JPWO2017111093A1 - 無端ベルト - Google Patents

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Abstract

オゾン劣化による表面クラック、および、ベルトセット癖を抑制することが可能な無端ベルト(1)を提供する。無端ベルト(1)は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。無端ベルト(1)は、筒状の基層(2)と、基層(2)の外周に積層された弾性層(3)とを有している。弾性層(3)は、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化物よりなる。組成物におけるポリカーボネートポリオールとゴムポリマーとの質量比は5:95〜95:5の範囲内とすることができる。ゴムポリマーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムの少なくとも一つを含んでいるとよい。

Description

本発明は、無端ベルトに関する。
従来、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、印刷機等の画像形成装置の分野において、無端ベルトが使用されている。この種の無端ベルトとしては、例えば、中間転写ベルトが知られている。中間転写ベルトでは、複数の感光体によって色別に形成された各トナー像がベルト表面に一次転写される。一次転写により重ね合わされた各色のトナー像は、ベルト表面から紙等の印字媒体に二次転写される。
上記無端ベルトとしては、例えば、特許文献1に、樹脂製の基層と、基層の表面に設けられ、アクリロニトリル−ブタジエンゴムが樹脂架橋剤にて架橋された架橋ゴムからなる弾性層とを有する電子写真機器用の無端ベルトが開示されている。
また、特許文献2には、基層と、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むマトリックスポリマーと多価イソシアネートとを含有するゴム組成物の熱硬化物よりなる弾性層とを有する電子写真機器用の無端ベルトが開示されている。
特開2010−156760号公報 特開2015−194681号公報
しかしながら、従来技術は、以下の点で改良の余地がある。すなわち、無端ベルトは、ベルト表面にてトナーの授受を行うため、電圧が印加される。この電圧印加により、オゾンが発生し、発生したオゾンは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムの二重結合を切断する。そのため、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを主体とする弾性層を有する無端ベルトは、ベルト表面のオゾン劣化により、表面クラックが生じやすいという問題がある。
また、画像形成装置に中間転写ベルトとして組み込まれた無端ベルトは、感光体と一次転写ロールとによって挟持される。一次転写ロールは、ベルト表面に垂直かつ感光体の中心軸を含む面内にその中心軸が含まれないよう、感光体から少しずらした位置に配置される。さらに、一次転写ロールは、ベルト表面に垂直な方向かつ感光体側に少し寄った位置に配置される。このようなオフセット状態に配置された感光体と一次転写ロールとにより挟持された無端ベルトが静置された場合、無端ベルトにS字状のベルトセット癖が生じる。無端ベルトの弾性回復率や変形回復性能が悪いと、ベルト回転後もベルトセット癖が解消されず、ベルトセット癖に起因するスジの画像不具合が生じる。アクリロニトリル−ブタジエンゴムを主体とする弾性層を有する無端ベルトは、上記ベルトセット癖を抑制することが困難であるという問題がある。
なお、特許文献2に記載される水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むマトリックスポリマーを用いた弾性層を有する無端ベルトは、弾性層中の二重結合が少なくなるため、ベルト表面のオゾン劣化による表面クラックの抑制には有効である。しかしながら、特許文献2には、ベルトセット癖の抑制に関しては何ら開示も示唆もない。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、オゾン劣化による表面クラック、および、ベルトセット癖を抑制することが可能な無端ベルトを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる無端ベルトであって、
筒状の基層と、該基層の外周に積層された弾性層とを有しており、
上記弾性層は、
ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化物よりなる、無端ベルトにある。
上記無端ベルトは、弾性層の形成に用いられる組成物にポリカーボネートポリオールを含んでいる。そのため、上記無端ベルトは、二重結合を含むゴムポリマーを少なくすることによって弾性層中に含まれる二重結合を少なくすることができ、オゾン劣化による表面クラックを抑制することが可能になる。
また、上記無端ベルトは、弾性層中に含まれる二重結合が少なくなっても、弾性層の弾性回復率、変形回復性能を向上させるができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化時に、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとが反応して化学結合するとともに、ゴムポリマーを取り込んだ状態でポリイソシアネート同士が自己架橋する。二重結合を含むゴムポリマーがポリイソシアネートと反応するものである場合には、上記自己架橋に加え、さらに、ポリイソシアネートとゴムポリマーとが反応して化学結合する。その結果、ポリカーボネートポリオールとゴムポリマーとがポリイソシアネートを介して結合した状態となり、弾性層中の二重結合の減少による架橋点の減少が補われるものと考えられる。そのため、上記無端ベルトは、弾性層の弾性回復率、変形回復性能を向上させることができる。また、ポリカーボネートポリオールは、極性を持つアクリロニトリル基を有していない。そのため、極性を持つアクリロニトリル基による分子間力が低減され、これによっても弾性層の弾性回復率、変形回復性能を向上させることができる。それ故、上記無端ベルトは、ベルトセット癖を抑制することが可能になる。
