JPWO2018074550A1 - メタクリル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

架橋ゴム成分を含むメタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、重量平均分子量3.2万〜30万のブロック共重合体またはグラフト共重合体からなる化合物〔C〕0.1〜10質量%とを含有してなるメタクリル樹脂組成物、および当該メタクリル樹脂組成物からなるフィルム、光学フィルム等の成形体。

Description

本発明は、メタクリル樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、金型汚れなどを抑制しつつ溶融成形することができ、且つ紫外線吸収剤などのような添加物質のブリードアウトを生じ難い成形体を与えるのに適したメタクリル樹脂組成物に関する。
メタクリル樹脂は、高い透明性を有する材料なので、その成形体は、光学部材、照明部材、看板部材、装飾部材等において有用である。紫外線によるメタクリル樹脂の劣化を防ぐ目的で紫外線吸収剤がメタクリル樹脂に練り込まれる。メタクリル樹脂は、紫外線吸収剤との相溶性が低いので、多量に紫外線吸収剤を練り込むと透明性が低下する。また、練り込んだ紫外線吸収剤が、溶融成形時にブリードアウトし、ロール、ダイスなどに付着して、金型汚れを引き起こすことがある。金型汚れが生じると成形体の表面性を悪化させる。金型汚れを防止するために定期的にロールなどを洗浄する必要があるので生産性を低下させる。さらに、薄肉の成形体では練り込まれた紫外線吸収剤が時間と伴にブリードアウトして成形体の特性を劣化させることがある。
特許文献1は、メタクリル樹脂とブロック共重合体とを含有するメタクリル樹脂組成物を開示している。特許文献1は紫外線吸収剤などの添加剤を1質量%以下で添加できると述べている。
特許文献2は、ポリメチルメタクリレート樹脂と、主鎖がポリエチレンで側鎖がポリスチレンであるグラフト共重合体とを含有する組成物を開示している。
特許文献3は、ポリカーボネート系樹脂セグメントおよびビニル系樹脂セグメントからなり、一方のセグメントにより形成される連続相中に他方のセグメントにより形成される分散相が微細に分散している多層構造を示すグラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とからなる熱可塑性樹脂組成物を開示している。
国際公開第2014/073216号 特開2015−021047号公報 特開平8−333516号公報
本発明の目的は、金型汚れなどを抑制しつつ溶融成形することができ、且つ紫外線吸収剤のブリードアウトが生じ難い成形体を与えるのに適したメタクリル樹脂組成物等を提供することである。
上記目的を達成すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
[1] メタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、化合物〔C〕0.1〜10質量%とを含有してなり、
メタクリル樹脂〔A〕は架橋ゴム成分を含み、且つ
化合物〔C〕は重量平均分子量3.2万〜30万のブロック共重合体または重量平均分子量3.2万〜30万のグラフト共重合体からなる、
メタクリル樹脂組成物。
[2] メタクリル樹脂〔A〕はアセトン不溶成分とアセトン可溶成分とを含み、前記の架橋ゴム成分がアセトン不溶成分を含むものである、[1]に記載のメタクリル樹脂組成物。
[3] アセトン可溶成分が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有して成る重合体である、[2]に記載のメタクリル樹脂組成物;
[4] アセトン可溶成分が、重量平均分子量5万〜20万の重合体である、[2]または[3]に記載のメタクリル樹脂組成物。
[5] 紫外線吸収剤〔B〕が、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物またはトリアジン骨格を有する化合物である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[6] 化合物〔C〕がブロック共重合体であり、
該ブロック共重合体が、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c1〕10〜80質量%とアクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c2〕20〜90質量%(ただし重合体ブロック〔c1〕と重合体ブロック〔c2〕の合計を100質量%とする)とを含有して成るものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[7] 化合物〔C〕がブロック共重合体であり、
該ブロック共重合体が、スチレン系重合体ブロック〔c3〕10〜80質量%と水素添加共役ジエン重合体ブロック〔c4〕20〜90質量%(ただし重合体ブロック〔c3〕と重合体ブロック〔c4〕の合計を100質量%とする)とを含有して成るものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[8] 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
該グラフト共重合体は、主鎖または少なくとも1つのグラフト側鎖が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体、スチレン、α−メチルスチレンまたはパラメチルスチレンに由来する構造単位のいずれかを含有する重合体、またはポリビニルブチラールからなるものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[9] 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
該グラフト共重合体は、主鎖がポリカーボネートからなるものであり、
グラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[10] 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
該グラフト共重合体は、主鎖がポリオレフィンからなるものであり、
グラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
[11] [1]〜[10]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物からなる成形体。
[12] [1]〜[10]のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。
[13] 厚さが10〜50μmである、[12]に記載のフィルム。
[14] [12]または[13]に記載のフィルムからなる光学フィルム。
[15] メタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、化合物〔C〕0.1〜10質量%とを、溶融混練して、メタクリル樹脂組成物を得(各質量%はメタクリル樹脂組成物に対する値)、次いで該メタクリル樹脂組成物を溶融成形することを有し、
メタクリル樹脂〔A〕が架橋ゴム成分を含み、且つ
化合物〔C〕が重量平均分子量3.2万〜30万のブロック共重合体または重量平均分子量3.2万〜30万のグラフト共重合体からなる、
成形体の製造方法。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、金型汚れなどを抑制しつつ溶融成形することができる。本発明のメタクリル樹脂組成物は、薄肉に成形した場合でも、紫外線吸収剤およびその他の添加剤のブリードアウトが生じ難い成形体を得ることができる。該成形体は、耐候性、耐光性などに優れている。
また、立体規則性の高いメタクリル樹脂や、環構造を主鎖に有する構造単位を有するメタクリル樹脂を含有してなる場合の本発明のメタクリル樹脂組成物は、上記特長に加えて、高い耐熱性を有する。
本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体は、例えば、偏光子保護フィルム、位相差板、光拡散板、導光板などのような光学部材に好適である。
以下、本発明について説明する。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕と、紫外線吸収剤〔B〕と、化合物〔C〕とを含有してなるものである。
<メタクリル樹脂〔A〕>
本発明のメタクリル樹脂〔A〕は、架橋ゴム成分を含む。
本発明のメタクリル樹脂〔A〕は、アセトン不溶成分〔AX〕とアセトン可溶成分〔AY〕から構成される。アセトン不溶成分〔AX〕が前記の架橋ゴム成分であることが好ましい。アセトン不溶成分〔AX〕とアセトン可溶成分〔AY〕は、例えば、メタクリル樹脂〔A〕にアセトンを加え、室温で1日放置し、得られた液を掻き混ぜて、次いで20000rpmで200分間遠心分離を行い、上澄み(アセトン可溶成分〔AY〕のアセトン溶液)と沈降物(架橋ゴム成分〔AX〕のアセトン膨潤物)とに分離することによって得られるものである。架橋ゴム成分に特に制約は無いが、好ましい例を以下に挙げる。
メタクリル樹脂〔A〕を構成する好ましいアセトン不溶成分〔AX〕である架橋ゴム成分は、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位および/または共役ジエン系単量体に由来する単位を主に有する弾性体層を含む架橋ゴム重合体(I)と、メタクリル酸メチル単位80〜97質量%およびアクリル酸エステル単位3〜20質量%からなり、架橋ゴム重合体(I)とグラフト結合された最外層重合体(II)からなる多層構造重合体である。
架橋ゴム重合体(I)は、好ましくはアクリル酸アルキルを主体とする重合体、より好ましくはアクリル酸アルキル50質量%以上とアクリル酸アルキル以外の単量体50質量%以下との共重合体である。
アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル等を挙げることができる。そのうち、アルキル基の炭素数が4〜8のものが好ましく用いられる。
アクリル酸アルキル以外の単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレン、アルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル等の単官能単量体;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸アルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等のグラフト結合性多官能単量体を挙げることができる。
本発明の架橋ゴム重合体(I)は、単層であってもよいし、その内層にメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の層を有する構造のものであってもよい。
多層構造重合体の最外層重合体(II)は、メタクリル酸メチル単位80〜97質量%およびアクリル酸エステル単位3〜20質量%からなり、且つ、架橋ゴム重合体(I)とグラフト結合されたものである。
