JPWO2018181335A1 - ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブ - Google Patents

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Abstract

本発明の実施形態によるゴルフクラブヘッド(10、10A)は、金属製のヘッド本体(1)と、ヘッド本体の少なくとも一部を覆う被膜(2)とを備える。被膜は、反応性スパッタリング法により形成され、5nm以上200nm以下の厚さを有するSiOxNy膜、AlOxNy膜またはSixNy膜(xおよびyはそれぞれ非整数)である。

Description

本発明は、ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブに関する。
近年、ゴルフクラブのクラブヘッドには、打撃性能の向上等を目的とした種々の改良が施されてきた。改良の一環として、クラブヘッド用の材料に種々の金属材料が提案されている。
このような状況の下で、クラブヘッドの耐食性や耐久性をいっそう向上させることが要望されている。例えば特許文献1は、マグネシウム合金製のクラブヘッドの表面にステンレス鋼またはチタン合金から形成された薄板を接合することによって、マグネシウム合金の腐食を抑制することを開示している。
特開2004−24736号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている手法は、クラブヘッドの構造が複雑化するので、製造コストが大きく増加する。また、マグネシウム合金製のクラブヘッドの外側にチタン合金等の薄板をうまく密着させて貼り付けることが難しいので、接合部から腐食が進行して薄板の剥離が生じやすい。
なお、ここではクラブヘッドの材料としてマグネシウム合金を用いる場合を例示したが、耐食性や耐久性の向上が求められているのは、マグネシウム合金製のクラブヘッドに限られない。例えば、比較的腐食に強い金属材料を用いる場合でも、ゴルフクラブの使用によってクラブヘッドの表面が傷付くと、耐久性の低下の原因となり、また、クラブヘッドの美観を損ねてしまう。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴルフクラブヘッドの耐食性および耐久性を比較的簡便な構成により向上させることにある。
本発明の実施形態によるゴルフクラブヘッドは、金属製のヘッド本体と、前記ヘッド本体の少なくとも一部を覆う被膜と、を備え、前記被膜は、反応性スパッタリング法により形成され、5nm以上200nm以下の厚さを有するSiOxNy膜、AlOxNy膜またはSixNy膜(xおよびyはそれぞれ非整数)である。
ある実施形態において、前記被膜は、80℃以下の温度で形成されたスパッタ膜である。
ある実施形態において、前記被膜の硬度は、前記ヘッド本体の硬度以上である。
ある実施形態において、前記被膜の表面の動摩擦係数は、前記ヘッド本体の表面の動摩擦係数と実質的に同じである。
ある実施形態において、前記被膜の表面の動摩擦係数は、前記ヘッド本体の表面の動摩擦係数よりも大きい。
ある実施形態において、前記ヘッド本体の表面粗さRzに対する前記被膜の厚さの比が0.05以上0.2以下である。
ある実施形態において、前記被膜全体の質量は、0.0005g以上0.01g以下である。
ある実施形態において、前記被膜全体の質量は、0.001g以上0.004g以下である。
ある実施形態において、本発明によるゴルフクラブヘッドは、フェース部を有し、前記被膜が、少なくとも前記フェース部に形成されている。
ある実施形態において、本発明によるゴルフクラブヘッドは、クラウン部を有し、前記被膜が、少なくとも前記クラウン部に形成されている。
ある実施形態において、本発明によるゴルフクラブヘッドは、ソール部を有し、前記被膜が、少なくとも前記ソール部に形成されている。
ある実施形態において、前記被膜が、前記ヘッド本体の略全体を覆うように形成されている。
ある実施形態において、前記被膜は、前記SiOxNy膜または前記SixNy膜である。
ある実施形態において、前記被膜の金属元素含有率は、0.5質量%以下である。
