JP5808583B2 - 糖タンパク質の検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糖タンパク質の検出方法に関し、より詳細には、糖タンパク質の糖鎖構造の微量の変化を検出する方法に関する。
タンパク質は、その半数以上が翻訳後に糖鎖修飾を受けている。タンパク質への糖鎖の結合様式は、アスパラギン残基のアミド基に結合するN結合型糖鎖及びセリン又はスレオニン残基のヒドロキシル基に結合するO結合型糖鎖に分けられる。いずれの糖鎖構造も、タンパク質の活性、細胞間相互作用、接着等に重要な役割を果たしている。
糖タンパク質に付加する糖鎖の種類とその数は、通常、一定である。この糖鎖構造の変化が疾患と関連することが数多く報告されている。例えば、Lisa R.Foderoらは、アルツハイマー疾患(AD)の患者から採取した髄液中(CSF)糖タンパク質をシアル酸結合性の小麦胚芽レクチン(WGA)で染色すると、その染色強度が有意に低下することを報告した(非特許文献1)。これは、AD患者から採取したCSF糖タンパク質はシアル酸付加率が有意に低下していることを意味する。彼らは、WGA結合性糖タンパク質がアルツハイマー疾患を診断するため有用なバイオマーカーになると示唆する。
トランスフェリン(Tf)は、679個のアミノ酸を有するポリペプチド鎖からなり、そして、413番目と611番目のアスパラギン酸残基が末端シアル酸を有する二個の分岐状糖鎖でN−グリコシル化されている糖タンパク質である。Tfには、570番目のアミノ酸残基がプロリンであるTfC1と、それがセリンで置換されたTfC2という多型が存在する。Susan J. van Rensburgらは、TfC1C2のヘテロ接合体の遺伝子型を持つAD患者は、6個のシアル酸を有するTfの相対強度が、TfC1C1ホモ接合体の遺伝子型を持つ患者よりも有意に減少していることを報告した(非特許文献2)。
Taniguchi.Mらは、AD病患者のCSF糖タンパク質を、WGAを用いたレクチンブロット法で解析したところ、シアル酸を4個及び3個持ったトランスフェリンが増加し、逆に2個及び1個持ったものが減少していることを報告した(非特許文献3)。
シアル酸量の変化は、AD以外にも、心臓血管疾患、アルコール依存症、糖尿病等ついて観察されている。
R.B.Parekhらは、関節リウマチ患者の血清中IgGの末端ガラクトースの付加率が減少し、末端にN−アセチルグルコサミンを持つ糖鎖の割合が増加することを報告している(非特許文献4)。ガラクトース欠損は、IgGの重要な生理機能である補体の活性化やFc受容体への結合能を著しく損なう。
糖タンパク質が有する糖鎖中のシアル酸やガラクトースの量的変化で疾患を検出及び診断するための研究開発が行われている。例えば、WO2008/029886(アルツハイマーの診断キット、診断マーカー及び病態指標の検出方法、特許文献1)には、哺乳動物から得た髄液試料に対して、シアル酸数の異なる糖鎖の付加したトランスフェリンを定量的に検出する工程と、3又は4のシアル酸を有する糖鎖の付加したトランスフェリンに対する、1又は2のシアル酸を有する糖鎖の付加したトランスフェリンの量比を算出する工程とを含む、アルツハイマー病の検出方法が開示されている。この発明では、トランスフェリン中の3又は4個のシアル酸を有する糖鎖の増加量、又は1又は2個のシアル酸を有する糖鎖の減少量が、等電点電気泳動等で測定される。
特開2006−317210(血清糖タンパク質をバイオマーカーとするアルツハイマー病の診断方法、特許文献2)には、ヒト由来の試料に含まれる、α2,6シアル酸含有糖タンパク質を検出又は測定することを含む、アルツハイマー病の診断方法が開示される。この発明では、α2,6シアル酸を含有するハプトグロビンの増加が、レクチンブロット等により測定される。
特開2010−121980(糖鎖バイオマーカーによる特発性正常圧水頭症の診断、特許文献3)には、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を糖鎖構造の末端に持つトランスフェリン−1の量を測定することを含む、特発性正常圧水頭症の検査方法が開示される。健常者の血清中に存在するトランスフェリン−2は、末端にSia−Gal−GlcNAc−という糖鎖構造を持っている。一方、患者のものは、アシアロ−アガラクト構造、すなわち、末端にGlcNAc−の糖鎖構造を持つ。この発明では、トランスフェリン−1が、ウエスタンブロット、レクチンELISA等で測定される。
特開2011−47846(前立腺癌の診断法、特許文献4)には、血液中のハプトグロビン糖鎖のα2−6シアル酸量を指標とする、前立腺癌の判定方法が開示される。この発明では、ハプトグロビン中のα2−6シアル酸量の増加が、表面プラズモン共鳴法等で測定される。
特許2945075(リウマチ患者のIgG上のガラクトース欠損を測定する方法、特許文献5)には、プロテインA又はプロテインGと、ヒト血漿あるいは血清を反応させ、IgGを特異的に結合した、結合したIgGに存在する糖鎖構造を標識ガラクトース欠損糖鎖認識レクチンで標識し、IgG上のガラクトース欠損を検出することからなるリウマチ患者のIgG上のガラストーク欠損を測定する方法が開示される。この発明では、IgGのガラクトース欠損糖鎖が、レクチン染色で測定される。
Lisa R.Fodero,et.al.,Wheat germ agglutinin−binding glycoproteins are decreased in Alzheimer’s disease cerebrospinal fluid, Journal of Neurochemistry,2001,79,1022−1026 Susan J. van Rensburg et. al.,5−and6−glycosylation of transferrin in patients with Alzheimer’s disease.,Metabolic Brain Disease,Vol.19,Nos1/2,89−96,2004 谷口美也子,アルツハイマー型認知証の新規バイオマーカー;糖鎖修飾に注目して(A new biological marker of Alzheimer’s disiese; Altered glycosylation of cerebrospinal fluid and serum glycoprotein), 第17回中・四国老年期認知症研究会(平成23年4月18日開催)要旨集 Parekh, R.B.et.al.,Association of rheumatoid arthritis and primary osteoarthritis with changes in the glycosylation pattern of total serum IgG,Nature,316,452−457, 1985
WO2008/029886 特開2006−317210 特開2010−121980 特開2011−47846 特許2945075
レクチンは、シアル酸、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン等の糖残基に親和性を示すタンパク質の総称である。今まで、特定の糖残基に親和性を有する植物や動物由来のレクチンが数多く発見されている。
レクチンを用いた酵素免疫測定法(レクチンELISA)は、Lectins and Glycobiology(Gabius,H.J.著、UPSTATE BOOKS刊行、Macedon, NY, U.S.A.)、特開平10−311832、特開平08−285853、特開07−325083等に記載される公知の糖鎖分析手法である。レクチンELISAは、多数の検体を同時に測定できる、糖鎖を比較的簡便に測定することができる、という長所を有する。
