以下、本発明に係るダンプトラック及び冷却ファン制御方法を実施するための形態を図に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム11と、この車体フレーム11に回転可能に設けられた車輪とを備えている。この車輪は、例えば、車体フレーム11の前部の左右両端にそれぞれ一輪ずつ配置された前輪12L,12R(図1には、左側の前輪12Lのみが図示されている)と、車体フレーム11の後部の左右両端に回転可能にそれぞれ二輪ずつ配置された後輪13L,13R(図1には、左側の後輪13Lのみが図示されている)とから構成されている。
前輪12L,12Rは、ステアリングハンドル等を介して入力されるステアリング角度に基づいて操舵される操舵輪であると共に、ダンプトラック1が走行する走行路の路面を介して後輪13L,13Rに従動する従動輪である。一方、駆動輪である後輪13L,13Rの回転軸には、各後輪13L,13Rを駆動するための後述の走行モータ42L,42R(図2参照)、及び各後輪13L,13Rの回転数を調整する後述の減速機43L,43Rが取り付けられている。
また、ダンプトラック1は、前輪12L,12Rの上方に配置され、オペレータが歩行可能なデッキ(アッパーデッキ)14と、このデッキ14の上面14Uに設置され、オペレータが搭乗するキャブ15と、車両の前部に搭載され、各種の電力機器を収納するコントロールキャビネット16と、ダンプトラック1の後述の駆動回路31(図2参照)において制動時に発生する回生電力による余剰エネルギーを熱として放散するための複数のグリッドボックス17とを備えている。
さらに、ダンプトラック1は、車体フレーム11に対して起伏可能に設けられ、土砂や鉱石等の積荷を積載する荷台18と、車体フレーム11の後部にブラケット19を介して設けられたヒンジピン20と、車体フレーム11のうちヒンジピン20よりも前方に配置され、車体フレーム11と荷台18とを連結するホイストシリンダ21とを備えている。
図1において、ダンプトラック1の前輪12Lで隠れた部分には、後述のエンジン32、主発電機33(図2参照)、及び補助発電機34(図2参照)等が搭載されており、これらの各機器の上方には、車両の動作を制御する後述の制御装置61が搭載されている。この他、ダンプトラック1には、車体フレーム11の中央部分に配置され、エンジン32の燃料を貯蔵する燃料タンク22と、ホイストシリンダ21へ圧油を供給する油圧ポンプ(図示せず)と、車体フレーム11のうち燃料タンク22の近傍に配置され、油圧ポンプに供給する作動油を貯蔵する作動油タンク23とが搭載されている。
したがって、油圧ポンプが圧油を作動油タンク23からホイストシリンダ21へ供給してホイストシリンダ21を伸長させると、荷台18がホイストシリンダ21に押し上げられて起立することにより、荷台18に積載された積荷を放土することができる。一方、油圧ポンプがホイストシリンダ21に供給した圧油を作動油タンク23へ戻してホイストシリンダ21を収縮させると、荷台18がホイストシリンダ21に支持されながら倒伏することにより、積込機を用いて積荷を荷台18へ積み込むことができる。
ここで、ダンプトラック1は自動車等の普通の乗用車と異なり、荷台18に積荷が積載されている積荷状態のときの車両の重量が、荷台18に積荷が積載されていない空荷状態のときの車両の重量と比較して2倍以上変化する。そのため、積荷状態のときのダンプトラック1の車高が空荷状態のときの車高に対して大きく変化しないように、ダンプトラック1には、一般にガスと油を封入した前側サスペンションシリンダ24L,24R(図1には、左側の前側サスペンションシリンダ24Lのみが図示されている)及び後側サスペンションシリンダ25L,25R(図1には、左側の後側サスペンションシリンダ25Lのみが図示されている)が一対ずつ搭載されている。
一対の前側サスペンションシリンダ24L,24Rは、車両の幅方向において左右にそれぞれ配置されると共に、車体フレーム11と前輪12L,12Rとの間に介装され、キャブ15、荷台18、及び荷台18上の積荷等の重量物を支持して走行時の車両への衝撃を緩和する機能を有している。各前側サスペンションシリンダ24L,24Rには、各前側サスペンションシリンダ24L,24R内の圧力(以下、便宜的にサスペンション圧力と称する)を検出するサスペンション圧力センサ26L,26R(図4参照)が取り付けられている。
同様に、一対の後側サスペンションシリンダ25L,25Rは、車両の幅方向において左右にそれぞれ配置されると共に、車体フレーム11と後輪13L,13Rとの間に介装され、キャブ15、荷台18、及び荷台18上の積荷等の重量物を支持して走行時の車両への衝撃を緩和する機能を有している。各後側サスペンションシリンダ25L,25Rには、各後側サスペンションシリンダ25L,25R内の圧力(以下、便宜的にサスペンション圧力と称する)を検出するサスペンション圧力センサ27L,27R(図4参照)が取り付けられている。
制御装置61は、例えば図示されないが、車両の動作全体を制御するための各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアから構成されている。
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD、もしくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAMに読出され、CPUの制御に従って動作することによりプログラム(ソフトウェア)とハードウェアとが協働して、制御装置61の機能を実現する機能ブロックが構成される。なお、本実施形態の特徴をなす制御装置61の機能構成の詳細については後述する。