実施例1の無端ベルトを模式的に示した説明図である。 図1のII−II断面図である。
上記無端ベルト(シームレスベルト)は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。画像形成装置としては、例えば、帯電像を用いる電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、オンデマンド印刷機等を例示することができる。
上記無端ベルトは、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる中間転写ベルトとして用いることができる。なお、中間転写ベルトは、潜像担持体に担持されたトナー像をベルト表面に一次転写させた後、このトナー像をベルト表面から紙等の印字媒体へ二次転写させるために、画像形成装置に組み込まれる無端ベルトである。この場合には、中間転写ベルトにおける弾性層のオゾン劣化による表面クラックが抑制されるとともに、ベルトセット癖を抑制することができるため、高耐久性能を有し、ベルトセット癖に起因するスジの画像不具合の少ない画像形成装置を実現することが可能となる。
上記無端ベルトは、筒状の形状を備える基層を有している。基層は、樹脂を主成分とすることができる。基層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。基層に用いられる樹脂としては、好ましくは、ポリアミドイミドおよびポリイミドの少なくとも一つを含んでいるとよい。この場合には、基層の剛性が高くなるため、無端ベルトの耐久性向上に有利である。
なお、基層は、必要に応じて、導電剤、難燃剤、架橋剤、レベリング剤、充填剤、酸化防止剤などの各種添加剤を1種または2種以上含むことができる。導電剤としては、例えば、炭素系導電材料、金属粉末材料、導電性金属酸化物等の電子導電剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。炭素系導電材料としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等が挙げられる。金属粉末材料としては、具体的には、例えば、アルミニウム粉末、ステンレス粉末等が挙げられる。導電性金属酸化物としては、具体的には、例えば、導電性酸化亜鉛(c−ZnO)、導電性酸化チタン(c−TiO)、導電性酸化鉄(c−Fe)、導電性酸化錫(c−SnO)等が挙げられる。また、基層の筒径、厚みは、用途(例えば、画像形成装置の機種、大きさ等)に応じて適宜決定することができる。基層の筒径は、例えば、120mm〜1000mm程度とすることができる。基層の厚みは、例えば、30μm〜200μm程度とすることができる。
上記無端ベルトは、基層の外周に弾性層が積層されている。弾性層は、ゴム弾性を有している。
上記無端ベルトにおいて、弾性層は、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化物よりなる。なお、弾性層は、具体的には、上記組成物の熱硬化物とすることができる。
ポリカーボネートポリオールは、具体的には、カーボネート構造と複数のヒドロキシ基とを有するポリオールである。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、入手容易性、ポリイソシアネートとの反応性、柔軟性、変形回復性能向上等の観点から、ポリカーボネートジオールを好適に用いることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、具体的には、例えば、ヒドロキシ基を末端に有するポリカーボネートジオール、ヒドロキシ基を末端に有するポリカーボネートトリオールなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、具体的には、例えば、300〜3500の範囲内とすることができる。この場合には、上記作用効果を確実なものとすることができる。
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、柔軟性、変形回復性能向上等の観点から、好ましくは400以上、より好ましくは500以上とすることができる。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、組成物における各成分との相溶性向上等の観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2800以下、さらに好ましくは2500以下とすることができる。なお、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の分子量である。
ポリイソシアネートとしては、上述した自己架橋を促す観点から、具体的には、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものを用いることができる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族または芳香族のポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体などを例示することができる。ポリイソシアネートとしては、具体的には、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシアネートあるいはこれらジイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体などを例示することができる。
