[フッ素原子含有重合体]
本発明のフッ素原子含有重合体は、下記式(1)又は(2)で表されるものである。
式(1)及び(2)中、窒素原子は、ベンゼン環におけるA1〜A3の結合位置に対して、メタ位又はパラ位に結合していることが好ましい。
式(1)及び(2)中、A1〜A3は、炭素数1〜6のフルオロアルカンジイル基を表す。フルオロアルカンジイル基は、アルカンジイル基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものであれば、特に限定されない。
フルオロアルカンジイル基の具体例としては、モノフルオロメタンジイル基、パーフルオロメタンジイル基、2,2,2−トリフルオロエタン−1,1−ジイル基、パーフルオロエタン−1,1−ジイル基、パーフルオロエタン−1,2−ジイル基、3−フルオロプロパン−1,2−ジイル基、3,3,3−トリフルオロプロパン−1,1−ジイル基、1,1−ジフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,1−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,2−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基、2−メチル−2−フルオロプロパン−1,3−ジイル基、3,4,4−トリフルオロブタン−1,2−ジイル基、4,4,4−トリフルオロブタン−1,3−ジイル基、2,2,3,3−テトラフルオロブタン−1,4−ジイル基、パーフルオロブタン−1,1−ジイル基、パーフルオロブタン−1,2−ジイル基、パーフルオロブタン−1,3−ジイル基、パーフルオロブタン−1,4−ジイル基、1−フルオロペンタン−1,1−ジイル基、4,5,5−トリフルオロペンタン−1,5−ジイル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン−1,5−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,1−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,2−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,3−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,4−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,5−ジイル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン−1,6−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,1−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,2−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,3−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,4−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,5−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
フルオロアルカンジイル基としては、炭素数1〜6のパーフルオロアルカンジイル基(すなわち、アルカンジイル基の炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子で置換されたもの)が好ましく、特に、パーフルオロメタンジイル基、パーフルオロエタン−1,2−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基、パーフルオロブタン−1,4−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,5−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,6−ジイル基等が好ましい。
式(1)及び(2)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立に、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数2〜20のヘテロアリーレン基を表す。これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはZ1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基で置換されていてもよい。また、各Ar1、各Ar2及びAr3は、互いに同一でも異なっていてもよいが、重合体の合成のしやすさの観点から、同じ基であることが好ましい。
Ar
1〜Ar
3としては、フルオレン、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル又はこれらの誘導体に由来する基が好ましい。特に、Ar
1〜Ar
3としては、下記式(3)で表される基が好ましい。
式(3)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。これらのうち、ワニスに用いられる溶媒に対する溶解性の観点から、R11及びR12が、ともにアルキル基であることが好ましい。前記アルキル基としては、特に、炭素数4〜10であるものが好ましい。
R13及びR14は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはZ1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。また、R13及びR14がそれぞれ2以上存在する場合は、各R13及びR14は、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(3)中、a及びbは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すが、原料化合物の入手容易性、本発明の重合体の溶解性、電荷輸送性等を向上させる観点から、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が最適である。特に、a及びbが、ともに0であることが好ましい。
式(1)及び(2)中、X
1〜X
4は、それぞれ独立に、架橋性基を表す。前記架橋性基としては、重合性炭素炭素二重結合、又はオキシラン環若しくはオキセタン環を含む基が好ましい。具体的には、下記式で表される基から選ばれるものが好ましい。
式中、Raは、水素原子又はメチル基を表す。Rb及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表すが、メチル基、エチル基が好ましい。Rc、Re及びRfは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を表す。Rc、Re及びRfとしては、酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキレン基が好ましい。破線は、結合手を表す。
式(1)及び(2)中、Y1〜Y4は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数6〜20のアリーレン基を表す。前記アリーレン基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,7−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、4,4'−ビフェニリレン基等が挙げられる。これらのうち、Y1〜Y4としては、単結合、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が好ましい。また、各Y1、各Y2、各Y3及び各Y4は、互いに同一でも異なっていてもよいが、モノマーの合成しやすさの観点から、同じ基であることが好ましい。
