JPWO2017122350A1 - エポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、bステージシート、プリプレグ、放熱材料、積層板、金属基板及びプリント配線板 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、bステージシート、プリプレグ、放熱材料、積層板、金属基板及びプリント配線板 Download PDF

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Abstract

X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子と、硬化剤と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、を含むエポキシ樹脂組成物。〔一般式(1)中、Xは単結合又は2価の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。〕

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、Bステージシート、プリプレグ、放熱材料、積層板、金属基板及びプリント配線板に関する。
近年、電子機器の小型化及び高性能化によるエネルギー密度の増加に伴い、単位体積当たりの発熱量が増加傾向にあることから、電子機器を構成する絶縁材料には高い熱伝導性が求められている。また、絶縁材料には、絶縁耐圧の高さ及び成型の容易さの観点から、広くエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の高熱伝導化の方法として、例えば特開平11−323162号公報には、配向性の高いメソゲン基を有するモノマーを含む樹脂組成物を重合させた液晶性エポキシ樹脂を利用することが有効であることが記載されている。
更に、エポキシ樹脂の熱伝導性を高めるために、熱伝導率が高く且つ絶縁性のフィラーを樹脂に添加する方法が一般に用いられている。熱伝導率が高く且つ絶縁性のフィラーとしては、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。
しかしながら、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物粒子と液晶性エポキシ樹脂とをコンポジット化すると、液晶性エポキシ樹脂の配向を無機窒化物粒子が阻害し、エポキシ樹脂硬化物の熱伝導率が低下する場合がある。
上記状況を鑑み、本発明の態様によれば、熱伝導率が高い硬化物を形成可能なエポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、Bステージシート及びプリプレグ並びに熱伝導率が高い放熱材料、積層板、金属基板及びプリント配線板が提供される。
本発明は以下の態様を包含する。
<1> X線回折における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子と、
硬化剤と、
下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、
を含むエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。kは0〜7の整数を示す。mは0〜8の整数を示す。lは0〜12の整数を示す。〕

<2> 1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する前記<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<3> X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である前記<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<4> 前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%〜95質量%である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<5> 更にアルミナ粒子を含み、前記アルミナ粒子の含有率が、前記窒化ホウ素粒子と前記アルミナ粒子との総量に対して、5質量%〜70質量%である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である熱伝導材料前駆体。
<7> 前記半硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する前記<6>に記載の熱伝導材料前駆体。
<8> X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である前記<7>に記載の熱伝導材料前駆体。
<9> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物であるBステージシート。
<10> 前記エポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する前記<9>に記載のBステージシート。
<11> X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である前記<10>に記載のBステージシート。
<12> 繊維基材と、
前記繊維基材に含浸される前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物と、
を有するプリプレグ。
<13> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である放熱材料。
<14> 前記エポキシ樹脂組成物の硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する前記<13>に記載の放熱材料。
<15> X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である前記<14>に記載の放熱材料。
<16> 被着材と、
前記被着材上に設けられる、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、前記<9>〜<11>のいずれか1項に記載のBステージシート及び前記<12>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
を有する積層板。
<17> 金属箔と、
金属板と、
前記金属箔と前記金属板との間に配置される、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、前記<9>〜<11>のいずれか1項に記載のBステージシート及び前記<12>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
を有する金属基板。
<18> 配線層と、
金属板と、
前記配線層と前記金属板との間に配置される、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、前記<9>〜<11>のいずれか1項に記載のBステージシート及び前記<12>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
を有するプリント配線板。
本発明の態様によれば、熱伝導率が高い硬化物を形成可能なエポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、Bステージシート及びプリプレグ並びに熱伝導率が高い放熱材料、積層板、金属基板及びプリント配線板が提供される。
実施例1のエポキシ樹脂硬化物のX線回折(XRD)スペクトルである。 比較例1のエポキシ樹脂硬化物のX線回折(XRD)スペクトルである。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
また、「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されてもよく、二以上の層が脱着可能であってもよい。
本明細書において層又は積層体の平均厚み(厚みの平均値ともいう)は、対象となる層又は積層体の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
層又は積層体の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本明細書において、層又は積層体の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、積層体の一部を構成する1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、積層体の積層方向に平行な断面を観察することで測定する。
更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
<エポキシ樹脂組成物>