ある実施形態において、本発明によるゴルフクラブヘッドは、ウッドクラブ用、ユーティリティクラブ用、アイアンクラブ用またはパタークラブ用である。
本発明の実施形態によるゴルフクラブは、上述したいずれかの構成を有するゴルフクラブヘッドを備える。
ある実施形態において、前記ゴルフクラブは、シャフトをさらに備え、前記被膜が前記シャフトにも形成されている。
本発明の実施形態によると、ゴルフクラブヘッドの耐食性および耐久性を比較的簡便な構成により向上させることができる。
本発明の実施形態によるクラブヘッド10を模式的に示す斜視図である。 クラブヘッド10を模式的に示す断面図であり、フェース−バック方向D1に平行で、且つ、トゥ−ヒール方向D2に直交する断面を示している。 被膜2の断面構造を拡大して模式的に示す図である。 (a)および(b)は、被膜2の形成に用いられるスパッタリング装置20を示す図である。 本発明の実施形態による他のクラブヘッド10Aを模式的に示す斜視図である。 本発明の実施形態によるクラブヘッド10を備えたゴルフクラブ40を模式的に示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[ゴルフクラブヘッドの構成]
図1を参照しながら、本発明の実施形態によるゴルフクラブヘッド(以下では「クラブヘッド」とも呼ぶ)10の構成を説明する。図1は、クラブヘッド10を模式的に示す斜視図である。図1に例示するクラブヘッド10は、ウッドクラブ用のクラブヘッドである。なお、以下では、フェース側からバック側に向かう方向およびその反対方向をフェース−バック方向D1と呼び、トゥ側からヒール側に向かう方向およびその反対方向をトゥ−ヒール方向D2と呼ぶ。
クラブヘッド10は、図1に示すように、フェース部10a、クラウン部10bおよびソール部10cを有する。
フェース部10aは、ゴルフボールを打撃する面であるフェース面を含む。クラウン部10bは、フェース部10aに隣接し、クラブヘッド10の上面を構成する。ソール部10cは、フェース部10aに隣接し、クラブヘッド10の底面を構成する。クラウン部10bとソール部10cとの間の部位は、サイド部10dと呼ばれる。サイド部10dは、フェース部10aのトゥ側からクラブヘッド10のバック側を通ってフェース部10aのヒール側へと延びる。クラウン部10bのヒール側に隣接するようにホーゼル部10eが設けられている。ホーゼル部10eには、ゴルフクラブのシャフト(不図示)が挿入される孔10oが形成されている。
図2に、クラブヘッド10の断面構造を示す。図2は、フェース−バック方向D1に平行で、且つ、トゥ−ヒール方向D2に直交する断面を示している。図2に示すように、クラブヘッド10は、ヘッド本体1と、ヘッド本体1の少なくとも一部を覆う被膜2とを備える。
ヘッド本体1は、金属製である。ヘッド本体1の材料として用いられる金属材料に特に制限はない。例えば、ステンレス鋼やチタン合金などを用いることができる。クラブヘッドがパタークラブ用である場合には、銅合金が用いられることもある。ヘッド本体1は、図2に示すように、中空構造を有する。なお、ヘッド本体1は、2つ以上の部材を組み合わせて構成され得るが、図2ではヘッド本体1の詳細な構造の図示を省略している。
被膜2は、図2に示す例では、ヘッド本体1の略全体を覆っている。つまり、フェース部10a、クラウン部10bおよびソール部10cのいずれにも被膜2が形成されている。
被膜2は、後に詳述するように、反応性スパッタリング法により形成される。つまり、被膜2は、スパッタ膜である。また、被膜2は、具体的には、SiOxNy(窒化酸化シリコン)膜、AlOxNy(窒化酸化アルミニウム)膜またはSixNy(窒化シリコン)膜である。ここで、xおよびyはそれぞれ非整数である。
反応性スパッタリング法により形成されるSiOxNy膜、AlOxNy膜またはSixNy膜は、緻密なアモルファス(非晶質)構造を有し得る。そのため、ヘッド本体1が被膜2で覆われていることにより、ヘッド本体1への水分やガス、塩分等の侵入を防止できるので、クラブヘッド10の耐食性および耐久性を向上させることができる。本発明の実施形態によれば、特許文献1の手法とは異なり、クラブヘッド1の構造が複雑化しない。つまり、比較的簡便な構成でクラブヘッド10の耐食性および耐久性を向上させることができる。また、SiOxNy膜、AlOxNy膜およびSixNy膜は、材料が容易に入手できるという点でも優れている。
