JPWO2017110599A1 - 印刷媒体、印刷媒体の製造方法および印刷物 - Google Patents

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Abstract

熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む樹脂層を有する印刷媒体は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる;印刷媒体の製造方法:印刷物。

Description

本発明は、印刷媒体、印刷媒体の製造方法および印刷物に関する。具体的には、本発明は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる印刷媒体に関する。また、本発明は、この印刷媒体の製造方法と、この印刷媒体を用いた印刷物にも関する。
印刷分野では、印刷媒体にインクを用いて各種のデータを記録し、商品の見積書や代金の請求書、値札等の印刷物を作成する場合がある。
従来、同一の印刷媒体に対して、地模様や罫線枠等の定形データは酸化重合型インクや紫外線硬化型インクを用いたオフセット印刷やシール印刷等の一般印刷(有版印刷)で記録し、商品名や金額などの細かい文字およびバーコード等の可変データは熱転写記録方式や電子写真記録方式等の情報記録方式(無版印刷)で記録していた。
そのため、印刷媒体は、一般印刷と情報記録方式の両方において優れた印刷適性を有することが要求される。例えば、ビジネスフォーム印刷の分野で用いる印刷媒体には、通常印刷での多色印刷への印刷適性に加え、商品名やバーコード等の可変データを情報記録方式で記録するための印刷適性も付与されることが好ましい。
印刷媒体の印刷適性を改良する方法として、支持体の表面に設けられた樹脂層の組成を工夫することが知られている(特許文献1〜4参照)。
特開2002−113959号公報 WO2014/087670号 特開2011−116125号公報 特開2013−199574号公報
このような支持体の表面に樹脂層を設けられた印刷媒体では、印刷媒体の表面に塗布筋などの表面筋を少なくすることが求められている。
また、印刷媒体の印刷適性の改善に関して、特許文献1には、支持体の表面に窒素含有高分子化合物を含む樹脂層を設けた印刷媒体は、長時間にわたり高温高湿環境下におかれるとインクの印刷面となる樹脂層の吸湿度が高くなり、長時間にわたり高温高湿環境下に置かれた印刷物は粘着テープで印刷面を剥がすと容易にインクが剥がれることが指摘されている。このように、一般印刷では、高温高湿環境下で保管した後の印刷媒体へのインク密着性が高いことが求められていた。
一方、情報記録方式では、記録方式に応じて求められる印刷適性は異なる。近年、情報記録方式に用いられる記録装置の一つであるインクジェットプリンターの高精細化、高速印字化、低価格化が進んでいる。そのため、可変データの記録を情報記録方式の中でもインクジェット記録方式で行いたいという要望が近年では増加している。このようなインクジェット記録方式では、インク滲みが少ない点での印刷品質が高いことと、印刷後の印刷物を水分に晒した際の耐水密着性が求められている。近年では、水性インクの代わりに紫外線硬化型インクを用いることによりインクジェット記録方式の耐水密着性を改善する方法が提案されている。しかしながら、高温高湿環境下で保管した後は上述のとおり印刷面である樹脂層の吸湿度が高くなるため、紫外線硬化型インクを用いた場合に高温高湿環境下で保管した後の耐水密着性やインク滲みをさらに改善することが求められていた。
本発明が解決しようとする課題は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる印刷媒体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決できる印刷媒体について鋭意研究した。その結果、熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む樹脂層を有することで上記課題を解決できる印刷媒体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記構成により、上記課題を解決できることは知られていなかった。また、上記課題を解決できる印刷媒体は、従来知られていなかった。そして、上記構成により、上記課題を解決できることは当業者が予測できない顕著な効果であった。以下において、各文献と本発明の構成を対比して、その旨を説明する。
例えば、特許文献1には、情報記録方式のうち、熱転写記録方式に適した印刷媒体が記載されている。具体的には、熱可塑性樹脂フィルムからなる支持体の表面に、下記(A)および(B)成分からなる塗工層を設けた印刷および熱転写用画像受容フィルムが記載されている。
(A)不飽和カルボン酸またはその無水物が結合したオレフィン共重合体(a)を非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤、カチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を分散剤(b)として用いて、水中に分散させた水分散液であって、(a)/(b)の固形分あたりの重量の比率が100/1〜100/30であり、平均粒子径が5μm以下である樹脂水分散液。
(B)特定のポリイミン系重合体またはポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物。
特許文献1には、このような構成により、熱転写型プリントにおいて高温高湿環境下におけるインクの転写性、密着性および耐水密着性に優れ、鮮明な画像が得られる熱転写フィルム、特に溶融熱転写フィルムであり、かつ種々の印刷方式においてインクの転移性、密着性及び耐水密着性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供することが記載されている。
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載のカチオン性ポリオレフィン樹脂を用いた熱転写用画像受容フィルムを用いて紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行ったところ、印刷物にインク滲みが生じて印刷品質が劣るため、細かい文字やバーコードの判読性に劣るという問題点があることがわかった。
特許文献2には、(a)カチオン性ウレタン系樹脂、(b)オレフィン系共重合体エマルジョン及び(c)エチレンイミン系樹脂を含む印刷媒体用組成物が記載されている。また、特許文献2には、支持体の少なくとも一方の表面に、上記の印刷媒体用組成物を含む塗工層が設けられた印刷媒体が記載されている。
特許文献2には、このような構成により、有版印刷方式及び無版印刷方式の両方において優れた印刷適性を有する印刷媒体を提供することが記載されている。
しかしながら、本発明者らが特許文献2に記載の酸性pH調整剤(c)を含まない印刷媒体の印刷前の物性を検討したところ、印刷媒体の表面に塗布筋などの表面筋が多いという問題点があることがわかった。
特許文献3には支持体上に、アルミナ水和物およびバインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体であって、インク受容層の表面はカチオン性ポリウレタンを含有する複数の皮膜で形成された部分皮膜で被覆されており、複数の皮膜の平均長径は0.03μm以上1.00μm未満であり、部分皮膜によるインク受容層表面の被覆率は10%以上70%未満である、記録媒体が記載されている。
特許文献3によれば、このような構成により、インク受容層の優れたインク吸収性を維持しながら、優れた表面光沢性、耐傷性および発色性を有する記録媒体を提供することが記載されている。
しかしながら、特許文献3に記載の記録媒体は、インク受容層のインク吸収性を高める必要がある、水性インクを用いたインクジェット記録方式に特化した専用の印刷媒体であった。紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録をする場合、インク受容層のインク吸収性はあまり重要ではない。特許文献3に記載のインク受容層の表面を部分皮膜で被覆する構成は、紫外線硬化型インクを用いた場合の印刷適性の改善に寄与するものではなかった。
特許文献4には、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分単位として含むポリウレタン樹脂(A)と炭素−炭素二重結合を有するポリウレタン樹脂(B)とカチオン性高分子帯電防止剤(C)とオキサゾリン化合物(D)とを含有する塗工液を塗布した後、乾燥してなる塗工層を少なくとも片面に有する積層ポリエステルフィルムが記載されている。
特許文献4によれば、このような構成により、帯電防止性と易接着性とを高度な水準で両立した塗工層を有するポリエステルフィルムを提供することが記載されている。
しかしながら、特許文献4に記載の酸性pH調整剤(c)もエチレンイミン系樹脂(b)も含まない記録媒体は、印刷媒体の表面に塗布筋などの表面筋が多く、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に印刷媒体の表面に塗布筋などの表面筋が多いという問題点もあることがわかった。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
[1] 熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、
カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む樹脂層を有する印刷媒体。
[2] [1]に記載の印刷媒体は、前記樹脂層が、固形分として0.01g/m〜5g/mであることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の印刷媒体は、前記酸性pH調整剤(c)が20℃、1気圧において固体状態であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか1つに記載の印刷媒体は、前記酸性pH調整剤(c)が遊離酸としてpKaが−0.2〜6.8の酸を含むことが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の印刷媒体は、前記酸性pH調整剤(c)が炭素数9〜18の1価の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ホウ酸類およびリン酸類から選択される1以上の酸を含むことが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか1つに記載の印刷媒体は、前記樹脂層が、塗工液から形成された塗工層であることが好ましい。
[7] 熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、
カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む塗工液を塗工して樹脂層を形成する工程を含む印刷媒体の製造方法。
[8] [7]に記載の印刷媒体の製造方法は、前記塗工液のpHが1.0〜7.4であることが好ましい。
[9] [1]〜[6]のいずれか1つに記載の印刷媒体の前記樹脂層の上に紫外線硬化型インクを有する印刷物。
本発明によれば、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる印刷媒体を提供することができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[印刷媒体]
本発明の印刷媒体は、熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む樹脂層を有する印刷媒体である。
このような構成により、本発明の印刷媒体は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる。樹脂層にカチオン性ポリウレタン樹脂(a)を含むことが、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性の改善に寄与すると予想される。樹脂層にエチレンイミン系樹脂(b)を含むことが、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性の改善に寄与すると予想される。樹脂層に酸性pH調整剤(c)を含むことが、高温高湿環境下で保管した後の表面筋の改善に寄与すると予想される。
本発明の印刷媒体は、紫外線硬化型インクを用いるオフセット印刷やシール印刷等の一般印刷方式と、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録にも適応した印刷媒体である。なお、本発明の印刷媒体は、熱転写記録方式、電子写真方式及びインクジェット記録方式等の情報記録方式にも適応することが好ましい。
また、印刷媒体は、印刷用紙であることが好ましい。ただし、印刷媒体は、印刷用紙以外(例えば、ポスター、カレンダー、地図、タグ、ラベル、ステッカーなど)であってもよい。
以下において、本発明の印刷媒体の好ましい態様の詳細を説明する。
<支持体>
支持体は、熱可塑性樹脂を主成分として含む。支持体が熱可塑性樹脂を主成分として含むことで、印刷物の耐水密着性を高めることができる。支持体の主成分とは、支持体の全体の質量の50質量%以上含まれる成分のことを言う。支持体は、熱可塑性樹脂を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
(熱可塑性樹脂)
支持体に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に限定されない。例えば、高密度ポリエチレンや中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートやポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも耐水密着性や耐薬品性およびコスト等の面から、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、印刷媒体に適切な剛度(コシ)を付与しやすい点から、プロピレン系樹脂を用いることが好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25質量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度または低密度のポリエチレンを例示することができる。
支持体に用いる熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。支持体に用いる熱可塑性樹脂には、必要に応じて無機微細粉末、有機フィラー、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤などを添加することができる。
(無機微細粉末)
支持体は、無機微細粉末を含むものであってもよい。支持体が無機微細粉末を含むことで、支持体を白色化、不透明化させ、さらには隠蔽性を付与することができ、印刷媒体として印刷の視認を容易にしたり、印刷の裏抜け(裏面から透けて見えること)を防止したりすることが可能となる。
無機微細粉末の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土などを例示することができる。また、前記無機微細粉末の種々の表面処理剤による表面処理品も例示できる。中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレイ、珪藻土を使用すれば安価で延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。
無機微細粉末の表面処理剤としては、例えば樹脂酸、脂肪酸、有機酸、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、石油樹脂酸、これらのナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの塩、または、これらの脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ワックス、パラフィンなどが好ましく、非イオン系界面活性剤、ジエン系ポリマー、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、燐酸系カップリング剤、不活性無機酸化物なども好ましい。前記硫酸エステル型陰イオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油などあるいはそれらのナトリウム、カリウムなどの塩が挙げられ、スルホン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸などあるいはそれらのナトリウム、カリウムなどの塩が挙げられる。
また、前記脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘベン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などが挙げられる。前記有機酸としては、例えばマレイン酸、ソルビン酸などが挙げられる。前記ジエン系ポリマーとしては、例えばポリブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。前記非イオン系界面活性剤としてはポリエチレングリコールエステル型界面活性剤などが挙げられる。不活性無機酸化物としてはアルミナ、シリカなどが挙げられる。これらの表面処理剤は1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの表面処理剤を用いた無機微細粉末の表面処理方法としては、例えば、特開平5−43815号公報、特開平5−139728号公報、特開平7−300568号公報、特開平10−176079号公報、特開平11−256144号公報、特開平11−349846号公報、特開2001−158863号公報、特開2002−220547号公報、特開2002−363443号公報、特開2010−66512号公報などに記載の方法が使用できる。
(有機フィラー)
支持体は、有機フィラーを含むものであってもよい。支持体が有機フィラーを含むことでも、支持体を白色化、不透明化させることができ、印刷媒体として印刷の視認を容易にすることが可能となる。
