JPWO2017155019A1 - 蛋白質吸着抑制剤および蛋白質吸着抑制の方法 - Google Patents

蛋白質吸着抑制剤および蛋白質吸着抑制の方法 Download PDF

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Abstract

抗体や酵素といった蛋白質が免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面に非特異的に吸着することを高いレベルで抑制し、さらに耐洗浄性を向上させた蛋白吸着抑制剤を提供する。下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を有効成分として含有する、蛋白質吸着抑制剤により、上記課題は解決された。【化1】[R1は水素原子またはメチル基であり、R2はメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]

Description

本発明は、蛋白質の非特異的な吸着抑制剤と吸着抑制の方法に関する。詳しくは、免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面に対する、検体中の不純物(蛋白質)の吸着等を防止することができ、かつ耐洗浄性の高い蛋白質吸着抑制剤、および蛋白質の吸着抑制の方法、さらには該吸着抑制剤により処理された基材に関する。
疾病の早期発見のために、臨床検査、診断薬の分野において、免疫反応を利用した測定方法が広く行われている。その中で検査の高感度化が求められており、臨床検査、診断薬の感度向上は大きな課題となっている。高感度化のため、検出方式がペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼといった酵素反応を用いる方法から、蛍光や化学発光を用いる方法へと切り替えられつつある。検出方式を蛍光や化学発光とすることで、理論的には検査対象物質1分子の存在を確認できるといわれているが、実際には目的とする感度を得ることができていない。
免疫反応を利用して測定する際の検出感度を左右する要因の一つとして、測定対象となる抗体、抗原若しくは測定に利用するこれらの標識体の、免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面への非特異的な吸着が挙げられる。また、検体として血清、血漿、細胞抽出物および尿といった複数種の生体分子が共存する物質を用いた場合、各種蛋白質を代表する不特定多数の共存物質が免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面へ非特異的に吸着することによるノイズの発生も、高感度化を妨げる要因となっている。
これらの非特異的な吸着を防止するために、非特許文献1と特許文献1に示されるように、従来から免疫反応に関与しないウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチンといった生物由来の蛋白質を緩衝剤で溶液とした処理液を用いて、免疫反応容器や測定器具等の基材の固定表面に生物由来の蛋白質を吸着させることにより、免疫反応に関与する蛋白質の非特異的な吸着を抑制する方法が用いられている。さらには化学合成品を主成分とする蛋白質吸着抑制剤として、特許文献2は2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体を、特許文献3はグリコシルエチル(メタ)アクリレートを、特許文献4はオキシアルキレン基含有アクリル系重合体を用いる方法を、それぞれ開示している。これらの方法は、免疫反応容器や測定器具等の固相表面へ、蛋白質吸着抑制剤としての化学合成品を物理吸着させることにより、効果を発現させている。
しかしながら、上述の従来の技術に基づく非特異吸着抑制剤の程度の吸着抑制能では、高感度化測定においては未だ非特異的に吸着することによるノイズの発生を抑えるには不十分である場合が多い。これは非特異的吸着抑制剤の機能が未だ不十分であるのみならず、非特異的吸着処理後に、緩衝溶液や活性剤水溶液を用いて行う洗浄工程において、非特異的吸着抑制剤が容易に脱離してしまい、したがって後工程において非特異的吸着抑制能を十分に発揮するための非特異的吸着抑制剤が反応容器内に残存しないためでもある。
また、血液などの体液または生体組織と接触して使用され、生体成分へのダメージを軽微にできる生体適合性材料が知られている(例えば特許文献5など)。しかしながら、このような生体適合性材料を、免疫反応容器や測定器具等の固相表面に適用したとしても、上述の吸着処理後の洗浄工程において固相表面から除去されてしまうという問題が生じ得る。
Johnson, D.A., Gautsch, J.W., Sportsman, J.R., and Elder, "Improved technique utilizing nonfat dry milk for analysis of proteins and nucleic acids transferred to nitrocellulose.", Gene Anal. Technol., 1, 3, 1984. 20.
