以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜4には、本発明の第1の実施形態としての留置針用の針先プロテクタ10を備える留置針組立体12が示されている。この留置針組立体12は、針先14を有する留置針16と、当該留置針16が針軸方向で移動可能に挿通される針先プロテクタ10を備えており、留置針16を患者の血管に穿刺して留置することで、留置針組立体12の基端側に接続されるカヌラなどの外部管路18を通じて、輸液や採血、血液透析などが施されるようになっている。そして、留置針16の使用後には、留置針16を患者の血管から抜去するとともに、針先プロテクタ10を針先14側へ移動させることで、留置針16の針先14が針先プロテクタ10により覆われて保護されるようになっている。なお、以下の説明において、先端側または前方とは、留置針16の針先14側である図1中の左方を言う一方、基端側または後方とは、留置針16の穿刺方向後方となる図1中の右方を言う。
より詳細には、留置針組立体12は、留置針16を含んで構成される針ユニット20に対して針先プロテクタ10が外挿装着されることで構成されている。また、この針ユニット20は、留置針16と、当該留置針16の基端側を固定支持する針ハブ22とから構成されている。
留置針16は、例えば金属製の中空針とされており、ステンレス鋼などにより形成されている。この留置針16の針先14は、先細とされて鋭利な形状とされている。なお、留置針16の針先14には貫通孔24が形成されており、血液が留置針16内に流入し易くなっている。
一方、針ハブ22は、それぞれ略筒状とされた針ハブ本体26と、当該針ハブ本体26を固定支持する支持部28とが、留置針16の針軸方向(図1中の左右方向)で相互に連結した構造とされている。
針ハブ本体26は、全体として内径寸法が略一定の円筒形状とされており、例えば硬質の合成樹脂により形成されている。なお、針ハブ本体26の先端側開口部における内径寸法は、留置針16の外径寸法と略等しくされている一方、針ハブ本体26の先端部分における内周面には、内周側に突出する環状の位置決め突部30が設けられている。かかる針ハブ本体26の先端側開口部から留置針16の基端側が挿入されて、留置針16の基端と位置決め突部30とが相互に当接することで、留置針16の基端が位置決めされるようになっている。また、必要に応じて、針ハブ本体26と留置針16とが接着されることにより、針ハブ本体26の先端に留置針16が固定支持されるようになっている。
一方、針ハブ本体26の外径寸法は、針軸方向で異ならされている。すなわち、針ハブ本体26の軸方向中間部分には、基端部分よりも外径寸法が小さくされた小径筒部32が設けられている。そして、小径筒部32よりも先端側における針ハブ本体26の外周面は、先端側に向かって外径寸法が次第に大きくなるテーパ状面34とされている。
さらに、テーパ状面34よりも先端側における針ハブ本体26の外周面には、外周側に開口する環状の係止凹部36が形成されている。かかる係止凹部36は、所定の幅寸法(針軸方向寸法)を有しているとともに、係止凹部36の形成箇所における針ハブ本体26の最小外径寸法は、小径筒部32における外径寸法と略等しくされている。更にまた、係止凹部36よりも先端側の外周面には、外周側に突出する環状の係止凸部38が形成されている。なお、係止凸部38における外径寸法は、テーパ状面34の先端部分における最大外径寸法より大きくされている。
また、係止凹部36の内面を構成する基端側面は、所定の寸法A(図9参照)をもって軸直角方向に広がる第三係止部としての環状の基端側規制面40とされており、係止凹部36の底面とテーパ状面34とが基端側規制面40により段差状に連続している。一方、係止凹部36の内面を構成する先端側面は、所定の寸法B(図9参照)をもって軸直角方向に広がる第四係止部としての環状の先端側規制面42とされており、係止凹部36の底面と係止凸部38の外周面とが先端側規制面42により段差状に連続している。なお、本実施形態では、係止凹部36の基端側内面によって構成された基端側規制面40における軸直角方向の寸法Aが、先端側規制面42における軸直角方向の寸法Bに比べて、僅かに大きくされている。
さらに、支持部28は、全体として、内周面に段差が形成された略円筒形状とされており、例えば針ハブ本体26と同様に、硬質の合成樹脂により形成されている。すなわち、先端側が内径寸法の小さな連結筒部44とされている一方、基端側が内径寸法の大きな接続筒部46とされている。そして、連結筒部44に針ハブ本体26の基端が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針ハブ本体26と支持部28とが相互に連結されている。一方、接続筒部46には外部管路18の先端が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、支持部28と外部管路18とが相互に接続されている。したがって、これら留置針16および針ハブ22(針ハブ本体26と支持部28)の内孔により、血管から外部管路18に至る流体流路48が構成されている。