有機フィラーの具体例としては、支持体を構成する主要な熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点よりも、自身の融点またはガラス転移点が高い(例えば、120〜300℃)樹脂を好ましく使用できる。例えば、支持体を構成する主要な熱可塑性樹脂としてプロピレン系樹脂を用いる場合の有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状オレフィン単独重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリメタクリレート、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、メラミン樹脂などを例示することができる。これらは、支持体を構成する主要な熱可塑性樹脂であるプロピレン系樹脂よりも融点またはガラス転移温度が高くて、プロピレン系樹脂に対して非相溶性であることから、延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。
前記支持体には、無機微細粉末または有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、無機微細粉末と有機フィラーを混合して使用してもよい。
支持体に無機微細粉末や有機フィラーを用いる場合、支持体は、上記微細粉末やフィラーを総量として5〜75質量%含有することが好ましく、8〜65質量%含有することがより好ましく、10〜55質量%含有することがさらに好ましい。支持体におけるこれらの含有量が5質量%以上であれば、所期の空孔が得られやすく印刷媒体の不透明化を達成しやすい傾向がある。逆に75質量%以下であれば、支持体の強度が低下しにくい傾向がある。
用いる無機微細粉末の平均粒子径及び有機フィラーの平均分散粒子径は、0.01〜15μmの範囲内であることが好ましく、0.05〜1.5μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜1.3μmの範囲内であることがさらに好ましい。
平均粒子径または平均分散粒子径が0.05μm以上の微細粉末やフィラーを用いれば、延伸成形により空孔が得られやすく印刷媒体の不透明化を達成しやすい傾向がある。また平均粒子径または平均分散粒子径が15μm以下の微細粉末やフィラーを用いれば支持体の強度を高められる傾向がある。
用いる無機微細粉末の平均粒子径及び有機フィラーの平均分散粒子径は、粒子計測装置、例えばレーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社マイクロトラックベル社製、商品名)により測定した累積で50%にあたる粒子径(累積50%粒径)や、走査型電子顕微鏡による一次粒径の観察(本発明では粒子100個の平均値を平均粒子径とした)、比表面積からの換算(本発明では(株)島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用し比表面積を測定した)などにより求めることができる。
(その他添加剤)
熱安定剤を添加する場合は、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの熱安定剤などを通常0.001〜1質量%の範囲内で使用することができる。光安定剤を添加する場合は、立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、イオウ系光安定剤などを通常0.001〜1質量%の範囲内で使用することができる。分散剤は例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。具体的には、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびこれらの塩などを通常0.01〜4質量%の範囲内で使用することができる。
(支持体の成形方法)
支持体の成形方法は特に限定されない。支持体は公知の種々の方法の中から適宜選択して成形することができる。例えば、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融した熱可塑性樹脂組成物をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形、熱可塑性樹脂と有機溶媒やオイルとの混合物をキャスト成形またはカレンダー成形した後に溶媒やオイルを除去する方法などを用いて成形することができる。また、紙や熱可塑性樹脂フィルムの基材の上に溶融した熱可塑性樹脂組成物を押し出しラミネートすることもできる。
支持体(特に支持体表面の熱可塑性樹脂フィルム層)は、延伸していないものでも、延伸したものでもよい。延伸は、通常用いられている種々の方法のいずれかによって行うことができる。具体例としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせ、またはテンターとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸などを用いることができる。
上記延伸の温度は、非結晶性樹脂の場合は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度が好ましく、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃、ポリエチレンテレフタレート(融点246〜252℃)のときは104〜115℃に設定するのが好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
上記延伸の際の延伸倍率は特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用するときには、一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合は面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは10〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用するときには、一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
(支持体の構成)
支持体は、単層であってもよいし、積層構造を有するものであってもよい。
単層の支持体の製造方法について、例を示す。例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムを含む単層の支持体は、ポリオレフィン系樹脂40〜99.5質量%および無機微細粉末60〜0.5質量%を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、このポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度(好ましくは3〜60℃低い温度)で一軸または二軸方向に延伸することにより調製することができる。
積層構造を有する支持体の製造方法について、例を示す。例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムを含む層の積層構造を有する支持体は、ポリオレフィン系樹脂40〜100質量%および無機微細粉末60〜0質量%を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、このポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度(好ましくは3〜60℃低い温度)で縦方向に延伸し、その延伸フィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂25〜100質量%および無機微細粉末75〜0質量%を含有する樹脂組成物からなる樹脂フィルムを積層することによって調製することができる。さらにこの積層フィルムは、このポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度(好ましくは3〜60℃低い温度)で横方向に延伸して、延伸フィルムの上に積層する樹脂層を横方向に延伸してもよい。
また、天然パルプ紙の両面にポリオレフィン系樹脂フィルムを有する支持体の例を示す。広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、またはそれらの混合物を叩解し、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、填料等を配合したスラリーを抄紙し、坪量50〜200g/m、密度が0.90〜1.15g/cmに調整した紙を基材とすることができる。この基材の両面にポリオレフィン系樹脂40〜80質量%および無機微細粉末20〜60質量%を含有する樹脂組成物を押出ラミネートして支持体としてもよく、上記単層構造または積層構造を有する支持体として説明した樹脂フィルムを貼合して支持体としてもよい。
(支持体の物性)
支持体は、印刷媒体として用いる目的から、その厚みが30〜500μmの範囲内であることが好ましく、40〜400μmの範囲内であることがより好ましく、50〜300μmの範囲内であることがさらに好ましい。
また支持体(特に支持体表面の熱可塑性樹脂フィルム層)は、上記の通り延伸したものであってもよい。無機微細粉末や有機フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムを延伸すれば、内部に微細な空孔を多数有する多孔性樹脂延伸フィルムを得ることができる。このような多孔性樹脂延伸フィルムは軽量性、不透明性等の観点で印刷媒体の支持体として好適である。延伸した支持体は、取り扱いやすさの観点から、その密度が0.65〜1.2g/cmの範囲内であることが好ましく、0.7〜1g/cmの範囲内であることがより好ましい。
また、延伸した支持体は、以下の方法で測定される空孔率が5〜60%の範囲内であるのが好ましく、10〜50%の範囲内であることがより好ましい。
