JPWO2018101328A1 - 診療補助情報の取得方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、前立腺癌の診断や治療(診療)のための補助情報を取得するための方法に関する。前立腺組織の検体を用いて、前立腺癌の再発リスクを推定するための診療補助情報を取得するための方法であって、前記検体中のがん部の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を少なくとも3段階の評価スコアで表す、診療補助情報の取得方法。

Description

本発明は、前立腺癌の診断や治療(診療)のための補助情報を取得するための方法に関する。
前立腺癌は、主に60歳以上の男性に発病し、欧米諸国では男性の癌において肺癌に次ぐ死亡原因となっており、根治を目的とした治療(前立腺全摘)を実施した場合であっても、10年以内に約35%の患者において、前立腺癌マーカーであるPSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)の血中濃度の上昇、すなわち前立腺癌の再発が認められる。そのため、前立腺癌の個々の症例においてよりよい治療法を選択するために、正確な予後予測(再発リスク予測)を行い、治療前にリスクを分類してそれに応じた治療法を検討しようとする考え方がある。
しかしながら、上記のような前立腺癌の再発リスクを予測ないし推定するための手段(例えば予測マーカー)は、これまでのところ確立されていない。そのため、例えば手術後もPSAの血中濃度を定期的に測定(フォローアップ)し、何らかの異常が生じた場合に救済放射線治療を適用している状況である。あるいは、再発を抑制するためにアジュバンド放射線療法が補助療法として検討されている。
前立腺癌に関して、患者の前立腺組織中に存在する特定の糖鎖と、それとの親和性を有するレクチンとの反応を利用して、前立腺組織を染色する方法(レクチン組織化学染色法)が知られている。たとえば非特許文献1には、β−N−アセチルガラクトサミン残基と親和性を有するレクチンであるノダフジレクチン(Wisteria floribunda Agglutinin:WFA)を利用するレクチン組織化学染色法として、前立腺組織にまずビオチン標識されたWFAを反応させ、続いてアビジン−ビオチン標識酵素複合体(あらかじめ、アビジンと、ビオチン標識された酵素(ペルオキシダーゼ)とを反応させて得られた複合体)を反応させた後、その酵素に対応する基質であるDAB(ジアミノベンジジン)を反応させて発色させる方法が記載されている。この文献では、上記のレクチン組織化学染色法によって前立腺癌の悪性と良性を鑑別することができるかを検討する目的で、グリーソンスコアによって良性と判断された前立腺癌組織、悪性と判断された前立腺癌組織それぞれの切片を、上記のレクチン組織化学染色法により染色している。その結果、悪性の前立腺癌組織はよく染色され(染色性は陽性(+)と陰性(−)の2パターンで評価されている)、感度は良好であるが、良性の前立腺癌組織でも56%は染色が陽性となり、特異度は不良であることが分かり、診断への有用性は低いと考察されている。
しかしながら非特許文献1には、上記のレクチン組織化学染色法の染色像と、前立腺癌の再発リスクとの相関性については全く記載されていない。
McMahon et al., J Clin Pathol, 1992, 45, 1094−1098
前述したように、これまでのところ、前立腺癌の再発リスクを推定する方法は確立されていない。そのような推定を行うための診療補助情報を取得することができれば、前立腺癌の再発を防止するためによりよい治療法を選択することができるようになるなど、患者にもたらされる利益は大きい。
本発明は、前立腺癌の再発リスクを推定する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前立腺癌患者から採取した前立腺組織の検体中のがん部の、WFA等の特定のレクチンとの親和性を有する生体物質、すなわちβ−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を、組織切片の染色像に基づいて3段階の評価スコアで表し、全摘出から所定の期間内に前立腺癌が再発したか再発しなかったかの情報と関連づけたところ、驚くべきことに、評価スコアが1(3段階のうち最も含有量が低い評価)の場合は再発リスクが低い(非再発率が高い)こと、逆に評価スコアが3(3段階のうち最も含有量が高い評価)の場合は再発リスクが高い(非再発率が低い)ことが、統計学的有意差をもって言えることを見出した。このことは、適切な閾値を設定することにより、ある検体を採取した前立腺癌患者の再発リスクを推定できることを意味する。
このような知見に基づいてなされた本発明は、一つの側面において、「前立腺組織の検体を用いて、前立腺癌の再発リスクを推定するための診療補助情報を取得するための方法であって、前記検体中のがん部の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を少なくとも3段階の評価スコアで表す、診療補助情報の取得方法」を提供する。
