JPWO2019044636A1 - リアソータントインフルエンザウイルスの段階的作出方法 - Google Patents

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Abstract

抗原株とドナー株が類似する抗原性を有する場合において、2種以上のインフルエンザウイルスのゲノム分節を持つリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法を提供する。抗原タンパク質(x)を含む第1のインフルエンザウイルス(1)、株(1)と類似する抗原性の抗原タンパク質(x')を有する第2のインフルエンザウイルス(2)、株(1)と異なる抗原性の抗原タンパク質(y)を有する第3のインフルエンザウイルス(3)を用い、株(2)と株(3)を宿主に感染させて共培養してリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該ウイルスから抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択し、次いで株(1)と前記選択した株(Y)を宿主に感染させて共培養し、株(1)と株(Y)から作出したリアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程による。

Description

本発明は、2種以上のインフルエンザウイルスのゲノム分節を有するリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法に関し、少なくとも2段階のリアソート工程を含むリアソータントインフルエンザウイルス作出方法に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2017−163114号優先権を請求する。
インフルエンザは毎年世界中で流行する感染症であり、インフルエンザウイルスにより引き起こされる。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属し、脂質二重膜構造をもつエンベロープを有する。A型、B型及びC型の3属に分類され、各々インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルスという。一般にインフルエンザウイルスは、特にA型又はB型を指す。A型、B型及びC型の違いは、ウイルス粒子を構成するタンパク質のうち、M1タンパク質とNPタンパク質の抗原性の違いに基づく。また、同じA型やB型であっても、エンベロープの表面上の分子である赤血球凝集素(ヘマグルチニン、以下「HA」と称する)やノイラミニダーゼ(以下「NA」と称する)の抗原性の違いから、複数の亜型と株に分類される。
インフルエンザウイルスは抗原変化を高い確率で受け、新型のインフルエンザウイルスを生み出す。A型インフルエンザウイルスは、それらのHA及びNAの抗原性に基づいて16種のHA(H1〜H16)亜型及び9種のNA(N1〜N9)亜型に分類される。A型インフルエンザウイルスの3種のHA(H1、H2及びH3)亜型は特に重要な病原体である。A型インフルエンザウイルスのH1N1亜型及びH3N2亜型は季節的に広まり、ヒト感染を引き起こす。2003年には、致死性が高いトリ由来のインフルエンザウイルスH5亜型がヒト病原体として発生した。2009年4月には、新型のインフルエンザウイルスとしてH1N1亜型ウイルスが発生し、ヒト集団において急速に蔓延している。インフルエンザはパンデミックの恐れもあることから、インフルエンザワクチンには量的な確保が求められている。
インフルエンザワクチンは、発育鶏卵を利用してインフルエンザウイルスを増殖させる方法が用いられている。また、培養細胞でインフルエンザウイルスを増殖させる方法も実用化されつつある。インフルエンザワクチン株は、感染症発生動向調査事業により得られた国内の流行状況、国内分離ウイルスについての抗原性や遺伝子解析の成績等の情報などに基づいて、次年度シーズンの流行予測を行い、選択される。しかしながら、株によっては培養上清の感染価が低い場合があり、増殖性の改善は重要な課題である。インフルエンザウイルスの増殖に発育鶏卵や培養細胞を利用する場合、インフルエンザウイルスの亜型や株によっては宿主におけるウイルスの増殖性が低下することが問題となっている。そこで、遺伝子組換え技術によって、宿主における増殖性が向上したインフルエンザウイルスの遺伝子組換え体を作出する試みがなされている。遺伝子組換え技術としては、リアソート法やリバースジェネティクス法(以下「RG法」と称する)が例示される。RG法の一つとして、ウイルスRNA(vRNA)を供給するための8種類のプラスミド(PolIプラスミド)と、ウイルス粒子を形成するために必要な構造タンパク質をコードする4種類の発現プラスミド(PolIIプラスミド)の合計12種類のプラスミドを同時に細胞に導入して、インフルエンザウイルスの遺伝子組換え体を作出する方法が挙げられる(非特許文献1)。
細胞培養インフルエンザワクチンにおいては、培養細胞で高増殖性を示すシードウイルスを用いることが望ましく、ワクチンの安定供給のためには当該シードウイルスを効率良く作出することが求められている。特許文献1には、抗原株と同一のインフルエンザウイルスA亜型からのバックボーン配列を有するヌクレオチドや、HA配列に弱毒化変異を導入したヌクレオチドを用いてRG法により作出した再集合ウイルスは、細胞で高増殖性を示したことが開示されている。しかしながら、RG法は、複数のプラスミドを同時に細胞に導入するため、宿主細胞にとって負担が大きい。また、各種プラスミド調製に時間を要するため、迅速な遺伝子組換え体作出が困難であるという問題がある。
インフルエンザウイルスの遺伝子組換え技術として、宿主に少なくとも2種以上のインフルエンザウイルスを共感染させ、増殖の過程でゲノム分節が交換され、再集合することで遺伝子組換え体を作出するリアソート法の検討が進められている。リアソート法により所望の抗原性を有するタンパク質をコードするゲノム分節と、所望のバックボーンのタンパク質をコードするゲノム分節を含むリアソータントインフルエンザウイルスの作出が試みられている。
リアソート法では、宿主に2種以上のインフルエンザウイルスが共感染し、増殖の過程でゲノム分節が交換され、再集合をすることにより、遺伝子組換え体が作出される(非特許文献2、3)。リアソート法によるインフルエンザウイルス遺伝子組換え体の作出は、鶏卵を宿主として行われていた。具体的には、PR8株等の高増殖性を有するドナー株と流行株(抗原株)を発育鶏卵に混合感染させることにより、高増殖性のバックボーン遺伝子と流行株の抗原遺伝子を併せ持つ遺伝子組換え体を作出する。しかしながら、発育鶏卵を宿主として利用したリアソート法では、必ずしも目的の遺伝子組換え体が作出できないという問題がある。そこで、インフルエンザウイルスの遺伝子組換え体を得る目的で、培養細胞を用いてリアソート法を行うことが検討されつつある。しかし、培養細胞を用いたリアソート法においても、必ずしも目的の遺伝子組換え体が作出できないことが懸念されている。特許文献2には、培養細胞を用いたリアソート法として、2種のインフルエンザウイルスを感染させた宿主に、ドナー株のHA及び/又はNAの転写や翻訳を阻害しうる阻害因子を接触させて、リアソータントインフルエンザウイルスを作出することが開示されている。
特許5686741号公報 国際公開WO2011/145081
Neumann et al.,PNAS Vol.102,p.16825−16829(1999) PLoS Pathog. 2015 Oct; 11(10): e1005204. J Virol. 1976 Oct;20(1):248−54.