支持体の各層における空孔率は、支持体の空孔を潰さないように冷却しながら切削して厚み方向断面(観察面)を作成し、観察試料台に貼り付け、その観察面に金を蒸着して走査型電子顕微鏡を使用して観察しやすい任意の倍率にて各層の空孔を観察し、さらに観察した領域を画像データとして取り込み、その画像を画像処理して空孔の面積率を求め、これを空孔率とする。
また、延伸した支持体の物性は、その不透明度が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。支持体の不透明度が50%以上であれば、印刷媒体として用いた際に印刷の視認が容易となり、さらにラベル用紙として用いた場合に、バーコード印字が下地の影響を受けて読み取りエラーが発生する恐れも殆どない。同様に延伸した支持体の白色度は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。このような白色度は印刷物の鮮明性に寄与できる。
(支持体の表面酸化処理)
上記の支持体には、その表面に樹脂層を形成する前に、表面酸化処理として一般的に使用されるコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理などを単独または組み合わせて使用することが好ましい。これらの中でも好ましくはコロナ放電処理、フレーム処理であり、より好ましくはコロナ放電処理である。処理量はコロナ放電処理の場合、600〜12,000J/m(10〜200W・分/m)で実施することが好ましく、1,200〜10,800J/m(20〜180W・分/m)で実施することがより好ましい。フレーム処理の場合は、8,000〜200,000J/mで実施することが好ましく、20,000〜100,000J/mで実施することがより好ましい。
<樹脂層>
本発明に使用する樹脂層は、支持体の少なくとも一方の表面に位置し、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む。
前記樹脂層は、塗工層であることが好ましい。ただし、前記樹脂層は、塗工以外の方法で形成された層であってもよい。
印刷媒体は、支持体の片方の表面のみに前記樹脂層を有していてもよいし、支持体の両方の表面に前記樹脂層を有していてもよい。
(カチオン性ポリウレタン樹脂(a))
前記樹脂層にカチオン性ポリウレタン樹脂(a)を用いることにより、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性の改善に寄与することができる。このメカニズムは不明であるが、後述の実施例と比較例の対比からこの効果を読み取ることができる。なお、高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性の改善は、ウレタン樹脂の親水性疎水性のバランスにも相関性があると予想される。
前記樹脂層に用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)は、支持体との密着性に優れた塗工層を形成できる。また、前記樹脂層に用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)は、ウレタン結合に起因する弾性に富んだ前記樹脂層を形成でき、紫外線硬化型インクの硬化時の体積収縮に追従することによりインク密着性を高めることができる。
また、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)はカチオン性であるためにエチレンイミン系樹脂(b)との混和性に富む。そのため、本発明の構成の樹脂層ではカチオン性ポリウレタン樹脂(a)やエチレンイミン系樹脂(b)が凝集しにくくなり、印刷前の表面筋も生じにくくなる。
カチオン性ポリウレタン樹脂は、分子内に下記式(1)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
Figure 2017110599
(上記式(1)中、Rは、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を表し、R及びRは、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を表し、Rは、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の有機残基を、Xはアニオン性の対イオンを表す)
式(1)で表される構造単位はウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入したものであり、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオールを、ポリイソシアネートと反応して得ることができる。
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物としては、例えば下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2017110599
上記式(2)中、Rは脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を表す。
上記式中、Rが脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基である場合、上記式で表される化合物の具体例としては、エタンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,3−ジグリシジルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、3−メチル−ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジグリシジルエーテル、ポリブタジエン−ジグリシジルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物の(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また上記式中、Rが2価フェノール類の残基である場合、上記式で表される化合物の具体例としては、レゾルシノール−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−3−3’−ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)−2,2−プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また上記式中、Rがポリオキシアルキレン基である場合、上記式で表される化合物の具体例としては、ジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、さらにオキシアルキレンの繰り返し単位数が3〜60のポリオキシアルキレングリコール−ジグリシジルエーテル、例えばポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコール−ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
2級アミンとしては、公知の化合物を使用できるが、反応制御の容易さの点で、分岐状又は直鎖状の脂肪族2級アミンが好ましい。
かかる2級アミンとして使用することができるものの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ペプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、3級アミノ基含有ポリオールを製造する際に揮発し難いこと、あるいは、含有する3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は4級化剤で4級化する際に立体障害を軽減できることなどの理由から、炭素数2〜18の範囲の脂肪族2級アミンがより好ましく、炭素数3〜8の範囲の脂肪族2級アミンがさらに好ましい。
ポリイソシアネートとしても、公知の化合物を使用できる。かかるポリイソシアネートの具体例としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等の、ウレタン系樹脂の製造において用いられる有機ポリイソシアネートが挙げられる。
さらに、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)は、エマルジョンの形態を有することが好ましい。カチオン性ポリウレタン樹脂(a)は後述する塗工液を調製した場合に塗工しやすくして印刷前の表面筋を少なくし、得られた前記樹脂層の耐水密着性を高める観点から、水性媒体中に分散したエマルジョンの様態であり、乾燥後には再溶解しないことがより好ましい。また、前記樹脂層の透明性を高める観点から、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)エマルジョンの平均分散粒子径は例えば0.005〜0.10μmとすることができ、0.005〜0.05μmが好ましい。エマルジョンの平均分散粒子径は、粒子計測装置、例えばレーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社マイクロトラックベル社製、商品名)により測定した累積で50%にあたる粒子径(累積50%粒径)や、走査型電子顕微鏡による一次粒径の観察(例えば粒子100個の平均値)、比表面積からの換算(例えば(株)島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用して比表面積を測定)などにより求めることができる。
