以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1〜図11は、本発明の一実施の形態及びその変形例を説明するための図である。このうち、図1及び図2は、筋力補助装置10の全体を示す斜視図であり、とりわけ図1は、人体に装着した状態にて筋力補助装置10を示している。
筋力補助装置10は、相対動作可能に連結された第1装着具20及び第2装着具25と、第1装着具20及び第2装着具25の相対位置を制御するアシスト機構(位置制御装置)15と、を有している。筋力補助装置10は、第1装着具20及び第2装着具25の相対動作に関連した指標、並びに、第1装着具20及び第2装着具25を相対回転させようとする力に関連した指標の少なくとも一方を得るためのセンサ80と、センサ80からの情報に基づいてアシスト機構15を制御する制御部13と、をさらに有している。アシスト機構15は、制御部13に制御されて、第1装着具20に対する第2装着具25の少なくとも一の向きへの相対動作を規制することができる。
以下の説明する例では、第1装着具20及び第2装着具25が、アシスト軸線となる第1回転軸線d1を中心として相対回転可能となっており、アシスト機構15が、第2装着具25の第1装着具20に対するアシスト軸線(第1回転軸線d1)を中心とした回転位置を制御する。すなわち、アシスト軸線は、筋力補助装置10から筋力補助のために出力されるアシスト力によって相対回転を制御されるようになる第1装着具20及び第2装着具25の回転軸線のことを指している。とりわけ図示された例において、アシスト機構15は、第1装着具20に保持された出力手段30と、出力手段30から出力された力を第2装着具25まで伝達する伝達手段35と、を有している。制御部13は、出力手段30及び伝達手段35の動作を制御する。アシスト機構15は、制御部13に制御されて、第1装着具20に対する第2装着具25のアシスト軸線d1を中心とした少なくとも一方向への相対回転を規制することができる。
図1に示すように、第1装着具20及び第2装着具25は、関節によって接続された人体の二つの部位にそれぞれ取り付けられる。アシスト機構15は、制御部13からの指示に基づいて第1装着具20及び第2装着具25の相対位置を制御し、関節を介した二つの部位の筋力を補助する。とりわけここで説明する筋力補助装置10には、意図しない位置で筋力の補助を受けることを効果的に防止して所望とする体勢にて筋力の補助を受けること可能にするための工夫、並びに、意図せずに筋力の補助が解除されることを効果的に防止するための工夫がなされている。
図示された例では、第1装着具20が、装着ベルト11(図3〜図5)を介して胴体に取り付けられ、第2装着具25が、後述する装着部26を介して上腕に取り付けられる。そして、筋力補助装置10は、肩の動作を補助する。ここで、一つの関節は、互いに異なる軸線を中心とした複数種の相対回転運動を可能にする。図1に示すように、肩関節は、上腕を胴体に対して屈伸軸daを中心として相対回転させる屈曲伸展運動と、上腕を胴体に対して内外転軸dbを中心として相対回転させる内転外転運動と、上腕を胴体に対して内外旋軸dcを中心として相対回転させる内旋外旋運動と、を可能にする。そして、図示された筋力補助装置10は、後述するように、上腕が下がらないように所定の位置に保持することを補助する。
また図示された例においてアシスト機構15は、筋肉補助力(アシスト力)の出力部としての出力軸76を有している。出力軸76は、第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として第1装着具20に対して相対回転可能となっている。この出力軸76が、第2装着具25と接続している。出力軸76の回転軸線となる第1回転軸線d1は、肩の屈伸軸daに対応して設けられている。第2装着具25が第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の屈曲運動及び伸展運動が可能となる。
なお、本発明による筋力補助装置は、図示された例に限られず、屈曲運動、伸展運動、内転運動、外転運動、内旋運動、外旋運動のいずれか一以上を補助するようにしてもよい。また、本発明による筋力補助装置は、図示された例に限られず、肘、首、腰、股、手首等における人体の動作を補助するようにしてもよい。
以下、図示された具体例を参照しながら、各構成要素について順に説明していく。なお、以下で参照する図1〜図14においては、理解の容易を図るため、一の図面で示されている構成要素が、他の図面に省略されていることもある。
まず、第1装着具20について説明する。図1及び図2に示すように、第1装着具20は、中央フレーム21及び側方フレーム22を有している。中央フレーム21には、装着ベルト11(図3〜図5)が取り付けられるベルト保持部21aが設けられている。中央フレーム21が、装着ベルト11を介して着用者の胴体、とりわけ背中に対面する位置に取り付けられる。側方フレーム22は、中央フレーム21から横方向外方に延び出している。側方フレーム22は、中央フレーム21に接続した後方フレーム部22aと、後方フレーム部22aの横方向外方端から前方に延び出した前方延出フレーム部22bと、を有している。後方フレーム部22aは、肩に後方から対面する位置に配置されている。前方延出フレーム部22bは、肩に横方向における外方から対面する位置に配置されている。側方フレーム22は、中央フレーム21に対して、第3回転軸線d3を中心として相対回転可能に接続されている。この第3回転軸線d3は、肩の内外旋軸dcに対応して設けられている。側方フレーム22が中央フレーム21に対して第3回転軸線d3を中心として相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の内旋運動及び外旋運動が可能となる。
肩の動作を補助する図示された筋力補助装置10は、両方の肩に作用するように構成されている。具体的には、中央フレーム21の両側方にそれぞれ側方フレーム22が設けられている。各側方フレーム22に、アシスト機構15の伝達手段35等が支持されている。また、各側方フレーム22に対応して、第2装着具25が設けられている。中央フレーム21を中心として両側方に設けられた一対の構成要素は、対称性を有しているものの、その他において同一に構成され得る。したがって、以下の説明および図3〜図9においては、右肩に作用する構成について記載する。
また、本明細書で用いる「前」、「後」、「上」、「下」及び「横方向」等の用語は、筋力補助装置10を着用した着用者を基準とする「前」、「後」、「上」、「下」及び「横方向」を意味することとする。
次に、第2装着具25について説明する。図3は、前方(正面)から、第2装着具25を示している。第2装着具25は、詳しくは後述する伝達手段35の出力軸76と接続している。第2装着具25は、出力軸76の回転にともなって、出力軸76の回転軸線である第1回転軸線d1を中心として回転する。第2装着具25は、人体に取り付けられる装着部26と、出力軸76と固定された作用部28と、装着部26と作用部28とを連結する連結部27と、を有している。作用部28は、伝達手段35の最下流側(最出力側)となる出力軸76から出力手段30で発生された力を入力される。連結部27は、出力軸76の第1装着具20に対する回転にともなって装着部26が第1装着具20に対して回転するよう、作用部28と装着部26とを連結している。
図示された例において、装着部26は、人体の上腕に取り付けられる。装着部26は、アシスト機構15から供給される力を上腕に効率的に伝達するため、第1回転軸線d1周りの回転にともなった移動方向への上腕との相対移動を規制されることが好ましい。とりわけ筋力補助装置10が上腕の持ち上げを補助する場合には、上腕の装着部26に対する後方への相対移動を効果的に規制することが好ましい。図3によく示されているように、図示された装着部26は、上腕が挿入される筒状部を形成するベルト保持部26a及び腕ベルト26bと、連結部27と接続するブラケット26cと、を有している。ベルト保持部26a及びブラケット26cは、例えば、高剛性の樹脂成形物等からなる。図示された例において、ベルト保持部26a及びブラケット26cは、一体的に形成されている。図4及び図5に示すように、ベルト保持部26aは、上腕に対して後方から対面する位置に配置される。一方、腕ベルト26bは、柔軟性を有したベルト材からなり、上腕に対して主として前方から対面する位置に配置される。腕ベルト26bの長さを調節することで、装着部26が上腕を安定して保持することが可能となる。
連結部27は、アシスト機構15から供給される力を装着部26に伝達するため、第1回転軸線d1を中心として、装着部26及び作用部28が相対回転しないように、装着部26及び作用部28を連結している。すなわち、第2装着具25は、アシスト機構15から第1回転軸線d1を中心とした回転力を作用されるため、遊びや構成要素自体の弾性変形を除くと、アシスト機構15から回転力を入力される作用部28と人体に補助力を出力する装着部26は、アシスト機構15から入力される力の方向、つまり第1回転軸線d1を中心とした円周方向に、相対動作しないようになっている。
図示された例において、連結部27は、作用部28に対して第1回転軸線d1と垂直な第2回転軸線d2を中心として相対回転可能となるように、作用部28に接続している。この第2回転軸線d2は、肩の内外転軸dbに対応して設けられている。連結部27が作用部28に対して第2回転軸線d2を中心として相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の内転運動及び外転運動が可能となる。
