以下、本発明の一実施形態について、図1から図15を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る医療器具とともに使用される医療用マニピュレータ100の一例を示す全体図である。医療用マニピュレータ100は、マスタスレーブ型の遠隔操作システムを有する。医療用マニピュレータ100は、マスタマニピュレータ101と、スレーブマニピュレータ104と、制御装置106と、を備える。
マスタマニピュレータ101は、術者Opの操作の動きをスレーブマニピュレータ104に伝達するマスタとして機能する。マスタマニピュレータ101は、液晶ディスプレイなどの表示部102と、術者Opが把持して操作を行うマスタアーム103と、を備える。マスタアーム3は、多軸動作可能な公知の構成を有する。マスタアーム103に対してなされる操作は、制御装置106に入力される。
制御装置106は、マスタマニピュレータ101からの入力を受け付けるマスタ制御部(不図示)と、スレーブマニピュレータ104へ駆動信号を出力するスレーブ制御部(不図示)と、を備える。マスタ制御部は、マスタマニピュレータ101からの入力に基づいて、スレーブマニピュレータ104を動作させるための操作指令を生成し、スレーブ制御部に出力する。スレーブ制御部は、マスタ制御部から出力された操作指令に基づいて、スレーブマニピュレータ104を駆動させるための駆動信号を生成し、スレーブマニピュレータ104に出力する。
スレーブマニピュレータ104は、患者Pが載置される手術台108に設置されている。スレーブマニピュレータ104は、スレーブ制御部から出力された駆動信号に従って動作するスレーブアーム105を備える。スレーブアーム105は、複数の多自由度関節を有して構成されており、多軸動作可能である。各多自由度関節は、図示しない動力部によって個別に駆動される。動力部としては、例えばインクリメンタルエンコーダや減速器などを備えたサーボ機構を有するモータ(サーボモータ)などを用いることができる。
スレーブマニピュレータ104には、軟性の内視鏡110が取り付けられている。内視鏡110は、スレーブアーム105の先端部に支持されて、患者Pの体内に挿入される。内視鏡110には、医療器具を挿通可能なチャンネル(不図示)が設けられている。本実施形態に係る医療器具は、内視鏡110の基端側に設けられた挿入口111からチャンネルに挿通されて使用される。また、内視鏡110には、体内の映像を取得する観察手段が設けられている。観察手段により取得された映像は、表示部102に表示される。
次に、本実施形態に係る医療器具1について説明する。図2は、医療器具1の先端側を示す斜視図である。医療器具1は、長手軸O1に沿って長尺に形成されている。
以下の説明では、医療器具1の長手軸O1において、使用時に処置対象部位に近い側を「先端側」と称し、先端側の反対側を「基端側」と称する。また、部材において先端側の端部を「先端部」と称し、基端側の端部を「基端部」と称する。加えて、長手軸O1に直交しかつ互いに直交する2つの方向を、X1方向およびY1方向と称する。また、X1方向と反対の方向をX2方向と称し、Y1方向と反対の方向をY2方向と称する。
図2に示すように、医療器具1は、エンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10に接続された先端腕部(第一腕部)20と、先端腕部20の基端側に接続された先端関節部(第一関節部)30と、先端関節部30の基端側に接続された中間腕部(第二腕部)40と、中間腕部40の基端側に接続された本体50と、を備える。また、本実施形態では、中間腕部40は、先端関節部30に接続された腕部(第三腕部)60と、腕部60の基端側に接続された中間関節部(第二関節部)70と、中間関節部70の基端側と本体50とを接続している腕部(第四腕部)80と、を有する。腕部80は、基端関節部90を有する。医療器具1において、エンドエフェクタ10、先端腕部20、先端関節部30、腕部60、中間関節部70、基端関節部90(腕部80)、および本体50は、長手軸O1に沿って先端側から基端側にこの順で配置されている。また、先端関節部30、中間関節部70、および基端関節部90は、それぞれ独立して屈曲動作を行う。
図3は、エンドエフェクタ10および先端腕部20の構成を示す平面図である。図4は、図3のA−A線における断面図である。本実施形態では、医療器具1が把持鉗子である例を示している。エンドエフェクタ10は、第一把持片11Aおよび第二把持片11Bから構成され、開閉可能な一対の把持片11を有する。第一把持片11Aのうち第二把持片11Bに対向する面12Aには、複数の凸部および凹部が交互に形成されている。同様に、第二把持片11Bにおいて第一把持片11Aに対向する面12Bには、第一把持片11Aの面12Aの複数の凸部および凹部と対向するように、複数の凸部および凹部が形成されている。
第一把持片11Aの基端側には、接続部材15Aが設けられている。第一把持片11Aは、接続部材15Aを介して先端腕部20に固定されている。第二把持片11Bの基端側には、接続部材15Bが設けられている。接続部材15Bの基端部には、歯車部16が設けられている。歯車部16は、先端腕部20内で、X1方向に延びて先端腕部20と係合している回動軸22に回動可能に取り付けられている。歯車部16には、長手軸O1に直交しかつX1方向に平行な軸O20Aを中心に歯車部16をX1方向に貫通する円孔16Aが形成されている。円孔16Aには、軸O20Aを中心軸としてX1方向に延びる円柱状に形成された回動軸22が挿通されている。回動軸22の両端は、本体部21の先端部21Aにそれぞれ支持されている。回動軸22は、歯車部16により、円孔16Aを介して軸O20Aを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、歯車部16および歯車部16に接続されている第二把持片11Bは、軸O20Aを中心に回動軸22に対して回動可能である。第一把持片11Aに対して第二把持片11Bが回動することにより、一対の把持片11はY1方向およびY2方向に開閉する。また、歯車部16には、円孔16Aよりも基端側において軸O20Aを中心とした扇形の部位を有し、扇形の部位の円弧上に歯が形成されている。歯車部16は、先端腕部20に設けられた歯車部24とかみ合うように構成されている。
先端腕部20は、本体部21と、歯車部24と、プーリ25と、プーリ26と、を有する。本体部21は、長手軸O1を中心軸とした略円柱状の外形を有する。本体部21の先端部21Aと基端部21Bとの間には、Y1方向に本体部21を貫通する収容空間27が形成されている。先端部21AのY1方向側の部分21Aaには、第一把持片11Aの接続部材15Aが固定されている。先端部21AのY2方向側の部分21Abには、切り欠き部21Cが形成されている。切り欠き部21Cは、先端部21Aを長手軸O1に沿う方向に貫通し、収容空間27と連通している。切り欠き部21Cは、Y2方向に開口しており、また軸O20AよりもY1方向に延びて形成されている。切り欠き部21CのY1方向側の端面21Caは、先端側から基端側に向かうにしたがってY1方向に向かうように形成されている。この端面21Caは、端面21Caと歯車部16のY1方向側の側面16Bとが当接することにより、第二把持片11Bの回動範囲を規制している。切り欠き部21CのX1方向の寸法は、第二把持片11Bの接続部材15Bおよび歯車部16のX1方向の寸法よりも大きく設定されている。また、先端部21Aには、切り欠き部21Cを挟んだX1方向の両側に軸O20Aを中心軸とする貫通孔が形成されている。回動軸22の両端は、これらの貫通孔により回動可能に支持されている。
収容空間27は、Y1方向から見て矩形状に形成されている。収容空間27には、歯車部24と、プーリ25と、プーリ26と、第二把持片11Bの歯車部16が配置されている。収容空間27のX1方向側の側壁部となる本体部21の側部21Eには、長手軸O1に直交しかつX1方向に平行な軸O20Bを中心軸とする貫通孔が形成されている。また、収容空間27のX2方向側の側壁部となる本体部21の側部21Fには、軸O20Bを中心軸とする貫通孔が形成されている。側部21Eの貫通孔および側部21Fの貫通孔には、軸O20Bを中心軸としてX1方向に延びる円柱状に形成された回動軸23の両端がそれぞれ挿通されて回動可能に支持されている。
