JPWO2019054469A1 - エタノールの製造方法およびエタノール発酵液 - Google Patents

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Abstract

本発明は、微生物をケーンモラセスを主成分として含む発酵原料で培養し、培養液を分離膜で濾過して微生物が分離されたエタノール含有濾過液を回収し、さらに微生物を含む未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ発酵原料を培養液に追加するエタノール連続発酵工程、および該連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液を蒸留によりエタノール濃縮精製する工程を含むエタノールの製造方法において、前記微生物が前記培養液の遠心上清中に平均粒子径が100nm以上の粒子を含有せしめる微生物であり、前記エタノール含有濾過液に含まれる前記微生物培養により形成される粒子の平均粒子径が40〜80nmである方法、あるいは微生物培養により形成される該微生物以外の粒子として平均粒子径が40〜80nmの粒子を含み、バガスの水熱処理時の成分を含まないエタノール発酵液であり、本発明により消泡剤を添加せずともエタノール発酵液の蒸留精製が可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、ケーンモラセスを主成分として含有する発酵原料を用いたエタノールの製造方法およびエタノール発酵液に関する。
発酵によるアルコールの製造は、古くから研究の行われていた分野であるが、特に発酵によりバイオエタノールを製造する技術は、世界全体の地球環境意識の高まりや原油価格の高騰等を背景に、石油資源の消費を抑え、二酸化炭素の排出量を低減して、持続可能な(サスティナブルな)燃料や工業原料を生産することができる技術として近年再び注目を集めている。
エタノールの製造方法としては、とうもろこしなどの可食性バイオマスから精製した六炭糖であるグルコースや、サトウキビから砂糖を精製する過程で生じる糖蜜(ケーンモラセス)を原料として、微生物による培養産物として得るのが一般的である。ケーンモラセスは、ブラジルやタイなどの砂糖生産国においてはエタノール発酵原料として多量に消費されており、重要な発酵原料となっている。
一般に、微生物培養によるエタノールの製造方法としてはバッチ発酵法、フェドバッチ発酵法または連続発酵法などが用いられるが、特許文献1では分離膜を用いた連続発酵方法によりエタノールの生産速度や収率が向上することが開示されている。一方で当該特許文献では、ケーンモラセス含有原料の使用に関する記載はない。また、特許文献2では複数の発酵槽を連結した連続発酵法により得られる培養液を遠心分離することで、微生物とエタノール発酵液に分けて、微生物を除去したエタノール発酵液は蒸留を行い、微生物については発酵槽に戻す方法が開示されている。一方で当特許文献では、ケーンモラセス含有原料を使用しているが、分離膜を用いていない。このように得られたエタノール発酵液が、次に蒸留を行うことでエタノールを濃縮精製することは一般的である。
工業的に行われる蒸留は、回分式蒸留と連続式蒸留に分類される。燃料用エタノールは大量消費される化学品であるため、大量処理を行う必要があり、その場合には連続式蒸留が行われることが一般的である。
このエタノール発酵液の蒸留において、蒸留塔内で発泡現象が発生すると圧力損失が上昇し,最終的にはフラッディング状態に到達し,連続式蒸留の運転継続が困難となる課題があった。一般的な解決方法としては、消泡剤を添加することで行われるが、多額の費用を要するのみならず、消泡剤自体は異物として、蒸留塔の塔頂からの留出液もしくは蒸留塔の塔底からの缶出液に混入される。また、蒸留塔内に残留して蒸留に悪影響を及ぼすので、消泡剤の添加は好ましくない手段と考えられている。
そこで特許文献3では、蒸留時の発泡を抑制するため、蒸留塔の塔底に攪拌軸を設けて攪拌翼を回転させることで泡を消す方法が開示されている。しかしながら蒸留塔は、運転で付着する汚れを定期的に洗浄する必要があるため、稼働部や複雑な構造は嫌われるため、依然として発泡を抑制するためには消泡剤の添加に頼るしかない状況であった。
WO2007/097260 WO2011/135588 特開平6−335627号公報
特許文献2に記載されているように、ケーンモラセスを主成分として含有する発酵原料および微生物としてシゾサッカロマイセス属を用いエタノール発酵法を行い蒸留検討した結果、従来から言われているとおりに発泡が激しく発生し消泡剤を添加する必要があることを確認した。
そこで本発明では、蒸留時に消泡剤を添加せずとも蒸留可能な方法およびそのようなエタノール発酵液を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討した結果、ケーンモラセスを主成分として含有する発酵原料を用いたエタノール発酵液でも、分離膜を利用した連続発酵法によりエタノール発酵液を得れば、蒸留時に驚くべきことに発泡が全く発生しないことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)の通りである。
(1)微生物をケーンモラセスを主成分として含む発酵原料で培養し、培養液を分離膜で濾過して微生物が分離されたエタノール含有濾過液を回収し、さらに微生物を含む未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ発酵原料を培養液に追加するエタノール連続発酵工程、および該連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液を蒸留によりエタノール濃縮精製する工程を含むエタノールの製造方法において、前記微生物が前記培養液の遠心上清中に平均粒子径が100nm以上の粒子を含有せしめる微生物であり、前記エタノール含有濾過液に含まれる前記微生物培養により形成される粒子の平均粒子径が40〜80nmである、方法。