着用者の拘束感を軽減する目的からは、連結部27は、第1回転軸線d1に直交する面への投影において、第1回転軸線d1と装着部26との間の距離が変化するように、装着部26と作用部28とを接続していることが好ましい。さらに、着用者の拘束感を軽減する目的からは、連結部27は、第2装着具25が作用部28から装着部26までの間に3自由度を持つ機構を構成するよう、作用部28と装着部26とを連結していることが好ましい。図3によく示されているように、図示された例において、連結部27は、作用部28に対して動作可能に接続した第1リンク27aと、第1リンク27aに動作可能に接続し且つ装着部26に動作可能に接続した第2リンク27bと、を有している。この連結部27によれば、作用部28から装着部26までの構成により、3自由度の動作を行うことができる。言い換えると、装着部26は、作用部28に対して、3自由度の相対動作を行うことができる。
図3〜図5に示された例において、第1リンク27aと第2リンク27bは、第1連結回転軸線d2aを中心として相対回転可能に接続している。第1連結回転軸線d2aは、第1回転軸線d1と垂直であり、第2回転軸線d2と平行になっている。第2リンク27bと装着部26は、第2連結回転軸線d2bを中心として相対回転可能に接続している。第2連結回転軸線d2bは、第1回転軸線d1と垂直であり、第2回転軸線d2と平行になっている。
また、図3に示すように、第2回転軸線d2と直交する面内において、連結部27の第1リンク27a及び第2リンク27bの接続位置(以下において、「中間接続位置」とも呼ぶ)mjは、連結部27と作用部28との接続位置(以下において、「基端側接続位置」とも呼ぶ)pjと、連結部27と装着部26との接続位置(以下において、「先端側接続位置」とも呼ぶ)djと、を通過する仮想直線vslに対して常に一方の側に位置している。とりわけ図示された例においては、構造的に、中間接続位置mjが、常に、基端側接続位置pj及び先端側接続位置djを通過する仮想直線vslの一方側に位置するようになっている。つまり、連結部27の両端が最も離間するように伸張した場合においても、中間接続位置mjは、仮想直線vsl上に位置していない。そして、図示された例において、中間接続位置mjは、仮想直線vslに対して、出力軸76と同一の側に位置している。図3に示すように、中間接続位置mjは、出力軸76とともに、仮想直線vslを挟んで人体とは反対側に位置している。この構成によれば、連結部27が短縮した際に、連結部27の中間部が、人体に接触してしまうことを効果的に回避することができる。
なお、図3に示された例では、連結部27が、付勢部材として機能する付勢材27cを有している。付勢材27cは、第1リンク27a及び第2リンク27bに跨がって配置されている。付勢材27cは、第2リンク27b及び装着部26の自重に抗して、第2リンク27b及び装着部26をいくらか引き上げ、これにより図3に示すように、第1リンク27a及び第2リンク27bを屈曲した状態に維持する。連結部27は、図3に示された状態から、その両端間の距離を長くするように曲がること及び短くするように曲がることの両方可能となっている。
ただし、図示された例とは異なり、連結部27が、最も伸張した場合に仮想直線vslに位置するようにしてもよいし、また、中間接続位置mjが、仮想直線vslの両側に位置することが可能となっていてもよい。このような筋力補助装置10については、人体に装着した実際の使用中において連結部27が最も伸張する条件で、中間接続位置mjが、仮想直線vslの一方の側、とりわけ出力軸76と同一の側で人体とは反対側に、位置することが好ましい。この場合、筋力補助装置10の使用中に、連結部27の中間部が、人体に接触してしまうことを効果的に回避することができる。
次に、アシスト機構15について説明する。上述したように、アシスト機構15は、第1装着具20に保持された出力手段30と、出力手段30から出力された力を第2装着具25まで伝達する伝達手段35と、を有している。このアシスト機構15は、第1装着具20及び第2装着具25の相対位置を制御することができる。とりわけ図示された例において、アシスト機構15は、第1回転軸線(アシスト軸線)を中心として相対回転可能に第1装着具20及び第2装着具25に連結し、且つ、制御部13からの指示により、アシスト機構15は、第1装着具20に対する第2装着具25のアシスト軸線d1を中心とした少なくとも一方向への相対回転を規制する。
まず、出力手段30について説明する。出力手段30は、いわゆるアクチュエータを含んでおり、第1装着具20及び第2装着具25の相対位置を制御するための筋力の補助として利用される力を伝達手段35に出力する。図示された例において、アシスト機構15は、伸縮可能なアクチュエータ、言い換えると、その長手方向長さを変化させる直動型のアクチュエータ31を有している。図5に示すように、アクチュエータ31は、一端において、伝達手段35に接続している。アクチュエータ31は、その他端において、第1装着具20の側方フレーム22(後方フレーム部22a)に接続している。出力手段30に要求される筋力に応じて、複数のアクチュエータ31を設けることができる。
アクチュエータ31として、流体圧により膨張および収縮可能な部材を用いることができる。一具体例として、アクチュエータ31として、流体圧式アクチュエータとして知られたMcKibben人工筋肉を用いることができる。McKibben人工筋肉からなるアクチュエータ31は、流体(典型的には、気体)を内部に供給されることで、拡径するとともに短縮する。アクチュエータ31は、この短縮にともなって、収縮力を発生させる。図示された例において、出力手段30は、アクチュエータ31に流体を供給可能な流体源(流体圧源)32を有している。図5に示すように、例えばコンプレッサとして構成された流体源32が、第1装着具20の中央フレーム21に支持されている。
次に、伝達手段35について説明する。伝達手段35は、出力手段30から出力された筋力補助力を第2装着具25まで伝達する。図6に示すように、ここで説明する伝達手段35は、出力手段30から出力された力の第2装着具25への伝達および遮断を切り替える切替手段40を含んでいる。図6は、アクチュエータ31及び第2装着具25とともに、伝達手段35の構成を示す斜視図である。図6においては、理解の容易を図るため、第1装着具20等を省略している。
切替手段40は、第1部材41及び第2部材46を有しており、詳しくは後述するようにドラムブレーキ機構またはバンドブレーキ機構39として機能する。第1部材41は、第1中間回転軸線d1aを中心として回転可能に、第1装着具20の側方フレーム22、とりわけ後方フレーム部22aに支持されている。第2部材46は、直動運動するアクチュエータ31の一端と接続している。第1部材41及び第2部材46は、相対接離可能である。すなわち、第1部材41及び第2部材46は、互いから離間する動作、及び、互いに接近する動作を行うことができる。とりわけ図示された例において、第1部材41及び第2部材46は、互いから離間した相対位置、及び、互いに接触した相対位置をとることができる。第1部材41は、第2部材46から離間した位置において、第2部材46に拘束されることなく回転することができる。第2部材46は、第1部材41と接触した状態において、第1部材41の回転位置を保持する。言い換えると、第2部材46は、第1部材41と接触した状態において、第2部材46と第1部材41との相対動作、とりわけ相対回転を規制する。図示された例において、第1部材41は、第2装着具25に連結し、とりわけ、第1部材41が第2装着具25と連動し、さらに詳しくは、第1部材41の動作に応じて第2装着具25が動作する。したがって、第1部材41及び第2部材46の相対位置を調節することで、第2装着具25を介して着用者の上腕を所定に位置に維持することができる。
切替手段40の具体的な構成は後述するとして、先に、主として図6を参照しながら、伝達手段35の切替手段40以外の構成について説明する。図6に示された例において、伝達手段35は、切替手段40に加えて、切替手段40の第1部材41と接続した第1中継軸部材71と、第1中継軸部材71と連動する第2中継軸部材73と、第2中継軸部材73と連動する出力軸76と、を有している。
第1中継軸部材71は、第1装着具20の側方フレーム22をなす後方フレーム部22aに保持されている。第1中継軸部材71は、第1中間回転軸線d1aを中心として回転可能に保持されている。第1部材41は、第1中継軸部材71に固定されている。これにより、第1部材41は、側方フレーム22の後方フレーム部22aに支持され、且つ、第1中継軸部材71と同期して第1中間回転軸線d1aを中心として回転する。第1中継軸部材71には、第1伝達歯車72が固定されている。第1伝達歯車72は、例えば平歯車として構成されている。
第2中継軸部材73は、第1装着具20の側方フレーム22をなす前方延出フレーム部22bに保持されている。第2中継軸部材73は、第2中間回転軸線d1bを中心として回転可能に保持されている。第2中継軸部材73には、第2伝達歯車74が固定されている。第2伝達歯車74は、第2中継軸部材73の一方の端部(後方端部)近傍に配置されている。この第2伝達歯車74は、第1伝達歯車72と螺合し、したがって、第2中継軸部材73は、第1中継軸部材71と連動する。第2伝達歯車74は、第1伝達歯車72に対応した構成を有しており、例えば平歯車として構成されている。図示された例において、第2中継軸部材73の回転軸線である第2中間回転軸線d1bは、第1中継軸部材71の回転軸線である第1中間回転軸線d1aと平行になっている。第1中継軸部材71の他方の端部(前方端部)近傍には、第3伝達歯車75が固定されている。第3伝達歯車75は、例えばはすば歯車として構成されている。
出力軸76は、第2中継軸部材73と同様に、前方延出フレーム部22bに保持されている。既に説明したように、出力軸76は、第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として回転可能に保持されている。出力軸76には、第4伝達歯車77が固定されている。第4伝達歯車77は、出力軸76の一方の端部(外方端部)近傍に配置されている。この第4伝達歯車77は、第3伝達歯車75と螺合し、結果として、出力軸76は、第2中継軸部材73、第1中継軸部材71及び切替手段40の第1部材41と連動する。第4伝達歯車77は、第3伝達歯車75に対応した構成を有しており、例えばはすば歯車として構成されている。図示された例において、出力軸76の回転軸線である第1回転軸線d1は、第2中継軸部材73の回転軸線である第2中間回転軸線d1bと垂直であり且つ高さ方向にずれている。出力軸76の他方の端部(内方端部)は、第2装着具25の作用部28に固定されている。
