図1には、本発明の実施形態に係る放射線測定装置の一例が示されている。放射線測定装置10は、複数のユニットを含む装置であり、放射線測定用プローブ12と本体ユニット14とを含む。これらは基本ユニットともいえる。放射線測定装置10は、拡張ユニットとしてオプションユニットを含んでもよいし、他のユニットとしてのパーソナルコンピュータ(PC)に接続されてもよい。
放射線測定用プローブ12は、放射線を検出するユニットである。放射線測定用プローブ12は、全体として円筒状の形状を有し、前側に配置された前側外ケース16と、その後側に配置された後側外ケース18と、を含む。前側外ケース16が「第1の外ケース」の一例に相当し、後側外ケース18が「第2の外ケース」の一例に相当する。前側外ケース16と後側外ケース18は、中空部材としての容器である。前側外ケース16の前面は、放射線の検出面20となっている。前側外ケース16と後側外ケース18は、例えばアルミニウム等の金属によって構成されている。前側外ケース16と後側外ケース18とによって外ケースが構成され、その外ケースの中に、後述する検出ユニットと信号処理ユニットが収容されている。後側外ケース18は、測定者によって握られる部分である。放射線測定用プローブ12のほぼ中央には、操作部22が設けられている。操作部22には、測定者が時定数(平滑化係数)を選択するためのボタンと、放射線が検出されたときに点灯する光源(LED光源等)が設けられている。そのボタンが測定者によって操作されることにより、時定数が選択される。また、操作部22には、測定値の記憶を指示するためのメモリボタンが設けられていてもよい。メモリボタンが測定者によって操作されることにより、測定値が放射線測定用プローブ12内のメモリ又は本体ユニット14内のメモリに記憶される。放射線測定用プローブ12は、ケーブル24によって本体ユニット14に接続されている。後述するように、測定値を示すデジタル信号がケーブル24を介して本体ユニット14に出力される。もちろん、ケーブル24を用いずに、放射線測定用プローブ12と本体ユニット14とが無線通信を行ってもよい。この場合、測定値を示すデジタル信号が、無線通信によって、放射線測定用プローブ12から本体ユニット14に送信される。
本体ユニット14は、ケースの表面に設けられた表示部26と、連結部28と、各種の操作ボタン30と、ケーブル24が接続されるコネクタと、を含む。本体ユニット14は、ケーブル24を介して、測定値を示すデジタル信号を放射線測定用プローブ12から受信する。表示部26は液晶表示器等のモニタであり、表示部26には、放射線の測定値等が表示される。表示部26は、液晶表示器とタッチセンサとを備えたタッチパネルモニタであってもよい。もちろん、タッチセンサ無しの表示器が表示部26として本体ユニット14に設けられてもよい。放射線測定用プローブ12と本体ユニット14は、連結部28を介して連結されることにより、一体化可能となっている。また、本体ユニット14には、放射線が検出された場合に音を発生させるブザー等の音響機器が設けられている。また、本体ユニット14はバッテリを備えており、本体ユニット14から放射線測定用プローブ12に対して、バッテリからの電圧が供給される。
図2には、本体ユニット14から分離された状態の放射線測定用プローブ12が示されており、図3には、その分離状態の本体ユニット14が示されている。放射線の測定時には、通常、測定者は、放射線測定用プローブ12の後側外ケース18を握って放射線測定用プローブ12を本体ユニット14から取り外し、その状態で測定を行う。もちろん、放射線測定用プローブ12と本体ユニット14が連結した状態で測定が行われてもよい。
以下、図4を参照して、放射線測定用プローブ12を構成する各ユニットについて詳しく説明する。図4は、放射線測定用プローブ12を示す分解斜視図である。なお、本実施形態では、測定対象の放射線としてγ線を挙げて説明するが、もちろん、これは一例に過ぎない。測定対象の放射線は、α線、β線又は中性子線であってもよい。
放射線測定用プローブ12は、放射線を検出する検出ユニット32と、検出ユニットから出力された検出信号(電気信号)を処理する信号処理ユニット34と、を含む。検出ユニット32と信号処理ユニット34は、放射線測定用プローブ12の軸方向に着脱可能に連結される。検出ユニット32と信号処理ユニット34は、前側外ケース16と後側外ケース18とによって構成される外ケース内に収容されている。検出ユニット32は前側外ケース16内に収容され、信号処理ユニット34の一部は後側外ケース18内に収容される。
検出ユニット32は、全体として円筒状の形状を有し、前側に配置された前側内ケース36と、その後側に配置された後側内ケース38と、を含む。前側内ケース36と後側内ケース38は、中空部材としての容器である。前側内ケース36の前面40には、衝撃吸収用の凹凸構造が形成されている。この凹凸構造によって、前面40から伝達される衝撃が緩和される。前側内ケース36と後側内ケース38は、例えばポリカーボネート等の樹脂によって構成されている。前側内ケース36と後側内ケース38とによって内ケースが構成され、その内ケースの中に、後述する放射線検出器と光検出器が収容されている。このように、検出ユニット32は、放射線検出器と光検出器とがパッケージされたユニット、つまり、放射線検出器と光検出器とがカプセル化されたユニットである。検出ユニット32は、独立して交換される部品(独立交換部品)である。内ケースは遮光構造を有しており、放射線検出器と光検出器は、遮光された環境に配置されている。例えば、前側内ケース36と後側内ケース38の色は黒色であり、それらは遮光構造の主要部品を構成する。後側内ケース38の後端部42は、後述する信号処理ユニット34に着脱可能に連結される。
信号処理ユニット34は、骨格構造体44を含む。骨格構造体44は、筐体部分46とフレーム部分48とを含む。筐体部分46とフレーム部分48は、放射線測定用プローブ12の軸方向に連結している。筐体部分46とフレーム部分48は、例えばマグネシウム等の金属により構成されている。