換言すれば、本発明は別の側面において、「前立腺組織の検体中のがん部の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量の測定方法または評価方法であって、少なくとも、β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子を前記生体物質に結合させて染色する工程、およびその工程によって作製された検体の染色強度を測定する工程を含む、測定方法または評価方法」を提供する。この測定方法または評価方法による結果は、上述したような方法と同様に、「少なくとも3段階の評価スコアで表す」ことができ、その評価スコアを、前立腺癌の再発リスクを推定する(診療する)際の診断補助情報として利用することができる。
なお、本発明の診療補助情報の取得方法は、「少なくとも3段階の評価スコア」で所定の生体物質の含有量を評価している点で、非特許文献1に記載されたような従来の方法と相違しており、さらに得られる診療補助情報も、前立腺癌の再発リスクに関連した評価スコアであり、従来の方法では取得できなかったものである点で、従来の診療補助情報の取得方法と相違していることから、従来技術と明確に区別することが可能である。
本発明の診療補助情報の取得方法により得られた診療補助情報を利用することにより、これまではできなかった前立腺癌の再発リスクを推定することができるため、その再発リスクに応じて補助療法を選択するなど、患者のQOLを考慮した個別化治療を行うことが可能となる。
図1は、前立腺癌細胞に含まれるPSAが有する糖鎖の推定構造式である。出典:Fukushima et al. Glycobiology, 20, 4, 452−460 (2010) 図2は、実施例において撮影した、WFLステータスが+のDAB染色像(右)およびそれに対応する検体スライドのHE染色像(左)の一例である。 図3は、実施例において撮影した、WFLステータスが++のDAB染色像(右)およびそれに対応する検体スライドのHE染色像(左)の一例である。 図4は、実施例において撮影した、WFLステータスが+++のDAB染色像(右)およびそれに対応する検体スライドのHE染色像(左)の一例である。 図5は、実施例においてKapran−Meier法に従って作成した、前立腺癌の非再発率とWFLステータスとの関係を示すグラフである。 図6は、実施例において検証した、WFLステータスとGSの関係を表すグラフである。 図7は、実施例において検証した、WFLステータスとpTの関係を表すグラフである。 図8は、実施例において検証した、WFLステータスとpnの関係を表すグラフである。 図9は、実施例において作成した、前立腺癌の再発予測に関するノモグラムの一例である。 図10は、実施例において作成した、前立腺癌の再発予測に関するノモグラムの図9とは別の例である。
本発明の、前立腺癌の再発リスクを推定するための診療補助情報の取得方法は、前立腺組織の検体中のがん部の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を少なくとも3段階の評価スコアで表す。
前記評価スコアを医師等が診療補助情報として利用することにより、再発リスクを推定することが可能である。「再発リスクを推定する」ことは、前立腺癌の再発を防止するために、また、よりよい治療法の選択も含めた診断に役立つものである。
本発明の方法は、医師(および医師の指示を受けた者)以外の者が、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を少なくとも3段階の評価スコア表すことにより、医師等に診断補助情報を提供することが可能である。
「前立腺組織」は、生体から採取した検体であって、生検時(全摘手術前)のものであってもよいし、全摘時のものであってもよい。採取した検体は、常法に従って、例えばホルマリン固定処理およびパラフィン包埋処理を行った後に薄切するなどして、検体スライドを作製してから、所定の生体物質の含有量を評価するために用いればよい。前立腺組織中の「がん部」は、例えば病理組織学的な分類(グリーソン分類)などの常法に従って、「非がん部」と区別することができる。
本発明の診療補助情報の取得方法の適用対象、すなわち前立腺組織の検体を採取する対象は、典型的にはヒトの前立腺癌患者であるが、ヒトの前立腺癌のモデル動物など、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。ヒトの前立腺癌患者は、前立腺癌の再発リスクを推定する必要がある者、または推定することが望ましい者であり、全摘手術の前でも後でもよい。ヒト以外の哺乳動物の対象としては、前立腺癌を発症させたマウス、ラット等のモデル動物が挙げられる。