式(1)及び(2)中、R1〜R10は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはZ1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基若しくは炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、又はZ2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリールオキシ基を表す。また、R1〜R10がそれぞれ2以上存在する場合は、各R1〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ3で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ3で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、ビシクロブチルオキシ基、ビシクロペンチルオキシ基、ビシクロヘキシルオキシ基、ビシクロヘプチルオキシ基、ビシクロオクチルオキシ基、ビシクロノニルオキシ基、ビシクロデシルオキシ基等の炭素数3〜20の環状アルコキシ基が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エテニルオキシ基、n−1−プロペニルオキシ基、n−2−プロペニルオキシ基、1−メチルエテニルオキシ基、n−1−ブテニルオキシ基、n−2−ブテニルオキシ基、n−3−ブテニルオキシ基、2−メチル−1−プロペニルオキシ基、2−メチル−2−プロペニルオキシ基、1−エチルエテニルオキシ基、1−メチル−1−プロペニルオキシ基、1−メチル−2−プロペニルオキシ基、n−1−ペンテニルオキシ基、n−1−デセニルオキシ基、n−1−エイコセニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニルオキシ基、n−1−プロピニルオキシ基、n−2−プロピニルオキシ基、n−1−ブチニルオキシ基、n−2−ブチニルオキシ基、n−3−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ基、n−1−ペンチニルオキシ基、n−2−ペンチニルオキシ基、n−3−ペンチニルオキシ基、n−4−ペンチニルオキシ基、1−メチル−n−ブチニルオキシ基、2−メチル−n−ブチニルオキシ基、3−メチル−n−ブチニルオキシ基、1,1−ジメチル−n−プロピニルオキシ基、n−1−ヘキシニルオキシ基、n−1−デシニルオキシ基、n−1−ペンタデシニルオキシ基、n−1−エイコシニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、1−アントリルオキシ基、2−アントリルオキシ基、9−アントリルオキシ基、1−フェナントリルオキシ基、2−フェナントリルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、4−フェナントリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
炭素数2〜20のヘテロアリールオキシ基の具体例としては、2−チエニルオキシ基、3−チエニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、3−フラニルオキシ基、2−オキサゾリルオキシ基、4−オキサゾリルオキシ基、5−オキサゾリルオキシ基、3−イソオキサゾリルオキシ基、4−イソオキサゾリルオキシ基、5−イソオキサゾリルオキシ基、2−チアゾリルオキシ基、4−チアゾリルオキシ基、5−チアゾリルオキシ基、3−イソチアゾリルオキシ基、4−イソチアゾリルオキシ基、5−イソチアゾリルオキシ基、2−イミダゾリルオキシ基、4−イミダゾリルオキシ基、2−ピリジルオキシ基、3−ピリジルオキシ基、4−ピリジルオキシ基等が挙げられる。
R1〜R10としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
式(1)及び(2)中、p、q、t、u、w及びxは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、r、s、y及びzは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表すが、原料化合物の入手容易性、本発明の重合体の溶解性、電荷輸送性等を向上させる観点から、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
式(1)中、m及びnは、それぞれ式(1)中の左の繰り返し単位(以下、繰り返し単位mという。)及び右の繰り返し単位(以下、繰り返し単位nという。)の組成比を表し、0≦m≦1、0<n≦1かつm+n=1を満たす正数を表す。式(1)で表されるフッ素原子含有重合体は、繰り返し単位nを必須単位として含み、繰り返し単位nのみを含むものでもよく、繰り返し単位m及びnの両方を含んでもよい。式(1)で表されるフッ素原子含有重合体が繰り返し単位m及びnの両方を含む場合、m及びnは、0.1≦m<1、0<n≦0.9を満たすことが好ましく、0.5≦m≦0.99、0.01≦n≦0.5を満たすことがより好ましく、0.8≦m≦0.99、0.01≦n≦0.2を満たすことがより一層好ましい。
式(2)中、kは、1以上の整数を表す。kは、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がより一層好ましい。
本発明のフッ素原子含有重合体の重量平均分子量(Mw)の下限は、当該重合体の電荷輸送性を向上させる観点から、好ましくは1,000、より好ましくは3,000、より一層好ましくは5,000であり、その上限は、当該重合体の溶解性を向上させる観点から、好ましくは500,000、より好ましくは100,000、より一層好ましくは50,000である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
[フッ素原子含有重合体の合成方法]
式(1)で表されるフッ素原子含有重合体の合成方法としては、Y1及びY2がアリーレン基である場合は、カップリング反応を利用した縮合重合が好適である。前記カップリング反応としては、特に限定されない。例えば、鈴木・宮浦カップリング反応によって合成する場合は、下記スキームAで表されるように、式(4)で表されるアミン誘導体、式(5)で表されるアミン誘導体、及び式(6)で表される芳香族化合物を、触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
式中、A
1、A
2、Ar
1、X
1、X
2、Y
1、Y
2、R
1〜R
6、p、q、r、s、t及びuは、前記と同じ。X
A及びX
Bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は擬ハロゲン基を表す。X
Cは、それぞれ独立に、下記式(7)又は(8)で表される基を表す。
(式中、A
11及びA
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。A
13は、炭素数1〜20のアルカンジイル基又は炭素数6〜20のアリーレン基を表す。)
ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基の具体例としては、前述したものと同じものが挙げられる。
擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等のフルオロアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基等が挙げられる。
A13で表される炭素数1〜20のアルカンジイル基としては、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−2,3−ジイル基、2,3−ジメチルブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−2,3−ジイル基、ペンタン−2,4−ジイル基、2−メチルペンタン−2,3−ジイル基、3−メチルペンタン−2,3−ジイル基、4−メチルペンタン−2,3−ジイル基、2,3−ジメチルペンタン−2,3−ジイル基、3−メチルペンタン−2,4−ジイル基、3−エチルペンタン−2,4−ジイル基、3,3−ジメチルペンタン−2,4−ジイル基、3,3−ジメチルペンタン−2,4−ジイル基、2,4−ジメチルペンタン−2,4−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘキサン−1,2−ジイル基、ヘキサン−1,3−ジイル基、ヘキサン−2,3−ジイル基、ヘキサン−2,4−ジイル基、ヘキサン−2,5−ジイル基、2−メチルヘキサン−2,3−ジイル基、4−メチルヘキサン−2,3−ジイル基、3−メチルヘキサン−2,4−ジイル基、2,3−ジメチルヘキサン−2,4−ジイル基、2,4−ジメチルヘキサン−2,4−ジイル基、2,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジイル基、2−メチルヘキサン−2,5−ジイル基、3−メチルヘキサン−2,5−ジイル基、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジイル基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,2−アントリレン基、2,3−アントリレン基、1,2−フェナントリレン基、3,4−フェナントリレン基、9,10−フェナントリレン基等が挙げられる。
スキームAの反応は無溶媒でも行えるが、通常、溶媒を用いて行われる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができ、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、特に、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン等が好ましい。
前記反応において用いる触媒としては、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(dppf))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(Pd(PPh3)2Cl2)、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(P-t-Bu3)2)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)等のパラジウム触媒等が挙げられる。