カチオン性ポリウレタン樹脂(a)の最低造膜温度は、0〜40℃であることが好ましく、0〜5℃であることがより好ましい。
カチオン性ウレタン樹脂(a)から、アセトン法、プレポリマーミキシング法、ケチミン法、ホットメルトディスパージョン法等の公知の方法を用いて、カチオン性ウレタン樹脂(a)のエマルジョンを得ることができる。
カチオン性ポリウレタン樹脂エマルジョンとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス600、610、620、650(商品名)や、DIC(株)製のハイドランCP−7030、7050、7060(商品名)、日華化学(株)製のネオステッカーなどが市販されており、利用することができる。
(エチレンイミン系樹脂(b))
エチレンイミン系樹脂(b)は、紫外線硬化型インクとの親和性が強いことから、紫外線硬化型インクとのインク密着性を高めることができる。
エチレンイミン系樹脂(b)の種類としては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、もしくはこれらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、変性体、又は脂肪族環状炭化水素変性体、ないしはこれらの水酸化物が挙げられる。これらは単独または複数組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ポリエチレンイミン又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体を、炭素数1〜24のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル又はハロゲン化ベンジル等の変性剤によって変性した変性体がインクとの密着性向上の観点から好ましい。
変性剤として使用するハロゲン化物の具体例としては、塩化メチル、臭化メチル、塩化n−ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等が挙げられる。
このようなエチレンイミン系樹脂としては、例えば(株)日本触媒製のエポミンP−1000(商品名)や、BASF社製のポリミンSK(商品名)や、三菱化学(株)製のサフトマーAC−72(商品名)などが市販されており、利用することができる。
(酸性pH調整剤(c))
本発明で好適に用いられるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)は、乾燥後の耐水密着性が高くなるように設計され、かつ平均粒子径が小さいエマルジョンであることから、塗工液中では凝集しやすい性質を有する。一般にナノサイズの粒子の表面電位(ゼータ電位、または界面動電電位(electrokinetic potential)といわれる)の絶対値が20mV以上であると電気二重層が壊れにくく、粒子の分散性が良好であるとされる。本発明においてはカチオン性ポリウレタン樹脂(a)の水分散体に酸性pH調整剤(c)を添加した塗工液の状態におけるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位を20mV以上にすることが好ましく、30mV以上にすることがより好ましい。これによりカチオン性ポリウレタン樹脂の分散性が向上し、エチレンイミン系樹脂(b)との混合時に凝集が起こりにくくなり、凝集や増粘しにくい塗工液が得られる。その結果、塗工が容易になり、異物が少なく、印刷前の表面筋の少ない前記樹脂層が得られる傾向がある。一方、塗工液の状態におけるカチオン性ポリウレタン樹脂のゼータ電位を80mV以下にすることが好ましく、70mV以下にすることがより好ましく、60mV以下にすることが特に好ましい。これにより前記樹脂層の耐水密着性が向上したり、酸性pH調整剤(c)やカチオン性ポリウレタン樹脂(a)の添加による悪影響を低減したりできる傾向がある。
塗工液の状態におけるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位を上記範囲内にするためには、酸性pH調整剤(c)は酸性である必要がある。酸性pH調整剤(c)は遊離酸としてのpKaが−0.2〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましい。2以上のpKaをとる酸は、すべてのpKaが上記の範囲内にあることが好ましい。
また、酸性pH調整剤(c)を添加することにより、樹脂層を形成するための塗工液のpHを1.0〜7.4とすることが好ましく、3.0〜7.2がより好ましく、4.0〜6.5が特に好ましい。塗工液のpHが上記好ましい範囲の上限値以下であると、塗工液の状態におけるカチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位を好ましい範囲に制御しやすくなり、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)が凝集し難くなる。遊離酸としてのpKaが低い酸を使用するときには、塩基を添加して塗工液のpHや、塗工液の状態でのカチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位を上記範囲に調整することができる。使用可能な塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。また、エチレンイミン系樹脂(b)も塩基としての働きを有する。例えば、pKaが低いパラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類を用いる場合は、アンモニア等の塩基を用いることが好ましい。
また、通常使用条件下において酸性pH調整剤(c)が固体状態または気体状態であれば、前記樹脂層内で酸性pH調整剤(c)が移動して前記樹脂層表面に浸み出してくること(マイグレーション)による印刷インクの転移不良が生じにくい。特に有版印刷においてマイグレーションが生じにくい傾向は顕著である。また、マイグレーションが生じにくいと、インクジェットインクをはじきにくくなる傾向がある。酸性pH調整剤(c)は20℃、1気圧において固体状態であることが好ましく、40℃、1気圧において固体状態であることがより好ましく、60℃、1気圧において固体状態であることが特に好ましい。これにより、通常の使用条件下では酸性pH調整剤(c)が固体であり、経時でのマイグレーションを防ぐことができるため、印刷媒体の長期保管後のインク転移性を阻害しない傾向がある。酸性pH調整剤(c)は20℃、1気圧において気体状態であってもよく、気体の酸性pH調整剤(c)としては塩酸を挙げることができる。また、酸性pH調整剤(c)が通常の使用条件下で気体である場合、経時でのマイグレーションを防ぐためには乾燥後の樹脂層における濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。
本発明の印刷媒体は、前記酸性pH調整剤(c)が炭素数9〜18の1価の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ホウ酸類およびリン酸類から選択される1以上の酸を含むことが、上記の性質の塗工液を調製しやすい観点から好ましい。前記酸性pH調整剤(c)は、炭素数9〜18の1価の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ホウ酸類およびリン酸類から選択される1以上の残基からなる酸でもよい。本明細書中、ある酸の「残基からなる酸」とは、ある酸から遊離可能なイオンが遊離した残りの部分のことを言う。
炭素数3〜12の2価以上のカルボン酸としては、炭素数3〜8の2価以上のヒドロキシカルボン酸が含まれ、炭素数3〜8の2価以上のヒドロキシカルボン酸は好ましい態様の一つである。芳香族カルボン酸としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸が含まれる。ホウ酸類としてはオルトホウ酸、メタホウ酸が含まれる。リン酸類としてはオルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸が含まれる。
前記酸性pH調整剤(c)が炭素数9〜18の1価の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸およびリン酸類から選択される1以上の酸を含むことがより好ましく、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸およびリン酸類から選択される1以上の酸を含むことが特に好ましい。酸性pH調整剤(c)の中でも、オルトホウ酸、オルトリン酸、メタリン酸、クエン酸、イタコン酸、酒石酸、L−乳酸、リンゴ酸がより好ましく、クエン酸、イタコン酸、酒石酸、L−乳酸、リンゴ酸が特に好ましく、クエン酸がより特に好ましい。
(配合量比)
前記樹脂層における各成分の乾燥後の固形分としての配合量比は、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)の100質量部に対し、エチレンイミン系樹脂(b)を1〜60質量部含むことが好ましく、1〜40質量部含むことがより好ましく、10〜20質量部含むことが特に好ましい。
