JPWO2017119481A1 - 環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物 - Google Patents

環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2017119481A1
JPWO2017119481A1 JP2017560430A JP2017560430A JPWO2017119481A1 JP WO2017119481 A1 JPWO2017119481 A1 JP WO2017119481A1 JP 2017560430 A JP2017560430 A JP 2017560430A JP 2017560430 A JP2017560430 A JP 2017560430A JP WO2017119481 A1 JPWO2017119481 A1 JP WO2017119481A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cyclo
lys
composition
preventing
neurological disease
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017560430A
Other languages
English (en)
Inventor
斉志 渡辺
斉志 渡辺
寿栄 鈴木
寿栄 鈴木
満広 ゼイ田
満広 ゼイ田
雅史 伊藤
雅史 伊藤
泰典 藤田
泰典 藤田
恭司郎 川上
恭司郎 川上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Suntory Holdings Ltd
Original Assignee
Suntory Holdings Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Suntory Holdings Ltd filed Critical Suntory Holdings Ltd
Publication of JPWO2017119481A1 publication Critical patent/JPWO2017119481A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための素材の使用、及び神経性疾患の予防する方法を提供する。
特定の環状ジペプチド又はその塩が神経性疾患の予防効果を有することを見出した。本発明は、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患予防のための新たな手段を提供する。

Description

本発明は、神経性疾患予防用組成物に関する。さらに詳しくは、アミノ酸を構成単位とする特定の環状ジペプチド又はその塩を有効成分とする神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための特定の環状ジペプチド又はその塩の使用、及び特定の環状ジペプチド又はその塩を利用した神経性疾患の予防方法に関する。
高齢化社会の到来に伴う神経性疾患の患者数の増加は、現代社会における深刻な問題である。前記神経性疾患は、脳や脊髄に存在する特定の神経細胞群の機能低下又は死滅に起因して発生する疾患である。代表的な神経性疾患としては、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等が挙げられる。これらの神経性疾患の発症には、ミクログリア細胞の活性化に起因する神経細胞の炎症が関与することが報告されている(非特許文献1及び2)。例えば、非特許文献3及び4では、ミクログリア細胞の活性化が認知症や統合失調症の発症に関与することが報告されている。また、非特許文献5及び6では、ミクログリア細胞の活性化に伴い分泌される一酸化窒素や炎症性サイトカインに起因する神経細胞の炎症がアルツハイマー病やパーキンソン症候群の発症に関与することが報告されている。さらに、ミクログリア細胞が筋萎縮性側索硬化症に関与することも報告されている(非特許文献7)。
前記神経性疾患は、潜伏期間が長く、発症後の治療が困難という特性を有するため、発症前の予防が重要である。一方で、人工的に合成された化合物を、神経性疾患の発症前から長期的に摂取することは、予期せぬ副作用の発現が懸念されるため好ましくない。そこで、安全でかつ長期摂取可能な有効成分の開発が望まれている。
このような背景の下、アミノ酸が二つ結合した「ジペプチド」が機能性物質として注目されている。ジペプチドには、単体アミノ酸にない物理的、化学的性質や新たな機能を付加することが可能であり、単体アミノ酸以上の応用範囲を有するものとして期待されている。
近年、ジペプチドの末端に存在するアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成した環状構造を有する環状ジペプチドであるジケトピペラジン誘導体が開発されている。当該環状ジペプチドは、様々な生理活性を有することが報告されており、医療分野や薬理分野において需要が拡大することが予想されている。例えば、特許文献1では、2,5−ジケトピペラジン構造を有する環状ジペプチドが、抗鬱作用や学習意欲改善作用等を有することが報告されている。また、非特許文献8には、シクロヒスチジルプロリン〔Cyclo(His-Pro)〕が、体温低下や食欲抑制などの中枢神経系作用や、プロラクチン分泌抑制や成長ホルモン分泌促進といったホルモン様作用などの多くの生理活性を示すことが記載され、さらにシクロロイシルグリシン〔Cyclo(Leu-Gly)〕が記憶機能改善作用を示し、シクロアスパルチルプロリン〔Cyclo(Asp-Pro)〕が脂肪嗜好性抑制作用を示すとの報告もある。また、非特許文献9では、シクロヒスチジルプロリン〔Cyclo(His-Pro)〕が細胞保護作用を示すことが報告されている。