エポキシ樹脂組成物は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子(以下、「特定窒化ホウ素粒子」とも称する)と、硬化剤と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマー(以下、「特定液晶性エポキシモノマー」とも称する)と、を含む。エポキシ樹脂組成物は、更にその他の成分を含んでいてもよい。

一般式(1)中、Xは単結合又は下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基を示す。nは0〜4の整数を示す。kは0〜7の整数を示す。mは0〜8の整数を示す。lは0〜12の整数を示す。

上記2価の基からなる群(I)において、各2価の基の結合手の連結方向はいずれであってもよい。
X線回折(XRD)における窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピーク(以下、「窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピーク」とも称する)の半値幅を0.5度以下(2θ=0.5度以下)とすることにより、特定窒化ホウ素粒子表面での特定液晶性エポキシモノマーの配向性が高まるものと考えられる。その結果、エポキシ樹脂組成物の硬化物では、特定液晶性エポキシモノマーの重合体である液晶性エポキシ樹脂の配向が、特定窒化ホウ素粒子により阻害されることが抑制され、エポキシ樹脂組成物の硬化物における熱伝導率が向上するものと考えられる。
以下、エポキシ樹脂組成物の構成成分について詳細に説明する。
[特定窒化ホウ素粒子]
エポキシ樹脂組成物は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子を含む。
特定窒化ホウ素粒子は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子であれば特に限定されず、通常用いられる窒化ホウ素粒子から適宜選択して用いることができる。
半値幅2θが0.5度以下である結晶性の高い特定窒化ホウ素粒子を使用することで、特定窒化ホウ素粒子を含むエポキシ樹脂組成物中の特定液晶性エポキシモノマーの配向性が向上し、更にはエポキシ樹脂組成物の硬化物中の液晶性エポキシ樹脂の配向性が向上する傾向にある。
特定液晶性エポキシモノマーの配向性をより高める観点から、X線回折(XRD)における窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅2θは0.45度以下であることが好ましい。これは、窒化ホウ素粒子の結晶性を高めることにより、窒化ホウ素の結晶自体の規則性が高くなり、結晶に隣接する特定液晶性エポキシモノマーの構造の規則性、つまりは、配向性が向上するためと考えられる。
本明細書における窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅2θは、広角X線回折装置(例えば、(株)リガク製、「RINT2500HL」)を用いて、下記条件で窒化ホウ素粒子又はエポキシ樹脂組成物の半硬化物若しくは硬化物を測定試料としてX線回折を行い、得られた値を下記ブラッグの式により換算することによって求められる。
(測定条件)
・X線源:Cu
・X線出力:50kV、250mA
・発散スリット(DS):1.0度
・散乱スリット(SS):1.0度
・受光スリット(RS):0.3mm
・走査速度:1.0度/分
ブラッグの式: 2dsinθ=nλ
ここで、dは結晶面間隔、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長(0.15406nm)を示している。
特定窒化ホウ素粒子は、単結晶粒子、単結晶の凝集粒子、多結晶粒子、多結晶の凝集粒子等のいずれであってもよい。また、特定窒化ホウ素粒子の結晶構造は、六方晶、立方晶及びウルツ鉱型構造のいずれであってもよい。放熱材料のフィラーとして使用する観点からは、特定窒化ホウ素粒子の結晶構造は六方晶であることが好ましい。
特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、放熱材料のフィラーとして使用する観点からは0.01μm〜1mmであることが好ましい。特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、特定窒化ホウ素粒子を高充填する観点から、0.1μm〜100μmであることがより好ましく、0.5μm〜50μmであることが更に好ましい。
特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター(株)、「LS230」)を用いて行うことができる。
エポキシ樹脂組成物中の窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、エポキシ樹脂組成物中から窒化ホウ素粒子を抽出した後、レーザー回折散乱粒度分布測定装置を用いて測定される。具体的には、エポキシ樹脂組成物に含有される窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径の測定は下記の方法で可能である。まず、有機溶剤、硝酸、王水等を用いて、エポキシ樹脂組成物中から窒化ホウ素粒子を抽出し、超音波分散機等で充分に分散して分散液を調製する。この分散液を試料とし、レーザー回折散乱粒度分布測定装置によって、窒化ホウ素粒子の粒度分布の小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求める。
また、特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、3D CT法又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いる方法で測定することもできる。尚、分析装置によって得意な粒径が異なるため、レーザー回折散乱粒度分布測定、3D CT法、及び走査型電子顕微鏡を用いる方法から選択される複数の手法を組み合わせた方がより精度良く測定できることが知られている。
3D CT法を用いる場合、(株)島津製作所、inspeXio SMX−225CTを用いることで、特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径を測定可能である。具体的には、エポキシ樹脂組成物の半硬化物若しくは硬化物、又は樹脂シート若しくはその硬化物を10mm角に切り出した試料を試料台に固定し、そこにX線を照射し、撮影した三次元像から、樹脂、特定窒化ホウ素粒子等の割合を画像解析により分析して、各成分の割合を算出することにより、特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径を算出することができる。尚、樹脂と特定窒化ホウ素粒子との組み合わせによっては特定窒化ホウ素粒子の判別が難しいことがあり、その場合は3DCT法を他の手法と組み合わせて粒径を計算することがより好ましい。
SEMを用いる方法により特定窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径を求める場合、収束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡(SEM FIB)を用いることができる。SEM FIBを用いる場合、例えば、FIB光学系とSEM光学系との両者を備える(株)日立ハイテクノロジーズ、「nano DUE’T NB5000型」を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂組成物の半硬化物若しくは硬化物、又は樹脂シート若しくはその硬化物に対して垂直にGaイオンビームを入射して断面加工を行いながら、断面に対して傾けて設置したSEMで観察を行うことにより、体積平均粒子径を求めることができる。加工ピッチは1nm〜100nmで撮影を行うことが好ましく、撮影の対象物のサイズに合わせてピッチを調整してもよい。撮影した三次元像から、特定窒化ホウ素粒子を二値化により抽出して、粒子が球であると仮定して計算することにより、体積平均粒子径を算出することができる。
特定窒化ホウ素粒子は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下であれば、その製造方法は特に制限されず、直接窒化法、還元窒化法、気相反応法等のいずれの製造法により形成されていてもよい。
特定エポキシ樹脂組成物における特定窒化ホウ素粒子の含有率は特に制限されない。特定窒化ホウ素粒子の含有率は、粘度調整の観点から、エポキシ樹脂組成物中の全固形分中、20質量%〜95質量%であることが好ましく、熱伝導率の観点から、30質量%〜90質量%であることがより好ましく、40質量%〜85質量%であることが更に好ましい。
尚、本明細書において、エポキシ樹脂組成物中の固形分とは、樹脂組成物の構成成分から揮発性の成分を除去した残分を意味する。
[特定液晶性エポキシモノマー]
エポキシ樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される特定液晶性エポキシモノマーを含む。

一般式(1)中、Xは単結合又は下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。kは0〜7の整数を示す。mは0〜8の整数を示す。lは0〜12の整数を示す。

