには、冷却風の温度Taが常温よりも低いときに比べて、低い下限温度TfLで、前進速度制限値Vflimは最大速度Vfmaxよりも低下する。また、冷却風の温度Taが常温よりも高いときには、冷却風の温度Taが常温よりも低いときに比べて、低い上限温度TfHで、前進速度制限値Vflimは最小速度Vfminに低下する。
また、後進速度制限演算部61Bは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび冷却風の温度Taに応じて、後進速度制限値Vrlimを出力する。具体的には、後進速度制限演算部61Bは、後進最大速度マップMr2を有している。後進最大速度マップMr2は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび冷却風の温度Taに基づいて、後進速度制限値Vrlimを演算する。後進最大速度マップMr2は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと後進速度制限値Vrlimとの関係を示す特性線61B1を有している。このとき、特性線61B1は、特性線61A1と同様に、冷却風の温度Taが高くなるに従って、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。このとき、ダンプトラック1は、ブレーキ抵抗器25を冷却する冷却装置としての送風機27と、冷却装置の冷媒となる冷却風の温度Taを取得する冷却風温度センサ31(冷媒温度センサ)と、を備えている。第2の実施の形態では、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、冷却風の温度Taも考慮して前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを決定する。このため、周囲環境の温度が低い場合には、制限速度を高い状態に維持することによって、車両速度Vに制限がかかる可能性を減らすことができる。一方、周囲環境の温度が高い場合には、必要な分だけ車両速度Vの制限を大きくすることができる。従って、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、幅広い周囲環境の温度で、機械ブレーキ16の使用頻度を低減することが可能であり、機械ブレーキ16に係るメンテナンスコストを低減することができる。
次に、図16ないし図18は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、速度制限演算装置は、ブレーキ抵抗器の温度に加えて、積載質量センサによって取得した車両の積載質量に基づいて、車両の最大速度を演算することにある。第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施の形態による最大速度演算部としての速度制限演算装置71は、抵抗器温度センサ30によって検出されたブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、積載質量センサ32によって取得した車両の積載質量Wに基づいて、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを演算する。速度制限演算装置71は、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを、A/R信号演算装置42に出力する。
速度制限演算装置71は、前進最大速度となる前進速度制限値Vflimを演算する前進速度制限演算部71Aと、後進最大速度となる後進速度制限値Vrlimを演算する後進速度制限演算部71Bとを有している。前進速度制限演算部71Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび積載質量Wに応じて、前進速度制限値Vflimを出力する。具体的には、前進速度制限演算部71Aは、前進最大速度マップMf3を備えている。前進最大速度マップMf3は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび積載質量Wに基づいて、前進速度制限値Vflimを演算する。
前進最大速度マップMf3は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと前進速度制限値Vflimとの関係を示す特性線71A1を有している。このとき、特性線71A1は、第1の実施の形態による特性線41A1とほぼ同じである。但し、特性線71A1は、積載質量Wに応じて、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。具体的には、積載質量Wが0よりも増加すると、その増加量に応じて、特性線71A1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。このため、積載質量Wが0(空荷のとき)よりも増加するに従って、下限温度TfLは低下する。即ち、積載質量Wが大きいときには、積載質量Wが0のときに比べて、低い下限温度TfLで、車両速度Vが制限される。また、積載質量Wが大きいときには、積載質量Wが0のときに比べて、低い上限温度TfHで、前進速度制限値Vflimは最小速度Vfminに低下する。
また、後進速度制限演算部71Bは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび積載質量Wに応じて、後進速度制限値Vrlimを出力する。具体的には、後進速度制限演算部71Bは、後進最大速度マップMr3を有している。後進最大速度マップMr3は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび積載質量Wに基づいて、後進速度制限値Vrlimを演算する。後進最大速度マップMr3は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと後進速度制限値Vrlimとの関係を示す特性線71B1を有している。このとき、特性線71B1は、特性線71A1と同様に、積載質量Wが大きくなるに従って、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。例えばベッセル3に積載物を満載した場合には、空荷(W=0)のときに比べて、走行状態の車両を停止させるときにブレーキ抵抗器25で消費するエネルギが増加する。