JPWO2017131021A1 - 糖タンパク質の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】糖結合化合物による糖タンパク質を精度高く検出するために、糖タンパク質−糖結合化合物複合体の検出感度(S/N比)を向上させる方法を提供する。
【解決手段】本発明の糖タンパク質の測定方法は、糖タンパク質と、前記糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を反応させ、反応した糖結合化合物を検出することを含む、糖タンパク質の測定方法において、前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程及びそれ以降の処理工程を含む工程群から選ばれる少なくとも一工程のpHを8.5よりも高く、かつ11.0未満のアルカリ性域に調整することを特徴とする。糖結合化合物は、好ましくは糖結合タンパク質である。
【選択図】図1b

Description

本発明は、糖タンパク質の測定方法に関し、より詳細には糖タンパク質測定時のS/N比を改善する方法に関する。
タンパク質の半数以上が翻訳後に糖鎖修飾を受けている。糖鎖のタンパク質への結合様式は、アスパラギン残基のアミド基に結合するN結合型及びセリン又はスレオニン残基のヒドロキシル基に結合するO結合型に分けられる。いずれの糖鎖修飾も、タンパク質の活性、細胞間相互作用、接着等に重要な役割を果たしている。糖鎖修飾の変化が疾患と関連することが数多く報告されている。
例えば、αフェトプロテインは、N結合型糖鎖を持つ血清に含まれる糖タンパク質であり、健康な成人の血清にほとんど存在しない。一方、良性の肝疾患を持つ患者血清にはαフェトプロテイン−L1型糖鎖(AFP−L1)が増加し、肝臓ガン患者にはさらにフコシル化したαフェトプロテイン−L3型糖鎖(fAFP又はAFP−L3)が検出される。レクチンで検出される糖鎖の違いが、肝疾患診断に利用されている。
ハプトグロビンは、β鎖(分子量40,000)に4個のN結合型糖鎖結合部位を有する糖タンパク質である。膵臓癌になると、ハプトグロビンにフコースが付加した病変ハプトグロビンが患者血清等から検出される。病変ハプトグロビンは、膵臓癌の病期の進行とともに増え、膵臓癌の腫瘍部摘出後には消失する。フコシル化ハプトグロビンの高精度かつ迅速な検出により、膵臓癌の早期発見が期待される。
チログロブリンは、甲状腺の上皮細胞で合成され濾胞に貯留し、一般に全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもつホルモンである。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症の代表例が、バセドウ病である。バセドウ病は、手足の震え、眼球突出、動悸、甲状腺腫脹、多汗、体重減少、高血糖、高血圧等の症状を引き起こす。甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症の例が慢性甲状腺炎(橋本病)である。橋本病は、全身倦怠感、発汗減少、体重増加、便秘等の症状を引き起こす。このタンパク質は、糖鎖としてフコースを有する。チログロブリンに付加した糖鎖の検出感度を高めることで、チログロブリン含量の測定精度を上げることができる。
関節リウマチ患者では、血清中IgGの末端ガラクトースの付加率が減少し、末端にN−アセチルグルコサミンを持つ糖鎖の割合が増加する。ガラクトース欠損は、IgGの重要な生理機能である補体の活性化やFc受容体への結合能を著しく損なう。
トランスフェリン(TF)は、679個のアミノ酸を有するポリペプチド鎖からなり、そして、413番目と611番目のアスパラギン酸残基が末端シアル酸を有する二個の分岐状糖鎖でN−グリコシル化されている糖タンパク質である。トランスフェリンには、570番目のアミノ酸残基がプロリンであるTFC1と、それがセリンで置換されたTFC2という多型が存在する。TFC1C2のヘテロ接合体の遺伝子型を持つアルツハイマー疾患(AD)患者は、6個のシアル酸を有するTFの相対強度が、TFC1C1ホモ接合体の遺伝子型を持つ患者よりも有意に減少している。
AD患者から採取したCSF糖タンパク質は、シアル酸付加率が有意に低下している。シアル酸量の変化は、AD以外にも、心臓血管疾患、アルコール依存症、糖尿病等について観察されている。
上記糖タンパク質を検出するために、糖結合化合物の一種であるレクチンの使用が公知である。レクチンは、シアル酸、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン等の糖残基に親和性を示すタンパク質の総称である。特定の糖残基に親和性を有する植物、動物あるいは菌類由来のレクチンが数多く発見されている。
レクチンを用いた糖タンパク質の検出方法として、酵素免疫測定法(レクチンELISA)が知られている。レクチンELISAは、多数の検体を同時に測定できる、糖鎖を比較的簡便に測定することができる等の長所を有する。
Yuka Kobayashi et al.,"A Novel Core Fucose−specific Lectin from the Mushroom Pholiota squarrosa",J.Biol.Chem,2012,287,p33973−33982
従来のレクチンELISAのような糖タンパク質の測定方法では、糖タンパク質を含む試料(例えば血清)に由来するノイズが発生する。糖タンパク質検出時の検出感度(S/N比)が低いと、糖タンパク質を正確に検出することは困難となる。糖鎖量の変化と関連するような疾患を早期に精度高く診断するために、レクチンELISA等の糖タンパク質の測定方法のS/N比を向上することが望まれる。
そこで、本発明の目的は、レクチンをはじめとする糖結合化合物により糖タンパク質を精度高く検出するために、糖タンパク質−糖結合化合物複合体の検出感度(S/N比)を向上させる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、糖タンパク質と糖結合化合物との反応による糖タンパク質の測定方法における特定の工程のpHを、アルカリ性域のpHに調整することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、糖タンパク質と、前記糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物とを反応させ、反応した糖結合化合物を検出することを含む、糖タンパク質の測定方法において、前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程及びそれ以降の処理工程を含む工程群から選ばれる少なくとも一工程のpHを8.5よりも高く、かつ11.0未満のアルカリ性域に調整することを特徴とする、前記糖タンパク質の測定方法を提供する。
「糖タンパク質」の用語は、本明細書において、糖ペプチドを含む意味で用いられる。「糖鎖」の用語は、本明細書において、単糖を含む意味で用いられる。また、「糖結合化合物」とは、本明細書において、糖に結合する化合物を意味する。前記糖結合化合物は、好ましくは糖結合タンパク質である。
前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程のpHを前記アルカリ性域のpHに調整することを必須に含むことが好ましい。
前記糖タンパク質は、担体に固定化されていることが好ましい。
前記糖タンパク質は、その抗体を介して前記担体に固定化されていることが好ましい。
前記糖結合化合物及び/又は前記糖結合化合物を検出するプローブは、標識されていることが好ましい。
前記糖鎖は、例えば複合型糖鎖又はO結合型糖鎖である。