ポリイソシアネートとしては、より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)系、キシレンジイソシアネート(XDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)系、水添キシレンジイソシアネート(H6XDI)、水添キシレンジイソシアネート(H6XDI)系、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)系、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)系、これらのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体等を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。なお、上記にいう「系」は、ベースとなるイソシアネートが同じであるポリイソシアネート、そのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体を包括的に含む意味である。つまり、例えば、「ヘキサメチレンジイソシアネート系」の場合であれば、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースにした各種のポリイソシアネート、そのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体が含まれる。他についても同様である。
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系などを好適に用いることができる。この場合には、弾性層表面の柔軟性に優れるため、例えば、中間転写ベルトとして用いた場合に、トナーの転写性に優れた無端ベルトを得やすくなる。
ポリイソシアネ−トとしては、より具体的には、イソシアネ−ト基がブロック剤にてブロックされたブロックポリイソシアネ−トを用いることができる。ブロックポリイソシアネ−トは、イソシアネート基がブロック剤により保護されているため、常温での反応性が非ブロックポリイソシアネ−トに比べて低くなっている。そのため、ブロックポリイソシアネ−トは、無端ベルトの製造環境における湿気や製造時間の長さによる劣化などが起こり難いため、好適に使用することができる。なお、ブロック剤は、例えば、組成物の硬化時に加えられる熱によって解離し、活性なイソシアネート基が再生される。また、ブロック剤としては、例えば、アルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ−ル系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピリジン系の化合物などを例示することができる。また、ポリイソシアネートは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などによって変性されていてもよい。
上記無端ベルトにおいて、弾性層に用いられる組成物におけるイソシアネート基含有量は、1〜15質量%の範囲内とすることができる。弾性層に用いられる組成物におけるイソシアネート基含有量が1質量%以上になると、弾性層表面の耐摩耗性を向上させやすくなる。これは、ポリイソシアネート同士による自己架橋が十分に生じやすくなり、上記自己架橋による架橋構造が多くなるためであると考えられる。組成物におけるイソシアネート基含有量は、弾性層の耐摩耗性向上などの観点から、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは5質量%以上とすることができる。一方、弾性層に用いられる組成物におけるイソシアネート基含有量が15質量%以下であると、弾性層表面における硬度の増加を抑制しつつ柔軟性を確保しやすくなる。そのため、例えば、上記無端ベルトを中間転写ベルトに用いた際に、トナー転写性を向上させやすくなる。これは、ポリイソシアネート同士による自己架橋が過度に生じ難いためであると考えられる。弾性層に用いられる組成物におけるイソシアネート基含有量は、弾性層表面の柔軟性向上の観点から、好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下とすることができる。なお、組成物におけるイソシアネート基含有量(質量%)は、[組成物中のポリオール成分およびゴム成分の合計100質量部に対するポリイソシアネートの固形分添加量(質量部)]×[ポリイソシアネートの有効NCO量(質量%)]から算出することができる。上記有効NCOは、ポリイソシアネートにおける熱硬化時に反応可能なイソシアネート基のことを意味し、上記有効NCO量は、電位差滴定によって求めることができる。また、ポリイソシアネートの添加量は、弾性層に用いられる組成物におけるイソシアネート基含有量が上述の範囲内となるように、ポリイソシアネートの種類等を考慮して決定することができる。
二重結合を含むゴムポリマーは、具体的には、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)およびエピクロルヒドリンゴム(ECO)の少なくとも一つを含むことができる。この場合には、弾性層の柔軟性が低下するのを抑制しつつ、オゾン劣化による表面クラック、および、ベルトセット癖を抑制することが可能な無端ベルトが得られる。また、ゴムポリマー中に極性基が多く含まれるため、弾性層に均一な導電性を付与しやすいなどの利点もある。なお、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムは、1種または2種以上併用することができる。
