JPWO2018092907A1 - エピトープ均質化抗体パネル、ならびにその作製方法および利用 - Google Patents

エピトープ均質化抗体パネル、ならびにその作製方法および利用 Download PDF

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Abstract

本発明は、抗体の効率よいスクリーニングのための技術、あるいは抗体による抗原の機能領域の探索と特定のための技術を提供する。詳細には、本発明は、エピトープ均質化抗体パネルを提供する。本発明はまたある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製する方法であって(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程と(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と(c)該結合データに基づいて該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と(d)必要に応じて部分パネルを生成しクラスタリングする工程と(e)該パネルのエピトープグループ数eを算出しe≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するパネルが存在する場合にはエピトープ均質化抗体パネルとし存在しない場合新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す工程とを含む方法を提供する。

Description

本発明は、抗体および抗原の機能および機能領域の探索または抗原の免疫原性の改変の分野に関する。より特定すると、本発明はエピトープ均質化抗体パネル、ならびにその利用および生産、ならびに新規抗体に関する。
タンパク質機能の操作は、疾患治療において必要とされる基本的な目的であり、これは、一般に、標的タンパク質への治療薬の結合によって行われる。抗体を用いた医薬は、その標的特異性から非常に魅力的な標的として研究がなされている。抗体治療薬は、標的の特定の部分(エピトープ)に結合する。抗体医薬の有用性は、抗体が結合する抗原の種類のみではなく、結合によるタンパク質機能の摂動は、その結合による相互作用がどこで生じるかに依存し、抗原におけるエピトープによって大きく変動する。抗体が結合するエピトープ領域は、抗体の機能を決める重要な因子である。
しかしながら、現在の抗体医薬開発の分野では、開発の現場の労力の現実的限界が、多数の抗体のスクリーニングを妨げており、エピトープの同定は機能性抗体が作製された後にようやく行われるのが一般的である。そのため、機能的な抗体医薬の開発において、非効率な部分が存在する。
抗体機能と相関するエピトープ領域は、個々の抗体の認識する各エピトープと同一でなく、複数の機能抗体群によって、初めて定義される抗原の領域である。エピトープ領域を定義できる必要十分の抗体を得る方法が確立されていないため、便宜上各抗体エピトープをエピトープ領域の定義に代替えすることが一般的に行われている。しかし、単一の抗体を用いてエピトープ領域を厳密に定義することはできないため、既存の方法には不適切な部分が存在する。本発明は、このような不適切な部分をも網羅するものであり、従来の方法では実現できなかった効果を奏するものである。
本発明は、エピトープ均質化抗体パネルを提供する。本発明はまた、エピトープ均質化抗体パネルを生産するための方法に関する。本発明は、エピトープ均質化抗体パネルを提供することにより、抗体の結合するエピトープ領域を同定する労力を減らし、抗体医薬の開発初期からそのエピトープ領域に関連付けられる機能の検討を可能にし、様々な機能を有する抗体の発見と開発に寄与する。本発明のエピトープ均質化抗体パネルを提供することにより、最もよいシーズ抗体をできるだけ早い時期に選択することが可能になり、無駄な開発が防止される。
本発明は、エピトープ均質化抗体パネルは、対象となる抗原に関する目標エピトープグループ数(E)(例えば、抗原に存在し得るエピトープ領域の数)以上のエピトープグループ数eを充足するパネルを選択することにより、作製される。本発明においてエピトープ均質化抗体パネルを作製する方法の一例は、図1のフローチャートに示されるような工程を包含する。一実施形態において、エピトープ均質化抗体パネルは、広いエピトープ空間をくまなく探索するのに必要十分な最小限の数の抗体から構成されるが、その構成が抗体の認識構造に基づき合理的にノーマライズまたは均質化され、抗原の表面のエピトープ領域を網羅する。
一つの実施形態では、本発明において対象とする抗原に対して、エピトープ均質化抗体パネルの目標エピトープグループ数(E)が決定される。別の実施形態において、本発明において対象とする抗原に対して、エピトープ均質化抗体パネルの目標抗体数(N)が決定される。
本発明の一つの実施形態では、抗体パネル(抗体の集合)を、含まれる抗体の結合データに基づいてクラスタリングする。一実施形態においてクラスタリングは、階層的クラスタリングである。階層的クラスタリング以外のクラスタリング手法も適切な場合使用される、好ましくは、階層的クラスリングされた抗体パネルのクラスター数を、エピトープグループ数として算出する。ここで、クラスター数に応じた安定度指数を算出し、それらの安定度指数に基づいて、安定なクラスター数をエピトープグループ数として決定することができる。
本発明の一実施形態において、抗体の結合データは、抗体のエピトープに基づいて提供される。抗体の結合データは、1または複数の抗体の抗原への結合の阻害を観察する結合アッセイによって得ることができる。1つの実施形態では、2つの抗体が存在する条件において結合アッセイを行った結果により、結合データを得ることができる。このようなアッセイとしては、競合的アッセイ(すなわち、第1の抗体と第2の抗体が同時または一方の抗体と該抗原とが結合するまでに他方の抗体が抗原と接触される形式のアッセイ)またはペア逐次結合アッセイ(すなわち、第2の抗体は前記第1の抗体が前記抗原に接触された後に、該抗原に接触され、好ましくは、第2の抗体は、該第1の抗体と該抗原とが結合するのに十分な時間接触された後に、(好ましくは過剰の第1の抗体の存在下で)、第2の抗体が該抗原に接触される形式)で行われ得る。好ましい実施形態では、結合アッセイは、ペア逐次結合アッセイである。一つの実施形態においては、結合アッセイにおいて一方の抗体(ここでは、通常第1の抗体)を大過剰の抗体を用いる。一方の抗体について大過剰(濃度)の抗体を用いることにより親和性の低い抗体も検出することができる。
本発明の一つの実施形態では、必要に応じてオリジナル抗体パネルから1または複数の抗体を除外する工程(本明細書において、ダウンサンプリングまたはダウンサイジングとも呼ばれる)が含まれる。代表的には、1または複数の抗体の除外は、オリジナル抗体パネルにおける抗体の近傍密度に基づいて行われる。オリジナル抗体パネルから1または複数の抗体を除外することによって部分パネルが生成される。
本発明の一つの実施形態では、目標値の条件(例えば、目標エピトープグループ数E、必要に応じて至適抗体数の上限Nx等)に適合する抗体パネルが、エピトープ均質化抗体パネルとして選択される。条件に適合するものが得られなかった場合には、新たな抗体をオリジナル抗体または該部分パネルに加えて新たな抗体の集合を生成し、各工程を繰り返すことができる。
一つの好ましい実施形態では、本発明において、ペア逐次結合アッセイ法を利用し、段階的に複数の免疫とモノクローナル抗体作製を行うことで、各抗体の親和性の大小に影響されず、標的タンパク質に提示されている多数の高次構造を、理論的に均質に認識し得る抗体パネル(群)を作製する方法が提供される。これにより、受容体からのシグナルを伝えるアゴニスト抗体、リガンド−受容体の結合を阻害するアンタゴニスト抗体などの種々の機能を有する抗体をより容易に同定することができ、目的に最適なプロファイルを示す治療抗体候補の選択も容易にすることができる。
一つの実施形態では、抗体総数がN以上となっているオリジナル抗体パネル(本明細書においてオリジナル抗体パネルともいう。)を提供し、必要に応じてそこからダウンサンプリングを行った部分パネルを複数生成し、オリジナル抗体パネルおよびその複数の部分パネルのうち、エピトープグループ数がE以上の条件を満たすものがエピトープ均質化抗体パネルとして選択される。そのようなパネルが存在しない場合には、新たな抗体を加えて次のサイクルへ移行する。好ましくは、エピトープ均質化抗体パネルの抗体数は、一定の抗体数(至適抗体数の上限Nx)以下である。さらに好ましくは、該当するエピトープ均質化抗体パネルのうち、抗体数が最小のものを選択する。
別の局面において、本発明はまた、新規抗体を提供する。そのような抗体は、エピトープに関連付けられた機能を有する。このような機能としては、例えば、TNFR2アゴニスト抗体、TNFR2アンタゴニスト抗体の機能が挙げられ、これらは、例えば、自己免疫疾患に対する治療抗体、がん細胞の増殖抑制、がん免疫抑制の解除機能などを利用した抗癌剤を挙げることができる。
本発明の好ましい実施形態では、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製する方法であって、
(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
を含む方法。
(項目2)
前記Eが、前記抗原に存在し得るエピトープ領域の数である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記Nが、前記E個のクラスターをクラスタリングによって生成するのに十分な抗体数である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記Nが、E×2〜6の範囲である、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルおよび/または部分パネルから、さらに抗体数が至適抗体数の上限Nx以下のものを選択する、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記Nxが、E×2〜6の範囲で設定される、項目5に記載の方法。
(項目7)
e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルおよび/または部分パネルから、さらに抗体数が最小のものを選択する、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記結合データが、前記オリジナル抗体パネルまたは部分パネルに含まれる第1の抗体の、該オリジナル抗体パネルまたは部分パネルに含まれる第2の抗体の存在下での抗原への結合の変化を結合アッセイによって検出した結合変化データに基づく、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記結合アッセイが、ペア逐次結合アッセイであって、該ペア逐次結合アッセイにおいて、前記第2の抗体は前記第1の抗体が前記抗原に接触された後に、該抗原に接触される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記結合アッセイにおいて、前記第2の抗体が前記第1の抗体よりも大過剰量で存在する、項目8または9に記載の方法。
(項目11)
前記クラスタリングが階層的クラスタリングである、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記結合データは各アッセイについて単独で取得されたデータと2つ以上の抗体を用いて取得されたデータを含み、前記クラスタリングが、各抗体の結合について、別の抗体の不存在下で得られたデータと該別の抗体の存在下で得られたデータとの間の変化データに基づいて行われる、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記エピトープグループ数が、前記クラスタリングによってクラスタリングした場合に、クラスタリングの安定性を示す安定度指数に基づいて決定されるクラスター数として算出される、項目1〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記安定度指数が、前記クラスタリングによって生成されるブートストラップ値を使用して算出される、項目13に記載の方法。
(項目15)
(d)における前記1または複数の抗体の前記オリジナル抗体パネルからの除外が、以下の基準:最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;溶解度が低い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの1または複数の基準に基づいて行われる、項目1〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記抗体の集合を提供する工程が、前記抗原に対する既知の抗体を提供することを含む、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
(a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、
(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
を含む、プログラム。
(項目17A)
項目1〜16のいずれか1項または複数に記載の特徴をさらに含む、項目17に記載のプログラム。
(項目18)
ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
(a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、
(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
を含む、記録媒体。
(項目18A)
項目1〜16のいずれか1項または複数に記載の特徴をさらに含む、項目18に記載の記録媒体。
(項目19)
ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製するシステムであって、該システムは、
(A)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして、および該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを提供する抗体パネルデータ提供部であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数N以上である、抗体パネルデータ提供部と、
(B)抗体データ計算部であって、該計算部において:
該結合データに基づいて、該抗体パネルをクラスタリングし、
必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、結合データに基づいてクラスタリングし、
該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し、再度オリジナル抗体パネル生成、結合データ提供、クラスタリング、必要に応じて部分パネル生成およびクラスタリングを繰り返すように指令を出し、
得られた該エピトープ均質化抗体パネルを出力する
抗体データ計算部、
を備える、システム。
(項目19A)
項目1〜16のいずれか1項または複数に記載の特徴をさらに含む、項目19に記載のシステム。
(項目20)
ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルであって、エピトープグループ数eが、該抗原に関する目標エピトープグループ数Eと比較してe≧Eであり、該Eが、該抗原に存在し得るエピトープ領域の数である、エピトープ均質化抗体パネル。
(項目21)
ある抗原の表面に存在する全てのエピトープ領域に対して、各エピトープ領域に結合する抗体を少なくとも2つ以上含む、エピトープ均質化抗体パネル。
(項目22)
エピトープグループあたり2〜6個の抗体を含む、項目20または21に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
(項目23)
各エピトープグループに属する抗体の数が、平均値から1標準偏差の範囲内である、項目20〜22のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
(項目24)
前記抗原との親和性がK=1×10−8Mより低い親和性である抗体を含む、項目20〜23のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
(項目25)
抗体のスクリーニングのための、項目20〜24のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
(項目26)
抗原の低免疫原性化のための、項目20〜24のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
(項目27)
ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法であって、該方法は:
(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)該オリジナル抗体パネルから、エピトープグループ数が減少しないように、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
(e)(d)のクラスタリングで得られた部分パネルのエピトープ数が該オリジナル抗体パネルのエピトープグループ数以上であるものを選択し、該選択された部分パネルを用いて該スクリーニングを行う工程と
を包含する、方法。
(項目27A)
項目1〜16のいずれか1項または複数に記載の特徴をさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目28)
前記における前記1または複数の抗体の前記オリジナル抗体パネルからの除外が、以下の基準:最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;溶解度が低い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの1または複数の基準に基づいて行われる、項目27に記載の方法。
(項目29)
ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法であって、該方法は:
(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
(f)該エピトープ均質化抗体パネルを用いて該スクリーニングを行う工程と
を含む、方法。
(項目29A)
項目1〜16のいずれか1項または複数に記載の特徴をさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
配列番号32の119〜201位にエピトープを有する、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目31)
抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物であって、該TNFR2抗体は、
(A)配列番号3(TR92重鎖)、配列番号13(TR94重鎖)、配列番号23(TR109重鎖)、配列番号37(TR92ヒト化重鎖1)、配列番号38(TR92ヒト化重鎖2)、配列番号41(TR109ヒト化重鎖1)、および配列番号42(TR109ヒト化重鎖2)からなる群より選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、
(B)配列番号8(TR92軽鎖)、配列番号18(TR94軽鎖)、配列番号28(TR109軽鎖)、配列番号39(TR92ヒト化軽鎖1)、配列番号40(TR92ヒト化軽鎖2)、配列番号43(TR109ヒト化軽鎖1)、および配列番号44(TR109ヒト化軽鎖2)からなる群より選択される軽鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖と
を含む、
抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目32)
前記TNFR2抗体は、
(i)配列番号3(TR92重鎖)、配列番号37(TR92ヒト化重鎖1)、もしくは配列番号38(TR92ヒト化重鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号8(TR92軽鎖)、配列番号39(TR92ヒト化軽鎖1)、もしくは配列番号40(TR92ヒト化軽鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体であるか、
(ii)配列番号13(TR94重鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号18(TR94軽鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体であるか、あるいは
(iii)配列番号23(TR109重鎖)、配列番号41(TR109ヒト化重鎖1)、もしくは配列番号42(TR109ヒト化重鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号28(TR109軽鎖)、配列番号43(TR109ヒト化軽鎖1)、もしくは配列番号44(TR109ヒト化軽鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体である、
項目31に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目33)
前記TNFR2抗体は、
(i)配列番号4,5および6に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号9、10および11に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、
(ii)配列番号14、15および16に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号19、20および21に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、あるいは
(ii)配列番号24、25および26に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号29、30および31に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体
である、項目31または32に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目34)
前記TNFR2抗体は、
(i)配列番号3に示すアミノ酸配列と、配列番号8に示すアミノ酸配列とを含む抗体、(ii)配列番号13に示すアミノ酸配列と、配列番号18に示すアミノ酸配列とを含む抗体、あるいは
(ii)配列番号23に示すアミノ酸配列と、配列番号28に示すアミノ酸配列とを含む抗体
である、項目31〜33のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目35)
前記抗TNFR2抗体は、ヒト化抗体である、項目31〜34のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目35A)
前記抗TNFR2抗体は、配列番号37または38に示すアミノ酸配列と、配列番号39または40に示すアミノ酸配列とを含む、項目35に記載の抗体。
(項目35B)
前記抗TNFR2抗体は、配列番号41または42に示すアミノ酸配列と、配列番号43または44に示すアミノ酸配列とを含む、項目35に記載の抗体。
(項目36)
TNFR2とTNFとの結合を阻害する、項目31〜35のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目37)
TNFR2とTNFとの結合を活性化する、項目31〜35のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
(項目38)
項目31〜項目37のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントも
しくは機能的等価物、あるいはその重鎖および/または軽鎖をコードする核酸配列を含む1または複数の核酸分子。
(項目39)
前記核酸分子は、前記重鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子と、前記軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子とを含む、項目38に記載の核酸分子。
(項目40)
項目31〜項目37のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物における重鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子。
(項目41)
項目31〜項目37のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物における軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子。
(項目42)
項目38〜41のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目43)
項目38〜41のいずれか1項に記載の核酸分子、または項目42に記載のベクターを含む細胞。
(項目44)
項目38〜41のいずれか1項に記載の核酸分子、または項目42に記載のベクターを含むハイブリドーマ細胞。
(項目45)
項目38〜41のいずれか1項に記載の核酸分子、または項目42に記載のベクター、項目43に記載の細胞を含む動物。
本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明のエピトープ均質化抗体パネルを用いることにより、機能性抗体のスクリーニング効率を格段に向上させることができ、抗体の最適化、親和性の向上、抗体フォーマットの選定、安定化、製剤化の改善を行うことができる。また、レアエピトープグループに対する抗体も含まれているため、親和性を指標に候補抗体を絞り込むことで、機能性抗体を見逃す可能性も回避することができ、通常のスクリーニングではランダムにしか得られなかった機能性抗体も、効率よく同定することができる。本発明はまた、単なるバインダーとしてではなく、創薬標的の機能を人為的に操作することができる分子として技術として利用することができる。本発明はさらに、PoC(Proof of Concept)の明らかな創薬ターゲットに対しても、効果の高い抗体医薬候補分子の作製を効率よく行うことができる。
本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、対象となる抗原のエピトープ領域について「網羅性」を有する(網羅的であるとも表現される。)。ここで、網羅性または網羅的とは、対象となる抗原上の各エピトープ領域について1以上のエピトープに結合する抗体を含む状態であり、抗原に関して機能的に異なり、相補補完的な抗体が理論的には含まれていることになる。本発明のエピトープ均質化抗体パネルはまた、好ましくは、「正確性」を有している。すなわち、エピトープ均質化抗体パネルにおいて、パネルに含まれる各エピトープグループが、正確に各機能に対応していることをいう。好ましい実施形態では、本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、ペア逐次結合アッセイでデータが得られ、これに基づくクラスタリングが行われるため、得られた各クラスターは、高次構造の変化を考慮したクラスター分類がなされているため、従来の分析では同じクラスターとして判断されていた機能の異なるエピトープグループを別々のエピトープグループとして分類できることから、各エピトープグループは、正確に機能に対応すると理解される。
1つの実施形態では、本発明において、各エピトープグループに属する複数の抗体のエピトープを、個々に解析した結果を統合することで、抗体エピトープ領域の記述が可能となる。また均質化抗体パネルに含まれる抗体で定義される機能に相関したエピトープグループは、他の無機能抗体から構成されるエピトープグループとは異なっているという付加情報を有する。理論に束縛されることを望まないが、本発明を用いる場合の利点として、エピトープ均質化抗体パネルは抗原網羅性を有しているので、均質化抗体パネルを用いて、抗体機能に相関した抗体エピト−プ領域の完全性(すなわち、漏れがないこと)を保証された定義が、極めて正確に可能になると理解される。
図1Aは、本発明の方法の実施形態を模式的に示したフローチャートである。 図1Bは、本発明のシステムの実施形態を模式的に示した図である。 図2Aは、本発明の方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。 図2Bは、エピトープ均質化抗体パネルの利点を示す図である。 図2Cは、エピトープ均質化抗体パネルの必要性を示す図である。 図2Dは、エピトープ均質化抗体パネルの利点を示す図である。 図3は、ペア逐次結合アッセイを模式的に示す図である。 図4は、抗体の競合において一方の抗体を大過剰で用いることを示す図である。 図5は、実施例1において、抗原Aの表面における仮想エピトープ作製の中心として取得されたアミノ酸残基の分布を示す図である。 図6は、実施例1において、抗原Aの表面における仮想エピトープについての仮想ペア逐次結合アッセイに基づく、仮想エピトープのクラスタリングを示す樹形図である。 図7は、実施例1において、抗原Aの表面における仮想エピトープのペア逐次結合アッセイに基づくクラスタリングにおける安定度指数の分布を示す図である。 図8および図9は、実施例1において、抗原Aのドメイン上のエピトープ予測の一例を示す。 図8および図9は、実施例1において、抗原Aのドメイン上のエピトープ予測の一例を示す。 図10は、実施例1において、取得した抗原Aに対する抗体の親和性を示す図である。上段のパネルは、実施例1で抗抗原A抗体のスクリーニングに用いた、溶液中非変性抗原キャプチャーELISA法による各抗体の反応性と、通常の固相化抗原Aを用いたELISAにおける抗体反応性の比較を示す。中段のパネルは、実施例1で抗抗原A抗体のスクリーニングに用いた、非変性抗原間接固相化ELISA法による各抗体の反応性と通常の固相化抗原Aを用いたELISAにおける抗体反応性の比較を示す。下段のパネルは、実施例1におけるスクリーニング法で得られた抗原A抗体の親和性の分布を示す(Kd平均値(nM)=4.66、Kd中央値(nM)=0.87)。0.1〜10nM KD程度の親和性で抗体が得られ、それらの抗体をペア逐次アッセイに供した。 図11は、実施例1において、選択された39抗体についてのペア逐次結合アッセイの結果を示す図である。 図12は、実施例1において、選択された46抗体についてのペア逐次結合アッセイの結果を示す図である。 図13Aおよび13Bは、実施例1において、取得した抗体について各抗原ドメインと抗原変異体に対する結合アッセイを行った結果を示す。 図13Aおよび13Bは、実施例1において、取得した抗体について各抗原ドメインと抗原変異体に対する結合アッセイを行った結果を示す。 図14Aは、実施例1において、抗原Aに対する76抗体を有するオリジナルパネルについてクラスタリングを行った結果を示す。 図14Bは、抗原Aに対する76抗体を有するオリジナルパネルについてクラスタリングを行った際の安定度指数の分布を示す。 図15は、実施例1において、76抗体を有するオリジナルパネルからダウンサンプリングを行った際のデータを示す。 図16は、実施例1において、59抗体を有する部分パネルについてクラスタリングを行った結果を示す。 図17は、実施例1において、59抗体を有する部分パネルについてクラスタリングを行った際の安定度指数の分布を示す。 図18は、実施例1において、抗原A上のエピトープ領域と、エピトープ均質化抗体パネルにおけるエピトープグループとの関連を示す図である。 図19は、実施例1において、エピトープ均質化抗体パネルにおけるエピトープグループに対応するエピトープ領域が抗原A上に均一に分布していることを示す図である。抗原Aの構造モデルは、Pseudomonas exotoxin A結晶構造(J Mol. Biol., 314, 823-837 (2001))から、抗原Aと対応するアミノ酸残基に属する原子を抽出することによって構築された。全ての変異アミノ酸は、凡例に従って異なる色で示される。アラニンまたはグリシンで置換された場合に、同一のエピトープ領域に分類される2つ超のモノクローナル抗体の結合を減少させるアミノ酸を、エピトープ関連アミノ酸とした。上部の図は、異なる角度から見た抗原Aモデルの図である。球状モデルにおいて、ドメインII(251〜364)は、茶色で示され、ドメインIbフラグメント(381〜399)およびドメインIII(400〜613)はモスグリーンで示される。下部の図は、各エピトープ関連アミノ酸からの透視図を示す。 図20は、実施例2において、抗体の取得手順の一例を示す模式図である。 図21Aおよび図21Bは、実施例2において、CD30についてデータベースによる3次元ドメイン構造の予測に基づいて作製した構造モデルを示す。 図21Aおよび図21Bは、実施例2において、CD30についてデータベースによる3次元ドメイン構造の予測に基づいて作製した構造モデルを示す。 図22は、実施例2において実施される、ペア逐次結合アッセイの手順の一例を示す模式図である。 図23は、実施例2において、CD30に対する33抗体を含む部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示すデータである。表中の数字は、各々の阻害抗体の前結合下で、各抗体の結合量を、阻害無しの場合を100とした時の割合として示す。 図24Aは、実施例2において、CD30に対する33抗体を含む部分パネルをクラスタリングした結果を示す樹形図である(上)。下部には、クラスタリング結果に基づいて計算された安定度指数が記載される。 図24Bは、実施例2において、CD30に対する33抗体を含む部分パネルをクラスタリングした際の各クラスター数における安定度指数(EGSIおよびSI)の分布を示す図である。 図25は、実施例2において、CD30に対する33抗体を含む部分パネルのペア逐次結合アッセイの結果を、クラスタリングに従って示した図である。 図26は、実施例2において、CD30に対する18抗体を含む部分パネルのペア逐次アッセイの結果を示す。 図27は、実施例2において、CD30の欠失変異体への反応性に基づく、各抗体のエピトープマッピングを示す。 図28は、実施例2において、CD30のドメイン交換変異体への反応性に基づく、各抗体のエピトープマッピングを示す。 図29は、実施例2において、抗CD30抗体によるCD30下流の細胞内シグナル伝達に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。 図30は、実施例2において、CD30刺激による細胞増殖への影響を調べた結果を示す図である。 図31は、実施例2において、抗CD30抗体の競合的アンタゴニスト活性を調べた結果を示す図である。 図32は、実施例2において、CD30L存在下における抗CD30抗体の機能評価の結果を示す図である。 図33は、実施例3において、FcRL5に対して得られた32抗体のパネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示す行列を示す図である。 図34は、実施例3において、FcRL5に対して得られた32抗体のパネルに含まれる抗体の相互の結合阻害の関係性と、クラスタリングを示す図である。 図35Aは、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示す行列を示す図である。 図35Bは、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示す行列の行と列を入れ替えたものを示す図である。 図35Cは、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルについてクラスタリングに用いた入力データを示す図である。 図36は、実施例3において、FcRL5(IRTA2)の構造を示す図である。 図37Aは、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルのクラスタリングの結果を示す樹形図である。 図37Bは、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルのクラスタリングの際の安定度指数の計算および分布を示す図である。 図38は、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルに含まれる抗体の相互の結合阻害の関係性と、クラスタリングを示す図である。 図39は、実施例3において、FcRL5に対して得られた29抗体のパネルのクラスタリングから、安定度指数を指標にクラスター数を決定するデータを示す図である。 図40Aは、実施例3において、FcRL5に対するエピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体群の各ドメインのDeletion Mutantsに対する反応性を示す図である。 図40Bは、実施例3において、FcRL5に対するエピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体群のFCRLファミリーメンバーに対する交差反応性を示す図である。 図40Cは、実施例3において、抗FCRL5エピトープ均質化パネルを用いることで、抗FCRL5の異なるエピトープグループに対する5種類の抗体であって、各抗体が相互に競合せず、かつ他のファミリーメンバーと交差反応を示さず、かつ限られたドメインとの反応性を有する抗体を同時に得ることができたことを示す図である。 図41は、実施例4において、TNFR2について目標エピトープ数および目標抗体数を決定する際に、仮想エピトープとして取得したアミノ酸残基の分布を示す図である。 図42は、実施例4において取得した仮想エピトープ間での仮想競合試験の結果に基づいてクラスタリングを行った結果を示す樹形図である。 図43は、実施例4において取得した仮想エピトープ間での仮想競合試験の結果に基づく、エピトープグループ数ごとのEGSIをプロットした図である。 図44は、実施例4において取得した、TNFR2に対する26抗体のオリジナルパネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示すデータである。表中の数字は、阻害無しの場合と比較した、各々の抗体の結合量の割合を示す。 図45は、実施例4において取得した、TNFR2に対する26抗体のオリジナルパネルについてのペア逐次結合アッセイの結果に基づくクラスタリングの結果を示す樹形図である。 図46は、実施例4において取得した、TNFR2に対する26抗体のオリジナルパネルについてのクラスタリングの結果に基づくエピトープグループ数ごとの安定度指数をプロットしたものである。 図47は、実施例4において取得した、TNFR2に対する26抗体のオリジナルパネルについてのクラスタリングにおいて取得されたパラメーターを示す図である。 図48は、実施例4において行われたダウンサンプリングの工程の概要を示す図である。 図49は、実施例4において取得した、TNFR2に対する21抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示すデータである。表中の数字は、阻害無しの場合と比較した、各々の抗体の結合量の割合を示す。 図50は、実施例4において取得した、TNFR2に対する21抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果に基づくクラスタリングの結果を示す樹形図である。 図51は、実施例4において取得した、TNFR2に対する21抗体の部分パネルについてのクラスタリングの結果に基づくエピトープグループ数ごとの安定度指数をプロットしたものである。 図52は、実施例4において取得した、TNFR2に対する20抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示すデータである。表中の数字は、阻害無しの場合と比較した、各々の抗体の結合量の割合を示す。 図53は、実施例4において取得した、TNFR2に対する20抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果に基づくクラスタリングの結果を示す樹形図である。 図54は、実施例4において取得した、TNFR2に対する20抗体の部分パネルについてのクラスタリングの結果に基づくエピトープグループ数ごとの安定度指数をプロットしたものである。 図55は、実施例4において取得した、TNFR2に対する17抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果を示すデータである。