なお、接続筒部46の外周縁部において、径方向1方向の両側(図1中の上下方向両側)には、所定の幅寸法をもって先端側に突出する一対の係合腕50,50が一体形成されている。かかる係合腕50,50は、平面視において略矩形状とされており、基端部分(接続筒部46との接続部分)における板厚寸法(図1中の上下方向寸法)および幅寸法(図2中の上下方向寸法)が薄肉とされているとともに、連結筒部44との径方向間にはスリット状の隙間52,52が形成されており、係合腕50,50が板厚方向で弾性変形可能とされている。また、係合腕50,50の先端部分には、外周側に突出するフック56,56が形成されている。
一方、針先プロテクタ10は、図5,6に示されるように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂などのような硬質の合成樹脂により一体成形されている。すなわち、かかる針先プロテクタ10は、筒状の周壁58および当該周壁58の内部を針軸方向に貫通する内孔60を備えている。
この針先プロテクタ10(周壁58)は、針軸方向で形状が異ならされており、先端側が、断面が略真円環形状とされた円筒状部62とされているとともに、基端側が、円筒状部62よりも大径で外周に広がる拡開部としての拡径部64とされている。すなわち、針先プロテクタ10の周壁58が、円筒状部62の周壁と拡径部64の周壁とを含んで構成されており、周壁58の内周面65が、円筒状部62の周壁の内周面と拡径部64の周壁の内周面とを含んで構成されている。
拡径部64は、図6にも示されるように、略楕円筒形状とされており、図6中の小径方向である左右方向における外周面の幅寸法に比べて、図6中の大径方向である上下方向における外周面の幅寸法の方が大きくされている。すなわち、拡径部64を構成する壁部のうち、図6中の左右方向の壁部を構成する部分が小径部66,66とされている一方、図6中の上下方向の壁部を構成する部分が大径部68,68とされており、これら小径部66,66の対向方向と大径部68,68の対向方向とが互いに直交している。
なお、大径部68,68における外周面は、先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされており、円筒状部62の外周面から大径部68,68の外周面にかけては滑らかな湾曲面で接続されている。また、円筒状部62から大径部68,68にかけての肉厚寸法は針軸方向で略一定とされているとともに、小径部66,66の肉厚寸法より小さくされている。これにより、拡径部64の内部には、断面が、図6中の左右方向寸法より図6中の上下方向寸法の方が大きくされた略長円形状とされて、且つ、基端側に向かって図6中の上下方向寸法が次第に大きくなる内部空間70が、針先プロテクタ10を貫通する内孔60の基端側に形成されている。
また、大径部68,68のそれぞれには、板厚方向で貫通するとともに所定の周方向寸法をもって延びる針ハブ係合部としての貫通窓72,72が形成されている。かかる貫通窓72,72の周方向寸法は、フック56,56の周方向寸法よりも大きくされている。
かかる内部空間70内において、周壁58の内周面65からは、内部に突出する一対の係止部としての係止片74,74が一体的に形成されている。これらの係止片74,74は、拡径部64における大径部68,68の内部において、大径部68,68に対応する位置、すなわち図6中の上下方向で対向して(周方向で相互に離隔して)設けられている。
すなわち、拡径部64の前端部分において、周壁58の内周面65には、所定の寸法C(図9参照)をもって軸直角方向に広がる環状の段差状面76が形成されており、当該段差状面76よりも先端側が基端側よりも大径とされている。要するに、かかる段差状面76が、前方に向かって外周側に広がっている。なお、段差状面76における軸直角方向の寸法Cは、係止凹部36の先端側規制面42における軸直角方向の寸法Bよりも小さくされている。そして、段差状面76よりも基端側において、段差状面76から周壁58の基端側に向かって係止片74,74が突出形成されている。なお、かかる係止片74,74は、段差状面76から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びているとともに、それぞれ周方向に湾曲しており、その突出先端(針軸方向基端)には内周側に屈曲する係止爪78,78が形成されている。