前記糖タンパク質は、例えばハプトグロビン(HP)、フコシル化ハプトグロビン、トランスフェリン(TF)、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ‐GTP)、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンA(IgA)、イムノグロブリンM(IgM)、α1−酸性糖タンパク質(AGP)、αフェトプロテイン(AFP)、フコシル化αフェトプロテイン(fAFP、AFP‐L3)、フィブリノーゲン、ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、チログロブリン(TG)、フェツイン(FET)、アシアロフェツイン(aFET)、及びオボアルブミン(OVA)からなる群から選ばれる一種である。
本発明の糖タンパク質の測定方法によれば、糖タンパク質検出時のS/N比が従来よりも向上する。特に、糖タンパク質と糖結合化合物との反応工程、及び/又は糖タンパク質−糖結合化合物複合体の糖結合化合物と2次プローブとのプローブ反応工程のpHを、上記特定のpH域に調整することで、S/N比が顕著に向上する。糖タンパク質からの糖鎖の欠損又は付加が、疾患と関連する場合、糖タンパク質検出のS/N比の向上は、疾患の早期の発見、診断や治療につながる。また、疾患の発症機構の解明、治療や予防に関する医学や生化学の研究に役立つことも期待される。
糖タンパク質TGをELISAプレートに固相化した後、ブロッキングを行い、血清を添加することでノイズ源を非特異的に吸着させた。その後、スギタケレクチン(PhoSL)溶液を作用させる際の条件を変更したときのシグナル及びノイズを比較したグラフである。比較例1では、pH7.4のPBS中でレクチン反応を行なった。実施例1〜3では、pH10.0の3種類の緩衝液中でレクチン反応を行なった。実施例1〜3では、ノイズが顕著に減少した。一方、シグナルは比較例1のレベルを維持した。 図1aのS/N比を比較したグラフである。pH10.0でレクチン反応を行なった実施例1〜3のS/N比は、pH7.4でレクチン反応を行なった比較例1よりも格段に高くなった。 図1aのレクチン反応(1次反応)時のpH調整を、検体反応後(すなわち、1次反応前)、1次反応後又は2次反応後の洗浄時のpH調整に変更した際のS/N比を示すグラフである。1次反応前のアルカリ洗浄時のpH調整では、S/N比は向上しなかった。一方、1次反応後又は2次反応後にアルカリ性域のpHで洗浄を行なうことで、ノイズ低減効果によるS/N比の向上を確認した。 図1aのレクチン反応(1次反応)の反応液のpH調整を、2次反応時の反応液、又は、1次反応時及び2次反応時の反応液、に変更した際のS/N比を示すグラフである。2次反応液の溶媒をアルカリ性にすることで、1次反応時と同様に、ノイズ低減効果によりS/N比が向上し、1次反応時と併用することでその効果がさらに向上することを確認した。 図1aのレクチン反応(1次反応)の反応液のpH調整を、2次反応時の反応液に変更し、2次プローブをAP標識ストレプトアビジンに変更した際のS/N比を示すグラフである。2次プローブをAP標識ストレプトアビジンとしてもHRP標識ストレプトアビジンと同様に、ノイズ低減効果によるS/N比の向上を確認した。 図1aのレクチン反応(1次反応)の反応液のpH調整を、2次反応時の反応液に変更し、1次反応のレクチンに標識していないPhoSLを用い、2次プローブとしてビオチン標識抗PhoSL抗体を用い、3次プローブとしてHRP標識ストレプトアビジンを使用した際のS/N比を示すグラフである。2次プローブに抗PhoSL抗体を用いてもノイズ低減効果によるS/N比の向上を確認した。 糖タンパク質fAFP(ペプシン処理)とPhoSLとの反応をグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中でpHを変更して行なった際の、pHとシグナル及びノイズとの関係を示すグラフである。 糖タンパク質fAFP(ペプシン処理)とPhoSLとの反応を炭酸−重炭酸緩衝液中でpHを変更して行なった際の、pHとシグナル及びノイズとの関係を示すグラフである。 糖タンパク質fAFP(ペプシン処理)とPhoSLとの反応をTAPS緩衝液中でpHを変更して行なった際の、pHとシグナル及びノイズとの関係を示すグラフである。 図3a〜図3cのS/N比を示すグラフである。この図から、レクチン反応時の溶媒やそれ以降に用いる溶媒のpHを、8.5よりも高く、かつ11.0よりも低い範囲、好ましくは8.6〜10.5の範囲、より好ましくは9.0〜10.5の範囲に調整することで、糖タンパク質の検出感度が向上することがわかる。 図3aの糖タンパク質fAFP(ペプシン処理)とPhoSLとの反応をマイクロビーズレクチンELISAで検出した際のシグナル及びノイズを示すグラフである。固定化担体をマイクロビーズに変更しても、本発明のようにアルカリ性域のpHを採用することによりノイズ低減効果が発揮されることがわかる。 図4aのS/N比を示すグラフである。マイクロビーズELISAでも、ノイズ低減効果によるS/N比の向上を確認した。
以下に、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。本発明の糖タンパク質の測定方法は、糖タンパク質と、前記糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物とを反応させ、反応した糖結合化合物(糖タンパク質−糖結合化合物複合体)を検出することを含み、前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程及びそれ以降の処理工程を含む工程群から選ばれる少なくとも一工程のpHを8.5よりも高く、かつ11.0未満のアルカリ性域に調整することを必須とする。
本発明の測定対象となる糖鎖には、N結合型糖鎖及びO結合型糖鎖が含まれる。N結合型糖鎖には、下記式:
Figure 2017131021
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する〕
で示されるコア構造に、
フコース、シアル酸、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンで構成される側鎖(N−アセチルラクトサミン構造、ポリN−アセチルラクトサミン構造)が1〜6本付加した複合型糖鎖;
前記コア構造にマンノースのみにより構成されるオリゴ糖が付加された高マンノース型糖鎖;並びに
前記複合型と前記高マンノース型とが混成した混成型糖鎖が含まれる。
また、前記N結合型糖鎖には、コア構造の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが付加した糖鎖も含まれる。
本発明の測定対象となる糖鎖には、シアル酸(Sia)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、フコース(Fuc)等が含まれる。
糖タンパク質の具体例には、ハプトグロビン(HP)、フコシル化ハプトグロビン(fHP)、トランスフェリン(TF)、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ−GTP)、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンA(IgA)、イムノグロブリンM(IgM)、α1−酸性糖タンパク質(AGP)、αフェトプロテイン(AFP)、フコシル化αフェトプロテイン(fAFP、AFP−L3)、フィブリノーゲン、ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、チログロブリン(TG)、フェツイン(FET)、アシアロフェツイン(aFET)、オボアルブミン(OVA)等が挙げられる。糖タンパク質の糖鎖構造の変化と疾患や異常との関係が示唆されるものが好ましい。
