JPWO2019102805A1 - ノックセンサの異常判定装置およびノックセンサの異常判定方法 - Google Patents
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Abstract
内燃機関のノックセンサの異常を適切に判定する。そのため、内燃機関10のノッキングを検出するためのノックセンサ151の異常判定装置であって、内燃機関10の実際の振動強度を取得する振動強度取得部(ノックセンサ151により取得した内燃機関10の振動に基づいて、CPU29が実施するS401の処理)と、内燃機関10の運転状態に基づいて理論振動強度を算出する理論振動強度算出部(ノッキングセンサ151により取得した内燃機関10の正常状態の振動に基づいて、CPU29が実施するS410の処理)と、を有し、振動強度取得部で取得した実際の振動強度と、前記理論振動強度算出部で算出した理論振動強度と、に基づいて、ノックセンサ151の異常を判定するノックセンサ異常判定部(CPU29が実施するS412の処理)を有する構成とした。
Description
本発明は、ノックセンサの異常判定装置およびノックセンサの異常判定方法に関する。
従来、内燃機関では、ノックセンサによりノッキングの発生を検出した場合、点火プラグの点火時期を遅角制御(リタード)することでノッキングを回避する制御が行われている。
内燃機関では、ノックセンサに断線やショートなどの異常が発生すると、ノッキングを正確に検出できなくなり、ノッキングの回避を適切に行うことができない。そのため、ノックセンサの異常を正確に検出する必要がある。
特許文献1には、ノックセンサの異常を判定する技術が開示されている。
特許文献1に開示された技術は、動弁機構の吸気バルブの着座による振動をノックセンサで検出し、その検出結果に基づいて、ノックセンサの異常を判定するものである。
この技術では、ノック制御領域か否かを判定し、ノック制御領域であると判定した場合、吸気バルブの着座タイミングと重なる区間である故障判定用のノックセンサ信号検出区間を算出する。そして、算出したノックセンサ信号検出区間において、ノックセンサにより検出された信号から所定の周波数成分を取得し、その周波数成分に基づいてノックセンサの異常を判定する。
その結果、特許文献1に開示された技術では、ノックセンサが異常か否かの判定を行える範囲が、ノック制御領域という狭い判定領域に限定されてしまうという問題がある。
したがって、本発明は、上記の課題に着目してなされたもので、内燃機関のノックセンサの異常を適切に判定することを目的とする。
上記課題を解決するため、内燃機関のノッキングを検出するためのノックセンサの異常判定装置であって、内燃機関の実際の振動強度を取得する振動強度取得部と、内燃機関の運転状態に基づいて理論振動強度を算出する理論振動強度算出部と、を有し、振動強度取得部で取得した実際の振動強度と、理論振動強度算出部で算出した理論振動強度とに基づいて、ノックセンサの異常を判定するノックセンサ異常判定部を有するする構成とした。
本発明によれば、内燃機関のノックセンサの異常を適切に判定することができる。
以下、本発明を、内燃機関(エンジン)に設けられたノックセンサの異常を判定する場合を例示して説明する。
以下、ノックセンサの異常判定装置を説明するが、その前に、内燃機関10(図6参照)のノッキング発生の判定方法を説明する。
図1は、ノッキングが発生していない場合の振動センサの出力の周波数成分fの解析結果の一例を説明する図である。
図2は、ノッキングが発生した場合の振動センサの出力の周波数成分fの解析結果の一例を説明する図である。
図1に示すように、実施の形態において、内燃機関10にノッキングが発生していない場合、周波数成分fは、内燃機関10の振動に応じて複数のピーク値が現れる。実施の形態では、特に15〜20KHzで大きなピーク値が表れている。
図2に示すように、実施の形態において、内燃機関10にノッキングが発生した場合、ノッキングが発生していない場合(図1参照)と比較して、周波数成分f10(約6.3KHz)、f01(約13KHz)、f11(約21KHz)近傍で大きなピーク値が表れており、この周波数成分f10、f01、f11近傍でノッキングが発生し、異常な振動が生じていることが分かる。このピーク値が現れた周波数成分fを、共鳴周波数とも言う。
内燃機関10の振動の周波数成分fの解析は、ノッキングの特徴周波数を検出可能なフィルタを内燃機関10の運転状態に応じて切り替えることで、ノッキングの周波数特性を適切に取得することができる。このフィルタとして、ハイパスフィルタ(High−Pass Filter:HPF)、ローパスフィルタ(Low−Pass Filter:LPF)、バンドパスフィルタ(Band−Pass Filter:BPF)などを適宜適用することができる。
次に、ノッキング判定指標を用いたノッキングの判定方法を説明する。
図3は、ノッキング判定指標を用いたノッキングの判定方法の一例を説明する図である。
図3では、内燃機関10の振動の周波数成分f10の共鳴周波数成分ω10P(f10)と、周波数成分f01の共鳴周波数成分ω01P(f01)とに基づいて、ノッキングの発生を判断する場合を例示して説明する。もちろん、ノッキングの発生を判断する際に用いられる周波数成分fは、これに限定されるものではなく、任意の2以上の共鳴周波数成分を用いてノッキングの発生を判定できる。
実施の形態では、前述したように、周波数成分f10は約6.3KHzであり、f01は約13KHzの場合を例示している。
図3に示すように、ノックセンサは、バックグラウンド振動Ib(図3の白抜き矢印)と、ノッキング振動Ik(図3の細線矢印)とを検出し、バックグラウンド振動Ibとノッキング振動Ikとの合成信号で表される指標I(図3の太線矢印)を取得する。
ノッキング振動Ikは、ノッキングが発生した場合の振動の周波数成分fであり、バックグラウンド振動Ibは、ノッキング以外の要因に起因して発生する振動である。具体的には、バックグラウンド振動Ibは、内燃機関10の運転時の振動及びノイズに基づいてノックセンサで検出された振動であり、内燃機関10の運転状態により変動する。
ここで、ノッキングの有無を判定するためのノッキング判定指標Iは、ノッキングが発生していない場合は、バックグラウンド振動Ibとなり、ノッキングが発生した場合は、バックグラウンド振動Ibとノッキング振動Ikとを含んで定められるノッキング判定指標Iとなる。
ノッキング判定指標Iを、主な共鳴周波数成分を用いて数式化すると、以下の数式(1)となる。
I=ω10P(f10)+ω20P(f20)+ω01P(f01)+ω30P(f30)+ω11P(f11)+・・・(1)
ここで、ωは内燃機関10の回転数Neで決まる実数値を取る。また、ωは1又は0(ゼロ)の2値を取ることもできる。また、Pは各共鳴周波数成分の振動強度(パワースペクトル)である。
図3に示すように、バックグラウンド振動の共鳴周波数成分によって表される指標Ibと、ノッキングの発生による振動の共鳴周波成分によって表される指標Ikは、方向と大きさを異にしている。これは、人間による聴覚試験でも明らかなように、ノッキングの発生がない場合の内燃機関10の音に対して、ノッキングの発生がある場合の内燃機関10の音は、カリカリ等という音で聞き分けられるものであり、ノッキングの発生の有無によって音色が異なるためである。
