図1は、現金自動取引装置101の外観を示す斜視図である。この現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を媒体とし、前面を接客面として利用者による預け入れ、支払い、振り込みなどの処理を行なうものである。以下に内部構造について説明する。現金自動取引装置101には、上部正面板101aに設けられたカードスロット102aと連通し利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102と、取引の内容を表示および入力する顧客操作部105とが備えられている。また、下側には、紙幣を処理する紙幣取扱装置1が備えられており、上部の傾いた正面板101bに入出金口のシャッタ20aが設けられている。現金自動取引装置101全体は、装置筐体101cで囲われている。
図2は、現金自動取引装置101の制御関係を示す制御ブロック図である。現金自動取引装置101に納められたカード・明細票処理機構102、紙幣取扱装置1および顧客操作部105は、それぞれUSB等の回線によって本体制御部107に接続されており、本体制御部107の制御下で必要な動作を行なう。また本体制御部107には、他に、外部インタフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dがバス接続等により接続されており、必要なデータのやりとりを行なう。例えば、本体制御部107は、プロセッサとメモリを有していてよい。なお、101dは、上記各機構部分や構成部分に電力を供給する電源部である。
図3は、現金自動取引装置101の中に配置される紙幣取扱装置1の制御関係を示す制御ブロック図である。紙幣取扱装置1の制御部10は、現金自動取引装置101の本体制御部107と回線を介して接続され、本体制御部107からの指令および入出金機である紙幣取扱装置1の状態検出に応じて紙幣取扱装置1の制御を行い、また、紙幣取扱装置1の状態を必要に応じて本体制御部107に送る。例えば、制御部10は、プロセッサとメモリを有していてよい。この紙幣取扱装置1は、各ユニット(紙幣入出金部としての紙幣入出金口20、紙幣判別部30、一時収納部40、紙幣搬送路50、回収庫60、紙幣収納部としてのリサイクル庫71〜74等)に駆動モータや電磁ソレノイドやセンサなど(図示せず)も有し、後述の取引に応じて、センサで状態を監視しながら、アクチュエータ(駆動モータや電磁ソレノイド等)を駆動制御する。なお、紙幣搬送路50は、例えば、ローラ又は搬送ベルトを含んでよい。
図4A、4Bは、紙幣取扱装置1の構成を示す側面図である。紙幣取扱装置1は、大別して、上部紙幣機構1aと下部紙幣機構1bから構成され、図示省略されている制御部10に接続されている。
上部紙幣機構1aは、主に利用者との紙幣の授受に必要な機構が集められ、利用者が紙幣の投入又は取り出しを行なう紙幣入出金口20(紙幣入出金部ともいう)と、紙幣入出金口20から一枚ずつ繰出された紙幣の判別を行なう紙幣判別部30と、入金した紙幣を取引成立までの間一時的に収納する一時収納部40と、主に偽券や取り忘れ紙幣を回収する回収庫60から構成される。以下、上部紙幣機構1aについて詳述する。
接客面となる前面側に紙幣入出金口20が配置され、該紙幣入出金口20の後方に一時収納部40が隣接して配置されている。一時収納部40の下方には、該一時収納部40と少し離間して紙幣判別部30が配置されている。すなわち、一時収納部40の底面と紙幣判別部30の上面とを挟み後述する第2搬送路を通すことができる程度の空間を隔てて、一時収納部40と紙幣判別部30とが上下に配置されている。
紙幣入出金口20は、上方のシャッタ20aが開いた状態で上から投入された紙幣を一枚ずつ下方へ繰り出す紙幣繰出部20b(繰出し部ともいう)と、下方から一枚ずつ搬送されてきた紙幣を集積する紙幣集積部20c(集積部ともいう)とが、この順で前後に配置されて構成されている。なお、紙幣入出金口20の上部と一時収納部40の上面は、それぞれはほぼ同一の高さとなってよい。また、一時収納部40の後面は、紙幣判別部30の後面より前方に位置してよい。すなわち、紙幣取扱装置1は、一時収納部40は、紙幣入出金口20の水平後方及び紙幣判別部30の垂直上方の空間に配置されることにより、装置の小型化が可能としてもよい。