式(6)で表される芳香族化合物の仕込み比は、式(4)で表されるアミン誘導体及び式(5)で表されるアミン誘導体の合計に対し、モル比で0.83〜1.2が好適である。なお、式(4)で表されるアミン誘導体と式(5)で表されるアミン誘導体との仕込み比は、繰り返し単位m及びnの組成比が前述した範囲となるよう、適宜設定すればよい。
前記反応の反応温度は、通常、40〜200℃である。反応時間は反応温度によって適宜設定されるが、通常、30分間から50時間程度である。
式(4)で表されるアミン誘導体は、下記スキームBで表されるように、式(9)で表されるアミン化合物と式(10)で表されるハロゲン化化合物とを触媒存在下で縮合反応させ、得られた化合物を更に式(11)で表されるハロゲン化化合物及び式(12)で表されるハロゲン化化合物と縮合反応させ、式(4−1)で表されるアミン誘導体を合成した後、得られたアミン誘導体を公知のハロゲン化剤と反応させることによって合成することができる。
(式中、A
1、R
1〜R
4、Y
1、X
A、p、q、r及びsは、前記と同じ。Y
1'は、炭素数6〜20のアリール基を表す。Halは、ハロゲン原子又は擬ハロゲン基を表す。)
また、式(4)で表されるアミン誘導体は、下記スキームCで表されるように、式(13)で表されるハロゲン化化合物と式(14)で表されるアミン化合物と式(15)で表されるアミン化合物とを、触媒存在下で縮合反応させ、式(4−1)で表されるアミン誘導体を合成した後、得られたアミン誘導体を公知のハロゲン化剤と反応させることによっても合成することができる。
(式中、A
1、R
1〜R
4、Y
1、Y
1'、X
A、p、q、r及びsは、前記と同じ。)
アミン化合物とハロゲン化化合物との仕込み比は、全アミン化合物の全NH基の物質量に対して、全ハロゲン化化合物の全Hal基を当量以上とすればよいが、1〜1.5当量程度が好適である。
触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd(P-t-Bu3)2、Pd(OAc)2等のパラジウム触媒等が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
触媒の使用量は、ハロゲン化化合物1molに対し、0.0001〜0.5molとすることができるが、0.001〜0.1mol程度が好適である。また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対して0.5〜50当量とすることができるが、1〜10当量が好適である。
ハロゲン化剤としては、公知のものを使用することができ、具体的には、N−ブロモスクシンイミド等が挙げられる。
ハロゲン化剤の使用量は、式(4−1)で表される化合物1molに対し、4〜6mol程度が好適である。
スキームB及びCに示される各反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒を使用する場合、その種類は反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。このうち、縮合反応において好適に使用可能な溶媒の具体例としては、脂肪族炭化水素(ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)、アミド(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ラクタム及びラクトン(N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等)、尿素誘導体(N,N−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)等が挙げられる。また、ハロゲン化剤との反応において好適に使用可能な溶媒の具体例としては、縮合反応において使用可能な溶媒として例示したもののほかに、ハロゲン化芳香族炭化水素(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等)等が挙げられる。なお、溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜200℃程度が好ましく、20〜150℃がより好ましい。
反応終了後は、常法に従って後処理をし、目的とするアミン誘導体を得ることができる。
式(5)で表されるアミン誘導体は、下記スキームDで表されるように、式(16)で表されるアミン化合物と式(17)で表されるハロゲン化化合物と式(18)で表されるハロゲン化化合物とを触媒存在下で反応させ、得られた化合物を更に式(10)で表されるハロゲン化化合物と反応させ、式(5−1)で表されるアミン誘導体を合成した後、得られたアミン誘導体を公知のハロゲン化剤と反応させることによって合成することができる。
(式中、A
2、R
5、R
6、X
1、X
2、Y
2、X
A、Hal、t及びuは、前記と同じ。Y
2'は、炭素数6〜20のアリール基を表す。)
アミン化合物とハロゲン化化合物との仕込み比は、全アミン化合物の全NH基の物質量に対して、全ハロゲン化化合物の全Hal基を当量以上とすればよいが、1〜1.5当量程度が好適である。
スキームDで表される反応において、使用可能な触媒、溶媒及びハロゲン化剤、これらの使用量、並びに反応条件は、スキームB及びCの説明において述べたものと同様である。
式(6)で表される芳香族化合物は、従来公知の方法で合成することができる。
式(1)で表されるフッ素原子含有重合体において、Y1及びY2が単結合である場合は、例えば、下記スキームEで表されるように、式(4')で表されるアミン誘導体、式(5')で表されるアミン誘導体、及び式(6')で表される芳香族化合物を、触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
(式中、A
1、A
2、Ar
1、X
1、X
2、R
1〜R
6、p、q、r、s、t及びuは、前記と同じ。X
Dは、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は擬ハロゲン基を表す。)
式(4')で表されるアミン誘導体は、スキームB及びCに示した方法に準じて合成することができる。また、式(5')で表されるフェニルアミン誘導体は、スキームDに示した方法に準じて合成することができる。式(6')で表される化合物は、従来公知の方法で合成することができる。
スキームEで表される反応において、使用可能な触媒、溶媒及びハロゲン化剤、これらの使用量、並びに反応条件は、スキームAの説明において述べたものと同様である。
式(2)で表されるフッ素原子含有重合体は、例えば、下記スキームFで表されるように、式(4'')で表されるアミン誘導体、及び式(6'')で表される芳香族化合物を、触媒の存在下で縮合重合させて得られた重合体を、式(9)及び(10)で表される化合物と反応させて末端を封止することで合成することができる。
(式中、R
7〜R
10、A
3、Ar
3、X
3、X
4、Y
3、Y
4、X
A、X
C、w、x、y及びzは、前記と同じ。)
スキームFに示される反応において、縮合重合や、式(9)及び(10)で表される化合物との反応は、スキームAに示される反応で説明したものと同様の条件によって進行することができる。
[電荷輸送性物質]
本発明のフッ素原子含有重合体は、電荷輸送性物質として好適に使用できる。本発明において、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性と同義である。電荷輸送性物質とは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ドーパントと共に用いた際に電荷輸送性があるものでもよい。電荷輸送性ワニスとは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、それにより得られる固形膜が電荷輸送性を有するものでもよい。
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、前記フッ素原子含有重合体からなる電荷輸送性物質、ドーパント、及び有機溶媒を含むものである。
前記フッ素原子含有重合体からなる電荷輸送性物質の含有量は、電荷輸送性物質の析出を抑制する観点から、ワニス中0.1〜20質量%程度が好ましい。
[ドーパント]
前記ドーパントは、後述する有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されないが、下記式(9)で表されるイオン化合物が好適である。
式(9)中、Eは、長周期型周期表の第13族元素を表し、Ar101〜Ar104は、それぞれ独立に、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アセチル基等の炭素数2〜12のアシル基、又はトリフルオロメチル基等の炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基で置換されていてもよい。
前記第13族元素としては、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、ホウ素原子がより好ましい。炭素数6〜20のアリール基及び炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
式(9)中、M