非特許文献10には、シクロトリプトファニルプロリン〔Cyclo(Trp-Pro)〕が抗癌作用を示すこと、シクロヒスチジルプロリン〔Cyclo(His-Pro)〕及びシクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕が抗菌作用を示すこと、シクログリシルプロリン〔Cyclo(Gly-Pro)〕が記憶機能改善作用を示すこと、及びシクロチロシルプロリン〔Cyclo(Tyr-Pro)〕及びシクロフェニルアラニルプロリン〔Cyclo(Phe-Pro)〕が生物性除草剤としての作用を示すことが記載されている。
特表2012−517998号公報
Cell, 140(6), 918-934 (2010) 福岡医誌, 100(7), 243-247 (2009) 慢性炎症と統合失調症, 分子精神医学, Vol.14, No.1 (2014) Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, Vol.2015, Article ID 768049 (2015) Journal of Alzheimer’s Disease, 42, 587-605 (2014) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 63, 3472-3480 (2015) 生化学, 第85巻, 第1号, p.1 (2013) Peptides、16(1)、151-164(1995) The International Journal of Biochemistry & Cell Biology、51、159-169 (2014) Chemical Reviews、112、3641-3716 (2012)
本発明の課題は、神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための素材の使用、及び神経性疾患の予防する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の環状ジペプチドが神経性疾患の予防効果を有することを見出した。また、特定の環状ジペプチドがミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制効果を有することを見出し、その結果、特定の環状ジペプチドがミクログリア細胞の活性化抑制作用及び神経細胞の炎症抑制作用を有すると考えられ、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物であって、
前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記神経性疾患予防用組成物。
(2)環状ジペプチド又はその塩が(1)に記載の群から選択される3つ以上を含むものである、(1)に記載の神経性疾患予防用組成物。
(3)神経細胞の炎症抑制作用を有する、(1)又は(2)に記載の神経性疾患予防剤。
(4)ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制作用を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(5)ミクログリア細胞の活性化抑制作用を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(6)認知症の予防効果を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(7)統合失調症の予防効果を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(8)アルツハイマー病の予防効果を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防剤。
(9)パーキンソン症候群の予防効果を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(10)筋萎縮性側索硬化症の予防効果を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(11)神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、(1)〜(10)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物であって、
機能の表示が、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、及び「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」からなる群から選択されるものである、前記神経性疾患予防用組成物。
(12)神経性疾患を予防するための、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩の使用であって、
前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記使用。
(13)アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、神経性疾患を予防する方法であって、
前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記方法。
本発明によって、神経性疾患の予防効果を有する組成物を提供することができる。本発明の組成物に有効成分として含まれる特定の環状ジペプチド又はその塩は安全性が高いため、本発明の組成物は市場における利用価値が高いと言える。また、本発明の組成物を摂取することにより、ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制効果、ミクログリア細胞の活性化抑制効果及び神経細胞の炎症抑制効果などが得られ、これにより認知症予防効果、統合失調症予防効果、アルツハイマー病予防効果、パーキンソン症候群予防効果、筋萎縮性側索硬化症予防効果等が発揮される。