本発明は、抗原株とドナー株が類似する抗原性を有する場合において、2種以上のインフルエンザウイルスのゲノム分節を持つリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法、及び得られたインフルエンザウイルスを提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも3種類のインフルエンザウイルスを用い、少なくとも2段階のリアソート工程を含む方法によれば、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成した。
本発明は、すなわち以下よりなる。
1.リアソータントインフルエンザウイルスの作出方法であって、以下に示す(1)〜(3)の少なくとも3種類のインフルエンザウイルスを用い、以下の工程(A)と工程(B)の少なくとも2段階のリアソート工程を含む事を特徴とする、抗原タンパク質(x)を含むインフルエンザウイルス(X)の作出方法:
(1)抗原タンパク質(x)を含む第1のインフルエンザウイルス;
(2)(1)のインフルエンザウイルスと類似する抗原性の抗原タンパク質(x')を有する第2のインフルエンザウイルス;
(3)(1)のインフルエンザウイルスと異なる抗原性の抗原タンパク質(y)を有する第3のインフルエンザウイルス:
工程(A)インフルエンザウイルス(2)と、インフルエンザウイルス(3)を宿主に感染させて共培養してリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択する工程;
工程(B)インフルエンザウイルス(1)と、前記工程(A)で作出したインフルエンザウイルス(Y)を宿主に感染させて共培養し、リアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程。
2.前記工程(A)のインフルエンザウイルス(2)と、インフルエンザウイルス(3)を共培養する前に、インフルエンザウイルス(3)に対して、初期感染能を有し、ウイルス増殖性が喪失又は低下する処理をする工程を含む、前項1に記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
3.前記工程(B)のインフルエンザウイルス(1)と、インフルエンザウイルス(Y)を共培養する前に、インフルエンザウイルス(1)に対して、初期感染能を有し、ウイルス増殖性が喪失又は低下する処理をする工程を含む、前項1又は2に記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
4.前記工程(A)における抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択する工程が、抗原タンパク質(x')に反応する抗体を接触させる工程を含む、前項1〜3のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
5.前記工程(B)における抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程が、抗原タンパク質(y)に反応する抗体を接触させる工程を含む、前項1〜4のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
6.前記工程(A)において、リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択することを含む、前項1〜5のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
7.前記工程(B)において、リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択することを含む、前項1〜6のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
8.前項1〜7のいずれかに記載の作出方法により作出された、インフルエンザウイルス(X)。
9.抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスの少なくとも2種類のインフルエンザウイルス由来のタンパク質を含み、前記抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスが類似する抗原性を有することを特徴とする、リアソータントインフルエンザウイルス。
本発明のリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法によれば、抗原株とドナー株が類似する抗原性を有する場合において、2種以上のインフルエンザウイルスのゲノム分節を持つリアソータントインフルエンザウイルスを作出することができる。
本発明のリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法の概念を示す図である。
本発明は、抗原株とドナー株が類似する抗原性を有する場合において、2種以上のインフルエンザウイルスのゲノム分節を持つリアソータントインフルエンザウイルスを作出する方法に関する。
インフルエンザウイルスは、脂質二重膜構造のエンベロープを有する。エンベロープの内層は主としてマトリックスタンパク質及びRNAとタンパク質の複合体であるRNPから成る。インフルエンザウイルスはPB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M及びNSの8本の遺伝子(ゲノム分節)を有し、外層には主要な抗原タンパク質であるNAやHAで覆われている。HA及びNAのゲノム分節は、それぞれHA及びNAの抗原タンパク質をコードし、それ以外のPB2、PB1、PA、NP、M及びNS分節の6本のゲノム分節は、バックボーンのタンパク質をコードする。
本明細書において抗原性を有するタンパク質(以下、抗原タンパク質)とは、HA及びNAをコードするゲノム分節のいずれかから発現されるタンパク質をいい、バックボーンのタンパク質(以下、バックボーンタンパク質)とは、PB2、PB1、PA、NP、M及びNS分節の6本のゲノム分節のいずれかから発現されるタンパク質をいう。本明細書において所望の抗原タンパク質をコードするゲノム分節を有するインフルエンザウイルスを抗原株という。また、本明細書において所望のバックボーンタンパク質をコードするゲノム分節を有するインフルエンザウイルスをドナー株という。
リアソート法においては、遺伝子組換え効率が低く目的の遺伝子組換え体が得られない確率が高いことが大きな課題である。一方、上記背景技術の欄に示した特許文献2では高増殖性のリアソータントインフルエンザウイルスを得るために約35日を要することが記載されている。つまりリアソート法においては、ウイルスそのものを用いて遺伝子組換え体を作出するため、プラスミドや細胞の準備に要する時間やコストをRG法より縮減できるものの、その遺伝子組換え効率の低さにより結果として目的の高増殖性のリアソータントインフルエンザウイルスを得るためには長期間を要することが懸念される。