(2)前記粒子の平均粒子径が300nm以上である、(1)に記載のエタノールの製造方法。
(3)前記微生物がシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属に属する酵母である、(1)または(2)に記載のエタノールの製造方法。
(4)前記エタノール含有濾過液に含まれる、前記微生物培養により形成される粒子の粒子径分布が粒子径20〜100nmの範囲内である、(1)〜(3)のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
(5)前記蒸留が連続式蒸留である、(1)〜(4)のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
(6)微生物培養により形成される該微生物以外の粒子として平均粒子径が40〜80nmの粒子を含み、バガスの水熱処理時の成分を含まない、エタノール発酵液。
(7)前記粒子の粒子径分布が粒子径20〜100nmの範囲内である、(6)に記載のエタノール発酵液。
(8)300nmの光線波長の透過度が0.5±0.1%Tとなるように希釈した場合での、600nmの光線波長の透過度が91%T超である、エタノール発酵液。
本発明によれば、蒸留時に発泡性のあるケーンモラセスを主成分として含有する発酵原料を用いたエタノール発酵液であっても、前記エタノール連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液または前記エタノール発酵液を蒸留工程に供することで蒸留時の発泡を顕著に抑制することができ、蒸留による安定したバイオエタノール生産が可能となる。
エタノール発酵液1から3の粒子径分布結果 エタノール発酵液1の粒子径分布結果(拡大)
本発明は、ケーンモラセスを主成分として含有する発酵原料とする培養液の遠心上清中に平均粒子径が100nm以上の粒子を含有せしめる微生物による分離膜利用エタノール連続発酵工程、および該連続発酵工程で回収されるエタノール濾過液を蒸留により濃縮精製する工程を含むエタノールの製造方法、ならびに微生物培養によって形成される特定の平均粒子径の粒子を含むエタノール発酵液に関する。以下、本発明のエタノールの製造方法について工程毎に説明し、また、本発明のエタノール発酵液の特徴について説明する。
[エタノール連続発酵工程]
本発明で使用する微生物は、エタノールを生産する能力を有する微生物であり、かつ、当該微生物をケーンモラセスを主成分として含む発酵原料で培養した際に、培養液の遠心上清中に平均粒子径が100nm以上の粒子を含有せしめる微生物であれば特に制限はない。そのような微生物の好ましい具体例としては、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌などが挙げられる。自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。エタノール生産する微生物として好ましくは酵母である。酵母としては、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)が好ましい。中でもShizosaccharomyces属に属する酵母が好ましく、Shizosaccharomyces pombe、Shizosaccharomyces japonicus、Shizosaccharomyces octosporusまたはShizosaccharomyces cryophilusを好適に用いることができる。
前記粒子とは、ケーンモラセスを主成分として含む発酵原料で培養して得られる培養液中に含まれる微生物以外の不溶性の粒状物質を意味する。培養液中に存在する粒子の平均粒子径の測定は、動的光散乱法(DLS、光子相関法)により行う。具体的には、動的光散乱法による測定によって得られた散乱強度の揺らぎから、キュムラント(Cumulant)解析によって自己相関関数を求め、散乱強度に対する粒度分布へ変換した後に、解析範囲最小値を1nm、最大値を5000nmとして平均粒子径に換算する。測定には、大塚電子株式会社のELS−Z2を用いる。また、培養液中には微生物も粒子として存在していることから、室温の培養液を1000G、10分の条件で遠心することにより微生物を沈殿させ、その遠心上清に含まれる粒子の平均粒子径を測定する。
前記培養液に含まれる前記粒子の平均粒子径は100nm以上であり、好ましくは300nm以上、より好ましくは300〜1500nmである。このような平均粒子径が100nm以上の粒子を培養液中に含有せしめる微生物を利用することで、詳細な作用機序は明らかではないが、後述の実施例で示されるように、本発明のエタノール連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液を蒸留に供した際の発泡が抑制されるという予想外の優れた効果がもたらされる。なお、前記粒子の平均粒子径の上限は、膜閉塞の発生により濾過フラックスを低下させない範囲においては特に制限されないが、前記遠心によっても微生物とともに沈殿しないような粒子の平均粒子径が上限となり、好ましい上限値としては1500nmである。