糖タンパク質の出所は、特に限定されない。例えば、血液、血漿、血清、涙、唾液、体液、乳汁、尿、細胞の培養上清、形質転換動物からの分泌物等が挙げられる。好ましくは血液、血漿又は血清であり、特に好ましくは血清である。血液、血漿又は血清の試料を本発明の方法に適用すると、血液、血漿又は血清由来のノイズを低減することができる。
本発明の測定方法に供する試料は、糖タンパク質以外に、糖鎖を有する限りその断片(糖ペプチド)であってもよい。糖ペプチドは、糖タンパク質をプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)で処理することにより得られる。上記プロテアーゼは、糖タンパク質に作用して糖ペプチドを生成させるものであれば特に制限はない。該プロテアーゼを機能的に分類すると、アスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、N−末端スレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ等が挙げられる。
上記プロテアーゼは、その由来を問わない。例えば、動物由来のプロテアーゼとしては、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カテプシンD、カルパイン等が挙げられる。植物由来のプロテアーゼとしては、パパイン、キモパパイン、アクチニジン、カリクレイン、フィシン、ブロメライン等が挙げられる。微生物由来のプロテアーゼとしては、バチルス属、アスペルギルス属、リゾプス属、アオカビ属(ペニシリウム属)、ストレプトマイセス属、スタフィロコッカス属、クロストリジウム属及びリソバクター属由来のものが挙げられる。
本発明に使用するプロテアーゼは、市販のものを特に制限なく使用可能である。例えば、本発明の実施例に使用したペプシンとして、ブタ胃粘膜由来(シグマ・アルドリッチ社製)、及びストレプトマイセス由来のプロテアーゼとしてアクチナーゼE(科研製薬株式会社製)等が挙げられる。
プロテアーゼ処理は、通常、水、緩衝液等の水性媒体中で行われる。プロテアーゼ処理を一定のpHの下で行うために、緩衝液を使用することが好ましい。緩衝液の例としては、グリシン塩酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等が挙げられる。プロテアーゼ処理を促進するために、水性媒体中に界面活性剤等の変性剤を添加してもよい。
プロテアーゼの使用量は、糖タンパク質とプロテアーゼとの反応が進行する量であればよい。プロテアーゼ処理の条件(pH、温度、及び時間)は、使用するプロテアーゼに依存する。
プロテアーゼ処理後、pHの変更、加熱処理、酵素反応停止液の添加等、適宜の手段で酵素反応を停止させる。その後、反応液を濾過、透析、遠心分離等の分離手段によって、上清と固体残渣とに分離してもよい。上清をさらに、塩析、エタノール沈殿等の除タンパク質処理にかけてもよい。
本発明の測定方法において、前記糖タンパク質は、必ずしも固定化する必要はないが、固定化する方が好ましい。糖タンパク質を固定化するための担体は、例えばガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、ラテックス、アガロース、セルロース、デキストラン、デンプン、デキストリン、シリカゲル、多孔性セラミックス等の素材でできたマイクロタイタープレート、ビーズ、ディスク、スティック、チューブ、マイクロセンサーチップ、マイクロアレイ等が挙げられる。これらの担体への糖タンパク質の固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。
前記糖タンパク質は、その抗体を介して担体に固定化されていてもよい。抗体は、抗体分子自体でよく、また、抗体を酵素処理して得られるFab、Fab’、F(ab’)2等の抗原認識部位を含む活性フラグメントでもよい。
抗体の由来は限定されない。抗体には、ヒト、マウス、ウサギ等の哺乳動物に抗原としての糖タンパク質を免疫することにより得られる抗血清や腹水液、並びにこれらを塩析、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等の汎用の方法で精製したポリクローナル抗体が含まれる。さらに、抗体には、ヒトや動物の血清等から調製したタンパク質で免疫されたマウスの抗体産生リンパ細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって、該糖タンパク質を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得、次いで該ハイブリドーマ又はそれに由来する細胞株を培養し、その培養物から採取されるモノクローナル抗体が含まれる。汎用の糖タンパク質については、その抗体が試薬として販売されており、本発明ではそれらを制限なく使用可能である。
上記の抗体等が糖結合化合物と反応する糖鎖を有する場合は、適宜、抗体から糖鎖を除去する。糖結合化合物と反応する糖鎖を持たない抗体を取得するには、モノクローナル抗体をノイラミニダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−グリカナーゼ等の糖鎖分解酵素で処理する、抗体のFc部をペプシン、パパイン等のプロテアーゼにより限定加水分解する、過ヨウ素酸水溶液で糖鎖構造を酸化分解する、ハイブリドーマ又はハイブリドーマ由来の動物細胞の培地に糖鎖合成阻害剤を添加して培養する方法が挙げられる。
上記抗体の担体への固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。糖タンパク質に対する抗体(例えば抗トランスフェリン抗体)の溶液を担体に添加することにより、担体に抗体を結合させる。
本発明の方法は、まず、抗体を適宜、結合させた担体に、糖タンパク質を含む検体(例えば血清)の溶液を添加することにより、糖タンパク質を担体に結合させる。
次に、前記糖タンパク質含有溶液に、該糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物溶液を作用させ、糖タンパク質と糖結合化合物とを反応させる。使用する糖結合化合物は、糖タンパク質に結合する糖鎖に依存して、適宜、選択される。
前記糖結合化合物は、例えば糖に結合するタンパク質(ペプチドを含む)、並びに糖に結合するDNA、RNA等の核酸である。
前記糖結合タンパク質には、レクチン、抗糖鎖抗体、マルトース結合タンパク質、グルコース結合タンパク質、ガラクトース結合タンパク質、セルロース結合タンパク質、キチン結合タンパク質、炭水化物結合モジュールが含まれる。前記糖結合化合物は、好ましくは糖結合タンパク質であり、より好ましくはレクチン及び抗糖鎖抗体であり、さらに好ましくはレクチンである。
前記糖結合化合物は、一種単独でもよく、または二種の併用でもよい。
前記レクチンの親和性を、赤血球凝集を阻害する糖の最小阻害濃度で表すと、通常100mM以下、好ましくは10mM以下である。最小阻害濃度とは、糖が凝集反応を阻止するために要する最小濃度を意味する。最小阻害濃度が小さいほど、レクチンに対する親和性が高いことを示す。赤血球凝集反応阻害試験法は、特許4514163(フコースα1→6特異的レクチン)に記載されている方法で行うことができる。
前記レクチンは、天然由来レクチン、若しくは化学合成又は遺伝子工学的合成により得られるレクチンのいずれでもよい。レクチンの由来は、植物、動物及び菌類のいずれでもよい。以下に、本発明に使用可能な天然レクチンの例を示す。