「β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質」(本明細書において「β−GalNAc−生体物質」と表記することがある。)は、すなわち、β−N−アセチルガラクトサミン残基との親和性を有する分子(本明細書において「β−GalNAc残基親和性分子」と表記することがある。)が結合することのできる生体物質を指す。β−GalNAc−生体物質は、主に、β−N−アセチルガラクトサミン−(1→4)−N−アセチルグルコサミン残基(GalNAc(β1→4)GlcNAc残基)を糖鎖の非還元末端に有するPSA(本明細書において「LacdiNAc−PSA」と表記することがある。)であると推定されるが、これに限定されるものではなく、前立腺組織に含まれる、糖タンパク質、糖脂質またはその他の生体物質であってβ−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するものが包含される。図1に、前立腺癌細胞に含まれるPSAが有する糖鎖の推定構造式を示す。そのようなPSAは、非還元末端においてGalNAc残基がβ1→4結合でGlcNAc残基に結合している糖鎖の他にも、末端がシアル化されている糖鎖や、末端がフコースである糖鎖を有しているものと推定されている。
「組織検体中のβ−GalNAc−生体物質の含有量」は、通常は、当該含有量を測定するために撮影される染色画像の、解析に用いられる画像全体における含有量を表すが、必要に応じて(例えば後述するPID法を用いる場合)、染色画像の特定の領域、例えば単位面積あたりや、1細胞あたりの含有量を表すこともできる。
「少なくとも3段階の評価スコア」は、例えば、レクチン組織化学染色法によってDAB等の発色剤で染色した組織切片を撮影し、画像解析ソフトによって発色剤の染色強度を数値化し、所定の基準に従って、その数値が特定の範囲にある場合に特定の評価スコアを与えるようにすればよい。画像解析ソフトとしては、例えば「Image J」(Fiji software、オープンソース)を用いることができ、「reciprocal intensity」(染色されていない白色のエリアの染色強度を「250」とし、染色されたエリアの染色強度をそれに対する250以下の相対値で表す、単位はa.u.)によって数値化することができる。このような染色強度の評価方法は公知であり、例えば、Ngyen et al.(Research Article, 2(1), 2013)の文献などを参照することができる。
前記評価スコアは、通常、再発リスクが高い評価群と、再発リスクが低い評価群とを有する。例えば、3段階の評価スコアで表す場合には、3つの評価スコアの内、2つの評価スコアが再発リスクが高い評価群であり、1つの評価スコアが再発リスクが低い評価群であってもよく、1つの評価スコアが再発リスクが高い評価群であり、2つの評価スコアが再発リスクが低い評価群であってもよい。
なお、再発リスクが高い評価群とは、通常は、後述の生体物質の含有量が閾値以上である場合に分類される評価群であり、再発リスクが低い評価群とは、通常は後述の生体物質の含有量が閾値未満である場合に分類される評価群である。
本発明の一つの実施形態として、「少なくとも3段階の評価スコア」は、DAB等の発色剤の代わりに、1分子ごとに蛍光標識できる「蛍光ナノ粒子」、例えば蛍光色素や量子ドットなどの蛍光体を、シリカや樹脂等を母体として集積させた粒子(蛍光体集積粒子、Phosphor Integrated Dot:PID)のように、直径がナノサイズの粒子を用いた蛍光染色によって取得することも可能である。この場合、蛍光ナノ粒子の輝点数が、組織切片上の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を表すことになる。この実施形態(本明細書において「PID法」と称する。)における「少なくとも3段階の評価スコア」は、蛍光ナノ粒子の輝点数が特定の範囲にある場合に特定の評価スコアを与えるようにしてもよいし、蛍光ナノ粒子の輝点数自体を(半連続的な、3段階以上の)評価スコアとして取り扱ってもよい。PIDは公知の蛍光標識剤であり、例えば、国際公開2012/029752号パンフレット、国際公開2013/035703号パンフレットなどを参照することができる(これらの特許文献は、PIDの輝点数の計測方法について参照することもできる)。
[測定方法]
前立腺組織の検体中のβ−GalNAc−生体物質、例えばLacdiNAc−PSAの含有量を測定するための方法は、「少なくとも3段階の評価スコア」で表すことのできる精度を有する測定値が得られる限り、特に限定されるものではなく、様々な測定方法を用いることができる。
β−GalNAc−生体物質の含有量の測定方法としては、比較的簡便な手段によって実施することのできる、β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子(β−GalNAc残基親和性分子)をβ−GalNAc−生体物質に結合させる工程を含む方法が好ましい。また、β−GalNAc残基親和性分子は、β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して強い親和性を有していればよく、β−N−アセチルガラクトサミン残基以外の物質、構造に対して弱い親和性を有していてもよい。
