JPWO2019044000A1 - メタマテリアル装置及びアンテナ装置 - Google Patents

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哲也 上田
伸之 久本
伸之 久本
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    • H01Q9/30Resonant antennas with feed to end of elongated active element, e.g. unipole

Abstract

メタマテリアル装置は、少なくとも1つの単位共振器(1)を備える。単位共振器(1)は、共振素子(21)と、一対の反射素子(22)とを備える。共振素子(21)は、第1及び第2の端部を有するストリップ形状を有し、第1及び第2の端部の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する。一対の反射素子(22)は、共振素子の第1及び第2の端部にそれぞれ接続され、共振素子(21)から各反射素子(22)を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる。単位共振器(1)は0次共振器として動作する。

Description

本発明は、メタマテリアルとして構成された少なくとも1つの単位共振器を備えるメタマテリアル装置及びアンテナ装置に関する。
メタマテリアルとは、電磁波の波長に比べて十分小さな単位構成要素(単位共振器)からなる電磁人工媒質もしくは構造体のことを表す。単位構成要素の形状及び配置を適切に決定することにより、実効誘電率、実効透磁率、及び屈折率など、メタマテリアルの巨視的なパラメータを操作することができる。従来、メタマテリアルの様々な応用例が提案されている。
例えば、特許文献1は、3次元的に周期的に配置された複数の単位セルを含む3次元メタマテリアルを開示している。特許文献1の3次元メタマテリアルにおいて、各単位セルは、単位セルの中央に配置された誘電体共振器と、誘電体共振器を包囲するように配置された複数の棒状導体と、誘電体共振器及び棒状導体を支持するホスト媒質とを備える。
特許文献2では、「カイラル(スパイラル)構造」のメタヘリカルアンテナの構成例、つまり誘電体基板に形成されたメタヘリカルアームにより、電力効率に優れたメタヘリカルアンテナが構成できることが開示されている。
国際公開第2013/133175号 特開2016−054454号公報
C. Menzel, et al., "Advanced Jones calculus for the classification of periodic metamaterials", Physical Review A, Vol. 82, p. 053811, November 2010
一般に、メタマテリアルの実効誘電率、実効透磁率、及び屈折率などのパラメータを効率的に操作するためには、動作周波数において単位共振器を共振させ、単位共振器を電磁波と強く相互作用させることが求められる。従来技術では、動作周波数において単位共振器を共振させるために、単位構成要素の寸法を動作波長又はその半分の長さに合わせる場合が多い。しかしながら、単位共振器を電磁波とより強く相互作用させるために、このような寸法上及び構造上の制約を受けることがない新規なメタマテリアル装置が求められる。
本発明の目的は、従来よりも電磁波と強く相互作用する少なくとも1つの単位共振器を備えるメタマテリアル装置及びアンテナ装置を提供することにある。
本発明の第1の態様に係るメタマテリアル装置によれば、
少なくとも1つの単位共振器を備えるメタマテリアル装置であって、
前記単位共振器は、
少なくとも1つのストリップ形状の部分素子を含む共振素子であって、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する共振素子と、
前記共振素子の前記部分素子の各端部にそれぞれ接続された複数の反射素子であって、前記部分素子から前記各反射素子を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる複数の反射素子とを備え、
前記単位共振器は0次共振器として動作する。
本発明の第2の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記共振素子は、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含み、
前記各直列LC共振回路の共振周波数は、前記メタマテリアル装置の動作周波数に一致するように設定される。
本発明の第3の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第2の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記各直列LC共振回路は、ストリップ導体と、互いに隣接する直列LC共振回路のストリップ導体の間に設けられたキャパシタとを備える。
本発明の第4の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第2の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記各直列LC共振回路はストリップ導体を備え、
前記各直列LC共振回路のストリップ導体の端部は、隣接する直列LC共振回路のストリップ導体の端部と容量結合するように形成される。
本発明の第5の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1〜第4のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
前記反射素子は、前記メタマテリアル装置の動作波長の4分の1の長さを有し、ミアンダ形状又は渦巻き形状を有する。
本発明の第6の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1〜第5のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
前記単位共振器は、カイラリティを有するように形成される。
本発明の第7の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第6の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記共振素子は、第1及び第2の端部を有するストリップ形状を有し、
前記単位共振器は螺線状に巻回される。
本発明の第8の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第6の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記単位共振器は、平坦な基板上に形成され、
前記共振素子は、前記基板の面内の任意の直線に対して非対称に形成される。
本発明の第9の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第8の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記共振素子は、前記基板の面内において屈曲又は湾曲したストリップ形状をそれぞれ有する複数の部分素子を含み、
前記各部分素子の一端は、前記複数の反射素子のうちの1つに接続され、前記各部分素子の他端は、他の前記部分素子に接続され、
前記共振素子は実質的に回転対称に形成される。
前記単位共振器は、平坦な基板上に形成され、
本発明の第10の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第6〜第9のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
前記単位共振器は、前記基板の互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、前記共振素子及び前記複数の反射素子をそれぞれ備える複数の部分共振器を含み、
前記複数の部分共振器の前記各共振素子は、互いに同じ形状を有し、前記各共振素子の回転対称の中心を通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成される。
本発明の第11の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1〜第10のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
前記メタマテリアル装置は、2次元アレイに配列された複数の単位共振器を含む。
本発明の第12の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第11の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記メタマテリアル装置は、入射する電磁波の偏波面を回転させる。
本発明の第13の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第11の態様に係るメタマテリアル装置において、
前記メタマテリアル装置は、入射する電磁波のエネルギーの一部を透過させ、前記入射する電磁波のエネルギーの残りの一部を反射する。
本発明の第14の態様に係るアンテナ装置によれば、
1つの単位共振器を備えるアンテナ装置であって、
前記単位共振器は、
第1及び第2の端部を有するストリップ形状を有する共振素子であって、前記第1及び第2の端部の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する共振素子と、
前記共振素子の第1の端部に接続された反射素子であって、前記共振素子から前記反射素子を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる反射素子とを備え、
前記共振素子の第2の端部に給電点が設けられ、
前記単位共振器は0次共振器として動作する。
本発明の一態様によれば、従来よりも電磁波と強く相互作用する少なくとも1つの単位共振器を備えるメタマテリアル装置及びアンテナ装置を提供することができる。
第1の実施形態に係る単位共振器1を含む第1の単位セル10Aを示す斜視図である。 図1の単位共振器1の展開図である。 半波長共振する伝送線路の電磁界強度を示す概略図である。 0次共振する伝送線路の電磁界強度を示す概略図である。 第1の実施形態に係る単位共振器1を含む第2の単位セル10Bを示す斜視図である。 第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201における磁界の強さ(電流分布)を示す図である。 第1の実施形態に係る単位共振器1における磁界の強さ(電流分布)を示す図である。 第1の実施形態の第2の比較例に係る単位共振器201Aを含む単位セル10Aを示す斜視図である。 第1の実施形態の第3の比較例に係る単位共振器201Bを含む単位セル10Aを示す斜視図である。 第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置の螺線半径に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の螺線半径に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置の螺線角に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の螺線角に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の測定システムを示す概略図である。 第1の実施形態の第1の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置を示す図である。 第1の実施形態の第2の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置を示す図である。 第1の実施形態の第4の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置を示す図である。 第1の実施形態の第5の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置を示す図である。 第1の実施形態の第1の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第4の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第1の実施形態の第2の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第5の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第1の実施形態の第1の変形例に係る単位共振器1Aを示す斜視図である。 第1の実施形態の第2の変形例に係る単位共振器1Bを示す斜視図である。 第2の実施形態に係る偏波選択板の動作を示す概略図である。 第2の実施形態の実施例に係る単位共振器を備えるメタマテリアル装置の、異なる偏波面を有する電磁波の透過係数を示すグラフである。 第2の実施形態の比較例に係る単位共振器を備えるメタマテリアル装置の、異なる偏波面を有する電磁波の透過係数を示すグラフである。 第3の実施形態に係る偏波回転板の動作を示す概略図である。 第4の実施形態に係る周波数選択板の動作を示す概略図である。 第5の実施形態に係る単位共振器1Cを含む第3の単位セル10Cを示す斜視図である。 図30の単位共振器1Cの構成を示す平面図である。 第5の実施形態の比較例に係る単位共振器201Cを含む第3の単位セル10Cを示す斜視図である。 第5の実施形態に係る単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置と、第5の実施形態の比較例に係る単位共振器201Cを備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第6の実施形態に係る単位共振器1Dの構成を示す平面図である。 第6の実施形態に係る単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の部分共振器1Da〜1Dcの相対角度φに対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第6の実施形態に係る単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の反射素子22の幅に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。 第6の実施形態の第1の変形例に係る単位共振器1DAの構成を示す平面図である。 第6の実施形態の第2の変形例に係る単位共振器1DBの構成を示す平面図である。 第6の実施形態の第3の変形例に係る単位共振器1DCの構成を示す平面図である。 第6の実施形態の第4の変形例に係る単位共振器1DDの構成を示す平面図である。 第6の実施形態の第5の変形例に係る単位共振器1DEの構成を示す平面図である。 図37〜図41の単位共振器1DA〜1DEをそれぞれ備える5つのメタマテリアル装置について、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。 第7の実施形態の第1の実施例に係るアンテナ装置40の構成を示す斜視図である。 第7の実施形態の第1の比較例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。 図43のアンテナ装置40のH面利得を示すグラフである。 図43のアンテナ装置40のE面利得を示すグラフである。 図44のアンテナ装置のH面利得を示すグラフである。 図44のアンテナ装置のE面利得を示すグラフである。 第7の実施形態の第2の実施例に係るアンテナ装置40Aの構成を示す斜視図である。 第7の実施形態の第2の比較例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。 図49のアンテナ装置40AのH面利得を示すグラフである。 図49のアンテナ装置40AのE面利得を示すグラフである。 図50のアンテナ装置のH面利得を示すグラフである。 図50のアンテナ装置のE面利得を示すグラフである。
第1の実施形態.