しかし、従来のレクチンELISAは、本明細書の比較例が示すように、糖タンパク質の糖鎖構造の微量の変化を検出するには不十分である。現状のレクチンELISAで糖鎖量の変化と関連するような疾患を早期に精度高く診断することは困難である。
そこで、本発明は、糖タンパク質の糖鎖構造の微量の変化を精度高く検出できる糖タンパク質の検出方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、糖鎖の糖残基に親和性を有する検出用レクチンと、その糖残基の近傍に位置する糖残基に親和性を有する競合用レクチンとが混在する系で糖残基を測定することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを反応させ、反応した検出用レクチンを検出することを含む、糖タンパク質の検出方法を提供する。本明細書において、糖タンパク質は、糖鎖を有するタンパク質を意味し、そして糖鎖を有するその断片は、糖鎖を有するペプチド、及び糖鎖自体を含む意味で使用する。糖タンパク質の糖鎖をその糖残基を認識するレクチン1種類で検出することは公知である。しかし、本発明のように、競合用レクチンと検出用レクチンとを混在させた系で糖残基を検出することは新規である。
前記糖鎖は、特に複合型糖鎖又はO結合型糖鎖である。
前記糖タンパク質は、例えばハプトグロビン、トランスフェリン、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ−GTP)、IgG、IgA、IgM、α1−酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、hCG(ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン)、CEA(癌胎児性抗原)、及びPSA(前立腺特異抗原)からなる群から選ばれる一種である。
前記糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片は、担体に固定化されていてもよい。
前記糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片は、その抗体を介して前記担体に固定化されていることが好ましい。
前記検出用レクチンは、標識されていることが好ましい。
上記検出方法は、さらに、前記検出しようとする糖残基の全糖鎖に対する付加率又は欠損率を求めることを含むことが好ましい。
本発明は、また、糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを含む、糖鎖変化と関連する疾患の診断薬又は診断薬キットを提供する。
前記疾患は、例えばアルツハイマー病、慢性関節リウマチ、特発性正常圧水頭症、肝癌、前立腺癌、心臓血管疾患、アルコール依存症、及び糖尿病からなる群から選らばれる少なくとも一種である。
本発明は、また、糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを含む、糖鎖変化と関連する疾患の研究用試薬又は研究用キットを提供する。
前記疾患は、例えばアルツハイマー病、慢性関節リウマチ、特発性正常圧水頭症、肝癌、前立腺癌、心臓血管疾患、アルコール依存症又は糖尿病である。
本発明の糖タンパク質の検出方法によれば、糖残基量の微量の変化を検出することができ、従来のレクチンELISAと比べて分析精度が向上する。特に、糖鎖付加率の高い糖タンパク質の糖鎖の微量の変化が判別可能となる。これは、糖タンパク質から糖残基が欠損又は付加することによって異常や疾患が誘起される場合に疾患や異常の早期発見につながる。本発明によって微量の糖鎖変化が解析可能になるので、本発明が疾患の発症機構の解明、治療や予防に関する医学や生化学の研究に役立つことも大いに期待される。
検出用レクチンとしてのBiotin−SNAと、競合用レクチンとしてのECA(実施例1)、MCL(実施例2)又はBPL(実施例3)とが混在する系、あるいは競合用レクチンが非混在の系(比較例1)において、シアル酸率の異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度の変化を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例1では、トランスフェリンのシアル酸率が低い場合、シアル酸率に依存して吸光度が増大する。しかし、シアル酸率が73%以上と高くなると、吸光度はほぼ一定となる。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチンが混在する実施例1〜3では、シアル酸率73%以上であっても、シアル酸率に依存して吸光度が増加している。 検出用レクチンとしてのBiotin−SSAと、競合用レクチンとしてのECAとが混在する系(実施例4)あるいは、競合用レクチンが非混在の系(比較例4)において、シアル酸率が73%及び91%のトランスフェリンをそれぞれ検出したときの吸光度を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例4では、シアル酸率91%と73%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンに競合するガラクトース結合レクチンが混在する実施例4では、吸光度に有意差が見られた(p<0.01)。 検出用レクチンとしてのBiotin−SSAと、競合用レクチンとしてのECA(実施例5)、MCL(実施例6)又はBPL(実施例7)とが混在する系、あるいは競合用レクチンが非混在の系(比較例5)において、シアル酸率の異なるハプトグロビンを検出したときの吸光度を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例5では、シアル酸率100%と85%のハプトグロビンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチン(ECA、MCL又はBPL)を混在させた実施例5〜7では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。 検出用レクチンとしてのBiotin−ECAと、競合用レクチンとしてのGSL−IIとが混在する系(実施例8)、あるいは競合用レクチンが非混在の系(比較例8)において、ガラクトース率が異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例8では、ガラクトース率が82%と75%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するN−アセチルグルコサミン結合レクチン(GSL−II)を混在させた実施例8では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。 検出用レクチンとしてのBiotin−ECAと、競合用レクチンとしてのSSAとが混在する系(実施例9)、あるいは競合用レクチンが非混在の系(比較例10)において、シアル酸率が異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例10では、シアル酸率が0%と7%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するシアル酸結合レクチン(SSA)を混在させた実施例9では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。 検出用レクチンとしてのBiotin−SSAと、競合用レクチンとしてのBPLとが混在する系(実施例10)、あるいは競合用レクチンが非混在の系(比較例11)において、シアル酸率が異なるムチンを検出したときの吸光度を示すグラフである。競合用レクチンが非混在の比較例11では、シアル酸率が100%と81%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチン(BPL)を混在させた実施例10では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。