ガラクトース(Gal)/N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)に親和性を有するレクチンの例には、マッシュルームレクチン(ABA)、ドリコスマメレクチン(DBA)、デイゴマメレクチン(ECA)、インゲンマメレクチン(PHA−E4、PHA−P)、ピーナッツレクチン(PNA)、ダイズレクチン(SBA)、ムラサキモクワンジュレクチン(BPL)、ヒマレクチン(RCA120)が挙げられる。マンノース(Man)に親和性を有するレクチンの例には、コンカナバリンA(ConA)、レンズマメレクチン(LCA)、エンドウマメレクチン(PSA)が挙げられる。フコース(Fuc)に親和性を有するレクチンの例には、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、レンズマメレクチン(LCA)、ロータスレクチン(Lotus)、エンドウマメレクチン(PSA)、ハリエニシダレクチン(UEA−I)、ミヤコグサレクチン(LTA)、ラッパスイセンレクチン(NPA)、ソラマメレクチン(VFA)、麹菌レクチン(AOL)、スギタケレクチン(PhoSL)、ツチスギタケレクチン(PTL)、サケツバタケレクチン(SRL)、クリタケレクチン(NSL)、コムラサキシメジレクチン(LSL)、ベニテングタケレクチン(AML)が挙げられる。このうち、PhoSL、PTL、SRL、NSL、LSL及びAMLは、α1→6フコースにのみ特異的に結合するので、α1→6フコースの有無が疾患と関連する糖タンパク質の検出に有利である。N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)に親和性を有するレクチンの例には、チョウセンアサガオレクチン(DSA)、アメリカヤマゴボウレクチン(PWM)、小麦胚芽レクチン(WGA)、バンデリアマメレクチン−II(GSL−II)、ムジナタケレクチン(PVL)が挙げられる。シアル酸(Sia)に親和性を有するレクチンの例には、イヌエンジュレクチン(MAM)、ニホンニワトコレクチン(SSA)、小麦胚芽レクチン(WGA)、ヤナギマツタケレクチン(ACG)、キカラスウリレクチン(TJA−I)、ムジナタケレクチン(PVL)、及び西洋ニワトコレクチン(SNA−I)が挙げられる。
糖結合化合物及び/又は糖結合化合物を検出するプローブは、当分野で公知の標識手段で標識されていることが好ましい。標識手段の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンBイソチオシアネート(TRITC)、ローダミン、CyDye等の蛍光化合物、125I、H、14C等の放射性物質、金ゾル、銀ゾル、白金ゾル等の金属コロイド、顔料で着色されたポリスチレンラテックス等の合成ラテックス、ビオチンやジゴキシゲニンを挙げることができる。糖結合化合物を検出するプローブは、一種単独、又は二種以上の併用でもよい。
標識手段が酵素の場合、酵素活性を測定するために発色基質が用いられる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の基質としては、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)、2,2’−アジノジ−[3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸]2アンモニウム塩、5−アミノサリチル酸、又はo−フェニレンジアミン(OPD)、アルカリフォスターゼの基質としては、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)又は4−メチルウンベリフェリルホスフェート、そしてβ−D−ガラクトシダーゼの基質としてはo−ニトロフェノール−β−D−ガラクトピラノシドを挙げることができる。
標識手段は、常法により前記糖結合化合物又は前記糖結合化合物を検出するプローブへ結合することができる。特に、ストレプトアビジン(又はアビジン)−ビオチン系を介して結合することは、感度が高くなる点で好ましい。
固定化された上記糖タンパク質に上記糖結合化合物を含む溶液に曝すことにより、糖タンパク質と糖結合化合物とを反応させる。本発明の方法は、前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程及びそれ以降の処理工程を含む工程群から選ばれる少なくとも一工程のpHを、上記特定のアルカリ性域に調整することを特徴とする。すなわち、本発明は、糖タンパク質及び糖結合化合物が共存する環境のpHを上記特定の範囲に調整することが重要である。具体的には、糖タンパク質と糖結合化合物とを反応させて糖タンパク質−糖結合化合物複合体を得る糖結合化合物反応工程の溶媒、糖タンパク質−糖結合化合物複合体を洗浄する洗浄工程の洗浄液、糖タンパク質−糖結合化合物複合体に2次プローブ以降のプローブを反応させるプローブ反応工程の溶媒、プローブ反応後の糖タンパク質−糖結合化合物複合体を洗浄する洗浄液等のpHを調整する。
上記溶媒のpHの下限は、8.5よりも高い。pHが8.5以下であると、糖タンパク質−糖結合化合物複合体のS/N比の改善が図れない場合がある。pHの下限は、好ましくは8.6以上、より好ましくは8.8以上、さらに好ましくは9.0以上である。逆に、上記溶媒のpHの上限は、11.0未満である。pHが11.0以上であると、複合体のS/N比の改善が図れない場合がある。pHの上限は、好ましくは10.5以下である。
上記pHは、アルカリ性溶液、好ましくはアルカリ性緩衝液によって調整される。緩衝液の例には、グリシン−水酸化ナトリウム(NaOH)緩衝液;炭酸−重炭酸緩衝液;TAPS、Tricine、Bicine、CHES、CAPSO、CAPS等のグッド緩衝液;ホウ酸ナトリウム緩衝液;塩化アンモニウム緩衝液;Britton‐Robinson 緩衝液等の広域緩衝液等が挙げられる。好ましくはグリシン−NaOH緩衝液、炭酸−重炭酸緩衝液及びTAPS緩衝液から選ばれる一種以上であり、より好ましくはグリシン−NaOH緩衝液及びTAPS緩衝液から選ばれる一種以上である。これらの緩衝液の調製は、従来公知の方法に基づく。
上記反応の後、反応した糖結合化合物を検出することにより、糖タンパク質を検出する。糖結合化合物の測定方法は、特に限定されず、当業者に周知の方法で使用することができる。測定方法の例としては、レクチンELISA(直接吸着法、サンドイッチ法、競合法)、レクチン染色のように酵素等の発色や発光、蛍光を検出する方法、糖鎖アレイ、レクチンアレイのようにエバネッセント波を検出する方法、水晶発振子マイクロバランス法や表面プラズモン共鳴法のように質量変化を検出する方法等を挙げることができる。表面プラズモン共鳴法は、担体に固定化した糖タンパク質量、及び、糖タンパク質に結合した検出レクチン量を多段階法で同時に測定できるので便利である。
いくつかの代表的な測定方法を、以下に概説する。レクチンELISA(直接吸着法)では、糖タンパク質を含む溶液をELISAプレートに添加して固定化する(固相化)。次いで、ビオチン標識したレクチンを添加して、糖鎖とレクチンとを反応させる(レクチン反応、1次反応)。2次標識化合物としてHRP標識ストレプトアビジン溶液を添加して、ビオチンとストレプトアビジンとを反応させる(プローブ反応、2次反応)。次いで、HRP用発色基質を加えて発色させ、発色強度を吸光光度計で測定する。上記レクチン反応以降の工程の少なくとも一工程を本発明で規定するアルカリ性域に調整する。予め、既知の濃度の標準試料によって検量線を作成しておけば、糖鎖の定量化も可能である。
