JPWO2017150132A1 - 積層体の製造方法、反射防止膜付ガラス及び太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である水性塗布組成物を、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材の、凹凸構造を有する面に、1.8mL/m以下の塗布量にて塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布により形成された塗布膜を乾燥して反射防止膜を形成する工程と、を有する積層体の製造方法、並びに反射防止膜付ガラス及び太陽電池モジュールである。

Description

本開示は、積層体の製造方法、反射防止膜付ガラス及び太陽電池モジュールに関する。
水性の塗布液は、水を含む溶媒を用いており、形成された膜の表面エネルギーが高く、透明性に優れることから、種々の用途に使用されている。具体的な用途としては、例えば、反射防止膜、光学レンズ、光学フィルタ、各種ディスプレイの薄層フィルムトランジスタ(TFT)用平坦化膜、結露防止膜、防汚膜、表面保護膜等が挙げられる。
中でも、反射防止膜は、例えば、太陽電池モジュール、監視カメラ、照明機器、標識等の保護膜に適用することができるため有用である。
反射防止膜等の用途に使用可能な水性の塗布液としては、近年、シリカ粒子を含有する塗布液が種々提案されている。例えば、太陽電池モジュールでは、太陽光が入射する側の最表層に配置されたガラス(いわゆるフロントガラス)における反射特性が発電効率に大きく影響するため、発電効率を向上させる観点から、ガラス用の反射防止コートが種々提案されている。
また、太陽電池モジュールのフロントガラスには、防眩性を付与する観点から、ガラス表面に梨地模様の凹凸構造を有する加工ガラス(いわゆる型板ガラス)が用いられる場合がある。凹凸構造を有するガラス面に、均一性の高い膜厚を有する反射防止膜を塗布により形成することは難しい。
水性の塗布液の例としては、例えば、特開2015−108061号公報において、粘度と表面張力とを所定の範囲に調整した、金属酸化物を含むコーティング組成物が開示されている。特開2015−108061号公報のコーティング組成物では、増粘剤を添加して粘度を高くすることで、表面凹凸構造を有する基材の凹凸表面に塗布した場合でも膜厚ムラを低減できるとされている。
また、例えば、国際公開第2013/051620号には、低反射膜を基材上に有する物品の製造方法として、分散媒中に分散された微粒子を含み、粘度が1.0〜10.0mPa・sである塗料組成物を、リバースロールコーターで塗布して低反射膜を形成する際、ロール回転速度を所定条件とする技術が開示されている。
一般に、反射防止膜の反射防止性は、膜の屈折率と膜厚とが重要な因子となっている。屈折率は1.23付近が反射防止に適しており、膜厚は135nm〜150nm程度が反射防止に適している。しかしながら、既述のように、梨地模様の凹凸構造を有する加工ガラス(型板ガラス)の凹凸表面に成膜しようとすると、塗布液自体の基材に対する濡れ性又は平坦化効果等の性状が影響し、膜厚が均一な膜が得られないのが実情である。
そのため、上記のように従来から種々の技術が提案されているが、特に光の干渉作用を利用する反射防止膜では、より高度な厚み精度が要求され、凹凸表面に形成された膜の厚み均一性に対して更なる改善が求められていた。このような状況に鑑みると、特開2015−108061号公報に記載のコーティング組成物では、増粘剤を添加して高粘度化することで、凹凸表面に対する厚みムラの改善効果を見込めるが、未だ十分ではなく、しかも増粘剤の添加によりヘイズが悪化して、反射防止性が改善されない場合があった。
また、国際公開第2013/051620号に記載の塗布技術では、リバースロールコーターのロール回転速度を調整することで、凹凸表面に均一な厚みで塗布することはできるが、塗布液の平坦化作用によって、結局は厚みムラが生じると考えられる。
本発明の一実施形態は、上記に鑑みなされたものであり、凹凸構造を有する基材面に膜厚均一性の高い膜を有する積層体が得られる積層体の製造方法、反射防止性に優れた反射防止膜付ガラス、及び発電効率に優れた太陽電池モジュールを提供する。
本発明には、以下の態様が含まれる。
<1> 金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である水性塗布組成物を、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材の、凹凸構造を有する面に、1.8mL/m以下の塗布量にて塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布により形成された塗布膜を乾燥して反射防止膜を形成する工程と、を有する、積層体の製造方法である。
<2> 金属酸化物の粒子がシリカ粒子であり、金属酸化物の前駆体が珪酸塩である<1>に記載の積層体の製造方法である。
<3> シリカ粒子が、球状シリカである<2>に記載の積層体の製造方法である。
<4> 金属酸化物の粒子の平均一次粒子径が、1nm〜10nmである<1>〜<3>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<5> 水性塗布組成物の25℃における粘度が、1mPa・s〜3mPa・sである<1>〜<4>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<6> 水性塗布組成物は、界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量が水性塗布組成物の全質量に対して0.1質量%〜0.5質量%である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<7> 水性塗布組成物は、沸点が120℃以上である水溶性有機溶剤を含み、水溶性有機溶剤の含有量が水性塗布組成物の全質量に対して0.1質量%〜1.5質量%である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<8> 水性塗布組成物は、金属酸化物の粒子と金属酸化物の前駆体として珪酸塩とを含み、珪酸塩の含有量に対する金属酸化物の粒子の含有量の比が、質量比で20/1〜4/1である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<9> 更に、反射防止膜を焼成する工程を有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
<10> 少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材と、ガラス基材の、凹凸構造を有する面に配置され、平均膜厚が120nm〜180nmであり、かつ、標準偏差が20nm以下である反射防止膜と、を有する反射防止膜付ガラスである。
<11> 反射防止膜は、金属酸化物の粒子を含有する<10>に記載の反射防止膜付ガラスである。
<12> 金属酸化物の粒子が、シリカ粒子である<11>に記載の反射防止膜付ガラスである。
<13> <10>〜<12>のいずれか1つに記載の反射防止膜付ガラスを備えた太陽電池モジュールである。
本発明の一実施形態によれば、凹凸構造を有する基材面に膜厚均一性の高い膜を有する積層体が得られる積層体の製造方法が提供される。
本発明の一実施形態によれば、反射防止性に優れた反射防止膜付ガラスが提供される。