筐体部分46は全体として円筒状の形状を有する。筐体部分46には、操作部22が設けられている。筐体部分46の先端部50と検出ユニット32(後側内ケース38)の後端部42とが円周方向にかみ合って回り、これにより、検出ユニット32と信号処理ユニット34とが着脱可能に連結される。筐体部分46においては、先端部50よりも若干後側の側面に、周方向に沿ってネジ溝51が形成されている。前側外ケース16の後端部の内周には、ネジ溝51にかみ合うネジ溝が形成されており、両ネジ溝がかみ合うことにより、前側外ケース16が、骨格構造体44(筐体部分46)にネジ結合(螺合)される。このようにして、前側外ケース16が、骨格構造体44(筐体部分46)に着脱可能に連結される。前側外ケース16が筐体部分46に連結された状態において、検出ユニット32が前側外ケース16内に保持される。
筐体部分46の中央付近の側面には、複数のネジ孔52が形成されている。そのネジ孔52は、後側外ケース18を筐体部分46に着脱可能に連結するためのネジ孔である。
フレーム部分48の一方側には、第1基板54が配置されており、フレーム部分48の他方側には、第2基板56が配置されている。第1基板54及び第2基板56は、検出信号を処理するための回路や電源回路が設けられた基板である。後述するように、第1基板54と第2基板56には、電子回路が設けられている。例えば、第1基板54には、電源回路やCPUが設けられており、第2基板56には、ハイブリッドICが設けられている。回路については後で詳しく説明する。
後側外ケース18の先端側には、操作部22の形状に適合する形状を有する切り欠き部58が形成されている。また、先端側の側面には、筐体部分46に形成されたネジ孔52に対応する貫通孔60が形成されている。フレーム部分48、第1基板54及び第2基板56が、後側外ケース18内に収容され、後側外ケース18の切り欠き部58に、筐体部分46の操作部22が配置される。後側外ケース18の貫通孔60にネジが挿入され、そのネジとネジ孔52とがネジ結合(螺合)し、これにより、後側外ケース18が、骨格構造体44(筐体部分46)に着脱可能に連結される。
以下、図5を参照して、検出ユニット32について詳しく説明する。図5には、分解された状態の検出ユニット32が示されている。
検出ユニット32は、放射線を光に変換する放射線検出器62と、光を検出して検出信号(電気信号)を出力する光検出器64(光変換器)と、を含む。
放射線検出器62は、円柱状又は円盤状の形状を有し、放射線測定用プローブ12の中心軸方向に離間した前面66と後面68を有する。放射線検出器62は、放射線を光に変換するシンチレータ部材と、そのシンチレータ部材を収容した容器と、によって構成されている。放射線は前面66からシンチレータ部材内に入射し、シンチレータ部材により変換された光は後面68から出射する。すなわち、前面66が放射線の入射面に相当し、後面68が光の出射面(出光面)に相当する。なお、放射線は、側面や後面68からもシンチレータ部材内に入射する場合もある。前側内ケース36は、放射線検出器62が当該前側内ケース36に収容された状態において放射線検出器62の前面66に対向する先端壁を有する。その先端壁は、前側内ケース36の前面40の反対側の面に相当する。
光検出器64は、全体として円柱状の形状を有し、放射線測定用プローブ12の中心軸方向において放射線検出器62の後側に設けられている。光検出器64は、放射線検出器62よりも細い。光検出器64は、放射線検出器62の後面68に対向する前面70を有している。光検出器64は、例えば、放射線測定用プローブ12の中心軸方向に延在するガラス容器を有する光電子増倍管によって構成されている。放射線検出器62の後面68(出光面)から出射した光は、前面70から光検出器64に入射し、光検出器64により変換された検出信号(電気信号)は、光検出器64の後端部から出力される。光検出器64の前面70は、受光面に相当する。
放射線検出器62の後面68(出光面)と光検出器64の前面70(受光面)とが、接着部材の一例としての両面接着シート72により接着されている。これにより、放射線検出器62に対して光検出器64が固定され、光検出器64は、片持ち方式で保持される。両面接着シート72は、光学的に透明なシート状(フィルム状)の導光部材であり、自己形状を保持する機能を有する。
例えば、両面接着シート72の元のシートは、シート状に形成された酸フリーアクリル系粘着剤と、その酸フリーアクリル系粘着剤の両面に接着された剥離PETと、によって構成されている。使用時(接着時)には、元のシートの両面から剥離PETが剥離され、剥離PETが剥離された状態の両面接着シート72(酸フリーアクリル系粘着剤)が、放射線検出器62の後面68と光検出器64の前面70との間に配置される。例えば、元のシートの一方の面から剥離PETが剥離され、その剥離によって露出した面(両面接着シート72の面(酸フリーアクリル系粘着剤の面))が、放射線検出器62の後面68に接着される。次に、元のシートの他方の面から剥離PETが剥離され、その剥離によって露出した面(両面接着シート72の面(酸フリーアクリル系粘着剤の面))に、光検出器64の前面70が接着される。これにより、放射線検出器62に対して光検出器64が固定される。
両面接着シート72の厚さは、例えば10μm〜1000μmであり、好ましくは75μm〜250μmである。
両面接着シート72の粘着力は、90°剥離において5N〜100Nであり、好ましくは10N〜30Nである。粘着力を規定する別の基準として、引っ張り力(垂直に引っ張る力)や、せん断接着強度が用いられてもよい。例えば、両面接着シート72の引っ張り力は、10N/cm2〜150N/cm2である。また、両面接着シート72のせん断接着強度は、10N/cm2〜150N/cm2である。もちろん、これらの値は一例に過ぎず、光検出器64が保持されれば、これら以外の値が採用されてもよい。
両面接着シート72のシンチレータの発光波長域における透過率は、50%以上であり、好ましくは、90%以上である。
両面接着シート72は、放射線検出器62の後面68の実質的な全体を覆うサイズを有している。光検出器64の直径は放射線検出器62の直径よりも小さく、光検出器64の前面70(受光面)のサイズは、放射線検出器62の後面68(出光面)のサイズよりも小さい。それ故、前面70と後面68とを両面接着シート72により接着した場合、両面接着シート72の後面(光検出器64の前面70に対向する面)には、光検出器64が接着されていない部分として、光検出器64の周囲に相当する環状の領域が形成される。その環状の領域に、環状の反射材74が接着されている。光検出器64の直径は、反射材74の内径よりも小さい。反射材74は、例えば多孔質材により構成される。反射材74は、放射線検出器62の後面68(出光面)から出射した光のうち円環状の領域から出射した光を、放射線検出器62内に反射、散乱させる機能を有する。これにより、光検出器64の前面70(受光面)のサイズが、放射線検出器62の後面68(出光面)のサイズよりも小さくても、その後面68における光漏れを防止することが可能となる。本実施形態では、両面接着シート72の後面を上手く活用して反射材74を接着することが可能となる。なお、反射材74のシンチレータの発光波長域における反射率は、50%以上であり、好ましくは90%以上である。反射材74による反射波は、例えば拡散反射や鏡面反射である。