レクチンELISA(サンドイッチ法)では、糖タンパク質(抗原)に結合する抗体をプレートやマイクロプレートに添加し抗体をプレート等に固定化する。次いで、糖タンパク質を含む検体(血清等)を添加して、前記抗体と糖タンパク質とを反応させる(検体反応)。次いで、ビオチン標識したレクチンを添加して、糖鎖とレクチンとを反応させる(レクチン反応)。2次標識化合物としてHRP標識ストレプトアビジン溶液を添加して、ビオチンとストレプトアビジンとを反応させる(プロ―ブ反応)。次いで、HRP用発色基質を加えて発色させ、発色強度を吸光光度計で測定する。上記レクチン反応以降の工程の少なくとも一工程を本発明で規定するアルカリ性域に調整する。予め、既知の濃度の標準試料によって検量線を作成しておけば、糖鎖の定量化も可能である。
本発明の方法によれば、糖タンパク質の検出感度が向上するので、糖鎖変化と関連する疾患の診断精度の向上に寄与する。ガラクトース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、慢性関節リウマチ、肝癌、骨髄腫等がある。マンノース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、直腸癌等がある。フコース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、大腸癌、膵臓癌、肝癌等がある。N−アセチルグルコサミン残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、特発性正常圧水頭症、肝癌等がある。シアル酸残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、アルツハイマー病、心臓血管疾患、アルコール依存症、IgA腎症、肝癌、前立腺癌、卵巣癌、心筋梗塞、繊維症、膵炎、糖尿病、糖タンパク質糖鎖転移不全症等がある。
以下に本発明の実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
使用した試薬は、以下に示すように入手又は調製をした。
<リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)(PBS)>
リン酸水素二ナトリウム5.75g、リン酸二水素カリウム1.0g、塩化カリウム1.0g、及び塩化ナトリウム40.0gを水5Lに溶解して、PBSを得た。
<0.6M トリス‐塩酸緩衝液(pH9.0)>
トリスヒドロキシメチルアミノメタン7.3gを、水80mL程度に溶解し、6N 塩酸を添加してpH9.0に合わせ、さらに水で100mLにメスアップした。
<50mM グリシン‐水酸化ナトリウム(グリシン−NaOH)緩衝液(pH8.5〜11.0)>
グリシン375.4mgを、水80mL程度に溶解し、5N 水酸化ナトリウムを添加してpH8.5に合わせ、さらに水で100mLにメスアップした。同様にpH9.0、pH9.5、pH10.0、pH10.5、pH11.0の緩衝液を調製した。
<50mM 炭酸−重炭酸緩衝液(pH8.6〜11.0)>
炭酸ナトリウム1.06gを、水200mLに溶解し、炭酸水素ナトリウム0.84gを水200mLに溶解した。炭酸ナトリウム溶液と炭酸水素ナトリウム溶液を混合し、pH8.6、pH9.0、pH9.5、pH10.0、pH10.5、pH11.0の緩衝液を調製した。
<50mM TAPS緩衝液(pH8.5〜11.0)>
TAPS 1.22gを、水80mL程度に溶解し、5N 水酸化ナトリウムを添加してpH8.5に合わせ、さらに水で100mLにメスアップした。同様にpH9.0、pH9.5、pH10.0、pH10.5、pH11.0の緩衝液を調製した。
<1.2M グリシン‐塩酸緩衝液(pH3.3)>
グリシン9.00gを、水80mL程度に溶解し、6N 塩酸を添加してpH3.3に合わせ、さらに水で100mLにメスアップした。
<PBS−T(pH7.4)>
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(商品名 Tween20、ナカライテスク(株)製)2.5mLを5LのPBSに溶解して、濃度0.05%のTween20のPBS溶液(以下、PBS−Tという)を得た。
<アルカリフォスファターゼ用洗浄液>
Wash Solution(20X)(KPL社製)10mLを、水90mLと混合した。
<1% BSA/PBS>
ウシ血清アルブミン(BSA、シグマ・アルドリッチ社製)1gを100mLのPBSに溶解して、濃度1%のBSAのPBS溶液(以下、1% BSA/PBSという)を得た。
<0.1% BSA/PBS>
ウシ血清アルブミン(BSA、シグマ・アルドリッチ社製)100mgを100mLのPBSに溶解して、濃度0.1%のBSAのPBS溶液(以下、0.1% BSA/PBSという)を得た。
<ペプシン溶液>
ペプシン(ブタ胃粘膜由来、シグマ・アルドリッチ社製)を、1.2M グリシン‐塩酸緩衝液(pH3.3)で、1500U/mLになるように溶解した。
<ヒト血清>
ヒト血清はBIOPREDIC社製(製品名:Human True A serum, Pool of Donors、型番:SER019A050B634)のものを使用した。
<糖タンパク質溶液>
以下の糖タンパク質を、それぞれ、濃度1mg/mLになるようにPBSに溶解して糖タンパク質溶液を得た。
オボアルブミン(OVA、シグマ・アルドリッチ社製)、
フェツイン(FET、シグマ・アルドリッチ社製)、
アシアロフェツイン(aFET、シグマ・アルドリッチ社製)、
チログロブリン(TG、Scipac社製)、
フコシル化αフェトプロテイン(fAFP)又はフコシル化ハプトグロビン(fHP)は以下の方法で調製した。
<fAFP溶液の調製>
肝臓癌細胞株(HepG2、理化学研究所より入手)を常法に従い培養し、培養上清液を得た。培養上清液1000 mLを、限外ろ過フィルター(製品名:VIVA SPIN 20‐10K、ザルトリウス社製)で1mLに濃縮した。NHS−activated Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社製)に抗AFP抗体を固定化したゲル0.5mlに上記濃縮液を添加した。室温で10分毎に混和して1時間後、前記ゲルを含む溶液を0.45μmフィルターチューブ(ミリポア社製)に加え、400×g、4℃で5分間遠心し、ろ液を廃棄した。次に、PBS 200μLを加えて400×g、4℃で5分間遠心して、ろ液を廃棄した。これを2回繰り返した。次いで、Elution Buffer(100mM グリシン、0.5M NaCl、pH3.0)200μLを加えて、400×g、4℃で5分間遠心して、ろ液を回収した。これを2回繰り返した。この液を合わせて得た溶液を3NのNaOHで中和した後、PBS 600μLを加え、fAFP溶液を得た。
<fHP溶液の調製>
抗AFP抗体の代わりに抗ハプトグロビン抗体を固定化したゲルを用いたこと以外、上記fAFP溶液の調製と同様に行い、fHP溶液を得た。
<抗AFP抗体>
以下の商品名に示す抗体を入手した。
抗ヒトAFPモノクローナル抗体(マウス)(ミクリ免疫研究所製)
<脱グリコシル化抗AFP抗体>
上記抗AFP抗体を、非特許文献1に記載の方法に準じて脱グリコシル化を行った。
<抗PhoSL抗体>
PhoSLを免疫原として公知の方法に従いポリクローナル抗体を作製した。プロテインG固相担体を用いて抗血清からIgG画分を精製した。
<ビオチン標識抗PhoSL抗体>
ビオチン化試薬(シグマ・アルドリッチ社製;型番:B2643)をジメチルスルホキシドに溶解し、上記抗PhoSL抗体に加え反応させた。反応液は限外ろ過(50Kの膜、ミリポア社製)でPBSに対して溶媒置換を行い、ビオチン標識抗PhoSL抗体溶液を得た。
<レクチン>
スギタケレクチン(PhoSL)は、非特許文献1に記載の方法に従って、スギタケから精製した。ツチスギタケレクチン(PTL)は、上記スギタケレクチン精製と同様の手順で、ツチスギタケから精製した。サケツバタケレクチン(SRL)及びクリタケレクチン(NSL)は、特許4514163に記載の方法に従って精製した。