本発明の一実施形態によれば、発電効率に優れた太陽電池モジュールが提供される。
図1は、基材表面の形状に追従して膜厚均一性のある膜が形成されている様子を説明するための積層体の概略断面図である。 図2は、基材表面の形状を平坦化して膜厚の不均一な膜が形成されている様子を説明するための積層体の概略断面図である。
以下、本開示の積層体の製造方法、並びに、反射防止膜付ガラス及び太陽電池モジュールについて、詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に相当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
水性塗布組成物における「水性」とは、塗布組成物が溶媒として水を含み、塗布組成物中の全溶媒に占める水の割合が最も多いことをいい、好ましくは、塗布組成物中における全溶媒に対する水の比率が50質量%以上である場合である。
<積層体の製造方法>
本開示の積層体の製造方法は、金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である水性塗布組成物を、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材の、凹凸構造を有する面(以下、「凹凸表面」ともいう。)に、1.8mL/m以下の塗布量にて塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「膜形成工程」ともいう。)と、塗布により形成された塗布膜を乾燥して反射防止膜を形成する工程(以下、「乾燥工程」ともいう。)と、を有している。
本開示の積層体の製造方法は、必要に応じて、焼成工程を有してもよく、更に、洗浄工程、表面処理工程、冷却工程等の他の工程を有していてもよい。
従来から、シリカ粒子を含有する水性の塗布液を用いて反射防止膜を形成する技術は知られているが、ガラス基材の凹凸構造を有する面に反射防止膜を形成する場合、均一な膜厚の反射防止膜を形成して、高い反射防止性を発現することができる技術は確立されるに至っていない。すなわち、基材に凹凸構造がある場合、表面を平坦化する塗布液の流動によって、凹部の膜厚が厚く、凸部の膜厚が薄くなり、膜厚ムラを生じる。反射防止膜では、膜厚は反射防止性を決める重要な因子であり、このような膜厚ムラが反射防止性を低下させていた。平坦化させる塗布液の流動を抑制するには、塗布液の粘度、表面張力、塗布膜の厚み、塗布膜の乾燥速度等の影響が考えられるが、本発明者は、検討の中で塗布膜の厚みの寄与が大きいことを見出し、本開示に至った。
すなわち、本開示は、ガラス基材の凹凸表面に反射防止膜を形成して積層体を製造する場合、固形分濃度が10質量%以上と高い水性塗布組成物を1.8mL/m以下の少ない塗布量にて塗布して成膜すると、基材の凹凸形状に追従して膜厚均一性の高い膜を形成でき、反射防止性に優れた反射防止膜を得られることを見出したものである。
〔塗布工程〕
塗布工程は、金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である水性塗布組成物を、少なくとも一方の面に凹凸構造を有するガラス基材の、凹凸構造を有する面に、1.8mL/m以下の塗布量にて塗布する。つまり、固形分濃度が高い水性塗布組成物を薄膜に塗布する。
このようにすることで、図1のように、基材2の表面の凹凸形状に追従して、均一性の高い膜厚の反射防止膜4を形成できる。結果、凹凸構造を有するガラス基材上に反射防止性に優れた反射防止膜が得られる。従来技術では、図2のように、基材2の表面の凹凸形状が塗布液で平坦化されて、膜厚が不均一な反射防止膜6となる。
水性塗布組成物の塗布量は、1.8mL/m以下である。
塗布量を上記範囲とすることで、後述する固形分濃度と相俟って、凹凸形状に対する追従性が得られ、反射防止性に優れた膜が得られる。塗布量は、上記と同様の理由から、1.6mL/m以下が好ましく、1.4mL/m以下が更に好ましい。また、塗布量は、塗布精度がより良好になる点で、0.1mL/m以上が好ましく、0.5mL/m以上がより好ましく、1mL/m以上が更に好ましい。
水性塗布組成物における固形分濃度は、10質量%以上である。
固形分濃度を上記範囲とすることで、上記の塗布量と相俟って、凹凸形状に対する追従性が得られ、反射防止性に優れた膜が得られる。また、固形分濃度は、15質量%以下が好ましい。
水性塗布組成物中の固形分濃度は、溶媒、特に水の含有量により調整することができる。
基材上に水性塗布組成物を塗布する方法は、特に限定されるものではない。塗布方法としては、スプレーコート、刷毛コート、ロールコート(リバースロールコートを含む)、バーコート、ディップコート等の公知の塗布方法を適宜選択することができる。中でも、リバースロールコートが塗布膜の均一性および生産性の観点で好ましい。
塗布は、ガラス基材の片面のみに行ってもよいし、ガラス基材の両面に行ってもよい。
〔乾燥工程〕
乾燥工程は、塗布工程で形成された塗布膜を乾燥して反射防止膜を形成する。
少なくとも乾燥が施された膜(反射防止膜)は、シリカ粒子が凝集して膜を形成している。シリカ粒子の凝集膜は、シリカ粒子間の空隙によって膜の屈折率が低くなり、反射防止性に優れると考えられる。
球状のシリカ粒子を用いた場合、乾燥過程で、球状シリカ粒子が密に配置され、緻密な膜が形成される。膜が緻密になり、硬度が高くなることで、耐傷性にも優れると考えられる。また、膜が緻密になり、膜面が平滑となることで、汚れが付着し難くなり、防汚性にも優れるものと考えられる。
塗布膜の乾燥は、室温(25℃)で行ってもよいし、加熱装置を用いて行ってもよい。
加熱装置としては、目的の温度に加熱することができれば、特に限定されることなく、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、オーブン、電気炉等の他、製造ラインに合わせて独自に作製した加熱装置を用いることができる。
塗布膜の乾燥は、例えば、上記の加熱装置を用いて、雰囲気温度40℃〜200℃にて塗布膜を加熱することにより行ってもよい。加熱により塗布膜を乾燥する場合には、例えば、加熱時間を1分間〜30分間程度とすることができる。
塗布膜の乾燥条件としては、塗布膜を、雰囲気温度40℃〜200℃にて1分間〜10分間加熱する乾燥条件が好ましく、雰囲気温度50℃〜150℃にて1分間〜5分間加熱する乾燥条件がより好ましい。
乾燥後の塗布膜の膜厚は、平均膜厚(Av)で120nm〜200nmの範囲とすることができる。反射防止性は、膜の屈折率と膜厚とが重要な因子であり、平均膜厚が120nm以上であると、膜の反射防止性に優れたものとなる。また同様に、平均膜厚は200nm以下である場合に反射防止性により優れる。
また、乾燥後の塗布膜の膜厚の標準偏差(σ)は、20nm以下であることが好ましい。標準偏差が20nm以下であることは、膜厚のバラツキが少ないことを示しており、上記した膜形成工程及び乾燥工程を経ることにより実現することができる。
平均膜厚(Av)は、少なくとも乾燥処理後の膜(反射防止膜)を有するガラス基材を、基材面と直交する方向に平行に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10箇所観察し、10枚のSEM像から各々の観察箇所の膜厚を計測し、得られた10個の計測値(膜厚)を平均することにより求められる。
また、標準偏差は、上記のように計測された10個の計測値(膜厚)と平均膜厚を用いて算出される値である。
〔焼成工程〕