両面接着シート72以外の接着部材が用いられてもよい。例えば、光学接着剤が接着部材として用いられてもよい。光学接着材として、例えば、UV硬化型(紫外線硬化型)の光学接着剤、熱硬化型の光学接着剤、常温硬化型の光学接着剤、複数の液体の混合型の光学接着剤(例えば、2液を混合させることで硬化する接着剤)、等が用いられる。光学接着剤の一例として、酸フリーアクリル系接着剤が用いられる。両面接着シート72と同様に、光学接着剤の引っ張り力は、10N/cm2〜150N/cm2であり、光学接着剤のせん断接着強度は、10N/cm2〜150N/cm2である。もちろん、これらの値は一例に過ぎず、光検出器64が保持されれば、これら以外の値が採用されてもよい。なお、接着部材として光学接着剤を用いた場合、選択された光学接着剤によっては、光学接着剤が反射材74に染み込んで、反射材74の反射力を低下させる場合がある。例えば、硬化に要する時間が比較的に長い光学接着剤を用いた場合、光学接着剤が反射材74に染み込む場合がある。この場合、光学接着剤の替わりに両面接着シート72を用いることにより、このような問題の発生を防止することが可能となる。別の例として、硬化に要する時間が比較的に短い光学接着剤を用いることにより、硬化に要する時間が比較的に長い光学接着剤を用いる場合と比べて、反射材74への光学接着剤の染み込みを抑制又は防止することが可能となり、その結果、反射材74の反射力の低下を抑制又は防止することが可能となる。また、光学接着剤のシンチレータの発光波長域における透過率は、50%以上であり、好ましくは、90%以上である。
なお、一般的な光学グリスの引っ張り力は3.0N/cm2程度であり、せん断接着強度は1.5N/cm2程度であるため、光学グリスを用いて放射線検出器62に光検出器64を固定することは困難である。仮に光学グリスを用いた場合、放射線検出器62から光検出器64が剥がれ易くなる。これに対して、本実施形態のように、両面接着シート72や光学接着剤を用いることにより、放射線検出器62に光検出器64を固定することが可能となる。
光検出器64には、環状の弾性ホルダ76が取り付けられている。弾性ホルダ76は、放射線検出器62に固定された光検出器64の受光端部(前面70側の端部)を、光検出器64の側面側から包み込みつつ弾性的に保持する部材である。弾性ホルダ76は、放射線測定用プローブ12の中心軸方向に直交する方向への受光端部(光検出器64)の動きを抑制する機能を有する。弾性ホルダ76は、例えばシリコーンゴム等のゴム材料により構成されている。弾性ホルダ76の色は例えば白であり、光を反射する機能を有する。弾性ホルダ76は、放射線検出器62の後面68(出光面)に対向する前面76aと、前面76aの反対側の後面76bとを有する。弾性ホルダ76の内周面と後面76bに凹凸が形成されている。弾性ホルダ76の外径は、前側内ケース36の内径よりも小さい。上記の凹凸形状によって、光検出器64等の寸法公差が吸収される。また、凹凸形状を潰して使用することで弾性力が更に増大する。
また、検出ユニット32は、力生成部材として機能する回転部材78と、非回転部材としての伝達部材80と、を含む。回転部材78と伝達部材80は、放射線検出器62の後面68の周縁部に対して、前方(前側内ケース36の前面40側)へ押し付ける力を与える押し付け部材として機能する。その押し付けによって、前側内ケース36の先端壁(放射線検出器62の前面66に対向する面、つまり、前側内ケース36の前面40の反対側の面)と、押し付ける力の伝達部分の作用端部と、の間に、放射線検出器62が挟持される。
回転部材78は、円筒状の形状を有する本体部82と、本体部82の一方の端部に設けられた環状部材84と、によって構成されている。環状部材84の直径は、本体部82の直径よりも大きく、前側内ケース36の内径にほぼ等しい。環状部材84の側面には、ネジ溝が形成されており、前側内ケース36の後端部の内周には、そのネジ溝にかみ合うネジ溝が形成されている。両ネジ溝がかみ合うことにより、回転部材78が前側内ケース36の内周にネジ結合(螺合)される。回転部材78(本体部82及び環状部材84)の内径は、光検出器64の外径よりも大きく、光検出器64は、回転部材78内に挿入されて回転部材78を貫通する。すなわち、光検出器64は回転部材78を挿通する。回転部材78は、前側内ケース36にネジ結合(螺合)し、それ自身の回転運動により、放射線検出器62の後面68の周縁部に対して、前方へ押し付ける力を生成する。
伝達部材80は、回転部材78と放射線検出器62の後面68との間において回転部材78に対してスリップ可能に設けられ、回転部材78で生じた押し付ける力を放射線検出器62に伝達する部材である。具体的には、伝達部材80は円筒状の形状を有する。伝達部材80の内径は、光検出器64、両面接着シート72、反射材74及び弾性ホルダ76の外径よりも大きい。それ故、両面接着シート72、反射材74及び弾性ホルダ76が、伝達部材80内に配置される。伝達部材80の外径は、放射線検出器62の後面68の外径とほぼ等しい。上述したように、光検出器64の外径は放射線検出器62の外径よりも小さい。それ故、放射線検出器62と光検出器64が前側内ケース36内に収容されると、その前側内ケース36内において、光検出器64の周囲に環状の隙間が形成され、伝達部材80は、その環状の隙間に配置される。伝達部材80の先端部80aは、上記押し付ける力の作用端部に相当し、放射線検出器62の後面68における周縁部に当接する。伝達部材80の後端部80bには、回転部材78の環状部材84の前面に当接する面が設けられており、その面には、光検出器64が挿入されて貫通する貫通孔が形成されている。光検出器64はその貫通孔を挿通する。その貫通孔の直径のサイズは、回転部材78の内径のサイズと等しい。回転部材78の環状部材84が伝達部材80の後端部80bの面に当接し、伝達部材80の先端部80aが放射線検出器62の後面68の周縁部に当接する。これにより、回転部材78で生じた押し付ける力が、伝達部材80を介して放射線検出器62の周縁部に対して直接的に伝達される。