バックグラウンド振動Ibに、ノッキング振動Ikが加わると、ノックセンサの出力に含まれる周波数成分f01、f10によるノッキング判定指標Iは、予め設定された閾値I02を越える。これにより、内燃機関10において、ノッキングが発生していることを判定することができる。
前述した通り、ノックセンサでは、バックグラウンド振動Ibに加えて、ノッキングの発生に特有な周波数成分Ikを考慮して、ノッキング指標Iを算出しているので、バックグラウンド振動Ibが大きくなってもノッキングの発生の有無を正確に判定することができる。
次に、ノッキングの発生の有無による振動強度(パワースペクトル)の違いを説明する。
図4は、ノッキングの発生の有無による振動強度(パワースペクトル)の違いを周波数成分ごとに表した一例を説明する図である。
図4では、ノッキングが発生している場合の振動強度を実線で表し、ノッキングが発生していない場合の振動強度を破線で表している。ノッキングの発生(実線)によって、各共鳴周波数帯での振動強度が大きくなっていることが分かる。このようにノッキングの有無による振動強度の差がある周波数帯において、ノッキングの検出を適切に行うことができる。
ここで、従来、ノッキング指標Iは、ノッキングの有無における信号/ノイズ(バックグラウンドレベル)の振動強度比(=S/N比)に基づいて算出している。具体的には、ノッキング指標Iは、周波数成分ごとにノッキングの発生していない時の振動強度(バックグラウンドレベル)を、過去に検出した対応する周波数成分の振動強度に基づいて平滑化処理されて作成されている。そのため、ノッキングの発生がない場合でも、例えば、内燃機関10の過渡運転時などのように、燃焼時の振動の短時間での増大により振動強度(バックグラウンドレベル)が急変すると、振動強度の算出結果が最新の状態に追従できず、その結果として、ノッキングを誤検出する可能性がある。
次に、内燃機関10の過渡運転時において、バックグラウンドレベルの変化によりノッキングを誤検出する場合の一例を説明する。
図5は、上段から、内燃機関10の過渡運転時のスロットル開度TVO、内燃機関10の回転数Ne、各周波数成分fにおける振動のバックグラウンドレベルBGLI、算出されたノッキング判定指標I、ノック判定信号の経時変化の一例を表す図である。ノック判定信号は、ノッキングの有無を表す信号である。
図5に示すように、スロットル開度TVOを全閉から全開にした場合(過渡運転状態の場合)、内燃機関10の回転数Neは、スロットル開度TVOの変化にすぐに追従できず、内燃機関10の回転数Neが、実際に立ち上がるのは、所定の遅れ時間teが経過した後である。
この場合、バックグラウンドレベルBGLiは、実際には破線で示す振動強度(バックグラウンドレベルBGLit)となるが、平滑化処理を行うことにより実線で示す振動強度(バックグラウンドレベルBGLih)となる。つまり、バックグラウンドレベルBGLiは、平滑化処理を行うことで、実際の値よりも、所定の遅れ時間tiだけ遅れることが分かる。
ノッキング判定指標Iは、S(信号)/N(ノイズ)比として演算により求められる。つまり、ノッキング判定指標Iは、ノイズの振動強度であるバックグラウンドレベルBGLIに対する周波数成分の比として演算により求めることができる。
よって、バックグラウンドレベルBGLiが遅れることにより、ノッキングが発生していないにもかかわらず、実際のノッキング判定指標Iは、理論的なノッキング判定指標Itよりも高くなる可能性がある。この場合、ノックセンサは、ノッキングの発生を誤判定する。
具体的には、内燃機関10が過渡運転状態である場合、内燃機関10の回転数Neの増加に伴って、バックグラウンドレベルBGLiが急激に増加する。その結果、平滑化処理を行ったバックグラウンドレベルBGLih(図中の実線)が、実際のバックグラウンドレベルBGLit(図中の破線)よりも遅れることとなる。
平滑化処理を行ったバックグラウンドレベルBGLihが、実際のバックグラウンドレベルBGLitよりも遅れる領域(過渡運転状態の領域)において、前述したノッキング判定指標I(S(信号)/N(バックグラウンドレベル))の分母である平滑化処理を行ったバックグラウンドレベルBGLihが、実際のバックグラウンドレベルBGLitよりも小さくなる。よって、ノッキング判定指標Iは、実際のバックグラウンドレベルBGLitを分母とした理論的なノッキング判定指標Itよりも大きく算出されることとなる。
その結果、内燃機関10の過渡運転状態の領域において、平滑化処理を行ったノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ithを越える恐れがあり、平滑化処理を行ったノッキング指標Iが、ノック判定閾値Ithを越えた場合、ノッキングが発生していないにもかかわらず、ノッキングが発生したと誤判定される可能性がある(図5のノッキング判定指標I及びノック判定信号参照)。
[内燃機関の点火装置]
次に、内燃機関10(エンジン)の点火装置のシステム構成を説明する。
次に、内燃機関10(エンジン)の点火装置のシステム構成を説明する。
図6は、内燃機関10の点火装置のシステム構成を説明する図である。
図6に示すように、内燃機関10では、空気は、エアクリーナ1から吸入され、ダクト3と、スロットル弁(図示せず)を有するスロットルボディ5と、吸気配管6とを通流し、内燃機関10のシリンダ(気筒)7に吸入される。
エアクリーナ1から吸入された空気量(吸入空気量Qa)は、ダクト3に設けられた熱線式の空気流量計2により計測される。空気流量計2で計測された空気量(吸入空気量Qa)の検出信号は、ECU(Electronic Control Unit)9に出力される。
内燃機関10では、燃料タンク(図示せず)から供給された燃料は、燃料噴射弁(インジェクタ)16から吸気配管6内に噴射される。内燃機関10では、スロットルボディ5で空気量が調整された吸入空気と、燃料噴射弁16から噴射された燃料とが、吸気配管6で混合されシリンダ7内に供給される。
シリンダ7内の混合気は、シリンダ7内で圧縮され、点火装置である点火プラグ15により点火される。シリンダ7内では、点火プラグ15の点火により混合気が爆発し、爆発後の排気ガスは、排気配管8から排出される。
排気配管8には、排気センサ11が設けられており、この排気センサ11により排気ガスの空燃比などを検出する。排気センサ11で計測した排気ガスの空燃比などの検出信号は、ECU9に出力される。
前述した点火プラグ15は、点火コイル13で生成された高電圧により点火する。点火コイル13で生成された高電圧は、分配器14により、シリンダ7毎に設けられた各点火プラグ15に分配及び供給される。
内燃機関10の回転数Neは、クランク角センサ12により検出される。クランク角センサ12は、クランクシャフト(図示せず)の回転数を検出し、クランクシャフトの1回転毎の絶対位置を示すRef信号、及び絶対位置から所定角度回転した位置を示すPos信号を出力する。クランク角センサ12から出力されたRef信号及びPos信号は、ECU9に入力される。
内燃機関10には、この内燃機関10の振動を検出する振動センサ151(ノックセンサ)が設けられている。振動センサ151は、内燃機関10の振動を検出し、検出した振動に応じた出力値PoをECU9に出力する。以下、振動センサ151をノックセンサ151とも言う。