本開示の積層体の製造方法は、既述の乾燥工程の後、更に、乾燥して形成される反射防止膜を焼成する工程(以下、焼成工程ともいう)を有することが好ましい。焼成により、金属酸化物の粒子がより強固に連結された反射防止膜が得られる。
焼成工程は、300℃〜800℃の雰囲気温度で焼成することが好ましい。乾燥後の反射防止膜を300℃〜800℃の雰囲気温度で焼成することで、乾燥工程で形成された緻密な膜の硬度が更に高まり、耐傷性を更に向上させることができる。また、焼成を経ることによって有機成分が消失するので、空隙率が増加して、反射防止性が更に向上する。
塗布膜の焼成は、加熱装置を用いて行うことができる。加熱装置としては、目的の温度に加熱することができれば、特に限定されることなく、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、電気炉等の他、製造ラインに合わせて独自に作製した焼成装置を用いることができる。
塗布膜の焼成温度(雰囲気温度)は、500℃以上800℃以下であることがより好ましく、600℃以上750℃以下であることが更に好ましく、650℃以上700℃以下であることが特に好ましい。焼成時間は、1分間〜10分間であることが好ましく、1分間〜5分間であることがより好ましい。焼成後、高温のガラス表面に空気を吹きつけて急冷して、風冷強化することも好ましい。
焼成後の膜の膜厚は、平均膜厚(Av)で120nm〜180nmの範囲が好ましく、130nm〜160nmの範囲がより好ましい。膜厚が120nm〜180nmであると反射防止性により優れる。また、焼成後の膜の膜厚の標準偏差(σ)は、20nm以下であることが好ましい。
〔他の工程〕
本開示の積層体の製造方法は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記した各工程以外の他の工程を含んでもよい。
他の工程としては、洗浄工程、表面処理工程、冷却工程等が挙げられる。
次に、積層体の製造方法の工程に用いられる成分等について説明する。
−ガラス基材−
積層体を構成する基材としては、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材が用いられる。「凹凸構造を有する」とは、例えば、ガラスの表面に例えば梨地模様状に小さい穴が散在していることで表面が凸凹している状態を指す。具体的には、算術平均表面粗さRaが0.1μm〜5μmであり、二乗平均平方根粗さRq(rms)が0.1μm〜5μmであり、かつ、断面曲線の最大谷深さ(Pv)が1μm〜20μmであるガラス基材が好ましい。
算術平均表面粗さRa、二乗平均平方根粗さRq(rms)、及び断面曲線の最大谷深さ(Pv)は、非接触表面形状測定機(Zygo社製)を用い、JIS B0601(2001年)に準拠して求められる値である。
ガラス基材に凹凸構造が付されていることで、ガラス基材に防眩性を付与することができる。
例えば、ロールに彫刻された型模様をガラス面に転写して製造された型板ガラスは、上記のように穴が散在した凹凸構造を有しているガラス基材として好適である。例えば、サンゴバン社製のアルバリーノ、旭硝子社製のソライト、日本板硝子社製の高透過型板ガラスなどを用いることができる。
また、基材としてガラス基材が用いられると、シラノール基の縮合が、例えば、シリカ粒子及びシリカ前駆体のシラノール基間だけでなく、例えばシリカ粒子及びシリカ前駆体のシラノール基とガラス表面のシラノール基との間でも生じる。これにより、ガラス基材との間の密着性に優れた反射防止膜を形成することができる。
ガラス基材の厚みとしては、特に制限はなく、0.5mm〜5mmの範囲とすることができる。
−水性塗布組成物−
本開示における水性塗布組成物は、金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である。固形分濃度を10質量%以上とすることで、平坦化を抑制し、凹凸表面に塗布により成膜した場合に膜厚均一性の高い塗布膜を形成できる。これにより、その後の乾燥及び必要に応じて行われる焼成を経て得られる膜の反射防止性は優れたものとなる。
(金属酸化物の粒子)
水性塗布組成物は、金属酸化物の粒子の少なくとも一種を含有する。金属酸化物の粒子を含むことで、凝集した粒子間の空隙形成を利用して、膜の屈折率を低減し、反射防止性を付与できる。
金属酸化物の粒子としては、例えば、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン等の酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物の粒子は、形状に制限はなく、例えば、アスペクト比(短軸長さに対する長軸長さの比)が3未満である球状粒子、及びアスペクト比が3以上の非球状粒子(好ましくはアスペクト比が3〜25の粒子)等のいずれであってもよい。
金属酸化物の粒子の中でも、親水性及び耐久性の観点で、酸化珪素(SiO)の粒子(以下、シリカ粒子ともいう。)、酸化アルミニウム(Al)の粒子、酸化チタン(TiO)の粒子等が好ましく、屈折率の観点で、シリカ粒子がより好ましい。
水性塗布組成物中に含まれるシリカ粒子の種類は、特に限定されるものではない。
シリカ粒子としては、例えば、中空シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、無孔質シリカ粒子等が挙げられる。シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円状、鎖状等のいずれの形状であってもよく、耐傷性が高い膜が得られる点で、球状(すなわち球状シリカ)がより好ましい。
球状とは、アスペクト比が3未満の球形状を指し、真球のほか、楕円球も含まれる。
また、シリカ粒子は、表面がアルミ化合物等で処理されたシリカ粒子であってもよい。
水性塗布組成物中に含まれるシリカ粒子としては、上記の中でも、無孔質シリカ粒子が好ましい。
「無孔質シリカ粒子」とは、粒子の内部に空隙を有さないシリカ粒子を意味し、中空シリカ粒子、多孔質シリカ粒子等の粒子の内部に空隙を有するシリカ粒子とは区別される。なお、「無孔質シリカ粒子」には、粒子の内部にポリマー等のコアを有し、コアの外殻(シェル)がシリカ、又はシリカの前駆体(例えば、焼成によってシリカに変化する素材)で構成されるコア−シェル構造のシリカ粒子は含まれない。
無孔質シリカ粒子は、焼成工程を設ける場合、焼成工程の前後で塗布膜中で存在する粒子の状態が変化する。具体的には、焼成前の塗布膜中では、それぞれの無孔質シリカ粒子の凝集体として存在し、焼成後の塗布膜中では、複数の無孔質シリカ粒子のうち少なくとも一部が、互いに連結された粒子連結体として存在する。
水性塗布組成物中に含まれるシリカ粒子が無孔質シリカ粒子であると、複数の無孔質シリカ粒子が連結されて粒子連結体が形成されるため、膜の硬度が高まり、耐傷性がより向上する。
焼成により連結された粒子の平均一次粒子径は、連結部(例えば、ネック部分)を考慮せず、連結されたうちの1つのみを球と仮定した場合の直径を算術平均することにより得られた値を採用する。
水性塗布組成物は、一次粒子径が異なるシリカ粒子を複数種含んでいてもよい。また、水性塗布組成物は、無孔質シリカ粒子と無孔質シリカ粒子以外の1種以上のシリカ粒子とを含んでいてもよい。