放射線検出器62の前面66と、前側内ケース36の先端壁(前面40の反対側の面)と、の間に衝撃吸収板86が設けられている。衝撃吸収板86は弾性部材であり、例えばシリコーン等の樹脂により構成されている。もちろん、衝撃吸収板86が設けられていなくてもよい。この衝撃吸収板86により、放射線測定用プローブ12の前面における衝撃が緩和される。
光検出器64の後端部(前面70側とは反対側の端部)には、ブリーダ基板88が接続される。ブリーダ基板88にはソケット89が設けられており、そのソケット89が光検出器64の後端部に接続される。また、ブリーダ基板88には信号線90が接続されており、その信号線90の端部にはコネクタ92が接続されている。後述するように、コネクタ92は、信号処理ユニット34に設けられたコネクタに接続される。光検出器64から出力された検出信号(電気信号)は、信号線90及びコネクタ92を介して、信号処理ユニット34に出力される。
ブリーダ基板88には絶縁機能を有する絶縁スポンジ94が設置される。絶縁スポンジ94には中心孔95とスリット96(割れ)が形成されており、信号線90が、スリット96を介して中心孔95に配置される。
キャップ98は、内ケースの遮光構造を構成する部材であり、後側内ケース38の後端部42に設けられる。これにより、後端部42の開口が封止され、後端部42において遮光が実現される。つまり、内ケースの背面から内ケースの内部への光の入射が遮断される。キャップ98には、ゴム部材等の弾性部材により構成されている。キャップ98は、その開口に対するゴム栓として機能する。キャップ98の色は黒色である。キャップ98には、中心孔99とスリット100(割れ)が形成されており、信号線90が、スリット100を介して中心孔95に配置される。
後側内ケース38の先端部側(後端部42とは反対側の端部)の側面には、周方向に沿ってネジ溝102が形成されている。前側内ケース36の後端部の内周には、ネジ溝102にかみ合うネジ溝が形成されており、両ネジ溝がかみ合うことにより、後側内ケース38が前側内ケース36にネジ結合(螺合)される。このようにして、前側内ケース36と後側内ケース38とが、着脱可能に連結される。
以下、図6及び図7を参照して、放射線検出器62について詳しく説明する。図6及び図7は、放射線検出器62を示す斜視図である。
図6に示すように、放射線検出器62は、放射線を光に変換するシンチレータ部材104と、シンチレータ部材104を収容した容器106と、によって構成されている。シンチレータ部材104は、例えばNaI、CsI、BGO、GSO、GAGG、LaBr3、SrI2、プラスチックシンチレータ、等によって構成されている。容器106は、例えばアルミニウム等の金属によって構成されている。容器106は周縁部108を有している。伝達部材80の先端部80aは、容器106の周縁部108に当接する。これにより、回転部材78で生じた押し付ける力が、容器106の周縁部108に対して直接的に伝達される。上述したように、放射線検出器62の後面68(出光面)には両面接着シート72が接着され、これにより、放射線検出器62に対して光検出器64が固定される。
図7には、両面接着シート72が接着された状態の放射線検出器62が示されている。上述したように、環状の反射材74が両面接着シート72に接着される。光検出器64は、反射材74の内側の円状部分を貫通して両面接着シート72に接着される。
次に、図8を参照して、弾性ホルダ76について詳しく説明する。図8は、弾性ホルダ76を示す断面図である。弾性ホルダ76の内周面には凹凸110が形成されており、後面76bには凹凸112が形成されている。
以下、図9から図11を参照して、検出ユニット32と信号処理ユニット34との連結状態について説明する。図9から図11は、検出ユニット32と信号処理ユニット34の斜視図であり、図10及び図11には、その一部の断面が示されている。
信号処理ユニット34は、検出ユニット32のコネクタ92に着脱可能に接続されるコネクタ114を含む。コネクタ114は第2基板56に配置されている。検出ユニット32の光検出器64から出力された検出信号(電気信号)は、コネクタ92,114を介して、信号処理ユニット34の第2基板56に出力される。コネクタ92が第1のコネクタの一例に相当し、コネクタ114が第2のコネクタの一例に相当する。
図11に示すように、検出ユニット32の後側内ケース38の後端部42と、信号処理ユニット34の筐体部分46の先端部50と、が円周方向にかみ合って回り、これにより、検出ユニット32と信号処理ユニット34とが連結される。
以下、図12から図14を参照して、各構成が組み立てられた状態の放射線測定用プローブ12について詳しく説明する。図12は、放射線測定用プローブ12を示す断面図であり、図13には、その一部が示されている。図14は、検出ユニット32を示す断面図である。
前側内ケース36内には、放射線検出器62が収容されている。放射線検出器62の外径は、前側内ケース36の内径とほぼ等しい。
前側内ケース36は、放射線検出器62の前面66に対向する先端壁115を有する。その先端壁115と放射線検出器62の前面66との間には、衝撃吸収板86が設けられている。
放射線検出器62の後面68と光検出器64の前面70とが、両面接着シート72によって接着されており、これにより、放射線検出器62に対して光検出器64が固定されている。両面接着シート72の後面には、環状の反射材74が接着されている。光検出器64の受光端部(前面70側の端部)に、環状の弾性ホルダ76が取り付けられている。両面接着シート72、反射材74及び弾性ホルダ76も、前側内ケース36内に収容されている。放射線検出器62の前面70側が前側内ケース36内に収容されており、放射線検出器62の後端部側が後側内ケース38内に収容されている。
光検出器64の外径及び弾性ホルダ76の外径は、前側内ケース36の内径よりも小さい。それ故、光検出器64と前側内ケース36との間、及び、弾性ホルダ76と前側内ケース36との間に、環状の隙間が形成される。伝達部材80は、その環状の隙間に配置される。このように、環状の隙間を有効に活用して伝達部材80が配置されて、押し付ける力が放射線検出器62に伝達される。具体的には、弾性ホルダ76が光検出器64に取り付けられた状態で、放射線検出器62に対して固定された光検出器64が、円筒状の伝達部材80に挿通される。これにより、伝達部材80が取り付けられ、伝達部材80の先端部80aが、放射線検出器62の周縁部(容器106の周縁部108)に当接する。また、伝達部材80の中に弾性ホルダ76が配置される。伝達部材80も、前側内ケース36内に収容される。伝達部材80の外径は、前側内ケース36の内径とほぼ等しい。