実施の形態では、このノックセンサ151により、内燃機関10のノッキングの有無を検出する。従来は、ノックセンサ151として、13KHz付近で共振するものを用いていたが、実施の形態のノックセンサ151は、少なくとも18〜20KHzまでの共鳴周波数成分を検出するために、18KHz以上で共振するものを用いている。
次に、ECU9の構成を説明する。
図7は、ECU9の構成を説明するブロック図である。
[ECU]
図7に示すように、ECU9は、前述した各センサからの検出信号に基づいて、燃料供給量及び点火時期等を演算し、燃料噴射弁16と点火コイル13とに制御信号を出力する。
図7に示すように、ECU9は、前述した各センサからの検出信号に基づいて、燃料供給量及び点火時期等を演算し、燃料噴射弁16と点火コイル13とに制御信号を出力する。
ECU9は、内燃機関10の全体の制御を行う制御ユニット34と、ノッキングを検出するノッキング検出ユニット35とを有する。
[制御ユニット]
制御ユニット34は、CPU20と、A/D変換器21と、ROM22と、入力I/O23と、RAM24と、DRAM25と、出力I/O26と、バス37とを有する。
制御ユニット34は、CPU20と、A/D変換器21と、ROM22と、入力I/O23と、RAM24と、DRAM25と、出力I/O26と、バス37とを有する。
制御ユニット34では、CPU(Central Processing Unit)20が、ROM(Read only memory)22に記憶された制御プログラムを実行することで、制御ユニット34の各機能が実現される。
RAM(Random Access Memory)24及びDRAM(Dynamic Random Access Memory)25は、CPU20の演算処理で生成された演算結果(データ)や内燃機関10に設けられた各センサから出力された検出信号を一時的に記憶する。
A/D変換器(Analog to−Digital converter)21は、空気流量計2により検出された吸入空気量Qaをデジタル値に変換し、バス37を介してCPU20に送信する。
入力I/O(Input/Output)23には、クランク角センサ12から出力されたRef信号及びPos信号が入力され、入力I/O23に入力されたRef信号及びPos信号は、バス37を介してCPU20に送信される。
CPU20での演算処理で生成された演算結果は、出力I/O26を介して各々のアクチュエータ(図示せず)に出力される。実施の形態では、CPU20は、燃料噴射量を示す燃料噴射時間信号Tiを演算し、この燃料噴射時間信号Tiを、燃料噴射弁16に出力する。また、CPU20は、点火プラグ15の点火時期を示す点火時期信号θingを演算し、この点火時期信号θingを、点火コイル13に出力する。
[ノッキング検出ユニット]
ノッキング検出ユニット35は、CPU29と、ポート27と、タイミング回路28と、A/D変換器30と、ROM31と、RAM32と、クロック33と、オペレーショナル回路38と、バス36とを有する。
ノッキング検出ユニット35は、CPU29と、ポート27と、タイミング回路28と、A/D変換器30と、ROM31と、RAM32と、クロック33と、オペレーショナル回路38と、バス36とを有する。
制御ユニット34のCPU20とノッキング検出ユニット35のCPU29との間のデータ通信は、DRAM25を介して行われる。
制御ユニット34では、CPU29が、ROM31に記憶された制御プログラムを実行することで、ノッキング検出ユニット35の各機能が実現される。
RAM32は、CPU29の演算処理で生成された演算結果(データ)を一時的に記憶する。
オペレーショナル回路38には、クランク角センサ12から出力されたRef信号及びPos信号が入力されるようになっており、オペレーショナル回路38では、このRef信号及びPos信号に基づいて、シリンダ7内のピストン(図示せず)の位置を検出する。
オペレーショナル回路38は、ピストン(図示せず)の位置が上死点TDC(Top Dead Center)にあることを検出した場合、上死点を表すTDC信号を生成すると共に、このTDC信号をタイミング回路28に出力する。
タイミング回路28は、制御ユニット34のCPU20がポート27に設定した内容に従って、クロック33の発生する周期信号を分周してサンプリング信号を生成し、このサンプリング信号をA/D変換器30に出力する。
A/D変換器30では、タイミング回路28で生成されたサンプリング信号に基づいて、ノックセンサ151の出力値Poをデジタル値に変換する。
CPU29は、ROM31に記憶された制御プログラムにしたがって、サンプリングされたノックセンサ151の出力値Poのデジタル値をRAM32に記憶する。CPU29は、このノックセンサ151の出力値Po(周波数成分の振動強度)を、周波数分析し、内燃機関10のノッキングの発生の有無を判定する。
CPU29による内燃機関10のノッキングの有無の判定結果は、バス36及びDRAM25を介してCPU20に送信される。
[ノッキングの検出方法]
次に、ノッキング検出ユニット35による内燃機関10のノッキングの検出方法を説明する。
次に、ノッキング検出ユニット35による内燃機関10のノッキングの検出方法を説明する。
図8は、ノッキング検出ユニット35による内燃機関10のノッキングの検出方法のフローチャートである。
図8に示すフローチャートに基づく内燃機関10のノッキングの検出処理は、内燃機関10の1燃焼サイクル毎に実行されるものであり、CPU29に対して割り込みを行うことにより、CPU29により実施される処理である。
ステップS101において、CPU29は、ノックセンサ151から出力された出力値Poの変換結果を取り込む。
ステップS102において、CPU29は、ステップS101で取り込んだ出力値Poを周波数分析する。CPU29による周波数分析は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)やウォルシュフーリエ変換を用いて演算される。
ステップS103において、CPU29は、ステップS102で周波数分析した周波数成分のうち、共鳴周波数を含む周波数成分(周波数帯域)を複数選択し、選択した各周波数成分の振動強度(バックグラウンドレベルBGLi)を算出する。
実施の形態では、CPU29は、共鳴周波数を含む周波数成分を3個選択する。ステップS103において、CPU29が選択する周波数成分は、内燃機関10の運転状態に応じて予め決められたフィルタ(例えば、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ)を用いて決めてもよく、内燃機関10の仕様などに基づいて予め設定してもよい。
ステップS104において、CPU29は、ステップS103で算出した周波数成分の振動強度(バックグラウンドレベルBGLi)の各々を加算した振動強度と、後述するバックグラウンドレベルBGLの推定値(理論値BGLim)とに基づいて、ノッキング判定指標Iを算出する。
