JPWO2018092874A1 - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

下記の工程(1)〜(5):(1)被塗物上に、着色塗料を塗装し加熱して着色塗膜を形成する工程、(2)工程(1)で形成される着色塗膜上に、ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成する工程、(3)工程(2)で形成されるベース塗膜上に、光輝性顔料分散体を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、(4)工程(3)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び(5)工程(2)〜(4)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、を順次行うことにより複層塗膜を形成する方法であって、光輝性顔料分散体が、水、表面調整剤、鱗片状光輝性顔料及び粘性調整剤を含有し、且つ固形分含有率が0.5〜10質量%である複層塗膜形成方法。

Description

本発明は、複層塗膜形成方法に関する。
塗料を塗装する目的は、主に素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「質感」が重要である。消費者が求める工業製品の質感は多様なものであるが、近年、自動車外板、自動車部品、家電製品などの分野において、金属又は真珠のような光沢感が求められている(以下、「金属調光沢」と表記する)。
金属調光沢とは、鏡面のように表面に粒子感がなく、さらに、塗板に対して垂直に近い状態で見たとき(ハイライト)は光り輝き、塗板に対して斜め上から見たとき(シェード)は暗くみえる、すなわちハイライト領域とシェード領域との輝度差が大きいことを特徴とする質感である。
かかる金属調光沢を工業製品の表面に付与する技術には、金属めっき処理及び金属蒸着処理など(例えば、特許文献1参照)があるが、塗装によって金属調光沢が付与できれば、簡便さ及びコストなどの観点から有利である。
特許文献2には、未硬化の塗面に、ノンリーフィングアルミニウムフレーク及び有機溶剤を含有する組成物を塗装し、次いでクリヤ塗料を塗装することを特徴とするメタリック塗膜形成方法が開示されている。
特許文献3には、光輝材、樹脂を含む不揮発固形分及び溶剤を含有するメタリック塗料基剤を、高沸点溶剤と低沸点溶剤から成る希釈剤を用いて希釈率150〜500%の割合で希釈し、上記メタリック塗料基剤中の樹脂分100重量部に対して5〜10重量部の粘性樹脂を添加して成ることを特徴とするメタリック塗料が開示されている。
特許文献4には、光輝材10〜30%と、分子量25000〜50000(MWn)のセルロースアセテートブチレート樹脂10〜50%と、残量としてのアクリル−メラミン樹脂を含有する固形分たる塗料基材とを、エステル系溶剤及び/又はケトン系溶剤を用い、上記固形分が1〜10%となるような希釈率で希釈して成るメタリック塗料が開示されている。
特許文献5には、貴金属及び/又は金属を含むコロイド粒子を含有し、さらに塗膜形成性樹脂及び特定の混合溶剤を含有する光輝材含有ベース塗料を使用する複層塗膜形成方法が開示されている。
特許文献6には、貴金属及び/又は金属を含むコロイド粒子と塗膜形成性樹脂とを含有する特定の光輝材含有ベース塗料を使用し、特定の塗布方法と組み合わせて使用する複層塗膜形成方法が開示されている。
特許文献2〜6に開示されている塗料は溶剤系塗料である。しかし近年、低環境負荷などの観点から、金属調塗料の分野においても水性化が求められるようになっている。
特許文献7には、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、20〜150mgKOH/g(固形分)の酸価を有する水性セルロース誘導体とを含み、前記水性セルロース誘導体を主たるバインダー樹脂とし、前記光輝性顔料の含有量がPWCで20〜70質量%であることを特徴とする水性ベース塗料組成物が開示されている。
しかし、特許文献7に記載の塗料によって形成される塗膜では、金属調光沢が不十分である。
特許文献8には、鱗片状光輝性顔料を含んでなる水性ベースコート塗料の塗装方法であって、塗料中の固形分が20〜40重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A1)を乾燥膜厚で1〜15μmとなるように被塗物に塗装した後、未硬化の塗膜の上に、塗料中の固形分が2〜15重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A2)を乾燥膜厚で0.1〜5μmとなるように塗装することを特徴とする水性ベースコート塗料の塗装方法が開示されている。
しかし、特許文献8に記載の塗装方法によって形成される塗膜では、金属調光沢が不十分である。
また、特許文献9には、平均粒子径(D50)が10μm以上12.5μm以下かつ厚みが0.02μm以上0.05μm以下である蒸着金属箔と、 樹脂と、溶媒とを含み、前記樹脂100重量部に対し前記蒸着金属箔を100重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上かつ可視光領域における正反射率が40%以上である塗料組成物が開示されているが、塗膜の耐水付着性については記載されていない。
特開昭63−272544号公報 特開平11−90318号公報 特開2003−313500号公報 特開2005−120249号公報 特開2009−28690号公報 特開2009−28693号公報 特開2009−155537号公報 特開2006−95522号公報 特許第5685044号公報
本発明の目的は、金属調光沢及び耐水付着性に優れた金属調塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.下記の工程(1)〜(5):
(1)被塗物上に、着色塗料(W)を塗装し、加熱して着色塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成される着色塗膜上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成されるベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、
(4)工程(3)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
(5)工程(2)〜(4)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、
を順次行うことにより複層塗膜を形成する方法であって、
光輝性顔料分散体(Y)が、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有し、且つ固形分含有率が0.5〜10質量%である複層塗膜形成方法。
項2.温度20℃における、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの光輝性顔料分散体(Y)の粘度(B60)が60〜2000mPa・sである。項1に記載の複層塗膜形成方法。
項3.表面調整剤(A)の動的表面張力が50〜70mN/mである項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
項4.鱗片状光輝性顔料(B)の含有量が、光輝性顔料分散体(Y)100質量部を基準として0.2〜5質量部である項1〜3のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項5.粘性調整剤(C)がセルロースナノファイバーである項1〜4のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項6.光輝性塗膜が0.02〜5μmの乾燥膜厚を有する項1〜5のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項7.ベース塗膜が、透明塗膜もしくは着色塗膜である項1〜6のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項8.クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である項1〜7のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項9.鱗片状光輝性顔料(B)が蒸着金属フレーク顔料であり、複層塗膜の60°グロス値が120以上であり、HG値が10〜40である項1〜8のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
項10.鱗片状光輝性顔料(B)がアルミニウムフレーク顔料であり、複層塗膜の60°グロス値が105以上であり、HG値が35〜65である項1〜8のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
本発明の複層塗膜形成方法によれば金属調光沢及び耐水付着性に優れた塗膜が得られる。
以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
1.工程(1)
工程(1)は、被塗物上に、着色塗料(W)を塗装し、加熱して着色塗膜を形成する工程である。
被塗物
本発明の方法を適用することのできる被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器などの家庭電気製品の外板部などを挙げることができ、中でも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物を構成する基材としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄板、アルミニウム板、真鍮板、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなど)メッキ鋼板などの金属板;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂及び各種のFRPなどのプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;木材;繊維材料(紙、布など)などを挙げることができ、中でも、金属板又はプラスチック材料が好適である。
また、上記被塗物は、上記の如き基材上に、下塗り塗膜を形成したものであってもよい。基材が金属製である場合は、下塗り塗膜の形成を行う前に、予めりん酸塩、クロム酸塩などによる化成処理を行っておくことが好ましい。
下塗り塗膜は、防食性、防錆性、基材との密着性、基材表面の凹凸の隠蔽性などを付与することを目的として形成されるものである。下塗り塗膜を形成するために用いられる下塗り塗料としては、それ自体既知のものを用いることができ、例えば、金属などの導電性基材に対しては、カチオン電着塗料又はアニオン電着塗料を用いることが好ましく、ポリプロピレンのような低極性の基材に対しては、塩素化ポリオレフィン樹脂系塗料を用いることが好ましい。
下塗り塗料は、塗装後、加熱、送風などの手段によって、硬化させてもよく、又は硬化しない程度に乾燥させてもよい。下塗り塗料としてカチオン電着塗料又はアニオン電着塗料を用いる場合は、下塗り塗膜と、該下塗り塗膜上に続いて形成される塗膜間における混層を防ぎ、外観に優れた複層塗膜を形成するために、下塗り塗料塗装後に加熱して下塗り塗膜を硬化させることが好ましい。
着色塗料(W)