これらの係止爪78,78の内周面はそれぞれ周方向に湾曲しており、当該係止爪78,78の内周面における曲率半径は、針ハブ本体26における小径筒部32の外径半径と略等しくされている。また、係止爪78,78の内周面における径方向での対向面間距離は、小径筒部32の外径寸法と略等しくされている一方、テーパ状面34における先端部分の最大外径寸法よりも小さくされている。尤も、係止爪78,78の内周面における径方向での対向面間距離は、小径筒部32の外径寸法よりも僅かに小さくされていてもよいし、僅かに大きくされていてもよい。
さらに、係止爪78,78の基端側端面(突出先端面)79,79は、内周側が所定の寸法D(図9参照)をもって軸直角方向に広がる垂直面79a,79aとされているとともに、外周側が、外周側になるにつれて先端側に傾斜する傾斜面79b,79bとされている。本実施形態では、垂直面79a,79aにおける軸直角方向の寸法Dが、係止凹部36の基端側規制面40における軸直角方向の寸法Aと略同じか或いは僅かに大きくされている。これにより、後述するように、係止爪78,78が基端側規制面40に当接して針ユニット20の先端側への移動(針先プロテクタ10の針軸方向基端側への移動)が制限される際には、基端側規制面40の全面が垂直面79a,79aに当接することとなり、十分に大きな当接面積が確保され得る。更にまた、垂直面79a,79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが、外周側になるにつれて先端側に傾斜していることから、垂直面79a,79aと基端側規制面40とが傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することができて、針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果がより確実に発揮され得る。
また、係止片74,74の突出先端(係止爪78,78)は、拡径部64の基端よりも先端側に位置している。すなわち、係止片74,74の全体が、拡径部64の内部空間70内において、収容状態で設けられている。
なお、本実施形態では、針先プロテクタ10の先端部分に、翼状部80が設けられている。すなわち、円筒状部62の先端部分が、他の部分よりも小径とされた小径筒状部82とされているとともに、当該小径筒状部82の外周面には外周側に突出する複数の突条84が形成されている。そして、小径筒状部82に、連結部86,86を介して一対の翼本体88,88を備える嵌合筒部90が外嵌されるとともに、突条84にストッパ92が外嵌されることにより、針先プロテクタ10の先端部分に翼状部80が取り付けられている。なお、かかる翼状部80は、例えば軟質の合成樹脂により形成される。
以上の如き構造とされた針先プロテクタ10の内孔60における基端側開口部から針ユニット20が挿通されることで、留置針組立体12が構成されている。ここにおいて、図1などに示される留置針組立体12の使用前の状態では、留置針16の針先14が針先プロテクタ10よりも先端側に位置しており、針先14が露出している。かかる状態では、針先プロテクタ10における拡径部64に設けられた貫通窓72,72に、針ハブ22に設けられた係合腕50,50のフック56,56が入り込んで係止されており、針先プロテクタ10と針ハブ22(針ユニット20)が連結状態とされて、針先14の突出状態が維持されるようになっている。
そして、かかる初期状態では、針先プロテクタ10の係止爪78,78が針ハブ本体26の小径筒部32の外周面に当接している。なお、これら係止爪78,78は、小径筒部32の外周面に当接することで僅かに外周側に押圧されていてもよいし、小径筒部32の外周面に対して僅かに離隔していてもよい。
かかる構造とされた留置針組立体12は、留置針16を患者の血管に穿刺して留置することにより、流体流路48を通じての輸液や採血、血液透析に供される。なお、本実施形態の留置針組立体12では翼状部80が設けられていることから、例えば翼状部80を摘まみつつ、留置針16を穿刺することが可能となる。また、留置針16を穿刺状態で留置する際には、翼状部80の位置でテープ固定することにより、皮膚に対して広い接触面積をもって固定することができる。
かかる留置針16を抜去する場合には、翼状部80において針先プロテクタ10をテープ固定した状態のまま、針ハブ22における係合腕50,50を手指で内側へ押圧する。これにより、フック56,56と貫通窓72,72との係止が解除されて、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させることが可能となる。さらに、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させて留置針16を皮膚から抜去することで、針先プロテクタ10が針ユニット20の針先14側に移動せしめられる。