前記紙幣繰出部20bの下端から紙幣判別部30の前面までは、前後方向に伸びる第1搬送路としての搬送路51aおよび搬送路51bにより接続されている。搬送路51aの途中には、下部紙幣機構1bへ紙幣を振り分けるための第2分岐部としての紙幣振り分けゲート50cが設けられている。紙幣判別部30の後面から一時収納部40までは、第2搬送路としての搬送路52、54により接続されている。搬送路52は、紙幣判別部30の後面から一端が横U字型又は横J字型のように上方へ立ち上がり、紙幣判別部30の上方を前方へ略水平に進んで紙幣判別部30の上方位置、一時収納部40の下方位置の上記空間に設けられた第1分岐部としての紙幣振り分けゲート50aに接続されている。この搬送路52は、特許文献1に示すように紙幣判別部30後方で斜めに上がっていく搬送路ではなく、2本の水平な搬送路とそれをつなぐ湾曲した搬送路で横U字型、横J字型のようにシンプルに構成することで、もし紙幣判別部30が紙幣を判定する時間をかせぐ時間が延びて搬送路長を変える必要がある場合に、容易に変更できる構成となっている。すなわち、搬送路52は、横U字型、横J字型のように略半円状の湾曲部の両端または一端から伸びた腕部が、他の腕部または紙幣判別部30の上面に対して平行となっており、例えば、上記腕部と湾曲部との間に新たな腕部を着脱して接続する等して搬送路52の搬送路長を変更することができるようになっている。言い換えると、紙幣取扱装置1は、搬送路52の湾曲部と、湾曲部から水平に伸びる搬送路とが、着脱可能である。また、水平に伸びる搬送路は、搬送路長を増減可能に構成している。
搬送路54は、紙幣振り分けゲート50aから一時収納部40までを接続している。紙幣振り分けゲート50aから紙幣集積部20cの下端までは、第三搬送路としての搬送路55により接続されている。第1分岐部としての紙幣振り分けゲート50aは、鑑別で紙幣を判別する時間をかせぎながら、かつ、搬送路55の搬送路長を最短とするためにできるだけ一時収納部40と紙幣判別部30の間の上記空間前方に配置されている。また、搬送路54は、一時収納部40と紙幣振り分けゲート50aとの間を搬送路52に対して略垂直に設けられ、一時収納部40から搬送路52までの長さが最短となるように構成されている。また、一時収納部40の集積又は繰出しを行う集積繰出し口は、前記一時収納部40の前部及び下面にあってよい。また、一時収納部40は、立位状態で紙幣を集積する形態であってよい。搬送路52又は搬送路55の搬送距離を短くするとともに装置の小型化が可能となる。
紙幣入出金口20と紙幣判別部30とを繋ぐ搬送路51aの途中に設けられた第2分岐部としての紙幣振り分けゲート50cの下部には、下部紙幣機構1bとの紙幣の受け渡しを行なう第4搬送路としての搬送路57が設けられている。この搬送路57は、上下方向に伸びている。
これらの搬送路のうち少なくとも51b、52、54、57は、紙幣が上流から下流および下流から上流のどちらの方向でも搬送可能な双方向搬送路で構成されている。すなわち、51b、52、54、57それぞれの搬送路は、取引処理にて、一本で双方向に紙幣を搬送する双方向搬送路であってよい。また、51a、55、56(図4B参照)は、取引処理にて、一方向にのみ紙幣を搬送する一方向搬送路であってよい。なお、一方向搬送路は、ジャム処理など、取引処理以外で逆方向に紙幣を搬送することがあってもよい。
次に図4Bを用いて、第2紙幣収納部としての回収庫60、第5搬送路としての搬送路56、第3分岐部としての紙幣振り分けゲート50bについて説明する。図4Bは、図4Aのレイアウトにおいて、回収庫60、搬送路56、紙幣振り分けゲート50bを追加したものである。通常、回収庫60には偽券や取り忘れ紙幣等を集積する。図4Bでは、回収庫60は搬送路52の上側であって、一時収納部40の水平後方に実装される。回収庫60と搬送路52は、搬送路52の途中に実装された紙幣振り分けゲート50bを介して、搬送路56によって接続されている。なお偽券回収等の運用が必要ない場合は、回収庫60、搬送路56、紙幣振り分けゲート50bは実装されなくてもよい。また、上部紙幣機構1aの前後方向の長さをコンパクトにするため、紙幣振り分けゲート50bは紙幣振り分けゲート50aの後方に配置され、かつできるだけ上記空間前方に配置されることが望ましい。