+は、オニウムイオンを表す。前記オニウムイオンとしては、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられるが、特に、下記式(10)で表されるヨードニウムイオンが好ましい。
式(10)中、R101及びR102は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜20のヘテロアリール基で置換されていてもよい。
式(9)で表されるイオン化合物としては、市販品を使用し得る。
前記ドーパントの含有量は、素子特性を考慮すると、電荷輸送性物質に対し、質量比で0.01〜10が好ましく、0.05〜5がより好ましく、0.1〜3がより一層好ましい。
[フッ素原子を含有しない電荷輸送性物質]
本発明の電荷輸送性ワニスは、必要に応じてフッ素原子を含有しない電荷輸送性物質を含んでもよい。このような電荷輸送性物質としては、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体等の電荷輸送性オリゴマーが例として挙げられる。電荷輸送性オリゴマーの分子量は、通常200〜5,000であるが、電荷輸送性の高い薄膜を与えるワニスを調製する観点から、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より一層好ましくは500以上であり、平坦性の高い薄膜を与える均一なワニスを調製する観点から、好ましくは4,000以下であり、より好ましくは3,000以下であり、より一層好ましくは2,000以下である。
前記電荷輸送性オリゴマーのうち、有機溶媒への溶解性と得られる薄膜の電荷輸送性のバランスを考慮すると、アニリン誘導体が好ましい。アニリン誘導体としては、特開2002−151272号公報に記載のオリゴアニリン誘導体、国際公開第2004/105446号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032617号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032616号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2013/042623号に記載のアリールジアミン化合物等が挙げられる。国際公開第2016/006674号に記載のアニリン誘導体等が挙げられる。
また、フッ素原子を含有しない電荷輸送性物質を使用する場合、本発明のフッ素原子含有重合体からなる電荷輸送性物質とフッ素原子を含有しない電荷輸送性物質との使用比率は、得られる有機EL素子の輝度特性をより高めることを考慮すると、フッ素原子を含有しない電荷輸送性物質に対し、質量比で、本発明のフッ素原子含有重合体からなる電荷輸送性物質を好ましくは0.1〜5程度、より好ましくは0.5〜3程度、より一層好ましくは0.5〜1程度である。
[有機溶媒]
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質及びドーパントを良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。本発明のフッ素原子含有重合体は、低極性溶媒に対しても溶解性が高いため、低極性溶媒を高溶解性溶媒として使用することが可能である。
高溶解性溶媒のうち低極性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、アニソール、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、3−フェノキシトルエン、安息香酸メチル等が挙げられる。また、極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する全溶媒中5〜100質量%とすることができる。
なお、電荷輸送性物質及びドーパントは、いずれも前記溶媒に完全に溶解していることが好ましい。
また、本発明においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種含有させることができる。このような溶媒を加えることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、用いる塗布方法に応じたワニス調製が可能となる。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
高粘度有機溶媒を使用する場合、その含有量は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、ワニスに使用する全溶媒中5〜90質量%が好ましい。
更に、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する全溶媒中1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明のワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜設定されるが、通常、25℃で1〜50mPa・sである。また、本発明における電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度及び表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。なお、固形分とは、ワニスの成分のうち、有機溶媒を除いたものをいう。
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、これらに限定されない。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
また、本発明のワニスを用いる場合、焼成雰囲気も特に限定されず、大気雰囲気だけでなく窒素等の不活性ガスや真空中でも、均一な成膜面及び高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度等を勘案して、概ね100〜260℃の範囲内で適宜設定されるが、有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、150〜230℃程度がより好ましい。
特に、本発明のワニスは、200℃未満の低温で焼成可能であることに特徴がある。そのような焼成条件下で作製した薄膜でも、高平坦性及び高電荷輸送性を有する。
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等適当な機器を用いて行えばよい。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で用いる場合、5〜200nm程度とすることができ、特に正孔注入輸送層として用いる場合は、10〜100nmが好ましく、20〜50nmがより好ましく、25〜45nmがより一層好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法が挙げられる。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、前述の本発明の電荷輸送性薄膜を有するものである。
有機EL素子の代表的な構成としては、下記(a)〜(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入層及び正孔注入輸送層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、それぞれ正孔輸送層及び発光層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄をあらかじめ行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし、陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
前述の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法又は塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−2,2'−ジメチルベンジジン、2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2',7,7'−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2'−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2'−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'−テトラ(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N',N'−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3'−ジメチルベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレニル)−N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N1,N4−ジフェニル−N1,N4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N2,N2,N6,N6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2'−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4''−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4',4''−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2':5',2''−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料等が挙げられる。