図1は、第1の実施形態に係る単位共振器1を含む第1の単位セル10Aを示す斜視図であり、図2は、図1の単位共振器1の展開図である。単位セル10Aは、X方向、Y方向、及びZ方向に沿って、長さd1、d2、及びd3をそれぞれ有する。単位セル10Aは、例えば、図2に示すように、ストリップ導体23及びキャパシタ24を含む共振素子21と、ミアンダライン構造の反射素子22とを備える複数の単位セル10Aを、X方向及びY方向に沿って2次元アレイとして配列することにより、メタマテリアル装置を構成する。本開示では、−Z方向の平面波の電磁波が各単位セルに入射するものとする。
図2において、単位共振器1は、共振素子21と、その両端にそれぞれ接続された一対のミアンダライン構造の反射素子22とを備える。共振素子21及び反射素子22は、例えばフレキシブル基板20に形成される。
共振素子21は、ストリップ形状を有し、その両端の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有する。共振素子21は、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含む。各直列LC共振回路は、長さl及び幅wを有する所定のインダクタンスを有するストリップ導体23と、互いに隣接する直列LC共振回路のストリップ導体23の間に設けられたキャパシタ24とを備える。キャパシタ24は、例えばチップキャパシタである。図2の場合、共振素子21は、10個のストリップ導体23と、11個のキャパシタ24とを含む。各直列LC共振回路の共振周波数は、メタマテリアル装置の動作周波数に一致するように設定される。これにより、共振素子21は実質的にゼロの実効透磁率を有し、従って、実質的にゼロの屈折率を有する。
各反射素子22は、メタマテリアル装置の動作波長の4分の1の長さを有することにより、共振素子21から各反射素子22を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる(つまり、短絡条件を満たす)ように構成される。反射素子22は、例えば、共振素子21の長さに比べて十分小さくなるように、矩形領域に含まれるミアンダ形状を有するストリップ導体である。
単位共振器1は、実質的にゼロの実効透磁率を有することと、共振素子21から各反射素子22を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになることとにより、0次共振器(後述)として動作する。
再び図1を参照すると、単位共振器1は、半径r及び螺線角θを有する螺線状に巻回される。これにより、単位共振器1はカイラリティを有する。図1は、単位セル10Aにおいて螺線の軸(Z軸に平行な軸)の方向が電磁波の伝搬方向(−Z方向)に一致する場合を示す。
本明細書では、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に一致する単位セルを、符号「10A」により示す。
次に、本開示のメタマテリアル装置の動作原理について説明する。
まず、カイラリティを有するカイラル媒質について説明する。
水に溶けた砂糖など、分子構造のもつ空間反転対称性の破れにより光学的な実像と虚像とが一致しない。つまり、電気磁気結合により、伝搬する光又は電磁波の偏波面を回転させる(光学活性という)媒質を「カイラル媒質」という。カイラル媒質を伝搬する電磁波に対する構成関係式は、次式のように表される。
Figure 2019044000
ここで、Eは電界強度であり、Dは電束密度であり、Hは磁界強度であり、Bは磁束密度であり、ε、μ、及びχはそれぞれ、誘電率、透磁率、及びカイラリティを表し、jは虚数単位を表す。一般に異方性媒質の場合には、誘電率ε、透磁率μ、及びカイラリティχはテンソル量となる。このようにカイラリティを有する媒質では、カイラリティχにより構成関係式に電界と磁界との結合項が現れ、複異方性媒質とも呼ばれる。
次に、カイラル構造を有するカイラルメタマテリアルについて説明する。
カイラル媒質は、原子及び分子のような微視的なスケールを有するものに限らない。大きなスケールであっても、ネジ、渦巻き、及び卍字形など、実像と虚像とが一致しない空間反転対称性の破れにより電気磁気結合が現れる構造を「カイラル構造」と呼ぶ。図1のように単位構成要素がカイラリティを有するメタマテリルは「カイラルメタマテリアル」と呼ばれる。単位構成要素の形状及び配列を適切に決定することにより、メタマテリアルの巨視的なパラメータとして、実効誘電率及び実効透磁率を所望値に設定し、さらに、実効カイラリティを所望値に設定することもできる。
カイラル構造は、例えば、以下のような応用を有する。
典型的なカイラル構造として、螺線構造が挙げられる。単体の螺線状の共振器を放射器として使用し、円偏波特性を有するヘリカルアンテナが実用化されている。単体のヘリカルアンテナに限らず、複数のヘリカルアンテナを周期的に配列したアンテナ装置も提案されている。アンテナ以外の応用例として、周波数選択性の反射板及び透過板への応用も提案されている。このような周波数選択性の反射板及び透過板は、特定の動作周波数あるいは特定の偏波特性をもつ入射波に対して、所望の方向に、所望の偏波回転特性をもつ反射波あるいは透過波を作り出す。カイラル構造は電磁散乱体として考えられる。
単体のヘリカルアンテナの場合でも、複数のヘリカルアンテナを配列したアンテナ装置の場合であっても、各要素がもたらす偏波回転角を増大させることによるメリットは大きい。例えば、ヘリカルアンテナの素子の単位長さあたりの偏波回転角を増大することにより、従来のヘリカルアンテナを小型化及び薄型化することが可能となる。
このように、外部電磁波とカイラル構造との相互作用を増大させて偏波回転角を大きくすることが期待されている。発明者は、実現する方法の一つとして、各ヘリカル構造のもつ共振状態に着目した。一本の金属細線からなる従来のヘリカル構造の場合、最低次の共振モードは、金属細線の全長が電磁波の動作波長の半分に一致する場合に得られ(半波長共振)、その次に低い共振モードは、金属細線の全長が電磁波の動作波長に一致する場合に得られる(一波長共振)。共振時には、金属の表面に大電流が流れ、共振器の内部及び近傍に蓄えられる電磁界も極大化する。その結果、外部電磁波とカイラル構造との相互作用が極大化する。このように、ヘリカル構造では、その長さ及び形状で決まる固有の共振周波数の付近において、入射電磁波とヘリカル構造との相互作用が極大化され、偏波回転効果も極大化される。
しかしながら、従来のカイラル構造は以下のような問題点を有する。
従来のカイラル構造に見られる半波長共振及び一波長共振の場合、共振時にカイラル構造内で定在波が生じ、電磁界分布に腹及び節が必ず現れる。カイラル構造が金属材料から構成されている場合、共振時に金属材料の表面を流れる電流分布にも腹及び節が現れる。カイラル構造に流れる電流自体の大きさは共振周波数付近で極大化されるものの、電磁界は共振モードの次数により所定の分布となるので、必ず、電磁界分布に対応して共振器内の電流分布に強弱が生じる。入射する電磁波に対して可能な限り大きな偏波回転を与えようとする場合、上記のような不均一な電流分布は、外部電磁波とカイラル構造との相互作用を高めることの妨げとなり、大きな偏波回転を与えることは困難である。発明者は、入射電磁波とカイラル構造との相互作用をさらに増大するためには、カイラル構造に沿って流れる電流が最大振幅の状態で一様に分布することが望ましいことを見出した。
次に、一様な電磁界分布及び電流分布をもたらす0次共振について説明する。
電磁界分布が腹及び節を持つ従来の共振器(半波長共振器及び一波長共振器など)に対して、電磁界分布及び電流分布が至る所で一様となる共振器は0次共振器である。0次共振器は、メタマテリアルの一種である右手/左手系複合伝送線路である有限長の伝送線路と、その両端に接続された一対の反射素子で構成することができる。右手/左手系複合伝送線路は、直列枝の直列LC共振回路とシャント枝の並列LC共振回路とから構成されるサブ波長サイズの単位セルからなり、一個もしくは複数個の単位セルを(準)周期的に並べた複合構造を有する。単位セルに含まれる直列及び並列の2種類の共振回路は、両端の反射素子が実現する条件(短絡または開放)により選択的に動作する。両端に接続される一対の反射素子がインピーダンス0(短絡端を意味する)である場合、各単位セルの直列枝に含まれる直列LC共振回路が選択的に動作する。このとき、各単位セルの直列枝のインピーダンスはほぼ全て0となる。その結果、各単位セルの直列枝には、一様な大きさ及び位相を有する大電流が流れる。つまり、両端短絡の場合の0次共振である。一方、両端のインピーダンスが無限大(開放端を意味する)である場合、各単位セルのシャント枝に含まれる並列LC共振回路が選択的に動作する。このとき、各単位セルのシャント枝のアドミタンスはほぼ全て0となる。その結果、各単位セルのシャント枝の両端には一様な大きさ及び位相を有する電圧がかかる。つまり、両端開放の場合の0次共振である。0次共振の場合、伝送線路に沿って一様な振幅及び位相を有する電磁界分布が得られるので、管内波長が無限大となり、位相定数(単位長さあたりの位相の変化量)βがゼロとなる。
図3は、半波長共振する伝送線路の電磁界強度を示す概略図である。図4は、0次共振する伝送線路の電磁界強度を示す概略図である。図3及び図4において、横方向は伝送線路に沿った位置を示し、縦方向は電磁界の強さを示す。
このように、伝送線路に沿って一様な電流あるいは電圧分布を形成する0次共振の原理を、所定の電磁界分布及び電流分布を有するカイラル構造に応用することにより、カイラル構造の偏波回転を増大する効果を期待できる。
次に、右手/左手系複合伝送線路を用いたカイラル構造について説明する。
右手/左手系複合伝送線路を螺旋形状に巻回することにより、カイラル構造が構成される。さらにその両端に一対の反射素子を接続することにより、カイラル0次共振器が構成される。ただし、伝送線路をカイラル構造として用いる場合、従来の金属細線からなるカイラル構造とは以下のように異なる。例えば、従来のカイラル構造が1本の金属細線からなるのに対して、伝送線路は、信号線と接地導体とを組み合わせた2端子対網である。伝送線路からなるカイラル構造は、互いに並列に設けられた、信号線に相当する回路部分と、接地導体に相当する回路部分とを備える。その結果、伝送線路からなるカイラル構造では、信号線に相当する回路部分に電流が流れるとき、接地導体に相当する回路部分において、信号線に相当する回路部分とは逆向きに同じ大きさの電流が流れる。従って、2つの回路部分に逆向きに同じ大きさの電流が流れることにより、これらの回路部分にそれぞれ入射した電磁波の散乱波が完全に打ち消しあう。2つの回路部分が幾何学的に非対称な構造を有するのであれば、これらの回路部分にそれぞれ入射した電磁波の散乱波が完全に打ち消しあうことはないが、互いに弱め合う影響は避けられない。また、信号線に相当する回路部分と比べて接地導体に相当する回路部分のサイズが大きい場合、遮蔽効果のある大きな導体が存在することは、電磁波とカイラル構造(電磁散乱体)との相互作用に寄与しない領域を増やすことに相当する。従って、偏波回転を増大する効果を大きくするために、接地導体に相当する回路部分を除去したカイラル構造を0次共振させる。