伝達部材80が前側内ケース36内に収容された状態で、回転部材78が前側内ケース36に取り付けられる。具体的には、光検出器64を伝達部材80に挿通させた状態で、光検出器64を回転部材78に挿通させる。上述したように、回転部材78の環状部材84の側面にはネジ溝が形成されている。前側内ケース36の後端部の内周には、環状部材84のネジ溝にかみ合うネジ溝116が形成されている。環状部材84の外径は、前側内ケース36の内径とほぼ等しい。それ故、回転部材78を前側内ケース36内に挿入し、回転部材78を回転させることにより、両ネジ溝がかみ合い(螺合し)、これにより、回転部材78が前側内ケース36に取り付けられる。取り付ける方向(締め付ける方向)に回転部材78を回転させると、回転部材78は、放射線測定用プローブ12の前方(矢印Xが示す方向)へ移動し、回転部材78の環状部材84の前面が、伝達部材80の後端部80bに当接する。締め付ける方向に回転部材78を更に回転させると、回転部材78が更に前方(矢印Xが示す方向)へ移動し、伝達部材80を前方に押し付ける。つまり、回転部材78が回転することにより、伝達部材80を前方へ押し付ける力が生成される。伝達部材80の先端部80aは放射線検出器62の周縁部(容器106の周縁部108)に当接しているため、回転部材78により生成された力は、伝達部材80を介して、放射線検出器62の周縁部108に伝達される。これにより、放射線検出器62が前方に押し付けられ、前側内ケース36の先端壁115と伝達部材80の先端部80aとの間に挟持される。伝達部材80の先端部80aが、押し付ける力の作用端部の先端部に相当する。
放射線検出器62の挟持状態は、前側内ケース36内において、放射線測定用プローブ12の中心軸方向に、放射線検出器62が固定された状態である。例えば、回転部材78及び伝達部材80の内周面と光検出器64との間に隙間118が形成され、光検出器64は、片持ち方式で保持される。
挟持状態においては、弾性ホルダ76が伝達部材80によって前方に押し付けられ、弾性ホルダ76の前面76aが反射材74に密着する。
光検出器64の後端部には、ソケット89を介してブリーダ基板88が接続されている。ブリーダ基板88には絶縁スポンジ94が設置されている。
後側内ケース38の先端部側の側面に形成されたネジ溝102と、前側内ケース36の後端部の内周に形成されたネジ溝116と、がかみ合い(螺合し)、これにより、前側内ケース36と後側内ケース38とが連結する。
後側内ケース38の後端部42の開口にはキャップ98が嵌め込まれており、これにより、後端部42の開口が封止される。キャップ98の前面は絶縁スポンジ94に当接し、絶縁スポンジ94を挟む形状を有している。キャップ98により絶縁スポンジ94が軽く押され、これにより、光検出器64の後端部が軽く押さえられる。キャップ98は、検出ユニット32が信号処理ユニット34に連結された状態で潰れる。これにより、後側内ケース38の後端部42における遮光性が向上する。
なお、シール性を担保するために、検出ユニット32と信号処理ユニット34との連結部分、つまり、後側内ケース38の後端部42と筐体部分46の先端部50との連結部分には、Oリングが設置されている。また、前側外ケース16と信号処理ユニット34の筐体部分46との連結部分、及び、後側外ケース18と信号処理ユニット34の筐体部分46との連結部分にも、Oリングが設置されている。
以上のように、本実施形態に係る放射線測定用プローブ12は、検出ユニット32と信号処理ユニット34とを含み、それらは着脱可能に連結されている。検出ユニット32は、パッケージ化(カプセル化)されたユニットであり、独立して交換可能な部品である。これにより、検出ユニット32単位で交換を行うことが可能となり、その取り扱いも容易である。それ故、放射線測定用プローブ12のメンテナンス性を向上させることが可能となる。また、検出ユニット32を交換するだけで、機能の異なる放射線測定用プローブ12を実現することが可能となり、利便性が増す。例えば、検出ユニット32を交換することにより、α線用、β線用、γ線用又は中性子線用の放射線測定用プローブ12を実現することが可能となる。別の例として、高感度対応や高計数率対応の放射線測定用プローブ12を実現することも可能である。
また、前側内ケース36と後側内ケース38とによって構成される内ケースは、遮光構造を有する。それ故、放射線検出器62と光検出器64が配置された環境において遮光性が確保される。例えば、前側外ケース16と後側外ケース18とによって構成される外ケースを取り外した場合であっても、放射線検出器62と光検出器64に対する遮光性が確保される。それ故、検出ユニット32と信号処理ユニット34とを接続した状態で外ケースを取り外し、その状態で、測定者は、信号処理ユニット34の外観や回路構成を確認しながら、放射線測定を行うことが可能となる。また、オシロスコープやマルチメータによる回路のプロービングが可能となる。例えば、メンテナンス時等において便利である。また、後側内ケース38の後端部42の開口には、キャップ98が設置される。このキャップによって、内ケースの後側開口において遮光性が確保される。
また、本実施形態によると、光学的に透明な両面接着シート72又は光学接着剤によって、放射線検出器62の後面68(出光面)と光検出器64の前面70(受光面)とが接着され、これにより、両面間の光学的結合を良好に維持することが可能となる。また、一般的に重い放射線検出器62に対して一般的に軽くて脆い光検出器64を固定することにより、光検出器64に過度に荷重が加わることを防止することが可能となる。また、両面接着シート72又は光学接着剤は、上述した引っ張り力やせん断接着強度を有しているため、耐振動性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。つまり、両面接着シート72又は光学接着剤によって、放射線検出器62に対して光検出器64が積極的に固定されるので、位置ずれや剥離等の現象の発生を抑制して、放射線検出器62と光検出器64との間の光学的結合を良好に維持することが可能となる。また、両面接着シート72又は光学接着剤の全光線透過率は、50%以上、好ましくは90%以上であるため、良好な光学的結合が得られる。また、反射材74によって、放射線検出器62の後面68における光漏れを防止することが可能となる。