本発明者は、リアソート法において目的の遺伝子組換え効率が得られない原因は、共感染したインフルエンザウイルスにおいて、増殖の過程で起こるゲノム分節交換を制御できないためであると考えた。そこで、所望の抗原性を有する第1のインフルエンザウイルスと高増殖性のバックボーンを有する第2のインフルエンザウイルスを用いてリアソート法で所望の抗原性を有し、高増殖性のインフルエンザウイルスを作出する際に、ウイルス初期感染能を有し、かつウイルス増殖性が喪失又は低下する処理を施した第1のインフルエンザウイルスと、第2のインフルエンザウイルスと共培養し、第1のインフルエンザウイルスの抗原性を有するウイルスを選択することで、早期にかつ効率良くリアソータントインフルエンザウイルスを作出することを検討した。ここで、ウイルス初期感染能を有し、かつウイルス増殖性を喪失又は低下させる処理としては、例えば紫外線照射が挙げられる。紫外線照射量としては、インフルエンザウイルスに対して初期感染能を有し、かつ当該インフルエンザウイルスの増殖性が喪失又は低下する照射量であればよい。
しかしながら既述の通り、インフルエンザは毎年世界中で流行する感染症であり、高い確率で抗原性の変化を受けるために、その年に流行するインフルエンザ株(以下、流行株)を予測することは難しい。所望の宿主における流行株の増殖性を向上させるために遺伝子組換えを試みた場合において、増殖性が優れたバックボーンタンパク質を有するドナー株と流行株が類似する抗原性を有する場合、従来のリアソート法では組換え体の作出が困難であることを本発明者は見出した。そこで、抗原株とドナー株が類似する抗原性を有する場合においてもリアソータントインフルエンザウイルスを作出できる方法が望まれている。そこで少なくとも3種類のインフルエンザウイルスを用い、少なくとも2段階のリアソート工程を含む方法によれば、リアソータントインフルエンザウイルスを作出しうることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、リアソータントインフルエンザウイルスの作出方法を用いたインフルエンザウイルスの作出方法であって、以下に示す(1)〜(3)の少なくとも3種類のインフルエンザウイルスを用い、以下の工程(A)と工程(B)の少なくとも2段階のリアソート工程を含む事を特徴とする、抗原タンパク質(x)を含むインフルエンザウイルス(X)の作出方法に関する(図1参照)。
本明細書における(1)〜(3)の少なくとも3種類のインフルエンザウイルスと、本発明のインフルエンザウイルス(X)、さらにインフルエンザウイルス(X)の作出の前に作出されるインフルエンザウイルス(Y)について説明する。本発明の目的とするインフルエンザウイルスは、所望の抗原タンパク質(x)を含み、所望のバックボーンタンパク質を有するインフルエンザウイルスである。
本明細書においてインフルエンザウイルス(1)は、所望の抗原タンパク質(x)を有する第1のインフルエンザウイルス(抗原株)である。本明細書においてインフルエンザウイルス(2)は、前記抗原タンパク質(x)と類似する抗原性の抗原タンパク質(x’)と所望のバックボーンタンパク質を有する第2のインフルエンザウイルス(ドナー株)である。本明細書においてインフルエンザウイルス(3)は、前記抗原タンパク質(x)と異なる抗原性の抗原タンパク質(y)を有する第3のインフルエンザウイルスである。
本明細書においてインフルエンザウイルス(Y)は、前記インフルエンザウイルス(2)と前記インフルエンザウイルス(3)を宿主に感染させて共培養して作出したリアソータントインフルエンザウイルスであって、抗原タンパク質(y)と所望のバックボーンタンパク質を有する再集合ドナー株をいう。
本明細書においてインフルエンザウイルス(X)は、前記インフルエンザウイルス(1)と前記インフルエンザウイルス(Y)を宿主に感染させて共培養して作出したリアソータントインフルエンザウイルスであって、所望の抗原タンパク質(x)と所望のバックボーンタンパク質を有する本発明の目的とするインフルエンザウイルスである。
本発明において得られる目的のインフルエンザウイルスであるインフルエンザウイルス(X)は、HA及びNAをコードするゲノム分節の少なくとも1つ(好ましくは、少なくともHAをコードするゲノム分節)がインフルエンザウイルス(1)に由来しており、それ以外のゲノム分節の少なくとも1つが、インフルエンザウイルス(2)に由来しているものである。
本発明の抗原タンパク質(x)を含むインフルエンザウイルス(X)の作出方法は、以下の工程(A)と工程(B)の少なくとも2段階のリアソート工程を含む事を特徴とする。
工程(A):インフルエンザウイルス(2)と、インフルエンザウイルス(3)を宿主に感染させて共培養してリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択する工程。
工程(A)−1:インフルエンザウイルス(3)の不活化工程
リアソータントインフルエンザウイルスの作出前において、インフルエンザウイルス(3)に対し、ウイルス初期感染能を有し、かつウイルス増殖性が喪失又は低下する処理を行う。具体的には、インフルエンザウイルス(3)に紫外線を照射し、インフルエンザウイルスを不活化する。紫外線の照射量は、紫外線照射後のインフルエンザウイルスが宿主への初期感染能は有しているが、感染後のウイルス増殖性が喪失又は低下している程度であることが好ましい。感染後のウイルス増殖性の喪失又は低下とは、第1のインフルエンザウイルスを単独で宿主に感染させた際に、宿主内でのウイルスの増殖性が確認されない、又は紫外線照射を行っていない第1のインフルエンザウイルスと比較してウイルス増殖性が低下していることを意味する。ウイルス増殖性は、ウイルス感染価、PFU(Plaque Forming Unit)等の公知の指標を用いて評価することができる。また、紫外線照射を行った後、第1のインフルエンザウイルスを宿主に感染させる場合は、宿主への感染能、すなわち初期感染能を有している必要がある。初期感染能がある状態とは、宿主が培養細胞である場合、紫外線照射したウイルスによるCPE(cytopathic effect)が観察されることを意味する。本工程では、Spectrolinker XL−1000(Spectronics Corporation)のTime Modeにおいて1〜60秒間、好ましくは5〜50秒間、更に好ましくは10〜40秒間、最も好ましくは10〜30秒間、紫外線照射を行った場合と同等の紫外線照射量を第1のインフルエンザウイルスに照射することが好ましい。かかるUV照射のために用いる装置(UV強度、光源からの距離等は以下実施例記載)及び照射時間等の照射条件は一例であり、当該照射条件と同程度の紫外線照射量となるのであれば、これらの条件は適宜調整・変更が可能である。上記条件の紫外線照射量であれば、宿主への初期感染能を有しているが、ウイルス増殖性が喪失又は低下しているインフルエンザウイルスを効率良く得ることができるため好ましい。本発明においては、宿主への初期感染能を有したまま、第1のインフルエンザウイルスのウイルス増殖性を喪失又は低下させることにより、宿主内での遺伝子組換え効率を向上させ得る。
工程(A)−2:リアソータントインフルエンザウイルスの作出工程