図1には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr):終濃度50μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図2には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr)、Cyclo(His-Pro):終濃度50μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図3には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr):終濃度100μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図4には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr)、Cyclo(His-Pro):終濃度100μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図5には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr):終濃度200μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図6には、環状ジペプチド(Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Tyr-Gly)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Lys-Phe)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Thr-Tyr)、Cyclo(His-Pro):終濃度200μM)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。
1.用語
1−1.神経性疾患
本明細書において「神経性疾患」とは、脳や脊髄に存在する特定の神経細胞群の機能低下又は死滅に起因して発生する疾患をいう。代表的な神経性疾患として、例えば、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等が挙げられるが、これらに限定されない。
1−2.ミクログリア細胞
前記神経性疾患の発症には、ミクログリア細胞の活性化に起因する神経細胞の炎症が関与することが報告されている本明細書において「ミクログリア細胞」とは、脳内に存在する中枢神経系の構成細胞の一つをいい、脳損傷部位の清掃機能や抗原提示機能等を介して、脳内の免疫防御を担っている。ミクログリア細胞は、様々な刺激により活性化されると、炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素等の液性因子を放出し、脳内に存在する神経細胞の炎症を惹起する。そして、神経細胞の炎症により、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の発症に繋がる。従って、ミクログリア細胞の活性化や、ミクログリア細胞からの炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の放出が抑制できれば、神経細胞の炎症を抑制でき、その結果、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の予防効果が発揮される。
ミクログリア細胞の活性化や神経細胞の炎症抑制は、ミクログリア細胞から放出される炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の濃度を測定することで、評価することができる。ミクログリア細胞から放出される炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素の濃度は公知の方法に従って測定することができ、例えば、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法やGriess assay法等を使用することができる。
2.有効成分
2−1.環状ジペプチド
本明細書において「環状ジペプチド」とは、アミノ酸を構成単位とすることを特徴とし、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成したジケトピペラジン構造を有する環状ジペプチドのことをいう。尚、本明細書において、環状ジペプチド又はその塩をまとめて、単に、環状ジペプチドと称する場合がある。また、本明細書において、環状ジペプチドのアミノ酸構成が同じであれば、それらの記載順序はいずれが先でも構わなく、例えば、〔Cyclo(Tyr-Gly)〕と〔Cyclo(Gly-Tyr)〕は同じ環状ジペプチドを表すものである。
環状ジペプチドはアミド結合を介して二個のアミノ酸の末端部分が結合しているため、分子末端部分に極性基であるカルボキシル基やアミノ基が露出している直鎖状ジペプチドと比較して脂溶性が高いという特徴を有する。そのため、環状ジペプチドは直鎖状のジペプチドと比較して、消化管透過性や膜透過性に優れる。
本発明において有効成分として含有される環状ジペプチド又はその塩は、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上のものであり、前記環状ジペプチド又はその塩から選択される3つ以上を有効成分とすることがより好ましい。
本明細書において「環状ジペプチドの塩」とは、前記環状ジペプチドの薬理学的に許容される任意の塩(無機塩及び有機塩を含む)をいい、例えば、前記環状ジペプチドのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)等が挙げられるが、これらに限定されない。環状ジペプチドの塩は、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に調製され得る。