また、弾性ホルダ76によって光検出器64が保持されているため、放射線測定用プローブ12の中心軸に直交する方向からの衝撃が弾性ホルダ76によって緩和される。例えば、弾性ホルダ76によって、その直交する方向に対する光検出器64の動きを抑制することが可能となる。これにより、放射線測定用プローブ12の耐振動性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。弾性ホルダ76に形成された凹凸によって、光検出器64を保持する力を増大させることが可能となる。
また、本実施形態においては、回転部材78によって生成された押し付ける力によって、放射線検出器62が挟持される。これにより放射線検出器62が固定されるので、耐振動性及び耐衝撃性を向上させることが可能となる。一般的に重い放射線検出器62を直接的に挟持して固定し、その放射線検出器62に対して一般的に軽くて脆い光検出器64を固定することにより、光検出器64への直接的な過度の荷重負荷を回避することが可能となる。
また、ブリーダ基板88やソケット89には、押し付ける力が付与されないので、それらが保護される。
次に、図15を参照して、放射線測定装置10の機能について説明する。図15は、放射線測定装置10を示すブロック図である。
上述したように、放射線測定用プローブ12は、検出ユニット32と信号処理ユニット34とを含む。検出ユニット32は、上述したように、シンチレータ部材104と光検出器64とを含む。光検出器64は、例えば光電子増倍管により構成されている。検出ユニット32により、放射線(例えばγ線)のエネルギーが検出信号(電気信号)に変換される。具体的には、上述したように、シンチレータ部材104により放射線が光に変換され、光検出器64(光電子増倍管)により光が検出信号に変換される。検出信号は、信号処理ユニット34の演算部120に出力される。
信号処理ユニット34は、演算部120と高圧生成部122とを含む。
演算部120は、検出ユニット32から出力された検出信号に対して信号処理を適用する。これにより、測定値(例えば線量率Sv/h、Gy/h、積算線量等)が演算される。測定値を示す信号はデジタル信号であり、そのデジタル信号は、ケーブル24を介して本体ユニット14に出力される。
高圧生成部122は、演算部120による制御により高電圧(HV)を生成し、検出ユニット32の光検出器64(光電子増倍管)に高電圧を供給する。これにより、光検出器64(光電子増倍管)が駆動される。
本体ユニット14は、表示部26と制御部124とを含む。制御部124は、表示部26における表示や、通信等を制御する。制御部124は、放射線測定用プローブ12から出力されたデジタル信号を受け、そのデジタル信号が示す測定値を表示部26に表示させる。
以下、図16を参照して、放射線測定用プローブ12の機能について説明する。図16は、放射線測定用プローブ12を示すブロック図である。
放射線測定用プローブ12は、MCAユニット126とCPU−HVユニット128とを含む。MCAユニット126は、信号処理ユニット34の第2基板56に配置されており、CPU−HVユニット128は、信号処理ユニット34の第1基板54に配置されている(図4,12等参照)。
シンチレータ部材104(例えばNaI)によって放射線が光に変換され、光検出器64(PMT)によって光が検出信号(電気信号)に変換され、その検出信号が、ブリーダ基板88を介してMCAユニット126に出力される。なお、シンチレータ部材104と光検出器64の組み合わせの他に、GM管、シンチレータ部材104と光子計測デバイス(例えばSiPM(Silicon Photomultipliers))の組み合わせ、又は、半導体検出器、等を用いてもよい。
MCAユニット126は、光検出器64から出力された検出信号に対して信号処理を適用することにより、放射線のスペクトルを生成する機能を備えている。CPU−HVユニット128は、そのスペクトルに対して検出ユニット32のエネルギー特性に応じたエネルギー補償を施すことにより、測定値(例えばSv/hやGy/h等の線量率、積算線量等)を演算する機能を備えている。また、CPU−HVユニット128は、光検出器64に駆動電圧を供給する機能を備えている。
以下、MCAユニット126について詳しく説明する。
MCAユニット126は、ハイブリッドIC130、温度を検出する温度センサ132、記憶部として機能するEEPROM134、及び、ブザー信号を生成する信号生成部136を含む。ハイブリッドIC130は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって構成されている。
ハイブリッドIC130は、アナログ処理回路とデジタル処理回路を含み、検出ユニット32から出力された検出信号に対して信号処理を適用することにより、放射線のスペクトルを生成する回路である。ハイブリッドIC130は、HV制御部138、アナログ信号処理回路としてのAMP140、変換回路としてのADC142、デジタル信号処理回路としてのMCA144、ADC146、及び、通信部148を含む。ハイブリッドIC130には、クロック信号とリセット信号が入力される。ハイブリッドIC130は、AMP140のゲイン、シェーピングタイム、ポールゼロ調整、LLD(Low Level Discriminator)、オフセット等、アナログ回路に関する様々な調整を、後述するCPU150からの命令に従って調整することが可能となっている。
HV制御部138は、後述するHV回路152により生成される電圧の制御、電圧及び電流の監視、等を行う制御回路である。
AMP140はアンプ回路であり、検出信号に対してアナログ信号処理を施す回路である。具体的には、AMP140は、検出信号を増幅して整形する。
ADC142は、アナログ信号処理後の検出信号に対してデジタル信号処理を施す回路である。具体的には、ADC142は、AMP140から出力された増幅及び整形後の検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。例えば、ADC142は、アナログ信号の波高(電圧)を数値化(デジタル化)する。
