JPWO2018051762A1 - 副作用を減じたアンチセンス核酸 - Google Patents

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Abstract

副作用を減じたアンチセンス核酸(ASO)を提供すること。ASOにおいて、天然の核酸間結合であるホスホジエステル結合と、リン酸基の酸素原子の一つを硫黄原子に置換したホスホロチオエート化結合を交互に持つ構造をアンチセンス活性部位に用いることにより、上記課題は解決される。

Description

本発明は、アンチセンス効果によって標的遺伝子の発現を阻害又は制御する活性を有するアンチセンス核酸の副作用を減じる構造に関し、より詳しくは、核酸間のホスホロチオエート結合を至適に用いることで、アンチセンス効果の維持と副作用低減の両立を可能としたアンチセンス核酸に関する。
近年、オリゴヌクレオチドは、核酸医薬と称される医薬品としての開発が進められており、特に標的遺伝子の選択性の高さの観点から、アンチセンス法を利用した核酸医薬の開発が精力的に進められている。アンチセンス法は、標的遺伝子のmRNA(センス鎖)の部分配列に相補的なオリゴヌクレオチド(アンチセンス核酸(ASO))を細胞内に導入することにより、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現を選択的に阻害又は制御する方法である。
ASOとして臨床試験が実施されているパイプラインの大半を占めているのが、PS型ASOである。PS型ASOは、天然の核酸間結合であるホスホジエステル結合(図1.A)のリン酸基の酸素原子の一つを硫黄原子に置換しホスホロチオエート化(PS化)したものである(図1.B)。PS化は、ヌクレアーゼ耐性(非特許文献1)、細胞内への取り込み(非特許文献2)等の点で向上が見られるが、肝毒性等の様々な副作用の原因となっていることが知られている(非特許文献3)。
PS型ASOの代表例の一つとして、第二世代の核酸構造と呼ばれるGapmer構造を持つ抗コレステロール血症治療薬としてIonis Pharmaceuticals社により開発されたmipomersenが挙げられる。2013年に世界初の全身投与型核酸医薬品としてホモ接合性家族性高コレステロール血症を対象に米国において承認されたが、PS型ASOの持つ肝毒性等の様々な副作用が認められた(非特許文献4)。また、欧州においては副作用を理由に承認に至っていない(非特許文献5)。
Nucleic Acids Res., 16, pp.3209−3221, (1998) Antisense Res. Dev., 3, pp.53−66, (2009),doi:10.1089/ard.1993.3.53. Trends Biotechnol. 1996 Oct;14(10):376−87. U. S. Food and Drug Administration News Release, http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm337195.htm?source=govdelivery. European Medicines Agency, EMA/792736/2012, EMEA/H/C/002429, http://www.buenavistainv.com/dbimages/Isis%20Presentation.pdf.
本発明の目的は、副作用を減じたアンチセンス核酸(ASO)を提供することである。
本発明のさらなる目的は、ASOの副作用の原因とされるPS化修飾を至適に用いることで、ASOのアンチセンス効果を維持したまま副作用を低減したASOを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、上記ASOと、それに対して少なくとも一部が相補的なポリヌクレオチドとを含む二本鎖核酸複合体を提供することである。
本発明の他の目的は、以下の記載から明らかとなろう。
本発明者等は、ASOにおいて、天然の核酸間結合であるホスホジエステル結合と、リン酸基の酸素原子の一つを硫黄原子に置換したホスホロチオエート化(PS化)結合を交互に持つ構造(図1.C)をアンチセンス活性部位に用いることにより、アンチセンス効果を維持したまま副作用を低減する効果を見出した。
また、本発明者等は、上記構造を有するASOとそれに対して少なくとも一部が相補的なポリヌクレオチドとを含む二本鎖核酸も同様に、上記ASOに基づくアンチセンス効果を維持する一方で、その副作用は低減されることを見出した。
従って、本発明は以下に関する:
1.以下の式(XX)で表されるPSPOユニットを含む、アンチセンス核酸
Figure 2018051762
[式中、
Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
nは、2以上の整数を表す]。
2.以下の式(XX’)で表される構造を有する、上記1に記載のアンチセンス核酸
Figure 2018051762
[式中、
Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
nは、2以上の整数を表し、
Yは、上記PSPOユニットの5’側に位置し、かつアンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む5’ウィング領域;式(XX’−a)もしくは式(XX’−b)
Figure 2018051762
で表される部分;またはY−PSPOユニット−NL−(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)であり、そして、
Zは、上記PSPOユニットの3’側に位置し、かつアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む3’ウィング領域;化学修飾されていてもよいヌクレオシド;式(XX’−c)もしくは式(XX’−d)
Figure 2018051762
で表される部分;または−NL−PSPOユニット−Z(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)である]。
3.少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として含み、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有する1つまたは複数のモチーフを含むアンチセンス核酸であって、
上記モチーフが以下の式(I)または(II)で表される、上記1に記載のアンチセンス核酸。
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、それぞれ互いに独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
Rは、独立に、式(I)が核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
ここで、部分構造(I−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(I−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして
当該部分構造(I−a)が存在しない場合には、i=5である]、
または、
Figure 2018051762
[式中、
〜AおよびRは、式(I)に関して定義されるとおりであり、
ここで、部分構造(II−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(II−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして 当該部分構造(II−a)が存在しない場合には、i=5である]。
4.A〜Aのうちの連続した少なくとも4つが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドである、上記3に記載のアンチセンス核酸。
5.(a)上記モチーフの5’側に位置し、かつアンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む5’ウィング領域、および/または、
(b)上記モチーフの3’側に位置し、かつアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む3’ウィング領域、
および任意選択的に、
(c)上記5’ウィング領域と上記モチーフの間、上記モチーフと上記3’ウィング領域の間および/または上記モチーフ間に介在し、1〜20塩基の長さを有する少なくとも1つのヌクレオチドリンカー、
をさらに含み、
上記5’ウィング領域および3’ウィング領域は、それぞれ互いに独立に、1〜10塩基の長さを有する、
上記4に記載のアンチセンス核酸。
6.上記デオキシリボヌクレオシドが化学修飾されていない、上記4または5のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
7.上記5’ウィング領域および上記3’ウィング領域を含み、
上記5’ウィング領域が、式(III)
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
cは、1〜9の整数を表す]
で表され、
上記3’ウィング領域が、式(IV)
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
dは、1〜9の整数を表す]
で表されるか;
あるいは、
上記5’ウィング領域が、式(III’)または式(III’’):
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
c’は、0〜4の整数を表す]、
または
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
c’は、0〜4の整数を表す]
で表され、
上記3’ウィング領域が、式(IV’)または式(IV’’):
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
d’は、0〜4の整数を表す]
または
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
d’は、0〜4の整数を表す]
で表される、
上記5または6に記載のアンチセンス核酸。
8.Xが独立して、核酸類似体である、上記7に記載のアンチセンス核酸。
9.核酸類似体が、架橋化核酸である、上記8に記載のアンチセンス核酸。
10.架橋化核酸が、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される、上記9に記載のアンチセンス核酸。
11.長さが8〜100塩基である、上記1〜10のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
12.式(V)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(V)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
ここで、部分構造(V−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(V−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
当該部分構造(V−a)が存在しない場合には、i=5である]
で表される構造、または、
式(VI)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(VI)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
ここで、部分構造(VI−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(VI−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
当該部分構造(VI−a)が存在しない場合には、i=5である]
で表される構造、または、
式(V’)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(V’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
ここで、部分構造(V’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数である]
で表される構造、または、
式(VI’)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(VI’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
ここで、部分構造(VI’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数である]
で表される構造を有する、上記3〜11のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
13.上記モチーフが、式(VII)
Figure 2018051762
[式中、Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
Qは、SまたはOであり、そして
fは、1〜10の整数である]
で表される1つまたは複数の構造により、1か所または複数か所で中断されている、上記3〜12のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
14.A〜Aが、それぞれ互いに独立に、化学修飾ヌクレオシドから選択される、上記3に記載のアンチセンス核酸。
15.上記化学修飾ヌクレオシドが核酸類似体である、上記14に記載のアンチセンス核酸。
16.式(VIII)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(VIII)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
ここで、部分構造(VIII−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(VIII−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
当該部分構造(VIII−a)が存在しない場合には、i=5である]
で表される構造、または、
式(IX)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(IX)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
ここで、部分構造(IX−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(IX−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
当該部分構造(IX−a)が存在しない場合には、i=5である]
で表される構造、または、
式(VIII’)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(VIII’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
ここで、部分構造(VIII’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数である]
で表される構造、または、
式(IX’)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(IX’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
ここで、部分構造(IX’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数である]
で表される構造を有する、上記3、14および15のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
17.(i)上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸、および
(ii)化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として少なくとも含むポリヌクレオチドであって、少なくとも一部が上記(i)アンチセンス核酸に対して相補的なポリヌクレオチドを含む相補鎖、
を含む二本鎖核酸複合体。
18.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび/または化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドを構成単位として少なくとも含む、上記17に記載の二本鎖核酸複合体。
19.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、上記18に記載の二本鎖核酸複合体。
20.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、上記19に記載の二本鎖核酸複合体。
21.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていないリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、上記18に記載の二本鎖核酸複合体。
22.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、上記18に記載の二本鎖核酸複合体。
23.上記ポリヌクレオチドが、上記デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドを交互に含む、上記22に記載の二本鎖核酸複合体。
24.上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが化学修飾されていない、上記22または23に記載の二本鎖核酸複合体。
25.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが少なくとも1つのバルジを含む、上記17〜24のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
26.(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、上記(i)アンチセンス核酸に対して少なくとも1つのミスマッチを含む、上記17〜25のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
27.上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さが、8〜100塩基である、上記17〜26のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
28.上記(i)アンチセンス核酸が、上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドと同じ長さを有する、上記17〜27のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
29.上記(i)アンチセンス核酸の長さが、上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さと異なる、上記17〜27のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
30.少なくとも1つのリガンドを含む、上記17〜29のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
31.少なくとも1つのリガンドが、上記(ii)相補鎖のポリヌクレオチドの1つまたは複数の構成単位に結合している、上記30に記載の二本鎖核酸複合体。
32.上記少なくとも1つのリガンドが、タンパク質リガンド、ペプチドリガンド、アプタマーリガンド、糖鎖リガンド、脂質リガンド、低分子リガンドおよび生体分子/生体活性分子リガンドからなる群から選択される、上記30または31に記載の二本鎖核酸複合体。
33.上記少なくとも1つのリガンドが、環状アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列含有ペプチド、N−アセチルガラクトサミン、コレステロール、ビタミンE(トコフェロール)、ステアリン酸、ドコサン酸、アニスアミド、葉酸、アナンダミドまたはスペルミンである、上記32に記載の二本鎖核酸複合体。
34.哺乳動物において標的遺伝子の発現を減少させるための、上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
35.標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、上記34に記載のアンチセンス核酸。
36.哺乳動物において、標的遺伝子の発現が亢進している細胞の増殖を抑制するための、上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
37.上記標的遺伝子ががん遺伝子であり、上記細胞が癌細胞である、上記36に記載のアンチセンス核酸。
38.哺乳動物において標的遺伝子の発現を減少させるための、上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
39.上記(i)アンチセンス核酸が、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、上記38に記載の二本鎖核酸複合体。
40.哺乳動物において、標的遺伝子の発現が亢進している細胞の増殖を抑制するための、上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
41.上記標的遺伝子ががん遺伝子であり、上記細胞が癌細胞である、上記40に記載の二本鎖核酸複合体。
42.上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体と、任意に薬理学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
43.癌を治療および/または予防するための、上記42に記載の医薬組成物。
44.上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体を細胞と接触させる工程を含む、細胞内の転写産物レベルを低減する方法であって、
アンチセンス核酸が該転写産物のいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、方法。
45.上記転写産物が、タンパク質をコードするmRNA転写産物である、上記44に記載の方法。
46.上記転写産物が、タンパク質をコードしない転写産物である、上記44に記載の方法。
47.哺乳動物において標的遺伝子の発現を低減させるための、上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体の使用。
48.哺乳動物において標的遺伝子の発現を低減させるための薬剤を製造するための、上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体の使用。
49.上記1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または上記17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において標的遺伝子の発現レベルを低減する方法であって、
アンチセンス核酸が、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、方法。
50.上記投与が経腸管的投与である、上記49に記載の方法。
51.上記投与が非経腸管的投与である、上記49に記載の方法。
52.上記核酸複合体の投与量が、0.001mg/kg/日〜50mg/kg/日である、上記49〜51のいずれか1つに記載の方法。
53.上記哺乳動物がヒトある、上記49〜52のいずれか1つに記載の方法。
54.上記少なくとも1つのリガンドが、環状ペプチド、N−アセチルガラクトサミン、コレステロール、ビタミンE(トコフェロール)もしくはその類縁体、ステアリン酸、ドコサン酸、アニスアミド、葉酸もしくはその類縁体、アナンダミドまたはスペルミンである、上記32に記載の二本鎖核酸複合体。
ASOにおいて、天然の核酸間結合であるホスホジエステル結合と、リン酸基の酸素原子の一つを硫黄原子に置換したホスホロチオエート化(PS化)結合を交互に持つ構造(図1.C)をアンチセンス活性部位に用いることにより、アンチセンス効果を維持したまま副作用を低減する効果を得ることが可能である。
また、上記ASOを用いることにより、副作用の低減と、標的細胞、好ましくは標的癌細胞の増殖の特異的かつ効率的な抑制を両立することが可能である。
さらに、上記ASOとそれに対して少なくとも一部が相補的なポリヌクレオチドとを含む二本鎖核酸を用いることにより、上記ASOに基づくアンチセンス効果を維持したまま副作用を低減する効果を得ることが可能である。