歯車部24には、軸O20Bを中心に歯車部24をX1方向に貫通する円孔24Aが形成されている。円孔24Aには、回動軸23が軸O20B回りに相対的に回動可能に挿通されている。歯車部24は、軸O20Bを中心とした円柱状に形成されている。歯車部24の軸O20B回りの外周面には、歯が形成されている。歯車部24は第二把持片11Bの歯車部16とかみ合っているため、歯車部24を軸O20B回りに回動させることで第二把持片11Bを軸O20A回りに回動させることができる。
プーリ25は、軸O20Bを中心軸とする円板状に形成され、軸O20Bを中心にプーリ25をX1方向に貫通する円孔(不図示)を有している。プーリ25において軸O20B回りの外周面には、プーリ溝25Aが形成されている。また、プーリ26は、プーリ25と同様の構成を有している。プーリ25の円孔およびプーリ26の円孔には、回動軸23が軸O20B回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ25は、歯車部24にX1方向に隣接して設けられ、歯車部24とともに回動するように歯車部24に固定されている。プーリ26は、歯車部24にX2方向に隣接して設けられ、歯車部24とともに回動するように歯車部24に固定されている。
プーリ25のプーリ溝25Aには、操作ワイヤ25Wが巻き付けられている。操作ワイヤ25Wの一端は、固定部(不図示)によりプーリ溝25Aに固定されている。操作ワイヤ25Wの他端は、医療器具1の基端側に設けられた不図示の動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ25Wは、操作ワイヤ25Wの他端から一端に向かうにしたがって、X2方向から見て反時計回りにプーリ溝25Aに巻き付けられている。また、プーリ26のプーリ溝26Aには、操作ワイヤ26Wが巻き付けられている。操作ワイヤ26Wの一端は、固定部26Bによりプーリ溝26Aに固定されている。操作ワイヤ26Wの他端は、動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ26Wは、操作ワイヤ26Wの他端から一端に向かうにしたがって、X2方向から見て時計回りにプーリ溝26Aに巻き付けられている。
上述の構成により、操作ワイヤ25Wを基端側に引くとプーリ25とともに歯車部24がX2方向から見て時計回りに回動する。この歯車部24の回動に伴い、歯車部24とかみ合っている歯車部16は、第二把持片11BとともにX2方向から見て反時計回りに回動する。これにより、一対の把持片11が開く。また、操作ワイヤ26Wを基端側に引くとプーリ26とともに歯車部24がX2方向から見て反時計回りに回動する。この歯車部24の回動に伴い、歯車部16は、第二把持片11BとともにX2方向から見て時計回りに回動する。これにより、一対の把持片11が閉じる。このように、操作ワイヤ25Wおよび操作ワイヤ26Wの操作により、一対の把持片11が開閉動作する。
本体部21の基端部21Bには、操作ワイヤ25Wおよび操作ワイヤ26Wを通すための切り欠き部21Haおよび切り欠き部21Hbが形成されている。切り欠き部21Haは、基端部21BのY1方向側の端部においてX1方向側の部分に形成されている。切り欠き部21Haには、操作ワイヤ25Wが通されている。また、切り欠き部21Hbは、基端部21BのY2方向側の端部においてX2方向側の部分に形成されている。切り欠き部21Hbには、操作ワイヤ26Wが通されている。
図5は、医療器具1の先端関節部30の構成を一部断面で示す図である。図6は、先端関節部30の分解斜視図である。図7は、先端関節部30の中間接続部材34および回転伝達部35の構成を示す斜視図である。先端関節部30は、Y1方向回りに屈曲するダブルジョイント関節である。先端関節部30は、軸(第一軸)O30Aと、軸(第二軸)O30Bと、軸(第三軸)O30Cと、を有する。軸O30Bは、軸O30Aと離間して設けられ、軸O30Aと平行に配置されている。また、軸O30Bは、軸O30Aよりも基端側に配置されている。軸O30Cは、軸O30Aおよび軸O30Bと離間して設けられ、軸O30Aおよび軸O30Bと平行に配置されている。また、軸O30Cは、軸O30Bよりも基端側に配置され、軸O30Bに対して位置が固定されている。本実施形態では、軸O30A、軸O30B、および軸O30Cは、長手軸O1に直交しかつY1方向に平行である。
また、先端関節部30は、先端接続部材(第一接続部材)31と、基端接続部材(第二接続部材)32と、中間接続部材(第三接続部材)34と、回転伝達部(第三回転伝達部)35と、を有する。
先端接続部材31は、本体部21の基端部21Bの基端側に固定されている(図4参照)。先端接続部材31は、基端側に設けられた回転伝達部(第一回転伝達部)31Aを有する。回転伝達部31Aは、軸O30Aを中心に回動可能に構成されている。回転伝達部31Aには、軸O30Aを中心に回転伝達部31AをY1方向に貫通する円孔31Bが形成されている。円孔31Bには、軸O30Aを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸33Aが挿通されている。回動軸33Aは、回転伝達部31Aにより、円孔31Bを介して軸O30Aを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、回転伝達部31Aは、軸O30Aを中心に回動軸33Aに対して回動可能である。
回転伝達部31Aは、軸O30Aに沿う方向、すなわちY1方向(またはY2方向)において上側回転伝達部(第一部分)31Aaと下側回転伝達部(第二部分)31Abとに分割されている。上側回転伝達部31Aaと下側回転伝達部31Abとは、Y1方向に離間しかつ長手軸O1を挟むように互いに平行に配置されている。上側回転伝達部31Aaは長手軸O1よりもY1方向側に配置され、下側回転伝達部31Abは長手軸O1よりもY2方向側に配置されている。また、円孔31Bとして、上側回転伝達部31Aaには、軸O30Aを中心に上側回転伝達部31AaをY1方向に貫通する円孔31Baが形成され、下側回転伝達部31Abには、軸O30Aを中心に下側回転伝達部31AbをY1方向に貫通する円孔31Bbが形成されている。円孔31Baおよび円孔31Bbには、回動軸33Aが挿通されている。
回転伝達部31Aは、軸O30Aを中心とした扇形の部位(第一部位)31Csを有し、扇形の部位31Csの円弧上に歯が形成された歯車部(第一歯車部)31Cを有する。歯車部31Cとして、上側回転伝達部31Aaは、軸O30Aを中心とした扇形の部位(第一部位)31Casを有し、扇形の部位31Casの円弧上に歯が形成された上側歯車部(第一歯車部)31Caを有する。また、下側回転伝達部31Abは、軸O30Aを中心とした扇形の部位(第一部位)31Cbsを有し、扇形の部位31Cbsの円弧上に歯が形成された下側歯車部(第一歯車部)31Cbを有する。歯車部31Cは、後述する回転伝達部32Aの歯車部(第二歯車部)32Cとかみ合うように構成されている。具体的には、上側歯車部31Caは歯車部32Cの上側歯車部32Caとかみ合い、下側歯車部31Cbは歯車部32Cの下側歯車部32Cbとかみ合っている。これによって、回転伝達部31Aと回転伝達部32Aとは、互いに連動して回動するように接続されている。
基端接続部材32は、中間腕部40の先端側に設けられ、中間腕部40に固定されている。本実施形態では、中間腕部40のうち腕部60の先端部61に固定されている。基端接続部材32は、先端側に設けられた回転伝達部(第二回転伝達部)32Aを有する。回転伝達部32Aは、軸O30Bを中心に回動可能に構成されている。具体的には、回転伝達部31Aと同様に、回転伝達部32Aに形成された軸O30Bを中心に回転伝達部32AをY1方向に貫通する円孔32Bに、軸O30Bを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸33Bが挿通され、回転伝達部32Aに対して回動可能に支持されている。
回転伝達部32Aは、軸O30Bに沿う方向、すなわちY1方向(またはY2方向)において上側回転伝達部(第三部分)32Aaと下側回転伝達部(第四部分)32Abとに分割されている。上側回転伝達部32Aaおよび下側回転伝達部32Abは、それぞれ回転伝達部31Aの上側回転伝達部31Aaおよび下側回転伝達部31Abと同様な態様で配置されている。また、円孔32Bとして、上側回転伝達部32Aaには円孔32Baが形成され、下側回転伝達部32Abには円孔32Bbが形成されている。