表中の数字は、阻害無しの場合と比較した、各々の抗体の結合量の割合を示す。 図56は、実施例4において取得した、TNFR2に対する17抗体の部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果に基づくクラスタリングの結果を示す樹形図である。 図57は、実施例4において取得した、TNFR2に対する17抗体の部分パネルについてのクラスタリングの結果に基づくエピトープグループ数ごとの安定度指数をプロットしたものである。 図58は、実施例4における26オリジナル抗体パネルで同定されたエピトープグループと、TNFαのTNFR2への結合阻害(アンタゴニスト効果)との関係を示す図である。 図59は、実施例4における26オリジナル抗体パネルで同定されたエピトープグループと、TNFR2との結合を示すドメインとの関連を示す図である。 図60は、実施例4における17部分抗体パネルで同定されたエピトープグループと、抗TNFR2抗体のTNFR2下流NFkB細胞内シグナルの誘導機能(機能的アゴニスト効果)との関連を示す図である。 図61は、実施例4における17部分抗体パネルで同定されたエピトープグループと、抗TNFR2抗体のTNFα依存性細胞内シグナルの抑制(機能的アンタゴニスティック効果)との関連を示す図である。 図62は、抗TNFR2抗体のウェスタンブロットにおける反応性(エピトープの性状:リニアーエピトープvsコンフォメーショナルエピトープ)を示す図である。(a)のパネルは、実施例4における17部分抗体パネルで同定されたエピトープグループの各々に属する抗体の、TNFR2−rFc(12ng/レーン)に対する結合性を示す。写真の上の記載は、各抗体の名称およびエピトープグループの名称を示す。(b)のパネルは、実施例4における17部分抗体パネルで同定されたエピトープグループの各々に属する抗体の、TNFR2を一過的にトランスフェクトした293T細胞の細胞溶解物(15μg/レーン)に対する結合性を示す。写真の上の記載は、各抗体の名称およびエピトープグループの名称を示す。 図63は、抗TNFR2抗体のTNFR2ドメイン交換変異体に対する反応性を示す図である。左パネルは、作製した4種のTNFR2ドメイン交換変異体−rabbit Fc融合タンパク質を示す模式図である。右パネルは、実施例4における17部分抗体パネルで同定されたエピトープグループの各々に属する抗体の、それぞれの変異体(DC1〜DC4)に対する反応性を示す。 図64は、抗TNFR2アゴニスト抗体(Ep5:TR92)および抗TNFR2アンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)の細胞膜上TNFR2に対する親和性の測定の結果を示す図である。横軸には各抗体の段階希釈(1回あたり3倍)の回数を示し、並行して濃度を示している。縦軸には各濃度における結合(FCMにおけるMFI)を示した。 図65は、TNFR2ドメイングラフト変異体を用いた、アゴニスト抗体(Ep5:TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)のエピトープ位置の検討を示す図である。左パネルは、ヒトTNFR2の各システインリッチドメインを、構造がTNFR2と類似しているCD30(TNFRSF8)にグラフトして作製した変異体をしめす。右パネルは、293T細胞上に発現させた各変異体と各抗体の結合をフローサイトメトリーで測定した結果を示す。+は結合あり、−は結合なしを示す。 図66は、TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体を用いた、アゴニスト抗体(Ep5:TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)のエピトープ位置の検討を示す図である。上パネルには、ヒトTNFR2の各モジュールを相当するマウスTNFR2のモジュールと置換した、モジュールキメラ変異体(MC1〜MC4)における変異を導入した部分(CRD2およびCRD3)の配列を示している。野生型配列において、リガンド結合部位(SSDおよびKQEG)に下線を付している。保存されているシステイン残基は影付きで示し、マウスTNFR2オルソログに基づいて変異を導入している残基については、白抜きで示した。下パネルには、各抗体の抗原レベルと結合の相関を確認した結果を示す。 図67は、TNFR−Fc(エタネルセプト)単独とTR109(ヒトキメラ抗体)の結合物(複合体)の各ペプチドの重水素置換率のプロットである。1〜3のCircleはTNFR−Fc単独と抗体複合物で重水素交換速度の低下(分子量の差)がみられたペプチド領域を示す。 図68は、抗TNFR2アンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)の結合により、TNFR2コンフォメーショナル上の隠される位置(機能エピトープ位置)を示す図である。上のパネルは、TR109との結合により重水素置換率変化が同定された3つの領域のTNFR2一時配列上の位置を示す。下のパネルは、同定された3つの領域のTNFR2の立体構造(3ALQ)への投影図を示す。各領域に含まれるアミノ酸は異なる色で示される(Region1、Red;Region2、Orange;Region3、Pink)。 図69は、TR92アゴニスト抗体およびTR109アンタゴニスト抗体のTNF依存性ヒト制御性T細胞増殖に与える効果を示す図である。左パネル(a)は、異なるIL−2濃度および異なるTNFα濃度での制御性T細胞の増殖の程度(対照と比較したパーセンテージ)を示す。右パネル(b)は、異なる濃度でTR92抗体またはTR109抗体を添加した場合の制御性T細胞の増殖率の変化を示す。 図70は、TR109抗体による膜型TNFα依存性TNFR2活性化の阻害を示す図である。上パネルには、実験手順および実験各段階で観察される細胞の外観が示される。下パネルには、抗体との共培養を行った細胞において、SEAPによってNFkB活性化を測定した結果が示される。 図71は、種々の細胞に発現する膜型TNFRへの、TR109抗体の特異的な結合を示す図である。TR109抗体の特異的な結合を、膜型TNFR2を発現する細胞を用いたフローサイトメトリーで確認した。各グラフの横軸は細胞への抗体結合に相関する蛍光強度を示す。縦軸は、細胞数(Event number)を示す。抗体の結合によって異なるピークの蛍光を発する細胞が増えるため、ピーク位置の変化は、抗体の細胞への結合を示す。 図72は、組み換えヒトキメラTR109抗体およびTR109抗体由来FabのTNFR2依存性NF−kB細胞シグナル誘導に対する効果を示す図である。左パネル(a)には、組み換えヒトキメラTR109抗体およびTR109抗体由来Fabの作製が模式的に示される。右パネル(b)には、それぞれの分子のアンタゴニスト活性を、Ramos−blueレポーター細胞内のNFkBシグナルとして検出した結果を示す。 図73は、ホモロジーモデリングにより構築したTR92とTR109の高次構造モデルを示す図である。 図74は、作製した4種のヒト化TR92抗体の細胞膜型TNFR2に対する特異的結合を示す図である。上の行のパネルは、TNFR2の一過性発現を行った細胞に対する各抗体の結合を示し、下の行のパネルは無処理の細胞に対する各抗体の結合を示す。 図75は、作製した4種のヒト化TR109抗体の細胞膜型TNFR2に対する特異的結合を示す図である。上の行のパネルは、TNFR2の一過性発現を行った細胞に対する各抗体の結合を示し、下の行のパネルは無処理の細胞に対する各抗体の結合を示す。 図76は、作製したヒトキメラ抗体およびヒト化TR109抗体(HZ109−2、HZ109−4)についてのDifferential Scanning Fluorimetryによる熱安定性の評価を示す図である。上パネルは、SYPRO Orangeの存在下で昇温し、温度に対して測定された蛍光強度をプロットしたものである。下パネルは、PBS Bufferのみとの蛍光強度の差をプロットしたものである。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
[定義]
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本明細書において、「抗体パネル」とは、抗体の集合であって、結合データ取得などの生物学的アッセイおよびクラスタリング等の計算処理を行う対象をいう。抗体の集合は、物理的な抗体の混合物に限定して解釈されるべきものではなく、概念としての抗体の集合も含む。抗体の集合としては、所定の抗原について、新たに抗体を生成してもよく、既知の抗体を含めて提供してもよい。本明細書において各処理(代表的には、結合データの取得、クラスタリング、および任意の部分パネル生成、ならびにエピトープ均質化抗体パネルの存否の判断の一連の処理)の最初に提供される抗体パネルを「オリジナル抗体パネル」という。本明細書において、初期抗体パネルから1または複数の抗体を除外した抗体パネルを「部分パネル」と称する。部分パネルと対比して、除外を行う前のオリジナル抗体パネルを「オリジナルパネル」または「初期抗体パネル」と称する場合がある。本明細書において、クラスタリングおよび/または部分パネルの生成後にエピトープ均質化抗体パネルの存否を判断し、存在しなかった場合に、すでに存在するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルに新たな抗体を加えて作成した抗体の集合もまた、2回目以降の「オリジナル抗体パネル」として利用することができる。
本明細書において「エピトープ均質化抗体パネル」とは、本発明の手法により提供されるものであり、各エピトープグループを基準として、そのパネルに含まれる抗体が実質的に同様の数で含まれる抗体パネルをいう。
本明細書において、「抗体数」は、「n」とも表現され、ある抗体の集合に含まれる数を示し、実際に(in silico、in vivoまたはin vitroを問わず)生成または提供される抗体の集合に含まれる数を計数することで、特定することができる。
本明細書において、目標抗体数とは、「N」とも表現され、各処理(代表的には、結合データの取得、クラスタリング、および任意の部分パネル生成、ならびにエピトープ均質化抗体パネルの存否の判断の一連の処理)を行うために適切な抗体数をいう。目標抗体数は、目標エピトープグループ数E(好ましくは、抗原に存在し得るエピトープ領域の数)のクラスターをクラスタリングによって生成するのに十分な抗体数である。このようなNは、抗体パネルおよびEが提供されたならば、統計学やクラスタリング処理の当該分野における公知の情報を用いて、算出することができる。
本明細書において、至適抗体数の上限は、「Nx」とも表現され、各処理(代表的には、結合データの取得、クラスタリング、および任意の部分パネル生成、ならびにエピトープ均質化抗体パネルの存否の判断の一連の処理)を行って得られる「エピトープ均質化抗体パネル」として適切な候補となる抗体群について、目標に応じて設定されるパネルに含まれる抗体数の最大値をいう。至適抗体数は、エピトープ均質化抗体パネルの作製目的または使用目的に応じて変動するが、エピトープ均質化抗体パネルの代表的な目的が、最小限の抗体数で最大限の効果を得ることにあることから、様々なアッセイにおいて実用的な数が設定され得る。理論に束縛されることを望まないが、Nxは、目標エピトープグループ数E(好ましくは、抗原に存在し得るエピトープ領域の数)であるEの2倍以上、3倍以上、4倍以上、および/または10倍以下、9倍以下、8倍以下、7倍以下、6倍以下、5倍以下、あるいは2〜10倍、2〜9倍、2〜8倍、2〜7倍、2〜6倍、3〜6倍の範囲で設定され得るがこれらに限定されない。
本明細書において、「エピトープ」とは、抗体の結合する抗原の部分を指す。エピトープは、抗原の特定された一部分であり、抗原がタンパク質またはポリペプチドの場合は、その抗原のアミノ酸配列における特定のアミノ酸残基またはその範囲として表現することができる。あるいは、エピトープを構成するアミノ酸に含まれる一部の原子の集合としても表現できる。エピトープは数個〜十数個からなるアミノ酸配列等の抗原分子より小さい領域でありうることが理解される。本明細書において、抗体は対応するエピトープを用いて特定することができ、適切な場合には「エピトープ数」は「抗体数」と交換可能に使用される。これは、理論的には異なるFv(可変領域)の配列で認識される抗原性部位(エピトープ)は抗体の数だけ存在するからである。
本明細書において、「エピトープ領域」とは、あるエピトープに対する抗体と、(同じエピトープ領域に属する)別のエピトープに対する他の抗体とが、同時には結合できない、抗原上のエピトープが存在し得る部分の全体を指し、抗原がタンパク質またはポリペプチドである場合は、アミノ酸の位置の範囲またはそれらのアミノ酸に含まれる一部の原子の集合、として示すことができる。すなわち、あるエピトープ領域に属するエピトープに対するある抗体と、同一のエピトープ領域に属するエピトープに対する別の抗体とは同時に抗原に結合しない、または互いの抗原への結合を阻害する。エピトープ領域は、任意の結合アッセイまたは結合のシミュレーションによって定めることができる。
本明細書において、「エピトープグループ」とは、ある抗体パネルについて、クラスター分析(例えば、階層的クラスター分析)を行い、例えば、安定度指数などの適宜の指標によってクラスター数を決定した場合の抗体の分類をいう。「エピトープグループ数」は各抗体パネルに固有の値となる。本明細書においてエピトープグループ数は「e」とも表現される。エピトープグループ数は、クラスター分析した後の樹形図で、安定度指数などの指標に相応する樹形図の高さにおけるクラスターの数を計数することで算出することができる。
本明細書において、目標エピトープグループ数は「E」とも表現され、各処理(代表的には、結合データの取得、クラスタリング、および任意の部分パネル生成、ならびにエピトープ均質化抗体パネルの存否の判断の一連の処理)を行うために設定されるエピトープグループの数をいう。目標エピトープグループ数Eは、好ましくは、対象となる抗原に存在し得るエピトープ領域の数と設定される。具体的な例としては、目標エピトープグループ数Eは抗原の分子量(MW)に対して、E>MW/10000−1の範囲で推定されるがこれに限定されることはない。
本明細書において「結合データ」とは、抗体と抗原との結合反応に関する任意のデータを言う。結合データとしては、例えば、抗原抗体反応の結合定数、解離定数、結合速度定数や解離速度定数等の反応動力学定数、競合的アッセイやペア逐次結合アッセイ等の2つ以上の抗体を同時に用いたときの各々の抗体の抗原に対する結合定数や解離定数で表すこともできる。ELISA等のデータの場合は吸光度の絶対値または相対値等で表すこともできる。
本明細書において「クラスタリング」または「クラスター分析」とは、交換可能に用いることができ、ある抗体パネル等の集合データについて、結合データに基づいてクラスター分析を行い、各抗体のクラスターを生成することをいう。クラスタリングは、当該分野で公知の任意の手法(例えば、階層的クラスタリング、非階層的クラスタリング等)で実施することができ、代表的には階層的クラスタリングが用いられる。本発明の目的では、階層的クラスタリングで用いられる手法は任意である。
本明細書において抗体パネルから1または複数の抗体を「除外」するとは、ある抗体パネルが与えられたとき、その抗体パネルに属する1つ以上の抗体をその抗体パネルから取り除くことをいい、結果として残る抗体パネルは、「部分パネル」と称される。したがって、ある一連の処理において「オリジナル抗体パネル」の一部が「部分パネル」に該当することとなる。それゆえ、ある一連の処理において、「部分パネル」に含まれる各抗体の結合データは、オリジナル抗体パネルの結合データをそのまま利用することができるが、新たに結合データを入手してもよい。「部分パネル」の生成は、いったんある「部分パネル」を生成した後、さらにその部分パネルから、1または複数の抗体を除外することで、さらなる「部分パネル」を生成することもできる。このような2回以上の除外をおこなって得られる「部分パネル」もそのおおもとはオリジナル抗体パネルであるため、これらもまたオリジナル抗体パネルから1または複数の抗体を除外して得られる部分パネルに該当する。
本明細書において「ペア逐次結合アッセイ」とは、ある抗原に対して、2つの異なる抗体を用いて行う結合アッセイの一種であって、2つの抗体のうち1つ目(第1の抗体)を先に対象抗原と接触させ、十分な時間の経過後、すなわち第1の抗体と抗原との抗体抗原反応が終了した後に、2つ目(第2の抗体)をさらに加え、抗体抗原反応をさせ、最終的に2つめの抗体と抗原との結合に関するデータを得るアッセイをいう(図3参照)。これに対して、「競合(的)結合アッセイ」は、2つの抗体を第1の抗体と第2の抗体が同時、実質的に同時または一方の抗体と対象抗原とが結合するまでに他方の抗体が抗原と接触される形式である。ペア逐次結合アッセイを用いることで、ある抗体が対象抗原に結合した際に生じる高次構造の変化によって生じる抗体抗原結合の様式の変化も識別することができる。
本明細書において「大過剰」とは、2つ以上の抗体を抗原に対して接触させる際に、一方の抗体が他方の抗体に比べて著しく量が多く(濃度が高く)、その結果、各抗体の抗原結合の親和性の差を実質的に無視して、結合データ取得が可能になる状態を言う(図4参照)。大過剰にすることにより、抗原と抗体の反応の平衡状態を、常に抗体に結合した抗原(抗原抗体複合物)がほとんどすべてになるように制御できるので、もう一方の抗体と、すでに最初の抗体が結合した抗原との結合を、解析することが容易になる。大過剰の濃度または量は当該分野において適宜設定することができ、例えば、ある抗体に対して別の抗体が10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、400倍以上、500倍以上、1000倍等を挙げることができるがこれらに限定されない。大過剰が「濃度」について言及される場合は「大過剰濃度」といい、大過剰が「量」について言及される場合は「大過剰量」ともいう。
本明細書において「変化データ」とは、結合データを取得する際、各アッセイについて単独で取得されたデータと2つ以上の抗体を用いて取得されたデータを用いた場合に算出されるデータであって、各抗体の結合について、別の抗体の非存在下で得られたデータと該別の抗体の存在下で得られたデータとの間の変化を示すデータを言う。
本明細書において「安定度指数」とは、クラスタリングの安定性を示す指数を言う。クラスタリングの安定度については、例えば、一宮ら、階層的クラスタリングの安定性の可視化(Visualization of stability of hierarchical clustering)、グラフィクスとCAD(2008)、Vol. 80,61−66、渡部ら、仮想要素追加報による階層
的クラスタリングの安定性の解析と可視化、情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用、Voo. 48、No. SIG15(TOM18)、2007、176-188などを参照することができ、これらは参考として本明細書に援用する。安定度指数は、例えば、クラスタリングによって生成されるブートストラップ値を使用して算出してもよいがこれに限定されない。安定度指数は、SI、EGSIなどを挙げることができる。
本明細書においてSIとは、
(式中、SI(g)は抗体をgグループにクラスタリングした場合のSIであり、各エピトープグループ(1、2、...g)は、他のグループと、樹形図中で各高さ(H、H、...H)で結合され、COgは、g+1のエピトープグループを生成する場合の最も高いカットオフ値であり、(BS、BS、...BS)は、1、2、...g個のエピトープグループが生成される場合のノードのブートストラップパーセンテージである。)である。
本明細書においてEGSIとは、
(式中、EGSI(g)は抗体をgグループにクラスタリングした場合のEGSIであり、各エピトープグループ(1、2、...g)は、他のグループと、樹形図中で各高さ(H、H、...H)で結合され、COgは、g+1のエピトープグループを生成する場合の最も高いカットオフ値であり、(BS、BS、...BS)は、1、2、...g個のエピトープグループが生成される場合のノードのブートストラップパーセンテージであり、単一の要素のみがエピトープグループを構成する場合、ブートストラップパーセンテージとして、0が用いられる。)である。
本明細書において、「密度依存的ノーマリゼーション」とは、抗体パネルにおける抗体の存在密度またはそれに関連する事項に基づいて1または複数の抗体を除外してオリジナル抗体パネルから部分パネルを生成することをいう。厳密な意味では、密度依存的ノーマリゼーションは密度に関連する事項での抗体の除外を含むが、密度に直接関連するものではないものであっても、本発明のダウンサンプリングにおいて有用であり、最終的に得られる抗体パネルが密度に関して均質化されている状態が得られるのであれば、密度依存的ノーマリゼーションに包含することができる。密度依存的ノーマリゼーションは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;溶解度が低い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの少なくとも1つを用いて行うことができる。
本明細書において「抗体パネルデータ提供部」とは、本発明のシステムにおいて、本発明を実施する際に提供されるオリジナル抗体パネルおよびその結合データを提供する部分をいう。ここで、抗体パネルは新たに生成することもでき、既存のものを用いることもできる。抗体パネルデータ提供部は、新たにデータを入手する場合は、抗体を生成する手段、抗体と抗原との結合反応をアッセイする手段(例えば、ELISAキット等)、ならびに抗体に関するデータおよびその結合データを格納し、必要に応じて計算する手段を含み得る。
本明細書において「抗体データ計算部」とは、本発明のシステムにおいて、本発明で行われる計算を実施する部分をいう。抗体データ計算部では、該結合データに基づいて、該抗体パネルを階層的クラスタリングによりクラスタリングし、該抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、結合データに基づいて階層的クラスタリングによりクラスタリングし、該抗体の集合および該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、新たな抗体のデータを加えて抗体データの提供、結合データの提供、クラスタリング、部分パネルの生成、部分パネルのクラスタリングを繰り返し、必要に応じて、得られた該エピトープ均質化抗体パネルを出力することができる。抗体データ計算部は、1つの部分から構成されてもよく、複数の部分で構成されてもよい。抗体データ計算部は、抗体パネルデータ提供部と同じ部分で機能が実現されてもよく、別々の部分で機能が実現されてもよい。
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当す
る)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質(例えば、抗体または抗体を改変した分子も含む)、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、核酸、糖、脂質、有機低分子、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、自己免疫疾患、がん)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、自己免疫疾患、がん等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、自己免疫疾患、がん)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、自己免疫疾患、がん等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、自己免疫疾患、がん等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「減少」または「抑制」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における減少、または減少させる活性をいう。減少のうち「消失」した場合は、活性、発現産物等が検出限界未満になることをいい、特に「消失」ということがある。本明細書では、「消失」は「減少」または「抑制」に包含される。
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「増加」または「活性化」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または増加させる活性をいう。
本発明の抗体またはその他の物質は、ある標的(例えば、TNFR2など)に対してこのような抑制または活性化の機能を有し得る。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
[エピトープ均質化抗体パネルの生成]
以下に、本発明のエピトープ均質化抗体パネルの作製方法について説明する。1つの局面において、本発明はある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製する方法であって、該方法は、(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧E(該抗原に関する目標エピトープグループ数)を充足する集合または部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す工程とを含む方法を提供する。本発明のエピトープ均質化抗体パネルの製造方法は、図1A〜1Bに例示されている。その各ステップについては、図2A〜2Dに代表的な例を用いて詳述されているので、以下これらの図も適宜参酌しながら、各工程、特徴等を説明する。
本発明の方法で提供されたエピトープ均質化抗体パネルは、含まれる抗体が、機能性抗体を選択するうえでもっとも適切なグルーピングの方法に従って提供されており、その結果、機能性抗体のスクリーニングが改善される。
本発明において、好ましい実施形態では、抗原分子全体を抗体群が網羅的に(もれがないように)認識するときに、各抗体の結合機能に基づいた抗体群のグルーピングがなされていることになるため、機能性抗体のスクリーニングが効率化される。好ましい実施形態では、非変性の抗原を用いることができ、変異体や、ペプチドエピトープマッピングなどの変性抗原をもちいた方法とは異なり、抗体が抗原分子を生体内で認識するときと同じ条件を採用することが出来るので、効率的な機能性抗体の探索が可能になる。標的分子をターゲットする抗体医薬を作製する場合、本発明の方法に従って作製された抗体パネルを用いれば、最も効果的に(効率よく)に機能性抗体を探索することができる。
本発明のエピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体は、含まれる抗体について同一のエピトープグループに属する抗体の機能が互いに類似していることから、抗体を、エピトープグループの分類において認識構造により分類すると、構造ベースに類似機能の抗体が得られる可能性が高く、同時に抗原の機能に関連した構造が同定される可能性が高いので、機能性抗体のスクリーニングが効率化される。
本発明の方法で提供されるエピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体のエピトープを、抗体ごとに個々に解析し、各エピトープグループに属する複数の抗体のエピトープ解析結果を統合することで、エピトープ領域の定義が可能となる。均質化抗体パネルに含まれる抗体で定義される機能に相関したエピトープグループは、他の無機能抗体から構成されるエピトープグループとは異なっているという付加情報を有する。さらに、好ましい実施形態では、エピトープ均質化抗体パネルは抗原網羅性を有しているので、均質化抗体パネルを用いることにより、抗体機能に相関した抗体エピト−プ領域の完全性を保証された定義が、極めて正確に、初めて可能になると理解される。
[抗体の産生]
本発明の該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程は、当該分野で公知の任意の抗体を生成する方法を用いて実施することができる。
例えば、所望の抗原を用いて、動物を免疫することによって抗体を得ることができる。抗原に関する目標抗体数N以上の抗体を生成することが好ましいため、ある実施形態においては、1または複数の免疫動物(例えば、1〜6個体)から抗体の集団を得ることが好ましいがこれに限定されず、N以上の抗体を提供することができる限り、どのような手法を用いてもよい。
本明細書において「抗体」は、広義にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらのフラグメント、例えばFvフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2およびFabフラグメント、ならびにその他の組換えにより生産された結合体または機能的等価物(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異性またはオリゴ特異性(oligospecific)抗体、単鎖抗体、scFV、ダイアボディー(diabody)、sc(Fv)2(single chain (Fv)2)、scFv−Fc)を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてもよい。本発明において代表的に使用される抗体は、エピトープが明確に規定されるモノクローナル抗体であるが、エピトープが規定できる限り、他の種類のものも利用することができる。
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫した動物の血清から抗体を精製することによって得ることができる。ポリクローナル抗体の作成においては、血液から抗体を精製するため、アルブミン等の血中タンパク質を除去する前処理が必要となる場合がある。Protein A/Gによるアフィニティー精製で回収を行い、抗原をリガンドとして結合したアフィニティーカラムで再度精製を行い、目的の抗体以外を排除するステップを設けるのが一般的である。通常抗原は複数のエピトープ(抗原決定基)を持つため、ポリクローナル抗体は一般的には各々のエピトープに対する異なる抗体分子種の混合物となる。
モノクローナル抗体は、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体(免疫グロブリン)分子である。モノクローナル抗体は、一つのエピトープに対する単一の分子種となるため、抗原特異性が全く同一である。モノクローナル抗体(Monoclonal Antibody)をMAbと略す場合がある。モノクローナル抗体は、一般的には、抗体産生細胞群(例えば、免疫動物脾臓由来B細胞)を骨髄腫細胞と細胞融合させることで自律増殖能を持ったハイブリドーマ(hybridoma)を形成させ、その細胞集団の中から目的の特異性をもった抗体を産生しているクローンのみを選別(スクリーニング)することによって作製される。このハイブリドーマを培養し、分泌する抗体を精製して用いることができるほか、ハイブリドーマを動物に投与し、当該動物の腹水から抗体を回収して用いることができる。免疫動物からの抗体ライブラリをハイブリドーマ法以外の方法で作製することも出来る。動物を使用しないファージディスプレイ、イーストディスプレイなどのディスプレイ法によって、モノクローナル抗体を作製することもできる。例えば、モノクローナル抗体は、"Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497."に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作製してもよい。あるいは、モノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作製してもよい。または、モノクローナル抗体は、"Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628."、または"Marks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597."に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。または、"タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):92-96."に掲載されている方法でよって作製してもよい。
本発明の一実施形態において「Fv抗体」は、抗原認識部位を含む抗体である。この領域は、非共有結合による1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体を含む。この構成において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成することができる。
本発明の一実施形態において「Fab抗体」は、例えば、Fab領域およびFc領域を含む抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体が一部のジスルフィド結合を介して結合した抗体である。Fabは、例えば、Fab領域およびFc領域を含む本発明の実施形態に係る抗TNFR2抗体を、蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。また遺伝子工学で必要なFabフラグメント領域のみを細胞に発現させ生産することも出来る
本発明の一実施形態において「F(ab’)2抗体」は、例えば、Fab領域およびFc領域を含む抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabに相当する部位を2つ含む抗体である。F(ab’)2は、例えば、Fab領域およびFc領域を含む本発明の実施形態に係る抗TNFR2抗体を、蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。また、例えば、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させることで、作製することができる。
本発明の一実施形態において「Fab’抗体」は、例えば、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断して得られる抗体である。例えば、F(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
本発明の一実施形態において「scFv抗体」は、VHとVLとが適当なペプチドリンカーを介して連結した抗体である。scFv抗体は、例えば、本発明の実施形態に係る抗TNFR2抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、VH-ペプチドリンカー-VLをコードするポリヌクレオチドを構築し、そのポリヌクレオチドをベクターに組み込み、発現用の細胞を用いて生産できる。
本発明の一実施形態において「ヒト化抗体」は、例えば、非ヒト種由来の1つ以上のCDR、およびヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域(FR)、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する抗体である。抗体のヒト化は、当該技術分野で既知の種々の手法を使用して実施可能である(Almagro et al., Front Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.)。例えば、CDRグラフティング(Ozaki et al.,Blood.1999Jun 1;93(11):3922-3930.)、Re-surfacing(Roguska et al., Proc Natl Acad Sci USA.1994Feb 1;91(3):969-973.)、またはFRシャッフル(Damschroder et al., MolImmunol.2007Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)などが挙げられる。抗原結合を改変するために(好ましくは改善するために)、ヒトFR領域のアミノ酸残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換してもよい。このFR置換は、当該技術分野で周知の方法によって実施可能である(Riechmannetal., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.)。例えば、CDRとFR残基の相互作用のモデリングによって抗原結合に重要なFR残基を同定してもよい。または、配列比較によって、特定の位置で異常なFR残基を同定してもよい。好ましい実施形態では、松田らのMolecularImmunology 43(2006)634-642 の報告に基づきヒト化抗体を構築してもよい。ヒト化抗体のバックミューテーションの際に考慮される、相違するアミノ酸の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つは、Vernier残基選択され得る。活性が最適化される限りVernier残基以外の変異が含まれていてもよいことが理解される。1つ実施形態では、相違するアミノ酸のすべてが、Vernier残基から選択される。Vernier残基については、例えば、特開2010-4895、Nishibori N et al., Molecular Immunology43 (2006) 634-642等を参照することができ、これらの記載は本明細書において参考として援用される。
また抗体は、CDR-grafting(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.)によって任意の抗体に本発明の実施形態に係る抗TNFR2抗体の重鎖CDRまたは軽鎖CDRをグラフティングすることで作製してもよい。または、本発明の実施形態に係る抗TNFR2抗体の重鎖CDRまたは軽鎖CDRをコードするDNAと、公知のヒトまたはヒト以外の生物由来の抗体の、重鎖CDRまたは軽鎖CDRを除く領域をコードするDNAとを、当該技術分野で公知の方法に従ってベクターに連結後、公知の細胞を使用して発現させることによって得ることができる。このとき、抗TNFR2抗体の標的抗原への作用効率を上げるために、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法等)を用いて、重鎖CDRまたは軽鎖CDRを除く領域を最適化してもよい。また、例えば、FRシャッフル(Damschroderetal.,Mol Immunol.2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基またはパッケージング残基を置換する方法(特開2006-241026、またはFooteetal.,J Mol Biol.1992 Mar 20;224(2):487-499.)を用いて、FR領域を最適化してもよい。
本発明の一実施形態において「CDR(相補性決定領域)」は、抗体において、実際に抗原に接触して結合部位を形成している領域である。一般的にCDRは、抗体のFv(可変領域:重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む)上に位置している。また一般的にCDRは、5〜30アミノ酸残基程度からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。そして、特に重鎖のCDRが抗体の抗原への結合に寄与していることが知られている。またCDRの中でも、CDR3が抗体の抗原への結合における寄与が最も高いことが知られている。例えば、"Willyetal., Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 356, Issue 1,27 April 2007, Pages 124-128"には、重鎖CDR3を改変させることで抗体の結合能を上昇させたことが記載されている。CDR以外のFv領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3およびFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている(Kabatetal.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and HumanServices, 1983.)。即ち、抗体の反応性を特徴付ける要因はCDRにあり、特に重鎖CDRにあるといえる。