DNA分子のバックボーン構造において、A.天然型のホスホジエステル結合のPO型結合、B.ホスホロチオエート結合のPS型結合、およびC.PS型及びPO型が構造に配置されたPS−PO型結合を示す。 1.第一世代と言われるアンチセンス核酸において、PS−PO構造を採用した態様を示す。黒い実線部分がPS−PO構造である(ここでは、デオキシリボヌクレオチドから構成される構造を示す)。2.第二世代と言われるギャップマー構造を持つアンチセンス核酸において、PS−PO構造を採用した態様を示す。ギャップ領域である中央部(黒い実線部分)はアンチセンス活性に関して主要な役割を果たすRNaseHの基質であり、PS−PO構造を有する。一方、ウィング領域である両末端部(白枠で表示)には、ヌクレアーゼ耐性と標的となるmRNAに対する親和性を高めるために、化学修飾ヌクレオチド、例えばLNAやRNA誘導体が用いられる。3.ウィング領域が5’末端のみにある例。4.ウィング領域が3’末端のみにある例。5及び6.アンチセンス活性部分がRNaseH非依存的に機能する場合の構造例である。ここで、5は、ウィング領域と同様の構造によりギャップ領域が複数箇所で中断されている態様、6は、アンチセンス核酸全体が化学修飾ヌクレオチド、例えばLNAやRNA誘導体から構成される態様を示す。 アンチセンス核酸に相補的な核酸鎖が付加した二本鎖核酸の構造の例を示す。1〜6におけるアンチセンス核酸はそれぞれ、図2の1〜6の構造に相当するものである。 A549細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 A431細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 AsPC−1細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 HPAC細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 HepG2細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 MCF−7細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 OVCAR−3細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 MCAS細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 Caki−1細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 DU145細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 PC−3細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 T24細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 HCT116細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 HGC−27細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 MKN45細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 PANC−1細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験の結果を示す。 OVCAR−3細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸によるmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 A431細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸によるmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 膵癌同所移植マウスモデルを用いた場合のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値の測定結果を示す。 膵癌同所移植マウスモデルを用いた場合のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の測定結果を示す。 膵癌同所移植マウスモデルを用いた場合の肝重量比の算出結果を示す。 膵癌同所移植マウスモデルを用いた場合の膵臓重量比の比較による抗腫瘍効果の評価結果を示す。 PANC−1細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 ASPC−1細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 A549細胞株を用いた場合の、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 PANC−1細胞株を用いた場合の、cRGDを相補鎖中央部に結合させたヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 K562細胞株を用いた場合の、cRGDを相補鎖中央部に結合させたヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 葉酸を相補鎖中央部に結合させたヒトBCR−ABL遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 ヒトSTAT3遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験の結果を示す。 PS−PO型2本鎖核酸のPBMC(ヒト末梢血単核細胞)におけるインターフェロン−α(IFN−α)発現誘導作用の検証試験の結果を示す。 リガンドがリンカーを介してヌクレオチドの2’位から懸垂しているポリヌクレオチドの例を示す。
上述のように、本発明のアンチセンス核酸は、それを構成するポリヌクレオチドのバックボーンの少なくとも一部に、天然の核酸間結合であるホスホジエステル結合(PO型結合)と、リン酸基の酸素原子の一つを硫黄原子に置換したホスホロチオエート化(PS化)結合(PS型結合)を交互に持つ構造(PS−PO構造)を用いた核酸である。このような構造を採用することにより、本発明のアンチセンス核酸は、アンチセンス効果を維持したまま副作用を低減することができる。このPS−PO構造によって、全PS型構造に比べて、アンチセンス活性部位の核酸分子、例えばDNA分子のS原子置換による脂質性が半減し、加えてPS型とPO型の結合が交互に規則的に連続する配列効果により、天然に近似したバックボーン構造効果が増大する効果を狙ったものである。このようにASOの骨格を大きく変動することによって天然の核酸と同程度の安全性(副作用の低減)を確保することができた。
このPS−PO構造は、RNAバックボーンの例としては、Nucleic Acids Research, 2015, Vol.43(9), 4569−4578、 Cell, 2012, Vol.150, 883−894、 PCT/US2012/052874などに記載のものが知られているが、これらの文献における核酸の作用メカニズムはRNA干渉によるものであり、本発明のようなアンチセンス効果に基づくアンチセンス核酸ではない。また、DNAのバックボーンにPS−PO構造を持ち、その副作用を減じる効果を報告された例は無い。
ここで、「アンチセンス核酸」(本明細書では、「ASO」とも呼ぶ)とは、ポリヌクレオチドから構成される核酸であって、アンチセンス効果を有するものをいう。アンチセンス核酸は、典型的には、一本鎖構造を有する。
本明細書において、「アンチセンス効果」とは、標的転写産物(RNAセンス鎖)と、例えば、その部分配列に相補的なDNA鎖、又は通常アンチセンス効果が生じるように設計された鎖等とがハイブリダイズすることによって生じる、標的遺伝子の発現又は標的転写産物レベルの抑制を意味する。ある場合においては、ハイブリダイゼーション産物により前記転写産物を被覆することによって生じ得る翻訳の阻害又はエクソンスキッピング等のスプライシング機能変換効果、及び/又は、ハイブリダイズした部分が認識されることにより生じ得る前記転写産物の分解によって生じる、前記抑制も包含し得る。
上記のように、本発明のアンチセンス核酸はポリヌクレオチドを含む。本発明の1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸はポリヌクレオチドであり、すなわち、ポリヌクレオチドのみからなる。
本発明の1つの実施態様において、本発明は、アンチセンス核酸であって、それを構成するポリヌクレオチドのバックボーンの少なくとも一部にPS−PO構造を持つアンチセンス核酸に関する。上記アンチセンス核酸は一本鎖であることができる。
本発明の1つの実施態様において、本発明は、以下の式(XX)で表されるPSPOユニットを含む、アンチセンス核酸に関する
Figure 2018051762
[式中、
Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
nは、2以上の整数、好ましくは2〜50、例えば5〜20の整数を表す]。
また、本発明のさらなる実施態様において、本発明は、以下の式(XX’)で表される構造を有する、アンチセンス核酸に関する
Figure 2018051762
[式中、
Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
nは、2以上の整数、好ましくは2〜50、例えば5〜20の整数を表し、
Yは、上記PSPOユニットの5’側に位置し、かつアンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む5’ウィング領域;式(XX’−a)もしくは式(XX’−b)
Figure 2018051762
で表される部分;またはY−PSPOユニット−NL−(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)であり、そして、
Zは、上記PSPOユニットの3’側に位置し、かつアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む3’ウィング領域;化学修飾されていてもよいヌクレオシド;式(XX’−c)もしくは式(XX’−d)
Figure 2018051762
で表される部分;または−NL−PSPOユニット−Z(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)である]。
本発明の1つの実施態様において、本発明は、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有する1つまたは複数のモチーフを含む、アンチセンス核酸に関する。当該モチーフは、少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として含むことができる。
上記モチーフは、以下の式(I)または(II)で表される:
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、それぞれ互いに独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
Rは、独立に、式(I)が核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
ここで、部分構造(I−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(I−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして
当該部分構造(I−a)が存在しない場合には、i=5である]、
または、
Figure 2018051762
[式中、
〜AおよびRは、式(I)に関して定義されるとおりであり、
ここで、部分構造(II−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(II−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして 当該部分構造(II−a)が存在しない場合には、i=5である]。
式(I)または(II)に示されるように、上記モチーフは、交互にホスホジエステル結合(以下、「PO結合」ともいう)とホスホロチオエート化結合(以下、「PS結合」ともいう)を介して結合された化学修飾されていてもよいヌクレオシドから構成される。
上記モチーフは、PS結合とPO結合の繰り返しを少なくとも2つ有する。下記のように、部分構造(I−a)が存在せず、i=5の場合の式(I)(あるいは、部分構造(II−a)が存在せず、i=5の場合の式(II))が、上記繰り返しが2つの場合に相当する:
Figure 2018051762
また、上記モチーフは、iの数に応じて種々の数のPS結合とPO結合の繰り返しを有する構造を取り得る。
例えば、i=7の場合には、上記モチーフは下記の式(I)または(II)で表される。
Figure 2018051762
i=7の場合の上記モチーフは、PS結合とPO結合の繰り返しを3つ有する。そして、それぞれ、以下の部分:
Figure 2018051762
が、部分構造
Figure 2018051762
に相当する。
なお、上記2つの式からも明らかなように、上記モチーフにおいて、最初の結合(AとAとの間の結合)はPS結合であっても、またはPO結合であってもよい。
また、例えば、i=8の場合には、上記モチーフは下記の式(I)または(II)で表される:
Figure 2018051762
この場合、上記モチーフはPS結合とPO結合の繰り返しを3つ有するが、それに加えてさらにもう1つのPO結合(式(I))またはPS結合(式(II))を有する。このように、上記モチーフは、必ずしも最初の結合としてPO結合から始まってPS結合で終わるか、あるいはPS結合で始まってPO結合で終わる必要はない。すなわち、上記モチーフは、PS結合とPO結合が交互に繰り返される構造であれば、上記のような、PS結合で始まってPS結合で終わる(またはPO結合で始まってPO結合で終わる)構造であることもできる。
上記式(I)または(II)において、Rは、iの数に応じて、上記のようにPS結合とPO結合が交互に存在するように、SまたはOから独立に選択される。
本発明の1つの好ましい実施態様において、上記式(I)または(II)におけるiは、5〜50、より好ましくは8〜30、さらに好ましくは10〜25の整数、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。
本発明のアンチセンス核酸は、1つまたは複数の上記のモチーフを含む。本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記モチーフを1〜10個、好ましくは1、2、3、4または5個含む。本発明の1つの好ましい実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記モチーフを1個含む。
また、本発明の他の実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記モチーフのみからなる。
上記のように、上記モチーフは、少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として含むことができる。
また、本発明の1つの実施態様において、アンチセンス核酸は、リボヌクレオチドを含まないか、あるいは、リボヌクレオチドも化学修飾されたリボヌクレオチドも含まない。
本発明の1つの実施態様において、上記の少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドには、リボヌクレオチドが含まれない。
本発明の1つの好ましい実施態様において、上記の少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。
「少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチド」は、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10個の連続した化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチド、例えば、4〜20塩基の連続したデオキシリボヌクレオチド(化学修飾されていてもよい)を含む領域であることができ、好ましくは5〜16塩基の連続したデオキシリボヌクレオチド(化学修飾されていてもよい)を含む領域であり、より好ましくは6〜14塩基、例えば7〜13塩基の連続したデオキシリボヌクレオチド(化学修飾されていてもよい)を含む領域である。この領域には、RNA鎖にハイブリダイズした際に、RNA鎖を切断するRNaseHによって認識されるヌクレオチド、例えば天然型デオキシリボヌクレオチドや核酸間結合のみが化学修飾されたデオキシリボヌクレオチドを用いることもでき、そのような場合に当該領域は、RNaseHの基質となる。このような領域は、「ギャップ領域」とも呼ばれる。
本発明の1つの実施態様において、上記デオキシリボヌクレオチドは化学修飾されておらず、好ましくは、核酸間結合以外の部分は化学修飾されていない。さらに、本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、RNaseHの基質となる領域を含み、従って、アンチセンス核酸全体としてもRNaseHの基質となることができる。この場合、上記アンチセンス核酸は、RNaseH依存的にアンチセンス効果を奏する。
また、本発明の他の実施態様において、上記デオキシリボヌクレオチドにおいて、各ヌクレオチドは互いに独立に化学修飾されている。デオキシリボヌクレオチドに関して利用可能な修飾はこの分野において知られている。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸では、上記モチーフにおいて、A〜Aのうちの連続した少なくとも4つが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドである。この態様において、A〜Aのうちの連続した少なくとも4つ、例えば少なくとも5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10個が化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドであることができ、例えば、A〜Aのうちの連続した4〜20個、好ましくは5〜16個、より好ましくは6〜14個、例えば7〜13個が、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドであることができる。本発明のさらなる1つの実施態様において、上記モチーフでは、A〜Aの全てが化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドである。これらの態様において、好ましくは、上記デオキシリボヌクレオシドは化学修飾されていない。
本発明の1つの実施態様において、核酸間結合を介して結合されたA〜Aのうちの連続した少なくとも4つがRNaseHの基質となる。この場合、アンチセンス核酸全体としてもRNaseHの基質となることができる。
本明細書において、「核酸」とは、天然型核酸、非天然型核酸及び/又は核酸類似体をいうが、「核酸」はモノマーヌクレオチドを意味する場合もあり、複数のモノマーから構成されるオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドを意味する場合もある。「核酸鎖」という文言は、ここではオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドを称するためにも用いられる。核酸鎖は、その全部又は一部を、自動合成機の使用といった化学合成法によって調製してもよく、ポリメラーゼ、ライゲース又は制限酵素反応に限定されるわけではないが、酵素処理により調製してもよい。本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸におけるポリヌクレオチド(および相補鎖におけるポリヌクレオチド)は、化学合成または酵素的反応によって人工的に調製されたものである。
本明細書において、「天然型核酸」とは、ヌクレオチドを基本単位とし、リン酸が各ヌクレオチド間で糖の3’と5’位炭素の間にジエステル結合の橋をつくって結ばれ重合した自然界に存在するポリヌクレオチドをいう。通常は、アデニン、グアニン、シトシン及びウラシルのいずれかの塩基を有するリボヌクレオチドが連結したRNA及び/又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミンのいずれかの塩基を有するデオキシリボヌクレオチドが連結したDNAが該当する。なお、本明細書では、上記の各ヌクレオチド間の結合を「核酸間結合」ともいう。
本明細書において、「非天然型核酸」とは、非天然型ヌクレオチドを含む又はそれからなる核酸をいう。ここで「非天然型ヌクレオチド」とは、人工的に構築された又は人工的に化学修飾された自然界に存在しないヌクレオチドであって、前記天然に存在するヌクレオチドに類似の性質及び/又は構造を有するヌクレオチド、又は天然に存在するヌクレオシド若しくは塩基に類似の性質及び/又は構造を有するヌクレオシド若しくは塩基を含むヌクレオチドをいう。例えば、脱塩基ヌクレオシド、アラビノヌクレオシド、2’−デオキシウリジン、α−デオキシリボヌクレオシド、β−L−デオキシリボヌクレオシド、その他の糖修飾を有するヌクレオチドが挙げられる。さらに、置換五単糖(2’−O−メチルリボース、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース、1’,2’−デオキシリボース)、アラビノース、置換アラビノース糖;置換六単糖及びアルファ−アノマーの糖修飾を有するヌクレオチドが含まれる。また、非天然型ヌクレオチドは、人工的に構築された塩基類似体又は人工的に化学修飾された塩基(修飾塩基)を包含するヌクレオチドも含む。「塩基類似体」には、例えば、2−オキソ(1H)−ピリジン−3−イル基、5位置換−2−オキソ(1H)−ピリジン−3−イル基、2−アミノ−6−(2−チアゾリル)プリン−9−イル基、2−アミノ−6−(2−チアゾリル)プリン−9−イル基、2−アミノ−6−(2−オキサゾリル)プリン−9−イル基等が挙げられる。「修飾塩基」には、例えば、修飾化ピリミジン(例えば、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロウラシル、4−チオウラシル)、修飾化プリン(例えば、6−メチルアデニン、6−チオグアノシン)及び他の複素環塩基等が挙げられる。また、メチルホスホネート型DNA/RNA、ホスホロチオエート型DNA/RNA(すなわち、チオリン酸結合を有するDNA/RNA)、ホスホルアミデート型DNA/RNA、2’−O−メチル型DNA/RNA等の化学修飾核酸や核酸類似体も含むこともできる。本明細書では、これらをまとめて「化学修飾ヌクレオチド」とも呼ぶ。
本明細書において「核酸類似体」とは、天然型核酸に類似の構造及び/又は性質を有する人工的に構築された化合物をいう。例えば、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ホスフェート基を有するペプチド核酸(PHONA)、架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)、モルフォリノ核酸、塩基性ポリアミノ酸(Poly L−Lys、Poly L−Arg)等が挙げられる。なお、これらの核酸類似体は、上記のような化学修飾をさらに受けていてもよい。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、上記のような各種核酸を適宜組み合わせて含むかまたは組み合わせてなる核酸(ポリヌクレオチド)を、アンチセンス核酸および/または相補的な核酸鎖に有することができる。
本明細書において、「ヌクレオチド」とはヌクレオシドの糖部分がリン酸とエステルをつくっている化合物を意味し、ここで「ヌクレオシド」とは、プリン塩基またはピリミジン塩基のような窒素を含む有機塩基と糖の還元基とがグリコシド結合によって結合した配糖体化合物を意味する。
また、「デオキシリボヌクレオチド」は、糖部分がD−2−デオキシリボースからなるヌクレオチドであり、「リボヌクレオチド」は、糖部分がD−リボースからなるヌクレオチドである。そして「デオキシリボヌクレオシド」は、糖部分がD−2−デオキシリボースからなるヌクレオシドであり、「リボヌクレオシド」は、糖部分がD−リボースからなるヌクレオシドである。
「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドを基本単位とし、リン酸が各ヌクレオチド間で糖の3’と5’位炭素の間にジエステル結合の橋をつくって結ばれた、複数のヌクレオチドが重合した鎖状の物質を意味する。これは、いわゆるオリゴヌクレオチドも包含する。なお、本明細書では、このようなポリヌクレオチドにその構成単位として含まれるヌクレオチド(重合した状態にある)についても同様に「ヌクレオチド」と呼ぶことがある。
ここで、上記「デオキシリボヌクレオチド」は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチドを意味する。当該デオキシリボヌクレオチドは、その塩基、糖若しくはリン酸塩結合が化学修飾されていてもよい。同様に、「リボヌクレオチド」は、天然に存在するリボヌクレオチドを意味する。当該リボヌクレオチドは、その塩基、糖若しくはリン酸塩結合が化学修飾されていてもよい。化学修飾としては例えば上述したようなものが考えられる。
本発明の1つの実施態様において、化学修飾ヌクレオチドは、塩基部位が修飾されていてもよい。塩基部位の修飾としては、例えば、シトシンの5−メチル化、5−フルオロ化、5−ブロモ化、5−ヨード化、N4−メチル化、チミジンの5−デメチル化、5−フルオロ化、5−ブロモ化、5−ヨード化、アデニンのN6−メチル化、8−ブロモ化、グアニンのN2−メチル化、8−ブロモ化が挙げられる。さらにまた、ある実施態様における化学修飾ヌクレオチドにおいては、リン酸ジエステル結合部位が修飾されていてもよい。リン酸ジエステル結合部位の修飾としては、例えば、ホスホロチオエート化、メチルホスホネート化、メチルチオホスホネート化、キラル−メチルホスホネート化、ホスホロジチオエート化、ホスホロアミデート化が挙げられるが、体内動態に優れているという観点から、ホスホロチオエート化(チオリン酸結合)が好ましい。また、このような塩基部位の化学修飾やリン酸ジエステル結合部位の化学修飾は同一のヌクレオチドに対して、複数種組み合わせて施されていてもよい。
当業者であれば、ヌクレオチドの種類(例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド)に応じて、適宜、それぞれにおいて可能な化学修飾を選択して施すことが可能である。
上記のような化学修飾は同一のヌクレオチドに対して、複数種組み合わせて施されていてもよい。
本発明の1つの実施態様において、化学修飾ヌクレオチドは糖部位が修飾されていてもよく、例えば上記化学修飾は、2’−O−メチル化、2’−O−メトキシエチル(MOE)化、2’−O−アミノプロピル(AP)化、2’−フルオロ化からなる群から選択される。
また、本発明においては、ヌクレオシドも同様に化学修飾を受けていてもよい。具体的には、各ヌクレオシドは、その塩基または糖部分が、上述のような化学修飾を施されていてもよく、化学修飾は、同一のヌクレオシドに対して複数種組み合わせて施されていてもよい。上記のような「核酸類似体」も、化学修飾ヌクレオシドの一例である。核酸類似体は、上記のような化学修飾をさらに受けていてもよい。なお、本明細書では、ポリヌクレオチドにその構造単位として組み込まれたヌクレオシドも、ポリヌクレオチドの末端を構成するヌクレオシド(5’末端に−OH基を有するヌクレオシドまたは3’末端に−OH基を有するヌクレオシド)も、同様に「ヌクレオシド」と呼ぶことがある。
通常、上記のような化学修飾は、塩基対形成には影響を及ぼさず、従って、ヌクレオチド間の相補性やポリヌクレオチド間の相補性には影響を及ぼさないと考えられる。すなわち、通常、相補的な2つのヌクレオチドは、化学修飾された後も塩基対を形成する能力を維持することができ、従って依然として相補的であることができる。
しかしながら、ある場合において、化学修飾の数や位置によっては、ここで開示するアンチセンス核酸や二本鎖核酸が奏するアンチセンス効果等に影響を与えることになるかもしれない。これらの態様は、標的遺伝子の配列等によっても異なるため、一概には言えないが、当業者であれば、アンチセンス法に関する文献の記載等を参酌しながら、決定することができる。また、化学修飾後のアンチセンス核酸が有するアンチセンス効果を測定し、得られた測定値が、化学修飾前のアンチセンス核酸のそれよりも有意に低下していなければ(例えば、化学修飾後のアンチセンス核酸の測定値が化学修飾前のアンチセンス核酸の測定値の30%以上であれば)、当該化学修飾は評価することができる。アンチセンス効果の測定は、例えば、細胞等に被検核酸化合物を導入し、該被検核酸化合物が奏するアンチセンス効果によって抑制された該細胞等における標的遺伝子の発現量(mRNA量、cDNA量、タンパク質量等)を、ノザンブロッティング、定量的PCR、ウェスタンブロッティング等の公知の手法を適宜利用することによって行うことができる。あるいは、例えば、細胞に被検核酸化合物を導入し、該被検核酸化合物が奏する標的遺伝子発現抑制に起因する細胞増殖抑制を、WST(または類似の色素MTT、XTT、MTS等)をホルマザン色素へ還元する酵素活性を測定する比色定量法、BrdU取込量の測定、フローサイトメトリー等の公知の手法を用いて測定することにより行うことができる。
上述のように、本発明のアンチセンス核酸のポリヌクレオチドは、任意選択で核酸類似体を含むことができる。本発明において使用される核酸類似体の例としては、例えばRNA誘導体が挙げられる。RNA誘導体の例としては、架橋型核酸塩基(「架橋化核酸」とも呼ぶ)、糖部化学修飾体等を挙げることができ、例えばBNA/LNA、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、トリシクロ−DNA(tcDNA)、2’−OMe、2’−F、2’−O−MOE、4’−O−アミノアルキル等が挙げられる。
本発明の1つの実施態様において、上記核酸類似体は、BNA/LNA、好ましくは下記の式(1)で表されるBNAである。
Figure 2018051762
[式(1)中、Baseは、置換基を有していてもよい芳香族複素環基若しくは芳香族炭化水素環基、例えば、天然型ヌクレオシドの塩基部位(プリン塩基、ピリミジン塩基)又は非天然型(化学修飾)ヌクレオシドの塩基部位を示す。なお、塩基部位の化学修飾の例は、前述の通りである。R、Rは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、スルホニル基、シリル基、リン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、又は、−P(R)R(ここで、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、炭素数1〜6のシアノアルコキシ基又は炭素数1〜5のアルキル基で置換されたアミノ基を示す)を示す]。