インフルエンザウイルス(2)とインフルエンザウイルス(3)のリアソータントインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルス(2)と前記紫外線照射したインフルエンザウイルス(3)とを宿主に感染させて共培養することにより作出することができる。
各インフルエンザウイルスの宿主への感染は、同時であっても良いし、同時でなくてもよい。好ましくは、インフルエンザウイルス(3)を宿主に感染させた後、インフルエンザウイルス(2)を感染させる。宿主へのインフルエンザウイルスの感染は、宿主とインフルエンザウイルスを接触させることにより行う。インフルエンザウイルス(3)は、好ましくは1×10−6〜10のmoi、更に好ましくは0.001〜1のmoi、更に好ましくは0.1〜1のmoiで宿主に接触させることが好ましい。インフルエンザウイルス(2)は、好ましくは0.001〜10のmoi、更に好ましくは0.01〜1のmoi、更に好ましくは0.1〜1のmoiで、宿主に接触させることが好ましい。従来は、宿主にインフルエンザウイルスを共感染させるには、高い濃度でウイルスを宿主に接触させて感染させる必要があった。しかしながら、本発明においては、低い濃度であってもインフルエンザウイルスが宿主に共感染し、遺伝子組換え体を効率良く作出可能である。なお、インフルエンザウイルス(3)のmoiは、紫外線を照射する前の値である。インフルエンザウイルスの感染価(TCID50/mL)は、国立感染症研究所著「インフルエンザ診断マニュアル(第3版、平成26年9月)」の「Part IV」(以下「参考文献1」と称する)に開示される方法に従って確認でき、moiは感染価を細胞数で割ることにより算出できる。
インフルエンザウイルス(3)とインフルエンザウイルス(2)が感染した宿主を培養して培養物を得る。本工程の培養により宿主内でインフルエンザウイルスがリアソートされる。宿主の培養条件、例えば培養温度等は、宿主内でインフルエンザウイルスが増殖可能な条件であればいかなる条件であってもよい。宿主が培養細胞である場合は、培養に用いる培地は液体培地が好ましい。液体培地にはしばしば動物由来の血清が添加されるが、動物由来の血清は目的のインフルエンザウイルスの増殖を阻害する因子を含む可能性が否定できないため、当該因子を含まない無血清培地を用いることがより好ましい。無血清培地としては、イーグルMEM培地(日水製薬株式会社)、Opti PRO SFM(Thermo Fisher Scientific)、VP−SFM(Thermo Fisher Scientific)、EX−CELL MDCK(SAFC Biosciences)、UltraMDCK(Lonza)、ProVero 1(Lonza)、BalanCD MDCK(Irvine Scientific)等が例示される。培養時間は、好ましくは1〜5日間、更に好ましくは2〜3日間程度である。本工程においては、培養後に培養物が得られる。当該培養物中には、宿主内でリアソートされたリアソータントインフルエンザウイルスが含まれる。リアソータントインフルエンザウイルスは、宿主が発育鶏卵の場合は尿膜腔液中に含まれており、宿主が培養細胞の場合は培養上清に含まれる。
工程(A)−3:インフルエンザウイルス(Y)の選択工程
工程(A)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)の選択は、培養物中のリアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x')を含むインフルエンザウイルスを失活することより達成される。抗原タンパク質(x')を含むインフルエンザウイルスの失活は、物理的手法、化学的手法、その他のいかなる手法を用いて達成してもよいが、好ましくは工程(A)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスを、抗原タンパク質(x')に反応する抗体で処理する事で達成される。上記得られた培養物そのものに、抗体で処理してもよい。
本工程に供する培養物中のウイルス量は、ウイルス感染価(TCID50/mL)と用量(mL)の積で表すことができる。培養物中に目的のリアソータントインフルエンザウイルスが含まれていれば、ウイルス量はいかなる値であってもよいが、好ましくは10TCID50以上、より好ましくは10TCID50以上、更に好ましくは10TCID50以上であることが好ましい。また、ウイルス量は、公知の手法による希釈又は濃縮によって適宜調整することができる。
抗体は、抗原タンパク質(x')と反応するものであればよく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。抗体として、インフルエンザウイルス(2)に対する抗血清を用いてもよい。抗血清は最終希釈倍率として、好ましくは2〜1000倍、更に好ましくは4〜10倍となる濃度で、培養物に添加することが好ましい。かかる濃度の範囲内であれば、インフルエンザウイルス(2)の抗原タンパク質と好適に反応し、当該抗原タンパク質を有するインフルエンザウイルスを効率的に失活できる。
インフルエンザウイルス(2)に対する抗血清は公知の手法により作製することができ、免疫血清であっても感染血清であってもよい。好ましくは感染血清が選択される。これらの抗血清は公知の手法により作製することができる。抗血清は、インフルエンザウイルス(2)を哺乳動物に投与又は感染させた後、当該哺乳動物の採血を行うことにより、得ることができる。例えば、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラットなどの哺乳動物に、インフルエンザウイルス(2)を免疫原として投与して免疫する。投与手段としては、腹腔内注射、静脈注射、皮下注射などが採用され、場合により皮内注射も採用される。追加免疫を数回繰り返し、最終免疫後3〜10日目に哺乳動物の採血を行い、免疫血清を得ることができる。また、例えばフェレットやマウスなどの哺乳動物にインフルエンザウイルス(2)を感染させることもできる。感染方法としては、噴霧接種や経鼻接種などの方法が採用される。感染10〜14日目以降に哺乳動物の採血を行い、感染血清を得ることができる。
得られた抗血清は、例えばRDE(Receptor Destroying Enzyme)処理、トリプシン処理、過ヨード酸カリ処理などの公知の手法によって、インフルエンザウイルス(2)由来抗原に非特異的な中和活性を失活させておくことが好ましい。
中和抗体の抗体価は事前に測定されていることが好ましい。抗体価は、例えば粒子凝集法(PA)、間接蛍光抗体法(IFA)、免疫付着赤血球凝集法(IAHA)、中和法(NT)、赤血球凝集抑制法(HI)、補体結合法(CF)、酵素免疫法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、ラテックス凝集比濁法(LA)等の公知の手法によって測定することができる。培養物のウイルス感染価が10〜10TCID50/100μLである実施形態では、HI法で測定した抗体価が10以上、好ましくは12.8以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは128以上を示す抗血清を使用することができる。かかる範囲内であれば、培養物中に存在するインフルエンザウイルス(2)の抗原タンパク質と中和抗体が好適に結合し、当該抗原タンパク質を有するインフルエンザウイルスを効率的に失活できる。