上記ゴムポリマーは、より具体的には、アミン変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含んでいるとよい。この場合には、上記組成物の硬化時に、ポリイソシアネートとゴムポリマーとが反応して化学結合する。そのため、この場合には、弾性層の弾性回復率、変形回復性能を向上させやすい無端ベルトが得られる。これは、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとが反応して化学結合するとともに、ポリイソシアネートとゴムポリマーとが反応して化学結合し、さらに、ゴムポリマーを取り込んだ状態でポリイソシアネート同士が自己架橋することにより、架橋点が増え、弾性層中の二重結合の減少による架橋点の減少を効果的に補うことができるためであると考えられる。
上記組成物におけるポリカーボネートポリオールとゴムポリマーとの質量比は、具体的には、5:95〜95:5の範囲内とすることができる。この場合には、オゾン劣化による表面クラックの抑制とベルトセット癖の抑制とを確実なものとすることができる。ポリカーボネートポリオールとゴムポリマーとの質量比は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは15:85〜85:15、さらに好ましくは20:80〜80:20、さらにより好ましくは25:75〜75:25、さらにより一層好ましくは30:70〜70:30の範囲内とすることができる。
上記組成物におけるポリカーボネートポリオールの質量比は、より具体的には、好ましくは、ゴムポリマーの質量比以上、より好ましくは、ゴムポリマーの質量比よりも大きい構成とすることができる。この場合には、オゾン劣化による表面クラックの抑制とベルトセット癖の抑制とをより確実なものとすることができる。
弾性層に用いられる組成物は、他にも例えば、弾性層の柔軟性向上、均一な導電性を付与しやすいなどの観点から、エーテル系ポリオールなどを含有することができる。また、弾性層に用いられる組成物は、弾性層中の二重結合量を低減させるなどの観点から、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、水素化ブタジエンゴム(HBR)などを含有することができる。また、弾性層に用いられる組成物は、例えば、弾性層の電気抵抗の調整、難燃化などの観点から、クロロプレンゴムなどを含有することができる。
弾性層に用いられる組成物は、必要に応じて、導電剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、加硫剤、加硫促進剤、受酸剤、滑剤、充填剤、触媒などの各種添加剤を1種または2種以上含むことができる。
導電剤は、イオン導電剤、電子導電剤のいずれであってもよく、双方を含むこともできる。導電剤は、好ましくは、均一な体積電気抵抗が得られやすいなどの観点から、イオン導電剤であるとよい。イオン導電剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩、リン酸エステル、スルホン酸塩、脂肪族多価アルコール、脂肪族アルコールサルフェート、イオン液体などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。電子導電剤としては、基層の説明において上述したものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
難燃剤は、有機系難燃剤、無機系難燃剤のいずれであってもよく、双方を含むこともできる。難燃剤としては、比較的少ない添加量で難燃効果が得られ、弾性層の柔軟性を損ない難いなどの観点から、有機系難燃剤を好適に用いることができる。また、有機系難燃剤および無機系難燃剤の双方を用いた場合には、比較的低廉に難燃効果を付与することができる利点がある。
有機系難燃剤としては、具体的には、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aおよびその誘導体、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン等の多ベンゼン環化合物、臭素化ポリスチレンおよびポリ臭素化スチレン等の臭素系難燃剤や、芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、含ハロゲンリン酸エステル類、含ハロゲン縮合リン酸エステル類、フォスファゼン誘導体等のリン系難燃剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。無機系難燃剤としては、具体的には、例えば、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤や、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系難燃剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
弾性層の厚みは、柔軟性、難燃性、反り、耐摩耗性、用途などを考慮して決定することができる。弾性層の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらにより好ましくは30μm以上とすることができる。一方、弾性層の厚みは、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下とすることができる。