ステップS105において、CPU29は、ステップS104で算出したノッキング判定指標Iと、所定のノック判定閾値Ithとを比較し、ノッキング判定指標Iが、所定のノック判定閾値Ithを越えている(I>Ith)か否かを判定する。CPU29は、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ithを越えていると判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS107に進み、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ith以下であると判定した場合(ステップS105:No)、ステップS111に進む。
CPU29は、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ithを越えていると判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS107において、内燃機関10にノッキングが発生したと判定する。
ステップS108において、CPU29は、ノッキングの発生を示すノックフラグに1をセットして処理を終了する。なお、ノックフラグは、ECU9で別に制御される点火制御タスクにおいて用いられる。
CPU29は、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ith以下であると判定した場合(ステップS105:No)、ステップS111において、バックグラウンドレベルBGLIのマップデータ(後述)を最新のマップデータに更新する。
ステップS112において、CPU29は、ノックフラグに0(ゼロ)をセットして処理を終了する。これにより、内燃機関10にノッキングが発生していないことが示される。
CPU29によるバックグラウンドレベルBGLiの更新は、選択された周波数成分の振動強度をフィルタ処理して行われる。具体的には、CPU29は、選択された周波数成分ごとに、以下の数式(2)により求められる。
BGLi=BGLi×(1−α)+f×α (2)
BGLi=BGLi×(1−α)+f×α (2)
前述したステップS101〜S112の処理により、ノッキング検出ユニット35によるノッキングの検出処理が行われる。この処理のステップS108又はS112でセットされたノックフラグ(1又は0)は、点火装置(点火プラグ15及び点火コイル13)の制御処理で使用される。
[ノッキング判定指標の算出処理]
次に、ノッキング判定指標Iの算出処理(前述したステップS104)を、従来のノッキング判定指標の算出処理と比較して説明する。
次に、ノッキング判定指標Iの算出処理(前述したステップS104)を、従来のノッキング判定指標の算出処理と比較して説明する。
初めに、図9を用いて従来のノッキング判定指標Iの算出処理を説明する。
図9は、従来のノッキング判定指標の算出処理を説明するチャートである。
[従来のノッキング判定指標の算出処理]
初めに図9に示すように、ノックセンサ151は、内燃機関10の振動を検出し(S301)、検出した振動に応じた出力値Po(ノックセンサ151から出力された所定時間間隔ごとの電圧:アナログ信号)をA/D変換器30に送信する。
初めに図9に示すように、ノックセンサ151は、内燃機関10の振動を検出し(S301)、検出した振動に応じた出力値Po(ノックセンサ151から出力された所定時間間隔ごとの電圧:アナログ信号)をA/D変換器30に送信する。
A/D変換器30は、ノックセンサ151から送信された出力値Poを、アナログ信号からデジタル信号に変換する(S302)。
CPU29は、デジタル信号に変換された出力値Poに対して、任意のフィルタを適用して所定の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分ごとの振動強度を演算する(S303)。実施の形態では、CPU29は、バンドパスフィルタ(BPF)を適用することにより、ノックセンサ151から出力された出力値Poの中から、7KHz、9KHz、12KHzの3つの周波数成分(特徴周波数)を抽出し、それぞれの周波数成分の実際のバックグラウンドレベルBGLi(振動強度)を演算する。
次に、CPU29は、周波数成分(実施の形態では、7KHz、9KHz、12KHz)ごとにバックグラウンドレベルBGLIの加重平均値BGLihを演算する(S304)。
CPU29は、周波数成分ごとのバックグラウンドレベルBGLiの加重平均値BGLihを、所定の指標に変換する(S305)。実施の形態では、CPU29は、所定の周波数成分(実施の形態では、12kHz)の実際のバックグラウンドレベルBGLitと、対応する同じ周波数成分(実施の形態では、12kHz)のバックグラウンドレベルの加重平均値BGLihとの差分に変換する。この処理を、抽出した他の全ての周波数成分
(実施の形態では、9kHz、7kHz)についても同様に行う。
(実施の形態では、9kHz、7kHz)についても同様に行う。
CPU29は、全ての周波数成分の実際のバックグラウンドレベルBGLitと、バックグラウンドレベルの加重平均値BGLihとの差分を加算してノッキング判定指標Iを算出する(S306)。実施の形態では、CPU29は、周波数成分が7kHz、9kHz、12kHzにおける実際のバックグラウンドレベルBGLitと、バックグラウンドレベルの加重平均値BGLihとの差分を加算してノッキング判定指標Iを算出する。
CPU29は、内燃機関10の回転数Neに基づいてノック判定閾値Ithを求める(S307)。具体的には、CPU29は、内燃機関10の回転数Ne(内燃機関の運転状態)とノック判定閾値Ithとを予め関連付けたマップデータ(データテーブル)を参照して、内燃機関10の回転数Neからノック判定閾値Ithを求める。なお、CPU29は、内燃機関10の運転状態に基づいてノック判定閾値Ithを求められるものであれば、内燃機関10の回転数Neとノック判定閾値Ithを関連付けたマップデータを用いる方法に限定されるものではない。例えば、所定のノック判定閾値Ithを予め設定しておいてもよい。
そして、CPU29は、S306で算出したノッキング判定指標Iと、S307で求めたノック判定閾値Ithとに基づいて、内燃機関10でノッキングが発生しているか否かの判定を行う(S308)。CPU29は、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ithを超えていると判定した場合、内燃機関10にノッキングが発生していると判定し、超えていない場合、ノッキングが発生していないと判定する。
ここで、内燃機関10の過渡運転時において、周波数成分(周波数強度)が時間の経過と共に増加する。前述したS304において、CPU29は、バックグラウンドレベルBGLiの加重平均値BGLihは、実際のバックグラウンドレベルBGLitよりも小さい値として得られる。その結果、算出されたノッキング判定指標Iが大きくなり、誤判定を生じる可能性がある(図5参照)。
また、内燃機関10にノッキングが発生した場合、又はノッキングが検出されないような小さなレベルの振動ノイズやノッキングなどが発生すると、その時の検出値がバックグラウンドレベルBGLiに反映されてしまう。その結果、バックグラウンドレベルBGLiは増加し、ノッキングの検出精度が低下してしまう。
[本発明にかかるノックセンサの異常判定方法]
次に、図10及び図11を用いて、本発明にかかるノックセンサ151の異常判定方法を説明する。