シリカ粒子は、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、NALCO(登録商標)8699(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:3nm、固形分:15質量%、NALCO社製)、NALCO(登録商標)1130(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:8nm、固形分:30質量%、NALCO社製)、NALCO(登録商標)1030(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:13nm、固形分:30質量%、NALCO社製)、NALCO(登録商標)1050(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:20nm、固形分:50質量%、NALCO社製)、NALCO(登録商標)1060(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:60nm、固形分:50質量%、NALCO社製)、スノーテックス(登録商標)XS(無孔質シリカ粒子(球状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:5nm、固形分:20質量%、日産化学工業社製)、スノーテックス(登録商標)UP(無孔質シリカ粒子(鎖状粒子)の水分散物、平均一次粒子径:40nm〜100nm、固形分:20質量%、日産化学工業社製)等が挙げられる。
金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の平均一次粒子径は、1nm〜10nmの範囲が好ましい。シリカ粒子の粒子サイズが小さいと、シリカ粒子は凝集して二次粒子を形成し、さらに二次粒子が凝集することで膜の空隙率が大きくなり、反射防止性が向上する。なお、金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の平均一次粒子径の下限は、実際の製造適性を考慮すると、1nm以上であることが好ましい。
金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の平均一次粒子径は、上記の理由から、8nm以下がより好ましく、6nm以下が更に好ましく、4nm以下が特に好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上がより好ましい。
金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の平均一次粒子径は、分散した粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、撮影した写真の画像から求めることができる。具体的には、写真の画像から、粒子の投影面積を測定し、測定した投影面積から円相当径を求め、求めた円相当径の値を算術平均することにより得られた値を粒子の平均一次粒子径とする。本明細書における粒子の平均一次粒子径は、300個の粒子の投影面積をそれぞれ測定し、測定した投影面積からそれぞれ円相当径を求め、求めた円相当径の値を算術平均することにより得られた値である。
金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の水性塗布組成物中における含有量は、水性塗布組成物の全質量に対して、8質量%〜15質量%が好ましく、8質量%〜12質量%がより好ましい。シリカ粒子の含有量が8質量%以上であると、反射防止性により優れたものとなり、耐傷性にも優れる。シリカ粒子の含有量が15質量%以下であると、面状の良好な膜の形成に有利である。
また、水性塗布組成物が金属酸化物の粒子と金属酸化物の前駆体との両方を含有する場合、後述する金属酸化物の前駆体(好ましくは珪酸塩)に対する金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)の含有比(粒子/前駆体の比)としては、質量比で、200/1〜3/1の範囲が好ましい。比が上記の範囲内であると、耐傷性及び反射防止性を両立できる。
(金属酸化物の前駆体)
水性塗布組成物は、上記の金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)を含み、かつ、金属酸化物の前駆体の少なくとも一種を含有する形態でもよいし、上記の金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)を含まずに金属酸化物の前駆体を含有する形態でもよい。金属酸化物の前駆体を含有する場合、焼成を施すことでシリカ粒子が形成され、あるいは膜中のシリカ粒子を互いに結着させる作用を担う。
少なくとも乾燥処理を施した後の膜の反射防止性を向上させる観点から、金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)を含み、かつ、金属酸化物の前駆体の少なくとも一種を含有する形態が好ましい。この場合、金属酸化物の前駆体が適度に金属酸化物の粒子(好ましくはシリカ粒子)間を架橋することで、耐傷性を向上させることができる。この場合、粒子/前駆体の比を上記範囲にすることが好ましい。
金属酸化物の前駆体としては、例えば、珪酸塩、金属アルコキシド及び/又はその部分加水分解オリゴマーが好適に利用できる。
珪酸塩としては、後述する珪酸の金属塩、又は珪酸アンモニウム塩が好適である。
金属アルコキシドとしては、シリコンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等が挙げられ、具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。これ以外にも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤も用いることができる。
金属アルコキシドの部分加水分解オリゴマーとしては、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランの部分加水分解オリゴマー等を用いることができる。
珪酸塩を含む場合には、乾燥後に焼成を経ることによって珪酸塩に由来のシリカ(SiO)を含む膜が形成される。
珪酸塩としては、珪酸の金属塩またはアンモニウム塩が好ましく、珪酸のアルカリ金属塩がより好ましい。珪酸のアルカリ金属塩は、アルカリ金属シリケートと称される化合物であり、下記式1で表される化合物を挙げることができる。
O・nSiO ・・・式1
式1において、Mは、アルカリ金属を表す。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)等が挙げられる。
Mで表されるアルカリ金属としては、Li又はKが好ましい。
アルカリ金属としてLi又はKを選択することで、Naに比べて、さらに耐傷性が向上する。
アルカリ金属シリケートの耐水性は、Li>K>Naの順に優れていることが知られている。アルカリ金属シリケートの耐水性が高いほど、アルカリ金属シリケートのシラノール基の反応性が高いと考えられ、結着性が向上したためと推定される。
上記の式1で表されるアルカリ金属シリケートは、Mで表されるアルカリ金属がLiであり、かつ、nが5.0以下である化合物が好ましい。
式1で表されるアルカリ金属シリケートのモル比nが適切な値であると、架橋しやすくなると考えられる。そのため、M=Liの場合、n≦5.0を満たす化合物を選択することにより、アルカリ金属シリケートがシリカ粒子と架橋しやすく、耐傷性がさらに向上する。Mで表されるアルカリ金属がLiである場合、nは3.0以上が好ましい。