<ビオチン標識レクチン>
小麦胚芽レクチン(WGA)、ヒマレクチン(RCA120)、日本ニワトコレクチン(SSA)、及びマッシュルームレクチン(ABA)は、株式会社J−オイルミルズ社製のビオチン標識レクチンを使用した。PhoSL、PTL、SRL、NSLは非特許文献1に記載の方法に準じてビオチン標識化した。ビオチン標識レクチンを、1mg/mL PBSに調製して保存しておき、使用時に適切な濃度に希釈した。
発色試薬として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(KPL社製)、HRP用発色基質(商品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)、アルカリフォスファターゼ(AP)標識ストレプトアビジン(KPL社製)、及びAP用発色基質(商品名:BluePhos(登録商標) Microwell Phosphatase Substrate System、KPL社製)を用意した。
発色反応の停止液として、HRP用反応停止液(1M リン酸/水)、及びAP用反応停止液(APStopTM Solution (10X)(KPL社製)10mLを水90mLと混合して調製したもの)を用意した。
〔実施例1〜3〕レクチンELISA(直接吸着法)によるTGの測定(I)
糖タンパク質TGの測定を、レクチンELISA(直接吸着法)により行なった。具体的な工程を以下に示す。
(1)TG固定化
TG溶液(1mg/mL)をPBSで5μg/mLに希釈した。この希釈液25μLを96穴マイクロタイタープレートのウェルに添加して、4℃で一晩放置し、その後、添加液を廃棄した。
(2)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。
(3)ブロッキング
上記ウェルに1% BSA/PBSを50μL添加して、37℃で60分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(4)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計2回繰り返した。
(5)検体反応(ヒト血清添加)
TG等の糖タンパク質は、通常、血清、血液等の生体試料中に含まれている。これらの試料は、目的の糖タンパク質以外に、さまざまな物質を含む。これらの物質が、糖タンパク質測定時のノイズ源となる。そこで、糖タンパク質測定時のノイズ源をシミュレートするため、上記ウェルにヒト血清を追加的に添加した。具体的には、ヒト血清25μLを上記ウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(6)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(7)1次反応(糖タンパク質とレクチンとの反応)
表1に示す緩衝液で、ビオチン標識PhoSLを0.25μg/mLに希釈した。このレクチン溶液25μLを上記ウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(8)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(9)2次反応(HRP標識ストレプトアビジン反応)
上記HRP標識ストレプトアビジンをPBSで、0.04μg/mLに希釈した。これを上記ウェルに25μL添加して、室温で30分間放置後、添加液を廃棄した。
(10)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計4回繰り返した。
(11)発色反応
上記ウェルに、HRP用発色基質25μLを添加し、室温で10分間放置した。
(12)反応停止
反応停止液(1M リン酸/水)を25μL添加し、発色反応を停止させた。プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、バイオテック(株)製)を用いて、波長450nm及び630nmの吸光度を測定した。糖タンパク質添加の450nmの吸光度から630nmの吸光度を引いた値をシグナル値:吸光度TG(+)とした。同様に、糖タンパク質未添加での450nmの吸光度から630nmの吸光度を引いた値をノイズ値:吸光度TG(−)とした。式(1)に示すように、糖タンパク質添加でのシグナル値を糖タンパク質未添加でのノイズ値で除することにより、S/N比を求めた。結果を表1、並びに図1a及び図1bに示す。
Figure 2017131021
Figure 2017131021
比較例1のように、糖タンパク質−レクチン複合体を含有する血清を、中性域のpHを有する緩衝液中で検出すると、シグナル値が2.828と高いものの、ノイズ値も1.702と高い。比較例1のS/N比は、1.7倍である。一方、実施例1〜3のように、糖タンパク質TGとレクチンとの反応時の溶媒をアルカリ性域に調整することにより、糖タンパク質に由来するシグナル値を高く維持したまま、血清に由来するノイズ値が顕著に低下する(表1及び図1a)。その結果、S/N比で表される糖タンパク質−レクチン複合体の検出感度が4.6〜8.9倍へと格段に向上する(表1及び図1b)。
〔実施例4〜7〕TGのレクチンELISA(直接吸着法)による測定(II)
実施例1では、(7)糖タンパク質とレクチンとの反応時にアルカリ性域の溶媒を使用したが、実施例4〜7では、以下のように変更した。
実施例4では、比較例1において(8)1次反応後の洗浄をPBS−T×3回から、PBS−T×1回、グリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)×2回、及びPBS−T×1回(合計4回の洗浄)へ変えた以外は、比較例1と同じ手順でTGを測定した。結果を表2及び図2aに示す。
実施例5では、比較例1において(9)2次反応の溶媒をPBS(pH7.4)からグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)に変えた以外は、比較例1と同じ手順でTGを測定した。結果を表2及び図2bに示す。
実施例6では、比較例1において(10)2次反応後の洗浄をPBS−T×3回から、PBS−T×1回、グリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)×2回、及びPBS−T×1回(合計4回の洗浄)へ変えた以外は比較例1と同じ手順でTGを測定した。結果を表2及び図2aに示す。
実施例7では、比較例1において(7)1次反応の溶媒及び(9)2次反応の溶媒をグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)へ変えた以外は、比較例1と同じ手順でTGを測定した。結果を表2及び図2bに示す。
比較例2では、比較例1において(6)検体反応後の洗浄をPBS−T×3回から、PBS−T×1回、グリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)×2回、及びPBS−T×1回(合計4回の洗浄)へ変えた以外は比較例1と同じ手順で、TGを測定した。結果を表2に示す。
比較例3では、比較例1において(9)2次反応のプローブをAP標識ストレプトアビジン(0.5μg/ml)に変え、酵素に合わせて洗浄液及び発色基質及び発色反応停止液をアルカリフォスファターゼ用に変えた以外は、比較例1と同じ手順でTGを測定した。実施例8では、比較例3において2次反応の溶媒をグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)に変えた以外は、比較例3と同じ手順でTGを測定した。これらの結果を表2及び図2cに示す。