第1の実施形態に係る単位共振器1では、前述のように、共振素子21は、ストリップ形状を有し、その両端の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有する。従って、単位共振器1は、伝送線路から、接地導体に相当する回路部分を除去した構成を有する。単位共振器1には、シャント枝がなく、直列枝しか存在しないので、両端が反射素子22により短絡された0次共振器として直列共振動作を実現する。
図1の単位共振器1を備えるメタマテリアル装置は、単位共振器1が0次共振器として動作することにより、半波長共振器又は一波長共振器を単位共振器として備えた従来の電磁波装置よりも、電磁波と強く相互作用することができる。
また、図1の単位共振器1を備えるメタマテリアル装置は、単位共振器1を螺線状に巻回したことにより、カイラルメタマテリアルとして動作することができる。後述するように、図1の単位共振器1を備えるメタマテリアル装置を周波数選択性の透過板として用いた場合、従来の金属細線からなるカイラル周期構造と比べて偏波回転角が大幅に増大することを数値計算及び実際の測定により確認した。また、図1の単位共振器1を備えるメタマテリアル装置は、接地導体に相当する回路部分を含むカイラル構造の場合と比べても偏波回転角が増大することを数値計算及び実際の測定により確認した。
図5は、第1の実施形態に係る単位共振器1を含む第2の単位セル10Bを示す斜視図である。図5は、単位セル10Bにおいて螺線の軸(Y軸に平行な軸)の方向が電磁波の伝搬方向(−Z方向)に直交する場合を示す。後述するように、複数の単位セル10Bを2次元アレイとして配列したメタマテリアル装置もまた、図1の単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と同様に、従来よりも電磁波と強く相互作用することができ、また、カイラルメタマテリアルとして動作することができる。また、単位セル10Bは、X方向、Y方向、及びZ方向に沿って、長さd1、d2、及びd3をそれぞれ有する。
本明細書では、前述のように、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に平行である単位セルを、符号「10A」により示し、また、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に直交する単位セルを、符号「10B」により示す。
複数の単位共振器1の単位セルを配列したメタマテリアル装置において、各単位共振器1の配向及び配列を適切に選択することにより、メタマテリアル装置の全体のパラメータ(実効誘電率、実効透磁率、及びカイラリティなど)を所望値に設定することができる。各単位共振器1を周期的に配列する場合、異方性が顕著に現れる。一方、各単位共振器1を配向及び配列のうちの少なくとも一方に関してランダムに配列する場合、等方性のカイラリティを得ることもできる。各単位共振器1を周期的に配列する場合も、各単位共振器1をランダムに配列する場合も、用途に応じて、複数の単位共振器1を1次元的、2次元的、あるいは3次元的に配列することができる。
次に、図6〜図15を参照して、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置について行った数値計算の結果について説明する。
まず、数値計算のためのモデルを設定する。単位セル10Aの4つの側面に周期境界条件を課すことで、X方向及びY方向に無限の大きさの格子構造を有する2次元アレイを設定した。この2次元アレイをメタマテリアル装置と呼ぶ。各単位セル10Aのサイズ(すなわち周期)を、d1=d2=50mmに設定した。平面波の電磁波が単位セル10Aの上面から下面に向かって入射するように設定した。従って、各単位セル10Aにおいて螺線の軸が電磁波の伝搬方向に一致する。各単位セル10Aにおいて、単位共振器1以外の部分は自由空間とした。単位共振器1の構成パラメータは、以下の通りであった。
ストリップ導体23の長さ:l=6mm
ストリップ導体23の幅:w=2mm
ストリップ導体23の厚さ:t=18μm
キャパシタ24の容量:C=0.8pF
反射素子22の全長:59mm
反射素子22の幅:0.5mm
反射素子22の外形寸法:lm×wm=14.5mm×9.0mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=25度
螺線状に巻回された共振素子21のZ方向の長さ:0.26λ(λ:動作波長)
また、第1の実施形態の第1の比較例として、図6に示すようなストリップ導体の共振素子のみからなる単位共振器201を備える電磁波装置のモデルを設定した。単位共振器201は従来の半波長共振器である。単位共振器201を含む各単位セルのサイズ(周期)もまた、単位セル10Aのサイズと同様に、d1=d2=50mmに設定した。単位共振器201の構成パラメータは、以下の通りであった。
共振素子の全長:65.5mm
共振素子の幅:2mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=23度
螺線状に巻回された共振素子21のZ方向の長さ:0.23λ(λ:動作波長)
図6は、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201における磁界の強さ(電流分布)を示す図である。図7は、第1の実施形態に係る単位共振器1における磁界の強さ(電流分布)を示す図である。比較のため、これらの単位共振器1及び201に、ほぼ同じ構成パラメータと、ほぼ同じ動作周波数とを設定した。図6からわかるように、半波長共振器である単位共振器201の場合、単位共振器201の素子中央付近で電流強度が最大となっている。また、素子の両端に近づくにつれて電流の強度は弱まり、最終的に端部ではゼロとなっている。一方、図7によれば、0次共振器である単位共振器1の場合、共振素子21の至る所で電流の大きさはほぼ一定であり、最大値に維持されていることがわかる。
次に、偏波回転角の算出方法について説明する。
カイラリティによる偏波回転は、カイラル媒質における左右の円偏波の透過特性の差から生じる。非特許文献1によれば、円偏波で伝搬する電磁波の透過特性Tcirは、直線偏波で伝搬する電磁波の透過特性を用いて次式のように表すことができる。
Figure 2019044000
ここで、以下の表記を用いる。
++:右円偏波が入射したときにおける右円偏波成分の透過係数
+−:右円偏波が入射したときにおける左円偏波成分の透過係数
−+:左円偏波が入射したときにおける右円偏波成分の透過係数
−−:左円偏波が入射したときにおける左円偏波成分の透過係数
xx:x方向の直線偏波が入射したときにおけるx方向の直線偏波成分の透過係数
yx:x方向の直線偏波が入射したときにおけるy方向の直線偏波成分の透過係数
xy:y方向の直線偏波が入射したときにおけるx方向の直線偏波成分の透過係数
yy:y方向の直線偏波が入射したときにおけるy方向の直線偏波成分の透過係数
このとき、偏波回転角φは次式で与えられる。
Figure 2019044000
以下に説明するように、この式を用いてメタマテリアル装置の透過波の偏波回転角を評価した。
第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置と、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置とにおいて、以下のような偏波回転角が得られた。単位共振器201を備えた電磁波装置では、共振周波数2.44GHzにおいて偏波回転角2.72度が得られた。一方、単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、共振周波数2.42GHzにおいて偏波回転角12.5度が得られた。従って、0次共振器である単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の偏波回転角は、半波長共振器である単位共振器201を備える電磁波装置の偏波回転角に比べて約4.6倍に増大することがわかった。
次に、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含む場合及び含まない場合のメタマテリアル装置の偏波回転角について説明する。
図8は、第1の実施形態の第2の比較例に係る単位共振器201Aを含む単位セル10Aを示す斜視図である。単位共振器201Aは、互いに並列に設けられた2つの回路部分を備え、一方の回路部分は第1の実施形態に係る単位共振器1の共振素子21(図2を参照)と同様に構成され、他方の回路部分はストリップ導体のみからなる。言い換えると、単位共振器201Aは、信号線とともに接地導体からなる伝送線路を螺線状に巻回した構成、すなわち、信号線に相当する回路部分と、接地導体に相当する回路部分とを備える。単位共振器201Aの両端において、2つの回路部分は互いに短絡されている。
図9は、第1の実施形態の第3の比較例に係る単位共振器201Bを含む単位セル10Aを示す斜視図である。単位共振器201Bは、互いに並列に設けられた2つの回路部分を備え、これらの回路部分の両方が、第1の実施形態に係る単位共振器1の共振素子21(図2を参照)と同様に、すなわち、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含む線路として構成される。単位共振器201Bの両端において、2つの回路部分は互いに短絡されている。
数値計算において、単位共振器201Aの及び201Bの各構成パラメータには、第1の実施形態に係る単位共振器1の対応する部分のものと同じ値を設定した。
前述のように、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、共振周波数2.42GHzにおいて偏波回転角12.5度が得られた。一方、図8の単位共振器201Aを備える電磁波装置では、共振周波数3.14GHzにおいて偏波回転角1.33度が得られた。また、図9の単位共振器201Bを備える電磁波装置では、共振周波数3.86GHzにおいて偏波回転角1.86度が得られた。以上のことから、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置、すなわち、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含む単位共振器201A及び201Bを備える電磁波装置に比べて、数倍大きな偏波回転角が得られることがわかった。