被膜2の厚さは、5nm以上200nm以下であることが好ましい。被膜2の厚さが5nm未満であると、ヘッド本体1の表面を均一に覆うように被膜2を形成することが難しい場合がある。また、被膜2の厚さが200nmを超えると、被膜2を形成するために要する時間が長くなり、生産性が低下することがある。
また、被膜2の屈折率および厚さを適切に設定することによって、被膜2が所望の干渉色を呈することも可能である。これにより、クラブヘッド1を装飾する、つまり美観を向上させることもできる。また、被膜2の上、または下つまり被膜2とヘッド本体1との間に、少なくとも1層(例えば1層または2層)のさらなる被膜を設けてもよい。被膜2とさらなる被膜とを含む多層構造により、深みのある色を出すことができる。被膜2の下に設けられるさらなる被膜は、SiOxNy膜、AlOxNy膜およびSixNy膜以外の膜であってもよく、例えば、Al系、Ti系、Cr系、Zr系の酸化物膜および窒化物膜、TiAlNなどの複合窒化物膜、複合酸化物膜、DLC膜、Si膜などであってもよい。
なお、被膜2の形成による上述した利点は、被膜2の組成が化学量論比ではないこと、言い換えるとx、yが非整数であることによって得られているということもできる。
被膜2は、80℃以下の温度で形成されたスパッタ膜であることが好ましく、50℃以下の温度で形成されたスパッタ膜であることがより好ましい。成膜温度が80℃以下の低温であることによって、基材であるヘッド本体1の特性変化や寸法変化が生じにくい。また、ヘッド本体1が高温に弱い塗料により塗装されていても問題なく成膜を行うことができる。さらに、成膜温度が50℃以下であると、上述した効果がいっそう高くなる。
クラブヘッド10の耐久性をいっそう向上させる観点からは、被膜2の硬度は、ヘッド本体1の硬度以上であることが好ましい。例えば、ヘッド本体1の材料として、ステンレス鋼であるSUS304を用いる場合、ヘッド本体1のビッカース硬さHVは200〜300程度であるので、被膜2の硬度はそれ以上であることが好ましい。
フェース部10aの表面の動摩擦係数は、ゴルフボールの回転量つまりスピンのかかりやすさに影響を与える。本発明の実施形態によれば、成膜条件等を適宜設定して被膜2の表面の凹凸形状を制御することにより、被膜2の表面の動摩擦係数を調節することができる。
被膜2の表面の動摩擦係数が、ヘッド本体1の表面の動摩擦係数と実質的に同じであると、被膜2がない場合とほぼ同じボール回転量を実現できる。これに対し、被膜2の表面の動摩擦係数を、ヘッド本体1の表面の動摩擦係数よりも大きくすると、ボール回転量を増やすことができる。また、これとは逆に、被膜2の表面の動摩擦係数を、ヘッド本体1の表面の動摩擦係数よりも小さくすると、ボール回転量を減らすことができる。
クラブヘッド10の表面がボール回転量に与える影響は、「面粗度維持性」によっても特徴付けられる。「面粗度維持性」は、ヘッド本体1の面粗度(表面粗さ)が、被膜2の形成後にどの程度維持されるか、つまりクラブヘッド10の表面粗さがヘッド本体1の表面粗さとどの程度近いか、を表す特性である。「面粗度維持性」は、被膜2の厚さに依存し、具体的には、ヘッド本体1の表面粗さ(最大高さ)Rzに対する被膜2の厚さの比で表わされる。この比が小さいほど、ヘッド本体1の面粗度が維持される度合が高い。本実施形態のクラブヘッド10における面粗度維持性は、典型的には、0.001以上2.0以下であり、好ましくは0.05以上0.2以下である。
反応性スパッタリング法により形成される被膜2の表面は、最大高さRzの測定が困難なほど微細な凹凸、言い換えれば原子数レベルの大きさの凹凸、を有し得る。図3に、被膜2の断面構造を拡大して模式的に示す。被膜2の表面に存在する凸部の高さhおよび幅wは、0.1nm〜10nm程度である。また、被膜2の断面形状がフラクタル図形(たとえばコッホ曲線)と類似していると、被膜2が超撥水性を示し、水分をよく弾く。被膜2が超撥水性を示すことにより、雨天時でも晴天時と同様の状態を維持できる。また、濡れたボールと濡れたヘッドとでは接触面に水が存在し、ボールが離れにくくなる。接触面の水が減ることにより、タッチフィーリングやボール回転量が晴天時に近くなるので、ボールをコントロールしやすくなる。