上記2価の基からなる群(I)において、各2価の基の結合手の連結方向はいずれであってもよい。
本明細書における特定液晶性エポキシモノマーは、いわゆるメソゲン基を有するモノマーである。特定液晶性エポキシモノマーが硬化剤とともに硬化物を形成すると、硬化物中にメソゲン基(ビフェニル基、ターフェニル基、ターフェニル類縁基、これらがアゾメチン基又はエステル基で接続された基等)に由来する高次構造(周期構造とも称する)が形成される。ここでいう高次構造(周期構造)とは、エポキシ樹脂組成物の硬化後に分子が配向配列している状態を意味し、例えば、硬化物中に結晶構造又は液晶構造が存在する状態を意味する。このような結晶構造又は液晶構造は、例えば、直交ニコル下での偏光顕微鏡による観察又はX線散乱により、その存在を確認することができる。また、結晶構造又は液晶構造が存在するとエポキシ樹脂硬化物の貯蔵弾性率の温度に対する変化が小さくなるので、この貯蔵弾性率の変化を測定することにより、結晶構造又は液晶構造の存在を間接的に確認できる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導率を有することができる傾向にある。この理由は、例えば、以下のように考えることができる。一般式(1)で表される特定液晶性エポキシモノマーが、硬化剤とともに硬化物を形成すると、特定液晶性エポキシモノマーのメソゲン基に由来する規則性の高い高次構造が硬化物中に形成される。このため、絶縁樹脂における熱伝導の媒体であるフォノン伝導の散乱を抑制することができ、これにより高い熱伝導率を達成することができると考えられる。また、一般的には、フィラーの存在により、液晶性エポキシ樹脂による規則性の高い高次構造の形成が阻害される。しかしながら、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である特定窒化ホウ素粒子をフィラーとして用いると、特定液晶性エポキシ樹脂の配向の阻害が抑制され、その結果、熱伝導率が向上すると考えることができる。
一般式(1)におけるXは、下記2価の基からなる群(II)より選択される少なくとも1種の連結基であることが好ましい。

一般式(1)におけるXは、下記2価の連結基からなる群より選択される少なくとも1種の連結基であることがより好ましい。

一般式(1)におけるYは、それぞれ独立に、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜4の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基又は塩素原子であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。
一般式(1)におけるnは、それぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。kは0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。mは0〜4の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。lは0〜4の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
本発明における特定液晶性エポキシモノマーは、一般式(1)において、Xが単結合又は上記2価の基からなる群(II)より選択される少なくとも1種の連結基であり、Yがそれぞれ独立に、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜4の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基であり、nが0〜2の整数であり、kが0〜3の整数であり、mが0〜4の整数であり、lが0〜4の整数である液晶性エポキシモノマーであることが好ましい。
特定液晶性エポキシモノマーは、一般式(1)において、Xが単結合又は上記2価の基からなる群(II)より選択される少なくとも1種の連結基であり、Yがそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基又は塩素原子であり、nが0又は1であり、kが0又は1であり、mが0又は1であり、lが0又は1である液晶性エポキシモノマーであることがより好ましい。
一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーの例としては、液晶相を発現する温度範囲が25℃以上であり、液晶性エポキシモノマーの配向性が向上し、硬化物の熱伝導性を向上させる観点から、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)ベンゼン、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート等が好ましく、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセンがより好ましい。
特定液晶性エポキシモノマーは、単一種で用いても、2種以上で用いてもよい。
一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーは、公知の方法により製造することができ、特許第4619770号公報、特開2011−98952号公報、特開2011−74366号公報等に記載の製造方法を参照することができる。
エポキシ樹脂組成物中における特定液晶性エポキシモノマーは、その一部が硬化剤等により部分的に重合してプレポリマーを形成していてもよい。特定液晶性エポキシモノマーは一般的に結晶化し易く、溶媒への溶解度が低いものが多い。特定液晶性エポキシモノマーの少なくとも一部を重合させると、特定液晶性エポキシモノマーの結晶化が抑制される傾向にある。このため、特定液晶性エポキシモノマーをプリポリマー化しておくと、エポキシ樹脂組成物の成形性が向上する傾向にある。
エポキシ樹脂組成物における特定液晶性エポキシモノマーの含有率は、成形性、接着性及び熱伝導性の観点から、エポキシ樹脂組成物中の全固形分に対して、3体積%〜30体積%であることが好ましく、5体積%〜25体積%であることがより好ましい。
尚、本明細書において、全固形分に対する特定液晶性エポキシモノマーの体積基準の含有率は、次式により求めた値とする。
全固形分に対する特定液晶性エポキシモノマーの含有率(体積%)={(Bw/Bd)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd))}×100
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:窒化ホウ素粒子の質量組成比(質量%)
Bw:特定液晶性エポキシモノマーの質量組成比(質量%)
Cw:硬化剤の質量組成比(質量%)
Dw:その他の任意成分(溶媒を除く)の質量組成比(質量%)
Ad:窒化ホウ素粒子の比重
Bd:特定液晶性エポキシモノマーの比重
Cd:硬化剤の比重
Dd:その他の任意成分(溶媒を除く)の比重
エポキシ樹脂組成物は、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有することが好ましい。1周期の長さが2nm〜3nmであることにより、より高い熱伝導性を発揮することが可能である。
周期構造における1周期の長さは、広角X線回折装置(例えば、(株)リガク製、「RINT2500HL」)を用いて、下記条件でエポキシ樹脂組成物の半硬化物又は硬化物を測定試料としてX線回折を行い、これにより得られた回折角度を、下記ブラッグの式により換算することにより得られる。
(測定条件)
・X線源:Cu
・X線出力:50kV、250mA
・発散スリット(DS):1.0度
・散乱スリット(SS):1.0度
・受光スリット(RS):0.3mm
・走査速度:1.0度/分
ブラッグの式: 2dsinθ=nλ
ここで、dは1周期の長さ、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長(0.15406nm)を示している。
エポキシ樹脂組成物は、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下であることが好ましく、0.15度以下であることがより好ましく、0.13度以下であることが更に好ましい。この半値幅が狭い程、周期構造の規則性が高いことを示している。X線回折における周期構造に由来するピーク(以下、「XRDピーク」とも称する)の半値幅2θが0.2度以下であることにより、より高い熱伝導性を発揮することができる。
[硬化剤]
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含む。本明細書における硬化剤は、特定エポキシ樹脂モノマーと硬化反応が可能な化合物であれば特に制限されるものではない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。これらを1種単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物の半硬化物又は硬化物の周期構造形成の観点から、アミン硬化剤又はフェノール硬化剤が好ましく、フェノール硬化剤がより好ましい。