上記の架橋ゴム成分の製造は、乳化重合法により行うことが好ましい。乳化重合に使用される乳化剤の種類と量は、重合系の安定性、目的とする粒子径等によって選択される。乳化剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特にアニオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム等のカルボン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、モノ−n−ブチルフェニルペンタオキシエチレンリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンジデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等を挙げることができる。中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル基やポリオキシエチレンフェニルエーテル基を有するカルボン酸塩もしくはリン酸塩が好ましく、その具体的な例としては、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムを挙げることができる。
乳化重合に使用される重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、過酸化水素−第一鉄塩系、過硫酸カリウム−酸性亜硫酸ナトリウム系、過硫酸アンモニウム−酸性亜硫酸ナトリウム系等の水溶性レドックス系開始剤、クメンハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系、tert−ブチルハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系等の水溶、油溶レドックス系の開始剤を挙げることができる。
乳化重合において必要に応じて用いられる連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類などを挙げることができる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンが好ましい。
乳化重合において、単量体、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤等は、一括添加法、分割添加法、連続添加法などの公知の添加法によって、添加してもよい。
メタクリル樹脂〔A〕を構成するアセトン可溶成分〔AY〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみを含有してなる重合体(以下、これをメタクリル樹脂〔AY0〕と記すことがある。)またはメタクリル酸メチルに由来する構造単位と他の単量体に由来する構造単位を含有してなるランダム共重合体(以下、これをメタクリル樹脂〔AY1〕と記すことがある。)であってもよい。なお、好ましい架橋ゴム成分である多層構造重合体の製造において、最外層重合体(II)と同様の構造を有するが架橋ゴム重合体(I)にグラフト結合していない、非拘束の重合体が、一緒に得られることがある。このような非拘束の重合体はアセトン可溶成分〔AY〕である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔AY1〕は、耐熱性などの観点から、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
メタクリル樹脂〔AY1〕は、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つだけ有するビニル系単量体を挙げることができる。
メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量MwA1が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。MwA1が高くなるほど、メタクリル樹脂組成物から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。MwA1が低くなるほど、メタクリル樹脂組成物の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、GPCで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量MnA1に対する重量平均分子量MwA1の比MwA1/MnA1が、好ましくは1.0以上5.0以下、より好ましくは1.2以上2.5以下、さらに好ましくは1.3以上1.7以下である。MwA1/MnA1が低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。MwA1/MnA1が高くなるほど、メタクリル樹脂組成物の溶融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、分子量200000以上の成分(高分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.5〜5%である。また、本発明に用いられるメタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.2〜3%である。メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕が高分子量成分および低分子量成分をこの範囲にて含有していることで、製膜性が向上し、均一な膜厚のフィルムを得やすい。
分子量200000以上の成分の含有量は、GPCで測定されたクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量200000の標準ポリスチレンの保持時間より前に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。分子量15000未満の成分の含有量は、GPCで得られるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量15000の標準ポリスチレンの保持時間より後に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。
メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは1〜15g/10分である。
また、メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。メタクリル樹脂〔AY0〕またはメタクリル樹脂〔AY1〕のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは131℃である。
ガラス転移温度は、DSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度である。DSC曲線は、測定対象樹脂を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計を用いて、230℃まで昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させたときの、2回目の昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔AY1〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するランダム共重合体であってもよい。
環構造を主鎖に有する構造単位としては、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、または>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位が好ましい。
環構造を主鎖に有する構造単位は、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのような重合性不飽和炭素−炭素二重結合を有する環状単量体をメタクリル酸メチルなどと共重合させることによって、または重合によって得られたメタクリル樹脂の分子鎖の一部を分子内縮合環化させることによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔AY0〕または〔AY1〕は、どのような製法で得られたものであってもよく、例えば、メタクリル酸メチルを重合することによってまたはメタクリル酸メチルと他の単量体とを重合することによって得ることができる。重合は、公知の方法にて行うことができる。重合の方法としては、連鎖移動の形態による分類で、例えば、ラジカル重合、アニオン重合などを挙げることができる。また、反応液の形態による分類で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを挙げることができる。前述した各特性は、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量や添加時期、重合開始剤の種類や量や添加時期などの重合条件を調整することによって実現できる。このような重合条件による特性制御は当業者においてよく知られた技術であり、目的とする特性を有する樹脂を製造することは当業者にとって困難なことではない。
メタクリル樹脂〔A〕の調製にあたり、架橋ゴム成分〔AX〕を構成する架橋ゴム重合体(I)および最外層重合体(II)からなる多層構造重合体と、アセトン可溶成分〔AY〕の主要部分を構成するメタクリル樹脂〔AY0〕または〔AY1〕との質量比は、5:95〜100:0であることができる。架橋ゴム成分〔AX〕が上記の範囲未満であると耐衝撃性や加工性が低下し好ましくない。
<紫外線吸収剤〔B〕>
本発明に用いられる紫外線吸収剤〔B〕としては、一般の熱可塑性樹脂に配合されることがある公知の紫外線吸収剤を挙げることができる。紫外線吸収剤〔B〕の分子量が200以下であると、メタクリル樹脂組成物を成形する際に発泡するなどの現象が生じることがあるため、紫外線吸収剤〔B〕の分子量は、好ましくは200超え、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、よりさらに好ましくは600以上である。
一般に、紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有する化合物)が好ましい。ベンゾトリアゾール類またはトリアジン類は、紫外線による樹脂の劣化(例えば、黄変など)を抑制する効果が高い。
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール〕(ADEKA社製;LA−31)、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどを挙げることができる。
トリアジン類としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;CGL777、TINUVIN460、TINUVIN479など)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
その他に、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1・cm-1以下である紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
国際公開第2011/089794号、国際公開第2012/124395号、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−62228号公報、特開2014−88542号公報、特開2014−88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体(例えば、式(1)で表される構造の化合物など)を紫外線吸収剤〔B〕として用いることができる。

Figure 2018074550
〔式(1)中、Mは金属原子である。
1、Y2、Y3およびY4はそれぞれ独立に炭素原子以外の二価基(酸素原子、硫黄原子、NH、NR5など)である。R5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラルキル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