CDRの定義およびその位置を決定する方法は複数報告されている。例えば、Kabatの定義(Sequences of ProteinsofImmunological Interest, 5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda, MD. (1991))、またはChothiaの定義(Chothia et al., J.Mol.Biol.,1987;196:901-917)を採用してもよい。本発明の一実施形態においては、Kabatの定義を好適な例として採用するが、必ずしもこれに限定されない。また、場合によっては、Kabatの定義とChothiaの定義の両方を考慮して決定しても良く、例えば、各々の定義によるCDRの重複部分を、または各々の定義によるCDRの両方を含んだ部分をCDRとすることもできる。そのような方法の具体例としては、Kabatの定義とChothiaの定義の折衷案である、Oxford Molecular'sAbMantibody modeling softwareを用いたMartinらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989;86:9268-9272)がある。このようなCDRの情報を用いて、本発明に使用されうる変異体を生産することができる。このような抗体の変異体では、もとの抗体のフレームワークに1または数個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の置換、付加もしくは欠失を含むが、該CDRには変異を含まないように生産することができる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。免疫原は通常エピトープを有する。
一部の実施形態では、標的結合スクリーニングにより高親和性特異抗体を選択する。
多様なエピトープに対する抗体を取得するため、免疫条件(免疫動物の遺伝子改変を含む)を変化させ、細胞融合や抗体ライブラリ作製条件も変化させるのが好ましい場合がある。あるいは多様なエピトープに対する抗体を取得するため、免疫原に変異などの改変を加えるのが好ましい場合がある。各条件で取得した抗体数が少ない時は、ほとんどペアアッセイに影響しないので、次に他の個体から抗体が多くとれた時のアッセイと合わせても良い。一個体から多数の抗体が得られた場合には、個体でエピトープレパトアにバイアスがかかっている場合があるので、個体単位で一回アッセイしてダウンサンプリングするのが有効である場合がある。本発明では、代表的には、1または複数の免疫動物(例えば、1〜6個体)から抗体の集団を得て、本発明の方法に供することが望ましいが、抗体の集合に含まれる抗体数nが、該抗原に関する目標抗体数N以上である限り、これに限定されるものではない。
[結合データの取得]
本発明のエピトープ均質化抗体パネルの作製において、抗体の集合を得、オリジナル抗体パネルが得られたら、そのオリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る。
結合データは、すでに情報が入手可能である場合(例えば、インターネット上のデータベース等あるいは研究室内のデータベース等)、そのような情報を用いて、次の解析に利用することができる。データがない場合は、ウェットの結合アッセイ(例えば、ELISA)を行って、抗体の結合データを入手することができる。結合データは、例えば、図2Aに模式化されているペア逐次結合アッセイを用いて実施することができる。結合アッセイはすべて作製した抗体からなるオリジナル抗体パネルについて得てもよいし、いったん抗体パネルに残す抗体を取得し、その後さらにレアエピトープを認識する親和性の低い抗体などを必要に応じてさらに加えてさらなる抗体パネルを作成して結合データを生成してもよい(図2A)。あるいは既存の抗体(商品化されている抗体や、治療抗体等)を加えて抗体パネルを作成して結合データを生成してもよい。
本発明の一実施形態において、抗体の結合データは、抗体のエピトープに対応させることができる。したがって、この実施形態の場合、エピトープを特定すると、抗体を特定することができ、その抗体に関する結合データを紐づけることができる。抗体の結合データは、1または複数の抗体の抗原への結合の阻害を観察する結合アッセイによって得ることができる。
抗体の抗原への結合を観察する方法は当技術分野で周知であり、本発明の方法の実施において当業者は適切な方法を選択することができる。
免疫学的測定方法としては、例えば、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、蛍光標識したビーズを固相として用いる蛍光マイクロビーズアレイシステム、表面プラズモン共鳴(SPR)法、Bio-LayerIterferometry(BLI)法、RIA法、蛍光抗体法、発光イムノアッセイ(LIA)、免疫沈降法(IP)、免疫拡散法(SRID)、免疫比濁法(TIA)、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ化したプロテインアレイを用いてもよく、プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−532に詳述されている。
抗体の抗原への結合の阻害は、第2の抗体の存在下と非存在下とでの第1の抗体の抗原への結合の変化を観察することによって測定することができる。第1の抗体と第2の抗体は異なっていてもよいし、同一の抗体であってもよい。第1の抗体と第2の抗体とを同時に抗原と接触させ、その競合阻害を観察するアッセイを競合(的)結合アッセイと称する場合がある。なお、競合(的)結合アッセイでは、第1の抗体と第2の抗体が同時に抗原と接触させる場合の他、一方の抗体と該抗原とが結合するまでに他方の抗体が抗原と接触される。
好ましい実施形態では、結合アッセイは、ペア逐次結合アッセイである。ペア逐次結合アッセイ(または、本明細書において逐次結合アッセイ、逐次アッセイ、ペア法ともいう)においては、第1の抗体と、第2の抗体とが、抗原に対して順次接触させられる(すなわち、同時にはアッセイ系に加えられない)。より詳細に説明すると、ペア逐次結合アッセイでは、第2の抗体は前記第1の抗体が前記抗原に接触された後に、該抗原に接触され、好ましくは、第2の抗体は、該第1の抗体と該抗原とが結合するのに十分な時間接触された後に第2の抗体が該抗原に接触される。
ある実施形態では、最初に抗原に第1の抗体(Competitor Mab)を結合させ、その結合物(複合体)と、第2の抗体(Indicator MAb)との結合を測定する(ペア逐次結合アッセイ)。ペア逐次結合アッセイにおいては、ある2つの抗体の組み合わせについて、どちらを阻害抗体として用いるかによって、2つの結合阻害データを得ることができる。したがって、抗体の結合の変化を示した表は、例えば、図11に示されるように、非対称なものとなる。
さらなる実施形態においては、結合アッセイにおいて大過剰の抗体を用いる。例えば、第2の抗体の600倍過剰濃度の第1の抗体を用いて結合アッセイを行うことができる。このように、1つ目の抗体(第1の抗体)の大過剰濃度の存在下で2つ目の抗体(第2の抗体)の反応を行うことによって、結合性測定に必要な抗体濃度の差(2つの抗体の親和性の差)に関わらずエピトープ位置を同定することができる。例えば、第1の抗体の親和性が第2の抗体の親和性の50分の1であるような場合には、結合速度や解離速度が大きく違い、阻害の程度を観察することが難しい場合があり得る。しかし、本発明の方法では、いったん第1の抗体が抗原から外れても、またすぐ大過剰の第1の抗体の結合が復元するので、比較的少量の第2の抗体との反応においては、すでに第一の抗体が結合済である抗原との結合性を評価することができる。このように、エピトープの差による影響のみを抽出し、抗原への親和性の低い抗体についても結合するエピトープ領域を同定することができる。ここで、抗原抗体反応における抗体の「大過剰」は通常濃度で説明される。例えば、従来の抗体のスクリーニングでは親和性に依拠したスクリーニングがなされるため図2Cに模式的に例示されるように機能性抗体を同定することができていない例も多数あった。他方で、本願発明のエピトープ均質抗体パネルを用いれば、図2Dに模式的に例示されているように、網羅的に抗原をスクリーニングすることができることから、親和性の比較的低い抗体も捕捉することができ、機能性抗体を効率よくスクリーニングすることができる。
本発明の一部の実施形態では、抗体の結合データを以下のような手順によってペア逐次結合スクリーニングによって取得する。
(1)ELISAのフォーマットですべての選択抗体の組み合わせについてペア逐次結合アッセイをする。
(2)阻害無しの場合(阻害抗体なし)の結合を、100%として、結合阻害の程度を結合%で表す。
このようにして得られた逐次結合アッセイの結果をマトリックスとして表す。マイナスの数字が存在するような場合には、0に補正してもよい。
ペア逐次結合アッセイでは、ある抗体について、結合の変化データを、抗体の総数の2倍の要素をもつベクトルとして表すことができる(同一の抗体を加えた場合を含む)。上記マトリックスの行と列を入れ替えたものをマトリックスの右側に並べると、抗体の総数の2倍の数の要素を有するベクトルが、それぞれの抗体について生成されることが理解される。
ペア逐次結合アッセイの結果に基づいて、抗体の集合に含まれる抗体のデータを抗体の総数の2倍の要素をもつベクトルで表現して分析した場合、抗体数と同一の要素をもつベクトルを用いて分析した場合と比較して、解像度が普遍的に上がることが、本発明者らにより見出された。ベクトルの一部の例は、図35Cなどに示される。
[クラスタリング]
本発明では、結合データが得られると、この結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングし、抗体を各クラスターにグループ化する。ここでは通常は、階層的クラスタリングにより、エピトープグループごとにクラスター化される。クラスタリングのおおまかなスキームは、図2Aに例示されている。クラスタリングのためには、X線結晶構造データ、タンパク質構造予測、エピトープ間距離、分子表面積などを用いてクラスタリングの1つの指標である目標エピトープグループ数Eを特定することができる。Eの特定については別の節に置いて詳述されている。
クラスタリング(クラスター分析)には、階層的クラスタリングと非階層的クラスタリングとが存在する。非階層的クラスタリングは、階層的な構造を持たず、あらかじめいくつのクラスターに分けるかを決め、決めた数の塊(排他的部分集合)にサンプルを分割する方法である。非階層的クラスタリングは、いくつのクラスターに分けるかを事前に決める必要がある。本発明においても別の手段でクラスター数を特定することで、事前に決定した後に非階層的クラスタリングすることができる。
階層的クラスタリングは、要素間の類似度あるいは非類似度(距離)に基づいて、最も似ている要素から順次に集めてクラスターを作っていく。クラスタリングの途中過程を階層のように表すことができ、樹形図(デンドログラム)として表すことができる。階層的クラスタリングは、あらかじめクラスター数を決める必要がなく、得られた樹形図においてさらなる分析や判断を行ってクラスター数を特定することができる。
クラスタリングにおいて、分類される要素間の距離(類似度)を当業者は適宜設定することができる。一般的に用いられる要素間の距離としては、ユークリッド距離、マハラノビス距離、またはコサイン類似度(距離)等を挙げることができる。
さらに、クラスタリングにおいて、要素が一旦クラスター化された後に、クラスターをどのように合併するか(クラスター間の距離の測定方法)によっていくつかの方式が存在する。一般的には、階層的クラスター分析の方法として、最近隣法、最遠隣法、群平均法、メディアン法、重心法、ウォード法、可変(flexible)法、McQuitty法、重みつき群平均法などを挙げることができる。
ウォード法(Ward's method)は、2つのクラスターを合併する際に、群内の分散と群間の分散の比を最大化する基準でクラスターを形成していく方法である。ウォード法は最小分散法(minimum variance method)とも呼ばれる。
最近隣法(nearest neighbor method)は、最短距離法、単連結法(single linkagr)法とも呼ばれる。最近隣法は、2つのクラスターのそれぞれの中から1個ずつ要素を選んで要素間の距離を求め、それらの中で、最も近い要素間の距離をこの2つのクラスター間の距離とする方法である。
最遠隣法(furthest neighbor method)は、最遠距離法、完全連結(complete linkage)法とも呼ばれる。最遠隣法は、最近隣法とは逆に、2つのクラスターの中のそれぞれの中から1個ずつ要素を選んで要素間の距離を求め、それらの中で、最も遠い要素間の距離をこの2つのクラスター間の距離とする方法である。
群平均法(group average method)は、最近隣法と最遠隣法を折衷した方法で、2つのクラスターのそれぞれの中から1個ずつ要素を選んで要素間の距離を求め、それらの距離の平均値を2つのクラスター間の距離とする。
重心法(centroid method)は、クラスターのそれぞれの重心(例えば、平均ベクトル)を求め、その重心間の距離をクラスターの間の距離とする。重心を求める際には、クラスターに含まれる要素数が反映されるように、要素数を重みとして用いる。
メディアン(median method)法は、重心法の変形で、2つのクラスターの重心の間の重み付きの距離を求めるとき、重みを等しくして求めた距離の値を、2つのクラスター間の距離とする。
クラスタリング分析をした場合に求められる最大距離が特定の値未満のものを同一クラスターとみなすことができる。このような値としては、最大値または理論的最大値を1とした相対値としては、1未満、0.95未満、0.9未満、0.85未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.65未満、0.6未満、0.55未満、0.5未満、0.45未満、0.4未満、0.35未満、0.3未満、0.25未満、0.2未満、0.15未満、0.1未満、0.05未満などを挙げることができるがこれらに限定されない。
本発明において、代表的に、抗体パネルのクラスタリングは、抗体パネルに含まれる抗体の抗原への結合データに基づいて行われる。抗体の抗原への結合データは、上記のように結合の変化を要素とするベクトルデータとして取得することが可能である。一部の実施形態において、すべての選択抗体ペアの標的抗原への結合アッセイで得られる結果から、(1)1つの抗体につき、当該抗体を結合させた抗原抗体複合体のその他の抗体に対する結合量の変化、および(2)その他の抗体を結合させた抗原抗体複合体の当該抗体に対する結合量の変化データを、当該当該抗体に関連した反応性の指標とし、ペア逐次アッセイに用いた抗体の総数の2倍の数の要素を有するベクトルで表現する。
ベクトルで表現されたデータに基づき、抗体の集合に含まれる抗体を階層的クラスタリングにより分類することができる。ベクトル間の距離としては、一例では、ユークリッド距離を用いることができ、クラスターの合併法としては、例えば、ウォード法または群平均法を用いることができる。
階層的クラスタリングを行うソフトウェアとしては、限定されるものではないが、例えば、Java(登録商標)-based free software, Clustering Calculator (Brzustowski, J.)(http://www2.biology.ualberta.ca/jbrzusto/cluster.php/)が挙げられる。
このようなソフトウェアに、ベクトルのデータを入力して、以下のような出力:
Treeの結合位置の高さ(arbitrary unit)
Treeのトポロジー
Treeの各ノード間の距離(arbitrary unit)
各結合のブートストラップの値(例えば、1000回試行)
を得ることができる。それ以外にも、任意選択での出力を得ることもできる。
このような出力データから、適切なソフトウェアを利用して樹形図を描くことができる(Phylip/DRAWTREE formatや、(hierarchical trees) using TreeExplorer software、Tamura, K., available at http://www.evolgen.biol.が挙げられるが限定されるものではない)。
ブートストラップ値(bootstrap値、bpとも称される)のほかに、p-value of multiscale bootstrap(Au)といった値を出力することができる。これらの値は、クラスタリングの数学的な安定性を示す値である。AUは、配列解析などで用いられることが多く、系統樹の安定性を示すのに適した場合があるパラメーターである。
階層的クラスタリングの1つの特徴として、分類の過程でできるクラスターがどのように結合されていくかを確認できるので、採用するクラスター数を後から決めることができる。最小は全体である1クラスター、最大は要素数に等しくなる。例えば、3つに分けようと思えば、樹形図における縦の線を3本横切るような線を引くような形で分け、その線から下につながっている要素を1つのクラスターと考えれば、任意のクラスター数に分けることができる。階層的クラスタリングを行う場合、得られた樹形図からクラスター数をいくつに設定するかは重要な問題である。
本発明の一つの実施形態においては、適切に定められたクラスター数によって抗体パネルがクラスタリングされた場合のクラスターを、抗体パネルに含まれる抗体のエピトープグループとして扱い、クラスター数をエピトープグループ数として算出する。クラスター数の決定には、例えば、Jane−Dubes法(Jain, A.K. and Dubes, R.C. (1988): Algorithms for clustering data, Englewood Cliffs, NJ:Prentice-Hall.)、k−means法、x−means法(石岡恒憲(2006): x-means 法改良の一提案-k-means法の逐次繰り返しとクラスターの再併合-、『計算機統計学』, 18(1), 3-13.)、Upper Tail法(Mojena, R. (1977): Hierarchical grouping methods and stopping rules: an evaluation,The Computer Journal, 20, 359-363.)、凸集合の推測に基づく方法(Hardy, A. (1996): On the number of clusters, computational Statistics and Data Analysis, 23, 83-96)、クラスターのための尤度比検定(Hardy ibid)、移動平均品質管理規則(Mojena ibid)、Wolfテスト(Wolfe, J.H. (1970): Pattern clustering by multivariate mixture analysis. Multivariate Behavioral Res., 5, 329-350.)、Marriotテスト(Marriot, F.H.C. (1971): Practical problems in a method of cluster analysis, Biometrics, 27, 501-514.)などの方法が挙げられるがこれらに限定されない。
好ましい実施形態では、以下で述べる安定度指数を用いてクラスター数を決定することができる。
[安定度指数]
本発明の一態様では、階層的クラスタリングによるクラスター数を決定するために、安定度指数を用いる。安定度指数は、階層的クラスタリングのクラスター数により変化する値であり、そのクラスター数でクラスタリングした場合のクラスタリングの安定性を示す数値である。
一実施形態において、安定度指数は、
(式中、SI(g)は抗体をgグループにクラスタリングした場合のSIであり、各エピトープグループ(1、2、...g)は、他のグループと、樹形図中で各高さ(H、H、...H)で結合され、COgは、g+1のエピトープグループを生成する場合の最も高いカットオフ値であり、(BS、BS、...BS)は、1、2、...g個のエピトープグループが生成される場合のノードのブートストラップパーセンテージである。)
である。
一実施形態では、安定度指数が閾値を超える場合のクラスター数を抗体パネルのエピトープグループ数とする。好ましくは、ある閾値を超えるクラスター数が複数存在する場合には、その中で最も多いクラスター数をエピトープグループ数として採用する。
本発明の一実施形態では、安定度指数の最大値と最大値から2番目に高い数値を取り、それらの多い方のクラスター数をエピトープグループ数として採用する。
ある実施形態では、最大クラスター数(抗体数)の1/2以上のクラスター数については考慮に入れない(例えば、クラスターあたりの抗体数が少ないものが必然的に生じるため、60抗体では30以上のクラスターは考慮しない)。
本発明の好ましい実施形態では、ペア逐次アッセイ法で得られた結合量マトリックスデータについて、ユークリッド距離を類似度として用い、ウォード法(Ward's Method)により階層的クラスター分析を行う。各クラスター数が得られるときの、クラスター数の安定度指数(SI、EGSIなど)を求める。クラスター数が、抗原の分子量の1/10000以上で、総抗体数の1/2以下の範囲について、安定度指数の最大値と最大値から2番目に高い数値を求め、それらのクラスター数が大きい方の数値を、エピトープグループ数として採用することができる。この計算法により、10kDに1つは必ずエピトープグループが存在することと、エピトープグループ数を抗体総数の半数以下とすることを条件づける。
異なる実施形態において、安定度指数は、
(式中、EGSI(g)は抗体をgグループにクラスタリングした場合のEGSIであり、各エピトープグループ(1、2、...g)は、他のグループと、樹形図中で各高さ(H、H、...H)で結合され、COgは、g+1のエピトープグループを生成する場合の最も高いカットオフ値であり、(BS、BS、...BS)は、1、2、...g個のエピトープグループが生成される場合のノードのブートストラップパーセンテージであり、単一の要素のみがエピトープグループを構成する場合、ブートストラップパーセンテージとして、0が用いられる。)である。
[ダウンサンプリング]
本発明において、オリジナル抗体パネルのクラスタリングの後、必要に応じて、オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成することができる。このような部分パネルの生成を、本明細書において、「ダウンサンプリング」または「ダウンサイジング」と称する。なお、オリジナル抗体パネルのクラスタリングの後、そのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数E(好ましくは、抗原に存在し得るエピトープ領域の数)を充足する場合、そのオリジナル抗体パネルを、エピトープ均質化抗体パネルとして出力することもできる。あるいは、オリジナル抗体パネルについて、e≧Eであっても、上記ダウンサンプリングを行って部分パネルを生成し、さらに解析を続けることもできる。複数部分パネルが生成されることにより、より最適な抗体パネルが生成され、より改善されたエピトープ均質化抗体パネルが提供される可能性が高まるからである。
一般的には、抗体パネルから抗体数が減るとエピトープグループが減る蓋然性が高く、複数の抗体を除外するとエピトープグループ数を確認しない限り、エピトープ数が減少することになる。本発明ではエピトープグループ数を減少させないか、あるいは目標エピトープグループ数E(例えば、抗原に存在し得るエピトープ領域の数)以上に維持しつつ(オリジナル抗体パネルのような)抗体パネルの抗体数を減少させることが一つの特徴である。オリジナル抗体パネル、およびダウンサンプリングで得られた部分パネルについて、各クラスター数におけるクラスタリングの安定度指数の最大値を示す場合のクラスター数(エピトープグループ数)を、各パネルと比較することができる。
代表的には、ダウンサイジングは、結合データのベクトルの近傍密度に基づき抗体を除外する。各ベクトルの最近傍にあるベクトルへの距離の分布から、各ベクトルの近傍密度を計算し、それに基づくダウンサンプリングを順次行うことで抗体の数を減らした部分パネルを仮想的に作ることができる(本明細書において、「密度依存的ノーマリゼーション」とも称する。)。それらの部分パネルの逐次同時結合アッセイに基づく結合データについてもオリジナルパネルと同様に階層的クラスタリングによって分析し、エピトープグループを定めることができる。部分パネルのクラスタリングに用いる結合データは、オリジナル抗体パネルについて得られた結合データを用いることもできるし、新たにアッセイを行って取得することもできる。一つずつ抗体を減らすこともできるが、必ずしも一つずつ減らした部分パネルとする必要はない。
密度依存的ノーマリゼーションは種々の変法を応用または組み合わせることができ、具体的な実施形態では、最も近接している抗体を選択していずれかの抗体を除外する;異なる態様では、最も密度の高いクラスターを選択してそこからいずれかの抗体を除去する;あるいは、最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択していずれかの抗体を除外することによっても行うことができる。さらに、平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択していずれかの抗体を除外することもできる。特に、抗体のエピトープの分類において、ベクトルの近傍密度を計算し、密度に応じて抗体を除外するということにより、より効率よくダウンサンプリングすることができ、得られた結果も良好であることが本発明において判明している。
例えば、一例としては、以下のような手順でダウンサンプリング(密度依存的ノーマリゼーション)を行うことができる。
(1)ペア逐次アッセイデータから算出されるユークリッド距離を抗体間の距離として採用する(クラスタリングと同様)。
(2)各抗体の最近接抗体への距離の分布から(いいかえれば、最も近いペア結合アッセイのデータを示す抗体)、近傍領域を定めるが、抗体の総数に依存して、この時の近傍領域内に存在する他抗体の%をパラメーター入力し、その値に応じて対応する近傍領域を定義する。
(3)近傍領域内の抗体の密度計算をして(いいかえれば、領域内の抗体数を数えて)、それを抗体のエピトープ空間における局所濃度の推定値とし、その局所濃度の推定値の分布によりダウンサンプリングのための濃度閾値を定める(抗体の総数により任意のパラメーター指定)。その入力値より局所濃度が高い抗体について密度に反比例してサンプリングを行う。
抗体パネルに含まれる抗体が十分に少数である場合には、ベクトルの密度を計算せずに、抗体を選択して除外することができる。一つの実施形態では、生成した樹形図に基づいて、ノードの高さで抗体を選択することができる。選択した抗体を除外して生成される部分パネルのエピトープグループ数は、好ましくは抗原に対する目標値を下回らない。あるいは、部分パネルのエピトープグループ数は、オリジナルパネルのエピトープグループ数と同一以上になるものが選択される。抗体の選択は、作製しようとする抗体パネルの使用目的に応じて、抗体の結合データ、抗体の配列、その他の情報に基づいて行うことができる。
例えば、ダウンサンプリングにおいては、以下のような基準を用いて除外する抗体を選択することができる。
・結合データにおけるバックグラウンド(Background)の高い抗体(非特異的な結合を示す抗体、例えば、アッセイで抗原なしでのSignalが高い抗体)を除外する。その後の解析の精度を高めることができるからである。
・シグナル(Signal)の弱い抗体(一般的には親和性の低い抗体)を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。ただし、親和性の低い抗体を網羅する目的の場合には、この除外は行わない。
・抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する(すなわち、除外した後でエピトープグループ当たり少なくとも2つは確保する)。その後の解析の精度を高めることができるからである。特に、エピトープグループあたり2つ以上を確保することにより、エピトープパネルの網羅性に影響を与えることなく正確性を上昇させることができるからである。2つになると、エピトープグループに関連した機能の類推がより促進されるからである。
・最も近接したペアであっても、他の抗体と遠ければ除外しない。エピトープグループの減少の蓋然性が高いからである。
・安定性が悪い抗体(長時間保存での活性低下)を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。安定性としては、例えば、熱安定性、pH安定性、機械的刺激に対する安定性などが挙げられる。
・物性が悪い抗体(精製抗体の高濃度での沈殿、溶解度が低い、溶液の粘度が高いなど)を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。
・目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する。あるいは、目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する。データのノイズを減少させることができるからである。
・目的抗原の目的外のアルタナティブスプライシング産物(Alternative Splicing Products)に反応する抗体を除外する。目的外の反応性によりノイズとなりうる活性が混
入する可能性を低減させることができるからである。
・目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない。目的抗原と、その近縁タンパク質との抗原性・構造についての関係性の調査に資するからである。
・目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;他動物または他動物由来の生物材料で、目的抗原のオルソログ抗原を用いた代替アッセイ(特にIn Vivoの機能アッセイ)が可能であるからである。また目的抗原と、そのオルソログタンパク質との抗原性・構造についての関係性の調査に資するからである。
目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;目的抗原とオルタナティブスプライシング産物の両者に反応する抗体として利用できるからである。また目的抗原と、そのオルタナティブスプライシング産物との抗原性・構造についての関係性の調査に資するからである。
・アッセイでの高濃度の抗体(Saturateレベル)でのシグナルが低い(=経験的にバラツキが大きい抗体)抗体を除外する。その後の解析の精度を高めることができるからである。
・単鎖 Fvへの変換効率が悪い抗体を除外する。この抗体の性質はscFvformで発現させる親和性成熟方法が適用可能かどうかを決定する主な要因であり、最終パネルに含まれる抗体をシードとした、その後の抗体医薬の開発の容易にすると予想されるからである。
・Fvシークエンスから同定されるCRDの長さ等の固有のFvの特徴が、開発に必要な抗体工学(ヒト化、InVitro親和性成熟を含む)に不適当な抗体を除外する。最終パネルに含まれる抗体をシードとした、その後の抗体医薬の開発の容易にすると予想されるからである。
・Fvシークエンスから同定されるアミノ酸配列に、後の開発時にその他の問題を生じる可能性が推測される配列が含まれる場合(N--glycosylation、システインによるジスルフィド結合など、が予想される場合)、その抗体を除外する。最終パネルに含まれる抗体をシードとした、その後の抗体医薬の開発の容易にすると予想されるからである。
Fvシークエンスから作製した組み替え抗体の、培養細胞での発現量が低い抗体を除外する。最終パネルに含まれる抗体をシードとした、その後の抗体医薬の開発を容易にすると予想されるからである。
・抗体産生ハイブリドーマのクローニング効率(ハイブリドーマの抗体産生能の安定性)が低い抗体を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。
・ハイブリドーマ細胞の血清の要求性の高い抗体を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。
・抗体の産生量が少ないハイブリドーマ細胞に由来する抗体を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。
・酸変性しやすい(精製が困難である)抗体を除外する。その後の解析のハンドリングを改善することができるからである。
・機能が公知である抗体(既にClinical Trialに使われていた抗体等)を除外しない。これにより、当該抗体と「同じエピトープ」や当該抗体と「違う効果」を検証することができ、パネル抗体の有用性を上げることができる。
・抗体のサブクラス(Subclass)を考慮して抗体を選択する。サブクラスは抗体のエフェクター機能(Effector Function)を規定し、例えば、マウス抗体では、ADCCやCDCの活性を測定するには、抗体はIgG2aかIgG2bのサブクラスの抗体を除外せず抗体パネルに含むのが望ましい場合がある(ヒトのIgG1はマウスではIgG2aに相当する)。またマウスのIgG3は沈殿しやすいことが多く、除外するのが望ましい場合がある。抗原によって得られる抗体のサブクラスの分布に大きく偏りがある場合があり、得られた抗体の集合のサブクラスの構成頻度に基づいて、除外する抗体のサブクラスを考慮に入れることができる。
本発明で実施されるダウンサンプリングにおいては、エピトープグループ数を維持し(すなわち、e≧Eとなるように処理する)、各エピトープグループに少なくとも1つの抗体を含む。ダウンサンプリングにおいて、好ましくは、エピトープグループに2つ以上の抗体を残す。エピトープグループに2つ以上抗体を残すことは、抗体が属するエピトープグループと、抗体の機能を関連づけることを容易にし、抗体パネルの有用性につながる。エピトープグループには抗体が2つ以上含まれることが望ましいが、抗体が1つとなるエピトープグループは、エピトープグループの総数の一定の比率まで許容される。例えば、全体のエピトープグループのうち、5%まで、10%まで、15%まで、20%まで、または25%までのエピトープグループは1抗体のみを含んでいてもよい。エピトープグループあたりの抗体数は例えば、2〜6個などを挙げることができるがこれに限定されない。あるいは、各エピトープグループに属する抗体の数が、平均値から1標準偏差の範囲内であるように処理してもよい。エピトープグループあたりの抗体数が平準化することにより、抗体パネルの解析結果自体が均質化されることになり、より機能解析が効率化されるからである。
[エピトープグループ数および抗体数の目標値の設定]
本発明の、ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法において、必要に応じて、抗体パネルのエピトープグループ数および抗体数について目標値(Eおよび/またはN)を設定する。Eは対象となる抗原に関する目標エピトープグループ数であり、Nは抗原に関する目標抗体数である。
代表的には、Eは、抗原に存在し得るエピトープ領域の数であり、Nは、所定のEの数だけのクラスターをクラスタリングによって生成するのに十分な抗体数である。
なお、本明細書において、これらの目標値を、「E」、「N」と大文字で表記し、抗体パネルの実測値についてはエピトープグループ数を「e」、抗体総数を「n」と小文字で表記する場合がある。
このようなEおよびNは、対象抗原に関する「推定値」である「TE」および「TN」から決定することができる。一部の実施形態では、TE=Eであるが、必要に応じて、TE<EとしてEを定めることも可能であり、あるいはTE>EとしてEを定めることもできる。TEとEとは乖離していないことが好ましく、せいぜい1〜2個、あるいは1個の相違が好ましい。
エピトープ領域数の推定には、抗原タンパク質の高次構造情報、抗原タンパク質のホモロジー解析から得られる予測ドメイン構造、抗原タンパク質のアミノ酸配列から推定される予測2次構造、抗原タンパク質に対して過去に取得されている既存の抗体および結合リガンドの結合位置情報、抗原タンパク質の分子量とトポロジー(Type I膜タンパク質である等)などの情報を用いることができる。
一部の実施形態では、抗原タンパク質の高次構造情報、あるいは構造モデリングによる構造情報を取得し、抗原構造の表面に露出して存在するすべてのアミノ酸残基を中心として、多数の仮想エピトープを構築する。各エピトープに対する抗体結合のシミュレーションから(結合面積、結合順序を内包したアルゴリズムを用いる)、結合阻害を受ける他のエピトープを推定し、コンピュータ上で(in silico)仮想アッセイを行い、一連の仮想データを取得する。このような仮想アッセイは、構造モデリングなどの手法を用いて当該分野において公知の手法を用いて実現することができる。データのクラスタリング(代表的には階層的クラスタリング)を行い、各エピトープ個数で、指定する占有率と重複率で抗原の表面を網羅する抗体パネルが得られた場合の、クラスリングの安定性を予想し、任意の高確率で(たとえば90%)で表面網羅性が保証される、エピトープ領域の推定値TEと、それを保証する抗体数の推定値TNを決定する。表面網羅性の確率は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上等から選択することができる。
ある実施形態では、対象とする抗原について提供されているデータベース(例えば、プロテインデータバンク(PDB)など)の構造情報を利用して、以下のような方法により、TE、TNの値を推定することができる。
(1)仮想エピトープの構築の例
(i)抗原の構造を用いて、抗原の各原子の抗原表面の露出面積を計算する。
(ii)一定以上の露出面積の和を有するアミノ酸残基の位置の座標を取得する(例えば各アミノ酸のα炭素を代表座標として用いる)。
(iii)各アミノ酸残基を中心とし、一定の半径の球として仮想エピトープを作成する。仮想エピトープを取得し、1または複数の仮想エピトープを含む仮想エピトープパネルを作製する。TNを算出する際には、仮想エピトープをランダムに取得し、仮想エピトープを含む仮想エピトープパネルを複数作製することができる。仮想競合試験に基づくTNを算出する必要がないTEのみの算出を行う場合、全ての仮想エピトープを含む仮想エピトープパネルを1つ作製し、以下に記載される仮想競合試験・クラスタリングによってTEの算出を行うことができる。
(2)仮想競合試験に用いる仮想エピトープパネルの選択
(iv)複数の仮想エピトープパネルを作製した場合、各仮想エピトープパネル中の、すべての仮想エピトープに含まれる原子の露出面積の和を計算し、その値の抗原の表面面積に対する比から、各仮想エピトープパネルの抗原表面カバー率を求める。
(v)すべての仮想エピトープパネルのうち、表面カバー率が一定以上の仮想エピトープパネルを選択する。
(3)仮想競合試験
(vi)(v)で選択した各仮想エピトープパネル、あるいは(iii)で作製した全ての仮想エピトープを含む仮想エピトープパネルに含まれる、各々の仮想エピトープ内に含まれる原子が、同時に他の仮想エピトープに含まれる場合、その割合を指標に、各エピトープを認識する抗体間の仮想競合試験を行う。
(4)仮想クラスタリングと各仮想エピトープパネルに固有のエピトープグループ数の導出
(vii)上記仮想競合試験の結果から、各仮想エピトープパネルに含まれる仮想エピトープについてクラスタリングを行う。クラスタリングの結果と、各クラスター数(2からその仮想エピトープパネルに含まれるエピトープの総数までの各々の値)で分類した場合の安定度指数(Stability Index)から、各仮想エピトープパネルのエピトープグループ数を決定する。
(5)抗原に固有の推定エピトープグループ数(TE)の算出
(viii)各仮想エピトープパネルについて計算したエピトープグループ数の分布から、最大値を求め、その最大値の一定の割合の数値をTEとする。仮想エピトープパネルとして全ての仮想エピトープを含む仮想エピトープパネルを用いている場合には、当該エピトープパネルについて計算したエピトープグループ数をTEとする。
(6)目標抗体数TNの算出
(ix)(vii)でクラスタリングに用いた仮想エピトープパネルのうち、算出されたエピトープグループ数がTE以上のものを数え、同一数の仮想エピトープ数からなる選択仮想抗体パネルが一定数(一定割合)以上存在する場合、その仮想エピトープ数(仮想抗体数)を取得する。取得した仮想エピトープ数のうち、最小の数をTNとする。
上記のように、なんらかの基準で、表面残基(Surface Residues)をサ
ンプリングして仮想エピトープを作れば、どの方法でも仮想エピトープの分布は近似的には同一で、均質性は保たれる。なぜならば、露出領域の周りのサンプリングしていない空白のスペースは実質的に存在せず、仮に存在しても抗体の結合部位の大きさよりかなり小さいためである。つまりどんなやり方で仮想エピトープをサンプリングしても、選ばれる可能性のある隣の仮想エピトープとは十分近く、それにより網羅性は保証される。
<仮想エピトープの構築の代替例>
別の実施形態では、仮想エピトープの構築は以下のようにしても実施することができる。
(#1)対象抗原(例えば、抗原A)の構造を用い、各原子のExposed Area (accessible
surface area (ASA)) をMSMSで計算する。http://mgltools.scripps.edu/packages/MSMS、Michel Sanner, Arthur J. Olson, Jean Claude Spehner (1996). Reduced Surface: an Efficient Way to Compute Molecular Surfaces. Biopolymers, Vol 38, (3), 305-320.Sanner M.F.