これに対し、ダンプトラック1は、車両の積載質量Wを取得する積載質量センサ32を備えている。第3の実施の形態では、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、積載質量Wも考慮して前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを決定する。このため、ダンプトラック1のように、積載状況に応じてブレーキ抵抗器25の消費電力が大きく異なる車両であっても、空荷の場合には、制限速度を高い状態に維持することによって、車両速度Vに制限がかかる可能性を減らすことができる。一方、ベッセル3に積載物を満載した場合には、必要な分だけ車両速度Vの制限を大きくすることができる。従って、第3の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、車両の積載状況に応じて、機械ブレーキ16の使用頻度を低減することが可能であり、機械ブレーキ16に係るメンテナンスコストを低減することができる。
次に、図19ないし図21は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、速度制限演算装置は、ブレーキ抵抗器の温度に加えて、路面勾配センサによって取得した路面の勾配に基づいて、車両の最大速度を演算することにある。第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第4の実施の形態による最大速度演算部としての速度制限演算装置81は、抵抗器温度センサ30によって検出されたブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、路面勾配センサ33によって取得した路面の勾配θに基づいて、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを演算する。速度制限演算装置81は、前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを、A/R信号演算装置42に出力する。
速度制限演算装置81は、前進最大速度となる前進速度制限値Vflimを演算する前進速度制限演算部81Aと、後進最大速度となる後進速度制限値Vrlimを演算する後進速度制限演算部81Bとを有している。前進速度制限演算部81Aは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび路面の勾配θに応じて、前進速度制限値Vflimを出力する。具体的には、前進速度制限演算部81Aは、前進最大速度マップMf4を備えている。前進最大速度マップMf4は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび路面の勾配θに基づいて、前進速度制限値Vflimを演算する。
前進最大速度マップMf4は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと前進速度制限値Vflimとの関係を示す特性線81A1を有している。このとき、特性線81A1は、第1の実施の形態による特性線41A1とほぼ同じである。但し、特性線81A1は、路面の勾配θに応じて、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。具体的には、路面の勾配θが下り勾配方向で増加すると、その増加量に応じて、特性線81A1は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。このため、路面の勾配θが平坦路よりも下り勾配方向で増加するに従って、下限温度TfLは低下する。即ち、下り勾配が大きいときには、平坦路に比べて、低い下限温度TfLで、車両速度Vが制限される。また、下り勾配が大きいときには、平坦路に比べて、低い上限温度TfHで、前進速度制限値Vflimは最小速度Vfminに低下する。
また、後進速度制限演算部81Bは、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび路面の勾配θに応じて、後進速度制限値Vrlimを出力する。具体的には、後進速度制限演算部81Bは、後進最大速度マップMr4を有している。後進最大速度マップMr4は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbおよび路面の勾配θに基づいて、後進速度制限値Vrlimを演算する。後進最大速度マップMr4は、ブレーキ抵抗器25の温度Tbと後進速度制限値Vrlimとの関係を示す特性線81B1を有している。このとき、特性線81B1は、特性線81A1と同様に、下り勾配が大きくなるに従って、ブレーキ抵抗器25の温度Tbが低い方にシフトする。
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。例えば下り勾配の場合には、平坦路に比べて、走行状態の車両を停止させるときにブレーキ抵抗器25で消費するエネルギが増加する。これに対し、ダンプトラック1は、車両の後輪9L,9R(駆動輪)が接地する路面の勾配θを取得する路面勾配センサ33を備えている。第4の実施の形態では、ブレーキ抵抗器25の温度Tbに加えて、路面の勾配θも考慮して前進速度制限値Vflimと後進速度制限値Vrlimとを決定する。このため、例えば上り勾配や平坦路の場合には、制限速度を高い状態に維持することによって、車両速度Vに制限がかかる可能性を減らすことができる。一方、下り勾配の場合には、必要な分だけ車両速度Vの制限を大きくすることができる。従って、第4の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、幅広い路面の勾配状況に応じて、機械ブレーキ16の使用頻度を低減することが可能であり、機械ブレーキ16に係るメンテナンスコストを低減することができる。
なお、前記各実施の形態では、電気駆動車両としてダンプトラック1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、電動機によって走行駆動し、回生制動が可能な電気駆動車両であればよく、例えばホイールローダに適用してもよい。
また、前記各実施の形態で記載した周波数等の具体的な数値は、一例を示したものであり、例示した値に限らない。これらの数値は、例えば適用対象の仕様に応じて適宜設定される。
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。