・β−GalNAc残基親和性分子
β−GalNAc残基親和性分子としては、β−GalNAc残基に対して親和性を有するレクチン(β−GalNAc残基親和性レクチン)またはβ−GalNAc残基をエピトープとする抗体(抗β−GalNAc抗体)を用いることができる。
・β−GalNAc残基親和性レクチン
レクチンは、特定の糖残基に対する親和性を有する、つまり特定の糖残基を認識してそこに結合するタンパク質であり、様々な生物に由来する多数の種類のレクチン(凝集素と呼ばれることもある)が知られている。レクチンの種類によって親和性を有する糖残基は様々であり、また多くのレクチンは、1種類の糖残基だけでなく複数の種類の糖残基と親和性を有する(ただし、特定の糖残基に対する親和性が強く、他の糖残基に対する親和性は弱い)。一般的に、抗β−GalNAc抗体のように、糖鎖中の特定の糖残基をエピトープとする抗体は作製しにくいのに対し、β−GalNAc残基親和性レクチンは、安価で大量に入手することができ、また安定性にも優れており長期間保存も可能であるため、β−GalNAc残基親和性分子として好ましい。
β−GalNAc残基親和性レクチンとしては様々なものが公知であり、また今後も新たな生物から単離される可能性もある。本発明では、β−GalNAc残基に対して十分に強い親和性を有している限り、つまり、そのレクチンが、他の糖残基に対する親和性を有さないものであるか、他の糖残基と親和性を有するが、他の糖残基に対する親和性がGalNAc残基に対する親和性よりも十分に小さく(例えば、結合定数が数オーダー低く)、十分な精度でLacdiNAc−PSAの定量を行うことができる限り、どのようなレクチンを用いてもよい。
β−GalNAc残基親和性レクチンの具体例としては、ノダフジレクチン(Wisteria floribunda Agglutinin:WFA)、ダイズ凝集素(Soybean Agglutinin:SBA)およびカラスノエンドウレクチン(Vicia Villosa Lectin:VVL)を挙げることができる。これらのレクチンは、それぞれが由来する生物体、例えば種子から分離(抽出)して精製することもできるし、商品としても市販されているものを入手することもできる。
WFAは、WFL(Wisteria floribunda Lectin)と表記されることもある、ノダフジに由来するレクチン(凝集素)である。WFAは、N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(GalNAc)、すなわちα−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に親和性を有し、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→6)Gal残基、GalNAc(α1→3)Gal/GalNAc残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基、ならびに糖鎖の還元末端に位置するGalNAc−Ser/Thr(セリンまたはスレオニン)などに結合することができる。なお、WFAは、ラクトースおよびガラクトースに対しても比較的弱い親和性を有する。一般に、WFAのα−GalNAcとの親和性を1とすると、β−GalNAcとの親和性は10程度であり、β−GalNAcとの親和性が強いことが知られている。また、WFAのガラクトースとの親和性を1とすると、β−GalNAcとの親和性は100程度であることが知られている。(例えば、J. Biol. Chem. Sep. 2016, M116.750463参照)
SBAは、ダイズに由来するレクチン(凝集素)である。SBAも、α−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に親和性を有し(前者に対する親和性の方が後者に対する親和性よりもやや強い)、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→3)Gal残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基に結合することができる。なお、SBAは、ガラクトースに対しても比較的弱い親和性も有する。
VVLは、VVA(Vicia villosa Agglutinin)と表記されることもある、ヘアリーベッチに由来するレクチン(凝集素)である。VVLも、α−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に対する親和性を有し、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→3)Gal残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基に結合することができる。