以下に、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。本発明の糖タンパク質の検出方法は、糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片(以下、単に「糖タンパク質等」ということがある)、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを反応させ、反応した検出用レクチンを検出することを含む。
本発明の検出対象となる糖鎖には、N結合型糖鎖及びO結合型糖鎖が含まれる。N結合型糖鎖には、下記式:
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Fucはフコースを意味する〕
で示されるコア構造に、シアル酸、ガラクトース及びN−アセチルグルコサミンで構成される側鎖(N−アセチルラクトサミン構造、ポリN−アセチルラクトサミン構造)が1〜6本付加した複合型糖鎖、前記コア構造にマンノースのみにより構成されるオリゴ糖が付加された高マンノース型糖鎖、並びに複合型と高マンノース型とが混成した混成型糖鎖が含まれる。
本発明は、特に複合型糖鎖の検出に向いている。複合型糖鎖を有する糖タンパク質の例を以下に示す。
下記式:
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトース、Neu5AcはN―アセチルノイラミン酸を意味する〕
を有するトランスフェリン(ヒト)。
下記式:
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトース、Neu5AcはN―アセチルノイラミン酸を意味する〕
を有するハプトグロビン(ヒト)。
下記式:
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトース、Fucはフコースを意味する〕
を有するIgG(ヒト)。
本発明は、O結合型糖鎖の検出にも向いている。O結合型糖鎖を有する糖タンパク質の例を以下に示す。下記式:
〔式中、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン、Galはガラクトース、Fucはフコース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する〕
を有するムチン(ブタ)。
下記式:
〔式中、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン、Galはガラクトース、Fucはフコース、Neu5AcはN―アセチルノイラミン酸、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する〕
を有するムチン(ウシ)。
本発明の検出対象となる糖残基には、シアル酸、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、フコース等が含まれる。これらの糖残基は、健常者が通常有する糖鎖構造に対して付加するものであっても、又は欠損するものでもあってもよい。
糖タンパク質は、糖タンパク質の糖鎖構造の変化と疾患や異常との関係が示唆されるものが好ましい。そのような例には、ハプトグロビン、トランスフェリン、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ−GTP)、IgG、IgA、IgM、α1−酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、hCG(ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン)、CEA(癌胎児性抗原)、PSA(前立腺特異抗原)等が挙げられる。
糖タンパク質の出所は、特に限定されない。例えば、血液、血漿、血清、涙、唾液、体液、乳汁、尿、細胞の培養上清、形質転換動物からの分泌物等が挙げられる。
本発明の検出方法に供する試料は、糖タンパク質以外に、その断片であっても糖鎖を有する限り、使用可能である。そのような断片には、糖ペプチドや糖鎖自体が挙げられる。その場合、糖タンパク質を、予め糖ペプチドや糖鎖の状態に加工してから使用する。
前記糖タンパク質等は、必ずしも固定化する必要はないが、固定化する方が好ましい。糖タンパク質を固定化するための担体は、例えばガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、メタアクリレート、ラテックス、アガロース、セルロース、デキストラン、デンプン、デキストリン、シリカゲル、多孔性セラミックス等の素材できたビーズ、ディスク、スティック、チューブ、マイクロタイタープレート、マイクロセンサーチップ、マイクロアレイ等が挙げられる。
前記糖タンパク質等の担体への固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。
前記糖タンパク質等は、その抗体を介して担体に固定化されていてもよい。抗体の由来は限定されない。抗体には、ヒト、マウス、ウサギ等の哺乳動物に抗原としての糖タンパク質を免疫することにより得られる抗血清や腹水液、並びにこれらを塩析、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等の汎用の方法で精製したポリクローナル抗体が含まれる。さらに、抗体には、ヒトや動物の血清等から調製したタンパク質で免疫されたマウスの抗体産生リンパ細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって、該糖タンパク質を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得、次いで該ハイブリドーマ又はそれに由来する細胞株を培養し、その培養物から採取されるモノクローナル抗体が含まれる。汎用の糖タンパク質については、その抗体が試薬として販売されており、本発明ではそれらを制限なく使用可能である。
抗体は、抗体分子自体でよく、また、抗体を酵素処理して得られるFab、Fab’、F(ab’)2等の抗原認識部位を含む活性フラグメントでもよい。
上記の抗体等が検出用レクチンや競合用レクチンと反応する糖鎖を有する場合は、適宜、抗体から糖鎖を除去する。糖鎖を持たない抗体を取得するには、モノクローナル抗体をノイラミニダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−グリカナーゼ等の糖鎖分解酵素で処理する、抗体のFc部をペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素により限定加水分解する、過ヨウ素酸水溶液で糖鎖構造を酸化分解する、ハイブリドーマ又はハイブリドーマ由来の動物細胞の培地に糖鎖合成阻害剤を添加して培養する方法が挙げられる。