次に、本実施形態に係るダンプトラック1を駆動する駆動回路31の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。同図に示す破線で囲まれた領域は、コントロールキャビネット16内に収められていることを表し、一点鎖線で囲まれた領域は、グリッドボックス17内に収められていることを表す。
図2に示すように、ダンプトラック1に搭載された駆動回路31は、駆動源としてのエンジン32と、このエンジン32に機械的に接続され、エンジン32の駆動力によってそれぞれ発電する主発電機33及び補助発電機34と、クラッチ35を介してエンジン32に機械的に接続され、車両内に冷却風を生起する冷却ファン36と、主発電機33及び補助発電機34に電気的に接続され、コントロールキャビネット16及びグリッドボックス17内の各機器とから構成されている。
エンジン32は、主発電機33、補助発電機34、冷却ファン36、及びホイストシリンダ21等の油圧源である油圧ポンプを駆動する。このエンジン32は、オペレータによってキャブ15内のアクセルペダル(図示せず)が踏み込まれると、その操作量に応じた回転数まで上昇し、またキャブ15内のブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれると、回転数が徐々に低下する。
さらに、エンジン32の出力軸には、エンジン32の回転数を検出するエンジン回転数検出部としてのエンジン回転数センサ32A(図4参照)と、エンジン32のトルクを検出するエンジントルクセンサ32B(図4参照)とが設けられている。また、エンジン32には、当該エンジン32が吸入する空気の温度を検出する外気温度センサ32C(図4参照)が内蔵されている。すなわち、外気温度センサ32Cが外気の温度を検出する外気温度検出部として機能する。なお、この外気温度検出部は、上述した外気温度センサ32Cに限らず、例えばエアコンの温度センサのように、外気の温度を検出できるものであれば、他の機器や装置を用いてもよい。
主発電機33及び補助発電機34は、エンジン32の出力軸に連結されて共に回転運動を行う。この主発電機33は、主として左右の走行モータ42L,42Rの動力源となる三相交流電力を発生する。補助発電機34は、後述のグリッドブロア45やキャビネットヒータ類(図示せず)の動力源となる三相交流電力を発生する。
コントロールキャビネット16には、ダンプトラック1における走行システム全体の監視及び制御を行う走行システムコントローラ(図示せず)と、主発電機33が発生させる交流電圧を直流化する整流器37及びコンデンサ38と、左右の走行モータ42L,42Rの動作を制御する左右の主インバータ39L,39Rと、各補機類の動作を制御する補助インバータ40と、コンデンサ38と主インバータ39L,39Rとの間に設けられ、主インバータ39L,39Rにて生じる回生電力を取り出すチョッパ41とが格納されている。
この他、コントロールキャビネット16には、図示されないが、当該コントロールキャビネット16内の各機器を暖機するキャビネットヒータ、各機器の冷却用の冷却水を循環させる機器冷却用ポンプ、当該冷却水を冷却する機器冷却用ラジエータ、機器冷却用ファンユニット、制御電源ユニット、発電機励磁ユニット、並びに各種センサ、リレー、及びスイッチ類が格納されている。
整流器37及びコンデンサ38は、ユニット化された水冷構造になっており、主発電機33からの三相交流電力を整流及び平滑化して、高圧電源として適した直流電力に変換する。左右の主インバータ39L,39R及び補助インバータ40は、半導体素子の一種で絶縁耐圧の高いIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いて構成されている。
主インバータ39Lは走行モータ42Lに接続され、主インバータ39Rは走行モータ42Rに接続されている。これらの左右の主インバータ39L,39Rは、オペレータによってキャブ15内のアクセルペダルが踏み込まれると、整流器37からの直流電力を要求に応じた三相交流電力に変換する。また、主インバータ39L,39Rは、オペレータによってキャブ15内のブレーキペダルが踏み込まれると、左右の走行モータ42L,42Rで発生した電力を整流して回路に還流する。
これらの左右の走行モータ42L,42Rは、三相誘導式の電動機で構成されている。したがって、走行モータ42L,42Rは、オペレータによってキャブ15内のアクセルペダルが踏み込まれると、左右の減速機43L,43Rを介して左右の後輪13L,13Rを回転駆動することにより、車両を走行させる。また、走行モータ42L,42Rは、オペレータによってキャブ15内のブレーキペダルが踏み込まれると、走行モータ42L,42Rが発電した電力、すなわち、余剰電力が左右の主インバータ39L,39Rを通じて駆動回路31に還流される。
補助インバータ40は、後述のグリッドブロア45の他、図示されないが、左右の走行モータ用ブロア及び機器冷却用ポンプに接続されている。チョッパ41は、オペレータによってキャブ15内のブレーキペダルが踏み込まれると、走行システムコントローラによって還流する直流電力が予め定められた上限を超えると判断された場合に、余剰電力をグリッドボックス17へ導く。
キャビネットヒータは、コントロールキャビネット16内の温度が所定の温度以下のとき、補助発電機34が発電する電力が供給されることにより、コントロールキャビネット16内を加熱して暖機する。機器冷却用ポンプは、駆動回路31を構成する配管(図示せず)を通じてコントロールキャビネット16内の整流器37、コンデンサ38、及び機器冷却用ラジエータ等に冷却水を圧送し、これらの各機器の温度を循環する冷却水によって調節する。