ケーンモラセスとは、サトウキビの絞り汁あるいは粗糖より、製糖の過程で生成する副産物である。具体的には、製糖過程における結晶化工程で結晶化の後に残った糖成分を含む晶析母液のことを指す。一般的に、結晶化工程は、複数回行うことが通常であり、1回目の結晶化を行い得た結晶成分である1番糖、さらに1番糖の残り液(1番糖蜜)の結晶化を行い得た結晶成分である2番糖、さらに2番糖の残り液(2番糖蜜)の結晶化を行い得た3番糖、のように結晶化を繰り返し行い、その際に残った晶析母液として得た最終段階の糖蜜のことをケーンモラセスという。結晶化の回数が多くなるに伴い、糖成分以外の無機塩がケーンモラセス中に濃縮される。本発明で使用するケーンモラセスとしては、結晶化回数が多く経た後のケーンモラセスであることが好ましく、少なくとも2回以上、さらに好ましくは3回以上結晶化を行った後に残るケーンモラセスであることが好ましい。ケーンモラセスに含まれる糖成分としては、スクロース、グルコース、フルクトースを主成分として含んでおり、キシロース、ガラクトースなどのその他の糖成分も若干含まれる場合がある。ケーンモラセス中の糖濃度は、一般的に200〜800g/L程度である。ケーンモラセス中の糖濃度は、HPLCなどの公知の測定手法によって定量することができる。
発酵原料とは、微生物が増殖するために必要な栄養が全て含まれるものである。本発明で使用する発酵原料にはケーンモラセスが主成分として含まれていればよく、その他、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜添加してもよい。なお、本発明においてケーンモラセスを主成分として含む発酵原料とは、発酵原料に含まれる物質(水を除く)のうち50重量パーセント以上がケーンモラセスであることを意味する。
炭素源としては、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有するコーン澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどの他、セルロース含有バイオマス由来糖液が好ましく使用される。
セルロース含有バイオマスとしては、バガス、スイッチグラス、コーンストーバー、稲わら、麦わらなど草木系バイオマスと、樹木、廃建材などの木質系バイオマスなどを例として挙げることができる。セルロース含有バイオマスは、糖が脱水縮合した多糖であるセルロースあるいはヘミセルロースを含有しており、こうした多糖を加水分解することで発酵原料として利用可能な糖液が製造される。
セルロース含有バイオマス由来糖液の調製方法は特に制限はなく、こうした糖の製造方法としては、濃硫酸を使用してバイオマスを酸加水分解して糖液を製造する方法(特表平11−506934号公報、特開2005−229821号公報)、バイオマスを希硫酸で加水分解処理した後に、さらにセルラーゼなどの酵素処理することより糖液を製造する方法が開示されている(A.Adenら、“Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co−Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stover”NREL Technical Report(2002))。また酸を使用しない方法として、250〜500℃程度の亜臨界水を使用しバイオマスを加水分解して糖液を製造する方法(特開2003−212888号公報)、またバイオマスを亜臨界水処理した後に、さらに酵素処理することにより糖液を製造する方法(特開2001−95597号公報)、バイオマスを240〜280℃の加圧熱水で加水分解処理した後に、さらに酵素処理することにより糖液を製造する方法(特許3041380号公報)が開示されている。以上のような処理の後、得られた糖液とケーンモラセスを混合して精製してもよい。その方法は、例えば、WO2012/118171に開示されている。
窒素源としてはアンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵微生物およびその加水分解物などが使用される。
無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
また、本発明に使用する微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合にはその栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加して使用できる。
前記微生物および発酵原料を用いるエタノール連続発酵工程は分離膜を用いた連続発酵工程であり、具体的には、培養液を分離膜で濾過して微生物が分離されたエタノール含有濾過液を回収し、さらに微生物を含む未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ発酵原料を培養液に追加することを特徴とする連続発酵工程である。
エタノール連続発酵工程で用いられる分離膜については、微生物の培養で得られた発酵液を微生物から分離濾過する機能を有するものであれば特に制限はなく、材質としては、例えば、多孔質セラミック膜、多孔質ガラス膜、多孔質有機高分子膜、金属繊維編織体、不織布などを用いることができるが、これらの中で特に多孔質有機高分子膜もしくはセラミック膜が好適である。
前記分離膜の構成としては、例えば、耐汚れ性の点から、多孔質樹脂層を機能層として含む分離膜であることが好ましい。
多孔質樹脂層を含む分離膜は、好ましくは、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与える。また、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を有している場合、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良い。