次に、TNはTEの例えば、5倍であるTN=55に設定することができる(この場合、各エピトープグループに平均5つの抗体であるが、これは適宜変更することができる。)。
(#2)各アミノ酸残基ごとのASAの和をランキングし、例えば、80A以上の面積を有するアミノ酸残基のα-carbonの位置の座標を取得する(上記例の場合、合計84残基。ここでの面積値も適宜変更することができる。)。
(#3)各α-carbonを中心とし、例えば、半径14Åの球として仮想エピトープを作製する
(つまり上記例でいうと、84個の仮想エピトープができる。ここでの球半径は適宜変更することができる)。
<仮想競合試験に用いる仮想抗体パネルの性状>
(#4)いずれかの仮想エピトープに含まれる原子のASAの和と抗原AのTotal ASAに対する比を確認する。この例では1であったので、例である84個の仮想エピトープ群の抗原Aの表面カバー率は100%であると算出することができる。各仮想エピトープの平均分子表面カバー率は、この例の場合は8.4%で、表面のどの場所も、この例の場合は平均7回、いずれかの仮想エピトープに含まれている。したがって、この場合、抗原Aの表面を均質に網羅的にカバーする84個の仮想エピトープを作製できたことになる。これらの性状の値は、各例においてASAの和、Total ASAに対する比、表面カバー率などを計算して各値を算出することができる。
<仮想競合試験>
(#5)ある仮想エピトープ(仮想エピトープ1)に含まれるすべての原子の数を数え、Xとする。仮想エピトープ1に含まれる原子のうち、別のある仮想エピトープ(仮想エピトープ2)に含まれる原子の数を数え、その数Yとする。
(#6)あらかじめ仮想エピトープ2を認識する仮想抗体2を抗原に結合させた場合、仮想エピトープ1を認識する仮想抗体1の抗原への結合が、(仮想抗体2がない場合に比べ)(X−Y)/X%に減弱すると仮定し、すべての仮想エピトープ(上記例の場合、計84)を認識する仮想抗体の仮想競合試験(仮想ペア逐次結合試験)を行う。
<仮想クラスタリングと各仮想抗体パネルに固有のエピトープグループ数の導出>
(#7)仮想競合試験の結果を、ユークリッド距離を用いたウォード法(Ward's Method) により階層的クラスター分析を行う。仮想クラスタリングの結果から、各仮想抗体パネルを各クラスター数(2からその仮想抗体パネルに含まれる抗体の総数までの各々の値)で分類した場合の安定度指数を算出し、その最大値と最大値から2番目に高い数値を取り、それらの数値が得られるときのクラスター数のうち、大きい方のクラスター数をその仮想抗体パネルのエピトープグループ数とする。つまり、上述の例では、安定度指数の最大値はクラスター数10のときであり、安定度指数が最大値から2番目に高い数値を示したときは、クラスター数11だったので、エピトープグループ数は11であることになる。これらの数値は、各々の抗原や各種条件、算出値によって変動するが、いずれも上記手順にしたがって計算することができる。
一部の実施形態では、エピトープグループ数の最小値Eを、抗原の分子量をMW(Da)としたときE>MW/10000−1の範囲で推定することができる。抗体総数の目標数Nを推定するが、Nは最小でも2×E以上の値とすることが好ましく、おおよそ2×E〜10×Eの範囲で採用されることが多いがこれに限定されない。例えば、4×E〜6×E、例えば、5×Eなども採用することができる。
このようなEおよびNの値を基準として抗体パネルを作製すれば、エピトープ領域を網羅しないまたは実用性を伴わないような極端な抗体パネルが作製される危険性はほとんどなくなる。この10000の値は、全く構造を特定できない抗原でも適用できる安全を見越した数値であり、大きな分子量の変動にも対応することができる。これは、分子量10kDごとに1つのエピトープグループがあることを想定するものである。この分子量単位の想定は、適宜変動させることができ、おおよそ5000〜20000の間で変動させることができる。
本発明の一部の態様においては、エピトープグループ数は、抗原全体を網羅する抗体群により、ペア逐次法で、安定度指数(Stability Index)を用いて分類される(グルーピングできる)、エピトープグループの数である。したがって、競合アッセイで検出することのできるエピトープ領域数は、抗原上に存在するものと推定されたエピトープ領域数を最低値とする。実際の競合アッセイでは、より詳細にエピトープ領域を検出することができるペア逐次アッセイ法を採用し、推定値を超える数のエピトープグループ数を導出する抗体パネルを選択することによって、従来の方法では達成することができなかった網羅的な抗体パネルを提供することができる。
(抗原に関する目標エピトープグループ数E)
抗原に関する目標エピトープグループ数Eは、好ましくは、抗原に存在し得るエピトープ領域の数で設定する。一部の実施形態では、Eは、抗原全体を均質に認識する抗体群をペアアッセイによって分類したとき、検出される最小のエピトープグループ数である。
本発明の一部の実施形態では、Eは、複数の計算結果または候補が提供される場合、最小のエピトープグループ数を採用することができる。別の実施形態では、Eは、抗原全体を均質に認識する抗体群で認識される、最小のエピトープグループ数である。さらなる実施形態では、Eは、抗原全体を均質に認識する抗体群をペアアッセイによって分類したとき、検出される最小のエピトープグループ数である。なおさらなる実施形態では、Eは、抗原全体を均質に認識する抗体群が、複数セット取得できた時、その中で最も小さい個数から構成される抗体セットで、ペアアッセイによる分類で認識される最小のエピトープグループ数である。
本発明で利用される「エピトープグループ数」は、グルーピング方法の違い、Criteriaの違い、表面網羅性(均質化の程度)、抗体の総数等によって、値が左右されるが、本発明の一実施形態においては、それをそれぞれ、「ペア逐次アッセイ法」、「安定度指数」、「表面の70%以上を網羅」、「表面網羅性を達成できる抗体数の最低数」で正規化した特別な「エピトープグループ数」として算出することによって、エピトープ均質化抗体パネルを生成する。ペア逐次結合アッセイ法および安定度指数によって定義されるエピトープグループは、抗体の総数と、表面網羅性(均質化の程度)に関連して、非線形に変動する値である。
TEの推定には、配列情報からのエピトープの推定を用いることができる。そのような推定法で推定されたエピトープは、測定する方法(例えば、ウエスタンブロット法など)に関連して定義されるものであって、エピトープ構造が、その方法の条件で構成し得る、または復元(Renature)され得る(巻き戻す=Refoldする)ポリペプチドの構造の一部(または全部)に存在し、かつその構造に対して特異抗体ができやすいことを示している。同一の構造は必ずしも天然の全長の抗原構造に存在するとは限らないが、配列情報から推定されたエピトープは親水性残基などが含まれる確率が高く、したがってタンパク質の天然状態のエピトープにおいても重要な構造単位を規定している確率が高いので、TEの算出に利用することが可能である。3次元構造の情報が無い場合などでも、配列情報からのエピトープ予測は、一定程度の精度があるため、本発明のエピトープ均質化抗体パネルの製造に有用である。すなわち、「エピトープ領域」の特定に十分な解像度は、PDB等で提供される構造データからのエピトープ自体の推定(高解像度)と比べて低いが、エピトープの位置を厳密に推定することなしに、本発明のエピトープ均質化抗体パネルの製造に利用することができる。
(抗原に関する目標抗体数N)
抗原に関する目標抗体数Nは、代表的には、対象となる抗原について所定のE個のクラスターをクラスタリングによって生成するのに十分な抗体数である。
上述のように、TNが算出されたなら、そのTNに基づいてNを設定することができる。代表的には、TN=Nと設定することができるが、E個のクラスタリングができる場合は、N<TNであってもよい。あるいはE個のクラスタリングができないリスクがある場合は、N>TNを設定してもよい。
上述のように、一部の実施形態では、エピトープグループ数の最小値Eを、抗原の分子量をMW(Da)としたときE>MW/10000−1の範囲で推定することができ、この場合、抗体総数の目標数Nを推定するが、Nは最小でも2×E以上の値とすることが好ましく、おおよそ2×E〜10×Eの範囲あるいは2×E〜6×Eの範囲で採用されることが多いがこれに限定されない。例えば、4×E〜6×E、例えば、5×Eなども採用することができる。
あるいは、このほか、Nの推定方法としては、分子量から概算値を計算することもできる。あるいは、PDB等の構造データがある場合には、適切なアルゴリズムを用いる(実施例(抗原Aを使用した例)等も参照)。あるいは、リニア(線形)エピトープから推定することもできる。あるいは、三次元ドメイン構造から推定することもできる(実施例(CD30を利用した例)等)。理論的には「N」は「E」と同一でもよいが、好ましいパネルでは1エピトープ当たり2〜6個の抗体数、あるいはそれ以上を想定するほうが有利である。このような抗体数は抗原の形状、サイズ、可撓性(Flexibility)などを見ながら適宜設定することができる。
例えば、以下の(1)のTNとTEの算出(詳細は、本明細書において上述されている。)を参考に、他の(2)−(4)ファクターも加味して最終のEおよびNを決定することができる。
(1)抗原タンパク質の高次構造情報から得られるTEとTNの値
(2)抗原タンパク質のホモロジー解析から得られる予測ドメイン構造
(3)抗原タンパク質のアミノ酸配列から推定される予測2次構造
(4)抗原タンパク質に対して過去に取得されている既存の抗体および結合リガンドの結合位置情報
もちろん、これ以外の情報を考慮してもよい。
このように、まずTEを算出し、次にTEに基づいてTNを算出する過程を記載することができる。TNより少ない数でクラスタリングが可能な場合もあるため、N<TNと設定することができる場合もありうる。
PDB等のデータベースから算出されるTEとTNの導出に限らず、(1)−(4)の予測値を使って、最初にEおよびNの目標値を設定するときにNを大きくした方が、一般にクラスタリングの安定化が容易になる、すなわち正しい位置にエピトープグループが同定され、均質化抗体パネルが得られる確率が高くなる。すなわち、(1)抗原タンパク質の高次構造情報から得られるTEとTNの値;(2)抗原タンパク質のホモロジー解析から得られる予測ドメイン構造;(3)抗原タンパク質のアミノ酸配列から推定される予測2次構造および;(4)抗原タンパク質に対して過去に取得されている既存の抗体および結合リガンドの結合位置情報を並列に使って、EとNの目標値を設定する場合、Nを大きくした方が、一般にクラスタリングの安定化が容易になる。
<至適抗体数の上限Nx>
本発明において、エピトープ均質化抗体パネルの生成において、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルおよび/または部分パネルから、さらに抗体数nが至適抗体数の上限Nx以下となるようにさらに選抜してもよい。n≦Nxとなればよいことから、Nxは至適抗体数の上限であるが、本明細書においては単に至適抗体数ということもある。
Nxは、実用的な抗体数を採用することができる。抗体パネルの抗体数n個については、抗原の表面に均質に存在しなくてはならないことから、均質化の実現のためには、できるだけ大きな数値を採用するほうが良いというファクターがある。したがって、NxはNと同一であってもよいが、実用性を考慮すると、NxはNより少なくてもよい。例えば、エピトープグループには抗体が2つ以上含まれることが望ましいことから、Nxは少なくとも2×Eで設定することが代表的であり、代表的にはNxは2×E〜6×E(例えば、2×E、3×E、4×E、5×E、6×E等)で設定することができる。抗体が1つとなるエピトープグループは、エピトープグループの総数の一定の比率まで許容される。例えば、全体のエピトープグループのうち、5%まで、10%まで、15%まで、20%まで、または25%までのエピトープグループは1抗体のみを含んでいてもよいことから、これらの最低数(例えば、5%、10%、15%、20%、25%は1個、それ以外を2個として産出するなど)をNxとして設定してもよい。もちろん、Nxはこれらの数以上を設定してもよい。
代表的な例として、「ペア逐次アッセイ法」、「安定度指数」でeを算出し、「表面の70%以上を網羅」、「表面網羅性を達成できる抗体数の最低数」でEを固定する場合を記載する。例えばPDBデータベースから提供されるデータに基づき、ある抗原に対する抗体パネルにおいて、エピトープ均質化の達成(すなわち、e≧Eの達成)に必要な抗体数の分布をとると、20%Percentileに相当する比較的少ない抗体数がNxでありうる。実際は、パネルに含まれる抗体数が少なければ少ないほど好ましい目的の場合は、各エピトープグループあたり、2抗体くらいまで減らすことが可能であり、実施例で示されるように、N以下のものを最終エピトープ均質化パネルとして選ぶことができる。これは、まさにNx<Nで実施可能であることが示されている例といえる。ただし、Nxを低く設定しすぎると抗体が認識しているエピトープ(エピトープグループではなく)の網羅性が達成される蓋然性が低くなることから、網羅性を考慮して、Nxを適宜設定することができる。
最終的な抗体パネルに含まれる抗体数を「E」にまで減らした場合、例えば、各エピトープグループに1つしか抗体がない場合、その抗体が何らかの有用な機能を有していることが確認できたとしても、それが「そのエピトープグループに属している」ことから生じている機能なのか、その抗体の別の性質によるものかが確定することが難しく、これを確定するためにさらなるアッセイを必要とし得る。このような場合ももちろん、均質化抗体パネルを機能的抗体のスクリーニング目的に利用することができるが、確定のレベルを上昇させ、網羅性および正確性を挙げるためには、1エピトープグループ2個以上が確保されるように抗体パネルの選択を行うことが好ましい。
また、本発明の実施においてはNxは目的に応じて適宜設定することができる。例えば、パネル作製の目的が低免疫原性化(抗原Aの実施例)である場合、Nxは比較的多めに設定され、CD30の実施例のように、機能性抗体の探索の場合は、Nxは低く設定されてもよい。低免疫原性については、抗原性の高い部分を、できるだけ見逃さないために抗体数は多めの方がよいからである。一つでも見逃してそこに抗体レスポンスが起こってしまうとトータルの抗体量はそれほど減らず、低免疫原性化が失敗と判断されることとなる。
このように、抗体に求める機能や抗原ごとに、パネルに含まれる抗体群に要求されるエピトープグループを特定する精度は異なることから、当業者は、これらの機能や抗原に応じて適宜Nxを設定することができる。例えば一回膜貫通型レセプターを標的抗原とし、抗体によってクロスリンクをすれば、細胞内シグナルが発生する場合を想定すると、シグナルを誘導するアゴニスト抗体群が結合する抗原領域は比較的おおまかであり、(個々の抗体の厳密なエピトープが違っていても)エピトープグループと抗体機能に十分な相関がある場合が多いので、各エピトープグループに含まれる抗体数が少なくても、均質化抗体パネルを用いたアゴニスト抗体探索の目的は十分達成され得る。他方、GPCR等の精密な標的化が必要な抗原では、同じエピトープグループに属している抗体のすべてが目的の機能を精密に再現しているとは限らない。従って、取りこぼしがないように、同一のエピトープ領域を複数のエピトープで探索できるように、Nxを多め(例えば、Nと同一)に設定することが好ましい。これは、たとえて言えば、住所をピンポイントで特定する場合に、大きな区画(市など)から小さな区画(番地など)に順序立てて絞り込むのが効率的な過程であることと類似している。
一般には、抗体の期待される機能(アゴニスト活性、アンタゴニスト活性、中和活性など)は、大まかな構造の動きで規定される抗原が多く、つまりエピトープグループとの相関が高いといえる。この場合は、NxはEに近い数を設定することができる。ただし、好ましくは、抗体間の機能を認識部位に関連付けを容易なものとするため各エピトープグループに2つは残しておくことが有利でありうる。
各エピトープグループは、より多数の抗体の結合性データを用いて同定された場合の方が、少ない抗体数で同定された場合よりも、その他の無関係の抗体の結合性データの影響を受けにくいので、本来の位置に正確に同定される確率が高い。したがってNxは均質化の正確性の程度を高く保つために大きい方がよく、このような目的の場合は、NxはNに近い数字または同じ数字で設定することができる。
[プログラム、記録媒体およびシステム]
1つの局面において、本発明は、本発明のエピトープ均質化抗体パネルを製造する方法をコンピュータに実施させるための方法を実装するプログラム、該プログラムを記録した記録媒体、およびこれを実現するためのシステムを提供する。
具体的には、1つの局面において、本発明は、ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、(a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程とを含む、プログラムを提供する。ここで採用され得る任意の特徴は本明細書のエピトープ均質化抗体パネルの作製方法の説明に記載される任意の特徴またはその組み合わせを採用することができる。プログラムはどのような言語で記述されてもよい。
他の局面において、本発明は、ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
(a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程とを含む、記録媒体を提供する。ここで採用され得る任意の特徴は本明細書のエピトープ均質化抗体パネルの作製方法の説明に記載される任意の特徴またはその組み合わせを採用することができる。1つの実施形態では、記
録媒体は、内部に格納され得るROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置でありうる。
さらに別の局面では、本発明は、ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製するシステムであって、該システムは、(A)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして、および該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを提供する抗体パネルデータ提供部であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数N以上である、抗体パネルデータ提供部と、(B)抗体データ計算部であって、該計算部において:該結合データに基づいて、該抗体パネルをクラスタリングし、必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、結合データに基づいてクラスタリングし、該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し、再度オリジナル抗体パネル生成、結合データ提供、クラスタリング、必要に応じて部分パネル生成およびクラスタリングを繰り返すように指令を出し、得られた該エピトープ均質化抗体パネルを出力する抗体データ計算部、を備える、システムを提供する。ここで採用され得る任意の特徴は本明細書のエピトープ均質化抗体パネルの作製方法の説明に記載される任意の特徴またはその組み合わせを採用することができる。
次に、図1Bの機能ブロック図を参照して、図1A(フローチャート)も参照しながら本発明のシステム1の構成を説明する。なお、本図においては、単一のシステムで実現した場合を示しているが、複数のシステムで実現される場合も本発明の範囲に包含されることが理解される。
本発明のシステム1000は、コンピュータシステムに内蔵されたCPU1001にシステムバス1020を介してRAM1003、ROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置1005及び入出力インターフェース(I/F)1025が接続されて構成される。入出力I/F1025には、キーボードやマウスなどの入力装置1009、ディスプレイなどの出力装置1007、及びモデムなどの通信デバイス1011がそれぞれ接続されている。外部記憶装置1005は、情報データベース格納部1030とプログラム格納部1040とを備えている。何れも、外部記憶装置1005内に確保された一定の記憶領域である。
このようなハードウェア構成において、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムがCPU1001によってRAM1003上に呼び出されて展開され実行されることで、OS(オペレーションシステム)と協働して本発明のエピトープ均質化抗体パネルの作製方法の機能を奏するようになっている。もちろん、このような協働する場合以外の仕組みでも本発明を実装することは可能である。
本発明の実装において、該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程を行う際に、抗原の情報および該抗原に対する抗体の集合のデータ、例えばアミノ酸配列またはこれと同等の情報(例えば、これをコードする核酸配列等)は、オリジナル抗体パネルのデータとして入力装置1009を介して入力され、あるいは、通信I/Fや通信デバイス1011等を介して入力されるか、あるいは、データベース格納部1030に格納されたものであってもよい。ここで、オリジナル抗体パネルの抗体数が抗原に関する目標抗体数(N)以上であるかどうかも適宜確認することができる。次に、オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程は、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この外部記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。あるいは、結合データは、ELISAなどを実施することによって得られることから、そのようなELISAを実施する外部装置またはシステムの一部に組み込まれたアッセイ手段によって実際のデータを得て、入力装置1009を介して結合データを入力することができる。結合データは、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。次に、該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程もまた、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。クラスタリングされた抗体パネルのデータは、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程もまた、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。作成された部分パネルのデータは、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在するかどうか判断する工程もまた、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。判断データは、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。判断の後、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返すよう命令を出す工程もまた、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。エピトープ均質化抗体パネルのデータまたは新たな抗体のデータを加えて生成された新たな抗体の集合は、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。
データベース格納部1030には、これらのデータや計算結果、もしくは通信デバイス1011等を介して取得した情報が随時書き込まれ、更新される。各入力配列セット中の各々の配列、参照データベースの各遺伝子情報ID等の情報を各マスタテーブルで管理することにより、蓄積対象となるサンプルに帰属する情報を、各マスタテーブルにおいて定義されたIDにより管理することが可能となる。
データベース格納部1030には、上記計算結果は、抗原および抗体に関する情報、例えば、生物学的情報、生化学的情報、医学的情報例えば疾患、障害、生体情報等の既知の情報と関連付けて格納されてもよい。このような関連付けは、ネットワーク(インターネット、イントラネット等)を通じて入手可能なデータをそのまままたはネットワークのリンクとしてなされてもよい。
また、プログラム格納部1040に格納されるコンピュータプログラムは、コンピュータを、上記した処理システム、例えば、オリジナル抗体パネルの提供、結合データの提供、クラスタリング、部分パネルの生成、e≧Eなどの判断、エピトープ均質化抗体パネルの選択などの処理を実施するシステムとして構成するものである。これらの各機能は、それぞれが独立したコンピュータプログラムやそのモジュール、ルーチンなどであり、上記CPU1001によって実行されることでコンピュータを各システムや装置として構成させるものである。なお、本発明の例示においては、それぞれのシステムにおける各機能が協働してそれぞれのシステムを構成しているものとするが、この処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
本発明がシステムとして構成される場合は、抗体パネルの提供および結合データの提供はまとめて抗体パネルデータ提供部としてもよい。また、クラスタリングおよびエピトープ均質化抗体パネルの判定は、抗体データ計算部としてまとめてもよい。抗体パネルデータ提供部は、抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして、および該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを提供し、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数N以上であるように選択される。抗体データ計算部は、該結合データに基づいて、該抗体パネルをクラスタリングし、
必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、結合データに基づいてクラスタリングし、該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し、再度オリジナル抗体パネル生成、結合データ提供、クラスタリング、必要に応じて部分パネル生成およびクラスタリングを繰り返すように指令を出し、必要に応じて得られた該エピトープ均質化抗体パネルを出力することができる。
[エピトープ均質化抗体パネル]
別の局面において、本発明は、エピトープ均質化抗体パネルを提供する。本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、代表的には、そのエピトープグループ数eが、該抗原に関する目標エピトープグループ数Eと比較してe≧Eであり、該Eが、該抗原に存在し得るエピトープ領域の数である。好ましい実施形態では、ある抗原の表面に存在する全てのエピトープ領域に対して、各エピトープ領域に結合する抗体を少なくとも2つ以上含み、さらに好ましくはエピトープグループあたり2〜6個の抗体を含む。エピトープ均質化パネルは、抗原のエピトープ領域を網羅しており、抗体のin vivoにおける詳細な機能を推定し、構造活性相関から作用メカニズムを推定するのに用いることができる。エピトープ均質化抗体パネルは、幅広いエピトープの多様性を確保し、低頻度・取得が困難な抗体を含む。エピトープ均質化抗体パネルは「抗体の結合という機能」を、抗体の分類に使うことによって、他の抗体機能の探索をしやすくするパネルである。本発明の方法は、そのような網羅的な抗体パネルを、取り扱う抗体の数(種類)を最小化しながら提供することができる。
一つのエピトープグループに多数の抗体を含むものであれば、網羅的なパネルは、ある抗原に対する抗体を多数取得すれば達成できるとも考えられる。しかしながら、各エピトープグループで最低限の抗体数にした均質化パネルを用いることで、同一労力で探索可能
なエピトープ空間が圧倒的に大きく広がり、抗体パネルが有用となる。
例えば、10個のエピトープグループの各々に平均30抗体ある抗体パネルでは、10×30=300個の抗体が網羅的なアッセイに必要となる場合に、同様の抗原に対して本発明のエピトープ均質化抗体パネルを用いると、各エピトープグループあたり3つの抗体に設定する場合、同じエピトープ空間を探索するのに10×3=30と1/10の労力で行うことができる。しかも、通常の300個の抗体パネルでは、エピトープグループを考慮していないため、すべてのエピトープ領域が網羅されているとはいえず、むしろ、親和性の問題等から、特定のエピトープ領域に抗体が偏在している可能性があるが、本発明ではこのようなことはない。また、エピトープ均質化されていない従来の抗体パネルでは、抗体に偏りがあるために、特異な抗体機能を認識部位に関連付けることができず、例えば、300個のなかに機能エピトープを認識する抗体は3つだけ(1%)という可能性もあり、場合によっては見出されないこともありうる。しかし、同じ300個の抗体から、均質化パネルを作ると30抗体のなかの3つ(10%)となり、検出効率を10倍も上げることができる。検出確率が上がり、さらに認識部位と機能の関連付けも容易になるので、希少な抗体を見逃さずに検出することができる。
本発明において、各エピトープグループに属する複数の抗体のエピトープを、個々に解析した結果を統合することで、抗体エピトープ領域の記述が可能となる。また均質化抗体パネルに含まれる抗体で定義される機能に相関したエピトープグループは、他の無機能抗体から構成されるエピトープグループとは異なっているという付加情報を有する。理論に束縛されることを望まないが、本発明を用いる場合の利点として、エピトープ均質化抗体パネルは抗原網羅性を有しているので、均質化抗体パネルを用いて、抗体機能に相関した抗体エピト−プ領域の完全性を保証された定義が、極めて正確に可能になると理解される。
別の具体的な実施形態では、本発明のエピトープ均質化抗体パネルにおいて、各エピトープグループに属する抗体の数が、平均値から2標準偏差、より好ましくは1標準偏差の範囲内である。あるいは、すべてのエピトープグループあたりの数が各々実質的に平均値と等しいことが好ましくありうる。このような均質化を図ることにより、各エピトープグループにおける偏在を回避することができ、機能性抗体の効率的なスクリーニングがより達成される。
さらに好ましい実施形態では、本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、抗原との親和性がK=2×10−9Mよりも低い中程度の親和性である抗体を含み得ることも一つの特徴である。このような中程度の親和性の抗体は、従来の高親和性を重視した抗体パネルでは通常含まれないものであり、本発明では、大過剰の抗体を用いた競合結合アッセイやペア逐次結合アッセイ等の方法を用いることで、K=2×10−9Mより低い(数値としてはこれより大きな)親和性である抗体等の中程度の親和性の抗体を含めることができる。本発明のエピトープ均質化抗体パネルが含めることができる低親和性の抗体の特徴としては、K=2×10−9M以上、3×10−9M以上、4×109以上、5×10−9M以上、6×10−9M以上、7×10−9M以上、8×10−9M以上、9×10−9M以上、1×10−8M以上、2×10−8M以上、3×10−8M以上、4×10−8M以上、5×10−8M以上、6×10−8M以上、7×10−8M以上、8×10−8M以上、9×10−8M以上、1×10−7M以上、2×10−7M以上などを挙げることができるが、これらに限定されない。
理論に拘束されるものではないが、ペア逐次結合アッセイを用いて作製した「エピトープ均質化抗体パネル」は通常の抗体パネルとは違い、コンフォメーション変化(Conformational Change)による抗原になりうる構造の変化も検出することができる抗体パネルであり、今まで見出すことのできなかった機能的抗体の探索に使用することができる。エピトープ均質化抗体パネルは、近縁ウイルス間の交差反応性や、ウイルスのADE(antibody dependent enhancement)を起こす抗原エピトープの推定に使用し得る。エピトープ均質化抗体パネルは網羅的な抗体パネルであるため、抗原全体が生体に暴露した時に、宿主(Host)の抗体レスポンス(特定の機能と関連する抗体誘導を含む)が起こりやすい部分的な抗原性(抗原に含まれる抗原エピトープグループ)を同定したいときに、広く使える可能性を有する。このように、抗原全体の免疫原性でなく、抗原全体に暴露した時の、抗原に存在するエピトープグループ単位での免疫原性が判明すれば、例えば、新規ワクチンの開発等に用い得る。
抗原に、著しく多数の(たとえば100個の)抗体が一度に結合するのは、数の限界から不可能で(抗体にも「かさ」があるので、多すぎる数の抗体は結合できない)、ポリクローナルの状態では親和性による選択も同時に起こり、親和性が高い抗体のみが選択されてしまう。そのため、エピトープグループ単位での抗原性解析はポリクローナル抗体では困難である。個々のエピトープグループ単位での抗原性解析は、公知の方法で作成したモノクローナル抗体を用いても可能であるが、実際の有用性がより高い、抗原表面の網羅性を保証したエピトープグループ単位での抗原性解析は、本発明の均質化抗体パネルにより初めて可能になる。
例えば抗原の低免疫原性化を図る場合には、ポリクローナル抗体では、最も親和性の強い抗体の次に強い2番手の抗体の結合は、一番手の抗体の結合により隠されてしまうので観察することができないが、均質化抗体パネルを用いること(モノクローナル抗体にすること)でエピトープグループ単位での抗原性を検出することが可能となり、各エピトープグループの構造を破壊する、アミノ酸点変異を導入することにより、抗原の低免疫原性化を実現することができる。
低免疫原性化に用いるパネルは、好ましくは、できるだけ抗原性の高い部分を見逃さないために抗体数を多めに設定する。抗原性の高い部分を見逃してそこに抗体レスポンスが起こってしまうと、トータルの抗体量はそれほど減らず、低免疫原性化が成功しないからである。
本発明のエピトープ均質化抗体パネルで抗体を減らすことのメリットとしては、抗体数が少ないので動物実験などのスループットが低い(Low Throughput)2次機能スクリーニングにも対応可能であることが挙げられる。また、比較的大量の抗体(たとえば0.1g)の精製抗体がハイブリドーマの培養上清から容易に精製、供給できるので、機能アッセイに必要な抗体量が多い場合でも対応が可能である。そして、機能スクリーニングで標的に適切なエピトープグループが見つかった場合には、パネルを作製する過程で、すでに同じエピトープグループを認識する抗体が得られているので(保存してあるので)、それらの抗体を使って、すぐにエピトープ−機能相関の確認が可能である。
本発明のエピトープ均質化パネルは、エピトープ領域の推定に基づいて作製されるが、エピトープ領域の特定に必要な解像度は、抗原の構造情報からのエピトープの推定(高解像度)と比べてかなり低い。「エピトープ均質化パネル」の作製にはラフなエピトープ領域の推定で十分(個々の詳細なエピトープの同定が必要ない)であるため、PDBのような詳細な情報のデータが得られていない抗原でも、「エピトープ均質化パネル」を作成でき、そのパネルを使って網羅的な(実用的な網羅性で)機能性抗体を探索(網羅性を保証する探索)することができる。この点は、機能性抗体の標的タンパクの多くを占める細胞膜抗原で3次元構造情報が得られていないことから、本発明の大きな利点になり得る。
さらにエピトープ領域(本明細書において、「認識ユニット」とも称されることがある。)のラフさは、「エピトープ均質化パネル」を用いた機能性抗体探索時のメリットとなり得る。詳細にエピトープを同定しても、その違うエピトープを認識する抗体の機能は、ある「かさ」を有する抗体の結合によって誘導される。その「かさ」をもった抗体の結合は、違う抗体でもエピトープ領域ごとに、類似した抗原構造の変化や競合を引き起こす(従って、実際に「ペア逐次結合アッセイ」で同じ「エピトープグループ」に分類される)。そしてその、抗体の結合により引き起こされる構造の変化や競合を(つまり生物学的効果に直結するものを)、同定することがその「エピトープ領域」を標的とする抗体群の機能類推に重要である。すなわち、抗体の生物機能の類推には、解像度をあげることはそれほど有効ではない場合も多く、むしろ詳細にしすぎると構造活性相関がぼけてしまうことが多い(同じエピトープグループに属する複数の機能性抗体でも、詳細に見れば個々の抗体は異なるFv配列で、異なるエピトープを認識するため)。本発明のエピトープ均質化パネルは、抗体を「結合という機能」で分類した特別な抗体パネルであるということができ、機能性抗体の検索(とそれらの抗体が認識する抗原構造の同定)に適するものである。
別の局面において、本発明は本発明のエピトープ均質化抗体パネルを含む分析用キットを提供する。このような分析用キットは、本発明の方法で生成されたエピトープ均質化抗体パネルあるいは本発明のエピトープ均質化抗体パネルの他、必要に応じて、分析に目的に必要な適宜の手段を含みうる。本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の分析方法、検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することなどの使用法を説明する文言が記載されている。この指示書は、必要に応じて、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。診断薬や検査薬の場合、指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(スクリーニング)
別の局面において、本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、抗体のスクリーニングのために用いることができる。別の局面では、本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、抗原の抗原性の解析と改変(例えば低免疫原性化)のために用いることができる。別の局面では、本発明のエピトープ均質化抗体パネルは、抗体エピトープ領域(抗体機能に相関した領域)の定義に利用できる。
したがって、1つの実施形態では、本発明は、ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、(e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と(f)該エピトープ均質化抗体パネルを用いて該スクリーニングを行う工程とを含む。ここで(a)〜(e)で示される工程は本明細書において記載される「エピトープ均質化抗体パネル」の作製に利用可能な任意の実施形態およびそれらの組合せを採用することができる。
このスクリーニングを行う工程では、抗体に関連する任意のスクリーニングを行うことができ、例えば、結合アッセイ、競合アッセイ、アンタゴニストまたはアゴニスト活性のスクリーニング等を行うことができる。
さらに、エピトープ均質化抗体パネルは、コンフォメーショナルエピトープを重視していることに大きな利点があると考えられる。エピトープ均質化パネルは結晶構造が得られにくい、または得られない抗原で最も力を発揮すると考えられる。抗体はフレキシブルな動的な構造であっても、結合エピトープとして同定することができるからである。結晶が得られない抗原でも、抗体は産生され、抗体は糖鎖などの結晶化を妨げる構造(恐らく多様なフレキシブルな構造)もロック(固定)して一緒に認識するので、必要とされる解像度にもよるが、抗体の反応性(機能エピトープ)で同定される構造の方が、結晶化によって得られる構造情報より有用な局面があると考えられる。つまり、結晶化できない場合(いわば真っ暗で見えないような場合)でも、抗体によってその形状を予想できる(いわば触って形を予想できる)。
またエピトープ均質化抗体パネルでは、抗体のダイナミックな結合機能によって定義されるエピトープ単位をグルーピングに採用している点が、機能抗体の発見のために、有用性が高い場合がある。抗体のタンパク質抗原への結合の過程を考えてみると、抗原タンパク質は単独では、疎水性の残基を内側にして、親水性の残基を外に向けた状態で、水分子に囲まれたフォールディング構造を取っている。この抗原に抗体がアプローチしていくと、結合部位近傍にある水分子を押しのけて、その微小環境が変わり、部分的に抗原の形が少し歪む。つまり極論すれば、抗体の機能(結合)の本質はダイナミックなコンフォメーションの変化であり、最終結果(結晶構造)ではないとも考えられる。すべての抗体の機能は結合モードに依存しているので、抗体の結合を指標にエピトープを均質化したエピトープ均質化抗体パネルは機能抗体の発見に適している。
本発明のエピトープ均質化抗体パネル技術の1つの実施形態では、多くの動物に弱めの免疫を多様な条件で行って、各個体に誘導される抗体レパトアの多様性を最大化する。言い換えれば、一部のエピトープに対する抗体レスポンスを最大化するための通常の免疫ではなく、抗体レパトアを最大化する免疫を行う。これにより、各オリジナル抗体パネルごとに異なるエピトープの抗体を得ることができる。通常の抗体作製のプロトコールでは、短期間に抗体を作製することを最優先にするので、弱めの多様な免疫は避けられるが、短時間での成果を追求するあまり、多様性が犠牲となる場合がある。本発明の1つの実施形態では、動物の免疫を弱めにして、個体のランダムな抗体遺伝子の変異による、抗体レパトアの偏りを許容して、スクリーニングを行うことが可能となる。それが、In vivoの多段階の変異と選択のサイクルを最大限に利用した抗体成熟だと考えられる。本発明の1つの実施形態では、弱めの免疫でレアな抗体も作製されるようにし、大過剰で結合アッセイを行うことで、網羅性を高めることができる。
In Vivoの獲得免疫システムは成熟した時点でも、何に反応するか(何に抗体を作るかが)が規定されていない。つまり、まだ未知のこれから出合う抗原(多様な構造)に対応して、如何様にも対応(多様に分化)できることが抗体免疫の「機能そのもの」である。多様性は、種を保存するために本質的であり(例えば、HIVのような中和抗体ができにくい病原体に対しても、中和抗体を作れるわずかの集団(Population)が存在し、全人類は死なない)そのために、個体レベルで多様性がロバストに進化している(一卵性双生児でも、Naturalな抗体レパトアは全く異なる)。エピトープ均質化抗体パネルは、このような抗体レスポンスの本質である多様性を引き出すことを目指した結果得られる抗体パネルであり、独自性が高い。
別の局面では、本発明は、均質化パネルに代えて、均質化パネルを作成する段階で、ダウンサンプリングまたはダウンサイジングを少なくとも1回行った後のパネルをスクリーニングなどに用いることができる。
したがって、1つの局面において、本発明は、ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法を提供し、この方法は(a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、(c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と(d)該オリジナル抗体パネルから、エピトープグループ数が減少しないように、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、(e)(d)のクラスタリングで得られた部分パネルのエピトープ数が該オリジナル抗体パネルのエピトープグループ数以上であるものを選択し、該選択された部分パネルを用いて該スクリーニングを行う工程とを包含する。ここで(a)〜(c)で示される工程は本明細書において記載される「エピトープ均質化抗体パネル」の作製に利用可能な任意の実施形態およびそれらの組合せを採用することができる。また、工程(d)においても本明細書において記載される「エピトープ均質化抗体パネル」の作製に利用可能な任意の実施形態およびそれらの組合せを採用することができ、さらに特徴的な点の一つに、「エピトープグループ数が減少しないように」1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成することを特徴とする。すなわち、ダウンサウジングにおいて、エピトープグループ数が減少しないように工夫することで、オリジナルの抗体パネルと同様の多様性(エピトープグループ数)を維持しつつ、パネルに含まれる抗体数を減少させることができ、もとの抗体パネルと同程度の結果を期待しつつ、効率よいスクリーニングを行うことができる。
1つの実施形態において、このような「エピトープグループ数が減少しないように」1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成することは、例えば、以下の基準:最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの1または複数の基準に基づいて行われるが、これらに限定されない。
以上をまとめると、「均質化抗体パネル」は、「抗原」に注目した「抗原の、抗体による機能改変の可能性を漏れなくテストできる抗体プローブ群」である。そのため、従来技術で「抗体」に注目した「抗体の分類技術」によって取得した抗体も均質化パネルに含まれる場合はあるが、そのような抗体には均質化パネル完成時に保障される「網羅性」がなく、有用性の点で異なるといえる。
「均質化パネル作製の過程の部分パネル」は、過程であっても、ぺア逐次アッセイによる、コンフォメーション変化を測定しているので(抗体の同時結合の程度を結合順序ごとに測定)、「競合アッセイ(Competition Assay)」で同定されたいわゆる「エピトープビンニング」等と比較して技術的な優位性を有する。
「エピトープは、抗体が「すでに」存在しているときに、初めて定義できる「抗原の結合領域」なので、極端な例では、抗体が1つしかなければ、どのような方法をとってもエピトープは1つである。従って、エピトープ数によるアッセイ法パフォーマンスの変化は不可避であるが、ある程度の抗体数があれば、「ペア逐次アッセイ」の高いパフォーマンスを利用することが可能である。このように実験で得られる実測データに基づくエピトープ数の決定は、エピトープ数の予測(実際の抗体が必要ない単なる予測)とは異なるものである。
エピトープ均質化パネルは、ただむやみに抗体数を増やして網羅性を高めるのではなく、パネル技術をつかって、機能検索のための「収束値」にいたるエピトープグループ数を、最小の抗体数で達成するものである。
つまり、「均質化パネル」は確率をあげる技術ということができる。例えば、石油(機能抗体)を掘り当てるのに、ただあちこち掘ってみるよりも、網羅性があるように掘る地点を設定していけば、くまなく検索できるので、はるかに油田を掘り当てる確率は高くなると例えることができる。
この例においてさらにいうと、もちろん、この「均質化パネル」技術なしでも、運よく最初の研削場所で石油を掘り当てることができる可能性はある。さらに、もし、探している地域(抗原)のどこにも、油田がない場合であれば、「均質化パネル」を用いたとしても石油(機能抗体)は見つからないということになる。
このような場合には、結果的には、一見すると有用性がないように思われる可能性はあるが、「均質化パネル」は確率をあげる技術であるため、必ずしも機能抗体が見つからなかったとしても、そのような探索において技術的な貢献をするものである。
例えば、いろいろな人がこぞって掘りやすい場所(抗原性のあるエピトープ)を掘るために、似たような抗体が乱立する。例えるなら、網羅性の保証がない場合には、新規参入者は新しい油田を発見できるかもしれないという夢をもって、また同じ掘りやすい場所を掘るといえる(同一のエピトープについて抗体を探索する)。「均質化パネル」で抗体を検索すれば、同じ抗原でも、今まで未開の地で石油(機能性抗体)をさがすことができる。機能抗体の活性は内在性のリガンドを超える場合があるため、新しい機能を発見することができる可能性もある。すべての抗体機能の根源は、結合様式(機能性エピトープ)によって決定するため、「均質化パネル」はそのような機能を有する抗体の探索において有用である。また、この例でいうならば、網羅性がある「均質化パネル」を用いても所望の機能および/または活性を有する抗体が見つからなければ、その同じ地域(抗原)に石油(機能抗体)はないということを結論付けることが可能であり、資源および労力を新たな抗原に対する機能抗体の探索へと向けることができる。
機能的抗体の探索に用いるためには、例えば、低免疫原性を目的とする場合と比較して網羅性の要求度は低い場合も多いため、本発明において生成される部分パネルであっても、用いることが可能である。
以上のように、最終的にEの条件を満たさないエピトープパネル(不完全パネル)であっても、本発明の方法に従って作製したエピトープパネルには一定の有用性があることが実証された。本発明の方法は、<均質化>を目指して抗体パネルの作製を進めるものであるため、単純に抗体を集めた場合よりも、有用性の保障がある(漏れたエピトープが有意に減少しているか、または漏れたエピトープがない)と考えられる。