また、式1において、Mで表されるアルカリ金属がKであり、かつ、nが2.5以下であるアルカリ金属シリケートも好ましい。
M=Kの場合、n≦2.5を満たす化合物を選択することにより、アルカリ金属シリケートはシリカ粒子と架橋しやすくなり、耐傷性がさらに向上する。Mで表されるアルカリ金属がKである場合、nは2.0以上が好ましい。
式1中のnは、モル比を表し、具体的には、MO1モル当たりのSiOのモル数を表す。
式1中のnは、2.0〜8.0の範囲から選択することができる。
例えば、カリウムシリケート(M=K)の場合、モル比は、「(SiOの質量/KOの質量の比)×1.568」〔=(SiOの質量/KOの質量の比)×(KOの式量/SiOの式量)〕で表される。また、ナトリウムシリケート(M=Na)の場合、モル比は、「(SiOの質量/NaOの質量の比)×1.032」〔=(SiOの質量/NaOの質量の比)×(NaOの式量/SiOの式量)〕で表される。
式1で表されるアルカリ金属シリケートとしては、例えば、LiO・3.5SiO、LiO・4.5SiO、LiO・7.5SiO、KO・2SiO、KO・3.6SiO、NaO・3.2SiO、NaO・3.7SiO、等が挙げられる。
また、アルカリ金属シリケートは、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、日産化学工業社製のLSSシリーズ(例えば、LSS−35(LiO・3.5SiO)、LSS−45、LSS−75等)、富士化学社製の1K珪酸カリ(KO・2SiO)、2K珪酸カリ(KO・3.6SiO)、3号珪酸ソーダ(NaO・3.2SiO)、5号珪酸ソーダ(NaO・3.7SiO)等、日本化学工業社製の珪酸リチウム35、珪酸リチウム40、珪酸リチウム45、珪酸リチウム75、珪酸ソーダ1号、珪酸ソーダ2号、珪酸ソーダ3号、珪酸ソーダ4号、A珪酸カリ、B珪酸カリ、C珪酸カリ等、などが挙げられる。
金属酸化物の粒子と金属酸化物の前駆体であるアルカリ金属シリケート(珪酸塩)とを含む場合、アルカリ金属シリケートの水性塗布組成物中における含有量は、後述する水性塗布組成物の固形分濃度(≧10質量%)のうち、1.3質量%〜2.5質量%であることが好ましく、1.5質量%〜2.1質量%がより好ましい。アルカリ金属シリケートの含有量が1.3質量%以上であると、シリカ粒子との架橋を形成しやすく、耐傷性が向上する。また、アルカリ金属シリケートの含有量が2.5質量%以下であると、シリカ粒子間の空隙を十分に確保できて、屈折率が低い膜を形成できるため、反射防止性が高い。
また、金属酸化物の前駆体として例えばアルカリ金属シリケート(珪酸塩)を含有する場合、アルカリ金属シリケートに対するシリカ粒子の含有比(シリカ粒子/アルカリ金属シリケートの比)としては、質量比で200/1〜3/1の範囲が好ましい。シリカ粒子/アルカリ金属シリケートの比が200/1〜3/1の範囲内であると、シリカ粒子間を固定化する一方、過剰なアルカリ金属シリケートが存在することによる粒子間空隙の低下を抑え、耐傷性及び反射防止性が両立される。
具体的には、シリカ粒子/アルカリ金属シリケートの比を200/1以下とすることで、アルカリ金属シリケートの結着作用が機能して、耐傷性が向上する。また、シリカ粒子/アルカリ金属シリケートの比を3/1以上とすることで、シリカ粒子間の空隙によって膜の屈折率が低下して、反射防止性が向上する。
粒子/前駆体の比としては、上記と同様の理由から、質量比で、20/1〜4/1の範囲がより好ましく、10/1〜4/1の範囲がさらに好ましく、7/1〜4/1の範囲が特に好ましい。珪酸塩の含有量が上記の範囲内であると、耐傷性及び反射防止性を両立できる。
(界面活性剤)
水性塗布組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含有すると、基材への濡れ性、塗布膜の平滑性の改善に有効である。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれであってもよく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。また、界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤のいずれであってもよく、炭化水素系界面活性剤がより好ましい。
本開示には、炭化水素系ノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸ソルビタンエステル類、アルキルポリグルコシド類、脂肪酸ジエタノールアミド類、アルキルモノグリセリルエーテル類、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体など)を用いることができる。これらの中でも、基材への濡れ性、塗布膜の平滑性の観点から、炭化水素系ノニオン性界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物が好適である。また、市販品としては、日信化学工業社製のオルフィンシリーズ(例えば、オルフィンE1010、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123等)を好適に用いることができる。
界面活性剤の含有量は、水性塗布組成物の表面張力が後述する範囲を満たす範囲で調節されることが好ましい。具体的には、界面活性剤の含有量としては、水性塗布組成物の全質量に対して、0.1質量%〜0.5質量%の範囲とすることが好ましい。
界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であると、凹凸表面を有するガラス基材に対する濡れ性が良好になり、ハジキ等の塗布ムラを低減することができる。また、界面活性剤の含有量が0.5質量%以下であると、反射防止性により優れたものとなる。
(水溶性有機溶剤)
水性塗布組成物は、水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、沸点が100℃以上の水溶性有機溶剤を含有することができ、好ましくは沸点120℃以上の水溶性有機溶剤を含有することができる。水溶性有機溶剤の沸点は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。中でも、水性塗布組成物は、沸点が140℃〜220℃の水溶性有機溶剤(以下、高沸点水溶性溶剤ともいう。)を含有することがより好ましい。
水性塗布組成物が高沸点水溶性溶剤を含有していることで、膜が急乾された場合でも、膜の耐傷性を向上させることができる。これは、急乾時の膜の収縮応力が抑制され、膜割れ等の欠陥が減少した結果、耐傷性に優れた膜になったと推定される。
高沸点水溶性溶剤の沸点が140℃以上であると、乾燥過程での膜割れ等の欠陥抑制効果が大きく、耐傷性に優れたものとなる。高沸点水溶性溶剤の沸点が220℃以下であると、乾燥不良を防ぐことができる。
高沸点水溶性溶剤の沸点としては、上記と同様の理由から、160℃〜200℃が好ましく、170℃〜190℃がより好ましい。
沸点が140℃〜220℃の水溶性有機溶剤(高沸点水溶性溶剤)としては、例えば、プロピレングリコール(沸点188℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングルコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)、エチレングリコールジアセテート(沸点196℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、乳酸エチル(沸点155℃)等が挙げられる。