着色塗料(W)は、塗膜の表面平滑性を確保し、且つ耐衝撃性及び耐チッピング性などの塗膜物性を強化するために使用される塗料である。ここで耐チッピング性とは、小石などの障害物の衝突によって生じる塗膜の損傷に対する耐性のことである。
本工程において使用される着色塗料(W)は、当該分野で慣用されている熱硬化性の塗料であって、基体樹脂及び硬化剤と、水及び/又は有機溶剤からなる媒体とを含有する塗料であることが好ましい。
上記の基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を使用することができる。基体樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などを挙げることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどを使用することができる。
また、本発明の方法に使用される着色塗料(W)は、上記の成分に加えて、所望により、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤、顔料などを適宜含有してもよい。
上記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン及びカーボンブラックを好適に使用することができる。
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。なかでも、平滑性に優れた外観を有する複層塗膜を得るため、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、特に平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが好適である。
なお、本明細書における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ、これらの光輝性顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムとがあるが、いずれも使用できる。
着色塗料(W)が、顔料を含有する場合、該顔料の含有量は、着色塗料(W)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜500質量部、好ましくは3〜400質量部、さらに好ましくは5〜300質量部の範囲内であることができる。なかでも、着色塗料(W)が着色顔料及び/又は体質顔料を含有し、該着色顔料及び体質顔料の合計含有量が、着色塗料(W)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜500質量部、特に3〜400質量部、さらに特に5〜300質量部の範囲内であることが好適である。
着色塗料(W)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、着色塗料(W)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは3〜250質量部、さらに好ましくは5〜200質量部の範囲内であることができる。
着色塗料(W)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、着色塗料(W)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは5〜250質量部、さらに好ましくは10〜200質量部の範囲内であることができる。
着色塗料(W)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、着色塗料(W)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常0.1〜50質量部、好ましくは0.2〜30質量部、さらに好ましくは0.3〜20質量部の範囲内であることができる。
上記のごとき構成からなる着色塗料(W)を塗装することにより、塗装物の表面平滑性、耐衝撃性及び耐チッピング性を向上させることができる。
着色塗料(W)の塗装方法としては、当該分野で慣用されている通常の塗装方法を採用することができる。かかる塗装方法としては、例えば、刷毛又は塗装機を用いる塗装方法を挙げることができる。中でも塗装機を用いる塗装方法が好ましい。該塗装機としては、例えば、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機、塗料カセット式のような回転霧化式静電塗装機が好ましく、回転霧化式静電塗装機が特に好ましい。
本工程で形成される着色塗膜は、後述する工程(2)によって形成されるベース塗膜との混層の発生を防止する観点から、着色塗料(W)を塗装した後、加熱して硬化させた乾燥状態の塗膜であることが好ましい。かかる場合、加熱温度は好ましくは110〜180℃、特に好ましくは120〜160℃の範囲内である。また、加熱処理の時間は好ましくは10〜60分間、特に好ましくは15〜40分間の範囲内である。
上記の条件で加熱処理した後の着色塗膜の硬化膜厚は、塗膜の耐衝撃性及び耐チッピング性の観点から好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜40μmの範囲内である。
着色塗料(W)は、得られる複層塗膜の色安定性などの観点から、白黒隠蔽膜厚が好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600−4−1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
工程(1)で得られた着色塗膜は、ゴミ、ブツ、肌荒れなどの塗膜欠陥部分があった場合、これを除去することができる。該塗装欠陥部分の除去は、研磨紙又は研磨布を手動により、又はこれらを器具に取り付けたもの(サンダー)を使用して、塗膜を研削することによって行うことができる。具体的には、例えば、まず、#400〜600程度の比較的粗い粒子の研磨材を含む研磨紙又は研磨布を使用して塗装欠陥部分を研削及び除去し、ついで#1000〜1500程度の細かい粒径の研磨材を含む研磨紙又は研磨布を使用して研削表面を平滑にする。このことが、複層塗膜の仕上り外観を良好にするために好ましい。研削によって生じる塗膜の粉などを除去するために、ガソリンなどの有機溶剤で塗面を拭き、それにより同時に脱脂しておくことが好ましい。この研削は、着色塗膜のうち上記の塗装欠陥部分とその周辺部のみで行う、いわゆるスポット的な範囲で行なうことができ、あるいは着色塗膜全体を研磨することもできる。また、研削する深さは、ゴミ、ブツの大きさ、程度などによって適宜選択することができるが、通常50μm以内、特に10〜30μm程度であることが好ましい。
2.工程(2)
工程(2)は、工程(1)で形成される着色塗膜上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程である。本発明において、ベース塗料(X)は複層塗膜が下地隠蔽性を発揮する上で必須の構成要素である。
ベース塗料(X)
ベース塗料としては、それ自体既知の塗料組成物を使用することができる。特に、ベース塗料として、自動車車体などを塗装する場合に通常用いられる塗料組成物を使用することが好適である。
ベース塗料(X)は、基体樹脂及び硬化剤と、水及び/又は有機溶剤からなる媒体とを含有する塗料であることが好ましい。
該基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を使用することができる。
基体樹脂は、耐候性及び透明性などが良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基などの官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;その他の(メタ)アクリル酸エステル;スチレンなどのモノマー成分を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては、多塩基酸、多価アルコール、変性油を常法により縮合反応させて得られるものを使用することができる。
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β−不飽和酸を付加する方法によって得られるエポキシ樹脂、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸及びトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法などによって得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから成る群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物とを反応させてなるウレタン樹脂;上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジポリイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したウレタン樹脂;などを挙げることができる。
ベース塗料(X)は、水性塗料及び溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。ベース塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂として、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基など、最も好ましくはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより、基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物などを挙げることができる。
また、上記樹脂の水分散化は、モノマー成分を界面活性剤、及び任意選択で水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは親水性基を上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
前記硬化剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化していないポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物を含む)、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素などとホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化するなどによって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
ベース塗料(X)における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性などの観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者が50〜90質量%、特に60〜85質量%、後者が10〜50質量%、特に15〜40質量%の範囲内とすることが好ましい。