次に、主として図7〜図9を参照して、切替手段40の詳細について説明する。まず、第1部材41について説明する。図7に示すように、第1部材41は、第1中継軸部材71に固定された回転ドラム42を有している。回転ドラム42は円板状の外径を有し、回転ドラム42の中心軸線は、第1中継軸部材71の回転軸線である第1中間回転軸線d1a上に位置している。回転ドラム42は、第1中継軸部材71を介して、側方フレーム22の後方フレーム部22aに保持されている。回転ドラム42の板面が、後方フレーム部22aの平面方向に揃っている。したがって、回転ドラム42が、着用者の身体から大きく突出することを効果的に防止することができる。回転ドラム42は、その表層部に摩擦層42aを有している。摩擦層42aは、後述する第2部材46と接触するようになる部位である。摩擦層42aは、第2部材46との間でより大きな摩擦力を生み出すゴム等から形成され得る。
次に、第2部材46及び第2部材46に関連する構成について説明する。図7〜図9に示すように、第2部材46は、第1揺動部材47a及び第2揺動部材47bを含んでいる。このうち、第1揺動部材47aが、そのブラケット48bを介して、アクチュエータ31と接続している。また、切替手段40は、プレート状に形成された一対の支持体50を有している。第2部材46(揺動部材47a,47b)は、一対の支持体50によって動作可能、とりわけ揺動可能に保持されている。図4に示すように、一対の支持体50は、第1中間回転軸線d1aと平行な方向に配列され、回転ドラム42並びに一対の揺動部材47a,47bは、一対の支持体50の間に位置している。回転ドラム42は、支持体50に対して第1中間回転軸線d1aを中心として相対回転可能となっている。すなわち、回転ドラム42は、一対の支持体50の間において、支持体50に対して回転可能となっている。なお、図7〜図9においては、手間側の支持体50を省略している。
図7〜図9に示すように、各揺動部材47a,47bは、円弧状の外形状を有している。各揺動部材47a,47bは、一方の端部部分を中心として、支持体50に対して揺動可能となっている。揺動部材47a,47bの揺動軸線は、第1中間回転軸線d1aと平行になっている。一対の支持体50の間となるスペースにおいて、回転ドラム42は、一対の揺動部材47a,47bの間に配置されている。各揺動部材47a,47bは、第1部材41の回転ドラム42に対して第1中間回転軸線d1aを中心とした径方向外方から対面している。一対の揺動部材47a,47bによって、回転ドラム42の外周面の多くの部分が覆われている。揺動部材47a,47bは、支持体50に対して揺動することで、第1中間回転軸線d1aを中心とした径方向外方から回転ドラム42に当接することができる。すなわち、第1部材41及び第2部材46は、バンドブレーキ機構39を形成している。第2部材46をなす各揺動部材47a,47bは、円弧状の本体部48と、第1部材41に当接する第2接触面46aを形成する摩擦体49と、を有している。摩擦体49は、回転ドラム42の摩擦層42aに接触し摩擦層42aとの間で摩擦力を生む。摩擦層42aは、十分な摩擦力を生み出す材料、例えばゴム等から形成される。
また、図示された例において、切替手段40は、揺動部材47a,47bが回転ドラム42から離間するよう付勢する付勢手段として、付勢部材52をさらに有している。付勢部材52は、支持体50に固定された支持ベース51と、各揺動部材47a,47bのブラケット48cと、の間に配置されている。図示された例において、付勢部材52は、引っ張りバネによって形成されている。
さらに、各揺動部材47a,47bをなす本体部48は同期歯車48aを有している。この同期歯車48aによって、一対の揺動部材47a,47bの揺動動作が調整される。具体的には、一対の揺動部材47a,47b間での同期歯車48aの噛み合いにより、一対の揺動部材47a,47bが同期して対称的に回転ドラム42に対して動作する。したがって、アクチュエータ31からの作用により第1揺動部材47aが回転ドラム42に接触している際に、第2揺動部材47bも回転ドラム42に接触する。また、アクチュエータ31からの作用により第1揺動部材47aが回転ドラム42から離間すると、第2揺動部材47bも回転ドラム42から離間する。
図示されたアシスト機構15では、アクチュエータ31が図7に示された状態から縮むと、図8に示すように、アクチュエータ31が、第2部材46をなす第1揺動部材47aを引き寄せる。これにより、一対の揺動部材47a,47bが第1部材41をなす回転ドラム42に当接する。図8に示された状態において、第2部材46は第1部材41を保持し、第2部材46と第1部材41との相対回転が規制される。このとき、第1部材41と連動して動作する第1中継軸部材71、第2中継軸部材73及び出力軸部材76も、回転を規制される。これにより、出力軸部材76を保持する第1装着具20と、出力軸部材76に接続した第2装着具25との、出力軸部材76の回転軸線である第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした相対回転が規制される。例えば、第2装着具25を装着された上腕が、アシスト機構15からの筋力の補助によって、所定の位置、例えば肩よりも持ち上げた位置に保持することを補助される。
ところで、図示された例において、支持体50は、第1装着具20の側方フレーム22をなす後方フレーム部22aに支持されている。ただし、この支持体50は、後方フレーム部22aに対して回転可能となっている。具体的には、支持体50は、第1中継軸部材71に対して回転可能に保持されており、結果として、後方フレーム部22aに対して回転可能となっている。したがって、支持体50に支持された第2部材46および支持体50に固定された支持ベース51等も、第1装着具20に対して固定されておらず、第1装着具20に対して第1中間回転軸線d1aを中心として相対回転可能となっている。
その一方で、切替手段40は、支持体50や第2部材46の自由な回転を規制するための調整手段37を更に有している。調整手段37から供給される力と、出力手段30から供給される力とのバランスにより、第1部材41、第2部材46及び支持体50の状態が制御されるようになる。図示された例において、この調整手段37は、支持体50や第2部材46を一方向に付勢する付勢部材38として形成されている。付勢部材38は、その一端を、側方フレーム22の後方フレーム部22aに取り付けられ、その他端を、第2揺動部材47bのブラケット48cに取り付けられている。図示された例において、付勢部材38は、付勢手段をなす引っ張りバネによって形成されている。
図8に示された状態において、すなわち、第2部材46が第1部材41を保持して第2部材46と第1部材41との相対回転が規制された状態において、アクチュエータ31から加えられる力は、調整手段37をなす付勢部材38からの付勢力よりも小さい。すなわち、第2部材46をなす揺動部材47a,47bを支持体50に対して揺動させるのに要する力は、第1装着具20に対して支持体50を回転させるのに要する力よりも小さくなっている。したがって、支持体50が第1装着具20に対して回転する前に、第2部材46をなす揺動部材47a,47bが支持体50に対して揺動する。これにより、第1部材41及び第2部材46の相対回転が規制され、第1装着具20および第2装着具25の自由な相対動作が拘束されるようになる。
ただし、アクチュエータ31がMcKibben人工筋肉等である場合には、調整手段37をなす付勢部材38からの付勢力に抗する力を入力することで、支持体50を第1装着具20に対して図8に示す状態から図9に示す状態へと反時計回り方向に回転させることができる。その一方で、アクチュエータ31がMcKibben人工筋肉の場合であっても、支持体50を第1装着具20に対して図8の状態から時計回り方向には回転させることはできない。すなわち、図8に示された筋力補助装置10において、第2装着具25と連動する第1部材41は、第1装着具20に対して第1中間回転軸線d1aを中心として一方向(図8の時計回り方向)へ回転することを規制されつつ、第1装着具20に対して第1中間回転軸線d1aを中心として他方向(図8の反時計回り方向)へ回転することを許容されている。このとき、第1部材41と連動する第2装着具25は、第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として一方向(図4の時計回り方向)へ回転することを規制されつつ、第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として他方向(図8の反時計回り方向)へ回転することを許容されている。
なお、図8に示された状態から、第2装着具25と連動する第1部材41を第1装着具20に対して第1中間回転軸線d1aを中心として一方向(反時計回り方向)へ回転させることは、筋力補助装置10の着用者の上腕を上げる動作によって、実現され得る。その一方で、図示された例においては、アクチュエータ31が図8に示された状態から更に縮み得るようにすることで、図8の状態から図9の状態へと第2装着具25を第1装着具20に対して回転させることもできる。このような筋力補助装置10の動作は、上腕を持ち上げる動作を筋力補助することを意味している。
次に、以上のような構成からなる筋力補助装置10の動作について説明する。
図1に示すように、まず、装着ベルト11を用いて、第1装着具20の中央フレーム21を胴体に取り付ける。また、第2装着具25の装着部26を上腕に取り付ける。
図示された筋力補助装置10は、図7に示された自由回転モード、及び、図8に示された回転制動モードのいずれかに維持され得る。