1およびZ2はそれぞれ独立に三価基(窒素原子、CH、CR6など)である。R6はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラルキル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、ハロゲノ基、アルキルスルホニル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。a、b、cおよびdはそれぞれR1、R2、R3およびR4の数を示し且つ1〜4のいずれかの整数である。〕
当該複素環構造の配位子としては、2,2’−イミノビスベンゾチアゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾオキサゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾイミダゾール、(2−ベンゾチアゾリル)(2−ベンゾイミダゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾオキサゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾチアゾリル)メタン、ビス[2−(N−置換)ベンゾイミダゾリル]メタン等およびそれらの誘導体を挙げることができる。このような金属錯体の中心金属としては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛が好ましく用いられる。また、これら金属錯体を紫外線吸収剤として用いるために、低分子化合物や重合体などの媒体に金属錯体を分散させることが好ましい。該金属錯体の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。前記金属錯体は380nm〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、十分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等による成形体外観の悪化を抑制することができる。また、前記金属錯体は耐熱性が高いので、成形加工時の劣化や分解が少ない。さらに前記金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax = 〔Amax/(10×10-3)〕 × MUV
<化合物〔C〕>
本発明に用いられる化合物〔C〕は、ブロック共重合体またはグラフト共重合体からなるもの、好ましくはブロック共重合体またはグラフト共重合体である。
ブロック共重合体は、例えば、重合体Aの分子鎖(重合体ブロックAということがある。)の末端に重合体Bの分子鎖(重合体ブロックBということがある。)の末端が繋がって全体として鎖状または放射状に結合したものである。
ブロック共重合体を構成する重合体ブロックは特に限定されない。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどの重合体ブロックと、ポリアクリル酸エステルなどの重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体は、メタクリル樹脂と芳香族低分子化合物との相溶性などが良好となることがある。
ブロック共重合体は、例えば、リビング重合を利用して重合体ブロックAの末端に重合開始点をつくり、この開始点からモノマーを重合させて重合体ブロックBを生成する方法〔i〕、重合体ブロックAと重合体ブロックBとをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔ii〕などによって製造することができる。
グラフト共重合体は、例えば、重合体Aの分子鎖(重合体主鎖ということがある。)の途中に重合体Bの分子鎖(グラフト側鎖ということがある。)の末端が繋がって、全体として分枝状に結合したものである。
グラフト共重合体を構成する主鎖およびグラフト側鎖は特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系共重合体などからなる主鎖と、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリル系共重合体などからなるグラフト側鎖とを有してなるグラフト共重合体は、メタクリル樹脂と芳香族低分子化合物との相溶性などが良好となることがある。
グラフト共重合体は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
本発明において化合物〔C〕として用いられる、ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、その重量平均分子量が、3.2万〜30万、好ましくは4.5万〜30万、より好ましくは5万〜23万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるブロック共重合体〔C-B1〕は、ブロック共重合体〔C-B1〕を構成する少なくとも1つの重合体ブロック〔c〕が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体(PMMA)、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体(AS重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体(SMA重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体(SMM重合体)、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレンに由来する構造単位のいずれかを含有する重合体(PSt系重合体)、ブタジエン、イソプレンに由来する構造単位のいずれかを含有する重合体(共役ジエン系重合体)、共役ジエン系重合体を水素添加してなるもの(水素添加共役ジエン系重合体)、またはポリビニルブチラール(PVB)からなるものであり、好ましくはPSt系重合体、または水素添加共役ジエン系重合体からなるものである。これらの重合体ブロック〔c〕はメタクリル樹脂との相溶性が高いものである。なお、ブロック共重合体〔C-B1〕を構成する重合体ブロック〔c〕以外の重合体ブロックは特に制限されない。少なくとも2種の異なる重合体ブロック〔c〕によってブロック共重合体〔C-B1〕を構成する場合には、重合体ブロック〔c〕以外の重合体ブロックは無くてもよい。
ブロック共重合体〔C-B1〕としては、スチレン系重合体ブロック〔c3〕と水素添加共役ジエン重合体ブロック〔c4〕とを含有して成るものが好ましい。重合体ブロック〔c3〕と重合体ブロック〔c4〕の合計を100質量%としたとき、重合体ブロック〔c3〕の量は、10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%であり、重合体ブロック〔c4〕の量は、20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%である。
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるブロック共重合体〔C-B2〕は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c1〕10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%と、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c2〕20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%(ただし重合体ブロック〔c1〕と重合体ブロック〔c2〕の合計を100質量%とする)とを含有するものである。
重合体ブロック〔c1〕は一分子中に1つのみであってもよいし、2つ以上あってもよい。重合体ブロック〔c1〕が2つ以上であるとき、それぞれの重合体ブロック〔c1〕を構成する構造単位の比率や分子量は相互に同じであっても異なってもよい。
重合体ブロック〔c2〕は一分子中に1つのみであってもよいし、2つ以上あってもよい。重合体ブロック〔c2〕が2つ以上あるとき、それぞれの重合体ブロック〔c1〕を構成する構造単位の比率や分子量は相互に同じであっても異なってもよい。
ブロック共重合体〔C-B2〕における、重合体ブロック〔c1〕の総質量/重合体ブロック〔c2〕の総質量の比は、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは20/80〜70/30である。
重合体ブロック〔c1〕は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有するものである。重合体ブロック〔c1〕に含まれるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。メタクリル酸エステルとしてはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
重合体ブロック〔c1〕の重量平均分子量Mwc1は、下限が、好ましくは5千、より好ましくは8千、さらに好ましくは1万2千、よりさらに好ましくは1万5千、最も好ましくは2万であり;上限が、好ましくは15万、より好ましくは12万、さらに好ましくは10万である。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c1〕を複数有する場合には、重量平均分子量Mwc1は、重合体ブロック〔c1〕各々の重量平均分子量を合計した値である。
ブロック共重合体〔C-B2〕に含まれる重合体ブロック〔c1〕の量は、透明性、柔軟性、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%以上80質量%以下、より好ましくは20質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。重合体ブロック〔c1〕の量が上記範囲内にあると、本発明のメタクリル樹脂組成物またはそれからなる成形体は透明性、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c1〕を複数有する場合には、重合体ブロック〔c1〕の量は、重合体ブロック〔c1〕の合計質量に基づいて算出する。
重合体ブロック〔c2〕は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有するものである。重合体ブロック〔c2〕に含まれるアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル等のアクリル酸芳香族炭化水素エステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらアクリル酸エステルは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合体ブロック〔c2〕は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。重合体ブロック〔c2〕に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の量は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
重合体ブロック〔c2〕は、本発明のメタクリル樹脂組成物の透明性を向上させる観点などからは、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%含有し、(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステルに由来する構造単位を好ましくは50〜10質量%、より好ましくは40〜20質量%を含有するものであることが好ましい。