ベース塗料(X)には、必要に応じて有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテートなどのエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル;ブタノール、プロパノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコールなどのアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトンの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ベース塗料(X)は、上記の成分に加えて、所望により、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、粘性調整剤、防錆剤、表面調整剤などを適宜含有してもよい。
ベース塗料(X)は、透明塗料もしくは着色塗料であることが好ましい。
ベース塗料(X)が透明塗料であるとは、ベース塗料(X)を塗装して得られる膜厚35μmの乾燥膜のヘイズ値が25%以下であることを指す。なお、本発明において、ヘイズ値は、平滑なPTFE板にベース塗料(X)を塗装し、硬化、剥離した塗膜を濁度計COH−300A(商品名、日本電色工業社製)にて測定した拡散光線透過率(DF)及び平行光線透過率(PT)から、次式(1)によって計算された数値として定義するものとする。
ヘイズ値=100*DF/(DF+PT) ・・・(1)
ベース塗料(X)が透明塗料である場合には、着色顔料を含まず、必要に応じて体質顔料を含有することができる。体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、炭酸マグネシウム、タルク、アルミナホワイトなどを挙げることができる。
上記体質顔料を配合する場合、その配合量は、ベース塗料(X)中の樹脂固形分100質量部に対し0.1〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部の範囲内である。
ベース塗料(X)が着色塗料である場合には、着色顔料を含有する。ベース塗料(X)は、光線透過制御の観点からは酸化チタン及びカーボンブラック等の着色顔料を含有することができ、さらに必要に応じて酸化チタン及びカーボンブラック以外の従来公知の着色顔料を含有することができる。かかる着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、酸化鉄顔料、チタンイエローなどの複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、光輝性顔料などの中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。光輝性顔料としては、着色塗料(W)の欄で例示したものを挙げることができる。
上記着色顔料を配合する場合、その配合量は、ベース塗料(X)中の樹脂固形分100質量部に対し0.1〜50質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2〜40質量部の範囲内である。
ベース塗料(X)により得られるベース塗膜の硬化膜厚は、平滑性及び金属調光沢感などの観点から、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは3〜20μm、さらにより好ましくは5〜15μmである。
ベース塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装などの方法が挙げられる。ベース塗料(X)の塗装の際は、必要に応じて、静電印加されていてもよく、中でも、回転霧化方式の静電塗装及びエアスプレー方式の静電塗装が好ましく、回転霧化方式の静電塗装が特に好ましい。
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装又は回転霧化塗装する場合には、ベース塗料(X)は、適宜、水及び/又は有機溶剤ならびに必要に応じて粘性調整剤、消泡剤などの添加剤を含有して塗装に適した固形分含有率及び粘度に調整されることが好ましい。
ベース塗料(X)の固形分含有率は10〜60質量%、好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲であることが好ましい。ベース塗料(X)の20℃、6rpmにおけるB型粘度計による粘度が好ましくは200〜7000cps、より好ましくは300〜6000cps、さらに好ましくは500〜5000cpsの範囲である。
3.工程(3)
工程(3)は、工程(2)で形成されるベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程である。
光輝性顔料分散体(Y)
光輝性顔料分散体(Y)は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有し、かつ該光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率は、得られる塗膜の金属調光沢感の点から、0.5〜10質量%、好ましくは0.7〜9質量%、さらに好ましくは1〜8質量%である。特に鱗片状光輝性顔料(B)が蒸着アルミニウムフレーク顔料である場合には、製造上の容易性から、該光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率が1〜5質量%であることが好ましい。
表面調整剤(A)
表面調整剤(A)は、被塗物への光輝性顔料分散体(Y)の塗装時に、水に分散された後述の鱗片状光輝性顔料(B)を被塗物上に一様に配向するのを支援するために使用される。
表面調整剤(A)としては、既知のものを使用できる。なかでも特に、イソプロパノール/水/表面調整剤(A)=4.5/95/1の割合で混合した液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が150mPa・sとなるように調整し予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に測定したときの、ブリキ板に対する接触角が好ましくは8〜20°、より好ましくは9〜19°、さらに好ましくは10〜18°となる表面調整剤が好ましい。なお、粘度の調整は、具体的には、Acrysol ASE−60(商品名、ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製、固形分:28%)及びジメチルエタノールアミンを添加することで行なう。
4.5/95/1というイソプロパノール/水/表面調整剤(A)の質量比は、表面調整剤の評価用の光輝性顔料分散体(Y)の成分の比に相当する。B型粘度計でのローター回転速度60rpmにおける150mPa・sの粘度は、被塗物への塗装時の通常の値である。また、上記の8〜20°というブリキ板に対する接触角は、標準的な塗装条件における液体の濡れ広がりを指している。接触角が8°以上であると、液体は広がり過ぎることなく被塗物上に塗装され、20°以下であると液体ははじき過ぎることなく被塗物上に一様に塗装される。
表面調整剤(A)としては、例えばシリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤などの表面調整剤が挙げられる。上記表面調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
表面調整剤(A)の市販品は例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エヴォニック社製のTegoシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズなどが挙げられる。
シリコーン系表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサン及びこれを変性した変性シリコーンが使用される。変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンなどが挙げられる。
表面調整剤(A)はその動的表面張力が好ましくは50〜70mN/m、より好ましくは53〜68mN/m、さらに好ましくは55〜65mN/mである。本明細書において動的表面張力は、最大泡圧力法による周波数10Hzでの表面張力値をいう。動的表面張力はSITA測定装置(英弘精機株式会社 SITA t60)を用いて測定した。
また、表面調整剤(A)はその静的表面張力が好ましくは15〜30mN/m、より好ましくは18〜27mN/m、さらに好ましくは20〜24mN/mである。本明細書において静的表面張力は、白金リング法による表面張力値をいう。静的表面張力は表面張力測定機(英弘精機株式会社 DCAT 21)を用いて測定した。
さらに、表面調整剤(A)はそのラメラ長が好ましくは6.0〜9.0mm、より好ましくは6.5〜8.5mm、さらに好ましくは7.0〜8.0mmである。
光輝性顔料分散体(Y)における表面調整剤(A)の含有量は、得られる複層塗膜が金属光沢感に優れる観点から、光輝性顔料分散体(Y)100質量部を基準として固形分で好ましくは0.01〜4質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。
鱗片状光輝性顔料(B)
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)としては、例えば、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料などの金属フレーク顔料、光干渉性顔料などを挙げることができる。中でも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から、蒸着金属フレーク顔料及びアルミニウムフレーク顔料が好適である。
蒸着金属フレーク顔料は、ベース基材上に金属膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着金属膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルムなどを挙げることができる。
上記金属の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレスなどが挙げられる。なかでも特に入手しやすさ及び取扱いやすさなどの観点から、アルミニウム又はクロムが好適である。本明細書では、アルミニウムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着アルミニウムフレーク顔料」と呼び、クロムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着クロムフレーク顔料」と呼ぶ。
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「METALURE」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Hydroshine WS」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)などを挙げることができる。
上記蒸着クロムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「Metalure Liquid Black」シリーズ(商品名、エカルト社製)などを挙げることができる。
上記蒸着金属フレーク顔料の平均厚みは、好ましくは0.005〜1μm、より好ましくは、0.01〜0.1μmである。
上記蒸着金属フレーク顔料の平均粒子径(D50)は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。このことが、塗料中における貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得るなどの観点から好ましい。上記平均粒子径は、長径を意味する。