ここで、3種類の単位共振器1、201A、及び201Bをそれぞれ備えたメタマテリアル装置及び電磁波装置の共振周波数が互いに異なることに注意する。このうち、単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の共振周波数が最も小さく、他の単位共振器201A及び201Bを備える電磁波装置の共振周波数はより高い。波長比で換算すると、相対的に、単位共振器201A及び201Bのサイズが単位共振器1よりも大きいので、より大きな偏波回転が起きるはずであると考えられる。しかしながら、実際には、単位共振器201A及び201Bを備える電磁波装置では、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置の場合と同程度の偏波回転角しか得られていない。以上のことから、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の構造を採用することにより、偏波回転角を増大させる効果は明らかである。第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、図8の単位共振器201A及び図9の単位共振器201Bを備える電磁波装置とは異なり、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を除去しているので、より大きな偏波回転角が得られている。
次に、螺旋状に巻回された単位共振器の螺線半径及び螺線角を変化させたときの偏波回転角の変化について説明する。
図10は、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置の螺線半径に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図11は、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の螺線半径に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図10及び図11の数値計算では、螺線角はθ=25度に固定し、螺線半径のみを4mmから20mmまで変化させた。他の構成パラメータは、上述の数値計算で用いたものと同じ値に設定した。図11によれば、螺線半径r=10mmのとき、偏波回転角が極大となることがわかる。
図12は、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置の螺線角に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図13は、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の螺線角に対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図12及び図13の数値計算では、螺線半径をr=10mmに固定し、螺線角のみを変化させた。他の構成パラメータは、上述の数値計算で用いたものと同じ値に設定した。図13によれば、螺線角θ=25度のとき、偏波回転角が極大となることがわかる。
第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置では、螺線半径及び螺線角を変化させても、偏波回転角は最大で3度程度である。一方、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、螺線半径及び螺線角を最適に設定すれば、偏波回転角の大きさを最大20度まで増加できることがわかる。
次に、上述したものより大きな偏波回転角を有するように設定された代替の単位共振器1のモデルについて説明する。
図14は、第1の実施形態(実施例)に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。図14の数値計算では、図1と同様に、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に一致する単位セル10Aを用いた。
図14の数値計算では、単位共振器1の構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Aのサイズ:d1=d2=25mm
ストリップ導体23の長さ:l=6mm
ストリップ導体23の幅:w=2mm
ストリップ導体23の厚さ:t=18μm
キャパシタ24の容量:C=1.7pF
反射素子22の全長:15mm
反射素子22の幅:1.0mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=25度
また、図14の数値計算では、単位共振器201の構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Aのサイズ:d1=d2=25mm
共振素子の全長:69.5mm
共振素子の幅:2mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=25度
図14によれば、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置では、周波数2.8GHzにおいて偏波回転角7.31度が得られた。一方、第1の実施形態(実施例)に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、周波数2.44GHzにおいて偏波回転角33.6度が得られた。従って、この場合もまた、0次共振器である単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の偏波回転角は、半波長共振器である単位共振器201を備える電磁波装置の偏波回転角に比べて約4.6倍に増大した。
図15は、第1の実施形態(実施例)に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。図15の数値計算では、図5と同様に、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に直交する単位セル10Bを用いた。
図15の数値計算では、単位共振器1の構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Bのサイズ:d1×d2=25mm×55mm
ストリップ導体23の長さ:l=6mm
ストリップ導体23の幅:w=2mm
ストリップ導体23の厚さ:t=18μm
キャパシタ24の容量:C=0.7pF
反射素子22の全長:14mm
反射素子22の幅:1.0mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=25度
また、図15の数値計算では、単位共振器201の構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Bのサイズ:d1×d2=25mm×35mm
共振素子の全長:69.5mm
共振素子の幅:2mm
螺線半径:r=10mm
螺旋角:θ=25度
図15によれば、第1の実施形態の第1の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置では、周波数2.48GHzにおいて偏波回転角1.48度が得られた。一方、第1の実施形態(実施例)に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置では、周波数2.68GHzにおいて偏波回転角32.1度が得られた。従って、図15の場合もまた、0次共振器である単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の偏波回転角は、図14の場合と同程度に増大していることがわかる。
次に、図16〜図22を参照して、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置を実際に作成し、その特性を実際に測定した結果について説明する。
図16は、第1の実施形態に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置の測定システムを示す概略図である。図16のメタマテリアル装置100は、X方向及びY方向に沿って2次元アレイとして配列された複数の単位共振器1を備える。送信アンテナ31及び受信アンテナ32はネットワークアナライザに接続され、メタマテリアル装置100は、送信アンテナ31及び受信アンテナ32の間に測定試料として配置される。送信アンテナ31及び受信アンテナ32は、例えばホーンアンテナである。送信アンテナ31及び受信アンテナ32の偏波方向を変更しながら電波を送受信することにより、メタマテリアル装置100の直線偏波の透過特性Txx、Tyx、Txy、及びTyyを測定した。これにより、メタマテリアル装置100の偏波回転角を実際に測定した。
図17は、第1の実施形態の第1の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置を示す図である。図17のメタマテリアル装置は、複数の単位共振器1、複数の円柱部材2、及びベース部材3を備えた。複数の単位共振器1は、複数の円柱部材2の周りにそれぞれ螺旋状に巻回された。複数の単位共振器1及び複数の円柱部材2は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向(Z方向)に一致するように、板状のベース部材3の上に配置された。図17の例では、5個×4個の単位共振器1及び円柱部材2を、d11×d12=125mm×100mmの範囲に配置した。図17の各単位共振器1には、図14を参照して説明したものと同じ構成パラメータを設定した。
図18は、第1の実施形態の第2の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置を示す図である。図18のメタマテリアル装置は、複数の単位共振器1、複数の円柱部材2、及びベース部材3を備えた。複数の単位共振器1及び複数の円柱部材2は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向(Z方向)に直交するように、板状のベース部材3の上に配置された。図18の例では、3個×4個の単位共振器1及び円柱部材2を、d11×d12=165mm×100mmの範囲に配置した。図18の各単位共振器1には、図15を参照して説明したものと同じ構成パラメータを設定した。
図19は、第1の実施形態の第4の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置を示す図である。図19の電磁波装置は、複数の単位共振器201、複数の円柱部材202、及びベース部材203を備えた。複数の単位共振器201は、複数の円柱部材202の周りにそれぞれ螺旋状に巻回された。複数の単位共振器201及び複数の円柱部材202は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向(Z方向)に一致するように、板状のベース部材203の上に配置された。図19の例では、5個×4個の単位共振器201及び円柱部材202を、d11×d12=125mm×100mmの範囲に配置した。図19の各単位共振器201には、図14を参照して説明したものと同じ構成パラメータを設定した。