グリッドボックス17には、チョッパ41に電気的に接続されたグリッド抵抗44と、このグリッド抵抗44に対して車両内の空気を吹き付けるグリッドブロア45と、補助インバータ40から供給された電力によってグリッドブロア45を駆動する補助モータ46と、各種センサ及びスイッチ類(図示せず)とが格納されている。グリッド抵抗44は、チョッパ41からの余剰電力を放電して熱に変換する。グリッドブロア45は、キャブ15内のブレーキペダルが踏まれることで補助インバータ40の作用により動作し、グリッド抵抗44を空冷する。
次に、本実施形態に係るエンジン32を冷却する冷却回路51の構成について、図3を参照しながら詳細に説明する。
図3に示すように、冷却回路51は、エンジン32の冷却水が内部を流通する液配管52と、この液配管52内の冷却水を循環させるポンプ53と、エンジン32の内部に搭載され、エンジン32と冷却水との間で熱交換を行う熱交換部材としてのウォータジャケット54と、エンジン32の熱で暖められた冷却水と外気との間で熱交換を行うラジエータ55とから構成されており、これらの各機器は液配管52によって順に環状に接続されている。
また、液配管52のうちウォータジャケット54の近傍にはサーモスタット56が設けられており、エンジン32の冷却水が所定の温度以上になった場合に、冷却回路51は、サーモスタット56を介して当該冷却水をラジエータ55側の冷却回路51Aに循環させる。一方、エンジン32の冷却水が所定の温度未満である場合に、冷却回路51は、当該冷却水をエンジン32に内蔵された冷却回路51Bに循環させる。なお、ラジエータ55の近傍には、上述したように、車両内に外気を取り込んでラジエータ55へ送風することにより、冷却回路51内の冷却水等を冷却する送風用の冷却ファン36が配置されている。
ポンプ53は、エンジン32に直結し、当該エンジン32の駆動と共に常に動作している。このポンプ53が動作することにより、エンジン32の冷却水が冷却回路51A又は冷却回路51B内を循環する。なお、ポンプ53は、上述した場合に限らず、例えば、電動ポンプであってもよい。
ウォータジャケット54は、エンジン32内に形成されており、冷却水をラジエータ55側へ流通させる冷却回路51Aの流路を有する。エンジン32で発生した熱は、このウォータジャケット54の流路から冷却水に伝えられる。ウォータジャケット54には、冷却回路51Aからの冷却水が内部へ流入する冷却水入口(図示せず)と、ウォータジャケット54を循環した冷却水を外部へ流出する冷却水出口(図示せず)とを有する。また、ウォータジャケット54は、冷却水をエンジン32内で循環させる冷却回路51Bの流路を有する。
ラジエータ55は、ウォータジャケット54で暖められた冷却水と冷却ファン36が車両内に取り込んだ外気とを熱交換することにより、エンジン32の冷却水を冷却する。このラジエータ55は、エンジン32の冷却に必要な放熱性能を持つように寸法等の諸元が設計されている。サーモスタット56は、当該サーモスタット56に流れる冷却水の温度によって開度が変わり、冷却回路51Aと冷却回路51Bをそれぞれ循環する冷却水の割合を調整する。具体的には、冷却水の温度が高い場合に、ラジエータ55側の冷却回路51Aを循環する冷却水の流量が増加し、冷却水の温度が低い場合に、エンジン32内の冷却回路51Bを循環する冷却水の流量が増加する。
冷却ファン36は、図2において説明したように、クラッチ35を介してエンジン32により駆動されている。すなわち、このクラッチ35は、エンジン32と冷却ファン36との間に設けられ、エンジン32の駆動力を冷却ファン36に伝達する。本実施形態では、クラッチ35は、その締結量を制御できるように構成されており、クラッチ35の締結量を変更することでエンジン32の回転数に対する冷却ファン36の回転数を調整することが可能となっている。
クラッチ35が完全に締結している場合には、エンジン32の回転数と冷却ファン36の回転数は互いに一致し、クラッチ35の締結量が小さい程、冷却ファン36の回転数は減少する。クラッチ35の締結量が0(ゼロ)の場合には、冷却ファン36が回転せずに停止する。
なお、本実施形態は、上述したように、エンジン32及びクラッチ35で冷却ファン36を駆動する駆動装置を用いた場合について説明したが、本発明はこの場合に限らず、駆動装置は、電動モータや油圧モータ等から構成されてもよい。また、クラッチ35は、例えば、湿式多板クラッチから成っているが、同様の機能を有するものであれば、乾式多板クラッチ等の他の種類の形式を採用してもよい。
エンジン32を冷却する冷却回路51は、図3に示す1つに限らず、同様の冷却回路を複数並列に配置して構成してもよい。例えば、冷却回路51は、エンジン32の過給機で圧縮された空気を冷却するアフタークーラを備えていても良い。この場合、冷却回路51は、複数の冷却回路を有することになるが、冷却ファン36の個数を1個とし、どちらのラジエータにも外気を送風するように構成すればよい。
ところで、本実施形態に係る鉱山用のダンプトラック1は、エンジン32の出力が自動車等の普通の乗用車に比べて大きく、エンジン32を冷却するために、高い冷却能力が要求され、必然的に冷却ファン36を駆動する動力も大きくなる。上述したように、冷却ファン36はエンジン32を駆動源としていることから、冷却ファン36の駆動に伴ってエンジン32の負荷が増えることにより、ダンプトラック1の燃料消費量が増加する。
また、冷却ファン36はエンジン32を冷却する際に適切に駆動する必要がある。その理由としては、冷却ファン36の風量が不足する場合には、エンジン32が高負荷によってオーバーヒートを発生し易くなり、冷却ファン36の風量が過剰である場合には、上述したようにエンジン32の負荷が増大してダンプトラック1の燃料消費量が増加するからである。つまり、エンジン32が要求する冷却能力に合わせて冷却ファン36を駆動する必要がある。