上記無端ベルトにおいて、弾性層は、具体的には、その表面が外部に露出する構成とされていてもよいし、弾性層の外周面に沿って樹脂等より構成される表層を有していてもよい。
上記無端ベルトにおいて、弾性層は、20℃以上40℃以下の間にtanδ(損失正接)のピークを有さない構成とすることができる。この構成によれば、無端ベルトの使用温度を含む20℃以上40℃以下の範囲内で、弾性層における粘弾性挙動の大きな変動がない。そのため、上記構成によれば、弾性層の粘弾性挙動の変動に起因する画像ムラを抑制しやすくなり、耐環境依存性の向上に有利な無端ベルトが得られる。
上記tanδは、次のように求められる。弾性層から採取したサンプル(1.6mm×1.6mm×30mm)を、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製のDVEレオスペクトラー)に、測定長さが20mmとなるように固定し、変位振幅±10μm、周波数10Hzの正弦波歪を与え、20℃以上40℃以下の範囲におけるtanδを昇温速度3℃/minで1℃毎に測定する。
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
以下、実施例の無端ベルトについて、図面を用いて具体的に説明する。
図1、図2に示されるように、無端ベルト1は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。本例では、無端ベルト1は、電子写真方式の画像形成装置に中間転写ベルトとして組み込まれて使用される。
無端ベルト1は、筒状の基層2と、基層2の外周に積層された弾性層3とを有している。つまり、無端ベルト1は、具体的には、基層2の外周面に沿って弾性層3が積層された二層構造とされている。なお、図1は、詳細なベルト層構成が省略されている。本例では、基層2は、電子導電剤を含有するポリアミドイミドまたはポリイミドより形成されている。
ここで、無端ベルト1において、弾性層3は、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化物より構成されている。
以下、異なる構成を有する無端ベルトの試料を複数作製し、評価を行った。その実験例について説明する。
(実験例)
<基層形成用材料の調製>
ポリアミドイミド(PAI)(東洋紡績社製「バイロマックスHR−16NN」)100質量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製「デンカブラック」)10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)800質量部とを混合することにより基層形成用材料を調製した。なお、基層形成用材料は、液状であり、粘度は、10,000mPa・s(25℃、B型粘度計の測定値)程度に調整した。また、この基層形成用材料は、本実験例における各試料の作製において共通に使用するものである。
<弾性層の形成に用いる組成物の調製>
各組成物の調製に用いられる各材料として以下のものを準備した。
−ポリカーボネートポリオール−
・ポリカーボネートジオール(1)(両末端に−OHを有する、数平均分子量500)(ダイセル社製、「プラクセルCD205PL」)
・ポリカーボネートジオール(2)(両末端に−OHを有する、数平均分子量1000)(旭化成ケミカルズ社製、「デュラノールT5651」)
・ポリカーボネートジオール(3)(両末端に−OHを有する、数平均分子量2000)(三菱化学社製、「ベネビオールNL2050B」)
・ポリカーボネートジオール(4)(両末端に−OHを有する、数平均分子量3000)(クラレ社製、「クラレポリオールC−3090」)
−ポリイソシアネート−
・ジイソシアネート(1)(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体、有効NCO量:15.6質量%)(三井化学社製、「タケネートB882N」)
・ジイソシアネート(2)(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)変性トリレンジイソシアネートブロック化体、有効NCO量:5.6質量%)(ケムチュラ社製、「アジプレンBL60」)
・ジイソシアネート(3)(ポリプロピレングリコール(PPG)変性1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体、有効NCO量:6.0質量%)(旭化成ケミカルズ社製、「デュラネートE402−B80B」)
−ウレタン樹脂−
・ポリカーボネートウレタン樹脂(東ソー社製、「ニッポラン5196」)
−二重結合を含むゴムポリマー−
・アミン変性アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、「ATBN1300×45」)
・アクリロニトリル−ブタジエンゴム(日本ゼオン社製、「ニポールDN101」)
・エピクロルヒドリンゴム(ダイソー社製、「エピクロマーCG−102」)
−その他の成分−
・受酸剤(酸化亜鉛)(正同化学工業社製、「酸化亜鉛2種」)
・滑剤(ステアリン酸)(日油社製、「ステアリン酸さくら」)
・加硫剤(粉末硫黄)(鶴見化学工業社製、「イオウPTC」)
・加硫促進剤(1)(三新化学社製、「サンセラーDM」)
・加硫促進剤(2)(三新化学社製、「サンセラーTT」)
・無機系難燃剤(水酸化マグネシウム)(協和化学工業社製、「キスマ5A」)
・有機系難燃剤(トリメチルホスフェート)(大八化学工業社製、「TMP」)
・ハロゲン系難燃剤(エチレンビステトラブロモフタルイミド)(アルベマール日本社製、「SAYTEX BT−93/W」)
・イオン導電剤(テトラブチルアンモニウムクロライド)(東京化成社製)