さらに、抗体の機能に関連するコンフォメーショナルエピトープは、個々の抗体のエピトープではなく、抗体群を用いることで初めて定義可能になる。本発明で提供される「均質化抗体パネル」はそのような機能エピトープ(エピトープ領域)を定義するための、十分な抗体群を与える方法である。複数の抗体が同一の機能エピトープを認識することが示されることにより、かかる機能エピトープに結合する抗体の有用性がより明確に示され得る。
機能に関連するエピトープとの表現は、本明細書において使用される用語でいえば、本来は機能抗体群に対応する「エピトープ領域」であるため、個々の抗体のエピトープよりも大きな、本来の機能領域を定義する(できる)複数の最低個数の抗体(あるいはエピトープ)の群によって定義されるべきである。本発明で提供される均質化抗体パネルで同一のエピトープグループに属する抗体群(エピトープ群)は、そのような抗体(エピトープ)の群を提供する。
さらに、理論に束縛されることを望まないが、これらの抗体群を特定するには均質化抗体パネルが必須ですらあり得る。したがって、本発明が提供する技術は、今後、抗体群を定義するときに必須の特徴情報を提供するともいえる。その理由としては、理論に束縛されることを望まないが、ただ複数の機能抗体を集めてそれらの認識するエピトープを複数記載するのとは違って、均質化抗体パネルに含まれる機能抗体のエピトープグループは、抗体パネルに含まれるがそのエピトープグループに属さない他の抗体(無機能の抗体)から、機能と関係している領域を定義しているということが保証されており、理論的定義であること(信頼性が高い)、さらに均質化抗体パネルを構成する抗体は網羅性が保証されているので、ある基準で抗原に結合して抗原機能を操作するという抗体の機能を追求したときに取りこぼしのない機能エピトープ(エピトープ領域)の同定ができるということである。
理論に束縛されることを望まないが、本発明についてさらに述べれば、一つの抗原について言えば、均質化パネルが作成された後にはその抗原に対して多数の抗体を取得したとしても、それ以上新しい機能エピトープを見つけることはない(新しい油田がないと例えることができる)ということである。従ってエピトープ均質化抗体パネルによって同定される機能エピトープ領域は、他の方法で同定されるエピトープ情報では得られない正確性と完全性が獲得されるという点においても、「エピトープ均質化抗体パネル」は顕著な効果を提供する発明であるということができる。
(抗TNFR2抗体)
1つの局面において、本発明は、抗腫瘍壊死因子レセプター2(TNFR2)抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物を提供する。
本明細書において「腫瘍壊死因子レセプター2(TNFR2)」とは、TNFRII、TNFRSF1B、CD120b、TBPII、TNF-R-II、TNF-R75、TNFBR、TNFR1B、TNFR80、p75、p75TNFR、tumornecrosis factor receptor superfamily member 1Bなどとも表示される、レセプターの一種である。腫瘍壊死因子(TNF)αが結合しシグナル伝達を媒介する。その遺伝子情報について述べると、RefSeq(mRNA)はNM_001066(ヒト)およびNM_011610(マウス)であり、その遺伝子産物は、NCBIに記載されているアクセッションナンバーについてみると、RefSeq(Protein)は、NP_001057.1(ヒト)、NP_035740(マウス)またはNP_035740.2(マウス)である。TNFの生理作用は、赤血球を除いた生体内の細胞に広く存在しているTNF受容体(TNFR)を介して発現する。TNFRにはTNFR1(p60)とTNFR2(p80)が存在するが、TNFR2に対する親和性がTNFR1に対するものよりも5倍高いことが報告されている。TNFRもTNFと同様に3量体を形成して存在しており、TNFR1は全身の多くの組織に構成的に発現しているのに対して、TNFR2は何らかの刺激を介して免疫系の細胞に発現する誘導型の受容体である。抗体産生の亢進を行うことにより感染防御や抗腫瘍作用に関与し、他方で、関節リウマチ、乾癬などの自己免疫疾患などに関与する。
TNFR2のアミノ酸配列は、例えば、配列番号32である。その核酸配列は上記アクセッションナンバーなどを参照することができる。TNFR2は、TNFR2活性を有していれば、そのアミノ酸配列は限定されない。したがって、本発明の具体的な目的に合致する限り、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、類似体もしくは変異体または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、またはストリンジェンシー条件(詳細はAusubelet al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照)下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、本発明において用いることができることが理解される。
TNFR2のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号32に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号32に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号32に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、TNFR2の有する活性またはマーカーとして同じ生物内に存在する他のタンパク質から識別し得ること(例えば、抗原として用いられる場合特異的エピトープとして機能し得る領域を含むこと)をいう。
TNFR2は、免疫抑制に働く制御性T細胞(以下Treg)に高発現している膜型受容体で、Tregの増殖と機能にTNFR2を介したシグナルが重要なことが知られている。TNFR2は内在性リガンド(TNFα)の結合により活性化されると、転写因子NFκBを通じ、Tregの増殖と免疫抑制の発現に働くことが知られており、これらの生物学的活性も代表的に含まれることができる。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST2.2.28(2013.4.2発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
本明細書で使用される「機能的等価物」は、「誘導体」、「類似体」または「変異体」などと同じ意味で用いられ得、好ましくは、限定を意図するものではないが、対象となるタンパク質(例えば、TNFR2の抗体)に実質的に相同な領域を含む分子を含み、このような分子は、種々の実施形態において、同一サイズのアミノ酸配列にわたり、または当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行ってアラインされる配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%同一であるか、あるいはこのような分子をコードする核酸は、ストリンジェントでない条件下で、構成要素タンパク質をコードする配列にハイブリダイズ可能である。これは、それぞれ、アミノ酸置換、欠失および付加によって、天然存在タンパク質を改変した産物であり、その誘導体がなお天然存在タンパク質の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示すタンパク質を意味する。例えば、本明細書において記載されあるいは当該分野で公知の適切で利用可能なin vitroアッセイによって、このようなタンパク質の生物学的機能を調べることも可能である。本明細書で使用される「機能的等価物」の「機能」は、本明細書において、本発明の抗体などが関連する態様に従って、生物学的活性などの、タンパク質の構造的機能、制御機能、または生化学的機能を有する、ポリペプチド(例えば、抗体)、すなわちフラグメントまたは誘導体を指す。本明細書において、「機能的等価物」である配列を「機能的等価配列」と称することができる。
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸
の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。従って本明細書において「相同体」または「相同遺伝子産物」は、本明細書にさらに記載する複合体のタンパク質構成要素(例えば、本発明の抗体)と同じ生物学的機能を発揮する、別の種、好ましくは哺乳動物におけるタンパク質を意味する。こうような相同体はまた、「オルソログ遺伝子産物」とも称されることもある。本発明の目的に合致する限り、このような相同体、相同遺伝子産物、オルソログ遺伝子産物等も用いることができることが理解される。
本発明の一実施形態において抗体などを変異させるときに言及される「数個」は、例えば、核酸またはアミノ酸配列についていうとき、10、8、6、5、4、3、または2個であってもよく、それらいずれかの値以下であってもよい。1または数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入、または他のアミノ酸による置換を受けたポリペプチドが、その生物学的活性を維持することは知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA.1984 Sep;81(18): 5662-5666.、Zoller et al.,Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20): 6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656): 1431-1433.)。欠失等の改変がなされた抗体は、例えば、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、または抗体ファージライブラリを用いたバイオパニング等によって作製できる。部位特異的変異導入法としては、例えばKOD-Plus- Mutagenesis Kit (TOYOBO CO., LTD.)を使用できる。欠失等を導入した変異型抗体から、野生型と同様の活性のある抗体を選択することは、フローサイトメトリー解析やELISA等の各種キャラクタリゼーションを行うことで可能である。
本発明の一実施形態において「90%以上」は、例えば、90、95、96、97、98、99、または100%程度であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記「相同性」は、2つもしくは複数間のアミノ酸配列において相同なアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定してもよい。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一アミノ酸の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られている(例えば、BLAST、GENETYX等)。本明細書において「相同性」は、特に断りのない限りNCBIのBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸配列を比較するときのアルゴリズムには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositivesまたはIdentitiesとして数値化される。
本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、抗体など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質または生物学的因子は、好ましくは「精製された」物質である。本明細書で使用される「単離された」物質または生物学的因子(例えば、抗体など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子(例えば他の非特異イムノグロブリン分子)が実質的に除去されたものをいう。本明細書中で使用される用語「単離された」は、その目的に応じて変動するため、必ずしも純度で表示される必要はないが、必要な場合、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質は、好ましくは「単離された」物質または生物学的因子である。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなフラグメントは、例えば、全長のものがマーカーまたは標的分子として機能する場合、そのフラグメント自体もまたマーカーまたは標的分子としての機能を有する限り、本発明の範囲内に入ることが理解される。
本発明に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、例えば、TNFR2がTNFαに結合することの阻害等に関与する機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子の間の結合およびそれによって生じる生物学的変化であり得、そして、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
本発明の機能的等価物としては、アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加されたものを用いることができる。本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、あるいは天然の変異により、天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされていることを意味する。改変アミノ酸配列は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個のアミノ酸の挿入、置換、もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、TNFR2または本発明の抗体(例えばCDR)のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1もしくは数個または1、2、3、もしくは4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であってもよい。ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
したがって、「抗TNFR2抗体、または、そのフラグメント」の「機能的等価物」は、例えば、抗体の場合、TNFR2の結合活性、必要であれば抑制活性を有する抗体自体およびそのフラグメント自体のほか、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異性またはオリゴ特異性(oligospecific)抗体、単鎖抗体、scFV、ダイアボディー、sc(Fv)2(single chain(Fv)2)、scFv−Fcなども包含されることが理解される。
本発明の一実施形態に係る抗TNFR2抗体の抗体クラスは特に限定されないが、例えばIgM、IgD、IgG、IgA、IgE、またはIgYであってもよい。本発明の一実施形態に係る抗TNFR2抗体は、抗原結合活性を有する抗体断片(本明細書において、「抗原結合性断片」と称することもある)であっても良い。この場合、安定性または抗体の生産効率が上昇する、抗体の体内動態が変化する等の効果がある。
本発明の一実施形態に係る抗TNFR2抗体は、融合タンパク質であってもよい。この融合タンパク質は、抗TNFR2抗体のNまたはC末端に、ポリペプチドまたはオリゴペプチドが結合したものであってもよい。ここで、オリゴペプチドは、Hisタグであってもよい。また融合タンパク質は、マウス、ヒト、またはニワトリの抗体部分配列を融合したものであってもよい。それらのような融合タンパク質も、本実施形態に係る抗TNFR2抗体の機能的等価物の一形態に含まれる。
本明細書において「アゴニスト」とは、対象となる実体(例えば、レセプター)に対してそのレセプターの生物学的作用を発現またはそれを増強する物質をいう。天然のアゴニスト(リガンドとも称される)のほか、合成されたものや改変されたもの等を挙げることができる。抗体がアゴニスト活性を有する場合「アゴニスト抗体」という。
本明細書において「アンタゴニスト」とは、対象となる実体(例えば、レセプター)に対してそのレセプターの生物学的作用の発現を抑制または阻害する物質をいう。天然のアンタゴニストのほか、合成されたものや改変されたもの等を挙げることができる。アゴニスト(またはリガンド)と競合的に抑制または阻害するもののほか、非競合的に抑制または阻害するもの等がある。アゴニストを改変することによっても得られうる。生理現象を抑制または阻害することから、アンタゴニストは抑制剤(阻害剤)または抑制(する)因子の概念に包含され得る。抗体がアンタゴニスト活性を有する場合、「アンタゴニスト抗体」という。
本発明の一実施形態に係る抗TNFR2抗体は、例えば、精製TNFR2、TNFR2発現細胞、またはTNFR2含有脂質膜で生物を免疫する工程を経て得られる抗体であってもよい。
本発明の一実施形態に係る抗TNFR2抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有していてもよい。
1つの実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物は、配列番号32の119〜201位にエピトープを有する。このような特徴はTR92で示されるクローンが有する特徴であり得る。
別の実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、該TNFR2抗体は、(A)配列番号3(TR92重鎖)、配列番号13(TR94重鎖)、配列番号23(TR109重鎖)、配列番号37(TR92ヒト化重鎖1)、配列番号38(TR92ヒト化重鎖2)、配列番号41(TR109ヒト化重鎖1)、および配列番号42(TR109ヒト化重鎖2)からなる群より選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、およびそれらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖のいずれかと、(B)配列番号8(TR92軽鎖)、配列番号18(TR94軽鎖)、配列番号28(TR109軽鎖)、配列番号39(TR92ヒト化軽鎖1)、配列番号40(TR92ヒト化軽鎖2)、配列番号43(TR109ヒト化軽鎖1)、および配列番号44(TR109ヒト化軽鎖2)からなる群より選択される軽鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、およびそれらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖のいずれかとを含む。
好ましい実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、上記TNFR2抗体は、(i)配列番号3(TR92重鎖)、配列番号37(TR92ヒト化重鎖1)、もしくは配列番号38(TR92ヒト化重鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、およびそれらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号8(TR92軽鎖)、配列番号39(TR92ヒト化軽鎖1)、もしくは配列番号40(TR92ヒト化軽鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体のいずれかであるか、(ii)配列番号13(TR94重鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、およびそれらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号18(TR94軽鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、および、それらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖のいずれかとを含む抗体であるか、あるいは(iii)配列番号23(TR109重鎖)、配列番号41(TR109ヒト化重鎖1)、もしくは配列番号42(TR109ヒト化重鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号28(TR109軽鎖)、配列番号43(TR109ヒト化軽鎖1)、もしくは配列番号44(TR109ヒト化軽鎖2)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、およびそれらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖のいずれかとを含む抗体である。
好ましい実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、上記TNFR2抗体は、(i)配列番号4,5および6に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号9、10および11に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、(ii)配列番号14、15および16に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号19、20および21に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、あるいは(iii)配列番号24、25および26に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号29、30および31に示すアミノ酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体である。あるいは、それらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む抗体であってもよい。
さらに好ましい実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、上記TNFR2抗体は、(i)配列番号3に示すアミノ酸配列と、配列番号8に示すアミノ酸配列とを含む抗体、(ii)配列番号13に示すアミノ酸配列と、配列番号18に示すアミノ酸配列とを含む抗体、あるいは(iii)配列番号23に示すアミノ酸配列と、配列番号28に示すアミノ酸配列とを含む抗体である。あるいは、それらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む抗体であってもよい。
さらに好ましい実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、上記TNFR2抗体は、(i)TR92の重鎖配列と、TR92の軽鎖配列とを含む抗体、(ii)TR94の重鎖配列と、TR94の軽鎖配列とを含む抗体、あるいは(iii)TR109の重鎖配列と、TR109の軽鎖配列とを含む抗体またはその機能的等価物である。
好ましい実施形態では、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物において、上記抗TNFR2抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化を行う手法は当該分野において公知であり、本明細書において言及される情報などをもとに実施することができる。
好ましい実施形態では、抗TNFR2抗体は、配列番号37または38に示すアミノ酸配列と、配列番号39または40に示すアミノ酸配列とを含むか、あるいは、配列番号41または42に示すアミノ酸配列と、配列番号43または44に示すアミノ酸配列とを含む。あるいは、それらのアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、あるいはそれらの機能的等価配列を含む抗体であってもよい。このような配列を有するヒト化抗体が、ヒト化後も所望の活性・安定性等を維持していることが、本願明細書の実施例において実証されている。
1つの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物は、TNFR2とTNFとの結合を阻害する。別の実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物は、TNFR2とTNFとの結合を活性化する。
1つの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物は、野生型TNFR2ペプチド(配列番号32)に結合し、MC1変異体(配列番号33)に結合せず、MC2変異体(配列番号34)に結合し、MC3変異体(配列番号35)に結合し、MC4変異体(配列番号36)に結合する。1つの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物は、野生型TNFR2ペプチド(配列番号32)に結合し、MC1変異体(配列番号33)に結合し、MC2変異体(配列番号34)に結合し、MC3変異体(配列番号35)に結合せず、MC4変異体(配列番号36)に結合する。
別の局面において、本発明は、抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物をコードする核酸配列を含む1または複数の核酸分子を提供する。このような核酸分子は、本発明の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物の重鎖または軽鎖のいずれか一方または両方をコードする核酸配列を含み、1つの核酸分子であっても2つ以上の核酸分子であってもよい。例えば、前記核酸分子は、前記重鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子と、前記軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子とを含む。あるいは、別の実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物における重鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子であってもよく、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物における軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子であってもよい。
1つの局面において、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターを提供する。別の局面において、本発明は、本発明の核酸分子、または本発明のベクターを含む細胞を提供する。更なる局面において、本発明は本発明の核酸分子、または本発明のベクターを含むハイブリドーマ細胞を提供する。さらなる局面において本発明は、本発明の核酸分子、または本発明のベクター、本発明の細胞を含む動物(例えば、マウス、ラット、霊長類、非ヒト動物など)を提供する。これらのベクター、細胞、ハイブリドーマ、動物などは、当該分野で公知の技術を用いて作製することができる。
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modifiedcytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O26−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzeret al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608(1985);Rossolini et al., Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいい、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。
本発明の1つの実施形態は、本発明の別の局面におけるエピトープパネルに含まれる抗体であってもよい。例えば、本発明の実施形態の一つである特定の抗体は、本発明のエピトープパネルを用いて、属するエピトープグループとその機能とが関連付けられていてもよい。
好ましくは、抗体は、特定のエピトープグループに属するものである。具体的には、本願実施例4において、機能と関連付けられている抗体と同様のエピトープグループに属するものである。
したがって、1つの実施形態では、抗体は、TNFとTNFR2への結合について競合する。
上述のように、免疫抑制に働く制御性T細胞(以下Treg)の増殖と機能にTNFR2を介したシグナルが重要なことが知られている。TNFR2は内在性リガンド(TNFα)の結合により活性化されると、転写因子NFκBを通じ、Tregの増殖と免疫抑制の発現に働くことが知られているので、抗TNFR2抗体の投与により、がん組織に浸潤しているTregを障害して患者の抗腫瘍免疫を促進させることが、新たながん治療法として有望である。
またTreg以外にも、TNFR2はmyeloid-derived suppressor cells (MDSCs)などの異なるタイプの免疫抑制担当細胞にも特異的に高発現しており、重要な増殖シグナルを介在している。抗TNFR2抗体は、これらの細胞の増殖を抑制し、結果的に免疫抑制を解除することで、がん免疫を促進させ、がん治療に有用であると考えられる。
またさらに、多発性骨髄腫、大腸がん、卵巣がんなど多種類のがん細胞に、TNFR2が高いレベルで発現する場合があり、TNFR2下流のNFkBの活性化を通じて、がん細胞の増殖を促進していることがよく知られているので、抗TNFR2抗体で、これらのがん細胞を障害すれば、抗腫瘍効果を示すことが考えられる。
TNFR2を発現するTreg、MDSC,がん細胞などを障害するには、抗体結合により内在性リガンドの結合を阻害し、且つ細胞内シグナルを生じないアンタゴニストとしての機能を示す抗体が有用である。また蓋然性の高い抗体のエフェクター機能として、抗体が抗原と結合したのち、さらにNK細胞などの免疫細胞上のFc受容体と結合することで誘導されるADCC(antibody−dependent cell−mediated cytotoxicity)や ADCP(antibody−dependent cell−mediated cytotoxicity and complement dependent cytotoxicity)などの細胞障害作用が考えられる。または抗原に結合した抗体が、Fc領域を介して補体を結合することで、引き起こされる補体依存性細胞障害作用も期待される。
従って、抗TNFR2アンタゴニスト抗体は、内在性リガンドであるTNFαとの競合により、TregやMDSC,TNFR2陽性のがん細胞などをの増殖や機能を阻害するだけでなく、抗体のエフェクター作用によりこれらの細胞をを傷害して、TNFR2を発現している制御性T細胞やMDSCを障害するがん免疫を促進する治療薬への応用が考えられ、またTNFR2陽性のがん細胞そのものを障害する、抗体医薬への応用も考えられる。
一方、17部分パネルのエピトープグループ1に含まれるTR49とTR100、エピトープグループ2に含まれるTR45、エピトープグループ3に含まれるTR94、TR98、エピトープグループ4に含まれるTR104、TR95,TR96、エピトープグループ5に含まれるTR92抗体については、機能的アンタゴニスト効果は見いだされていない。
自己免疫疾患などの過剰な免疫による疾患ではTregの増殖や機能を増強して免疫を抑制する治療が有望である。Tregの増殖や機能を増強するには、抗体結合により内在性リガンドと同様の細胞内シグナルを誘導するアゴニストな機能を示す抗体が有用である。
例えば、アゴニスト抗体はTNF関連疾患の中でも、自己免疫難病に対する治療効果が期待される。例として、クローン病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、I型糖尿病、ループスエリトマトーデス(SLE)、強直性脊椎炎、慢性リウマチ性関節炎、等の疾患が挙げられる。その他、ある種の神経疾患に対する保護的な作用が期待される疾患(例として、海馬修復、網膜神経保護、等)に利用することができると期待される。
このような抗TNFR2アゴニスト抗体を利用したTregの増殖を、体内のTregを体外に取り出し細胞培養中でおこない、増幅した免疫抑制Treg細胞を、患者体内に戻す自己細胞移入療法に用いることが出来る可能性がある。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、バイオインフォマティクスは、当該分野において公知であり、周知でありまたは慣用される任意のものが使用され得る。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明の理解を容易にするために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma−Aldrich、和光純薬、ナカライテスク、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
(実施例1:抗原Aに対するエピトープ均質化抗体パネルの作製)
1−1:材料および方法
[抗原A]
本実施例において、可溶性タンパク質A(抗原A)に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製した。抗原Aの配列と構造は、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/1IKQ_Aからアクセスすることができる、Accession: 1IKQ_A GI: 17943391の一部である。抗原Aは1IKQ_Aからdomain IとIB domainが欠失したイムノトキシンのための変異体である。詳細には、1IKQ_Aの251-364と381-605をつなげたものであり、配列番号1では1〜114、および115〜339にそれぞれ対応する。この実施例中で以下に示される変異部位の表示はもとのアミノ酸番号で表示される。抗原Aの配列は:

である。
[抗体の取得]
抗原Aに対するモノクローナル抗体作製は抗原Aを免疫したマウスの脾臓B細胞とSP2/0-neoミエローマ細胞を、定法のPEG法で細胞融合させ、抗体産生ハイブリドーマを取得することにより行った(Nagata, S., G. Salvatore, and I. Pastan. 2003. DNA immunization followed by a single boost with cells: a protein-free immunization protocol for production of monoclonal antibodies against the native form of membrane proteins. J. Immunol.Methods 280: 59-72.)。マウスへの抗原Aの免疫は、全てのエピトープグループに対するモノクローナル抗体を広範に取得するため、マウスStrain、アジュバント、免疫スケジュールなどが異なる様々な条件下で行った。またドメイン欠失変異体や、アミノ酸変異体の免疫も用い、異なるエピトープに対する免疫応答を惹起した。モノクローナル抗体の選択には、非固相化条件の溶液中で非変性の抗原Aに結合する抗体を得るために、溶液中非変性抗原キャプチャーELISA法(ICC-ELISA)をスクリーニング法として採用した。一部の抗体作製では、ICC−ELISA法と同様の結果を与える非変性抗原間接固相化ELISA法を用いた。Igのアイソタイプは、mouse mAb isotyping reagents (ISO2; Sigma-Aldrich)を用いて決定し、培養上清中のIgG濃度は、isotype-matched IgG controls (no.90-6551, mouse Ig panel; Zymed Laboratories)を既知濃度に希釈して、標準物質として用い、サンドイッチELISA法で定量した。
[ELISA]
タンパク質のプラスチック表面への受動的吸着は、しばしば、タンパク質のコンフォメーションを変化させ、コンフォメーショナルエピトープの破壊や、隠れているエピトープを露出させる等の抗原性の変化を引き起こす。したがって、本発明者らは、このような潜在的な問題を回避するため、溶液中非変性抗原キャプチャーELISA法(ICC-ELISA)を考案し抗抗原A抗体を取得するためのスクリーニングアッセイに用いた。ICC−ELISAは、溶液中で起こる抗原−抗体反応を検出する。
以下にICC−ELISA法の手順を記載する。マイクロタイタープレート(MaxiSorp; Nalge Nunc)に、CD22-HFc、CD25-RFc、またはCD30-HFcタンパク質を、PBS中100ng/50μl/ウェルの条件で、4℃で一夜インキュベートすることにより、コーティングした。別のチューブ内で、抗原Aに対するモノクローナル抗体を、ブロッキングバッファー(PBS中、25% DMEM、5% FBS、25mM HEPES、0.5% BSAおよび0.1%アジ化ナトリウム)で希釈し、CD22、CD25またはCD30と反応性のFvと融合した抗原Aの2ug/mlと混合し、インキュベートした。このインキュベーションの間に非変性の抗原Aと各モノクローナル抗体の結合が溶液内で進行する。一方、上記のようにあらかじめコーティング済のプレートを0.05% Tween20を含有するPBSで洗浄し、そこにチューブでインキュベートしておいた抗原Aと抗体の混合物を、移した(50μl/ウェル)。プレート上のFc融合タンパク質によって捕捉された抗原―抗体免疫複合体の量を、HRP−コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L; no. 115-035-146; Jackson ImmunoResearch Laboratories)またはHRP−ラット抗マウスmAb(no. 04-6620; Zymed Laboratories)とテトラメチルベンジジン(TMB)基質(Pierce)によって測定した。
図10に示されるように、溶液中非変性抗原キャプチャーELISA法によりスクリーニングされた抗体は、抗体通常の固相化抗原Aを用いたELISA法では、固相化抗原のコンフォーメーション変化により反応が検出できない場合もあった。また中段のパネルに示すように、得られた抗体の親和性は0.1〜10nM KD程度の範囲に広く分布していた(KD平均値(nM)=4.66、KD中央値(nM)=0.87)。このように、本ICC-ELISA法で得られた抗体群は、非変性抗原Aへの反応性を示し、かつ広い親和性範囲での特異的結合を示したので、エピトープ均質化抗体パネルの作製に適していた。
これらの抗抗原A抗体をペア逐次結合アッセイに供した。ペア逐次結合アッセイは下記のELISAのフォーマットで行った。
マイクロタイタープレート(MaxiSorp; Nalge Nunc) に、Goat anti-mouse IgG(Jackson)を4μg/mlPBS溶液を、50μl/ウェルで加え、4℃で一夜インキュベートし、コーティングした。プレートを0.05% Tween20を含有するPBSで洗浄し、各抗抗原Aモノクローナル抗体(第2の抗体)を含むブロッキングバッファーを100μl/ウェルで加え、4℃で一夜インキュベートした。このインキュベーション中に約20ngの各抗体がプレートにあらかじめコートした二次抗体に補足される。一方、別のチューブ内で、各抗抗原Aモノクローナル抗体(第1の抗体)を5μg/ml以上の濃度で、CD22、CD25またはCD30と反応性のFvと融合した抗原Aの10ng/mlと混合し、4℃で一夜、インキュベートした。このインキュベーションの間に非変性の抗原Aと各モノクローナル抗体(第1の抗体)の結合が溶液内で進行する。
翌日、あらかじめ第2の抗体をコートしておいたプレートを洗浄し、そこにチューブでインキュベートしておいた、第1の抗体とCD22、CD25またはCD30と反応性のFvと融合した抗原Aとの混合物を移した(50μl/ウェル)。従ってこれらのウェル中では第1の抗体がすでに結合した抗原抗体複合物に、第2の抗体がさらに反応するかどうかが調べられた。またウェル中に存在する第1の抗体は、第2の抗体の大過剰量であるため、第2の抗体は、第1の抗体の親和性の差に影響されずエピトープの位置情報が結合量に反映された。
30分の室温でのインキュベーションの後、プレートを洗浄した。プレート上の第2の抗体によって補足された第1の抗体と抗原A免疫複合体の量を、抗原Aに融合しているCD22、CD25またはCD30と反応性のFvと、CD22-HFc、CD25-RFc、またはCD30-HFcとの反応量として測定した。Fc融合タンパク質の検出にはHRP−ヤギ抗ヒトIgGまたはHRP−ヤギ抗ラビットIgGとテトラメチルベンジジン基質を用いた。
上記のペア逐次結合アッセイで、indicator抗体(第2の抗体)の、competitor抗体(第1の抗体)と抗原Aを含む抗CD30−T6イムノトキシンとの抗原抗体複合物への結合を検出した。阻害の強度は、パーセンテージとして示される。
[各エピトープ領域の確認のために用いた抗原Aの点変異]
特定のエピトープ領域の位置を抗原Aの構造上に特定するため、本発明者らは、抗原Aについて一連の点変異体を作製し、これらの変異体に対する各抗体の反応性の減弱を調べた。まず点変異体で変異させるアミノ酸残基の候補として、大きく抗原表面に露出している残基(>70Å)を選択した。これらの候補残基は、347の総残基のうち98の残基(28%)であり、113.1±33.3Åの平均露出面積を有し、総表面積の67%をカバーする。エピトープは通常6〜8AAの領域にわたり、400〜900Åを占めることから、それが均質に分布している場合には、抗原Aの表面全体を「カバー」するのに、比較的少数の変異で十分である。
発明者らはこれらの候補残基を含む41の変異体を実際に作製した。41残基は総残基数の12%のみであるが、この変異体パネルは抗原Aの表面面積の28.3%(4,693/16,560Å)をカバーしていた。
これらの変異体の作製に選択された各残基のα炭素の最近接の異なる残基のα炭素までの距離(7.4±3.0Å)は、全ての露出した残基(>70Å)のα炭素間の距離(5.0±1.7Å)とほぼ同等であったので、選択残基に大きな偏りはないと考えられた。またこれらの残基を中心として各抗体のエピトープを想定すると、エピトープの平均サイズから、各エピトープは多くの場合近傍のエピトープと重なり合って存在しており、これらの41の比較的少数の変異体のみで、エピトープ位置の探索が抗原表面網羅的に可能であると考えられた。抗体の抗原Aへの結合に対する側鎖の寄与を評価するため、E553Dを除き、変異を導入した残基は、AまたはGに置き換えられた。
作製された点変異パネルは、以下:P268A、R276G、E282A、E285A、P290A、A300G、R302A、Q310A、R313A、P319G、D324A、E327A、E331A、Q332A、E348A、R352A、Q353A、D403A、R412A、N416A、E420A、R427A、E430A、E431A、R432G、R458A、R467A、Q485A、R490A、R505A、R513A、L516A、R529A、R538A、E548A、R551A、E553D、R576A、K590A、L597A、およびD599Aから構成された(ここで、これらのアミノ酸番号については、251-364と381-605は、それぞれ1〜114、および115〜339に対応する。)。
変異タンパク質は、確立されたプロトコル(Pastan, I., R. Beers, and T. K. Bera. 2004. Recombinant immunotoxins in the treatment of cancer. Methods Mol. Biol. 248: 503-518.)に従って発現させ、95%超の均一性まで精製された。全ての変異体タンパク質は合理的な収率で得ることができ、通常、出発材料の2〜10%であった。
1−2:抗原AについてのN、Eの決定
抗原Aについて、エピトープ均質化抗体パネルのエピトープグループ数の目標値Eと、抗体数の目標値Nを以下のように決定した。
TEおよびTNを以下のように推定した。
<仮想エピトープの作製>
1.抗原Aの構造を用い、各原子のExposed Area (accessible surface area (ASA))をMSMSで計算した(http://mgltools.scripps.edu/packages/MSMS、Michel Sanner, Arthur J. Olson, Jean Claude Spehner (1996). Reduced Surface: an Efficient Way to Compute Molecular Surfaces. Biopolymers, Vol 38, (3), 305-320.Sanner M.F.)。
2.抗原Aの各アミノ酸残基のASAの和をランキングし、80Åsquare以上の面積を有する
アミノ酸残基のα-carbonの位置の座標を取得した。80Åsquare以上の面積を有するアミ
ノ酸残基は、合計で84残基であった。
3.各α-carbonを中心とした半径14Åの球として仮想エピトープ領域を作成し、これにより84個の仮想エピトープ領域が生成された。選んだ84残基のリストと84残基の抗原A表面の分布は、図5に示される。84の仮想エピトープ領域の中心として選ばれた84残基は、図のように抗原Aの表面を網羅的に均質にカバーしており、抗原Aの表面をCoverする網羅性のある均一な仮想エピトープ群ができた。84の仮想エピトープのいずれにも含まれていないExposed Atomはなく、いずれかの仮想エピトープに含まれる原子のASAの和と抗原A Total ASAに対する比は1であった。つまり84個の仮想エピトープ群の抗原A表面カバー率は100%であった。各仮想エピトープの平均分子表面カバー率は、8.4%で、表面のどの場所も、平均7回、いずれかの仮想エピトープに含まれていた。
<仮想競合試験>
4.ある仮想エピトープ(仮想エピトープ1)に含まれるすべての原子の数を数え、Xとした。仮想エピトープ1に含まれる原子のうち、別のある仮想エピトープ(仮想エピトープ2)に含まれる原子の数を数え、その数をYとした。
5.あらかじめ仮想エピトープ2を認識する仮想抗体2を抗原に結合させた場合、仮想エピトープ1を認識する仮想抗体1の抗原への結合が、(仮想抗体2がない場合に比べ)(X−Y)/X%に減弱すると仮定し、すべての仮想エピトープ(計84)を認識する仮想抗体の仮想競合試験(仮想ペア逐次結合試験)を行った。
<仮想クラスタリングと抗原Aに固有のエピトープグループ数の導出>
6.仮想競合試験の結果を、ユークリッド距離を用いたウォード法(Ward's Method)により階層的クラスタリングした。仮想競合試験に基づき1〜84の仮想エピトープ領域をクラスター分析した結果は、樹形図として示される(図6)。
7.さらに、仮想クラスタリングの結果から、各仮想エピトープパネルを各クラスター数(2からその仮想エピトープパネルに含まれる仮想エピトープの総数までの各々の値)で分類した場合の安定度指数を算出した。安定度指数(Epitope Group Stability Index)の分布は、図7に示される。
8.EGSIの、最大値と最大値から2番目に高い数値を取り、それらの数値が得られるときのクラスター数のうち、大きい方のクラスター数をエピトープグループ推定値、TEとした。つまりEGSIの最大値はエピトープグループ数10のときであり、EGSIの最大値から2番目に高い数値を示したときは、エピトープグループ数11だったので、TE=11を採用した。次に、TNはTEの5倍でTN=55とした(各エピトープグループに平均5つの抗体)。
さらに、抗原Aの構造に基づき、以下に示されるような方法を用いて2次構造を予測した。抗原AはMutantであるため、DomainIIとDomainIIIに分けて予測を行った。
2次構造の予測に用いている方法のリスト
タンパク質2次構造予測アルゴリズム
1.GOR II method (Garnier and Robson)
Garnier, J. and Robson, B., ‘The GOR method for predicting secondary structures in proteins’, ‘Prediction of Protein Structure and the Principles ofProtein Conformation', ed. G.D. Fasman, 11 417, 1989.
