JPWO2018034283A1 - 快削性銅合金鋳物、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法 - Google Patents

快削性銅合金鋳物、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法 Download PDF

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Abstract

この快削性銅合金鋳物は、Cu:75.0〜78.5%、Si:2.95%〜3.55%、Sn:0.07%〜0.28%、P:0.06%〜0.14%、Pb:0.022%〜0.20%を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、組成は以下の関係を満たし、
76.2≦f1=Cu+0.8×Si−8.5×Sn+P+0.5×Pb≦80.3、61.2≦f2=Cu−4.4×Si−0.8×Sn−P+0.5×Pb≦62.8、
構成相の面積率(%)は以下の関係を満たし、
25≦κ≦65、0≦γ≦2.0、0≦β≦0.3、0≦μ≦2.0、96.5≦f3=α+κ、99.2≦f4=α+κ+γ+μ、0≦f5=γ+μ≦3.0、29≦f6=κ+6×γ1/2+0.5×μ≦66、
γ相の長辺が50μm以下、μ相の長辺が25μm以下であり、α相内にκ相が存在している。

Description

本発明は、優れた耐食性、優れた鋳造性、衝撃特性、耐摩耗性、高温特性を備えるとともに、鉛の含有量を大幅に減少させた快削性銅合金鋳物、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法に関する。特に、給水栓、バルブ、継手などの人や動物が毎日摂取する飲料水に使用される器具、さらには、様々な厳しい環境で使用されるバルブ、継手などの電気・自動車・機械・工業用配管に用いられる快削性銅合金鋳物(快削性を有する銅合金の鋳物)、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法に関連している。
本願は、2016年8月15日に、日本に出願された特願2016−159238号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来から、飲料水の器具類を始め、バルブ、継手など電気・自動車・機械・工業用配管に使用されている銅合金として、56〜65mass%のCuと、1〜4mass%のPbを含有し、残部がZnとされたCu−Zn−Pb合金(いわゆる快削黄銅)、あるいは、80〜88mass%のCuと、2〜8mass%のSn、2〜8mass%のPbを含有し、残部がZnとされたCu−Sn−Zn−Pb合金(いわゆる青銅:ガンメタル)が一般的に使用されていた。
しかしながら、近年では、Pbの人体や環境に与える影響が懸念されるようになり、各国でPbに関する規制の動きが活発化している。例えば、米国カリフォルニア州では、2010年 1月より、また、全米においては、2014年1月より、飲料水器具等に含まれるPb含有量を0.25mass%以下とする規制が発効されている。また、飲料水類へ浸出するPbの浸出量についても、将来、5massppm程度までの規制がなされるであろうと言われている。米国以外の国においても、その規制の動きは急速であり、Pb含有量の規制に対応した銅合金材料の開発が求められている。
また、その他の産業分野、自動車、機械や電気・電子機器の分野においても、例えば、欧州のELV規制、RoHS規制では、快削性銅合金のPb含有量が例外的に4mass%まで認められているが、飲料水の分野と同様、例外の撤廃を含め、Pb含有量の規制強化が活発に議論されている。
このような快削性銅合金のPb規制強化の動向の中、Pbの代わりに被削性機能を有するBi及びSeを含有する銅合金、あるいは、CuとZnの合金においてβ相を増やして被削性の向上を図った高濃度のZnを含有する銅合金などが提唱されている。
例えば、特許文献1においては、Pbの代わりにBiを含有させるだけでは耐食性が不十分であるとし、β相を減少させてβ相を孤立させるために、熱間押出後の熱間押出棒を180℃になるまで徐冷し、さらには、熱処理を施すことを提案している。
また、特許文献2においては、Cu−Zn−Bi合金に、Snを0.7〜2.5mass%添加してCu−Zn−Sn合金のγ相を析出させることにより、耐食性の改善を図っている。
しかしながら、特許文献1に示すように、Pbの代わりにBiを含有させた合金は、耐食性に問題がある。そして、Biは、Pbと同様に人体に有害であるおそれがあること、希少金属であるので資源上の問題があること、銅合金材料を脆くする問題などを含め、多くの問題を有している。さらに、特許文献1、2で提案されているように、熱間押出後の徐冷、或いは熱処理により、β相を孤立させて耐食性を高めたとしても、到底、厳しい環境下での耐食性の改善には繋がらない。
また、特許文献2に示すように、Cu−Zn−Sn合金のγ相を析出させたとしても、このγ相は、元来、α相に比べ耐食性に乏しく、到底、厳しい環境下での耐食性の改善には繋がらない。また、Cu−Zn−Sn合金では、Snを含有させたγ相は、被削性機能を持つBiを共に添加することを必要としているように、被削性機能に劣る。
一方、高濃度のZnを含有する銅合金については、β相は、Pbに比べ被削性の機能が劣るので、到底、Pbを含有する快削性銅合金の代替にはなりえないばかりか、β相を多く含むので、耐食性、特に耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性が頗る悪い。また、これら銅合金は、高温(例えば150℃)での強度が低いため、例えば、炎天下でかつエンジンルームに近い高温下で使用される自動車部品や、高温・高圧下で使用される配管などにおいては、薄肉、軽量化に応えられない。
さらに、Biは銅合金を脆くし、β相を多く含むと延性が低下するので、Biを含有する銅合金、または、β相を多く含む銅合金は、自動車、機械、電気用部品として、また、バルブを始めとする飲料水器具材料としては、不適切である。なお、Cu−Zn合金にSnを含有させたγ相を含む黄銅についても、応力腐食割れを改善できず、高温での強度が低く、衝撃特性が悪いため、これらの用途での使用は不適切である。
他方、快削性銅合金として、Pbの代わりにSiを含有したCu−Zn−Si合金が、例えば特許文献3〜9に提案されている。
特許文献3,4においては、主としてγ相の優れた被削性機能を有することにより、Pbを含有させずに、又は、少量のPbの含有で、優れた切削性を実現させたものである。Snは、0.3mass%以上の含有により、被削性機能を有するγ相の形成を増大、促進させ、被削性を改善させる。また、特許文献3,4においては、多くのγ相の形成により、耐食性の向上を図っている。
また、特許文献5においては、0.02mass%以下の極少量のPbを含有させ、主としてγ相、κ相の合計含有面積を規定することにより、優れた快削性を得るものとしている。ここで、Snは、γ相の形成及び増大化に働き、耐エロージョンコロージョン性を改善させるとしている。
さらに、特許文献6,7においては、Cu−Zn−Si合金の鋳物製品が提案されており、鋳物の結晶粒の微細化を図るために、Pの存在の下でZrを極微量含有させており、P/Zrの比率等が重要としている。
また、特許文献8には、Cu−Zn−Si合金にFeを含有させた銅合金が提案されている。
さらに、特許文献9には、Cu−Zn−Si合金にSnとFe、Co,Ni、Mnを含有させた銅合金が提案されている。
ここで、上述のCu−Zn−Si合金においては、特許文献10及び非特許文献1に記載されているように、Cu濃度が60mass%以上、Zn濃度が30mass%以下、Si濃度が10mass%以下の組成に絞っても、マトリックスα相の他に、β相、γ相、δ相、ε相、ζ相、η相、κ相、μ相、χ相の10種類の金属相、場合によっては、α’、β’、γ’を含めると13種類の金属相が存在することが知られている。さらに、添加元素が増えると、金属組織はより複雑になることや、新たな相や金属間化合物が出現する可能性があること、また、平衡状態図から得られる合金と実生産されている合金では、存在する金属相の構成に大きなずれが生じることが経験上よく知られている。さらに、これらの相の組成は、銅合金のCu、Zn、Si等の濃度、および、加工熱履歴によっても、変化することがよく知られている。
ところで、γ相は優れた被削性能を有するが、Si濃度が高く、硬くて脆いため、γ相を多く含むと、厳しい環境下での耐食性、衝撃特性、高温強度(高温クリープ)等に問題を生じる。このため、多量のγ相を含むCu−Zn−Si合金についても、Biを含有する銅合金やβ相を多く含む銅合金と同様に、その使用に制約を受ける。
なお、特許文献3〜7に記載されているCu−Zn−Si合金は、ISO−6509に基づく脱亜鉛腐食試験では、比較的良好な結果を示す。しかしながら、ISO−6509に基づく脱亜鉛腐食試験では、一般的な水質での耐脱亜鉛腐食性の良否を判定するために、実際の水質とは全く異なる塩化第二銅の試薬を用い、24時間という短時間で評価しているに過ぎない。すなわち、実環境と異なった試薬を用い、短時間で評価しているため、厳しい環境下での耐食性を十分に評価できていない。
また、特許文献8においては、Cu−Zn−Si合金にFeを含有させることを提案している。ところが、FeとSiは、γ相より硬く脆いFe−Siの金属間化合物を形成する。この金属間化合物は、切削加工時には切削工具の寿命を短くし、研磨時にはハードスポットが形成され外観上の不具合が生じる。また、金属間化合物により衝撃特性が低下するなどの問題がある。また、添加元素であるSiを金属間化合物として消費することから、合金の性能を低下させてしまう。
さらに、特許文献9においては、Cu−Zn−Si合金に、SnとFe、Co、Mnを添加しているが、Fe,Co,Mnは、いずれもSiと化合して硬くて脆い金属間化合物を生成する。このため、特許文献8と同様に、切削や研磨時に問題を生じさせる。さらに、特許文献9によれば、Sn,Mnを含有させることによりβ相を形成させているが、β相は、深刻な脱亜鉛腐食を生じさせ、応力腐食割れの感受性を高める。
特開2008−214760号公報 国際公開第2008/081947号 特開2000−119775号公報 特開2000−119774号公報 国際公開第2007/034571号 国際公開第2006/016442号 国際公開第2006/016624号 特表2016−511792号公報 特開2004−263301号公報 米国特許第4,055,445号明細書
美馬源次郎、長谷川正治:伸銅技術研究会誌,2(1963),P.62〜77
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、厳しい環境下での耐食性、衝撃特性、高温強度に優れた快削性銅合金鋳物、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法を提供することを課題とする。なお、本明細書において、特に断りのない限り、耐食性とは、耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性の両方を指す。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の第1の態様である快削性銅合金鋳物は、75.0mass%以上78.5mass%以下のCuと、2.95mass%以上3.55mass%以下のSiと、0.07mass%以上、0.28mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.14mass%以下のPと、0.022mass%以上0.20mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
76.2≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦80.3、
61.2≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.8、
の関係を有するとともに、
金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
25≦(κ)≦65、
0≦(γ)≦2.0、
0≦(β)≦0.3、
0≦(μ)≦2.0、
96.5≦f3=(α)+(κ)、
99.2≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
0≦f5=(γ)+(μ)≦3.0、
29≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦66、
の関係を有するとともに、
γ相の長辺の長さが50μm以下であり、μ相の長辺の長さが25μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする。
本発明の第2の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1の態様の快削性銅合金鋳物において、さらに、0.02mass%以上0.08mass%以下のSb、0.02mass%以上0.08mass%以下のAs、0.02mass%以上0.30mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有することを特徴とする。
本発明の第3態様である快削性銅合金鋳物は、75.5mass%以上77.8mass%以下のCuと、3.1mass%以上3.4mass%以下のSiと、0.10mass%以上、0.27mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.13mass%以下のPと、0.024mass%以上0.15mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
76.6≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦79.6、
61.4≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.6、
の関係を有するとともに、
金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
30≦(κ)≦56、
0≦(γ)≦1.2、
(β)=0、
0≦(μ)≦1.0、
98.0≦f3=(α)+(κ)、
99.5≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
0≦f5=(γ)+(μ)≦1.5、
32≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦58、
の関係を有するとともに、
γ相の長辺の長さが40μm以下であり、μ相の長辺の長さが15μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする。
本発明の第4の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第3の態様の快削性銅合金鋳物において、さらに、0.02mass%超え0.07mass%以下のSb、0.02mass%超え0.07mass%以下のAs、0.02mass%以上0.20mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有することを特徴とする。
本発明の第5の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜4の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、前記不可避不純物であるFe,Mn,Co,及びCrの合計量は、0.08mass%未満であることを特徴とする。
本発明の第6の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜5の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、κ相に含有されるSnの量が0.08mass%以上0.40mass%以下であり、κ相に含有されるPの量が0.07mass%以上0.22mass%以下であることを特徴とする。
本発明の第7の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜6の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、シャルピー衝撃試験値が23J/cm以上60J/cm以下であり、かつ、室温での0.2%耐力に相当する荷重を負荷した状態で150℃で100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であることを特徴とする。
なお、シャルピー衝撃試験値は、Uノッチ形状の試験片での値である。
本発明の第8の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜7の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、凝固温度範囲が40℃以下であることを特徴とする。
本発明の第9の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜8の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、水道用器具、工業用配管部材、液体と接触する器具、自動車用部品、又は電気製品部品に用いられることを特徴とする。
本発明の第10の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第1〜9の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
溶解、鋳造工程を有し、
前記鋳造後の冷却において、575℃から510℃の温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、次いで470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする。
本発明の第11の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第1〜9の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
溶解、鋳造工程と、前記溶解、鋳造工程の後に実施する熱処理工程と、を有し、