回転伝達部32Aは、軸O30Bを中心とした扇形の部位(第二部位)32Csを有し、扇形の部位32Csの円弧上に歯が形成された歯車部(第二歯車部)32Cを有する。歯車部32Cとして、上側回転伝達部32Aaは上側歯車部(第二歯車部)32Caを有し、下側回転伝達部32Abは下側歯車部(第二歯車部)32Cbを有する。なお、扇形の部位32Csとして、上側歯車部32Caは扇形の部位(第二部位)32Casを有し、下側歯車部32Cbは扇形の部位(第二部位)32Cbsを有する。
本実施形態では、歯車部31C(上側歯車部31Caおよび下側歯車部31Cb)のピッチ円直径は、歯車部32C(上側歯車部32Caおよび下側歯車部32Cb)のピッチ円直径と同一である。また、歯車部31CのY1方向の寸法は、歯車部32CのY1方向の寸法と同一である。すなわち、上側歯車部31CaのY1方向の寸法と上側歯車部32CaのY1方向の寸法とは等しく、下側歯車部31CbのY1方向の寸法と下側歯車部32CbのY1方向の寸法とは等しい。
中間接続部材34は、軸O30Aを中心に回動可能でありかつ軸O30Bを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、中間接続部材34は、Y1方向から見て略長円形状を有する板状の部材である。中間接続部材34の先端側には、軸O30Aを中心に中間接続部材34をY1方向に貫通する円孔34Aが形成されている。円孔34Aには、回動軸33Aが挿通されている。回動軸33Aは、中間接続部材34により、円孔34Aを介して軸O30Aを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、中間接続部材34は、軸O30Aを中心に回動軸33Aに対して回動可能である。また、中間接続部材34の基端側には、軸O30Bを中心に中間接続部材34をY1方向に貫通する円孔34Bが形成されている。円孔34Bには、回動軸33Bが挿通されている。回動軸33Bは、中間接続部材34により、円孔34Bを介して軸O30Bを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、中間接続部材34は、軸O30Bを中心に回動軸33Bに対して回動可能である。
本実施形態では、中間接続部材34の先端側は、回転伝達部31Aの上側回転伝達部31Aaと下側回転伝達部31Abとの間に配置されている。中間接続部材34の基端側は、回転伝達部32Aの上側回転伝達部32Aaと下側回転伝達部32Abとの間に配置されている。よって、中間接続部材34は長手軸O1を含むように配置されている。また、中間接続部材34のY1方向の寸法は、上側回転伝達部31Aaと下側回転伝達部31Abとの間の寸法および上側回転伝達部32Aaと下側回転伝達部32Abとの間の寸法よりも小さい。
中間接続部材34は、中間接続部材34の基端部(端部)に設けられた回転伝達部(第四回転伝達部)34Cを有する。回転伝達部34Cは、回転伝達部35と連動して軸O30Bを中心に回動するように回転伝達部35に接続されている。本実施形態では、回転伝達部34Cは、軸O30Bを中心とした扇形の部位(第三部位)34Dsを有し、扇形の部位34Dsの円弧上に歯が形成された歯車部(第三歯車部)34Dを有する。歯車部34Dは、後述する回転伝達部35の歯車部(第四歯車部)35Bとかみ合うように構成されている。このため、歯車部35Bおよび歯車部34Dを介して回転伝達部35の回転運動が回転伝達部34Cに伝達される。これによって、回転伝達部34Cは、回転伝達部35と連動して軸O30Bを中心に回動することができる。
回転伝達部31AのY1方向における両側には、プーリ36Aおよびプーリ36Bが設けられている。プーリ36Aは、軸O30Aを中心軸とする円板状に形成され、軸O30Aを中心にプーリ36AをY1方向に貫通する円孔を有している。プーリ36Aにおいて軸O30A回りの外周面には、プーリ溝が形成されている。また、プーリ36Bは、プーリ36Aと同様に構成されている。
プーリ36Aの円孔およびプーリ36Bの円孔には、回動軸33Aが軸O30A回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ36Aは、上側回転伝達部31AaのY1方向側に配置されており、プーリ36Bは、下側回転伝達部31AbのY2方向側に配置されている。よって、回転伝達部31Aは、Y1方向においてプーリ36Aとプーリ36Bとの間に配置されている。プーリ36Aのプーリ溝には、プーリ25から延びる操作ワイヤ25Wが巻き掛けられている。プーリ36Bのプーリ溝には、プーリ26から延びる操作ワイヤ26Wが巻き掛けられている。
回転伝達部32AのY1方向における両側には、プーリ36Cおよびプーリ36Dが設けられている。プーリ36Cおよびプーリ36Dは、軸O30Aに代えて軸O30Bを中心軸とした点を除いて、プーリ36Aと同様に構成されている。
プーリ36Cの円孔およびプーリ36Dの円孔には、回動軸33Bが軸O30B回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ36Cは、上側回転伝達部32AaのY1方向側に配置されており、プーリ36Dは、下側回転伝達部32AbのY2方向側に配置されている。よって、回転伝達部32Aは、Y1方向においてプーリ36Cとプーリ36Dとの間に配置されている。プーリ36Cのプーリ溝には、プーリ36Aから延びる操作ワイヤ25Wが巻き掛けられている。プーリ36Dのプーリ溝には、プーリ36Bから延びる操作ワイヤ26Wが巻き掛けられている。
プーリ36Aとプーリ36Cとは、Y1方向において同じ位置に配置されている。同様に、プーリ36Bとプーリ36Dとは、Y1方向において同じ位置に配置されている。操作ワイヤ25Wは、Y2方向から見てプーリ36Aとプーリ36Cとの間で長手軸O1と交差するように、プーリ36AのX1方向側からプーリ36CのX2方向側に巻き掛けられている。操作ワイヤ26Wは、Y2方向から見てプーリ36Bとプーリ36Dとの間で長手軸O1と交差するように、プーリ36BのX2方向側からプーリ36DのX1方向側に巻き掛けられている。
プーリ36Aおよびプーリ36CのY1方向側には、支持部材37Aが設けられている。支持部材37Aは、Y1方向から見て略長円形状を有する板状の部材である。支持部材37Aには、軸O30Aを中心に支持部材37AをY1方向に貫通する円孔37Aaと、軸O30Bを中心に支持部材37AをY1方向に貫通する円孔37Abと、が形成されている。円孔37Aaには、回動軸33Aが軸O30Aを中心に相対的に回動可能に挿通されている。円孔37Abには、回動軸33Bが軸O30Bを中心に相対的に回動可能に挿通されている。
プーリ36Bおよびプーリ36DのY2方向側には、支持部材37Bが設けられている。支持部材37Bは、支持部材37Aと同一の構成を有している。支持部材37Bの円孔37Baには、回動軸33Aが軸O30Aを中心に相対的に回動可能に挿通されている。支持部材37Bの円孔37Bbには、回動軸33Bが軸O30Bを中心に相対的に回動可能に挿通されている。
回動軸33Aの両端は、円孔37Aaおよび円孔37Baを介して支持部材37Aおよび支持部材37Bにそれぞれ支持されている。同様に、回動軸33Bの両端は、円孔37Abおよび円孔37Bbを介して支持部材37Aおよび支持部材37Bにそれぞれ支持されている。
上述した構成により、回動軸33Aは、支持部材37A、プーリ36A、回転伝達部31A(上側回転伝達部31Aaおよび下側回転伝達部31Ab)、中間接続部材34、プーリ36B、および支持部材37Bを、軸O30Aを中心に互いに相対的に回動可能に接続している。同様に、回動軸33Bは、支持部材37B、プーリ36C、回転伝達部32A(上側回転伝達部32Aaおよび下側回転伝達部32Ab)、中間接続部材34、プーリ36D、および支持部材37Bを、軸O30Bを中心に互いに相対的に回動可能に接続している。また、軸O30Aと軸O30Bとの間の距離は、支持部材37A、中間接続部材34、および支持部材37Bにより、一定に保持されている。
回転伝達部35は、軸O30Cを中心に回動可能に構成されている。具体的には、軸O30Cを中心に回転伝達部35をY1方向に貫通する円孔35Aが形成されている。円孔35Aには、軸O30Cを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸33Cが挿通されている。回動軸33Cは、回転伝達部35により、円孔35Aを介して軸O30Cを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、回転伝達部35は、軸O30Cを中心に回動軸33Cに対して回動可能である。