・β−GalNAc−生体物質の含有量の測定方法の実施形態
β−GalNAc残基親和性分子をβ−GalNAc−生体物質に結合させる工程を含む、β−GalNAc−生体物質の含有量の測定方法の代表的な実施形態としては、β−GalNAc残基親和性分子に、ABC(Avidin Biotinylated Enzyme Complex)法を組み合わせた方法が挙げられる。この方法では、まず検体(前立腺組織)上のβ−GalNAc−生体物質に、ビオチン標識されたβ−GalNAc残基親和性分子(β−GalNAc残基親和性レクチンまたは抗β−GalNAc抗体)を結合させ、続いてそのビオチン標識β−GalNAc残基親和性分子に、アビジン−ビオチン標識酵素複合体(あらかじめ、アビジンと、ビオチン標識された酵素とを反応させて得られた複合体)を結合させる。酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等、公知の染色法と同様の酵素を用いることができる。最後に、その酵素に対応する基質、例えばペルオキシダーゼに対応するDABを反応させると、酵素と基質との反応により色素が生成し、検体上のβ−GalNAc−生体物質の周辺が染色される。その後、顕微鏡の所望の倍率で明視野における観察像を撮影し、評価スコアの決定に用いる。染色の濃さが、検体上のβ−GalNAc−生体物質の存在量を反映した指標となる。
DAB等の基質(発色剤)の代わりに蛍光ナノ粒子を用いる実施形態(好ましくはPID法)においては、まず前立腺組織の検体上のβ−GalNAc−生体物質に、ビオチン標識されたβ−GalNAc残基親和性分子を結合させ、続いてそのビオチン標識β−GalNAc残基親和性分子に、アビジンで修飾された蛍光ナノ粒子(好ましくはPID)を結合させる。その後、顕微鏡の所望の倍率で暗視野における蛍光観察像を撮影し、評価スコアの決定に用いる。蛍光ナノ粒子の輝点数が、検体上のβ−GalNAc−生体物質の存在量を反映した指標となる。
上記のような測定方法において、アビジンとしては、卵白中などに存在するアビジンを用いることもできるが、ビオチンに対する特異性が高い(非特異的結合が少ない)ストレプトアビジンや、ビオチンに対する特異性がより高い(非特異的結合がより少ない)、アビジンから糖鎖を除去して得られるニュートラアビジンのようなビオチン結合タンパク質を、アビジンの代わりに用いることが好ましい。また、ビオチンとアビジン等のビオチン結合タンパク質との反応を利用する代わりに、ハプテンと抗ハプテン抗体、例えばジニトロフェノール、ジゴキシゲニン等のハプテンとそれぞれに対する抗体との反応を利用して、β−GalNAc−生体物質を酵素または蛍光ナノ粒子で標識することもできる。
ビオチン等で標識されたβ−GalNAc親和性レクチンや、アビジン等で修飾された蛍光ナノ粒子は、公知の手法を用いて作製することができ、その際には市販されているキットなどを用いることもできる。酵素に対する基質(発色剤)や、PID等の蛍光ナノ粒子は特に限定されるものではなく、所望の色を発する種類のものを用いることができる。
[閾値]
前立腺組織の検体中のβ−GalNAc−生体物質の含有量から、前立腺癌の再発リスクに関する診療補助情報を取得するために必要となる閾値(カットオフ値)は、公知の診療補助方法の取得方法と同様の一般的な手法によって、例えば診断マーカーまたは腫瘍マーカーについて所定の事項を推定するための閾値と同様にして、設定することができる。
たとえば、前立腺癌と診断され、前立腺を全摘出された複数の患者を対象として、その前立腺組織を検体として用いて組織切片スライドを作製し、前述したような所定の方法で染色や画像解析を行い、β−GalNAc−生体物質の含有量についての情報を取得する。そして、前記生体物質の含有量が閾値以上であることをもって、評価スコアの再発リスクが高い評価群に分類する、または、前記生体物質の含有量が閾値未満であることをもって、評価スコアの再発リスクが低い評価群に分類することができる。
評価群は、再発リスクが高い評価群と、再発リスクが低い評価群とに分類でき、例えば、3段階の評価スコアで表す場合には、3つの評価スコアの内、2つの評価スコアが再発リスクの高い評価群であり、1つの評価スコアが再発リスクの低い評価群であってもよく、1つの評価スコアが再発リスクが高い評価群であり、2つの評価スコアが再発リスクが低い評価群であってもよい。
評価スコア、例えば染色濃度を表す数値がどの範囲のときにどの評価スコアを付与するかは、適宜調整して定義することができる。
そして、評価スコアと、各検体についての全摘出から所定の期間内に患者に前立腺癌が再発したか再発しなかったかの情報と関連づけ、例えばKapran−Meier法での前立腺癌の非再発率と評価スコアの関係性から、前立腺癌の再発リスクの推定を行うことができる。