・電子導電剤(カーボンブラック)(オリオンエンジニアドカーボン社製、「スペシャルブラック4」)
表1に示される各材料を、固形分が60質量%となるようにシクロヘキサノン中に各配合割合にて配合し、混合することにより、試料1〜試料10、試料1C〜試料3Cの無端ベルトにおける各弾性層の形成に用いられる液状の各組成物を調製した。
<無端ベルト試料の作製>
基体として、アルミニウム製の円筒状金型を準備した。また、2つのノズルを有するディスペンサ(液体定量吐出装置)を準備した。このディスペンサのノズルは、内径φ=1mmのニードルノズルである。次いで、上記調製した基層形成用材料と弾性層形成用組成物とを、それぞれ別のエアー加圧タンクに収容し、金型の外周面とノズルとのクリアランスを1mmとして、金型およびノズルをセットした。次いで、金型を垂直にした状態で、回転数200rpmで軸中心に回転させながら、基層形成用材料を吐出するノズルを、1mm/secの移動速度で軸方向下方に移動させるとともに、エアー加圧タンクに0.4MPaの圧力をかけて基層形成用材料をノズルに圧送し、ノズルから基層形成用材料を吐出させ、金型の外周面上にらせん状に塗工した。これにより、らせん状塗膜の連続体からなる全体塗膜を形成した。次いで、形成された全体塗膜に対して、2時間で250℃まで昇温し、250℃で1時間保持するという条件にて熱処理を施した。これにより、金型の外周面上に、筒状に形成されたポリアミドイミド製の基層(厚み80μm、筒径φ320mm)を形成した。
次に、上記基層が形成された金型を、回転数200rpmで軸中心に回転させながら、弾性層形成用組成物を吐出するノズルを、1mm/secの移動速度で軸方向下方に移動させるとともに、エアー加圧タンクに0.8MPaの圧力をかけて弾性層形成用組成物をノズルに圧送し、ノズルから弾性層形成用組成物を吐出させ、金型の外周面上にある基層表面にらせん状に塗工した。これにより、らせん状塗膜の連続体からなる全体塗膜を形成した。次いで、形成された全体塗膜に対して、3時間で170℃まで昇温し、170℃で60分間保持するという条件にて熱処理を施し、組成物を硬化させた。これにより、筒状の基層の外周面に沿って、各組成物の熱硬化物からなる各弾性層(厚み200μm)を積層した。
次いで、上記弾性層が形成された金型を、回転数60rpmで軸中心に回転させながら、紫外線照射機(アイグラフィックス社製、「UB031−2A/BM」(水銀ランプ形式)を用いて、照射強度120mW/cm、照射時間180秒、光源と弾性層表面との距離100mmという条件にて、弾性層表面に紫外線を照射し、弾性層にUV処理を施した。
次いで、基層の一端縁と金型の外周面との間に高圧エアーを吹き込み、金型を抜き取った。以上により、試料1〜試料10、試料1C〜試料3Cの無端ベルトを作製した。
<耐オゾン性>
上記調製した各組成物に対して、上記無端ベルトの作製時と同じ条件の熱処理を施し、各弾性シートを形成した。次いで、上記弾性シートからダンベル1号形状の試験片を採取した。次いで、採取した試験片を、オゾン濃度5ppm(500pphm)の空気雰囲気中に500時間曝した。次いで、この試験片に10%伸張の引張りひずみを加え、表面クラックおよび破断の有無を確認した。表面クラックが目視および10倍拡大鏡にて確認されなかった場合を、耐オゾン性に優れるとして「A」とした。表面クラックが目視では見られなかったものの、10倍拡大鏡により確認された場合を、耐オゾン性が良好であるとして「B」とした。表面クラックが目視にて多数確認された場合、または、破断が生じた場合を、オゾン劣化が著しいとして「C」とした。
<耐ベルトセット癖>
ベルトセット癖に対する耐性を評価するため、弾性回復率および変形回復性能を評価した。
−弾性回復率−
ユニバーサル硬度計(フィッシャー社製、「フィッシャースコープH100」)を用いて、各無端ベルトの弾性層の表面に、2mN/30秒の定荷重にて、触針を押し込み、弾性回復率を算出した。なお、弾性回復率は、ISO−14577−1の押し込み仕事の計算式(ηIT=Welast/Wtotal×100)より算出した。
−変形回復性能−
各無端ベルトの弾性層の表面に、直径15mmの金属ローラーを荷重1kg重にて360秒間押し当て、5秒後の弾性層表面の変形状態を目視にて観察した。上記5秒後、弾性層表面にローラー接地跡が見えなかった場合を、変形回復性能に優れるとして「A」とした。上記5秒後、弾性層表面にローラー接地跡が僅かに見えた場合を、変形回復性能が良好であるとして「B」とした。上記5秒後、弾性層表面にローラー接地跡がはっきりと見えた場合を、変形回復性能に劣るとして「C」とした。
−tanδの測定、画像ムラ−
上述の方法に従い、各無端ベルトにおける弾性層のtanδを測定し、ピークの有無を確認した。また、各無端ベルトを、電子写真方式を採用するデジタルフルカラー複合機の中間転写ベルトとして組み込み、25℃×53%RHの環境下にて、フルカラー画像出力を行った。初期画像において画像ムラがほとんど見られず、良好な画像が形成された場合を「A」、初期画像において画像ムラが見られたものの、使用上問題がなく許容範囲内の画像が形成された場合を「B」とした。
表1に、無端ベルト試料の詳細な構成および評価結果をまとめて示す。
Figure 2017111093
表1によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1Cの無端ベルトは、弾性層を形成するための組成物にポリカーボネートポリオールが含まれておらず、アミン変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムを多く含んでいる。そのため、試料1Cの無端ベルトは、弾性層中に二重結合が多く含まれ、オゾンによる二重結合の切断により、ベルト表面が劣化しやすく、表面クラックや破断が生じやすかった。