工程(A)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスを含む培養物を抗原タンパク質(x')に反応する抗体で処理し、抗原タンパク質(x')を含むインフルエンザウイルスが失活されたリアソータントインフルエンザウイルスを回収することで、目的のインフルエンザウイルス(Y)を回収することができる。具体的には、前記培養物と中和抗体の混合物を宿主に接触させ、感染した宿主を工程A)−2に示した好適な条件で培養し、目的のリアソータントウイルスを選択的に増殖させる。宿主が培養細胞である場合には、目的のリアソータントウイルスに起因するCPE(cyto pathic effect)が確認される。インフルエンザウイルス(Y)は、ゲノム分節を解析することで、より正確に選択することができる。ゲノム分節の解析方法は、公知の手法を用いることができる。
工程(B):インフルエンザウイルス(1)と、前記工程(A)で作出したインフルエンザウイルス(Y)を宿主に感染させて共培養し、リアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程。
工程(B)−1:インフルエンザウイルス(1)の不活化工程
工程(A)−1と同様に、リアソータントインフルエンザウイルスの作出前において、インフルエンザウイルス(1)に対し、ウイルス初期感染能を有し、かつウイルス増殖性が喪失又は低下する処理を行う。紫外線を照射し、インフルエンザウイルスを不活化する。ウイルス増殖性が喪失又は低下する処理条件は、工程(A)−1の条件を参照することができる。
工程(B)−2:リアソータントインフルエンザウイルスの作出工程
インフルエンザウイルス(1)とインフルエンザウイルス(Y)のリアソータントインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルス(Y)と前記紫外線照射したインフルエンザウイルス(1)とを宿主に感染させて共培養することにより作出することができる。共培養条件は、工程(A)−2の条件を参照することができる。
宿主へのインフルエンザウイルスの感染は、宿主とインフルエンザウイルスを接触させることにより行う。インフルエンザウイルス(1)は、好ましくは1×10−6〜10のmoi、更に好ましくは0.001〜1のmoi、更に好ましくは0.1〜1のmoiで宿主に接触させることが好ましい。インフルエンザウイルス(Y)は、好ましくは0.001〜10のmoi、更に好ましくは0.01〜1のmoi、更に好ましくは0.1〜1のmoiで、宿主に接触させることが好ましい。従来は、宿主にインフルエンザウイルスを共感染させるには、高い濃度のインフルエンザウイルスを宿主に接触させて感染させる必要があった。しかしながら、本発明においては、低い濃度のインフルエンザウイルスであっても宿主に共感染し、遺伝子組換え体を効率良く作出可能である。
インフルエンザウイルス(1)とインフルエンザウイルス(Y)が感染した宿主を培養して培養物を得る。培養条件は、工程(A)−2の条件を参照することができる。
工程(B)−3:インフルエンザウイルス(X)の選択工程
工程(B)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)の選択は、培養物中のリアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(y)を含むインフルエンザウイルスを失活することより達成される。抗原タンパク質(y)を含むインフルエンザウイルスの失活は、具体的には工程(B)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスを、抗原タンパク質(y)に反応する抗体で処理する事で達成される。上記得られた培養物そのものに、抗体で処理してもよい。抗体は、抗原タンパク質(y)と反応するものであればよく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。抗体として、インフルエンザウイルス(Y)に対する抗血清を用いてもよい。抗血清は最終希釈倍率として、好ましくは2〜1000倍、更に好ましくは4〜10倍となる濃度で、培養物に添加することが好ましい。かかる濃度の範囲内であれば、インフルエンザウイルス(Y)の抗原タンパク質と好適に反応し、当該抗原タンパク質を有するリアソータントインフルエンザウイルスを効率的に失活できる。なお、インフルエンザウイルス(Y)に対する抗血清はインフルエンザウイルス(2)に対する抗血清と同様の手法により作成し、入手することができる。
工程(B)−2で作出したリアソータントインフルエンザウイルスを含む培養物を抗原タンパク質(y)に反応する抗体で処理し、抗原タンパク質(y)を含むインフルエンザウイルスが失活されたリアソータントインフルエンザウイルスを回収することで、目的のインフルエンザウイルス(X)を回収することができる。具体的には、前記培養物と中和抗体の混合物を宿主に接触させ、感染した宿主を工程A)−2に示した好適な条件で培養し、目的のリアソータントウイルスを選択的に増殖させる。宿主が培養細胞である場合には、目的のリアソータントウイルスに起因するCPE(cyto pathic effect)が確認される。インフルエンザウイルス(X)は、ゲノム分節を解析することで、より正確に選択することができる。ゲノム分節の解析方法は、公知の手法を用いることができる。
本発明の作出方法において、インフルエンザウイルスの失活とは、当該インフルエンザウイルスの増殖性を抑制した状態のことを示す。増殖性の抑制とは、プラック法やTCID50法に代表される、一般的な感染価測定法により測定されるウイルスの感染価を検出限界以下に低下させ、かつ当該ウイルスを適切な基質で培養した場合に、培養2〜3日程度でも感染価が検出限界以下となる状態にすることをいう。増殖性を抑制する手段としては特に限定されないが、当該ウイルスの反応する抗体で処理することで達成される。
本明細書において、インフルエンザウイルスの遺伝子組換え体の作出のしやすさを、遺伝子組換え効率で示す。遺伝子組換え効率とは、リアソータントウイルス作出実験でプラークを単離した全クローン数に対する、インフルエンザウイルス(X)であるプラークのクローン数の割合を示す。リアソータントウイルス作出実験は、宿主に対して2種類のインフルエンザウイルスを感染させ、リアソータントインフルエンザウイルスを作出する実験を意味する。本発明の作出方法によれば遺伝子組換え効率が好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは100%を達成することができる。
本発明のインフルエンザウイルス(1)、(2)又は(3)は、特に限定されるものではなく、目的のリアソータントインフルエンザウイルスに応じて適宜選択することができる。例えば、現在知られているすべての亜型、及び将来単離、同定される亜型から選択してもよい。A型インフルエンザウイルスの場合、様々なHAの亜型とNAの亜型との組み合わせを含むインフルエンザウイルスが考えられる。B型インフルエンザウイルスの場合、ビクトリア系統と山形系統との組み合わせを含むインフルエンザウイルスが考えられる。