水溶性有機溶剤の水性塗布組成物中における含有量としては、水性塗布組成物の全質量に対して、0.1質量%〜3質量%が好ましく、0.1質量%〜1.5質量%がより好ましく、0.1質量%〜1.0質量%が更に好ましい。
水溶性有機溶剤の含有量が0.1質量%以上であると、乾燥過程での膜割れ等の欠陥を抑制することができる。また、水溶性有機溶剤の含有量が3質量%以下であると、水性塗布組成物の安定性の点で有利である。さらに、水溶性有機溶剤の含有量が1.5質量%以下であると、反射防止性に優れたものとなる。
また、高沸点水溶性溶剤の、水性塗布組成物中の揮発成分全体に対する比率としては、質量比で0.1%〜1.8%の範囲とすることができ、中でも、質量比で0.2%〜1.5%が好ましく、0.5%〜1.0%が更に好ましい。
なお、「揮発成分」とは、水性塗布組成物中に含まれる主に水及び水溶性有機溶媒を指す。
揮発成分全体の質量は、水性塗布組成物の質量から、水性塗布組成物を105℃で60分間加熱した後に残存する固形成分の質量を減算して求めることができる。
また、水性塗布組成物中に含まれる高沸点水溶性溶剤の質量は、ガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
(水)
水性塗布組成物は、水を含む。水性塗布組成物の溶媒成分の大半を水にすることで、有機溶剤系の塗布液に比して、環境負荷を大幅に軽減できる。
水性塗布組成物に用いる水は、不純物を含まないか、あるいは不純物の含有量が低減された脱イオン水が好ましい。
水性塗布組成物中における水の含有量は、溶媒成分の全量に対して、50質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
また、水性塗布組成物中における水の含有量は、水性塗布組成物の全質量に対して、50質量%〜90質量%が好ましく、80質量%〜90質量%がより好ましい。
(他の成分)
水性塗布組成物は、本開示の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、シリカ粒子、アルカリ金属シリケート、及び水以外の他の成分を含んでもよい。
他の成分としては、増粘剤、水溶性高分子、水分散ラテックス、防腐剤、pH調整剤等が挙げられる。
水性塗布組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で増粘剤を含有することができる。水性塗布組成物は、増粘剤を含むことで、粘度を調整することができる。
増粘剤としては、例えば、ポリエーテル、ウレタン変性ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリルスルホン酸塩、ポリビニルアルコール、多糖類等が挙げられる。中でも、増粘剤としては、ポリエーテル、変性ポリアクリル系スルホン酸塩、又はポリビニルアルコールが好ましい。増粘剤としては、上市されている市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、サンノプコ社製のSNシックナー601(ポリエーテル)、SNシックナー615(変性ポリアクリル系スルホン酸塩)、和光純薬工業社製のポリビニルアルコール(重合度:約1000〜2000)等が挙げられる。
増粘剤の含有量は、水性塗布組成物の全質量に対して0.01質量%〜5.0質量%程度が好ましい。
以下に、水性塗布組成物の性状について説明する。
(粘度)
水性塗布組成物の粘度は、25℃に調整された状態で、1mPa・s〜8mPa・sであることが好ましく、2mPa・s〜5mPa・sであることがより好ましく、2mPa・s〜3mPa・sであることが更に好ましい。
粘度が1mPa・s以上であると、ロールコートに適しており、凹凸表面に塗布するに際し、1.8mL/m以下の少ない塗布量で塗布する場合でも、液膜が凹凸形状に沿って追従しやすい。また、粘度が8mPa・s以下であると、塗布量をコントロールしやすく、結果として膜厚を制御しやすい。
水性塗布組成物の粘度は、E型回転粘度計を用いて、水性塗布組成物を25℃に温調して保持した状態で測定される値である。
(表面張力)
水性塗布組成物の表面張力は、20mN/m〜60mN/mとすることができ、20mN/m〜30mN/mがより好ましい。表面張力を60mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下にすると、ハジキ等の塗布欠陥を低減することができ、反射防止性が向上する。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、プレート法により25℃の条件下で測定される値である。
(pH)
水性塗布組成物のpHは、8〜12が好ましく、9〜11.5がより好ましい。水性塗布組成物のpHが8以上であると、シリカ粒子表面のマイナス電荷による静電反発で、シリカ粒子の凝集を抑制できる。また、水性塗布組成物のpHが12以下であると、シリカ粒子の溶解を抑制できる。
水性塗布組成物のpHは、pHメーター(型番:HM−31、東亜DKK社製)を用いて25℃で測定される値である。
<反射防止膜付ガラス>
本開示の反射防止膜付ガラスは、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材と、ガラス基材の、凹凸構造を有する面に配置され、平均膜厚が120nm〜180nmであり、かつ、標準偏差が20nm以下である反射防止膜と、を有している。
ガラス基材及び反射防止膜における詳細については、既述の通りである。
本開示の反射防止膜付ガラスは、既述の本開示の積層体の製造方法によって作製される。既述の積層体の製造方法によると、凹凸構造を有するガラス基材の凹凸表面に、凹凸形状に追従した膜厚均一性の高い膜を形成でき、反射防止性に優れた反射防止膜付ガラスを得られる。
反射防止膜の平均膜厚は、120nm〜180nmの範囲である。反射防止性は、膜の屈折率と膜厚とが重要な因子であり、平均膜厚が120nm〜180nmの範囲で反射防止性に優れる。反射防止性をより向上させる観点から、平均膜厚は、130nm〜160nmの範囲がより好ましい。
平均膜厚(Av)は、少なくとも乾燥処理後の膜(反射防止膜)を有するガラス基材を、基材面と直交する方向に平行に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10箇所観察し、10枚のSEM像から各々の観察箇所の膜厚を計測し、得られた10個の計測値(膜厚)を平均することにより求められる。
また、標準偏差は、上記のように計測された10個の計測値(膜厚)と平均膜厚を用いて算出される値である。
反射防止膜は、金属酸化物の粒子を含有することが好ましく、金属酸化物の粒子としてシリカ粒子を含有することがより好ましい。金属酸化物の粒子及びシリカ粒子の詳細については、既述の通りである。
<太陽電池モジュール>
本開示の太陽電池モジュールは、既述の本開示の反射防止膜付ガラスを備えている。本開示の太陽電池モジュールは、既述の反射防止膜付ガラスを備えるので、反射防止性に優れており、発電効率に優れている。