アミン硬化剤の例としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等が挙げられる。中でも、高次構造形成の観点からは、1,5−ジアミノナフタレンが好ましい。コスト及び取扱性の観点からは4,4’−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
フェノール硬化剤としては、低分子フェノール化合物及びそれらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。低分子フェノール化合物の例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能フェノール化合物、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能フェノール化合物、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノール化合物などが挙げられる。また、これらの低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
フェノール硬化剤としては、熱伝導率の観点からはカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能フェノール化合物が好ましい。耐熱性の観点からは、これらの2官能フェノール化合物をメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノールノボラック樹脂として具体的には、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ハイドロキノンノボラック樹脂等の1種のフェノール化合物をノボラック化した樹脂、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールハイドロキノンノボラック樹脂等の2種類又はそれ以上のフェノール化合物をノボラック化した樹脂などを挙げることができる。
硬化剤としてフェノール硬化剤を用いる場合は、必要に応じて硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤を併用することで、エポキシ樹脂組成物を更に充分に硬化させることができる傾向にある。硬化促進剤の種類は特に制限されず、通常使用される硬化促進剤から選択してよい。例えば、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ボレート塩化合物等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は、配合する硬化剤の種類及び特定液晶性エポキシモノマーの物性を考慮して適宜設定することができる。
具体的には、特定液晶性エポキシモノマーにおけるエポキシ基1モルに対して硬化剤の化学当量が0.005当量〜5当量であることが好ましく、0.01当量〜3当量であることがより好ましく、0.5当量〜1.5当量であることが更に好ましい。
硬化剤の含有量がエポキシ基1モルに対して0.005当量以上であると、特定液晶性エポキシモノマーの硬化速度をより向上することができる傾向にある。また、硬化剤の含有量がエポキシ基1モルに対して5当量以下であると、硬化反応をより適切に制御することができる傾向にある。
尚、本明細書中での化学当量は、例えば硬化剤としてフェノール硬化剤を使用した際は、エポキシ基1モルに対するフェノール硬化剤の水酸基のモル数を表わす。
[その他の成分]
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂又は硬化剤が固体である場合はこれらを溶解させるため、又は、液体である場合は粘度を低減させるために、溶媒を含有してもよい。
溶媒の例としては、アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、キシレン、クレゾール、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、スチレン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、ノルマルヘキサン、1−ブタノール、2−ブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等の一般的に各種化学製品の製造技術で利用されている有機溶剤が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である特定窒化ホウ素粒子以外のその他の窒化ホウ素粒子を含有してもよい。
その他の窒化ホウ素粒子の含有率は、特定窒化ホウ素粒子及びその他の窒化ホウ素粒子の総量に対して、0質量%〜50質量%であることが好ましく、0質量%〜20質量%であることがより好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である特定窒化ホウ素粒子以外のセラミック粒子、カップリング剤、分散剤、エラストマー等を含有してもよい。
X線回折(XRD)における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である特定窒化ホウ素粒子以外のセラミック粒子としては、アルミナ粒子、シリカ粒子、酸化マグネシウム粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子等が挙げられ、アルミナ粒子が好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、アルミナ粒子を含有していても、含有していなくてもよい。エポキシ樹脂組成物がアルミナ粒子を含有する場合には、窒化ホウ素粒子(特定窒化ホウ素粒子及びその他の窒化ホウ素粒子)及びアルミナ粒子の総量に対するアルミナ粒子の含有率は、5質量%〜70質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。
アルミナ粒子の体積平均粒子径は、放熱材のフィラーとして使用する観点からは0.01μm〜1mmであることが好ましく、アルミナ粒子を高充填する観点から、0.1μm〜100μmであることがより好ましい。
エポキシ樹脂組成物がアルミナ粒子を含む場合、アルミナ粒子は結晶性が高いアルミナ粒子であることが好ましく、α-アルミナ粒子であることがより好ましい。
アルミナ粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター(株)、「LS230」)を用いて、上述の窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径の測定と同様の方法で行うことができる。
[エポキシ樹脂組成物の製造方法]
エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、通常行われる樹脂組成物の製造方法を特に制限無く用いることができる。特定窒化ホウ素粒子、液晶性エポキシモノマー及び硬化剤並びに必要に応じて用いられるその他の成分を混合する方法としては、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。また、適当な溶媒を添加して、分散又は溶解を行うことができる。
具体的には、例えば、特定窒化ホウ素粒子、液晶性エポキシモノマー及び硬化剤を適当な溶媒に溶解又は分散したものに、必要に応じてその他の成分を混合することで、エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
[エポキシ樹脂組成物の用途等]
エポキシ樹脂組成物では特定液晶性エポキシモノマーの配向性が高く、このエポキシ樹脂組成物の半硬化物又は硬化物は熱伝導性に優れる傾向にある。したがって、エポキシ樹脂組成物は、各種の電気機器及び電子機器の発熱性電子部品(例えば、IC(Integrated Circuit)チップ又はプリント配線基板)の放熱材料に好適に用いることができる。
具体的には、エポキシ樹脂組成物は、Bステージシート、プリプレグ等の熱伝導材料前駆体、積層板、金属基板、プリント配線板等の放熱材料などに使用することができる。
<熱伝導材料前駆体>
本実施形態の熱伝導材料前駆体は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である。本実施形態の熱伝導材料前駆体を用いることにより、取扱い性に優れ且つ高い熱伝導性を有する放熱材料を得ることができる。
熱伝導材料前駆体としては、本実施形態のエポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物であるBステージシート、繊維基材とこの繊維基材に含浸される本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物とを有するプリプレグ等を挙げることができる。
上述のとおり、エポキシ樹脂組成物の半硬化物は、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有することが好ましい。1周期の長さが2nm〜3nmであることにより、エポキシ樹脂組成物の半硬化物はより高い熱伝導性を発揮することができる傾向にある。