回転伝達部35は、軸O30Cを中心とした円柱状に形成され、軸O30C回りの外周面に歯が形成された歯車部(第四歯車部)35Bを有する。上述したように、歯車部35Bは歯車部34Dとかみ合っている。また、歯車部35Bのピッチ円直径は、歯車部34Dのピッチ円直径よりも小さい。このため、歯車部34Dの回転数は歯車部35Bの回転数よりも減速されるとともに、歯車部34Dのトルクを歯車部35Bのトルクよりも増加させることができる。
また、先端関節部30は、軸O30Cを中心に回動可能なプーリ(回転体)38と、プーリ38に巻き付けられた操作ワイヤ(操作部材)38Wと、を有する。プーリ38は、歯車部35Bと一体に回動するように接続されている。本実施形態では、プーリ38として、プーリ(回転体)38Aおよびプーリ(回転体)38Bが設けられている。操作ワイヤ38Wとして、操作ワイヤ(操作部材)38AWおよび操作ワイヤ(操作部材)38BWが設けられている。
プーリ38Aは、軸O30Cを中心軸とする円板状に形成され、軸O30Cを中心にプーリ38AをY1方向に貫通する円孔(不図示)を有している。プーリ38Aにおいて軸O30C回りの外周面には、プーリ溝38Aaが形成されている。プーリ38Bは、プーリ38Aと同様の構成を有している。プーリ38Aの円孔およびプーリ38Bの円孔には、回動軸33Cが軸O30C回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ38Aは、歯車部35BにY1方向に隣接して設けられ、歯車部35Bとともに回動するように歯車部35Bに固定されている。プーリ38Bは、歯車部35BにY2方向に隣接して設けられ、歯車部35Bとともに回動するように歯車部35Bに固定されている。
プーリ38Aのプーリ溝38Aaには、操作ワイヤ38AWが巻き付けられている。操作ワイヤ38AWの一端は、固定部38Ab(図8参照)によりプーリ溝38Aaに固定されている。操作ワイヤ38AWの他端は、医療器具1の基端側に設けられた不図示の動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ38AWは、操作ワイヤ38AWの他端から一端に向かうにしたがって、Y2方向から見て反時計回りにプーリ溝38Aaに巻き付けられている。また、プーリ38Bのプーリ溝38Baには、操作ワイヤ38BWが巻き付けられている。操作ワイヤ38BWの一端は、固定部38Bbによりプーリ溝38Baに固定されている。操作ワイヤ38BWの他端は、医療器具1の基端側に設けられた不図示の動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ38BWは、操作ワイヤ38BWの他端から一端に向かうにしたがって、Y2方向から見て時計回りにプーリ溝38Baに巻き付けられている。
上述の構成により、操作ワイヤ38AWを基端側に引くとプーリ38Aとともに歯車部35BがY2方向から見て反時計回りに回動する。また、操作ワイヤ38BWを基端側に引くとプーリ38Bとともに歯車部35BがY2方向から見て時計回りに回動する。
本実施形態では、プーリ38Aおよびプーリ38Bの外径は、歯車部35Bのピッチ円直径よりも大きい。これにより、歯車部35Bを回動させるために必要な操作ワイヤ38AWおよび操作ワイヤ38BWの張力を小さくすることができる。
腕部60は、長手軸O1を中心軸とする円筒状に形成されている。腕部60の先端部61の内部には、長手軸O1に沿って延びる収容空間61Aが形成されている。収容空間61Aは、先端部61に固定された基端接続部材32の基端側に配置されている。収容空間61Aは、回転伝達部32Aの上側回転伝達部32Aaと下側回転伝達部32Abとの間に形成された空間と、開口61Aaを介して長手軸O1に沿う方向に連通している。また、先端部61には、軸O30Cを中心に先端部61を貫通する円孔61Baおよび円孔61Bbが形成されている。円孔61Baおよび円孔61Bbは、それぞれ収容空間61Aと連通し、収容空間61Aを挟んで配置されている。
回転伝達部35、プーリ38A、およびプーリ38Bは、収容空間61Aに配置されている。回転伝達部34Cの歯車部34Dは、開口61Aaを通過して収容空間61A内に配置され、回転伝達部35の歯車部35Bとかみ合っている。回動軸33Cの両端は、軸O30Cを中心に相対的に回動可能に円孔61Baおよび円孔61Bbにそれぞれ支持されている。回動軸33Cは、円孔61Baおよび円孔61Bbにより先端部61に支持されており、回動軸33Bは、先端部61に固定された基端接続部材32の回転伝達部32Aに支持されている。したがって、軸O30Cは、軸O30Bに対して位置が固定されている。
上述した構成を備える先端関節部30の動作について、図8および図9を参照して説明する。図8は、先端関節部30が真っ直ぐな状態を示す図である。図9は、先端関節部30が屈曲した状態を示す図である。図8および図9は、先端関節部30をY2方向から見た図である。なお、図8および図9では、先端関節部30の構成を簡略化して示している。また、図8および図9に示すように、Y1方向回りの回転方向として、Ya1方向とYa1方向とは反対のYa2方向を設定する。
図8に示すように、先端関節部30が真っ直ぐな状態で、操作ワイヤ38AWを基端側に引くと、プーリ38Aに固定された歯車部35BがY2方向から見て反時計回りに、すなわちYa1方向に軸O30Cを中心に回動する。歯車部35Bは中間接続部材34の歯車部34Dとかみ合っているため、歯車部35Bの回動に伴って、歯車部34DがYa2方向に軸O30Bを中心に回動する。すなわち、中間接続部材34は、基端接続部材32に対してYa2方向に軸O30Bを中心に回動する。このとき、中間接続部材34とともに回動軸33A、すなわち軸O30Aも、Ya2方向に軸O30Bを中心に回転移動する。また、先端接続部材31の歯車部31Cは基端接続部材32の歯車部32Cとかみ合っているため、中間接続部材34の回動に伴って、歯車部31CがYa2方向に軸O30Aを中心に回動する。すなわち、先端接続部材31は、中間接続部材34に対してYa2方向に軸O30Aを中心に回動する。上述した動作により、図9に示すように、先端関節部30がYa2方向に屈曲した状態になる。この状態から先端関節部30を真っ直ぐな状態にする場合、または先端関節部30を真っ直ぐな状態からYa1方向に屈曲させる場合には、操作ワイヤ38BWを基端側に引く。これにより、プーリ38Bに固定された歯車部35Bが上述の動作とは逆にYa2方向に軸O30Cを中心に回動する。そして、各部材が上述の動作とはそれぞれ逆方向に動作することで、先端関節部30がYa1方向に屈曲する。
上述の先端関節部30の屈曲動作について、さらに詳細に説明する。ここで、歯車部31Cのピッチ円の半径をRaとし、歯車部32Cのピッチ円の半径をRbとし、歯車部34Dのピッチ円の半径をRcとし、歯車部35Bのピッチ円の半径をRdとする。歯車部35Bが軸O30Cを中心にYa1方向に角度θdだけ回動したときに、歯車部34Dが基端接続部材32に対して軸O30Bを中心にYa2方向に角度θcだけ回動した場合、角度θcは次式で表される。
θc=θd×Rd/Rc ・・・(1)
このとき、歯車部31Cが中間接続部材34に対して軸O30Aを中心にYa2方向に回動する角度をθa、歯車部32Cが中間接続部材34に対して軸O30Bを中心にYa1方向に回動する角度をθbとすると、角度θaは次式で表される。
θa=θb×Rb/Ra ・・・(2)
本実施形態では、歯車部31Cのピッチ円直径と歯車部32Cのピッチ円直径とは等しい。また、角度θbの大きさは角度θcの大きさと同一である。よって、(2)式は次のようになる。
θa=θb=θc ・・・(3)
したがって、先端接続部材31が基端接続部材32に対して回動する角度θ1は、次式で表される。
θ1=θa+θc=2θc ・・・(4)
すなわち、先端接続部材31が基端接続部材32に対して回動する角度θ1は、中間接続部材34が基端接続部材32に対して回動する角度θcの2倍となる。
また、歯車部34Dが回動する際のトルクをTcとし、歯車部35Bが回動する際のトルクをTdとすると、トルクTcは次式で表される。
Tc=Td×Rc/Rd ・・・(5)
本実施形態では、歯車部35Bのピッチ円直径は歯車部34Dのピッチ円直径よりも小さいため、Rc/Rd(減速比)>1となる。このように減速比を大きくすることで、歯車部34DのトルクTcに対して歯車部35BのトルクTdを小さくすることができる。よって、歯車部35Bを回動させる際に操作ワイヤ38AWおよび操作ワイヤ38BWに加わる張力を小さくすることができる。