なお、前記化学式において示されている化合物はヌクレオシドであるが、本明細書において、「LNA」や「BNA」には、当該ヌクレオシドにリン酸基が結合した形態(ヌクレオチド)も含まれる。すなわち、本明細書において「LNA」や「BNA」という語句を用いた場合には、ポリヌクレオチド中に、ヌクレオチドとして組み込まれているLNA/BNAも意味する。またこれは、「核酸類似体」という語句を使用する場合にもあてはまる。
また、BNAとしては、例えば、LNA(ロックド核酸(Locked Nucleic Acid(登録商標)、2’,4’−BNA)とも称される、α−L−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA)の他に、β−D−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA、ENAとも称されるエチレンオキシ(4’−(CH−O−2’)BNA)、β−D−チオ(4’−CH−S−2’)BNA、アミノオキシ(4’−CH−O−N(R)−2’)BNA、2’,4’−BNANCとも称されるオキシアミノ(4’−CH−N(R)−O−2’)BNA、2’,4’−BNACOC、3’アミノ−2’,4’−BNA、5’−メチルBNA、cEt−BNAとも称される(4’−CH(CH)−O−2’)BNA、cMOE−BNAとも称される(4’−CH(CHOCH)−O−2’)BNA、AmNAとも称されるアミドBNA(4’−C(O)−N(R)−2’)BNA(R=H、Me)、当業者に知られた他のBNAが挙げられる。
本発明の1つの実施態様では、核酸類似体(例えばLNA/BNA)はさらに、上述の化学修飾(または化学修飾の組み合わせ)を受けていてもよい。本発明の1つの実施態様では、核酸類似体(例えばLNA/BNA)は、ホスホロチオエート化が施されたヌクレオチドとして、上記ポリヌクレオチドに組み込まれている。
当業者であれば、ヌクレオチドの種類(例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド)や核酸類似体の種類に応じて、適宜、それぞれにおいて可能な化学修飾を選択して施すことが可能である。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含むウィング領域を含むことができる。ウィング領域は、主に、アンチセンス核酸のヌクレアーゼ耐性と、標的となるmRNAに対する当該核酸の親和性とを高めるために、化学修飾ヌクレオチドを配置した領域である。「1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含むウィング領域」は、上記PSPOユニットの、または上記モチーフの、好ましくは前記少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドを含む領域(以下「DNAギャップ領域」とも称する)の、5’末側及び/又は3’末側に配置されるものであり、好ましくはアンチセンス核酸の5’末端および/または3’末端に配置されるものである。従って、本発明の1つの好ましい実施態様において、上記ウィング領域は、アンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位および/またはアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む。
本発明の1つの実施態様において、上記PSPOユニットの、または上記モチーフの、例えば該DNAギャップ領域の5’末端に配置された化学修飾ヌクレオチド、例えば核酸類似体を含む領域(以下「5’ウィング領域」とも称する)、ならびに、上記PSPOユニットの、または上記モチーフの、例えば該DNAギャップ領域の3’末端に配置された化学修飾ヌクレオチド、例えば核酸類似体を含む領域(以下「3’ウィング領域」とも称する)は、それぞれ独立したものであり、化学修飾ヌクレオチドを少なくとも1種含んでいればよく、さらに、かかる化学修飾ヌクレオチド以外に天然型のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)も含まれていてもよい。また、5’ウィング領域及び3’ウィング領域の鎖長は独立的に、通常1〜10塩基であることができ、好ましくは1〜7塩基、又は2〜5塩基、例えば2〜4塩基である。
さらに、5’ウィング領域及び3’ウィング領域における化学修飾ヌクレオチド及び天然型のヌクレオチドの種類や数や位置については、ある実施形態におけるアンチセンス核酸が奏するアンチセンス効果等に影響を与える場合もあるため、好ましい態様は、配列等によっても変わり得る。一概には言えないが、当業者であれば、例えば、Tachasらの米国特許第8299039号明細書の記載のようなアンチセンス法に関する文献の記載を参酌しながら、好ましい態様を決定することができる。また、前記「少なくとも4つ以上の連続した化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチド」を含む領域同様に、化学修飾後、例えば核酸類似体導入後の核酸(または当該核酸を含む二本鎖核酸)が有するアンチセンス効果を測定し、得られた測定値が、これらの前の核酸(または当該核酸を含む二本鎖核酸)のそれよりも有意に低下していなければ、当該化学修飾、例えば核酸類似体は好ましい態様であると評価することができる。
なお、PS−PO構造は、従来技術のPS型アンチセンス鎖構造に比べて酵素耐性が弱くなる傾向がある。従って、PS−PO構造を有するアンチセンス核酸には、至適な酵素耐性を持たせる必要がある。本発明では、本発明において用いられるようなPS−PO構造を有するアンチセンス核酸において、中央に少なくとも4塩基以上の鎖長のDNA(好ましくは化学修飾されていないDNA)が配置され、さらにRNA(すなわち、標的転写産物)と強い結合能力を持つ修飾ヌクレオチド、好ましくは核酸類似体、例えばLNA(又は他のBNA)が両端に配置されることによって、当該アンチセンス鎖が、至適な酵素耐性を有し、その結果、PS型構造を有するアンチセンス核酸と同等の標的転写産物の発現抑制効果、標的細胞増殖の抑制効果を有することが見出された。
よって、本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記5’ウィング領域および3’ウィング領域を含む。そして、上記5’ウィング領域および3’ウィング領域はそれぞれ独立に、核酸類似体を含んでいることが望ましい。本発明の1つの実施態様において、上記5’ウィング領域および3’ウィング領域はそれぞれ、核酸類似体からなる。この場合、核酸類似体はさらに化学修飾されていてもよく、さらに化学修飾されていなくてもよい。上記5’ウィング領域および3’ウィング領域はそれぞれ、BNA/LNAを含んでいてもよく、この場合、LNA/BNAはさらに化学修飾されていてもよい。本発明の1つの実施態様において、LNA/BNAはホスホロチオエート化されている。
また、本発明の1つの実施態様において、アンチセンス核酸は、リボヌクレオチドを含まないか、あるいは、リボヌクレオチドも化学修飾されたリボヌクレオチドも含まない。
本発明の1つの実施態様において、上記ウィング領域における核酸間結合は、PS型構造(すなわちPS結合が連続した構造)を有してもよく、PO型構造(すなわちPO結合が連続した構造)を有していてもよく、またはPS−PO構造を有していてもよい。上記ウィング領域の長さが短い場合、例えば4塩基以下の場合には、好ましくは、上記ウィング領域における核酸間結合は、PS型構造を有していてもよい。
また、本発明の1つの実施態様において、上記5’ウィング領域は、式(III)
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
cは、1〜9の整数を表す]
で表される。
また、本発明の1つの態様において、上記3’ウィング領域は、式(IV)
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
dは、1〜9の整数を表す]
で表される。
ここで、式(III)または(IV)において、好ましくは、Xは核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸である。本発明の1つの好ましい実施態様において、上記架橋化核酸は、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。好ましくは、XはLNAである。また、cおよびdは、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6を示し、最も好ましくは、cおよびdはいずれも1である。
さらに、本発明の1つの実施態様において、上記5’ウィング領域は、式(III’)または式(III’’)で表される:
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
c’は、0〜4の整数を表す]、
または
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
c’は、0〜4の整数を表す]。
また、本発明の1つの態様において、上記3’ウィング領域は、式(IV’)または式(IV’’)で表される:
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
d’は、0〜4の整数を表す]、
または
Figure 2018051762
[式中、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
d’は、0〜4の整数を表す]。
ここで、式(III’)、(III’’)、(IV’)または(IV’’)において、好ましくは、Xは核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸である。本発明の1つの好ましい実施態様において、上記架橋化核酸は、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。好ましくは、XはLNAである。また、c’およびd’は、好ましくは、それぞれ互いに独立に、0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を示し、最も好ましくは、c’およびd’はいずれも0である。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記5’ウィング領域と上記モチーフの間、上記モチーフと上記3’ウィング領域の間および/または上記モチーフ間に介在するヌクレオチドリンカーを含むことができる。
ここで、「ヌクレオチドリンカー」とは、上記5’ウィング領域と上記モチーフの間、上記モチーフと上記3’ウィング領域の間または上記モチーフ間(上記モチーフを複数有する場合)をつなぐリンカーであり、ヌクレオチド(または化学修飾ヌクレオチド)から構成される。また、「ヌクレオチドリンカー」は、上記5’ウィング領域と上記PSPOユニットの間、上記PSPOユニットと上記3’ウィング領域の間、または複数の上記PSPOユニットの間をつなぐリンカーであることもできる。上記ヌクレオチドリンカーは、好ましくは、1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3塩基の長さを有する。
本発明の1つの実施態様において、上記ヌクレオチドリンカーは、以下の式(X)または式(XI)で表される構造を有するか、式(X)または式(XI)の単位からなるホモポリマーであるか、式(X)および式(XI)の単位からなるランダム、交互、ブロックもしくはグラジエントコポリマーであるか、またはそれらの組み合わせである:
Figure 2018051762
[式中、Aは、独立して、化学修飾されていてもよいヌクレオシド、例えば化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドもしくはリボヌクレオシドから選択される]。この態様において、上記ホモポリマー、コポリマーまたはそれらの組み合わせは、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、例えば1、2、3、4または5個の上記単位から構成されることができる。
また、本発明のさらなる実施態様において、上記ヌクレオチドリンカーは、以下の式(XII)で表される:
Figure 2018051762
[式中、
Aは、独立して、化学修飾されていてもよいヌクレオシド、例えば化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドもしくはリボヌクレオシドから選択され、
aおよびbは互いに独立して、0〜20の整数、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、特に1〜3の整数であり、
ただし、a=0の場合には、bは1〜20の整数、好ましくは1〜10、例えば1〜5または1〜3の整数であり、b=0の場合には、aは1〜20の整数、好ましくは1〜10、例えば1〜5または1〜3の整数であり、
aおよびbの両方が1以上である場合、−AP(=O)O−単位および−AP(=O)S−単位の配置は、ランダム、交互、ブロック、グラジエントまたはこれらの組み合わせである]。
例えば、上記ヌクレオチドリンカーは、PS型結合および/またはPO型結合に関して、以下のような配置を有することができる(式(X)で表される単位をpo、式(XI)で表される単位をpsで示す):
Figure 2018051762
本発明の1つの実施態様において、上記ヌクレオチドリンカーは、PS−PO構造を2回繰り返した構造(−ps−po−ps−po−または−po−ps−po−ps−)からなる構造ではなく、好ましくは当該構造を含まない。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記のヌクレオチドリンカーを含まない。
本発明のアンチセンス核酸は、上記のモチーフ(M)、5’ウィング領域(5W)、3’ウィング領域(3W)およびヌクレオチドリンカー(NL)から選択される1つまたは複数を任意の組み合わせで有することができる(ただし、少なくとも1つのモチーフを含む)。本発明のアンチセンス核酸は、例えば以下のような構成を取ることができる:
Figure 2018051762
本発明のさらなる1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、上記モチーフ、上記5’ウィング領域および3’ウィング領域からなる。
本発明の1つの好ましい実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、以下の式(V)または(VI)で表される:
式(V)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(V)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
eは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を示し、そしてgは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を表し、
ここで、部分構造(V−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(V−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数、好ましくは8〜30、より好ましくは9〜25、さらに好ましくは10〜20の整数、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19であり、そして
当該部分構造(V−a)が存在しない場合には、i=5である]、
または、
式(VI)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(VI)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
eは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を示し、そしてgは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を表し、
ここで、部分構造(VI−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(VI−a)が存在する場合には、i=6〜96、好ましくは8〜30、より好ましくは9〜25、さらに好ましくは10〜20の整数、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19の整数であり、そして
当該部分構造(VI−a)が存在しない場合には、i=5である]。
ここで、式(V)または(VI)において、好ましくは、Xは核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸であり、さらに好ましくは、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。好ましくは、XはLNAである。また、eおよびgは、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6を示し、最も好ましくは、eおよびgはいずれも1である。
本発明の別の好ましい実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、以下の式(V’)または(VI’)で表される:
式(V’)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(V’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
e’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を示し、そしてg’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を表し、
ここで、部分構造(V’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数、好ましくは6〜96の範囲内の偶数であり、より好ましくは8〜30の範囲内の偶数、さらに好ましくは8〜26の範囲内の偶数、より一層好ましくは10〜20の範囲内の偶数、例えば、10、12、14、16、18または20である]、または、
式(VI’)
Figure 2018051762
[式中、
〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
Rは、独立に、式(VI’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
e’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を示し、そしてg’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を表し、
ここで、部分構造(VI’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数、好ましくは6〜96の範囲内の偶数であり、より好ましくは8〜30の範囲内の偶数、さらに好ましくは8〜26の範囲内の偶数、より一層好ましくは10〜20の範囲内の偶数、例えば、10、12、14、16、18または20である]。
ここで、式(V’)または(VI’)において、好ましくは、Xは核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸であり、さらに好ましくは、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。好ましくは、XはLNAである。また、e’およびg’は、好ましくは、それぞれ互いに独立に、0、1、2または3を示し、最も好ましくは、eおよびgはいずれも0である。
本発明の別の実施態様において、本発明のアンチセンス核酸では、上記モチーフが、式(VII)
Figure 2018051762
[式中、Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
Qは、SまたはOであり、そして
fは、1〜10の整数である]
で表される1つまたは複数の構造により、1か所または複数か所で中断されている。例えば、上記式(VII)で中断されたモチーフは以下のような構造を有する:
Figure 2018051762
[式中、A〜A、X、Qおよびfは、上記で定義されたとおりであり、好ましくは、A〜Aは、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドである]。
このように、上記モチーフは、適切な核酸間結合を有するポリヌクレオチド鎖が形成される様式で、上記式(VII)により中断されていてもよい。
従って、本発明の1つの態様において、本発明は、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有する1つまたは複数のモチーフを含むアンチセンス核酸であって、当該モチーフが上記の式(I)または(II)で表され、かつ、上記モチーフが、上記式(VII)で表される1つまたは複数の構造により、1か所または複数か所で中断されているアンチセンス核酸に関する。この態様は、図2の5で示される態様に相当する。
ここで、上記式(VII)において、Xは好ましくは、独立して核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸であり、さらに好ましくは、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。最も好ましくは、XはLNAである。また、fは、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を示し、最も好ましくは、fは1である。
上記式(VII)は、式(III)または(IV)の一部と類似する構造(または当該一部と同一の構造)であって、化学修飾ヌクレオシド、好ましくは核酸類似体と核酸間結合からなる。上記モチーフが、上記式(VII)で表される1つまたは複数の構造により、1か所または複数か所で中断されると、例えば、中断構造が大きい場合および/または中断構造の数が多い場合、上記アンチセンス核酸に、少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチド、特にRNaseHに認識されるような少なくとも4つの連続したデオキシリボヌクレオチド(核酸間結合のみが化学修飾されていてもよい)を含むギャップ領域が存在しなくなる場合が生じる(図2の5参照)。このような場合、上記アンチセンス核酸は、RNaseHの基質を含まず、従って、RNaseH非依存的にアンチセンス効果を奏する(例えばハイブリダイゼーション産物により標的転写産物を被覆することによって生じ得る翻訳の阻害又はエクソンスキッピング等のスプライシング機能変換効果による)。
従って、本発明の本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、RNaseHの基質となる領域を含まず、従って、アンチセンス核酸全体としてもRNaseHの基質とならない。
本発明のさらなる実施態様において、本発明のアンチセンス核酸では、上記モチーフにおいて、A〜Aが、それぞれ互いに独立に、化学修飾ヌクレオシドから選択される。本発明の1つの実施態様において、上記化学修飾ヌクレオシドは核酸類似体であり、より好ましくは架橋化核酸である。上記架橋化核酸は、好ましくは、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される。
本発明の1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、以下の式(VIII)または(IX)で表される:
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(VIII)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
eは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を示し、そしてgは1〜9、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6の整数を表し、
ここで、部分構造(VIII−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(VIII−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数、好ましくは8〜30、より好ましくは9〜25、さらに好ましくは10〜20の整数、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19であり、そして
当該部分構造(VIII−a)が存在しない場合には、i=5である]、
または、
式(IX)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(IX)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
eは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を示し、そしてgは1〜9の整数、好ましくは1〜6の整数、例えば、1、2、3、4、5または6を表し、
ここで、部分構造(IX−a)
Figure 2018051762
は、存在していても、存在していなくてもよく、
当該部分構造(IX−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数、好ましくは8〜30、より好ましくは9〜25、さらに好ましくは10〜20の整数、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19であり、そして
当該部分構造(IX−a)が存在しない場合には、i=5である]。
本発明の1つの好ましい実施態様において、上記式(VIII)または(IX)において、XおよびX〜Xは、独立して、架橋化核酸であり、好ましくはLNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される架橋化核酸である。
本発明の別の実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、以下の式(VIII’)または(IX’)で表される:
(VIII’)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(VIII’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
e’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を示し、そしてg’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を表し、
ここで、部分構造(VIII’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数、好ましくは6〜96の範囲内の偶数であり、より好ましくは8〜30の範囲内の偶数、さらに好ましくは8〜26の範囲内の偶数、より一層好ましくは10〜20の範囲内の偶数、例えば、10、12、14、16、18または20である]、 または、
式(IX’)
Figure 2018051762
[式中、
XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
Rは、独立に、式(IX’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
e’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を示し、そしてg’は0〜4の整数、好ましくは0〜3の整数、すなわち、0、1、2または3を表し、
ここで、部分構造(IX’−a)
Figure 2018051762
は常に存在し、そして