被膜2全体の質量は、0.0005g以上0.01g以下であることが好ましく、0.001g以上0.004g以下であることがより好ましい。被膜2が0.01g以下と軽量であることにより、クラブヘッド1およびゴルフクラブの慣性モーメントおよびバランスへの影響を小さくすることができる。また、被膜2が0.004g以下であると、そのような影響を実質的になくすことができるといえる。ゴルフクラブのチューニング方法の1つとして、鉛から形成されたウェイトのクラブヘッドへの貼り付けが知られている。ウェイトの重さは、例えば2gである。ウェイトの貼り付けによって、ゴルフクラブのバランスやゴルフクラブを振ったときのフィーリング、球筋を調整することができる。このように、クラブヘッドにわずかな重さのウェイトを貼り付けるだけで、バランスや慣性モーメントには大きな影響があるが、被膜2全体の質量が0.01g以下と小さいことにより、バランスや慣性モーメントに実質的に影響を与えることなく、クラブヘッド1の耐食性および耐久性を向上させることができる。
また、既に説明したように、被膜2は所望の干渉色を呈し得るので、これによりクラブヘッド1を装飾することができる。被膜2は、その厚さを小さく(具体的には200nm以下に)できるので、一般的な塗膜よりも軽量であり得る。そのため、バランスや慣性モーメントに実質的に影響を与えることなく、クラブヘッド1を装飾することができる。例えば、ドライバーのクラブヘッドが最大容積(具体的には460cm3)を有するときの表面積は288cm2である。このクラブヘッドの全面に、アクリル系塗料やエポキシ系塗料で塗膜を形成すると、塗膜の厚さが10μm〜80μmと大きいので、塗膜全体の質量は0.345g〜2.76gと大きい。これに対し、被膜2はその厚さを小さくできるので、従来の塗膜よりも軽量である。例えば、被膜2としてある組成のSiOxNy膜を、上述したドライバーのクラブヘッドの全面に厚さ10nm〜20nmで形成すると、被膜2全体の質量は約0.0005g〜0.0010gである。このように、被膜2は、従来の塗膜よりも著しく軽量であり得る。
図2には、被膜2がヘッド本体1の略全体を覆っている構成を例示したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
フェース部10aは、打撃性能に直接影響を与える部位である。そのため、被膜2が少なくともフェース部10aに形成されていると、当初の、つまり所望の打撃性能を長期間にわたって維持することができる。
クラウン部10bは、プレーヤーがゴルフクラブを構えたときにもっとも目に付き易い箇所である。そのため、被膜2が、少なくともクラウン部2に形成されていると、商品性を向上させることができる。
ソール部10cは、地面にもっとも接触しやすく、傷付きやすい箇所である。そのため、被膜2が、少なくともソール部10cに形成されていることによっても、商品性を向上させることができる。
被膜2は、既に説明したように、SiOxNy膜、AlOxNy膜またはSixNy膜である。SiOxNy膜およびSixNy膜は、AlOxNy膜に比べ、靱性に優れ、衝撃に強いので、被膜2としてSiOxNy膜またはSixNy膜を用いると、耐食性および耐久性のいっそうの向上を図ることができる。
金属材料から形成された基材の表面に、例えばゾルゲル法を用いて被膜を形成すると、基材に含まれる金属元素が被膜中に拡散し、被膜の金属元素含有率が高くなることがある。これに対し、反応性スパッタリング法により被膜2を形成すると、成膜時に基材(つまりヘッド本体1)に含まれる金属元素が膜中に拡散することが少ない。そのため、本発明の実施形態によれば、SiOxNy膜またはSixNy膜である被膜2の金属元素含有率を0.5質量%以下にすることができる。被膜2の金属元素含有率が0.5質量%以下であることにより、より優れた耐食性が得られる。
[ゴルフクラブヘッドの製造方法]