前記溶解、鋳造の工程では、鋳物を380℃未満又は常温まで冷却し、
前記熱処理の工程では、(i)前記鋳物を、510℃以上575℃以下の温度で、20分から8時間保持するか、又は(ii)最高到達温度が620℃から550℃の条件で前記鋳物を加熱し、かつ575℃から510℃までの温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、
次いで、470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする。
本発明の第12の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第11の態様の快削性銅合金鋳物の製造方法において、前記熱処理の工程では、前記(i)の条件で前記鋳物を加熱し、かつ熱処理温度及び熱処理時間は、下記の関係式を満たすことを特徴とする。
800≦f7=(T−500)×t
Tは、熱処理温度(℃)であり、Tが540℃以上の場合はT=540とし、tは、510℃以上575℃以下の温度範囲の熱処理時間(分)である。
本発明の態様によれば、被削性機能に優れるが耐食性、衝撃特性、高温強度に劣るγ相を極力少なくし、かつ、γ相と同様に被削性に有効であるが耐食性、衝撃特性、高温強度に劣るμ相も限りなく少なくして、金属組織を規定している。更に、この金属組織を得るための組成、製造方法を規定している。このため、本発明の態様により、厳しい環境下での耐食性、衝撃特性、高温強度に優れた快削性銅合金鋳物、及び、快削性銅合金鋳物の製造方法を提供することができる。
実施例1における快削性銅合金鋳物(試験No.T04)の組織の電子顕微鏡写真である。 実施例1における快削性銅合金鋳物(試験No.T32)の組織の金属顕微鏡写真である。 実施例1における快削性銅合金鋳物(試験No.T32)の組織の電子顕微鏡写真である。 鋳造性試験において、鋳物から切断された縦断面を示す模式図である。 (a)は、実施例2における試験No.T401の8年間過酷な水環境下で使用された後の断面の金属顕微鏡写真であり、(b)は、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1の後の断面の金属顕微鏡写真であり、(c)は、試験No.T03の脱亜鉛腐食試験1の後の断面の金属顕微鏡写真である。
以下に、本発明の実施形態に係る快削性銅合金鋳物及び快削性銅合金鋳物の製造方法について説明する。
本実施形態である快削性銅合金鋳物は、給水栓、バルブ、継手などの人や動物が毎日摂取する飲料水に使用される器具、バルブ、継手などの電気・自動車・機械・工業用配管部材、液体と接触する器具、部品として用いられるものである。
ここで、本明細書では、[Zn]のように括弧の付いた元素記号は当該元素の含有量(mass%)を示すものとする。
そして、本実施形態では、この含有量の表示方法を用いて、以下のように、複数の組成関係式を規定している。
組成関係式f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]
組成関係式f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]
さらに、本実施形態では、金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%で示すものとする。なお、金属組織の構成相は、α相、γ相、κ相などを指し、金属間化合物や、析出物、非金属介在物などは含まれない。また、α相内に存在するκ相は、α相の面積率に含める。すべての構成相の面積率の和は、100%とする。
そして、本実施形態では、以下のように、複数の組織関係式を規定している。
組織関係式f3=(α)+(κ)
組織関係式f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)
組織関係式f5=(γ)+(μ)
組織関係式f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)
本発明の第1の実施形態に係る快削性銅合金鋳物は、75.0mass%以上78.5mass%以下のCuと、2.95mass%以上3.55mass%以下のSiと、0.07mass%以上0.28mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.14mass%以下のPと、0.022mass%以上0.20mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなる。組成関係式f1が76.2≦f1≦80.3の範囲内とされ、組成関係式f2が61.2≦f2≦62.8の範囲内とされる。κ相の面積率が25≦(κ)≦65の範囲内とされ、γ相の面積率が0≦(γ)≦2.0の範囲内とされ、β相の面積率が0≦(β)≦0.3の範囲内とされ、μ相の面積率が0≦(μ)≦2.0の範囲内とされる。組織関係式f3が96.5≦f3の範囲内とされ、組織関係式f4が99.2≦f4の範囲内とされ、組織関係式f5が0≦f5≦3.0の範囲内とされ、組織関係式f6が29≦f6≦66の範囲内とされる。γ相の長辺の長さが50μm以下であり、μ相の長辺の長さが25μm以下であり、α相内にκ相が存在している。
本発明の第2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物は、75.5mass%以上77.8mass%以下のCuと、3.1mass%以上3.4mass%以下のSiと、0.10mass%以上、0.27mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.13mass%以下のPと、0.024mass%以上0.15mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなる。組成関係式f1が76.6≦f1≦79.6の範囲内、組成関係式f2が61.4≦f2≦62.6の範囲内とされる。κ相の面積率が30≦(κ)≦56の範囲内とされ、γ相の面積率が0≦(γ)≦1.2の範囲内とされ、β相の面積率が0、μ相の面積率が0≦(μ)≦1.0の範囲内とされる。組織関係式f3が98.0≦f3の範囲内とされ、組織関係式f4が99.5≦f4の範囲内とされ、組織関係式f5が0≦f5≦1.5の範囲内とされ、組織関係式f6が32≦f6≦58の範囲内とされる。γ相の長辺の長さが40μm以下であり、μ相の長辺の長さが15μm以下であり、α相内にκ相が存在している。
本発明の第1の実施形態である快削性銅合金鋳物においては、さらに、0.02mass%以上0.08mass%以下のSb、0.02mass%以上0.08mass%以下のAs、0.02mass%以上0.30mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有してもよい。
本発明の第2の実施形態である快削性銅合金鋳物においては、さらに、0.02mass%超え0.07mass%以下のSb、0.02mass%超え0.07mass%以下のAs、0.02mass%以上0.20mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有してもよい。
本発明の第1、2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物においては、κ相に含有されるSnの量が0.08mass%以上0.40mass%以下であり、κ相に含有されるPの量が0.07mass%以上0.22mass%以下であることが好ましい。
本発明の第1、2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物においては、シャルピー衝撃試験値が23J/cm以上60J/cm以下であり、かつ、室温での0.2%耐力(0.2%耐力に相当する荷重)を負荷した状態で銅合金鋳物を150℃で100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であることが好ましい。
本発明の第1、2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物においては、凝固温度範囲が40℃以下であることが好ましい。
以下に、成分組成、組成関係式f1,f2、金属組織、組織関係式f3,f4,f5,f6、機械的特性を、上述のように規定した理由について説明する。
<成分組成>
(Cu)
Cuは、本実施形態の合金鋳物の主要元素であり、本発明の課題を克服するためには、少なくとも75.0mass%以上の量のCuを含有する必要がある。Cu含有量が、75.0mass%未満の場合、Si,Zn,Snの含有量や、製造プロセスにもよるが、γ相の占める割合が2.0%を超え、耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性、衝撃特性、延性、常温の強度、および高温強度(高温クリープ)が劣り、凝固温度範囲が広がり鋳造性が悪くなる。場合によっては、β相が出現することもある。よって、Cu含有量の下限は、75.0mass%以上であり、好ましくは75.5mass%以上、より好ましくは75.8mass%以上である。
一方、Cu含有量が78.5%超えの場合には、高価な銅を多量に使うのでコストアップになる。さらには耐食性、常温の強度、および高温強度への効果が飽和する。また凝固温度範囲が広がり鋳造性が悪くなるばかりか、κ相の占める割合が多くなりすぎ、Cu濃度の高いμ相、場合によってはζ相、χ相が析出し易くなる。その結果、金属組織の要件にもよるが、被削性、衝撃特性、鋳造性が悪くなるおそれがある。従って、Cu含有量の上限は、78.5mass%以下であり、好ましくは77.8mass%以下であり、より好ましくは77.5mass%以下である。
(Si)
Siは、本実施形態の合金鋳物の多くの優れた特性を得るために必要な元素である。Siは、κ相、γ相、μ相などの金属相の形成に寄与する。Siは、本実施形態の合金鋳物の被削性、耐食性、耐応力腐食割れ性、強度、高温強度、耐摩耗性を向上させる。被削性に関しては、Siを含有してもα相の被削性の改善は、ほとんどない。しかし、Siの含有によって形成されるγ相、κ相、μ相などのα相より硬質な相によって、多量のPbを含有しなくとも、優れた被削性を有することができる。しかしながら、γ相やμ相などの金属相の占める割合が多くなるに従って、延性や衝撃特性の低下の問題、厳しい環境下での耐食性の低下の問題、及び長期間使用に耐えうる高温クリープ特性に問題を生じる。このため、κ相、γ相、μ相、β相を適正な範囲に規定する必要がある。
また、Siは、溶解、鋳造時、Znの蒸発を大幅に抑制する効果があり、湯流れ性を良くする。またCuなどとの元素との関係もあるが、Si量を適正な範囲にすれば、凝固温度範囲を狭くすることができ、鋳造性が良くなる。またSi含有量を増すに従って比重を小さくできる。
これらの金属組織の問題を解決し、諸特性をすべて満たすためには、Cu,Zn,Sn等の含有量にもよるが、Siは2.95mass%以上含有する必要がある。Si含有量の下限は、好ましくは3.05mass%以上であり、より好ましくは3.1mass%以上、さらに好ましくは3.15mass%以上である。一見、Si濃度の高いγ相や、μ相の占める割合を少なくするためには、Si含有量を低くすべきであると考えられる。しかし、他の元素との配合割合、および製造プロセスを鋭意研究した結果、上述のようにSi含有量の下限を規定する必要がある。また、他の元素の含有量、組成の関係式や製造プロセスにもよるが、Si含有量が約2.95%を境にして、α相内に、細長い、針状のκ相が存在するようになり、Si含有量が約3.05%、または約3.1%を境にして、針状のκ相の量が増大する。α相内に存在するκ相により、延性を損なわずに被削性、衝撃特性、耐摩耗性が向上する。以下、α相内に存在するκ相をκ1相とも呼ぶ。
一方、Si含有量が多すぎると、本実施形態は延性や衝撃特性を重視しているので、α相より硬質のκ相が過剰に多くなると問題である。このため、Si含有量の上限は3.55mass%以下であり、好ましくは3.45mass%以下であり、より好ましくは3.4mass%以下、さらに好ましくは3.35mass%以下である。Si含有量がこれらの範囲に設定されると、凝固温度範囲を狭くすることができ、鋳造性が良くなる。
(Zn)
Znは、Cu,Siとともに本実施形態の合金鋳物の主要構成元素であり、被削性、耐食性、鋳造性、耐摩耗性を高めるために必要な元素である。なお、Znは残部としているが、強いて記載すれば、Zn含有量の上限は約21.7mass%以下であり、下限は、約17.5mass%以上である。
(Sn)
Snは、特に厳しい環境下での耐脱亜鉛腐食性を大幅に向上させ、耐応力腐食割れ性、被削性、耐摩耗性を向上させる。複数の金属相(構成相)からなる銅合金鋳物では、各金属相の耐食性には優劣があり、最終的にα相とκ相の2相となっても、耐食性に劣る相から腐食が開始し、腐食が進行する。Snは、最も耐食性に優れるα相の耐食性を高めると同時に、2番目に耐食性に優れるκ相の耐食性も同時に改善する。Snは、α相に配分される量よりもκ相に配分される量が約1.4倍ある。すなわち、κ相に配分されるSn量は、α相に配分されるSn量の約1.4倍である。Sn量が多い分、κ相の耐食性はより向上する。Snの含有量の増加により、α相とκ相の耐食性の優劣はほとんどなくなるか、あるいは、少なくともα相とκ相の耐食性の差が小さくなり、合金としての耐食性は、大きく向上する。
しかしながら、Snの含有は、γ相の形成を促進する。Sn自身は優れた被削性機能を持たないが、優れた被削性能を持つγ相を形成することによって、結果として合金の被削性が向上する。一方で、γ相は、合金の耐食性、延性、衝撃特性、高温強度を悪くする。Snは、α相に比して約10倍から約17倍、γ相に配分される。すなわち、γ相に配分されるSn量は、α相に配分されるSn量の約10倍から約17倍である。Snを含むγ相は、Snを含まないγ相に比べ、耐食性は少し改善される程度で、不十分である。このように、Cu−Zn−Si合金へのSnの含有は、κ相、α相の耐食性を高めるにも関わらず、γ相の形成を促進する。また、Snはγ相に多く配分される。このため、Cu、Si、P、Pbの必須元素をより適正な配合比率とし、かつ、製造プロセスを含め適正な金属組織の状態にしなければ、Snの含有は、κ相、α相の耐食性を僅かに高めるに留まる。却ってγ相の増大により、合金の耐食性、延性、衝撃特性、高温特性の低下を招く。また、κ相がSnを含有することは、κ相の被削性を向上させる。その効果は、Pと共にSnを含有することによってさらに増す。
また、Cuに比べ、融点が約850℃低い低融点の金属であるSnを含有することは、合金の凝固温度範囲を広げる。すなわち、凝固終了間近で、Snに富んだ残液が存在するため、固相線温度が下がり、凝固温度範囲が広がると信じられている。しかし、Cu、Siとの関係により、凝固温度範囲は広がらず、Snを含有しない場合と同じか、寧ろ僅かに狭くなり、却って本実施形態の範囲の量で含有させるSnにより、鋳造欠陥の少ない鋳物を得ることができる。ただし、Snは低融点金属であるので、Snに富んだ残液が、β相或いはγ相へと変化し、α相とκ相の相境界、或いは、樹枝状晶の隙間に、Sn濃度の高いγ相が長く連なる傾向にある。
後述する関係式、製造プロセスを含めた金属組織の制御により、諸特性に優れた銅合金を作り上げることが可能となる。このような効果を発揮させるためには、Snの含有量の下限を0.07mass%以上とする必要があり、好ましくは0.10mass%以上、より好ましくは0.12mass%以上である。
一方、Snを0.28mass%超えて含有すると、γ相の占める割合が多くなる。その対策として、Cu濃度を増やし、金属組織的にκ相を増やす必要があるので、より良好な衝撃特性が得られなくなる恐れがある。Sn含有量の上限は、0.28mass%以下であり、好ましくは0.27mass%以下、より好ましくは0.25mass%以下である。
(Pb)
Pbの含有は、銅合金の被削性を向上させる。Pbは約0.003mass%がマトリックスに固溶し、それを超えたPbは直径1μm程度のPb粒子として存在する。Pbは、微量であっても被削性に効果があり、特に0.02mass%超えで顕著な効果を発揮し始める。本実施形態の合金では、被削性能に優れるγ相を2.0%以下に抑えているため、少量のPbはγ相の代替をする。
このため、Pbの含有量の下限は、0.022mass%以上であり、好ましくは0.024mass%以上であり、さらに好ましくは0.025mass%以上である。特に、被削性に係る金属組織の関係式f6の値が、32を下回る場合、Pbの含有量は0.024mass%以上であることが好ましい。
一方、Pbは、人体に有害であり、衝撃特性、高温強度への影響がある。このため、Pbの含有量の上限は、0.20mass%以下であり、好ましくは0.15mass%以下であり、最適には0.10mass%以下である。
(P)
Pは、Snと同様に、特に厳しい環境下での耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性を大幅に向上させる。
Pは、Snと同様に、α相に配分される量に対してκ相に配分される量が約2倍である。すなわち、κ相に配分されるP量は、α相に配分されるP量の約2倍である。また、Pは、α相の耐食性を高める効果に関して顕著であるが、Pの単独の添加では、κ相の耐食性を高める効果は小さい。しかし、Pは、Snと共存することにより、κ相の耐食性を向上させることができる。なお、Pは、γ相の耐食性をほとんど改善しない。また、κ相がPを含有することは、κ相の被削性を少し向上させる。SnとPとを共に含有することにより、より効果的に被削性が改善する。
これらの効果を発揮するためには、Pの含有量の下限は、0.06mass%以上であり、好ましくは0.065mass%以上、より好ましくは0.07mass%以上である。
一方、Pを0.14mass%超えて含有させても、耐食性の効果が飽和するだけでなく、PとSiの化合物が形成し易くなり、衝撃特性、延性が悪くなり、被削性にも悪い影響をおよぼす。このため、Pの含有量の上限は、0.14mass%以下であり、好ましくは0.13mass%以下であり、より好ましくは0.12mass%以下である。
(Sb、As、Bi)
Sb、Asは、ともにP、Snと同様に、特に厳しい環境下での耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性を更に向上させる。