多孔質基材の平均厚みは、好ましくは50〜3000μmである。
多孔質基材の材質は、有機材料および/または無機材料等からなり、有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維なる織布や不織布であり、より好ましくは、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が用いられる。
多孔質樹脂層は、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の材質としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。有機高分子膜の材質は、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
前記分離膜は、培養に使用される微生物が通過できない細孔径を有していればよいが、培養に使用される微生物の分泌物や発酵原料中の微粒子による目詰まりが起こりにくく、かつ、濾過性能が長期間安定に継続する範囲であることが望ましい。よって、多孔性分離膜の平均細孔径が、0.01〜5μmであることが好ましい。また、さらに好ましくは、分離膜の平均細孔径が、0.01〜1μmであると、微生物がリークすることのない高い排除率と、高い透水性を両立させることができ、透水性を長時間保持することができる。
微生物の大きさに近いと、これらが直接孔を塞いでしまう場合があるので、分離膜の平均細孔径は1μm以下であることが好ましい。分離膜の平均細孔径は、微生物の漏出、すなわち排除率が低下する不具合の発生を防止するため、微生物の大きさと比較して大きすぎないことが好ましい。微生物のうち、細胞の小さい細菌などを用いる場合には、平均細孔径として0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。平均細孔径が小さすぎると分離膜の透水性能が低下し、膜が汚れていなくても効率的な運転ができなくなるため、本発明における分離膜の平均細孔径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.04μm以上である。
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。平均細孔径は、あるいは膜表面を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることもできる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求められる。
前記分離膜の平均細孔径の標準偏差σは、0.1μm以下であることが好ましい。平均細孔径の標準偏差σは小さければ小さい方が望ましい。平均細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXkとし、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式1)により算出される。
前記分離膜においては、培養液の透過性が重要な性能の一つである。分離膜の透過性の指標として、使用前の分離膜の純水透過係数を用いることができる。本発明において、分離膜の純水透過係数は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、5.6×10−10/m/s/pa以上であることが好ましく、純水透過係数が、5.6×10−10/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過水量が得られる。
前記分離膜において、表面粗さとは、表面に対して垂直方向の高さの平均値である。膜表面粗さは、分離膜表面に付着した微生物が、撹拌や循環ポンプによる液流による膜面洗浄効果で剥離しやすくするための因子の一つである。分離膜の表面粗さは、特に制限はなく、膜に付着した微生物、ならびにその他の固形物が剥がれる範囲であればよいが、0.1μm以下であることが好ましい。表面粗さが0.1μm以下であると、膜に付着した微生物、ならびにその他の固形物が剥がれやすくなる。
さらに好ましくは、分離膜の膜表面粗さが0.1μm以下であり、平均細孔径が0.01〜1μmであり、分離膜の純水透過係数が2×10−9/m/s/pa以上の分離膜を使用することにより、膜面洗浄に必要な動力を過度に必要としない運転が、より容易に可能であることがわかった。分離膜の表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、微生物の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることができ、微生物の破壊が抑制され、分離膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が、より容易に可能になる。また、分離膜の表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、より低い膜間差圧で連続発酵が実施可能であり、分離膜が目詰まりした場合でも高い膜間差圧で運転した場合に比べて、洗浄回復性が良好である。分離膜の目詰まりを抑えることにより、安定した連続発酵が可能になることから、分離膜の表面粗さは小さければ小さいほど好ましい。
ここで、分離膜の膜表面粗さは、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の条件で測定したものである。
・装置 原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製“Nanoscope IIIa”)