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2'−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,3,5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2'−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10'−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9'−ビアントラセン、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−[1,1':4',1'':4'',1'''−クォーターフェニル]−4,4'''−ジアミン、4,4'−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2'−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2',7,7'−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4''−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4'−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9−ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、9,9'−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2'−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルホスホリル)−9−(4−(ジフェニルホスホリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられる。これらの材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N10,N10,N10,N10−テトラ(p−トリル)−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N10,N10,N10,N10−テトラフェニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N10,N10−ジフェニル−N10,N10−ジナフタレニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、4,4'−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1'−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、1,4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4'−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4'−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2)、mer−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2)、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4',6'−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2'−ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'−ジ−t−ブチル−(2,2')−ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8−ジ−t−ブチル−5,11−ビス(4−t−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C2)アセチルアセトネート、(E)−2−(2−t−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
電子輸送層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2',2''−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6'−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2'−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルホスフィンオキサイド、3,3',5,5'−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4'−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al2O3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、三酸化モリブデン(MoO3)、アルミニウム、リチウムアセチルアセトネート(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
前述した有機EL素子作製方法において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行うかわりに、正孔輸送層、発光層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して前記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送層、発光層を順次形成し、更に陰極材料を蒸着して有機EL素子とする。
使用する陰極及び陽極材料としては、前述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
正孔輸送層及び発光層の形成方法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、それぞれ正孔注入層又は正孔輸送層の上に塗布した後、焼成することで成膜する方法が挙げられる。
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1'−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1'−ペンテン−5'−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等が挙げられる。溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されず、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
焼成方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入輸送層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層及び電子注入層の形成方法及び具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層及び電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
なお、電極及び前記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等と共に封止してもよい。
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に限定されない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)1H-NMR:Bruker社製、Ascend 500
(2)LC/MS:ウォーターズ社製、ZQ 2000
(3)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(6)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)測定:(株)島津製作所製(カラム:SHODEX GPC KF-803l+GPC KF-804L、カラム温度:40℃、検出器:UV検出器(254nm)及びRI検出器、溶離液:THF、カラム流速:1.0mL/min.)