A型インフルエンザウイルスの各亜型は、RNAゲノムの変異性が高いため、新しい株が頻繁に生じている。2009年4月にメキシコでの流行が認知された後、世界的に流行したとされるインフルエンザは、新型インフルエンザ、ブタインフルエンザ、パンデミックインフルエンザA(H1N1)、swine flu、A/H1N1 pdmなどと呼ばれている。ブタの間で流行していたウイルスが、農場などでブタからヒトに直接感染し、その後ヒトの間で広まったとされる新型インフルエンザは、従前より存在していた季節性のAソ連型インフルエンザであるインフルエンザA型ウイルスH1N1亜型(以下「H1N1亜型」と称する)や、A香港型インフルエンザであるインフルエンザA型ウイルスH3N2亜型(以下「H3N2亜型」と称する)とは、区別される。またRNAゲノムの変異性が高いことから、インフルエンザA型ウイルスの同じ亜型の中でも、単離された時期や場所によって、ウイルスが区別されている。
B型インフルエンザウイルスは、非可逆的な抗原変異が続いているが、A型インフルエンザウイルスにおける変異よりも比較的遅く、流行の周期は2年程度である。B型インフルエンザウイルスは1940年ニューヨークにおける流行で初めて分離されて以来、たびたび流行を繰り返し、それによる死亡率の上昇も記録されている。ヒトの間でのみ感染が確認されているが、亜型は存在せず、山形系統とビクトリア系統という2つの系統のみが存在する。
本明細書において、インフルエンザウイルス(1)、(2)又は(3)として、現在単離、同定されている株であっても、将来単離、同定される株であってもよく、A型であっても、B型であってもよい。例えば、現在単離同定されている株としては、A型インフルエンザウイルスは、それらのHA及びNAの抗原性に基づいて16種のHA(H1〜H16)亜型及び9種のNA(N1〜N9)亜型に分類される。
インフルエンザウイルス(1)としては、所望の抗原タンパク質(x)を含む株であればよく、特に限定されない。例えば、ワクチン株として選定された株を用いることができる。具体的には、例えば平成27年度の株として選定されたA型株(A/カリフォルニア/7/2009(X−179A)(H1N1)pdm09、A/スイス/9715293/2013 (NIB‐88)(H3N2))やB型株(B/プーケット/3073/2013(山形系統)、B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統))が挙げられる。また今後選定されるあらゆる株であっても用いることができる。
インフルエンザウイルス(2)及び(3)については、各々抗原性タンパク質(y)や(x')の条件に合致する抗原タンパク質を有するインフルエンザウイルスであって、本発明の目的に合致するバックボーンタンパク質を有していることが好ましい。特に本発明の方法により作出したインフルエンザウイルス(X)をインフルエンザワクチン用のシードウイルスとして使用するために、インフルエンザウイルス(X)が所望の宿主において増殖性を有することが望まれる。特にインフルエンザウイルス(2)については、所望の宿主において増殖性が優れたバックボーンタンパク質を有していることが好適である。具体的には、宿主が鶏卵である場合はH1N1亜型であることが好ましい。H1N1亜型としては、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)等が例示される。一方、宿主が培養細胞である場合、特にMDCK細胞である場合は、H3N2亜型であることが好ましい。H3N2亜型としては、A/茨城/N12232/2012(H3N2)、A/広島/52/2005(H3N2)、A/パナマ/2007/99(H3N2)等が例示される。
インフルエンザウイルス(1)又は(3)としては、目的の抗原タンパク質を有する株を用いれば良く、特に限定はされない。現在単離、同定されている株であっても、将来単離、同定される株であっても良く、A型インフルエンザウイルスであっても、B型インフルエンザウイルスであっても良い。インフルエンザウイルス(1)、(2)又は(3)の具体例としては、A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1)pdm09、A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)、A/ソロモン諸島/3/2006(H1N1)、A/ブリスベン/59/2007(H1N1)、A/パナマ/2007/99(H3N2)、A/ワイオミング/3/2003(H3N2)、A/ニューヨーク/55/2004(H3N2)、A/広島/52/2005(H3N2)、A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)、A/ビクトリア/210/2009(H3N2)、A/ビクトリア/361/2011(H3N2)、A/テキサス/50/2012(H3N2)、A/ニューヨーク/39/2012(H3N2)、A/スイス/9715293/2013(H3N2)、A/ベトナム/1194/2004(H5N1)、A/インドネシア/5/2005(H5N1)、A/安徽/1/2005(H5N1)、A/上海/2/2013(H7N9)、A/安徽/1/2013(H7N9)、B/山東/7/97、B/上海/361/2002、B/マレーシア/2506/2004、B/フロリダ/4/2006、B/ブリスベン/60/2008、B/ウィスコンシン/1/2010、B/マサチュセッツ/2/2012、B/プーケット/3073/2013、B/テキサス/2/2013等が例示されるが、これらに限定されない。
本発明に用いるインフルエンザウイルスは、上述のような生体から分離されたインフルエンザウイルスの他、インフルエンザワクチンに適用可能なように、弱毒化、鶏卵増殖適合化、細胞培養増殖適合化、温度感受性表現形質化、粘膜投与適合化等の改変を加えて作出した組換えウイルスであっても良い。また、改変を加えるための手段として、インフルエンザウイルスの抗原部位やポリメラーゼ部位等の8本のRNA分節に変異を導入する方法や低温継代によって弱毒ウイルスを作出する方法、ウイルス培養系への変異誘発剤を添加することによる方法等が挙げられる。
本発明において、2つのインフルエンザウイルスが類似する抗原性を有する場合は、類似する抗原性を有する、と表現する。「類似する抗原性を有する」とは、一般的に当該ウイルスの抗原タンパク質同士に遺伝的な相違が少ないことを示す。抗原性の類似は、一般的にHI試験又は中和試験による抗原性解析によって調べることができる。具体的には、第1のウイルスに感染した動物又は当該ウイルスを用いて免疫された動物から得られた抗血清のホモ抗体価が、第2のウイルスに対する抗体価と2倍差以内であり、かつ第2のウイルスに感染した動物又は当該ウイルスを用いて免疫された動物から得られた抗血清のホモ抗体価が、第1のウイルスに対する抗体価と2倍差以内であるとき、第1のウイルスと第2のウイルスは類似する抗原性を有すると判定される。近年のH3N2亜型のウイルスの抗原性解析においては、この方法によって比較される抗体価が4倍差以内までのウイルス同士について、類似する抗原性を有すると判定することもある。