この際、何らかの外力により係合腕50,50が内側へ押圧されて針ハブ22(針ユニット20)と針先プロテクタ10との係止が意図せず解除されたとしても、係止爪78,78が当接する小径筒部32より先端側の外周面は、先端側に向かって次第に外径寸法が大きくなるテーパ状面34とされていることから、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させる外力を加えなければ、針ユニット20が移動することがないようになっている。これにより、意図せず留置針16の針先14が針先プロテクタ10で保護されてしまう不具合が防止され得る。
ここにおいて、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して基端側へ移動させることにより、係止片74,74が針ハブ本体26のテーパ状面34により外周側へ押圧されつつ係止爪78,78がテーパ状面34に対して摺動せしめられる。これにより、係止片74,74には内周側への弾性復元力が付勢力として及ぼされる。それ故、係止爪78,78のテーパ状面34への押圧力が抵抗となって、使用者が、針先プロテクタ10に対して針ユニット20を引き抜いている感触を確認しつつ、針ユニット20を移動させることができる。
そして、図7〜9に示されるように、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して後退移動させる(針ユニット20の針先14側へ針先プロテクタ10を前進移動させる)ことにより、留置針16の針先14が針先プロテクタ10で覆われるとともに、係止片74,74の係止爪78,78が針ハブ本体26のテーパ状面34を乗り越えて弾性復帰して、係止凹部36内に入り込むようになっている。かかる状態では、係止爪78,78の特に垂直面79a,79aと係止凹部36の基端側規制面40とが当接する(係止爪78,78が基端側規制面40に係止される)ことで針ユニット20の先端側への移動(針先プロテクタ10の針軸方向基端側への移動)が制限されるようになっている。これにより、留置針16の針先14の再露出が阻止されるようになっている。
それとともに、係止片74,74の前端部分に設けられた段差状面76と係止凹部36の先端側規制面42とが当接する(段差状面76が先端側規制面42に係止される)ことで針ユニット20の基端側への移動が制限されるようになっている。これにより、留置針16の、針先プロテクタ10の基端側への抜出しが阻止されるようになっている。それ故、針先プロテクタ10に対する針ユニット20の軸方向両側への移動が阻止されて、針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護状態が維持されるようになっている。
すなわち、本実施形態では、係止片74,74の自由端側に設けられた係止爪78,78が、留置針16の針先14の再露出を阻止する第一係止部とされている。一方、係止片74,74の固定端側を一体的に支持する段差状面76が、針ユニット20の、針先プロテクタ10の基端側からの抜出しを阻止する第二係止部とされている。そして、第一係止部(係止爪78,78)の基端側端面79,79は、軸直角方向に広がる第一軸直面としての垂直面79a,79aを有している一方、第二係止部(段差状面76)が、軸直角方向に広がる第二軸直面とされている。さらに、係止凹部36の内面において、基端側面(基端側規制面40)が第三係止部とされて、軸直角方向に広がる第三軸直面とされているとともに、先端側面(先端側規制面42)が第四係止部とされて、軸直角方向に広がる第四軸直面とされている。
特に、本実施形態では、一対の係止部(係止片74,74)が設けられていることから、かかる係止部が針先プロテクタ10の周壁58に一体成形されていることとも相俟って、上記の如き針先プロテクタ10を留置針16の先端側に移動させて第一係止部により係止せしめた際に、針先プロテクタ10が針ユニット20に対してがたつく等の不具合が効果的に防止され得る。このように、係止部(係止片)を2つ、または3つ以上設けることで、針先プロテクタ10における留置針16の基端側への後退がより確実に阻止されて、針先の再露出防止効果が一層安定して発揮され得る。この場合、複数の係止部は、針先プロテクタ10の中心軸に対して略対称に設けることが好ましい。
そして、留置針16の針先14が針先プロテクタ10で保護された状態で、翼状部80におけるテープ固定を解除して、留置針組立体12を患者から取り外す。かかる抜去の手順に従えば、留置針16の穿刺から廃棄まで針先14が全く露出しないことから、誤穿刺などがより確実に防止され得る。尤も、針先14の保護の手順は上記の手順に限定されるものではなく、翼状部80におけるテープ固定を解除して留置針16を血管から抜去した後、針ユニット20を針先プロテクタ10に対して後退移動させて、留置針16の針先14を保護するようにしてもよい。