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得るなどの観点から好ましい。
アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミル又はアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸などの高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。粉砕後の化学的処理に応じて、上記粉砕媒液はアルコールなどの水溶性溶剤で置換してもよい。
また、アルミニウムフレーク顔料は、水との反応を抑制する処理をされていることが望ましく、特に表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性及び金属調光沢に優れた塗膜を得るなどの観点から好ましい。
上記アルミニウムフレーク顔料の平均厚みは、好ましくは0.03〜2μm、より好ましくは、0.05〜1μmである。
上記アルミニウムフレーク顔料の平均粒子径(D50)は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μm程度のものである。このことが、塗料中における貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得るなどの観点から好ましい。上記平均粒子径は、長径を意味する。
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、得られる複層塗膜が金属光沢感に優れる観点から、光輝性顔料分散体(Y)100質量部を基準として固形分で好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.3〜4質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
粘性調整剤(C)
本発明の光輝性顔料分散体における粘性調整剤(C)としては既知のものを使用できるが、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤などを挙げることができる。なかでも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤を使用することが好ましく、特にセルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイトなどのスメクタイト族粘土鉱物;Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性雲母族粘土鉱物;バーミキュライト;これらの置換体又は誘導体;並びにこれらの混合物が挙げられる。
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などを挙げることができる。
ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)などが挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価としては、30〜300mgKOH/g、好ましくは80〜280mgKOH/gの範囲内のものを使用することができる。
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロース、セルロースナノファイバーなどを挙げることができ、なかでも、金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から、セルロースナノファイバーを使用することが好ましい。
上記セルロースナノファイバーは、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、ナノセルロースクリスタルと称されることもある。
上記セルロースナノファイバーは、金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から、数平均繊維径が、好ましくは2〜500nm、より好ましくは2〜250nm、さらに好ましくは2〜150nmの範囲内であり、数平均繊維長が、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜15μm、さらに好ましくは0.1〜10μmの範囲内である。また、数平均繊維長を数平均繊維径で除した数値であるアスペクト比は、好ましくは50〜10000、より好ましくは50〜5000、さらに好ましくは50〜1000の範囲内である。
上記数平均繊維径及び数平均繊維長は、例えば、セルロースナノファイバーを水で希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像から測定算出される。
上記セルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊し、水中で安定化させたものを使用することができる。ここでセルロース原料は、セルロースを主体とした様々な形態の材料を意味し、具体的には例えば、パルプ(木材パルプ、ジュート、マニラ麻、ケナフなどの草本由来のパルプなど);微生物によって生産されるセルロースなどの天然セルロース;セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体などの何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース;及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミルなどの機械的処理などをすることによってセルロースを解重合した微細セルロース;などが挙げられる。
上記セルロース原料の解繊方法としては、セルロース原料が繊維状態を保持している限り特に制限はないが、例えば、ホモジナイザー又はグラインダーなどを用いた機械的解繊処理、酸化触媒などを用いた化学的処理、微生物などを用いた生物的処理といった方法が挙げられる。
また、上記セルロースナノファイバーとしては、アニオン変性セルロースナノファイバーを使用することもできる。アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバーなどが挙げられる。上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、セルロース原料に、カルボキシル基、カルボキシルメチル基などの官能基を公知の方法により導入し、得られた変性セルロースを洗浄して変性セルロースの分散液を調製し、この分散液を解繊して得ることができる。上記カルボキシル化セルロースは酸化セルロースとも呼ばれる。
上記酸化セルロースは、例えば、前記セルロース原料を、N−オキシル化合物、臭化物、及びヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することによって得ることができる。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロースをナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で適宜選択できる。
上記酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。酸化セルロースにおけるカルボキシル基量は、該酸化セルロースの固形分質量に対して、0.2mmol/g以上となるように条件を設定することが好ましい。カルボキシル基量は、酸化反応時間の調整;酸化反応温度の調整;酸化反応時のpHの調整;N−オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、酸化剤などの添加量の調整などを行なうことにより調整できる。
前記カルボキシメチル化セルロースは、例えば、前記セルロース原料と溶媒とを混合し、セルロース原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属をマーセル化剤として使用して、反応温度0〜70℃、反応時間15分〜8時間程度で、マーセル化処理を行い、その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃で30分〜10時間程度反応することによって得ることができる。
上記セルロース原料にカルボキシメチル基を導入して得られた変性セルロースにおけるグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.02〜0.50であることが好ましい。
上記のようにして得られたアニオン変性セルロースは、水性溶媒中で分散液とすることができ、さらに該分散液を解繊することができる。解繊の方法は特に限定されないが、機械的処理によって行う場合、使用される装置は、高速せん断型、衝突型、ビーズミル型、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式のいずれのタイプのものも使用することができる。また、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
前記セルロースナノファイバーの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(登録商標)などが挙げられる。
本発明の光輝性顔料分散体(Y)におけるセルロース系粘性調整剤の含有量は、金属調光沢に優れた塗膜を得る点から、鱗片状光輝性顔料の含有量100質量部に基づいて、2〜150質量部の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは3〜120質量部の範囲内である。
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤(C)の含有量は、得られる複層塗膜が金属光沢感に優れる観点から、光輝性顔料分散体(Y)100質量部を基準として、固形分で好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1.5質量部である。
その他の成分
光輝性顔料分散体(Y)は、特に、光輝性顔料分散体(Y)が蒸着金属フレーク顔料又はアルミニウムフレーク顔料を含有する場合、得られる塗膜の金属調光沢及び耐水性の観点から、リン酸基含有樹脂を含有することが好ましい。
リン酸基含有樹脂は、例えば、リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、溶液重合法などの既知の方法で共重合することによって製造することができる。上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキルリン酸の反応生成物などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記リン酸基含有樹脂において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合させる際の使用割合は、前者/後者の質量比で、1/99〜40/60程度が好ましく、5/95〜35/65程度がより好ましく、10/90〜30/70程度がさらに好ましい。
光輝性顔料分散体(Y)は、さらに必要に応じて、有機溶剤、前記鱗片状光輝性顔料(B)以外の顔料、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤などを適宜含有しても良い。