さらにpHを上記範囲に調整するために、酸性pH調整剤(c)をカチオン性ポリウレタン樹脂(a)の100質量部に対し、0.01〜5質量部含むことが好ましく、0.5〜3質量部含むことがより好ましい。これにより塗工液のpHを上述の好ましい範囲に調整して塗工することがさらに好ましい。
前記樹脂層における各成分の量比がこの範囲内であれば、各種の印刷方式および情報記録方式において高い印刷品質や印刷物の耐水密着性が得られる。
(その他の成分)
前記樹脂層は、塗工適性や印刷適性を向上する必要に応じて架橋剤(d)、帯電防止剤(e)、消泡剤、その他の助剤等を、本発明の趣旨に反さない範囲で含むことができる。
−架橋剤(d)−
前記樹脂層は、架橋剤(d)を含むものであってもよい。前記樹脂層の耐水密着性をより高める観点から、架橋剤(d)はエチレンイミン系樹脂(b)と反応して架橋する物質が好ましい。また、前記樹脂層を構成する塗料は水溶液または水分散液の形で供されることから、架橋剤(d)は水溶性の物質であることが好ましい。また、前記樹脂層に柔軟性を与えるためには架橋剤(d)が2官能の物質であるかポリマー系の物質であることが好ましい。一方、前記樹脂層に耐水密着性や耐摩耗性を与えるためには架橋剤(d)が3官能以上の低分子物質であることが好ましい。架橋剤(d)として2官能の物質と3官能以上の物質とを併用してもよい。
架橋剤(d)としては、エポキシ系、イソシアネート系、ホルマリン系、オキサゾリン系の樹脂が挙げられる。これらの中でもビスフェノールA−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂が好ましく、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、あるいは単官能乃至多官能のグリシジルエーテル、グリシジルエステル類がより好ましい。中でもポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物は多官能でありながら柔軟性の高い塗膜が得られ、かつ水溶性であることから特に好ましい。
架橋剤(d)は、固形分として、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)の100質量部に対し、5〜30質量部含むことが好ましく、10〜20質量部含むことがより好ましい。
−帯電防止剤(e)−
前記樹脂層は、帯電防止剤(e)を含むものであってもよい。前記樹脂層に帯電防止剤を加えることにより、印刷媒体への埃の付着や印字および印刷時の静電気によるトラブルを軽減することが出来る。帯電防止剤(e)は、長期保存下において前記樹脂層表面に浸み出してインク密着性の低下を招きにくいポリマー型帯電防止剤が好ましい。一方、帯電防止剤(e)としてはカチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型などが使用可能であるが、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)やエチレンイミン系樹脂(b)と混合しても凝集を起こしにくいカチオン型またはノニオン型が好ましく、少量の添加で高い帯電防止性が得られるカチオン型がさらに好ましい。カチオン型としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するものが挙げられる。アニオン型としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸などのアルカリ金属塩(例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有するものが挙げられる。両性型としては、上記のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有するもので、例としてはベタイン型が挙げられる。ノニオン型としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体や、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体が挙げられる。その他、ホウ素を分子構造中に有するポリマー型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらの中でもカチオン型かつポリマー型である窒素含有ポリマー型帯電防止剤が好ましく、第三級窒素または第四級窒素含有アクリル系樹脂がより好ましい。
(溶媒と固形分濃度)
前記樹脂層は、塗工液を塗工して形成された塗工層であることが好ましい。塗工層を形成する塗工液は、工程管理が容易であることから、上記成分を水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、或いはキシレン等の溶媒に均質に溶解または分散させて、溶液または分散液の状態として用いることが好ましい。中でも安全性や臭気の観点から、上記成分を何れも水溶性または水分散性の物質として、水溶液または水分散液の形態で用いることがより好ましい。水溶液は水に相溶するアルコール類、ケトン類を助溶媒として含むものであってもよい。
樹脂層を形成する塗工液中の固形分濃度は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。樹脂層を形成する塗工液中の固形分濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
(固形分)
本発明の印刷媒体は、前記樹脂層が、固形分として0.01g/m〜7g/mであることが好ましく、0.01g/m〜5g/mであることがより好ましく、0.05g/m〜3g/mが特に好ましい。本明細書における樹脂層の固形分は、片面当たり、乾燥後の固形分量を意味する。紫外線硬化型インクの密着性を実用的に発現するには樹脂層の固形分(塗工量)が好ましい範囲の下限値以上であることが好ましい。樹脂層の固形分(塗工量)が好ましい範囲の上限値以下であることが樹脂層の凝集破壊による密着力が生じないようにし、材料コストを下げる観点から好ましい。
<印刷媒体への印刷方式>
本発明の印刷媒体への印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、熱転写記録方式、感圧転写記録方式、電子写真記録方式などの種々の公知の手法を用いることが可能である。印刷の精細性の観点からはグラビア印刷、インクジェット記録方式、電子写真記録方式が、小ロット対応可能である観点からはレタープレス印刷、フレキソ印刷が好ましい。
印刷媒体の表面が多量のインク(おおむね1g/m以上)を吸収できるほどの空隙を有していない場合は、インクジェット記録方式の中でも紫外線硬化型インクを使用するインクジェット記録方式(いわゆるUVインクジェット方式)に用いることが好ましい。
[印刷媒体の製造方法]
本発明の印刷媒体の製造方法は、熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む塗工液を塗工して樹脂層を形成する工程を含む。すなわち、本発明の印刷媒体は、前記樹脂層が、塗工液から形成された塗工層であることが好ましい。塗工液の状態におけるpHやゼータ電位や酸性pH調整剤(c)の添加に応じて、印刷媒体の印刷前の表面筋の状態が異なるため、前記樹脂層の構造を特定することは技術的に不可能であるか、または特定することがおよそ非実際的でない作業を伴う。さらに塗工液に架橋剤を添加した場合に、エチレンイミン系樹脂などの樹脂成分が架橋する構造を特定することは、技術的に不可能であるか、または特定することがおよそ非実際的でない作業を伴う。そのため、本発明の印刷媒体の好ましい態様の一つはプロダクトバイプロセスクレームで記載されることも好ましい。
(塗工)
塗工工程では、支持体の少なくとも一方の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む塗工液を塗工して樹脂層を形成する。
本発明の印刷媒体の製造方法は、前記塗工液の状態における前記カチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位が20mV以上であることが好ましく、20mV〜70mVであることがより好ましい。また、本発明の印刷媒体の製造方法は、前記塗工液のpHが1.0〜7.4であることが好ましく、3.0〜7.2であることがより好ましい。本発明の印刷媒体の製造方法における前記塗工液の状態における前記カチオン性ポリウレタン樹脂(a)のゼータ電位と、前記塗工液のpHのさらに好ましい範囲は、本発明の印刷媒体の説明中における好ましい範囲と同様である。
前記樹脂層の形成は支持体の最外層の少なくとも一方の表面に塗工液を塗工することで行うことが好ましい。帯電防止性能の観点から、支持体の両表面に塗工液を塗工することが好ましい。
塗工工程は、支持体の成形ライン中で支持体成形と併せて実施してもよいし、既に成形された支持体を用いて別ラインで実施してもよい。また、上記支持体の成形が延伸法による場合は、延伸工程の前に塗工を行っても良く、延伸工程の後に塗工を行ってもよい。
塗工工程の前または後に必要に応じてオーブン等を用いた乾燥工程を経て余分な溶媒を除去してもよい。