特開平07−270413号公報 特開平07−083923号公報 特開平10−123135号公報 特開平10−153599号公報 国際公開第2004/087228号パンフレット
上記の通り、本発明の課題は、抗体や酵素といった蛋白質が免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面に非特異的に吸着することを高いレベルで抑制し、さらに耐洗浄性を向上させる蛋白吸着抑制剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定範囲の下限臨界共有温度(以下、「LCST」と略記する)を有し、かつ特定鎖長のポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート共重合体が上記課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔5〕を含む。
〔1〕下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を有効成分として含有する、蛋白質吸着抑制剤。
[Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
〔2〕前記の〔1〕に記載の蛋白質吸着抑制剤と水とを含有する蛋白質吸着抑制剤塗布液。
〔3〕前記の〔1〕に記載の蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備えた基材。
〔4〕下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)により、基材表面に被覆層を形成して前記基材への蛋白質の吸着を抑制する、蛋白質吸着抑制の方法。
[Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
〔5〕下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を含有し、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を、基材表面に供給し、該基材表面に水溶性アクリル重合体(P)の被覆層を形成させることによる、基材への蛋白質吸着抑制性を付与する方法。
[Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
[6]水溶性アクリル重合体(P)を含む蛋白質吸着抑制剤を、水溶性アクリル重合体(P)のLCST以下の温度で基材の表面に接触させることをさらに含む、前記の〔4〕に記載の蛋白吸着抑制の方法。
[7]水溶性アクリル重合体(P)を含む蛋白質吸着抑制剤を、水溶性アクリル重合体(P)のLCST以下の温度で基材の表面に接触させることをさらに含む、前記の〔5〕に記載の蛋白質吸着抑制性を付与する方法。
本発明に係る蛋白質吸着抑制剤を溶解した水溶液等を、所定の温度で基材の固相表面に接触させて除去することによって、抗体や酵素といった蛋白質が当該基材の固相表面に非特異的に吸着することが高いレベルで抑制される。さらに、上記水溶液等を基材の固相表面に接触させて除去した後に各種洗浄を行った場合にも当該効果が維持され、耐洗浄性を向上させた蛋白吸着抑制剤が提供される。また、本発明の蛋白質吸着抑制剤は化学合成品であるため、それを有効成分として含有する蛋白質吸着抑制剤は、生物由来の蛋白質吸着抑制剤が有するロット間差や生物汚染などといった問題の懸念が無く、安全かつ安定的に蛋白質吸着抑制能を発揮する。
図1は、実施例1の蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備える基材の蛋白質吸着抑制効果を示す図である。

以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の蛋白質吸着抑制剤は、水溶性アクリル重合体(P)を有効成分として含有する。
(水溶性アクリル重合体(P))
本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)は、下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、該繰り返し単位[A]は、下記の式(2)で表される単量体の重合によって得られる。
式(1)、(2)において、Rは水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。また、Rはメチル基またはエチル基であり、好ましくはメチル基である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でありm=2〜3であり、好ましくは2である。
式(2)で表される単量体としては具体的には、メチルジエチレングリコールアクリレート(R=H、n=2、R=CH)、エチルトリエチレングリコールアクリレート(R=H、n=3、R=C)、メチルジエチレングリコールメタクリレート(R=CH、n=2、R=CH)、メチルトリエチレングリコールメタクリレート(R=CH、n=3、R=CH)、メチルトリエチレングリコールアクリレート(R=H、n=3、R=CH)等が挙げられる。これらの中では、メチルジエチレングリコールメタクリレート(R=CH、n=2、R=CH)が好ましく挙げられる。
本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)は、これらの式(2)で表される単量体の1種以上を選択して(共)重合して、そのLCSTが25〜45℃になるようにする。このLCSTの範囲は、好ましくは30〜45℃、より好ましくは33〜43℃である。共重合体のLCSTの設計は、単独重合体の加重平均値から予測して、所要の単量体配合比率を見積もることができる。
なお、本発明におけるLCST(下限臨界共有温度)は、1質量%水溶液を昇温速度1℃/minで昇温したときの、波長500nmにおける透過率が50%となる温度をいう。