上記抗体の担体への固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。糖タンパク質に対する抗体(例えば抗トランスフェリン抗体)の溶液を担体に添加することにより、担体に抗体を結合させる。
抗体の結合した担体に糖タンパク質等の溶液を添加することにより、糖タンパク質を抗原−抗体反応で結合させる。
本発明で使用する検出用レクチンとは、糖タンパク質の糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有するレクチンを意味する。
競合用レクチンとは、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有するレクチン、又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有するレクチンを意味する。競合用レクチンは、糖鎖変化と関連する疾患等に応じて決まる。例えば、特発性正常圧水頭症患者から採取したトランスフェリンに結合する糖鎖は、シアル酸とガラクトースの2個の糖残基の欠損によって、N−アセチルグルコサミン残基が露出している。
検出用及び競合用レクチンの親和性を、赤血球凝集を阻害する糖の最小阻害濃度で表すと、通常100mM以下、好ましくは10mM以下である。最小阻害濃度とは、糖が凝集反応を阻止するために要する最小濃度を意味する。最小阻害濃度が小さいほど、レクチンに対する親和性が高いことを示す。赤血球凝集反応阻害試験法は、特許4514163(フコースα1→6特異的レクチン)に記載されている方法で行うことができる。特許4514163を参照のためにここに編入する。
シアル酸に親和性を有するレクチンの例として、ニホンニワトコレクチン(SSA)、セイヨウニワトコレクチン(SNA)、イヌエンジュレクチン(MAM)、ヤナギマツタケレクチン(ACG)、キカラスウリレクチン(TJA−I)、ムジナタケレクチン(PVL)、コムギ胚芽レクチン(WGA)等が挙げられる。好ましくは、ニホンニワトコレクチン(SSA)、セイヨウニワトコレクチン(SNA)、及びキカラスウリレクチン(TJA−I)である。
ガラクトースに親和性を有するレクチンの例としては、デイゴマメレクチン(ECA)、ニガウリレクチン(MCL)、ムラサキモクワンジュレクチン(BPL)、ヒママメレクチン(RCA120)、ピーナッツレクチン(PNA)が挙げられる。好ましくは、デイゴマメレクチン(ECA)、ニガウリレクチン(MCL)、及びムラサキモクワンジュレクチン(BPL)である。
マンノースに親和性を有するレクチンの例としては、レンズマメレクチン(LCA)、コンカナバリンA(ConA)、及びエンドウマメレクチン(PSA)が挙げられる。
N−アセチルグルコサミンに親和性を有するレクチンの例としては、バンデリアマメレクチン−II(GSL−II)、ムジナタケレクチン(PVL)、及びコムギ胚芽レクチン(WGA)が挙げられる。好ましくは、バンデリアマメレクチン−II(GSL−II)である。
フコースと親和性を有するレクチンとして、ハリエニシダレクチン(UEA−1)、ミヤコグサレクチン(LTA)、レンズマメレクチン(LCA)、エンドウマメレクチン(PSA)、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、ラッパスイセンレクチン(NPA)、ソラマメレクチン(VFA)、麹菌レクチン(AOL)、及びツチスギタケレクチン(PTL)が挙げられる。
シアル酸欠損を測定する組み合わせとして、検出用レクチンにシアル酸と親和性を有するレクチン、競合用レクチンにガラクトースと親和性を有するレクチンが好ましい。シアル酸付加を測定する組み合わせとして、検出用レクチンにガラクトースと親和性を有するレクチン、競合用レクチンにシアル酸と親和性を有するレクチンが好ましい。また、ガラクトース欠損を測定する組み合わせとして、検出用レクチンにガラクトースと親和性を有するレクチン、競合用レクチンにN−アセチルグルコサミンと親和性を有するレクチンが好ましい。
検出用レクチンは、当分野で公知の標識手段で標識されていることが好ましい。標識手段の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンBイソチオシアネート(TRITC)、ローダミン、CyDye等の蛍光化合物、125I、H、14C等の放射性物質、金ゾル、銀ゾル、白金ゾル等の金属コロイド、顔料で着色されたポリスチレンラッテクス等の合成ラテックス、ビオチンやジゴキシゲニンを挙げることができる。
標識手段が酵素の場合、酵素活性を測定するために発色基質が用いられる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の基質としては3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)、2,2’−アジノジ−[3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸]アンモニウム塩−H、5−アミノサリチル酸−H、又はo−フェニレンジアミン(OPD)−H、アルカリフォスターゼの基質としてはp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)又は4−メチルウンベリフェリルホスフェート、そしてβ−D−ガラクトシダーゼの基質としてはo−ニトロフェノール−β−D−ガラクトピラノシドを挙げることができる。
標識手段は、常法により検出用レクチンへ結合することができる。特に、標識をアビジン又はストレプトアビジン−ビオチン系を介して結合することは、感度が高くなる点で好ましい。
固定化された糖タンパク質、検出用レクチン及び競合用レクチンを反応させるために、検出用レクチン及び競合用レクチンを混在させた系に糖タンパク質を曝す。糖タンパク質と検出用レクチン又は競合用レクチンとの反応順序に特に限定はない。すなわち、同時に反応させても、任意の順序で反応させてもよい。好ましくは、固定化された糖タンパク質と競合用レクチンとを反応させた後、検出用レクチンを反応させる。
上記反応の後、検出用レクチンを検出することにより、糖タンパク質の糖鎖量を測定する。検出用レクチンの検出方法は、特に限定されず、当業者に周知の方法で使用することができる。検出方法の例としては、レクチンELISA、レクチン染色のように酵素等の発色や発光、蛍光を検出する方法、糖鎖アレイ、レクチンアレイのようにエバネッセント波を検出する方法、水晶発振子マイクロバランス法や表面プラズモン共鳴法のように質量変化を検出する方法等を挙げることができる。表面プラズモン共鳴法は、担体に固定化した糖タンパク質量、及び、糖タンパク質に結合した検出レクチン量を多段階法で同時に測定できるので利便である。
標識した検出レクチンの標識物量(吸光度等)等で表わした糖鎖量は、標準試料のものと対比することによって、その変化を察知することができる。例えば、検体の糖タンパク質濃度を一定値に調整すると、検出レクチンの測定結果は糖タンパク質に付加した特定の糖鎖量の変化を反映することになる。糖タンパク質の糖鎖量を健常者と患者との間で比較することにより、糖鎖変化に関連する疾患を従来よりも高い精度で診断できる。
糖残基量の変化率(糖付加や糖欠損の度合い)を定量化することは、糖鎖変化と関連する疾患の診断、治療及び予防、研究等に大いに役立つ。糖の付加率を求めるには、予め、糖鎖末端の全位置に目的とする糖残基が付加した参照試料(例えば、健常者の糖タンパク質や市販又は合成した試薬)の全糖残基量を本発明の検出方法で測定する。糖残基量を、標識した検出レクチンの標識物量(吸光度等)で表わす。次いで、未知試料の糖残基量を本発明の検出方法で測定する。未知試料で測定された糖残基量を全糖残基量で除した値が糖付加率となる。糖付加率を1から減じたものが糖欠損率となる。