更に、エポキシ樹脂組成物の半硬化物は、周期構造に由来するX線回折(XRD)ピークの半値幅2θが0.2度以下であることが好ましい。周期構造に由来するXRDピークの半値幅が0.2度以下であることにより、エポキシ樹脂組成物の半硬化物は更に高い熱伝導性を発揮することができる傾向にある。
以下、熱伝導材料前駆体の例として、Bステージシート及びプリプレグについて説明するが、熱伝導材料前駆体はこれらに限定されるものではない。
[Bステージシート]
本実施形態のBステージシートは、本実施形態のエポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物である。本実施形態のBステージシートは、例えば、本実施形態のエポキシ樹脂組成物をシート状に成形し、これを半硬化することにより得られる。Bステージシートが本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物であることにより、硬化後の熱伝導性に優れるBステージシートが得られる。
ここで「半硬化」とは、一般にBステージ状態と称される状態を言い、常温(25℃)における粘度が10Pa・s〜10Pa・sであるのに対して、100℃における粘度が10Pa・s〜10Pa・sに低下する状態を意味する。Bステージは、JIS K 6900:1994又はISO 472:1988で定義される。尚、粘度は、ねじり型動的粘弾性測定装置等により測定が可能である。
Bステージシートは、例えば、支持体上に本実施形態のエポキシ樹脂組成物を付与(塗布)し、乾燥して樹脂シートを作製し、この樹脂シートを半硬化することで製造することができる。エポキシ樹脂組成物の付与方法及び乾燥方法については特に制限なく通常用いられる方法を適宜選択することができる。具体的には、エポキシ樹脂組成物の付与方法として、コンマコート法、ダイコート法、ディップコート法等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の乾燥方法としては、バッチ処理の場合には箱型温風乾燥機等が使用でき、塗工機との連続処理の場合には多段式温風乾燥機等が使用できる。乾燥の条件については特に制限はなく、温風乾燥機を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物の塗工物の膨れを防ぐ観点から、溶媒の沸点より低い温度範囲の温風で熱処理する工程を含むことが好ましい。
樹脂シートを半硬化する方法としては、特に制限はなく、通常用いられる方法を適宜選択することができる。例えば、樹脂シートを熱処理することで、エポキシ樹脂組成物を半硬化することができる。半硬化のための熱処理方法には特に制限はない。
樹脂シートを半硬化するための温度範囲は、エポキシ樹脂組成物に含まれる液晶性エポキシモノマーの種類等に応じて適宜選択することができる。Bステージシートの強度の観点から、熱処理により硬化反応を若干進めることが好ましく、熱処理の温度範囲は80℃〜180℃であることが好ましく、100℃〜160℃であることがより好ましい。また、半硬化のための熱処理の時間としては、特に制限はなく、樹脂シートの硬化速度、樹脂の流動性及び接着性の観点から適宜選択することができる。半硬化のための熱処理の時間は、1分以上30分以内であることが好ましく、1分以上10分以内であることがより好ましい。
半硬化のための熱処理の際に加圧してもよく、その加圧条件は特に限定されない。通常は、0.5MPa〜15MPaの範囲で加圧し、1MPa〜10MPaの範囲で加圧することが好ましい。熱処理及び加圧処理には、真空プレス機等が好適に用いられる。
Bステージシートの平均厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm〜500μmとすることができる。Bステージシートの平均厚みは、熱伝導性、電気絶縁性及び可とう性の観点から、80μm〜300μmであることが好ましい。
ここで、Bステージシートの平均厚みは、対象となるBステージシートの5点の厚みを、マイクロメーター等を用いて測定し、その算術平均値として与えられる値である。
また、2層以上の樹脂シート(エポキシ樹脂組成物のシート状成型物であり、硬化処理前のもの)を積層しながら、熱プレスすることにより、Bステージシートを作製することもできる。
Bステージシートは、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する、エポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物であることが好ましい。半硬化物の1周期の長さが2nm〜3nmであることにより、Bステージシートはより高い熱伝導性を発揮することができる傾向にある。
更に、Bステージシートは、周期構造に由来するX線回折(XRD)ピークの半値幅2θが0.2度以下であることが好ましい。周期構造に由来するXRDピークの半値幅2θが0.2度以下であることにより、Bステージシートは更に高い熱伝導性を発揮することができる。
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、繊維基材と、この繊維基材に含浸される本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物と、を有する。
プリプレグは、必要に応じて、保護フィルム等のその他の層を有していてもよい。エポキシ樹脂組成物の半硬化物が、本実施形態に係る特定窒化ホウ素粒子を含むことで、熱伝導性に優れる硬化物を形成可能なプリプレグを得ることができる。
プリプレグを構成する繊維基材としては、金属箔張り積層板又は多層プリント配線板を製造する際に用いられる繊維基材であれば特に制限されない。具体的には、織布、不織布等の繊維基材が挙げられる。ただし、目が極めて詰まった繊維素材を繊維基材として使用する場合、窒化ホウ素粒子が繊維の隙間に詰まってしまい、エポキシ樹脂組成物の含浸が困難となる場合があるため、繊維基材の目開きは窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径の5倍以上とすることが好ましい。
繊維基材の材質の例としては、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ繊維、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維;アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維;及びこれらの混抄系繊維基材が挙げられる。特に、ガラス繊維の織布が好ましく用いられる。これにより屈曲性のある任意に折り曲げ可能なプリント配線板を得ることができる。更に、製造プロセスでの温度、吸湿等に伴うプリント配線板の寸法変化を小さくすることも可能となる。
繊維基材の厚みは特に限定されず、より良好な可とう性を付与する観点から、30μm以下であることが好ましく、エポキシ樹脂組成物の含浸性の観点から15μm以下であることがより好ましい。繊維基材の厚みの下限は特に制限されず、通常5μm程度である。
プリプレグにおいて、エポキシ樹脂組成物の含浸率は、繊維基材及びエポキシ樹脂組成物の総質量に対して50質量%〜99.9質量%であることが好ましい。
プリプレグは、例えば、上記と同様に調製されたエポキシ樹脂組成物を、繊維基材に含浸し、80℃〜180℃の加熱により溶媒を除去して製造することができる。プリプレグにおける溶媒残存率は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることが更に好ましい。
溶媒残存率は、プリプレグを40mm角に切り出し、190℃に予熱した恒温槽中に2時間乾燥させたときの、乾燥前後の質量変化から求める。
熱処理により溶媒を除去する乾燥時間については特に制限されない。また、エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸する方法に特に制限はなく、例えば、塗工機を使用して付与(塗布)する方法を挙げることができる。詳細には、繊維基材をエポキシ樹脂組成物にくぐらせて引き上げる縦型塗工法、支持フィルム上にエポキシ樹脂組成物を付与してから繊維基材を押し付けて含浸させる横型塗工法等を挙げることができる。繊維基材内での熱伝導性フィラーの偏在を抑える観点からは、横型塗工法が好適である。
プリプレグにおいては、繊維基材に含浸された本実施形態のエポキシ樹脂組成物が半硬化し、Bステージ状態となっている。プリプレグにおけるBステージ状態は、上述のBステージシートにおけるBステージ状態と同義であり、Bステージ化する方法についても同様の条件を適用できる。
また、プリプレグは、プレス、ロールラミネータ等による加熱加圧処理により、積層又は基材に貼付する前に予め表面を平滑化してから使用してもよい。加熱加圧処理の方法の例は、上述のBステージシートで挙げた方法と同様である。また、プリプレグの加熱加圧処理における加熱温度及びプレス圧の条件についても、Bステージシートの加熱処理及び加圧処理で挙げた条件と同様である。
プリプレグの平均厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば50μm以上500μm以下とすることができる。プリプレグの平均厚みは、熱伝導率及び可とう性の観点から、60μm以上300μm以下であることが好ましい。