また、水溶性アクリル重合体(P)において、繰り返し構成単位[A]以外の繰り返し単位として、他のコモノマーを組み合わせて用いることもできる。
一般にポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、中間水を有していて蛋白質を吸着し難いことが知られている。しかし同時に、中間水の存在は基材への吸着にも影響を及ぼす。
なお、上述の「中間水」とは、特有の挙動を示す水分子であり、最近の研究により、例えば以下の観察の結果などにより、生体適合性を示す材料中において存在すると考えられている。例えば、PMEA(ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)に水を含水した試料を−100℃まで冷却した後、毎分2.5℃の割合で昇温した際に観察される吸発熱量を示差走査熱量計(DSC)により測定すると、0℃以下の特定の温度域(例えば、−40℃近辺)において所定の発熱を生じると共に、−10℃近辺から0℃までの広い温度範囲において吸熱が観察される。さまざまな検討により、−40℃近辺での発熱はPMEAに含まれる水分子の一部が規則化したことに伴うものであり、−10℃近辺から0℃での吸熱は、その水分子が再び不規則化したことに伴うものであることが明らかになっており、このように、含水したPMEA中には水単体では生じない挙動を示す水分子が存在し、このような挙動を示す水が「中間水」と呼ばれている。
このような「中間水」は、生体由来のヒアルロン酸、へパリンなどの多糖類やゼラチン、アルブミンなどのタンパク質等やDNAやRNAなどの核酸、人工的に合成された生体適合性材料である上記PEGにも含まれるなど、生体適合性に優れる物質に含有されることが明らかになってきつつある。このように、「中間水」は物質における生体適合性の発現と密接に関連していると考えられている。
物質内に「中間水」が生成される理由は明らかでないが、物質内の高い分子運動性を有する高分子鎖と、水分子とが特定の分子間力で相互作用を生じる結果として生じるものであると考えられている。そして、生体適合性材料においては、材料表面と生体成分の水和殻の間に中間水が存在することで両者が直接触れることが阻害され、生体の異物反応が抑制されると考えられている。
また、LCSTとは、いわゆる曇点にも似た相転移温度であり、例えばポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の高分子が、水溶液中でコイル・グロビュール転移を起こす温度のことである。すなわち、LCST以下の温度では、高分子の親水性が増して水に可溶であるが、LCSTを越えた温度下にある高分子は、疎水性が増し、水に不溶となる。
本発明に係るポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、所定の生体適合性を示すことが知られていた高分子である。一方、当該ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートにおいて、特定のLCSTの値を有する組成を用いることによって、意外にも、高性能な蛋白質吸着抑制剤として機能することが本発明により明らかにされた。すなわち、本発明に係る蛋白質吸着抑制剤を溶解した水溶液等を、当該蛋白質吸着抑制剤のLCST以下の温度で被処理物である基材の固相表面に接触させて除去することによって、抗体や酵素といった蛋白質が当該基材の固相表面に非特異的に吸着することを高いレベルで抑制可能であることが明らかになった。さらに、上記水溶液等を基材の固相表面に接触させて除去した後に各種洗浄を行った場合にも当該効果が維持されることから、実際に各種の評価等を行うに際して各種の洗浄を行った場合にも蛋白質の非特異吸着を抑制可能である。このような現象を生じる作用機序については解明された訳ではないが、本願構成の特定のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートはLCSTの温度下で水溶性であるが、特にLCST直下の温度域では析出の駆動力を有しており、水溶液が固体表面に接触した際に、その表面への吸着等の形態で当該高分子が析出し、その結果として蛋白質の非特異的吸着を阻害する被膜を形成するものと考えられる。すなわち本発明によれば、中間水を含む高分子により形成された被膜により基材への蛋白質の非特異的吸着を防止可能な、優れた蛋白質吸着抑制剤を実現できる。
また、蛋白質吸着抑制剤は、使用時に透明で均一な溶液であることが好ましい。透明であることにより、評価対象の液体に蛋白質吸着抑制剤が含まれたときにも光学検出の妨げとならず、また、蛋白質吸着抑制剤が均一な溶液であることにより、蛋白質吸着抑制剤のコーティングを容易に均一化、すなわちコーティングの厚さを均等にできるためである。これに対し、不透明な溶液として蛋白質吸着抑制剤が使用されると、濁った溶液が評価系の中に入り、体外診断薬の光学系での検出、及び評価を害する恐れがあるとともに、生じるコーティングが不均一となり、蛋白質の吸着を抑制する性能にばらつきが生じ得る。
本発明の蛋白質吸着抑制剤は、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を有効成分として含むために、加熱せずに室温で使用しても容易に透明かつ均一な溶液とすることができる点においても優れている。
本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)は、数平均分子量が5,000〜250,000であり、好ましくは6,000〜1,000,000、より好ましくは7,000〜200,000である。数平均分子量が低すぎると蛋白質分子の吸着を抑制する力が十分でなくなるため、また、高すぎると水溶性が低下してしまうために、本発明の効果が発現しない可能性がある。