支持体への塗工液の塗工は、一般的な塗工装置を使用することができ、乾燥後の固形分(塗工量)、塗工液の粘度、塗工液中の薬品の固形分濃度等に応じて適宜選択する。塗工装置としてはロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等が挙げられる。中でも、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)、酸性pH調整剤(c)の配合量比の好ましい態様において、ロールコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、スプレーコーターを使用することが好ましく、ロールコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーターを使用することがより好ましい。
[印刷物]
本発明の印刷物は、本発明の印刷媒体の前記樹脂層の上に紫外線硬化型インクを有する。
<紫外線硬化型インク>
印刷には、任意の着色剤を含む溶液または分散液を用いることができる。着色剤を含む溶液または分散液のことを「インキ」または「インク」という。一般に、版を使って行う有版印刷に用いるものは「インキ」、版を使わずにプリンタ出力などの無版印刷に用いるものは「インク」と区別して用いることがある。本明細書では、「インキ」と「インク」を特に区別せずに「インク」として説明する。
これらの印刷に用いるインクは、インク密着性(定着性)および耐擦過性の観点から紫外線硬化型インクが好ましい。
紫外線硬化型インクで印刷を施す場合、紫外線硬化型インクは紫外線照射により固化される。紫外線照射方法は、紫外線硬化型インクが硬化される方法であれば特に限定されないが、例えば、メタルハライドランプ(200〜400nm)、低圧水銀灯(180〜250nm)、高圧水銀灯(250〜365nm)、ブラックライト(350〜360nm)、UV−LEDランプ(355〜375nm)から照射される紫外線を、300〜3000mJ/cm、好ましくは400〜1000mJ/cmの照射量となるように照射することが挙げられる。
紫外線硬化型インクとしては、特に制限はなく、公知の紫外線硬化型インクを用いることができる。紫外線硬化型インクは、少なくとも希釈剤と2官能以上のラジカル重合性基を有する化合物と着色剤を含むことが好ましい。
紫外線硬化型インクに用いられる材料としては、特表2004−526016号公報の[0016]〜[0097]に記載の材料(特に脂肪族ウレタンアクリレート)、特開2002−080767号公報の[0010]〜[0062]に記載の材料(特にアニオン性の水性ポリウレタン化合物)、特開2010−530922号公報の[0004]〜[0026]に記載の材料(特にポリオレフィン系フィルムとの接着が優れる塩素化ポリオレフィン)などを好ましく用いることができる。これらの公報の内容は参照して本明細書に組み込まれる。
紫外線硬化型インクは、さらにアクリロイルモルホリンを希釈剤として含むものも好ましく用いることができる。
紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録においては、印刷媒体の最外層にインク滴が着弾してから紫外線照射により固化されるまでの間にインク滴が流れてしまうと画像が滲んだり線画が太くなったりして、印刷品質(画質)に影響が生じる。
紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録の印刷品質を高める観点からは、樹脂層を形成する塗工液のpHを3.0以上にすることが好ましい。印刷媒体の樹脂層の表面のpHが好ましい塗工液のpHの下限値以上であると、インク滴が着弾してからインク滴がはじかれるように変形して線画がかすれることが少なくなり、インク中の顔料が凝集して金属調光沢被膜を生じることが少なくなるため、印刷品質を高めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。「重量部」および「重量%」は、「質量部」および「質量%」と同義である。「wt%」は、「質量%」と同義である。
実施例、比較例に使用した材料を下記表1に示す。
Figure 2017110599
[製造例1]
製造例1の支持体を以下の方法で製造した。
(1)MFR(メルトフローレート)0.8g/10分のプロピレン単独重合体(融点164℃)81質量%と、高密度ポリエチレン3質量%及び平均粒子径1.5μmの重質炭酸カルシウム16質量%を混合した樹脂組成物(A)を、270℃の温度に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し、さらに冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。次いで、このシートを150℃の温度にまで再度加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍の延伸を行い、縦5倍延伸フィルムを得た。
(2)別に、MFR4g/10分のプロピレン単独重合体(融点164℃)55質量%と、平均粒子径1.5μmの重質炭酸カルシウム45質量%を混合した樹脂組成物(B)を、270℃の温度に設定した別の2台の押出機にて混練した後、シート状に押し出し、これを上記(1)の工程で得た縦5倍延伸フィルムの両面に積層し、三層構造の積層フィルムを得た。
(3)次いで、この三層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、再び155℃の温度にまで加熱し、テンターを用いて横方向に7.5倍延伸し、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却した後、耳部をスリットして三層構造の積層延伸フィルムを得た。
得られた三層構造の積層延伸フィルムは各層(B層/A層/B層)の延伸軸数が一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸であり、厚みが80μm(B層/A層/B層の各厚みが15μm/50μm/15μm)であり、密度が0.79g/cmであり、空孔率が29%であり、不透明度が90%であり、白色度が95%であった。密度、空孔率、不透明度、白色度は公知の方法で測定した。
(4)三層構造の積層延伸フィルムの一方の表面に、コロナ放電処理装置(商品名:HF400F、春日電気(株)製)、長さ0.8mのアルミニウム製放電電極およびトリーターロールにシリコーン被膜ロールを用い、放電電極とトリーターロールとのギャップを5mmとし、ライン処理速度15m/分、印加エネルギー密度4,200J/mにてコロナ放電処理を行った。得られた支持体を製造例1の支持体として用いた。なお、製造例1の支持体は、熱可塑性樹脂を主成分として含む。
[製造例2]
製造例2の支持体を以下の方法で製造した。
市販のポリエステルフィルム(商品名「ルミラーE20」、東レ(株)製、厚さ100μm)の片面に製造例1と同様のコロナ放電処理を行った。得られた支持体を製造例2の支持体として用いた。なお、製造例2の支持体は、熱可塑性樹脂を主成分として含む。
[製造例101]
製造例101の塗工液を以下の方法で製造した。
カチオン性ポリウレタン樹脂(a)としてカチオン性ポリウレタン樹脂水分散液(商品名:スーパーフレックス650、第一工業製薬(株)製)を固形分として6質量%、エチレンイミン系樹脂(b)としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP−1000、(株)日本触媒製)を固形分として0.8質量%、酸性pH調整剤(c)としてオルトリン酸をpH5.5になるように添加して、塗工液を得た。得られた塗工液を、製造例101の塗工液とした。
下記表2に各製造例の塗工液の配合割合(水分散液中 固形分濃度 wt%)を記載した。なお、下記表2中、酸性pH調整剤(c)の欄に記載した「○」は、該当する種類の酸性pH調整剤(c)を用いて塗工液のpHを調整したことを意味する。なお、各実施例において塗工液に添加した酸性pH調整剤(c)は、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)の100質量部に対し、0.5〜3質量部の範囲であった。
[実施例1]
製造例1の支持体のコロナ放電処理側の表面に、製造例101の塗工液を単位面積(m)当たり乾燥後の固形分が0.5g(0.5/m)となるような塗工量(固形分)でバーコーターを用いて塗工した。次いで塗工後の支持体を60℃のオーブンに入れ、塗工液を乾燥させて樹脂層(塗工層)を形成し、最終的にワインダーにてロール状に巻き取り、印刷媒体を得た。得られた印刷媒体を、実施例1の印刷媒体とした。
[実施例2〜11および比較例2〜4]
上記表1に記載の材料を下記表2に記載の配合割合で調製し、酸性pH調整剤(c)を添加して表2に記載のpHに調整して、製造例102〜111および113〜115の塗工液を製造した。製造例104の塗工液は、酸性pH調整剤(c)による塗工液のpHの調整のときにアンモニア水を併用し、塗工液のpHが3.2となるように製造した。製造例107の塗工液は、酸性pH調整剤(c)による塗工液のpHの調整のときに水酸化ナトリウムを併用し、塗工液のpHが7.0となるように製造した。
塗工液として下記表2に記載した塗工液を用い、下記表2に記載の塗工量(固形分)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11および比較例2〜4の印刷媒体を得た。
[比較例1]
製造例105の塗工液の製造において、酸性pH調整剤(c)を添加しなかったこと以外は製造例105と同様にして、製造例112の塗工液を製造した。
塗工液として製造例112の塗工液を用い、下記表2に記載の塗工量(固形分)とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の印刷媒体を得た。
[実施例12]
実施例5において、製造例2の支持体の表面に塗工液の製造例105で得られた塗工液を塗工したこと以外は実施例5と同様にして実施例12の印刷媒体を得た。