光輝性顔料分散体(Y)は、得られる塗膜の耐水付着性及び/又は貯蔵安定性の観点から基体樹脂及び/又は分散樹脂を含むことができるが、これらを実質的に含まなくても本発明の効果を発揮することができる。
上記基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
上記分散樹脂としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリカルボン酸樹脂系、ポリエステル系などの、既存の分散樹脂の使用が可能である。
架橋性成分(D)
光輝性顔料分散体(Y)は、得られる塗膜の耐水付着性の観点から、架橋性成分(D)を含んでいてもよい。特に、後述するクリヤー塗料(Z)が1液型クリヤー塗料であって該架橋性成分(D)を含まない場合は、光輝性顔料分散体(Y)が該架橋性成分(D)を含んでいることが好ましい。
本明細書において、架橋性成分(D)は、メラミン、メラミン誘導体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール基又はN−アルコキシメチル基含有(メタ)アクリルアミドの共重合体、ブロック化されていてもされていなくてもよいポリイソシアネート化合物から成る群から選ばれる。
メラミン誘導体としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどで、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
メラミン誘導体の市販品としては、例えばサイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、ユーバン20SE60、ユーバン122、ユーバン28−60(以上、三井化学社製)、スーパーベッカミンJ−820−60、スーパーベッカミンL−127−60,スーパーベッカミンG−821−60(以上、DIC社製)などが挙げられる。上記メラミン及びメラミン誘導体は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記N−メチロール基又はN−アルコキシメチル基含有(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。上記(メタ)アクリルアミド誘導体は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ブロック化されていないポリイソシアネート化合物は1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、これらのいずれかのポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。該ポリイソシアネートの誘導体は、単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
脂肪族ジイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体、脂環族ジイソシアネートのなかでも4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性などの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水などが挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ブロック化されているポリイソシアネート化合物は上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物である。
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、脂肪族アルコール系ブロック剤、エーテル系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、酸アミド系ブロック剤、イミド系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤、尿素系ブロック剤、カルバミン酸エステル系ブロック剤、イミン系ブロック剤、亜硫酸塩系ブロック剤;アゾール系の化合物などが挙げられる。
フェノール系ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどが挙げられる。
ラクタム系ブロック剤としては、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどが挙げられる。
脂肪族アルコール系ブロック剤としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
エーテル系ブロック剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどが挙げられる。
アルコール系ブロック剤としては、ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
オキシム系ブロック剤としては、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどが挙げられる。
活性メチレン系ブロック剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどが挙げられる。
メルカプタン系ブロック剤としては、ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどが挙げられる。
酸アミド系ブロック剤としては、アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどが挙げられる。
イミド系ブロック剤としては、コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
アミン系ブロック剤としては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどが挙げられる。
イミダゾール系ブロック剤としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどが挙げられる。
尿素系ブロック剤としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などが挙げられる。
カルバミン酸エステル系ブロック剤としては、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
イミン系ブロック剤としては、エチレンイミン、プロピレンイミンなどが挙げられる。
亜硫酸塩系ブロック剤としては、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどが挙げられる。
アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5-ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5-ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどのピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどのイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でない溶剤が良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
光輝性顔料分散体(Y)が架橋性成分(D)を含む場合、架橋性成分(D)の含有量は、塗膜の耐水付着性の点から、光輝性顔料分散体(Y)中の鱗片状光輝性顔料(B)固形分100質量部に基づいて、固形分として1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜95質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜90質量部の範囲内である。
光輝性顔料分散体(Y)が、前述した基体樹脂及び分散樹脂を含有し、さらに架橋性成分(D)を含む場合、基体樹脂、分散樹脂と架橋性成分(D)の合計量は、金属調光沢を有する塗膜を形成する点から、光輝性顔料分散体(Y)中の鱗片状光輝性顔料(B)固形分100質量部に基づいて、固形分としてその含有量は、塗膜の耐水付着性の点から、1〜500質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜300質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜100質量部の範囲内である。
光輝性顔料分散体(Y)の接触角
光輝性顔料分散体(Y)の接触角は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは8〜20°、より好ましくは10〜18°である。このとき、使用する接触角計は、協和界面科学社製 CA−X150であり、光輝性顔料分散体(Y)を、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が150mPa・sとなるように調整し、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に測定した値を指す。
光輝性顔料分散体(Y)の塗装
光輝性顔料分散体(Y)の塗装において、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が好ましくは60〜2000mPa・s、より好ましくは60〜1500mPa・s、さらに好ましくは60〜1000mPa・sである。このとき、使用する粘度計は、LVDV−I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
光輝性顔料分散体(Y)を塗装して得られた光輝性塗膜は乾燥していることが好ましい。上記光輝性塗膜を乾燥させる方法に特に制限はないが、例えば、常温で15〜30分間放置する方法、50〜100℃の温度で30秒〜10分間プレヒートを行なう方法などが挙げられる。
光輝性顔料分散体(Y)が被塗物に付着してから30秒後の膜厚は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは3〜50μm、より好ましくは4〜40μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
光輝性塗膜の厚さは、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、乾燥膜厚として好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.02〜4μm、さらに好ましくは0.02〜3.5μmである。
特に、光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)が蒸着金属フレーク顔料である場合には、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、光輝性塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、好ましくは0.02〜2μm、より好ましくは0.05〜1.5μmである。