Sbを含有することによって耐食性の向上を図るためには、Sbは0.02mass%以上含有する必要がある。Sbの含有量は、好ましくは0.02mass%超えであり、より好ましくは0.03mass%以上である。一方、Sbを0.08mass%超えて含有しても、耐食性が向上する効果は飽和し、却ってγ相が増えるので、Sbの含有量は、0.08mass%以下であり、好ましくは0.07mass%以下である。
また、Asを含有することによって耐食性の向上を図るためには、Asは0.02mass%以上含有する必要がある。Asの含有量は、好ましくは0.02mass%超えであり、より好ましくは0.03mass%以上である。一方、Asを0.08mass%超えて含有しても、耐食性が向上する効果は飽和するので、Asの含有量は、0.08mass%以下であり、好ましくは0.07mass%以下である。
Sbを単独で含有することにより、α相の耐食性を向上させる。Sbは、Snより融点は高いものの低融点金属であり、Snと類似の挙動を示し、α相に比べて、γ相、κ相に多く配分される。Sbは、Snと共に添加することでκ相の耐食性を改善する効果を有する。しかしながら、Sbを単独で含有する場合も、SnとPと共にSbを含有する場合も、γ相の耐食性を改善する効果は小さい。むしろ、過剰量のSbを含有することは、γ相を増加させる恐れがある。
Sn、P、Sb、Asの中で、Asは、α相の耐食性を強化する。κ相が腐食されても、α相の耐食性が高められているので、Asは、連鎖反応的に起こるα相の腐食を食い止める働きをする。しかしながら、Asを単独で含有する場合も、Sn、P、Sbと共にAsを含有する場合も、κ相、γ相の耐食性を向上させる効果は小さい。
なお、Sb、Asを共に含有する場合、Sb、Asの合計含有量が0.10mass%を超えても、耐食性が向上する効果は飽和し、延性、衝撃特性が低下する。このため、Sb、Asの合計量を0.10mass%以下とすることが好ましい。なお、Sbは、Snと類似のκ相の耐食性を改善する効果を有する。このため、[Sn]+0.7×[Sb]の量が、0.12mass%を超えると、合金としての耐食性は、さらに向上する。
Biは、さらに銅合金の被削性を向上させる。そのためには、Biを0.02mass%以上含有する必要があり、0.025mass%以上のBiを含有することが好ましい。一方、Biの人体への有害性は不確かであるが、衝撃特性、高温強度への影響から、Biの含有量の上限を、0.30mass%以下とし、好ましくは0.20mass%以下、より好ましくは0.10mass%以下とする。
(不可避不純物)
本実施形態における不可避不純物としては、例えばAl,Ni,Mg,Se,Te,Fe,Co,Ca,Zr,Cr,Ti,In,W,Mo,B,Ag及び希土類元素等が挙げられる。
従来から快削性銅合金は、電気銅、電気亜鉛など、良質な原料が主ではなく、リサイクルされる銅合金が主原料となる。当該分野の下工程(下流工程、加工工程)において、ほとんどの部材、部品に対して切削加工が施され、材料100に対して40〜80の割合で多量に廃棄される銅合金が発生する。例えば切り屑、端材、バリ、湯道、および製造上の不良を含む製品などが挙げられる。これら廃棄される銅合金が、主たる原料となる。切削切り屑等の分別が不十分であると、他の快削性銅合金からPb,Fe,Se,Te,Sn,P,Sb,As,Ca,Al,Zr,Niおよび希土類元素が混入する。また切削切り屑には、工具から混入するFe,W,Co,Moなどが含まれる。廃材は、めっきされた製品を含むため、Ni,Crが混入する。純銅系のスクラップの中には、Mg,Fe,Cr,Ti,Co,In,Niが混入する。資源の再使用の点と、コスト上の問題から、少なくとも特性に悪影響を与えない範囲で、これらの元素を含む切り屑等のスクラップは、ある限度まで原料として使用される。経験的に、Niはスクラップ等からの混入が多いが、Niの量は0.06mass%未満まで許容されるが、0.05mass%未満が好ましい。Fe,Mn,Co,Cr等は、Siと金属間化合物を形成し、場合によってはPと金属間化合物を形成し、被削性に影響する。このため、Fe,Mn,Co,Crのそれぞれの量は、0.05mass%未満が好ましく、0.04mass%未満がより好ましい。Fe,Mn,Co,Crの含有量の合計も0.08mass%未満とすることが好ましく、この合計量は、より好ましくは0.07mass%未満であり、更に好ましくは0.06mass%未満である。その他の元素であるAl,Mg,Se,Te,Ca,Zr,Ti,In,W,Mo,B,および希土類元素等のそれぞれの量は、0.02mass%未満が好ましく、0.01mass%未満がさらに好ましい。
なお、希土類元素の量は、Sc,Y,La、Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Tb,及びLuの1種以上の合計量である。
Agは、概ねCuとみなせるので、ある程度の量が許容され、Agの量は0.05mass%未満が好ましい。
(組成関係式f1)
組成関係式f1は、組成と金属組織の関係を表す式で、各々の元素の量が上記に規定される範囲にあっても、この組成関係式f1を満足しなければ、本実施形態が目標とする諸特性を満足できない。組成関係式f1において、Snには−8.5の大きな係数が与えられている。組成関係式f1が76.2未満であると、製造プロセスを如何に工夫したとしても、γ相の占める割合が多くなり、またγ相の長辺が長くなり、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなる。よって、組成関係式f1の下限は、76.2以上であり、好ましくは76.4以上であり、より好ましくは76.6以上であり、さらに好ましくは76.8以上である。組成関係式f1がより好ましい範囲になるにしたがって、γ相の面積率は小さくなり、γ相が存在しても、γ相は分断される傾向にあり、より耐食性、衝撃特性、延性、高温特性が向上する。組成関係式f1の値が、76.6以上になると、製造プロセスとの兼ね合わせにより、α相内に、より明瞭に、細長い、針状のκ相が存在するようになり、延性を損なわずに被削性、耐摩耗性、衝撃特性が向上する。
一方、組成関係式f1の上限は、主としてκ相の占める割合に影響し、組成関係式f1が80.3より大きいと、延性や衝撃特性を重視した場合、κ相の占める割合が多くなりすぎる。またμ相が析出し易くなる。κ相やμ相が多すぎると、衝撃特性、延性、高温特性、耐食性が悪くなり、場合によっては耐摩耗性が悪くなる。よって、組成関係式f1の上限は80.3以下であり、好ましくは79.6以下であり、より好ましくは79.3以下である。
このように、組成関係式f1を、上述の範囲に規定することで、特性の優れた銅合金が得られる。なお、選択元素であるAs,Sb,Biおよび別途規定した不可避不純物については、それらの含有量を考え合わせ、組成関係式f1にほとんど影響を与えないことから、組成関係式f1では規定していない。
(組成関係式f2)
組成関係式f2は、組成と加工性、諸特性、金属組織の関係を表す式である。組成関係式f2が61.2未満であると、金属組織中のγ相の占める割合が増え、β相を始め他の金属相が出現し易く、また残留し易くなり、耐食性、衝撃特性、冷間加工性、高温クリープ特性が悪くなる。よって、組成関係式f2の下限は、61.2以上であり、好ましくは61.4以上であり、より好ましくは61.6以上であり、さらに好ましくは61.8以上である。
一方、組成関係式f2が62.8を超えると、長さが300μmを超え、幅100μmを超える粗大なα相や、粗大な樹枝状晶が出現し易くなり、粗大なα相とκ相の境界や樹枝状晶の隙間に存在するγ相の長辺の長さが長くなり、またα相中に形成される針状の細長いκ相が少なくなる。粗大なα相の存在は、被削性を低下させ、強度、耐摩耗性を低くする。α相中に形成される針状の細長いκ相の量が少なくなると、耐摩耗性、被削性の向上の度合いが小さくなる。γ相の長辺の長さが長くなると、耐食性が悪くなる。また、凝固温度範囲、すなわち(液相線温度−固相線温度)が40℃を超えるようになり、鋳造時におけるひけ巣(shrinkage cavities)および鋳造欠陥が顕著に現れ、健全な鋳物(sound casting)が得られなくなる。組成関係式f2の上限は62.8以下であり、好ましくは62.6以下であり、より好ましくは62.4以下である。
このように、組成関係式f2を、上述の如き、狭い範囲に規定することで、特性の優れた銅合金鋳物を、健全な鋳物を歩留りよく製造できる。なお、選択元素であるAs,Sb,Biおよび別途規定した不可避不純物については、それらの含有量を考え合わせ、組成関係式f2にほとんど影響を与えないことから、組成関係式f2では規定していない。
(特許文献との比較)
ここで、上述した特許文献3〜9に記載されたCu−Zn−Si合金と本実施形態の合金鋳物との組成を比較した結果を表1に示す。
本実施形態と特許文献3とはPb及び選択元素であるSnの含有量が異なっている。本実施形態と特許文献4とは選択元素であるSnの含有量が異なっている。本実施形態と特許文献5とはPbの含有量が異なっている。本実施形態と特許文献6,7とはZrを含有するか否かで異なっている。本実施形態と特許文献8とは、Feを含有しているか否かで相違している。本実施形態と特許文献9とはPbを含有するか否かで異なっており、Fe,Ni,Mnを含有するか否かの点でも相違している。
以上のように、本実施形態の合金鋳物は、特許文献3〜9に記載されたCu−Zn−Si合金とは組成範囲が異なっている。
<金属組織>
Cu−Zn−Si合金は、10種類以上の相が存在し、複雑な相変化が起こり、組成範囲、元素の関係式だけでは、目的とする特性が必ずしも得られない。最終的には金属組織に存在する金属相の種類とその範囲を特定し、決定することによって、目的とする特性を得ることができる。
複数の金属相から構成されるCu−Zn−Si合金の場合、各々の相の耐食性は同じではなく、優劣がある。腐食は、最も耐食性の劣る相、すなわち最も腐食しやすい相、或は、耐食性の劣る相とその相に隣接する相との境界から始まって進行する。Cu,Zn,Siの3元素からなるCu−Zn−Si合金の場合、例えば、α相、α’相、β(β’を含む)相、κ相、γ(γ’を含む)相、μ相の耐食性を比較すると、耐食性の序列は、優れる相から順にα相>α’相>κ相>μ相≧γ相>β相である。κ相とμ相の間の耐食性の差が特に大きい。
ここで各相の組成は、合金の組成及び各相の占有面積率によって数値が変動するが、以下のことが言える。
各相のSi濃度は、濃度の高い順から、μ相>γ相>κ相>α相>α’相≧β相、である。μ相、γ相及びκ相におけるSi濃度は、合金のSi濃度よりも高い。また、μ相のSi濃度は、α相のSi濃度の約2.5〜約3倍であり、γ相のSi濃度は、α相のSi濃度の約2〜約2.5倍である。
各相のCu濃度は、濃度の高い順から、μ相>κ相≧α相>α’相≧γ相>β相、である。μ相におけるCu濃度は、合金のCu濃度よりも高い。
特許文献3〜6に示されるCu−Zn−Si合金において、被削性機能が最も優れるγ相は、主としてα’相と共存、或は、κ相、α相との境界に存在する。γ相は、銅合金にとって厳しい水質下或は環境下では、選択的に腐食の発生源(腐食の起点)になり、腐食が進行する。勿論、β相が存在すれば、γ相の腐食より先にβ相の腐食が始まる。μ相とγ相が共存する場合、μ相の腐食は、γ相より少し遅れるか、または、ほぼ同時に始まる。例えばα相、κ相、γ相、μ相が共存する場合、γ相やμ相が、選択的に脱亜鉛腐食されると、腐食されたγ相やμ相は、脱亜鉛現象によりCuに富んだ腐食生成物となり、その腐食生成物がκ相、或いは近接するα相またはα’相を腐食させ、連鎖反応的に腐食が進行する。
なお、日本を始め全世界における飲料水の水質は様々であり、かつ、その水質が銅合金にとって腐食しやすい水質となってきている。例えば人体への安全性の問題から、上限はあるものの消毒目的で使用される残留塩素の濃度が高くなり、水道用器具である銅合金が腐食しやすい環境になってきている。前記の自動車部品、機械部品、工業用配管も含めた部材の使用環境のように多くの溶液の介在する使用環境での耐食性についても、飲料水と同様のことが言える。
他方、γ相、もしくはγ相、μ相、β相の量を制御し、すなわちこれら各相の存在割合を大幅に減少させるか、或は皆無にさせても、α相、κ相の2相で構成されるCu−Zn−Si合金の耐食性は万全ではない。腐食環境によっては、α相より耐食性の劣るκ相が、選択的に腐食されることがあり、κ相の耐食性の向上を図る必要がある。さらには、κ相が腐食されると、腐食されたκ相は、Cuに富んだ腐食生成物となり、α相を腐食させるので、α相の耐食性の向上も図る必要がある。
また、γ相は、硬くて脆い相のため、銅合金部材に大きな負荷が加わったとき、ミクロ的に応力集中源となる。このため、γ相は、応力腐食割れ感受性を増し、衝撃特性を低下させ、更には、高温クリープ現象により、高温強度(高温クリープ強度)を低下させる。μ相は、α相の結晶粒界、α相、κ相の相境界に主として存在するため、γ相と同様、ミクロ的な応力集中源になる。応力集中源となるか或は粒界滑り現象により、μ相は、応力腐食割れ感受性を増大させ、衝撃特性を低下させ、高温強度を低下させる。場合によっては、μ相の存在は、γ相以上にこれら諸特性を悪化させる。
しかしながら、耐食性や前記諸特性を改善するために、γ相、もしくはγ相とμ相の存在割合を大幅に減少させるか、或は皆無にすると、少量のPbの含有とα相、α’相、κ相の3相だけでは、満足な被削性が得られない可能性がある。そこで、少量のPbを含有し、かつ優れた被削性を有することが前提で、厳しい使用環境での耐食性、および延性、衝撃特性、強度、高温強度を改善するために、金属組織の構成相(金属相、結晶相)を以下のように規定する必要がある。
なお、以下、各相の占める割合(存在割合)の単位は、面積率(面積%)である。
(γ相)
γ相は、Cu−Zn−Si合金の被削性に最も貢献する相であるが、厳しい環境下での耐食性、強度、高温特性、衝撃特性を優れたものにするためには、γ相を制限しなければならない。耐食性を優れたものにするためには、Snの含有を必要とするが、Snの含有は、γ相をさらに増加させる。これら相反する現象、すなわち被削性と耐食性を同時に満足させるために、Sn、Pの含有量、組成関係式f1、f2、後述する組織関係式、製造プロセスを限定している。
(β相およびその他の相)
良好な耐食性を得て、高い延性、衝撃特性、強度、高温強度を得るには、特に金属組織中に占めるβ相、γ相、μ相、およびζ相などその他の相の割合が重要である。
β相の占める割合は、少なくとも0%以上0.3%以下とする必要があり、0.1%以下であることが好ましく、最適にはβ相が存在しないことが好ましい。特に、鋳物の場合、融液からの凝固であるので、β相を始め他の相が生成しやすく、また残存し易い。
α相、κ相、β相、γ相、μ相以外のζ相などその他の相の占める割合は、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。最適にはζ相等のその他の相が存在しないことが好ましい。
まず、優れた耐食性を得るためには、γ相の占める割合を0%以上2.0%以下、且つ、γ相の長辺の長さを50μm以下とする必要がある。
γ相の長辺の長さは、以下の方法により測定される。例えば500倍または1000倍の金属顕微鏡写真を用い、1視野において、γ相の長辺の最大長さを測定する。この作業を、後述するように、例えば5視野などの複数の任意の視野において行う。それぞれの視野で得られたγ相の長辺の最大長さの平均値を算出し、γ相の長辺の長さとする。このため、γ相の長辺の長さは、γ相の長辺の最大長さと言うこともできる。
ここで、γ相の占める割合は、1.2%以下であることが好ましく、0.8%以下とすることがさらに好ましく、0.5%以下が最適である。Pbの含有量や、κ相の占める割合にもよるが、例えば、Pbの含有量が、0.03mass%以下、またはκ相の占める割合が33%以下の場合、γ相が、0.05%以上、0.5%未満の量で存在するほうが、耐食性などの諸特性への影響が小さく、被削性を向上させることができる。
γ相の長辺の長さは耐食性、高温特性、衝撃特性に影響することから、γ相の長辺の長さは、50μm以下であり、好ましくは40μm以下であり、最適には30μm以下である。
γ相の量が多いほど、γ相が選択的に腐食されやすくなる。また、γ相が長く連なるほど、その分、選択的に腐食されやすくなり、深さ方向への腐食の進行を速める。また、腐食される部分が多いほど、腐食されたγ相の周りに存在するα相やα’相、或はκ相の耐食性に影響を与える。また、γ相は、相境界、樹枝状晶の隙間や結晶粒界に存在することが多く、γ相の長辺の長さが長いと、高温特性や衝撃特性に影響を与える。特に鋳物の鋳造工程では、融液から固体への連続的な変化が生じる。このため、鋳物には、相境界、樹枝状晶の隙間を中心にγ相が長く存在し、熱間加工材に比べ、α相の結晶粒の大きさが大きく、α相とκ相の境界により存在しやすい。
γ相の占める割合、及び、γ相の長辺の長さは、Cu,Sn,Siの含有量および、組成関係式f1、f2と大きな関連を持っている。
γ相が多くなると、延性、衝撃特性、高温強度、耐応力腐食割れ性が悪くなるので、γ相は、2.0%以下であることが必要であり、好ましくは1.2%以下、より好ましくは0.8%以下、最適には0.5%以下である。金属組織中に存在するγ相は、高い応力が負荷された時、応力集中源になる。またγ相の結晶構造がBCCであることと相まって、高温強度が低くなり、衝撃特性、耐応力腐食割れ性を低下させる。但し、κ相の占める割合が、30%以下の場合、被削性に多少問題があり、耐食性、衝撃特性、延性、高温強度に与える影響の小さい量として、0.1%程度のγ相が存在してもよい。また、0.05%〜1.2%のγ相は、耐摩耗性を向上させる。
(μ相)
μ相は、被削性の向上には効果があるが、耐食性を始め、延性、衝撃特性、高温特性に影響することから、少なくともμ相の占める割合を0%以上2.0%以下にする必要がある。μ相の占める割合は、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、μ相は存在しないことが最適である。μ相は、主として結晶粒界、相境界に存在する。このため、厳しい環境下では、μ相は、μ相が存在する結晶粒界で粒界腐食を生じる。また、衝撃作用を与えると粒界に存在する硬質なμ相を起点としたクラックが生じやすくなる。また、例えば、自動車のエンジン回りに使われるバルブや高温高圧ガスバルブに銅合金鋳物を使用した場合、150℃の高温で長時間保持すると粒界が滑り、クリープが生じ易くなる。同様に、結晶粒界、相境界にμ相が存在すると、衝撃特性が大きく低下する。このため、μ相の量を制限すると同時に、主として結晶粒界に存在するμ相の長辺の長さを25μm以下とする必要がある。μ相の長辺の長さは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下であり、最適には2μm以下である。