本発明の作出方法に用いられる宿主は、発育鶏卵であっても、培養細胞であってもよい。発育鶏卵を宿主として使用する場合、特定病原体除去(specific pathogen−free)(SPF)孵化鶏卵を使用することができる。
本発明の作出方法において、培養細胞を宿主として使用する場合、培養細胞はインフルエンザウイルスが感染して複製可能なものであればいかなるものであってもよい。培養細胞としては哺乳動物細胞が好ましく、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒト及びサルを含む)及びイヌの細胞が例示されるが、これらに限定されない。より具体的には、マディン−ダービーイヌ腎臓に由来するMDCK細胞、アフリカミドリザル腎臓に由来するVero細胞等が例示される。本発明におけるMDCK細胞は、さらに具体的には、国際寄託の受託番号NITE BP−02014で特定されるMDCK細胞である。かかる細胞は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に平成27年3月4日に受託番号NITE P−02014として国内寄託された後、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターにて、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管請求された。
本発明は、本発明のリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法により作出されるリアソータントインフルエンザウイルスにも及ぶ。本発明の作出方法により作出されるリアソータントインフルエンザウイルスは、抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスの少なくとも2種類のインフルエンザウイルス由来のタンパク質を含む。前記抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスは、類似する抗原性を有する場合がある。この ように、特に抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスが類似する抗原性を有する場合に、本発明の段階的リアソータントウイルス作出方法を適用することができる。
本発明の作出方法により作出されるリアソータントインフルエンザウイルスは、インフルエンザワクチンのシードウイルスとして用いることができる。リアソータントインフルエンザウイルスを精製する工程については、公知の手法又は今後開発されるいずれの手法も用いることができる。
本発明の理解を助けるために、以下に実施例及び参考例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例及び参考例に限定されない。
(実施例1)リアソート法によるインフルエンザウイルス(X)の作出
本実施例では、インフルエンザウイルス(1)〜(3)を用いた、2段階リアソート法によるインフルエンザウイルス(X)の作出方法を説明する。まず初めに、ドナー株としてインフルエンザウイルス(2)を用い、抗原株としてインフルエンザウイルス(3)を用いてリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、再集合ドナー株としてインフルエンザウイルス(Y)を選択した。次に、前記再集合ドナー株を用い、抗原株としてインフルエンザウイルス(1)を用いてインフルエンザウイルス(X)を作出した。以下、各インフルエンザウイルスについて、株(1)、株(2)、株(3)、株(Y)及び株(X)のように記載する。
1.株(X)を作出するための材料
a)使用ウイルス
株(1)〜(3)及び株(Y)の使用ウイルスを表1に示す。株(Y)は、ドナー株として株(2)、抗原株として株(3)を用いてリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、選択した株である。
b)ウイルス培養用培地
炭酸水素ナトリウム(20mM)、0.1×TrypLE Selectを含有するイーグルMEM培地を用いた。
宿主細胞として、国際寄託の受託番号NITE BP−02014で特定されるMDCK細胞を用いた。本実施例において、以下単に「MDCK細胞」ともいう。
ドナー株あるいはドナー株と類似した抗原性を持つインフルエンザウイルスの培養液を、10〜10TCID50/mL程度の濃度に調製し、その6mLをネブライザーによる噴霧でフェレットに感染させた。感染14日目に麻酔下の心採血を行い、採取した血液を常温にて1時間、36℃にて1時間、更に4℃にて24時間静置した。その後、約700×gで10分間、室温で遠心分離を行い、上清をフェレット感染血清として回収した。このフェレット感染血清を、等量のRDE(II)「生研」(デンカ生研)と混合して最終希釈倍率2倍にし、37℃にて18〜20時間静置の後、56℃にて1時間静置してRDEを不活化したものを、抗ドナー株血清として用いた。
2.株(X)の作出
1)まず初めに株(X)を作出する前の一段階目のリアソータント法により、株(Y)を作出した。株(Y)作出のためのドナー株として株(2)、抗原株として株(3)を用いた。ウイルス培養用培地を用いて、10TCID50/mLのドナー株(2)溶液を調製するとともに、10TCID50/mLの抗原株(3)溶液をそれぞれ調製した。インフルエンザウイルス濃度(感染価:TCID50/mL)は、参考文献1に開示される方法に従って確認した。
2)抗原株(3)溶液を3.5cmディッシュに2mLずつ分注した。Spectrolinker XL−1000(Spectronics Corporation、UV管は254nm、8W×5本)の中に、1)のディッシュを入れ、ディッシュの蓋を外して、500J/mのUV照射を行った。
3)25cmフラスコで、MDCK細胞をコンフルエント(約5×10細胞/フラスコ)になるまで培養し、培地を取り除いて2)にてUV照射した抗原株200μLを接種して34℃、5%COにて30分間培養した。その後、10mLのウイルス培養用培地を添加し、ドナー株(2)溶液200μLを接種した。
4)34℃、5%COにて2日間培養した。
5)得られた混合培養液100μLと、抗株(2)血清100μLを混合し、34℃にて1時間静置した。
6)新たな25cmフラスコでMDCK細胞を培養し、培地を10mLのウイルス培養用培地で交換し、上記5)にて抗株(2)血清にて処理した培養液200μL全量を接種した。
7)34℃、5%COにて2日間培養した。
8)得られた培養液を遠心分離(約8000×g、5分間)し、上清を回収した。
9)遠心上清をウイルス培養用培地で10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍に希釈し、MDCK細胞をコンフルエントまで培養した6−wellプレートに100μL/wellで接種した。接種は2枚のプレートに対して行った。
10)34℃、5%COにて30分間培養した。
11)0.8%アガロース含有MEM培地(グルタミン(4mM)、0.1×TrypLE Select含有)を3mL/well重層した。安全キャビネット内で乾燥させた後、インキュベーター内での培養を開始した。