本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)においては、分子量分布を揃えることにより、診断薬分野に用いた際のロット間のばらつきをすくなくすることができる。このため、水溶性アクリル重合体(P)多分散度(Mw/Mn)の値は、好ましくは1.0〜5.0であり、より好ましくは1.0〜4.4である。また、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよく、該共重合体を製造するための共重合反応それ自体には特別の制限はなく、フリーラジカル重合、イオン重合、配意重合、開環重合等の公知の合成方法で使用できる。例えば、溶媒として水または有機溶媒を用いた溶液重合法により、単量体を重合させることによって調製することができる。より詳しくは、式(1)記載の1種または2種以上の単量体を、精製水または有機溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら、該溶液に重合開始剤を添加し、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で単量体を重合させることによって、水溶性アクリル重合体(P)を得ることができる。
また、上記単量体の重合の際に用いられる有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
溶液重合法に用いられるモノマー溶液におけるモノマーの濃度は、特に限定されないが、重合の操作性、効率を考慮して10〜80質量%程度であることが好ましい。
上記で使用する重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と省略する)、アゾイソブチロニチル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤等、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体等の光開始剤等が挙げられる。重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー100質量部に対して、0.01〜5質量部程度であることが好ましい。
重合により得られた重合体はそのまま水系媒質にて希釈溶解して使用することもできるが、不純物除去のために精製を行うことが好ましい。精製にあたっては既知の手法を適用することができる。具体的には、重合体を良溶媒に10〜80質量%の溶液としたものを、5〜50倍の貧溶媒と混和する沈殿精製法、重合体の良溶媒溶液を単量体と親和性のある吸着剤と接触させて単量体を分離する吸着処理法、重合体の良溶媒溶液の膜分離よるサイズ分離を利用した単量体の膜分離精製法が挙げられる。
本発明の蛋白質吸着抑制剤は、例えば蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、脂質、ホルモン等、さらに具体的には各種抗原、抗体、レセプター、酵素等を利用した酵素反応、あるいは、免疫グロブリンの抗原抗体反応を利用して測定する免疫学的測定法等において使用可能である。具体的には、公知の放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ラテックス比濁法等、特に好ましくは酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ラテックス比濁法、ウェスタンブロッティング等に適用することができ、これらの公知の免疫学的測定法において、固相表面に抗体あるいは抗原を結合させた後、固相表面の抗体あるいは抗原が結合していない固相表面を、本発明の蛋白質吸着抑制剤で処理することによって、蛋白質の吸着を抑制する。
本発明の蛋白質吸着抑制剤塗布液を得るための、蛋白質吸着抑制剤を溶解させる溶媒としては、精製水、純水、イオン交換水だけでなく、免疫学的測定方法に使用することができる緩衝液であれば全て用いることができる。例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、生理食塩水等を用いることができる。
また、蛋白質吸着抑制剤塗布液中に含有される、蛋白質吸着抑制剤は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。上限値としては、主溶媒である水に溶解する限り特に制限はないが、例えば、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。これらの範囲であれば有効な蛋白質吸着抑制効果が得られるからである。
また、本発明の蛋白質吸着抑制剤以外の、蛋白質吸着抑制剤塗布液中に含有し得る化合物としては、以下のような化合物を例示できる。
すなわち、通常この分野で用いられるその他の試薬類等であって、例えば、糖類、塩類、界面活性剤等が挙げられる。例えば、糖類としては、ラクトース、スクロース、トレハロース等が挙げられる。例えば、塩類としては、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ヒスチジン等のアミノ酸およびアミノ酸塩、グリシルグリシン等のペプチド類、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、トリス塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類、フラビン類、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸などの有機酸および有機酸の塩等が挙げられる。例えば、界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
さらに、蛋白質吸着抑制剤の塗布液中に含有し得る化合物として、水溶性高分子、例えば、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。
次に、蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備える基材について説明する。