ここで、回収庫60は、再度繰出されることのない紙幣を簡易な構成で集積するために、垂直方向に紙幣を集積してもよい。この場合、紙幣を回収庫60に集積する回収庫60の集積口は、回収庫60の前部側面(垂直面)に有してよい。また、回収庫60は、その用途によっては、紙幣を集積する集積部又は繰出しする繰出し部を有するものであってもよいが、紙幣を繰出す繰出し部を有しない(繰出し部又は集積部のうち紙幣を集積する集積部だけを有しても)ようにすることで、回収庫60を簡素化できる。また、この場合、搬送路56は、紙幣振り分けゲート50bから回収庫60の集積口へ斜め上方に紙幣を搬送する搬送路であってよい。なお、顧客要望や用途によっては、回収庫60は、水平方向に紙幣を集積するものであってよい。この場合、後述する実施例2の図13Aの回収庫60と同様の構成であってよい。回収庫60の下方面に集積口を設けることで、搬送路56の距離を短縮することが可能となる。
また、紙幣振り分けゲート50b、回収庫60及び搬送路56は、紙幣取扱装置から取り外し可能としてもよい。ジャム紙幣の除去操作が容易となる。また、第3分岐部、第2紙幣収納部及び第5搬送路を前述のスライド部により、同時に全部纏めて(一度に)取り外せるようにすることで操作性を高めることが可能となる。
次に下部紙幣機構1bについて説明する。
下部紙幣機構1bには、金種別に紙幣を収納、再繰り出しするためのリサイクル庫71〜74(第1紙幣収納部ともいう。)と、リサイクルに供しない紙幣を収納する為の入金庫61が実装されている。また前記各リサイクル庫71〜74、入金庫61の上部には、前記上部紙幣機構1a下部に設けられた搬送路57と接続する双方向に搬送可能な前後方向に伸びる略水平な搬送路58が設けられている。さらにリサイクル庫71〜74、入金庫61上部には、それぞれに収納すべき紙幣を振り分ける為の紙幣振り分けゲート50d〜50gが設けられている。
第1紙幣収納部を含む下部紙幣機構1bを後方にスライド可能とし、第3分岐部、第2紙幣収納部及び第5搬送路と同様に後方から取り外し可能とすることにより、取外し操作の操作性を高めることが可能となる。
次に、図5、6を用いて入金取引処理の際の紙幣取扱装置1の動作について説明する。図5は、入金された紙幣を計数する入金計数処理を、図6は、計数された紙幣をリサイクル庫へ収納する入金収納処理を示す。
図5において、紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bは、入金された複数枚の紙幣を一枚ずつ分離して下方へ繰り出す。紙幣繰出部20bから下方へ繰り出された紙幣は、搬送路51a、51bにより略水平に後方へ搬送され、紙幣判別部30を前面から後方へ通過する。紙幣判別部30は、内部に実装されているセンサ等によって、通過する紙幣の真偽、金種、および正損状態を判別する。紙幣判別部30を通過した紙幣は、紙幣判別部30の後面から搬送路52によって一旦上方へ搬送され、さらに前方へ略水平に搬送される。この搬送路52にて搬送している間に、前記紙幣判別部30による判別が完了すると共に、該判別結果による紙幣振り分けゲート50aの切り替えが実行される。このとき、紙幣振り分けゲート50bは搬送路56を遮断する向きに切り替えられている。
紙幣判別部30によって受け入れ可能な紙幣であると判別された場合は、紙幣振り分けゲート50aを一時収納部40へ向けて切り替え、搬送路54によって紙幣を一時収納部40内に集積する。紙幣判別部30によって受け入れできない紙幣であると判別された場合は、紙幣振り分けゲート50aを紙幣集積部20cへ向けて切り替え、入金リジェクト紙幣として紙幣集積部20cに収納し、その後、図示しない押板によってシャッタ20a下部に移動した後、シャッタ20aが開いて利用者に返却される。
上記のように、2本の水平な搬送路とこれらをつなぐ湾曲した搬送路とにより搬送路52が構成され、紙幣振り分けゲート50aが上記空間前方に配置されているため、上記計数処理では、搬送路55の搬送路長を最短としつつ紙幣識別部30により識別された紙幣を安定して搬送できるとともに、紙幣識別部30の精度に応じて搬送路長を変更することができる。例えば、紙幣識別部30の識別精度が高精度である場合には識別に時間がかかるため搬送路を長くすることができる。