12)34℃、5%COにて3日間培養した。
13)1.0%アガロース含有MEM培地(ニュートラルレッド含有)を2mL/well重層し、安全キャビネット内で乾燥した。
14)新たな6−wellプレートでMDCK細胞を培養し、2mL/wellのウイルス培養用培地で培地を交換し、各wellにプラークを単離し、株(Y)とした。
15)34℃、5%COにて3日間培養した。
16)単離したプラークの培養液を遠心分離(約8000×g、5分間)し、上清を−80℃にて保存した。得られたプラークの培養上清を株(Y)培養液とし、ウイルスRNAを抽出して遺伝子解析を行った。
17)次に、2段階目のリアソータント法により、本発明の目的産物である株(X)を作出した。ドナー株として株(Y)、抗原株として株(1)を用い、抗ドナー株血清が抗株(3)血清であるほかは、上記に示す株(Y)作出の場合と同手法にてプラークを得、プラークの培養上清を株(X)として作出した。
(試験例1)遺伝子解析結果
実施例1で作出した2段階リアソータント法によるインフルエンザウイルス(X)について、各々遺伝子解析を行った。表1のA〜Dの4種類の組合せで作出したインフルエンザウイルス(X)について、各々3クローンを遺伝子解析対象とした。遺伝子解析は、単離した各プラークの培養上清からRNAを抽出し、逆転写をしてcDNAを合成し、定法に従ってPCRによりウイルスの全ゲノム分節を増幅して簡易精製した。これを検体として遺伝子配列解析を行い、各ゲノム分節がドナー株と抗原株のどちらに由来するかを判定した。
プラークの遺伝子解析結果を、以下の表2に示した。下記の結果、全てのプラークを形成するインフルエンザウイルス(X)がリアソータントインフルエンザウイルスであることを確認した。HA及び多数のNAをコードするゲノム分節は株(1)に由来しており、それ以外のゲノム分節の少なくとも1つが株(Y)に由来していることを確認した。
(試験例2)感染価測定
得られたリアソータントインフルエンザウイルス(X)のうち幾つかと、親株として用いたインフルエンザウイルス(1)を、75cmフラスコでコンフルエントになるまで培養したMDCK細胞に接種した。ウイルス接種は、moi=0.001程度で行い、34℃、5%COにて3日間培養した後、培養上清を採取して感染価の測定を行った。
感染価の測定結果を、以下の表3に示した。。WTはWild Typeを示す。作製したリアソータントインフルエンザウイルス(X)の中には、親株ウイルス(表中のBackboneがWTのもの)よりも高い感染価を示すものがあった。
以上詳述したように、本発明のリアソータントインフルエンザウイルスの作出方法によれば、効率的に所望のゲノム分節が配置された遺伝子組換え体であるリアソータントインフルエンザウイルスが作出可能となる。本発明の方法によれば、高増殖性を示すインフルエンザウイルスを早期にかつ効率良く作出することができるため、インフルエンザワクチン用のシードウイルスを迅速に作出可能となる。

Claims (9)

  1. リアソータントインフルエンザウイルスの作出方法であって、以下に示す(1)〜(3)の少なくとも3種類のインフルエンザウイルスを用い、以下の工程(A)と工程(B)の少なくとも2段階のリアソート工程を含む事を特徴とする、抗原タンパク質(x)を含むインフルエンザウイルス(X)の作出方法:
    (1)抗原タンパク質(x)を含む第1のインフルエンザウイルス;
    (2)(1)のインフルエンザウイルスと類似する抗原性の抗原タンパク質(x')を有する第2のインフルエンザウイルス;
    (3)(1)のインフルエンザウイルスと異なる抗原性の抗原タンパク質(y)を有する第3のインフルエンザウイルス:
    工程(A)インフルエンザウイルス(2)と、インフルエンザウイルス(3)を宿主に感染させて共培養してリアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択する工程;
    工程(B)インフルエンザウイルス(1)と、前記工程(A)で作出したインフルエンザウイルス(Y)を宿主に感染させて共培養し、リアソータントインフルエンザウイルスを作出し、該リアソータントインフルエンザウイルスから抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程。
  2. 前記工程(A)のインフルエンザウイルス(2)と、インフルエンザウイルス(3)を共培養する前に、インフルエンザウイルス(3)に対して、初期感染能を有し、ウイルス増殖性が喪失又は低下する処理をする工程を含む、請求項1に記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  3. 前記工程(B)のインフルエンザウイルス(1)と、インフルエンザウイルス(Y)を共培養する前に、インフルエンザウイルス(1)に対して、初期感染能を有し、ウイルス増殖性が喪失又は低下する処理をする工程を含む、請求項1又は2に記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  4. 前記工程(A)における抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択する工程が、抗原タンパク質(x')に反応する抗体を接触させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  5. 前記工程(B)における抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択する工程が、抗原タンパク質(y)に反応する抗体を接触させる工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  6. 前記工程(A)において、リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(y)を有するインフルエンザウイルス(Y)を選択することを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  7. 前記工程(B)において、リアソータントインフルエンザウイルスから、抗原タンパク質(x)を有するインフルエンザウイルス(X)を選択することを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のインフルエンザウイルス(X)の作出方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の作出方法により作出された、インフルエンザウイルス(X)。
  9. 抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスの少なくとも2種類のインフルエンザウイルス由来のタンパク質を含み、前記抗原株インフルエンザウイルスとドナー株インフルエンザウイルスが類似する抗原性を有することを特徴とする、リアソータントインフルエンザウイルス。
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