まず、図7に示された自由回転モードでは、アクチュエータ31内の流体が排気され、アクチュエータ31は伸張している。したがって、第2部材46の揺動部材47a,47bは、アクチュエータ31から、第1部材41をなす回転ドラム42に向けた力を受けていない。その一方で、第2部材46をなす揺動部材47a,47bは、付勢部材52によって、第1部材41をなす回転ドラム42から離間する向きに付勢されている。したがって、自由回転モードでは、第1部材41は、第1中間回転軸線d1aを中心とした回転を、第2部材46によって規制されることなく、第1中間回転軸線d1aを中心として自由に回転することができる。
なお、第2部材46および第2部材46を支持する支持体50は、調整手段37をなす付勢部材38からの付勢力(引っ張り力)により、図7において時計回り方向に回転する力を受けている。ただし、調整手段37からの力は、主として、第2部材46及び支持体50の第1装着具20に対する回転に影響を与えるものであり、第2部材46の支持体50に対する揺動に影響を与えにくい向きの力となっている。したがって、自由回転モードでは、第1部材41と第2部材46は、互いから離間した状態となる。
この自由回転モードでは、第1部材41に連動する第2装着具25は、第1装着具20に対して自由に回転することができる。したがって、筋力補助装置10の着用者は、第2装着具25の装着部26が装着された上腕を、第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として、胴体に対して自由に回転させることができる。すなわち、着用者は、筋力補助装置10に拘束されることなく、屈曲運動及び伸展運動を行うことができる。
次に、図8に示された回転制動モードでは、流体源32からアクチュエータ31内に流体が供給され、アクチュエータ31が短縮する。アクチュエータ31が短縮することにより、出力手段30は、第1揺動部材47aを引き寄せるよう、当該第1揺動部材47aに作用する。図8に示すように、アクチュエータ31から第1揺動部材47aに加えられた力は、第1部材41をなす回転ドラム42に向けて第1揺動部材47aを動作させる。図8に示すように、揺動部材47a,47bの摩擦体49によって形成された第2接触面46aが、回転ドラム42の外周面をなす摩擦層42aによって形成された第1接触面41aに当接する。摩擦体49と摩擦層42aとの摩擦力により、第2部材46が第1部材41を保持する。これにより、第2部材46と第1部材41との相対回転が規制され、結果として回転ドラム42及び出力軸76の回転が規制される。
この回転制動モードでは、第2装着具25が第1装着具20に対して第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として一方向(図4における時計回り方向)に回転することが規制される。例えば、筋力補助装置10は、持ち上げた上腕を、その位置に維持することを補助し、上腕が下がってしまうことを効果的に抑制することができる。
なお、第2部材46は、支持体50に支持されており、この支持体50は、調整手段37からの付勢力に抗することで第1装着具20に対して回転可能となっている。したがって、着用者は、図8に示された状態から、調整手段37の付勢力に抗して支持体50を回転させることで、上腕をさらに持ち上げることが可能である。すなわち、支持体50が、第1部材41及び第2部材46とともに、第1中間回転軸線d1aを中心として、図8の状態から図9の状態へ回転を行うことで、第2装着具25は第1装着具20に対して第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として他方向(図4における反時計回り方向)に回転することができる。すなわち、回転制動モードにおいて、第2装着具25が第1装着具20に対して第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として一方向(図4における反時計回り方向)に回転することが規制されるものの、第2装着具25が第1装着具20に対して第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として他方向(図4における反時計回り方向)に回転することは許容される。
なお、自由回転モード及び回転制動モードに加えて、回転駆動モードをさらに追加してもよい。回転駆動モードでは、回転制動モードの状態から、アクチュエータ31をさらに短縮させる。これにより、調整手段37の付勢力に抗して、第1部材41及び第2部材46とともに支持体50を、第1中間回転軸線d1aを中心として回転させる。この動作にともなって、第2装着具25を第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として他方向に回転させることができる。すなわち、回転駆動モードでは、第2装着具25を第1装着具20に対して相対移動させて、例えば、上腕を持ち上げることを補助することができる。
出力手段30の動作は、制御部13によって制御される。図1に示された例において、制御部13は、流体源32とともに、第1装着具20の中央フレーム21に支持されている。制御部13は、流体源32からアクチュエータ31への流体(例えば空気)の供給およびアクチュエータ31からの流体の排気を制御することで、アクチュエータ31の動作を制御する。
図10は、制御部13の機能構成を説明するためのブロック図である。制御部13は、筋力補助装置10に設けられたセンサ80に電気的に接続されており、センサ80からの信号に基づいてアシスト機構15の制御、とりわけアシスト機構15の出力手段30の制御を行う。ここで説明する筋力補助装置10において、制御部13は、センサ80での検出結果に基づき、出力手段30を動作させて第1装着具20および第2装着具25の相対動作の規制を開始する。すなわち、制御部13は、センサ80での検出結果に基づき筋力の補助を開始する。また、制御部13は、センサ80での検出結果に基づき、出力手段30を動作させて第1装着具20および第2装着具25の相対動作の規制を解除する。すなわち、制御部13は、センサ80での検出結果に基づき筋力の補助を停止する。
センサ80は、第1装着具20及び第2装着具25の相対動作に関連した指標を得ることができる。とりわけ図示されたセンサ80は、第1装着具20及び第2装着具25のアシスト軸線d1を中心とする相対回転に関連した指標を得ることができる。具体的には、センサ80は、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度、及び、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャークの少なくとも一以上を検出する。ここで「ジャーク」は、加速度を時間で微分したものである。
このような指標を得るためのセンサ80の一例として、変位センサ、速度センサ、加速度センサを用いることができる。また、変位センサ、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサのいずれか一以上の検出結果を演算することにより、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度、及び、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャークを特定することもできる。
図3〜図5に示された例において、センサ80は、第1装着具20の側方フレーム22の前方延出フレーム部22bによって支持されている。センサ80は、第1回転軸線d1に沿って出力軸部材76に外方から対面する位置に配置されている。センサ80は、出力軸部材76の回転動作を監視し、出力軸部材76の回転動作に関する指標を計測することができる。
図3〜図5に示されたセンサ80以外のセンサの具体例として、ポテンショメータを用いることができる。ポテンショメータにより、出力軸部材76の回転にともなって変動する抵抗値を測定し、電圧値から出力軸部材76の回転位置(回転角度)を算出することができる。すなわち、このポテンショメータを変位センサとして用いることができる。このポテンショメータは、図示された筋力補助装置10への一適用例として、出力軸部材76と、前方延出フレーム部22bに設けられた出力軸部材76を受けるための軸受固定部と、の間に配置することができる。なお、ポテンショメータから取得される電圧値の変化量や変化時間を測定および演算することで、第1装着具20および第2装着具25の相対加速度を特定することも可能である。この場合、ポテンショメータは、加速度センサとして利用されることになる。
さらに他のセンサの具体例として、速度センサや加速度センサを、第1装着具20および第2装着具25にそれぞれ設けるようにしてもよい。第1装着具20および第2装着具25に設けられたセンサでの計測値を比較することで、第1装着具20および第2装着具25の相対速度や速度加速度を特定することができる。また、この例から、第1装着具20および第2装着具25のいずれかに設置されたセンサを省いても良い。この場合、第1装着具20および第2装着具25に設けられた一つのセンサが、当該センサが設けられた装着具と地面との相対速度や相対加速度を特定することができる。
また、センサ80は、第1装着具20に対して第2装着具25を相対動作させようとする力に関連した指標、とりわけ図示された例においては、第1装着具20に対して第2装着具25を第1回転軸線d1を中心として相対回転させようとする力に関連した指標も検出することが可能である。センサ80によって監視される力としては、並進力や、モーメント及びトルク等の回転力を例示することができる。相対動作させるための力に関連した指標としては、並進力や回転力等の力の大きさそのものであってもよいし、着用者の筋電位や着用者の筋肉の隆起度合い等であってもよい。これらの指標によれば、直接的または間接的に、第1装着具20及び第2装着具25を相対動作させるための力の大きさを評価することができる。