このようにして紙幣入出金口20に投入された全ての紙幣を処理し、入金された金額と紙幣取扱装置1の計数した金額とが一致し、利用者によって顧客操作部105(図2参照)で入金取引確定が入力されると、一時収納部40に一時収納していた紙幣をリサイクル庫71〜74へ収納する収納処理を実行する。その処理について図6を用いて説明する。
この収納処理では、まず紙幣振り分けゲート50a、50bを一時収納部40から紙幣判別部30までを接続するように切り替え、紙幣振り分けゲート50cを紙幣判別部30と搬送路57を接続するように切り替える。一時収納部40によって一枚ずつ繰り出された紙幣は、搬送路54、紙幣振り分けゲート50a、50b、搬送路52通って紙幣判別部30へ搬送される。紙幣判別部30を通過した紙幣は、搬送路51bによって搬送され、紙幣振り分けゲート50cによって搬送路57へ搬送される。その後、紙幣は、下部紙幣機構1bの搬送路58によって搬送され、金種などによって切り替えられた紙幣振り分けゲート50d〜50gで振り分けられて、入金庫61およびリサイクル庫71〜74のいずれか一つに収納される。
なお、この収納処理の間に紙幣判別部30により紙幣の金種等を判別し、この判別結果によって紙幣振り分けゲート50d〜50gを切り替える構成とした場合、紙幣を搬送路51b、57で搬送している間に、判別を完了して紙幣振り分けゲート50d〜50gを切り替えることができる。
上記のように、2本の水平な搬送路とこれらをつなぐ湾曲した搬送路とにより搬送路52が構成され、紙幣振り分けゲート50aが上記空間前方に配置されているため、上記収納処理では、搬送路55の搬送路長を最短としつつ紙幣識別部30を通過させる紙幣を安定して搬送できる。また、搬送路54が搬送路52に対して略垂直になっているため、立位状態で一時収納される紙幣を繰出す際にジャムの発生を抑えることができる。
次に、出金取引処理の際に紙幣取扱装置1が実行する動作について図7、8を用いて説明する。図7は、出金識別処理を、図8は出金収納処理を示す。出金取引処理では、各リサイクル庫71〜74から金種別に紙幣を一枚ずつ所定枚数まで繰り出す。繰り出された紙幣は、搬送路58、57、51bによって紙幣判別部30へ搬送される。紙幣判別部30は、通過する紙幣が出金可能な紙幣か否かを判定する。出金可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート50aを紙幣判別部30と紙幣集積部20cを接続するように切り替え、搬送路52、55により紙幣集積部20cまで紙幣を搬送し、紙幣集積部20cに紙幣を集積する。出金不可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート50aを紙幣判別部30と一時収納部40を接続するように切り替え、紙幣を一時収納部40へ搬送する。なお、この処理においては、紙幣振り分けゲート50bは搬送路56を遮断する向きに切り替えられている。
上記のように、2本の水平な搬送路とこれらをつなぐ湾曲した搬送路とにより搬送路52が構成され、紙幣振り分けゲート50aが上記空間前方に配置されているため、上記出金処理(出金識別処理)でも図5の場合と同様の効果を得ることができる。
紙幣集積部20cに所定枚数の紙幣が集積された後、図8に示すように一時収納部40に集積されたリジェクト紙幣を紙幣切替ゲート50a、搬送路52、紙幣判別部30、搬送路51b、搬送路57、紙幣振り分けゲート50dを経由して入金庫61に集積する。このようにして紙幣の搬送動作が終了すると、紙幣入出金口20のシャッタ20aを開き、紙幣集積部20cに集積した紙幣を利用者が抜き取れる状態となる。利用者によって紙幣が抜き取られると、シャッタ20aを閉じ、出金処理を終了する。
上記のように、2本の水平な搬送路とこれらをつなぐ湾曲した搬送路とにより搬送路52が構成され、紙幣振り分けゲート50aが上記空間前方に配置されているため、上記出金処理(出金収納処理)でも図6と同様の効果を得ることができる。
次に前記入金取引処理の最中に、偽券が混在していた場合を用いて、紙幣判別部30を通過したのち、紙幣判別部30の判別により回収庫60へ搬送されるべきと判断された紙幣の回収方法について図9、10を用いて説明する。