重合体ブロック〔c2〕の重量平均分子量Mwc2は、下限が、好ましくは5千、より好ましくは1万5千、さらに好ましくは2万、よりさらに好ましくは3万、最も好ましくは4万であり、上限が、好ましくは12万、より好ましくは11万、さらに好ましくは10万である。Mwc2が小さければ小さいほど、メタクリル樹脂組成物から作製した成形体の耐衝撃性が低下する傾向がある。一方、Mwc2が大きければ大きいほど、メタクリル樹脂組成物から作製した成形体の表面平滑性が低下する傾向がある。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c2〕を複数有する場合には、重量平均分子量Mwc2は、重合体ブロック〔c2〕各々の重量平均分子量を合計した値である。
なお、Mwc1およびMwc2は、ブロック共重合体〔C-B2〕の製造の各段階、具体的には重合体ブロック〔c1〕を製造するための重合の終了時および重合体ブロック〔c2〕を製造するための重合の終了時に重量平均分子量をそれぞれ測定し、当該重合開始時の重量平均分子量の測定値と当該重合終了時の重量平均分子量の測定値との差を当該重合で得られた重合体ブロックの重量平均分子量と見做して求めた値である。各重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値である。
ブロック共重合体〔C-B2〕に含まれる重合体ブロック〔c2〕の量は、透明性、柔軟性、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。重合体ブロック〔c2〕の量が上記範囲内にあると、本発明のメタクリル樹脂組成物またはそれからなる成形体の耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c2〕を複数有する場合には、重合体ブロック〔c2〕の量は、重合体ブロック〔c2〕の合計質量に基づいて算出する。
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕は、各重合体ブロックの結合形態によって特に限定されない。例えば、或る重合体ブロックの一末端に他の重合体ブロックの一末端が繋がった構造のジブロック共重合体;或る重合体ブロックの両末端のそれぞれに他の重合体ブロックの一末端が繋がった構造のトリブロック共重合体などの直鎖型ブロック共重合体を挙げることができる。
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕は、重量平均分子量Mwが、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMwがあることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が、好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.0以上1.6以下である。上記のような範囲内にMw/Mnがあることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。なお、MwおよびMnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕は、屈折率が、好ましくは1.485〜1.495、より好ましくは1.487〜1.493である。屈折率がこの範囲内であると、本発明のメタクリル樹脂組成物の透明性が高くなる。なお、本明細書で「屈折率」とは、後述する実施例のとおり、波長587.6nm(D線)で測定した値を意味する。
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などを挙げることができる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアニオン重合する方法が好ましい。
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G1〕は、グラフト共重合体〔C-G1〕を構成する主鎖または少なくとも1つのグラフト側鎖が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体(PMMA)、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体(AS重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体(SMA重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体(SMM重合体)、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレンに由来する構造単位のいずれかを含有する重合体(PSt系重合体)、またはポリビニルブチラール(PVB)からなり、且つ後述するグラフト共重合体〔C-G2〕およびグラフト共重合体〔C-G3〕以外のものである。これらの重合体はメタクリル樹脂との相溶性が高いものである。
相溶性の観点から、本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G2〕は、グラフト共重合体〔C-G2〕を構成する主鎖がポリカーボネートからなるものであり、グラフト共重合体〔C-G2〕を構成するグラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体(側鎖を構成するこれらをまとめて「芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分」ということがある。)からなるものである。
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネートは、その構造によって特に限定されない。ポリカーボネートとしては、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体を挙げることができる。
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネートは、通常のポリカーボネート樹脂と同様の製法、即ち界面重合法、ピリジン法、クロロホルメート法などの溶液重合法、またはエステル交換法などの溶融法で製造することができる。
主鎖を構成するポリカーボネートの粘度平均分子量は4000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましく、6000〜30000が特に好ましい。ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvは、ウベローデ型粘度管にて、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度[η]を測定し、下記のSchnellの式より計算した。
[η] = 1.23 × 10-4Mv0.83
グラフト共重合体〔C-G2〕のグラフト側鎖を構成する重合体の製造に用いられる芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレンなどを挙げることができる。これらのうち、スチレンが好ましい。
グラフト側鎖を構成する重合体の製造に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
グラフト共重合体〔C-G2〕は、ポリカーボネートからなる主鎖により形成される連続相中に芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖が微細に分散しているか、または芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖により形成される連続相中にポリカーボネートからなる主鎖が微細に分散していることが好ましい。グラフト共重合体〔C-G2〕の分散粒子は球状にほぼ均一に分散していることが望ましい。グラフト共重合体〔C-G2〕の分散粒子の粒子径は好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜5μmである。
グラフト共重合体〔C-G2〕中の側鎖の数平均重合度は、5〜10000が好ましく、10〜5000がより好ましく、100〜2000がさらに好ましい。数平均重合度が5以上であれば、樹脂組成物の耐候性や耐熱性が高い傾向がある。数平均重合度が10000以下であれば溶融粘度が低く、成形性が良好で、且つ表面外観が良好である傾向がある。
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネート成分の割合は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。側鎖を構成する芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分の割合は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%である。上記範囲内に各成分の割合があると、メタクリル樹脂〔A〕と紫外線吸収剤〔B〕との相溶性が高くなり、高温での成形時においても、ブリードアウトや紫外線吸収剤の蒸散などによる成形装置の汚染が生じにくくなる傾向が強くなる。
グラフト共重合体〔C-G2〕は、重量平均分子量MwC-G2が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMwC-G2があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
グラフト共重合体〔C-G2〕は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
グラフト共重合体〔C-G2〕は、上記のようにして製造してもよいし、市販品(例えば、日油(株)社製のモディパーCシリーズ(CL430−G))を用いてもよい。
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G3〕は、グラフト共重合体〔C-G3〕を構成する主鎖がポリオレフィンからなるものであり、グラフト共重合体〔C-G3〕を構成するグラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体(側鎖を構成するこれらをまとめて「芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分」ということがある。)からなるものである。
グラフト共重合体〔C-G3〕の主鎖を構成するポリオレフィンは、その重合態様(分子量や鎖状構造)によって特に限定されない。典型的なポリオレフィンは、非極性α−オレフィン単量体に由来する構造単位を含有する重合体である。非極性α−オレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
非極性α−オレフィン単量体に由来する構造単位を主に含有するポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
ポリオレフィンは、極性ビニル系単量体との共重合体であってもよい。非極性α−オレフィン単量体と極性ビニル系単量体とからなる(共)重合体の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等を挙げることができる。
以上のようなポリオレフィンは、1種を単独で、または2種以上を混ぜ合わせて用いることができる。これらポリオレフィンのうち、流動性の観点からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンが好ましい。
グラフト共重合体〔C-G3〕のグラフト側鎖を構成する重合体としては、グラフト共重合体〔C-G2〕のグラフト側鎖を構成する重合体の説明において述べたものと同じものを用いることができる。