このような指標の検出を可能とするセンサ80として、トルクセンサ等の力を検出するためのセンサ、変位センサ、速度センサ、加速度センサ、筋電計、フォトリフレクタ等を例示することができる。トルクセンサ等の力を検出するためのセンサをセンサ80として用いることで、第1装着具20及び第2装着具25を相対動作させるための並進力や回転力の大きさを直接的に評価することができる。変位センサ、速度センサ及び加速度センサからの出力を演算することによって、第1装着具20及び第2装着具25を相対動作させるための並進力や回転力等の力の大きさを評価することもできる。さらに、筋電計によれば、着用者の筋電位を検出することができ、フォトリフレクタによれば、着用者の筋肉の隆起の度合いを評価することができる。したがって、筋電計やフォトリフレクタによれば、第1装着具20及び第2装着具25を相対動作させるための並進力や回転力の大きさを間接的に評価することができる。
また、図示された筋力補助装置10は、力補助装置10の姿勢を検出する姿勢センサ81と、異常を検出する異常検出センサ82と、をさらに有している。制御部13は、姿勢センサ81及び異常検出センサ82に電気的に接続されており、姿勢センサ81及び異常検出センサ82からの信号に基づいてアシスト機構15の制御、とりわけアシスト機構15の出力手段30の制御を行う。図示された筋力補助装置10において、制御部13は、姿勢センサ81での検出結果に基づき、筋力の補助を開始するための条件、筋力の補助の供給を開始するための条件が満たされるべき時間の長さ、筋力の補助を停止するための条件等を変更することができる。また、図示された筋力補助装置10において、制御部13は、異常検出センサ82での検出結果に基づき、筋力の補助を停止することができる。
姿勢センサ81は、筋力補助装置10の姿勢を直接的または間接的に検出するためのセンサである。筋力補助装置10の姿勢を検出することで、筋力補助装置10を着用した着用者の体勢を把握することができる。姿勢センサ81として、姿勢センサやジャイロセンサを用いることができる。ジャイロセンサは、上述したセンサ80としても使用され得る。図1及び図2に示すように、姿勢センサ81は、側方フレーム22の中央フレーム21に取り付けられている。姿勢センサ81は、第1装着具20の略中央に位置して、筋力補助装置10の姿勢を検出する。
異常検出センサ82は、筋力補助装置10、筋力補助装置10の着用者、筋力補助装置10の周囲における異常の有無を検出するセンサである。異常検出センサ82として、着用者の筋電位を検出する筋電計、着用者の筋肉の隆起の度合いを検出するフォトリフレクタ、明るさを検出する光センサ、熱を検出する熱センサ、姿勢を検出する姿勢センサ、周囲物との距離を検出する距離センサ、筋力補助装置10の電源の状態を監視する電圧計や電流計、及び、流体源32の圧力状態を監視する圧力計等を例示することができる。また、異常検出センサ82は、二種類以上のセンサを含んでいてもよい。筋電計やフォトリフレクタからなる異常検出センサ82によれば、着用者の異常を検出することができる。光センサや熱センサからなる異常検出センサ82によれば、周囲環境の異常、例えば火炎の存在等を検出することができる。また、姿勢センサからなる異常検出センサ82によれば、筋力補助装置10の着用者の転倒等の異常を検出することができる。距離センサからなる異常検出センサ82によれば、着用者が周囲物に接近し過ぎている状態を検出することができる。電圧計、電流計または圧力計からなる異常検出センサ82によれば、筋力補助装置10自体の状態異常を検出することができる。
次に、制御部13が実施する制御処理について説明する。図11は、筋力補助力の供給に関連した制御部13による制御処理フローの一例を示している。以下、図11に示された制御処理フローに基づいて説明を行う。
制御部13は、まず、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内であるか否かを判断する(図11における工程S11)。第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置は、センサ80で検出することができる。したがって、制御部13は、センサ80での検出結果に基づき、第1の判断を行う。
センサ80は、例えば、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置を次のようにして角度で特定することができる。図4に示すように、腕を体に沿って下げた状態での第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置を0°とする。この状態から前方に移動した角度を正の値として特定する。例えば立ち上がった状態で腕を体から水平方向前方に伸ばした状態を90°として特定する。したがって、図4の状態から第2装着具25を第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として他方向(図4での時計回り方向)に回転した角度を、正の値として、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置として表現する。
筋力補助力の供給を開始するにあたり満たされるべき第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置の所定範囲は、筋力補助力の供給が必要になると考えられる着用者の体勢に基づいて決定され得る。すなわち、所定範囲は、筋力補助力の供給が必要とされる種々の体勢を着用者がとった場合における第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置を含むように決定される。その一方で、筋力補助力の供給が不必要と考えられる体勢を着用者がとった場合における第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が含まれないように、所定範囲は決定され得る。このように相対位置が所定範囲内であることを筋力補助の要件とすることで、意図しない位置で筋力の補助を受けることを効果的に防止することができる。
なお、図11では示していないが、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に基づき、工程S11で判断される所定範囲を変更するようにしてもよい。姿勢センサ81からの検出結果によれば、当該筋力補助装置10を着用した着用者の姿勢を特定することができる。筋力補助力の供給が必要とされる体勢、図示された例では、筋力補助力の供給が必要とされる上腕の位置は、筋力補助装置10を着用した着用者の姿勢に基づいて変わり得る。例えば、前屈みとなっている着用者が、筋力補助力を受けたいと考える上腕の位置と、背筋を伸ばして立ち上がった着用者が、筋力補助力を受けたいと考える上腕の位置は、ほぼ同じであって、水平方向よりも上方になると考えられる。その一方で、前屈み状態と立背筋を伸ばした状態との間で、着用者の背中の角度および背中に装着された第1装着具20の向きは変化する。このため、制御部13で判断される第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置の所定範囲は、前屈み状態と立ち上がった状態との間で、第1装着具20の向きの変化分だけ補正をかけることが好ましいと言える。例えば、上述の角度設定に基づくと、背筋を伸ばした状態での所定範囲を100°以上130°以下に設定し、前屈み状態での所定範囲を110°以上140°以下に設定してもよい。このように、制御部13が、姿勢センサ81の検出結果に応じて所定範囲を調整することで、意図しない位置で筋力補助力が供給されることをより効果的に防止することができる。
第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲外であると判断された場合(図11の工程S11の「No」)、例えば一定の時間が経過した後に、再度工程S11が実施され、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内であるか否かが判断される(図11の工程S11)。
第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲外であると判断された場合(図11の工程S11の「Yes」)、次に、制御部13は、センサ80によって検出された第1装着具20及び第2装着具25のアシスト軸線(第1回転軸線)d1を中心とする相対回転に関連した指標が、一定期間に亘って所定の条件(「開始条件」)を満たすか否かを判断する(図11の工程S12)。
開始条件は、着用者が筋力補助装置10を着用して実施しようとする作業に応じて決定されてもよい。開始条件は、筋力補助装置10の着用者が筋力補助力を要求する意思表示を表す動作を反映した条件であることが好ましい。また、この意思表示を表す動作が、着用者の他の取り得る動作と区別されることが好ましく、とりわけ着用者が筋力補助装置10を着用して実施する作業での動作と区別されることが好ましい。さらに、異常時における着用者の動作が開始条件を満たさないように、開始条件を設定しておくことが好ましい。例えば転倒時や緊急時における着用者の動作が開始条件の動作と区別され、転倒時や緊急時に、筋力補助装置10が自由回転モードに維持されて、着用者の動作が筋力補助装置10によって拘束されないようにすることが好ましい。