さらに、鉱山用のダンプトラック1のように大きな車両には、冷却回路51に大量の冷却水を使用している場合が多い。このような場合には、ラジエータ55を流通する冷却水の熱容量が大きくなるので、エンジン32の動作に対して冷却水の温度上昇が遅れる。そのため、この冷却水の温度に応じて冷却ファン36の回転数を制御する場合には、予めエンジン32のオーバーヒートを防ぐために、冷却回路51の冷却能力に余裕を持たせるように冷却ファン36を駆動することになるが、結果として、冷却ファン36の駆動に必要な動力が増大するので、ダンプトラック1の燃料消費量を十分に抑制することができない。
そこで、本実施形態に係る制御装置61は、エンジン32が要求する冷却能力に合わせて、冷却ファン36の回転数を制御するようにしている。以下、本実施形態の特徴をなす冷却ファン36の回転数の制御に関する構成について、図4を参照しながら詳細に説明する。
図4に示すように、制御装置61は、冷却回路51Aを循環する冷却水の流量を検出する流量検出部62、エンジン32の出力を検出するエンジン出力検出部63、外気の温度を検出する前述の外気温度センサ32C、車両の位置を検出する車両位置検出部64、荷台18の積載量を検出する積載量検出部65、及び車両の走行状態を管理する走行管理部66に通信接続され、これらの機器から入力した情報に対して、冷却ファン36の回転数を制御する。なお、流量検出部62、エンジン出力検出部63、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66の各ハードウェア構成は、制御装置61のハードウェア構成と同様であるため、重複する説明を省略する。
制御装置61は、外気温度センサ32Cによって検出された外気の温度、流量検出部62によって検出された冷却水の流量、及びエンジン出力検出部63によって検出されたエンジン32の出力に基づいて、冷却ファン36の目標回転数を設定する目標ファン回転数設定部611を有している。
また、制御装置61は、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66から取得した車両の走行状態に応じて、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する目標ファン回転数補正部612と、冷却ファン36の回転数が目標ファン回転数補正部612によって補正された冷却ファン36の目標回転数に一致するように、冷却ファン36を回転させる制御を行う回転制御部613とを有している。
流量検出部62は、エンジン32の回転数とラジエータ55側の冷却回路51Aの冷却水の流量との関係を示す所定の特性Aを内部のHDD等の記憶装置に予め記憶している。また、流量検出部62は、エンジン回転数センサ32Aに通信接続されている。この流量検出部62は、記憶装置に記憶された特性Aに対して、エンジン回転数センサ32Aによって検出されたエンジン32の回転数を適用することにより、ラジエータ55を流通する冷却水の流量を演算する。
エンジン出力検出部63は、エンジン回転数センサ32A及びエンジントルクセンサ32Bに通信接続され、エンジン回転数センサ32Aによって検出されたエンジン32の回転数及びエンジントルクセンサ32Bによって検出されたエンジン32のトルクに基づいて、エンジン32の出力を演算する。なお、エンジン出力検出部63は、この場合に限らず、他の方法でエンジン32の出力を求めてもよい。
車両位置検出部64は、例えば、車両の所定の位置に取り付けられ、GPS(Global Positioning System)衛星から測位電波を受信して自車両の位置(例えば、3次元空間の実座標で表される絶対位置)を取得するGPS受信機を含んで構成されている。したがって、車両位置検出部64は、このGPS受信機から得られた自車両の位置からダンプトラック1が走行している坂道や平地等の地形を判別することができる。
積載量検出部65は、各サスペンション圧力センサ26L,26R,27L,27Rに通信接続され、各サスペンション圧力センサ26L,26R,27L,27Rによって検出されたサスペンション圧力に基づいて、荷台18に積載された積荷の荷重を荷台18の積載量として検出する。
具体的には、積載量検出部65は、前側サスペンションシリンダ24L,24R及び後側サスペンションシリンダ25L,25Rの各シリンダ断面積、並びに前側サスペンションシリンダ24L,24R及び後側サスペンションシリンダ25L,25Rによって支持されている車両側の重量を内部のHDD等の記憶装置に予め記憶している。
積載量検出部65は、サスペンション圧力センサ26L,26Rによって検出された前側サスペンションシリンダ24L,24R内のサスペンション圧力と、予め記憶したシリンダ断面積とを乗算することにより、前側サスペンションシリンダ24L,24Rにそれぞれ作用する荷重を演算する。同様に、積載量検出部65は、サスペンション圧力センサ27L,27Rによって検出された後側サスペンションシリンダ25L,25R内のサスペンション圧力と、予め記憶したシリンダ断面積とを乗算することにより、後側サスペンションシリンダ25L,25Rにそれぞれ作用する荷重を演算する。
積載量検出部65は、演算した左側の前側サスペンションシリンダ24Lの荷重と、演算した右側の前側サスペンションシリンダ24Rの荷重とを加算することにより、前側サスペンションシリンダ24L,24Rにかかる前側荷重を演算する。同様に、積載量検出部65は、演算した左側の後側サスペンションシリンダ25Lの荷重と、演算した右側の後側サスペンションシリンダ25Rの荷重とを加算することにより、後側サスペンションシリンダ25L,25Rにかかる後側荷重を演算する。