なお、係止爪78,78が係止凹部36に入り込んだ際に、係止爪78,78の先端が係止凹部36の底面に当接することで、その当接の衝撃や音を使用者が確認することができて、例えば針ユニット20の引抜操作を途中で中断してしまうなどのおそれが回避される。これにより、針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護がより確実に実現され得る。
上記の如き構造とされた針先プロテクタ10および留置針組立体12では、留置針16の針先14の再露出を防止する係止片74,74が、筒状の周壁58の内部に、特にその全体が収容されて設けられていることから、意図せず外部から係止片74,74に接触することが略不可能とされている。それ故、針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護状態において、意図せず係止片74,74と係止凹部36との係止を解除して留置針16の針先14を針先プロテクタ10から再露出させることが効果的に防止され得る。
特に、係止片74,74は、針先プロテクタ10の基端側において拡開された拡径部64に設けられている。これにより、係止片74,74の大きさを十分に確保しつつ、係止片74,74間に挿通される針ハブ22(針ハブ本体26)も外径寸法が十分に大きなものが採用され得る。更にまた、本実施形態では、拡径部64が略楕円形状とされており、その外周面が円筒状部62の外周面から滑らかに連続していることから、拡径部64などが患者に接触して、患者が痛みを感じるおそれが低減されている。
さらに、係止片74,74が、かかる略楕円形状の拡径部64を構成する大径部68,68の内側に設けられていることから、大径部68,68の内側のスペースを巧く利用することができるとともに、大径部68,68が厚肉となることも回避されて、成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる。また、係止部(係止片74,74)は、大径部68,68と同じ方向(軸方向の基端側)に延びるように設けられることが好ましい。このように構成することで、拡径部64を必要以上に大きく設けなくてもよくなり、大径部68,68の内側のスペースを巧く利用することができるとともに、大径部68,68が厚肉となることも回避されて、成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる。
また、係止片74,74を周壁58の内部に突出するように設けたことで、例えば針先プロテクタ10を型成形により製造する際に、成形型を針先プロテクタ10の針軸方向で脱型させることができて、金型の種類数も少なく抑えることができる。それ故、針先プロテクタ10の製造効率の向上が図られ得る。
特に、係止片74,74は、基端側に向かって延びていることから、針先プロテクタ10に対する針ユニット20の引抜きに際して引っ掛かったりすることがなく、スムーズな引抜きが実現され得る。
また、係止片74,74は、径方向で対向して一対設けられていることから、針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護状態、即ち係止片74,74と係止凹部36との係止状態において、係止片74,74により針ハブ本体26を径方向間で挟持することができる。それ故、針先プロテクタ10と針ユニット20(針ハブ本体26)とが径方向間でぐらついたりすることがなく、針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護状態が安定して維持され得る。
また、針先14の保護状態では、第一係止部である係止爪78,78と第三係止部である係止凹部36の基端側規制面40とが相互に当接することで、針ユニット20に対して針先プロテクタ10が基端側に移動することが防止され得る。一方、第二係止部である段差状面76と第四係止部である係止凹部36の先端側規制面42とが相互に当接することで、針ユニット20に対して針先プロテクタ10が先端側に移動することが防止され得る。ここにおいて、これら第一〜第四係止部は、それぞれ軸直角方向に広がる第一〜第四軸直面を有していることから、アンダーカット形状がなく成形も容易であると共に、当接力及び当接反力が軸方向の力として効率的に生ぜしめられ得る。また、それぞれの当接面積も十分に確保することができて、針ユニット20に対する針先プロテクタ10の先端側および基端側への移動が、より確実に阻止され得る。