開始条件として、例えば、相対回転に関連した指標が、相対回転が停止している或いは相対回転を停止しようとしていることを示すこと、とすることができる。具体的には、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位が所定値以下又は所定値未満であること、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度が所定値以下又は所定値未満であること、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度が所定値以下又は所定値未満であること、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャークが所定値以下又は所定値未満であること、これらの条件の組み合わせ、或いは、これらの条件と他の条件との組み合わせを開始条件とすることができる。このような条件設定によれば、筋力補助装置10の着用者が、上腕の動きを停止して、その位置にて上腕の位置を保持する補助力を受けようとしていることを、検出することができる。また、この条件は、着用者にとっては、筋力補助力の供給を待つ行為であって、筋力の補助を受けようとする直接的な行動とも言える。したがって、意図した位置にて筋力補助力の供給を開始することが促進される。
また、制御部13は、開始条件が一定期間に亘って継続して満たされるか否かを判断する。この一定期間は、意図せずに開始条件が満たされてしまうことを防止するために十分な時間に設定され得る。したがって、筋力補助装置10の着用者が、筋力補助装置10を着用して行おうとしている作業の内容等に応じて設定されるようにしてもよい。一定期間に亘り開始条件が満たされることを、筋力補助力の供給を開始するための要件とすることで、意図しない位置にて筋力の補助を受けることを効果的に防止することができる。
なお、図11では示していないが、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に基づき、工程S12で判断される開始条件や一定期間の長さを変更するようにしてもよい。筋力補助装置10を着用した着用者の動作のし易さは、姿勢に応じて変化する。とりわけ、筋力補助を受けようとする体勢での着用者の動作のし易さは、当該着用者の全般的な姿勢に応じても変化することが考えられる。例えば、立ち上がった状態で腕を持ち上げた位置に維持することは、しゃがんだ状態で腕を持ち上げた位置に維持することよりも容易である。したがって、姿勢センサ81での検出結果から着用者がしゃがんでいると判断された場合には、開始条件がみたされるべき一定期間の長さを短くするように変更するようにしてもよい。この場合、意図しない位置で筋力補助力の供給が開始される可能性を効果的に抑制したままとしながら、意図する体勢にて筋力補助力の供給を円滑に受けることが可能となる。
第1装着具20及び第2装着具25のアシスト軸線(第1回転軸線)d1を中心とする相対回転に関連した指標が、一定期間に亘って開始条件を満たしていないと判断された場合(図11の工程S12の「No」)、例えば一定の時間が経過した後に、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内であるか否かを再度判断する(図11の工程S11)。その一方で、第1装着具20及び第2装着具25のアシスト軸線(第1回転軸線)d1を中心とする相対回転に関連した指標が、一定期間に亘って開始条件を満たしていると判断された場合(図11の工程S12の「Yes」)、筋力補助力の供給が開始される(図11の工程S13)。具体的な動作として、アクチュエータ31が短縮して、筋力補助装置10が自由回転モード(図7)から回転制動モード(図8)へと切り替わる。これにより、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした一方向への回転が規制され、着用者は、上腕が下がってしまわないように上腕を支持する筋力補助力を筋力補助装置10から受ける。
なお、図11に示された例では、解除条件が満たされることにより、筋力補助装置10による筋力補助が開始されるようになる。ただし、開始条件の充足を判断するための指標を提供するセンサ80以外に、姿勢センサ81や異常検出センサ82が筋力補助装置10に設けられている場合には、開始条件が満たされたとしても、姿勢センサ81や異常検出センサ82で異常等が検出されている際には、筋力補助が開始されないようにしてもよい。すなわち、姿勢センサ81や異常検出センサ82の検出結果から異常の発生が予想される場合には、筋力補助装置10を自由回転モードに維持して、着用者の動作を拘束しないようにしてもよい。
筋電計やフォトリフレクタを異常検出センサ82として用いた場合、例えば、何かの力に抗するために筋力補助装置10の着用者が力を掛け続けている等の異常を検出することができる。また、光センサや熱センサを異常検出センサ82として用いた場合、周囲環境の異常、例えば火炎の存在等を検出することができる。また、姿勢センサやジャイロセンサを異常検出センサ82として用いた場合、筋力補助装置10の着用者の転倒等の異常を検出することができる。距離センサを異常検出センサ82として用いた場合、着用者が周囲物に接近し過ぎている状態を検出することができる。電圧計や電流計を異常検出センサ82として用いた場合、筋力補助装置10の電源状態に問題があることを検出することができる。圧力計を異常検出センサ82として用いた場合、筋力補助装置10の流体源32に問題があることを検出することができる。
筋力補助力の供給が開始されると、制御部13は、次に、センサ80から出力された情報に基づき、筋力補助力を解除すべきか否かを判断する(図11の工程S14)。解除条件は、着用者が筋力補助装置10を着用して実施しようとする作業に応じて決定されてもよい。解除条件は、筋力補助装置10の着用者が筋力補助力の解除を要求する意思表示を表す動作を反映した条件であることが好ましい。また、この意思表示を表す動作が、着用者の他の取り得る動作と区別されることが好ましく、とりわけ着用者が筋力補助装置10を着用して実施する作業での動作と区別されることが好ましい。
第1の例として、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対する第2装着具25の他方向への相対動作に関連した指標が解除条件を満たすか否かを判断するようにしてもよい。具体的には、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャークが所定値以上である又は所定値を超えること、これらの条件の組み合わせ、或いは、これらの条件と他の条件との組み合わせを解除条件とすることができる。
図示された筋力補助装置10では、上述したように、図8に示された回転制動モードにおいて、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした一方向(図4における時計回り方向)への相対回転が規制されているが、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした他方向(図4における反時計回り方向)への相対回転は許容されている。したがって、着用者は、筋力補助力を解除したい意思表示として、調整手段37の付勢力に抗して上腕を持ち上げる動作を行うことができる。そして、センサ80で検出される相対変位等が所定値以上または所定値を超えることを解除条件とすることで、意図せず解除条件が満たされ、これにより、意図せず筋力補助力が解除されてしまうことを効果的に防止することができる。
第2の例として、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対して第2装着具25を他方向へ相対動作させようとする力に関連した指標が解除条件を満たすか否かを判断するようにしてもよい。具体的には、第1装着具20に対して第2装着具25を他方向へ相対動作させようとする並進力や回転力等が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20に対して第2装着具25を他方向へ相対動作させようとする筋電位が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20に対して第2装着具25を他方向へ相対動作させようとする筋肉の隆起度合いを示す指標が所定値以上である又は所定値を超えること、これらの条件の組み合わせ、或いは、これらの条件と他の条件との組み合わせを解除条件とすることができる。
図示された筋力補助装置10では、図8に示された回転制動モードにおいて、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした一方向への相対回転が規制されているが、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした他方向への相対回転は許容されている。したがって、着用者は、筋力補助力を解除したい意思表示として、調整手段37の付勢力に抗するように力を加えて、実際に上腕を持ち上げる動作を行うことができる。このような意図的な動作を解除条件とすることで、すなわち、相対動作させようとする力に関する指標が所定値以上または所定値を超えることを解除条件とすることで、意図せず解除条件が満たされ、これにより、意図せず筋力の補助が解除されてしまうことを効果的に防止することができる。
なお、第1の例における相対動作に関連した指標が満たされることと、第2の例における相対動作させようとする力に関連した指標が満たされることと、の両方を解除条件としてもよい。すなわち、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対する第2装着具25の他方向への相対動作に関連した指標と、第1装着具20に対して第2装着具25を他方向へ相対動作させようとする力に関連した指標と、の両方が所定の解除条件を満たすと判断した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作の規制を解除するようにしてもよい。このような例によれば、意図せず解除条件が満たされ、これにより、意図せず筋力の補助が解除されてしまうことをより効果的に防止することができる。