糖鎖量の変化率は、測定試料の糖タンパク質量に対する糖鎖量の比で表してもよい。まず、糖タンパク質の量を吸光度、酵素結合免疫吸着法、ブラッドフォード法、ローリー法等で求めておく。
糖付加率又は糖欠損率の導出に検量線を使用することは、測定作業の効率化の点で有利である。予め、目的糖残基量が既知で、糖残基量の異なる複数の標準試料を、本発明の検出方法で測定し、目的糖残基量と検出レクチンの標識物量(吸光度等)との関係を求め、検量線を作成しておく。目的糖残基量が未知の試料の標識物量(吸光度等)を本発明の検出方法で求め、標識物量を前記検量線に当てはめる。
本発明は、また、糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを含む、糖鎖変化と関連する疾患の診断薬又は診断薬キット、あるいは、研究用試薬又は研究用キットを提供する。
上記診断薬又は診断薬キットあるいは研究用試薬又は研究用キットには、適宜、標識用化合物、酵素とその発色基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質、標準タンパク質、緩衝液、溶解剤、洗浄剤、反応停止剤、プレート等の診断薬キットに使われるに公知のものを含む。
糖鎖変化と関連する疾患は、特に限定されない。例えば、シアル酸残基の関与が指摘される疾患の例としては、アルツハイマー病、心臓血管疾患、アルコール依存症、IgA腎症、肝癌、前立腺癌、卵巣癌、心筋梗塞、繊維症、膵炎、糖尿病、糖タンパク質糖鎖転移不全症等がある。ガラクトース残基の関与が指摘される疾患の例としては、慢性関節リウマチ、肝癌等がある。N−アセチルグルコサミン残基の関与が指摘される疾患の例としては、特発性正常圧水頭症、肝癌等がある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〜3、比較例1〜3〕シアル酸率の異なる糖鎖を有するトランスフェリンの判別(1)
実施例1〜3では、マイクロタイタープレートに固相化したシアル酸率の異なるトランスフェリンを、検出用レクチン及び競合用レクチン(表2に示すガラクトース結合レクチン)が混在する系で検出した。比較例1では、前記トランスフェリンを検出用レクチンのみが存在する系で検出した。比較例2〜3では、検出用レクチン及び非競合用レクチン(表2に示すマンノース結合レクチン)が混在する系で検出した。具体的な手順を以下に示す。
1.レクチンの準備
ビオチン標識ニホンニワトコレクチン(Biotin−SSA)、レンズマメレクチン(LCA)、デイゴマメレクチン(ECA)及びコンカナバリンA(ConA)は(株)J−オイルミルズ製を使用し、キカラスウリレクチン−I(TJA−I)を生化学バイオビジネス社より、そしてニガウリレクチン(MCL)をシグマ社より購入した。
セイヨウニワトコレクチン(SNA)を、Broekaert WF,et.al.,Biochem J.1984、221、163−9に記載の精製方法に従って得た。ムラサキモクワンジュレクチン(BPL)を、Yamamoto K,,et.al.,FEBS Lett.1991、281、258−62に記載の精製方法に従って得た。
上記SNA及びTJA−Iのビオチニル化を、Gabius,H.J.Lectins and Glycobiology(ISBN:0387562117/0−387−56211−7)P.142に記載の方法に従って行った。ビオチン標識したSNA及びTJA−Iを、それぞれBiotin−SNA及びBiotin−TJA−Iと略す。
2.シアル酸率の異なるトランスフェリンの調製
ヒト由来トランスフェリン(シグマ社製)を、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で2mg/mlになるように溶解した後、ここにClostridium perfringens由来のノイラミニダーゼ(和光純薬社製)を5mU/mgトランスフェリンになるように添加した。溶液を37℃の水浴で保温し、時間0分、1分、2分、5分、15分又は18時間後に一部をサンプリングした後、100℃で1分間加熱して酵素反応を停止した。ノイラミニダーゼ未添加の試料は、水浴で保温せずに100℃で1分間加熱し、ノイラミニダーゼ未処理とした。
上記で得たトランスフェリン溶液をそれぞれ等電点電気泳動(Phast System :GEヘルスケア・ジャパン社製)をかけて、シアル酸数の異なるトランスフェリンに分離した。分離したトランスフェリンをタンパク染色後、デンシトメーター(アトー社製)で染色強度を測定した。ノイラミニダーゼ未処理のトランスフェリンのシアル酸量を100%として、染色強度から算出されたシアル酸量をトランスフェリンのシアル酸率(%)とした。ノイラミニダーゼ処理時間とシアル酸率との関係を表1に示す。上記シアル酸率の異なるトランスフェリンを、使用時まで冷凍保存した。
3.レクチンELISA
シアル酸率の異なるトランスフェリンを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度5μg/mlにて添加した溶液50μlを、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)のウエルに添加した。マイクロタイタープレートを37℃で2時間、放置した後、250μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回、洗浄した。BSA(牛血清アルブミン、シグマ社製)2gをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)198mlに溶解して得た1%BSA溶液(以下、「1%BSA−PBS」と略す)を150μl添加して、37℃で2時間おくことによりブロッキングを行った。
Tween20(ナカライテスク社製)1gをPBS2000mlに添加した溶液(以下、「PBS−Tween20」と略す)250μlでウエルを3回洗浄後、前記ガラクトース結合レクチン又は前記マンノース結合レクチンを濃度1mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加して、室温で1時間放置した。
前記検出用レクチンを濃度12.5μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間放置した。ウエルを250μlのPBS−Tween20で3回洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(ベクター社製)を濃度1μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを50μl添加して、室温で1時間放置した。ウエルを250μlのPBS−Tween20で3回洗浄後、TMB試薬(KPL社製)50μlを添加した。室温で5分放置後、1M リン酸を50μl添加して反応を停止した。マイクロプレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、DSファーマバイオメディカル社製)で波長450nmの吸光度で測定した。
検出用レクチンとしてのBiotin−SNAに競合用レクチンとしてのECA(実施例1)、MCL(実施例2)又はBPL(実施例3)が混在する系において、シアル酸率の異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度の変化を図1に示す。また、競合用レクチンが非混在(比較例1)の系の吸光度の変化も図1に示す。