μ相の長辺の長さは、γ相の長辺の長さの測定方法と同様の方法で測定される。すなわち、μ相の大きさに応じて、例えば500倍または1000倍の金属顕微鏡写真、或いは2000倍または5000倍の2次電子像写真(電子顕微鏡写真)を用い、1視野において、μ相の長辺の最大長さを測定する。この作業を、例えば5視野などの複数の任意の視野において行う。それぞれの視野で得られたμ相の長辺の最大長さの平均値を算出し、μ相の長辺の長さとする。このため、μ相の長辺の長さは、μ相の長辺の最大長さと言うこともできる。
(κ相)
近年の高速の切削条件のもと、切削抵抗、切屑の排出性を含め材料の被削性能は重要である。ところが、最も優れた被削性機能を有するγ相の占める割合を2.0%以下に制限した状態で、特に優れた被削性を備えるためには、κ相の占める割合を少なくとも25%以上とする必要がある。κ相の占める割合は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは33%以上である。また、κ相の占める割合が、被削性を満足させる最低限の量であると、延性に富み、衝撃特性に優れ、耐食性、高温特性、耐摩耗性は良好となる。
硬質のκ相が増すとともに、被削性が向上し、強度が高くなる。しかし、一方で、κ相が増すにしたがって、延性や衝撃特性は徐々に低下していく。そして、κ相の占める割合がある一定量に達すると、被削性が向上する効果も飽和し、さらにκ相が増えると却って被削性が低下し、耐摩耗性も低下する。延性、衝撃特性、被削性、耐摩耗性を鑑みた場合、κ相の占める割合は65%以下にする必要がある。すなわち、金属組織中に占めるκ相の割合を2/3以下にする必要がある。κ相の占める割合は、好ましくは56%以下であり、より好ましくは52%以下である。
被削性能に優れるγ相の面積率を2.0%以下に制限した状態で優れた被削性を得るためには、κ相とα相そのものの被削性を向上させる必要がある。すなわち、κ相中にSn、Pが含有されると、κ相自身の被削性性能が向上する。さらにα相内に針状のκ相を存在させることにより、α相の被削性、耐摩耗性、強度がさらに向上し、延性を大きく損なわずに、合金の被削性能が向上する。金属組織中に占めるκ相の割合として、約33%〜約52%が、延性、強度、衝撃特性、耐食性、高温特性、被削性、耐摩耗性をすべて備えるために最適である。
(α相中での細長く針状のκ相(κ1相)の存在)
上述した組成、組成関係式、プロセスの要件を満たすと、α相中に、厚みが薄く細長く針状のκ相(κ1相)が存在するようになる。このκ1相は、α相より硬質である。また、α相内のκ相(κ1相)の厚みは約0.1μmから約0.2μm程度(約0.05μm〜約0.5μm)であり、厚みが薄い。
α相中にこのκ1相が存在することにより、以下の効果が得られる。
1)α相が強化され、合金としての強度が向上する。
2)α相自身の被削性が向上し、切削抵抗や切屑分断性などの被削性が向上する。
3)α相内に存在するため、耐食性に悪い影響を及ぼさない。
4)α相が強化され、耐摩耗性が向上する。
α相中に存在する針状のκ相は、Cu、Zn、Siなどの構成元素や関係式に影響される。特にSi量が約2.95%を境にして、α相中に針状のκ相(κ1相)が存在し始める。Si量が約3.1%を境にして、より顕著な量のκ1相がα相中に存在する。組成関係式f2が62.8以下、更には62.6以下の場合、κ1相がより存在し易くなる。
なお、α相内に析出する細長い厚みの薄いκ相(κ1相)は、500倍または1000倍程度の倍率の金属顕微鏡で確認できる。しかし、その面積率を算出するのは困難なため、α相中のκ1相は、α相の面積率に含めるものとする。
(組織関係式f3、f4、f5、f6)
また、優れた耐食性、衝撃特性、高温強度、耐摩耗性を得るためには、α相、κ相の占める割合の合計(組織関係式f3=(α)+(κ))が、96.5%以上である必要がある。f3の値は、好ましくは98.0%以上であり、より好ましくは98.5%以上であり、最適には99.0%以上である。同様にα相、κ相、γ相、μ相の占める割合の合計(組織関係f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ))が、99.2%以上である必要があり、99.5%以上であることが最適である。
さらに、γ相、μ相の占める合計の割合(f5=(γ)+(μ))が0%以上3.0%以下である必要がある。f5の値は、好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下であり、最適には0.5%以下である。但し、κ相の割合が低い場合、被削性に少し問題がある。このため、衝撃特性に余り影響しない程度として、0.1〜0.5%程度のγ相を含有しても差し支えない。
ここで、金属組織の関係式、f3〜f6において、α相、β相、γ相、δ相、ε相、ζ相、η相、κ相、μ相、χ相の10種類の金属相を対象としており、金属間化合物、Pb粒子、酸化物、非金属介在物、未溶解物質などは対象としていない。また、α相に存在する針状のκ相は、α相に含め、金属顕微鏡では観察できないμ相は除外される。なお、Si、P及び不可避的に混入する元素(例えばFe,Co,Mn)によって形成される金属間化合物は、金属相の面積率の適用範囲外である。しかし、これら金属間化合物は被削性に影響を与えるので、不可避不純物を注視しておく必要がある。
(組織関係式f6)
本実施形態の合金鋳物においては、Cu−Zn−Si合金においてPbの含有量を最小限に留めながらも被削性が良好であり、そして特に優れた耐食性、衝撃特性、延性、常温、高温強度の全てを満足させる必要がある。しかしながら、被削性と優れた耐食性、衝撃特性とは、相反する特性である。
金属組織的には、被削性能に最も優れるγ相を多く含む方が、被削性はよいが、耐食性や衝撃特性、その他の特性の点からは、γ相は少なくしなければならない。γ相の占める割合が2.0%以下の場合、実験結果より上述の組織関係式f6の値を適正な範囲とすることが、良好な被削性を得るために必要であることが分かった。
γ相は、被削性能に最も優れるが、特にγ相が少量の場合、すなわちγ相の面積率が2.0%以下の場合、γ相の占める割合((γ)(%))の平方根の値に、κ相の占める割合((κ))に比べ6倍の高い係数が与えられる。良好な被削性能を得るには、組織関係式f6は29以上である必要がある。f6の値は、好ましくは32以上であり、より好ましくは35以上である。組織関係式f6の値が28〜32の場合、優れた被削性能を得るためには、Pbの含有量が0.024mass%以上、若しくは、κ相に含有されるSnの量が0.11mass%以上であることが好ましい。
一方、組織関係式f6が、66を超えると、被削性は却って悪くなり、衝撃特性、延性の悪化が目立つようになる。このため、組織関係式f6は66以下である必要がある。f6の値は、好ましくは58以下であり、より好ましくは55以下である。
(κ相に含有されるSn、Pの量)
κ相の耐食性を向上させるために、合金鋳物中に、Snを0.07mass%以上、0.28mass%以下の量で含有させ、Pを0.06mass%以上、0.14mass%以下の量で含有させることが好ましい。
本実施形態の合金では、Snの含有量が0.07〜0.28mass%であるとき、α相に配分されるSn量を1としたときに、κ相に約1.4、γ相に約10〜約15、μ相には約2〜約3の割合で、Snは配分される。製造プロセスの工夫により、γ相に配分される量をα相に配分される量の約10倍に減少させることもできる。例えば、本実施形態の合金の場合、Snを0.2mass%の量で含有するCu−Zn−Si−Sn合金において、α相の占める割合が50%、κ相の占める割合が49%、γ相の占める割合が1%の場合、α相中のSn濃度は約0.15mass%、κ相中のSn濃度は約0.22mass%、γ相中のSn濃度は約1.5mass%から2.2mass%になる。なお、γ相の面積率が大きいと、γ相に費やされる(消費される)Snの量が多くなり、κ相、α相に配分されるSnの量が少なくなる。したがって、γ相の量を少なくすると、後述するように耐食性、被削性にSnが有効に活用される。
一方、α相に配分されるP量を1としたときに、κ相に約2、γ相に約3、μ相には約4の割合で、Pは配分される。例えば、本実施形態の合金の場合、Pを0.1mass%含有するCu−Zn−Si合金において、α相の占める割合が50%、κ相の占める割合が49%、γ相の占める割合が1%の場合、α相中のP濃度は約0.06mass%、κ相中のP濃度は約0.12mass%、γ相中のP濃度は約0.18mass%になる。
Sn,Pの両者は、α相、κ相の耐食性を向上させるが、κ相に含有されるSn,Pの量が、α相に含有されるSn,Pの量に比べて、それぞれ約1.4倍、約2倍である。すなわち、κ相に含有されるSn量は、α相に含有されるSn量の約1.4倍であり、κ相に含有されるP量は、α相に含有されるP量の約2倍である。このため、κ相の耐食性の向上の度合いが、α相の耐食性の向上の度合いより勝る。その結果、κ相の耐食性は、α相の耐食性に近づく。なお、SnとPを共に添加することにより、特にκ相の耐食性の向上が図れるが、含有量の違いを含め、耐食性への寄与度は、PよりもSnの方が大きい。
Snの含有量が0.07mass%未満の場合、κ相の耐食性、耐脱亜鉛腐食性は、α相の耐食性、耐脱亜鉛腐食性より劣るので、過酷な水質下では、κ相が選択的に腐食されることがある。κ相へのSnの多くの配分は、α相より耐食性に劣るκ相の耐食性を向上させ、Snをある濃度以上に含有したκ相の耐食性を、α相の耐食性に近づけさせる。同時に、κ相へのSnの含有は、κ相の被削性機能を向上させ、耐摩耗性を向上させる。そのためには、κ相中のSn濃度は、好ましくは0.08mass%以上であり、より好ましくは0.11mass%以上であり、さらに好ましくは0.14mass%以上である。
一方、Snは、γ相に多く配分されるが、γ相に多量のSnを含有させても、γ相の結晶構造がBCC構造であることが主たる理由で、γ相の耐食性はほとんど向上しない。それどころか、γ相の占める割合が多いと、κ相に配分されるSnの量が少なくなるため、κ相の耐食性が向上する度合いは小さくなる。γ相の割合を減少させると、κ相に配分されるSnの量が増す。κ相中にSnが多く配分されると、κ相の耐食性、被削性能が向上し、γ相の被削性の喪失分を補うことができる。κ相にSnが所定量以上に含有された結果、κ相自身の被削性の機能、切り屑の分断性能が高められたと思われる。但し、κ相中のSn濃度が0.40mass%を超えると、合金の被削性は向上するが、κ相の靭性が損なわれ始める。靭性をより重視すれば、κ相中のSn濃度の上限は、0.40mass%以下であり、0.36mass%以下であることが好ましい。
一方、Snの含有量を増やしていくと、他の元素、Cu、Siとの関係などから、γ相の量を減少させることが困難になってくる。γ相の占める割合を、2.0%以下、または1.2%以下、更には0.8%以下にするためには、合金鋳物中のSnの含有量を、0.28mass%以下にする必要があり、Snの含有量を0.27mass%以下にすることが好ましい。
Pは、Snと同様に、κ相に多く配分されると、耐食性が向上するとともにκ相の被削性の向上に寄与する。ただし、過剰な量でPを含有する場合、Pは、Siの金属間化合物の形成に費やされ、特性を悪くする。或は、過剰なPの固溶は、衝撃特性や延性を損なう。κ相中のP濃度の下限値は、好ましくは0.07mass%以上であり、より好ましくは0.08mass%以上である。κ相中のP濃度の上限値は、好ましくは0.22mass%以下であり、より好ましくは0.20mass%以下であり、さらに好ましくは0.16mass%以下である。
<特性>
(常温強度及び高温強度)
飲料水のバルブ、器具、自動車をはじめ様々な分野で必要な強度としては、圧力容器に適用される破壊応力である引張強さが重要視されている。また、例えば自動車のエンジンルームに近い環境で使用されるバルブや高温・高圧バルブは、最高150℃の温度環境で使用される。高温強度に関しては、室温の0.2%耐力に相当する応力を負荷した状態で150℃に100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であることが好ましい。このクリープひずみは、より好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。この場合、高温高圧バルブ、自動車のエンジンルームに近いバルブ材等のように高温に晒されても、変形しにくい、高温強度に優れた銅合金鋳物が得られる。
因みに、60mass%のCu、3mass%のPbを含み、残部がZnと不可避不純物からなるPbを含有する快削黄銅の場合、室温の0.2%耐力に相当する応力を負荷した状態で150℃に100時間晒した後のクリープひずみは約4〜5%である。このため、本実施形態の合金鋳物の高温クリープ強度(耐熱性)は、従来のPb含有快削黄銅に比べて高い水準である。
(耐衝撃性)
一般的に、鋳物は、例えば熱間押出棒などの熱間加工を経た材料に比べて、成分偏析があり、結晶粒径も粗大で、ミクロ的な欠陥を多少含んでいる。このため、鋳物は「脆い」、「脆弱」と言われており、強靭性の尺度である衝撃値が高いことが望まれる。さらに、ミクロ欠陥など鋳物特有の問題点から、安全係数を高く取ることが必要となる。一方で、切削において切り屑の分断性に優れる材料は、ある種の脆さが必要と言われている。衝撃特性と、被削性や強度とは、ある面において相反する特性である。
バルブ、継手などの飲料水器具、自動車部品、機械部品、工業用配管等の様々な部材に使用される場合、鋳物は、耐食性や耐摩耗性に優れ、または高強度であるだけでなく、衝撃に耐える強靭な材料であることが必要である。前記の如く鋳物の場合、信頼性を考慮にいれると、熱間加工材より高い水準の衝撃特性が望まれる。具体的には、Uノッチ試験片でシャルピー衝撃試験を行ったとき、シャルピー衝撃試験値は、好ましくは23J/cm以上であり、より好ましくは27J/cm以上であり、さらに好ましくは30J/cm以上である。一方で、直径が約20mm以下の熱間押出−抽伸された細棒は、直進性が高く精密加工されるが、この熱間押出−抽伸された細棒に比べて、鋳物には、最も高度な被削性は求められない。用途を含めてもシャルピー衝撃試験値は、60J/cmを超える必要はない。シャルピー衝撃試験値が60J/cmを超えると、いわゆる材料の粘りが増すため、切削抵抗が高くなり、切り屑が連なりやすくなるなど被削性が悪くなる。被削性を重視する場合、Uノッチ試験片のシャルピー衝撃試験値は、好ましくは60J/cm未満であり、より好ましくは55J/cm未満であり、さらに好ましくは50J/cm未満である。
衝撃特性は、金属組織と密接な関係があり、γ相は衝撃特性を悪化させる。また、α相の結晶粒界、α相、κ相、γ相の相境界にμ相が存在すると、結晶粒界及び相境界が脆弱化し、衝撃特性が悪くなる。
研究の結果、結晶粒界、相境界において、長辺の長さが25μmを超えるμ相が存在すると、衝撃特性が特に悪くなることが分かった。このため、存在するμ相の長辺の長さは、25μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、最適には2μm以下である。また、同時に、結晶粒界に存在するμ相は、厳しい環境下において、α相やκ相に比べて腐食されやすく、粒界腐食を生じ、また高温特性を悪くする。
なお、μ相の場合、その占有割合が小さくなり、μ相の長さが短く、幅が狭くなると、500倍または1000倍程度の倍率の金属顕微鏡では確認が困難になる。μ相の長さが5μm以下の場合、倍率が2000倍または5000倍の電子顕微鏡で観察すると、μ相が結晶粒界、相境界に観察できる場合がある。
(耐摩耗性)
耐摩耗性は、金属同士が接触する場合に必要であり、銅合金の場合、その代表的なものとして軸受の用途が挙げられる。耐摩耗性の良否の判断基準としては、銅合金自身の摩耗量が少ないことが求められる。しかし、それと同時に、或いはそれ以上に、軸、すなわち相手材の代表的な鋼種(素材)であるステンレス鋼を傷つけないことが重要である。
従って、第1に、最も軟らかい相であるα相の強化が効果的である。α相内に存在する針状のκ相を増やすこと、およびα相に多くのSnを配分することによって、α相が強化される。α相の強化は、耐食性、耐摩耗性、被削性などの他の諸特性に良好な結果をもたらしている。κ相は、耐摩耗性に重要な相である。しかし、κ相の割合が多くなるに従って、またκ相に含有されるSnの量が増すに従って、硬さが増し、衝撃値が低くなり、脆さが目立つようになり、場合によっては相手材を傷付ける恐れがある。軟らかなα相と、α相より硬質なκ相の割合が重要であり、κ相の割合が30%〜50%であると、κ相とα相とのバランスの上で良好なものとなる。κ相より硬質なγ相の量はさらに制限され、κ相の量との兼ね合いもあるが、γ相の量が、少量、例えば1.2%以下の量であれば、相手材を傷つけることなく、自身の摩耗量は減少する。
<製造プロセス>
次に、本第1、2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物の製造方法について説明する。
本実施形態の合金鋳物の金属組織は、組成だけでなく製造プロセスによっても変化する。溶解、そして鋳込み後の冷却過程での平均冷却速度が影響する。または、鋳物が、一旦、380℃未満、或いは、常温まで冷却され、次いで適正な温度条件で熱処理を施される場合、この熱処理後の冷却過程での冷却速度が影響する。鋭意研究を行った結果、鋳込み後の冷却過程、または鋳物を熱処理後の冷却過程において、575℃から510℃の温度領域、特に570℃から530℃の温度領域における冷却速度、および470℃から380℃の温度領域における冷却速度に諸特性が大きく影響されることが分かった。
(溶解鋳造)
溶解は、本実施形態の合金の融点(液相線温度)より約100℃〜約300℃高い温度である約950℃〜約1200℃で行われる。鋳込み(鋳造)は、鋳物、湯道の形状や鋳型の種類などによって異なるが、融点より、約50℃〜約200℃高い温度である約900℃〜約1100℃で行われる。融液(溶湯)は、所定の鋳型である砂型、金型、ロストワックスに鋳込まれ、空冷、徐冷、水冷などの幾つかの冷却手段によって冷却される。そして、凝固後は、様々に構成相が変化する。
(鋳込み(鋳造))
鋳込み後の冷却速度は、鋳込まれた銅合金の重量、砂型、金型などの量や材質によって様々である。例えば、一般的には従来の銅合金鋳物が、銅合金や鉄合金で作られた金型に鋳造される場合、凝固後の生産性を考慮し、鋳込み後、約700℃、または約600℃以下の温度で、型から鋳物が外され、空冷される。鋳物の大きさによるが、約10℃〜約60℃/分程度の冷却速度で100℃以下または常温まで冷却される。一方、砂の種類は様々であるが、砂型に鋳込まれた銅合金は、鋳物の大きさや、砂型の材質、大きさによるが、0.2℃〜5℃/分程度の冷却速度で、鋳型内で冷却され、約250℃以下まで冷却される。次いで砂型から鋳物が外され、空冷される。250℃以下の温度は、ハンドリングおよび、銅合金に数%のレベルで含まれるPbやBiが完全に凝固する温度に対応している。両方とも、鋳型内の冷却にしろ、空冷にしろ、例えば、550℃付近の冷却速度は、400℃の時点の冷却速度に比べ、約1.3倍から約2倍であり、早く冷却される。