・条件 探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
走査範囲 10μm、25μm四方(気中測定)
5μm、10μm四方(水中測定)
走査解像度 512×512
・試料調製 測定に際し膜サンプルは、常温でエタノールに15分浸漬後、RO水中に24時間浸漬し洗浄した後、風乾し用いた。RO水とは、濾過膜の一種である逆浸透膜(RO膜)を用いて濾過し、イオンや塩類などの不純物を排除した水を指す。RO膜の孔の大きさは、概ね2nm以下である。
膜表面粗さdroughは、上記の原子間力顕微鏡装置(AFM)により各ポイントのZ軸方向の高さから、下記の(式2)により算出する。
前記分離膜の形状は特に限定されず、平膜や中空糸膜などを用いることができるが、好ましくは中空糸膜である。分離膜が中空糸膜の場合、中空糸の内径は、好ましくは200〜5000μmであり、膜厚は、好ましくは20〜2000μmである。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
なお、前記分離膜は、例えばWO2007/097260に記載される製造方法により製造することができる。
エタノール連続発酵工程での濾過時の膜間差圧は特に制限されることはなく、培養液を濾過できればよい。しかし、培養液を濾過するために、有機高分子膜において150kPaより高い膜間差圧で濾過処理すると、有機高分子膜の構造が破壊される可能性が高くなり、エタノールを生産する能力が低下することがある。また、0.1kPaより低い膜間差圧では、培養液の透過水量が十分得られない場合が多くエタノールを製造するときの生産性が低下する傾向がある。したがって、本発明のエタノールの製造方法では、有機高分子膜においては、濾過圧力である膜間差圧を好ましくは0.1〜150kPaの範囲とすることにより、培養液の透過水量が多く、膜の構造の破壊によるエタノール製造能力の低下もないことから、エタノールを生産する能力を高く維持することが可能である。膜間差圧は、有機高分子膜においては、好ましくは0.1〜50kPaの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜20kPaの範囲である。
酵母の培養における温度は、用いる酵母に適した温度を設定すればよく、微生物が生育する範囲であれば特に限定されないが、温度が20〜75℃の範囲で行われる。
本発明のエタノールの製造方法では、培養初期にバッチ発酵またはフェドバッチ発酵を行って微生物濃度を高くした後に、連続発酵(発酵液の濾過)を開始しても良い。また、高濃度の微生物をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。本発明のエタノールの製造方法では、適当な時期から、発酵原料の供給および培養液の濾過を行うことが可能である。発酵原料の供給と培養液の濾過の開始時期は、必ずしも同じである必要はない。また、発酵原料供給と培養液の濾過は連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
培養液中の微生物の濃度は、エタノールの生産性を高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましい。培養液中の微生物の濃度は、一例として、乾燥重量として、5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
エタノール連続発酵工程では、連続発酵の途中において必要に応じて、発酵槽内から微生物を含んだ培養液の一部を取り除いた上、発酵原料を供給して希釈することによって、発酵槽内の微生物濃度を調整してもよい。例えば、発酵槽内の微生物濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、微生物を含んだ培養液の一部を取り除き、発酵原料を供給して希釈することで、閉塞から回避することができることがある。本発明のエタノールの製造方法では、発酵槽の数は問わない。
本発明で用いられる連続発酵装置は、微生物を含む培養液を分離膜で濾過し、濾液からエタノールを回収するとともに微生物を含む未濾過液を前記の培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を前記の培養液に追加して濾過液中のエタノールを回収する連続発酵によるエタノールの製造装置であれば特に制限はないが、具体例を挙げると、WO2007/097260、WO2010/038613に記載される装置が使用できる。
[蒸留工程]
本発明のエタノールの製造方法でのエタノールの蒸留方法としては、当業者にとって公知のエタノール蒸留方法である回分式蒸留または連続式蒸留が適用できるが、連続蒸留が好ましく適用される。連続蒸留の方法としては、まず、加熱器で気化した前記エタノール濾過液を連続的に蒸留塔の中段に導入する。蒸留塔の頂上からは揮発性の高いエタノールに富んだ留出液が連続的に得られ、底部からは揮発性の低い成分に富んだ(乳酸や酢酸などの不純物)缶出液が連続的に得られる。連続的に得られる留出液と缶出液を合わせた量が連続的に供給される原料と同量になるようにすることで蒸留塔は定常状態となる。
蒸留塔の形状としては、分離性能の高い精留塔が好ましく利用できる。精留塔としては棚段塔と充填塔のいずれでも良いが、前段の連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液は発泡性が顕著に低いという特徴があることから、発泡性がある場合に適用が困難であるが設備コストが安価である充填塔による連続蒸留を好ましく適用できる。
[エタノール発酵液]