再発リスクが高い評価群とは、β−GalNAc−生体物質の含有量が閾値以上であり、また、評価スコアが高いほど、前立腺癌の非再発率が低い、つまり前立腺癌の再発リスクが高い傾向にある。再発リスクが低い評価群とは、β−GalNAc−生体物質の含有量が閾値未満であり、また、評価スコアが低いほど、前立腺癌の非再発率が高い、つまり前立腺癌の再発リスクが低い傾向にある、といった再発リスクの推定を行うことができる。
例えば、後述する実施例に示すように、染色濃度によってβ−GalNAc−生体物質の評価スコアを3段階で表し、評価スコアが2または3であるときに前立腺癌の再発リスクが高いと推定するような実施形態が挙げられる。各評価スコアの基準を決定する際には、各サンプルの染色濃度を目視で比較し、各評価スコア間に明らかな染色濃度の差があることを確認した上で、評価スコアの段階を決定することが望ましい。具体例としては、染色濃度を画像解析ソフト「Image J」(Fiji software、オープンソース)を用いて数値化し、評価した。「reciprocal intensity」が74〜85(平均78.5)の場合は評価スコア1(WFLステータス+、weakly positive)、86〜104(平均98.5)の場合は評価スコア2(WFLステータス++、moderately positive)、105〜170(平均132)の場合は評価スコア3(WFLステータス+++、strongly positive)とすることで評価できる。測定データの母集団であるサンプル数を多くするほど、信頼性の高い閾値を設定することが可能となる。なお、前記例では、閾値はreciprocal intensityが86であり、評価スコア2および3が再発リスクが高い評価群である。
本発明の診療補助情報の取得方法は、検体中のβ−GalNAc−生体物質の含有量に対する評価スコアに加えて、同じ検体またはそれを採取した患者から取得する、年齢、グリーソンスコア(GS)もしくはグレードグループ(GG)、病理病期分類(pT)、切除断端(RM)および神経線維周囲浸潤(pn)からなる群より選ばれる少なくとも1種の情報を組み合わせて、前立腺癌の再発リスクを推定するようにしてもよい。上記所定の情報のうち、グリーソンスコア(GS)もしくはグレードグループ(GG)および切除断端(RM)は、検体中のβ−GalNAc−生体物質の含有量に対する評価スコアを組み合わせるための情報として好ましい。
GSは、ある病理組織を顕微鏡で観察したときに、最も大きな面積を占める組織像についてグリーソン分類に基づき付与されるパターン(プライマリーパターン)と、その次に大きな面積を占める組織像のパターン(セカンダリーパターン、プライマリーパターンと同じになる場合もある)を合計した値である。グリーソン分類は、前立腺癌の癌組織の形態や浸潤増殖様式による、パターン1からパターン5の5段階に分類である。一般的に、GSが2〜6の場合は悪性度が低い、7の場合は中程度、8〜10の場合は悪性度が高いとされ、GSが7以上であるかそうでないかが主要な目安となっている。また、2015年からはGSに代わってグレードグループ(GG)も悪性度の指標として用いられるようになっており、GSが6以下はGG1、GSが3+4はGG2、GSが4+3はGG3、GSが8はGG4、GSが9または10はGG5、に対応している。
一般的に、GS(またはGG)が高い、つまり前立腺癌の悪性度が高いと、前立腺癌が再発するリスクも高い傾向にある。したがって、GS(またはGG)についても所定の閾値を設け、例えばGSが8以上(GGが4以上)の場合に、前立腺癌が再発するリスクが高いと判定することができる。
病理病期分類(pT)は、前立腺癌の進行度(病期)を示すために広く用いられている、TNM分類(T:原発腫瘍、N:所属リンパ節、M:遠隔転移)の分類の一つである。病期分類には臨床分類(治療前臨床分類:c)と病理分類(術後病理組織学的分類:p)があり、前者は病期分類が治療開始前に得られた情報に基づいて行われる場合、後者は手術や病理組織学的検索で得られた知見に基づいて補足修正された場合のものである。原発腫瘍の病理病期分類(pT)については、臓器に限局している場合はpT2、前立腺外に進展している場合はpT3、膀胱、直腸へ浸潤している場合はpT4と表される(pT1の分類は存在しない)。一般的にpTが高い場合には、前立腺癌が再発するリスクが高い傾向にある。
RMは、切除された前立腺組織の近位(proximal)と遠位(distal)の断端に癌組織を認めるか否かを表しており、認める場合は陽性(+)、認めない場合は陰性(−)である。一般的に、RMが陽性の場合には、前立腺癌が再発するリスクが高い傾向にある。
pnは、切除された前立腺組織における、癌組織の神経線維周囲への浸潤を認めるか否かを表しており、認める場合は陽性(+)、認めない場合は陰性(−)である。pnが陽性の場合には、前立腺癌が再発するリスクが高い傾向にある。