特に、光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)がアルミニウムフレーク顔料である場合には、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、光輝性塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.15〜3.5μmである。
なお、本明細書において、乾燥膜厚は、下記式(2)から算出されたものである。
x=(sc*10000)/(S*sg) ・・・(2)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm2
sg:塗膜比重[g/cm3
4.工程(4)
工程(4)は、工程(3)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程である。
クリヤー塗料(Z)
クリヤー塗料(Z)は、基体樹脂と硬化剤とを含有する1液型クリヤー塗料であることもできるし、又は水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を有する2液型クリヤー塗料であることもできる。
クリヤー塗料(Z)は、得られる複層塗膜の耐水付着性及び金属光沢感の点から水酸基含有樹脂及びイソシアネート基含有化合物を含有する2液型クリヤー塗料であることが好ましい。
水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は80〜200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100〜180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。水酸基価が80mgKOH/g以上であると、架橋密度が高いために耐擦り傷性が十分である。また、200mgKOH/g以下であると塗膜の耐水性が満足される。
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であるのが好ましく、5000〜30000の範囲内であるのがさらに好ましい。重量平均分子量が2500以上であると耐酸性などの塗膜性能が満足され、また、40000以下であると塗膜の平滑性が十分であるため、仕上り性が満足される。
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜20℃、特に−30℃〜10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−40℃以上であると塗膜硬度が十分であり、また、20℃以下であると塗膜の塗面平滑性が満足される。
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、これらのいずれかのポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。該ポリイソシアネートの誘導体は、単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
脂肪族ジイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体、脂環族ジイソシアネートのなかでも4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性などの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水などが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、脂肪族アルコール系ブロック剤、エーテル系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、酸アミド系ブロック剤、イミド系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤、尿素系ブロック剤、カルバミン酸エステル系ブロック剤、イミン系ブロック剤、亜硫酸塩系ブロック剤;アゾール系の化合物などが挙げられる。
フェノール系ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどが挙げられる。
ラクタム系ブロック剤としては、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどが挙げられる。
脂肪族アルコール系ブロック剤としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
エーテル系ブロック剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどが挙げられる。
アルコール系ブロック剤としては、ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
オキシム系ブロック剤としては、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどが挙げられる。
活性メチレン系ブロック剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどが挙げられる。
メルカプタン系ブロック剤としては、ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどが挙げられる。
酸アミド系ブロック剤としては、アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどが挙げられる。
イミド系ブロック剤としては、コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
アミン系ブロック剤としては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどが挙げられる。
イミダゾール系ブロック剤としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどが挙げられる。
尿素系ブロック剤としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などが挙げられる。
カルバミン酸エステル系ブロック剤としては、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
イミン系ブロック剤としては、エチレンイミン、プロピレンイミンなどが挙げられる。
亜硫酸塩系ブロック剤としては、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどが挙げられる。
アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどのピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどのイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。 ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の2液型クリヤコート塗料において、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性などの観点から、水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲内である。
1液型クリヤー塗料における基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂などを挙げることができる。クリヤー塗料(Z)として1液型塗料を使用する場合、該クリヤー塗料(Z)は得られる塗膜の耐水付着性の観点から、架橋性成分(D)を含有することが好ましい。特に、前記光輝性顔料分散体(Y)が該架橋性成分(D)を含まない場合には、クリヤー塗料(Z)が架橋性成分(D)を含むことが好ましい。
前記架橋性成分(D)としては、光輝性顔料分散体(Y)の項目で述べたものを使用することができる。
クリヤー塗料(Z)が架橋性成分(D)を含む場合、その含有量は、塗膜の耐水付着性の点から、クリヤー塗料(Z)の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分として、5〜60質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部の範囲内、さらに好ましくは15〜40質量部の範囲内である。
クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて、水及び有機溶剤などの溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜含有することができる。
上記クリヤー塗料(Z)は、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜含有することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該クリヤー塗料(Z)中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは0.01〜10重量部である。
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤などが使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂などの調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30〜70質量%程度であるのが好ましく、40〜60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
前記光輝性塗膜上に、前述のクリヤー塗料(Z)の塗装が行なわれる。クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されず前記着色塗料(X)及び光輝性顔料分散体(Y)と同様の方法で行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
また、クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤などの溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
クリヤー塗料(Z)を塗装し、クリヤー塗膜を形成させた後、揮発成分の揮散を促進するために、例えば、50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なうこともできる。
5.工程(5)
工程(5)は、工程(2)〜(4)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程である。
加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉などの乾燥炉を適用できる。加熱温度は好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜140℃の範囲内である。加熱時間は、特に制限されないが、好ましくは10〜40分間、より好ましくは20〜30分間の範囲内である。
本発明において得られた複層塗膜は、金属調光沢及び耐水付着性に優れる。本明細書において、金属調光沢は鏡面反射率と粒子感とで評価する。