図1において、検出用レクチンのみが存在する比較例1では、トランスフェリンのシアル酸率が低い場合は、シアル酸率に依存して吸光度が増大する。しかし、シアル酸率が73%以上となると、吸光度はほぼ一定となる。すなわち、競合用レクチンが非混在の系では、シアル酸率が73%以上のトランスフェリンのシアル酸率の違いを区別できない。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチンが混在する実施例1〜3では、シアル酸率73%以上であっても、シアル酸率に依存して吸光度が増加している。検出用レクチンと競合するレクチンが存在する実施例1〜3では、シアル酸率が高いトランスフェリンのシアル酸率の違いを容易に区別できる。
シアル酸率が91%及び73%のトランスフェリンの吸光度比(OD91%/OD73%)を、測定3回の平均値と標準偏差で表2に示す。さらに、それぞれの検出用レクチンにおいて、比較例1との有意差検定(t検定)の結果を示す。表中、**はp<0.01を意味し、そして*はp<0.05を意味する。
表2で、比較例1〜3の吸光度比は1に近い。一方、実施例1〜3の吸光度比は、1よりも有意に増大している。このことから、検出用レクチンに競合するレクチンを混在させた実施例のみで、トランスフェリンのシアル酸率の変化、特に高いシアル酸率での差を判別しやすくなることが実証された。
〔実施例4、比較例4〕シアル酸率の異なる糖鎖を有するトランスフェリンの判別(2)
シアル酸率の異なるトランスフェリンを、抗体を介して固相化する以外は、実施例1と同様の手順で、トランスフェリンを競合用レクチン及び検出用レクチンが混在する系で反応させた。比較例4では、競合用レクチンが非混在の系で反応させた。以下に、具体的な手順を示す。
1.レクチンELISA
抗ヒトトランスフェリン抗体(LNM社製)を0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度5μg/mlにて溶かした溶液を50μl、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)のウエルに添加し、4℃で一晩、固相化させた。次いで、ブロッキングを実施例1と同様に行った。
固相化マイクロタイタープレートのウエルを、250μlのPBS−Tween20で3回、洗浄した。シアル酸率の異なるトランスフェリンを濃度4μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを50μl添加し、室温で1時間保温した。
ウエルを250μlのPBS−Tween20で3回、洗浄後、ECAを濃度1mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加し、室温で1時間保温した。更に、Biotin−SSAを濃度12.5μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間反応させた。HRP反応と発色を実施例1と同様に行った。
検出用レクチンに競合用レクチンとしてのECAが混在する系において、シアル酸率が73%及び91%のトランスフェリンをそれぞれ検出したときの吸光度を図2に示す。また、競合用レクチンが非混在の系(比較例4)の吸光度も図2に示す。吸光度の有意差検定を行った。**は、P<0.01を意味する。
図2に示すとおり、競合用レクチンが非混在で反応させた比較例4では、シアル酸率91%と73%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンに競合するガラクトース結合レクチンが混在する実施例4では、吸光度に有意差が見られた(p<0.01)。本発明によれば、トランスフェリンを、抗体を介して固相化した場合でも、高シアル酸率のトランスフェリン同士を判別できることが判明した。
〔実施例5〜7、比較例5〜7〕シアル酸率の異なる糖鎖を有するハプトグロビンの判別
実施例5〜7では、マイクロタイタープレートに固相化したシアル酸率の異なるハプトグロビンを、検出用レクチン及び競合用レクチン(表4に示すガラクトース結合レクチン)が混在する系で検出した。比較例5では、前記ハプトグロビンを検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系で検出した。比較例6〜7では、検出用レクチン及び非競合用レクチン(表4に示すマンノース結合レクチン)が混在する系で検出した。以下に、具体的な手順を示す。
1.シアル酸率の異なるハプトグロビンの調製
ヒト由来ハプトグロビン(BIODESIGN社製)を、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に2mg/mlになるように溶解した後、ここにArthrobacter ureafaciens由来のノイラミニダーゼ(ナカライテスク社製)を0.5mU/mgハプトグロビンになるように添加した。溶液を37℃の水浴で保温し、時間0分又は30分にサンプリングした後、10倍量の20mM炭酸ナトリウム溶液を加えて酵素反応を停止した。ノイラミニダーゼ未添加の試料は、水浴で保温せずに10倍量の20mM炭酸ナトリウム溶液を加えてノイラミニダーゼ未処理とした。
上記で得たハプトグロビンの単糖組成分析を、ABEE糖組成分析キット プラスS((株)J−オイルミルズ製)を用いて行った。ノイラミニダーゼ未処理のハプトグロビンのシアル酸量を100%として、ノイラミニダーゼ処理のハプトグロビンのシアル酸率(%)として算出した。ノイラミニダーゼ処理時間とシアル酸率との関係を表3に示す。上記シアル酸率の異なるハプトグロビンを使用時まで冷凍保存した。
2.レクチンELISA
シアル酸率の異なるハプトグロビンを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度5μg/mlにて添加した溶液を50μl、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)に添加し、4℃で一晩、固相化させた。次いで、ブロッキングを実施例1と同様に行った。
250μlのPBS−Tween20でウエルを3回洗浄後、前記ガラクトース結合レクチン又は前記マンノース結合レクチンを濃度1mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加し、室温で1時間放置した。
前記検出用レクチンを濃度12.5μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間放置した。HRP反応と発色を実施例1と同様に行った。
検出用レクチンとしてのBiotin−SSAに競合用レクチンとしてのECA(実施例5)、MCL(実施例6)又はBPL(実施例7)が混在する系において、シアル酸率の異なるハプトグロビンを検出したときの吸光度を図3に示す。また、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系(比較例5)の吸光度も図3に示す。シアル酸率100%と85%のハプトグロビンの吸光度の有意差検定を行った。**は、P<0.01を意味する。
図3において、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の比較例5では、シアル酸率100%と85%のハプトグロビンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチン(ECA、MCL又はBPL)を混在させた実施例5〜7では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。以上のことから、本発明は、トランスフェリンだけでなく、ハプトグロビンのシアル酸量の判別にも応用できることが実証された。