MCA144(マルチチャンネルアナライザ)は、デジタル化された波高値毎の計数値をメモリすることで放射線のスペクトル(頻度分布)を生成する回路である。
温度センサ132によって温度を電圧に変換し、この電圧をADC146でデジタル値に変換し、温度値を得る。AMP140は温度値に応じたゲインの自動調整が可能である。これにより、検出信号に対する温度補償が行われる。シンチレータ部材104や光検出器64(PMT)は温度依存性を有しており、周辺環境の温度により、それらからの出力が変化し、MCA144の出力(波高値)が変化する。このように、波高値が温度依存性を有している。本実施形態では、検出された温度に応じてAMP140のゲインが調整され、これにより、検出ユニット32の温度特性がアナログ信号処理の段階で補償される。デジタル信号処理の段階で補償を行う場合、例えば、MCA144からの出力信号に対して温度補償を行う場合、多チャンネルのデータに対して個別的に温度補償を行う必要があるため、処理が煩雑になる。これに対して、本実施形態では、アナログ信号処理の段階で温度補償が行われるので、その煩雑さを回避することができる。例えばADC142から出力されたデジタル値に温度補償を行う場合、ADCの最大値以上の波高はADC最大値として扱われるが、温度補償値が1.00以下の場合には温度補償により、MCA144の最大値以下のチャンネルにストアされるため、最大値以上の振る舞いに不整合が生じたり、扱いが煩雑になる。また、離散値に離散値を乗算したものをMCA144に入力するため、スペクトルの連続性が損なわれる場合がある。本実施形態では、このような問題を回避することができる。
なお、ハイブリッドIC130は発熱体であるため、温度センサ132をハイブリッドIC130からできる限り遠ざけることが望ましい。また、温度センサ132を放射線検出器62と光検出器64の近傍に配置することが望ましい。
通信部148は、例えばシリアル通信によってCPU150と通信を行う回路である。MCA144から出力された放射線のスペクトル(デジタル信号)が、通信部148を介してCPU150に出力される。
EEPROM134はメモリであり、ハイブリッドIC130の設定値群や、温度補償用の関数を示すデータが記憶する。ハイブリッドIC130はアナログ回路を内蔵しているため、通常のディスクリート回路では回路定数等で定まるパラメータであるシェイピング、ゲイン、ポールゼロ調整、LLD、オフセット等の値を設定値としてEEPROMに保存できる。
信号生成部136は、ハイブリッドIC130からの出力(例えば検出信号)に基づいて、デジタル信号としてのブザー信号を生成する。ブザー信号は、ケーブル24を介して本体ユニット14に出力される。本体ユニット14においては、制御部124が、ブザー信号に従ってブザーから音を発生させる。これにより、放射線が検出された場合に、ブザーから音が発せられ、測定者は放射線の検出を認識することが可能となる。CPU−HVユニット128を介さずにブザー信号が本体ユニット14に出力されるので、放射線検出を報知することについて、リアルタイム性を向上させることが可能となる。また、ブザー信号は、CPU−HVユニット128に含まれるCPU150に出力される。
以下、CPU−HVユニット128について詳しく説明する。
CPU−HVユニット128は、CPU(Central Processing Unit)150、HV回路152及び通信ドライバ154を含む。CPU150には、クロック信号とリセット信号が入力される。
CPU150は、ハイブリッドIC130から出力された放射線のスペクトルに対して、検出ユニット32のエネルギー特性に応じたエネルギー補償処理を施すことにより、測定値(例えばSv/hやGy/h等の線量率、積算線量等)を演算する。具体的には、CPU150は、放射線のスペクトルに対して、検出ユニット32に応じた補償関数G(E)を適用する。補償関数G(E)は、シンチレータ部材104の種類に応じて変更される。補償関数G(E)を示すデータは、例えば、CPU150の内部メモリに記憶されていてもよいし、EEPROM134に記憶されていてもよいし、別のメモリに記憶されていてもよい。
CPU150により演算された測定値を示す信号は、表示情報としてのデジタル信号である。そのデジタル信号(表示情報)は、通信ドライバ154及びケーブル24を介して本体ユニット14に出力される。本体ユニット14においては、制御部124が、デジタル信号に基づいて測定値を表示部26に表示させる。このように、測定値の演算は放射線測定用プローブ12において実行され、本体ユニット14には、放射線測定用プローブ12にて演算された測定値が表示される。なお、放射線のスペクトルを示す信号が、放射線測定用プローブ12から本体ユニット14に出力されてもよい。
また、CPU150は、時定数(平滑化係数)に従って、放射線のスペクトルから生成された線量率又は計数率を平滑化し、これにより、表示情報として、平滑化された表示情報(デジタル信号)を生成する。時定数は、例えば測定者により選択される。CPU150には操作部22が接続されており、測定者が操作部22を操作して時定数を選択すると、CPU150は、測定者により選択された時定数を用いて平滑化処理を行う。または、時定数は自動的に選択されてもよい。
また、CPU150は、MCAユニット126の信号生成部136からブザー信号を受けると、操作部22に設けられているLED光源等の光源を点灯させる。これにより、放射線が検出された場合に、光源が点灯させられ、測定者は放射線の検出を認識することが可能となる。
また、CPU150は、操作部22に設けられているメモリボタンが操作者により操作されると、図示しないメモリに測定値を記憶させる。
上記のエネルギー補償処理及び平滑化処理は、プログラムを実行することにより実現される。例えば、エネルギー補償処理用のプログラム、及び、平滑化処理用のプログラムが、CPU150の内部メモリ、EEPROM134又は他のメモリに記憶されている。CPU150が、エネルギー補償処理用のプログラムを実行することにより、エネルギー補償が実現される。同様に、CPU150が、平滑化処理用のプログラムを実行することにより、平滑化処理が実現される。
なお、ハイブリッドIC130及びCPU150によって、図15に示されている演算部120が構成される。