ここで、プリプレグの平均厚みは、対象となるプリプレグの5点の厚みを、マイクロメーター等を用いて測定し、その算術平均値として与えられる値である。
また、プリプレグは2以上のプリプレグを積層して熱プレスすることにより作製することもできる。
<放熱材料>
本実施形態の放熱材料は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物である。放熱材料として具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物を有する積層板、金属基板、プリント配線板等を挙げることができる。放熱材料は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含むことで優れた熱伝導性を有する。
上述のとおり、エポキシ樹脂組成物の硬化物は、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有することが好ましい。1周期の長さが2nm〜3nmであることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物はより高い熱伝導性を発揮することができる傾向にある。
更に、周期構造に由来するX線回折(XRD)ピークの半値幅2θが0.2度以下であることが好ましい。周期構造に由来するXRDピークの半値幅が0.2度以下であることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物は更に高い熱伝導性を発揮することができる傾向にある。
[積層板]
本実施形態における積層板は、被着材と、この被着材上に設けられる、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート及び本実施形態のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、を有する。本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層の硬化層又は本実施形態のBステージシート若しくはプリプレグである樹脂含有層の硬化層を有することで、熱伝導性に優れた積層板が得られる。
被着材の例としては、金属箔、金属板等を挙げることができる。被着材は、硬化層の片面のみに設けても、両面に設けてもよい。
金属箔としては特に制限されず、通常用いられる金属箔から適宜選択することができる。具体的には、金箔、銅箔、アルミニウム箔等を挙げることができ、一般的には銅箔が用いられる。金属箔の厚みは、1μm〜200μmであり、使用する電力等に応じて好適な厚みを選択することができる。
また、金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等の層を中間層とし、この両表面に0.5μm〜15μmの銅層と10μm〜150μmの銅層とを設けた3層構造の複合箔を用いてもよい。金属箔として、アルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
金属板は熱伝導率が高く、熱容量が大きい金属材料からなることが好ましい。金属板の材料としては具体的には、銅、アルミニウム、鉄、リードフレームに使われる合金等が例示できる。
金属板としては特に制限されず、通常用いられる金属板から適宜選択することができる。例えば、金属板としては、軽量化又は加工性を優先する場合はアルミニウム板を使用し、放熱性を優先する場合は銅板を使用する、というように目的を応じて材質を選定することができる。
金属板の平均厚みは用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。加工性の観点から、金属板の厚みは0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
また、金属板は、生産性を高める観点から、必要分より大きなサイズで作製されて電子部品を実装した後に、使用するサイズに切断されることが好ましい。そのため、金属基板に用いる金属板は切断加工性に優れることが望ましい。
金属板としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金を材質とすることができる。アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金は、その化学組成と熱処理条件により多種類のものが入手可能である。中でも、切削し易い等の加工性が高く、且つ強度に優れた種類のアルミニウム板又はアルミニウム合金板を選定することが好ましい。
積層板においては、硬化層は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート又は本実施形態のプリプレグである樹脂含有層の硬化層を有する単層構造であってもよく、2層以上を有する積層構造であってもよい。
硬化層が2層以上の積層構造を有する場合、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層を2層以上有する形態、本実施形態のBステージシートを2枚以上有する形態及び本実施形態のプリプレグを2枚以上有する形態のいずれであってもよい。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート及び本実施形態のプリプレグからなる群より選択される少なくとも2種以上を組み合わせて有してもよい。
本実施形態における積層板は、例えば、被着材上に、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を付与して樹脂層を形成し、これを熱処理及び加圧処理して、樹脂層を硬化させ、被着材に密着させることにより得られる。又は、被着材に本実施形態のBステージシート又はプリプレグを積層したものを準備し、これを熱処理及び加圧処理して、Bステージシート又はプリプレグを硬化させ、被着材に密着させることにより得られる。
エポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、Bステージシート及びプリプレグを硬化する際の硬化方法は特に制限されない。
例えば、熱処理及び加圧処理により硬化することが好ましい。熱処理及び加圧処理における加熱温度は特に限定されない。加熱温度は、通常100℃〜250℃の範囲であり、130℃〜230℃の範囲であることが好ましい。
また、熱処理及び加圧処理における加圧条件は特に限定されない。加圧条件は、通常1MPa〜10MPaの範囲であり、1MPa〜5MPaの範囲であることが好ましい。また、熱処理及び加圧処理には、真空プレス機等が好適に用いられる。
エポキシ樹脂組成物からなる樹脂層の硬化層又はBステージシート若しくはプリプレグである樹脂含有層の硬化層の平均厚みは500μm以下であることが好ましく、50μm〜300μmであることがより好ましく、60μm〜300μmであることが更に好ましい。平均厚みが500μm以下であると可とう性に優れ、曲げ加工の際にクラックが発生するのを抑えられ、平均厚みが300μm以下であると、曲げ加工の際のクラックの発生をより抑えられる傾向にある。また、平均厚みが50μm以上であると、作業性に優れる傾向にある。
ここで、硬化層の平均厚みは、対象となる積層板の硬化層の5点の厚みを、マイクロメーター等を用いて測定し、その算術平均値として与えられる値である。
[金属基板]
本実施形態の金属基板は、金属箔と、金属板と、この金属箔と金属板との間に配置される、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート及び本実施形態のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、を有する。本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層の硬化層又は本実施形態のBステージシート若しくはプリプレグである樹脂含有層の硬化層を有することで、熱伝導性に優れた金属基板が得られる。
金属箔としては特に制限されず、通常用いられる金属箔から適宜選択することができる。具体的には、金箔、銅箔、アルミニウム箔等を挙げることができ、一般的には銅箔が用いられる。金属箔の厚みは、1μm〜200μmであり、使用する電力等に応じて好適な厚みを選択することができる。
また、金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等の層を中間層とし、この両表面に0.5μm〜15μmの銅層と10μm〜150μmの銅層とを設けた3層構造の複合箔を用いてもよく、アルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
金属板は熱伝導率が高く、熱容量が大きい金属材料からなることが好ましい。金属材料としては、具体的には、銅、アルミニウム、鉄、リードフレームに使われる合金等が例示できる。
金属板としては特に制限されず、通常用いられる金属板から適宜選択することができる。例えば、金属板としては、軽量化又は加工性を優先する場合はアルミニウム板を使用し、放熱性を優先する場合は銅板を使用する、というように目的を応じて材質を選定することができる。