比較例4では、1次プローブにPhoSL(標識していないもの)を、2次プローブにビオチン標識抗PhoSL抗体を、3次プローブにHRP標識ストレプトアビジンを用いた以外は、比較例1に準じてTGを測定した。全てのプローブ反応はPBSで行った。実施例9では、2次プローブを使った2次反応の溶媒をグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)に変えた以外は、比較例4と同じ手順でTGを測定した。これらの結果を表2及び図2dに示す。
Figure 2017131021
比較例1でレクチン反応及びその後の洗浄をpH7.4で行ったところ、S/N比は1.7であった。比較例2のように、(6)検体反応後の洗浄をpH10.0のアルカリ性域に変更しても、S/N比は改善しなかった。このことから、糖タンパク質単独の環境をアルカリ性のpH域に変更するだけでは、S/N比が改善しないことがわかる。
一方、実施例1、4、5、6、7、8及び9のように、1次反応時の溶媒、1次反応後の洗浄液、2次反応時の溶媒、又は2次反応後の洗浄液のいずれかを、本発明で規定するpH範囲に変更すると、S/N比が改善した。すなわち、糖タンパク質及びレクチンが共存する環境をアルカリ性のpH域に変更することにより、S/N比が向上する(図2a〜b)。特に、1次反応時及び/又は2次反応時の溶媒をアルカリ性域に調整することが、S/N比を顕著に高める点で好ましい(図2b)。
[実施例10〜22]レクチンELISA(サンドイッチ法)によるfAFPの測定(I)
fAFP糖タンパク質の測定を、レクチンELISA(サンドイッチ法)により行なった。本実施例では、糖タンパク質を糖ペプチドに加工してから、測定を行なった。具体的な工程を以下に示す
1.プロテアーゼ処理
糖タンパク質fAFPのプロテアーゼ処理を、ペプシンを用いて行った。具体的には、上記fAFP溶液を400ng/mLになるよう、ヒト血清に加えた。次に、上記fAFP添加血清溶液2.5mLと上記ペプシン溶液1.25mLとを混合して撹拌後、37℃の温度で30分間、静置した。この混合物に0.6M トリス‐塩酸緩衝液(pH9.0)1.25mLを添加してタンパク質分解反応を停止させ、200ng/mLのペプシン処理fAFPの血清溶液(fAFP(+))を得た。ブランクとして、上記fAFPを添加することなくヒト血清をペプシン処理することにより、fAFP未含有のペプシン処理血清溶液(fAFP(−))を調製した。
2.糖タンパク質の検出
上記で得られたfAFP(+)又はfAFP(−)を、表3に示す緩衝液で希釈したビオチン標識PhoSLを用いてサンドイッチELISA法で検出した。サンドイッチELISA法は、非特許文献1に記載の方法に準じた。具体的には、試験を以下の手順で行った。
(1)抗体固定化
脱グリコシル化した抗AFP抗体をPBSで5μg/mLに希釈し、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに25μL添加して、4℃で一晩放置し、その後、添加液を廃棄した。
(2)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。
(3)ブロッキング
上記ウェルに1% BSA/PBSを50μL添加して、37℃で60分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(4)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計2回繰り返した。
(5)検体反応
前記fAFP(+)又は前記fAFP(−)25μLを上記ウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(6)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(7)1次反応(糖タンパク質とレクチンとの反応)
表3に示す緩衝液で、ビオチン標識PhoSLを0.25μg/mLに希釈した。このレクチン溶液25μLをウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(8)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(9)2次反応(HRP標識ストレプトアビジン反応)
HRP標識ストレプトアビジンをPBSで、0.04μg/mLに希釈した。これを各ウェルに25μL添加して、室温で30分間放置後、添加液を廃棄した。
(10)洗浄
上記ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(11)発色反応
上記ウェルに、HRP用発色基質25μLを添加し、室温で10分間放置した。
(12)反応停止
上記ウェルに反応停止液(1M リン酸/水)を25μL添加し、発色反応を停止させた。前記プレートリーダーを用いて、波長450nm及び630nmの吸光度を測定した。fAFP(+)の450nmの吸光度値から630nmの吸光度値を引いた値をシグナル値(吸光度fAFP(+))とした。同様に、fAFP(−)の値をノイズ値(吸光度fAFP(−))として求めた。次に、fAFPのS/N比を式(2)から求めた。
Figure 2017131021
1次反応時の溶媒に、各種緩衝液を用いた場合の結果を表3、及び図3a〜dに示す。
Figure 2017131021
表3及び図3a〜dの結果から、糖タンパク質をTGからfAFPに変更しても、糖タンパク質のS/N比で表される検出感度が向上すること、そして糖タンパク質を糖ペプチドに断片化してもS/N比が向上することが判明した。
1次反応用溶媒に従来のpH7.4であるPBSを用いた比較例5のS/N比は1.2であったところ、緩衝液をアルカリ性域のグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液に変更すると、pHが8.5を超え、11以下の範囲でS/N比が向上する(実施例10〜13、及び参考例1)、緩衝液を炭酸−重炭酸緩衝液に変更すると、pHが8.6以上11.0未満の範囲でS/N比が向上する(実施例14〜18)、そして、緩衝液をTAPS緩衝液に変更すると、pHが8.5以上11.0以下の範囲でS/N比が向上する(実施例19〜22、及び参考例2〜3)ことが確認された。
以上の結果から、レクチン反応時の溶媒やそれ以降に用いる溶媒のpHを、8.5よりも高く、かつ11.0よりも低い範囲、好ましくは8.6〜10.5の範囲、より好ましくは9.0〜10.5の範囲に調整することで、糖タンパク質の検出感度が向上するといえる。
[実施例23]レクチンELISA(サンドイッチ法)によるfAFPの測定(II)
実施例12のレクチンELISAの固定化担体をマイクロビーズに変更した実験を行なった。その具体的手順を以下に示す。
1.プロテアーゼ処理
実施例12と同様に、糖タンパク質fAFPのプロテアーゼ処理を行なった。
2.糖タンパク質の検出
上記で得られたfAFP(+)又はfAFP(−)を、表4に示すビオチン標識レクチンを用いてマイクロビーズELISA(サンドイッチ法)で検出した。具体的には、試験を以下の手順で行った。なお、マイクロビーズの保持のため適宜プレート状の磁石を用いた。
(1)抗体固定化
マイクロビーズ(商品名:Dynabeads(登録商標) M‐280 Tosylactivated、VERITAS社製)と脱グリコシル化した抗AFP抗体を20μg/mg beadsとなるように調製し、37℃で一晩固定化後0.1% BSA/PBSで2%のビーズ浮遊液とした。96穴マイクロタイタープレートのウェルに前記ビーズ浮遊液を1μLずつ添加した。