なお、ダブルジョイント関節では、関節の屈曲は操作ワイヤの経路長に影響しない。例えば、プーリ36Aおよびプーリ36Cに巻き掛けられた操作ワイヤ25Wにおいて、図8に示されるPa点とPb点との間の経路長は、図9に示されるような先端関節部30が屈曲した状態でのPa点とPb点との経路長と等しい。このため、一対の把持片11の操作とは独立して、先端関節部30を屈曲させることができる。
先端関節部30は上述のように構成されているため、関節の軸を傾ける外力が作用する場合など外乱に対する耐性を有する。例えば、一対の把持片11で対象物を把持する力が大きい場合、操作ワイヤ26Wに加わる張力も大きくなる。この張力により、操作ワイヤ26Wが巻き掛けられたプーリ36Bおよびプーリ36Dを介して、回動軸33Aと回動軸33Bとの間隔を広げるように回動軸33Aおよび回動軸33Bを傾かせる力が、回動軸33Aおよび回動軸33Bに作用する。回動軸33Aおよび回動軸33Bが傾いて、互いに非平衡の位置関係に配置された場合、歯車部31Cと歯車部32Cとが互いに傾いた状態でかみ合うため、歯車部間での摩擦力が大きくなる。この結果、エンドエフェクタ10の制御性や操作性が低下してしまう。
従来のダブルジョイント関節では、主として、一方の回動軸が挿通された先端接続部材の歯車部と他方の回動軸が挿通された基端接続部材の歯車部とが互いにかみ合って支持することにより、上述したような回動軸に働く力およびこの力によるモーメントに対抗し、回動軸の姿勢を維持している。上述した点を踏襲しつつ、本実施形態に係る先端関節部30では、さらに、先端接続部材31の回転伝達部31Aは、上側歯車部31Caを有する上側回転伝達部31Aaと下側歯車部31Cbを有する下側回転伝達部31Abとに分割され、基端接続部材32の回転伝達部32Aは、上側歯車部32Caを有する上側回転伝達部32Aaと下側歯車部32Cbを有する下側回転伝達部32Abとに分割されている。中間接続部材34は、上側回転伝達部31Aaと下側回転伝達部31Abとの間に配置され、かつ上側回転伝達部32Aaと下側回転伝達部32Abとの間に配置されている。これにより、回転伝達部31Aの歯車部31CのY1方向の寸法および回転伝達部32Aの歯車部32CのY1方向の寸法を、実質的に大きくすることができる。すなわち、上側歯車部31Caおよび上側歯車部32Caは、中間接続部材34が配置される空間のY1方向の寸法に応じてY1方向側に移動して配置され、下側歯車部31Cbおよび下側歯車部32Cbは、前記空間の寸法に応じてY2方向側に移動して配置されている。その結果、歯車部31Cの全体としてのY1方向の寸法および歯車部32Cの全体としてのY1方向の寸法は大きくなっている。また、回動軸33Aおよび回動軸33BのY1方向の端部により近い位置で、上側歯車部31Caと上側歯車部32Caとが互いにかみ合っており、回動軸33Aおよび回動軸33BのY2方向の端部により近い位置で、下側歯車部31Cbと下側歯車部32Cbとが互いにかみ合っている。よって、歯車部31Cおよび歯車部32Cにより、上述した力により回動軸33Aおよび回動軸33Bに作用するモーメントに対抗して、回動軸33Aおよび回動軸33Bの姿勢をより確実に維持することができる。このように、先端関節部30は外乱に強い構成を有している。
加えて、本実施形態では、中間接続部材34は、上側回転伝達部31Aaと下側回転伝達部31Abとの間、および上側回転伝達部32Aaと下側回転伝達部32Abとの間に配置されており、同時に、回動軸33Aおよび回動軸33BのY1方向の中央部分を支持している。したがって、歯車部35Bにより中間接続部材34が軸O33Bを中心に回動されたときに、中間接続部材34が回動軸33Aを移動させるために回動軸33Aに加える力により回動軸33Aを回動軸33Bに対して傾けるように働くモーメントを小さくすることができる。
続いて、中間関節部70について図10から図14を参照して説明する。図10は、中間関節部70の構成を一部断面で示す図である。図11は、中間関節部70の分解斜視図である。図12は、中間関節部70の中間接続部材74および回転伝達部75の構成を示す斜視図である。
中間関節部70は、Y1方向回りに屈曲するダブルジョイント関節である。中間関節部70は、軸(第一軸、第四軸)O70Aと、軸(第二軸、第五軸)O70Bと、軸(第三軸、第六軸)O70Cと、を有する。軸O70Bは、軸O70Aと離間して設けられ、軸O70Aと平行に配置されている。また、軸O70Bは、軸O70Aよりも基端側に配置されている。軸O70Cは、軸O70Aおよび軸O70Bと離間して設けられ、軸O70Aおよび軸O70Bと平行に配置されている。また、軸O70Cは、軸O70Aよりも先端側に配置され、軸O70Aに対して位置が固定されている。本実施形態では、軸O70A、軸O70B、および軸O70Cは、長手軸O1に直交しかつY1方向に平行である。
また、中間関節部70は、先端接続部材(第一接続部材、第四接続部材)71と、基端接続部材(第二接続部材、第五接続部材)72と、中間接続部材(第三接続部材、第六接続部材)74と、回転伝達部(第三回転伝達部、第七回転伝達部)75と、を有する。先端関節部30では、回転伝達部35は中間接続部材34よりも基端側に配置されているのに対して、中間関節部70では、回転伝達部75は中間接続部材74よりも先端側に配置されている。
先端接続部材71は、腕部60の基端部62の基端側に固定されている。先端接続部材71は、基端側に設けられた回転伝達部(第一回転伝達部、第五回転伝達部)71Aを有する。回転伝達部71Aは、軸O70Aを中心に回動可能に構成されている。回転伝達部71Aには、軸O70Aを中心に回転伝達部71AをY1方向に貫通する円孔71Bが形成されている。円孔71Bには、軸O70Aを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸73Aが挿通されている。回動軸73Aは、回転伝達部71Aにより、円孔71Bを介して軸O70Aを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、回転伝達部71Aは、軸O70Aを中心に回動軸73Aに対して回動可能である。
回転伝達部71Aは、軸O70Aに沿う方向、すなわちY1方向(またはY2方向)において上側回転伝達部(第一部分、第五部分)71Aaと下側回転伝達部(第二部分、第六部分)71Abとに分割されている。上側回転伝達部71Aaと下側回転伝達部71Abとは、Y1方向に離間しかつ長手軸O1を挟むように互いに平行に配置されている。上側回転伝達部71Aaは長手軸O1よりもY1方向側に配置され、下側回転伝達部71Abは長手軸O1よりもY2方向側に配置されている。また、円孔71Bとして、上側回転伝達部71Aaには、軸O70Aを中心に上側回転伝達部71AaをY1方向に貫通する円孔71Baが形成され、下側回転伝達部71Abには、軸O70Aを中心に下側回転伝達部71AbをY1方向に貫通する円孔71Bbが形成されている。円孔71Baおよび円孔71Bbには、回動軸73Aが挿通されている。
回転伝達部71Aは、軸O70Aを中心とした扇形の部位(第一部位、第四部位)71Csを有し、扇形の部位71Csの円弧上に歯が形成された歯車部(第一歯車部、第五歯車部)71Cを有する。歯車部71Cとして、上側回転伝達部71Aaは上側歯車部(第一歯車部、第五歯車部)71Caを有し、下側回転伝達部71Abは下側歯車部(第一歯車部、第五歯車部)71Cbを有する。なお、扇形の部位71Csとして、上側歯車部71Caは扇形の部位(第一部位、第四部位)71Casを有し、下側回転伝達部71Abは扇形の部位(第一部位、第四部位)71Cbsを有する。歯車部71Cは、後述する回転伝達部72Aの歯車部(第二歯車部、第六歯車部)72Cとかみ合うように構成されている。具体的には、上側歯車部71Caは歯車部72Cの上側歯車部72Caとかみ合い、下側歯車部71Cbは歯車部72Cの下側歯車部72Cbとかみ合っている。これによって、回転伝達部71Aと回転伝達部72Aとは、互いに連動して回動するように接続されている。
基端接続部材72は、腕部80の先端側に設けられ、腕部80に固定されている。本実施形態では、腕部80の基端関節部90の先端部91に固定されている。基端接続部材72は、先端側に設けられた回転伝達部(第二回転伝達部、第六回転伝達部)72Aを有する。回転伝達部72Aは、軸O70Bを中心に回動可能に構成されている。具体的には、回転伝達部72Aには、軸O70Bを中心に回転伝達部72AをY1方向に貫通する円孔72Bが形成されている。円孔72Bには、軸O70Bを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸73Bが挿通されている。回動軸73Bは、回転伝達部72Aにより、円孔72Bを介して軸O70Bを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、回転伝達部72Aは、軸O70Bを中心に回動軸73Bに対して回動可能である。