本実施形態の銅合金鋳物においては、鋳込み後、凝固後の状態、例えば800℃の高温状態では、金属組織は、β相に富む。その後の冷却で、γ相、κ相などの様々な相が生成し、形成される。当然、冷却速度が速いと、β相、或いはγ相が残留する。
そして、冷却時、575℃から510℃の温度領域、特に570℃から530℃の温度領域を、0.1℃/分以上2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却する。これにより、β相を完全に消滅でき、γ相を大幅に減少させる。さらに470℃から380℃における温度領域を、少なくとも2.5℃/分超え500℃/分未満、好ましくは4℃/分以上、より好ましくは8℃/分以上の平均冷却速度で冷却する。これにより、μ相の増加を防ぐ。このように、510℃から470℃を境にして、冷却速度を自然の法則に逆らって、コントロールすることにより、より所望の金属組織にすることができる。
鋳物ではないが、Pbを1〜4mass%含有する黄銅合金は、銅合金の押出材の大半を占める。このPbを1〜4mass%含有する黄銅合金の場合、押出径が大きいもの、例えば、直径が約38mmを超えるものを除き、通例、熱間押出後、押出材はコイルに巻き取られる。押出中の鋳塊(ビレット)は、押出装置により熱を奪われ温度が低下する。押出材は、巻き取り装置に接触することによって熱を奪われ、更に温度が低下する。押出当初の鋳塊の温度から、または押出材の温度から、約50℃〜100℃の温度の低下は、比較的早い平均冷却速度で起こる。その後に巻き取られたコイルは、保温効果により、コイルの重量等にもよるが、470℃から380℃までの温度領域を、約2℃/分程度の比較的ゆっくりとした平均冷却速度で冷却される。材料温度が約300℃に達した時、それ以降の平均冷却速度はさらに遅くなるので、ハンドリングを考慮して水冷されることもある。Pbを含有する黄銅合金の場合、約600〜800℃で熱間押出されるが、押出直後の金属組織は、熱間加工性に富むβ相が多量に存在する。平均冷却速度が速いと、冷却後の金属組織に多量のβ相が残留し、耐食性、延性、衝撃特性、高温特性が悪くなる。それを避けるために、押出コイルの保温効果等を利用して比較的遅い平均冷却速度で冷却することにより、β相をα相に変化させ、α相に富んだ金属組織にしている。前記のように、押出の直後は、押出材の平均冷却速度が比較的速いので、その後の冷却を遅くすることにより、α相に富んだ金属組織にしている。なお、特許文献1には、平均冷却速度の記載はないが、β相を少なくし、β相を孤立させる目的で、押出材の温度が180℃以下になるまで徐冷すると開示している。本実施形態の合金の製造方法とは全く異なる冷却速度で冷却される。
(熱処理)
一般的には、銅合金鋳物を熱処理することはない。稀に、鋳物の残留応力を除去するために、250℃〜400℃の低温焼鈍を行うことがある。本実施形態が目標とする諸特性を有する鋳物に仕上げるため、すなわち所望の金属組織にするための1つの手段として熱処理がある。鋳込み後、鋳物を、常温を含む380℃未満まで冷却する。次いで鋳物をバッチ炉或いは連続炉で所定の温度で熱処理する。
鋳物ではないがPbを含有する黄銅合金の熱間加工材においても、必要に応じて熱処理が実施される。特許文献1のBiを含む黄銅合金の場合、350〜550℃で、1〜8時間の条件で熱処理される。
本実施形態の合金鋳物で、例えばバッチ式の焼鈍炉で熱処理を行う場合、510℃以上、575℃以下で、20分以上、8時間以下で保持すると、耐食性、衝撃特性、高温特性が向上する。材料の温度が620℃を超えて熱処理すると、却ってγ相、またはβ相が多く形成され、α相が粗大化する。熱処理条件としては575℃以下の熱処理がよく、570℃以下の熱処理が好ましい。510℃より低い温度の熱処理では、γ相の減少が僅かに留まり、μ相が出現する。従って、510℃以上で熱処理を実施するのが好ましく、530℃以上で実施するのがより好ましい。熱処理時間は、510℃以上575℃以下の温度で、少なくとも、20分以上保持する必要がある。保持時間は、γ相の減少に寄与するので、好ましくは、30分以上、より好ましくは50分以上、最適には80分以上である。上限は、経済性から480分以下であり、好ましくは240分以下である。なお、熱処理温度は、530℃以上570℃以下が好ましい。510℃以上530℃未満の熱処理の場合、530℃以上570℃以下の熱処理に比べ、γ相を減少させるためには、2または3倍以上の熱処理時間が必要である。
因みに、510℃以上575℃以下の温度範囲の熱処理時間をt(分)とし、熱処理温度をT(℃)とすると、以下の熱処理指数f7は、好ましくは800以上であり、より好ましくは1200以上である。
熱処理指数f7=(T−500)×t
但し、Tが540℃以上の場合は540とする。
もう1つの熱処理方法として、鋳物が、熱源内を移動する連続熱処理炉が挙げられる。この連続熱処理炉を用いて熱処理する場合、620℃を超えると前記のごとく問題である。一旦、550℃以上、620℃以下まで材料の温度を上げ、次いで510℃以上575℃以下の温度領域を0.1℃/分以上2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却する。この冷却条件は、510℃以上575℃以下の温度領域で20分以上保持することに相当する条件である。単純計算では、510℃以上575℃以下の温度で26分間加熱されることになる。この熱処理条件により、金属組織の改善が可能となる。510℃以上575℃以下の温度領域での平均冷却速度は、好ましくは2℃/分以下であり、より好ましくは1.5℃/分以下であり、更に好ましくは1℃/分以下である。平均冷却速度の下限は、経済性を考慮し、0.1℃/分以上としている。
勿論、575℃以上の設定温度に拘りはなく、例えば、最高到達温度が540℃の場合、540℃から510℃の温度を少なくとも20分以上で通過させてもよい。好ましくは(T−500)×tの値(熱処理指数f7)が800以上になる条件で通過させる。550℃以上で、少し高めの温度に上げると生産性が確保でき、所望の金属組織を得ることができる。
熱処理を終えた後の冷却速度も重要である。鋳物は、最終的には、常温まで冷却されるが、470℃から380℃までの温度領域を、少なくとも2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却する必要がある。この470℃から380℃における平均冷却速度は、好ましくは4℃/分以上であり、より好ましくは8℃/分以上である。これにより、μ相の増加を防ぐ。すなわち、500℃付近を境にして平均冷却速度を早くする必要がある。一般的には、熱処理炉からの冷却では、より低い温度の方が平均冷却速度は遅くなる。
鋳込み後の冷却速度をコントロールすることや、熱処理の利点は、耐食性を向上させるだけでなく、高温特性、衝撃特性、耐摩耗性を向上させることである。金属組織は、最も硬質なγ相が減少する一方で、適度な延性を持つκ相が増え、α相内に針状のκ相が存在するようになりα相が強化される。
このような製造プロセスを採用することにより、本実施形態の合金は、耐食性に優れるだけでなく、被削性を損なわずに、衝撃特性、耐摩耗性、延性、強度に優れた合金に仕上がる。
なお、熱処理する場合、鋳込み後の冷却速度は上記条件でなくともよい。
本実施形態の合金鋳物の金属組織に関して、製造工程で重要なことは、鋳込み後或いは熱処理後の冷却過程で、470℃から380℃の温度領域における平均冷却速度である。平均冷却速度が2.5℃/分より遅いと、μ相の占める割合が増大する。μ相は、主として、結晶粒界、相境界を中心に形成される。厳しい環境下では、μ相は、α相、κ相に比べ耐食性が悪いので、μ相の選択腐食や粒界腐食の原因となる。また、μ相は、γ相と同様に、応力集中源になるか、或いは粒界滑りの原因になり、衝撃特性や、高温クリープ強度を低下させる。470℃から380℃の温度領域における平均冷却速度は、2.5℃/分超えであり、好ましくは4℃/分以上であり、より好ましくは8℃/分以上であり、さらに好ましくは12℃/分以上である。平均冷却速度が速いと鋳物に残留応力が生じるので、上限は、500℃/分未満とする必要があり、300℃/分以下がより好ましい。
2000倍または5000倍の電子顕微鏡で金属組織を観察すると、μ相が存在するか否かの境界の平均冷却速度は、470℃から380℃までの温度領域において約8℃/分である。特に、諸特性に大きな影響を与える臨界の平均冷却速度は、470℃から380℃までの温度領域において2.5℃/分、或は4℃/分、さらには、5℃/分である。勿論、μ相の出現には、金属組織にも依存し、α相が多いと、α相の結晶粒界に優先的に出現する。470℃から380℃までの温度領域での平均冷却速度が8℃/分より遅いと、粒界に析出するμ相の長辺の長さが約1μmを超え、平均冷却速度が遅くなるに従ってさらに成長する。そして平均冷却速度が約5℃/分になると、μ相の長辺の長さが約3μmから10μmに成長する。平均冷却速度が約2.5℃/分以下となると、μ相の長辺の長さが15μmを超え、場合によっては25μmを超える。μ相の長辺の長さが約10μmに達すると、1000倍の金属顕微鏡で、μ相が結晶粒界と区別でき、観察することが可能となる。
現在、Pbを含有する黄銅合金は銅合金の押出材の大半を占めるが、このPbを含有する黄銅合金の場合、特許文献1にあるように、350〜550℃の温度で必要に応じて熱処理される。下限の350℃は、再結晶し、材料がほぼ軟化する温度である。上限の550℃では、再結晶が完了し、温度を上げることによるエネルギー上の問題がある。また550℃以上の温度で熱処理すると、β相が顕著に増加する。このため、350〜550℃の温度で熱処理されると考えられる。一般的な製造設備は、バッチ炉、または、連続炉で行われ、所定の温度で、1〜8時間保持される。バッチ炉の場合は、炉冷、または、材料温度が約250℃に低下してから空冷される。連続炉の場合は、約250℃に材料温度が下がるまでは比較的ゆっくりとした速度で冷却される。具体的には、470℃から380℃までの温度領域を、保持される所定の温度を除き、約2℃/分程度の平均冷却速度で冷却される。本実施形態の合金の製造方法とは異なる冷却速度で冷却される。
(低温焼鈍)
本実施形態の合金鋳物においては、鋳込み後、熱処理後の冷却速度が適正であれば残留応力の除去を目的とした低温焼鈍は不要である。
このような製造方法によって、第1,2の実施形態に係る快削性銅合金鋳物が製造される。
以上のような構成とされた第1、第2の実施形態に係る快削性合金鋳物によれば、合金組成、組成関係式、金属組織、組織関係式、製造プロセスを上述のように規定しているので、厳しい環境下での耐食性、衝撃特性、高温強度、耐摩耗性に優れている。また、Pbの含有量が少なくても優れた被削性を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的要件を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を示す。なお、以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであって、実施例に記載された構成、プロセス、条件が本発明の技術的範囲を限定するものでない。
(実施例1)
<実操業実験>
実操業で使用している溶解炉または保持炉を用いて銅合金の試作試験を実施した。表2に合金組成を示す。なお、実操業設備を用いていることから、表2に示す合金においては不純物についても測定した。Sb,As,Biの量は、意図して添加した場合でも不純物の欄に記載した。
(工程No.A1〜A10、AH1〜AH8)
実操業している溶解炉から溶湯を取り出し、内径φ40mm、長さ250mmの鉄製の鋳型に鋳込み、鋳物を作製した。その後、鋳物は、575℃〜510℃の温度領域を20℃/分の平均冷却速度で冷却され、次いで、470℃から380℃の温度領域を15℃/分の平均冷却速度で冷却され、次いで、380℃未満、100℃までの温度領域を約12℃/分の平均冷却速度で冷却された。工程No.A10については、300℃で鋳型から鋳物を取り出し、空冷した(100℃までの平均冷却速度は約35℃/分であった)。
工程No.A1〜A6、AH2〜AH5では、実験室の電気炉で熱処理を行った。熱処理条件は、表5に示すように、熱処理温度を500℃から630℃まで変化させ、保持時間も30分から180分に変化させた。
工程No.A7〜A10、AH6〜AH8では、連続焼鈍炉を用い、560〜590℃の温度で短時間加熱した。次いで、575℃から510℃の温度領域での平均冷却速度、または、470℃から380℃の温度領域での平均冷却速度を変化させて冷却した。なお、連続焼鈍炉では、所定の温度で長時間保持するのではないので、所定の温度から±5℃(所定の温度−5℃〜所定の温度+5℃の範囲)で保持された時間を保持時間とした。バッチ式炉においても同様の処置をした。
(工程No.B1〜B4、BH1、BH2)
溶湯を鉄製の鋳型に鋳込み、次いで、鋳物および鋳型を即座に電気炉に入れた。電気炉内の温度を制御して、575℃〜510℃の温度領域での平均冷却速度、および、470℃〜380℃の温度領域での平均冷却速度を変えて冷却を実施した。
<実験室実験>
実験室設備を用いて銅合金の試作試験を実施した。表3、4に合金組成を示す。なお、表2に示す組成の銅合金も実験室実験に用いた。また、実操業実験と同一の条件でも、実験室設備を用いて試作試験を実施した。この場合、表中の工程No.の欄には、該当する実操業実験の工程の番号を記載した。
(工程No.C1〜C4,CH1〜CH3:連続鋳造棒)
連続鋳造設備を用い、所定の成分の原料を溶解して直径40mmの連続鋳造棒を作製した。連続鋳造棒は、凝固後、575℃から510℃の温度領域を18℃/分の平均冷却速度で冷却され、次いで、470℃から380℃の温度領域を14℃/分の平均冷却速度で冷却され、次いで、380℃未満、100℃までの温度領域を約12℃/分の平均冷却速度で冷却された。工程No.CH1は、この冷却工程で終了し、工程No.CH1の試料は、この冷却後の鋳物を指している。
工程No.C1〜C3、CH2では、実験室の電気炉で熱処理を行った。表7に示すように、熱処理温度が540℃、保持時間が100分の条件で熱処理を行った。次いで、575℃〜510℃の温度領域を15℃/分の平均冷却速度で冷却し、470℃〜380℃の温度領域を1.8℃/分〜10℃/分の平均冷却速度で冷却した。
工程No.C4、CH3では、連続炉を用いて熱処理を行った。最高到達温度が570℃で短時間加熱した。次いで、575℃〜510℃の温度領域を1.5℃/分の平均冷却速度で冷却し、470℃〜380℃の温度領域を1.5℃/分又は10℃/分の平均冷却速度で冷却した。
上述の試験材について、以下の手順にて、金属組織観察、耐食性(脱亜鉛腐食試験/浸漬試験)、被削性について評価を行った。
(金属組織の観察)
以下の方法により金属組織を観察し、α相、κ相、β相、γ相、μ相の面積率(%)を画像解析により測定した。なお、α’相、β’相、γ’相は、各々α相、β相、γ相に含めることとした。
各試験材の鋳物の長手方向に対して平行に切断した。次いで表面を研鏡(鏡面研磨)し、過酸化水素とアンモニア水の混合液でエッチングした。エッチングでは、3vol%の過酸化水素水3mLと、14vol%のアンモニア水22mLを混合した水溶液を用いた。約15℃〜約25℃の室温にてこの水溶液に金属の研磨面を約2秒〜約5秒浸漬した。
金属顕微鏡を用いて、主として倍率500倍で金属組織を観察し、金属組織の状況によっては1000倍で金属組織を観察した。5視野の顕微鏡写真において、画像処理ソフト「PhotoshopCC」を用いて各相(α相、κ相、β相、γ相、μ相)を手動で塗りつぶした。次いで画像処理ソフト「WinROOF2013」で2値化し、各相の面積率を求めた。詳細には、各相について、5視野の面積率の平均値を求め、平均値を各相の相比率とした。そして、全ての構成相の面積率の合計を100%とした。
γ相、μ相の長辺の長さは、以下の方法により測定した。500倍または1000倍の金属顕微鏡写真を用い、1視野において、γ相の長辺の最大長さを測定した。この作業を任意の5視野において行い、得られたγ相の長辺の最大長さの平均値を算出し、γ相の長辺の長さとした。同様に、μ相の大きさに応じて、500倍または1000倍の金属顕微鏡写真、或いは2000倍または5000倍の2次電子像写真(電子顕微鏡写真)を用い、1視野において、μ相の長辺の最大長さを測定した。この作業を任意の5視野において行い、得られたμ相の長辺の最大長さの平均値を算出し、μ相の長辺の長さとした。
具体的には、約70mm×約90mmのサイズにプリントアウトした写真を用いて評価した。500倍の倍率の場合、観察視野のサイズは276μm×220μmであった。
相の同定が困難な場合は、FE−SEM−EBSP(Electron Back Scattering Diffracton Pattern)法によって、倍率500倍又は2000倍で、相を特定した。
また、平均冷却速度を変化させた実施例においては、主として結晶粒界に析出するμ相の有無を確認するために、日本電子株式会社製のJSM−7000Fを用いて、加速電圧15kV、電流値(設定値15)の条件で、2次電子像を撮影し、2000倍または5000倍の倍率で金属組織を確認した。2000倍または5000倍の2次電子像でμ相が確認できても、500倍または1000倍の金属顕微鏡写真でμ相が確認できない場合は、面積率には算定しなかった。すなわち、2000倍または5000倍の2次電子像で観察されたが500倍または1000倍の金属顕微鏡写真では確認できなかったμ相は、μ相の面積率には含めなかった。何故なら、金属顕微鏡で確認できないμ相は、主として長辺の長さが5μm以下、幅は0.3μm以下であるので、面積率に与える影響は、小さいためである。
μ相の長さは、任意の5視野で測定し、前述したように5視野の最長の長さの平均値をμ相の長辺の長さとした。μ相の組成確認は、付属のEDSで行った。なお、μ相が500倍または1000倍で確認できなかったが、より高い倍率でμ相の長辺の長さが測定された場合、表中の測定結果において、μ相の面積率は0%であるがμ相の長辺の長さは記載している。
(μ相の観察)
μ相に関しては、鋳込み後または熱処理後、470℃から380℃の温度領域を約8℃/分、または約8℃/分以下の平均冷却速度で冷却すると、μ相の存在が確認できた。図1は、試験No.T04(合金No.S01/工程No.A3)の2次電子像の一例を示す。μ相は、α相の結晶粒界および、α相とκ相の相境界を中心に粒界や相境界に沿った細長い相であることが確認された。