金属板の平均厚みは用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。加工性の観点から、金属板の厚みは0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
また、金属板は、生産性を高める観点から、必要分より大きなサイズで作製されて電子部品を実装した後に、使用するサイズに切断されることが好ましい。そのため、金属基板に用いる金属板は切断加工性に優れることが望ましい。
金属板としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金を材質とすることができる。アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金は、その化学組成と熱処理条件により多種類のものが入手可能である。中でも、切削し易い等の加工性が高く、且つ強度に優れた種類を選定することが好ましい。
金属基板においては、硬化層は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート又は本実施形態のプリプレグである樹脂含有層の硬化層を有する単層構造であってもよく、2層以上を有する積層構造であってもよい。
硬化層が2層以上の積層構造を有する場合、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層を2層以上有する形態、本実施形態のBステージシートを2枚以上有する形態及び本実施形態のプリプレグを2枚以上有する形態のいずれであってもよい。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート及び本実施形態のプリプレグからなる群より選択される少なくとも2種以上を組み合わせて有してもよい。
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、配線層と、金属板と、この配線層と金属板との間に配置される、本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、本実施形態のBステージシート及び本実施形態のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、を有する。本実施形態のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層の硬化層又は本実施形態のBステージシート若しくはプリプレグである樹脂含有層の硬化層を有することで、熱伝導性に優れたプリント配線板が得られる。
配線層は、上述の金属基板における金属箔を回路加工することにより製造することができる。金属箔の回路加工には、通常のフォトリソグラフィーによる方法が適用できる。
金属板の例としては、上述の金属基板に使用される金属板と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
プリント配線板の好ましい態様としては、例えば、特開2009−214525号公報の段落番号0064及び特開2009−275086号公報の段落番号0056〜0059に記載のプリント配線板と同様のものを挙げることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。
(合成例1:フェノール樹脂の合成)
セパラブルフラスコに、モノマーとしてのレゾルシノール 105g(0.95mol)及びカテコール 5g(0.05mol)、触媒としてのシュウ酸 0.11g(0.1wt%)並びに溶剤としてのメタノール 15gを量り取った。その後、窒素雰囲気下でこの混合物を攪拌し、40℃以下になるように油浴で冷却しながらホルマリン 30g(約0.33mol、F/Pモル比は0.33)を加えた。混合物を2時間攪拌した後、油浴を100℃にして加温しながら、水及びメタノールを減圧留去した。水及びメタノールが出なくなったことを確認した後、シクロヘキサンを加えて、ノボラック樹脂と含有率が50質量%となる溶液を作製し、フェノール樹脂溶液を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定により、得られたフェノール樹脂溶液中のフェノール樹脂の数平均分子量は484であり、繰り返し単位数はn=3.9であることが分かった。また、未反応のモノマーの含有率は、フェノール樹脂溶液の全固形分に対して40質量%であった。H−NMRの測定により、各繰り返し単位中に水酸基が2.1個含まれることが分かった。水酸基当量は62g/eqであった。
(実施例1)
窒化ホウ素粒子(水島合金鉄(株)、商品名「HP−40」、以下「窒化ホウ素粒子1」とも表記する)に、液晶性エポキシモノマー1(1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン;一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマー)(以下、「エポキシモノマー1」とも表記する)と、硬化剤(上記フェノール樹脂)と、硬化促進剤(トリフェニルフォスフィン、和光純薬工業(株))と、溶剤(シクロヘキサノン、和光純薬工業(株))と、を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。
液晶性エポキシモノマー及び硬化剤の配合量は、液晶性エポキシモノマーのエポキシ基に対する硬化剤の化学当量のモル比が、1対1となるように調整した。また、硬化後のエポキシ樹脂組成物における窒化ホウ素含有率が50質量%となるように窒化ホウ素粒子の添加量を調整した。
調製したエポキシ樹脂組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、300μmの厚さで付与した後、エポキシ樹脂組成物を別のPETフィルムで挟み、140℃、1MPa、2分間で真空プレスすることによりBステージシートを得た。
エポキシ樹脂組成物の半硬化物であるBステージシートの周期構造に由来する回折角度を、広角X線回折装置((株)リガク製、「RINT2500HL」)を使用して測定した。
詳細には、X線源としてCuを用い、X線出力を50kV、250mAとし、発散スリット(DS)を1.0度とし、散乱スリット(SS)を1.0度とし、受光スリット(RS)を0.3mmとし、走査速度を1.0度/分とした条件で測定した。
測定した回折角度を、下記ブラッグの式で1周期の長さに変換した。
2dsinθ=nλ
ここで、dは1周期の長さ、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長(0.15406nm)を示している。
得られたBステージシートの両面のPETフィルムを剥がし、代わりに表面を粗化した銅箔(古河電気工業(株)製、商品名「GTS」)2枚で挟み、180℃で真空プレスを行うことにより銅箔に圧着させた。これを更に、140℃で2時間熱処理した後、更に190℃で2時間熱処理することにより硬化させ、シート状の銅圧着硬化物を得た。
得られた銅圧着硬化物の両面の銅箔を、200g/Lの過硫酸アンモニウム及び5ml/Lの硫酸の混合溶液を用いた酸エッチングにより除去し、シート状のエポキシ樹脂硬化物を得た。
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物を1cm角に切出し、熱拡散率を測定するための試験片とした。フラッシュ法装置(ブルカー・エイエックスエス(株)製、「NETZSCH,nanoflash LFA447」)を用いて、切出した試験片の熱拡散率を測定した。測定結果にアルキメデス法により測定した密度と、DSC法により測定した比熱とを乗じることにより、シート状のエポキシ樹脂硬化物の厚さ方向の熱伝導率を求めた。
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物の周期構造由来の回折角度を、Bステージシートの場合と同様にして測定した。得られたXRDスペクトルから、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅(2θ)を求めた。
結果を表1及び図1に示す。
(実施例2)