本発明に用いる基材の材質は、特に限定されるものではないが、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ガラス、金属、セラミック、シリコンラバー、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ニトロセルロース等を挙げることができる。それらの中でも、ポリスチレンとポリフッ化ビニリデンが好ましく、特にポリスチレンが好ましい。
また、基材の形状としては特に限定されるものではないが、具体的には膜(フィルム)状、プレート状、粒子状、さらには、試験管形状、バイアル瓶形状、およびフラスコ形状等を例示することができる。
これらの基材上に蛋白質吸着抑制剤の被覆層を形成する方法としては、たとえば、次のような方法を挙げることができる。すなわち、水、あるいは水とメタノール、エタノール、イソプロパノールをこれらの任意の割合で混合した溶媒に本発明の蛋白質吸着抑制剤を溶解させて調製した蛋白質吸着抑制剤塗布液中に、基材を浸漬するだけで良く、その後、室温または加温により乾燥させることもできる。これによって当該被覆層を形成する。
蛋白質吸着抑制剤の被覆層形成のための蛋白質吸着抑制剤塗布液において、その蛋白質吸着抑制剤の濃度は0.1〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。また本発明の蛋白質吸着抑制剤を希釈する溶媒としては、水、水/アルコール混合溶媒が好ましく、より好ましくは水である。
つづいて、本発明の蛋白質吸着抑制剤の使用方法について説明する。
本発明の蛋白質吸着抑制剤においては、上述したように、基材表面に供給することによって基材上に該吸着抑制剤の被覆層を形成させることにより、各種測定時における基材への蛋白質の吸着を抑制する方法が、一つの使用形態である。すなわち、本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)が、免疫反応容器や測定器具等の基材の固相表面に当該被覆層となって吸着することにより、該固相表面上に蛋白質が吸着することを抑制するものである。
なお、蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備える基材をあらかじめ作製して、該基材を免疫反応容器や測定器具等に使用する方法の他に、各種測定において使用する試薬に本発明の蛋白質吸着抑制剤を添加する方法が挙げられる。つまり、各種測定の1工程として、基材上に該吸着抑制剤の被覆層を形成させる方法である。なお、測定を実施する際の全ての試薬や溶液に本発明の蛋白質吸着抑制剤を添加して使用することもできる。
このような使用方法において、各試薬および溶液中の蛋白質吸着抑制剤の濃度は、0.0125〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。ただし、各種測定の1工程として蛋白質吸着抑制剤を添加する場合には、測定対象物である血清、標識抗体または標識抗原等の蛋白質含有試料を添加する前に、蛋白質吸着抑制剤を添加する。
また、別の使用形態として、以下の方法を挙げることができる。
すなわち、上記免疫反応容器や測定器具等の基材の固定表面に、まず、抗体または抗原等の試料中に含まれる目的の成分と結合可能な蛋白質等を結合させた後、本発明の蛋白質吸着抑制剤で処理する方法である。例えば、ポリスチレン製プレートを使用する際に、該プレートに目的の成分と結合する蛋白質、例えば測定対象物と反応する物質を物理的、あるいは化学的に吸着させた後、本発明の蛋白質吸着抑制剤で処理する方法である。つまり、測定対象物と結合可能な物質をプレート表面に吸着させた後、該測定対象物と結合する物質が吸着していないプレート表面への蛋白質の吸着抑制するため、本願の吸着抑制剤を吸着させる方法である。これによって、蛋白質吸着抑制効果をもつ固相表面を得ることができる。
このような使用方法における基材としては、上記した「蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備える基材」と同様な種類および形状の基材を例示できる。
<合成例1>
<メトキシジエチレングリコールモノアクリレート単独重合体の合成>
単量体としてメトキシジエチレングリコールモノアクリレート15gを四つ口フラスコに秤量し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを15mg添加し、1,4−ジオキサン60gに常温で溶解した。開始剤の溶解確認後、オイルバスで75℃に昇温し、75℃に到達後、8時間重合反応を行った。重合反応終了後、1,000mLの反応液を約1,000mLヘキサンで希釈洗浄して有機相を取り除いて生成物を回収し、これを70mLのテトラヒドロフランに再溶解して、再度n−ヘキサンで洗浄することで生成物を回収し、一昼夜減圧乾燥することで目的のオキシアルキレン重合体を得た。H−NMR測定により、生成物がメトキシジエチレングリコールモノアクリレート単独重合体であることを確認した。またGPCの分子量分析の結果では、数平均分子量(Mn)は13,000であった。さらに重合体が1質量%の水溶液を調製し、波長500nmにおけるUV測定により、その水溶液中の重合体のLCSTが43.1℃であることを確認した。
なお上述のように、本発明におけるLCST(下限臨界共有温度)は、1質量%水溶液を昇温速度1℃/minで昇温したときの、波長500nmにおける透過率が50%となる温度をいう。LCSTの測定には、日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−650を用い、光路長1.0cmのセルに1重量%の水溶液3mLを入れ、昇温速度1℃/minで昇温させたときの水溶液の透過率の値に基づき、測定した。
本発明に用いる水溶性アクリル重合体(P)においては、これらの式(2)で表される単量体の1種以上を選択して(共)重合して、そのLCSTが25〜45℃になるようにする。このLCSTの範囲は、好ましくは30〜45℃、より好ましくは33〜43℃である。共重合体のLCSTの設計は、単独重合体の加重平均値から予測して、所要の単量体配合比率を見積もることができる。