また、試料2Cの無端ベルトは、試料1Cの無端ベルトと同様に、弾性層を形成するための組成物にポリカーボネートポリオールが含まれておらず、エピクロルヒドリンゴムを多く含んでいる。エピクロルヒドリンゴムは、元々、弾性回復率や変形回復性能が悪い。そのため、試料2Cの無端ベルトは、ベルト回転後、ベルトセット癖が解消され難かった。
また、試料3Cの無端ベルトは、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとを予め反応させて得られたポリカーボネートウレタン樹脂と、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物を混合させることによって弾性層が形成されている。つまり、試料3Cの無端ベルトは、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物を硬化させることによって弾性層が形成されていない。そのため、試料3Cの無端ベルトは、オゾン劣化による表面クラック、および、ベルトセット癖を抑制することができなかった。
これらに対し、試料1〜試料10の無端ベルトは、弾性層の形成に用いられる組成物にポリカーボネートポリオールを含んでいる。そのため、上記無端ベルトは、二重結合を含むゴムポリマーを少なくすることによって弾性層中に含まれる二重結合を少なくすることができ、オゾン劣化による表面クラックを抑制することができる。また、上記無端ベルトは、弾性層中に含まれる二重結合が少なくなっても、弾性層の弾性回復率、変形回復性能を向上させるができる。それ故、上記無端ベルトは、ベルトセット癖を抑制しやすいといえる。
また、試料1〜試料10の無端ベルト同士を比較すると、以下のことがわかる。すなわち、試料1〜試料3の無端ベルトを比較した場合、オゾン劣化による表面クラックの抑制とベルトセット癖の抑制とが確実なものとなることがわかる。さらに、ポリカーボネートポリオールの質量比がゴムポリマーの質量比以上である場合には、上記作用効果がより確実なものとなることがわかる。
また、試料2、試料4〜6の無端ベルトを比較した場合、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が300〜3500の範囲内にある場合には、オゾン劣化による表面クラックの抑制とベルトセット癖を抑制とが確実なものとなることがわかる。とりわけ、耐オゾン性の確保を確実なものにする観点から、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量の上限は、3000以下、好ましくは3000未満とするとよいことがわかる。これは、組成物におけるポリカーボネートポリオールとその他の成分との相溶性が向上するためである。
また、試料2と試料7の無端ベルトを比較した場合、ゴムポリマーがアミン変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含んでいる場合には、ベルトセット癖に対する耐性が向上することがわかる。これは、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとが反応して化学結合するとともに、ポリイソシアネートとゴムポリマーとが反応して化学結合し、さらに、ゴムポリマーを取り込んだ状態でポリイソシアネート同士が自己架橋することにより、架橋点が増え、弾性層中の二重結合の減少による架橋点の減少を効果的に補うことができるためであると考えられる。
また、試料1〜試料8と試料9〜試料10の無端ベルトを比較した場合、20℃以上40℃以下の範囲で、弾性層がtanδのピークを有さない場合には、弾性層の粘弾性挙動の変動に起因する画像ムラを抑制しやすくなり、耐環境依存性の向上に有利な無端ベルトが得られることが確認された。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例、実験例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。

Claims (6)

  1. 電子写真方式の画像形成装置に用いられる無端ベルトであって、
    筒状の基層と、該基層の外周に積層された弾性層とを有しており、
    上記弾性層は、
    ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートと、二重結合を含むゴムポリマーとを含有する組成物の硬化物よりなる、無端ベルト。
  2. 上記組成物における上記ポリカーボネートポリオールと上記ゴムポリマーとの質量比が5:95〜95:5の範囲内にある、請求項1に記載の無端ベルト。
  3. 上記ゴムポリマーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムの少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の無端ベルト。
  4. 上記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、300〜3500の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルト。
  5. 上記ゴムポリマーは、アミン変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無端ベルト。
  6. 上記弾性層は、20℃以上40℃以下の間にtanδのピークを有さない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の無端ベルト。
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