次に、図10及び図11を用いて、本発明にかかるノックセンサ151の異常判定方法を説明する。
図10は、実施の形態のノックセンサ151の異常判定方法を説明する図である。
図11は、バックグラウンドレベルBGLの推定値を決めるマップデータの一例を説明する図である。
図10に示すように、ノックセンサ151は、内燃機関10の振動を検出し(S401)、検出した振動に応じた出力値Po(ノックセンサ151から出力された所定時間間隔ごとの電圧:アナログ信号)をA/D変換器30に送信する。
A/D変換器30は、ノックセンサ151から送信された出力値Poを、アナログ信号からデジタル信号に変換する(S402)。
CPU29は、デジタル信号に変換された出力値Poに対して、任意のフィルタを適用して所定の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分ごとの振動強度を演算する(S403)。実施の形態では、CPU29は、バンドパスフィルタ(BPF)を適用することにより、ノックセンサ151から出力された出力値Poの中から、7KHz、9KHz、12KHzの3つの周波数成分(特徴周波数)を抽出し、それぞれの周波数成分の実際のバックグラウンドレベルBGLi(振動強度)を演算する。
CPU29は、S403で抽出した周波数成分ごとの振動強度を全て積算して、全ての周波数成分の振動強度を合算した振動強度を算出する(S404)。
CPU29は、内燃機関10の回転数Ne及び内燃機関10の負荷から推測した内燃機関10の運転状態に基づいて、現在の内燃機関10の運転状態における基本バックグラウンドレベルBGLmを求める(S410)。ROM31には、内燃機関10の運転状態と、その運転状態における基本バックグラウンドレベルBGLmとを関連づけたマップデータ(データテーブル)が予め記憶されている。
CPU29は、推定した運転状態に基づいてマップデータを参照することにより、現在の運転状態における基本バックグラウンドレベルBGLmを算出する。
図11に示すように、ROM31に記憶されたマップデータは、内燃機関10の回転数Neと、内燃機関10の負荷と、基本バックグラウンドレベルBGLmとが、実測などにより、予め関連付けて記憶されている。実施の形態では、内燃機関10の回転数Neと負荷の増加と共に、基本バックグラウンドレベルBGLmも増加する傾向となっている。
なお、マップデータは、内燃機関10の回転数Neではなく、回転数Neの単位時間当たりの変化率と、基本バックグラウンドレベルBGLmとを関連付けてもよい。このようにしても、内燃機関10の回転数Neの変化率と負荷とから基本バックグラウンドレベルBGLmを算出することができる。
なお、基本バックグラウンドレベルBGLmを算出する他の方法として、CPU29は、吸入空気量Qaを調整するスロットル弁(図示せず)のスロットル開度TVOを表す信号、吸入空気量Qaを表す信号(内燃機関10での吸入空気量)、燃料噴射弁16による燃料の噴射を指示するパルス信号、吸気配管6の圧力信号(吸気配管6内部の圧力)、などの内燃機関10の負荷状態を表すセンサ信号を取得し、これらの信号に基づいて内燃機関10の運転状態を推定してもよい。
これらの信号と、内燃機関10の運転状態との関連付けは、前述したマップデータ(図11参照)と同様のマップデータにより行うことができる。さらに、内燃機関10の運転状態の算出は、前述した各信号と、前述した内燃機関10の回転数Neと負荷とを関連付けたマップデータ(図11参照)とを組み合わせてもよい。
CPU29は、抽出した周波数成分の振動強度の積算値k(S404)から、基本バックグラウンドレベルBGLmを減算する(S405)。CPU29は、振動強度の積算値kと基本バックグラウンドレベルBGLmの差分を算出することにより、内燃機関10の回転数Ne及び負荷の変化によるバックグラウンドレベルBGLiの変動が、バックグラウンドレベルBGLiの加重平均BGLihの演算に影響を与えないようにしている。
そして、CPU29は、周波数成分の振動強度の積算値kと基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分の加重平均値を算出する(S406)。例えば、CPU29は、内燃機関10のノッキングが発生していない時の周波数成分の振動強度の積算値と基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分の過去の値を用いて、現在の差分の加重平均値を算出する場合、ノッキングの発生がない過去の差分に対する重み付けを重くする。
これにより、CPU29は、内燃機関10の回転数Neや負荷の変化によるバックグラウンドレベルBGLの変動が、加重平均値の算出に影響を与えることを防止し、精度の高い加重平均値を算出することができる。よって、CPU29は、前述したような加重平均の追従遅れ(図5参照)を抑制することができる。
ここで、CPU29は、ノックセンサ151に異常があるか否かの判定を行う(S412)。CPU29は、ノックセンサ151が正常の時の周波数成分の振動強度の積算値kと、基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分の加重平均値をROM31に記憶しておき、その差分の加重平均値と、現在の周波数成分の振動強度の積算値kと、基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分の加重平均値とを比較する。
図12の実線で示すように、CPU29は、ノックセンサ151が正常の時の差分の加重平均値Haと、現在の差分の加重平均値Hb1との差の加重平均値Hc1が、所定の範囲K以内である場合、ノックセンサ151が正常であると判定する。
一方、図12の破線で示すように、CPU29は、ノックセンサ151が正常の時の差分の加重平均値とHa、現在の差分の加重平均値Hb2との差の加重平均値Hc2が、所定の範囲Kを越えている場合、ノックセンサ151が異常であると判定する。
なお、断線やショートなどによりノックセンサ151に異常がある場合、ノックセンサ151の出力値はほぼ0(ゼロ)となる。この結果、周波数成分の振動強度の積算値と基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分Hb2もまた、ほぼ0(ゼロ)となる。
このように、CPU29は、ノックセンサ151の出力値が0(ゼロ)となる場合、又は周波数成分の振動強度の積算値と基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分Hb2が0(ゼロ)となる場合、ノックセンサ151に異常があると判定するようにしてもよい。
図10に戻って、CPU29は、周波数成分の振動強度の積算値と、基本バックグラウンドレベルBGLmのとの差分の加重平均値(S406)に、基本バックグラウンドレベルBGLmを加算する(S407)。これにより、バックグラウンドレベルBGLiの信号レベルを基に戻している。
CPU29は、S404で算出した周波数成分の振動強度の積算値kと、S407で算出したバックグラウンドレベルBGLiとに基づいて、ノッキング判定指標Iを算出する(S408)。