<合成例2>
<エトキシトリエチレングリコールモノアクリレート単独重合体の合成>
原料としてエトキシトリエチレングリコールモノアクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定によりエトキシトリエチレングリコールモノアクリレート単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は14,000であり、LCSTは33.8℃であった。
<合成例3>
<メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体の合成>
原料として、メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定によりメトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は105,000であり、LCSTは42.5℃であった。
<合成例4>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート − メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(50/50)の合成>
原料として、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレートを6.9gとメトキシトリエチレングリコールモノアクリレート8.1gとして合計15gとした他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート−メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート/メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート=47/53;モル比)であることを確認した。数平均分子量(Mn)は48,000であり、LCSTは37.2℃であった。
<合成例5>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート − メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体(60/40)の合成>
原料としてメトキシジエチレングリコールモノメタクリレート8.2gとメトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート6.8gとして合計15gとした他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート−メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート/メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート=58/42;モル比)であることを確認した。数平均分子量(Mn)は188,000であり、LCSTは35.1℃であった。
<合成例6>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート − メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(40/60)の合成>
原料としてメトキシジエチレングリコールモノメタクリレート5.5gとメトキシトリエチレングリコールモノアクリレート9.5gとして合計15gとした他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート−メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート/メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体=35/65;モル比)であることを確認した。数平均分子量(Mn)は7,000であり、LCSTは37.2℃であった。
<合成例7>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート − メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(50/50、低分子量体)の合成>
原料としてメトキシジエチレングリコールモノメタクリレート3.5gとメトキシトリエチレングリコールモノアクリレート4.0gとして合計7.5gとし、開始剤30mgとした他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート−メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート/メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体=47/53;モル比)であることを確認した。数平均分子量(Mn)は17,000であり、LCSTは37.2℃であった。
<比較合成例1>
<メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート単独重合体の合成>
原料としてメトキシトリエチレングリコールモノメタクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は12,000であり、LCSTは63.8℃であった。
<比較合成例2>
<2−メトキシエチルビニルエーテル単独重合体の合成>