図20は、第1の実施形態の第5の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置を示す図である。図20の電磁波装置は、複数の単位共振器201、複数の円柱部材202、及びベース部材203を備えた。複数の単位共振器201及び複数の円柱部材202は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向(Z方向)に直交するように、板状のベース部材203の上に配置された。図20の例では、4個×4個の単位共振器201及び円柱部材202を、d11×d12=140mm×100mmの範囲に配置した。図20の各単位共振器201には、図15を参照して説明したものと同じ構成パラメータを設定した。
図17〜図20の円柱部材2,202及びベース部材3,203として、例えばスチロールからなるものを用いた。単位共振器1,201は、ストリップ導体23として両面テープ上に配置された銅薄膜を備え、さらに、互いに隣接する銅薄膜の間にハンダで接続されたチップキャパシタをキャパシタ24として備えた。
図21は、第1の実施形態の第1の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第4の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。すなわち、図21は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に一致する場合である、図17のメタマテリアル装置(第1の実施例)と、図19の電磁波装置(第4の比較例)とについて、偏波回転角の周波数特性を示す。第4の比較例では、周波数2.68GHzにおいて偏波回転角9.1度が得られた。なお、図19の電磁波装置と同じ構成パラメータを設定して数値計算を行った場合、図14を参照して前述したように周波数2.8GHzにおいて共振周波数7.31度が得られたので、偏波回転角の周波数特性は、数値計算と実際の測定とで比較的に良く一致していることがわかる。一方、第1の実施例では、周波数2.37GHzにおいて偏波回転角32.5度が得られた。なお、図17のメタマテリアル装置と同じ構成パラメータを設定して数値計算を行った場合、図14を参照して前述したように2.44GHzにおいて偏波回転角33.6度が得られたので、偏波回転角の周波数特性は、数値計算と実際の測定とで同程度になることがわかる。以上のことから、0次共振器である単位共振器1を備える第1の実施例のメタマテリアル装置の偏波回転角は、半波長共振器である単位共振器201を備える第4の比較例の電磁波装置の偏波回転角に比べて大幅に増大することが実験でも実証された。
図22は、第1の実施形態の第2の実施例に係る単位共振器1を備えるメタマテリアル装置と、第1の実施形態の第5の比較例に係る単位共振器201を備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。すなわち、図22は、螺線状の単位共振器の軸が電磁波の伝搬方向に直交する場合である、図18のメタマテリアル装置(第2の実施例)と、図20の電磁波装置(第5の比較例)とについて、偏波回転角の周波数特性を示す。第5の比較例では、周波数2.42GHzにおいて偏波回転角3.56度が得られた。なお、図20の電磁波装置と同じ構成パラメータを設定して数値計算を行った場合、図15を参照して前述したように周波数2.48GHzにおいて偏波回転角1.48度が得られたので、偏波回転角の周波数特性は、数値計算と実際の測定とで同程度になることがわかる。一方、第2の実施例では、周波数2.595GHzにおいて偏波回転角31.9度が得られた。なお、図18のメタマテリアル装置と同じ構成パラメータを設定して数値計算を行った場合、図15を参照して前述したように周波数2.68GHzにおいて偏波回転角32.1度が得られたので、偏波回転角の周波数特性は、数値計算と実際の測定とで比較的に良く一致していることがわかる。以上のことから、0次共振器である単位共振器1を備える第2の実施例のメタマテリアル装置の偏波回転角は、半波長共振器である単位共振器201を備える第5の比較例の電磁波装置の偏波回転角に比べて大幅に増大することが実験でも実証された。
図23は、第1の実施形態の第1の変形例に係る単位共振器1Aを示す斜視図である。図1の単位共振器1では、反射素子22のサイズを小さくするために、ミアンダ形状を有するストリップ導体を用いたが、反射素子22の形状はこれに限定されない。反射素子22は、動作波長の4分の1の長さを有し、共振素子21の両端において短絡する条件を満足しさえすれば、任意の形状を有してもよい。例えば、図23の単位共振器1Aのように、渦巻き形状を有する反射素子22Aを備えてもよい。また、反射素子22,22Aは、金属材料で構成される必要はなく、誘電体で構成されてもよい。
図24は、第1の実施形態の第2の変形例に係る単位共振器1Bを示す斜視図である。単位共振器1Bは、チップキャパシタである図2のキャパシタ24に代えて、インターディジタルキャパシタのように分布定数キャパシタであるキャパシタ24Bを備えてもよい。単位共振器1Bの共振素子21Bにおいて、各直列LC共振回路はストリップ導体23Bを備え、各直列LC共振回路のストリップ導体23Bの端部は、隣接する直列LC共振回路のストリップ導体23Bの端部と容量結合するように形成される。図24の単位共振器1Bによれば、チップキャパシタを単位共振器に実装する必要がなく、導体パターンのみで単位共振器1Bを製造できるので、その製造を簡単化することができる。
また、図2の単位共振器1では、共振素子21の各直列LC共振回路は、所定のインダクタンスを有するストリップ導体23を備えていたが、インダクタンスを有する素子はこれに限定されない。ストリップ導体23に代えて、チップインダクタを用いてもよい。
また、第1の実施形態に係る単位共振器は、螺線以外の形状を有してもよい。単位共振器は、カイラリティを生じることができるのであれば、例えば渦巻き形状など、平面形状を有してもよい。
以上説明したように、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、螺旋状に巻回された0次共振器である単位共振器1を備えたことにより光学活性を増大し、この0次共振により、従来の半波長共振器を備える電磁波装置と比べて偏波回転度が大きく増大したことを確認した。これにより、カイラル構造を利用した様々なデバイスの特性改善が期待される。
第2の実施形態.
図25は、第2の実施形態に係る偏波選択板の動作を示す概略図である。図25に示すように、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100は、入射する電磁波のエネルギーの一部を電磁波の偏波面に応じて選択的に透過又は反射する偏波選択板として動作してもよい。
ここで、図26及び図27を参照して、単位共振器による電磁波の透過及び反射について説明する。
図26は、第2の実施形態の実施例に係る単位共振器を備えるメタマテリアル装置の、異なる偏波面を有する電磁波の透過係数を示すグラフである。図26では、電磁波の伝搬方向に対して垂直な基板に沿って、図2と同様の単位共振器1を形成し、共振素子21の長手方向に直交する偏波面を有する平面波(Tx)と、共振素子21の長手方向に沿った偏波面を有する平面波(Ty)とを単位共振器1に向けて放射した場合を示す。
図27は、第2の実施形態の比較例に係る単位共振器を備えるメタマテリアル装置の、異なる偏波面を有する電磁波の透過係数を示すグラフである。図27では、電磁波の伝搬方向に対して垂直な基板に沿って、直線状のストリップ導体からなる半波長共振器を形成し、半波長共振器の長手方向に直交する偏波面を有する平面波(Tx)と、半波長共振器の長手方向に沿った偏波面を有する平面波(Ty)とを半波長共振器に向けて放射した場合を示す。
図26及び図27によれば、共振素子21又は半波長共振器の長手方向に直交する偏波面を有する平面波(Tx)は、いずれも、よく透過している。一方、図27によれば、半波長共振器の長手方向に沿った偏波面を有する平面波(Ty)は、半波長共振器によって反射されて−46.3dBまで減衰しているのに対して、図26によれば、共振素子21の長手方向に沿った偏波面を有する平面波(Ty)は、単位共振器1によって反射されて−48.2dBまで減衰している。従って、半波長共振器に代えて単位共振器1を用いることにより、半波長共振器よりも良好に電磁波を反射することができる。
図26及び図27を参照して説明した結果は、図1等に示すように単位共振器1を巻回した場合にも同様にあてはまる。
第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100を用いることにより、半波長共振器及び一波長共振器などを備えたメタマテリアル装置よりも、入射する電磁波のエネルギーを良好に反射する偏波選択板を提供することができる。
第3の実施形態.
図28は、第3の実施形態に係る偏波回転板の動作を示す概略図である。図28に示すように、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100は、入射する電磁波の偏波面を角度φにわたって回転させる偏波回転板として動作してもよい。第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100を用いることにより、半波長共振器及び一波長共振器などを備えたメタマテリアル装置よりも、入射する電磁波の偏波面を良好に回転する偏波回転板を提供することができる。
第4の実施形態.
図29は、第4の実施形態に係る周波数選択板の動作を示す概略図である。図29に示すように、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100は、入射する電磁波のエネルギーの一部を透過させ、入射する電磁波のエネルギーの残りの一部を反射する周波数選択板として動作してもよい。メタマテリアル装置100は、入射する電磁波のエネルギーの一部を透過させるとき、その偏波面を角度φ1にわたって回転させる。また、メタマテリアル装置100は、入射する電磁波のエネルギーの残りの一部を反射するとき、その偏波面を角度φ2にわたって回転させる。第1の実施形態に係るメタマテリアル装置100を用いることにより、半波長共振器及び一波長共振器などを備えたメタマテリアル装置よりも、入射する電磁波の周波数成分を良好に分離する周波数選択板を提供することができる。
第5の実施形態.