太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する側に配置される本開示の積層体と、ポリエステルフィルムに代表される太陽電池用バックシートと、の間に配置して構成されたものでもよい。本開示の積層体とポリエステルフィルム等の太陽電池用バックシートとの間は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂に代表される封止材によって封止される。
太陽電池モジュールにおける積層体及びバックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。太陽電池モジュールは、太陽光が入射する側に既述の積層体を備えている形態が好ましく、本開示の積層体以外の構成に制限はない。
太陽電池モジュールの、太陽光が入射する側に配置される基材は、既述の積層体の基材である形態が好ましく、基材としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミック、又は、ガラス、樹脂、金属及びセラミックから選ばれる少なくとも一つを複合化した複合材料等の基材が挙げられる。好ましい基材は、ガラス基材である。
太陽電池モジュールに使用される太陽電池素子としては、特に制限はない。太陽電池モジュールには、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系太陽電池素子、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素等のIII−V族又はII−VI族化合物半導体系太陽電池素子など、各種公知の太陽電池素子をいずれも適用することができる。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
〔水性塗布液S−1の調製〕
シリカ粒子の水分散物(商品名:NALCO(登録商標)8699、無孔質シリカ粒子、シリカ粒子の平均一次粒子径:3nm、固形分:15質量%、NALCO社製)56.7質量部と、リチウムシリケート(LSS−35(組成:LiO・3.5SiO)、固形分:23質量%、日産化学工業社製)6.5質量部と、オルフィンEXP.4123(炭化水素系ノニオン性界面活性剤、有効成分量:40質量%、日信化学工業社製)0.5質量部と、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)0.5質量部と、水35.8質量部と、を混合し、撹拌することにより、水性塗布液S−1(水性塗布組成物)を調製した。
次いで、水性塗布液S−1の粘度(25℃)を、E型回転粘度計を用いて測定し、水性塗布液S−1の表面張力を、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、プレート法により25℃の条件下で測定した。また、水性塗布液S−1のpH(25℃)を、pHメーター(HM−31、東亜DKK社製)を用いて測定した。測定結果は、下記表1に示す。
〔水性塗布液S−2〜S−4、R−1〜R−3の調製〕
水性塗布液S−1の調製において、組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、水性塗布液S−1の調製と同様にして、水性塗布液S−2〜S−4、及び比較用の水性塗布液R−1〜R−3を調製した。なお、比較用の水性塗布液R−2は、ポリビニルアルコール5質量%水溶液を用いて下記表1に示す組成にて調製した。
また、水性塗布液S−1と同様の方法により、粘度、表面張力及びpHを測定した。測定結果は下記表1に示す。

表1に示す成分の詳細を以下に示す。
・NALCO(登録商標)8699:シリカ粒子の水分散物(球状、平均一次粒子径:2nm〜4nm、固形分:15質量%)、NALCO社製
・LSS−35:リチウムシリケート水溶液(固形分:23質量%、LiO・3.5SiO)、日産化学工業社製
・ポリビニルアルコール5質量%水溶液:ポリビニルアルコール(重合度約2000、和光純薬工業社製)を水に溶解して調製した。
・オルフィンEXP.4123:炭化水素系ノニオン性界面活性剤(有効成分量:40質量%)、日信化学工業社製
〔水性塗布液S−5〜S−11の調製〕
水性塗布液S−1の調製において、組成を下記表2に示すように変更したこと以外は、水性塗布液S−1の調製と同様にして、水性塗布液S−5〜S−11を調製した。
また、水性塗布液S−1と同様の方法により、粘度、表面張力及びpHを測定した。測定結果は下記表2に示す。

表2に示す成分の詳細を以下に示す。
・NALCO(登録商標)8699:シリカ粒子の水分散物(球状、平均一次粒子径:3nm、固形分:15質量%)、NALCO社製
・NALCO(登録商標)1130:シリカ粒子の水分散物(球状、平均一次粒子径:8nm、固形分:30質量%)、NALCO社製
・NALCO(登録商標)1050:シリカ粒子の水分散物(球状、平均一次粒子径:20nm、固形分:50質量%)、NALCO社製
・スノーテックス(登録商標)UP:シリカ粒子の水分散物(鎖状、平均一次粒子径:40nm〜100nm、固形分:20質量%)、日産化学工業社製
・LSS−35:リチウムシリケート水溶液(固形分:23質量%;LiO・3.5SiO)、日産化学工業社製
・オルフィンEXP.4123:炭化水素系ノニオン性界面活性剤(有効成分量:40質量%)、日信化学工業社製
(実施例1〜8、比較例1〜9)
上記のように調製した水性塗布液S−1〜S−4及びR−1〜R−3と、型板ガラス(基材)として、オモテ面に梨地模様を有し、裏面に蜂の巣状のエンボス加工が施された、10cm四方の白板ガラス(日本板硝子社製)と、を用意した。
なお、白板ガラス(日本板硝子社製)を、非接触表面形状測定機(Zygo社製)を用い、対物レンズ:2.5倍、観察視野:7.14mm×5.35mmの条件にて測定して得られた表面性状パラメータは、算術平均表面粗さ(Ra):1.41μm、二乗平均平方根粗さRq(rms):1.82μm、断面曲線の最大谷深さ(Pv):14.1μmであった。
型板ガラスのオモテ面(梨地模様を有する面)に、リバースロールコーター(都ローラー工業社製)を用いて下記の塗布条件下、下記表3に示す塗布量にて水性塗布液を塗布し、塗布膜を形成した(膜形成工程)。この際、水性塗布液S−1〜S−4及びR−1〜R−3のいずれかを選択して塗布に用いた。その後、塗布膜が形成された型板ガラスを100℃のオーブンに入れ、塗布膜を2分間乾燥させて反射防止膜を形成した(乾燥工程)。
なお、塗布は、リバースロールコーターのコーティングロールの回転速度を変化させることにより塗布量、膜厚を調節した。
<塗布条件>
・基材の搬送速度:5m/分
・コーティングロールの回転速度:0.5m/分〜10m/分
・ドクターロールの回転速度:5m/分
・コーティングロールとバックアップロールとのギャップ:3.0mm
・ドクターロールの押し込み厚:0.2mm
次いで、塗布膜が形成された型板ガラスを大気中、650℃〜700℃で2分間焼成した(焼成工程)。その後、ガラス表面に空気を吹きつけて急速に冷却する風冷強化処理を行った。
上記のようにして、17種類の積層体(反射防止膜を有する型板ガラス)を作製した。
(評価)
作製した17種類の積層体に対し、下記の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を下記表3に示す。
−膜厚−
型板ガラス上に反射防止膜が形成された積層体を、基材面に直交する方向に平行に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10箇所観察し、10枚のSEM像から各々の観察箇所の膜厚を計測した。得られた10個の計測値(膜厚)を平均して平均膜厚(Av)を求めた。