さらに、積載量検出部65は、演算した前側荷重と後側荷重とを加算することにより、前側サスペンションシリンダ24L,24R及び後側サスペンションシリンダ25L,25Rに作用する全荷重を演算する。そして、積載量検出部65は、演算した全荷重から、前側サスペンションシリンダ24L,24R及び後側サスペンションシリンダ25L,25Rによって支持されている車両側の重量を減算することにより、荷台18に積載された積荷の荷重を演算する。なお、積載量検出部65は、この場合に限らず、前側サスペンションシリンダ24L,24R及び後側サスペンションシリンダ25L,25Rのストローク量等から積荷の荷重を求めてもよい。
走行状態検出部67は、車両の速度を検出する車両速度検出器(図示せず)と、車両が走行する走行路の路面状態を検出する路面状態検出器(図示せず)とを含んで構成されている。車両速度検出器は、例えば、各前輪12L,12Rの近傍に設けられ、各前輪12L,12Rの回転速度を検出する前輪回転速度センサから成っている。すなわち、前輪回転速度センサは、ダンプトラック1の従動輪の回転速度を検出するものであるから、車両の速度を検出するものとみなすことができる。
路面状態検出器は、例えば、車両に取り付けられたミリ波レーダや前方カメラ等、ダンプトラック1の走行方向(進行方向)前方の障害物を検知する外界センサから成っている。路面状態検出器は、この外界センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1の走行路の路面に凹凸があるか否かを判定する。なお、路面状態検出器は、この場合に限らず、他の方法で走行路の路面状態を検出してもよい。
次に、制御装置61の目標ファン回転数設定部611の構成について詳細に説明する。
ここで、エンジン32の出力に対する冷却回路51の冷却水への入熱量は予め分かっているので、この入熱量をラジエータ55で放熱できれば、エンジン32がオーバーヒートすることはない。ラジエータ55による放熱量は、ラジエータ55の寸法等の諸元と、ラジエータ55側の冷却回路51Aを循環する冷却水の流量と、冷却ファン36の風量と、ラジエータ55の吸込空気の温度である外気の温度とから求めることができる。
すなわち、冷却ファン36の風量は、設計値であるラジエータ55の寸法等の諸元、エンジン32の出力、ラジエータ55を流通する冷却水の流量、及び外気の温度から求めることができる。また、冷却ファン36の回転数は、予め求められた冷却ファン36の回転数と風量の関係から求めることができる。したがって、目標ファン回転数設定部611は、ラジエータ55の寸法等の諸元、及び冷却ファン36の回転数と風量の関係を示す所定の特性Bを内部のHDD等の記憶装置に予め記憶している。
目標ファン回転数設定部611は、記憶装置に記憶されたラジエータ55の寸法等の緒元、外気温度センサ32Cによって検出された外気の温度、流量検出部62によって検出された冷却水の流量、及びエンジン出力検出部63によって検出されたエンジン32の出力から、目標とする冷却ファン36の風量を演算する。そして、目標ファン回転数設定部611は、記憶装置に記憶された特性Bに対して、演算した冷却ファン36の風量を適用することにより、エンジン32を冷却するのに必要とされる冷却ファン36の目標回転数を演算する。
なお、目標ファン回転数設定部611は、この場合に限らず、外気の温度、ラジエータ55を流通する冷却水の流量、及びエンジン32の出力に対する冷却ファン36の回転数の関係を示す所定の特性Cを内部のHDD等の記憶装置に予め記憶し、この特性Cに対して、外気温度センサ32Cによって検出された外気の温度、流量検出部62によって検出された冷却水の流量、及びエンジン出力検出部63によって検出されたエンジン32の出力を適用して冷却ファン36の目標回転数を求めてもよい。
このような構成の目標ファン回転数設定部611においては、エンジン32の出力が上昇すると、エンジン32の冷却水への入熱量が大きくなるので、ラジエータ55での放熱量を増やすために、冷却ファン36の目標回転数を大きく設定する。また、ラジエータ55を流通する冷却水の流量が多くなると、ラジエータ55での放熱量が増えるので、冷却ファン36の回転数を小さく設定してもよい。さらに、外気の温度が低くなると、ラジエータ55での放熱量が増えるので、冷却ファン36の回転数を小さく設定することができる。
以下、制御装置61の目標ファン回転数補正部612の構成について、図5を参照しながら詳細に説明する。
目標ファン回転数補正部612は、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66から取得した車両の走行状態からエンジン32が要求する冷却性能を予測し、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。具体的には、目標ファン回転数補正部612は、図5に示すように、荷台18の積載量、車両の走行路、車両の走行速度、走行路の路面状態、及び先行の他車両(以下、便宜的に先行車と称する)の冷却ファン36の回転数の各走行状態と、冷却ファン36の回転数の増減との関係を示す補正テーブルを内部のHDD等の記憶装置に予め記憶している。
まず、目標ファン回転数補正部612が積載量検出部65を用いて冷却ファン36の目標回転数を補正する場合について説明する。
荷台18の積載量が多い場合には、エンジン32の負荷が大きくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を増加させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。一方、荷台18の積載量が少ない場合には、エンジン32の負荷が小さくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を減少させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。