前記エタノール連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液には、平均粒子径が40〜80nmである、前記微生物培養によって形成される微生物以外の不溶性の粒状物質(以下、単に「粒子」という。)が含まれる。微生物培養によって本粒子が生じること自体が新規な知見であるため、本粒子の組成等の分析方法は当業者の技術常識として確立しておらず、本粒子は微生物培養によって形成される副産物であることしか明らかでないが、本粒子がエタノール含有濾過液に含まれることにより、詳細な作用機序は明らかではないものの蒸留に供した際の発泡が抑制されるという予想外の優れた効果が後述の実施例で確認された。従って、前記エタノール連続発酵工程によって得られるものであるかどうかに関わらず、平均粒子径が40〜80nmの前記粒子を含むことで特定されるエタノール発酵液そのものも本発明の一態様である。
前記エタノール発酵液中に存在する粒子の平均粒子径の測定は、動的光散乱法(DLS、光子相関法)により行う。具体的には、動的光散乱法による測定によって得られた散乱強度の揺らぎから、キュムラント(Cumulant)解析によって自己相関関数を求め、散乱強度に対する粒子径分布へ変換した後に、解析範囲最小値を1nm、最大値を5000nmとして平均粒子径に換算する。測定には、大塚電子株式会社のELS−Z2を用いる。また、エタノール発酵液中には微生物も粒子として存在している場合もあることから、その場合は室温のエタノール発酵液を1000G、10分の条件で遠心することにより微生物を沈殿させ、その遠心上清に含まれる粒子の平均粒子径を測定する。
前記エタノール発酵液が含有する前記粒子の平均粒子径は40〜80nmであるが、好ましくは50〜70nmである。また、前記粒子の粒子径分布は、好ましくは20〜100nmの範囲内であり、より好ましくは40〜90nmの範囲内である。
本発明のエタノール発酵液は前記粒子を含んでいれば特に制限はなく、例えば、微生物培養直後の微生物を含むエタノール発酵液や微生物を除去したエタノール発酵液であってもよく、また、微生物を除去後に適宜当業者に公知の方法により精製・濃縮したエタノール発酵液であってもよい。
本発明のエタノール発酵液に含まれるエタノール濃度についても特に制限はないが、好ましくは30〜150g/Lであり、より好ましくは50〜120g/Lであり、さらに好ましくは60〜100g/Lである。
また、本発明のエタノール発酵液は、300nmの光線波長の透過度が0.5±0.1%Tとなるように水で希釈したエタノール発酵希釈液について600nmの光線波長の透過度を測定したときの値が91%Tを超えると、詳細な作用機序は明らかではないものの蒸留に供した際の発泡がさらに抑制されるという予想外の優れた効果が後述の実施例で確認された。したがって、本発明のエタノール発酵液は、前記エタノール連続発酵工程によって得られるものであるかどうかにかかわらず、300nmの光線波長の透過度を0.5±0.1%Tとなるように水で希釈した時の、600nmの光線波長の透過度が91%Tを超えることが好ましく、94%T以上であることがより好ましい。
前記エタノール発酵液の透過度は、紫外可視分光光度計により測定された値である。具体的には、10mm角の石英キュベットに蒸留水を入れ、200nmから800nmまでの光線波長の透過度のバックグラウンドを測定し、そののち、空のキュベットに前記エタノール発酵液と蒸留水を、300nmの光線波長の透過度が0.5±0.1%Tとなるように混合し、600nmの光線波長の透過度を測定する。本測定での紫外可視分光光度計としては日本分光株式会社製UV−Vis測定器(V750)を用いればよい。
本発明のエタノール発酵液は発泡性が顕著に低いという特徴があるため、蒸留による濃縮精製が必要な燃料用エタノールの原料として好ましく利用できる。エタノール発泡性とは、後述の実施例にて詳細が説明されるとおり、エタノール発酵液の泡沫体積や、エタノール発酵液を連続式蒸留を模した試験に供した場合の泡の高さで評価することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)糖類、エタノールの分析方法
原料中の糖類、エタノール濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Shodex SH1011(昭和電工株式会社製)
移動相:5mM 硫酸(流速0.6mL/分)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:65℃。
(参考例2)発酵原料の調製
ケーンモラセス重量と水重量を1:3で混合し、発酵原料を得た。参考例1に示す方法により糖類を分析した結果を表1に示す。
(実施例1)シゾサッカロマイセス・ポンベNBRC1628株を用いた分離膜を利用した連続発酵
微生物としてシゾサッカロマイセス・ポンベNBRC1628株、培地として参考例2の発酵原料を用い、分離膜を利用した連続発酵を行なった。分離膜エレメントとしては特開2010−22321に記載の中空糸の形態を採用した。シゾサッカロマイセス・ポンベNBRC1628株を5mlの参考例2の発酵原料を投入した試験管に植菌し一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を、新鮮な45mlの参考例2の発酵原料を投入した三角フラスコに植菌し、30℃、120rpmで8時間振とう培養した(前培養)。前培養液50mLのうち35mLを分取して、700mLの参考例2の発酵原料を投入した連続発酵装置に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって300rpmで撹拌し、24時間培養を行った。なお、植菌後直ちに培養液循環ポンプを稼動させ、分離膜エレメントと発酵槽間の液循環をおこなった。前培養終了後、濾過ポンプを稼動させて分離膜エレメントより培養液の抜き出しを開始した。濾過開始後は、連続発酵装置の培養液量を700mLになるよう発酵原料添加制御を行いながら以下の連続発酵条件で約200時間の連続発酵を行い、その際にエタノール濃度64g/Lのエタノール含有濾過液(発酵液サンプル1)を700ml得た。