(α相中に存在する針状のκ相)
α相中に存在する針状のκ相(κ1相)は、幅が約0.05μmから約0.5μmで、細長い直線状、針状の形態である。幅が0.1μm以上であれば、金属顕微鏡でも、その存在は、確認できる。
図2は、代表的な金属顕微鏡写真として、試験No.T32(合金No.S02/工程No.A1)の金属顕微鏡写真を示す。図3は、代表的なα相内に存在する針状のκ相の電子顕微鏡写真として、試験No.T32(合金No.S02/工程No.A1)の電子顕微鏡写真を示す。なお、図2,3の観察箇所は同一ではない。銅合金においては、α相に存在する双晶と混同する恐れがあるが、α相中に存在するκ相は、κ相自身の幅が狭く、双晶は2つで1組になっているので、区別がつく。図2の金属顕微鏡写真において、α相内に、細長く直線的な針状の模様の相が認められる。図3の二次電子像(電子顕微鏡写真)において、明瞭に、α相内に存在する模様が、κ相であることが確認される。κ相の厚みは、約0.1μmであった。図2の金属顕微鏡写真では、κ相は、前記のとおり、針状、直線状の相と一致する。なお、κ相の長さは、α相粒内を横切っているものもあれば、α相粒内を1/2〜1/4程度横切っているものもあった。
α相中での針状のκ相の量(数)は、金属顕微鏡で判断した。金属構成相の判定(金属組織の観察)で撮影された倍率500倍、或いは1000倍の倍率での5視野の顕微鏡写真を用いた。縦が約70mm、横が約90mmの拡大視野において、針状のκ相の数を測定し、5視野の平均値を求めた。針状のκ相の数の5視野での平均値が5以上49未満の場合、針状のκ相を有すると判断し、“△”と表記した。針状のκ相の数の5視野での平均値が50を超える場合、多くの針状のκ相を有すると判断し、“○”と表記した。針状のκ相の数の5視野での平均値が4以下の場合、針状のκ相をほとんど有していないと判断し、“×”と表記した。写真で確認できない針状のκ1相の数は含めなかった。
因みに、幅0.2μmの相の場合、500倍の金属顕微鏡では、幅0.1mmの線にしか見えない。概ね500倍の金属顕微鏡での観察の限界であり、幅の薄いκ相が存在する場合、1000倍の金属顕微鏡でκ相を確認し、観察しなければならない。
(κ相に含有されるSn量、P量)
κ相に含有されるSn量、P量をX線マイクロアナライザーで測定した。測定には、日本電子製「JXA−8200」を用いて、加速電圧20kV、電流値3.0×10−8Aの条件で行った。
なお、試験No.T01(合金No.S01/工程No.AH1)、試験No.T02(合金No.S01/工程No.A1)、試験No.T06(合金No.S01/工程No.AH2)について、X線マイクロアナライザーで、各相のSn、Cu、Si、Pの濃度の定量分析を行った。得られた結果を表9から表11に示す。
上述の測定結果から、以下のような知見を得た。
1)合金組成によって各相に配分される濃度が少し異なる。
2)κ相へのSnの配分はα相へのSnの配分の約1.4〜1.5倍である。
3)γ相のSn濃度は、α相のSn濃度の約10〜約17倍である。
4)κ相、γ相、μ相のSi濃度は、α相のSi濃度に比べ、各々約1.5倍、約2.2倍、約2.7倍である。
5)μ相のCu濃度は、α相、κ相、γ相、μ相に比べ高い。
6)γ相の割合が多くなると、必然的に、κ相のSn濃度が低くなる。
同じ組成でありながら、γ相の面積率が高い場合、κ相、α相に配分されるSnの量は、γ相の面積率が低い場合に比べて約2/3に過ぎず、合金のSn含有量に比べ、κ相のSn濃度が低い。またγ相の面積率が高い場合とγ相の面積率が低い場合を比較すると、α相のSn濃度は、0.09mass%と、0.13mass%であり、その差は0.04mass%であるが、κ相のSn濃度は、0.13mass%と、0.19mass%であり、その差は0.06mass%となり、κ相のSnの増加分が、α相のSnの増加分を上回った。
7)κ相へのPの配分はα相の約2倍である。
8)γ相、μ相のP濃度は、α相のP濃度の約3倍、約4倍である。
(機械的特性)
(高温クリープ)
各試験片から、JIS Z 2271の直径10mmのつば付き試験片を作製した。室温の0.2%耐力に相当する荷重を試験片にかけた状態で、150℃で100時間保持し、その後のクリープひずみを測定した。常温における標点間の伸びで、0.2%の塑性変形に相当する荷重を加え、この荷重をかけた状態で試験片を150℃、100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であれば良好である。このクリープひずみが0.3%以下であれば、銅合金では最高の水準であり、例えば、高温で使用されるバルブ、エンジンルームに近い自動車部品では、信頼性の高い材料として使用できる。
(衝撃特性)
衝撃試験では、各試験片から、JIS Z 2242に準じたUノッチ試験片(ノッチ深さ2mm、ノッチ底半径1mm)を採取した。半径2mmの衝撃刃でシャルピー衝撃試験を行い、衝撃値を測定した。
なお、Vノッチ試験片とUノッチ試験片で行ったときの関係は、以下のとおりである。
(Vノッチ衝撃値)=0.8×(Uノッチ衝撃値)−3
(被削性)
被削性の評価は、以下のように、旋盤を用いた切削試験で評価した。
直径40mmの鋳物については、予め、切削加工を施して直径を30mmとして試験材を作製した。ポイントノーズ・ストレート工具、特にチップブレーカーの付いていないタングステン・カーバイド工具を旋盤に取り付けた。この旋盤を用い、乾式下にて、すくい角−6度、ノーズ半径0.4mm、切削速度130m/分、切削深さ1.0mm、送り速度0.11mm/revの条件で、試験材の円周上を切削した。
工具に取り付けられた3部分から成る動力計(三保電機製作所製、AST式工具動力計AST−TL1003)から発せられるシグナルが、電気的電圧シグナルに変換され、レコーダーに記録された。次にこれらのシグナルは切削抵抗(N)に変換された。従って、切削抵抗、特に切削の際に最も高い値を示す主分力を測定することにより、鋳物の被削性を評価した。
同時に切屑を採取し、切屑形状により被削性を評価した。実用の切削で最も問題となるのは、切屑が工具に絡みついたり、切屑が嵩張ることである。このため、切屑形状が1巻き以下の切屑しか生成しなかった場合を“○”(good)と評価した。切屑形状が1巻きを超えて3巻きまでの切屑が生成した場合を“△”(fair)と評価した。切屑形状が3巻きを超える切屑が生成した場合を“×”(poor)と評価した。このように、3段階の評価をした。
切削抵抗は、材料の強度、例えば、剪断応力、引張強さや0.2%耐力にも依存し、強度が高い材料ほど切削抵抗が高くなる傾向がある。切削抵抗がPbを1〜4%含有する快削黄銅棒の切削抵抗に対して10%高くなる程度であれば、実用上十分許容される。本実施形態においては、切削抵抗が130Nを境(境界値)として評価した。詳細には、切削抵抗が130Nより小さければ、被削性に優れる(評価:○)と評価した。切削抵抗が118N以下の場合は、特に優れると評価した。切削抵抗が130N以上150Nより小さければ、被削性を“可(△)”と評価した。切削抵抗が150N以上であれば、“不可(×)”と評価した。因みに、58mass%Cu−42mass%Zn合金に対して熱間鍛造を施して試料を製作して評価したところ、切削抵抗は185Nであった。
総合的な被削性の評価としては、切屑形状が良好(評価:○)で、かつ切削抵抗が低い(評価:○)材料は、被削性が優れる(excellent)と評価した。切屑形状と切削抵抗のうち、一方が△または可の場合は、条件付きで被削性が良好である(good)と評価した。切屑形状と切削抵抗のうち、一方が△または可であり、他方が×又は不可の場合は、被削性が不可(poor)であると評価した。
(脱亜鉛腐食試験1,2)
各試験材の暴露試料表面が鋳物材の長手方向に対して垂直となるように試験材をフェノール樹脂材に埋込んだ。試料表面を1200番までのエメリー紙により研磨し、次いで、これを純水中で超音波洗浄してブロワーで乾燥した。その後、各試料を、準備した浸漬液に浸漬した。
試験終了後、暴露表面が長手方向に対して直角を保つように、試料をフェノール樹脂材に再び埋め込んだ。次に、腐食部の断面が最も長い切断部として得られるように試料を切断した。続いて試料を研磨した。
金属顕微鏡を用い、500倍の倍率で顕微鏡の視野10ヶ所(任意の10箇所の視野)にて、腐食深さを観察した。腐食深さが深い試料については、倍率を200倍とした。最も深い腐食ポイントが最大脱亜鉛腐食深さとして記録された。
脱亜鉛腐食試験1では、浸漬液として、以下の試験液1を準備して上記の作業を実施した。脱亜鉛腐食試験2では、浸漬液として、以下の試験液2を準備して上記の作業を実施した。
試験液1は、酸化剤となる消毒剤が過剰に投与され、pHが低く厳しい腐食環境を想定し、さらにその腐食環境での加速試験を行うための溶液である。この溶液を用いると、その厳しい腐食環境での約60〜90倍の加速試験となることが推定される。本実施形態では、厳しい環境下での優れた耐食性を目指すため、最大腐食深さが80μm以下であれば、耐食性は良好である。より優れた耐食性が求められる場合は、最大腐食深さは、好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であるとよいと推定される。
試験液2は、塩化物イオン濃度が高く、pHが低く、厳しい腐食環境の水質を想定し、さらにその腐食環境での加速試験を行うための溶液である。この溶液を用いると、その厳しい腐食環境での約30〜50倍の加速試験となることが推定される。最大腐食深さが50μm以下であれば、耐食性は良好である。優れた耐食性が求められる場合は、最大腐食深さは、好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下であると良いと推定される。本実施例では、これらの推定値をもとに評価した。
脱亜鉛腐食試験1では、試験液1として、次亜塩素酸水(濃度30ppm、pH=6.8、水温40℃)を用いた。以下の方法で試験液1を調整した。蒸留水40Lに市販の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を投入し、ヨウ素滴定法による残留塩素濃度が30mg/Lになるように調整した。残留塩素は時間とともに、分解し減少するため、残留塩素濃度を常時ボルタンメトリー法により測定しながら、電磁ポンプにより次亜塩素酸ナトリウム投入量を電子制御した。pHを6.8に下げるために二酸化炭素を流量調整しながら投入した。水温は40℃になるように温度コントローラーにて調整した。このように残留塩素濃度、pH、水温を一定に保ちながら、試験液1中に試料を2ヶ月間保持した。次いで水溶液中から試料を取出して、その脱亜鉛腐食深さの最大値(最大脱亜鉛腐食深さ)を測定した。
脱亜鉛腐食試験2では、試験液2として、表12に示す成分の試験水を用いた。試験液2は、蒸留水に市販の薬剤を投入し調整した。腐食性の高い水道水を想定し、塩化物イオン80mg/L、硫酸イオン40mg/L、硝酸イオン30mg/Lを投入した。アルカリ度および硬度は日本の一般的な水道水を目安にそれぞれ30mg/L、60mg/Lに調整した。pHを6.3に下げるために二酸化炭素を流量調整しながら投入し、溶存酸素濃度を飽和させるために酸素ガスを常時投入した。水温は室温と同じ25℃で行なった。このようにpH、水温を一定に保ち、溶存酸素濃度を飽和状態としながら、試験液2中に試料を3ヶ月間保持した。次いで、水溶液中から試料を取出して、その脱亜鉛腐食深さの最大値(最大脱亜鉛腐食深さ)を測定した。
(脱亜鉛腐食試験3:ISO6509脱亜鉛腐食試験)
本試験は、脱亜鉛腐食試験方法として、多くの国々で採用されており、JIS規格においても、JIS H 3250で規定されている。
脱亜鉛腐食試験1,2と同様に、試験材をフェノール樹脂材に埋込んだ。詳細には、試験材から切り出された試料の暴露試料表面が鋳物材の長手方向に対して垂直となるように試料をフェノール樹脂材に埋込んだ。試料表面を1200番までのエメリー紙により研磨し、次いで、これを純水中で超音波洗浄して乾燥した。各試料を、1.0%の塩化第2銅2水和塩(CuCl・2HO)の水溶液(12.7g/L)中に浸漬し、75℃の温度条件下で24時間保持した。その後、水溶液中から試料を取出した。
暴露表面が長手方向に対して直角を保つように、試料をフェノール樹脂材に再び埋め込んだ。次に、腐食部の断面が最も長い切断部として得られるように試料を切断した。続いて試料を研磨した。
金属顕微鏡を用い、100倍〜500倍の倍率で、顕微鏡の視野10ヶ所にて、腐食深さを観察した。最も深い腐食ポイントが最大脱亜鉛腐食深さとして記録された。
なお、ISO 6509の試験を行ったとき、最大腐食深さが200μm以下であれば、実用上の耐食性に関して問題ないレベルとされている。特に優れた耐食性が求められる場合は、最大腐食深さは、好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下が望まれている。
本試験において、最大腐食深さが200μmを超える場合は“×”(poor)と評価した。最大腐食深さが50μm超え、200μm以下の場合を“△”(fair)と評価した。最大腐食深さが50μm以下の場合を“○”(good)と厳しく評価した。本実施形態は、厳しい腐食環境を想定しているために特に厳しい評価を採用し、評価が“○”である場合のみを、耐食性が良好であるとした。
(摩耗試験)
潤滑下でアムスラー型摩耗試験、及び乾式下でボールオンディスク摩擦摩耗試験の2種類の試験にて、耐摩耗性を評価した。
アムスラー型摩耗試験を以下の方法で実施した。室温で各サンプルを直径32mmに切削加工して上部試験片を作製した。またオーステナイトステンレス鋼(JIS G 4303のSUS304)製の直径42mmの下部試験片(表面硬さHV184)を用意した。荷重として490Nを付加して上部試験片と下部試験片を接触させた。油滴と油浴にはシリコンオイルを用いた。荷重を付加して上部試験片と下部試験片を接触させた状態で、上部試験片の回転数(回転速度)が188rpmであり、下部試験片の回転数(回転速度)が209rpmである条件で、上部試験片と下部試験片を回転させた。上部試験片と下部試験片の周速度差により摺動速度を0.2m/secとした。上部試験片と下部試験片の直径及び回転数(回転速度)が異なることで、試験片を摩耗させた。下部試験片の回転回数が250000回となるまで上部試験片と下部試験片を回転させた。
試験後、上部試験片の重量の変化を測定し、以下の基準で耐摩耗性を評価した。摩耗による上部試験片の重量の減少量が0.25g以下の場合を“◎”(excellent)と評価した。上部試験片の重量の減少量が0.25gを越え0.5g以下の場合を“○”(good)と評価した。上部試験片の重量の減少量が0.5gを越え1.0g以下の場合を“△”(fair)と評価した。上部試験片の重量の減少量が1.0g越えの場合を“×”(poor)と評価した。この4段階で耐摩耗性を評価した。なお、下部試験片において、0.025g以上の摩耗減量があった場合は、“×”と評価した。
因みに、同一の試験条件での59Cu−3Pb−38ZnのPbを含む快削黄銅の摩耗減量(摩耗による重量の減少量)は、12gであった。
ボールオンディスク摩擦摩耗試験を以下の方法で実施した。粗さ#2000のサンドペーパーで試験片の表面を研磨した。この試験片上に、オーステナイトステンレス鋼(JIS G 4303のSUS304)製の直径10mmの鋼球を、以下の条件で押し当てた状態で摺動させた。
(条件)
室温、無潤滑、荷重:49N、摺動径:直径10mm、摺動速度:0.1m/sec、摺動距離:120m。
試験後、試験片の重量の変化を測定し、以下の基準で耐摩耗性を評価した。摩耗による試験片の重量の減少量が4mg以下の場合を“◎”(excellent)と評価した。試験片の重量の減少量が4mgを越え8mg以下の場合を“○”(good)と評価した。試験片の重量の減少量が8mgを越え20mg以下の場合を“△”(fair)と評価した。試験片の重量の減少量が20mg越えの場合を“×”(poor)と評価した。この4段階で耐摩耗性を評価した。
因みに、同一の試験条件での59Cu−3Pb−38ZnのPbを含む快削黄銅の摩耗減量は、80mgであった。
なお、銅合金は軸受の用途に用いられ、銅合金自身の摩耗量が少ないことが良いが、それ以上に軸すなわち相手材の代表的な鋼種(材質)であるステンレス鋼を傷つけないことが重要である。20%硝酸に少量の過酸化水素水(30%)を滴下して溶液を作製した。この溶液中に、試験後のボール(鋼球)を約3分間浸漬して表面の凝着物を除去した。次いで、30倍の倍率で鋼球の表面を観察し、損傷状況を調べた。表面の損傷状況と共に、凝着物を除去した後に、明らかに爪に引っ掛かる損傷(断面で5μmの深さの傷)がある場合は、耐摩耗性の判定を“×”(poor)とした。
(融点測定・鋳造性試験)
試験片の作製時に使用した溶湯の残りを用いた。熱電対を溶湯の中に入れ、液相線温度、固相線温度を求め、凝固温度範囲を求めた。
また、1000℃の溶湯を鉄製のターターモールドに鋳込み、最終凝固部、およびその近傍におけるホール、ざく巣等の欠陥の有無を詳細に調べた(ターターテスト(Tatur Shrinkage Test))。具体的には、図4の断面模式図に示すように最終凝固部を含む縦断面が得られるように鋳物を切断した。試料の断面を400番までのエメリー紙により研磨した。次いで、浸透探傷試験により、ミクロレベルの欠陥の有無を調査した。
鋳造性は、以下のように評価した。断面において、最終凝固部およびその近傍の表面から3mm以内に欠陥指示模様が現れたが、最終凝固部およびその近傍の表面から3mmを超えた部分では欠陥が現れなかった場合、鋳造性を良“○”(good)と評価した。最終凝固部およびその近傍の表面から6mm以内に欠陥指示模様が現れたが、最終凝固部およびその近傍の表面から6mmを超えた部分では欠陥が発生しなかった場合、鋳造性を可“△”(fair)と評価した。最終凝固部およびその近傍の表面から6mmを超えた部分で欠陥が発生した場合、鋳造性を不良“×”(poor)と評価した。
最終凝固部は、良質な鋳造方案により、大抵は押湯の部分であるが、鋳物本体にまたがる場合がある。本実施形態の合金鋳物の場合、ターターテストの結果と凝固温度範囲には、密接な関係がある。凝固温度範囲が25℃以下または30℃以下の場合、鋳造性は“○”の評価が多かった。凝固温度範囲が45℃以上の場合、鋳造性は“×”の評価が多かった。凝固温度範囲が40℃以下であれば、鋳造性の評価が“○”または“△”となった。
評価結果を表13〜表39に示す。試験No.T01〜T127は、実操業の実験での結果である。試験No.T201〜T245、T301〜T345は、実験室の実験での結果である。