(7)有機EL素子の作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(8)有機EL素子の輝度等の測定:(株)イーエッチシー製、多チャンネルIVL測定装置
(9)有機EL素子の寿命測定:(株)イーエッチシー製、有機EL輝度寿命評価システムPEL-105S
[1]モノマーの合成
[合成例1]モノマー1の合成
[合成例1−1]中間体1−1の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(7.25g、20mmol)及びヨードベンゼン(8.16g、40mmol)のキシレン懸濁液(145mL)に、Pd(PPh3)4(1.16g、1mmol)及びt-BuONa(5.77g、60mmol)を加え、窒素置換後、4時間加熱還流した。反応終了後、室温まで放冷し、水(70mL)を加え、酢酸エチルにより抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥後、セライトろ過した。ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、中間体1−1を褐色液体(収量8.66g、収率84%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (500MHz, CDCl3): δ 2.25(s, 6H), 5.39(brs, 2H), 6.82-6.87(m, 6H), 6.98(d, J=8.5Hz, 2H), 7.17-7.19(m, 6H), 7.25-7.36(m, 4H).
LC/MS (ESI+) m/z; 515[M+1]+, 513[M-1]-
中間体1−1(7.60g、14.8mmol)及び4−ヨードトルエン(7.09g、32.5mmol)のトルエン懸濁液(150mL)に、Pd(dba)2(340mg、0.6mmol)、[(t-Bu)3PH]BF4(344mg、1.18mmol)及びt-BuONa(4.27g、44.4mmol)を加え、80℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、水(75mL)を加えて有機層を洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥後、セライトろ過した。ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で精製し、中間体1−2を含む留分を濃縮した。そこへメタノールを加え、析出した固体をろ取し、メタノール洗浄することにより、中間体1−2を白色固体(収量6.04g、収率59%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 1.98(s, 6H), 2.26(s, 6H), 6.78-6.89(m,10H), 6.98(d, J=8.0Hz,4H), 7.06-7.08(m, 4H), 7.12-7.16(m, 6H).
LC/MS (ESI+) m/z; 695[M+1]+
中間体1−2(6.01g、8.7mmol)にDMF(45mL)、THF(20mL)を加え、溶液とした後に0℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(3.00g、16.9mmol)を加えた。その後、室温にて1時間攪拌し、0℃に冷却後、水(60mL)を滴下した。析出した固体をろ取し、水、メタノールの順で洗浄することにより、モノマー1を白色固体(収量7.25g、収率98%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 1.99(s, 6H), 2.27(s, 6H), 6.65-6.67(m, 4H), 6.78(d, J= 8.5Hz,4H), 6.98-7.02(m, 6H), 7.10(d, J= 8.5Hz, 2H), 7.16(d, J=8.0Hz, 2H), 7.21-7.23(m, 4H).
LC/MS (ESI+) m/z; 853[M+1]+
[合成例2]モノマー2の合成
[合成例2−1]中間体2−1の合成
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(2.32g、20mmol)及び4−ブロモベンジルブロミド(5.00g、20mmol)のジメチルホルムアミド溶液(45mL)を0℃に冷却し、そこへ水素化ナトリウム(0.96g、24mmol)を加えた。室温にて2時間攪拌し、0℃に冷却後、水(90mL)を滴下し、酢酸エチルにより抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥後、ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、中間体2−1を無色液体(収量5.32g、収率93%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.87(t, J= 7.5Hz,3 H), 1.76(q, J= 7.5Hz, 2H), 3.57(s, 2H), 4.39(d, J= 3.0Hz, 2H), 4.45(d, J=3.0Hz, 2H), 4.51(s, 2H), 7.21(d, J=8.5Hz, 2H), 7.47(d, J=8.5Hz, 2H).