クラブヘッド10の製造方法は、ヘッド本体1を用意する工程と、ヘッド本体1の少なくとも一部を覆うように被膜2を形成する工程とを包含する。以下、被膜2を形成する方法、つまり被膜2の成膜方法を説明する。
本実施形態における成膜方法は、ヘッド本体1の表面上に被膜2を反応性スパッタリング法により形成するスパッタリング工程を包含する。被膜2がSiOxNy膜またはSixNy膜である場合、ターゲットとしてSiを含むターゲットが用いられ、反応性ガスとして酸素ガスおよび/または窒素ガスが用いられる。被膜2がAlOxNy膜である場合、ターゲットとしてAlを含むターゲットが用いられ、反応性ガスとして酸素ガスおよび/または窒素ガスが用いられる。スパッタリング工程における投入電力密度は、例えば、1.0W/cm2以上である。「投入電力密度」は、ターゲットへの単位面積当たりの投入電力である。
図4(a)および(b)に、本実施形態の成膜方法に用いられるスパッタリング装置の例を示す。図4(a)および(b)に示すスパッタリング装置20は、チャンバー(「真空槽」とも呼ばれる)21、真空排気装置22、ガス供給装置23および電源24を備える。
チャンバー21内には、複数のホルダ25が収容されている。各ホルダ25は、回転軸25aを中心に自転しながらチャンバ21内で公転する。各ホルダ25には、基材であるヘッド本体1が保持される。ホルダ25が回転する軌道の外側には、複数のターゲット26が配置されている。
真空排気装置22は、1つまたは複数のポンプを含む。真空排気装置22により、チャンバー21内が所定の真空度に保持される。
ガス供給装置23は、チャンバー21内にガスを所望の流量で供給することができる。ガス供給装置23は、例えば、ボンベ27とマスフローコントローラ28とを有する。ボンベ27には、スパッタリングに用いられるガスが貯蔵されている。スパッタリングに用いられるガスは、反応性ガスおよび/または非反応性ガスである。マスフローコントローラ28はガス流量の検出および制御を行うことができる。
電源24は、不図示のカソードに接続されている。電源24は、カソードを介してターゲット26に電圧を印加する。
上述したようなスパッタリング装置20により、本実施形態の成膜方法を好適に行うことができる。なお、スパッタリング装置20の構成は、図4に例示したものに限定されない。例えば、スパッタリング法として後述するマグネトロンスパッタリング法を用いる場合には、カソードとして、磁界生成装置を含むマグネトロンカソードが用いられる。
スパッタリング工程における投入電力密度は、1.0W/cm2以上であることが好ましく、2.0W/cm2以上であることがより好ましい。投入電力密度が1.0W/cm2以上であることにより、被膜2の膜質をいっそう向上させることができる。
ターゲット26への投入電力が直流電源から供給されると、つまり、直流電源を用いてスパッタリングを行うと、交流電源を用いてスパッタリングを行う場合に比べ、成膜時間を短くすることができる。
被膜2の膜質のいっそうの向上を図る観点からは、直流電源からの直流電流が所定以上の大きさであることが好ましい。具体的には、直流電源からの直流電流は、3A以上であることが好ましく、5A以上であることがより好ましい。
スパッタリング工程におけるチャンバー21内の圧力は、放電の安定性の観点から0.01Pa以上であることが好ましい。また、被膜2中の窒素含有率が高すぎると、被膜2の緻密さが低下することがある。そのため、スパッタリング工程におけるチャンバー21内の圧力は、膜質の観点からは、1.0Pa以下であることが好ましい。
スパッタリング法としては、例えば、マグネトロンスパッタリング法を好適に用いることができる。マグネトロンスパッタリング法では、ターゲット26の表面に磁界を印加することによってターゲット26付近に高密度のプラズマを生成させる。マグネトロンスパッタリング法を用いると、ターゲット26が均一に消費される。また、ターゲット26に衝突するイオンが増加するので、成膜速度の向上を図ることができる。勿論、スパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法に限定されない。磁界印加を伴わないスパッタリング法を用いてもよい。