原料として2−メトキシエチルビニルエーテルモノマー15gを乾燥酢酸エチル15gで希釈して四つ口フラスコに秤量し、重合開始剤としての1−ブトキシエチルアセテート40mMのトルエン溶液15mLを加え、乾燥トルエン180mL中でアルゴン気流下、0℃に冷却した後、撹拌しながらルイス酸としてEt1.5AlCl1.5の1Mトルエン溶液3.75mLを添加した。これを0℃で30分撹拌後、反応液にエタノールを22.5mL添加し、反応停止した。重合反応終了後、反応液をトルエンで希釈して洗浄し、有機相から溶媒を留去し生成物を得た。次いで、80℃の温水で3回洗浄を行った。生成物を回収し、一昼夜減圧乾燥して目的のオキシアルキレン重合体を得た。得られたポリマーの構造は、H−NMR測定により2−メトキシエチルビニルエーテル単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は26,000であり、LCSTは69.0℃であった。
<比較合成例3>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート − メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(20/80、低分子量)の合成>
原料としてメトキシジエチレングリコールモノメタクリレート1.3gとメトキシトリエチレングリコールモノアクリレート6.2gとして合計7.5gとし、開始剤を30mgとした他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート−メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート/メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート共重合体=15/85;モル比)であることを確認した。数平均分子量(Mn)は4,000であり、LCSTは52.0℃であった。
<比較合成例4>
<メトキシテトラエチレングリコールモノアクリレート単独重合体の合成>
原料としてメトキシテトラエチレングリコールモノアクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシテトラエチレングリコールモノアクリレート単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は87,000であり、LCSTは75℃以上であった。
<比較合成例5>
<メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体の合成>
原料としてメトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は122,000であり、LCSTは75℃以上であった。
<比較合成例6>
<メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体の合成>
原料としてメトキシジエチレングリコールモノメタクリレートを用いた他は、合成例1と同様に行った。H−NMR測定により、生成物が、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート単独重合体であることを確認した。数平均分子量(Mn)は、25,000であり、LCSTは23.5℃であった。
表中の略号の意味は次の通りである。
※ Mn: 数平均分子量
※※LCST: 下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature)
<実施例1>
<蛋白吸着抑制溶液の調製>
合成例1の重合体をダルベッコリン酸緩衝液(Sigma−Aldrich社製、以後D−PBSと略称する)に0.1質量%となるように混合、ボルテックスミキサーで1時間攪拌溶解し、蛋白質吸着抑制剤塗布液とした。塗布液は室温において透明であり、投入した重合体の全量が溶解したものと考えられた。
<蛋白質吸着抑制効果の評価>
上記実施例1の蛋白質吸着抑制剤塗布液について、以下のような方法によって、その蛋白質吸着抑制効果を測定した。
MaxiSoap plate(Thermofisher Scientific社製ポリスチレン製プレート)に、蛋白質吸着抑制剤塗布液を200μL/wellにて分注し、室温で2時間静置した。その後、アスピレーターで溶液を完全に除去し、一方はそのまま(表3中、「未洗浄時」と表記した欄に結果を記載)、もう一方は、直ちにD−PBSを200μL/wellに分注、アスピレータで液を除く操作をそれぞれ5回、繰り返した(表3中、「洗浄後」と表記した欄に結果を記載)。続いて、D−PBSで20,000倍希釈したPOD−IgG(ペルオキシダーゼ標識免疫グロブリンG、Biorad社製)を100μL/wellに分注し、室温で2時間静置した。その後、ツイーン20を0.05%の濃度で含有するD−PBSを200μL/wellに分注、アスピレータで溶液を完全に除去した。この操作を4回繰り返し、プレート表面の洗浄を行った。洗浄後に、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を用いて調製した発色液100μL/wellを加え、室温で7分間反応させた。発色反応を1mol/Lの硫酸溶液を50μL/wellに分注することで停止させ、450nmの吸光度を測定し、吸着した蛋白質を検出した。吸光度が小さいほど蛋白質の吸着が抑制されていることを示す。吸光度測定には、Spectra Max M3(Molecular Device社製)を使用した。評価結果を表3に示した。
本発明に係る蛋白質吸着抑制剤の効果について、図1の概略図に基づき説明する。例えば、免疫反応容器10の壁面12を基材としたときに、図1の左側では、抗原14等の測定対象の検体が、抗体16に吸着されている。これに対し、蛋白質吸着抑制剤18が吸着抑制効果を奏する場合には、図1の右側の抗体16のように、抗原14等の検体の吸着が防止されると考えられる。詳細を後述するように、本発明の蛋白質吸着抑制剤によれば、図1の右側に示されているように、検体の抗体16への吸着が効果的に抑制される。
<耐洗浄性の評価>