次に第3の例として、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向へ相対動作させようとする力に関連した指標が解除条件を満たすか否かを判断するようにしてもよい。具体的には、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向へ相対動作させようとする並進力や回転力等が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向へ相対動作させようとする筋電位が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向へ相対動作させようとする筋肉の隆起度合いを示す指標が所定値以上である又は所定値を超えること、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向へ相対動作させようとする力が第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作を規制する力よりも大きくなること、これらの条件の組み合わせ、或いは、これらの条件と他の条件との組み合わせを解除条件とすることができる。
筋力補助の解除は、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向に相対動作させることを可能にする。筋力補助装置10の着用者は、第2装着具25を第1装着具20に対して他方向へ動作させて上腕を降ろす際に、筋力補助の解除を必要とする。したがって、第1装着具20に対して第2装着具25を一方向に相対動作させるための力を加えることは、筋力補助を解除したいとする意図に直結した行為である。したがって、このような意図的な動作を解除条件とすることで、すなわち、第2装着具25を第1装着具20に対して一方向に相対動作させようとする力に関する指標が所定値以上または所定値を超えることを解除条件とすることで、意図せず解除条件が満たされることを効果的に防止することができる。これにより、意図せず筋力補助が解除されてしまうことを効果的に防止し、且つ、意図した際に正確に筋力補助を解除することができる。
なお、図11では示していないが、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に基づき、工程S14で判断される解除条件を変更するようにしてもよい。筋力補助装置10を着用した着用者の動作のし易さは、姿勢に応じて変化する。例えば、立ち上がった状態で腕を動かすことは、しゃがんだ状態で腕を動かすことよりも容易である。したがって、姿勢センサ81での検出結果から着用者がしゃがんでいると判断された場合には、解除条件を変更する、具体的には例示した所定値を低下させるようにしてもよい。この場合、意図しない位置で筋力補助力の供給が解除される可能性を効果的に抑制したままとしながら、意図する体勢にて筋力補助力の供給を円滑に解除することが可能となる。
センサ80から出力された指標が解除条件を満たしていないと判断された場合(図11の工程S14の「No」)、例えば一定の時間が経過した後に、センサ80から出力された指標が解除条件を満たすか否かを再度判断する(図11の工程S14)。その一方で、センサ80から出力された指標が解除条件を満たしていると判断された場合(図11の工程S14の「Yes」)、筋力補助力の供給が停止する(図11の工程S15)。具体的な動作として、アクチュエータ31が伸張して、筋力補助装置10が回転制動モード(図8)から自由回転モード(図7)へと切り替わる。これにより、第2装着具25の第1装着具20に対する第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした一方向への回転規制が解除され、着用者は、上腕を自由に動かすことが可能となる。
なお、図11では示していないが、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作が規制されている状態において、異常検出センサ82が異常を検出した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一方向への相対動作の規制を解除するようにしてもよい。筋電計やフォトリフレクタを異常検出センサ82として用いた場合、例えば、何かの力に抗するために筋力補助装置10の着用者が力を掛け続けている等の異常を検出することができる。また、光センサや熱センサを異常検出センサ82として用いた場合、周囲環境の異常、例えば火炎の存在等を検出することができる。また、姿勢センサやジャイロセンサを異常検出センサ82として用いた場合、筋力補助装置10の着用者の転倒等の異常を検出することができる。距離センサを異常検出センサ82として用いた場合、着用者が周囲物に接近し過ぎている状態を検出することができる。制御部13は、例えば異常検出センサ82がこれらの異常が発生した場合に、筋力補助力の供給を停止する。これにより、筋力補助装置10の着用者は、筋力補助装置10からの拘束を解除された状態で、異常に対処することができる。
その一方で、筋力補助装置10に異常が発見され、筋力補助装置10の安定した動作が期待できないことが、異常検出センサ82の検出結果から予測される場合には、筋力補助力の供給を維持した方が好ましいこともある。例えば、筋力補助装置10のアシスト機構15を駆動するための電源や流体圧を十分に確保できないことが、電圧計、電流計、圧力計等からなる異常検出センサ82の検出結果から予想される場合である。異常検出センサ82がこのような異常を検出した場合には、解除条件が満されたとしても、第1装着具20に対する第2装着具25の相対動作の規制を維持するようにしてもよい。すなわち、解除条件が満たされても、異常検出センサ82が異常を検出している場合には、アシスト機構15からの筋力補助が維持されるようにしてもよい。
以上のような一実施の形態において、制御部13は、センサ80によって検出された指標が一定期間に亘り所定条件を満たすと判断した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作を規制するよう、アシスト機構15を制御するようになる。すなわち、本実施の形態によれば、アシスト機構15から筋力補助力を供給するには、一定期間に亘って所定条件を満たすことが要件となる。したがって、所定期間を十分な長さに設定することで、意図しない位置にて筋力補助力の供給が開始されることを効果的に防止することができる。また、動作の制限を受けていない状態で、筋力補助力を受けるべき所望の体勢を取ることができる。これらにより、本実施の形態によれば、意図しない位置で筋力補助力の供給が開始されることを効果的に防止して、所望とする体勢にて筋力補助力を受けることを安定して達成することができる。
また、本実施の形態において、センサ80は、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度、及び、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャークの一以上を検出する。着用者は、第1装着具20に対する第2装着具25の相対変位、相対速度、相対加速度、相対ジャーク等を容易に変化させることができる。したがって、着用者が、筋力の補助を受けたい場合、筋力補助を開始するための意思表示を容易に行うことができる。これにより、意図する位置にて筋力補助力の供給が精度良く開始するようにすることができる。
さらに、本実施の形態において、センサは、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内に位置すると判断し、且つ、センサ80によって検出された指標が一定期間に亘り所定条件を満たすと判断した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作を規制するようになる。筋力補助が必要とされるのは、通常、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内となっている場合である。したがって、第2装着具25の第1装着具20に対する相対位置が所定範囲内となっていることを、筋力補助を開始する条件とすることで、意図しない位置にて筋力補助が開始されることをより効果的に防止することができる。
さらに、本実施の形態において、筋力補助装置10は、筋力補助装置10の姿勢を検出する姿勢センサ81をさらに備えている。そして、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に応じて所定範囲を調整する。筋力補助を必要とする着用者の体勢は、当該着用者の全体的な姿勢に応じて変化する。すなわち、筋力補助が必要となる第1装着具20及び第2装着具25の相対位置は、筋力補助装置10の姿勢に応じて変化する。したがって、筋力補助を開始する条件としての第2装着具25が第1装着具20に対して位置すべき所定範囲を、姿勢センサ81で検出された筋力補助装置10の姿勢を考慮して決定することにより、意図しない位置にて筋力補助が開始されることをより効果的に防止することができ、且つ、意図した場合に筋力補助力の供給をより確実に開始することができる。
さらに、本実施の形態において、筋力補助装置10は、筋力補助装置10の姿勢を検出する姿勢センサをさらに備えている。そして、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に応じて開始条件及び開始条件が満たされる期間の長さの少なくとも一方を調整する。筋力補助を必要とする体勢での着用者の動作のし易さは、当該着用者の全体的な姿勢に応じて変化する。すなわち、筋力補助が必要とされる状態での第1装着具20および第2装着具25の相対動作のし易さは、筋力補助装置10の姿勢に応じて変化する。したがって、筋力補助を開始する条件としての第1装着具20及び第2装着具25の相対動作の条件並びに当該条件を満たすべき期間の長さを、姿勢センサ81で検出された筋力補助装置10の姿勢を考慮して決定することにより、意図しない位置にて筋力補助が開始されることをより効果的に防止することができ、且つ、意図した場合に筋力補助をより確実に開始することができる。加えて、筋力補助装置10の着用者が転倒等してしまった場合等に、筋力補助力の供給が開始されないようにすることもできる。