まず、前記入金取引処理のときに、紙幣判別部30において、偽券かどうかを判別する。判別までの時間は前記と同様に、搬送路52を通過中に判定する。次に、偽券と判別した時に一旦搬送路52を停止する。その後、紙幣振り分けゲート50bを、搬送路52を遮断する方向に切替え、その後、図10に示すように、搬送路52を逆転させて搬送方向を切り替えることで、偽券は紙幣振り分けゲート50b、搬送路56を経由して回収庫60に集積される。偽券を回収庫60に集積した後、搬送路中に残っている紙幣及び紙幣入出金口20に残っている紙幣の入金取引処理を継続する。
また、入金計数処理又は出金識別処理にて、紙幣判別部30により、真券ではあるがリサイクルに適さない紙幣(例えば、汚損券、切れ券)と判別された場合に、真券ではあるがリサイクルに適さない紙幣は、一時収納部40に一時的に保管され、入金収納処理又は出金収納処理で、回収庫60に当該紙幣を搬送してもよい。なお、入金計数処理又は出金識別処理にて、搬送された紙幣の順番に判別結果を記憶しておき、入金収納処理又は出金収納処理にて、当該結果に基づき、真券ではあるがリサイクルに適さない紙幣を特定し、当該紙幣を搬送路52及び搬送路56を経由して回収庫60に搬送すればよい。
上記のように、2本の水平な搬送路とこれらをつなぐ湾曲した搬送路とにより搬送路52が構成され、紙幣振り分けゲート50aが上記空間前方に配置され、さらに紙幣振り分けゲート50aの後方かつ上記空間前方に紙幣振り分けゲート50bが配置されているため、上記偽券回収処理では、搬送路54の搬送路長を最短としつつ紙幣識別部30により識別された紙幣を安定して搬送できるとともに、紙幣識別部30の精度に応じて搬送路長を変更することができ、また、偽券と判別された紙幣を安定して搬送できる。
また、偽券と判別した場合に、搬送路52を停止し、搬送路52の搬送方向を変更し、偽券を回収庫60に搬送することで、偽券に関するルールを満たしつつ、偽券を含まない入金取引の確認を受け付けることを、搬送路の単純化及び装置の小型化をした紙幣取扱装置1にて、実現することが可能となる。
次に取り忘れ回収処理の際にについて紙幣取扱装置1が実行する動作について図11、12を用いて説明する。
利用者が出金処理または入金処理で紙幣入出金口20にある紙幣を取り忘れた場合、紙幣取扱装置1はそれらの紙幣を装置内に取り込む必要がある。図11に示すように、とり忘れた紙幣を回収して取り込む場合は、入金処理の時と同じように紙幣繰出部20bから紙幣を繰り出して、一時収納部40に集積する。その後、図12に示すように、それらの紙幣を回収庫60に集積する場合は、紙幣振り分けゲート50a、50bを、一時収納部40と回収庫60を接続するように切り替えて図12に示すように紙幣を搬送する。これらの場合も、図5、9に示した場合と同様の効果を得ることができるとともに、搬送路54が搬送路52に対して略垂直になっているため、立位状態で一時収納される紙幣を繰出す際にジャムの発生を抑えることができる。また、入金庫61に集積する場合は、前述の収納処理のときと同じように、一時収納部40から入金庫61まで搬送する(図13)。この場合も図8と同様の効果を得ることができる。
以上説明した実施例は利用頻度の高い主要な搬送路(例えば、入金取引、出金取引での利用頻度が高い52、54、55)の搬送距離の短縮化、装置を小型化する技術である(実施例1)。
以下に上記実施例1とは異なる別の実施例について説明する。上記実施例1では、回収庫60への搬送頻度に関わらず、利用頻度の高い主要搬送路の搬送距離の短縮化、装置を小型化する技術について言及した。しかし、回収庫60への搬送頻度は、国、地域によって異なり、回収庫60への搬送頻度が多い場合に、より有効な搬送距離の短縮化、装置を小型化する技術に関して、図13A、図13B、図13Cを用いて、別の実施例(実施例2)を説明する。
図13Aでは、回収庫60は一時収納部40の前方、紙幣入出金口20の後方に配置されている。言い換えると、回収庫60は、一時収納部40と紙幣出金口20の間に配置されている。また、回収庫60は、紙幣判別部30の上方に配置されている。また、回収庫60に接続する搬送路56及び紙幣振り分けゲート50bは、紙幣振り分けゲート50aの下流であって、紙幣判別部30の上方に配置される。