ノッキング判定指標Iは、バックグラウンドレベルBGLiに対する各周波数成分の振動強度の積算値kの比率(I=S/N比(=k/BGLi))として算出される。なお、ノッキング判定指標Iは、バックグラウンドレベルBGLiと周波数成分の振動強度の積算値kとの差分(I=BGL−k)として算出してもよい。このようにして算出された値も、ノッキング判定指標Iとしての機能を有する。
CPU29は、前述したS307と同様の方法で、内燃機関10の回転数Neに基づいてノック判定閾値Ithを求める(S411)。
そして、CPU29は、S408で算出したノッキング判定指標Iと、S411で求めた内燃機関10の運転状態に基づくノック判定閾値Ithとに基づいて、内燃機関10でノッキングが発生しているか否かの判定を行う(S409)。CPU29は、ノッキング判定指標Iが、ノック判定閾値Ithを超えていると判定した場合、内燃機関10にノッキングが発生していると判定し、超えていない場合、ノッキングが発生していないと判定する。
前述したように、本発明にかかるノッキング判定指標Iの算出処理では、ノッキング判定指標Iの算出にあたり、周波数成分の振動強度の積算値kと基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分を加重平均して求めている。これにより、内燃機関10の過渡運転時のバックグラウンドレベルBGLIの変動を除去することができ、過渡運転時のノッキングの誤判定を抑制することができる。
[点火プラグの動作処理]
次に、制御ブロック30のCPU20(図7参照)による、点火プラグ15の点火時期の演算動作を説明する。
次に、制御ブロック30のCPU20(図7参照)による、点火プラグ15の点火時期の演算動作を説明する。
図13は、CPU20による点火プラグ15の点火時期の演算処理を説明するフローチャートである。
点火プラグ15の点火時期の演算処理は、制御ブロック30のCPU20により実行され、CPU20は、この演算処理を一定の時間間隔(周期)で実行している。例えば、CPU20は、約10msecごとに、この点火時期の演算処理を実行する。
ステップS201において、CPU20は、RAM24に設定された所定のレジスタから、内燃機関10の回転数Neと吸入空気量Qaを取得する。
ステップS202において、CPU20は、単位回転数あたりの吸入空気量Qa/Ne(基本燃料噴射量とも言う)を算出する。また、このステップS202において、CPU20は、単位回転数当たりの吸入空気量Qa/Neに基づいて、燃料噴射時間幅TIを算出する。そして、ステップS202において、CPU20は、ROM22に記憶された基本点火時期マップデータに基づいて、基本点火時期θbaseを算出する。基本点火時期マップデータは、単位回転数当たりの吸入空気量Qa/Neと、回転数Neと、及び基本点火時期θbaseとを関連付けたマップデータである。
ステップS203において、CPU20は、ノックフラグ(図8参照)に、1と0(ゼロ)の何れがセットされているか判定し、ノックフラグに1がセットされていると判定した場合(ステップS203:YES)、ノッキングが発生していると判定し、ステップS213に進む。また、CPU20は、ノックフラグに0(ゼロ)がセットされていると判定した場合(ステップS203:NO)、ノッキングが発生していないと判定し、ステップS204に進む。
ステップ213において、CPU20は、点火プラグ15の点火時期θadvから所定の遅角量Δθretを減算する。点火時期θadvから所定の遅角量Δθretを減算することで、点火プラグ15の点火時期の遅角制御(リタード)が行われる。
ステップS214において、CPU20は、カウント値Aを初期化(カウント値Aに0(ゼロ)をセット)して、ステップS208に進む。ここで、カウント値Aは、内燃機関10におけるノッキングの発生回数をカウントするための変数である。カウント値Aは、ノッキングの発生により遅角された点火時期θadvを進角量Δθadvだけ進角させるタイミングになったか否かの判定に用いられる。カウント値Aの用い方については後述のステップで説明する。
ステップS204において、CPU20は、内燃機関10のノッキングが発生していないと判定した場合(ステップS203:NO)、カウント値Aを1加算(A=A+1)する。
ステップS205において、CPU20は、カウント値Aが所定の値(実施の形態では50)に達したか否かを判定する。CPU20は、カウント値Aが所定の値(実施の形態では50)に達していると判定した場合(ステップS205:YES)、ステップS206に進む。CPU20は、カウント値Aが所定の値(実施の形態では50)に達していないと判定した場合(ステップS205:NO)、ステップS208に進む。
ステップS206において、CPU20は、点火時期θadvに所定の進角値Δθadvを加算する(θadv=θadv+Δθadv)。これにより、ステップS213で遅角制御(リタード)された点火時期が、進角値Δθadvだけ進角する。
CPU20は、本フローチャートで示す処理を10msecごとに実行するので、カウント値Aが50に到達した時点において、カウント値Aが初期化されてから0.5秒(500msec)が経過したこととなる。すなわち、ステップS206は、内燃機関10でのノッキングの発生により点火時期を遅角させた後、0.5秒が経過するごとに、点火時期を進角(リカバー)する処理である。
ステップS207において、CPU20は、カウント値Aを初期化(カウント値Aに0(ゼロ)をセット)する。
ステップS208において、CPU20は、基本点火時期θbaseに対して進角値θadvを加算することにより、点火時期θignを算出する(θign=θbase+θadv)。
ステップS209において、CPU20は、ROM22に記憶された最大進角値マップデータに基づいて、最大進角値θresを取得する。この最大進角値マップデータは、単位回転数当たりの吸入空気量Qa/Neと、回転数Neと、基本点火時期θresとが関係付けられている。
ステップS210において、CPU20は、ステップS208で算出した点火時期θingが、ステップS209で算出した最大進角値θresを越えたか否かを判定する。CPU20は、点火時期θingが、最大進角値θresを越えたと判定した場合(ステップS210:YES)、ステップS211に進み、点火時期θingは、進角し過ぎているので、点火時期θingを最大進角値θresにセットする。
ステップS210において、CPU20は、点火時期θIngが最大進角値θresを越えていないと判定した場合(ステップS210:NO)、ステップS212に進み、内燃機関10の運転状態に応じて、ディレイ時間td、サンプリング点ns、分周比tsをI/Oポート27(図7参照)に対して出力する。
I/Oポート27にセットされた分周比tsに基づいて、振動センサ151の出力のデジタル値のサンプリング周期が決定され、サンプリング点数nsによりサンプリング点数が決定される。
前述したように、本実施の形態にかかる内燃機関10のECU9によれば、抽出された所定の周波数成分の振動強度の積算値kと、内燃機関10の運転状態に基づいて算出された基本バックグラウンドレベルBGLmと、積算値kから基本バックグラウンドレベルBGLmを減算したした後の積算値を加重平均(平準化)した値BGLihとに基づいて、ノッキングの程度を表すノッキング判定指標Iを算出し、このノッキング判定指標Iに基づいてノッキングの発生を判定している。