LC/MS (ESI+) m/z; 287[M+1]+
2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(1.09g、3mmol)及び中間体2−1(1.71g、6mmol)のトルエン懸濁液(22mL)に、Pd(dba)2(34.5mg、0.06mmol)及びt-BuONa(0.69g、7.2mmol)を加え、80℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、水(20mL)を加え、酢酸エチルにより抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥後、セライトろ過した。ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、モノマー2を褐色液体(収量1.99g、収率86%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.84(t, J=7.5Hz, 6H), 1.75(q, J=7.5Hz, 4H), 2.24(s, 6H), 3.54(s, 4H), 4.37(d, J= 6.0Hz, 4H), 4.44-4.45(m, 8H), 5.50(brs, 2H), 6.81(d, J=8.0Hz, 4H), 6.98(d, J=8.0Hz, 2H), 7.14-7.18(m, 6H), 7.24-7.26(m, 2H).
LC/MS (ESI+) m/z; 793[M+Na]+
[合成例3]モノマー3の合成
[合成例3−1]中間体3−1の合成
モノマー2(1.99g、2.6mmol)及びヨードベンゼン(1.16g、5.7mmol)のトルエン懸濁液(40mL)に、Pd(dba)2(148mg、0.26mmol)、[(t-Bu)3PH]BF4(150mg、0.52mmol)及びt-BuONa(0.74g、7.8mmol)を加え、窒素置換後、1時間加熱還流した。反応終了後、室温まで放冷し、水(40mL)を加え、酢酸エチルにより抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥後、セライトろ過した。ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、中間体3−1を褐色液体(収量2.18g、収率91%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.85(t, J=7.5Hz, 6H), 1.76(q, J= 7.5Hz, 4H), 1.99(s, 6H), 3.56(s, 4H), 4.38(d, J=5.5Hz, 4H), 4.44-4.46(m, 8H), 6.84-6.92(m, 10H), 7.10-7.18(m, 14H).
LC/MS (ESI+) m/z; 940[M+NH4]+
中間体3−1(2.18g、2.4mmol)にDMF(22mL)を加え、溶液とした後に0℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(0.84g、4.8mmol)を加えた。その後、室温にて1時間攪拌し、水(40mL)を滴下した。析出した固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、モノマー3を淡黄色固体(収量2.37g、収率93%)として得た。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.85(t, J=7.5Hz, 6H), 1.76(q, J=7.5Hz, 4H), 1.99(s, 6H), 3.57(s, 4H), 4.38(d, J=6.0Hz, 4H), 4.44-4.47(m, 8H), 6.72(d, J=8.5Hz, 4H), 6.85(d, J=8.5Hz, 4H), 7.05(s, 2H), 7.11-7.19(m, 8H), 7.24-7.26(m, 4H).
LC/MS (ESI+) m/z; 1098[M+NH4]+
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン(4.80g、8.8mmol)及びビス(ピナコラート)ジボロン(5.33g、21mmol)の1,4−ジオキサン溶液(48mL)に、酢酸カリウム(3.45g、35mmol)及びPdCl2(dppf)のジクロロメタン付加体(287mg、0.35mmol)を加え、窒素置換後、100℃で3時間加熱した。反応終了後、セライトろ過し、ろ液を濃縮し得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、モノマー4を白色固体(2.64g、47%収率)として得た。1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ 0.49-0.60(m, 4H), 0.79-0.82(m, 6H), 1.01-1.22(m, 20H), 1.39(s, 24H), 1.97-2.01(m, 4H), 7.71-7.82(m, 6H).