第1の実施形態では、カイラリティを得るために、単位共振器を螺旋状に巻回した。しかしながら、前述のように、卍字形及び渦巻きなどの平面構造物もカイラル構造を有する。第5の実施形態では、カイラル構造を有する平坦な単位共振器を備えるメタマテリアル装置について説明する。
図30は、第5の実施形態に係る単位共振器1Cを含む第3の単位セル10Cを示す斜視図である。単位共振器1Cは、平坦な基板20C上に形成される。図30は、単位セル10Cにおいて基板20Cの面(XY面に平行な面)が電磁波の伝搬方向(−Z方向)に直交する場合を示す。基板20Cは、例えば誘電体からなる。また、単位セル10Cは、X方向、Y方向、及びZ方向に沿って、長さd1、d2、及びd3をそれぞれ有する。
本明細書では、単位共振器が形成された基板の面が電磁波の伝搬方向に直交する単位セルを、符号「10C」により示す。
図31は、図30の単位共振器1Cの構成を示す平面図である。単位共振器1Cは、1つの共振素子21C及び複数の反射素子22を備える。
共振素子21Cは、少なくとも1つのストリップ形状の部分素子を含み、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有する。共振素子21Cは、基板20Cの面内において屈曲又は湾曲したストリップ形状をそれぞれ有する複数の部分素子、図31の例では4つのアーム26を含む。図31の例では、共振素子21Cは卍字形に形成される。各アーム26は、図2の共振素子21と同様に、ストリップ導体23及びキャパシタ24を含む。各アーム26の一端は、複数の反射素子22のうちの1つに接続され、各アーム26の他端は、中心導体25を介して他のアーム26に接続される。共振素子21Cは、中心Oの周りにおいて実質的に回転対称に形成される。これにより、共振素子21Cは、基板20Cの面内の任意の直線に対して非対称に形成される。
図31の各反射素子22は、図2の反射素子22と同様に構成される。各反射素子22は、共振素子21Cの各アーム26の各端部にそれぞれ接続され、各アーム26から各反射素子22Cを見たときのインピーダンスが実質的にゼロになるように構成される。
単位共振器1Cもまた、図1等の単位共振器1と同様に0次共振器として動作する。従って、単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置もまた、半波長共振器又は一波長共振器を単位共振器として備えた従来の電磁波装置よりも、電磁波と強く相互作用することができる。また、共振素子21Cが基板20Cの面内の任意の直線に対して非対称に形成されたことにより、単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置もまた、カイラルメタマテリアルとして動作することができる。
次に、図32〜図33を参照して、第5の実施形態に係るメタマテリアル装置について行った数値計算の結果について説明する。
数値計算において、単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置の構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Cのサイズ:d1×d2=45mm×45mm(動作波長の0.34倍)
基板20Cの厚さ:0.8mm
単位共振器1Cの導体の厚さ:0.5mm
図32は、第5の実施形態の比較例に係る単位共振器201Cを含む第3の単位セル10Cを示す斜視図である。単位共振器201Cは、卍字形のストリップ導体のみを含む。数値計算において、単位共振器201Cの構成パラメータは、以下の通りであった。
単位セル10Cのサイズ:d1×d2=35mm×35mm(動作波長の0.24倍)
基板20Cの厚さ:0.8mm
単位共振器1Cの導体の厚さ:0.5mm
図33は、第5の実施形態に係る単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置と、第5の実施形態の比較例に係る単位共振器201Cを備える電磁波装置とについて、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。図33によれば、第5の実施形態の比較例に係る単位共振器201Cを備える電磁波装置では、周波数2.08GHzにおいて偏波回転角0.44度が得られた(図33の点線)。一方、第5の実施形態(実施例)に係る単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置では、周波数2.28GHzにおいて偏波回転角3.49度が得られた(図33の実線)。従って、この場合、0次共振器である単位共振器1Cを備えるメタマテリアル装置の偏波回転角は、単位共振器201を備える電磁波装置の偏波回転角に比べて約7.9倍に増大した。
第5の実施形態によれば、平坦な単位共振器1Cを用いることにより、第1の実施形態の場合よりもメタマテリアル装置の製造を簡単化することができる。
図30の例では、単位共振器1Cは、4つのアーム26を有し、卍字形(又はテトラスケリオン(tetraskelion)ともいう)に形成された共振素子21Cを備えていたが、他の形状に形成された共振素子を用いてもよい。例えば、3つのアームを有するトリスケリオン(triskelion)、5つのアームを有するペンタスケリオン(pentaskelion)、6つのアームを有するヘキサスケリオン(hexaskelion)、及び同様の形状を有する共振素子を使用可能である。
図30の例では、共振素子21Cの各アーム26が90度に屈曲する場合を示したが、各アームは他の角度に屈曲してもよく、図40〜図41と同様に湾曲していてもよい。
第6の実施形態.
第6の実施形態でもまた、カイラル構造を有する平坦な単位共振器を備えるメタマテリアル装置について説明する。
図34は、第6の実施形態に係る単位共振器1Dの構成を示す平面図である。基板20Dは、少なくとも1つの誘電体層及び複数の導体層を有する多層基板である。単位共振器1Dは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子21D及び複数の反射素子22をそれぞれ備える複数の部分共振器1Da〜1Dcを含む。複数の部分共振器1Da〜1Dcの各共振素子21Dは、互いに同じ形状を有し、各共振素子21Dの回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度φだけずれて形成される。
図34の例では、各部分共振器1Da〜1Dcは図31の単位共振器1Cと同様に構成され、共振素子21Dは図31の共振素子21Cと同様に構成される。
単位共振器1Dのカイラリティは、部分共振器1Da〜1Dcの相対角度φに応じて変化する。また、単位共振器1Dの0次共振の状態は、反射素子22の全長に応じて変化する。次に、これらのパラメータを変化させることにより、単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を最大化することについて説明する。
最初のステップとして、部分共振器1Da〜1Dcの相対角度φを変化させ、偏波回転角を最大化する角度φを求める。このステップは、螺旋状に巻回された単位共振器の場合における単位共振器の螺線角(又はピッチ)を調整することに対応する。この角度φを固定し、次のステップとして、反射素子22の全長を変化させ、偏波回転角を最大化する長さを求める。このステップは、角度φを調整した結果、単位共振器1Dの全体の実効的なパラメータが変化したので、最適な0次共振を実現するように反射素子22を再調整することが必要になったので実行される。反射素子22の全長は、前述のように、メタマテリアル装置の動作波長の4分の1の長さを実効的に有するように決められる。
次に、図35〜図36を参照して、単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を最大化するように行った数値計算の結果について説明する。
数値計算において、各単位セル10Cのサイズは、d1×d2=40mm×40mmであった。また、単位共振器1Dの構成パラメータは以下の通りであった。
各共振素子21Dのストリップ導体23の長さ:l=3mm
各共振素子21Dのストリップ導体23の幅:w=1mm
各共振素子21Dのストリップ導体23の厚さ:t=18μm
各共振素子21Dのキャパシタ24の容量:C=2pF
部分共振器1Da〜1Dc間の間隔:2mm
基板20Dの比誘電率:ε=2.6
図35は、第6の実施形態に係る単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の部分共振器1Da〜1Dcの相対角度φに対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図35は、部分共振器1Da〜1Dcの相対角度φを8度から16度まで変化させたときの偏波回転角の変化を示す。図35によれば、角度φ=11度のとき、偏波回転角は最大化されることがわかる。この角度φを固定し、次に、反射素子22の全長を調整した。
図36は、第6の実施形態に係る単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置の反射素子22の幅wmに対する偏波回転角の変化を示すグラフである。図34の例では、反射素子22はミアンダライン構造を有するので、反射素子22の外形寸法lm×wmのうち、長さlm=5mmを固定し、幅wmのみを変化させることによって、反射素子22の全長を調整した。ミアンダライン構造の折り返し回数は、図34に示す通り、5回のまま維持された。図36は、反射素子22の幅wmを6.4mmから7.2mmまで変化させたときの偏波回転角の変化を示す。図36によれば、幅wm=6.64mmのとき、偏波回転角は最大値67.9度になることがわかる。
図35及び図36によれば、偏波回転角を最大化するように、部分共振器1Da〜1Dcの最適な相対角度φと、各反射素子22の最適な全長とを求めることができる。
単位共振器1Dもまた、図1等の単位共振器1と同様に0次共振器として動作する。従って、単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置もまた、半波長共振器又は一波長共振器を単位共振器として備えた従来の電磁波装置よりも、電磁波と強く相互作用することができる。また、複数の部分共振器1Da〜1Dcの各共振素子21Dが互いに所定角度φだけずれて形成されることにより、単位共振器1Dを備えるメタマテリアル装置もまた、カイラルメタマテリアルとして動作することができる。