Garnier, J., Osguthorpe, D.J. and Robson, B., ‘Analysis of the accuracy and implications of simple methods for predicting the secondary structure of globular proteins', J.Mol. Biol., 120 97, 1978.
タンパク質疎水性アルゴリズム
2.Fauchere Fauchere, J.L. & Pliska, V., Eur. J. Med. Chem. (Chim. Ther.), 18, 369, 1983.
3.Janin Janin, J., Nature (London), 277, 491, 1979.
4.Kyte and Doolittle Kyte, J. & Doolittle, R.F., J. Mol. Biol., 157, 105, 1982.
5.Manavalan Manavalan, P. & Ponnuswamy, P.K., Nature (London), 275, 673, 1978
6.Sweet and Eisenberg Sweet, R.M. & Eisenberg, D., J. Mol. Biol., 171, 479, 1983.
タンパク質親水性アルゴリズム
7.Goldman, Engelman and Steitz (GES) Engelman, D.M., Steitz, T.A. & Goldman, A., Ann. Rev. Biophys. Biophys.Chem., 15, 321, 1986.
8.von Heijne von Heijne, G., Eur. J. Biochem., 116, 419, 1981.
タンパク質可撓性予測アルゴリズム
9.Karplus and Schulz Karplus, P.A. & Schulz, G.E., Naturwissenschaften, 72, 212, 1985.
これらの文献に記載される方法を用いて、抗原Aの2次構造を特定した。その後、以下に示される文献に記載されるようなアルゴリズムにおける2つ以上のプログラムによってコンセンサスが得られた箇所を、エピトープ予測領域(Epitope-Predictive region)とした(判定はSampling Windowのサイズによるが、Defaultを用いた)。
以下のアルゴリズムを、潜在的なエピトープを同定するのに用いた。
タンパク質抗原性予測アルゴリズム
1.Hopp and Woods Hopp, T.P. & Woods, K.R., Proc. Natl. Acad. Sci., 78, 3824, 1981.
2.Parker Parker, J.M.R., Guo, D. & Hodges, R.S., Biochemistry, 25, 5425, 1986.
3.Protrusion Index (Thornton) Thornton, J.M, Edwards, M.S., Tayler, W.R. & Barlow, D.J., EMBO J., 5, 409, 1986.
4.Welling Welling, G.W, Wiejer, W.J, Van der Zee, R. & Welling-Webster, S., FEBS Letters., 188, 215, 1985.
抗原Aの予測される2次構造の一例は、図8および図9に示される。2次構造からの予測を考慮したうえで、E=11、N=55と決定した。
1−3:抗体パネルの作製
抗原Aに対する抗体の取得
免疫動物個体より、ハイブリドーマを作製し、標的結合スクリーニングにより高親和性特異抗体を選択した。本実施例では、ある程度の個数の抗体が得られた段階(動物個体数1−6由来の抗体群)でペアアッセイを行い、ダウンサンプリングを行った。その中から適宜抗体を選択し、最終的なオリジナル抗体パネルに含めた。抗原Aに対する抗体の取得では18個体を用い、300以上の抗体から選択した221以上の抗体についていずれかの段階でペアアッセイを行った。
最初に87抗体を取得することができた(図10)。天然抗原(Native Ag)に親和性が高かった39クローンを選択した。選ばれた39Mbの KD平均値(nM) = 4.66 KD中央値(nM) = 0.87 (これらの値は後で確認のためにバイオセンサーで測定した値)。39クローンをペアアッセイした。39クローンの抗体のペアアッセイの結果は、図11に示される。39クローンのみではNに満たないため、さらに、新たに動物の免疫を行って、抗体を取得した。
46個の抗体を含む抗体の集合を得た場合のペアアッセイの結果は、図12に示される。
135抗体を取得した融合(DH#と表示)と22抗体を取得した融合(DNH#と表記)を得て、ペア逐次結合アッセイのデータに基づいて、ダウンサンプリングした。ペア逐次結合アッセイ以外に、図13Aおよび図13Bに示されるような7つの異なるアッセイでの結果を確認的に用いてReference抗体を決め、合計で14抗体をReference抗体に昇格させた。
最終的に、76個の抗体を含むパネルを、オリジナル抗体パネルとして提供した。76抗体のオリジナルパネルに含まれる抗体について行ったペア逐次結合アッセイのプロトコルは、上述のとおりである(原理は図22に示す)。
76個の抗体を含むパネルをクラスタリング分析(ユークリッド距離・Ward法)した結果は、図14Aに示され、安定度指数(EGSI)の分布は図14Bに示される。このオリジナル抗体パネルについてのエピトープグループ数は、15と算出した。
76個の抗体からなるパネルに対して、ダウンサイジングを行い、部分パネルについてクラスタリング(ユークリッド距離・Ward法)を行い、エピトープグループ数を算出した。59抗体を含む部分パネルが生成される場合のダウンサンプリングの例を図15に示す。除外された抗体は、図14Aにおいて丸を付して示されている。
59抗体を含むパネルを選択した。抗原Aに対するエピトープ均質化抗体パネルをクラスタリング分析(ユークリッド距離・Ward法)した結果は、図16に示され、安定度指数(EGSI)の分布は、図17に示される。安定度指数に基づいて、エピトープグループ数を12と算出した。
ここで、抗原Aに対するEおよびNはそれぞれ11および55であり、当該抗体パネルは、条件を充足したため、エピトープ均質化抗体パネルとして、この59抗体を含む抗体パネルを選択した。
1−4:エピトープ均質化抗体パネル
完成したエピトープ均質化抗体パネルが、抗原のエピトープ領域を正確に網羅していることを確認するため、変異体との結合アッセイを行った。
図18の一番左側の一列のパネルにペア逐次結合アッセイによって調べられたエピトープがそれぞれ示されている。例えば、Aを見ると、3つのエピトープ(1a、1b、2b)が存在する。エピトープ1a、1bはそれぞれ数字とアルファベットで記載されているが、エピトープ1に含まれるサブエピトープがアルファベットで記載されているものである。中央の列のパネルは、抗原の変異体(例:E282A等)に対する、野性型抗原Aと比較したときの結合性の違い(低下)の程度を示す。変異体との結合アッセイ結果によって、実際の立体構造上に推定されたエピトープ位置を右側の立体構造に丸囲みで記載する。
競合アッセイに基づく分類では同じグループ1に入るが、他のエピトープ認識の違いで、本発明の抗体パネルのクラスタリングによってはサブグループ(1a、1b)に分かれる。実験データを目視した場合には、このパネルにおいて一見同じグループにしか見えないが、本発明の方法に従ってクラスタリングした場合には、他のエピトープグループとの影響も検出され、サブグループの存在をデータとして観察することができる。
中央のパネルは、抗原の変異体(例:E282A等)を作製した場合の、結合性の違いを示す。注目すべきことに、ペア逐次アッセイに基づいてクラスタリングされた抗体群が、変異体を用いたアッセイでも同じクラスターに入ってくる。E327AとE331Aの変異体に対する結合は、1aに属する抗体では交叉反応性に変化はないが、1bにクラスタリングされた抗体では変化を観察することができる。
すなわち、変異体によるアフィニティー低下によって評価してきたエピトープの探索について、変異体に対しての結合試験の実験結果がなくても(変異体の作製をしなくても)、ペア逐次結合アッセイとクラスタリングによって、エピトープグループの違いを判別することができる。
図19は、抗原Aの表面において、エピトープ均質化抗体パネルによって認識されるエピトープ領域の分布を示す図である。各エピトープ領域は、抗原Aの中でまばらに(均一に)分布しており、球状の抗原の中で偏っていないことが理解される。
エピトープ均質化抗体パネルは、このように一つの抗原に対して、均一に分布する抗体のセットである。各エピトープ領域に結合出来る抗体を複数含んでいるということだけでなく、この複数の抗体も既にダウンサイジングした抗体群であるため、実際にはこれの数倍以上の抗体を情報としては含んでいることがあり得るため、抗体機能の探索および機能エピトープ領域の同定においてこのようなエピトープ均質化抗体パネルは非常に有用である。
例えば、このようなパネルが存在していれば、目的機能と相関するエピトープ領域が同定された場合、そのエピトープ領域に結合する抗体を数十種類一気に入手することが出来る。このような多様性は、実際の抗体の医薬品化には極めて重要であり、親和性の高い抗体や体内安定性、製剤として開発する場合の安定性(例えば、熱や高濃度に強い、等)など様々な要因に対応することが可能となる。
このような均質化パネルを用いなければ、抗体の目的の機能を有する抗体の取得については、数十種類の抗体を、例えば、このような場合では13種類のエピトープで評価せねばならず、また、免疫個体差によって出てきた抗体の偏りも考慮すると、1000種類以上の抗体から探索する必要がある。本実施例において示されるように、エピトープ均質化抗体パネルは、抗体機能の解析における労力を大きく節約することができる。
(実施例2:CD30に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製)
本実施例では、CD30抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製を行った。
2−1:材料および方法
[CD30]
CD30は、分子量65kDaの、TNF受容体スーパーファミリーの一種の細胞表面タンパク質である。ホジキンリンパ腫や未分化大細胞リンパ腫等の細胞に発現し、アドセトリス(Brentuximab vedotin)(商標)のターゲット分子とされている等、抗体医薬の標的として注目されている。
[モノクローナル抗体]
本実施例においては、CD30に対するモノクローナル抗体を上記実施例と同様に、細胞融合によって産生し、抗体の集合として用いた。モノクローナル抗体の産生の手順の模式図が図20に示される。また、いくつかの機能既知の抗体を含めて抗体パネルの作製を行った。例えば、HeFi−I(Frederick Cancer Research and Development Center,National Cancer Institute)(Hecht et al., 1985)、Ber−H2(DAKO, Glostrup, Denmark) (Schwarting et al., 1989)、HRS4 (Biodesign Int., Kennbunk, ME)、Ki4 (supplied by Dr. Hilmer Lemke, Christian-Albrechts University, Kiel, Germany) (Horn-Lohrenset al., 1995)およびM67(supplied by Dr. Colin S. Duckett, Department of Pathology, University of Michigan) (Gruss et al., 1994)である。
抗体パネルのうちいくつかの抗体のトポグラフィカルエピトープは、以前に競合分析によって調査されている(Horn-Lohrens et al., 1995; Nagata et al.,2002)。競合分析においては、細胞表面上のCD30に対する、標識抗体(放射性標識またはビオチン標識)の結合を、種々の非標識モノクローナル抗体の添加によって競合させた。イムノブロットにおけるモノクローナル抗体の反応性およびCD30−CD30リガンド結合に対する影響も調査されている(Franke et al., 2000; Nagata et al., 2002)。
[ELISA]
抗CD30モノクローナル抗体のすべてのペア(実施例1の第1の抗体と第2の抗体に相当する)について相互競合を調査した。マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nalge Nunc, Rochester, NY)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中200ng/50μl/ウェルのヤギ抗マウスIgG(Fcg fragment specific, 115-005-071, Jackson ImmunoResearch, Grove, PA)を用いて、室温で2時間にわたってコーティングした。
0.05% Tween20を含有するPBS(PBS-Tween)で一度洗浄した後、ブロッキングバッファー中で1:10に希釈した100μlの第2の抗体(indicator Mab;ハイブリドーマの培養上清)(25% Iscove’s modified Dulbecco’s medium, 5% fetal bovine serum (FBS), 25 mMHepes, 0.5% bovine serum albumin, 0.1% sodium azide in PBS)を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。この第2の抗体の典型的な濃度は、4μg/ml(0.3〜7.5μg/ml)であった。その他の手順は、実施例1と同様であった。
2−2:CD30についてのN、Eの決定
CD30は二つのTNFRドメインを持つが(広義に定義されるTNFRドメイン)、各TNFRドメインはそれぞれ3つずつの、システインリッチドメイン(CRD)と呼ばれる単位から構成される。さらに各CRDには、ジスルフィド結合ペアを持つモジュール構造が2つある場合が、典型的である。エピトープ領域の広さから考えると、エピトープグループが形成されている高次構造はこの各モジュールに相当するが、通常のドメイン検索法では、このモジュール構造が高次構造上に保存されているか、不明である。そこでシークエンスのホモロジー解析によって、システインペアの保存を解析し、モジュール構造の推定を行った(図21A)。なお、図の左にはCD30の19−170と、226−337の配列をクエリとして用いて生成した3次元ホモロジーモデルを示す((TNFR2結晶構造を、両方のクエリ配列についてテンプレートとして用いた(それぞれ配列同一性31%および28%)(SWISS MODEL))。3次元モデリングはCRDドメインの構造については良好な結果を与え、モジュール構造の推定によりエピトープ領域を推定するストラテジーは妥当であると考えられた。その結果CD30の6つあるCRDのうち、N末から4番目のCRDと6番目のCRDは不完全であり、高い可能性で、構造モジュールが形成されていないことがわかった(保存されているシステイン残基を含まない)。解析の結果、最終的にCD30に予測されるモジュール構造は9つであった。またCD30の他の領域は、他の報告されているタンパク分子の構造とホモロジーはなく、はっきりとしたエピトープと推定される領域がなかった。構造が予測されない領域は大きく2つに分かれ、各々92アミノ酸残基と、77アミノ酸残基のスパンで構成されている。
構造の無い部分のエピトープを規定する領域の推定としては、Contact Residues Span(CRS)(Stave, J.W. & Lindpaintner, K. Antibody and antigen contact residues define epitope and paratope size and structure. J Immunol 191, 1428-35 (2013))(またはEpitope Spanning Region)に基づいた。これらの2つの構造未特定の領域については、公共のデータベースに報告されている約110の抗原抗体複合体の解析により、抗原を規定する平均のアミノ酸残基についてスパンが約100残基であることが報告されていることを根拠に、各々1つのエピトープグループを想定した。したがってまず、9+2=11のエピトープグループの存在が予測されるが、CD30に特異的な情報として、N末から2番目のCRDと、5番目のCRDは完全にシークエンスが同一なので、この部分に関しては、エピトープの重複を考慮し、最終的には9つのエピトープ領域を推定し、E=9とした。
これらのN末からC末の9つのエピトープグループにEp1-Ep9と名付けた場合、各々のエピトープグループに含まれる抗体数をEp1: 3抗体、Ep2: 3抗体、Ep3: 5抗体、Ep4: 5抗体、Ep5: 3抗体、Ep6: 3抗体、Ep7: 3抗体、Ep8: 3抗体、Ep9: 3抗体と予測し、計N=31抗体を目標値とした。
この理由として、Epごとに3つ以上ずつの取得を、エピトープグルーピングの結果をロバスト(Robust)にするため安全な値として設定した。またEp3とEp4に関してはTNFRドメインの中心に位置し、しかもTNFRが一部重複していることで、より複雑なリガンド結合のモードが予想されるので、通常より高い解像度の解析が可能なように抗体数5を設定した。近接するエピトープに結合する抗体でも、より詳細な構造のModificationが機能に関係している可能性があるため、エピトープグループ内を詳細に探索することを可能にするものである。
CD30の構造予測は、Swiss modelingサーバーを用いることができる(Bordoli, L., Kiefer, F., Arnold, K., Benkert, P., Battey, J. and Schwede, T. (2009). Protein structure homology modelling using SWISS-MODEL Workspace. Nature Protocols, 4,1.)。シークエンスをモデリングサーバーに投稿して、図21のようなモデルを得た。
CD30のモチーフSearchには以下のようなデータベースを使用した。
配列については、Refseqs(CD30についてNM_001243.2、P28908.1)TNFRおよびCRDドメインは、CCDおよびPfam&SMARTデータベースにそれぞれ従って規定した。シグナル配列およびトランスメンブレン領域は、SignalPおよびTMHMMによって規定した。CRDサブタイプは、構造ベースの分類(Trends Biochem Sci. 2012 Sep;37(9):353-63, An improved understanding of TNFL/TNFR interactions using structure-based classifications)に従って分類した。
2−3:抗体パネルの作製
実施例1と同様に、CD30に対するモノクローナル抗体の集合を提供し、ペア逐次結合アッセイを行った(図22)。
オリジナル抗体パネルに対して、ダウンサンプリングを行い、生成された部分パネルについてペア逐次結合アッセイの結果に基づき、クラスタリングを行った。
33抗体を含む部分パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果のデータは、図23に示される。
これを、ユークリッド距離を用いたウォード法でクラスタリングした結果を、図24Aに示す。図24Aの下部には、クラスタリングの結果に基づく安定度指数の計算結果が示される。安定度指数(EGSIおよびSI)の値の分布から、この部分パネルのエピトープグループ数を10と算出した(図24B)。E=9の目標値に鑑み、この部分パネルはエピトープ均質化抗体パネルということができる。この部分パネルのクラスタリング結果を、ペア逐次結合アッセイの結果と併せて図25に示した。
さらに、抗体パネルの有用性をより高めるため、ダウンサンプリングにより、抗体数を18まで減少させたパネルを生成した。同様のクラスタリングを行った結果、エピトープグループ数が9と算出された。この抗体パネルは図26に示される。
この部分パネルについても、E以上のエピトープ数を有しておりエピトープ均質化抗体パネルということができる。
2−4:エピトープ均質化抗体パネル
作製したエピトープ均質化抗体パネルが、抗原上のエピトープを実際に網羅しているかを確認するため、Deletion mutantによるエピトープマッピングを行い、各エピトープグループが認識するドメインを見出した。本発明の方法に従って作製した均質化抗体パネルのエピトープグループはDeletion mutantによるエピトープマッピングの結果とよく整合した(図27)。従って作製したエピトープ均質化抗体パネルは、予想通りCD30を網羅するエピトープ領域群を認識した。
さらに、Domain shufflingによるエピトープマッピングを行った。エピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体は全て細胞膜上に発現するCD30の立体構造を正確に認識していることが確認された(図28)。
抗CD30抗体によるシグナル伝達に及ぼす影響を、エピトープ均質化抗体パネルを用いて調査した。CD30cDNAの全長をRamos-BlueTMレポーター細胞(InVivogen)に安定的にトランスフェクトし、発現細胞を得た。このCD30/Ramos Blue細胞にエピトープ均質化抗体パネルを構成する各抗CD30抗体を種々の濃度で反応させ、CO2インキュベーターで1夜培養後、CD30下流のNFκβの活性化をSEAP(SEAP:Secreted embryonic alkaline phosphatase)の細胞培養液中への分泌として測定した。ホスファターゼ活性はp-ニトロフェニルリン酸(PNPP)を基質として用い、酵素活性による発色をプレート吸光度系で410nmの吸光度として検出した。その結果、CD30に対するエピトープ均質化抗体パネルから、CD30の内在性リガンドを凌駕する高いアゴニスト活性を示す抗体を複数見出した(図29)。
さらに、エピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗CD30抗体のCD30刺激による細胞増殖への影響を調査した。CD30陰性のRamos細胞とCD30陽性のホジキンリンパ腫由来L540細胞株を用いた実験で、CD30陽性L540細胞特異的に細胞増殖を阻害する抗体が見出された(図30)。一部の抗体の細胞増殖抑制効果(アゴニスト効果)は、CD30の内在性リガンドであるCD30LのラビットFc融合タンパク質(CD30L-rFc)よりも強力であった。さらにそのような機能を有する抗体は、エピトープ均質化抗体パネルにおいて同一のエピトープグループに属しているものであり、エピトープ領域との関連性が認められた。既存のアゴニスト抗体よりもよりも優れたアゴニスト抗体を同定することができた。本発明のエピトープ均質化抗体パネルにおけるエピトープグループに基づいて、機能性抗体を探索することができることが示される。
抗CD30抗体の競合的アンタゴニスト活性を評価した(図31)。これは、CD30を固相化し、予め希釈した各抗体を添加後、CD30L-rabbit Fcを混合させ、30分間反応させたのち、CD30に結合したCD30Lの量をanti-rabbit Fc抗体にて検出することによって行った。
これにより、CD30Lと競合的に結合するアンタゴニスト候補抗体を同定することができた。
さらに、CD30L存在下における抗CD30抗体の機能評価を行った(図32)。CD30リガンドの存在下で、CD30を発現しているCD30/RamosBlueを各抗体により刺激し、NFκβ下流のSEAPへのシグナルの伝達を、ALP活性を測定することによって観察した。CD30に結合し、内在性リガンドによる細胞内シグナル誘導を抑制する機能的アンタゴニスト抗体を同定した。
(実施例3:FCRL5に対するエピトープ均質化抗体パネル)
本実施例では、FCRL5に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製した。
3−1:材料および方法
[FCRL5]
FcRL5(Fcレセプター様タンパク質5)は、CD307e、FCRH5、IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリーレセプタートランスロケーション関連タンパク質2)とも称されるタンパク質である。FcRL5の模式的な構造は、図36に示される。FcRL5遺伝子は、Fcレセプターのファミリーと相同な細胞表面レセプターをコードする。B細胞系列の細胞において、その発現が限られていることから、このタンパク質は、B細胞悪性腫瘍の免疫療法の新たな標的として研究されている。本実施例では、その遺伝子産物の発現についての研究に使用することができる、FCRL5遺伝子産物に特異的な抗体を含むエピトープ均質化抗体パネルを作製した。
実験の手順は、上記実施例と同様に行った。
3−2:FCRL5についてのE、Nの決定
図36に示されるように、FCRL5はイムノグロビンドメインを9つ有するため、目標値のエピトープグループ数は9と定められた。4-9番目のドメインがファミリーメンバーに似ていることから、FCRL5に厳密に特異的な抗体を選択できるように、これらのドメインに対応するエピトープグループには、各々4つの少し多めの抗体とし、他は各々2抗体を目標値とし、N=4x6+2x3=30とした。
3−3:抗体パネルの作製
上記実施例と同様に抗体の取得を行い、最初の免疫動物からNの値を充足するだけの抗体を取得することができた。得られた抗体の集合を、オリジナル抗体パネルとして、ペア逐次結合アッセイを行った。ペア逐次アッセイの結果に基づき、クラスタリングを行った。
オリジナル抗体パネルは、32抗体を含む抗体パネルであった。オリジナル抗体パネルについてのペア逐次結合アッセイの結果は、図33に示されるとおりであった。ペア逐次結合アッセイの結果に基づく安定度指数の分布およびクラスタリングの結果は、図34に示される。このオリジナル抗体パネルのエピトープグループ数は10であった。このオリジナル抗体パネルは、エピトープグループ数の条件を充足するため、エピトープ均質化抗体パネルであるということができるが、さらに有用性の高い抗体パネルを作製するため、以下のとおりダウンサンプリングを行った。
オリジナル抗体パネルからダウンサンプリングを行い、部分パネルを生成した。部分パネルについて、ペア逐次結合アッセイの結果に基づき、クラスタリングを行った。
抗体数が29の部分パネルのペア逐次結合アッセイの結果を図35Aに示す。さらに、ペア逐次結合アッセイの結果の縦軸と横軸を入れ替えたデータを、図35Bに示す。これらを結合することにより、パネルに含まれる抗体に対応する、抗体数の2倍の要素を有するベクトルデータを得る(図35C)。このデータをクラスター分析の入力として用いて、ユークリッド距離のウォード法でクラスタリングを行った。クラスタリングの結果を示す樹形図を図37Aとして記載し、安定度指数の計算を図37Bとして示す。
得られた29抗体の結合阻害データをクラスタリングしたものを、図38および39に示す。29抗体で9エピトープグループになる。9エピトープグループのうち1つの抗体のみ含むエピトープグループは、約11%(1/9)であり、ほとんどのエピトープグループには複数の抗体が含まれている。目標値を充足し、この部分パネルはエピトープ均質化抗体パネルであった。
FCRL5についても、エピトープ均質化抗体パネルを得ることができた。
3−4:エピトープ均質化抗体パネル
FcRL5に対するエピトープ均質化抗体パネルに含まれる抗体群の各ドメインの欠失変異体に対する反応性と、FCRLファミリーメンバーに対する交差反応性とを図40Aおよび図40Bに示す。
このようにエピトープ均質化パネルを用いることで、各FCRL5ドメインに対して特異的で、他のFCRLファミリーに交差反応性を示さない抗体が取得出来た。これらの抗体のうち異なるエピトープに対する5種類の抗FCRL5抗体を用い、2種類のAltenative Splicing producsである、7−9または9番目のIgドメインを持たない可溶性FCRL5の血清中の濃度を、独立に測定可能な異なるサンドイッチ測定法2つと、それらの測定系に影響を与えずFCRL5をアフィニティ吸収するための抗体を、同時に得ることができた(図40C)。
この応用には、抗FCRL5の異なるエピトープグループに対する5種類の抗体が一度に必要であり、かつ各抗体が相互に競合せず、かつファミリーメンバーと交差反応を示さず、かつ限られたドメインとの反応性が必要なことから、通常は非常に困難な目標であったにもかかわらず、抗FCRL5エピトープ均質化パネルを用いることで、比較的容易に達成された。
(実施例4:TNFR2に対するエピトープ均質化抗体パネル)
4−1:材料および方法
[TNFR2]
TNFR2は、TNFRSFの一種であり、TNFαをリガンドとする受容体である(Croft M1, Benedict CA, Ware CF. Clinical targeting of the TNF and TNFR superfamilies. Nat Rev Drug Discov. 12(2), 147−68. (2013).;Grell M, Douni E, Wajant H, Lohden M, Clauss M, Maxeiner B, et al. The transmembrane form of tumor necrosis factor is the prime activating ligand of the 80 kDa tumor necrosis factor receptor. Cell. 83(5), 793-802. (1995).)。TNFαは、二つの受容体であるTNFR1とTNFR2に結合し、生体における様々な生理機能に重要な役割を示す事が知られている。そのうち、デスドメインを細胞内領域に持つTNFR1は、古くからその生理機能が調べられており、炎症の惹起に重要な役割を持つことが知られている(Pimentel−Muinos, F. X. & Seed, B. Regulated commitment of TNF receptor signaling: a molecular switch for death or activation. Immunity 11, 783-793. (1999).)。一方で、TNFR2の機能については、その詳細な機能が明らかにされておらず、どのような機能を持つのか、その役割の解明に関する研究が精力的に行われている。TNFR2の発現は、血管内皮細胞やリンパ球を含むT細胞集団などに限定されており(Ware, C. F. et al. Tumor necrosis factor (TNF) receptor expression in T lymphocytes. Differential regulation of the type I TNF receptor during activation of resting and effector T cells. J. Immunol. 147, 4229-4238 (1991).)、TNFR2の活性化に依存したT細胞の増殖
や細胞生存の亢進が報告されている(Kim EY, Priatel JJ, Teh SJ, Teh HS. TNF receptor type 2 (p75) functions as a costimulator for antigendriven T cell responses in vivo. Journal of immunology. 176(2), 1026-35. (2006).)。これらのことからTNFR2は、炎症の制御や生体防御機構に大きな役割を持つことが予測されているものの、その詳細な機能の解明が、病態の発症や悪化、さらにはTNFR2を治療薬の標的としての利用することに繋がると期待されている。
また、TNFR2の機能解明には、TNFR2を認識する抗体の作製が重要となり、とりわけTNFR2の機能を制御する機能抗体が重要な実験ツールになり得る。しかし前述の通り、機能抗体の作製に向けて、抗体の働きとTNFR2のエピトープの関連性を調べることは重要であることが認識されているものの、それら研究は進んでいないのが現状である。以上の観点から、より有効な抗TNFR2機能抗体の作製に向け、抗TNFR2抗体の機能とエピトープの相関性を解析した。
TNFR2は4つのシステインリッチドメイン(CRD)を持っており、細胞膜から遠位の細胞外ドメインからCRD1、2、3、4とよばれている(Croft M1, Benedict CA, Ware CF. Clinical targeting of the TNF and TNFR superfamilies. Nat Rev Drug Discov. 12(2), 147−68. (2013).;Mukai Y, Nakamura T, Yoshikawa M, Yoshioka Y, Tsunoda S, Nakagawa S, Yamagata Y, Tsutsumi Y. Solution of the structure of the TNF−TNFR2 complex. Sci Signal. 3(148), ra83. (2010).)(以降、ドメイン1、2、3、4とする)。TNFR2のリガンドTNFαは、ドメイン2とドメイン3に結合することで活性化される(Grell M, Douni E, Wajant H, Lohden M, Clauss M, Maxeiner B, Georgopoulos S, Lesslauer W, Kollias G, Pfizenmaier K, Scheurich P. The transmembrane form of tumor necrosis factor is the prime activating ligand of the 80 kDa tumor necrosis factor receptor. Cell. 83(5), 793−802. (1995).)。活性化によって、NFκB(p50/RelA)を細胞質に留めているIBの分解が誘導され、NFκB(p50/RelA)が核内移行する古典的経路と、NFκB(p100/RelB)のp100がリン酸化を受けることでプロセシングが誘導され、NFκB(p52/RelB)となり核内移行する非古典的経路が活性化されることが知られている(Naude PJ, den Boer JA, Luiten PG, Eisel UL.Tumor necrosis factor receptor cross−talk. FEBS J.278(6), 888−98. (2011).)。一方、抗TNFR2抗体シリーズはTNFR2全長を免疫しているため、リガンド結合部位以外にも結合する可能性があり、どのエピトープを認識する抗体がどのような機能を持つかは不明であった。
(抗体の精製)
各抗TNFR2抗体産生ハイブリドーマは、5%ウシ胎児血清(gibco)(以下FBS)および1%ペニシリンーストレプトマイシン混合溶液(ナカライテスク)(以下PS)および1%L-グルタミン(ナカライテスク)(以下L−gln)およびインターロイキン6(以下IL6)含有イスコブ変法ダルベッコ培地(ナカライテスク)(以下IMDM)で37℃,5%CO条件下で継代培養した。培養上清を5,500rpmで10分間遠心し、上清を回収し、終濃度0.1%アジ化ナトリウムを加えた。50,000MWCO PESメンブレン(Sartorius)を取り付けたVivacell250(Sartorius)を用いて、150rpm、4℃、0.32MPaで培養上清の限外濾過を行った。限外濾過を行った溶液にprotein G Sepharose(GE Healthcare)(以下Protein G ビーズ)を4ml加え、ローテーターを用いて、4℃で一晩攪拌した。500Gで1分間遠心し、沈殿したProtein Gビーズを回収した。Protein G ビーズをPBSで洗浄する作業を3回繰り返した。glysine−HCl(pH2.7)をProtein G ビーズに1.5ml加え、攪拌し、スピンカラムに移した。1M Tris−HCl(pH8.0)(ニッポンジーン)を375μl加えたチュープにスピンカラムをセットし、500Gで1分間遠心した。回収した溶液は、MWCO12−14,000の透析膜(Spectrum Labs)およびPBSを用いて4℃で一晩透析を行った。
(逐次結合アッセイ)
goat anti−mouse IgG(Jackson)をPBSで2μg/mlに希釈し、96穴イムノプレートに50μl/well添加し、5時間室温で静置して固相化した。PBSTで1回洗浄後、BBBで2μg/mlに希釈した各抗TNFR2抗体または抗CD20抗体の1F5を50 μl/well添加し、一晩4℃で静置してindirectで固相化した。PBSTで2回洗浄後、終濃度10ng/mlとなるようにBBBで希釈したhTNFR2−rFcと、終濃度5μg/mlになるようにBBBで希釈した各抗TNFR2抗体を混和した溶液を50μl/well添加し、1時間室温で反応させた。PBSTで2回洗浄後、BBBTで4000倍に希釈したALP−conjugated goat anti−rabbit IgG(Jackson)を50μl/well添加して、室温で1時間反応させた。PBSTで4回洗浄後、ALP bufferで希釈した1mg/mlのPNPPを100μl/well加えて発色を行い、測定波長405nmで吸光度を測定した。
(スワップミュータントを用いたフローサイトメトリー(FCM)による抗TNFR2抗体の結合ドメインの決定)
使用したプラスミドは、pcDNA6/myc−His AにCD30のドメイン1をTNFR2のドメイン1に置換したタンパク質のDNAを組み込んだTNFR2 DS1, pcDNA6/myc−His AのCD30のドメイン2をTNFR2のドメイン2に置換したタンパク質のDNAを組み込んだTNFR2 DS2, pcDNA6/myc−His AのCD30のドメイン3をTNFR2のドメイン3に置換したタンパク質のDNAを組み込んだTNFR2 DS3である。10%FBSおよび1%PSを含むダルベッコ改変イーグル培地(以下DMEM)を用いて、37℃,5%CO条件下で293T細胞を継代培養した。293T細胞を5×10cells/mlに調整し、6穴平底プレート(Costar)に2ml/well添加し、37℃,5%CO条件下で一晩培養した。LipofectamineTM(R)3000Reagent(Thermo Fisher)の手法に従って、TNFR2 DS1, TNFR2 DS2, TNFR2 DS3を293Tへトランスフェクションし、一晩37℃,5%CO条件下で培養した。0.05% EDTAを含む0.53mMトリプシンで処理した293TをFACS buffer(0.1% アジ化ナトリウム、2.5% FBS、25% DMEMを含むPBS溶液)を用いて8×10cells/mlに調整し、96穴V底プレート(Violamo)に25μl/well添加した。さらに、2μg/mlに調整した各TNFR2抗体または抗CD30抗体を25μl/well添加し、氷上で30分静置した。1200rpmで5分間遠心した後、上清を除去した。FACS bufferで1回洗浄後、200倍希釈したGoat anti−mouse−PE(Jackson)25μl/well添加し、氷上、暗所で30分静置した。1200rpmで5分間遠心した後、上清を除去した。FACS bufferで1回洗浄後、200μl/wellで懸濁を行い、FCMによって解析を行った。
(ELISAを用いた抗TNFR2抗体の結合ドメインの決定)