本発明による、組織検体中のβ−GalNAc−生体物質の含有量(評価スコア)に基づく診療補助情報に、上記所定の情報をどのようにして組み合わせるかは特に限定されるものではないが、例えば、カイ二乗検定に基づくノモグラムを作成することによって組み合わせることが好ましい。各種の情報に基づく、前立腺癌を診断するためのノモグラムは公知であり、本発明においてもそれらと同様の手法により、前立腺癌の再発リスクを推定するためのノモグラムを作成し、利用することができる。また、そのようなノモグラムは、前立腺癌の再発までの期間を考慮したものとすることができる。
β−GalNAc−生体物質の評価スコアに加えて、さらに上記所定の情報を利用したノモグラムによって判定される前立腺癌の再発リスクは、β−GalNAc−生体物質の評価スコアだけを用いて(ROC曲線等により)判定される前立腺癌の再発リスクよりも、信頼性が高いものとなるようにすることが好ましい。
−キット−
本発明の診療補助情報の取得方法を効率的に実施するために、必要な試薬類をまとめてキットを構成することができる。このようなキットは少なくとも、本発明の診療補助情報の取得方法において行われる、前立腺組織の検体中のβ−N−アセチルガラクトサミン−生体物質の含有量を測定するために必要な試薬類および器具類を含む。β−GalNAc−生体物質の含有量の測定方法の代表的な実施形態では、前述したように、β−GalNAc残基親和性分子にABC法を組み合わせるので、そのような実施形態に適したキットは、β−GalNAc残基親和性分子(β−GalNAc残基親和性レクチンまたは抗β−GalNAc抗体)と、アビジン−ビオチン標識酵素複合体と、酵素に対応する基質(DAB等)とを主要な構成物とすることができる。また、DAB等の基質(発色剤)の代わりに蛍光ナノ粒子を用いる実施形態(好ましくはPID法)に適したキットは、β−GalNAc残基親和性分子と、アビジン等で修飾された蛍光ナノ粒子(好ましくはPID)とを主要な構成物とすることができる。
本発明の診療補助情報の取得方法を実施するためのキットは、必要に応じて、上記の試薬以外の試薬、器具、使用説明書等を含んでいてもよい。そのような試薬および器具としては、たとえば、前立腺組織の検体スライドを作製したり、染色のための前処理を行ったりするためのもの、例えば脱パラフィン処理、賦活化処理、ブロッキング処理などを行うためのものが挙げられる。また、使用説明書には、本発明の診療補助情報の取得方法を実施するために必要な情報、例えば、上記の試薬および器具の使用方法(プロトコール)や、β−GalNAc−生体分子の評価スコアの定義および閾値、さらに必要に応じてグリーソンスコア(GS)および/または切除断端(RM)の評価における閾値などを記載しておくことができる。
前立腺癌と診断され、前立腺を全摘出された患者260名を対象に、手術前の血清検体中のLacdiNAc−PSAの濃度を定量した。患者背景を表1に示す。
表中、「pT」は、前立腺癌の進行度(病期)を示すための指標として用いられている、原発腫瘍の病理病期分類であり、臓器に限局している場合は「pT2」、前立腺外に進展している場合は「pT3」、膀胱、直腸へ浸潤している場合は「pT4」と表される。「pn」は、神経線維周囲への浸潤を認める場合は「pn+」、認めない場合は「pn−」と表される。
染色は、WFL(ノダフジレクチン)を用いて、ABC法に従って行った。その具体的な手順は次の通りである。
手術により全摘出された前立腺組織から、常法に従ってホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックを作製し、ミクロトームにより薄切して検体スライドを作製した。常法に従って脱パラフィン処理を行った後、「ヒストファイン」(ニチレイバイオサイエンス株式会社、pH6.0)を用いた賦活化処理、および0.1%BSA含有PBSを用いたブロッキング処理を行った。
続いて、検体スライドにビオチン化WFL(Vector Laboratories社)の100倍希釈溶液を滴下し、4℃で一晩反応させた。反応後、「VECTASTAIN ABCキット」(フナコシ株式会社)を用いて、それに含まれるアビジン−ビオチン標識酵素複合体、酵素基質溶液それぞれを滴下し、室温で2時間反応させた。
染色された検体スライドを顕微鏡の明視野で観察し、染色像を撮影した。画像解析ソフト「Image J」(Fiji software、オープンソース)を用いて、各染色スライドの「reciprocal intensity」を測定し、「reciprocal intensity」が74〜85(平均78.5)の場合は評価スコア1(WFLステータス+、weakly positive)、86〜104(平均98.5)の場合は評価スコア2(WFLステータス++、moderately positive)、105〜170(平均132)の場合は評価スコア3(WFLステータス+++、strongly positive)とした。なお、目視でも各評価スコア間に明らかな染色濃度の差があることを確認した。各評価スコアに対応するDAB染色像、および対比のため隣接する組織切片の検体スライドを用いて作製したHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)の染色像を、図2,図3および図4にそれぞれ示す。