鏡面反射率はJIS K−5400 7.6(1990)に準じて測定される60°グロス値によって表される。
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)における粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。
本発明の複層塗膜形成方法では、光輝性顔料(B)が蒸着金属フレーク顔料の場合、複層塗膜の60°グロス値は120以上、好ましくは130以上であり、複層塗膜のHG値は10〜40、好ましくは10〜35である。
光輝性顔料(B)がアルミニウムフレーク顔料の場合、60°グロス値は105以上、好ましくは110以上であり、HG値は35〜65、好ましくは35〜60である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
アクリル樹脂水分散体の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、及び「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂水分散体(R−1)を得た。得られたアクリル樹脂水分散体は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
アクリル樹脂溶液の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%のアクリル樹脂溶液(R−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/g、重量平均分子量が58000であった。
ポリエステル樹脂溶液の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分70%のポリエステル樹脂溶液(R−3)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1400であった。
リン酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した後、110℃に保持しつつ、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」、大阪有機化学工業社製)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びtert−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に滴下し、さらにtert−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部とからなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有アクリル樹脂溶液(R−4)を得た。リン酸基含有アクリル樹脂は、酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温させた。その後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。次いで、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
体質顔料分散液の製造
製造例5
アクリル樹脂溶液(R−2)を327部(固形分で180部)、脱イオン水360部、サーフィノール104A(商品名、エアープロダクツ社製消泡剤、固形分50%)6部、及びバリファインBF−20(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均粒子径0.03μm)250部を、ペイントコンディショナー中に入れ、ガラスビーズ媒体を加えて、室温で1時間混合分散し、固形分44%の体質顔料分散液(P−1)を得た。
着色顔料分散液の製造
製造例6
アクリル樹脂溶液(R−2)を327部(固形分で180部)、「TITANIX JR−806」(商品名、テイカ株式会社製、酸化チタン)500部、「MA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)5部及び脱イオン水500部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して固形分51%の着色顔料分散液(P−2)を得た。
ベース塗料(X)の製造
透明ベース塗料(X−1)の製造
製造例7
攪拌混合容器に、体質顔料分散液(P−1)を固形分で14部、アクリル樹脂水分散体(R−1)を固形分で40部、ポリエステル樹脂溶液(R−3)を固形分で23部、「ユーコートUX−310」(商品名、三洋化成社製、ウレタン樹脂水分散体、固形分含有率40%)を固形分で10部、及び「サイメル251」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分含有率80%)を固形分で27部となるように添加して攪拌混合し、透明ベース塗料(X−1)を調製した。
着色ベース塗料(X−2)の製造
製造例8
攪拌混合容器に、着色顔料分散液(P−2)を固形分で23部、アクリル樹脂水分散体(R−1)を固形分で40部、ポリエステル樹脂溶液(R−3)を固形分で23部、「ユーコートUX−310」(商品名、三洋化成社製、ウレタン樹脂水分散体、固形分含有率40%)を固形分で10部、及び「サイメル251」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分含有率80%)を固形分で27部となるように添加して攪拌混合し、着色ベース塗料(X−2)を調製した。
表面調整剤(A)
後述する光輝性顔料分散体(Y)の製造に使用する表面調整剤(A)の性質を、それぞれ表1に示す。
(A−1)〜(A−4)はいずれも市販の表面調整剤であり、(A−1)はシリコーン系表面調整剤、(A−2)は両親媒性オリゴマーの表面調整剤とシリコーン系表面調整剤との混合物、(A−3)はポリエーテル系シロキサン、(A−4)はフッ素変性アクリル系表面調整剤である。
Figure 2018092874
(注1)イソプロパノール/水/表面調整剤(A)=4.5/95/1の質量の割合で混合した液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整し、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に接触角計(CA−X150、商品名、協和界面科学社製)を用いて測定したときのブリキ板に対する接触角。
光輝性顔料分散体(Y)の製造
製造例9
攪拌混合容器に、蒸留水を3部、表面調整剤(A−3)を固形分で0.02部、Hydroshine WS−3004(水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)を固形分で1.4部、「レオクリスタ」(商品名、第一工業製薬社製、セルロースナノファイバー、固形分:2%)を固形分で0.4部、ジメチルエタノールアミンを0.1部、及びリン酸基含有アクリル樹脂溶液(R−4)を固形分で0.5部となるように添加して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(Y−1)を調整した。
製造例10〜43
表2に記載の配合とする以外は全て製造例9と同様にして光輝性顔料分散体(Y−2)〜(Y−17)を得た。表2の光輝性顔料(B)として蒸着アルミニウムフレークを用いた系では、蒸着アルミニウムフレーク自体の固形分が10質量%であるため固形分含有率が10質量%を超える光輝性顔料分散体(Y)を製造することが困難であった。
また、表3に記載の配合とする以外は全て製造例9と同様にして光輝性顔料分散体(Y−18)〜(Y−35)を得た。
なお、表2及び3における各成分は以下の通りである。
「EMR B6360」(商品名) 東洋アルミ社製、シリカ処理アルミニウムフレーク
「Acrysol ASE−60」(商品名) ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系粘性調整剤、固形分:28%
「サイメル327」(商品名)水溶性メラミン樹脂、固形分90%
「HR−517」商品名:ダイヤナールHR517、三菱レイヨン社製、重合性成分としてN−ブトキシメチルアクリルアミドを含むアクリル樹脂、固形分50%
「シアニンブルー5206」(商品名)大日精化工業社製、有機系青色顔料
Figure 2018092874
Figure 2018092874
Figure 2018092874
Figure 2018092874
着色塗料(W)の調製
着色塗料(W−1)として、「TP−65 ダークグレー」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:20)を用いた。
クリヤー塗料(Z)の調製
クリヤー塗料(Z−1)
「KINO6510」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂及びウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z−1)として用いた。
クリヤー塗料(Z−2)
「KINO1200」(商品名:関西ペイント株式会社、酸/エポキシ硬化型アクリル樹脂系1液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z−2)として用いた。
クリヤー塗料(Z−3)
「マジクロンTC−71」(商品名:関西ペイント株式会社、アクリル及びメラミン樹脂系1液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z−3)として用いた。
被塗物の調製
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント社製、アミン変性エポキシ樹脂系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて被塗物1を得た。
試験板の作成
実施例1
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させた。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−1)を、表2に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−1)の乾燥塗膜が0.5μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
ここで、表4に記載した光輝性塗膜の乾燥塗膜の膜厚は、下記式(2)から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=(sc*10000)/(S*sg) ・・・(2)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm
sg:塗膜比重[g/cm
実施例2〜22、及び比較例1〜2
表4に記載のベース塗料(X)、分散体(Y)、クリヤー塗料(Z)及び光輝性塗膜の乾燥膜厚とする以外は全て実施例1と同様にして試験板を得た。
実施例23
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させた。次いで#2000の研磨紙を使用して塗膜を研削し、さらにガソリンで塗面を拭いた。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−2)を、表2に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−2)の乾燥塗膜が0.5μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