[連続発酵条件]
発酵反応槽容量:2(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン製濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:218(cm
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:無通気
発酵反応槽撹拌速度:300(rpm)
pH調整:無調整
濾過フラックス設定値:0.1(m/m/日)
滅菌:分離膜エレメントおよび発酵槽は121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌
平均細孔径:0.1μm
平均細孔径の標準偏差:0.035μm
膜表面粗さ:0.06μm
純水透過係数:50×10−9/m/s/pa。
(参考例3)シゾサッカロマイセス・ポンベNBRC1628株を用いたバッチ発酵
実施例1と発酵原料、微生物、前培養条件、発酵条件同一にしたバッチ発酵を行った。ただし分離膜による培養液の濾過は行わない。
シゾサッカロマイセス・ポンベNBRC1628株を5mlの表1に示す発酵原料を投入した試験管に植菌し一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を、新鮮な45mlの表1に示す発酵原料を投入した三角フラスコに植菌し、30℃、120rpmで8時間振とう培養した(前培養)。前培養液50mLのうち35mLを分取して、700mLの表1に示す発酵原料を投入した連続発酵装置に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって300rpmで撹拌し、以下の発酵条件で48時間バッチ発酵を行い、その際にエタノール濃度58g/Lのエタノール発酵液(発酵液サンプル2)を700ml得た。
[バッチ発酵条件]
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:無通気
発酵反応槽撹拌速度:300(rpm)
pH調整:無調整。
(参考例4)バッチ発酵液からの微生物除去
参考例3で得られた発酵液サンプル2には微生物が含有されているため、1000g、10分間の遠心分離により微生物沈殿させ、その上清液(発酵液サンプル3)を600ml得た。
(実施例2)発酵液サンプルの蒸留試験
連続式蒸留の精留塔内部の状態を模した試験を行った。300ml発酵液サンプル1から3を別々に、500ml容丸底フラスコに加え、丸底フラスコをマントルヒーターにより、丸底フラスコ内部の液温センサーが95℃を維持するように加熱運転した。丸底フラスコの出口には冷却コンデンサーを装着し、4℃の冷却水をコンデンサー内部配管に循環することで、蒸発したエタノールを冷却し凝縮させた。その結果、発酵液サンプル2および3については沸騰後速やかに激しく発泡し、冷却コンデンサーにまで泡が到達してしまった。一方の発酵液サンプル1については驚くべきことに5時間の蒸留状態を維持しても全く発泡しないままであった。
(実施例3)発泡性の評価
発泡性の評価を行うために、「油化学 第42巻、第10号(1993)P.737−734」に記載されているメスシリンダーを用いた発泡性の評価方法である、流下法による試験を行った。500mlのメスシリンダーを立て、サンプル1から3を別々に50ml発酵液をメスシリンダーに最初に仕込み、そこへ300mlのサンプル1から3を別々に45cmの高さから流下させ、生ずる泡沫体積を測定した。その結果、発酵液サンプル1の泡沫体積はゼロmlであり、発酵液サンプル2おとび3の泡沫体積は、それぞれ55mlおよび65mlであった。
実施例2および3の結果より、発酵液サンプル1は全く発泡しないという驚くべき特性を備えていることが明らかになった。
(実施例4)エタノール発酵液中の粒子径分布および平均粒子径測定結果
発酵液サンプル1から3を遠心分離し、得られた上清の平均粒子径測定を実施した。具体的にはそれぞれを室温下1,000Gで10分間遠心して、それぞれの上清3mLを回収した。回収した上清30μLをpH5のクエン酸緩衝液970μLに加えて希釈し、希釈した各溶液を1mL容量のディスポセルに入れ、動的光散乱により平均粒子径を測定した。
[測定条件]
・光源のピンホールサイズ:100μm
・測定波長:660nm
・測定角度:165°
・測定積算回数:70回
・溶媒屈折率:1.3313
・溶媒粘度:0.8852cp。
次に、測定結果を以下の条件にて解析した。
[解析条件]
粒子径の解析には、大塚電子株式会社のゼータ電位・粒子測定システムELS−Z2を用い、25℃の条件で、大気中で測定を行った。動的光散乱によって得られた散乱強度の揺らぎからキュムラント解析によって自己相関関数を求め、散乱強度に対する粒度分布へ変換した。粒度分布のヒストグラム解析範囲は最小値を1nm、最大値を5000nmとした。得られた粒子径分布結果を図1に示す。発酵液サンプル1のみの拡大した粒子径分布を図2に示す。また、表2には発酵液サンプル1から3の平均粒子径と泡沫体積の結果まとめを示す。
その結果、図1および表2に示したように、原料であるケーンモラセスには粒子は含まれず、微生物培養により粒子が形成されることがわかった。またエタノール発酵液中に、微生物培養により形成される平均粒子径58nmを含有するエタノール発酵液は、発泡を顕著に抑制できることがわかった。