次に、図10,11には、本発明の第2の実施形態としての留置針用の針先プロテクタ100が示されている。本実施形態の針先プロテクタ100の構造は、前記第1の実施形態と略同様とされているが、本実施形態では、基端側の拡径部64の内部空間70において、係止部としての係止片74,74の外周側への変形量を制限する変形量制限部102が設けられている。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記第1の実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、拡径部64の内部空間70において、周壁58と係止片74,74との径方向間には、それぞれ変形量制限部102,102が設けられている。要するに、係止片74,74の外周側において、拡径部64を構成する大径部68,68の内周面65には、基端側に突出する変形量制限部102,102が、一体的に形成されている。換言すれば、拡径部64において大径部68,68を構成する壁部が部分的に厚肉とされることで、変形量制限部102,102が形成されている。
なお、拡径部64は、基端側に向かって次第に外周側に広がる形状とされていることから、変形量制限部102,102は、基端側になるにつれて次第に径方向寸法(図11中の上下方向寸法)が大きくなるようにされており、図11に示される縦断面では、略直角三角形状となっている。そして、変形量制限部102,102の内周面は、係止片74,74と略平行(即ち、留置針16の針軸方向と略平行)に広がっている一方、基端面は、留置針16の針軸方向に対して略直交する方向に広がっている。かかる変形量制限部102,102の基端面は、係止片74,74の針軸方向基端(突出先端)よりも、針軸方向先端側に位置しており、変形量制限部102,102の全体が、拡径部64の内部空間70内に収容されている。
特に、本実施形態では、それぞれの変形量制限部102,102が、拡径部64の内周面65から基端側に突出する3つの突部104,104,104から構成されている。これら3つの突部104,104,104は、大径部68,68に比べて厚肉とされた小径部66,66を構成する壁部間(図10中の左右方向間)において、周方向で並んで設けられており、相互に離隔して配設されている。
また、これら3つの突部104,104,104は、係止片74とも径方向(図10中の上下方向)で、針先保護前の状態(例えば図3,4参照)から針先保護の状態(例えば図7,8参照)への針先プロテクタ100の移動を阻害しない程度に適切な距離を隔てて設けられている。なお、これら3つの突部104,104,104を含んで構成される変形量制限部102の内周面は、係止片74の外周面と略対応する湾曲形状とされており、3つの突部104,104,104と係止片74とが、略一定の距離をもって離隔している。ここにおいて、突部104,104,104と係止片74との離隔距離は、針ユニット20に対する針先プロテクタ100の先端側への移動時における、係止片74の外周側への変形を阻害しない大きさに設定されているとともに、後述するように留置針組立体106の曲げ変形時において係止片74の変形量が変形量制限部102(突部104,104,104)へ当接することで規制される大きさに設定されている。
さらに、本実施形態では、係止片74,74の基端側端面105,105において、第一軸直面としての垂直面105a,105aにおける軸直角方向の寸法E(図13参照)が、係止凹部36の基端側規制面40(第三軸直面)における軸直角方向の寸法Aよりも小さくされている。これにより、係止片74の垂直面105aにおける外周側の端部αが、係止凹部36の基端側規制面40の外周側の端部βよりも内周側に位置しており、かかる係止片74の垂直面105aにおける外周側の端部αが、基端側規制面40に対して当接するようになっている。なお、基端側端面105,105において、垂直面105a,105aの外周側に位置する傾斜面105b,105bは、前記第1の実施形態と同様に、外周側になるにつれて先端側に傾斜している。
かかる構造とされた留置針用針先プロテクタ100が、前記第1の実施形態と同様の構造とされた針ユニット20に外挿装着されることで、本実施形態の留置針組立体106(図12参照)が構成されている。そして、前記第1の実施形態と同様に、当該留置針組立体106を穿刺して、穿刺後、図12,13に示されるように、針先プロテクタ100を留置針16の針先14側に移動させることで、針先プロテクタ100により留置針16の針先14が保護されるようになっている。すなわち、係止片74,74の先端に設けられた係止爪78,78が、針ハブ本体26の先端部分に設けられた係止凹部36に入り込んで係止されており、係止爪78,78と基端側規制面40とが相互に当接することで、針先プロテクタ100に対する針ユニット20の先端側への移動が制限されるようになっているとともに、段差状面76と先端側規制面42とが相互に当接することで、針先プロテクタ100に対する針ユニット20の基端側への移動が制限されるようになっている。