また、スパッタリング工程の前に、逆スパッタリング工程を行ってもよい。逆スパッタリング工程においては、バイアス電圧の印加によってプラズマ粒子(例えばArプラズマの粒子)をヘッド本体1の表面に衝突させ、ヘッド本体1の表面に形成されている自然酸化膜を除去する。このような逆スパッタリング工程を行うことにより、ヘッド本体1と被膜2との密着性を高めることができる。なお、逆スパッタリング工程を必ずしも行う必要はない。
また、スパッタリング工程の前に、予備スパッタリング工程を行ってもよい。予備スパッタリング工程では、ヘッド本体1に対してスパッタ粒子を堆積させることなくターゲット26表面をスパッタリングすることにより、ターゲット26表面を清浄化する。予備スパッタリング工程を行うことにより、形成される被膜2の膜質や膜厚の再現性を向上させることができる。なお、逆スパッタリング工程を行う場合は、予備スパッタリングは、逆スパッタリング工程の後で、スパッタリング工程の前に行われる。また、予備スパッタリング工程は、省略されてもよい。
スパッタリング工程を含む一連の成膜工程におけるチャンバー21内の雰囲気温度は、80℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。チャンバー21内の雰囲気温度が80℃以下(より好ましくは50℃以下)で成膜を行うことにより、成膜後に冷却時間が不要となるので、生産性のいっそうの向上を図ることができる。なお、本実施形態の成膜方法では、反応活性化のための加熱工程は不要であり、また、反応熱による温度上昇もない。また、チャンバ―21内の雰囲気温度が80℃以下であることにより、ヘッド本体1の特性変化や寸法変化を抑制することができる。なお、ここでいう成膜工程は、逆スパッタリング工程や予備スパッタリング工程が行われる場合にはそれらも含む。
[ゴルフクラブの他の例]
図1および図2には、ウッドクラブ用のクラブヘッド10を例示したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではない。
図5に、本発明の実施形態による他のクラブヘッド10Aを示す。図5は、クラブヘッド10Aを模式的に示す斜視図である。図5に例示するクラブヘッド10Aは、アイアンクラブ用のクラブヘッドである。
クラブヘッド10Aは、図5に示すように、フェース部10a、ソール部10cおよびバック部10fを有する。フェース部10aは、ゴルフボールを打撃する面であるフェース面を含む。ソール部10cは、フェース部10aに隣接し、クラブヘッド10の底面を構成する。バック部10fは、フェース部10aからフェース−バック方向D1に離間しており、クラブヘッド10の背面を構成する。クラブヘッド10Aは、さらに、シャフト(不図示)が挿入される孔10oが形成されたホーゼル部10eを含む。
アイアンクラブ用のクラブヘッド10Aについても、金属製のヘッド本体の少なくとも一部を覆うように、図2に示したクラブヘッド10の被膜2と同様の被膜が形成されていることにより、クラブヘッド10と同様の効果、具体的には耐食性および耐久性の向上という効果を得ることができる。また、ここでは図示しないが、本発明の実施形態は、ユーティリティクラブ用のクラブヘッドやパタークラブ用のクラブヘッドにも好適に適用される。
[ゴルフクラブ]
本発明の実施形態によるクラブヘッドは、優れた耐食性および耐久性を有するので、各種のゴルフクラブに好適に用いることができる。本発明の実施形態によるクラブヘッドを備えたゴルフクラブの例を、図6に示す。
図6に示すゴルフクラブ40は、ウッドクラブである。ゴルフクラブ40は、クラブヘッド10と、シャフト41と、グリップ42とを備える。クラブヘッド10は、シャフト41の一端部に設けられている。グリップ42は、シャフト41の他端部に設けられている。ゴルフクラブ40が優れた耐食性および耐久性を有するクラブヘッド10を備えていることにより、商品性が向上する。
また、クラブヘッド10の被膜2と同様の被膜が、シャフト41に形成されていてもよい。これにより、シャフト41を装飾する、つまり美観を向上させることができる。シャフト41は、例えばCFRPやステンレス鋼から形成される。