また実施例2の場合は、実施例1と同様に一時収納部40も配置してもよい。例えば、回収庫60及び一時収納部40を、紙幣入出金口20の水平後方及び紙幣判別部30の垂直上方に配置してもよい。また、紙幣振り分けゲート50a及び50bを、紙幣判別部30の垂直上方に配置してもよい。一時収納部40への搬送路54及び回収庫60への搬送路56を紙幣判別部30の垂直上方に、略垂直方向に延伸するように配置し、一時収納部40の下面に集積又は繰出しを行う集積繰出し口を、回収庫60の下面に紙幣の集積口を配置してもよい。
また、回収庫60は立位集積とする(水平方向に集積する)ことにより、集積入り口は回収庫60の下面に配置し、搬送路56を回収庫60の直下に配置されることになり、実施例1での搬送路56と比較してより短くしてもよい。さらには、回収庫60の集積口は、回収庫60の後部下面に配置することで、前部に配置した場合に比較し、回収庫60へ搬送される紙幣の搬送距離を短くすることができる。
なお、顧客要望や用途によっては、回収庫60は、垂直方向に紙幣を集積するものであってよい。この場合、実施例1の図4Bの回収庫60と同様の構成であってよい。回収庫60の側面上方から紙幣を集積することにより、回収庫60の構成を簡易化することが可能となる。また、回収庫60は、その用途によっては、紙幣を集積する集積部又は繰出しする繰出し部を有するものであってもよいが、紙幣を繰出す繰出し部を有しない(繰出し部又は集積部のうち紙幣を集積する集積部だけを有しても)ようにすることで、回収庫60を簡素化できる。
以下、図13Bを用いて入金取引処理の最中に、偽券が混在していた場合の回収方法について説明する。まず、前記入金取引処理のときに、紙幣判別部30において、偽券かどうかを判別する。判別までの時間は前記と同様に、搬送路52を通過中に判定する。判定結果が、受け入れ可能な紙幣の場合、紙幣振り分けゲート50aを振り分けて一時収納部40に収納し、偽券の場合は、実施例1のときのように搬送路を一旦停止することはせずに、振り分けゲート50bを動作させることで、そのまま直接回収庫60に回収する。この場合、搬送路52を逆転しての振り分けをする必要がなく、確実に紙幣の振り分けをすることができる。
次に図13Cを用いて取り忘れ回収の動作方法について説明する。利用者が出金処理または入金処理で紙幣入出金口20にある紙幣を取り忘れた場合は、図13Cに示すように、紙幣入出金口20から紙幣振り分けゲート50bを経由して直接回収庫60に集積する。なお、それ以外の取引については実施例1と同じであり、記述を省略する。
次に上記処理において紙幣判別部30や紙幣入出金口20、一時収納部40、回収庫60、搬送路や紙つまり(ジャム)が発生した場合の上部紙幣機構1aでの紙幣除去処理について図14を用いて説明する。図14では、搬送路52の湾曲部と下側の腕部が一体化し、搬送路52の上側の腕部の一部が引き出された部位と切り離されている様子を示している。
紙幣搬送中にジャムが発生した場合はまず搬送路を停止する。その後、ジャム紙幣を除去する場合は、係員が、図示しないスライド部で保持された紙幣判別部30と、搬送路52の一部を矢印A方向に引き出しする。上記スライド部には、例えば、紙幣識別部30に設けられた車輪や軸受け引き出し方向に移動させるレールが設けられている。
搬送路51bや、搬送路52の引き出しされてない部分には、引き出しされた紙幣判別部30の空間xから手を入れてアクセスすることでジャムとなっている紙幣を取り除く。すなわち、搬送路51bや、搬送路52の引き出しされてない部分は、空間xに露出されている。一方、紙幣判別部30内の紙幣除去は、矢印A方向に引き出しした後、紙幣判別部30の上部30aを矢印B方向に開閉することで、紙幣判別部30の内部にアクセスして紙幣を除去する。なお、紙幣入出金口20、一時収納部40、回収庫60については、例えば、これらの各部の上面に設けられた蓋や開口部から直接紙幣収納部にアクセスして紙幣を除去する。