(2)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。
(3)検体反応
前記fAFP(+)又は前記fAFP(−)25μLをウェルに添加して、撹拌後、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(4)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、撹拌後、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(5)1次反応(糖タンパク質とレクチンとの反応)
表4に示す緩衝液で、ビオチン標識PhoSLを0.25μg/mLに希釈した。このレクチン溶液25μLをウェルに添加して、撹拌後、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(6)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、撹拌後、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(7)2次反応(HRP標識ストレプトアビジン反応)
HRP標識ストレプトアビジンをPBSで、0.04μg/mLに希釈した。これを各ウェルに25μL添加して、撹拌後、室温で30分間放置後、添加液を廃棄した。
(8)洗浄
各ウェルにPBS−Tを150μL添加し、撹拌後、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(9)発色反応
各ウェルに、HRP用発色基質25μLを添加し、撹拌後、室温で10分間放置した。
(10)反応停止
ウェルに反応停止液(1M リン酸/水)を25μL添加し、発色反応を停止させた。実施例12と同様にシグナル値及びノイズ値を測定し、そしてS/N比を求めた。その結果を、表4、図4a及び図4bに示す。
Figure 2017131021
表4において、従来使用されているpH7.4のPBSを用いた比較例8のS/N比は4.1であった。一方、pH9.5のグリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液を用いると、S/N比は6.1に向上した。本発明の方法は、固相担体の種類に依存しないことがわかる。
〔実施例24〜37〕レクチンELISA(直接吸着法)による各種糖タンパク質の測定
(1)糖タンパク質の固定化
表5に示す糖タンパク質を、それぞれ、PBSで5μg/mLに希釈した。この希釈液25μLを96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに添加して、4℃で一晩放置し、その後、添加液を廃棄した。
(2)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。
(3)ブロッキング
ウェルに1% BSA/PBSを50μL添加して、37℃で60分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(4)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計2回繰り返した。
(5)検体反応(ヒト血清添加)
ヒト血清25μLをウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(6)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(7)1次反応(糖タンパク質とレクチンとの反応)
表5に示すビオチン標識レクチンを、それぞれ、表5に記載の緩衝液で0.25μg/mLに希釈した。このレクチン溶液25μLをウェルに添加して、室温で30分間放置し、その後、添加液を廃棄した。
(8)洗浄
ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(9)2次反応(HRP標識ストレプトアビジン反応)
HRP標識ストレプトアビジンをPBSで、0.04μg/mLに希釈した。これを各ウェルに25μL添加して、室温で30分間放置後、添加液を廃棄した。
(10)洗浄
各ウェルにPBS−Tを150μL添加し、添加液を廃棄した。この操作を合計4回繰り返した。
(11)発色反応
各ウェルに、HRP用発色基質25μLを添加し、室温で10分間放置した。
(12)反応停止
反応停止液(1M リン酸/水)を25μL添加し、発色反応を停止した。前記プレートリーダーを用いて、波長450nm及び630nmの吸光度を測定した。糖タンパク質添加の450nmの吸光度から630nmの吸光度を引いた値をシグナル値:吸光度糖タンパク質(+)とした。同様に、糖タンパク質未添加での450nmの吸光度から630nmの吸光度を引いた値をノイズ値:吸光度糖タンパク質(−)とした。式(3)に示すように、シグナル値をノイズ値で除することにより、S/N比を求めた。結果を表5に示す。
Figure 2017131021
Figure 2017131021
表5の結果から、本発明の方法は、糖タンパク質及びその糖鎖、並びにそれに親和性を有する糖結合化合物の種類を問わず、S/N比を向上させ得ることが判明した。

Claims (8)

  1. 糖タンパク質と、前記糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を反応させ、反応した糖結合化合物を検出することを含む、糖タンパク質の測定方法において、
    前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程及びそれ以降の処理工程を含む工程群から選ばれる少なくとも一工程のpHを8.5よりも高く、かつ11.0未満のアルカリ性域に調整することを特徴とする、前記糖タンパク質の測定方法。
  2. 前記糖結合化合物は、糖結合タンパク質である、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
  3. 前記糖タンパク質と前記糖結合化合物との反応工程のpHを前記アルカリ性域のpHに調整することを含む、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
  4. 前記糖タンパク質は、担体に固定化されている、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
  5. 前記糖タンパク質は、その抗体を介して前記担体に固定化されている、請求項4に記載の糖タンパク質の測定方法。
  6. 前記糖結合化合物及び/又は前記糖結合化合物を検出するプローブは、標識されている、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
  7. 前記糖鎖が複合型糖鎖又はO結合型糖鎖である、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
  8. 前記糖タンパク質は、ハプトグロビン、フコシル化ハプトグロビン、トランスフェリン、γ−グルタミルトランスペプチターゼ、イムノグロブリンG、イムノグロブリンA、イムノグロブリンM、α1−酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フコシル化αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、チログロブリン、フェツイン、アシアロフェツイン、及びオボアルブミンからなる群から選ばれる一種である、請求項1に記載の糖タンパク質の測定方法。
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