本発明で用いる環状ジペプチドは、当該分野で公知の方法に従って調製することができる。例えば、化学合成法や酵素法、微生物発酵法により製造されてもよく、直鎖状ペプチドを脱水及び環化させることにより合成されてもよく、特開2003−252896号公報やJournal of Peptide Science, 10, 737-737, 2004に記載の方法に従って調製することもできる。例えば、動植物由来タンパク質を含む原料に酵素処理や熱処理を施して得られる動植物由来ペプチドを、さらに高温加熱処理することで、環状ジペプチドを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を得ることができる。
本明細書において「高温加熱処理」とは、100℃以上の温度かつ大気圧を超える圧力下で一定時間処理することを意味する。高温高圧処理装置としては、耐圧性抽出装置や圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
高温加熱処理における温度は、100℃以上である限り特に限定されないが、好ましくは100℃〜170℃、より好ましくは110℃〜150℃、さらにより好ましくは120℃〜140℃である。尚、この温度は、加熱装置として耐圧性抽出装置を用いた場合には抽出カラムの出口温度を測定した値を示し、加熱装置としてオートクレーブを用いた場合には、圧力容器内の中心温度の温度を測定した値を示す。
高温加熱処理における圧力は、大気圧を超える圧力である限り特に限定されないが、好ましくは0.101MPa〜0.79MPa、より好ましくは0.101MPa〜0.60MPa、さらにより好ましくは0.101MPa〜0.48MPaである。
高温加熱処理時間は、環状ジペプチドを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは15分〜600分程度、より好ましくは30分〜500分程度、さらにより好ましくは60分〜300分程度である。
また、動植物由来ペプチドの高温加熱処理条件は、環状ジペプチドを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは[温度:圧力:時間]が[100℃〜170℃:0.101MPa〜0.79MPa:15分〜600分]、より好ましくは[110℃〜150℃:0.101MPa〜0.60MPa:30分〜500分]、さらにより好ましくは[120℃〜140℃:0.101MPa〜0.48MPa:60分〜300分]である。
尚、得られた動植物由来ペプチド熱処理物に対して、所望により、濾過、遠心分離、濃縮、限外濾過、凍結乾燥、粉末化等の処理を行ってもよい。また、動植物由来ペプチド熱処理物中の特定の環状ジペプチドが所望の含有量に満たなければ、不足する特定の環状ジペプチドについては他の動植物由来ペプチドや市販品、合成品を用いて適宜追加することもできる。
3.動植物由来ペプチド
本明細書における「動植物由来ペプチド」は特に限定されないが、例えば、大豆ペプチド、ホエイペプチド、麦芽ペプチド、プラセンタペプチド、コラーゲンペプチド等を用いることができる。動植物由来のタンパク質又はタンパク質を含む原料から動植物由来ペプチドを調製して用いてもよいが、市販品を用いてもよい。
3−1.大豆ペプチド
本明細書でいう「大豆ペプチド」とは、大豆タンパク質に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。原料となる大豆(学名:Glycine max)は品種や産地などの制限なく用いることができ、粉砕品などの加工品段階のものを用いることもできる。
3−2.ホエイペプチド
本明細書でいう「ホエイペプチド」とは、ホエイ(乳清タンパク質)をプロテアーゼ等の酵素により加水分解し、これを濾過して得られる濾液を殺菌及び/又は濃縮して乾燥することにより得られる低分子ペプチドをいう。ホエイペプチドの原料は、特に限定されないが、例えば、乳清タンパク質であるWPC(ホエイ・プロテイン・コンセントレート)、WPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)等が挙げられる。分解度は種々あるが分解度が低いと、乳臭が強くなり溶解後の液性が不透明(白濁)であるという傾向を有する。一方、分解度が高いと溶解時の液性が透明になるが、苦味・渋味が増加するという傾向を有する。
3−3.麦芽ペプチド
本明細書でいう「麦芽ペプチド」とは、麦芽又はその粉砕物から得られる抽出物に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる麦芽由来の低分子ペプチドをいう。原料となる麦芽ペプチドは、品種や産地などの制限なく用いることができるが、特に大麦の種子を発芽させた大麦麦芽が好適に用いられる。
3−4.プラセンタペプチド
プラセンタとは哺乳類の胎盤のことであり、その優れた機能性から、近年、健康食品、化粧品、医薬品素材として用いられている。本明細書において「プラセンタペプチド」とは、プラセンタを酵素処理、又は亜臨界処理により可溶化、低分子化したものをいう。また、本来の意味とは異なるが、植物の胎座から得られる抽出物が胎盤由来のプラセンタと同等の生理学的効果を有するものとして健康食品、化粧品等に利用されており、これらは植物プラセンタと呼ばれる。本明細書における「プラセンタペプチド」には、植物プラセンタに酵素処理、又は亜臨界処理等を施し、可溶化、低分子化したものも含まれる。
3−5.コラーゲンペプチド
本明細書でいう「コラーゲンペプチド」とは、コラーゲン又はその粉砕物を酵素処理や熱処理を施し、コラーゲンを低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。コラーゲンは動物の結合組織の主要なタンパク質であり、ヒトを含めた哺乳類の身体に最も大量に含まれるタンパク質である。
4.神経性疾患予防用組成物
4−1.環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物
本発明の一態様は、特定の環状ジペプチド又はその塩を有効成分とする神経性疾患予防用組成物である。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上の環状ジペプチド又はその塩を有効成分とするものである。好ましくは、前記環状ジペプチド又はその塩から選択される3つ以上を有効成分とするものである。