すなわち、紙幣取扱装置1は、紙幣入出金口20又は一時収納部40に対して、紙幣判別部30をスライド(水平移動)するスライド部を有するものであればよい。また、紙幣取扱装置1は、紙幣入出金口20又は一時収納部40に対して、紙幣判別部30より後方にあり、紙幣判別部30の前方又は上方にある搬送路と接続される搬送路及び紙幣判別部30を一括して、スライドするスライド部を有するものでもよい。また、紙幣判別部30の水平後方の搬送路は、搬送路52のみであってよい。さらには、紙幣判別部30の水平後方には、紙幣を収納するユニットを保持しない構成であってもよい。また、図示はしていないが、横方向にスライドするスライド部であってもよい。当該構成により、紙幣判別部30又は搬送路52の一部へのアクセスが容易となる。
次に紙幣入出金口20から紙幣と混在して投入された紙幣以外の硬貨等の異物の処理方法ついて図15を用いて説明する。異物回収箱80aは、略立位状態で紙幣を受け入れる紙幣入出金口20の下部に実装されている。また、異物回収箱80bは搬送路51aの垂直部の下方で、紙幣振り分けゲート50cの前方に実装されている。紙幣に混ざって投入された硬貨等異物は、紙幣入出金口20に複数枚の紙幣が投入されたときに、自重によって矢印T方向、異物回収箱80aに回収される。そのときに複数枚の紙幣に挟まったままの状態等で回収しきれない異物は、紙幣を一枚ずつ分離して下方へ繰り出すときに、搬送路51aの垂直部分に沿って自重によって落下し、そのまま矢印U方向、異物回収箱80bに回収される。すなわち、紙幣取扱装置1は、異物回収箱80bを紙幣入出金口20の紙幣繰出部20bに接続された搬送路51aの下方に有することで、紙幣が分離されたことにより、落下する異物を収集することが可能となる。
以上説明したように、上述の実施例では、少なくとも以下の特徴を有する。
一時収納部40は、紙幣判別部30の垂直上方及び前記紙幣入出金部の水平後方に配置され、紙幣入出金部繰出し部から紙幣判別部30の前部までの間で紙幣を搬送する第1搬送路と、紙幣判別部30の後部から湾曲部を経て紙幣判別部30の上方を通過し、一時収納部40までの間で紙幣を搬送する第2搬送路と、第2搬送路から入出金部の集積部へ紙幣を搬送する第3搬送路と、第2搬送路から第3搬送路に紙幣を振りわける第1分岐部とを備え、第1分岐部が紙幣判別部30の垂直上方に配置される。これにより、上部ユニットを小型化し、主要な搬送路を短くすることができる。
また、第2の搬送路は、湾曲部から伸びた紙幣判別部30と平行な搬送路を有してもよい。紙幣判別部30の種類が変わった場合であっても、紙幣判別部30から第1分岐部までの調整が容易となる。
また、紙幣判別部30の水平後方の搬送路は、第2搬送路のみであってよい。紙幣判別部30後方での作業が容易となる。
また、紙幣判別部をスライドさせる引き出し部を有してもよい。紙幣判別部30の取出しが容易となる。
また、紙幣判別部30がスライドされた場合に、紙幣判別部30がスライドされる前に配置されていた空間に第1搬送路及び第2搬送路を露出させてもよい。第1及び第2搬送路の紙幣除去が容易となる。
また、紙幣入出金部に投入された紙幣又は紙幣入出金部から放出される紙幣を収納する第1紙幣収納部と、第1搬送路から第1紙幣収納部へ紙幣を搬送する第4搬送路と、第1搬送路から第4搬送路へ紙幣の搬送方向を切り替える第2分岐部とを備え、第2分岐部は、紙幣判別部30の前方であって、紙幣入出金部の下方に配置されてもよい。前述の上部ユニットを採用した場合に、装置全体を小型化し、搬送路を短くすることができる。
紙幣を集積する第2紙幣収納部と、第2搬送路から第2紙幣収納部へ紙幣を搬送する第5搬送路と、第2搬送路から第5搬送路へ紙幣を振り分ける第3分岐部を備え、第2紙幣収納部は、紙幣判別部30の上方及び一時収納部40の水平後方に配置され、第3分岐部は判別部と第1分岐部との間及び紙幣判別部30の上方に配置されてもよい。第2紙幣収納部の大きさが、第1分岐部の配置に影響しないため、主要な搬送路を短くすることが容易となる。また、第2紙幣収納部は、紙幣を縦方向(上下方向)に集積するものとしてよい。第2紙幣収納部を簡素化することができる。
また、第3分岐部を通過し、第2搬送路の第1分岐部へ向かって搬送される紙幣が紙幣判別部30により第2紙幣収納庫に搬送すべき紙幣と判別された場合、第2の搬送路は、第1分岐部へ向かって搬送される紙幣の搬送方向を切り替えて、第3分岐部まで搬送し、第5搬送路は、第3分岐部まで搬送された紙幣を収納庫に搬送してもよい。偽券があった場合でも、取引確定をすることが可能となる。