グラフト共重合体〔C-G3〕は、ポリオレフィンからなる主鎖により形成される連続相中に芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖が微細に分散しているか、または芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖により形成される連続相中にポリオレフィンからなる主鎖が微細に分散していることが好ましい。グラフト共重合体〔C-G3〕の分散粒子は球状にほぼ均一に分散していることが望ましい。グラフト共重合体〔C-G3〕の分散粒子の粒子径は好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜5μmである。
グラフト共重合体〔C-G3〕中の側鎖の数平均重合度は、5〜10000が好ましく、10〜5000がより好ましく、100〜2000がさらに好ましい。数平均重合度が5以上であれば、樹脂組成物の耐候性や耐熱性が高い傾向がある。数平均重合度が10000以下であれば溶融粘度が低く、成形性が良好で、且つ表面外観が良好である傾向がある。
グラフト共重合体〔C-G3〕の主鎖を構成するポリオレフィン成分の割合は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。側鎖を構成する芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分の割合は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%である。上記範囲に各成分の割合があると、メタクリル樹脂〔A〕と紫外線吸収剤〔B〕との相溶性が高くなり、高温での成形時においても、ブリードアウトや紫外線吸収剤の蒸散などによる成形装置の汚染が生じにくくなる傾向が強くなる。
グラフト共重合体〔C-G3〕は、重量平均分子量MwC-G3が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMwC-G3があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
グラフト共重合体〔C-G3〕は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
グラフト共重合体〔C-G3〕は、上記のようにして製造してもよいし、市販品(例えば、日油(株)社製のモディパーA1100、モディパーA4300、モディパーA4400)などを用いてもよい。
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体は、メタクリル樹脂〔A〕との相容性が良くより透明なメタクリル樹脂組成物が得られるという観点から、グラフト共重合体〔C-G1〕またはグラフト共重合体〔C-G2〕が好ましい。
<メタクリル樹脂組成物>
本発明のメタクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
メタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、フェノキシ樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどを挙げることができる。かかる含有され得る他の重合体として透明性、耐熱性の観点からポリカーボネート樹脂が好ましい。これら重合体のメタクリル樹脂組成物中の含有量は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
本発明のメタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの他の添加剤を含有していてもよい。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの中で、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などを挙げることができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類を挙げることができる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
離型剤としては、成形用金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、2.5/1〜3.5/1の範囲で使用するのが好ましく、2.8/1〜3.2/1の範囲で使用するのがより好ましい。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤としては、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、メタクリル樹脂〔A〕や化合物〔C〕などを製造する際の重合反応液に添加してもよいし、製造されたメタクリル樹脂〔A〕や化合物〔C〕などに添加してもよいし、メタクリル樹脂組成物を調製する際に添加してもよい。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有される他の添加剤の合計量は、得られるフィルムの外観不良を抑制する観点から、メタクリル樹脂〔A〕に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
本発明のメタクリル樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、化合物〔C〕の存在下にメタクリル酸メチルを含む単量体混合物を重合してメタクリル樹脂〔A〕を生成させる方法や、メタクリル樹脂〔A〕、紫外線吸収剤〔B〕および化合物〔C〕を溶融混練する方法などを挙げることができる。これらのうち溶融混練法は工程が単純であるので、好ましい。溶融混練の際に、必要に応じて他の重合体や添加剤を混合してもよいし、メタクリル樹脂〔A〕を他の重合体および添加剤と混合した後に紫外線吸収剤〔B〕および化合物〔C〕と混合してもよいし、紫外線吸収剤〔B〕を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂〔A〕および化合物〔C〕と混合してもよいし、化合物〔C〕を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂〔A〕および紫外線吸収剤〔B〕と混合してもよいし、その他の方法でもよい。混練は、例えば、ニーダールーダー、一軸または二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの公知の混合装置または混練装置を使用して行うことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂〔A〕および化合物〔C〕の溶融温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜300℃である。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕を、75〜99.8質量%、好ましくは82〜99.5質量%、より好ましくは89〜99.2質量%含む。この範囲でメタクリル樹脂〔A〕を含むと透明性と耐熱性に優れる。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤〔B〕を、0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%含む。この範囲で紫外線吸収剤〔B〕を含むと波長380nmの光透過率を薄肉成形体において5%以下に調整しやすい。本発明のメタクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤〔B〕と他の添加剤との合計含有量が、好ましくは1質量%超、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、よりさらに好ましくは2.5質量%以上である。なお、他の添加剤は、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、および蛍光体であり、化合物〔C〕はこれらに含まれないものとする。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、化合物〔C〕を、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜8質量%、より好ましくは0.5〜6質量%、さらに好ましくは0.6〜1.2質量%を含む。この範囲で化合物〔C〕を含むと、ブリードアウト、紫外線吸収剤〔B〕の蒸散などが抑制され、メタクリル樹脂組成物の耐熱性を維持しつつ、耐光性および耐候性を発揮できる。
本発明のメタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万、特に好ましくは7万〜10万である。メタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.3〜2.0、特に好ましくは1.3〜1.7である。Mwや分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲にあると、メタクリル樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靭性に優れた成形体を得易くなる。
本発明のメタクリル樹脂組成物を230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜30g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分、最も好ましくは1.0〜15g/10分である。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、3.2mm厚さのヘーズが、3.0%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
本発明のメタクリル樹脂組成物は公知の成形方法によって成形体(本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体)とすることができる。成形方法としては、例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびに溶液キャスト法などを挙げることができる。
これらの成形方法では、一般に樹脂組成物を成形するために金型が用いられる。例えば、シート成形用ロール、フィルム成形用ロール、圧縮成形用金型、ブロー成形用金型、カレンダーロール、真空成形用金型、射出成形用金型、キャスト重合用鋳型などの金型を挙げることができる。金型は必ずしも金属製である必要はなく、例えばゴムロール、強化ガラスなども金型に含まれる。本発明のメタクリル樹脂組成物は、金型汚れを生じにくいため、長時間の連続生産や成形工程を多数繰返す生産に好適に使用できる。
本発明は、メタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、化合物〔C〕0.1〜10質量%とを、溶融混練して、メタクリル樹脂組成物を得、該メタクリル樹脂組成物を溶融成形することを有する、成形体の製造方法を包含する。ここで、上記各「質量%」は得られるメタクリル樹脂組成物に対する値である。
本発明のメタクリル樹脂組成物を溶融押出法によりダイから押し出してロールで冷却してフィルムを形成する際に、ピンニングを行うことができる。ピンニングは、ダイから押し出されたフィルム状溶融体をロールに密着させることである。ピンニングとしては、エアナイフピンニング、真空吸引ピンニング、電気ピンニングなどを挙げることができるが、電気ピンニングが好ましい。電気ピンニングを行うための装置には、針状電極、ワイヤ電極、バンド電極などのピンニング電極が設置されている。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、ピンニングを伴うフィルム成形の行い易さおよびフィルムに残留する歪みの少なさの観点から、貯蔵弾性率(E’)が、0.5×105Pa〜5×105Paであることが好ましい。