シアル酸付加率100%と85%のハプトグロビンの吸光度比(OD100%/OD85%)を、測定3回の平均値と標準偏差で表4に示す。さらに、比較例5に対する有意差検定(t検定)の結果を示す。表中、**はp<0.01を意味し、そして*はp<0.05を意味する。
表4で、比較例5〜7の吸光度比は1に近い。一方、実施例5〜7の吸光度比は、1よりも有意に増大している。このことから、ハプトグロビンは、トランスフェリンと同様に、検出用レクチンに競合するレクチンを混在させた実施例のみで、ハプトグロビンのシアル酸率の変化、特に高いシアル酸率での差を判別しやすくなることが実証された。
〔実施例8、比較例8〜9〕ガラクトース率の異なる糖鎖を有するトランスフェリンの判別
マイクロタイタープレートに固相化したガラクトース率の異なるトランスフェリンを、検出用レクチンに競合用レクチン(表6に示すN−アセチルグルコサミン結合レクチン)が混在する系で検出した。比較例8では、前記トランスフェリンを検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系で検出した。比較例9では、検出用レクチン及び非競合用レクチン(表6に示すマンノース結合レクチン)が混在する系で検出した。具体的な手順を以下に示す。
1.試薬の準備
ビオチン標識デイゴマメレクチン(Biotin−ECA)は(株)J−オイルミルズ製を使用した。バンデリアマメレクチン−II(GSL−II)をDelmotte FM,et.al.,Eur J Biochem.1980、112、219−23に記載の精製方法に従って得た。
2.ガラクトース率の異なるトランスフェリンの調製
ヒト由来トランスフェリン(シグマ社製)を、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に2mg/mlになるように溶解した後、ここにClostridium perfringens由来ノイラミニダーゼ(和光純薬社製)を10mU/mgトランスフェリンになるように添加した。この溶液を37℃で一晩保温した。
次に、連鎖球菌由来β−ガラクトシダーゼ(生化学バイオビジネス社製)を0.5 mU/mgトランスフェリンになるように添加した。溶液を37℃の水浴で保温し、1分又は8分後に一部をサンプリングした後、等量の20mM炭酸ナトリウム溶液を添加して酵素反応を停止した。β−ガラクトシダーゼ未添加の試料は、水浴で保温せずに等量の20mM炭酸ナトリウム溶液を添加してβ−ガラクトシダーゼ未処理とした。
ガラクトース率の異なるトランスフェリンの単糖組成分析を、ABEE糖組成分析キット プラスS((株)J−オイルミルズ製)を用いて行った。β−ガラクトシダーゼ未処理のトランスフェリンのガラクトース量を100%として、β−ガラクトシダーゼ処理のトランスフェリンのガラクトース率(%)を算出した。β−ガラクトシダーゼ処理時間とガラクトース率との関係を表5に示す。上記ガラクトース率の異なるトランスフェリンを使用時まで冷凍保存した。
3.レクチンELISA
ガラクトース率の異なるトランスフェリンを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度5μg/mlにて添加した溶液を50μl、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)に添加し、4℃で一晩、固相化させた。次いで、ブロッキングを実施例1と同様に行った。
250μlのPBS−Tween20でウエルを3回洗浄後、前記N−アセチルグルコサミン結合レクチン又は前記マンノース結合レクチンを濃度1mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加し、室温で1時間放置した。
Biotin−ECAを濃度5μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間保温した。HRP反応と発色を実施例1と同様に行った。
検出用レクチンとしてのBiotin−ECAに競合用レクチンとしてのGSL−IIが混在する系において、ガラクトース率が異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度を図4に示す。また、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系(比較例8)の吸光度も図4に示す。ガラクトース率が82%と75%のトランスフェリンの吸光度の有意差検定を行った。**は、P<0.01を意味する。
図4において、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系である比較例8では、ガラクトース率が82%と75%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するN−アセチルグルコサミン結合レクチン(GSL−II)を混在させた実施例8では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。以上のことから、本発明は、トランスフェリンのシアル酸だけでなく、ガラクトース量の判別にも応用できることが実証された。
ガラクトース率が82%と75%のトランスフェリンの吸光度比(OD82%/OD75%)を、3回の平均値と標準偏差で表6に示す。さらに、比較例8との有意差検定(t検定)の結果を示す。表中、**はp<0.01を意味する。
表6で、比較例8〜9の吸光度比は1に近い。一方、実施例8の吸光度比は1よりも有意に増大している。このことから、トランスフェリンのガラクトース率の判別は、シアル酸率と同様に、検出用レクチンと競合するレクチンを混在させることで容易になることが実証された。
〔実施例9、比較例10〕シアル酸率の異なる糖鎖を有するトランスフェリンの判別(3)
マイクロタイタープレートに固相化したシアル酸率の異なるトランスフェリンを、検出用レクチンとしてのガラクトース結合レクチンに競合用レクチンとしてのシアル酸結合レクチンが混在する系で検出した。比較例10では、前記トランスフェリンを検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系で検出した。具体的な手順を以下に示す。
1.試薬の準備
ニホンニワトコレクチン(SSA)は(株)J−オイルミルズ製を使用した。
2.シアル酸率の異なるトランスフェリンの調製
ヒト由来トランスフェリン(シグマ社製)を、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で2mg/mlになるように溶解した後、ここにArthrobacter ureafaciens由来のノイラミニダーゼ(ナカライテスク社製)を5mU/mgトランスフェリンになるように添加した。溶液を37℃の水浴で3時間又は20時間で一部をサンプリングした後、10倍量の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を加え、酵素反応を停止した。ノイラミニダーゼ未添加の試料は、水浴で保温せずに10倍量の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を加えノイラミニダーゼ未処理とした。
シアル酸率の異なるトランスフェリンの単糖組成分析を、ABEE糖組成分析キット プラスS((株)J−オイルミルズ製)を用いて行った。ノイラミニダーゼ未処理のトランスフェリンのシアル酸量を100%として、ノイラミニダーゼ処理のトランスフェリンのシアル酸率(%)を算出した。ノイラミニダーゼ処理時間とシアル酸率との関係を表7に示す。上記シアル酸率の異なるトランスフェリンを使用時まで冷凍保存した。