本発明の神経性疾患予防用組成物における環状ジペプチド又はその塩の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果が得られるような量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、大豆ペプチド、ホエイペプチド、麦芽ペプチド、プラセンタペプチド、又はコラーゲンペプチドを原料として用いる場合、本発明における環状ジペプチド又はその塩の含有量の総量は、1.0×10ppm以上、好ましくは1.0×10ppm以上、より好ましくは1.0×10ppm以上であり、2.0×10ppm以下、好ましくは1.0×10ppm以下、より好ましくは2.5×10ppm以下であり、典型的には、1.0×10ppm〜2.0×10ppm、好ましくは1.0×10ppm〜1.0×10ppm、より好ましくは1.0ppm×10〜2.5×10ppmである。また、本発明の神経性疾患予防用組成物におけるシクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、シクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕、又はそれぞれに対応する塩の含有量としては、1.0×10ppm以上、好ましくは1.0×10ppm以上、より好ましくは1.0×10ppm以上であり、2.0×10ppm以下、好ましくは1.0×10ppm以下、より好ましくは2.5×10ppm以下であり、典型的には、1.0×10ppm〜2.0×10ppm、好ましくは1.0×10ppm〜1.0×10ppm、より好ましくは1.0×10ppm〜2.5×10ppmである。
尚、特に断りがない限り、本明細書において用いる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味し、1.0ppmは1.0×10−3mg/mLと換算され、1.0×10−4重量%と換算されるものである。
また、環状ジペプチド又はその塩として、合成品又は精製品を用いる場合、本発明の神経性疾患予防用組成物における環状ジペプチド又はその塩の含有量の総量は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0ppm以上、好ましくは1.0×10ppm以上、より好ましくは1.0×10ppm以上であり、5.0×10ppm以下、好ましくは5.0×10ppm以下、より好ましくは5.0×10ppm以下であり、典型的には、1.0ppm〜5.0×10ppm、好ましくは1.0×10ppm〜5.0×10ppm、より好ましくは1.0×10ppm〜5.0×10ppmである。また、環状ジペプチド又はその塩として合成品又は精製品を用いる場合に、本発明の神経性疾患予防用組成物に含まれる、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、シクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕、又はそれぞれに対応する塩の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0ppm以上、好ましくは1.0×10ppm以上、より好ましくは1.0×10ppm以上であり、5.0×10ppm以下、好ましくは5.0×10ppm以下、より好ましくは5.0×10ppm以下であり、典型的には、1.0ppm〜5.0×10ppm、好ましくは1.0×10ppm〜5.0×10ppm、より好ましくは1.0×10ppm〜5.0×10ppmである。
環状ジペプチド又はその塩の含有量は、公知の方法に従って測定することができる。例えば、LC−MS/MSに供することで測定することができる。
4−2.作用メカニズム
脳には中枢神経系の構成細胞の一つとしてミクログリア細胞が存在し、脳損傷部位の清掃機能や抗原提示機能などにより、脳内の免疫防御を担っている。ミクログリア細胞は、様々な刺激により活性化されると、炎症性サイトカイン、一酸化窒素、活性酸素等の液性因子を放出し、脳内に存在する神経細胞の炎症を惹起する。そして、神経細胞の炎症により、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症などの神経性疾患の発症が促進される。従って、ミクログリア細胞の活性化や、ミクログリア細胞からの炎症性サイトカイン、一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の放出が抑制できれば、神経細胞の炎症も抑制でき、その結果、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の予防効果が発揮される。
4−3.他の成分
本発明の神経性疾患予防用組成物は、その形態に応じて、環状ジペプチド又はその塩の他に、任意の添加剤、通常用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分の他、製剤化において配合される賦形剤、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤、又はコーティング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
4−4.用途