比較例3
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、室温にて15分間放置した。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−2)を、表2に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−2)の乾燥塗膜が0.5μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
実施例24
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させた。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−18)を、表3に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−18)の乾燥塗膜が0.5μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
ここで、表5に記載した光輝性塗膜の乾燥塗膜の膜厚は、上記式(2)から算出した。以下の実施例についても同様である。
実施例25〜45及び比較例4〜6
表5に記載のベース塗料(X)、分散体(Y)、クリヤー塗料(Z)及び光輝性塗膜の乾燥膜厚とする以外は全て実施例24と同様にして試験板を得た。
実施例46
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させた。次いで#2000の研磨紙を使用して塗膜を研削し、さらにガソリンで塗面を拭いた。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−19)を、表3に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−19)の乾燥塗膜が0.9μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
比較例7
工程(1):被塗物1上に、着色塗料(W−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30〜40μmになるように静電塗装し、室温にて15分間放置した。
工程(2):次いで、硬化された塗膜の上に、透明ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10〜12μmになるように静電塗装し、2分間放置した。
工程(3):次いで、塗膜の上に、光輝性顔料分散体(Y−19)を、表3に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後の光輝性顔料分散体(Y−19)の乾燥塗膜が0.9μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置した。
工程(4):次いで、乾燥塗膜の塗面に、クリヤー塗料(Z−1)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、工程(5)の後のクリヤー塗料(Z−1)の乾燥塗膜が25〜35μmとなるように塗装した。
工程(5):塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
塗膜評価
実施例1〜23、及び比較例1〜3の塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について塗膜の外観及び性能を評価し、表4にその結果を示した。
外観評価
塗膜外観は、粒子感、耐水付着性、鏡面光沢度(60°グロス)、下地隠蔽性によって評価した。
粒子感
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)で評価した。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0〜100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした。
粒子感HGが10〜40であると、金属調塗膜の緻密性の点で好ましい。
耐水付着性
試験板を80℃の温水に5時間浸漬し、引き上げ直後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作成した。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水付着性を評価した。
合格:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
不合格:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下
鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。数値が120以上が合格である。
下地隠蔽性
実施例1〜22及び比較例1〜2において、工程(2)の着色塗料(W−1)による着色塗膜を得た後に、#2000の研磨紙を使用して塗膜表面を研削し、さらにガソリンで塗膜表面を拭いて、次いで工程(3)以降の工程を行うことによって得られた複層塗膜を目視し、下記基準で下地隠蔽性を評価した。実施例23の試験塗板はそのまま下地隠蔽性の試験に供した。
合格:削り跡が確認できない
不合格:削り跡が確認できる
比較例2の試験塗板の複層塗膜は下地隠蔽性がないため、本発明の複層塗膜として不適であった。
Figure 2018092874
Figure 2018092874
Figure 2018092874
実施例24〜46、及び比較例4〜7の塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について塗膜の外観及び性能を評価し、表5にその結果を示した。
外観評価
塗膜外観は、粒子感、耐水付着性、鏡面光沢度(60°グロス)、下地隠蔽性によって評価した。
粒子感
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)で評価した。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0〜100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした。
粒子感HGが35〜65であると、金属調塗膜の緻密性の点で好ましい。
耐水付着性
試験板を80℃の温水に5時間浸漬し、引き上げ直後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作成した。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。
合格:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
不合格:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下
鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。数値が105以上が合格である。
下地隠蔽性
実施例24〜45、比較例4〜7において、工程(2)の着色塗料(W−1)による着色塗膜を得た後に、#2000の研磨紙を使用して塗膜表面を研削し、さらにガソリンで塗膜表面を拭いて、次いで工程(3)以降の工程を行うことによって得られた複層塗膜を目視し、下記基準で下地隠蔽性を評価した。実施例46の試験塗板はそのまま下地隠蔽性の試験に供した。
合格:削り跡が確認できない
不合格:削り跡が確認できる
比較例6の試験塗板の複層塗膜は下地隠蔽性がないため、本発明の複層塗膜として不適であった。
Figure 2018092874
Figure 2018092874
Figure 2018092874
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。

Claims (10)

  1. 下記の工程(1)〜(5):
    (1)被塗物上に、着色塗料(W)を塗装し、加熱して着色塗膜を形成する工程、
    (2)工程(1)で形成される着色塗膜上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
    (3)工程(2)で形成されるベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、
    (4)工程(3)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
    (5)工程(2)〜(4)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、
    を順次行うことにより複層塗膜を形成する方法であって、
    光輝性顔料分散体(Y)が、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有し、且つ固形分含有率が0.5〜10質量%である
    複層塗膜形成方法。
  2. 温度20℃における、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの光輝性顔料分散体(Y)の粘度(B60)が60〜2000mPa・sである請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
  3. 表面調整剤(A)の動的表面張力が50〜70mN/mである請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
  4. 鱗片状光輝性顔料(B)の含有量が、光輝性顔料分散体(Y)100質量部を基準として0.2〜5質量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  5. 粘性調整剤(C)がセルロースナノファイバーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  6. 光輝性塗膜が、0.02〜5μmの乾燥膜厚を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  7. ベース塗膜が、透明塗膜もしくは着色塗膜である請求項1〜6のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  8. クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である請求項1〜7のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  9. 鱗片状光輝性顔料(B)が蒸着金属フレーク顔料であり、複層塗膜の60°グロス値が120以上であり、HG値が10〜40である請求項1〜8のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
  10. 鱗片状光輝性顔料(B)がアルミニウムフレーク顔料であり、複層塗膜の60°グロス値が105以上であり、HG値が35〜65である請求項1〜8のいずれか一項に記載の複層塗膜形成方法。
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