また、第3分岐部、第2紙幣収納部、第5搬送路は、紙幣取扱装置から取り外し可能としてもよい。ジャム紙幣の除去操作が容易となる。また、第3分岐部、第2紙幣収納部及び第5搬送路を前述のスライド部により、同時に全部纏めて(一度に)取り外せるようにすることで操作性を高めることが可能となる。また、紙幣判別部30がスライドされた場合に、紙幣判別部30がスライドされる前に配置されていた空間に第1搬送路及び第2搬送路を露出させることで、各搬送路へのアクセスが容易となる。
また、第3分岐部、第2紙幣収納部、第5搬送路及び第1紙幣収納部を、いずれも紙幣取扱装置の後方から取り外し可能とすることにより、取外し操作の操作性を高めることが可能となる。
また、紙幣を集積する第2紙幣収納部と、第2搬送路から第2紙幣収納部へ紙幣を搬送する第5搬送路と、第2搬送路から第5搬送路へ紙幣を振り分ける第3分岐部を備え、第2紙幣収納部は、紙幣判別部30の上方及び一時収納部40の水平前方に配置され、第3分岐部は、第1分岐部と集積部との間及び紙幣判別部30の上方に配置されてもよい。搬送制御を容易にすることができる。また、第2紙幣収納部は、紙幣を横方向に(立位状態で)集積するものとし、第2紙幣収納部の集積口を第2紙幣収納部の下面に配置してよい。横面に集積口を配置した場合に比較し、第1分岐部を前方に配置しやすくなり、主要な搬送路及び第5搬送路を短くすることが可能となる。
また、紙幣入出金口20の後方に一時収納部40を、一時収納部40の下方に紙幣判別部30を配置し、紙幣繰出部20bの下方から紙幣判別部30の前方までの間で紙幣を搬送する第1搬送路と、紙幣判別部30の後方から一端上方へ上がって一時収納部40までの間で紙幣を搬送する第2搬送路と、紙幣判別部30の後方から第2搬送路に進んで最初に搬送先を振り分ける紙幣振り分けゲート50aを備え、紙幣振り分けゲート50aは一時収納部40の下方に実装し、紙幣判別部30の後方は、第2搬送路の一部のみを実装し(すなわち、第2搬送路以外の搬送路は実装されておらず)、紙幣判別部30は、後方に引き出し可能とし、引き出された紙幣識別部30の元の空間から紙幣入出金口20、一時収納部40、回収庫60の下側にある露出した第1搬送路、第2搬送路、搬送路55、搬送路56にアクセスして紙幣を除去することにより、紙幣入出金口20、一時収納部40、回収庫60までの搬送路で生じた紙幣ジャム除去時も開閉を必要としない構造とすることで、小型化、搬送路単純化による低コストを実現できる。
さらに、紙幣振り分けゲート50cは、紙幣判別部30の前側であり、紙幣入出金口20の下側後方に配置することで、紙幣繰出部20bから繰り出しされた紙幣に混在した硬貨等の異物が搬送路51aの垂直部に沿って自重によって落下し、異物回収箱80bに回収できるので、硬貨等の異物が混入して機器内に入り込みによる機器の故障、修復/保守作業に伴うコスト高となるといった課題を解決することができる。
さらに、紙幣振り分けゲート50aと紙幣判別部30の間に、紙幣振り分けゲート50bを設け、その下流に紙幣を収納するための回収庫60と、それらを接続する搬送路56を設け、紙幣判別部30で、回収庫60に搬送すべき紙幣と判別したときに、一旦搬送路52を停止し、その後逆転させて回収庫60に該当紙幣を搬送することで、搬送路を最短化することができ、低コスト化を実現できる。また、紙幣振り分けゲート50b、回収庫60、搬送路56はユニット化されて一体となっており、上部紙幣機構1aから取り外し可能であり、不要な場合は実装しないことで、さらなる低コストを実現できる。また、別の実施例では、紙幣振り分けゲート50aの下流であり、紙幣判別部30の垂直上方に、紙幣振り分けゲート50bを配置し、回収庫60を立位集積にすることで、搬送路56を最短にすることができ、また、回収庫60に搬送すべき紙幣と判断したときに、そのまま直接それらを搬送することができるので、実施例1のような逆転しての紙幣振り分けをする必要がなく、確実に紙幣を振り分けすることができる。
このように、本実施例によれば、小型化、搬送路の単純化、異物処理に伴う保守コスト低減による低コスト化の要望に沿う紙幣取扱装置を提供し、金融機関、利用者の満足度を向上させることができる。