以上の実験結果は、以下のとおりに纏められる。
1)本実施形態の組成を満足し、組成関係式f1、f2、金属組織の要件、および組織関係式f3、f4、f5、f6を満たすことにより、少量のPbの含有で、良好な被削性が得られ、良好な鋳造性、過酷な環境下での優れた耐食性を備え、且つ、良好な衝撃特性、耐摩耗性、高温特性を持ち合せる鋳物が得られることが確認できた(合金No.S01〜S03、工程No.A1他)。
Sb、Asの含有は、さらに過酷な条件下での耐食性を向上させることが確認できた(合金No.S11〜S13)。
Biの含有により、さらに切削抵抗が低くなることが確認できた(合金No.S11、S12)。
κ相中に、Snが0.08mass%以上、Pが0.07mass%以上含有することにより、耐食性、被削性能、耐摩耗性が向上することが確認できた(合金No.S01〜S06)。
本実施形態の範囲内の組成であると、α相中に細長い、針状のκ相が存在し、被削性、耐食性、耐摩耗性が向上することが確認できた(合金No.S01〜S06)
2)Cu含有量が少ないと、γ相が多くなり被削性は良好であったが、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった。逆にCu含有量が多いと、被削性、衝撃特性も悪くなった(合金No.S52、S57、S72等)。
Si含有量が少ないと、被削性が悪く、Si含有量が多いと、衝撃値が低かった(合金No.S58、S57、S61、S68)。
Sn含有量が0.3mass%より多いと、γ相の面積率が2.0%より多くなり、被削性は良好であったが、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった(合金No.S51)。
Sn含有量が0.07mass%より少ないと、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きかった。Sn含有量が0.07mass%より少ないと、γ相、μ相が少ない場合であっても、冷却や熱処理の効果がない場合もあった(合金No.S53、S54、S56、S67)。Sn含有量が、0.1mass%以上であるとさらに特性が良くなった(合金No.S01〜S06)。
P含有量が多いと、衝撃特性が悪くなった。また切削抵抗が少し高かった。一方、P含有量が少ないと、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きかった(合金No.S62、S18、S53、S55、S56)。
実操業で行われる程度の不可避不純物を含有しても、諸特性に大きな影響を与えないことが確認できた(合金No.S01〜S06)。
不可避不純物の好ましい濃度を超えるFe、或いはCrを含有すると、FeとSiの金属間化合物、或はFeとPの金属間化合物を形成し、その結果、有効に働くSi濃度が減少し、耐食性が悪くなり、金属間化合物の形成と相まって被削性が悪くなったように思われる(合金No.S73、S74)。
3)組成関係式f1の値が低いと、個々の元素が組成範囲内であっても、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きく、高温特性も悪かった(合金No.S69、S70)。
組成関係式f1の値が低いと、γ相が多くなり、鋳込み後の平均冷却速度を適正にしても、また熱処理を施しても、β相が残留する場合があり、被削性は良好であったが、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった。組成関係式f1の値が高いと、κ相が多くなり過ぎ、被削性、衝撃特性が悪くなった(合金No.S69、S66、S52、S57、S72)。
組成関係式f2の値が低いと、被削性は、良好であったが、また、β相が残留し易く、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった。また、組成関係式f2の値が高いと、粗大なα相が形成されるため切削抵抗が高く、切屑が分断されにくかった。f2と、凝固温度範囲、鋳造性とは、関係があり、f2が大きいと、凝固温度範囲が広くなり、鋳造性が悪くなった。鋳造性が悪くなったのは、凝固温度範囲が40℃を超えていることが主原因の1つと思われる。(合金No.S71、S66、S52、S63、S64、S72)。
4)金属組織において、γ相の割合が2.0%より多いと、被削性は良好であったが、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった(合金No.S01〜S03、S69、S65、工程No.AH1等)。γ相が、2.0%以下であっても、γ相の長辺の長さが50μmより長いと、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった(合金No.S13、S17、工程No.AH1)。γ相の割合が、1.2%以下で、かつγ相の長辺の長さが40μm以下であると、耐食性、衝撃特性、高温特性が良くなった(合金No.S01等)。
μ相の面積率が2%より多いと、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった。過酷な環境下での脱亜鉛腐食試験で、粒界腐食やμ相の選択腐食が生じた(合金No.S01、工程No.AH3、BH2)。μ相が結晶粒界に存在すると、μ相の長辺の長さが長くなるにつれ、μ相の占める割合が低くても、衝撃特性や高温特性、耐食性が悪くなり、μ相の長辺の長さが25μmを超えるとさらに悪くなった。μ相の割合が1%以下で、かつμ相の長辺の長さが15μm以下であると、耐食性、衝撃特性、高温特性が良くなった(合金No.S01、工程No.A1、A4、AH2、AH3)。
κ相の面積率が65%より多いと、被削性、衝撃特性が悪くなった。一方、κ相の面積率が25%より少ないと、被削性が悪かった。κ相の割合が、30%〜56%であると、耐食性、被削性、衝撃特性、耐摩耗性がよくなり、諸特性のバランスに優れた鋳物が得られた(合金No.S01、S61、S72、S58)。
5)組織関係式f5=(γ)+(μ)が3.0%を超えると、またはf3=(α)+(κ)が96.5%より小さいと、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪くなった。組織関係式f5が、1.5%以下、f3が98.0、f4が99.5以上であると耐食性、衝撃特性、高温特性がさらによくなった(合金No.S01〜S06、S13)。
6)組織関係式f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)が66より大きい、又は29より小さいと、被削性が悪かった(合金No.S58、S61、S68、S72)。f6が32以上、58以下であると、被削性がさらに向上した(合金No.S01、S11等)。f6が29以上であっても、α相に針状のκ相が存在していないと、被削性が悪かった、また同時に、これらの合金は、衝撃特性が、60J/cmを超えるものも見られた(合金No.S53、S64)。f6が、58超え、66を超えるに従って衝撃特性が低下している(合金No.S14、S57、S61)。
7)κ相に含有されるSn量が0.08mass%より低いと、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きく、κ相の腐食が生じていた。また、切削抵抗も少し高く、切屑の分断性の悪いものもあった(合金No.S53、S54、S56)。κ相に含有されるSn量が0.11mass%以上であると、さらに耐食性、被削性が良くなった(合金No.S01〜S06)。
κ相に含有されるP量が0.07mass%より低いと、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きかった(合金No.S53、S55、S56等)。κ相に含有されるP量が0.08mass%以上であると耐食性が良くなった(合金No.S01〜S06、S13等)。
κ相に含有されるSn量が0.08%より低く、κ相に含有されるP量が0.07%より低いと、γ相の面積率を十分満たしていても、過酷な環境下での脱亜鉛腐食深さが大きかった(合金No.S53、S67、S56)。
γ相が少ない場合、κ相に配分されるSnの量は、合金のSn含有量の約1.2倍であった。これにより、κ相の耐食性が高められ、合金の耐食性の向上に寄与したと思われる。γ相が多い場合、例えばγ相が約10%含まれる場合、κ相に配分されるSnの量は、合金のSn含有量の1/2に過ぎなかった(合金No.S01、S02、S65、S66)。
合金No.S01を例に挙げると、γ相の占める割合が4.2%から0.2%に下がること、γ相の減少によりκ相のSn濃度が0.13mass%から0.18mass%に増すこと、及びα相中に針状のκ相が多く存在することが相まって、切削抵抗が4N増すものの良好な被削性を確保し、過酷な環境を想定した腐食試験における腐食深さが約1/4に減少し、靭性の1つの尺度である衝撃値が約1.8倍になり、高温クリープによる変形が約1/4に減少した。
組成の要件、金属組織の要件をすべて満たしておれば、衝撃特性が、23J/cm以上、室温での0.2%耐力を負荷して150℃で100時間保持したときのクリープひずみが0.4%以下、殆どは0.3%以下であった(合金No.S01〜S06等)。
Si量が、約2.95%で、α相内に針状のκ相が存在し始め、Si量が、約3.1%で、針状のκ相が大幅に増えた。関係式f2は、針状のκ相の存在や量に影響を与えた(合金No.S64、S20、S53、S21、S23等)。
針状のκ相の量が増えると、被削性、高温特性、耐摩耗性が良くなった。α相の強化や、切屑分断性に繋がっているように推測される(合金No.S01、S12、S13、S16、工程No.A1等)。
これらより、α相中に針状のκ相が存在し、α相、κ相のSn濃度が高くなることにより、γ相が0.8%以下になっても、3〜5%のγ相を含む試験片とほぼ同等の被削性を備えることができた。すなわち、γ相の減少分を、針状のκ相の存在と、α、κ相中のSn濃度が高められたことにより、補えたと推測される。
腐食試験方法3のISO6509試験では、γ、μ相が所定量以上に含有されていても、優劣がつきにくかったが、本実施形態で採用した腐食試験方法1および2は、γ相、μ相の量などによって明瞭に優劣をつけることができた。(合金No.S01、S02)
κ相の割合が、約30%〜55%であって、α相内に針状のκ相が存在すると、潤滑下、無潤滑下の両方の摩耗試験ともに摩耗減量が少なかった。また試験した試料において、相手材のステンレス球をほとんど傷つけることがなかった(合金No.S16、S02)。
8)量産設備を用いた材料と実験室で作成した材料の評価では、ほぼ同じ結果が得られた(合金No.S01、S02、工程No.C1、C2)。
製造条件について:
鋳物を、510℃以上、575℃以下の温度範囲内で、20分以上保持、または、連続炉において、510℃以上、575℃以下の温度で、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、かつ、480℃から370℃の温度を2.5℃/分超えの平均冷却速度で冷却すると、γ相が大幅に減少し、μ相がほとんど存在しない金属組織が得られた。耐食性、高温特性、衝撃特性の優れた材料が得られた(合金No.S01〜S03、工程No.A1〜A3)。
鋳込み後の冷却で、510℃以上、575℃以下の温度範囲を、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、かつ、480℃から370℃の温度を2.5℃/分超えの平均冷却速度で冷却すると、γ相が減少し、μ相が少ない金属組織が得られ、耐食性、衝撃特性、高温特性、耐摩耗性がよくなった(合金No.S01〜S03、工程No.B1、B3)。
熱処理温度が高いと結晶粒が粗大化し、γ相の減少が少なかったため、耐食性、衝撃特性が悪く、被削性も劣った。また熱処理温度が低い500℃で長時間加熱保持しても、γ相の減少は少なかった(合金No.S01〜S03、工程No.AH4、AH5)。
熱処理温度が、520℃の場合、保持時間が短いと、他の熱処理方法と比べ少し、γ相の減少が少なかった。熱処理時間:tと熱処理温度Tの関係を数式に表すと、(T−500)×t(但し、Tが540℃以上の場合は540とする)が800以上であるとγ相がより多く減少し、性能が向上した(工程No.A5、A1)。
熱処理後の冷却で、470℃から380℃までの平均冷却速度が2.5℃/分より遅いとμ相が存在し、耐食性、衝撃特性、高温特性が悪かった。μ相の生成は、平均冷却速度に影響を受けた(合金No.S01、S02、S03、工程No.A1〜A4、AH2、AH3、AH8)
熱処理方法として、550℃〜620℃に一旦温度を上げ、冷却過程で575℃から510℃までの平均冷却速度を遅くすることにより、良好な耐食性、衝撃特性、高温特性が得られた。つまり連続熱処理方法でも特性が改善することを確認できた(工程No.A1、A7、A8、A9、A10)。
本実施形態の組成を満たす連続鋳造棒を素材として使用しても、連続熱処理方法を含む熱処理を施すと鋳物と同様、良好な諸特性が得られた(工程No.C1、C3、C4)。
γ相が減少すると、κ相の量が増し、κ相に含有されるSn量が増した。また、γ相は減少するものの、良好な被削性は確保できていることを確認した(合金No.S01、S02、工程No.AH1、A1、B4)。
鋳込み後の平均冷却速度を制御する、または、鋳物に熱処理を施すとα相中に針状のκ相が存在するようになった(合金No.S01、S02、S03、工程No.AH1、A1)。α相中に針状のκ相が存在することにより、耐摩耗性がよくなった、また被削性も良好で、γ相の大幅な減少を補えたと推測される。
以上のことから、本実施形態の合金鋳物のように、各添加元素の含有量および各組成関係式、金属組織、各組織関係式が適正な範囲にある本実施形態の合金鋳物は、鋳造性に優れ、耐食性、被削性、耐摩耗性も良好である。また、本実施形態の合金鋳物において、より優れた特性を得るためには、鋳造での製造条件、熱処理での条件を適正範囲とすることで達成できる。
(実施例2)
本実施形態の比較例である合金鋳物に関して、8年間過酷な水環境下で使用された銅合金Cu−Zn−Si合金鋳物(試験No.T401/合金No.S101)を入手した。なお、使用された環境の水質などの詳細な資料は無い。実施例1と同様の方法で、試験No.T401の組成、金属組織の分析を行った。また金属顕微鏡を用いて断面の腐食状態を観察した。詳細には、暴露表面が長手方向に対して直角を保つように、試料をフェノール樹脂材に埋め込んだ。次に、腐食部の断面が最も長い切断部として得られるように試料を切断した。続いて試料を研磨した。金属顕微鏡を用いて断面を観察した。また最大腐食深さを測定した。
次に、試験No.T401と同様の組成及び作製条件で、類似の合金鋳物を作製した(試験No.T402/合金No.S102)。類似の合金鋳物(試験No.T402)について、実施例1に記載の組成、金属組織の分析、機械的特性などの評価(測定)、及び脱亜鉛腐食試験1〜3を行った。そして、試験No.T401の実際の水環境による腐食状態と、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1〜3の加速試験による腐食状態とを比較し、脱亜鉛腐食試験1〜3の加速試験の妥当性を検証した。
また、実施例1に記載の本実施形態の合金鋳物(試験No.T03/合金No.S01/工程No.A2)の脱亜鉛腐食試験1の評価結果(腐食状態)と、試験No.T401の腐食状態や試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1の評価結果(腐食状態)とを比較し、試験No.T03の耐食性を考察した。
試験No.T402は、以下の方法で作製した。
試験No.T401(合金No.S101)とほぼ同じ組成となるように原料を溶解し、鋳込み温度1000℃で、内径φ40mmの鋳型に鋳込み、鋳物を作製した。その後、鋳物は、575℃〜510℃の温度領域を約20℃/分の平均冷却速度で冷却され、次いで、470℃から380℃の温度領域を約15℃/分の平均冷却速度で冷却された。この作製条件は、実施例1の工程No.AH1に相当した。以上により、試験No.T402の試料を作製した。
組成、金属組織の分析方法、機械的特性などの測定方法、及び脱亜鉛腐食試験1〜3の方法は、実施例1に記載された通りである。
得られた結果を表40〜表42及び図5に示す。
図5(a)は、試験No.T401の断面の金属顕微鏡写真を示す。
試験No.T401は、8年間過酷な水環境下で使用されたが、この使用環境により生じた腐食の最大腐食深さは、138μmであった。
腐食部の表面では、α相、κ相に関わらず脱亜鉛腐食が生じていた(表面から平均で約100μmの深さ)。
α相、κ相が腐食されている腐食部分の中で、内部に向かうにしたがって、健全なα相が存在していた。
α相、κ相の腐食深さは一定ではなく凹凸があるが、大まかにその境界部から内部に向かって、腐食は、γ相のみに起こっていた(α相、κ相が腐食されている境界部分から、内部に向かって約40μmの深さ:局所的に生じているγ相のみの腐食)。
図5(b)は、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1の後の断面の金属顕微鏡写真を示す。
最大腐食深さは、146μmであった。
腐食部の表面では、α相、κ相に関わらず脱亜鉛腐食が生じていた(表面から平均で約100μmの深さ)。
その中で、内部に向かうにしたがって、健全なα相が存在していた。
α相、κ相の腐食深さは一定ではなく凹凸があるが、大まかにその境界部から内部に向かって、腐食は、γ相のみに起こっていた(α相、κ相が腐食されている境界部分から、局所的に生じているγ相のみの腐食の長さは約45μmであった)。
図5(a)の8年間の過酷な水環境により生じた腐食と、図5(b)の脱亜鉛腐食試験1により生じた腐食とは、ほぼ同じ腐食形態であることがわかった。またSn、Pの量が本実施形態の範囲を満たしていないために、水や試験液と接する部分では、α相とκ相の両者が腐食し、腐食部の先端では、所々でγ相が選択的に腐食していた。なお、κ相中のSn及びPの濃度は低かった。
試験No.T401の最大腐食深さは、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1での最大腐食深さよりも少し浅かった。しかし、試験No.T401の最大腐食深さは、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験2での最大腐食深さよりも少し深かった。実際の水環境による腐食の度合いは水質の影響を受けるが、脱亜鉛腐食試験1,2の結果と、実際の水環境による腐食結果とは、腐食形態及び腐食深さの両者で概ね一致した。従って、脱亜鉛腐食試験1,2の条件は、妥当であり、脱亜鉛腐食試験1,2では、実際の水環境による腐食結果とほぼ同等の評価結果が得られることが分かった。