i=6〜96の整数、好ましくは6〜96の範囲内の偶数であり、より好ましくは8〜30の範囲内の偶数、さらに好ましくは8〜26の範囲内の偶数、より一層好ましくは10〜20の範囲内の偶数、例えば、10、12、14、16、18または20である]。
本発明の1つの好ましい実施態様において、上記式(VIII’)または(IX’)において、XおよびX〜Xは、独立して、架橋化核酸であり、好ましくはLNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される架橋化核酸である。
上記アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの長さは特に制限はないが、好ましくは少なくとも8塩基であり、少なくとも10塩基であり、少なくとも12塩基であり、少なくとも13塩基であり、少なくとも14塩基であり、又は少なくとも15塩基である。前記長さは、好ましくは100塩基以下、35塩基以下、25塩基以下、20塩基以下、19塩基以下、18塩基以下または17塩基以下であることができる。前記長さの範囲は、好ましくは10〜35塩基であり、より好ましくは12〜25塩基であり、さらに好ましくは13〜20塩基である。通常、前記標的に対する核酸鎖によるアンチセンス効果の強さや、費用、合成収率等の他の要素に応じて、前記長さは選択される。なお、本発明におけるポリヌクレオチド(アンチセンス核酸、相補鎖)は、脱塩基ヌクレオシド等を含み得るが、そのような場合であっても、本明細書では、1ヌクレオチドに相当する長さを1塩基の長さとして表す。
また、本発明の1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸は、合成、精製および/または単離されたアンチセンス核酸である。当該アンチセンス核酸は、標的遺伝子の発現や転写産物(タンパク質をコードするmRNA転写産物またはタンパク質をコードしない転写産物)のレベルをアンチセンス効果によって抑制する活性を有する。
本発明のアンチセンス核酸は、標的転写産物(典型的には遺伝子の転写産物)の選択に応じて、標的細胞、好ましくは標的癌細胞の増殖を抑制することができる。典型的には、標的遺伝子の発現亢進を伴う細胞を標的細胞とし、本発明のアンチセンス核酸により、その増殖を抑制することができる。例えば、本発明のアンチセンス核酸により、標的癌細胞においてがん遺伝子(例えば、アポトーシス抑制機能を有するBCL2遺伝子、またはBCR−ABL遺伝子もしくはSTAT3遺伝子)を標的遺伝子としてその発現を抑制することにより、当該癌細胞の増殖を抑制することができる。
アンチセンス効果によって発現が抑制される「標的遺伝子」又は「標的転写産物」としては、特に制限はなく、例えば、各種疾患において発現が亢進している遺伝子が挙げられる。本発明の1つの実施態様において、上記標的遺伝子は、がん遺伝子である。また「標的遺伝子の転写産物」とは、標的遺伝子をコードするゲノムDNAから転写されたmRNAのことであり、塩基の修飾を受けていないmRNAや、スプライシングを受けていないmRNA前駆体等も含まれる。通常、「転写産物」は、DNA依存性RNAポリメラーゼによって合成される、いかなるRNAでもよい。
「合成、精製および/または単離されたアンチセンス核酸」という文言は、ここではポリヌクレオチド鎖を含むアンチセンス核酸であって、ポリヌクレオチドの各構成単位はそれぞれ天然に生じる物質であっても、天然には生じない物質でもあってもよいが、ポリヌクレオチド自体(すなわちポリヌクレオチド全体)としては、天然では生じないものおよび/または天然では実質的に生じないもの(典型的には人工的に構築されたもの)を意味する。
「相補的」という文言は、ヌクレオチドの塩基が他のヌクレオチドの塩基と、水素結合を介して、いわゆるワトソン−クリック型塩基対(天然型塩基対)や非ワトソン−クリック型塩基対(フーグスティーン型塩基対等)を形成できる関係のことを意味する。例えば、DNAにおいては、アデニン(A)がチミジン(T)に対して相補的であり、RNAにおいては、アデニン(A)はウラシル(U)に対して相補的である。
例えば、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドのある位置のヌクレオチドが、標的遺伝子の転写産物のある位置のヌクレオチドと水素結合を介して塩基対を形成できる場合、上記ポリヌクレオチドと上記転写産物は、当該水素結合の位置において相補的であると考えられる。
あるポリヌクレオチドが他のポリヌクレオチドとハイブリダイズもしくはアニーリング(本明細書では、これらの語を互換的に使用する)するためには、両ポリヌクレオチドは、塩基配列の全ての位置において相補的である必要はない。そして、本発明に関しても、アンチセンス核酸が機能を発揮するためには、塩基配列の全ての位置において相補的である必要はなく、一部の位置におけるミスマッチが許容される。
例えば、標的転写産物の塩基配列と、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの塩基配列とは、完全に相補的である必要はなく、すなわち、両者は全ての位置で相補的である必要はない。
本発明では、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドは、その少なくとも一部が、標的転写産物に対して相補的である。本発明の1つの実施態様において、標的転写産物の塩基配列とアンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの塩基配列は、その少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上、または100%)が相補的であればよい。例えば、70%のヌクレオチドが相補的な場合、両者は70%の「相補性」を有する。本発明の好ましい1つの実施態様において、両者は完全に相補的であり、すなわち、100%の相補性を有する。
なお、2つのポリヌクレオチドの相補性(例えば、標的転写産物とアンチセンス核酸のポリヌクレオチドとの相補性)は、両者が異なる長さを有する場合には、二本鎖形成領域(ミスマッチを含む場合にはそれらを含めた二本鎖形成領域全体)における相補性として算出することができる。
配列の相補性は、BLASTプログラム等を利用することにより決定することができる。そして、当業者であれば、例えば、標的遺伝子の塩基配列の情報に基づいて、標的転写産物に相補的なアンチセンス核酸を容易に設計することができる。
本発明の別の態様において、本発明は、
(i)上記アンチセンス核酸、および
(ii)化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として少なくとも含むポリヌクレオチドであって、少なくとも一部が上記(i)アンチセンス核酸に対して相補的なポリヌクレオチドを含む相補鎖、
を含む二本鎖核酸複合体、
に関する。
本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、構成単位としての、化学修飾されていてもよいヌクレオチドからなる。また、本発明のさらなる実施態様において、上記相補鎖は、上記ポリヌクレオチドからなる。
上記のように、PS−PO構造は従来技術のPS型アンチセンス鎖構造に比べて酵素耐性が弱くなる傾向があるため、PS−PO構造を有するアンチセンス核酸には、至適な酵素耐性を持たせる必要がある。本発明では、本発明において用いられるようなPS−PO構造を有するアンチセンス核酸を、それに相補的な鎖との二本鎖核酸構造とすることにより、当該二本鎖核酸が、至適な酵素耐性を有し、その結果、PS型構造を有するアンチセンス核酸と同等またはそれ以上の標的転写産物の発現抑制効果、標的細胞増殖の抑制効果を有することも見出された。
上記相補鎖は、上記のようにアンチセンス核酸に対して少なくとも一部が相補的である核酸である。上記の相補的な核酸は、合成、精製および/または単離された核酸である。ここで、「合成、精製および/または単離された核酸」という文言は、ポリヌクレオチド鎖を含み、上記アンチセンス核酸に対して少なくとも一部が相補的な核酸であって、ポリヌクレオチドの各構成単位はそれぞれ天然に生じる物質であっても、天然には生じない物質でもあってもよいが、ポリヌクレオチド自体(すなわちポリヌクレオチド全体)としては、天然では生じないものおよび/または天然では実質的に生じないもの(典型的には人工的に構築されたもの)を意味する。
上記相補鎖におけるポリヌクレオチドは、「化学修飾されていてもよいヌクレオチド」を構成単位として少なくとも含む。この文言は、上記ポリヌクレオチドが、化学修飾されているかもしくはされていないヌクレオチドを有することを意味する。ここで、必須の構成単位である上記ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドであっても、リボヌクレオチドであっても、これらの組み合わせであってもよい。また、当該ヌクレオチドはそれぞれ独立に、化学修飾されていても、化学修飾されていなくてもよい。化学修飾としては、アンチセンス核酸に関して述べたような化学修飾を使用することができる。化学修飾されているヌクレオチドは、例えば、核酸間結合を介して結合された核酸類似体(本明細書では、簡便のために、このようなヌクレオチドの形態にある核酸類似体も、ヌクレオシドの形態にある核酸類似体も、同様に「核酸類似体」と呼ぶことがある)であってもよく、当該核酸類似体はさらに別の上記のような化学修飾をされていてもよい。このように、アンチセンス核酸に対して親和性を持つものであれば、ヌクレオチド以外にも、ペプチド鎖をもつPNAやモルフォリノ核酸、あるいは塩基性ポリアミノ酸(Poly L−Lys、Poly L−Arg)等の核酸類似体を相補鎖の構成単位に使用することができる。なお、本明細書では、このような核酸類似体を構成単位として含む構造も、ポリヌクレオチド(または核酸もしくは核酸鎖)と呼ぶ。
ここで、上記相補鎖を構成するポリヌクレオチドは、核酸間結合として、連続したPS型構造を有してもよく、連続したPO型構造を有していてもよく、またはPS−PO構造を有していてもよく、あるいはこれらの組み合わせを有していてもよい。
本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび/または化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドを構成単位として少なくとも含む。
本発明のさらなる1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。本発明の別の実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。
本発明の別の実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていないリボヌクレオチドのみを構成単位として含む
本発明のさらなる1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは化学修飾されていない。
この態様において、上記ポリヌクレオチドにおける、デオキシリボヌクレオチドの数とリボヌクレオチドの数の比は特に限定はされない。本発明の1つの実施態様において、当該ポリヌクレオチドは、その総ヌクレオチド数に対して、1〜90%、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%、例えば30〜50%の数のリボヌクレオチドを含むことができる。例えば、上記ポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの総ヌクレオチド数に対して、例えば10、20、30、40、50、60、70、80または90%の数のリボヌクレオチドを含むことができる。これらの場合、残りの部分が、デオキシリボヌクレオチドである。また、本発明のさらなる実施態様では、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、1〜12個のリボヌクレオチド、例えば、2〜10個、3〜9個または5〜8個のリボヌクレオチドを含むことができる。本発明のさらなる1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のリボヌクレオチドを含む。これらは、デオキシリボヌクレオチドにも当てはまる。相補鎖のポリヌクレオチドにおけるリボヌクレオチドの位置およびデオキシリボヌクレオチドの位置は、特に制限はされない。
相補鎖のポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドのみを構成単位として含み、かつ上記ポリヌクレオチドがリボヌクレオチドを複数個含む場合には、各リボヌクレオチドは互いに離れて存在していてもよく、または連続して存在していても、両者が組み合わされて存在していてもよい。これらは、デオキシリボヌクレオチドにも当てはまる。
本発明の1つの態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドと化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドとを複数個ずつ含み、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドは交互にまたはほぼ交互に存在する。この場合に、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドは、1個ずつ、2個ずつ、3個ずつ、4個ずつ、5個ずつまたは6個ずつ、交互に(またはほぼ交互に)存在していてもよい。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは化学修飾されていない。
本発明のさらなる実施態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの5’末端領域および/または3’末端領域における全ての構成単位が化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドであり、それら以外の領域における全ての構成単位が化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドである。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは化学修飾されていない。ここで、「5’末端領域」は、上記ポリヌクレオチドの5’末端に位置する構成単位(5’末端から数えて1番目の構成単位)と5’末端から数えて2〜n番目の構成単位とを含む領域である。ここでnは、3〜20の整数であることができ、好ましくは3〜10の整数、例えば4、5、6、7、8または9であることができる。「3’末端領域」は、上記ポリヌクレオチドの3’末端に位置する構成単位(3’末端から数えて1番目の構成単位)と3’末端から数えて2〜m番目の構成単位とを含む領域である。ここでmは、3〜20の整数であることができ、好ましくは3〜10の整数、例えば4、5、6、7、8または9であることができる。
本発明の1つの好ましい実施態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの5’末端領域および3’末端領域における全ての構成単位がデオキシリボヌクレオチドであり、そして、5’末端および3’末端領域以外の領域における全ての構成単位がリボヌクレオチドであり、ここで、上記5’末端領域は、5’末端に位置する構成単位と5’末端から数えて2〜n番目(n=3〜6)の構成単位からなる領域であり、上記3’末端領域は、3’末端に位置する構成単位と3’末端から数えて2〜m番目(m=3〜6)の構成単位とからなる領域である。例えば、実施例1に記載の配列番号12で表される相補鎖が、この態様に該当するものであり、5’末端に位置する構成単位と5’末端から数えて2〜5番目の構成単位とからなる領域における全ての構成単位、ならびに3’末端に位置する構成単位と3’末端から数えて2〜5番目の構成単位とからなる領域における全ての構成単位がデオキシリボヌクレオチドであり、それ以外の領域(5’末端から数えて6〜11番目の構成単位からなる領域)における全ての構成単位がリボヌクレオチドである。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは化学修飾されていない。
本発明の他の実施態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドと、糖が化学修飾されたヌクレオチドのみからなるか、あるいは、相補鎖のポリヌクレオチドは、化学修飾されていないリボヌクレオチドと、糖が化学修飾されたヌクレオチドのみからなる。好ましくは、上記化学修飾は、2’−O−メチル化、2’−O−メトキシエチル(MOE)化、2’−O−アミノプロピル(AP)化、2’−フルオロ化からなる群から選択される。
本発明のさらなる実施態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの5’末端領域および/または3’末端領域における全ての構成単位が化学修飾クレオチド、好ましくは糖が化学修飾されたヌクレオチド(化学修飾は、例えば、2’−O−メチル化、2’−O−メトキシエチル(MOE)化、2’−O−アミノプロピル(AP)化、2’−フルオロ化からなる群から選択される)、より好ましくは2’−O−メチル型デオキシリボヌクレオチド/リボヌクレオチドであり、そして、5’末端および3’末端領域以外の領域における全ての構成単位が化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドである。ここで、5’末端領域および/または3’末端領域は上記の意味を有する。本発明の1つの好ましい実施態様において、相補鎖のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの5’末端領域および3’末端領域における全ての構成単位が糖が化学修飾されたヌクレオチド(化学修飾は、例えば、2’−O−メチル化、2’−O−メトキシエチル(MOE)化、2’−O−アミノプロピル(AP)化、2’−フルオロ化からなる群から選択される)、より好ましくは2’−O−メチル型デオキシリボヌクレオチド/リボヌクレオチドであり、そして、5’末端および3’末端領域以外の領域における全ての構成単位がデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドであり、ここで、5’末端領域は、5’末端に位置する構成単位と5’末端から数えて2〜n番目(n=3〜6)の構成単位とからなる領域であり、3’末端領域は、3’末端に位置する構成単位と3’末端から数えて2〜m番目(m=3〜6)の構成単位とからなる領域である。例えば、実施例1に記載の配列番号7で表される相補鎖が、この態様に該当するものであり、5’末端に位置する構成単位と5’末端から数えて2および3番目の構成単位とからなる領域における全ての構成単位、ならびに3’末端に位置する構成単位と3’末端から数えて2および3番目の構成単位とからなる領域における全ての構成単位が2’−O−メチル型デオキシリボヌクレオチド/リボヌクレオチドであり、それ以外の領域(5’末端から数えて4〜13番目の構成単位からなる領域)における全ての構成単位が化学修飾されていないリボヌクレオチドである。なお、化学修飾ヌクレオチドで構成される5’末端領域および/または3’末端領域は、核酸間結合として、連続したPS型構造を有してもよく、連続したPO型構造を有していてもよく、またはPS−PO構造を有していてもよい。例えば、5’末端領域は核酸間結合として連続したPS型構造を有し、3’末端領域は核酸間結合として連続したPO型構造を有することもできる(例えば、配列番号7)。
本発明のさらなる実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドとその5’側に位置する5’ウィング領域および3’側に位置する3’ウィング領域とからなる。この態様において、上記デオキシリボヌクレオチドはその一部または全部が化学修飾されていてもよく、好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドはその一部または全部が、より好ましくは全部が、核酸間結合としてホスホロチオエート化結合を有する。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドは、核酸間結合以外は化学修飾されていない。好ましくは、上記5’ウィング領域および3’ウィング領域は、核酸間結合としてホスホロチオエート化結合を有するLNA/BNAからなる。
上述のように、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、上記アンチセンス核酸と少なくとも一部が相補的なポリヌクレオチドである。相補鎖におけるポリヌクレオチドの塩基配列と上記アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの塩基配列とは、両者が少なくとも部分的に二本鎖を形成することが可能であれば、完全に相補的である必要はなく、例えば、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の相補性を有していればよい。
本発明の1つの好ましい実施態様において、両ポリヌクレオチドは100%の相補性を有する。ここで、相補性は上記のように二本鎖形成領域(二本鎖形成領域全体)における相補性として算出する。この態様では、例えば、相補鎖のポリヌクレオチドの長さが、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドの長さより長い場合には、アンチセンス核酸のポリヌクレオチド全体が相補鎖のポリヌクレオチドの一部分と完全に相補的であり、その完全に相補的な部分が二本鎖形成領域となる。また、相補鎖のポリヌクレオチドの長さが、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドより短い場合には、相補鎖のポリヌクレオチド全体がアンチセンス核酸のポリヌクレオチドの一部分と完全に相補的であり、その完全に相補的な部分が二本鎖形成領域となる。そして、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと相補鎖のポリヌクレオチドが同じ長さを有する場合には、両ポリヌクレオチドは全体にわたって完全に相補的である。
本発明では、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドと相補鎖におけるポリヌクレオチドが、上述の相補性に基づいて「アニーリング」し、二本鎖を形成することができる。当業者であれば、2本の核酸鎖がアニーリングできる条件(温度、塩濃度等)を容易に決定することができる。
相補鎖におけるポリヌクレオチドは、上述のように、化学修飾されていてもよいヌクレオチドを含む。RNA分解酵素等の核酸分解酵素に対する耐性が高いという観点から、相補鎖におけるポリヌクレオチドにおいて、ヌクレオチド(例えばデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチド)は、アンチセンス核酸に関して述べたような化学修飾を受けていてもよい。例えば、相補鎖のポリヌクレオチドが特定の細胞の核内に送達されるまで、RNaseA等のRNA分解酵素による分解を抑制しつつも、特定の細胞内においてはRNaseHにより該ポリヌクレオチドが分解されることにより、アンチセンス効果を発揮し易いという観点から、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、核酸類似体を含んでいてもよい。
化学修飾、例えば核酸類似体の数や位置は、ある実施形態における核酸複合体が奏するアンチセンス効果等に影響を与える場合もあるため、相補鎖のポリヌクレオチドにおける核酸類似体の数及び化学修飾の位置には好ましい態様が存在する。この好ましい態様は、化学修飾対象となる核酸の種類、配列等によっても異なるため、一概には言えないが、前述のアンチセンス核酸におけるポリヌクレオチド同様に、化学修飾後、例えば核酸類似体導入後の核酸複合体が有するアンチセンス効果を測定することにより特定することができる。
本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸の5’ウィング領域及び/又は3’ウィング領域に対して相補的な領域に、化学修飾ヌクレオチド、例えば核酸類似体を有する。
相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さは特に制限されないが、少なくとも8塩基であり、少なくとも10塩基であり、少なくとも12塩基であり、少なくとも13塩基であり、少なくとも14塩基であり、少なくとも15塩基、または少なくとも16塩基である。前記長さは、好ましくは100塩基以下、35塩基以下、25塩基以下、20塩基以下、19塩基以下、18塩基以下または17塩基以下であることができる。前記長さの範囲は、好ましくは10〜35塩基であり、より好ましくは12〜25塩基であり、さらに好ましくは13〜20塩基である。通常、酵素耐性に関する効果や、費用、合成収率等の他の要素に応じて、長さは選択される。
本発明の1つの実施形態において、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの長さと相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さは同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明の1つの実施形態において、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの長さは、相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さよりも大きい。
本発明の他の実施形態において、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの長さは、相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さよりも小さい。
さらに、本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含む。
「ミスマッチ」とは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドと相補鎖におけるポリヌクレオチドとの間のアニーリングによって形成された二本鎖形成領域(以下、単に「二本鎖形成領域」とも呼ぶ)内のある位置において、両ポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド間でワトソン−クリック型塩基対が形成されないことをいう。
ただし、ここでいうミスマッチは、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと相補鎖のポリヌクレオチドが二本鎖形成領域内で同一の数のヌクレオチドおよび/または核酸類似体(以下、まとめて「ヌクレオチド等」とも呼ぶ)を有し、上記位置を除く全ての位置において塩基対を形成しているにもかかわらずに、当該位置でのみ塩基対が形成されないことを意味する。従って、これは、オーバーハングや、二本鎖形成領域内の両ポリヌクレオチドの長さの相違に起因して生じるバルジのような構造は含まない。なおこれは、ミスマッチとオーバーハングやバルジとを区別することを意図するものであり、本発明の核酸複合体において、ミスマッチとバルジ(および/またはオーバーハング)が同時に存在することを妨げるものではない。
従って、「相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含む」とは、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと相補鎖のポリヌクレオチドが二本鎖形成領域内において同一の長さを有し、かつ、後者が、両ポリヌクレオチド間でワトソン−クリック型塩基対を形成しないようなヌクレオチド等を当該二本鎖形成領域内において少なくとも1つ含むことを意味する。ミスマッチの例としては、A対G、C対A、U対C、A対A、G対G、C対C等や、リボヌクレオチドを用いたU対G、U対C、U対T等が挙げられるが、同様に、例えば、非塩基残基対ヌクレオチド等、非環状残基対ヌクレオチド等も含まれる。広い意味において、ここで用いられるミスマッチには、特定の位置における二本鎖の熱力学的安定性がその位置におけるワトソン−クリック型塩基対の熱力学的安定性よりも低くなるように、その位置またはその近傍での熱力学的安定性を減少させる、その位置での任意の変換も含まれる。