3.レクチンELISA
シアル酸率の異なるトランスフェリンを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度5μg/mlにて添加した溶液を50μl、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)に添加し、37℃で2時間、固相化させた。次いで、ブロッキングを実施例1と同様に行った。
250μlのPBS−Tween20でウエルを3回洗浄後、前記ニホンニワトコレクチン(SSA)を濃度0.13mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加し、室温で1時間放置した。
Biotin−ECAを濃度3μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間保温した。HRP反応と発色を実施例1と同様に行った。
検出用レクチンとしてのBiotin−ECAに競合用レクチンとしてのSSAが混在する系において、シアル酸率が異なるトランスフェリンを検出したときの吸光度を図5に示す。また、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系(比較例10)の吸光度も図5に示す。シアル酸率が0%と7%のトランスフェリンの吸光度の有意差検定を行った。**は、P<0.01を意味する。
図5において、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系である比較例10では、シアル酸率が0%と7%のトランスフェリンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンに競合用レクチンでのニホンニワトコレクチン(SSA)を混在させた実施例9では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。本発明の方法によりシアル酸率が0%と7%のトランスフェリンを区別できることは、本発明がシアル酸の微量な欠損だけでなく、微量な増加の判別にも応用できることを証明する。
〔実施例10、比較例11〕シアル酸率の異なる糖鎖を有するムチンの判別
実施例10では、マイクロタイタープレートに固相化したシアル酸率の異なるムチンを、検出用レクチン(シアル酸結合レクチン)に競合用レクチン(ガラクトース結合レクチン)が混在する系で検出した。比較例11では、前記ムチンを検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系で検出した。以下に、具体的な手順を示す。
1.シアル酸率の異なるムチンの調製
ムチン(ブタ胃由来 シグマ社製)を、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に2mg/mlになるように溶解した後、ここにClostridium perfringens由来ノイラミニダーゼ(和光純薬社製)を0.1mU/mgムチンになるように添加した。溶液を37℃で17時間保温した。ノイラミニダーゼ未添加の試料も同様の処理を行い、これをノイラミニダーゼ未処理とした。
上記で得たムチンのグリコシド結合型シアル酸を、生化学実験講座4 糖質の化学 下巻 P.382に記載の方法に従って定量した。ノイラミニダーゼ未処理のムチンのシアル酸量を100%として、ノイラミニダーゼ処理のムチンのシアル酸率(%)を算出した。ノイラミニダーゼ処理とシアル酸率との関係を表8に示す。
2.レクチンELISA
シアル酸率の異なるムチンを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に濃度10μg/mlにて添加した溶液を50μl、マイクロタイタープレート(ヌンク社製)に添加し、37℃で2時間固相化させた。次いで、ブロッキングを実施例1と同様に行った。
250μlのPBS−Tween20でウエルを3回洗浄後、BPLを濃度0.25mg/mlにて含有する1%BSA−PBSを40μl添加し、室温で1時間放置した。更に、Biotin−SSAを濃度12.5μg/mlにて含有する1%BSA−PBSを10μl添加し、室温で1時間反応させた。HRP反応と発色を実施例1と同様に行った。
検出用レクチンとしてのBiotin−SSAに競合用レクチンとしてのBPL(実施例10)が混在する系において、シアル酸率の異なるムチンを検出したときの吸光度を図6に示す。また、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の系(比較例11)の吸光度も図6に示す。シアル酸率100%と81%のムチンの吸光度の有意差検定を行った。**は、P<0.01を意味する。
図6において、検出用レクチンのみで競合用レクチンが非混在の比較例11では、シアル酸率100%と81%のムチンの吸光度に有意差が見られない。一方、検出用レクチンと競合するガラクトース結合レクチン(BPL)を混在させた実施例10では、吸光度に有意差が見られた(P<0.01)。以上のことから、本発明は、N結合型糖鎖だけでなく、O結合型糖鎖のシアル酸量の判別にも応用できることが実証された。

Claims (7)

  1. 糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片、前記糖鎖末端に位置する検出しようとする糖残基と親和性を有する検出用レクチン、及び、前記糖残基を含む少なくとも1個の糖残基の欠損によって露出する糖残基と親和性を有する競合用レクチン又は前記糖残基に付加した前記糖残基とは異なる糖残基と親和性を有する競合用レクチンを混在反応させ、反応した検出用レクチンを検出することを含む、糖タンパク質の検出方法。
  2. 前記糖鎖が複合型糖鎖又はO結合型糖鎖である、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
  3. 前記糖タンパク質は、ハプトグロビン、トランスフェリン、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ−GTP)、IgG、IgA、IgM、α1−酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、hCG(ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン)、CEA(癌胎児性抗原)、及びPSA(前立腺特異抗原)からなる群から選ばれる一種である、請求項1又は2に記載の糖タンパク質の検出方法。
  4. 前記糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片は、担体に固定化されている、請求項1〜3のいずれかに記載の糖タンパク質の検出方法。
  5. 前記糖タンパク質及び/又は糖鎖を有するその断片は、その抗体を介して前記担体に固定化されている、請求項4に記載の糖タンパク質の検出方法。
  6. 前記検出用レクチンは、標識されている、請求項1〜5のいずれかに記載の糖タンパク質の検出方法。
  7. さらに、前記検出しようとする糖残基の全糖鎖又は糖タンパク質に対する付加率又は欠損率を求めることを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の糖タンパク質の検出方法。
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