使用したプラスミドは、human TNFR2のドメイン1とドメイン2にrabbit Fcが結合したタンパク質のDNAを組み込んだpcDNA3.1 hygro(以下TNFR2 ED 1−2−rFc)、または、human TNFR2のドメイン2とドメイン3にrFcが結合したタンパク質のDNAを組み込んだpcDNA3.1 hygro(以下TNFR2 ED 2−3−rFc)または、human TNFR2のドメイン3とドメイン4にrFcが結合したタンパク質のDNAを組み込んだpcDNA3.1 hygro(以下TNFR2 ED 3−4−rFc)である。10% FBSおよび1%PSを含むDMEMを用いて、37℃,5%CO条件下で293T細胞を継代培養した。293T細胞を5×10cells/mlに調整し、6穴平底プレートに2ml/well添加し、37℃,5%CO条件下で一晩培養した。LipofectamineTM(R)3000 Reagentの手法に従って、TNFR2ED 1−2−rFc, TNFR2ED 2−3−rFc, TNFR2ED 3−4−rFcを293Tへトランスフェクションし、一晩37℃,5%CO条件下で培養した。goat anti−rabbit IgGをPBSで希釈し、96穴イムノプレートに50μl/well添加し、4℃で一晩静置して固相化した。PBSTで1回洗浄後、TNFR2 ED 1−2−rFc, TNFR2 ED 2−3−rFc, TNFR2 ED 3−4−rFcをトランスフェクションした細胞それぞれの培養上清を50μl/well添加し、一晩4℃で静置してindirectで固相化した。PBSTで1回洗浄後、BBBで希釈した1μg/mlの各TNFR2抗体または1F5、TNFR2を免疫した際の血清を50μl/well添加し、室温で1時間反応させた。PBSTで2回洗浄後、BBBTで4000倍に希釈したALP−conjugated goat anti−rabbit IgGを50μl/well添加して、室温で1時間反応させた。PBSTで4回洗浄後、ALP bufferで希釈した1mg/mlのPNPPを100μl/well加えて発色を行い、測定波長405nmで吸光度を測定した。
(アゴニスト活性の測定)
10%FBSおよび1%PSを含むIMDMで継代培養したRamos Blue(InvivoGen)またはhuman TNFR2を発現するプラスミドをトランスフェクションし、細胞膜上にTNFR2が発現しているRamos Blue(以下Ramos Blue/TNFR2)をそれぞれ2,67×10cells/mlに調整し、96穴平底プレート(NUNC)に75μl/well添加した。さらに、12μg/mlから10倍段階希釈した各抗TNFR2抗体またはTNFRSF8抗体またはTNFRSF5抗体または400ng/mlから5倍段階希釈したhuman TNFα(peprotech)を25μl/well添加し、37℃、5%CO条件下で22時間培養を行った。培養上清20μlにALP bufferで希釈した1mg/mlのPNPPを100μl/well加えて発色を行い、測定波長405nmで吸光度を測定した。
4−2:TNFR2についてのN、Eの決定
Tumor necrosis factor receptor 2(TNFR2)(UniProt: P20333、RefSeq (protein) NP_001057)はアミノ酸461残基からなる、TypeI膜タンパク質であり、エピトープの存在する細胞外ドメインは23-257アミノ酸の領域に相当する。
TNFR2のエピトープ均質化抗体パネルのエピトープグループ数の目標値Eと、抗体数の目標値Nを以下のように決定した。
TNFR2の細部外ドメインの構造情報を用いTEおよびTNを以下のように推定した。
<仮想エピトープの作製>
1.TNFR2の高次構造情報(http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=3ALQ, R chain)を用い、各原子のExposed Area (accessible surface area (ASA))をMSMSで計算した(http://mgltools.scripps.edu/packages/MSMS、Michel Sanner, Arthur J. Olson, Jean Claude Spehner (1996). Reduced Surface: an Efficient Way to Compute Molecular Surfaces. Biopolymers, Vol 38, (3), 305-320.Sanner M.F.)。
2.TNFR2構造の各アミノ酸残基のASAの和をランキングし、80Åsquare以上の面積を有するアミノ酸残基のα-carbonの位置の座標を取得した。80Åsquare以上の面積を有するアミノ酸残基は、合計で62残基であった。
3.各α-carbonを中心とした半径14Åの球として仮想エピトープ領域を作成し、これにより62個の仮想エピトープ領域が生成された。選んだ62残基とその分布は図41に示される。
4.62の仮想エピトープ領域の中心として選ばれた62残基は、図41に示されるようにTNFR2抗原の表面を均質にカバーしており、TNFR2分子の表面全体をカバーする網羅性のある均一な仮想エピトープ群ができた。62の仮想エピトープのいずれにも含まれていない Exposed Atomはなく、いずれかの仮想エピトープに含まれる原子のASAの和とTNFR2分子のTotal ASAに対する比は1であった。つまり62個の仮想エピトープ群の、TNFR28表面カバー率は100%であった。各仮想エピトープの平均分子表面カバー率は、9.2%で、表面のどの場所も、平均5.7回、いずれかの仮想エピトープに含まれていた。
<仮想競合試験>
5.ある仮想エピトープ(仮想エピトープ1)に含まれるすべての原子の数を数え、Xとした。仮想エピトープ1に含まれる原子のうち、別のある仮想エピトープ(仮想エピトープ2)に含まれる原子の数を数え、その数をYとした。
6.あらかじめ仮想エピトープ2を認識する仮想抗体2を抗原に結合させた場合、仮想エピトープ1を認識する仮想抗体1の抗原への結合が、(仮想抗体2がない場合に比べ)(X−Y)/X%に減弱すると仮定し、すべての仮想エピトープ(計62)を認識する仮想抗体の仮想競合試験(仮想ペア逐次結合試験)を行った。
<仮想クラスタリングとTNFR2に固有のエピトープグループ数の導出>
7.仮想競合試験の結果を、ユークリッド距離を用いたウォード法(Ward's Method)により階層的クラスタリングした。仮想競合試験に基づき1〜62の仮想エピトープ領域をクラスター分析した結果は、樹形図として示される(図42)。
8.さらに、仮想クラスタリングの結果から、各仮想エピトープパネルを各クラスター数(2からその仮想エピトープパネルに含まれる仮想エピトープの総数までの各々の値)で分類した場合の安定度指数を算出した。安定度指数(Epitope Group Stability Index)の分布は、図43に示される。
9.EGSIの、最大値と最大値から2番目に高い数値を取り、それらの数値が得られるときのクラスター数のうち、大きい方のクラスター数をエピトープグループ推定値、TEとした。つまりEGSIの最大値はエピトープグループ数5のときであり、EGSIの最大値から2番目に高い数値を示したときは、エピトープグループ数6だったので、TE=6を採用した。
10.次に、TNはTEの3倍でTN=18とした(各エピトープグループに平均3つの抗体)。
次に、TNFR2タンパク質のホモロジー解析から得られる予測ドメイン構造にもとづいてTEを推定した。
TNFR2はアミノ酸461残基からなる、TypeI膜タンパク質であり、エピトープの存在する細胞外ドメインは23-257アミノ酸の領域に相当する。TNFR2は細胞外領域にTNFRドメインを持ち、そのTNFRドメインは4つの、システインリッチドメイン(CRD)から構成される。さらに各CRDには、ジスルフィド結合ペアを持つモジュール構造が2つある。エピトープ領域の広さから考えると、エピトープグループが形成されている高次構造はこの各モジュールに相当するので、計4x2=8のエピトープグループが予測された。またドメイン構造の予測されない領域は19−39と、202−257に離れて分けられ、これらは、Contact Residues Span(CRS)の平均値にはおよばないものの、十分にエピトープグループを構成し得る長さであることから、各々1つのエピトープグループを想定した。したがって、計8+2=10のエピトープグループの存在が予測された。したがって構造ドメインからの予測値として、TNFR2のTE=10と、TN=30(各エピトープグループに平均3つの抗体)を採用した。
以上の構造による解析と、ドメインからの予測値に基づき、TNFR2のエピトープグループ数と抗体数の目標値としてE=9、N=25と決定した。
4−3:抗体パネルの作製
上記手順にしたがって、TNFR2に対する抗体を取得し、抗体パネルを作製した。26抗体が取得でき、抗体数がN以上であるため、上記の手順に従い逐次結合アッセイを行い、抗体パネルについてクラスタリングを行った。
逐次結合アッセイに基づく結合変化データを図44に示した。また、クラスタリングを行った結果の樹形図は図45に示される。図46に示されるように、26抗体の抗体パネルについてEGSIを計算し、エピトープグループ数を4と判定した。
この26抗体の抗体パネルをオリジナルパネルとして使用し、ダウンサイジングを行い、21抗体、20抗体、17抗体の部分パネルを生成した。
抗体の除外は、図47に示されるようなクラスター分析結果に基づき、図48に示す通り以下の基準で行った。
Step1(26→21MAbs)
密度依存的ノーマリゼーション(近傍のエピトープを認識する抗体と、樹形図の高さの1%以下の低い位置でクラスターを形成するものを除く)、同一のクラスターに属する抗体を1つ、ランダムに残す(エピトープを減らさない)
Step2(21→20MAbs)
密度依存的ノーマリゼーション(近傍のエピトープを認識する抗体と、樹形図の高さの2%以下の低い位置でクラスターを形成するものを除く)、同一のクラスターに属する抗体を2つ、ランダムに残す(エピトープを減らさない。かつエピトープに特徴的なアッセイパターンを示す2つ(複数)の抗体を残すことで、クラスタリングの解析で当該エピトープが除外される危険性を減らす)
Step3(20→17MAbs)
Reference抗体を選別するため抗体1つのエピトープを許容する。ELISAアッセイでの非特異的吸着が比較的高い25%のMabを除く。もっとも類似の抗体またはクラスターと結合する樹形図のノードの高さが2%以上になる場合、その抗体は除外しない(その抗体に代表されるユニークなエピトープグループを残す)、同一のクラスターに属する抗体を1つ、ランダムに残す(エピトープを減らさない)
それぞれの部分パネルについてクラスタリングを行い、EGSIに基づいてエピトープグループ数を算出した。
21抗体の部分パネルのマトリックスは図49に、クラスタリングの樹形図は図50に、EGSIのプロットは図51にそれぞれ示される。この部分パネルのエピトープグループ数は6と算出された。
20抗体の部分パネルのマトリックスは図52に、クラスタリングの樹形図は図53に、EGSIのプロットは図54にそれぞれ示される。この部分パネルのエピトープグループ数は6と算出された。
17抗体の部分パネルのマトリックスは図55に、クラスタリングの樹形図は図56に、EGSIのプロットは図57にそれぞれ示される。この部分パネルのエピトープグループ数は7と算出された。
したがって、この26抗体を用いたオリジナル抗体パネルおよびその部分パネルは、均質化抗体パネルの要件を満たさず、均質化抗体パネルの完成には至っていないので、新たな抗体の取得が継続された。
一般的には、抗体パネルから抗体数が減るとエピトープグループが減る蓋然性が高く、複数の抗体を除外するとエピトープグループ数を確認しない限り、エピトープ数が減少することになる。しかしながら、実際に得られているエピトープグループ数が目標エピトープグループ数よりはるかに小さい場合は、ダウンサイジングによりエピトープグループ数が増えることは一般的である。
ダウンサイジングにより、オリジナルパネルのエピトープのグルーピングが偏っていて、大きいグルーピングになっているのを、均質化して特徴があるものを浮きだたせることができる。このようなグルーピングは、エピトープグループ数が大きくなると収束に向かい、一部の場合には、その目標値がE値となる。
すなわち、エピトープが少なく、それらが大きく離れている場合には、それぞれのエピトープ間の関連を示す情報が少ないということである。例えば、エピトープA、B、Cの3つがあり互いに独立している場合には、AもBも、Cと離れているということでは一致する(つまりAとBが類似する)。ここで、A、Bに属する抗体数が、各々一つで、Cが10抗体あるとすると、AもBもCと違うという意味で似ているので、AとBが同じエピトープグループに分類されることが多くなる。ここでCの抗体数を間引いて減らすと、AとBが分かれてくる。そのようにして、ダウンサイジングで異なるエピトープグループが見えるようになる場合には、エピトープグループ数が増える。
このように実際に得られている抗体で算出されるエピトープグループ数が目標エピトープグループ数よりはるかに小さい場合は、ダウンサイジングによりエピトープグループ数が増えることは一般的である。言い換えれば、エピトープ均質化抗体パネル作製の過程で、生成される部分パネルは、相加的に常に完成均質化パネルに近づいていくとは限らない。これは、不完全部分パネル生成の目的が、次のStepで完成パネルをえるための足がかりになるリファレンス抗体を選ぶことであるためである。
本発明のエピトープ均質化パネルの1つの特徴は、不完全部分パネル作成による「neglected epitope」の発掘である。ダウンサイジングによりエピトープが増えるような場合に、もともと他と区別されていなかったエピトープグループが発掘される場合があり、このようなneglected epitopeを発掘していくことが本発明のエピトープ均質化パネルの有用性に繋がる。このようなエピトープグループが「レアエピトープ」で観察されないことも多いが、E値を定めてパネルの作製を繰り返すことにより、そのようなエピトープグループの存在を予測し、漏れの無い網羅的な抗体パネルを作製する。
このように、本発明のエピトープ均質化抗体パネル技術は、いろいろな条件で、多数のOriginal抗体パネルを作製し、そのたびにエピトープの偏りを測定しながらチューニングしたものである。例えば、カメラのピントをずらしてから、合わせるように、つねに少しずつずらして、よいバランスを探すようなものであり、その指標がクラスター分析の安定度指数である。
エピトープ均質化抗体パネルではエピトープグループがある程度まだらの状態であることを許容している。例えば、サッカーボールの黒い部分(抗体)は均質にボールに分布しているが、グレーに黒と白が混ざり合って均質になっているわけではない。いわば均質化抗体パネルの標的はサッカーボールの黒い部分(エピトープ)であり、白い部分ではないが、黒い部分(エピトープ)はボール(抗原)に均質に分布しており、まだらであってもこのように表面を均質にカバーしているということができる。
大過剰などの条件は、各エピトープ領域が抗体結合のために提供している表面特徴(荷電基の存在など)の多寡を、ある程度許容するためのものであり、抗体が結合しにくい場所に対し結合する、親和性が弱め(例えば、KDが10nM前後)の抗体をパネルに包含するためのものである。
4−4:抗体パネルを用いた抗体の探索
作製途中の不完全パネルに含まれる抗体には、完成された均質化抗体パネルの要素となる有用抗体が含まれる場合もある。この実施例では作製途中の不完全パネルの有用性を調べるために、TNFR2抗体の抗TNFR2 26抗体から構成されるオリジナルパネルに含まれる抗体の性状について解析を行った。
上記の手順により、抗TNFR2抗体による、TNFαのTNFR2への結合阻害(アンタゴニスト効果)について検討した。結果を図58に示す。
その結果、不完全パネルでクラスター1と3に属する抗体は、内在性リガンドのTNFαの結合を阻害しないものが多く、クラスター2に属する抗体はTNFαの結合を阻害するものが大多数であり、クラスター4に属する抗体は、TNFαの結合を阻害するものと阻害しないものが含まれることが示された。このように不完全抗体パネルでも抗体機能を分類する上で、有用性がある場合があることが示された。
4−5:取得された抗体の解析
作製した抗TNFR2抗体のうち、TR92、TR94、およびTR109は、抗体のイムノグロブリンFvの重鎖と軽鎖についてRapid amplification of cDNA end(RACE)法でcDNAシークエンスを決定した。得られたcDNAシークエンスと導出されるアミノ酸配列を以下に示す。
また、得られたシークエンスはNCBI/IGBLASTツール(A tool for immunoglobulin (IG) and T cell receptor (TR) V domain sequences, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/igblast.cgi)を用いて解析した(Ye, J., Ma, N., Madden, T.L. & Ostell, J.M. IgBLAST: an immunoglobulin variable domain sequence analysis tool. Nucleic Acids Res 41, W34−40 (2013))。
抗体のcomplementarity−determining region(CDR)はKabatのナンバリングシステム(Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest, 5th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, NIH, 1991, and later editions)を用いて同定したものを例示したが、CDRの配列はIMGT numbering、kabat numbering、あるいは他のcommon numberingスキームを用いて同定されたものでもよい。
>TR92 重鎖可変領域核酸配列(配列番号2)
AAGGTCCAGCTGCAGCAGTCTGGAGCTGAGCTGGTGAAACCCGGGGCATCAGTGAAGCTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACTGAGTCTATTATACACTGGGTAAAGCAGAGGTCTGGACAGGGTCTTGAGTGGATTGGGTGGTTTTACCCTGGAAGTGATAATATAAACTACAATGAGAAATTCAAGGACAAGGCCACATTGACTGCGGACAAATCCTCCAGCACAGTCTATATGGAGCTTACTAGATTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTTCTGTGCAAGCCACGAAGGCCCGTATGTGTACTTTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA
>TR92 重鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号3)
KVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTESIIHWVKQRSGQGLEWIGWFYPGSDNINYNEKFKDKATLTADKSSSTVYMELTRLTSEDSAVYFCASHEGPYVYFDYWGQGTTLTVSS
>TR92 重鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号4)
ESIIH
>TR92 重鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号5)
WFYPGSDNINYNEKFKD
>TR92 重鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号6)
HEGPYVYFDY
>TR92 軽鎖可変領域核酸配列(配列番号7)
GACATTGTGATGACCCAGTCTCACAAATTCATGTCCACATCAGTAGGAGACAGGGTCAGCATCACCTGCAAGGCCAGTCAGGATGTGAGTACTGCTGTTGCCTGGTATCAACAAAAACCAGGGCAATCTCCTAAACTACTGATTTACTGGACATCCACCCGGCACACTGGAGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTATACTCTCACCATCAGCAGTGTGCAGGCTGAGGACCTGGCACTTTATTACTGTCAGCATCATTATAGCACTCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATACAACGGGCTGAT
>TR92 軽鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号8)
DIVMTQSHKFMSTSVGDRVSITCKASQDVSTAVAWYQQKPGQSPKLLIYWTSTRHTGVPDRFTGSGSGTDYTLTISSVQAEDLALYYCQHHYSTPYTFGGGTKLEIQRAD
>TR92 軽鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号9)
KASQDVSTAVA
>TR92 軽鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号10)
WTSTRHT
>TR92 軽鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号11)
QHHYSTPYT
>TR94 重鎖可変領域核酸配列(配列番号12)
CAGGTTCAGCTCCAGCAGTCTGGGGCTGAGCTGGCAAGACCTGGGACTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTTACTAGCTACTGGATGCAGTGGGTAAAACAGACGCCTGGACAGGGTCTGGAATGGATTGGGGCTATTTATCCTGGAGATGGTGATAGTAGGTACATTCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGCAGATAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAACTCAGCAGCTTGGCATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTGCAAGAGATGGTAACTACTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA
>TR94 重鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号13)
QVQLQQSGAELARPGTSVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQTPGQGLEWIGAIYPGDGDSRYIQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLASEDSAVYYCARDGNYYAMDYWGQGTSVTVSS
>TR94 重鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号14)
SYWMQ
>TR94 重鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号15)
AIYPGDGDSRYIQKFKG
>TR94 重鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号16)
DGNYYAMDY
>TR94 軽鎖可変領域核酸配列(配列番号17)
CAAATTGTTCTCACCCAGTCTCCAGCAATCATGTCTGCATCTCTAGGGGAACGGGTCACCATAACCTGCACTGCCAGCTCAAGTGTAAGTTCCACTTACTTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCAGGATCCTCCCCCAAACTCTGGATTTATAGCACATCCAACCTGGCTTCTGGAGTCCCAGCTCGCTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACCTCTTACTCTCTCACAATCAGCAGCATGGAGGCTGAAGATGCTGCCACTTATTACTGCCACCAGTATCATCGTTCCCCACCCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAACGGGCTGAT
>TR94 軽鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号18)
QIVLTQSPAIMSASLGERVTITCTASSSVSSTYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCHQYHRSPPTFGAGTKLELKRAD
>TR94 軽鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号19)
TASSSVSSTYLH
>TR94 軽鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号20)
STSNLAS
>TR94 軽鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号21)
HQYHRSPPT
>TR109 重鎖可変領域核酸配列(配列番号22)
CAGGTGCAGCTGAAGGAGTCAGGACCTGGCCTGGTGGCGCCCTCACAGAGCCTGTCCATCACATGCACCGTCTCAGGGTTCTCATTAACCGTCTATGGTGTAAATTGGGTTCGCCAGCCTCCAGGAAAGGGTCTGGAGTGGCTGGGAATGATATGGGGTGATGGAAGCACAGCCTATAATTCAGCTCTCAAATCCAGACTGACCATCACCAAGGACAACTCCAAGACCCAAGTTTTCTTAAAAATGAACAGTCTGCAAACTGATGACACAGCCAGGTACTACTGTGCCAGAGATGGGCGACGGTATGCTCTGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA
>TR109 重鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号23)
QVQLKESGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTVYGVNWVRQPPGKGLEWLGMIWGDGSTAYNSALKSRLTITKDNSKTQVFLKMNSLQTDDTARYYCARDGRRYALDYWGQGTSVTVSS
>TR109 重鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号24)
VYGVN
>TR109 重鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号25)
MIWGDGSTAYNSALKS
>TR109 重鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号26)
DGRRYALDY
>TR109 軽鎖可変領域核酸配列(配列番号27)
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAACTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATATCCTGCAGAGCCAGTGAAAGTGTTGATAGTTATGGCGATAGTTTTTTGCACTGGTACCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCATACTCCTCATCTATCGTGCATCCAACCTAGATTCTGGGATCCCTGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTAGGACAGACTTCACCCTCACCATTAATCCTGTGGAGGCTGATGATGTTGCAACCTATTACTGTCAGCAAAGCAATGAGGATCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTAGAAATAAACCGGGCTGAT
>TR109 軽鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号28)
DIVLTQSPTSLAVSLGQRATISCRASESVDSYGDSFLHWYQQKPGQPPILLIYRASNLDSGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEADDVATYYCQQSNEDPYTFGGGTKLEINRAD
>TR109 軽鎖CDR1アミノ酸配列(配列番号29)
RASESVDSYGDSFLH
>TR109 軽鎖CDR2アミノ酸配列(配列番号30)
RASNLDS
>TR109 軽鎖CDR3アミノ酸配列(配列番号31)
QQSNEDPYT
抗体の配列の番号付けには、種々のツールを用いることができ、例えば、様々なNumberingを自動で行うツールとして、Abnum: Antibody numbering http://www.bioinf.org.uk/abs/abnum/がある(Abhinandan, K.R. and Martin, A.C.R. (2008) Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains Molecular Immunology, 45, 3832−3839.)。
26の抗TNFR2抗体(TR92,TR94,およびTR109を含む)は細胞膜に発現するTNFR2への反応性を指標に取得されたため、エピトープ構造は膜型TNFR2の細胞外領域全長(NCBIReferenceSequence: NP_001057.1、アミノ酸残基23-260)に構成されるコンフォーメショナルな構造部分に存在することが明らかである。以下に膜型TNFR2の配列(配列番号32)を示し、細胞外領域は下線で示される。
おおまかなエピトープの位置を特定するために、種々のドメイン単位でのTNFR2-Fc融合タンパク質の欠失変異体を用いて検討を行った。図59に示すように、TR92が属するクラスター2とクラスター3に属する抗体群は、CRDドメイン3-4部分のみを有するTNFR2-Fcの欠失変異体(アミノ酸残基119-201のみを含む)に反応した。
従ってTR92を含むクラスター2とクラスター3の抗体群が認識するエピトープ構造はCRDドメイン3-4部分のみに再構成され、当該領域にエピトープグループが存在することが示された。一方、クラスター1と、TR94,およびTR109が含まれるクラスター4に属する抗体の認識するエピトープ構造は、CRDドメイン3-4部分のみを有するTNFR2-Fcの欠失変異体は反応しなかった。同様の方法で、ドメイン1-2部分のみ(アミノ酸残基38-119)および、ドメイン2-3部分のみ(アミノ酸残基77-165)を有するTNFR2-Fcの欠失変異体にも反応しなかった。従って検討したドメイン欠失変異体には再構成されず、クラスター1、クラスター4に属する抗体については検討したTNFR2の一次構造領域には特定されなかった。
さらに、上記抗体パネルに含まれる抗体が認識するエピトープを詳細に分析するため、以下の実験を行った。
方法:ヒトTNFR2−rabbit Fc融合たんぱく質(a)、またはヒトTNFR2全長を一過性発現させた293細胞のライセート(b)をSDS−PAGE(4〜20%のグラジエントゲル)で分離し、常法によりPVDFメンブランに転写した。膜上の抗原分子と各抗TNFR2 抗体とインキュベートしたのち、結合した抗体をALP−標識抗マウスIgGとBCIP/NBT基質を用いて検出した。
結果を図62に示す。Ep4およびEp5に分類されたMAbは、SDS変性TNFR2−Fcおよび293T細胞において発現されるSDS変性細胞性TNFR2の両方に結合した。予測されたバンドのサイズによって示されるように、これらの結合はTNFR2に対して特異的であった。対照的に、Ep1、Ep2、Ep3、Ep6またはEp7を認識するMAbは、メンブレンに転写されたTNFR2−Fcおよび細胞性TNFR2のいずれにも結合しなかった。結果に基づくと、Ep4およびEp5はリニアエピトープであると考えられ、Ep1、Ep2、Ep3、Ep6およびEp7はコンフォメーショナルエピトープであると考えられる。
さらに、以下のとおりパネルに含まれる抗TNFR2抗体のTNFR2ドメイン交換変異体に対する反応性を調べた。ヒトTNFR2の細胞外ドメインに含まれる、構造上の単位である4つのシステインリッチドメイン(InterPro database IPR001368)ごとに、他のTNFRSFタンパク質の相当する構造類似ドメインと交換し、各抗体の反応性を調べた。図63の左パネルに示す模式図のように、4種のTNFR2ドメイン交換変異体−rabbit Fc融合タンパク質を作製し、293T細胞培養上清に分泌させた。それらの変異体と各抗TNFR抗体との反応をELISA法で測定した(図63右パネル)。各Fcタンパク質を96穴イムノプレートに固相化し、各抗TNFR2抗体を反応させ、結合抗体をALP−標識抗マウスIgG抗体で検出した。基質としてPNPPで発色を行い、測定波長405nmでの吸光度を測定した。
各エピトープそれぞれに属する抗体は、作製したドメイン変異体のシリーズに対して異なる反応性パターンを示した。従って同定された各エピトープがTNFR2上の異なる構造領域に結合していることが示唆された。各抗体の反応性が失なわれない変異の領域にはエピトープが存在していない。またLinearエピトープは一次構造の連続した領域に存在する。従って、Ep1はD4以外、Ep2はD1、D2、D4以外、Ep3はD4以外、Ep4はD3とD4、Ep5はD3、Ep6はD1以外、Ep7はD4以外のTNFR2の構造に存在すると考えられた。
以上の結果から、不完全パネルでも、抗体の分類される各クラスターと、エピトープグループの存在場所との、相関が見いだされる場合があり、ドメイン単位でのコンフォーメショナルなエピトープ構造を特定し、有用性がある場合があることが示された。
オリジナル抗体パネル26抗体から、17抗体にダウンサイジングした部分パネルに含まれる抗体に関してさらに機能的解析を行った。TNFR2を発現している細胞に、内在性リガンドのTNFαの不存在、存在下で、各抗体を作用させTNFR2からの細胞内シグナルを検出して、機能的アゴニスト作用とアンタゴニスト作用を検討した。
アゴニスト活性の測定は以下のように行った。TNFR2を発現させたRamos−Blueレポーター細胞を用い、各抗体の添加により誘導されるTNFR2下流のNFkB依存性シグナルをレポータータンパク質の分泌性アルカリフォスファターゼの発現として、PNPPを基質とした発色法で検出した。細胞を2x10^5cellsずつ10%FBSを含むIMDMに100μlに懸濁し96−well培養プレートの各Wellに添加した。各Wellに各抗体を0.03μg/ml、0.3μg/ml、3μg/mlの終濃度で加え、18時間培養した。各抗体の刺激により、NFkB依存性に細胞の培養上清中に分泌されたSEAPの酵素活性を、PNPPを発色基質として用いて測定した。内在性リガンドTNFαを20% effective dose(ED20、4ng/ml)で加えた時に得られる吸光度を閾値として、抗体のアゴニスト活性を評価した。
結果は、図60に示される。17の抗TNFR2抗体の部分パネルに含まれる11抗体について測定した結果、17部分パネルのエピトープグループ1に含まれるTR49とTR100、エピトープグループ2に含まれるTR112、TR45、エピトープグループ3に含まれるTR94、TR98、エピトープグループ5に含まれるTR92抗体については、20nM添加時に、閾値よりも高い吸光度が得られ、これらの抗体はNFkBの活性化を促進するアゴニスト作用がある場合があることが示された。一方、エピトープグループ4に含まれるTR104、TR95、TR96、およびエピトープグループ7に属するTR109抗体については、20nM添加時にも、閾値よりも高い吸光度は得られず、これらの抗体はNFkBの活性化を促進するアゴニスト作用は検出されなかった。TR109にアゴニスト活性は検出されなかった。また、TR49、およびTR92に関しては、抗体を2nMの少量しか、添加しなかった場合でも閾値よりも高い吸光度は得られたので、これらの抗体のアゴニスト機能は他の抗体よりも強力な場合があることが示された。
以上のように、不完全パネルでも、抗体の分類される各クラスターと抗体の機能相関が、ある程度見いだされる場合があり、不完全パネルでも、有用性がある場合があることが示された。
次に同様の実験系で、TNFR2を発現させたRamos−Blueレポーター細胞を用い、TNFR2の内在性リガンドであるTNFαで刺激し、TNFαの存在下での各抗体のNFkB依存性シグナルの抑制を調べることで、各抗体の機能的アンタゴニスト活性を検討した。
Ramos−Blueレポーター細胞は、発現導入したTNFR2に加え、内在性のTNFR1を発現しているので、内在性リガンドであるTNFαで刺激した場合に、TNFR2とTNFR1の両方の活性化が起こる。従って、抗TNFR2抗体による機能的アンタゴニスト効果はTNFR2のみを介した部分的なものになる。
図61に示したようにED50の約8倍濃度(60ng/ml)のTNFαの共存下で、各々の抗体添加の効果を検討したところ、エピトープグループ7に属するTR109抗体について、濃度依存的な強い機能的アンタゴニスト効果が検出された。従って、TR109抗体はTNFR2を発現している制御性T細胞などの細胞に結合し、機能的にはTNFαと拮抗し、TNFR2下流の細胞内シグナルを抑制するアンタゴニスト抗体として働くと考えられる。アンタゴニスト作用は抗体濃度が10nMの低濃度でも観察された。これは一般の治療抗体の血中最高濃度より50分の1以下の低濃度であり、強力なアンタゴニスト作用を有していると考えられる。
TNFR2は、免疫抑制に働く制御性T細胞(以下Treg)に高発現している膜型受容体で、Tregの増殖と機能にTNFR2を介したシグナルが重要なことが知られている。TNFR2は内在性リガンド(TNFα)の結合により活性化されると、転写因子NFκBを通じ、Tregの増殖と免疫抑制の発現に働くことが知られている。
本発明のスクリーニングで得られるような抗TNFR2抗体の投与により、がん組織に浸潤しているTregを障害して患者の抗腫瘍免疫を促進させることが、新たながん治療法として有望である。Tregを障害するには、抗体結合により内在性リガンドの結合を阻害し、且つ細胞内シグナルを生じないアンタゴニスティックな機能を示す抗体が有用である。
またTreg以外にもmyeloid-derived suppressor cells (MDSCs)などの異なるタイプの免疫抑制担当細胞にもTNFR2は特異的に高発現しており、重要な増殖シグナルを介在している。抗TNFR2アンタゴニスト抗体は、これらの細胞の増殖を抑制し、結果的に免疫抑制を解除することで、がん免疫を促進させ、がん治療に有用であると考えられる。
また、多発性骨髄腫、大腸がん、卵巣がんなど多種類のがん細胞に、TNFR2が高いレベルで発現し、TNFR2下流のNFkBの活性化を通じて、がん細胞の増殖を促進している場合があることがよく知られており、抗TNFR2アンタゴニスト抗体は、これらのがん細胞の増殖を抑制し、抗腫瘍効果をしめすことが考えられる。
また蓋然性の高い抗体のエフェクター機能として、抗体が抗原と結合したのち、さらにNK細胞などの免疫細胞上のFc受容体と結合することで誘導されるADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)やADCP(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity and complement dependent cytotoxicity)などの細胞障害作用が考えられる。または抗原に結合した抗体が、Fc領域を介して補体を結合することで、引き起こされる補体依存性細胞障害作用も期待される。
従って、今回見いだされた抗TNFR2アンタゴニスト抗体は、内在性リガンドであるTNFαとの競合により、Tregや他の免疫抑制細胞やTNFR2陽性がん細胞等の増殖や機能を阻害するだけでなく、抗体のエフェクター作用によりそれらのTNFR2を発現している制御性T細胞や免疫抑制細胞やTNFR2を発現するがん細胞等を障害する治療薬への応用が考えられる。
一方、17部分パネルのエピトープグループ1に含まれるTR49とTR100、エピトープグループ2に含まれるTR45、エピトープグループ3に含まれるTR94、TR98、エピトープグループ4に含まれるTR104、TR95,TR96、エピトープグループ5に含まれるTR92抗体については、機能的アンタゴニスト効果は検出されなかった。