一般に、鉱山用のダンプトラック1は、上述したように、車両の重量に対する土砂や鉱石等の積荷の荷重の比率が高く、荷台18の積荷の有無によってエンジン32の出力が大きく変動する。つまり、荷台18の積載量の違いにより、エンジン32の出力が異なるので、エンジン32に必要とされる冷却能力も異なる。そのため、目標ファン回転数補正部612は、積載量検出部65によって検出された荷台18の積載量に応じて、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。
次に、目標ファン回転数補正部612が、車両位置検出部64を用いて冷却ファン36の目標回転数を補正する場合について説明する。
ダンプトラック1が登坂走行している場合には、エンジン32の負荷が大きくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を増加させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。一方、ダンプトラック1が降坂走行している場合、あるいはダンプトラック1が平地を走行している場合には、エンジン32の負荷が小さくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を減少させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。
したがって、目標ファン回転数補正部612は、車両位置検出部64によって自車両の位置から判別された地形に応じて、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。なお、ダンプトラック1が降坂走行している場合には、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を0(ゼロ)に設定して冷却ファン36の回転を停止させるようにしてもよい。
また、鉱山で作業するダンプトラック1は、同一の経路を繰り返して走行する場合が多い。そのため、ダンプトラック1が走行している位置によってエンジン32の出力が概ね分かるので、エンジン32に必要とされる冷却能力を予め把握することができる。さらに、ダンプトラック1の走行において、走行路のうち積込場へ向かう往路は積荷が積載されず、荷台18が空荷状態となり、放土場へ向かう復路は積荷が積載され、荷台18が満載状態になる。
したがって、目標ファン回転数補正部612は、積載量検出部65の代わりに、車両位置検出部64によって検出された車両の位置及び進行方向から荷台18に積荷が積載されているか否かを判断してもよい。この場合には、目標ファン回転数補正部612は、ダンプトラック1の位置から荷台18の積載量も考慮して冷却ファン36の目標回転数を補正できるので、積載量検出部65を省くことができる。
次に、目標ファン回転数補正部612が、走行管理部66を用いて冷却ファン36の目標回転数を補正する場合について説明する。
ダンプトラック1の走行速度が遅い場合には、車両内に流入する走行風の流量が少ないため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を増加させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。一方、ダンプトラック1の走行速度が速い場合には、車両内に流入する走行風の流量が多くなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を減少させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。
したがって、目標ファン回転数補正部612が、走行管理部66から取得した車両の走行速度に応じて、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。なお、目標ファン回転数補正部612は、ダンプトラック1の走行速度が所定の速度以上になった場合に、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を0(ゼロ)に設定して冷却ファン36の回転を停止させるようにしてもよい。
また、ダンプトラック1が走行する路面に凹凸がある場合には、エンジン32の負荷が大きくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を増加させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。一方、ダンプトラック1が走行する路面が平坦である場合には、エンジン32の負荷が小さくなるため、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を減少させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定する。したがって、目標ファン回転数補正部612が、走行管理部66から取得した走行路の路面状態に応じて、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。
さらに、走行管理部66が、ダンプトラック1の位置、エンジン32の出力、冷却回路51の冷却水の温度を相互に関連付けて内部のHDD等の記憶装置に記憶しておくことにより、ダンプトラック1の次回の走行時に記憶装置に記憶された情報を活用し、冷却ファン36の回転数を制御することも可能である。また、ダンプトラック1が同一の経路を繰り返して走行することにより、ダンプトラック1の位置と冷却ファン36の回転数との関係を示す特性を更新できるので、冷却ファン36の回転数をより効率良く制御することができる。