本発明の成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根、樹脂サッシ、キッチン扉、ドア表層などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどを挙げることができる。
本発明の成形体は、耐候性に優れ、また紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制される点から、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、電子ペーパー用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、偏光子保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなど、各種の光学用途へ特に好適に適用可能である。
具体的には、例えば、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、耐候性に優れている点から、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも特に好適に適用可能である。
本発明の成形体は、太陽電池用途として太陽電池表面保護フィルム、太陽電池用封止フィルム、太陽電池用裏面保護フィルム、太陽電池用基盤フィルム、ガスバリアフィルム用保護フィルムなどへも適用可能である。
成形体の一形態である本発明のフィルム(本発明のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム)は、その製法によって特に限定されない。本発明のフィルムは、例えば、前記メタクリル樹脂組成物を、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などの公知の方法にて製膜することによって得ることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出機から吐出されるメタクリル樹脂組成物の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。
押出成形法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢、低ヘーズのフィルムが得られるという観点から、前記メタクリル樹脂組成物を溶融状態でTダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールまたは鏡面ベルトで挟持してフィルムを形成することを含む方法が好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、金属製であることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は、好ましくは2N/mm以上、より好ましくは10N/mm以上、さらにより好ましくは30N/mm以上である。
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される前記メタクリル樹脂組成物を自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ且つヘーズの低いフィルムを製造し易い。
本発明のフィルムは延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チューブラー延伸法などを挙げることができる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100〜200℃が好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。延伸は、通常長さ基準で100〜5000%/分で行われる。延伸は、面積比で1.5〜8倍になるように行うことが好ましい。延伸の後、熱固定を行うことによって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されず、例えば10〜50μm、さらには15〜40μmとすることができる。また本発明のフィルムを光学フィルムとして用いる場合、その厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。フィルムの厚さが薄くなるほど紫外線吸収能が低くなる。本願発明のメタクリル樹脂組成物では紫外線吸収剤を多量に添加してもブリードアウトを発生させにくいので、薄肉のフィルムにおいて紫外線吸収能を高くすることが容易である。
本発明のフィルムは、厚さ40μmにおけるヘーズが、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。これにより、表面光沢や透明性に優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のフィルムは、透明性が高く、耐熱性が高く、高温での成形時においても、金型汚れ、ブリードアウトなどの発生が抑制され、紫外線吸収剤の蒸散による問題の発生を低減でき、また薄く成形できるため、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、各種ディスプレイの前面板用途などの光学フィルムに好適である。特に本発明のフィルムは位相差が小さいため、偏光子保護フィルムに好適である。
本発明のフィルムは、透明性、耐熱性が高く、紫外線吸収剤を多量に添加してもブリードアウトを発生させにくいので、光学用途以外の用途として、IRカットフィルムや、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルム、ガスバリアフィルム用基材フィルムに使用することができる。
本発明のフィルムやシートの少なくとも片面に機能層を設けることができる。機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、光拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、易滑性層、ガスバリア層などを挙げることができる。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
〔多層構造重合体の平均粒子径〕
多層構造重合体を含むエマルジョンを、イオン交換水にて固形分濃度0.05質量%となるよう希釈し、ガラスプレートに展開して、乾燥することにより、個々の粒子が凝集することなくガラスプレートに存在させた。この表面に白金・パラジウムを蒸着させて、反射型電子顕微鏡にて電子顕微鏡写真を得、無作為に100個の粒子の粒子径を測定し平均化して平均粒子径とした。一方で、多層構造重合体を含むエマルジョンを固形分濃度0.05質量%に希釈し測定長さ10mmクウォーツセルにとり、500nmでの吸光度を測定した。粒子径の異なる粒子にて、上記の操作を行い、電子顕微鏡観察による平均粒子径と500nm吸光度との検量線を作成した。この検量線を用い、吸光度を測定することにより多層構造重合体の平均粒子径を求めた。
〔重合転化率〕
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、10分間保持する条件に設定して、測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置 :東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器 :示差屈折率検出器
カラム :東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤 :テトラヒドロフラン
溶離剤流量 :0.35ml/分
カラム温度 :40℃
検量線 :標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
〔ガラス転移温度Tg〕
メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで1回目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で2回目の昇温をさせる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
〔未延伸フィルムの強度〕
未延伸フィルムの両端を手で持って、軽く張力をかけた際の状態を評価した。
A:未延伸フィルムの外観に変化はなく、得られたままの状態を保持できた。
B:未延伸フィルムがもろく、ひび割れてしまった。
〔表面平滑性〕
未延伸フィルムの表面を目視により観察し、以下の基準で表面平滑性を評価した。
A:表面が平滑である。
B:表面に凹凸がある。
〔全光線透過率〕
メタクリル樹脂組成物を熱プレスして、3.2mm厚の成形体を形成し、その全光線透過率をJIS K7361−1に準じて、ヘーズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
〔ヘーズ〕
メタクリル樹脂組成物を熱プレスして、3.2mm厚の成形体を成形し、そのヘーズをJISK7136に準拠して、ヘーズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
〔ロール汚れ〕
メタクリル樹脂組成物をOptical Control System社製の製膜機(型式FS−5)にて、シリンダおよびTダイの温度290℃、リップ間隙0.5mm、吐出量2.7kg/hr、ロール温度85℃、フィルム引取り速度2.2m/分で押出し、フィルム厚さ100μmに調整し、製膜時のロール汚れを観察した。ロール汚れはフィルムが通過する金属ロール表面を目視で観察し、製膜開始からブリードアウト物質が転写してロール全面に白もやが発生するまでの時間で評価した。
また、製膜開始から3時間経過したときに得られた未延伸フィルムから100mm×60mmの試験片を切出し、その外観を、以下の基準で目視評価した。
A:欠点が100個未満
B:欠点が100個以上
[製造例1]
アクリル系多層構造重合体(A-1)の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。以上の操作によって、平均粒子径が0.23μmであるアクリル系多層構造重合体(A-1)を含むエマルジョンを得た。このエマルジョンを凍結させた後、凍結エマルジョンの2倍量の80℃温水に加えて融解してスラリーとした。その後、20分間80℃に保持した後、脱水し、80℃で乾燥してアクリル系多層構造重合体(A-1)凝固物のパウダーを得た。
[製造例2]
アクリル系多層構造重合体(A-2)の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水1050質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル49.9質量%、アクリル酸n−ブチル49.9質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物26.3質量部を20分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を0.05質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル4.99質量%、アクリル酸n−ブチル93.53質量%およびメタクリル酸アリル1.47質量%からなる単量体混合物157.4質量部を40分間かけて連続的に滴下供給した。添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を0.5質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル87.34質量%、アクリル酸n−ブチル12.48質量%およびn−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.18質量%を含む単量体混合物341質量部を100分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行って、平均粒子径が0.09μmであるアクリル系多層構造重合体(A-2)を含むエマルジョンを得た。