自己免疫疾患などの過剰な免疫による疾患ではTregの増殖や機能を増強して免疫を抑制する治療が有望である。Tregの増殖や機能を増強するには、抗体結合により内在性リガンドと同様の細胞内シグナルを誘導するアゴニストな機能を示す抗体が有用である。
例えば、アゴニスト抗体は、炎症性疾患、とりわけ、心筋梗塞治療に利用出来る可能性がある。TNF関連疾患の中でも、自己免疫難病に対する治療効果が期待される。例として、クローン病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、I型糖尿病、ループスエリトマトーデス(SLE)、強直性脊椎炎、慢性リウマチ性関節炎、等の疾患が挙げられる。その他、ある種の神経疾患に対する保護的な作用が期待される疾患(例として、海馬修復、網膜神経保護、等)に利用することができる。
以下のとおり、抗TNFR2機能抗体の性質についてさらなる実験を行った。見出された同定された2つの抗TNFR2機能抗体(TR92アゴニスト抗体、TR109アンタゴニスト抗体)の細胞膜に発現するNative TNFR2への親和性(apparent affinity)をフローサイトメトリーによって測定した。TNFR2をStableにTransfectしたTNFR2−Ramos−Blue細胞を抗原として用い、各抗体の3倍希釈系列(100nM〜0.001nM)と0.5%BSA/PBS中で30分、4℃でインキュベートした。細胞に結合した抗体はPE標識抗マウスIgGで検出し、パラフォルムアルデヒドで固定した。フローサイトメーター(FACS LSRFortessa)で細胞に結合した蛍光を測定し、蛍光強度メディアン(MFI)を抗体濃度に対してプロットした。各抗体の細胞膜TNFR2に対する親和性値(Apparent KD values)は各結合飽和曲線を曲線フィッティングした50%効果濃度(EC50)として算出した。
結果を、図64に示した。TR92アゴニスト抗体は、細胞膜TNFR2に対しての結合親和性(apparent affinity value, KD)が、0.17nMであった。TR109アンタゴニスト抗体は、細胞膜TNFR2に対しての結合親和性(apparent affinity value, KD)が、0.25nMであった。両抗体とも非常に強い抗原結合親和性を示した。
さらに、TNFR2ドメイングラフト変異体を用いた、アゴニスト抗体(Ep5:TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)のエピトープ位置の検討を行った。ヒトTNFR2の各システインリッチドメインを、構造がTNFR2と類似しているCD30(TNFRSF8)にグラフトした変異体を作製し(図65左パネル)、293T細胞上に発現させた各変異体と各抗体の結合をフローサイトメトリーで測定した。
結果は、図65の右パネルに示される。TR92抗体は、CD30の鋳型にGraftしたTNFR2のシステインリッチドメイン(CRD)D−3に反応した。一方TR109はGraftしたCRD1、CRD2、CRD3のいずれにも反応しなかった。従ってアゴニスト抗体TR92のリニアーエピトープEp5はT119−K162からなるTNFR2のCRD3領域に含まれ、アンタゴニスト抗体TR109のコンフォメーショナルEp7はGraftした各CRD単独上には再構成されなかった。
さらに、TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体を用いた、アゴニスト抗体(Ep5:TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)のエピトープ位置の検討を行った。TNFR2の各システインリッチドメイン(狭義のTNFRドメイン)には、ジスルフィド結合の組み合わせを単位とする2つのモジュール(コンフォメーショナル構造)が含まれている。アゴニスト抗体(Ep5:TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)のエピトープ位置を、Nativeな膜型TNFR2のコンフォーメション上に同定するために、ヒトTNFR2の各モジュールを相当するマウスTNFR2のモジュールと置換した、モジュールキメラ変異体を作製し、各抗体との反応性をフローサイトメトリーにより調べた。TNFR2のCRD2とCRD3にリガンド結合部位が存在するので( Sci Signal 2010, 3:ra83.)これらのドメイン内のモジュールを置換した。各変異体の配列における、変異を導入した部分について、図66の上パネルにおいてMC1〜MC4(それぞれ配列番号33〜36に対応)として示される。各変異体の発現レベルを、変異体と同じmRNAにIRESを介して配置されたTagBFP蛍光タンパク質の発現レベルとして検出し、各抗体の抗原レベルと結合の相関を確認した。
結果を、図66の下パネルに示した。すべての変異体について、発現レベルに依存していずれかの抗体が結合したことから、変異体の抗原性は保たれていると考えられた。TR92はMC3の変異体に対して反応性を失ったことから、TR92の認識するリニアーエピトープEp5はCRD3のModule1(T120〜L140)に存在した。TR109はMC1の変異体に対して反応性を失ったことから、TR109の認識するコンフォーメショナルEp9には、CRD2のModule1(S77〜C93)を構成するコンフォーメション構造が含まれる可能性が示された。
次いで、抗TNFR2アンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)の結合により、TNFR2コンフォメーション上の隠される位置(機能エピトープ位置)の同定を行った。アンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)の結合により、TNFR2のコンフォーメション上の隠される位置(機能エピトープ位置)を同定するために、重水素置換法によりTR109とTNFR2−Fc(Enbrel(登録商標)=etanercept)の結合複合体を分析した。抗原抗体複合体を形成させ、複合体の高次構造上で外側に位置するペプチド領域と、複合体内に埋もれている領域(エピトープを構成している部分または抗体結合により隠される部分)を、TNFR2の各アミノ酸アミド基に含まれる水素原子と重水素の置換反応速度の違いとして検出した。あらかじめ形成させたTR109−TNFR2−Fc複合体を、重水素を含むBufferで各時間インキュベートし、クエンチングとペプシン消化後LC−MS分析を行った。
結果を、図67および68に示した。図67は、TNFR−Fc単独とTR109の結合物の各ペプチドの重水素置換率のプロットである。各領域を構成するペプチド断片を構成するTNFR2のアミノ酸領域として検出し、各抗体の抗原レベルと結合の相関を確認した。1〜3のCircleはTNFR−Fc単独と抗体複合物で重水素交換速度の低下(分子量の差)がみられたペプチド領域を示す。図68は、抗TNFR2アンタゴニスト抗体(Ep9:TR109)の結合により、TNFR2コンフォメーショナル上の隠される位置(機能エピトープ位置)を示す図である。上のパネルは、TR109との結合により重水素置換率変化が同定された3つの領域のTNFR2一時配列上の位置を示す。下のパネルは、同定された3つの領域のTNFR2の立体構造(3ALQ)への投影図を示す。各領域に含まれるアミノ酸は異なる色で示される(Region1、Red;Region2、Orange;Region3、Pink)。
TNFR2のR41〜R67のCRD1に含まれる領域と、C110〜T119のCRD2に含まれる領域に、重水素置換の遅延が見られたことから、これらの構造部分がTR109抗体の結合により覆われ、他の分子のアクセスを困難にすると考えられた。CRD2のmodule2にはTNFR2のリガンド結合領域が含まれ、かつ他の実験からは、この領域はTR109のコンフォメーショナルエピトープを構成しないと考えられるので、TR109のアンタゴニスティックな効果は、リガンドのこれらの領域への結合阻害(立体障害)による可能性が示された。
さらに、TR92アゴニスト抗体およびTR109アンタゴニスト抗体のTNF依存性ヒト制御性T細胞増殖に与える効果を検証した。TNFR2陽性であるヒト制御性T細胞は、IL−2の存在下でTNF依存性に増殖し活性を示す。抗TNFR2アゴニスト抗体はTNFを機能的に代替し、アンタゴニスト抗体はTNF機能を抑制することから、制御性T細胞を介する免疫応答の制御への応用が想定される。(a)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を各種濃度のIL2とTNFの存在下で4日間培養し、制御性T細胞の増殖をCD4陽性細胞中のFoxp3制御性T細胞の陽性比率として算出した(Sci Signal 2017, 10)。(b)TNF依存性のT細胞増殖が観察された条件で、TR92抗体およびTR109抗体を各種濃度で加え、5日間培養後に、各抗体の効果を、抗体なしの制御性T細胞の陽性比率からの変化として算出した。
結果を図69に示した。予想通り、ヒト末梢血単核細胞の細胞培養中で、IL2とTNF依存性にヒト制御性T細胞が増殖した。確立された実験条件(IL2,100ng/ml;TNFα,100ng/ml)において、各抗体の効果を調べたところ、TR92およびTR109抗体による、制御性T細胞の増殖促進および増殖抑制が観察され、それぞれTNFR2シグナルへのアゴニスティック効果およびアンタゴニスティック効果が確認された。
次いで、TR109抗体による膜型TNFa依存性TNFR2活性化の阻害を検証した。TNFは2型細胞膜タンパク質として産生され、メタロプロテナーゼによって可溶型となる。切断前の膜型TNFにも機能があり、発現細胞の接触(cell−to−cell contact)によりシグナルを伝達する(特に局所の炎症部位)。抗TNFR2抗体の膜型TNF−TNFR2のシグナル阻害を検討した。
実験の手順は、図70の上パネルに示されるとおりである。CHO細胞に膜型TNFをトランスフェクトした。次いで、TNFR2/RBレポーター細胞と共培養した。mTNF/TNFR2の結合による細胞接着が観察された。ここで、抗TNFR2(TR109)の存在下での共培養を行うと、TR109抗体による細胞接着の阻害が観察された(図70)。陰性対照として、トランスフェクトしていないCHO細胞との共培養を行ったところ、細胞接着は観察されなかった。
さらに、抗体との共培養を行った細胞において、SEAPによってNFkB活性化を測定した。結果は、図70の下パネルに示される。ヒトキメラTR109抗体は、マウスTR109抗体と同様に膜型TNFの活性を抑制し、膜型TNFに対してもアンタゴニスティックな活性を示した。
さらに、種々の細胞に発現する膜型TNFRへのTR109抗体の特異的な結合を検証した。より詳細には、TR109抗体の特異的な結合を、膜型TNFR2を発現する細胞を用いたフローサイトメトリーで確認した。結果および用いた細胞については図71に示される。TR109抗体は、参照抗TNFR2抗体(80M2)と同様に、TNFR2を一過的にトランスフェクトした細胞に対して結合し、TNFR1を一過的にトランスフェクトした細胞に対しては結合しなかった。その他の細胞に対しても、他のコントロール抗体による染色に基づいて各抗原の発現を判断した場合、非特異的な結合は示されなかった。
同定されたTR109のFv配列をヒトIgG1の定常領域と遺伝子上で融合させ、ヒトキメラ抗体およびFab抗体を作製した(図72(a))。
組み替えヒトキメラTR109抗体およびTR109抗体由来FabのTNFR2依存性NF−kB細胞シグナル誘導に対する効果を検証した。より詳細には、作製した組み替え抗体およびマウスTR92およびTR109抗体を、各TNFα濃度下でTNFR2発現したRamos−blueレポーター細胞に反応させ、細胞内の下流のNFkBシグナルをSEAPレポーターの発現として検出した。
結果を図72(b)に示す。TR109ヒトキメラ抗体およびFab抗体は、いずれもOriginalのマウスTR109抗体と同様にTNFの活性を抑制し、アンタゴニスティックな活性が確認された(上段)。コントロールとして用いた無関係なヒトIgG、マウスIgGは、予想通り、TNF依存性のTNFR2シグナル伝達に影響しなかった。またTR92抗体のアゴニスト活性は本実験でも確認された(下段)。
4−6:取得された抗体のヒト化
上記の実験により活性が確認されたマウス抗体である抗TNFR2アゴニスト抗体(Ep5: TR92)およびアンタゴニスト抗体(Ep9: TR109) のヒト化を行った。ホモロジーモデリングにより構築したTR92とTR109の高次構造モデルを図73に示す。モデルの構築(Nat Protoc 2017, 12:401)によりTR109のCDR−L1が大きく突き出た構造をしていることが示唆され、特徴的エピトープ認識により、リガンド結合を阻害するアンタゴニストとしての抗体機能を有する可能性が考えられた。
抗体のフレームワーク配列を可能な限りヒト固有の抗体配列に置き換えることによって免疫原性を最小限化する手法がヒト化であり、抗体医薬開発で一般に採り入れられている。相補性決定領域(CDR)を保つために、抗原エピトープはヒト化によって影響されず、したがってヒト化分子は同一のエピトープ群に分類される分子として扱われる。もとの抗体の配列をヒト抗体へと移植する方法としてはCDR grafting、SDR grafting、さらにはこれらの手法をもとに有効なアミノ酸配列を部分的に移植していく手法が存在する。これらはすでに多くの開発例とともに知られているものである(Humanization of antibodies. Almagro JC, Fransson J. Front Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-33.、Humanization and simultaneous optimization of monoclonal antibody. Kuramochi T, Igawa T, Tsunoda H, Hattori K. Methods Mol Biol. 2014;1060:123-37.)。有効な配列を決定するために最も有効なのはX線結晶構造解析やNMRによって相互作用に直接寄与しているアミノ酸、そのアミノ酸の配置を決定しているペプチド領域を調べ、これらを完全に移植することである。これらの情報がない場合には、計算科学により構造モデルを作成することが有効である。本実施例では、Rosetta antibodyにより抗体構造モデルを作成し(Modeling and docking of antibody structures with Rosetta. Weitzner BD, Jeliazkov JR, Lyskov S, Marze N, Kuroda D, Frick R, Adolf-Bryfogle J, Biswas N, Dunbrack RL Jr, Gray JJ. Nat Protoc. 2017 Feb;12(2):401-416.)、構造モデルに基づいて特徴的なCDRを抽出し、この構造を保つことのできる移植法を優先的に選択した。この開発で用いられたのはCDR graftingであり、もとの抗体と配列相同性の高いヒトのイムノグロブリンgermline配列を複数選択し、Kabatの提案したCDRに相当する配列をこれらへと移植した分子を作製した。重鎖、軽鎖の両者でそれぞれ複数の候補分子を作製し、全ての組み合わせの中から実用上十分な相互作用活性と安定性を有した分子をヒト化抗体として選択した。本実施例で作製された分子はいずれも十分な相互作用活性を有していた。
図74には、作製した4種のヒト化TR92抗体の細胞膜型TNFR2に対する特異的結合が示される。作製された4種のTR92ヒト化抗体は、いずれも細胞膜型TNFR2に対して、ヒト化前TR92と類似の親和性で特異的に結合した。
図75には、作製した4種のヒト化TR109抗体の細胞膜型TNFR2に対する特異的結合が示される。作製された4種のTR109ヒト化抗体は、いずれも細胞膜型TNFR2に対して、ヒト化前TR109と類似の親和性で特異的に結合した。
さらに、作製したヒトキメラTR109抗体およびヒト化TR109抗体の示差走査蛍光定量法による熱安定性の評価を実施した。より詳細には、作製したキメラ抗体と2種のヒト化抗体(HZ109−2、HZ109−4)について、示差走査蛍光定量法(Differential Scanning Fluorimetry)による熱安定性の評価を行った。
各抗体タンパク質のPBS溶液(2.5uM)を、SYPRO Orangeの存在下で昇温し、温度に対して測定された蛍光強度をプロットした(図76上パネル)。またPBS Bufferのみとの蛍光強度の差を計算した(図76下パネル)SYPRO Orangeはタンパク質の疎水性表面に結合し蛍光強度が大きくなる性質があるので、蛍光強度の変化がタンパク質高次構造の変化と相関する。増大が見られた温度から、立ち上がり(変性開始温度)と変曲点(変性中点温度)をタンパク質検体の熱安定性を示す代表値として計算した(図76 温度パラメ−タの表)。ヒト化抗体の熱安定性は、ヒト化前抗体と比べて、相対的にほぼ同等かそれ以上であった。
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に出願された特願2016-225858(2016年11月21日出願)および特願2017-21553(2017年2月8日出願)に対して優先権主張をするものであり、その内容は本願においてその全体が参考として援用される。
免疫関連の疾患について、精確度が高い、医薬品開発や臨床応用が可能である。
配列番号1:抗原Aの配列
配列番号2:TR92 重鎖可変領域核酸配列
配列番号3:TR92 重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号4:TR92 重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号5:TR92 重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号6:TR92 重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号7:TR92 軽鎖可変領域核酸配列
配列番号8:TR92 軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号9:TR92 軽鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号10:TR92 軽鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号11:TR92 軽鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号12:TR94 重鎖可変領域核酸配列
配列番号13:TR94 重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号14:TR94 重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号15:TR94 重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号16:TR94 重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号17:TR94 軽鎖可変領域核酸配列
配列番号18:TR94 軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号19:TR94 軽鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号20:TR94 軽鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号21:TR94 軽鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号22:TR109 重鎖可変領域核酸配列
配列番号23:TR109 重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号24:TR109 重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号25:TR109 重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号26:TR109 重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号27:TR109 軽鎖可変領域核酸配列
配列番号28:TR109 軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号29:TR109 軽鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号30:TR109 軽鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号31:TR109 軽鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号32:膜型TNFR2のアミノ酸配列
配列番号33:TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体MC1
配列番号34:TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体MC2
配列番号35:TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体MC3
配列番号36:TNFR2システインリッチドメインモジュール交換変異体MC4
配列番号37:TR92HUVH1
配列番号38:TR92HUVH2
配列番号39:TR92HUVL1
配列番号40:TR92HUVL2
配列番号41:TR109HUVH1
配列番号42:TR109HUVH2
配列番号43:TR109HUVL1
配列番号44:TR109HUVL2

Claims (38)

  1. ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製する方法であって、
    (a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
    (c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
    (e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
    を含む方法。
  2. 前記Eが、前記抗原に存在し得るエピトープ領域の数である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記Nが、前記E個のクラスターをクラスタリングによって生成するのに十分な抗体数である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記Nが、E×2〜6の範囲である、請求項3に記載の方法。
  5. e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルおよび/または部分パネルから、さらに抗体数が至適抗体数の上限Nx以下のものを選択する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記Nxが、E×2〜6の範囲で設定される、請求項5に記載の方法。
  7. e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルおよび/または部分パネルから、さらに抗体数が最小のものを選択する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記結合データが、前記オリジナル抗体パネルまたは部分パネルに含まれる第1の抗体の、該オリジナル抗体パネルまたは部分パネルに含まれる第2の抗体の存在下での抗原への結合の変化を結合アッセイによって検出した結合変化データに基づく、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記結合アッセイが、ペア逐次結合アッセイであって、該ペア逐次結合アッセイにおいて、前記第2の抗体は前記第1の抗体が前記抗原に接触された後に、該抗原に接触される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記結合アッセイにおいて、前記第2の抗体が前記第1の抗体よりも大過剰量で存在する、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記クラスタリングが階層的クラスタリングである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記結合データは各アッセイについて単独で取得されたデータと2つ以上の抗体を用いて取得されたデータを含み、前記クラスタリングが、各抗体の結合について、別の抗体の不存在下で得られたデータと該別の抗体の存在下で得られたデータとの間の変化データに基づいて行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記エピトープグループ数が、前記クラスタリングによってクラスタリングした場合に、クラスタリングの安定性を示す安定度指数に基づいて決定されるクラスター数として算出される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記安定度指数が、前記クラスタリングによって生成されるブートストラップ値を使用して算出される、請求項13に記載の方法。
  15. (d)における前記1または複数の抗体の前記オリジナル抗体パネルからの除外が、以下の基準:最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;溶解度が低い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの1または複数の基準に基づいて行われる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記抗体の集合を提供する工程が、前記抗原に対する既知の抗体を提供することを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    (a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、
    (b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
    (c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
    (e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
    を含む、プログラム。
  18. ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルの作製方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
    (a)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして前記コンピュータに提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数(N)以上である、工程と、
    (b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
    (c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
    (e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
    を含む、記録媒体。
  19. ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルを作製するシステムであって、該システムは、
    (A)該抗原に対する抗体の集合のデータをオリジナル抗体パネルのデータとして、および該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを提供する抗体パネルデータ提供部であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に関する目標抗体数N以上である、抗体パネルデータ提供部と、
    (B)抗体データ計算部であって、該計算部において:
    該結合データに基づいて、該抗体パネルをクラスタリングし、
    必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、結合データに基づいてクラスタリングし、
    該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数(E)を充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足する抗体パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体のデータを加えて新たな抗体の集合を作成し、再度オリジナル抗体パネル生成、結合データ提供、クラスタリング、必要に応じて部分パネル生成およびクラスタリングを繰り返すように指令を出し、
    得られた該エピトープ均質化抗体パネルを出力する
    抗体データ計算部、
    を備える、システム。
  20. ある抗原に対するエピトープ均質化抗体パネルであって、エピトープグループ数eが、該抗原に関する目標エピトープグループ数Eと比較してe≧Eであり、該Eが、該抗原に存在し得るエピトープ領域の数である、エピトープ均質化抗体パネル
  21. ある抗原の表面に存在する全てのエピトープ領域に対して、各エピトープ領域に結合する抗体を少なくとも2つ以上含む、エピトープ均質化抗体パネル。
  22. エピトープグループあたり2〜6個の抗体を含む、請求項20または21に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
  23. 各エピトープグループに属する抗体の数が、平均値から1標準偏差の範囲内である、請求項20〜22のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
  24. 前記抗原との親和性がK=1×10−8Mより低い親和性である抗体を含む、請求項20〜23のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
  25. 抗体のスクリーニングのための、請求項20〜24のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
  26. 抗原の低免疫原性化のための、請求項20〜24のいずれか1項に記載のエピトープ均質化抗体パネル。
  27. ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法であって、該方法は:
    (a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
    (c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)該オリジナル抗体パネルから、エピトープグループ数が減少しないように、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
    (e)(d)のクラスタリングで得られた部分パネルのエピトープ数が該オリジナル抗体パネルのエピトープグループ数以上であるものを選択し、該選択された部分パネルを用いて該スクリーニングを行う工程と
    を包含する、方法。
  28. 前記における前記1または複数の抗体の前記オリジナル抗体パネルからの除外が、以下の基準:最も近接している抗体を選択して除外する;最も密度の高いクラスターを選択してそこから除去する;最も密度の高いクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;平均より高い密度のクラスターを選択して、その中で最も近接している抗体を選択して除外する;バックグラウンドが高い抗体を除外する;シグナルが低い抗体を除外する;抗体数が3個以上のクラスターから抗体を除外する;最も近接している抗体の対であっても、他の抗体との距離が大きければ除外しない;機能が公知である抗体を除外しない;抗体の親和性を考慮して選択する;抗体のサブクラスを考慮して選択する;ハイブリドーマの抗体産生能を考慮して選択する;ハイブリドーマの血清の要求性を考慮して選択する;抗体の回収量を考慮して選択する;抗体タンパク質の酸変性の容易さ(精製の困難さ)を考慮して選択する;抗体のFvの配列を考慮して選択する;熱安定性が悪い抗体を除外する;pH安定性が悪い抗体を除外する;機械的刺激に対して安定性が悪い抗体を除外する;安定性が悪い抗体を除外する;高濃度で沈殿する抗体を除外する;溶液の粘度が高い抗体を除外する;溶解度が低い抗体を除外する;非特異的結合性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原以外の近縁タンパク質への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外する;目的抗原のオルソログ抗原への交差反応性が高い抗体を除外しない;目的外のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外する;目的抗原のオルタナティブスプライシング産物に反応する抗体を除外しない;および高濃度でシグナルが低い抗体を除外する、のうちの1または複数の基準に基づいて行われる、請求項27に記載の方法。
  29. ある抗原に対する抗体をスクリーニングする方法であって、該方法は:
    (a)該抗原に対する抗体の集合をオリジナル抗体パネルとして提供する工程であって、該抗体の集合に含まれる抗体数nは、該抗原に対する目標抗体数N以上である、工程と、(b)該オリジナル抗体パネルに含まれる抗体の結合データを得る工程と、
    (c)該結合データに基づいて、該オリジナル抗体パネルをクラスタリングする工程と、(d)必要に応じて該オリジナル抗体パネルから、1または複数の抗体を除外して、1または複数の部分パネルを生成し、該1または複数の部分パネルの各々について、該結合データに基づいてクラスタリングする工程と、
    (e)該オリジナル抗体パネルおよび該1または複数の部分パネルのエピトープグループ数eを算出し、e≧該抗原に関する目標エピトープグループ数Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在する場合には、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルをエピトープ均質化抗体パネルとし、e≧Eを充足するオリジナル抗体パネルまたは部分パネルが存在しない場合、該オリジナル抗体または該部分パネルに新たな抗体を加えて新たな抗体の集合を作成し(a)〜(d)を繰り返す、工程と
    (f)該エピトープ均質化抗体パネルを用いて該スクリーニングを行う工程と
    を含む、方法。
  30. 配列番号32の119〜201位にエピトープを有する、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  31. 抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物であって、該TNFR2抗体は、
    (A)配列番号3(TR92重鎖)、配列番号13(TR94重鎖)、および配列番号23(TR109重鎖)からなる群より選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、
    (B)配列番号8(TR92軽鎖)、配列番号18(TR94軽鎖)、配列番号28(TR109軽鎖)からなる群より選択される軽鎖可変領域のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖と
    を含む、
    抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  32. 前記TNFR2抗体は、
    (i)配列番号3(TR92重鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号8(TR92軽鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体であるか、
    (ii)配列番号13(TR94重鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号18(TR94軽鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体であるか、あるいは
    (iii)配列番号23(TR109重鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む重鎖と、配列番号28(TR109軽鎖)に示すアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、あるいはそれらの機能的等価配列を含む軽鎖とを含む抗体である、
    請求項31に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  33. 前記TNFR2抗体は、
    (i)配列番号4,5および6に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号9、10および11に示す核酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、
    (ii)配列番号14、15および16に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号19、20および21に示す核酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体、あるいは
    (ii)配列番号24、25および26に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDRと、配列番号29、30および31に示す核酸配列を含む軽鎖CDRとを含む抗体
    である、請求項31または32に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  34. 前記TNFR2抗体は、
    (i)配列番号3に示すアミノ酸配列と、配列番号8に示すアミノ酸配列とを含む抗体、
    (ii)配列番号13に示すアミノ酸配列と、配列番号18に示すアミノ酸配列とを含む抗体、あるいは
    (ii)配列番号23に示すアミノ酸配列と、配列番号28に示すアミノ酸配列とを含む抗体
    である、請求項31〜33のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  35. 前記抗TNFR2抗体は、ヒト化抗体である、請求項31〜34のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  36. TNFR2とTNFとの結合を阻害する、請求項31〜35のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  37. TNFR2とTNFとの結合を活性化する、請求項31〜35のいずれか1項に記載の抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物。
  38. 請求項31〜請求項37のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは機能的等価物、あるいはその重鎖および/または軽鎖をコードする核酸配列を含む1または複数の核酸分子。
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