ところで、鉱山では、複数のダンプトラック1が同じ積込場まで繰り返して走行する場合が多い。つまり、先行車の走行状態から自車両の冷却ファン36の回転数を補正することができる。この場合、後続車である自車両は、各ダンプトラック1の走行状態を遠隔地で管理する管理サーバや各ダンプトラック1に搭載された通信部10からアンテナ15A(図1参照)及び無線通信回線を介して先行車の走行状態を取得することにより、目標ファン回転数補正部612は、先行車の走行状態から自車両も同様の冷却能力が必要であると判断し、先行車と同一の位置において先行車と同じ冷却ファン36の回転数になるように、目標ファン回転数設定部611によって設定された冷却ファン36の目標回転数を補正する。
なお、目標ファン回転数補正部612は、走行管理部66が管理する先行車と自車両の同一位置におけるエンジン32の出力を比較し、自車両のエンジン32の出力が先行車のエンジン32の出力よりも大きい場合に、冷却ファン36の回転数を先行車の冷却ファン36の回転数よりも増加させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定し、自車両のエンジン32の出力が先行車のエンジン32の出力よりも小さい場合に、冷却ファン36の回転数を先行車の冷却ファン36の回転数よりも減少させるように、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量を設定してもよい。
次に、目標ファン回転数補正部612によって設定される冷却ファン36の目標回転数の補正量について、図6を参照しながら詳細に説明する。
図6に示すように、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を増加させるとき、目標ファン回転数設定部611によって設定された目標回転数に対する補正量を1よりも大きく設定する。一方、目標ファン回転数補正部612は、冷却ファン36の回転数を減少させるとき、目標ファン回転数設定部611によって設定された目標回転数に対する補正量を1よりも小さく設定する。
そして、目標ファン回転数補正部612は、目標ファン回転数設定部611によって設定された目標回転数に対して、上述のように設定した補正量を乗算することにより、冷却ファン36の目標回転数を補正する。なお、上記補正量は、図6に示すように冷却ファン36の増減に対して直線状に変化するものに限らず、同様の作用効果を得ることができれば、曲線状や階段状に変化してもよい。また、上記補正量は、目標ファン回転数設定部611によって設定された目標回転数に乗算する数値に限らず、同様の作用効果を得ることができれば、その目標回転数に加算又は減算する数値であってもよい。
次に、ダンプトラック1の走行状態に基づく冷却ファン36の目標回転数の補正に対する優先関係について、図7を参照しながら詳細に説明する。
図7に示すように、目標ファン回転数補正部612は、走行管理部66が管理する走行状態のうち、先行車の冷却ファン36の回転数に関する情報の有無を確認し、先行車の冷却ファン36の回転数に関する情報があるとき、先行車の冷却ファン36の回転数に基づいて設定された補正量K5を、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量Kとして決定する(補正量K=補正量K5)。これにより、先行車に後続する自車両において、最適な冷却ファン36の回転数の制御が可能となるので、優れた冷却効率を得ることができる。
一方、目標ファン回転数補正部612は、自車両が先頭である場合のように、先行車の冷却ファン36の回転数に関する情報がないとき、荷台18の積載量に基づいて設定された補正量K1と、車両の走行路に基づいて設定された補正量K2と、車両の走行速度に基づいて設定された補正量K3と、走行路の路面状態に基づいて設定された補正量K4とをパラメータとした関数f(K1,K2,K3,K4)より、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量Kとして決定する(補正量K=f(K1,K2,K3,K4))。これにより、エンジン32が要求する冷却性能を的確に予測した上で、冷却ファン36の回転数の制御が可能となるので、エンジン32の負荷を十分に軽減することができる。
次に、制御装置61の回転制御部613の構成について詳細に説明する。
回転制御部613は、例えば、目標ファン回転数補正部612によって補正された冷却ファン36の目標回転数を、エンジン回転数センサ32Aによって検出されたエンジン32の回転数で除算することにより、クラッチ35の締結量を演算する。そして、回転制御部613は、演算したクラッチの締結量に対応する制御信号をクラッチ35へ出力することにより、当該締結量が得られるようにクラッチ35を作動させて冷却ファン36の回転数を調整する。これにより、車両の走行状態に応じて、エンジン32の回転数が変動した場合であっても、回転制御部613が冷却ファン36の回転数を円滑に制御できるので、エンジン32を効率良く冷却することができる。
次に、本実施形態に係る冷却ファン36の回転数の制御処理(ソフトウェア処理)について、図8のフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、冷却ファン36の回転数の制御処理は、ダンプトラック1に設けられたイグニッションキースイッチ(図示せず)がON状態になることで開始し、イグニッションキースイッチがOFF状態になることで終了する。