これにより、内燃機関10の過渡運転時において、バックグラウンドレベルBGLiの運転状態の変化に基づく変動をキャンセルし、バックグラウンドレベルBGLiの加重平均の追従遅れを抑制することができる。よって、内燃機関10のバックグラウンドレベルBGLIの変動に影響されず、精度の良いノッキング検出を行うことができる。
よって、ECU9では、このノッキング判定指標Iを用いることで、例えば、断線などのノッキングセンサの異常を精度よく適切に判定することができる。
前述した、ノッキング検出ユニット35(CPU29)によるノックセンサ151の異常の判定は、本発明のノックセンサの異常判定装置に相当する。また、CPU29がノックセンサ151により内燃機関10の実際の振動強度(バックグラウンドレベルBGLi)を取得する構成は、本発明の振動強度取得部に相当し、CPU29が内燃機関10の運転状態に基づいて理論振動強度(基本バックグラウンドレベルBGLm)を算出する構成は、本発明の理論振動強度算出部に相当する。
また、CPU29が、前述した実際の振動強度(BGLi)と理論振動強度(BGLm)とに基づいて、ノックセンサ151の異常を判定する構成(S412の処理)は、本発明のノックセンサ異常判定部に相当する。
なお、前述したECU9では、CPU29が制御ソフトウェアを実行することで、ノッキング判定指標Iの算出や、ノックセンサ151の異常検出の機能を実現する場合を例示して説明したが、同等の機能を電気回路などのハードウェアにより実装してもよい。例えば、振動検出、周波数分析、平準化(加重平均処理)、マップデータに基づいて基本バックグラウンドレベルBGLmを取得する処理、ノッキング判定指標Iの算出、ノック判定閾値Ithの算出のうち、少なくとも何れか1つを電気回路により実装してもよい。
このように構成しても、前述した実施の形態と同様の機能が発揮され、同様の効果が奏される。
また、前述したECU9では、制御ユニット34とノッキング検出ユニット35とに区分けされている場合を例示して説明したが、制御ユニット34とノッキング検出ユニット35とは、共通の制御ユニット内に構成してもよい。
このように構成すると、CPUやROM、RAMなどを共通のハードウェアとすることができ、複数のCPUやROM、RAMを設ける場合よりも簡略化でき、ECUの製造コストを抑えることができる。
また、前述したノックセンサ151は、燃料噴射弁16が動作することに起因するソレノイド等のノイズを取得するため、燃料噴射弁16を作動させる期間をサンプリングウインドウとしてセットして、そのサンプリングウインドウ内で燃料噴射弁16のノイズを取得するようにしてもよい。この燃料噴射弁16のノイズはノッキング判定指標Iを算出する際に不要であるので、除去することが望ましい。
そのため、図14に示すように、ECU9では、想定される燃料噴射弁16のノイズ(例えば、ソレノイドノイズ)を記述したノイズマップデータS413をあらかじめROM22などに格納しておく。
ノイズマップデータS413は、内燃機関10の運転状態(運転のタイミング)と燃料噴射弁16で発生するノイズ(例えば、ソレノイドノイズ)とが関連付けて記憶されている。
CPU29は、ノイズマップデータS413を参照して、内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射弁16のノイズを取得し、サンプリングウインドウ内におけるノックセンサ151の検出結果からその燃料噴射弁16のノイズを減算してもよい。
また、CPU29は、燃料噴射弁16のノイズを検出した場合、所定値をバックグラウンドレベルBGLIの推定値(基本バックグラウンドレベルBGLm)に加算してもよい。これにより、燃料噴射弁16のノイズに影響されることなくノッキング判定指標Iを正確に算出することができる。
なお、ノイズマップデータ(S413)には、燃料噴射弁16のノイズ、吸排気バルブの動作ノイズ、吸排気カムの動作ノイズの何れか1つ、または組み合わせ情報を記憶しておいてもよく、全てのノイズを記憶しておいてもよい。
バックグラウンドレベルBGLiの推定値(基本バックグラウンドレベルBGLm)を記述したマップデータは、標準的なバックグラウンドレベルBGLiを記述するものであるので、バックグラウンドレベルBGLiの過渡的な変動については同マップデータ内に記述しないことが望ましい。例えば、内燃機関10の回転数Neや内燃機関10の負荷が急増したときは、バックグラウンドレベルBGLiも急増することが想定されるが、そのような急変するバックグラウンドレベルBGLiについてはマップデータ内に記述しないこととする。具体的には、バックグラウンドレベルBGLiの変動率がある範囲以内のもののみマップデータ内に記述することが望ましい。
ノックセンサ151の検出結果から抽出した周波数成分は、必ずしも全て抽出する必要はなく、例えば代表的な周波数成分のみ抽出して他の周波数成分は補間処理により補うこともできる。補間処理のための演算式は、例えば試験結果などに基づきあらかじめ定めておくことができる。これにより周波数成分を抽出するための演算負荷を抑制することができる。
なお、前述した実施の形態のノックセンサの異常判定は、内燃機関10の運転中に行うのが好ましい。
つまり、図15に示すように、CPU29は、ステップS501において、内燃機関10が運転停止状態か否かを判定し、運転停止状態と判定した場合(ステップS501:YES)、そのまま異常判定処理を終了する。一方、CPU29は、内燃機関10が運転停止状態でないと判定した場合(ステップS501:NO)、ステップS502に進み、前述したノックセンサの異常判定処理(例えば、図10に示すS401〜S412の処理)を行う。
このように構成すると、内燃機関10の運転状態において、本発明にかかるノックセンサの異常判定を行うので、内燃機関10の振動やノイズを確実に取得することができ、ノックセンサの異常判定を適切に行うことができる。
また、ノッキング検出ユニット35のCPU29は、実際のバックグラウンドレベルBGLIと、基本バックグラウンドレベルBGLmとの差分Hcが所定の範囲Kを越えた場合、ノックセンサの異常があると判定する場合を例示して説明した。しかし、ノックセンサの異常の判定方法はこれに限定されるものではない。
例えば、図16に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の基本バックグラウンドレベルBGLmが、所定の許容誤差よりも低い場合、ノックセンサ151の断線やショートなどの異常があると判定してもよい。
このように構成すると、ノックセンサ151の断線やショートに起因するノックセンサ151の異常を適切の判定できる。
また、図17に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の基本バックグラウンドレベルBGLmが、所定の許容誤差を越える場合、ノックセンサ151のずれなどの異常があると判定してもよい。
このように構成すると、ノックセンサ151のゲイン調整不良に基づく出力ずれに起因するノックセンサ151の異常を適切の判定できる。
また、図18に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の出力値Poの周波数成分の振動強度(周波数強度)が、所定の許容誤差よりも低い場合、ノックセンサ151の断線やショートなどの異常があると判定してもよい。