ここで、本実施形態では、係止片74,74の外周側に変形量制限部102,102が設けられていることから、留置針16の針先14の保護状態において、係止爪78の係止凹部36からの意図しない外れが効果的に防止され得る。具体的には、例えば針先14の保護状態下で、針先プロテクタ100と針ユニット20の全体に曲げ方向の外力が及ぼされて、針ハブ本体26により一方の係止片74が押されて外方へ大きく変形すると、他方の係止片74の係止爪78が基端側規制面40よりも外方へ浮き上がり、係止状態が外れたり係止片74が損傷等することで針先が再露出する可能性も完全には否定し難い。ここにおいて、本実施形態では、係止片74の外方への変形量が、変形量制限部102への当接で規制されることから、たとえ過大な曲げ力が作用した場合でも、そのような予期しない針先の再露出が効果的に防止され得る。
また、本実施形態の留置針用針先プロテクタ100および留置針組立体106においても、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
特に、本実施形態では、拡径部64における大径部68,68の内周側に変形量制限部102,102が設けられており、拡径部64の内部空間70を巧く利用することで、係止片74,74の変形量制限機構を設けることに伴う針先プロテクタ100の大型化なども回避され得る。
また、本実施形態では、係止片74,74の基端側端面105,105において、垂直面105a,105aにおける軸直角方向の寸法Eが、係止凹部36の基端側規制面40における軸直角方向の寸法Aよりも小さくされて、係止片74の垂直面105aにおける外周側の端部αが基端側規制面40に対して当接されるようになっている。これにより、例えば針先保護前の状態から針先プロテクタ100が過大な力で基端側へ無理に動かされようとした場合に、係止片74が変形することで係止爪78が係止凹部36の基端側規制面40を乗り上げて係止が外れてしまうことも効果的に防止される。即ち、係止爪78において基端側規制面40へ当接する垂直面105aは、係止片74の中心軸から内周側に偏倚していることから、当接反力による曲げモーメントの作用で係止片74が外方に凸となる湾曲形状に変形し、係止爪78の垂直面105aが傾斜するおそれがある。かかる垂直面105aの傾斜状態において、垂直面105aの端部αが基端側規制面40の端部βより外周側に位置していると、基端側規制面40の端部βが傾斜した垂直面105aに当接することで、係止爪78が基端側規制面40を乗り越える方向の分力が発生して係止状態が意図せずに解除されてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、たとえ係止爪78の垂直面105aが傾斜した状態でも、傾斜した垂直面105aに対する基端側規制面40の当接が回避され、垂直面105aの端部αが基端側規制面40に当接することで、乗越方向の分力の発生を回避しつつ有効な係止力が安定して発揮され得ることとなる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、前記実施形態では、係止片74,74は基端側に向かって延び出していたが、先端側に向かって延び出していてもよい。また、前記実施形態では、係止片74,74は、その全体が周壁58の内部に収容されていたが、例えば係止部の先端が、周壁の針軸方向端部より外方に位置していてもよい。なお、係止部における実質的な係止部分(例えば、前記実施形態における係止爪78,78)は係止部の先端に設けられる必要はない。
更にまた、前記実施形態では、係止片74,74の基端側端面79,79(105,105)において、内周側が垂直面79a,79a(105a,105)とされる一方、外周側が傾斜面79b,79b(105b,105b)とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、係止片74,74の基端側端面79,79(105,105)は、傾斜面79b,79b(105b,105b)が設けられることなく略全面に亘って軸直角方向に広がっていてもよいし、垂直面79a,79a(105a,105a)が設けられることなく略全面に亘って軸方向に対して傾斜する方向に広がっていてもよい。なお、傾斜面79b,79b(105b,105b)は、前記実施形態のように外周側になるにつれて先端側に傾斜していてもよいし、垂直面79a,79a(105a,105a)と基端側規制面40との当接に干渉しない限りは、外周側になるにつれて基端側に傾斜していてもよい。また、係止片74,74の基端側端面79,79(105,105)における内周側部分と針ハブ本体26の基端側規制面40を、例示の如き垂直面に代えて、外周側になるにつれて先端側に傾斜した傾斜面とすることも可能であり、それによって、基端側規制面40がオーバーハング形状を有するアンダーカットとなるが、より大きな移動規制力を得ることも可能になる。