実施例1において、窒化ホウ素粒子1の代わりに、窒化ホウ素粒子(電気化学工業(株)、商品名「SP−3」、以下「窒化ホウ素粒子2」とも表記する)を用いたこと以外、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、α−アルミナ粒子(住友化学(株)、商品名「AA04」)を加えて、硬化後のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化物)における窒化ホウ素粒子1の含有率が50質量%であり、且つα−アルミナ粒子の含有率が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、窒化ホウ素粒子2(電気化学工業(株)、商品名「SP−3」)を加えて、硬化後のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化物)における窒化ホウ素粒子1の含有率が50質量%であり、且つ窒化ホウ素粒子2の含有率が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例4のエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、窒化ホウ素粒子3(三井化学(株)、商品名「MBN−250」)を加えて、硬化後のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化物)における窒化ホウ素粒子1の含有率が50質量%であり、且つ窒化ホウ素粒子3の含有率が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例5のエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1において、窒化ホウ素粒子2(電気化学工業(株)、商品名「SP−3」)及びα‐アルミナ粒子(住友化学(株)、商品名「AA04」)を加えて、硬化後のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化物)における窒化ホウ素粒子1の含有率が50質量%であり、窒化ホウ素粒子2の含有率が10質量%であり、且つα‐アルミナ粒子の含有率が10質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例6のエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、窒化ホウ素粒子3(三井化学(株)、商品名「MBN−250」)及びα‐アルミナ粒子(住友化学(株)、商品名「AA04」)を加えて、硬化後のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化物)における窒化ホウ素粒子1の含有率が50質量%であり、窒化ホウ素粒子3の含有率が10質量%であり、且つα‐アルミナ粒子の含有率が10質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例7のエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、窒化ホウ素粒子1の代わりに、窒化ホウ素粒子3(三井化学(株)、商品名「MBN−250」)を用いたこと以外は実施例1と同様に、Bステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1及び図2に示す。
(比較例2)
実施例1において使用した液晶性エポキシモノマー1(1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン)の代わりに、エポキシモノマー2(三菱化学(株)、「jER828」;一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーとは異なる)を使用したこと以外は、実施例1と同様に、Bステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例1と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例2において使用した液晶性エポキシモノマー1(1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン)の代わりに、エポキシモノマー2(三菱化学(株)、「jER828」;一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーとは異なる)を使用したこと以外は、実施例2と同様に、Bステージシート及びシート状のエポキシ樹脂硬化物を作製した。更に、実施例2と同様に、周期構造の1周期の長さ、X線回折における周期構造に由来するピークの半値幅、窒化ホウ素粒子の(004)面に由来するピークの半値幅、及び熱伝導率を求めた。
結果を表1に示す。

表1より、比較例1では窒化ホウ素の結晶性が低く、周期構造が確認されないのに対し、実施例1〜7では、エポキシ樹脂硬化物が1周期あたり2.5nmの周期構造を有し、高い熱伝導率を有していることが分かる。
また、液晶性でないエポキシ樹脂2を用いた比較例2及び3では、エポキシ樹脂硬化物の周期構造が形成されず、熱伝導率が低下することが分かる。
更に、図1は実施例1のエポキシ樹脂硬化物のX線回折(XRD)スペクトルを示し、図2は比較例1のエポキシ樹脂硬化物のXRDスペクトルを示している。尚、図1〜図2において、縦軸は回折強度(CPS)を表し、横軸は回折角度(2θ)を表す。図1では、窒化ホウ素(BN)粒子の(004)面に由来するピークの半値幅が狭く、エポキシ樹脂の2nm〜3nmの周期構造に由来するピークが検出されている。一方、図2では、窒化ホウ素(BN)粒子の(004)面に由来するピークの半値幅が広く、エポキシ樹脂の2nm〜3nmの周期構造に由来するピークが検出されていない。このことから、窒化ホウ素粒子の結晶性が高いほどエポキシ樹脂の周期構造形成に影響し、結果として熱伝導率が向上すると考えられる。
2014年7月18日に出願された日本国特許出願2014−148006号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (18)

  1. X線回折における(004)面に由来するピークの半値幅2θが0.5度以下である窒化ホウ素粒子と、
    硬化剤と、
    下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、
    を含むエポキシ樹脂組成物。



    〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。kは0〜7の整数を示す。mは0〜8の整数を示す。lは0〜12の整数を示す。〕


  2. 1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%〜95質量%である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 更にアルミナ粒子を含み、前記アルミナ粒子の含有率が、前記窒化ホウ素粒子と前記アルミナ粒子との総量に対して、5質量%〜70質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である熱伝導材料前駆体。
  7. 前記半硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する請求項6に記載の熱伝導材料前駆体。
  8. X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である請求項7に記載の熱伝導材料前駆体。
  9. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物であるBステージシート。
  10. 前記エポキシ樹脂組成物のシート状の半硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する請求項9に記載のBステージシート。
  11. X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である請求項10に記載のBステージシート。
  12. 繊維基材と、
    前記繊維基材に含浸される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物と、
    を有するプリプレグ。
  13. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である放熱材料。
  14. 前記エポキシ樹脂組成物の硬化物が、1周期の長さが2nm〜3nmの周期構造を有する請求項13に記載の放熱材料。
  15. X線回折における前記周期構造に由来するピークの半値幅2θが0.2度以下である請求項14に記載の放熱材料。
  16. 被着材と、
    前記被着材上に設けられる、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のBステージシート及び請求項12に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
    を有する積層板。
  17. 金属箔と、
    金属板と、
    前記金属箔と前記金属板との間に配置される、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のBステージシート及び請求項12に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
    を有する金属基板。
  18. 配線層と、
    金属板と、
    前記配線層と前記金属板との間に配置される、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のBステージシート及び請求項12に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂含有層の硬化層と、
    を有するプリント配線板。
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