回転伝達部72Aは、軸O70Bに沿う方向、すなわちY1方向(またはY2方向)において上側回転伝達部(第三部分、第七部分)72Aaと下側回転伝達部(第四部分、第八部分)72Abとに分割されている。上側回転伝達部72Aaおよび下側回転伝達部72Abは、それぞれ回転伝達部71Aの上側回転伝達部71Aaおよび下側回転伝達部71Abと同様な態様で配置されている。また、円孔72Bとして、上側回転伝達部72Aaには円孔72Baが形成され、下側回転伝達部72Abには円孔72Bbが形成されている。
回転伝達部72Aは、軸O70Bを中心とした扇形の部位(第二部位、第五部位)72Csを有し、扇形の部位72Csの円弧上に歯が形成された歯車部(第二歯車部、第六歯車部)72Cを有する。歯車部72Cとして、上側回転伝達部72Aaは上側歯車部(第二歯車部、第六歯車部)72Caを有し、下側回転伝達部72Abは下側歯車部(第二歯車部、第六歯車部)72Cbを有する。なお、扇形の部位72Csとして、上側歯車部72Caは扇形の部位(第二部位、第五部位)72Casを有し、下側歯車部72Cbは扇形の部位(第二部位、第五部位)72Cbsを有する。
本実施形態では、歯車部71C(上側歯車部71Caおよび下側歯車部71Cb)のピッチ円直径は、歯車部72C(上側歯車部72Caおよび下側歯車部72Cb)のピッチ円直径と同一である。また、歯車部71CのY1方向の寸法は、歯車部72CのY1方向の寸法と同一である。すなわち、上側歯車部71CaのY1方向の寸法と上側歯車部72CaのY1方向の寸法とは等しく、下側歯車部71CbのY1方向の寸法と下側歯車部72CbのY1方向の寸法とは等しい。
中間接続部材74は、軸O70Aを中心に回動可能でありかつ軸O70Bを中心に回動可能に構成されている。本実施形態では、中間接続部材74は、回転伝達部74Cが先端側に設けられている点を除いて、先端関節部30の中間接続部材34と同様に構成されている。中間接続部材74の先端側に形成された円孔74Aには、回動軸73Aが挿通され、軸O70Aを中心に相対的に回動可能に支持されている。また、中間接続部材74の基端側に形成された円孔74Bには、回動軸73Bが挿通され、軸O70Bを中心に相対的に回動可能に支持されている。
本実施形態では、中間接続部材74の先端側は、回転伝達部71Aの上側回転伝達部71Aaと下側回転伝達部71Abとの間に配置されている。中間接続部材74の基端側は、回転伝達部72Aの上側回転伝達部72Aaと下側回転伝達部72Abとの間に配置されている。
中間接続部材74は、中間接続部材74の先端部(端部)に設けられた回転伝達部(第四回転伝達部、第八回転伝達部)74Cを有する。回転伝達部74Cは、回転伝達部75と連動して軸O70Aを中心に回動するように回転伝達部75に接続されている。本実施形態では、回転伝達部74Cは、軸O70Bを中心とした扇形の部位(第三部位、第六部位)74Dsを有し、扇形の部位74Dsの円弧上に歯が形成された歯車部(第三歯車部、第七歯車部)74Dを有する。歯車部74Dは、後述する回転伝達部75の歯車部(第四歯車部、第八歯車部)75Bとかみ合うように構成されている。このため、歯車部75Bおよび歯車部74Dを介して回転伝達部75の回転運動が回転伝達部74Cに伝達される。これによって、回転伝達部74Cは、回転伝達部75と連動して軸O70Aを中心に回動することができる。
回転伝達部71Aの上側回転伝達部71AaのY1方向側には、プーリ76Ai、プーリ76Aj、およびプーリ76Akが、Y1方向に沿ってこの順で設けられている。回転伝達部71Aの下側回転伝達部71AbのY2方向側には、プーリ76Bi、プーリ76Bj、およびプーリ76Bkが、Y2方向に沿ってこの順で設けられている。回転伝達部72Aの上側回転伝達部72AaのY1方向側には、プーリ76Ci、プーリ76Cj、およびプーリ76Ckが、Y1方向に沿ってこの順で設けられている。回転伝達部72Aの下側回転伝達部72AbのY2方向側には、プーリ76Di、プーリ76Dj、およびプーリ76Dkが、Y2方向に沿ってこの順で設けられている。プーリ76Ai、プーリ76Aj、プーリ76Ak、プーリ76Bi、プーリ76Bj、プーリ76Bk、プーリ76Ci、プーリ76Cj、プーリ76Ck、プーリ76Di、プーリ76Dj、およびプーリ76Dkには、先端関節部30のプーリ36A、プーリ36B、プーリ36C、またはプーリ36Dと同様の構成を有するプーリを用いることができる。
プーリ76Aiの円孔、プーリ76Ajの円孔、プーリ76Akの円孔、プーリ76Biの円孔、プーリ76Bjの円孔、およびプーリ76Bkの円孔には、回動軸73Aが軸O70A回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ76Ciの円孔、プーリ76Cjの円孔、プーリ76Ckの円孔、プーリ76Diの円孔、プーリ76Djの円孔、およびプーリ76Dkの円孔には、回動軸73Bが軸O70B回りに相対的に回動可能に挿通されている。
プーリ76Aiのプーリ溝およびプーリ76Ciのプーリ溝には、後述するプーリ78Aから延びる操作ワイヤ78AWが巻き掛けられている。プーリ76Ajのプーリ溝およびプーリ76Cjのプーリ溝には、先端関節部30のプーリ38Aから延びる操作ワイヤ38AWが巻き掛けられている。プーリ76Akのプーリ溝およびプーリ76Ckのプーリ溝には、先端関節部30のプーリ36Aから延びる操作ワイヤ25Wが巻き掛けられている。
プーリ76Biのプーリ溝およびプーリ76Diのプーリ溝には、後述するプーリ78Bから延びる操作ワイヤ78BWが巻き掛けられている。プーリ76Bjのプーリ溝およびプーリ76Djのプーリ溝には、先端関節部30のプーリ38Bから延びる操作ワイヤ38BWが巻き掛けられている。プーリ76Bkのプーリ溝およびプーリ76Dkのプーリ溝には、先端関節部30のプーリ36Bから延びる操作ワイヤ26Wが巻き掛けられている。
本実施形態では、図10に示されるように、プーリ76Aiおよびプーリ76Ci、プーリ76Ajおよびプーリ76Cj、プーリ76Akおよびプーリ76Ck、プーリ76Biおよびプーリ76Di、プーリ76Bjおよびプーリ76Dj、ならびにプーリ76Bkおよびプーリ76Dkは、それぞれY1方向において同じ位置に配置されている。
加えて、プーリ76Ajおよびプーリ76Cjは、プーリ38AとY1方向において同じ位置に配置されている。プーリ76Akおよびプーリ76Ckは、プーリ36Aおよびプーリ36CとY1方向において同じ位置に配置されている。プーリ76Bjおよびプーリ76Djは、プーリ38BとY1方向において同じ位置に配置されている。プーリ76Bkおよびプーリ76Dkは、プーリ36Bおよびプーリ36DとY1方向において同じ位置に配置されている。上述のように構成されているため、先端関節部30から中間関節部70にまたがる操作ワイヤ25W、26W、38AW、38BWをよりスムーズに駆動させることができる。
また、操作ワイヤ78AWは、Y2方向から見てプーリ76Aiとプーリ76Ciとの間で長手軸O1と交差するように、プーリ76AiのX2方向側からプーリ76CiのX1方向側に巻き掛けられている。操作ワイヤ38AWは、Y2方向から見てプーリ76Ajとプーリ76Cjとの間で長手軸O1と交差するように、プーリ76AjのX1方向側からプーリ76CjのX2方向側に巻き掛けられている。操作ワイヤ25Wは、プーリ76Aiおよびプーリ76Ciに巻き掛けられた操作ワイヤ78AWと同様に、プーリ76Akおよびプーリ76Ckに巻き掛けられている。操作ワイヤ78BWは、プーリ76Ajおよびプーリ76Cjに巻き掛けられた操作ワイヤ38AWと同様に、プーリ76Biおよびプーリ76Diに巻き掛けられている。操作ワイヤ38BWは、プーリ76Aiおよびプーリ76Ciに巻き掛けられた操作ワイヤ78AWと同様に、プーリ76Bjおよびプーリ76Djに巻き掛けられている。操作ワイヤ26Wは、プーリ76Ajおよびプーリ76Cjに巻き掛けられた操作ワイヤ38AWと同様に、プーリ76Bkおよびプーリ76Dkに巻き掛けられている。