本発明の1つの実施態様において、上記核酸複合体は、相補鎖におけるポリヌクレオチドが、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含む。ミスマッチの数は、二本鎖核酸の形成が妨げられない範囲内であれば特に制限はされず、ミスマッチを複数個含む場合には、各ミスマッチは互いに離れて存在していてもよく、または連続して存在していても、両者が組み合わされて存在していてもよい。本発明の1つの実施態様では、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して1つのミスマッチを含む。
ミスマッチの位置は、ミスマッチ構造を形成できる位置であれば特に制限はされない。
例えば、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドおよび相補鎖のポリヌクレオチドがそれぞれ10〜35塩基の長さを有する場合には、例えば、二本鎖形成領域の5’末端(アンチセンス核酸のポリヌクレオチドの上記領域内の5’末端)から数えて、2〜15番目の位置に、例えば6〜11番目(例えば6、7、8、9、10または11番目)の位置にミスマッチを導入することができる。
本発明の核酸複合体が少なくとも1つのミスマッチを有する場合、ミスマッチの部分、すなわち、二本鎖が形成されていない部分において、DNaseまたはRNaseの攻撃を適度に受けるため、細胞内または生体内において、標的mRNAに送達される頃までの間に、当該相補鎖のみが適度に切断されて(相補鎖のポリヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせのいずれの場合であっても)、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドのみとなり、当該アンチセンス核酸のポリヌクレオチドが標的mRNAと良好に二本鎖を形成するのを促進することも考えられる。
上記のようなミスマッチを有する場合、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドと相補鎖におけるポリヌクレオチドは完全に相補的ではなくなるが、上記のように、本発明ではこのように両者が完全に相補的でなくてもよい。本発明の1つの好ましい態様では、相補鎖のポリヌクレオチドがミスマッチを含む場合、両ポリヌクレオチドは、ミスマッチ部分を除く二本鎖形成領域において、100%の相補性を有する。
本発明の別の実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、ミスマッチを含まない。
また、例えば相補鎖におけるポリヌクレオチドを適度に切断するという観点から、上記のようなミスマッチを形成させる代わりに、または、ミスマッチ形成に加えて、相補鎖におけるポリヌクレオチドに上述のように、少なくとも1つのリボヌクレオチドを含ませることも可能である。リボヌクレオチドは概して、デオキシリボヌクレオチドや化学修飾ヌクレオチド(例えば核酸類似体)よりも核酸分解酵素に対する耐性が弱いため、相補鎖においてリボヌクレオチド導入部位を起点としたポリヌクレオチドの切断が適度に促進され得ると考えられる。
従って、本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、構成単位として1つまたは複数のリボヌクレオチドを含む。本発明のさらなる実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含み、かつ、構成単位としてリボヌクレオチドを含む。本発明のさらに1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含み、かつ、リボヌクレオチドを構成単位として含み、かつ、当該リボヌクレオチドの少なくとも1つが当該ミスマッチを形成する。例えば、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して、G対Uのミスマッチ(アンチセンス核酸がGで、相補鎖がU)を1つ含むことができる。
相補鎖がリボヌクレオチドを含む場合、当該リボヌクレオチドの位置は、特に制限はされない。上記ポリヌクレオチドが10〜35塩基の長さを有する場合には、5’末端から数えて、1〜35番目、例えば2〜30番目、3〜25番目、4〜20番目、5〜15番目、6〜11番目(例えば、6、7、8、9、10または11番目)の位置にリボヌクレオチドを含むことができる。
また、本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは少なくとも1つのバルジを含む。
ここで、「バルジ」とは、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと相補鎖のポリヌクレオチドとの間のアニーリングによって形成された二本鎖領域(以下、単に「二本鎖領域」とも呼ぶ)内で、後者に対応する1個の塩基または連続する2個以上の塩基が前者に不足していることにより生じる、塩基対を形成せずに二本鎖核酸から外部に飛び出した後者ポリヌクレオチド内のヌクレオチド(および/または化学修飾ヌクレオチド)から形成されるふくらみ構造を意味する。
バルジの数は、二本鎖の形成が可能な範囲内であれば特に制限はされない。本発明の1つの実施態様では、相補鎖におけるポリヌクレオチドは1〜4つのバルジ、例えば、1〜3つのバルジを含むことができる。本発明のさらなる1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、1つのバルジを含む。
バルジの位置は、バルジ構造を形成できる位置であれば特に制限はされない。例えば、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドおよび相補鎖のポリヌクレオチドがそれぞれ10〜35塩基の長さを有する場合には、例えば、二本鎖形成領域の5’末端(アンチセンス核酸のポリヌクレオチドの上記領域の5’末端)から数えて、2〜15番目の位置に、例えば6〜12番目(例えば6、7、8、9、10、11または12番目)の位置になるように、相補鎖のポリヌクレオチドの対応の位置にバルジを導入することができる。
バルジを構成するヌクレオチド等の数(アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと塩基対を形成していないヌクレオチドの数)は、バルジ構造を形成できる数であれば特に制限はされない。本発明の1つの実施態様において、上記バルジは、1つのバルジあたり1〜7つ、例えば、1〜5つまたは2〜4つのヌクレオチド等で構成されることができる。
複数のバルジを有する場合、各バルジは、同一の数のヌクレオチド等で構成されていても、あるいは、各バルジはそれぞれ独立に異なる数のヌクレオチド等で構成されていてもよい。
本発明の1つの実施態様において、上記バルジは、ヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドから構成される。
本発明のさらなる1つの実施態様において、上記バルジを構成するヌクレオチドとしては、デオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチド(いずれも修飾されていても、修飾されていなくてもよい)が使用される。好ましくは、上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは化学修飾されていない。
当業者であれば、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの種類や塩基配列に応じて、バルジが形成されるように、相補鎖におけるポリヌクレオチドの構成単位を適宜選択することが可能である。
本発明の1つの好ましい実施態様において、上記バルジを構成するヌクレオチドは、その一部または全部がリボヌクレオチド、好ましくはウラシル(U)である。より好ましくは、上記バルジを構成するヌクレオチドは、その一部または全部が、化学修飾されていないリボヌクレオチド、好ましくは化学修飾されていないウラシル(U)である。
相補鎖におけるポリヌクレオチドがバルジを含む本発明の核酸複合体は、バルジ構造の部分(すなわち、二本鎖が形成されていない部分)において、DNaseまたはRNaseの攻撃を適度に受けるため、細胞内または生体内において、標的mRNAに送達される頃までの間に、当該相補鎖のみが適度に切断されて(相補鎖のポリヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせのいずれの場合であっても)、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドのみとなり、当該アンチセンス核酸のポリヌクレオチドが標的mRNAと良好に二本鎖を形成するのを促進すると考えられる。
なお、相補鎖におけるポリヌクレオチドは少なくとも1つのバルジを含む場合、上記の相補性は、バルジ構造部分を二本鎖形成領域から除いた後に算出する。すなわち、上記相補性の算出の際、バルジ構造部分は二本鎖形成領域に含めない。また、上記のように、アンチセンス核酸と相補鎖は、本発明の1つの好ましい実施態様において、両ポリヌクレオチドは100%の相補性を有する。この態様では、例えば、相補鎖のポリヌクレオチド(バルジ形成部分を除く)の長さが、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドの長さより長い場合には、アンチセンス核酸のポリヌクレオチド全体が相補鎖のポリヌクレオチドの一部分と完全に相補的であり(バルジ形成部分を除く)、その完全に相補的な部分が二本鎖形成領域となる。また、相補鎖のポリヌクレオチド(バルジ形成部分を除く)の長さが、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドより短い場合には、相補鎖のポリヌクレオチド全体(バルジ形成部分を除く)がアンチセンス核酸のポリヌクレオチドの一部分と完全に相補的であり、その完全に相補的な部分が二本鎖形成領域となる。そして、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドと相補鎖のポリヌクレオチド(バルジ形成部分を除く)が同じ長さを有する場合には、バルジ構造部分を除いて両ポリヌクレオチドは全体にわたって完全に相補的である。
以上のように、上記アンチセンス核酸とその相補鎖を含む二本鎖核酸を用いた場合、当該二本鎖核酸が、至適な酵素耐性を有し、その結果、PS型構造を有するアンチセンス核酸と同等またはそれ以上の標的転写産物の発現抑制効果、標的細胞増殖の抑制効果を有することが見出された。そして、上記二本鎖核酸複合体では、種々のポリヌクレオチドを相補鎖として使用することができる。
さらに、本発明では、ある特定のポリヌクレオチドを相補鎖として用いた場合、例えば、相補鎖のポリヌクレオチドがアンチセンス核酸に対して少なくとも1つのミスマッチを含む場合、および相補鎖のポリヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドを交互に含む場合に、他のポリヌクレオチドを相補鎖として使用した場合に比べて、当該核酸複合体の副作用がさらに低減すること、具体的には肝毒性(特にAST値)がさらに低減することも見出された。
また、本発明の1つの実施態様において、上記核酸複合体はオーバーハングを有することができる。
ここで、「オーバーハング」とは、一方の鎖が二本鎖を形成する相補性の他鎖の末端を超えて伸びる1本鎖領域から生じる、末端塩基対非形成型ヌクレオチド(または化学修飾ヌクレオチド)のことをいう。各オーバーハングは、少なくとも1つのヌクレオチド(または化学修飾ヌクレオチド)を含む。好ましくは、各オーバーハングは、2ヌクレオチドオーバーハングである。オーバーハングを構成するヌクレオチドは任意に選択することができる。オーバーハングのヌクレオチドは、標的転写産物と塩基対を形成してもしなくてもよい。上記2ヌクレオチドオーバーハングの例としては、UU、TT、AA、GG、CC、AC、CA、AG、GA、GCおよびCGが挙げられるが、これらに限定はされない。
オーバーハングの位置としては、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの5’末端、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの3’末端、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドの5’末端および3’末端、相補鎖におけるポリヌクレオチドの5’末端、相補鎖におけるポリヌクレオチドの3’末端、相補鎖におけるポリヌクレオチドの5’末端および3’末端、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドの5’末端および相補鎖のポリヌクレオチドの5’末端、またはアンチセンス核酸のポリヌクレオチドの3’末端および相補鎖のポリヌクレオチドの3’末端が可能である。
本発明の他の実施態様において、上記核酸複合体はオーバーハングを含まない。
また、本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドと任意に核酸類似体とを構成単位として少なくとも含む。上記デオキシリボヌクレオチドは化学修飾されていても、化学修飾されていなくてもよい。本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドと任意に核酸類似体のみを構成単位として含む。本発明の別の実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されたデオキシリボヌクレオチドと任意に核酸類似体のみを構成単位として含む。
さらに、本発明の1つの実施態様において、相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドは、核酸類似体を含む。本発明の他の実施態様において、相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドは、核酸類似体を含まない。また、本発明の別の実施態様において、相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドを含まない。本発明のさらに別の実施態様において、相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドを含まない。
なお、上述のように、本発明の1つの実施態様において、相補鎖は、デオキシリボヌクレオチドのみからなる。この態様でも、上記二本鎖核酸複合体は標的転写産物のレベルを良好に抑制できるが、これは以下の機構によるものと考えられる:アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドと相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドにより形成されたDNA−DNA二本鎖が標的転写産物に送達されるまでの間にDNaseに認識され、当該DNaseによって相補的な核酸鎖におけるポリヌクレオチドが分解される。その後、残ったアンチセンス活性部分におけるポリヌクレオチドが標的転写産物とDNA−RNA二本鎖を形成し、RNaseHによってこの部分が認識され、分解される。
本発明の1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸または上記二本鎖核酸複合体は、細胞または哺乳動物において標的遺伝子の発現を減少させるためのアンチセンス核酸または核酸複合体である。また、本発明のさらなる実施態様において、上記アンチセンス核酸または核酸複合体は、標的細胞(好ましくは癌細胞)内の標的遺伝子(好ましくはがん遺伝子)の発現を抑制することにより、当該標的細胞の増殖を抑制するためのアンチセンス核酸または核酸複合体である。典型的には、上記標的遺伝子の発現亢進を伴う細胞を標的細胞とすることができる。また、本発明のさらなる実施態様において、上記アンチセンス核酸または核酸複合体は、標的組織および/または標的部位において、標的遺伝子の発現を抑制するためのアンチセンス核酸または核酸複合体である。
本発明のさらなる1つの実施態様において、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドは、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である。本発明の1つの実施態様において、上記標的遺伝子はヒトbcl−2、ヒトBCR−ABLまたはヒトSTAT3である。
本発明の1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(d)から選択されるポリヌクレオチドである:
(a)配列番号2、17、19または22で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド、
(b)上記(a)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド、
(c)上記(a)のポリヌクレオチドのうちの少数のヌクレオチドが置換し、欠失し、付加し及び/又は挿入されたポリヌクレオチド、
(d)上記(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチドを部分配列として含むポリヌクレオチド。
上記(b)のポリヌクレオチドは、上記(a)のポリヌクレオチドの塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、例えば96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又は99.5%以上の配列同一性を有する。好ましくは、上記(b)のポリヌクレオチドは、標的転写産物の発現抑制活性を有し、および/または副作用が低減されている。
上記(c)のポリヌクレオチドは、上記(a)のポリヌクレオチドのうちの少数の、好ましくは、1個〜数個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオチドが置換し、欠失し、付加し及び/又は挿入されたポリヌクレオチドであることができる。好ましくは、上記(c)のポリヌクレオチドは、標的転写産物の発現抑制活性を有し、および/または副作用が低減されている。
上記(d)のポリヌクレオチドは、上記(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチドを部分配列として含むポリヌクレオチドであり、好ましくは標的転写産物の発現抑制活性を有し、および/または副作用が低減されている。本発明の1つの実施態様において、上記(d)のポリヌクレオチドの長さは8〜100塩基である。好ましくは、前記長さは、少なくとも10塩基であり、少なくとも12塩基であり、又は少なくとも13塩基である。前記長さは、好ましくは100塩基以下、35塩基以下、25塩基以下または20塩基以下であることができる。
本明細書において、塩基配列に関する「配列同一性」とは、比較すべき2つ塩基配列の塩基ができるだけ多く一致するように両塩基配列を整列させ、一致した塩基数を全塩基数で除したものを百分率(%)で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる(Karlin及びAltschul, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,87:2264−2268, 1993; Altschulら, Nucleic Acids Res.,25:3389−3402, 1997)。ギャップが挿入される場合、上記全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた塩基数となる。このようにして数えた全塩基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、同一性(%)は、長い方の配列の全塩基数で、一致した塩基数を除して算出される。
通常、上述の化学修飾(例えば核酸類似体)の存在は、上記の配列同一性に影響を及ぼさない。
本発明の1つの実施態様において、上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドは、以下の(a’)〜(d’)から選択されるポリヌクレオチドである:
(a’)配列番号7〜16、18、20、21および23のいずれか1つで示される塩基配列を有するポリヌクレオチド、
(b’)上記(a’)のポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド、
(c’)上記(a’)のポリヌクレオチドのうちの少数のヌクレオチドが置換し、欠失し、付加し及び/又は挿入されたポリヌクレオチド、
(d’)上記(a’)〜(c’)のいずれか1つのポリヌクレオチドを部分配列として含むポリヌクレオチド。
上記(b’)のポリヌクレオチドは、上記(a’)のポリヌクレオチドの塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、例えば96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又は99.5%以上の配列同一性を有する。好ましくは、上記(b’)のポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸と少なくとも一部が相補的であり、より好ましくはアンチセンス核酸と100%の相補性を有する。
上記(c’)のポリヌクレオチドは、上記(a’)のポリヌクレオチドのうちの少数の、好ましくは、1個〜数個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオチドが置換し、欠失し、付加し及び/又は挿入されたポリヌクレオチドであることができる。好ましくは、上記(c’)のポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸と少なくとも一部が相補的であり、より好ましくはアンチセンス核酸と100%の相補性を有する。
上記(d’)のポリヌクレオチドは、上記(a’)〜(c’)のいずれかのポリヌクレオチドを部分配列として含むポリヌクレオチドであり、好ましくはアンチセンス核酸と少なくとも一部が相補的であり、より好ましくはアンチセンス核酸と100%の相補性を有する。本発明の1つの実施態様において、上記(d’)のポリヌクレオチドの長さは8〜100塩基である。好ましくは、前記長さは、少なくとも10塩基であり、少なくとも12塩基であり、少なくとも13塩基であり、少なくとも14塩基であり、少なくとも15塩基、または少なくとも16塩基である。前記長さは、好ましくは100塩基以下、45塩基以下、35塩基以下、30塩基以下、25塩基以下、24塩基以下、23塩基以下、22塩基以下、21塩基以下または20塩基以下であることができる。
本発明の1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、標的部位への送達を目的としたリガンドを、例えば1〜10個、好ましくは1〜6個、例えば1、2、3、4または5個含むことができる。上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体が複数のリガンドを含む場合、それらのリガンドは同じであってもよく、あるいは各々互いに異なっていてもよい。
上記二本鎖核酸複合体がリガンドを有する場合、例えば、上記相補鎖にリガンド分子が結合していても良い。
本発明において、「リガンド」とは、レセプターと結合する能力を有する物質を意味しており、典型的にはレセプターに特異的に結合可能な物質を利用することができる。レセプターはリガンドを結合可能な物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞膜上に存在する種々のレセプターが挙げられる。すなわち、ここで用いる場合、「リガンド」と「レセプター」の用語は、互いに結合可能な相手、好ましくは互いに特異的に結合可能な相手の意味で用いており、それらの結合により何らかの生体反応が惹起されるものに限定されない。例えば、標的細胞の細胞膜表面に存在するレセプターに特異的に結合可能な物質をリガンドとして使用することができる。
上記リガンドは、例えば、タンパク質、ペプチド、アプタマー、糖鎖、脂質、低分子、生体分子/生体活性分子であることができるが、これらに限定はされない。
「タンパク質」は、α−L−アミノ酸(グリシンを含む)がペプチド結合により直鎖状に連結したものを意味する。本明細書においては、タンパク質は、アミノ酸のみからなる単純タンパク質も、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質も含む概念であり、100残基以上のアミノ酸から構成されるものを指す。リガンドとして使用されるタンパク質(以下、「タンパク質リガンド」とも呼ぶ)の例としては、脂肪酸結合タンパク質FABP1〜12(fatty acid binding protein 1−12)、外膜特異的リポタンパク質分子シャペロンLolA、外膜特異的リポタンパク質受容体LolB、リポキシゲナーゼおよびシクロオキゲナーゼが挙げられる。
またリガンドとして使用できるタンパク質としては、抗体も挙げることができる(以下、「抗体リガンド」とも呼ぶ)。例えば、適切なレセプターを選択し、それを抗原として認識する抗体をリガンドとして使用することにより、本発明のアンチセンス核酸を、当該レセプターが存在する標的細胞や標的組織(典型的には、当該レセプターが表面に存在する標的細胞や標的組織)に特異的に送達することができる。
また、リガンドとしてはペプチドを使用することもできる。「ペプチド」とは、2分子以上のアミノ酸がペプチド結合で連結した物質であり、本明細書においては、100残基未満のアミノ酸が連結した物質を指す。本発明においては、好ましくは、60残基以下のアミノ酸、例えば50残基以下、40残基以下、30残基以下、20残基以下、または10残基以下のアミノ酸、例えば9残基以下、8残基以下、7残基以下、6残基以下、5残基以下のアミノ酸が連結したペプチドがリガンドとして使用される。リガンドとして使用されるペプチド(以下、「ペプチドリガンド」とも呼ぶ)は、特に限定されないが、その例としては、環状RGD配列含有ペプチドのような環状ペプチド、インスリン、グルカゴン様ペプチド−1、バソプレシン、オキシトシンが挙げられる。
ここで、「環状RGD配列含有ペプチド」(以後、「cRGD」、「cRGDペプチド」とも呼ぶ)は、少なくとも1つのアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を有し、環状構造を形成するペプチドである。上記の「環状ペプチド」は、好ましくは、環状RGD配列含有ペプチドと同一のまたは類似のリガンド特性、特に標的特異性を有するペプチドである。なお、環状ペプチドの配列長は特に制限されないが、環構造を形成する観点から、アミノ酸数が通常3以上、例えば、4〜15または5〜10であることが好ましい。
RGD配列は、細胞表面上の細胞接着分子であるインテグリン分子(特にαβやαβ等)に結合してこれを活性化することや、細胞側のエンドサイトーシスを誘導することが知られており、RGDぺプチドの腫瘍標的リガンドとしての使用も知られている。
本発明では、斯かるRGD配列を有し、環状構造を形成するペプチドであれば、任意のcRGDペプチドを使用することが可能である。
cRGDペプチドの配列長は特に制限されないが、環構造を形成する観点から、アミノ酸数が通常3以上、例えば、4〜15または5〜10であることが好ましい。
また、RGD配列以外の部分を構成するアミノ酸の種類およびこれらの配列は任意である。従って、cRGDペプチドは、生体を構成する20種類のアミノ酸の他に、その他の種類の天然アミノ酸や合成アミノ酸を含んでいてもよい。ただし、本発明のアンチセンス核酸の投与対象に望ましくない影響を及ぼさず、当該複合体の活性を実質的に損なわず、さらにRGD配列の機能を妨げないアミノ酸およびそれらの配列が好ましい。
上述のように、cRGDペプチドは、少なくとも1つのRGD配列を有する。本発明の1つの実施態様において、上記cRGDペプチドは、1つのRGD配列を有する。
cRGDペプチドの具体例としては、以下のアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられるがこれに限定はされない:
cRGDfK(Arg−Gly−Asp−D−Phe−Lys)(配列番号24)。
上記cRGDペプチドは、周知の自動合成装置によって合成することが可能であり、または市販されているもの(例えば、Selleck社製「Cyclo(−RGDfK)」)を使用することも可能である。
さらに、リガンドとしてはアプタマーを使用することもできる(以下、「アプタマーリガンド」とも呼ぶ)。アプタマーとは、特定の分子と、典型的にはハイブリダイズ以外の手段で、特異的に結合する核酸分子であり、通常、核酸の配列をランダムに変化させて、標的の分子と特異的に結合するものを当業者に公知の方法(例えばSELEX法や一段階セレクション法)を用いて選択することによって得ることができる。従って、標的分子に特異的に結合するアプタマーをリガンドとして使用することにより、本発明のアンチセンス核酸を、当該標的分子が存在する標的細胞や標的組織(典型的には、当該標的分子が表面に存在する標的細胞や標的組織)に特異的に送達することができる。
リガンドとしては糖鎖を使用することもできる。ここで「糖鎖」とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸などの単糖およびこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に結合した分子を指す。リガンドとして使用される糖鎖(以下、「糖鎖リガンド」とも呼ぶ)は、特に限定されないが、その例としては、N−アセチルガラクトサミン、ヒアルロン酸、デキストリンおよびセルロースが挙げられる。
リガンドとしては脂質を使用することもできる。本明細書で使用する場合に、「脂質」には、単純脂質、複合脂質および誘導脂質が含まれる。リガンドとして使用される脂質(以下、「脂質リガンド」とも呼ぶ)は、特に限定されないが、例えば、複合脂質であるリン脂質や糖脂質、誘導脂質である脂肪酸やステロイドが挙げられる。リン脂質の例としてはスフィンゴリン脂質、糖脂質の例としてはスフィンゴ糖脂質、脂肪酸の例としては、直鎖状または分岐状のC〜C30飽和または不飽和脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ドコサン酸が挙げられ、ステロイドの例としてはコレステロールが挙げられる。また、脂溶性ビタミンであるビタミンE(トコフェロール)もリガンドとして使用できる脂質の一例として挙げることができる。トコフェロールは、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロールからなる群から選択される。また、本発明では、トコフェロールの類縁体を使用することもできる。
ここで、「類縁体(analog)」とは、ある化合物と同一または類似の基本骨格を有し、類似した構造および性質を有する化合物、特に同一または類似のリガンド特性を有する化合物を指す。類縁体には、例えば、生合成中間体、代謝産物、置換基を有する化合物などが含まれる。ある化合物が別の化合物の類縁体であるかどうかは、当業者であれば判定することが可能である。
本明細書において、「トコフェロール類縁体」には、トコフェロールの不飽和アナログ(例えば、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等のトコトリエノール)、トコフェロールもしくは上記不飽和アナログの薬学的に許容可能なエステル(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステル、プロピオン酸エステル)、およびそれらの薬学的に許容可能な塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩)が含まれる。上記の塩は、特に、コハク酸のような二カルボン酸とのエステルの場合に形成させることが可能である。上記のトコフェロール類縁体は、トコフェロールと同一のまたは類似のリガンド特性、特に標的特異性を有することができる。
リガンドとしては低分子・低分子化合物を使用することもできる。リガンドとして使用され得る低分子・低分子化合物(以下、「低分子リガンド」とも呼ぶ)は、特に限定されないが、その例としては、アニスアミド、チロフィバン、および2−ピロリジン−1−イル−N−[4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル]−フェニル]−アセトアミドが挙げられる。
リガンドとしては生体分子/生体活性分子を使用することもできる。リガンドとして使用され得る生体分子/生体活性分子(以下、「生体分子/生体活性分子リガンド」とも呼ぶ)は、生体に関連する分子、または生体に影響を与え得る活性を有する分子であれば特に限定されないが、その例としては、葉酸、アナンダミド、スペルミンが挙げられる。
例えば、「葉酸」は、すべての細胞がDNA合成に必要とするビタミンである。多くの癌細胞において葉酸受容体が過剰発現していることが報告されており、従って、葉酸は癌標的リガンドとして広く使用されている。また、葉酸と葉酸受容体の複合体がエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれることや、多くの癌細胞において、葉酸の取り込みが多いことも報告されている。
本発明では、このような葉酸も上記リガンドとして使用することができ、葉酸は例えば、市販のもの(例えば、Sigma−Aldrich社製「葉酸」)を容易に入手することが可能である。また、本発明では、葉酸の類縁体を使用することもできる。
ここで、本明細書において、「葉酸類縁体」は、ベンゾイル部分を介してアミノ酸部分(好ましくはグルタミン酸部分)と結合した縮合ピリミジン複素環を有する化合物、すなわち、アミノ酸部分、ベンゾイル部分および縮合ピリミジン複素環をベースとした化合物を指す(葉酸自体は除く)。上記「縮合ピリミジン複素環」としては、例えば、プテリジン又は二環式ピロロピリミジンなど5若しくは6員環の複素環をさらに融合させたピリミジンを挙げることができる。葉酸またはその類縁体の例としては、葉酸(プテロイル−グルタミン酸)骨格をベースとし、任意選択的に置換された葉酸、ホリニン酸、プテロポリグルタミン酸、ならびに葉酸レセプター結合プテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、デアザおよびジデアザアナログが挙げられる。上記の葉酸類縁体は、葉酸と同一のまたは類似のリガンド特性、特に標的特異性を有することができる。
また、当業者は、他の生体分子/生体活性分子リガンドについても、それぞれのレセプターの情報、例えば、各種組織や細胞における発現レベルや発現特異性等を考慮に入れながら、本発明のアンチセンス核酸の所望の標的に応じて、適切な生体分子/生体活性分子リガンドを適宜選択することが可能である。
本発明の1つの好ましい態様において、上記リガンドは、タンパク質リガンド、ペプチドリガンド、アプタマーリガンド、糖鎖リガンド、脂質リガンド、低分子リガンドおよび生体分子/生体活性分子リガンドからなる群から選択され、より好ましくはペプチドリガンド、糖鎖リガンド、脂質リガンド、低分子リガンドおよび生体分子/生体活性分子リガンドからなる群から選択される。
本発明のさらなる好ましい態様において、上記リガンドは、環状ペプチド、例えば環状アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列含有ペプチド、葉酸もしくはその類縁体、ビタミンE(トコフェロール)もしくはその類縁体、ステアリン酸、ドコサン酸、アナンダミド、スペルミン、コレステロール、アニスアミドまたはN−アセチルガラクトサミンから選択される。
本発明の別の実施態様において、上記リガンドは、ペプチドリガンド、生体分子/生体活性分子リガンドまたは脂質リガンドから選択され、例えば、環状RGD配列含有ペプチド、葉酸またはビタミンE(トコフェロール)から選択される。
好ましくは、上記のようなリガンドを有する本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、上記リガンドが特異的に結合可能なレセプターを有する細胞や組織(例えばそれらの表面に有する)を標的細胞または標的組織とすることができる。標的細胞や標的組織の種類は特に限定されず、目的などに応じて適宜の細胞や組織を標的とすることができる。例えば、標的細胞は組織や臓器を形成する細胞であってもよい。あるいは、標的細胞は、白血病細胞のように単独で存在する細胞であってもよく、固形がん細胞のように組織に腫瘍を形成している細胞やリンパ組織や他の組織に浸潤している細胞などであってもよい(以下、これらの細胞をまとめて単に「癌細胞」とも呼ぶ)。
本発明の1つの実施態様において、上記リガンドは、直接結合していても、リンカーを介して間接的に結合していてもよい。例えば、上記リガンドは、上記ポリヌクレオチドの5’末端または3’末端に、および/またはそれ以外の部位、例えばポリヌクレオチド全体の個数に対してm%の個数を有する、下記に定義する中央領域内における1つまたは複数の構成単位に、直接またはリンカーを介して結合させることができる(ここで、mは、1〜70の整数、例えば2〜60の整数、5〜50の整数、10〜40の整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60または65であることができる)。ここで、「中央領域」とは、上記ポリヌクレオチドが奇数個の構成単位からなる場合には、上記ポリヌクレオチドの中央に位置する1個の構成単位と、当該中央構成単位から5’方向および3’方向にそれぞれ同じ数の構成単位とを含む領域であって、上記ポリヌクレオチドの中央と当該領域の中央とが同一である領域を意味し、上記ポリヌクレオチドが偶数個の構成単位からなる場合には、上記ポリヌクレオチドの中央に位置する2個の構成単位と、当該中央構成単位から5’方向および3’方向にそれぞれ同じ数の構成単位とを含む領域であって、上記ポリヌクレオチドの中央と当該領域の中央とが同一である領域を意味する。
本発明の1つの実施態様において、上記リガンドは、上記ポリヌクレオチドの5’末端に結合している。本発明の他の実施態様において、上記ポリヌクレオチドが10〜35塩基の長さを有する場合には、上記リガンドは、上記ポリヌクレオチドの5’末端から数えて、1〜35番目、例えば2〜30番目、3〜25番目、4〜20番目、5〜15番目、6〜11番目(例えば、6、7、8、9、10または11番目)の構成単位に、例えばその2’位または4’位を介して結合している。
上記のようなリガンドを、任意選択的にリンカーを介して、ポリヌクレオチドに結合させる方法は当業者によく知られている。当業者は、使用するリガンドやリンカーの種類に応じて適宜適切な公知の方法を選択することにより、上記結合を達成することが可能であるが、例えば、リガンドとしてcRGDfK、リンカーとしてAzido−PEG−NHS esterを使用して、リガンドをヌクレオチドの2’位から懸垂させる場合の方法を以下に簡単に説明する:
(a)リガンドとリンカーとの結合
cRGDfKとAzido−PEG−NHS esterを、NHSエステルとcRGDfKのリジンのアミノ基との縮合反応により結合させて、cRGDfKにアミド結合によりアジド−PEGが連結しているアジド化cRGDfKを作成する。
(b)アルキン修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの調製
(リンカーを介して)リガンドを結合させたい位置の構成単位をアルキン修飾ヌクレオチドとしたポリヌクレオチドを調製する。このようなポリヌクレオチドの調製方法は、当業者には公知であり、例えば、標準的なオリゴ合成においてアルキンホスホロアミダイトを用いることにより合成することができる。アルキン修飾ヌクレオチドの調製のためには、例えば、2’−O−プロパルギルアデノシン、2’−O−プロパルギルシチジン、2’−O−プロパルギルグアノシン、2’−O−プロパルギルウリジンまたは2’−O−プロパルギル脱塩基リボースを使用することができる。
(c)クリック反応
アジドとアルキンによる付加感化反応(クリック反応)を用いて、アジド化cRGDfKとアルキン修飾ヌクレオチドとを結合させる。
これにより、所望の位置のヌクレオチド(または化学修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体)の2’の部位に、トリアゾールを介してPEGが結合し、そこにアミド結合によって結合したcRGDfKを有するポリヌクレオチド、すなわち、リガンドがリンカーを介してヌクレオチドの2’位から懸垂しているポリヌクレオチドが得られる。そのようなポリヌクレオチドの例を図34に示す。
上記のように、リンカーを介してリガンドが相補鎖のポリヌクレオチドに結合している場合、当該ポリヌクレオチドにおける結合を担う構成単位は、リンカーとの結合のために化学修飾されていてもよい。例えば、上記構成単位(デオシキリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたは核酸類似体)のリンカー結合部位をアミノ化、チオール化、アルキン化またはジベンゾシクロオクチン化することにより、それぞれ、リンカーにおけるアミン反応性基、チオール反応性基、アルキン反応性基またはジベンゾシクロオクチン反応性基との反応を介して、上記構成単位とリンカーとの間に共有結合を形成させることができる。このような化学修飾がなされたヌクレオチドを、ここでは「リンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド」とも呼び、このような修飾は、上で説明した化学修飾の一態様を構成するものである。なお、「リンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド」は、上記で例示したような反応の結果としてリンカーの一端と共有結合を形成するため、反応前と反応後では異なる構造を取り得るが、リンカーと共有結合を形成している形態のヌクレオチドも、ここでは「リンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド」として呼ぶことができる。同様に、上記リガンドをポリヌクレオチドに直接結合させる場合にも、例えば、リンカーを介したリガンドの結合に関して上述したような化学修飾や反応性基を適宜、リガンドを結合させるポリヌクレオチドの構成単位(ヌクレオチドまたは核酸類似体)および/またはリガンドに導入し、公知の反応、例えば上述したような反応を使用することにより、当該構成単位とリガンドとの間で共有結合を形成させることが可能である。この場合、上記のような化学修飾がされたヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド)を「リガンドとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド」とも呼ぶ。
本発明の1つの実施態様において、上記相補鎖におけるポリヌクレオチドは、リンカーを介してリガンドが結合している構成単位として、リンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド)、好ましくはリンカーとの結合のために化学修飾されたリボヌクレオチドを少なくとも1つ含む。このリンカーとの結合のために化学修飾されたリボヌクレオチドに、リガンドを結合させることができる。
本発明の他の実施態様において、上記相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドおよびリンカーとの結合のために化学修飾されたリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。本発明のさらなる実施態様において、上記相補鎖におけるポリヌクレオチドは、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチド、化学修飾されていないリボヌクレオチドおよびリンカーとの結合のために化学修飾されたリボヌクレオチドのみを構成単位として含む。これらの実施態様では、このリンカーとの結合のために化学修飾されたリボヌクレオチドに、リガンドを結合させることができる。
本発明の1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含み、かつ、構成単位としてリンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド(好ましくはリボヌクレオチド)を含む。本発明のさらに1つの実施態様において、相補鎖におけるポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸におけるポリヌクレオチドに対して少なくとも1つのミスマッチを含み、かつ、リンカーとの結合のために化学修飾されたヌクレオチド(好ましくはリボヌクレオチド)を構成単位として含み、かつ、当該ヌクレオチドの少なくとも1つが当該ミスマッチを形成し、すなわち、この実施態様では、リガンドが結合している構成単位が上記ミスマッチを形成する。例えば、上記ミスマッチは、G対Uのミスマッチ(アンチセンス核酸がGで、相補鎖がU)であることができる。
また、上記相補鎖が複数のリガンドを含む場合、これらのリガンドは同一の構成単位に結合していてもよく(例えば、同一の構成単位の同一の位置(例えば2’位)に結合していてもよい)、または互いに異なる構成単位に結合していてもよい。前者の場合、例えば、適当な分岐リンカーを用いることにより、複数のリガンドを多量体(例えば2〜10量体、好ましくは2〜6量体、例えば2、3、4、5または6量体)として同一の構成単位に結合させてもよい。本願では、本発明の核酸複合体において、複数のリガンドを多量体として同一の構成単位に結合させた場合でも、良好な活性が達成されることも見出された。
分岐リンカーとしては種々のものが公知であり、当業者であれば使用するリガンドに応じて適宜適切な分岐リンカーを選択することが可能である。
本発明においては、例えば、分岐リンカーとして、ポリヌクレオチドと2つのcRGDfKとを以下に示すように連結するリンカーを使用することができる。この場合、2つのcRGDfKを2量体の形態で、同一の構成単位ヌクレオチドに結合させることができる。
Figure 2018051762
また、例えば、4分岐型の分岐リンカーを使用して4つのcRGDfKとポリヌクレオチドとを連結することにより、以下に示すように、4つのcRGDfKを4量体の形態で、同一の構成単位ヌクレオチドに結合させることができる。
Figure 2018051762
1つの実施態様において、上記アンチセンス核酸は、ポリヌクレオチドのみからなる。本発明の別の実施態様において、上記アンチセンス核酸は、ポリヌクレオチドおよびリガンドのみからなる。本発明のさらなる実施態様において、上記アンチセンス核酸は、ポリヌクレオチド、リガンドおよびリンカーのみからなる。
本発明の他の実施態様において、上記二本鎖核酸複合体は、上記アンチセンス核酸および上記相補鎖のみからなる。本発明のさらなる実施態様において、上記二本鎖核酸複合体は、アンチセンス核酸、相補鎖およびリガンドのみからなる。本発明のさらに他の実施態様において、上記二本鎖核酸複合体は、アンチセンス核酸、相補鎖、リガンドおよびリンカーのみからなる。
以上、いくつかの実施態様において、アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の好適な典型例について説明したが、いくつかの実施態様におけるアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は上記典型例に限定されるものではない。また、いくつかの実施形態において、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドおよび/または相補的な核酸鎖のポリヌクレオチドは、当業者であれば公知の方法を適宜選択することにより調製することができる。例えば、標的転写産物の塩基配列(典型的には標的遺伝子の塩基配列)の情報に基づいて、核酸の塩基配列を設計し、市販の核酸自動合成機(アプライドバイオシステムズ社製、べックマン社製等)を用いて合成し、次いで、得られるポリヌクレオチドを逆相カラム等を用いて精製することにより、核酸を調製することができる。そして、このようにして調製した核酸を適当な緩衝液中にて混合し、約90〜98℃にて数分間(例えば、5分間)かけて変性させた後、必要に応じて約30〜70℃にて約1〜8時間かけてアニーリングさせることにより、いくつかの実施形態におけるアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を調製することができる。なお、二本鎖核酸複合体において、上記相補鎖のポリヌクレオチドにリガンドが結合している場合には、当該二本鎖核酸複合体は、例えば、予めリガンドを結合させたポリヌクレオチドを用いて、前記の通りアンチセンス核酸のポリヌクレオチドとアニーリングすることにより、調製することができる。
上述のように、アンチセンス核酸(ASO)としてDNAからなるオリゴヌクレオチドを細胞に導入した場合、標的遺伝子の転写産物(mRNA)と当該ASOとが結合して、部分的に二本鎖が形成され、この二本鎖が蓋の役割をして、リボソームによる翻訳を生じさせず、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現が阻害されることが知られている。
また、ASOとしてDNAからなるオリゴヌクレオチドを細胞に導入した場合、部分的にDNA−RNAのヘテロオリゴヌクレオチドが形成され、RNaseHによってこの部分が認識され、標的遺伝子のmRNAが分解されるため、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現が阻害されることも知られている。ASOが蓋の役割をする場合に比べ、このRNaseH依存的経路の場合の方が、多くの場合において遺伝子発現の抑制効果が高いことも明らかになっている。
ASOとしてDNAを用いた場合のアンチセンス効果に関連して、特表2015−502134号公報では、LNA/DNAギャップマーとそれに対するRNAからなる相補鎖とをアニーリングさせた二本鎖アンチセンス核酸が開示されている。ここでは、当該二本鎖核酸のアンチセンス効果について記載されている。当該文献におけるような二本鎖核酸は、HDO(heteroduplex oligonucleotide)と呼ばれるものである。
ASOとしてmRNA前駆体の特定領域に相補的でかつRNaseHの基質とならない修飾DNAからなるオリゴヌクレオチドを細胞に導入すると、部分的にDNA−RNAのヘテロオリゴヌクレオチドが形成され標的遺伝子のエクソンを読み飛ばすこと(エクソンスキッピング法)が知られている。
<標的遺伝子の発現又は標的転写産物を抑制するための組成物>
本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、特異性高く効率良く標的細胞内に取り込まれて、当該細胞内の標的遺伝子の発現又は標的転写産物レベルを抑制し、当該細胞の増殖を極めて効果的に抑制することができる。従って、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を有効成分として含有する、例えば、標的遺伝子の発現および/または標的細胞(例えば癌細胞)の増殖をアンチセンス効果によって抑制するための組成物を、本発明は提供することができる。本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、優れた特異性と効率で標的組織や標的部位に送達することができ、高い特異性および効率で標的細胞の増殖を抑制できるため、低濃度の投与により高い薬効を得ることができる。そして、発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は特に、副作用が少ないという利点も有する。従って、代謝性疾患、腫瘍、感染症といった標的遺伝子の発現亢進に伴う疾患を治療、予防するための医薬組成物も提供することができる。
従って、本発明の1つの実施態様において、本発明は、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的遺伝子の発現を減少させるための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体に関する。
また、本発明のさらなる実施態様において、本発明は、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的遺伝子の発現が亢進している細胞の増殖を抑制するための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体に関する。上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体は、癌細胞の増殖を抑制するためのアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体であることができ、または、癌治療用および/または予防用アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体であることができる。
さらに、本発明の1つの実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体と、任意に薬理学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物に関する。
また、本発明の別の実施態様において、本発明は、上記医薬組成物を製造するための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の使用に関する。
本発明の1つの実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、遺伝子の発現亢進を伴う疾患を治療または予防する方法に関する。
さらに別の実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において癌を治療する方法に関する。
上記医薬組成物は、癌細胞の増殖を抑制するための医薬組成物であることができ、または、上記医薬組成物は、癌治療用および/または予防用医薬組成物であることができる。
上記癌細胞の癌および上記癌は、例えば、脳腫瘍;頭、首、肺、子宮又は食道の扁平上皮癌;メラノーマ;肺又は子宮の腺癌;腎癌;悪性混合腫瘍;肝細胞癌;基底細胞癌;勅細胞腫様歯肉腫;口腔内腫瘤;肛門周囲腺癌;肛門嚢腫瘤;肛門嚢アポクリン腺癌;セルトリ細胞腫;膣前庭癌;皮脂腺癌;皮脂腺上皮腫;脂腺腺腫;汗腺癌;鼻腔内腺癌;鼻腺癌;甲状腺癌;大腸癌;気管支腺癌;腺癌;腺管癌;乳腺癌;複合型乳腺癌;乳腺悪性混合腫瘍;乳管内乳頭状腺癌;線維肉腫;血管周皮腫;肉腫;骨肉腫;軟骨肉腫;軟部組織肉腫;組織球肉腫;粘液肉腫;未分化肉腫;肺癌;肥満細胞腫;皮膚平滑筋腫;腹腔内平滑筋腫;平滑筋腫;慢性型リンパ球性白血病;リンパ腫;消化管型リンパ腫;消化器型リンパ腫;小〜中細胞型リンパ腫;副腎髄質腫瘍;顆粒膜細胞腫;褐色細胞腫;頭頸部癌;乳癌;肺癌;結腸癌;卵巣癌;前立腺癌;神経膠腫;神経膠芽腫;星状細胞腫;多形神経膠芽腫;炎症性乳癌;ウィルムス腫瘍;ユーイング肉腫;横紋筋肉腫;上衣腫;髄芽腫;腎癌;肝癌;黒色腫;膵臓癌;骨巨細胞腫;甲状腺癌;リンパ芽球性T細胞白血病;慢性骨髄性白血病;慢性リンパ球性白血病;ヘアリー細胞白血病;急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病;AML;慢性好中球性白血病;急性リンパ芽球性T細胞白血病;形質細胞腫;免疫芽球性大細胞型白血病;マントル細胞白血病;多発性骨髄腫;巨核芽球性白血病;急性巨核球性白血病;前骨髄球性白血病;赤白血病;ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫;リンパ芽球性T細胞リンパ腫;バーキットリンパ腫;濾胞性リンパ腫;神経芽細胞腫;膀胱癌;尿路上皮癌;外陰癌;子宮頸癌;子宮内膜癌;中皮腫;食道癌;唾液腺癌;肝細胞癌;胃癌;上咽頭癌;頬癌;口腔癌GIST(消化管間葉性腫瘍);上皮様細胞癌;肺胞基底上皮腺癌および精巣癌からなる群から選択される。
本発明のさらなる実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を細胞と接触させる工程を含む、細胞内の転写産物レベルを低減する方法に関する。
本発明の別の実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を細胞、好ましくは癌細胞と接触させる工程を含む、当該細胞の増殖を抑制する方法に関する。