[2]ポリマーの合成
[実施例1]ポリマー1の合成
モノマー1(1.38g、1.62mmol)、モノマー3(0.19g、0.18mmol)及びモノマー4(0.96g、1.5mmol)のトルエン溶液(32mL)に、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(182mg、0.45mmol)、Pd(PPh3)4(21mg、18μmol)及び2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(3.6mL、7.2mmol)を加え、16時間加熱還流した。反応液にフェニルボロン酸(219mg、1.8mmol)を加え、更に4時間加熱還流した。反応終了後、1mol/L塩酸で有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。セライトろ過後、有機層を体積が1/4になるまで濃縮し、メタノール(320mL)に滴下した。室温で1時間攪拌した後、析出した固体をろ取した。この固体をTHF(20mL)に溶解させ、メタノール(320mL)に滴下し、室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することによりポリマー1を淡黄色固体(1.47g)として得た。GPCによるMw及びMnの測定結果を以下に示す。
Mw=6,400
Mn=3,900
Mw/Mn=1.64
モノマー3(1.62g、1.5mmol)及びモノマー4(0.8g、1.25mmol)のトルエン溶液(32mL)に、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(152mg、0.38mmol)、Pd(PPh3)4(87mg、75μmol)及び2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(3mL、6mmol)を加え、24時間加熱還流した。反応液にフェニルボロン酸(183mg、1.5mmol)を加え、更に4時間加熱還流した。反応終了後、1mol/L塩酸で有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。セライトろ過後、有機層を体積が1/4になるまで濃縮し、メタノール(320mL)に滴下した。室温で1時間攪拌した後、析出した固体をろ取した。この固体をTHF(10mL)に溶解させ、メタノール(320mL)に滴下し、室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することによりポリマー2を無色固体(1.02g)として得た。GPCによるMw及びMnの測定結果を以下に示す。
Mw=7,800
Mn=4,900
Mw/Mn=1.59
モノマー2(1.54g、2mmol)及び2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン(1.11g、2.02mmol)のトルエン溶液(30mL)に、Pd(dba)2(115mg、0.2mmol)、[(t-Bu)3PH]BF4(116mg、0.4mmol)及びt-BuONa(0.58g、6mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応液にジフェニルアミン(338mg、2mmol)を加え、更に3時間加熱還流した。反応終了後、1mol/L塩酸で有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。セライトろ過後、有機層を体積が1/4になるまで濃縮し、メタノール(200mL)に滴下した。室温で1時間攪拌した後、析出した固体をろ取した。この固体をトルエン(10mL)に溶解させ、メタノール(100mL)に滴下し、室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することによりポリマー3を黄色固体(0.44g)として得た。GPCによるMw及びMnの測定結果を以下に示す。
Mw=5,700
Mn=4,400
Mw/Mn=1.30
モノマー1(1.36g、1.6mmol)及びモノマー4(1.29g、2.0mmol)のトルエン溶液(27mL)に、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(162mg、0.4mmol)、Pd(PPh3)4(92mg、80μmol)及び2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(3.2mL、6.4mmol)を加え、21時間加熱還流した。反応液に、中間体2−1(0.46g、1.6mmol)を加え、更に4時間加熱還流した。反応終了後、反応終了後、1mol/L塩酸で有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。セライトろ過後、有機層を体積が1/4になるまで濃縮し、メタノール(270mL)に滴下した。室温で1時間攪拌した後、析出した固体をろ取した。この固体をTHF(20mL)に溶解させ、メタノール(270mL)に滴下し、室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することによりポリマー4を白色固体(1.46g)として得た。GPCによるMw及びMnの測定結果を以下に示す。
Mw=6,400
Mn=4,100
Mw/Mn=1.55
[3]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例5]電荷輸送性ワニスAの調製
ポリマー1(0.129mg)及びドーパントとして下記式で表されるP−1(東京化成(株)製)(0.026mg)を、シクロヘキサノン(4.0g)及びアニソール(1.0g)の混合溶媒に加え、400rpmで、50℃、5分間加熱攪拌した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスAを得た。
[実施例6]電荷輸送性ワニスBの調製
ポリマー1をポリマー2(0.129mg)にかえた以外は、実施例5と同様の方法で電荷輸送性ワニスBを得た。
[実施例7]電荷輸送性ワニスCの調製
ポリマー1をポリマー3(0.129mg)にかえた以外は、実施例5と同様の方法で電荷輸送性ワニスBを得た。
[実施例8]電荷輸送性ワニスDの調製
ポリマー1をポリマー4(0.129mg)にかえた以外は、実施例5と同様の方法で電荷輸送性ワニスBを得た。
[4]有機EL素子の作製及びその特性評価
電気特性を評価する際の基板には、インジウム錫酸化物が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板(以下、ITO基板と略す。)を用いた。ITO基板は、O2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて、表面上の不純物を除去してから使用した。
[実施例9]電荷輸送性ワニスAを用いた有機EL素子の作製
実施例5で調製した電荷輸送性ワニスAを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気雰囲気下、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα−NPDを0.2nm/秒にて30nm成膜した。次に、CBPとIr(PPy)3を共蒸着した。共蒸着はIr(PPy)3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq3、フッ化リチウム及びアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alq3及びアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製、HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
[実施例10]電荷輸送性ワニスBを用いた有機EL素子の作製
電荷輸送性ワニスAのかわりに電荷輸送性ワニスBを用いた以外は、実施例9と同様の方法で有機EL素子を作製した。
[実施例11]電荷輸送性ワニスCを用いた有機EL素子の作製
電荷輸送性ワニスAのかわりに電荷輸送性ワニスCを用いた以外は、実施例9と同様の方法で有機EL素子を作製した。
[実施例12]電荷輸送性ワニスDを用いた有機EL素子の作製
電荷輸送性ワニスAのかわりに電荷輸送性ワニスDを用いた以外は、実施例9と同様の方法で有機EL素子を作製した。
実施例9〜12で作製した有機EL素子について、輝度5,000cd/m2における、電圧、電流密度、電流効率、発光効率及び外部量子効率(EQE)、並びに半減期(初期輝度5,000cd/m2)を測定した。結果を表1に示す。