WFLステータスと、術後の前立腺癌の非再発率の関係をKapran−Meier法に従って検討し、有意差をlog rank testにより検定した。結果を図5に示す。WFLステータスが+の場合、非再発率が他群に比べて有意に高いこと、すなわち前立腺癌の再発リスクは他群に比べて有意に低いといえること分かった。逆に言えば、WFLステータスが++の場合、または+++の場合、非再発率はWFLステータスが+に比べて有意に低い、すなわち前立腺癌の再発リスクは有意に高いといえることが分かった。
多変量解析(ロジスティック回帰分析)により、表1に示した各病理組織学的パラメータが、前立腺癌の再発の危険因子となっているかを検証した。結果を表2に示す。WFLステータスが+++であることは、前立腺癌の再発の独立した危険因子となっていることが分かった。さらに、GSが8以上であること、およびRMが+であることも、前立腺癌の再発の危険因子となっていることが分かった。したがって、WFLステータスに加えて、GSおよびRMも、前立腺癌の再発リスクを推定するために利用することが明らかとなった。
また、WFLステータスと、GS、pT、pnそれぞれの関係についても検証した。結果を図6、図7および図8に示す。GSが高い群、pTが3以上の群、pnが+の群はいずれも、そうでない群に比べて、WFLステータスが+の割合が低く、WFLステータスが++または+++の割合が高くなる傾向にあることが分かった。
WFLステータスと、患者の年齢(Age)、GG(グレードグループ。GSから変換)、pT、RMおよびpnとを用いて、コックス比例ハザード回帰分析を行い、カイ二乗検定(Wald検定)に基づき、ノモグラムを作成した。ノモグラムの作成に利用したデータを表3に、また作成されたノモグラム、および一例として、ある患者のデータをそのノモグラムに当てはめたときの50か月における生存予測結果を図9に示す。なお、ノモグラムの利用方法は次の通りである。(i)上記所定のデータ(因子)をそれぞれのバーにプロットする。(ii)各プロット点からpointsのバーへ垂線を引き、交点を各因子のポイントとする。(iii)各ポイントの合計値をTotal pointsとしてバーにプロットする。(iv)Total pointsのプロット点からProbability of PSA recurrence free survivalのバーへ垂線を引き、交点が前立腺癌の再発に対する50か月後の生存確率となる。
また、図9に示した50か月における生存予測結果を、1年、3年、5年および10年の生存予測結果に換えた図を、図10に示す。

Claims (6)

  1. 前立腺組織の検体を用いて、前立腺癌の再発リスクを推定するための診療補助情報を取得するための方法であって、
    前記検体中のがん部の、β−N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する生体物質の含有量を少なくとも3段階の評価スコアで表す、診療補助情報の取得方法。
  2. 前記生体物質の含有量が閾値以上であることをもって、前記評価スコアの再発リスクが高い評価群に分類する、または
    前記生体物質の含有量が閾値未満であることをもって、前記評価スコアの再発リスクが低い評価群に分類する、請求項1に記載の診療補助情報の取得方法。
  3. 前記評価スコアを、β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子を前記生体物質に結合させる工程を含む染色法を用いて作製された、染色された検体から取得する、請求項1または2に記載の診療補助情報の取得方法。
  4. 前記β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子が、ノダフジレクチン(Wisteria floribunda Lectin:WFA)、ダイズ凝集素(Soybean Agglutinin:SBA)またはカラスノエンドウレクチン(Vicia Villosa Lectin:VVL)、あるいは抗β−N−アセチルガラクトサミン抗体である、請求項3に記載の診療補助情報の取得方法。
  5. 前記染色方法を、ABC(Avidin Biotinylated Enzyme Complex)法を用いて行う、請求項3または4に記載の診療補助情報の取得方法。
  6. さらに、前記検体またはそれを採取した患者から取得する、年齢、グリーソンスコア(GS)もしくはグレードグループ(GG)、病理病期分類(pT)、切除断端(RM)および神経線維周囲浸潤(pn)からなる群より選ばれる少なくとも1種の情報を組み合わせて、前立腺癌の再発リスクを推定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の診療補助情報の取得方法。
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