次に、図37〜図42を参照して、第6の実施形態の変形例に係る単位共振器を備えたメタマテリアル装置について説明する。
図37は、第6の実施形態の第1の変形例に係る単位共振器1DAの構成を示す平面図である。単位共振器1DAは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子及び複数の反射素子をそれぞれ備える部分共振器1DAa〜1DAbを含む。図37の例では、各部分共振器1DAa〜1DAbの共振素子は、直線状に、すなわち線対称に形成される。従って、各部分共振器1DAa〜1DAb自体はカイラリティを持たない。ただし、部分共振器1DAa〜1DAbの各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DAの全体はカイラリティを有する。
図38は、第6の実施形態の第2の変形例に係る単位共振器1DBの構成を示す平面図である。単位共振器1DBは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子及び複数の反射素子をそれぞれ備える部分共振器1DBa〜1DBbを含む。図37の例では、各部分共振器1DBa〜1DBbの共振素子は、十字形に、すなわち線対称に形成される。従って、各部分共振器1DBa〜1DBb自体はカイラリティを持たない。ただし、部分共振器1DBa〜1DBbの各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DBの全体はカイラリティを有する。
図39は、第6の実施形態の第3の変形例に係る単位共振器1DCの構成を示す平面図である。単位共振器1DCは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子及び複数の反射素子をそれぞれ備える複数の部分共振器1DCa〜1DCbを含む。各部分共振器1DCa〜1DCbは図31の単位共振器1Cと同様に構成される。従って、図31の単位共振器1Cと同様に、部分共振器1DCa〜1DCb自体がカイラリティを有する。ただし、部分共振器1DCa〜1DCbの各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DCの全体は、各部分共振器1DCa〜1DCbのものよりも大きなカイラリティを有する。
図40は、第6の実施形態の第4の変形例に係る単位共振器1DDの構成を示す平面図である。単位共振器1DDは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子及び複数の反射素子をそれぞれ備える複数の部分共振器1DDa〜1DDbを含む。各部分共振器1DDa〜1DDbは、図31の単位共振器1Dのように屈曲した4つのアームに代えて、湾曲した4つのアームを備える。従って、図31の単位共振器1Dと同様に、部分共振器1DDa〜1DDb自体がカイラリティを有する。ただし、部分共振器1DDa〜1DDbの各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DDの全体は、各部分共振器1DDa〜1DDbのものよりも大きなカイラリティを有する。
図41は、第6の実施形態の第5の変形例に係る単位共振器1DEの構成を示す平面図である。単位共振器1DEは、基板20Dの互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、共振素子及び複数の反射素子をそれぞれ備える複数の部分共振器1DEa〜1DEbを含む。各部分共振器1DEa〜1DEbは、図40の単位共振器1DDの湾曲した4つのアームに代えて、湾曲した6つのアームを備える。従って、図40の単位共振器1DDと同様に、部分共振器1DEa〜1DEb自体がカイラリティを有する。ただし、部分共振器1DEa〜1DEbの各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DEの全体は、各部分共振器1DEa〜1DEbのものよりも大きなカイラリティを有する。
単位共振器1DA〜1DEもまた、図34の単位共振器1Dと同様に0次共振器として動作する。従って、単位共振器1DA〜1DEのいずれかを備えるメタマテリアル装置もまた、半波長共振器又は一波長共振器を単位共振器として備えた従来の電磁波装置よりも、電磁波と強く相互作用することができる。また、複数の部分共振器の各共振素子が互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DA〜1DEのいずれかを備えるメタマテリアル装置もまた、カイラルメタマテリアルとして動作することができる。
次に、図42を参照して、単位共振器1DA〜1DEのいずれかを備えるメタマテリアル装置について行った数値計算の結果について説明する。単位共振器1DA〜1DEをそれぞれ備える5つのメタマテリアル装置の偏波回転角を比較した。
動作波長に対する単位共振器1DA〜1DEのサイズをそろえるため、単位セル10Cのサイズを45〜55mmの範囲において、また、動作周波数を約2.2〜約2.4GHzの付近において、できるだけ同じ値になるように選択した。単位共振器1DAの単位セル10Cのサイズは、d1×d2=50mm×50mmであった。単位共振器1DBの単位セル10Cのサイズは、d1×d2=55mm×55mmであった。単位共振器1DCの単位セル10Cのサイズは、d1×d2=40mm×40mmであった。単位共振器1DDの単位セル10Cのサイズは、d1×d2=40mm×40mmであった。単位共振器1DEの単位セル10Cのサイズは、d1×d2=45mm×45mmであった。各単位共振器1DA〜1DEの2つの部分共振器の相対角度は、10度であった。0次共振の周波数を合わせるようにキャパシタ24の容量を調整し、最適な0次共振の状態を達成するように反射素子22の全長を調整した。
図42は、図37〜図41の単位共振器1DA〜1DEをそれぞれ備える5つのメタマテリアル装置について、偏波回転角の周波数特性を示すグラフである。
まず、図37の単位共振器1DA及び図38の単位共振器1DBをそれぞれ備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を比較する。前述のように、単位共振器1DA,1DBの各部分共振器の共振素子は線対称に形成されるので、それ自体ではカイラリティを持たない。部分共振器の各共振素子が、各共振素子の回転対称の中心Oを通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成されることにより、単位共振器1DA,1DBの全体がカイラリティを有する。単位共振器1DA,1DBの違いは、単位共振器1DAの各部分共振器1DAa〜1DAbが直線状の(すなわち、中心Oに接続された2つのアームを有する)共振素子を備えるのに対して、単位共振器1DBの各部分共振器1DBa〜1DBbが十字形の(すなわち、4つのアームを有する)共振素子を備える、ということにある。図42によれば、単位共振器1DAを備えるメタマテリアル装置は、2.48GHzの動作周波数において4.25度の偏波回転角を達成する。一方、単位共振器1DBを備えるメタマテリアル装置は、2.2GHzの動作周波数において10.3度の偏波回転角を達成する。この結果から、共振素子のアームの個数を増やすことにより偏波回転角が増大することがわかる。
次に、図38の単位共振器1DB及び図39の単位共振器1DCをそれぞれ備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を比較する。前述のように、単位共振器1DBの各部分共振器の共振素子は線対称に形成されるので、それ自体ではカイラリティを持たない。一方、単位共振器1DBの各部分共振器の共振素子は、基板20Dの面内の任意の直線に対して非対称に形成されるので、それ自体でカイラリティを有する。図42によれば、単位共振器1DBを備えるメタマテリアル装置は、2.2GHzの動作周波数において10.3度の偏波回転角を達成する。一方、単位共振器1DCを備えるメタマテリアル装置は、2.34GHzの動作周波数において17.2度の偏波回転角を達成する。単位共振器1DCを備えるメタマテリアル装置では、部分共振器1DCa〜1DCbの相対角度に起因するカイラリティに加えて、部分共振器1DCa〜1DCbの共振素子自体のカイラリティが存在することにより、単位共振器1DBを備えるメタマテリアル装置よりも偏波回転角が増大している。
次に、図39の単位共振器1DC及び図40の単位共振器1DDをそれぞれ備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を比較する。図42によれば、単位共振器1DCを備えるメタマテリアル装置は、2.34GHzの動作周波数において17.2度の偏波回転角を達成する。一方、単位共振器1DDを備えるメタマテリアル装置は、2.24GHzの動作周波数において20.7度の偏波回転角を達成する。これは、単位共振器1DDを備えるメタマテリアル装置では、各部分共振器1DDa〜1DDbの共振素子が湾曲したアームを備えたことにより、単位共振器1DCを備えるメタマテリアル装置よりも、共振素子自体のカイラリティが増大し、偏波回転の効果が増大したからであると考えられる。
次に、図40の単位共振器1DD及び図41の単位共振器1DEをそれぞれ備えるメタマテリアル装置の偏波回転角を比較する。図42によれば、単位共振器1DDを備えるメタマテリアル装置は、2.24GHzの動作周波数において20.7度の偏波回転角を達成する。一方、単位共振器1DEを備えるメタマテリアル装置は、2.16GHzの動作周波数において22.8度の偏波回転角を達成する。単位共振器1DA,1DBをそれぞれ備えるメタマテリアル装置の場合と同様に、各共振素子が屈曲したアームに代えて湾曲したアームを備える場合でも、共振素子のアームの個数を増やすことにより偏波回転角が増大することがわかる。
図42によれば、単位共振器1DA〜1DEをそれぞれ備える5つのメタマテリアル装置の偏波回転角を比較すると、これらのメタマテリアル装置は、昇順に増大する偏波回転角度を有する。
なお、単位共振器1DE,1DEをそれぞれ備えるメタマテリアル装置について、アームの個数の増加に伴う偏波回転角の増大の効果が小さいのは、すべてのアームにおいて電磁界が集中せず、アームの個数を増やしてもカイラリティを増大させる効果が小さくなっていることに起因する。つまり、アームの個数の増大に伴う偏波回転角の増大には限りがある。従って、所望の偏波回転角に応じて、アームの適切な個数を決定することができる。
第7の実施形態.