また、蛋白質吸着抑制剤塗布液の耐洗浄性については、上記「未洗浄時」と、上記「洗浄後」の「蛋白質の吸着率の差」に基づいて、評価した。この「蛋白質の吸着率の差」(Δ%)の値が小さい吸着抑制剤は、洗浄されても基材の表面に良く保持されていたといえ、良好な耐洗浄性を示すものといえる。
<実施例2〜実施例7>
合成例2〜7重合体を使用した以外は、実施例1と同様にして蛋白質吸着抑制剤塗布液を調製した。各塗布液は室温において透明であり、それぞれ投入した重合体の全量が溶解したものと考えられた。さらに、実施例1と同様にして蛋白質吸着抑制効果および耐洗浄性を評価した。結果を表3に示した。
<実施例8>
合成例4の重合体をダルベッコリン酸緩衝液(Sigma−Aldrich社製、以後D−PBSと略称する)に0.04質量%となるように混合、ボルテックスミキサーで1時間攪拌溶解し、蛋白質吸着抑制剤塗布液とした。塗布液は室温において透明であり、投入した重合体の全量が溶解したものと考えられた。それ以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
<比較例1〜5>
合成例1の重合体の代わりに比較合成例1〜5の化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして溶液を調整した。各溶液は室温において透明であり、それぞれ投入した重合体の全量が溶解したものと考えられた。さらに、実施例1と同様にして蛋白質吸着抑制効果および耐洗浄性を評価した。結果を表4に示した。
<比較例6>
合成例1の重合体の代わりに比較合成例6の化合物を使用したが、濁りが生じたため、タンパク質吸着抑制効果、及び耐洗浄性の試験は中止した。
合成例1の重合体の代わりに、アルブミン ウシ血清由来のたんぱく質(BSA)を使用した以外は、実施例1と同様にして蛋白吸着抑制溶液を調整した。さらに、実施例1と同様にして蛋白質吸着抑制効果および耐洗浄性を評価した。結果を表4に示した。
本発明の蛋白質吸着抑制剤で処理を行った基材(実施例1〜8)は、これ以外のオキシアルキレン基含有アクリル重合体で処理を行った基材(比較例1〜5)に比較して非特異的蛋白吸着抑制能に有していた。このような結果は、本発明に係るアクリル重合体(P)の水溶液に接触させることで、当該アクリル重合体(P)の被覆層を表面に生じて、この被覆層により蛋白質吸着が抑制されたものと考えられる。
すなわち、各実施例の蛋白質吸着抑制剤は、比較例の蛋白質吸着抑制剤に比べて、「未洗浄時」と「洗浄後」のいずれにおいても、「蛋白質の吸着率」の値が全般的に低かったため、本発明の蛋白質吸着抑制剤が、非特異的蛋白吸着抑制能に優れていることが確認された。
さらに、本発明の蛋白質吸着抑制剤が、優れた耐洗浄性を有することが確認された。すなわち、本発明の各実施例においては、各蛋白質吸着抑制剤の水溶液と基材を接触させて除去した後に、更に洗浄を行った場合についても、未洗浄時との蛋白質の吸着率の差に相当する耐洗浄性(Δ%)の値が小さく、このことは、洗浄されても基材の表面に吸着抑制剤が良く保持されていたことを示す。これに対し、各比較例においては、耐洗浄性(Δ%)の値が大きかったことから、洗浄により吸着抑制剤が基材の表面から脱離し易いことが確認された。とくには実施例4、5、7、および8で示される被覆層を表面に備える基材はより優位に蛋白吸着抑制能力、ならびに耐洗浄を有していた。
なお、参考比較例として結果を表4に示したBSAは、蛋白吸着抑制剤および耐洗浄性に優れていることが知られている。このような参考比較例と比べても、各実施例の蛋白質吸着抑制剤は、吸着抑制効果においてほぼ同等である上に、耐久洗浄性がより高いことが分かる。特に、実施例4、5、7、および8の蛋白質吸着抑制剤は、参考例であるBSAよりも洗浄後の蛋白質吸着抑制能が優れている。以上のように、本発明の蛋白質吸着抑制剤を用いることにより、分析精度の安定性の向上が可能であることが確認された。
10:免疫反応容器
12:免疫反応容器の壁面
14:抗原(検体)
16:抗体
18:蛋白質吸着抑制剤

Claims (7)

  1. 下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を有効成分として含有する、蛋白質吸着抑制剤。
    [Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
  2. 請求項1に記載の蛋白質吸着抑制剤と水とを含有する蛋白質吸着抑制剤塗布液。
  3. 請求項1に記載の蛋白質吸着抑制剤の被覆層を表面に備えた基材。
  4. 下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)により、基材表面に被覆層を形成して前記基材への蛋白質の吸着を抑制する、蛋白質吸着抑制の方法。
    [Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
  5. 下記の式(1)で表される繰り返し構成単位[A]を含み、数平均分子量が5,000〜250,000であり、LCSTが25〜45℃である水溶性アクリル重合体(P)を、基材表面に供給し、該基材表面に水溶性アクリル重合体(P)の被覆層を形成させることによる、基材への蛋白質吸着抑制性を付与する方法。
    [Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で2〜3である。]
  6. 前記水溶性アクリル重合体(P)を含む蛋白質吸着抑制剤を、前記水溶性アクリル重合体(P)のLCST以下の温度で前記基材の表面に接触させることをさらに含む、請求項4に記載の蛋白吸着抑制の方法。
  7. 前記水溶性アクリル重合体(P)を含む蛋白質吸着抑制剤を、前記水溶性アクリル重合体(P)のLCST以下の温度で前記基材の表面に接触させることをさらに含む、請求項5に記載の蛋白質吸着抑制性を付与する方法。
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