HV回路152は、昇圧処理により駆動電圧を生成し、その駆動電圧を光検出器64(光電子増倍管)に供給する電源回路である。上述したHV制御部138が、HV回路152から供給される電圧を監視し、所定電圧値を有する駆動電圧がHV回路152から供給されるように、HV回路152を制御する。なお、HV回路152のON/OFF制御は、CPU150によって行われる。もちろん、HV制御部138が、HV回路152のON/OFF制御を行ってもよいし、CPU150が、HV回路152から供給される駆動電圧を制御してもよい。なお、HV回路152が、図15に示されている高圧生成部122の一例に相当する。
通信ドライバ154は、CPU150と本体ユニット14との間で通信を実現するためのドライバであり、例えばパケット通信を行う機能を備えている。これにより、CPU150と本体ユニット14との間でパケット通信が実現され、測定値を示すデジタル信号(表示情報)がパケット通信により本体ユニット14に送信される。通信ドライバ154は、一例として、RS422規格、RS485規格、RS232C規格、又は、USB規格、等の規格に従ったドライバである。
また、CPU−HVユニット128は、電源の一例として、LDO(Low Drop Out)回路として機能する5.0V電源と、DC−DCコンバータとして機能する2.5V電源を含む。CPU−HVユニット128には、本体ユニット14から例えば5.4V及び3.3Vの電圧が供給される。
検出ユニット32が交換された場合、温度補償関数、エネルギー補償関数G(E)、及び、駆動電圧(HVレベル)が変更される。例えば、放射線測定用プローブ12又は本体ユニット14にパーソナルコンピュータ(PC)が接続され、そのPCを利用して、温度補償関数、エネルギー補償関数G(E)及び駆動電圧のレベルが変更されてもよい。
また、MCAユニット126及びCPU−HVユニット128上の各配線に、途中入力線や途中分岐線を設けて、途中入力線や途中分岐線に他の回路等を接続し、回路の機能を拡張できるようにしてもよい。ハイブリッドIC130は、アナログ信号について途中入力線や途中分岐線を扱うことができる。
以下、MCAユニット126及びCPU−HVユニット128の動作について説明する。HV回路152によって生成された駆動電圧が、ブリーダ基板88を介して光検出器64(PMT)に供給される。シンチレータ部材104(NaI)によって放射線が検出されると、シンチレータ部材104によって放射線が光に変換され、光検出器64(PMT)によって光が検出信号(アナログ信号)に変換され、検出信号(アナログ信号)がMCAユニット126に出力される。駆動電圧に重畳した検出信号(アナログ信号)が、コンデンサCでCカットされてハイブリッドIC130に出力される。ハイブリッドIC130においては、AMP140によって検出信号(アナログ信号)が増幅及び整形され、ADC142によって検出信号(アナログ信号)がデジタル信号に変換され、デジタル化された波高値毎の計数値をMCA144によってメモリすることで放射線のスペクトル(頻度分布)が生成される。なお、温度センサ132によって温度を電圧に変換し、この電圧をADC146でデジタル値に変換し、温度値を得る。温度値に応じたゲインがAMP140に設定されることで温度補償が行われる。生成されたスペクトルは、通信部148のデジタル通信によってCPU150に出力される。CPU150においては、放射線のスペクトルに対して、エネルギー補償関数G(E)を用いたエネルギー補償処理が適用され、これにより、測定値(例えばSv/hやGy/h等の線量率、積算線量等)が演算される。また、時定数に従って、放射線のスペクトル又は測定値に対して平滑化処理が適用される。測定値を示すデジタル信号は表示情報としての信号であり、通信ドライバ154を介して本体ユニット14に出力される。本体ユニット14においては、デジタル信号に従って測定値が表示部26に表示される。
以上のように、本実施形態に係る放射線測定装置10においては、放射線測定用プローブ12に、信号処理ユニット34(MCAユニット126及びCPU−HVユニット128)が内蔵されており、放射線測定用プローブ12において、放射線検出から測定値(線量率)の演算までが行われる。このように、本実施形態に係る放射線測定用プローブ12は、放射線検出から測定値演算までが行われる完結性をもった高機能プローブである。もちろん、本体ユニット14において放射線のスペクトルが表示されてもよいし、本体ユニット14において放射線のスペクトルに対して処理が適用されてもよい。
本実施形態に係る放射線測定装置10によると、本体ユニット14において測定値の演算処理を行う必要がないため、汎用性の高い本体ユニット14を用いることが可能となる。例えば、検出対象の放射線の種類(α線、β線、γ線、中性子線)に依存しない本体ユニット14を用いることが可能となる。
また、光検出器64用の駆動電圧が放射線測定用プローブ12内にて生成されるので、ケーブル24を介して、本体ユニット14から放射線測定用プローブ12に駆動電圧を供給せずに済む。それ故、駆動電圧によるノイズの影響を受けずに、測定値を示すデジタル信号を放射線測定用プローブ12から本体ユニット14に出力することが可能となる。また、検出信号としてのアナログ信号へのノイズの影響を回避することが可能となる。ケーブル24にアナログ信号及び高電圧を通さないため、ケーブル24の取扱いや長さ等の制限を緩和することが可能となる。
また、放射線測定用プローブ12にて温度補償がなされているため、放射線の測定精度を向上させることが可能となる。
また、放射線測定用プローブ12は、放射線検出から測定値の演算までを行う完結性をもったプローブである。それ故、放射線測定用プローブ12の交換時に、本体ユニット14の再調整が不要となり、又は、再調整の手間が軽減され、メンテナンス性が向上する。また、調整値が放射線測定用プローブ12のEEPROM134やCPU150の内部メモリに記憶されているため、その点においても、メンテナンス性が向上する。
また、ハイブリッドIC130を採用することにより、電子回路の小型化、コンパクト化が可能となる。ハイブリッドIC130だけでアナログ信号処理からスペクトルの生成処理まで行うことが可能となる。
また、プログラムを実行するCPU150にてエネルギー補償処理を行うことにより、検出ユニット32に応じて、エネルギー補償関数の切り替えや交換等を容易に行うことが可能となる。
なお、本体ユニット14に含まれる表示部26及び制御部124も、放射線測定用プローブ12に含まれていてもよい。
また、本実施形態に係る放射線測定用プローブ12は、上述した構成を有することにより、全体として防水防塵機能を備えている。