続いて、アクリル系多層構造重合体(A-2)を含むエマルジョンを−30℃で4時間かけて凍結させた。凍結したエマルジョンの2倍量の80℃温水に凍結エマルジョンを投入、溶解してスラリーとした後、20分間80℃に保持した後、脱水し、70℃で乾燥してアクリル系多層構造重合体(A-2)凝固物のパウダーを得た。
[製造例3]
メタクリル樹脂〔AY-1〕の製造
撹拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0054質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.203質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は48質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、重量平均分子量Mwが101000で、分子量分布Mw/Mnが1.87で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔AY-1〕を得た。メタクリル樹脂〔AY-1〕はアセトンに可溶であった。
使用した紫外線吸収剤〔B〕を以下に記載した。
B-a:2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)
B-b:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)
化合物〔C〕として使用したブロック共重合体を以下に説明する。
[製造例4]
ジブロック共重合体〔C-B2-a〕の製造
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン735kgと、1,2−ジメトキシエタン36.75kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.17molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル39.0kgを加え、室温で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体を含む反応液を得た。第1重合体ブロックであるメタクリル酸メチル重合体の重量平均分子量Mwは45800であった。
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル29.0kgとアクリル酸ベンジル10.0kgとの混合液を0.5時間かけて滴下し、重合反応させて、第1重合体ブロックとアクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなる第2重合体ブロックとからなるジブロック共重合体〔C-B2-a〕を含む反応液を得た。
続いて、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔C-B2-a〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。
ジブロック共重合体〔C-B2-a〕は、重量平均分子量Mwが92000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが1.06であった。第2重合体ブロックの重量平均分子量Mwを46200(=92000−45800)と決定した。第2重合体ブロックに含まれるアクリル酸ベンジル単位の割合は25.6質量%であった。第2重合体ブロックの質量は第1重合体ブロックの質量に対して50/50であった。
[製造例5]
トリブロック共重合体〔C-B2-b〕の製造
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン2003kgと、1,2−ジメトキシエタン100.15kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液51.5kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.13molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル34.3kgを加え、室温で1時間重合反応させてメタクリル酸メチル重合体を含む反応液を得た。第1重合体ブロックであるメタクリル酸メチル重合体の重量平均分子量Mwは6000であった。
次いで、反応液を−30℃にし、アクリル酸n−ブチル266.3kgを0.5時間かけて滴下し、重合反応させて、第1重合体ブロックとアクリル酸n−ブチル重合体からなる第2重合体ブロックとからなるジブロック共重合体を含む反応液を得た。このジブロック共重合体の重量平均分子量Mwは53000であった。第2重合体ブロックの重量平均分子量Mwを47000と決定した。第2重合体ブロックに含まれるアクリル酸ベンジル単位の割合は0質量%であった。
続いて、前記反応液にメタクリル酸メチル297.3kgを添加し、室温で8時間重合反応させて、第1重合体ブロックと第2重合体ブロックとメタクリル酸メチル重合体からなる第3重合体ブロックとからなるトリブロック共重合体〔C-B2-b〕を含む反応液を得た。
この反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔C-B2-b〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔C-B2-b〕は重量平均分子量Mwが105000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが1.08であった。第3重合体ブロックの重量平均分子量Mwを52000と決定した。第2重合体ブロックの質量は第1重合体ブロックと第3重合体ブロックとの合計質量に対して45/55であった。
[製造例6]
トリブロック共重合体〔C-B2-c〕の製造
メタクリル酸メチルの量を124.7kgに変えた以外は、製造例5と同じ方法で、第1重合体ブロックであるメタクリル酸メチル重合体を含む反応液を得た。第1重合体ブロックは重量平均分子量Mwが22000であった。
次いで、アクリル酸n−ブチルの量を175.6kgに変えた以外は、製造例5と同じ方法で、第1重合体ブロックとアクリル酸n−ブチル重合体からなる第2重合体ブロックとからなるジブロック共重合体を含む反応液を得た。第2重合体ブロックは、重量平均分子量Mwが31000、アクリル酸ベンジル単位の割合が0質量%であった。
さらに、メタクリル酸メチルの量を171.5kgに変えた以外は、製造例5と同じ方法で、第1重合体ブロックと第2重合体ブロックとメタクリル酸メチル重合体からなる第3重合体ブロックとからなるトリブロック共重合体〔C-B2-c〕を含む反応液を得た。
この反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔C-B2-c〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔C-B2-c〕は重量平均分子量Mwが83000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが1.09であった。第3重合体ブロックの重量平均分子量Mwを30000と決定した。第2重合体ブロックの質量は第1重合体ブロックと第3重合体ブロックとの合計質量に対して37/63であった。
[製造例7]
ジブロック共重合体〔C-B2-d〕の製造
メタクリル酸メチルの量を変えた以外は、製造例4と同じ方法で、第1重合体ブロックであるメタクリル酸メチル重合体を含む反応液を得た。第1重合体ブロックは重量平均分子量Mwが28000であった。
次いで、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの量を変えた以外は、製造例4と同じ方法で、第1重合体ブロックとアクリル酸n−ブチル重合体からなる第2重合体ブロックとからなるジブロック共重合体〔C-B2-d〕を含む反応液を得た。
この反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔C-B2-d〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。ジブロック共重合体〔C-B2-d〕は重量平均分子量Mwが87000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが1.10であった。第2重合体ブロックの重量平均分子量Mwを59000と決定した。第2重合体ブロックの質量は第1重合体ブロックの質量に対して68/32であった。第2重合体ブロックは、アクリル酸ベンジル単位の割合が0質量%であった。
[製造例8]
トリブロック共重合体〔C-B1-e〕の製造)
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9kg、シクロヘキサン138kg、メチルシクロヘキサン15.2kgおよびテトラヒドロフラン3.1kgを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4Lを添加し、−10℃で3時間重合させて、第1重合体ブロックであるα−メチルスチレン重合体を含む反応液を得た。第1重合体ブロックは重量平均分子量が13100であった。
次いで、この反応液にブタジエン23kgを添加し、−10℃で30分間重合反応させて、第1重合体ブロックとポリブタジエンからなる重合体ブロック(1)とからなるジブロック共重合体を含む反応液を得た。重合体ブロック(1)は、1H−NMR測定から、1,4−結合量が19モル%であった。
次に、この反応液に、シクロヘキサン930kgを加え、さらにブタジエン141.3kgを加え、50℃で2時間重合反応させて、第1重合体ブロックとポリブタジエンからなる重合体ブロック(1+2)とからなるジブロック共重合体を含む反応液を得た。重合体ブロック(1+2)は、1H−NMR測定から、1,4−結合量が60モル%であった。
続いて、この反応液に、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)12.2Lを加え、50℃にて1時間攪拌させた。これにより、重合体ブロック(1+2)の末端どうしがジクロロジメチルシランによって結合され、第1重合体ブロック−ポリブタジエンからなる重合体ブロック(1+2+2+1)−第1重合体ブロック(便宜上、第3重合体ブロックと呼ぶ。)からなるトリブロック共重合体〔SBS〕を含む反応液を得た。トリブロック共重合体〔SBS〕は、1H−NMR測定から、第1重合体ブロックおよび第3重合体ブロックの合計含有量が33質量%であった。また、重合体ブロック(1+2+2+1)は、1H−NMR測定から、1,4−結合量が56モル%であった。第3重合体ブロックは重量平均分子量が13100であった。