以上のような一実施の形態において、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きとは逆の向きとなる他の向きへの相対動作に関連した指標および第1装着具20に対して第2装着具25を他の向きへ相対動作させようとする力に関連した指標の少なくとも一方が所定の解除条件を満たすと判断した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作の規制を解除する。すなわち、本実施の形態によれば、筋力補助により動作を規制されている向きとは逆向きの動作に関連した指標、及び、筋力補助により動作を規制されている向きとは逆向きに動作しようとする力に関連した指標の少なくとも一方が所定の解除条件を満たす場合に、筋力補助が解除される。筋力補助力を受けている状態において、筋力補助力により動作を規制されている向きとは逆向きの動作や当該動作を行うための力は、通常、筋力補助装置の着用者が意図しない限り生じない。したがって、このような動作または当該動作を行うための力に基づいて筋力補助の解除を行うことで、意図せずに筋力補助が解除されることを効果的に防止することができる。
以上のような一実施の形態において、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作が規制されている状態において、第1装着具20に対して第2装着具25を一の向きへ相対動作させようとする力に関連した指標が所定の解除条件を満たすと判断した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作の規制を解除する。すなわち、本実施の形態によれば、筋力補助により規制された動作を行うための力に関連した指標、言い換えると、筋力補助力による規制を解除して可能となる動作を行うための力に関連した指標が、所定の解除条件を満たす場合に、筋力補助が解除される。したがって、解除条件は、筋力補助による規制を解除して実施しようとしている動作を行うための力に関する条件であって、さらに言い換えると、筋力補助を解除するための極めて直接的な動作を行うための力に関する条件と言える。したがって、このような動作を行うための力に基づいて筋力補助の解除を行うことで、意図せずに筋力補助が解除されることを効果的に防止することができる。
また、本実施の形態において、所定の解除条件は、第1装着具20に対して第2装着具25を一の向きへ相対動作させようとする力が第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作を規制する力よりも大きくなること、としている。すなわち、第2装着具25を第1装着具20に対して一定の位置に保持する力よりも大きな力が検出された場合に、筋力補助が解除される。このような条件を満たすには、意図的に筋力補助力に抗する大きな力を加えることになる。したがって、意図せずに筋力補助が解除されることをより効果的に防止することができる。
さらに、本実施の形態において、センサ80は、第1装着具20及び第2装着具25の相対変位、第1装着具20及び第2装着具25の相対速度、第1装着具20及び第2装着具25の相対加速度、及び、第1装着具20及び第2装着具25の相対ジャーク、着用者の筋電位、及び、着用者の筋肉の隆起度合いの一以上を検出する。着用者は、第1装着具20に対する第2装着具25の相対変位、相対速度、相対加速度および相対ジャークや、筋電位および隆起度合い等を容易に変化させることができる。したがって、着用者が、筋力補助の供給を停止したい場合、筋力補助力を解除するための意思表示を容易に行うことができる。これにより、意図した場合に、筋力補助をより確実に解除することができる。
さらに、本実施の形態において、筋力補助装置10は、筋力補助装置10の姿勢を検出する姿勢センサ81をさらに備えている。そして、制御部13は、姿勢センサ81の検出結果に応じて所定の解除条件を調整する。筋力補助装置10の着用者の動作のし易さ及び動作を行うための力の加え易さは、当該着用者の全体的な姿勢に応じて変化する。したがって、筋力補助を解除する条件としての第1装着具20及び第2装着具25の相対動作の条件並びに相対動作を行うための力の条件を、姿勢センサ81で検出された筋力補助装置10の姿勢を考慮して決定することにより、意図せずに筋力補助が解除されることをより効果的に防止することができ、且つ、意図した場合に筋力補助をより確実に解除することができる。加えて、筋力補助装置10の着用者が転倒等してしまった場合等に、筋力補助が解除されるようにすることもできる。
さらに、本実施の形態において、筋力補助装置10は、異常を検出する異常検出センサ82をさらに備えている。そして、制御部13は、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作が規制されている状態において、異常検出センサ82が異常を検出した場合、第1装着具20に対する第2装着具25の一の向きへの相対動作の規制を解除する。このような筋力補助装置10によれば、例えば、筋力補助装置10に異常が生じた場合、筋力補助装置10の着用者に異常が生じた場合、筋力補助装置10の周囲で異常が生じた場合等に、筋力補助の供給を解除することができる。すなわち、異常時に、筋力補助により着用者の自由な動作が規制されることを効果的に回避することができる。
さらに、本実施の形態において、異常検出センサ82は、着用者の筋電位を検出する筋電計、着用者の筋肉の隆起の度合いを検出するフォトリフレクタ、明るさを検出する光センサ、熱を検出する熱センサ、姿勢を検出する姿勢センサ、及び、周囲物との距離を検出する距離センサの一以上を含む。筋電計やフォトリフレクタによれば着用者の異常を検出することができ、光センサや熱センサによれば周囲環境の異常を検出することができる。また、姿勢センサや距離センサによれば、着用者の姿勢や着用者の位置等に関する異常を検出することができる。このような異常検出センサ82によれば、筋力補助により着用者の自由な動作が規制されるべきではない異常状態を検出することができる。
以上、本発明を図示する一実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。以下、変形の一例について説明する。以下の説明では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の形態において、筋力補助装置10の構成について一具体例を説明したが、これに限られない。制御部13が、上述した筋力補助装置とは異なる構成を有した筋力補助装置を制御する場合にも、上述した作用効果と同一の作用効果を享受することができる。図12〜図14には、筋力補助装置10の一変形例が図示されている。図12〜図14に示す例において、切替手段40は、出力軸部材76及び肩関節の側外方に配置されている。図12〜図14に示された筋力補助装置10において、アシスト機構15は、第1部材41及び第2部材46を有した切替手段40と、切替手段40の第1部材41と相対回転不可能に接続した出力軸部材76と、を有している。第1部材41は、第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心として回転可能となっている。また、第2部材46は、第1回転軸線d1と平行な揺動軸線を中心として揺動可能となっている。さらに、第2部材46と接続したアクチュエータ31及び調整手段37は、第1回転軸線d1と直交する面上に、切替手段40とともに配置されている。
また、上述した一実施の形態において、切替手段40の具体的な構成を説明したが、上述した構成は例示に過ぎない。上述した一実施の形態において、第2部材46が第1部材41とともにバンドブレーキ機構39を構成し、第2部材46の揺動部材47a,47bが第1部材41をなす回転ドラム42に径方向外方から当接する例を示したが、この例に限られず、回転ドラム42が筒状に形成され、回転ドラム42の内部に配置された第1部材41が回転ドラム42に径方向内方から当接して、第1部材41と第2部材46との相対回転を規制するようにしてもよい。
また、切替手段40が、ディスクブレーキ機構として構成されていてもよい。具体的には、円板状に形成された第1部材41に、第1部材41の回転軸線と平行な方向から、第2部材46が当接するようにしてもよい。この例において、第1部材41に第2部材46が当接することで、第1装着具20に対する第2装着具25の相対動作が規制される。
さらに、切替手段40がラチェット機構として構成されていてもよい。具体例としては、第1部材41の外周面にラチェット歯が形成され、第2部材46をなす爪部材が、第1部材に径方向外方から接離するようになっていてもよい。この例において、第2部材46が第1部材41に接近すると、爪がラチェット歯に係合し、第1部材41及び第2部材46の一方向への相対回転が規制されるとともに、第1部材41及び第2部材46の他方向への相対回転が許容されるようにしてもよい。このとき、回転制動モードとして、第2装着具25の第1装着具20に対する一方向への相対動作が規制され、第2装着具25の第1装着具20に対する他方向への相対動作が許容される。一方、第2部材46が第1部材41から離間すると、第1部材41及び第2部材46の自由な相対回転が確保される。このとき、自由回転モードとして、第2装着具25の第1装着具20に対する自由な相対動作が許容される。
さらに、上述した一実施の形態において、第1装着具20及び第2装着具25がアシスト軸線d1を中心として相対回転可能に構成されている例を示したが、この例に限られない。第1装着具20及び第2装着具25の相対動作は、特に限定されず、例えば直線動作であってもよい。
なお、以上において上述した一実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。