プーリ76Akおよびプーリ76CkのY1方向側には、支持部材77Aが設けられている。支持部材77Aは、先端関節部30の支持部材37Aと同様の構成とすることができる。また、プーリ76Bkおよびプーリ76DkのY2方向側には、支持部材77Bが設けられている。支持部材77Bは、先端関節部30の支持部材37Bと同様の構成とすることができる。
支持部材77Aの円孔77Aaおよび支持部材77Bの円孔77Baには、回動軸73Aが軸O70Aを中心に相対的に回動可能に挿通されている。支持部材77Aの円孔77Abおよび支持部材77Bの円孔77Bbには、回動軸73Bが軸O70Bを中心に相対的に回動可能に挿通されている。
回動軸73Aの両端は、円孔77Aaおよび円孔77Baを介して支持部材77Aおよび支持部材77Bに支持されている。同様に、回動軸73Bの両端は、円孔77Abおよび円孔77Bbを介して支持部材77Aおよび支持部材77Bに支持されている。
上述した構成により、回動軸73Aは、支持部材77A、プーリ76Ai、プーリ76Aj、プーリ76Ak、回転伝達部71A(上側回転伝達部71Aaおよび下側回転伝達部71Ab)、中間接続部材74、プーリ76Bi、プーリ76Bj、プーリ76Bk、および支持部材77Bを、軸O70Aを中心に互いに相対的に回動可能に接続している。同様に、回動軸73Bは、支持部材77A、プーリ76Ci、プーリ76Cj、プーリ76Ck、回転伝達部72A(上側回転伝達部72Aaおよび下側回転伝達部72Ab)、中間接続部材74、プーリ76Di、プーリ76Dj、プーリ76Dk、および支持部材77Bを、軸O70Bを中心に互いに相対的に回動可能に接続している。また、軸O70Aと軸O70Bとの間の距離は、支持部材77A、中間接続部材74、および支持部材77Bにより、一定に保持されている。
回転伝達部75は、軸O70Cを中心に回動可能に構成されている。具体的には、軸O70Cを中心に回転伝達部75をY1方向に貫通する円孔75Aが形成されている。円孔75Aには、軸O70Cを中心軸としてY1方向に延びる円柱状に形成された回動軸73Cが挿通されている。回動軸73Cは、回転伝達部75により、円孔75Aを介して軸O70Cを中心に相対的に回動可能に支持されている。すなわち、回転伝達部75は、軸O70Cを中心に回動軸73Cに対して回動可能である。
回転伝達部75は、軸O70Cを中心とした円柱状に形成され、軸O70C回りの外周面に歯が形成された歯車部(第四歯車部、第八歯車部)75Bを有する。上述したように、歯車部75Bは歯車部74Dとかみ合っている。また、歯車部75Bのピッチ円直径は、歯車部74Dのピッチ円直径よりも小さい。このため、歯車部74Dの回転数は歯車部75Bの回転数よりも減速されるとともに、歯車部74Dのトルクを歯車部75Bのトルクよりも増加させることができる。
また、中間関節部70は、軸O70Cを中心に回動可能なプーリ(回転体)78と、プーリ78に巻き付けられた操作ワイヤ(操作部材)78Wと、を有する。プーリ78は、歯車部75Bと一体に回動するように接続されている。本実施形態では、プーリ78として、プーリ(回転体)78Aおよびプーリ(回転体)78Bが設けられている。操作ワイヤ78Wとして、操作ワイヤ(操作部材)78AWおよび操作ワイヤ(操作部材)78BWが設けられている。
プーリ78Aおよびプーリ78Bには、先端関節部30のプーリ38Aまたはプーリ38Bと同様の構成を有するプーリを用いることができる。プーリ78Aの円孔(不図示)およびプーリ78Bの円孔(不図示)には、回動軸73Cが軸O70C回りに相対的に回動可能に挿通されている。プーリ78Aは、歯車部75BにY1方向に隣接して設けられ、歯車部75Bとともに回動するように歯車部75Bに固定されている。プーリ78Aは、プーリ76Aiおよびプーリ76CiとY1方向において同じ位置に配置されている。また、プーリ78Bは、歯車部75BにY2方向に隣接して設けられ、歯車部75Bとともに回動するように歯車部75Bに固定されている。プーリ78Bは、プーリ76Biおよびプーリ76DiとY1方向において同じ位置に配置されている。
プーリ78Aのプーリ溝78Aaには、操作ワイヤ78AWが巻き付けられている。操作ワイヤ78AWの一端は、固定部78Abによりプーリ溝78Aaに固定されている。操作ワイヤ78AWの他端は、医療器具1の動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ78AWは、操作ワイヤ78AWの他端から一端に向かうにしたがって、Y2方向から見て反時計回りにプーリ溝78Aaに巻き付けられている。また、プーリ78Bのプーリ溝78Baには、操作ワイヤ78BWが巻き付けられている。操作ワイヤ78BWの一端は、固定部(不図示)によりプーリ溝78Baに固定されている。操作ワイヤ78BWの他端は、医療器具1の動力伝達部に接続されている。操作ワイヤ78BWは、操作ワイヤ78BWの他端から一端に向かうにしたがって、Y2方向から見て時計回りにプーリ溝78Baに巻き付けられている。
上述の構成により、操作ワイヤ78AWを基端側に引くとプーリ78Aとともに歯車部75BがY2方向から見て時計回りに回動する。また、操作ワイヤ78BWを基端側に引くとプーリ78Bとともに歯車部75BがY2方向から見て反時計回りに回動する。
本実施形態では、プーリ78Aおよびプーリ78Bの外径は、歯車部75Bのピッチ円直径よりも大きい。これにより、歯車部75Bを回動させるために必要な操作ワイヤ78AWおよび操作ワイヤ78BWの張力を小さくすることができる。
腕部60の基端部62の内部には、長手軸O1に沿って延びる収容空間62Aが形成されている。収容空間62Aは、基端部62に固定された先端接続部材71の先端側に配置されている。収容空間62Aは、回転伝達部71Aの上側回転伝達部71Aaと下側回転伝達部71Abとの間に形成された空間と、開口62Aaを介して長手軸O1に沿う方向に連通している。また、基端部62には、軸O70Cを中心に基端部62を貫通する円孔62Baおよび円孔62Bbが形成されている。円孔62Baおよび円孔62Bbは、それぞれ収容空間62Aと連通し、収容空間62Aを挟んで配置されている。
回転伝達部75、プーリ78A、およびプーリ78Bは、収容空間62Aに配置されている。回転伝達部74Cの歯車部74Dは、開口62Aaを通過して収容空間62A内に配置され、回転伝達部75の歯車部75Bとかみ合っている。回動軸73Cの両端は、軸O70Cを中心に相対的に回動可能に円孔62Baおよび円孔62Bbにそれぞれ支持されている。回動軸73Cは、円孔62Baおよび円孔62Bbにより基端部62に支持されており、回動軸73Aは、基端部62に固定された先端接続部材71の回転伝達部71Aに支持されている。したがって、軸O70Cは、軸O70Aに対して位置が固定されている。
上述した構成を備える中間関節部70の動作について、図13および図14を参照して説明する。図13は、中間関節部70が真っ直ぐな状態を示す図である。図14は中間関節部70が屈曲した状態を示す図である。図13および図14は、中間関節部70をY2方向から見た図である。なお、図13および図14では、中間関節部70の構成を簡略化して示している。
図13に示すように、中間関節部70が真っ直ぐな状態で、操作ワイヤ78AWを基端側に引くと、プーリ78Aに固定された歯車部75BがY2方向から見て時計回りに、すなわちYa2方向に軸O70Cを中心に回動する。歯車部75Bは中間接続部材74の歯車部74Dとかみ合っているため、歯車部75Bの回動に伴って、歯車部74DがYa1方向に軸O70Aを中心に回動する。すなわち、中間接続部材74は、先端接続部材71に対してYa1方向に軸O70Aを中心に回動する。このとき、中間接続部材74とともに回動軸73B、すなわち軸O70Bも、Ya1方向に軸O70Aを中心に回転移動する。また、基端接続部材72の歯車部72Cは先端接続部材71の歯車部71Cとかみ合っているため、中間接続部材74の回動に伴って、歯車部72CがYa1方向に軸O70Bを中心に回動する。すなわち、基端接続部材72は、中間接続部材74に対してYa1方向に軸O70Bを中心に回動する。上述した動作により、図14に示すように、中間関節部70は先端接続部材71に対してYa1方向に屈曲した状態、言い換えると基端接続部材72に対してYa2方向に屈曲した状態になる。この状態から中間関節部70を真っ直ぐな状態にする場合、または中間関節部70を真っ直ぐな状態からYa1方向に屈曲させる場合には、操作ワイヤ78BWを基端側に引く。これにより、プーリ78Bに固定された歯車部75Bが上述の動作とは逆にYa1方向に軸O70Cを中心に回動する。そして、各部材が上述の動作とはそれぞれ逆方向に動作することで、中間関節部70がYa1方向に屈曲する。