本発明の神経性疾患予防用組成物は、前述の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有させることで、ミクログリア細胞からの炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の放出、特に、一酸化窒素の放出を抑制することができる。これにより、脳内の神経細胞の炎症の抑制効果が発揮される。従って、本発明の組成物を摂取することで、神経細胞の炎症性障害に起因する疾患、例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の予防効果を得ることができる。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、例えば、環状ジペプチド又はその塩を含有する原料に、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は滑沢剤等を加えて、公知の方法に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、又はカプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、又は乳剤等の液剤等に製剤化することができる。これらの組成物はそのまま水等と共に服用することができる。また、容易に配合することが出来る形態(例えば、粉末形態や顆粒形態)に調製後、例えば、医薬品の原材料として用いることができる。
本発明は、一例として、組成物の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではなく、例えば剤の形態で提供することもできる。また、前記剤をそのまま組成物として、或いは前記剤を含む組成物として提供することもできる。一例として、医薬等の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。本発明の組成物としては、医薬組成物、飲食品組成物、食品組成物、飲料組成物、化粧用組成物等が挙げられるが、これらに限定されない。食品組成物の限定的でない例として、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、食事療法用食品、健康食品、サプリメント、食品添加剤等が挙げられる。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。具体的には、医薬品、医薬部外品及び化粧料等や薬事法上はこれらに属さないが、神経性疾患予防効果、認知症予防効果、アルツハイマー病予防効果、パーキンソン症候群予防効果、統合失調症予防効果、筋萎縮性側索硬化症予防効果等を明示的又は暗示的に訴求する組成物としての使用が挙げられる。
本発明は、別の側面では、神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、前記神経性疾患予防用組成物を含有する組成物に関する。このような表示又は機能表示は特に限定されないが、例えば、「神経性疾患を予防する」、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症を予防する」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病を予防する」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群を予防する」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症を予防する」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、「筋萎縮性側索硬化症を予防する」、又は「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」などが挙げられる。本明細書において、当該表示及び機能表示のような表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、その形態に応じた適当な方法で摂取することができる。摂取方法としては、例えば、内用(経口用)、外用、注射等による方法が挙げられるが、本発明の所望の効果が発揮される限り、その方法は特に限定されない。尚、本明細書において「摂取」とは、摂取、服用、又は飲用等の全態様を含むものとして用いられる。
本発明の神経性疾患予防用組成物の適用量は、その形態、投与方法、使用目的及び投与対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適時設定され、一定ではない。本発明における本発明の環状ジペプチド又はその塩の有効ヒト摂取量としては、一定ではないが、例えば、体重50kgのヒトで一日あたり、好ましくは10mg以上、より好ましくは100mg以上である。また、投与は所望の投与量範囲内において、1日内において単回又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。尚、ここで本発明の環状ジペプチド又はその塩の有効ヒト摂取量とは、ヒトにおいて有効な効果を示す環状ジペプチド又はその塩の合計摂取量のことであり、環状ジペプチドの種類は特に限定されない。
本発明の神経性疾患予防用組成物の適用対象は、好ましくはヒトであるが、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。ヒト以外の動物を対象に投与する場合、マウス1個体当たり約20gに対して1日あたりの使用量は、組成物中の有効成分の含有量、適用対象者の状態、体重、性別及び年齢等の条件により異なるが、通常、環状ジペプチド又はその塩の総配合量として、好ましくは10mg/kg以上、より好ましくは100mg/kg以上を摂取できる量にするとよい。
5.神経性疾患を予防するための環状ジペプチド又はその塩の使用
本発明の一態様は、アミノ酸を構成単位とする特定の環状ジペプチド又はその塩の神経性疾患の予防のための使用である。好ましくは、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上の環状ジペプチド又はその塩の神経性疾患予防のための使用である。より好ましくは、前記環状ジペプチド又はその塩から選択される3つ以上を含むものの神経性疾患予防のための使用である。
本発明の前記特定の環状ジペプチド又はその塩の使用には、例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症などを予防するための使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、当該使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為、即ち、治療による人体への処理行為を含まない概念である。