上記で得られた反応液に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムからなるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間水素添加反応させた。これにより、トリブロック共重合体〔SBS〕中の重合体ブロック(1+2+2+1)に在る二重結合に水素が付加して水素添加ポリブタジエンからなる第2重合体ブロックが形成され、第1重合体ブロックと第2重合体ブロックと第3重合体ブロックとからなるトリブロック共重合体〔C-B1-e〕を含む反応液を得た。トリブロック共重合体〔C-B1-e〕は、GPC測定から、重量平均分子量Mwが79500、分子量分布Mw/Mnが1.01であった。重合体ブロック(1+2+2+1)の水素添加率は、1H−NMR測定から、99モル%であった。第2重合体ブロックは、重量平均分子量Mwが53300であった。
ジブロック共重合体〔C-B2-a〕、トリブロック共重合体〔C-B2-b〕、トリブロック共重合体〔C-B2-c〕、ジブロック共重合体〔C-B2-d〕、およびトリブロック共重合体〔C-B1-e〕の物性を表1に示す。
Figure 2018074550
化合物〔C〕として使用したグラフト共重合体を以下に記載した。
C-G2-a:ポリカーボネート(主鎖)とスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸グリシジル共重合体(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーCL430G」、重量平均分子量Mw=93000、分子量分布Mw/Mn=4.9)
C-G3-a:エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(主鎖)とアクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーA4300」、重量平均分子量Mw=35000、分子量分布Mw/Mn=2.1)
C-G3-b:エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(主鎖)とスチレン−アクリロニトリル共重合体(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーA4400」、重量平均分子量Mw=47000、分子量分布Mw/Mn=2.9)
グラフト共重合体〔C-G2-a〕、グラフト共重合体〔C-G3-a〕、およびグラフト共重合体〔C-G3-b〕の物性を表2に示す。
Figure 2018074550
使用した高分子加工助剤を以下に記載した。なお、ここではMMAはメタクリル酸メチルに由来する構造単位を意味し、BAはアクリル酸ブチルに由来する構造単位を意味する。
F-1:株式会社三菱レイヨン社製メタブレンP550A(平均重合度:7734、MMA88質量%/BA12質量%)
F-2:株式会社クレハ社製パラロイドK125P(平均重合度:19874、MMA79質量%/BA21質量%)
[実施例1]
多層構造重合体(A-1)20質量部、メタクリル樹脂(AY-1)80質量部、紫外線吸収剤〔B-b〕2質量部、ブロック共重合体〔C-B2-a〕1質量部、及び加工助剤〔F-2〕2質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔1〕を得た。
多層構造重合体(A-1)20質量部およびメタクリル樹脂(AY-1)80質量部を混ぜ合わせ混練して得たメタクリル樹脂(A)をアセトンに溶解したところ、アセトン不溶成分〔AX〕/アセトン可溶成分〔AY〕=19質量%/81質量%であった。メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、10.5万であった。
メタクリル樹脂組成物〔1〕を熱プレス成形して50mm×50mm×3.2mmの板状成形体を形成し、全光線透過率、およびヘーズを測定した。メタクリル樹脂組成物〔1〕の物性を表3に示す。
メタクリル樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、メタクリル樹脂組成物〔1〕を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ60μmの未延伸フィルムを得た。製造されたフィルムについての表面平滑性と強度の評価結果を表3に示す。また、別途(ロール汚れ)の項で述べた方法で製膜をし、評価を行った。評価結果を表3に示す。
[実施例2]
多層構造重合体(A-1)の量を16質量部、メタクリル樹脂(AY-1)の量を84質量部に変えた以外は、実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔2〕を得た。実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔2〕を評価した。評価結果を表3に示す。
多層構造重合体(A-1)16質量部およびメタクリル樹脂(AY-1)84質量部を混ぜ合わせ混練して得たメタクリル樹脂(A)をアセトンに浸漬したところ、アセトン不溶成分〔AX〕/アセトン可溶成分〔AY〕=15質量%/85質量%であった。
[実施例3]
多層構造重合体(A-2)80質量部、メタクリル樹脂(AY-1)20質量部、紫外線吸収剤〔B-b〕2質量部、およびブロック共重合体〔C-B2-a〕1質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔3〕を得た。実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔3〕を評価した。評価結果を表3に示す。
多層構造重合体(A-2)80質量部およびメタクリル樹脂(AY-1)20質量部を混ぜ合わせ混練して得たメタクリル樹脂(A)をアセトンに浸漬したところ、アセトン不溶成分〔AX〕/アセトン可溶成分〔AY〕=55質量%/45質量%であった。
[実施例4]
多層構造重合体(A-2)100質量部、紫外線吸収剤〔B-b〕2質量部、およびブロック共重合体〔C-B2-a〕1質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔4〕を得た。実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔4〕を評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例5〜17および比較例1〜7]
各成分を表3に示す種類と使用量に変えた以外は、実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔5〕〜〔24〕を得た。実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔5〕〜〔24〕を評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2018074550
Figure 2018074550
Figure 2018074550
以上の結果から、紫外線吸収剤とブロック共重合体またはグラフト共重合体とをメタクリル樹脂に配合してなる本発明のメタクリル樹脂組成物は、耐熱性が高く、製膜時の成形装置への汚染が少ないことがわかる。本発明のメタクリル樹脂組成物は、成形性および延伸性が良好である。また、本発明のフィルムを延伸することによって40μm以下の薄肉のフィルムを得ることができる。

Claims (15)

  1. メタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、化合物〔C〕0.1〜10質量%とを含有してなり、
    メタクリル樹脂〔A〕は架橋ゴム成分を含み、且つ
    化合物〔C〕は重量平均分子量3.2万〜30万のブロック共重合体または重量平均分子量3.2万〜30万のグラフト共重合体からなる、
    メタクリル樹脂組成物。
  2. メタクリル樹脂〔A〕はアセトン不溶成分とアセトン可溶成分を含み、前記の架橋ゴム成分がアセトン不溶成分を含むものである、請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物。
  3. アセトン可溶成分が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体である、請求項2に記載のメタクリル樹脂組成物。
  4. アセトン可溶成分が、重量平均分子量5万〜20万の重合体である、請求項2または3に記載のメタクリル樹脂組成物。
  5. 紫外線吸収剤〔B〕が、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物またはトリアジン骨格を有する化合物である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  6. 化合物〔C〕がブロック共重合体であり、
    該ブロック共重合体が、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c1〕10〜80質量%とアクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c2〕20〜90質量%(ただし重合体ブロック〔c1〕と重合体ブロック〔c2〕の合計を100質量%とする)とを含有して成るものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  7. 化合物〔C〕がブロック共重合体であり、
    該ブロック共重合体が、スチレン系重合体ブロック〔c3〕10〜80質量%と水素添加共役ジエン重合体ブロック〔c4〕20〜90質量%(ただし重合体ブロック〔c3〕と重合体ブロック〔c4〕の合計を100質量%とする)とを含有して成るものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  8. 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
    該グラフト共重合体は、主鎖または少なくとも1つのグラフト側鎖が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体、スチレン、α−メチルスチレンまたはパラメチルスチレンに由来する構造単位のいずれかを含有する重合体、またはポリビニルブチラールからなるものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  9. 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
    該グラフト共重合体は、主鎖がポリカーボネートからなるものであり、
    グラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  10. 化合物〔C〕がグラフト共重合体であり、
    該グラフト共重合体は、主鎖がポリオレフィンからなるものであり、
    グラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物からなる成形体。
  12. 請求項1〜10のいずれか1つに記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。
  13. 厚さが10〜50μmである、請求項12に記載のフィルム。
  14. 請求項12または13に記載のフィルムからなる光学フィルム。
  15. メタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、化合物〔C〕0.1〜10質量%とを、溶融混練して、メタクリル樹脂組成物を得(各質量%はメタクリル樹脂組成物に対する値)、次いで該メタクリル樹脂組成物を溶融成形することを有し、
    メタクリル樹脂〔A〕が架橋ゴム成分を含み、且つ
    化合物〔C〕が重量平均分子量3.2万〜30万のブロック共重合体または重量平均分子量3.2万〜30万のグラフト共重合体からなる、
    成形体の製造方法。
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