本発明の実施形態によると、ゴルフクラブヘッドの耐食性および耐久性を比較的簡便な構成により向上させることができる。本発明の実施形態によるゴルフクラブヘッドは、種々のゴルフクラブに好適に用いられる。
1:ヘッド本体、2:被膜、10:クラブヘッド、10a:フェース部、10b:クラウン部、10c:ソール部、10d:サイド部、10e:ホーゼル部、20:スパッタリング装置、21:チャンバ―、22:真空排気装置、23:ガス供給装置、24:電源、25:ホルダ、26:ターゲット、27:ボンベ、28:マスフローコントローラ

Claims (17)

  1. 金属製のヘッド本体と、
    前記ヘッド本体の少なくとも一部を覆う被膜と、を備え、
    前記被膜は、反応性スパッタリング法により形成され、5nm以上200nm以下の厚さを有するSiOxNy膜、AlOxNy膜またはSixNy膜(xおよびyはそれぞれ非整数)である、ゴルフクラブヘッド。
  2. 前記被膜は、80℃以下の温度で形成されたスパッタ膜である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
  3. 前記被膜の硬度は、前記ヘッド本体の硬度以上である、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
  4. 前記被膜の表面の動摩擦係数は、前記ヘッド本体の表面の動摩擦係数と実質的に同じである、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  5. 前記被膜の表面の動摩擦係数は、前記ヘッド本体の表面の動摩擦係数よりも大きい、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  6. 前記ヘッド本体の表面粗さRzに対する前記被膜の厚さの比が0.05以上0.2以下である、請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  7. 前記被膜全体の質量は、0.0005g以上0.01g以下である、請求項1から6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  8. 前記被膜全体の質量は、0.001g以上0.004g以下である、請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
  9. フェース部を有し、
    前記被膜が、少なくとも前記フェース部に形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  10. クラウン部を有し、
    前記被膜が、少なくとも前記クラウン部に形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  11. ソール部を有し、
    前記被膜が、少なくとも前記ソール部に形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  12. 前記被膜が、前記ヘッド本体の略全体を覆うように形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  13. 前記被膜は、前記SiOxNy膜または前記SixNy膜である請求項1から12のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  14. 前記被膜の金属元素含有率は、0.5質量%以下である、請求項13に記載のゴルフクラブヘッド。
  15. ウッドクラブ用、ユーティリティクラブ用、アイアンクラブ用またはパタークラブ用である請求項1から14のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  16. 請求項1から15のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドを備える、ゴルフクラブ。
  17. シャフトをさらに備え、
    前記被膜が前記シャフトにも形成されている、請求項16に記載のゴルフクラブ。
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