(実施例5)エタノール発酵液サンプルの発泡性
連続式蒸留を模した試験にてエタノール発酵液サンプルの発泡性評価を行った。東京ガラス機械製試験管(共通共栓試験管目盛付20ml透明)にスターラーチップと、前述の発酵液サンプル1から3を別々に、3ml加え、上部に10℃に設定した冷却管を装着した。160℃に設定した東京理化器械株式会社製の温調付きオイルバスに試験管内発酵液液面とオイルバス液面が等しくなるように設置して、YAZAWA社製マグネティックスターラー(KF−82M)を用いて400±20rpmで攪拌しながら加熱を行った。その結果、発酵液サンプル2および3については加熱開始後5分から10分の間で液面から7cmを超える発泡がみられた。一方の発酵液サンプル1については驚くべきことに全く発泡しないままであり、実施例3の発泡性試験と同じ結果を確認した。
(参考例5)エタノール発酵液サンプルの透過度の測定
紫外可視分光光度計として日本分光株式会社製UV−Vis測定器(V750)と、日本分光株式会社製の10mm角石英キュベットを使用して測定を行った。キュベットに和光純薬株式会社製蒸留水を2ml加えて、200nmから800nmまでの光線波長の透過度のバックグラウンドを測定した。そののち、空のキュベットに発酵液を加えて測定を行い、300nmの光線波長の透過度が0.5±0.1%Tになるように適宜発酵液を蒸留水で希釈した。その希釈液を用いて600nmの光線波長の透過度を測定した。
(実施例6)透過度によるエタノール発酵液の発泡性の閾値の決定
サンプル2と同様にして調製した発酵液80mlをファルコン社製50mlポリプロピレンコニカルチューブに40mlずつ入れ、10000Gで60分遠心分離を行い、粒子と上清を分離した。沈降した粒子を3回水洗と遠心分離を行い、3回目の遠心分離終了後上清を捨て、東京理化器械株式会社製凍結乾燥器(FDU−1200)で乾燥させた。この時の乾燥重量は520mgであった。この粒子を水で希釈し、104mg/mlの溶液(粒子溶液)を調製した。10000Gで60分遠心分離した上清:粒子溶液が体積比で1000:0、997:3、970:30、900:100、800:200、700:300,600:400となるような溶液を調製した。参考例5の透過度の測定方法に従い、各溶液の600nmの光線波長の透過度の測定を行ったところ、それぞれ、97.6、97.3、91.8、85.9、84.5、83.0、81.9となった。それぞれの液で実施例5と同様の蒸留試験方法を行い、透過度と発泡の有無の解析を行った。その結果、600nmの光線波長の透過度91%Tを境界として、それ以上では液面から7cm以上の発泡が見られず、それ以下だと7cm以上発泡する結果が得られた。透過度の測定は発泡性を簡易的に測定できる方法と考えられる。
(実施例7)発酵液サンプルの透過度測定
参考例5の透過度の測定方法に従い、前述の発酵液サンプル1、サンプル2、サンプル3の測定を行った。その結果、600nmの光線波長の透過度はサンプル1では94.7%T、サンプル2では54.6%T、サンプル3では90.7%Tとなった。つまり、実際の発酵液サンプルでも600nmの光線波長の透過度が91%Tを境として、91%T超では実施例3、参考例5の通り、発泡は起こらず、一方、91%T以下では発泡が生じることを確認した。
本発明のエタノール製造方法により得られるエタノール発酵液、あるいは本発明で特定されるエタノール発酵液は、いわゆるバイオエタノールとしてサスティナブルな燃料または工業用原料として利用することができる。

Claims (8)

  1. 微生物をケーンモラセスを主成分として含む発酵原料で培養し、培養液を分離膜で濾過して微生物が分離されたエタノール含有濾過液を回収し、さらに微生物を含む未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ発酵原料を培養液に追加するエタノール連続発酵工程、および該連続発酵工程で回収されるエタノール含有濾過液を蒸留によりエタノール濃縮精製する工程を含むエタノールの製造方法において、前記微生物が前記培養液の遠心上清中に平均粒子径が100nm以上の粒子を含有せしめる微生物であり、前記エタノール含有濾過液に含まれる前記微生物培養により形成される粒子の平均粒子径が40〜80nmである、方法。
  2. 前記粒子の平均粒子径が300nm以上である、請求項1に記載のエタノールの製造方法。
  3. 前記微生物がシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属に属する酵母である、請求項1または2に記載のエタノールの製造方法。
  4. 前記エタノール含有濾過液に含まれる、前記微生物培養により形成される粒子の粒子径分布が粒子径20〜100nmの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
  5. 前記蒸留が連続式蒸留である、請求項1〜4のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
  6. 微生物培養により形成される該微生物以外の粒子として平均粒子径が40〜80nmの粒子を含み、バガスの水熱処理時の成分を含まない、エタノール発酵液。
  7. 前記粒子の粒子径分布が粒子径20〜100nmの範囲内である、請求項6に記載のエタノール発酵液。
  8. 300nmの光線波長の透過度が0.5±0.1%Tとなるように水で希釈した場合での、600nmの光線波長の透過度が91%T超である、エタノール発酵液。
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