このように構成すると、ノックセンサ151の断線やショートに起因するノックセンサ151の異常を適切の判定できる。
また、図19に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の出力値Poの周波数成分の振動強度(周波数強度)が、所定の許容誤差を越える場合、ノックセンサ151のずれなどの異常があると判定してもよい。
このように構成すると、ノックセンサ151のゲイン調整不良に基づく出力ずれに起因するノックセンサ151の異常を適切の判定できる。
また、図20に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の異常を検出した場合、点火プラグ15の点火時期を遅らせる制御(リタード)を行うようにしてもよい。実施の形態では、図19に示すように、CPU29は、ノックセンサ151の異常を検出した場合、点火時期の補正量を−10に設定し、点火タイミングを遅らせている。
このように構成すると、CPU29は、ノックセンサ151の異常のため、ノッキングの発生を検出することができない。そのため、CPU29は、ノックセンサ151の異常の検出に基づいて、いち早く遅角制御することで、実際にノッキングが発生した場合(ノックセンサ151による検出不可)に事前に備えることができる。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は、前述した実施の形態を全て組み合わせてもよく、何れか2つ以上の実施の形態を任意に組み合わせても好適である。
また、本発明は、前述した実施の形態の全ての構成を備えているものに限定されるものではなく、前述した実施の形態の構成の一部を、他の実施の形態の構成に置き換えてもよく、また、前述した実施の形態の構成を、他の実施の形態の構成に置き換えてもよい。
また、前述した実施の形態の一部の構成について、他の実施の形態の構成に追加、削除、置換をしてもよい。
1:エアクリーナ、2:空気流量計、3:ダクト、5:スロットルボディ、6:吸気配管、7:気筒(シリンダ)、8:排気配管、9:ECU、10:内燃機関、11:排気センサ、12:クランク角センサ、13:点火コイル、14:分配器、15:点火プラグ、151:ノックセンサ、16:燃料噴射弁、20:CPU、21:A/D変換器、22:ROM、23:入力I/O、24:RAM、25:DRAM、26:出力I/O、27:ポート、28:タイミング回路、29:CPU、30:A/D変換器、31:ROM、32:RAM、33:クロック、34:制御ユニット、35:ノッキング検出ユニット、36:バス、37:バス、38:オペレーショナル回路
Claims (12)
- 内燃機関のノッキングを検出するためのノックセンサの異常判定装置であって、
前記内燃機関の実際の振動強度を取得する振動強度取得部と、
前記内燃機関の運転状態に基づいて理論振動強度を算出する理論振動強度算出部と、を有し、
前記振動強度取得部で取得した実際の振動強度と、前記理論振動強度算出部で算出した理論振動強度とに基づいて、前記ノックセンサの異常を判定するノックセンサ異常判定部を有するノックセンサの異常判定装置。 - 前記振動強度取得部は、前記内燃機関の複数の周波数成分の実際の振動強度を取得すると共に、
前記内燃機関を構成するアクチュエータの発生ノイズの周波数特性を記憶するノイズ記憶部を有し、
前記ノックセンサ異常判定部は、前記振動強度取得部で取得した前記複数の周波数成分の振動強度と、前記ノイズ記憶部に記憶された前記アクチュエータの発生ノイズとに基づいて、前記ノックセンサの異常を判定する請求項1に記載のノックセンサの異常判定装置。 - 前記ノックセンサ異常判定部は、前記内燃機関の運転中に前記ノックセンサの異常を判定する請求項2に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記ノックセンサ異常判定部は、前記振動強度取得部で取得した実際の振動強度と、前記理論振動強度算出部で算出した理論振動強度との差分が、所定の範囲を超えた場合、前記ノックセンサの異常を判定する請求項1に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記アクチュエータは、前記内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射装置、吸排気バルブまたは前記吸排気バルブを駆動する吸排気カムの少なくとも何れか1つである請求項2に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記ノックセンサ異常判定部は、前記振動強度取得部で取得した実際の振動強度が、所定の第1閾値よりも低い場合、前記ノックセンサに断線またはショートが発生したと判定する請求項1に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記ノックセンサ異常判定部は、前記振動強度取得部で取得した実際の振動強度が、所定の第2閾値よりも高い場合、前記ノックセンサの出力設定に異常があると判定する請求項1に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記ノックセンサ異常判定部は、前記振動強度取得部で取得した複数の周波数成分の実際の振動強度の積算値と、前記理論振動強度算出部で算出された前記理論振動強度との差分の加重平均値に基づいて、前記ノックセンサの異常を判定する請求項2に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 前記ノックセンサ異常判定部により前記ノックセンサの異常を判定した場合、点火プラグの点火タイミングを遅らせるように制御する点火タイミング制御部を有する請求項1または請求項2に記載のノックセンサの異常判定装置。
- 内燃機関のノッキングを検出するためのノックセンサの異常判定方法であって、
前記内燃機関の実際の振動強度を取得する振動強度取得ステップと、
前記内燃機関の運転状態に基づいて理論振動強度を算出する理論振動強度算出ステップと、を有し、
前記振動強度取得ステップで取得した実際の振動強度と、前記理論振動強度算出ステップで算出した理論振動強度とに基づいて、前記ノックセンサの異常を判定するノックセンサ異常判定ステップを有するノックセンサの異常判定方法。 - 前記振動強度取得ステップは、前記内燃機関の複数の周波数成分の実際の振動強度を取得すると共に、
前記内燃機関を構成するアクチュエータの発生ノイズの周波数特性を記憶するノイズ記憶ステップを有し、
前記ノックセンサ異常判定ステップは、前記振動強度取得ステップで取得した前記複数の周波数成分の振動強度と、前記ノイズ記憶ステップで記憶した前記アクチュエータの発生ノイズとに基づいて、前記ノックセンサの異常を判定する請求項10に記載のノックセンサの異常判定方法。 - 前記ノックセンサ異常判定ステップは、前記振動強度取得ステップで取得した実際の振動強度と、前記理論振動強度算出ステップで算出した理論振動強度との差分が、所定の範囲を超えた場合、前記ノックセンサの異常を判定する請求項10に記載のノックセンサの異常判定方法。
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