また、計測された10個の計測値(膜厚)と平均膜厚を用いて標準偏差を算出した。
−反射防止(AR)性−
紫外可視赤外分光光度計(型番:UV3100PC、島津製作所社製)を用いて、型板ガラス上に反射防止膜が形成された積層体の波長400nm〜1100nmの透過スペクトルを測定した。
得られた透過スペクトルの波長400nm〜1100nmの平均透過率(Tav)と、反射防止膜を形成していない型板ガラスの平均透過率(Tav)と、の差分(ΔT;=Tav−Tav)を下記の式(a)にしたがって算出した。なお、ΔTは、数値が高いほど反射防止(AR)性に優れることを示す。
ΔT = Tav − Tav 式(a)

表3に示すように、固形分濃度を10質量%以上とし、かつ、塗布量を1.8mL/m以下とした実施例では、反射防止性の良好な反射防止膜が得られた。
これに対し、固形分濃度の少ない(<10質量%)例の場合、特に比較例2、7に示すように、所望の膜厚が得られず、反射防止性に劣っていた。また、塗布量の多い(>1.8mL/m)例の場合、特に比較例8、9に示すように、反射防止性の著しい低下がみられた。
(実施例9〜15)
上記のように調製した水性塗布液S−5〜S−11と、型板ガラス(基材)として、オモテ面に梨地模様を有し、裏面に蜂の巣状のエンボス加工が施された、10cm四方の白板ガラス(日本板硝子社製)と、を用意した。
型板ガラスのオモテ面(梨地模様を有する面)に、リバースロールコーター(都ローラー工業社製)を用いて下記の塗布条件下、下記表4に示す塗布量にて水性塗布液を塗布し、塗布膜を形成した(膜形成工程)。この際、水性塗布液S−5〜S−11のいずれかを選択して塗布に用いた。その後、塗布膜が形成された型板ガラスを100℃のオーブンに入れ、塗布膜を2分間乾燥させて反射防止膜を形成した(乾燥工程)。
なお、塗布は、リバースロールコーターのコーティングロールの回転速度を変化させることにより塗布量、膜厚を調節した。
<塗布条件>
・基材の搬送速度:5m/分
・コーティングロールの回転速度:0.5m/分〜10m/分
・ドクターロールの回転速度:5m/分
・コーティングロールとバックアップロールとのギャップ:3.0mm
・ドクターロールの押し込み厚:0.2mm
次いで、塗布膜が形成された型板ガラスを大気中、650℃〜700℃で2分間焼成した(焼成工程)。その後、ガラス表面に空気を吹きつけて急速に冷却する風冷強化処理を行った。
上記のようにして、7種類の積層体(反射防止膜を有する型板ガラス)を作製した。
さらに、7種類の積層体に対して、実施例1と同様の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を下記表4に示す。

表4に示すように、上記実施例1〜8と同様に、固形分濃度を10質量%以上とし、かつ、塗布量を1.8mL/m以下とすることで、反射防止性の良好な反射防止膜が得られた。
中でも、実施例6、9及び実施例10を比較するとわかるように、平均一次粒子径が10nm以下であるシリカ粒子を用いると、平均一次粒子径が10nmを超えるシリカ粒子を用いた場合に比べ、反射防止性がより向上した。また、球状シリカを用いた実施例9は、非球状のシリカを用いた実施例11に比べ、反射防止性により優れていた。
また、実施例12、13を実施例6と比較すると、界面活性剤の含有量が0.1質量%〜0.5質量%の範囲内である実施例6は、上記範囲外である実施例12〜13に比べ、反射防止性により優れていた。
次に、実施例14、15を実施例6と比較すると、沸点188℃の水溶性有機溶剤(プロピレングリコール)の含有量が0.1質量%〜1.5質量%の範囲内である実施例6は、上記範囲外である実施例14、15に比べ、反射防止性により優れていた。
本開示の積層体の製造方法は、入射光に対して高い透過率が求められる技術分野に好適であり、例えば、光学レンズ、光学フィルタ、監視カメラ、標識、又は太陽電池モジュール等の光入射側の部材(フロントガラス、レンズ等)、照明機器の光照射側の部材(拡散ガラス等)に設けられる保護膜もしくは反射防止膜、各種ディスプレイの薄層フィルムトランジスタ(TFT)用平坦化膜などに好適に用いられる。
2016年2月29日に出願された日本国特許出願2016−038287号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。

Claims (13)

  1. 金属酸化物の粒子及び金属酸化物の前駆体の少なくとも一方を含有し、かつ、固形分濃度が10質量%以上である水性塗布組成物を、少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材の、前記凹凸構造を有する面に、1.8mL/m以下の塗布量にて塗布して塗布膜を形成する工程と、
    塗布により形成された前記塗布膜を乾燥して反射防止膜を形成する工程と、
    を有する、積層体の製造方法。
  2. 前記金属酸化物の粒子がシリカ粒子であり、前記金属酸化物の前駆体が珪酸塩である請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記シリカ粒子が、球状シリカである請求項2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記金属酸化物の粒子の平均一次粒子径が、1nm〜10nmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記水性塗布組成物の25℃における粘度が、1mPa・s〜3mPa・sである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記水性塗布組成物は、界面活性剤を含み、前記界面活性剤の含有量が前記水性塗布組成物の全質量に対して0.1質量%〜0.5質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  7. 前記水性塗布組成物は、沸点が120℃以上である水溶性有機溶剤を含み、前記水溶性有機溶剤の含有量が前記水性塗布組成物の全質量に対して0.1質量%〜1.5質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  8. 前記水性塗布組成物は、金属酸化物の粒子と前記金属酸化物の前駆体として珪酸塩とを含み、珪酸塩の含有量に対する金属酸化物の粒子の含有量の比が、質量比で20/1〜4/1である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  9. 更に、前記反射防止膜を焼成する工程を有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  10. 少なくとも一方面に凹凸構造を有するガラス基材と、
    前記ガラス基材の、凹凸構造を有する面に配置され、平均膜厚が120nm〜180nmであり、かつ、標準偏差が20nm以下である反射防止膜と、
    を有する反射防止膜付ガラス。
  11. 前記反射防止膜は、金属酸化物の粒子を含有する請求項10に記載の反射防止膜付ガラス。
  12. 前記金属酸化物の粒子が、シリカ粒子である請求項11に記載の反射防止膜付ガラス。
  13. 請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の反射防止膜付ガラスを備えた太陽電池モジュール。
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