第1の実施形態で説明した0次共振する単位共振器1の構造は、線状アンテナにも適用可能である。これにより、線状アンテナの放射利得及び指向性を従来技術よりも改善することができる。
図43は、第7の実施形態の第1の実施例に係るアンテナ装置40の構成を示す斜視図である。図43のアンテナ装置40は、接地導体42の上に、共振素子21及び反射素子22を備える1つの単位共振器を備える。共振素子21は、ストリップ形状を有し、その両端の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する。共振素子21は、ストリップ導体23及びキャパシタ24をそれぞれ備える、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含む。共振素子21は直線状に形成される。反射素子22は、共振素子21の一方の端部に接続され、共振素子21から反射素子22を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになるように構成される。共振素子21の他方の端部には給電点が設けられ、給電点は同軸ケーブルを介して無線信号源41に接続される。アンテナ装置40は、第1の実施形態に係る単位共振器1と同様に0次共振器として動作し、これにより、高い効率で電磁波を送受信することができる。
次に、図43のアンテナ装置40について行った数値計算の結果について説明する。数値計算において、アンテナ装置40の構成パラメータは、以下の通りであった。
アンテナ装置40の動作周波数:0.96GHz
ストリップ導体23の長さ:l=4.6mm
キャパシタ24の容量:C=4pF
直列LC共振回路の個数:15個
共振素子21の全長:d21=75mm=0.24λ(λ:動作波長)
図45は、図43のアンテナ装置40のH面利得を示すグラフである。図46は、図43のアンテナ装置40のE面利得を示すグラフである。水平面内における平均の放射利得(図45)は5.79dBiであり、ビーム半値幅(図46)は68度であった。VSWR=2以下の帯域(すなわち、リターンロスが−10dB以下になる帯域)は0.08GHzであった(比帯域8.3%)。
図44は、第7の実施形態の第1の比較例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図44のアンテナ装置は、接地導体42の上に設けられた4分の1波長の線状導体からなるアンテナ素子240を備える。アンテナ素子240の一端には給電点が設けられ、給電点は同軸ケーブルを介して無線信号源41に接続される。
図44のアンテナ装置についても数値計算を行った。数値計算において、アンテナ素子240の全長d22=75mmを設定し、アンテナ装置の動作周波数を0.96GHzに設定した。
図47は、図44のアンテナ装置のH面利得を示すグラフである。図48は、図44のアンテナ装置のE面利得を示すグラフである。水平面内における平均の放射利得は5.16dBiであり、ビーム半値幅は76度であった。VSWR=2以下の帯域は0.11GHzであった(比帯域11.4 %)。
図45〜図48を比較すると、図43のアンテナ装置40は、0次共振するアンテナ装置40の一様な電流分布のためにアンテナ装置40の実効サイズが大きくなり、その結果、図44のアンテナ装置に比較して放射利得及び指向性が改善したことがわかる。
次に、モノポールアンテナの低姿勢化を目的として、第1の実施形態で説明した0次共振する単位共振器1の構造をヘリカルアンテナに適用することについて説明する。この場合も、ヘリカルアンテナの放射利得を従来技術よりも改善することができる。
図49は、第7の実施形態の第2の実施例に係るアンテナ装置40Aの構成を示す斜視図である。図49のアンテナ装置40Aは、接地導体42の上に、共振素子21及び反射素子22を備える1つの単位共振器を備える。共振素子21は、ストリップ形状を有し、その両端の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する。共振素子21は、ストリップ導体23及びキャパシタ24をそれぞれ備える、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含む。共振素子21は螺線状に巻回される。反射素子22は、共振素子21の一方の端部に接続され、共振素子21から反射素子22を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになるように構成される。共振素子21の他方の端部には給電点が設けられ、給電点は無線信号源41に接続される。アンテナ装置40Aは、第1の実施形態に係る単位共振器1と同様に0次共振器として動作し、これにより、高い効率で電磁波を送受信することができる。
次に、図49のアンテナ装置40Aについて行った数値計算の結果について説明する。数値計算において、アンテナ装置40Aの構成パラメータは、以下の通りであった。
アンテナ装置40Aの動作周波数:2.56GHz
ストリップ導体23の長さ:l=1mm
キャパシタ24の容量:C=4pF
直列LC共振回路の個数:32個
反射素子の全高:d31=0.323λ(λ:動作波長)
螺線の直径:d32=1.8mm
螺線のピッチ:d33=3mm
螺線の巻数:N=3
図51は、図49のアンテナ装置40AのH面利得を示すグラフである。図52は、図49のアンテナ装置40AのE面利得を示すグラフである。水平面内における平均の放射利得(図51)は4.53dBiであり、ビーム半値幅(図52)は86度であった。
図50は、第7の実施形態の第2の比較例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図50のアンテナ装置は、接地導体42の上において螺線形に巻回されたストリップ導体からなるアンテナ素子240Aを備える。アンテナ素子240Aの一端には給電点が設けられ、給電点は同軸ケーブルを介して無線信号源41に接続される。
図50のアンテナ装置についても数値計算を行った。数値計算において、アンテナ装置240Aの構成パラメータは、以下の通りであった。
アンテナ装置240Aの動作周波数:2.56GHz
アンテナ素子240Aの幅:0.2mm
アンテナ素子240Aの厚さ:1.8μm
反射素子の全高:d31=0.323λ(λ:動作波長)
螺線の直径:d32=1.8mm
螺線のピッチ:d33=3mm
螺線の巻数:N=3
図53は、図50のアンテナ装置のH面利得を示すグラフである。図54は、図50のアンテナ装置のE面利得を示すグラフである。水平面内における平均の放射利得は4.34dBiであり、ビーム半値幅は86度であった。
図51〜図54を比較すると、図49のアンテナ装置40Aもまた、0次共振するアンテナ装置40Aの一様な電流分布のためにアンテナ装置40Aの実効サイズが大きくなり、その結果、図50のアンテナ装置に比較して放射利得が改善したことがわかる。
第7の実施形態によれば、0次共振する単位共振器の構造を線状アンテナに適用することにより、アンテナ素子の長さ全体にわたって、アンテナ素子に流れる電流の振幅及び位相の分布を一様にすることができる。これにより、アンテナの放射利得を増大させることができる。アンテナのサイズを増大すれば、放射利得も増大する。また、動作周波数を固定したまま、アンテナのサイズを自由に変更することができる。
本発明の一態様に係るメタマテリアル装置は、例えば、人工衛星及び自動車のためのアンテナ装置に適用可能である。
1,1A〜1D,1DA〜1DE…単位共振器、
1Da〜1Dc,1DAa〜1DEb…部分共振器、
2…円柱部材、
3…ベース部材、
10A,10B,10C…単位セル、
20…フレキシブル基板、
20C,20D…基板、
21,21B,21C…共振素子、
22,22A…反射素子、
23,23B…ストリップ導体、
24,24B…キャパシタ、
25…中心導体、
26…アーム、
31…送信アンテナ、
32…受信アンテナ、
40,40A…アンテナ装置、
41…無線信号源、
42…接地導体、
100…メタマテリアル装置。

Claims (14)

  1. 少なくとも1つの単位共振器を備えるメタマテリアル装置であって、
    前記単位共振器は、
    少なくとも1つのストリップ形状の部分素子を含む共振素子であって、電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する共振素子と、
    前記共振素子の前記部分素子の各端部にそれぞれ接続された複数の反射素子であって、前記部分素子から前記各反射素子を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる複数の反射素子とを備え、
    前記単位共振器は0次共振器として動作する、
    メタマテリアル装置。
  2. 前記共振素子は、互いに直列接続された複数の直列LC共振回路を含み、
    前記各直列LC共振回路の共振周波数は、前記メタマテリアル装置の動作周波数に一致するように設定される、
    請求項1記載のメタマテリアル装置。
  3. 前記各直列LC共振回路は、ストリップ導体と、互いに隣接する直列LC共振回路のストリップ導体の間に設けられたキャパシタとを備える、
    請求項2記載のメタマテリアル装置。
  4. 前記各直列LC共振回路はストリップ導体を備え、
    前記各直列LC共振回路のストリップ導体の端部は、隣接する直列LC共振回路のストリップ導体の端部と容量結合するように形成される、
    請求項2記載のメタマテリアル装置。
  5. 前記反射素子は、前記メタマテリアル装置の動作波長の4分の1の長さを有し、ミアンダ形状又は渦巻き形状を有する、
    請求項1〜4のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
  6. 前記単位共振器は、カイラリティを有するように形成される、
    請求項1〜5のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
  7. 前記共振素子は、第1及び第2の端部を有するストリップ形状を有し、
    前記単位共振器は螺線状に巻回される、
    請求項6記載のメタマテリアル装置。
  8. 前記単位共振器は、平坦な基板上に形成され、
    前記共振素子は、前記基板の面内の任意の直線に対して非対称に形成される、
    請求項6記載のメタマテリアル装置。
  9. 前記共振素子は、前記基板の面内において屈曲又は湾曲したストリップ形状をそれぞれ有する複数の部分素子を含み、
    前記各部分素子の一端は、前記複数の反射素子のうちの1つに接続され、前記各部分素子の他端は、他の前記部分素子に接続され、
    前記共振素子は実質的に回転対称に形成される、
    請求項8記載のメタマテリアル装置。
  10. 前記単位共振器は、平坦な基板上に形成され、
    前記単位共振器は、前記基板の互いに異なる複数の導体層にそれぞれ形成され、前記共振素子及び前記複数の反射素子をそれぞれ備える複数の部分共振器を含み、
    前記複数の部分共振器の前記各共振素子は、互いに同じ形状を有し、前記各共振素子の回転対称の中心を通る軸の周りに互いに所定角度だけずれて形成される、
    請求項6〜9のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
  11. 前記メタマテリアル装置は、2次元アレイに配列された複数の単位共振器を含む、
    請求項1〜10のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
  12. 前記メタマテリアル装置は、入射する電磁波の偏波面を回転させる、
    請求項11記載のメタマテリアル装置。
  13. 前記メタマテリアル装置は、入射する電磁波のエネルギーの一部を透過させ、前記入射する電磁波のエネルギーの残りの一部を反射する、
    請求項11記載のメタマテリアル装置。
  14. 1つの単位共振器を備えるアンテナ装置であって、
    前記単位共振器は、
    第1及び第2の端部を有するストリップ形状を有する共振素子であって、前記第1及び第2の端部の間で電流が同時に逆向きに流れる並列回路部分を含まない経路を有し、かつ、実質的にゼロの実効透磁率を有する共振素子と、
    前記共振素子の第1の端部に接続された反射素子であって、前記共振素子から前記反射素子を見たときのインピーダンスが実質的にゼロになる反射素子とを備え、
    前記共振素子の第2の端部に給電点が設けられ、
    前記単位共振器は0次共振器として動作する、
    アンテナ装置。
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