6.神経性疾患を予防する方法
本発明の一態様は、神経性疾患予防を必要とする対象に、特定の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として治療有効量を投与することを含む、神経性疾患を予防する方法を提供するものである。好ましくは、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上の環状ジペプチド又はその塩を有効成分として治療有効量を投与することを含む、神経性疾患を予防する方法を提供するものである。より好ましくは、前記環状ジペプチド又はその塩から選択される3つ以上を含むものを有効成分として治療有効量を投与することを含む、神経性疾患を予防する方法を提供するものである。
尚、神経性疾患予防を必要とする対象とは、本発明の神経性疾患予防用組成物の前記投与対象と同様である。
また、本明細書中において治療有効量とは、本発明の特定の環状ジペプチド又はその塩を上記対象に摂取させた場合に、摂取していない対象と比較して、神経性疾患を予防できる量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び対象の年齢、体重、症状等によって適時設定され一定ではない。
本発明の方法においては、前記治療有効量となるよう、特定の環状ジペプチド又はその塩をそのまま、或いは、特定の環状ジペプチド又はその塩を含有する組成物として投与してもよい。
本発明の方法によれば、副作用を生じることなく神経性疾患を予防することが可能になる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
実施例1:ミクログリア細胞から誘導される一酸化窒素(NO)の産生量の評価(環状ジペプチド及びLPS同時添加)
環状ジペプチドの添加条件下で、LPS刺激BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の抑制効果を評価した。環状ジペプチドは神戸天然物化学株式会社で合成したものを用いた。96ウェルプレートに10%FBS添加DMEM培地にて2.0×10細胞/mLの濃度に調整したBV2ミクログリア細胞を各ウェルに100μLずつ播種した。播種24時間後にLPS(終濃度100ng/mL)と環状ジペプチド(終濃度50、100、又は200μM)で同時に添加した。さらに24時間後に培養上清を回収し、Griessアッセイにより一酸化窒素の代謝物量(NO )を測定した(n=2)。Griessアッセイは、Griess Reagent System(Promega cat.♯G2930と同組成品)を用いて行った。
結果を図1〜6に示す。実験の結果、図1〜6に示す通り、特定の環状ジペプチドとLPSを同時に添加することで、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の代謝物(NO )の産生が、環状ジペプチドの濃度依存的に抑制されることが明らかとなった。従って、特定の環状ジペプチドが、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の産生を抑制することが示された。
本発明は、特定の環状ジペプチド又はその塩をを有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物を提供するものである。従って、本発明は、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患予防のための新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。

Claims (13)

  1. アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物であって、
    前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記神経性疾患予防用組成物。
  2. 環状ジペプチド又はその塩が請求項1に記載の群から選択される3つ以上を含むものである、請求項1に記載の神経性疾患予防用組成物。
  3. 神経細胞の炎症抑制作用を有する、請求項1又は2に記載の神経性疾患予防用組成物。
  4. ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制作用を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  5. ミクログリア細胞の活性化抑制作用を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  6. 認知症の予防効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  7. 統合失調症の予防効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  8. アルツハイマー病の予防効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  9. パーキンソン症候群の予防効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  10. 筋萎縮性側索硬化症の予防効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  11. 神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、請求項1〜10のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物であって、