図8に示すように、まずは、外気温度センサ32Cは、外気の温度を検出し(ステップ(以下、Sと記す)901)、その検出結果を目標ファン回転数設定部611へ送信する。次に、流量検出部62は、冷却回路51Aを循環する冷却水の流量、すなわち、ラジエータ55を流通する冷却水の流量を検出し(S902)、その検出結果を目標ファン回転数設定部611へ送信する。
続いて、エンジン出力検出部63は、エンジン回転数センサ32Aによって検出されたエンジン32の回転数とエンジントルクセンサ32Bによって検出されたエンジン32のトルクからエンジン32の出力を検出し(S903)、その検出結果を目標ファン回転数設定部611へ送信する。なお、S901〜S903の順序は相互に入れ替えてもよい。
次に、目標ファン回転数設定部611は、外気温度センサ32C、流量検出部62、及びエンジン出力検出部63から各検出結果を受信すると、これらの検出結果が示すエンジン32の回転数、冷却回路51Aを循環する冷却水の流量、及びエンジン32の出力を基に冷却ファン36の目標回転数を演算して設定する(S904)。そして、目標ファン回転数設定部611は、設定した冷却ファン36の目標回転数の情報を目標ファン回転数補正部612へ送信する。
次に、車両位置検出部64は、GPS受信機から得られた自車両の位置からダンプトラック1の走行路の地形を判別し(S905)、その判別結果を目標ファン回転数補正部612へ送信する。また、積載量検出部65は、各サスペンション圧力センサ26L,26R,27L,27Rによって検出されたサスペンション圧力から荷台18の積載量を検出し(S905)、その検出結果を目標ファン回転数補正部612へ送信する。
さらに、走行管理部66は、走行状態検出部67及び通信部10から車両の走行速度、走行路の路面状態、及び先行車の冷却ファン36の回転数等を取得し(S905)、これらの取得情報を目標ファン回転数補正部612へ送信する。その後、目標ファン回転数補正部612が、目標ファン回転数設定部611から冷却ファン36の目標回転数の情報を受信すると共に、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66から車両の走行状態の情報を受信すると、この車両の走行状態を基に冷却ファン36の目標回転数を補正し(S906)、その補正結果を回転制御部613へ送信する。
次に、回転制御部613は、目標ファン回転数補正部612から補正結果を受信すると、エンジン回転数センサ32Aからエンジン32の回転数を取得する。続いて、回転制御部613は、目標ファン回転数補正部612によって補正された冷却ファン36の目標回転数と、取得したエンジン32の回転数とからクラッチ35の締結量を演算し(S907)、演算したクラッチ35の締結量に対応する制御信号をクラッチ35へ送信する。
その後、クラッチ35は、回転制御部613から制御信号を受信すると、この制御信号に従って作動することにより(S908)、冷却ファン36の回転数を調整し、S901からの処理が繰り返される。なお、冷却ファン36の駆動装置が、クラッチ35の代わりに電動モータ又は油圧モータである場合には、上述した冷却ファン36の回転数の制御処理は、図9に示すように、S907及びS908の処理を省略することができる。この場合、S906において、目標ファン回転数補正部612は、補正した冷却ファン36の目標回転数に対応する制御信号を電動モータ又は油圧モータへ直接送信すればよい。
本実施形態においては、S901の処理が外気温度検出ステップ、S902の処理が流量検出ステップ、S903の処理がエンジン出力検出ステップ、S904の処理が目標ファン回転数設定ステップ、S905の処理が走行状態取得ステップ、S906の処理が目標ファン回転数補正ステップ、S907及びS908の処理が回転制御ステップにそれぞれ対応する。
このように構成した本実施形態に係るダンプトラック1によれば、エンジン32を冷却するのに大量の冷却水が使用されていても、外気の温度、ラジエータ55を流通する冷却水の流量、エンジン32の出力、及び車両の走行状態を考慮し、エンジン32が要求する冷却能力に合わせて冷却ファン36の回転数を制御することにより、冷却ファン36が過剰に回転することがないので、冷却ファン36の駆動に伴う動力を低減することができる。これにより、エンジン32を効率良く冷却しつつ、燃料消費量を十分に抑制することができる。また、冷却ファン36の回転数を可能な限り小さく維持できるので、冷却ファン36の駆動による騒音も低減することができる。
なお、上述した本発明の各実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
また、本実施形態に係る目標ファン回転数補正部612は、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66の全てを用いて冷却ファン36の目標回転数を補正した場合について説明したが、本発明はこの場合に限らず、目標ファン回転数補正部612は、車両位置検出部64、積載量検出部65、及び走行管理部66の少なくとも1つを用いて冷却ファン36の目標回転数を補正してもよい。
また、本実施形態に係る目標ファン回転数補正部612は、図7に示すように、走行管理部66が管理する走行状態のうち、先行車の冷却ファン36の回転数に関する情報の有無に応じて、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量Kを切り替えた場合について説明したが、本発明はこの場合に限られない。例えば、目標ファン回転数補正部612は、荷台18の積載量に基づいて設定された補正量K1、車両の走行路に基づいて設定された補正量K2、車両の走行速度に基づいて設定された補正量K3、走行路の路面状態に基づいて設定された補正量K4、に加えてさらに先行車の冷却ファン36の回転数に基づいて設定された補正量K5を用いて、冷却ファン36の目標回転数に対する補正量Kとして決定してもよい。