本発明の別の実施態様において、本発明は、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的遺伝子の発現を低減させるための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の使用に関する。
本発明の別の実施態様において、本発明は、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的細胞、好ましくは癌細胞の増殖を抑制するための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の使用に関する。
本発明はさらに、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的遺伝子の発現を低減させるための薬剤を製造するための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の使用に関する。本発明はまた、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的細胞、好ましくは癌細胞の増殖を抑制するための薬剤を製造するための、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体の使用に関する。
さらなる実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的遺伝子の発現レベルを低減する方法に関する。本発明の別の実施態様において、本発明は、上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において、好ましくは標的組織・標的部位における、標的細胞、好ましくは癌細胞の増殖を抑制する方法に関する。
これらの態様では、好ましくは、アンチセンス核酸のポリヌクレオチドは、上記転写産物のいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である。
別の実施態様において、本発明は、アンチセンス核酸のデリバリー手段として様々なドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いて利用することができる。DDS複合体としては、界面活性剤ペプチド(Med. Mol. Morphol., 46, pp.86, 2013)、多糖シゾフィラン(J. Control. Release, 151, pp.155, 2011)、シクロデキストリン(Mol. Pharm., 12, pp.3129, 2015)、カチオニックリポソーム(J. Control. Release., 100, pp.165, 2004)、核酸ミセル粒子(Mol. Pharm., 11, pp.904, 2014)、アテロコラーゲン(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, pp.12179, 2005)などが挙げられる。
1つの実施態様において、上記転写産物は、タンパク質をコードするmRNA転写産物である。好ましくは、上記タンパク質はヒトBCL2、ヒトBCR−ABLまたはヒトSTAT3である。他の実施態様において、上記転写産物は、タンパク質をコードしない転写産物である。
また、本発明の1つの実施態様において、上記標的遺伝子は、ヒトbcl−2、ヒトBCR−ABLまたはヒトSTAT3である。
1つの好ましい実施態様において、上記哺乳動物はヒトである。
アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を含む上記組成物や薬剤は、公知の製剤学的方法により所望の投与形態や剤形に製剤化することができる。例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤等として、経腸管的(経口的等)又は非経腸管的に使用することができる。
これら製剤化においては、薬理学上もしくは飲食品として許容可能な担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、pH調節剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。
上記アンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体、または組成物または薬剤の好ましい投与形態としては特に制限はなく、経腸管的(経口的等)又は非経腸管的、より具体的には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、気道内投与、直腸投与及び筋肉内投与、輸液による投与が挙げられる。
各実施形態においてアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体や組成物は、ヒトを含む動物を対象として使用することができ、すなわち、ヒトおよび/またはヒト以外の動物を対象とすることができる。ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物等を対象とすることができる。
いくつかの実施形態におけるアンチセンス核酸(または二本鎖核酸複合体)または組成物を投与又は摂取する場合、その投与量又は摂取量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類(医薬品、飲食品など)等に応じて、適宜選択されるが、ある実施形態にかかるアンチセンス核酸または組成物の有効摂取量は、ヌクレオチド換算で0.001mg/kg/日〜50mg/kg/日であることが好ましい。
後述の実施例で示されるように、がん遺伝子であるbcl−2(あるいはBCR−ABLまたはSTAT3)を標的とする本発明の二本鎖核酸複合体は、非常に高い効率で標的細胞の増殖を抑制することができる。また、本発明の二本鎖アンチセンス核酸は、優れた特異性と効率で、標的組織や標的部位に送達することが可能である。さらに、本発明の二本鎖核酸複合体は、その副作用が極めて少ない。従って、本発明は、対象に対して、本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を添加または投与し、標的遺伝子の発現又は標的転写産物をアンチセンス効果によって抑制する方法を提供することができる。また、本発明は、本発明のアンチセンス核酸または二本鎖核酸複合体を対象に投与することによって、必要に応じて組織・部位特異的に、標的遺伝子の発現亢進等を伴う細胞の増殖を抑制し、それによってこのような発現亢進等を伴う各種疾患を治療、予防するための方法をも提供することができる。
以下、例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、実施形態は以下の例に限定されるものではない。
例1
[2本鎖核酸の合成]
ヒトBCL2遺伝子の配列に基づいて、該遺伝子を標的とするPS−PO型アンチセンス核酸を基本骨格とする2本鎖核酸を設計した。BCL2遺伝子に対する2本鎖核酸の具体例としては、アンチセンス鎖ヌクレオチドの配列(16mer)を配列番号1〜6に、相補鎖ヌクレオチド配列を配列番号7〜16に示す(表1)。各々の遺伝子配列においてアンチセンス鎖とそれぞれの相補鎖をアニーリングさせることで2本鎖核酸を形成する。配列番号1〜6と7〜12で各々形成される2本鎖核酸をBNSP−1〜36とする(表2参照)。また、配列番号1と14から形成される2本鎖核酸をBNSP−37、配列番号2と13から形成される2本鎖核酸をBNSP−38、配列番号2と14から形成される2本鎖核酸をBNSP−39、配列番号2と15から形成される2本鎖核酸をBNSP−40、配列番号2と16から形成される2本鎖核酸をBNSP−41、配列番号17と10から形成される2本鎖核酸をBNSP−42とする。尚、配列番号13〜16の5’末端には、
Figure 2018051762
で表示している5’−Octyl−tochopherol(Link Technology社製)を結合させた。これらの2本鎖核酸のうち、配列番号17については日本テクノサービス株式会社製の核酸合成機(型番:M−8−MX_A8S)を用いて合成し、それ以外は株式会社ジーンデザイン社に合成を委託し合成した。配列表記として下線で示すヌクレオチドはRNA、
Figure 2018051762
はLNA、それ以外はDNAを表す。また、ヌクレオチドの結合様式としてpsはチオリン酸結合、poはホスホジエステル結合を示し、N(m)は2’−OMe修飾ヌクレオチドを表す。
Figure 2018051762
Figure 2018051762
例2
[細胞培養]
後述の実験に用いるヒト癌由来細胞株は、以下の方法で維持した細胞株を用いた。
ヒト上皮様細胞癌由来細胞株(A431細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0004)、ヒト肝癌由来細胞株(HepG2細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB1886)及びヒト膵臓癌由来細胞株(HPAC細胞株:ATCC細胞バンクより購入、細胞番号:CRL−2119)は、10質量%のウシ胎児血清、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(DMEM:GIBCO社製)を用い、ヒト膵臓癌由来細胞株(AsPC−1細胞株:ATCC細胞バンクより購入、細胞番号:CRL−1682)、ヒト胃癌由来細胞株(MKN45細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0254)、ヒト膵臓癌由来細胞株(PANC−1細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2095)、ヒト前立腺癌由来細胞株(DU145細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2143)、ヒト前立腺癌由来細胞株(PC−3細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2145)、及びヒト卵巣癌由来細胞株(OVCAR−3細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2135)は、10質量%のウシ胎児血清、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(RPMI1640:GIBCO社製)を用い、ヒト肺胞基底上皮腺癌由来細胞株(A549細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0076)、ヒト腎癌由来細胞株(Caki−1細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0801)、ヒト胃癌由来細胞株(HGC−27細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB0500)、及びヒト膀胱癌由来細胞株(T24細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2536)は、10質量%のウシ胎児血清、MEM用非必須アミノ酸(NEAA)、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(MEM:GIBCO社)を用い、ヒト卵巣癌由来細胞株(MCAS細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0240)は、20質量%のウシ胎児血清、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(MEM:GIBCO社)を用い、ヒト乳腺癌由来細胞株(MCF−7細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0134)は、10質量%のウシ胎児血清、1mM ピルビン酸ナトリウム、10μg/ml インスリン、MEM用非必須アミノ酸(NEAA)、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(MEM:GIBCO社)を用い、ヒト大腸癌由来細胞株(HCT116細胞株:ATCC細胞バンクより購入、細胞番号:CCL−247)は、10質量%のウシ胎児血清、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(McCoy’s 5a:GIBCO社)を用い、37℃、5質量%CO条件下にて維持した。
例3
[細胞増殖アッセイ]
後述の実験で行った細胞増殖アッセイは、特に断りのない限り、以下の方法で行った。
96穴マイクロプレートを用い、加湿条件下(37℃、5% CO)、100μl/ウェルの培地で細胞を培養した。細胞増殖アッセイには細胞増殖試薬 WST−1(ロッシュ社製)を1ウェルに対し10μl添加し、マイクロプレートリーダー(Bio Rad社製)を用いて吸光度を測定した。
例4
[定量RT−PCR]
後述の実験で行った定量RT−PCRは、特に断りのない限り、以下の方法で行った。Rneasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、培養細胞からトータルRNAを抽出した。上記トータルRNAを用いた定量RT−PCRはQuant−Fast Probe RT−PCR Kit(QIAGEN社製)を使用し、推奨される条件で行った。プライマーはApplied Biosystem社製 TaqMan Gene Expression Assays Probeを使用した。内因性コントロールプライマーには同社製β−Actinを用いた。上記定量RT−PCRの増幅は、ROTOR−Gene Q (QIAGEN社製)を用いて行った。mRNA発現量はDelta Delta CT法により算出した。
例5
[ヒトBCL2遺伝子遺伝子を標的とする2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性試験]
上記のヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のインビトロにおける細胞増殖抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。まず、表2に示した2本鎖核酸BNPS−1〜36(計36本)を用意した。次いで、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて、上述の実施例2に示した計16細胞株に3nMの2本鎖核酸をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞株を、トランスフェクトから72時間培養し、上述の実施例3に記載の細胞増殖アッセイ法により2本鎖核酸の細胞増殖抑制活性を測定した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様の細胞増殖アッセイを行った。
その結果をA549細胞株は図4、A431細胞株は図5、AsPC−1細胞株は図6、HPAC細胞株は図7、HepG2細胞株は図8、MCF−7細胞株は図9、OVCAR−3細胞株は図10、MCAS細胞株は図11、Caki−1細胞株は図12、DU145細胞株は図13、PC−3細胞株は図14、T24細胞株は図15、HCT116細胞株は図16、HGC−27細胞株は図17、MKN45細胞株は図18、PANC−1細胞株は図19に示す。図4〜18から分かるように、PS結合を6個減らしたアンチセンス鎖に様々な構造の相補鎖をアニーリングしたBNSP−7〜12の2本鎖核酸は、アンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とするBNSP−1〜6とヒトBCL2遺伝子を標的とすることで各種癌細胞株に対して同等の増殖抑制活性を示した。また、図19から分かるように、PS結合とPO結合が完全に交互である構造を持つアンチセンス鎖が、全てPS結合を基本骨格とするBNSP−1、4と、ヒトBCL2遺伝子を標的とすることでPANC−1細胞株に対して同等の増殖抑制活性を示した。
例6
[ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験]
上記のヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のインビトロにおけるmRNA発現抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。アンチセンス配列番号1〜6と相補鎖配列番号10をアニーリングさせた2本鎖核酸BNSP−4、BNSP−10、BNSP−16、BNSP−22、BNSP−28、BNSP−34を用意した。次いで、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて、OVCAR−3細胞株及びA431細胞株に10nMの上記2本鎖核酸をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞株を、トランスフェクトから24時間培養し、上述の実施例4に記載の定量RT−PCR法により2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性を定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様のmRNA発現抑制活性を定量した。
その結果をOVCAR−3細胞株は図20、A431細胞株は図21に示す。図20より分かる通り、BNSP−10はヒトBCL2遺伝子を標的とすることで各種癌細胞株に対してアンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とするBNSP−4と同等のmRNA発現抑制活性を示した。また、図20、21よりわかる通り、その他のBNSP−16、BNSP−22、BNSP−28、BNSP−34よりもBNSP−10は強いmRNA発現抑制活性を示した。
例7
[PS−PO型2本鎖核酸の膵癌同所移植マウスモデルにおける肝毒性発現検証及び薬効評価]
上記のPS−PO型2本鎖核酸とアンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とする2本鎖核酸を比較して後述する2項目において差が出るかどうか評価するため、以下の実験を行った。
1.肝毒性の発現検証
2.膵癌部位の増殖抑制効果
飼育環境下で数日間馴化したBALB/cA Jcl−nu/nuマウス(6週令:雄、日本クレア株式会社より購入)に三種混合麻酔薬(ドミトール0.3mg/kg+ドルミカム4mg/kg+ベトルファール5mg/kg)をマウス体重10gあたり80μl、腹腔内投与して全身麻酔を施した後、1匹あたり1×10個のヒト癌細胞株を膵臓に注入し、膵臓同所移植モデルマウスを作製した(ShamとしてPBSを注入するマウスも作製)。尚、移植翌日から毎日(午後)体重を測定し、人道的エンドポイントから急激な体重減少(数日間で20%以上)、自力歩行不能かつ摂食・摂水不能な重篤状態に陥ったマウスには安楽死処置を施すこととした。癌細胞移植4日後(day4)、体重を指標に群分けを行い(6群×6匹)、Saline及びBNSP−37〜41を3mg/kgの用量で尾静脈より投与した。また、Sham群にはSalineを投与した。投与期間及び回数は1日1回(day4,6,8,12,15,18,20,22,25)の合計9回実施した。体重測定等で経過を観察し、癌細胞移植から26日後、麻酔状態下にて腹部静脈より静脈血を採取した後、肝臓及び膵臓を摘出した。肝毒性の血液生化学的検査は株式会社LSIメディエンスに委託し、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の定量を行った。また、肝肥大を評価するため、摘出した肝臓重量を測定し、マウス体重で補正することで肝重量比を算出した。その結果をAST値は図22、ALT値は図23、肝重量比は図24に示す。さらに、膵臓重量比を比較することでBNSP−37〜41の抗腫瘍効果を評価した。その結果を図25に示す。図22〜24から分かる通り、アンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とする2本鎖核酸(BNSP−37)では、AST、ALT、肝重量比全てにおいてSaline投与群より明らかな肝毒性の発現が見られたが、アンチセンス鎖のPS結合を6個減らしたBNSP−38〜41はSaline投与群と同程度であり、BNSP−37と比較して統計学的有意に肝毒性マーカー及び肝肥大を抑制していることが明らかとなった。さらに、図25から分かる通り、抗腫瘍効果ではBNSP−39がBNSP−37と同程度の統計学的に有意な癌増殖抑制作用を示し、薬効を維持したまま肝毒性を著しく減じることが可能になる構造が見出された。
例8
[2本鎖核酸の合成]
ヒトBCL2、BCR−ABL及びSTAT3遺伝子の配列に基づいて、該遺伝子を標的とするDNA−DNAを基本骨格とし、糖部位にリガンド結合部位を有する塩基を含む2本鎖核酸を設計した。各標的遺伝子に対する2本鎖核酸の具体例としては、BCL2遺伝子に対する相補鎖ヌクレオチド配列(16mer)を配列番号18に示す。また、BCR−ABL遺伝子に対するアンチセンス鎖ヌクレオチドの配列(20mer)を配列番号19に、相補鎖ヌクレオチド配列を配列番号20及び21に示す。さらに、STAT3遺伝子に対するアンチセンス鎖ヌクレオチドの配列(20mer)を配列番号22に、相補鎖ヌクレオチド配列を配列番号23に示す。各々の遺伝子配列においてアンチセンス鎖とそれぞれの相補鎖をアニーリングさせることで2本鎖核酸を形成する。ヒトBCL2遺伝子を標的とした配列番号2と18から形成される2本鎖核酸をBNSP−43、ヒトBCR−ABL遺伝子を標的とした配列番号19と20から形成される2本鎖核酸をBNSP−44、配列番号19と21から形成される2本鎖核酸をBNSP−45、ヒトSTAT3遺伝子を標的とした配列番号22と23から形成される2本鎖核酸をBNSP−46とする。核酸は社内でDNA/RNA自動合成機(NTSH−8:日本テクノサービス株式会社製)を用い、常法に従い合成した。また、アンチセンス鎖とそれぞれの相補鎖のアニーリングによる2本鎖核酸の形成も社内で行った。
配列表記として下線で示すヌクレオチドはRNA、
Figure 2018051762
はLNA、それ以外はDNAを表す。また、ヌクレオチドの結合様式としてpsはチオリン酸結合、poはホスホジエステル結合を示し、Nは2’−O−Propargyl Cytidine、Nは2’−O−Propargyl Uridineを表す。
Figure 2018051762
例9
[糖部2’部位へのRGD付加]
上記相補鎖のうち、Propargyl基を有するBNSP−43相補鎖(配列番号18)へのcRGD付加は以下の通り行った。
(1)cRGDfK (Monomeric RGD:Cyclo(−RGDfK) Selleck社製S7834)のペプチドのN末端に縮合反応によりAzido−PEG4−NHS esterを結合させアジド化ペプチドを作製した。
(2)30%DMSO溶液中、BNSP−43相補鎖(配列番号18)とアジド化ペプチドを原料として、Cu(II)錯体の存在下、クリック反応を行った。30%DMSO溶液中、peptide−N3 5等量、CuSO・5HO 5等量を加え40℃で16時間反応させた。
(3)クリック反応による過剰なCuはオリゴDNAのリン酸ジエステル、塩基部あるいはトリアゾールに付着している可能性があり、陽イオン交換樹脂(Ag(登録商標)MP−50(バイオラッド社製)によりNa+に置換した。。
(4)アンチセンス鎖(配列番号2)とcRGDの付加したBNSP−43相補鎖(配列番号18)をアニーリングさせた2本鎖核酸をBNSP−43−cRGDとする。
(5)さらに、多量体のcRGDを付加した2本鎖核酸の場合には、2本鎖核酸名に「DicRGD」(二量体)や「TEcRGD」(四量体)を付して呼ぶ(例えば、「BNSP−43−DEcRGD」、「BNSP−43−TEcRGD」)。
例10
[葉酸の付加]
葉酸は、PEG3−Folate(base click社製:BCFA−111−1)をクリック反応によりPropargyl基を有するBNSP−45相補鎖(配列番号21)に付加した。アンチセンス鎖(配列番号19)とPEG3−Folateを付加したBNSP−45相補鎖(配列番号21)をアニーリングさせた2本鎖核酸をBNSP−45−PEG−3−Folateとする。さらに、アンチセンス鎖(配列番号19)と社内で合成したPEG11−Folate及びPEG23−Folateを付加したBNSP−45相補鎖(配列番号21)をアニーリングさせた2本鎖核酸をBNSP−45−PEG−11−Folate及びBNSP−45−PEG−23−Folateとする。
例11
[細胞培養]
後述の実験に用いるヒト癌由来細胞株は、以下の方法で維持した細胞株を用いた。
ヒト肺胞基底上皮腺癌由来細胞株(A549細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0076)は、10質量%のウシ胎児血清、MEM用非必須アミノ酸(NEAA)、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(MEM:GIBCO社)、ヒト膵臓癌由来細胞株(PANC−1細胞株:理研セルバンクより購入、細胞番号:RBRC−RCB2095)、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株(K562細胞株:JCRB細胞バンクより購入、細胞番号:JCRB0019)、ヒト膵臓癌由来細胞株(AsPC−1細胞株:ATCC細胞バンクより購入、細胞番号:CRL−1682)は、10質量%のウシ胎児血清、100ユニット/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを添加した成長培地(RPMI1640:GIBCO社製)を用い、ヒト末梢血単核細胞(PBMC:クラボウ社より購入、製品番号:HC−0001)は、5質量%のウシ胎児血清、10μg/mLのDNaseIを添加した成長培地(LGM−3 lymphocyte:ロンザ社製)を用いた。
例12
[ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験]
上記のヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のインビトロにおけるmRNA発現抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。2本鎖核酸BNSP−1、BNSP−4、BNSP−7、BNSP−10及びPS結合とPO結合が完全に交互である構造を持つアンチセンス鎖(配列番号17)と相補鎖(配列番号10)をアニーリングさせたBNSP−42を用意した。次いで、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて、PANC−1細胞株、AsPC−1細胞株及びA549細胞株に10nMとなるよう上記2本鎖核酸をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞株を、トランスフェクトから24時間培養し、上述の実施例4に記載の定量RT−PCR法により2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性を定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様のmRNA発現抑制活性を定量した。
その結果をPANC−1細胞株は図26、ASPC−1細胞株は図27、A549細胞株は図28に示す。図26から分かる通り、PS結合とPO結合が完全に交互である構造を持つアンチセンス鎖が、全てPS結合を基本骨格とするBNSP−1、4とヒトBCL2遺伝子を標的とすることでPANC−1細胞株に対して同等のmRNA発現抑制活性を示した。図27、28より分かる通り、BNSP−7及びBNSP−10はヒトBCL2遺伝子を標的とすることでmRNA発現抑制活性を示した。
例13
[cRGDを相補鎖中央部に結合させたヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験]