また、腐食試験方法1,2の加速試験の加速率は、実際の厳しい水環境による腐食と概ね一致し、このことは、腐食試験方法1,2が、厳しい環境を想定したものであることの裏付けであると思われる。
試験No.T402の脱亜鉛腐食試験3(ISO6509脱亜鉛腐食試験)の結果は、“○”(good)であった。このため、脱亜鉛腐食試験3の結果は、実際の水環境による腐食結果とは、一致していなかった。
脱亜鉛腐食試験1の試験時間は2ヶ月であり、約60〜90倍の加速試験である。脱亜鉛腐食試験2の試験時間は3ヶ月であり、約30〜50倍の加速試験である。これに対して、脱亜鉛腐食試験3(ISO6509脱亜鉛腐食試験)の試験時間は24時間であり、約1000倍以上の加速試験である。
脱亜鉛腐食試験1,2のように、実際の水環境に、より近い試験液を用い、2,3ヶ月の長時間で試験を行うことによって、実際の水環境による腐食結果とほぼ同等の評価結果が得られたと考えられる。
特に、試験No.T401の8年間の過酷な水環境による腐食結果や、試験No.T402の脱亜鉛腐食試験1,2の腐食結果では、表面のα相、κ相の腐食と共にγ相が腐食していた。しかし、脱亜鉛腐食試験3(ISO6509脱亜鉛腐食試験)の腐食結果では、γ相がほとんど腐食していなかった。このため、脱亜鉛腐食試験3(ISO6509脱亜鉛腐食試験)では、表面のα相、κ相の腐食と共にγ相の腐食が適切に評価できず、実際の水環境による腐食結果と一致しなかったと考えられる。
図5(c)は、試験No.T03(合金No.S01/工程No.A2)の脱亜鉛腐食試験1の後の断面の金属顕微鏡写真を示す。
表面に露出しているγ相と、κ相の一部が腐食されていた。その腐食の深さは約10μmであった。さらに内部に向かって、γ相の選択的な腐食が飛び火して、生じていた(γ相の選択的な腐食が内部の離れた部位に移って生じていた)。恐らく、表層の腐食部と内部とがつながっていると推測される。γ相の長辺の長さが、腐食深さを決定する大きな要因の1つであると考えられる。
図5(a),(b)の試験No.T401,T402に比べて、図5(c)の本実施形態の試験No.T03では、表面付近のα相およびκ相の腐食が、大幅に抑制されていることが分かる。このことが、腐食の進行を遅らさせていると推定される。表面付近のα相およびκ相の腐食が大幅に抑制された主な要因として、以下の事項が考えられる。
(主な要因)
κ相がSnを含むことによってκ相の耐食性が高まったこと。
γ相の量が抑制されたこと。
本発明の快削性銅合金は、鋳造性に優れ、耐食性、被削性に優れる。このため、本発明の快削性銅合金は、給水栓、バルブ、継手などの人や動物が毎日摂取する飲料水に使用される器具、バルブ、継手などの電気・自動車・機械・工業用配管部材、液体と接触する器具、部品に好適である。
具体的には、飲料水、排水、工業用水が流れる、給水栓金具、混合水栓金具、排水金具、水栓ボディー、給湯機部品、エコキュート部品、ホース金具、スプリンクラー、水道メーター、止水栓、消火栓、ホースニップル、給排水コック、ポンプ、ヘッダー、減圧弁、弁座、仕切り弁、弁、弁棒、ユニオン、フランジ、分岐栓、水栓バルブ、ボールバルブ、各種バルブ、配管継手、例えばエルボ、ソケット、チーズ、ベンド、コネクタ、アダプター、ティー、ジョイントなどの名称で使用されているものの構成材等として好適に適用できる。
また、自動車部品として用いられる、各種バルブ、ラジエータ部品、シリンダ、機械用部材として、配管継手、バルブ、弁棒、熱交換器部品、給排水コック、シリンダ、ポンプ、工業用配管部材として、配管継手、バルブ、弁棒などに好適に適用できる。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の第1の態様である快削性銅合金鋳物は、75.0mass%以上78.5mass%以下のCuと、2.95mass%以上3.55mass%以下のSiと、0.07mass%以上0.28mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.14mass%以下のPと、0.022mass%以上0.20mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
前記不可避不純物であるFe,Mn,Co,及びCrの合計量は、0.08mass%未満であり、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
76.2≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦80.3、
61.2≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.8、
の関係を有するとともに、
金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
25≦(κ)≦65、
0≦(γ)≦2.0、
0≦(β)≦0.3、
0≦(μ)≦2.0、
96.5≦f3=(α)+(κ)、
99.2≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
0≦f5=(γ)+(μ)≦3.0、
29≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦66、
の関係を有するとともに、
γ相の長辺の長さが40μm以下であり、μ相の長辺の長さが25μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする。
本発明の第3態様である快削性銅合金鋳物は、75.5mass%以上77.8mass%以下のCuと、3.1mass%以上3.4mass%以下のSiと、0.10mass%以上0.27mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.13mass%以下のPと、0.024mass%以上0.15mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
前記不可避不純物であるFe,Mn,Co,及びCrの合計量は、0.08mass%未満であり、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
76.6≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦79.6、
61.4≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.6、
の関係を有するとともに、
金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
30≦(κ)≦56、
0≦(γ)≦1.2、
(β)=0、
0≦(μ)≦1.0、
98.0≦f3=(α)+(κ)、
99.5≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
0≦f5=(γ)+(μ)≦1.5、
32≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦58、
の関係を有するとともに、
γ相の長辺の長さが40μm以下であり、μ相の長辺の長さが15μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする。
本発明の第の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、κ相に含有されるSnの量が0.08mass%以上0.40mass%以下であり、κ相に含有されるPの量が0.07mass%以上0.22mass%以下であることを特徴とする。
本発明の第の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、シャルピー衝撃試験値が23J/cm以上60J/cm以下であり、かつ、室温での0.2%耐力に相当する荷重を負荷した状態で150℃で100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であることを特徴とする。
なお、シャルピー衝撃試験値は、Uノッチ形状の試験片での値である。
本発明の第の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、凝固温度範囲が40℃以下であることを特徴とする。
本発明の第の態様である快削性銅合金鋳物は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物において、水道用器具、工業用配管部材、液体と接触する器具、自動車用部品、又は電気製品部品に用いられることを特徴とする。
本発明の第の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
溶解、鋳造工程を有し、
前記鋳造後の冷却において、575℃から510℃の温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、次いで470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする。
本発明の第10の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第1〜の態様のいずれかの快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
溶解、鋳造工程と、前記溶解、鋳造工程の後に実施する熱処理工程と、を有し、
前記溶解、鋳造の工程では、鋳物を380℃未満又は常温まで冷却し、
前記熱処理の工程では、(i)前記鋳物を、510℃以上575℃以下の温度で、20分から8時間保持するか、又は(ii)最高到達温度が620℃から550℃の条件で前記鋳物を加熱し、かつ575℃から510℃までの温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、
次いで、470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする。
本発明の第11の態様である快削性銅合金鋳物の製造方法は、本発明の第10の態様の快削性銅合金鋳物の製造方法において、前記熱処理の工程では、前記(i)の条件で前記鋳物を加熱し、かつ熱処理温度及び熱処理時間は、下記の関係式を満たすことを特徴とする。
800≦f7=(T−500)×t
Tは、熱処理温度(℃)であり、Tが540℃以上の場合はT=540とし、tは、510℃以上575℃以下の温度範囲の熱処理時間(分)である。

Claims (12)

  1. 75.0mass%以上78.5mass%以下のCuと、2.95mass%以上3.55mass%以下のSiと、0.07mass%以上0.28mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.14mass%以下のPと、0.022mass%以上0.20mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
    Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
    76.2≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦80.3、
    61.2≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.8、
    の関係を有するとともに、
    金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
    25≦(κ)≦65、
    0≦(γ)≦2.0、
    0≦(β)≦0.3、
    0≦(μ)≦2.0、
    96.5≦f3=(α)+(κ)、
    99.2≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
    0≦f5=(γ)+(μ)≦3.0、
    29≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦66、
    の関係を有するとともに、
    γ相の長辺の長さが50μm以下であり、μ相の長辺の長さが25μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする快削性銅合金鋳物。
  2. さらに、0.02mass%以上0.08mass%以下のSb、0.02mass%以上0.08mass%以下のAs、0.02mass%以上0.30mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の快削性銅合金鋳物。
  3. 75.5mass%以上77.8mass%以下のCuと、3.1mass%以上3.4mass%以下のSiと、0.10mass%以上0.27mass%以下のSnと、0.06mass%以上0.13mass%以下のPと、0.024mass%以上0.15mass%以下のPbと、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、
    Cuの含有量を[Cu]mass%、Siの含有量を[Si]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Pの含有量を[P]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%とした場合に、
    76.6≦f1=[Cu]+0.8×[Si]−8.5×[Sn]+[P]+0.5×[Pb]≦79.6、
    61.4≦f2=[Cu]−4.4×[Si]−0.8×[Sn]−[P]+0.5×[Pb]≦62.6、
    の関係を有するとともに、
    金属組織の構成相において、α相の面積率を(α)%、β相の面積率を(β)%、γ相の面積率を(γ)%、κ相の面積率を(κ)%、μ相の面積率を(μ)%とした場合に、
    30≦(κ)≦56、
    0≦(γ)≦1.2、
    (β)=0、
    0≦(μ)≦1.0、
    98.0≦f3=(α)+(κ)、
    99.5≦f4=(α)+(κ)+(γ)+(μ)、
    0≦f5=(γ)+(μ)≦1.5、
    32≦f6=(κ)+6×(γ)1/2+0.5×(μ)≦58、
    の関係を有するとともに、
    γ相の長辺の長さが40μm以下であり、μ相の長辺の長さが15μm以下であり、α相内にκ相が存在していることを特徴とする快削性銅合金鋳物。
  4. さらに、0.02mass%超え0.07mass%以下のSb、0.02mass%超え0.07mass%以下のAs、0.02mass%以上0.20mass%以下のBiから選択される1又は2以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の快削性銅合金鋳物。
  5. 前記不可避不純物であるFe,Mn,Co,及びCrの合計量は、0.08mass%未満であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の快削性銅合金鋳物。
  6. κ相に含有されるSnの量が0.08mass%以上0.40mass%以下であり、κ相に含有されるPの量が0.07mass%以上0.22mass%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の快削性銅合金鋳物。
  7. シャルピー衝撃試験値が23J/cm以上60J/cm以下であり、かつ、室温での0.2%耐力に相当する荷重を負荷した状態で150℃で100時間保持した後のクリープひずみが0.4%以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の快削性銅合金鋳物。
  8. 凝固温度範囲が40℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の快削性銅合金鋳物。
  9. 水道用器具、工業用配管部材、液体と接触する器具、自動車用部品、又は電気製品部品に用いられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の快削性銅合金鋳物。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載された快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
    溶解、鋳造工程を有し、
    前記鋳造後の冷却において、575℃から510℃の温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、次いで470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする快削性銅合金鋳物の製造方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載された快削性銅合金鋳物の製造方法であって、
    溶解、鋳造工程と、前記溶解、鋳造工程の後に実施する熱処理工程と、を有し、
    前記溶解、鋳造の工程では、鋳物を380℃未満又は常温まで冷却し、
    前記熱処理の工程では、(i)前記鋳物を、510℃以上575℃以下の温度で、20分から8時間保持するか、又は(ii)最高到達温度が620℃から550℃の条件で前記鋳物を加熱し、かつ575℃から510℃までの温度領域を0.1℃/分以上、2.5℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、
    次いで、470℃から380℃までの温度領域を2.5℃/分超え、500℃/分未満の平均冷却速度で冷却することを特徴とする快削性銅合金鋳物の製造方法。
  12. 前記熱処理の工程では、前記(i)の条件で前記鋳物を加熱し、かつ熱処理温度及び熱処理時間は、下記の関係式を満たすことを特徴とする請求項11に記載の快削性銅合金鋳物の製造方法。
    800≦f7=(T−500)×t
    Tは、熱処理温度(℃)であり、Tが540℃以上の場合はT=540とし、tは、510℃以上575℃以下の温度範囲の熱処理時間(分)である。
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