上述の中間関節部70の屈曲動作について、さらに詳細に説明する。ここで、歯車部71Cのピッチ円の半径をReとし、歯車部72Cのピッチ円の半径をRfとし、歯車部74Dのピッチ円の半径をRgとし、歯車部75Bのピッチ円の半径をRhとする。歯車部75Bが軸O70Cを中心にYa2方向に角度θhだけ回動したときに、歯車部74Dが先端接続部材71に対して軸O70Aを中心にYa1方向に角度θgだけ回動した場合、角度θgは次式で表される。
θg=θh×Rh/Rg ・・・(6)
このとき、歯車部71Cが中間接続部材74に対して軸O70Aを中心にYa2方向に回動する角度をθeとし、歯車部72Cが中間接続部材74に対して軸O70Bを中心にYa1方向に回動する角度をθfとすると、角度θeは次式で表される。
θf=θe×Re/Rf ・・・(7)
本実施形態では、歯車部71Cのピッチ円直径と歯車部72Cのピッチ円直径とは等しい。また、角度θeの大きさは角度θgの大きさと同一である。よって、(7)式は次のようになる。
θf=θe=θg ・・・(8)
したがって、基端接続部材72が先端接続部材71に対して回動する角度、言い換えると先端接続部材71が基端接続部材72に対して回動する角度θ2は、次式で表される。
θ2=θg+θf=2θg ・・・(9)
すなわち、先端接続部材71が基端接続部材72に対して回動する角度θ2は、中間接続部材74が先端接続部材71に対して回動する角度θgの2倍となる。
また、歯車部74Dが回動する際のトルクをTgとし、歯車部75Bが回動する際のトルクをThとすると、トルクTgは次式で表される。
Tg=Th×Rg/Rh ・・・(10)
本実施形態では、歯車部75Bのピッチ円直径は歯車部74Dのピッチ円直径よりも小さいため、Rg/Rh(減速比)>1となる。このように減速比を大きくすることで、歯車部74DのトルクTgに対して歯車部75BのトルクThを小さくすることができる。よって、歯車部75Bを回動させる際に操作ワイヤ78AWおよび操作ワイヤ78BWに加わる張力を小さくすることができる。
なお、中間関節部70においても、先端関節部30と同様に、関節の屈曲は操作ワイヤの経路長に影響しない。
また、中間関節部70において、先端接続部材71の回転伝達部71A(上側回転伝達部71Aaおよび下側回転伝達部71Ab)、基端接続部材72の回転伝達部72A(上側回転伝達部72Aaおよび下側回転伝達部72Ab)、および中間接続部材74は、先端関節部30の構成と同様に配置されている。よって、中間関節部70は、先端関節部30は同様に、関節の軸を傾ける外力が作用する場合など外乱に対する耐性を有する。
基端関節部90は、Y1方向回りに屈曲するダブルジョイント関節である。基端関節部90の関節構造は、先端関節部30を長手軸O1回りに90度回転させた関節構造と同様であるため、その詳細な説明を省略する。なお、先端関節部30では、各回動軸に二つのプーリが設けられていたが、基端関節部90では、操作ワイヤ25W、26W、38AW、38BW、78AW、78BWをそれぞれ案内するために各回動軸に六つのプーリが設けられている。基端関節部90の基端側は、本体50に接続されている。
本体50は、長手軸O1に沿って延びる円筒状に形成された軟性の長尺部51(図2参照)と、長尺部51の基端に設けられた動力伝達部(不図示)と、を有する。操作ワイヤ25W、26W、38AW、38BW、78AW、78BWおよび基端関節部90を駆動させるための操作ワイヤは、長尺部51の内部を挿通し、動力伝達部に接続されている。動力伝達部は、各操作ワイヤを駆動する駆動力を発生する駆動源を有する。動力伝達部により各操作ワイヤを適宜駆動することで、先端関節部30、中間関節部70、および基端関節部90を屈曲させることができる。
本実施形態に係る医療器具1によれば、先端関節部30、中間関節部70、および基端関節部90は上述の構成を有するため、関節に加えられる外乱の影響を低減することができ、外乱に強いダブルジョイント関節を構成することができる。
先端関節部30において、軸O30Cは軸O30Bよりも基端側に配置されている。このため、先端関節部30の先端側に他の関節を隣接して設けることができる。また、中間関節部70において、軸O70Cは軸O70Aよりも先端側に配置されている。このため、中間関節部70の基端側に他の関節、例えば基端関節部90を隣接して設けることができる。本実施形態に係る医療器具1では、上述のように各関節間の距離を短くすることができる。なお、中間関節部70の構成を有する関節が先端関節部30の位置に配置されてもよいし、先端関節部30の構成を有する関節が中間関節部70の位置に配置されてもよい。
先端関節部30において、歯車部35Bのピッチ円直径は歯車部34Dのピッチ円直径よりも小さいため、歯車部34Dを回動させるために操作ワイヤ38AWおよび操作ワイヤ38BWに加えられる張力を低減することができる。加えて、プーリ38Aおよびプーリ38Bの外径は歯車部35Bのピッチ円直径よりも大きいため、歯車部34Dを回動させるために操作ワイヤ38AWおよび操作ワイヤ38BWに加えられる張力をさらに低減することができる。これにより、先端関節部30の基端側の関節、例えば中間関節部70の回動軸73Aおよび回動軸73Bにプーリ76Aj、76Bj、76Cj、76Djを介して加わる力を低減することができる。
なお、本実施形態では、医療器具1は内視鏡110のチャンネルに挿通されて使用されるとして説明したが、内視鏡110に外付けのガイドチューブを取り付け、ガイドチューブのチャンネルに医療器具1を挿通させてもよい。また、本実施形態では、内視鏡110は軟性の内視鏡であるとして説明したが、内視鏡110は硬性の内視鏡であってもよい。
本実施形態では、医療器具1が把持鉗子でありエンドエフェクタ10が一対の把持片11を有する例を説明したが、これに限られない。エンドエフェクタ10は、高周波ナイフなど他の処置具を有していてもよい。
本実施形態では、先端関節部30において、歯車部35Bのピッチ円直径は歯車部34Dのピッチ円直径よりも小さいとして説明したが、歯車部35Bのピッチ円直径は歯車部34Dのピッチ円直径と等しくてもよい。すなわち、歯車部34Dは減速されていなくてもよい。同様に、中間関節部70において、歯車部75Bのピッチ円直径は歯車部74Dのピッチ円直径よりも小さいとして説明したが、歯車部75Bのピッチ円直径は歯車部74Dのピッチ円直径と等しくてもよい。すなわち、歯車部74Dは減速されていなくてもよい。
本実施形態では、先端関節部30において、回転伝達部31Aと回転伝達部32Aとは、歯車部31Cおよび歯車部32Cにより、互いに連動して回動するように接続されており、回転伝達部31Aと回転伝達部32Aとの間の回転運動の伝達を行っているが、これに限られない。歯が形成されていない二つのローラを摩擦接触させることで回転運動を伝達してもよいし、ワイヤとプーリを用いて回転運動を伝達してもよい。また、その他回転運動を伝達する公知の方法を用いてもよい。なお、回転伝達部34Cと回転伝達部35との間の回転運動の伝達、および中間関節部70についても同様である。
本実施形態では、本体50の長尺部51は軟性であるとして説明したが、長尺部51は硬性であってもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本発明の第八の態様によれば、前記第二から前記第七の態様のうちのいずれか一態様に係る医療器具において、前記第二腕部は、前記第一関節部に接続された第三腕部と、前記第三腕部の基端側に接続された第二関節部と、前記第二関節部の基端側に接続された第四腕部と、を有してもよい。前記第二関節部は、第四軸と、前記第四軸と離間して設けられ、前記第四軸と平行に配置された第五軸と、前記第四軸および前記第五軸と離間して設けられ、前記第四軸より先端側であって前記第四軸および前記第五軸と平行に配置され、前記第四軸に対して位置が固定されている第六軸と、前記第四軸を中心に回動可能な第五回転伝達部を有し、前記第三腕部に固定された第四接続部材と、前記第五軸を中心に回動可能な第六回転伝達部を有し、前記第四腕部に固定された第五接続部材と、前記第四軸を中心に回動可能でありかつ前記第五軸を中心に回動可能な第六接続部材と、前記第六軸を中心に回動可能な第七回転伝達部と、を有してもよい。前記第五回転伝達部と前記第六回転伝達部とは、互いに連動して回動するように接続されていてもよい。前記第六接続部材は、前記第六接続部材の端部に設けられ、前記第七回転伝達部と連動して前記第四軸を中心に回動するように前記第七回転伝達部に接続された第八回転伝達部を有してもよい。