    機能の表示が、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、及び「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」からなる群から選択されるものである、前記神経性疾患予防用組成物。
  12. 神経性疾患を予防するための、アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩の使用であって、
    前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記使用。
  13. アミノ酸を構成単位とする環状ジペプチド又はその塩を有効成分として使用する、神経性疾患を予防する方法であって、
    前記環状ジペプチド又はその塩が、シクロリシルリシン〔Cyclo(Lys-Lys)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロイソロイシルプロリン〔Cyclo(Ile-Pro)〕、シクロリシルフェニルアラニン〔Cyclo(Lys-Phe)〕、シクロロイシルリシン〔Cyclo(Leu-Lys)〕、及びシクロトレオニルチロシン〔Cyclo(Thr-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、前記方法。
JP2017560430A 2016-01-08 2017-01-06 環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物 Pending JPWO2017119481A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016002494 2016-01-08
JP2016002494 2016-01-08
PCT/JP2017/000255 WO2017119481A1 (ja) 2016-01-08 2017-01-06 環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2017119481A1 true JPWO2017119481A1 (ja) 2018-11-08

Family

ID=59274235

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017560430A Pending JPWO2017119481A1 (ja) 2016-01-08 2017-01-06 環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JPWO2017119481A1 (ja)
TW (1) TW201733608A (ja)
WO (1) WO2017119481A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112439051B (zh) * 2020-12-07 2022-08-16 苏州卫生职业技术学院 环二肽在制备治疗精神类疾病的药物中的应用
JPWO2023120405A1 (ja) * 2021-12-23 2023-06-29
WO2023120407A1 (ja) * 2021-12-23 2023-06-29 サントリーホールディングス株式会社 アミロイドβの産生抑制及び/又は蓄積抑制用組成物

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7202279B1 (en) * 1998-02-11 2007-04-10 Georgetown University Cyclic dipeptides and azetidinone compounds and their use in treating CNS injury and neurodegenerative disorders
MY178405A (en) * 2009-12-25 2020-10-12 Suntory Holdings Ltd Learning motivation improvers
JP6291158B2 (ja) * 2012-11-21 2018-03-14 サントリーホールディングス株式会社 抗認知症および学習記憶改善剤
JP6669750B2 (ja) * 2015-07-16 2020-03-18 サントリーホールディングス株式会社 環状ジペプチド含有血清カルノシン分解酵素阻害用組成物

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017119481A1 (ja) 2017-07-13
TW201733608A (zh) 2017-10-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6669750B2 (ja) 環状ジペプチド含有血清カルノシン分解酵素阻害用組成物
JP6374579B2 (ja) 環状ジペプチドを有効成分とする皮膚保湿機能改善剤
JP6772133B2 (ja) Glp−2分泌促進用組成物
KR102178926B1 (ko) 발효 태반 조성물을 유효성분으로 하는 면역 증강 또는 항피로 조성물과 그의 용도
WO2017119481A1 (ja) 環状ジペプチド含有神経性疾患予防用組成物
WO2017119476A1 (ja) 神経性疾患予防用組成物
JP6666912B2 (ja) Trpv1刺激用組成物
JP6857602B2 (ja) エンドセリン受容体拮抗用組成物
WO2016133157A1 (ja) リパーゼ阻害剤
CN107922458B (zh) 含有氨基酸及环状二肽的组合物
WO2016133155A1 (ja) α-グルコシダーゼ阻害剤
JP6671367B2 (ja) 環状ジペプチド含有抗肥満用組成物
TW201713357A (zh) 抗肥胖用組成物
JP6687619B2 (ja) メラニン凝集ホルモン受容体拮抗用組成物
KR20200134153A (ko) 신규한 펩타이드 화합물 또는 이의 약제학적으로 허용 가능한 염