さらに、前記実施形態では、一対の係止片74,74が径方向で対向して設けられていたが、係止部は1つでもよいし、3つ以上でもよい。この場合、3つ以上の係止部は、周方向で略等間隔に設けることが好ましい。あるいは、全周に亘って連続して延びる略筒状の係止部とされてもよい。なお、係止部が2つまたは3つ以上設けられる場合であっても、径方向で対向していたり周方向で等間隔に設けられている必要はない。また、針ハブ本体に設けられる係止凹部は、全周に亘って連続して設けられる必要はなく、係止部と周方向で対応する位置に設けられればよい。
更にまた、前記実施形態では、針先プロテクタ10,100における係止片74,74の固定端側に設けられる段差状面76と、針ハブ22(針ハブ本体26)に設けられる先端側規制面42とが相互に当接することで、針先プロテクタ10,100からの針ユニット20の基端側からの抜出しが防止されていたが、針ユニットの抜出防止機構はかかる態様に限定されるものではない。すなわち、これら段差状面76や先端側規制面42は必須なものではなく、針ユニットの抜出防止機構をこれらとは別に設けてもよい。
また、前記実施形態では、段差状面76や基端側規制面40、先端側規制面42などが軸直角方向に広がっていたが、これらは軸直角方向に対して傾斜して広がっていてもよい。
さらに、前記実施形態では、針先プロテクタ10,100の先端側が円環形断面を有する円筒状部62とされる一方、基端側が楕円筒状の拡径部64とされていたが、これらの形状に限定されるものではない。すなわち、針先プロテクタの先端側および基端側の拡開部における断面形状は、それぞれ、円形(楕円、長円、半円などを含む)や多角形状など各種形状が採用され得る。尤も、針先プロテクタの基端側に設けられる拡開部は必須なものではなく、針先プロテクタは、単なるストレートの筒形状であってもよい。
更にまた、針ユニットの形状は限定されるものではない。たとえば、前記実施形態では、針ハブ22と針先プロテクタ10,100を連結させて、即ちフック56,56を貫通窓72,72に係止させて留置針16を露出状態に維持していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、針ハブ係合部は、前記実施形態の如き貫通窓形状である必要はなく、内周側に開口する有底の溝形状などでもよい。あるいは針先プロテクタに針ハブ係合部としてのフックが形成されるとともに、針ハブに貫通窓や有底溝などが形成されてもよい。尤も、これらフックや貫通窓などは必須なものではなく、要するに使用前における針ハブと針先プロテクタとの連結機構は必須なものではない。
また、前記実施形態では、針先プロテクタ10,100に翼状部80が取り付けられていたが、翼状部は必須なものではない。
さらに、前記第2の実施形態では、変形量制限部102,102が、針先プロテクタ100における拡径部64に一体形成されていたが、別体で形成されて後固着されてもよい。これにより、例えば変形量制限部を針先プロテクタとは異なる材質で形成することも可能である。
更にまた、前記第2の実施形態では、変形量制限部102,102が、拡径部64における大径部68,68を構成する壁部の内周面65に設けられていたが、変形量制限部の形成位置は何等限定されるものではない。すなわち、変形量制限部は、例えば拡径部における小径部を構成する壁部の内周面から、係止部(係止片74,74)の外周側に向かって突出するように設けられていてもよい。尤も、変形量制限部は、拡径部の内周面に設けられる態様に限定されるものではなく、例えば係止部の外周面に設けられて、係止部の外周側への弾性変形時に拡径部の内周面に当接することで、その変形が制限されるようになっていてもよい。
また、変形量制限部の形状も何等限定されるものではない。前記第2の実施形態では、変形量制限部102,102が、略直角三角形状の縦断面とされていたが、例えば拡径部の内周面から基端側や内周側に突出する突片状であってもよいし、係止部(係止片74,74)の外周面から外周側に突出する突片状であってもよい。さらに、前記第2の実施形態では、変形量制限部102,102が、それぞれ3つの突部104,104,104から構成されていたが、かかる態様に限定されるものではなく、1つや2つ、4つ以上の突部から構成されていてもよい。なお、このように変形量制限部102,102を複数の突部で構成することで、成形後のヒケ(熱収縮による変形)の抑制や冷却効率の向上に伴う成形時間の短縮などが図られる。特に、前記第2の実施形態のように、変形量制限部102,102をそれぞれ3つの突部104,104,104で構成することで、上記効果が安定して発揮されることに加えて、金型の形状が複雑になり過ぎることも回避され得る。
更にまた、前記第2の実施形態では、2つの係止片74,74が設けられて、それぞれの係止片74,74の外周側に変形量制限部102,102が設けられていたが、変形量制限部は、何れか一方の係止部(係止片74)の外周側に設けられるだけでもよい。また、係止部が2つ以上設けられる場合には、それぞれの係止部の外周側に変形量制限部が設けられることが好適であるが、少なくとも1つの係止部の外周側に変形量制限部が設けられればよい。