上記のヒトBCL2遺伝子を標的とするcRGDを結合させた2本鎖核酸のインビトロにおけるmRNA発現抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。相補鎖中央部に1量体、2量体、4量体のcRGDを結合させた2本鎖核酸BNSP−43−cRGD、BNSP−43−DicRGD、BNSP−43−TEcRGD、並びにBNSP−10を用意し、PANC−1細胞株には3μM、K562細胞株には300nMとなるよう添加した。2本鎖核酸添加後、24時間培養し、上述の実施例4に記載の定量RT−PCR法により2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性を定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様のmRNA発現抑制活性を定量した。
その結果をPANC−1細胞株は図29、K562細胞株は図30に示す。図29から分かる通り、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸に1量体のcRGDを結合させることでリガンドの結合していないBNSP−10よりもPANC−1細胞株に対してmRNA発現抑制活性が増強していることが明らかとなった。また、図30より分かる通り、ヒトBCL2遺伝子を標的とする2本鎖核酸に結合させたcRGDの数依存的にK562細胞株に対してmRNA発現抑制活性が増強していることが明らかとなった。
例14
[葉酸を相補鎖中央部に結合させたヒトBCR−ABL遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験]
上記のヒトBCR−ABL遺伝子を標的とする葉酸を結合させた2本鎖核酸のインビトロにおけるmRNA発現抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。相補鎖中央部に異なる長さのPEGを介して葉酸を結合させた2本鎖核酸BNSP−45−PEG3−Folate、BNSP−45−PEG11−Folate、BNSP−45−PEG23−Folate、並びに及びBNSP−44を用意し、K562細胞株に300nMとなるよう添加した。2本鎖核酸添加後、24時間培養し、上述の実施例4に記載の定量RT−PCR法により2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性を定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様のmRNA発現抑制活性を定量した。
その結果を図31に示す。図31から分かる通り、ヒトBCR−ABL遺伝子を標的とする2本鎖核酸に葉酸を結合させることでリガンドの結合していないBNSP−44よりもK562細胞株に対してmRNA発現抑制活性が増強していることが明らかとなった。また、PEG3、PEG11、PEG23の比較では、PEGの長さは短い方がmRNA発現抑制活性が増強することが明らかとなった。
このように本願では、ポリヌクレオチドとリガンドとの結合に、ポリアルキレングリコール(例えばPEG)をベースとするリンカー、すなわちポリアルキレングリコールリンカー(例えばPEGリンカー)を使用することができる。当該リンカーのポリアルキレングリコール(例えばPEG)の長さは、1〜100の整数、例えば1〜50の整数、2〜30の整数または1〜12の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7または8であることができるが、上記の比較では、ポリアルキレングリコール(例えばPEG)の長さは短い方が有利あることが見出された。よって、本発明の1つの実施態様において、上記長さは、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、特に好ましくは2〜15である。
例15
[ヒトSTAT3遺伝子を標的とする2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性試験]
上記のヒトSTAT3遺伝子を標的とする2本鎖核酸のインビトロにおけるmRNA発現抑制活性を調べるために、以下の実験を行った。2本鎖核酸BNSP−46を用意し、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて、AsPC−1細胞株に0.3、1、3nMとなるようトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞株を、トランスフェクトから24時間培養し、上述の実施例4に記載の定量RT−PCR法により2本鎖核酸のmRNA発現抑制活性を定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、非標的遺伝子に対する2本鎖核酸を用いて、同様のmRNA発現抑制活性を定量した。
その結果を図32に示す。図32から分かる通り、ヒトSTAT3遺伝子を標的とすることでAsPC−1細胞株に対して用量依存的なmRNA発現抑制活性を示した。
例16
[PS−PO型2本鎖核酸のPBMC(ヒト末梢血単核細胞)におけるインターフェロン−α(IFN−α)発現誘導作用の検証]
上記のPS−PO型2本鎖核酸と、アンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とする1本鎖核酸及びアンチセンス鎖が全てPS結合を基本骨格とする2本鎖核酸を比較してIFN−α発現誘導作用において差が出るかどうか評価するため、以下の実験を行った。
1本鎖核酸(配列番号1)、2本鎖核酸BNSP−1、BNSP−4、BNSP−7、BNSP−10を用意した。次いで、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いて、PBMC細胞に30、100、300nMとなるよう上記2本鎖核酸をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞株を、トランスフェクトから24時間培養し、常法によりIFN−αの発現量をELISA法により定量した。
また、上記の2本鎖核酸に代えて、IFN−α発現ポジティブコントロールとしてCpGPo(インビトロジェン社:ODN2216)を用いて、同様のIFN−α発現量を定量した。
その結果を図33に示す。図33から分かる通り、1本鎖核酸と比較して、2本鎖核酸にすることでIFN−α誘導能は約2分の1に低下し、さらにアンチセンス鎖をPS−PO型にした2本鎖核酸ではIFN−αが全く誘導されないことが明らかとなった。このような結果も、本願の二本鎖核酸複合体が副作用の低減効果を有することを支持するものである。

Claims (53)

  1. 以下の式(XX)で表されるPSPOユニットを含む、アンチセンス核酸
    Figure 2018051762
    [式中、
    Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
    nは、2以上の整数を表す]。
  2. 以下の式(XX’)で表される構造を有する、請求項1に記載のアンチセンス核酸
    Figure 2018051762
    [式中、
    Aは、独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
    nは、2以上の整数を表し、
    Yは、上記PSPOユニットの5’側に位置し、かつアンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む5’ウィング領域;式(XX’−a)もしくは式(XX’−b)
    Figure 2018051762
    で表される部分;またはY−PSPOユニット−NL−(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)であり、そして、
    Zは、上記PSPOユニットの3’側に位置し、かつアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む3’ウィング領域;化学修飾されていてもよいヌクレオシド;式(XX’−c)もしくは式(XX’−d)
    Figure 2018051762
    で表される部分;または−NL−PSPOユニット−Z(ここで、NLはヌクレオチドリンカーを表す)である]。
  3. 少なくとも4つの連続した化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として含み、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有する1つまたは複数のモチーフを含むアンチセンス核酸であって、
    上記モチーフが以下の式(I)または(II)で表される、請求項1に記載のアンチセンス核酸。
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜Aは、それぞれ互いに独立に、化学修飾されていてもよいヌクレオシドから選択され、
    Rは、独立に、式(I)が核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    ここで、部分構造(I−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(I−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして
    当該部分構造(I−a)が存在しない場合には、i=5である]、
    または、
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜AおよびRは、式(I)に関して定義されるとおりであり、
    ここで、部分構造(II−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(II−a)が存在する場合には、i=6〜100の整数であり、そして 当該部分構造(II−a)が存在しない場合には、i=5である]。
  4. 〜Aのうちの連続した少なくとも4つが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオシドである、請求項3に記載のアンチセンス核酸。
  5. (a)上記モチーフの5’側に位置し、かつアンチセンス核酸の5’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む5’ウィング領域、および/または、
    (b)上記モチーフの3’側に位置し、かつアンチセンス核酸の3’末端に位置する構成単位を含む、1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドを含む3’ウィング領域、
    および任意選択的に、
    (c)上記5’ウィング領域と上記モチーフの間、上記モチーフと上記3’ウィング領域の間および/または上記モチーフ間に介在し、1〜20塩基の長さを有する少なくとも1つのヌクレオチドリンカー、
    をさらに含み、
    上記5’ウィング領域および3’ウィング領域は、それぞれ互いに独立に、1〜10塩基の長さを有する、
    請求項4に記載のアンチセンス核酸。
  6. 上記デオキシリボヌクレオシドが化学修飾されていない、請求項4または5のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  7. 上記5’ウィング領域および上記3’ウィング領域を含み、
    上記5’ウィング領域が、式(III)
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    cは、1〜9の整数を表す]
    で表され、
    上記3’ウィング領域が、式(IV)
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    dは、1〜9の整数を表す]
    で表されるか;
    あるいは、
    上記5’ウィング領域が、式(III’)または式(III’’):
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    c’は、0〜4の整数を表す]、
    または
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    c’は、0〜4の整数を表す]
    で表され、
    上記3’ウィング領域が、式(IV’)または式(IV’’):
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    d’は、0〜4の整数を表す]
    または
    Figure 2018051762
    [式中、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    d’は、0〜4の整数を表す]
    で表される、
    請求項5または6に記載のアンチセンス核酸。
  8. Xが独立して、核酸類似体である、請求項7に記載のアンチセンス核酸。
  9. 核酸類似体が、架橋化核酸である、請求項8に記載のアンチセンス核酸。
  10. 架橋化核酸が、LNA、cEt−BNA、アミドBNA及びcMOE−BNAからなる群から選択される、請求項9に記載のアンチセンス核酸。
  11. 長さが8〜100塩基である、請求項1〜10のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  12. 式(V)
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
    Rは、独立に、式(V)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
    ここで、部分構造(V−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(V−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
    当該部分構造(V−a)が存在しない場合には、i=5である]
    で表される構造、または、
    式(VI)
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
    Rは、独立に、式(VI)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
    ここで、部分構造(VI−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(VI−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
    当該部分構造(VI−a)が存在しない場合には、i=5である]
    で表される構造、または、
    式(V’)
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
    Rは、独立に、式(V’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
    ここで、部分構造(V’−a)
    Figure 2018051762
    は常に存在し、そして
    i=6〜96の整数である]
    で表される構造、または、
    式(VI’)
    Figure 2018051762
    [式中、
    〜Aは、独立して、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオシドであり、
    Rは、独立に、式(VI’)のAからAまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
    ここで、部分構造(VI’−a)
    Figure 2018051762
    は常に存在し、そして
    i=6〜96の整数である]
    で表される構造を有する、請求項3〜11のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  13. 上記モチーフが、式(VII)
    Figure 2018051762
    [式中、Xは、独立して化学修飾ヌクレオシドであり、
    Qは、SまたはOであり、そして
    fは、1〜10の整数である]
    で表される1つまたは複数の構造により、1か所または複数か所で中断されている、請求項3〜12のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  14. 〜Aが、それぞれ互いに独立に、化学修飾ヌクレオシドから選択される、請求項3に記載のアンチセンス核酸。
  15. 上記化学修飾ヌクレオシドが核酸類似体である、請求項14に記載のアンチセンス核酸。
  16. 式(VIII)
    Figure 2018051762
    [式中、
    XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
    Rは、独立に、式(VIII)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
    ここで、部分構造(VIII−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(VIII−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
    当該部分構造(VIII−a)が存在しない場合には、i=5である]
    で表される構造、または、
    式(IX)
    Figure 2018051762
    [式中、
    XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
    Rは、独立に、式(IX)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    eは1〜9の整数、gは1〜9の整数を表し、
    ここで、部分構造(IX−a)
    Figure 2018051762
    は、存在していても、存在していなくてもよく、
    当該部分構造(IX−a)が存在する場合には、i=6〜96の整数であり、そして
    当該部分構造(IX−a)が存在しない場合には、i=5である]
    で表される構造、または、
    式(VIII’)
    Figure 2018051762
    [式中、
    XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
    Rは、独立に、式(VIII’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
    ここで、部分構造(VIII’−a)
    Figure 2018051762
    は常に存在し、そして
    i=6〜96の整数である]
    で表される構造、または、
    式(IX’)
    Figure 2018051762
    [式中、
    XおよびX〜Xは、独立して核酸類似体であり、
    Rは、独立に、式(IX’)のXからXまでの間の領域が、核酸間結合としてホスホジエステル結合とホスホロチオエート化結合を交互に有するように、SまたはOから選択され、
    e’は0〜4の整数を示し、そしてg’は0〜4の整数を表し、
    ここで、部分構造(IX’−a)
    Figure 2018051762
    は常に存在し、そして
    i=6〜96の整数である]
    で表される構造を有する、請求項3、14および15のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  17. (i)請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸、および
    (ii)化学修飾されていてもよいヌクレオチドを構成単位として少なくとも含むポリヌクレオチドであって、少なくとも一部が上記(i)アンチセンス核酸に対して相補的なポリヌクレオチドを含む相補鎖、
    を含む二本鎖核酸複合体。
  18. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび/または化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドを構成単位として少なくとも含む、請求項17に記載の二本鎖核酸複合体。
  19. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、請求項18に記載の二本鎖核酸複合体。
  20. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていないデオキシリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、請求項19に記載の二本鎖核酸複合体。
  21. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていないリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、請求項18に記載の二本鎖核酸複合体。
  22. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、化学修飾されていてもよいデオキシリボヌクレオチドおよび化学修飾されていてもよいリボヌクレオチドのみを構成単位として含む、請求項18に記載の二本鎖核酸複合体。
  23. 上記ポリヌクレオチドが、上記デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドを交互に含む、請求項22に記載の二本鎖核酸複合体。
  24. 上記デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが化学修飾されていない、請求項22または23に記載の二本鎖核酸複合体。
  25. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが少なくとも1つのバルジを含む、請求項17〜24のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  26. (ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドが、上記(i)アンチセンス核酸に対して少なくとも1つのミスマッチを含む、請求項17〜25のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  27. 上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さが、8〜100塩基である、請求項17〜26のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  28. 上記(i)アンチセンス核酸が、上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドと同じ長さを有する、請求項17〜27のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  29. 上記(i)アンチセンス核酸の長さが、上記(ii)相補鎖におけるポリヌクレオチドの長さと異なる、請求項17〜27のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  30. 少なくとも1つのリガンドを含む、請求項17〜29のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  31. 少なくとも1つのリガンドが、上記(ii)相補鎖のポリヌクレオチドの1つまたは複数の構成単位に結合している、請求項30に記載の二本鎖核酸複合体。
  32. 上記少なくとも1つのリガンドが、タンパク質リガンド、ペプチドリガンド、アプタマーリガンド、糖鎖リガンド、脂質リガンド、低分子リガンドおよび生体分子/生体活性分子リガンドからなる群から選択される、請求項30または31に記載の二本鎖核酸複合体。
  33. 上記少なくとも1つのリガンドが、環状ペプチド、N−アセチルガラクトサミン、コレステロール、ビタミンE(トコフェロール)もしくはその類縁体、ステアリン酸、ドコサン酸、アニスアミド、葉酸もしくはその類縁体、アナンダミドまたはスペルミンである、請求項32に記載の二本鎖核酸複合体。
  34. 哺乳動物において標的遺伝子の発現を減少させるための、請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  35. 標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、請求項34に記載のアンチセンス核酸。
  36. 哺乳動物において、標的遺伝子の発現が亢進している細胞の増殖を抑制するための、請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸。
  37. 上記標的遺伝子ががん遺伝子であり、上記細胞が癌細胞である、請求項36に記載のアンチセンス核酸。
  38. 哺乳動物において標的遺伝子の発現を減少させるための、請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  39. 上記(i)アンチセンス核酸が、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、請求項38に記載の二本鎖核酸複合体。
  40. 哺乳動物において、標的遺伝子の発現が亢進している細胞の増殖を抑制するための、請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体。
  41. 上記標的遺伝子ががん遺伝子であり、上記細胞が癌細胞である、請求項40に記載の二本鎖核酸複合体。
  42. 請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体と、任意に薬理学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
  43. 癌を治療および/または予防するための、請求項42に記載の医薬組成物。
  44. 請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体を細胞と接触させる工程を含む、細胞内の転写産物レベルを低減する方法であって、
    アンチセンス核酸が該転写産物のいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、方法。
  45. 上記転写産物が、タンパク質をコードするmRNA転写産物である、請求項44に記載の方法。
  46. 上記転写産物が、タンパク質をコードしない転写産物である、請求項44に記載の方法。
  47. 哺乳動物において標的遺伝子の発現を低減させるための、請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体の使用。
  48. 哺乳動物において標的遺伝子の発現を低減させるための薬剤を製造するための、請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体の使用。
  49. 請求項1〜16のいずれか1つに記載のアンチセンス核酸または請求項17〜33のいずれか1つに記載の二本鎖核酸複合体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において標的遺伝子の発現レベルを低減する方法であって、
    アンチセンス核酸が、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に相補的なアンチセンス鎖である、方法。
  50. 上記投与が経腸管的投与である、請求項49に記載の方法。
  51. 上記投与が非経腸管的投与である、請求項49に記載の方法。
  52. 上記核酸複合体の投与量が、0.001mg/kg/日〜50mg/kg/日である、請求項49〜51のいずれか1つに記載の方法。
  53. 上記哺乳動物がヒトある、請求項49〜52のいずれか1つに記載の方法。
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