<塗工液物性>
(pHの測定)
各製造例の塗工液のpHの測定を、株式会社堀場製作所社製、商品名ポータブル型pHメータ D71を用いて行った。得られた結果を下記表2に記載した。
(ゼータ電位の測定)
各製造例の塗工液中のカチオン性ポリウレタン樹脂(a)の固形分濃度が1.0%になるように蒸留水で希釈して、測定用サンプルを得た。ゼータ電位計・粒径測定システムELSZ−2(大塚電子株式会社製)を用い、測定用サンプルを適宜希釈しながらゼータ電位を測定した。得られた結果を下記表2に記載した。
なお、ゼータ電位の測定において、カチオン性ポリウレタン樹脂(a)として上記CU1を使用した場合、CU1の平均分散粒子径が小さく、十分な光散乱強度が得られなかったため、ゼータ電位を求めることができなかった。この場合、下記表2のゼータ電位の欄に「−」と記載した。
下記表2中、ゼータ電位の測定値がプラスの場合は、明確化のために「+」の符号を付与した。
<樹脂層の固形分>
各実施例および比較例の印刷媒体の樹脂層の固形分(塗工量)を下記表2に記載した。各実施例および比較例の印刷媒体の樹脂層の固形分は、樹脂層を剥離して測定することができる。各実施例および比較例の印刷媒体の樹脂層の固形分は、各製造例の塗工液の固形分から算出して求めた値と一致する。
Figure 2017110599
[印刷媒体の評価]
各実施例、比較例で得た印刷媒体に対し、それぞれ下記のように(1)印刷前の物性、(2)一般印刷適性、(3)インクジェット適性について評価した。結果を下記表3にまとめて記す。
なお、(2)一般印刷適性および(3)インクジェット適性については、高湿環境下で保管した後の印刷媒体評価を行った。
(1)印刷前の物性(白紙物性とも言われる)
(表面筋)
印刷媒体を幅210mmにカットし、表面を目視観察し、塗工流れ方向に平行な表面筋(塗工に起因する塗布筋)の頻度を目視にて観察し、次の5段階にて評価した。
5:筋が全く見られない(良好)
4:筋が1本見られる(可)
3:筋が2〜3本見られる(可)
2:筋が4〜10本見られる(不可)
1:筋が10本以上見られる(不可)
(表面抵抗率)
印刷媒体を10cm×10cmに切断し、温度23℃および相対湿度50%の雰囲気下で2時間経過させた。その後、印刷媒体の樹脂層側の表面抵抗率をJIS K 6911:1995に準拠し、絶縁計(商品名:DSM−8103、東亜電波工業(株)製)と2重リング法の電極を用いて測定した。JISは、Japanese Industrial Standardsの略称である。
測定された表面抵抗率が1×1013Ω以上の場合を帯電防止性なしと判断される。測定された表面抵抗率が1×1013Ω未満の場合は帯電防止性が良好であり、印字及び印刷時の給排紙性が良好であり、印刷媒体として好適である。
(2)一般印刷適性
(インク転移性)
各実施例および比較例の印刷媒体を、温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下に7日間保管した。
印刷機(商品名:RI−III型印刷適性試験機、(株)明製作所社製)と紫外線硬化型印刷用インク(商品名:ベストキュアー161(藍)、(株)T&K TOKA社製)を用いて、印刷媒体の樹脂層側の表面に上記のインクを1.5g/mの厚さとなるようにベタ印刷した。ここで言うベタ印刷とは、印刷媒体の特定の範囲に単一のインクで全面印刷することを言う。ベタ印刷した範囲を展色面という。次いで紫外線ランプ(メタルハライド灯、出力80W/cm、アイグラフィックス(株)製)1灯の下でランプからの距離10cmのところを10m/分の速度で1回通過させて印刷面に紫外線照射し、インクを乾燥固化した印刷物を得た。その後マクベス濃度計(米国コルモーゲン社製)にて印刷物の光反射濃度(マクベス濃度)を測定し、展色面のむら(塗布筋、白抜け等の転移不良)を目視にて観察し、次の5段階にて評価した。
5:光学濃度が2.0以上(良好)
4:光学濃度が1.7以上2.0未満(可)
3:光学濃度が1.5以上1.7未満(可)
2:光学濃度が1.5未満であるが、むらが目立たない
1:光学濃度が1.5未満であり、むらが目立つ
(インク密着性)
上記インク転移性の評価で得た印刷物の印刷面にセロファンテープ(商品名:セロテープ(登録商標) CT−18、ニチバン(株)製)を貼り付け、充分密着させた後に素早くセロファンテープを剥離した。次いでテープ剥離後の印刷面の状態の目視観察から、インク密着性を以下の基準で5段階評価した。
5:全くインクが剥離しない(良好)
4:僅かな部分のインクが剥離した(可)
3:剥離部分が25%未満であった(可)
2:剥離部分が25%以上、50%未満であった(不可)
1:剥離部分が50%以上であった(不可)
(実機印刷試験:地汚れ)
各実施例および比較例の印刷媒体を、温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下に7日間保管した。
高速度小型オフセット印刷機(ハマダ612CD;ハマダ印刷機(株)製)にて2000枚印刷した後、刷版及びフィルムの印刷面白紙部分の状態を目視にて観察し、次の3段階にて評価した。地汚れとは、白紙部のインク付着のことを言う。
3;刷版、フィルム共に地汚れなし(良好)。
2;刷版のみ白紙部に地汚れあり(可)。
1;刷版、フィルム共に地汚れあり。
(3)インクジェット適性
(インク接触角)
各実施例および比較例の印刷媒体を、温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下に7日間保管した。
印刷媒体を温度23℃および相対湿度50%の雰囲気下で2時間経時させた後、携帯接触角計PG−X+(FIBRO system ab社製)と紫外線硬化型インクジェット印刷用インクを用いて0.5秒後の接触角を測定した。接触角を以下の基準で評価した。
印刷媒体は、紫外線硬化型インクの接触角が大きいほど、インク滲みが生じにくくなるため、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質が良好となる。
3:20°以上(良好)
2:15°以上20°未満(可)
1:15°未満
(印刷品質)
印刷には紫外線硬化型インクジェット印刷機(商品名「OceArizona250GT」、Oce社製)と紫外線硬化型インクジェット印刷用インク(商品名:ベストキュアー161(墨)、(株)T&K TOKA社製)を用いた。
温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下に7日間保管した後の印刷媒体を、23℃の温度および50%の相対湿度の雰囲気下でさらに3日間経時させた。その後、上記の印刷機を用い、印刷媒体の樹脂層の面に100%ベタ及び文字(罫線太さ:5pt)をインクジェット印刷した。印刷後の文字の目視およびルーペによる観察を行い、インク滲みから印刷品質を以下の基準で評価した。
5:インク滲みが認められない(良好)
4:目視ではインク滲みが不明瞭であるが、ルーペによる観察ではドット面積が広がっている
3:目視でインク滲みがわずかに認められる(可)
2:目視でインク滲みが認められる(可)
1:目視でインク滲みが著しい(不可)
(耐水密着性)
上記インクジェット印刷後の印刷媒体を、23℃の水中に24時間漬け込み、その後取り出して表面の水分をかるくウエスで拭き取った。次いでその印刷面にセロファンテープ(商品名:セロテープ(登録商標) CT−18、ニチバン(株)社製)を貼り付け、充分密着させた後に素早くセロファンテープを剥離した。次いでテープ剥離後の印刷面の状態の目視観察から、インクの耐水密着性を以下の基準で5段階評価した。
5:全くインクが剥離しない(良好)
4:僅かな部分のインクが剥離した(可)
3:剥離部分が25%未満であった(可)
2:剥離部分が25%以上、50%未満であった(不可)
1:剥離部分が50%以上であった(不可)
Figure 2017110599
上記表3より、実施例1〜12の印刷媒体は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる印刷媒体であった。
一方、WO2014/087670のように酸性pH調整剤(c)を含まない比較例1の印刷媒体は、表面筋が多いものであった。エチレンイミン系樹脂(b)を含まない比較例2の印刷媒体は、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性が劣るものであった。カチオン性ウレタン樹脂(a)を含まない比較例3の印刷媒体は、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性が劣るものであった。カチオン性ウレタン樹脂(a)の代わりにカチオン性ポリオレフィン樹脂を用い、特開2002−113959号公報と類似の配合割合とした塗工液を用いて製造した比較例4の印刷媒体は、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質が劣るものであった。
実施例どうしの関係からは、以下の傾向が読み取れる。20℃、1気圧において液体の酸性pH調整剤(c)を用いた実施例10および11の印刷媒体に比べて、その他の実施例の印刷媒体は特に一般印刷のインク転移性に優れていた。また、実施例4および実施例7は、実施例3との対比で、塗工液のpHが低くなりすぎないように酸性pH調整剤(c)と塩基を併用することができ、特にインクジェットでの印刷品質が改善することを示している。また、実施例5および実施例6は、塗工液におけるカチオン性ウレタン樹脂(a)のゼータ電位を30〜60mVに調整すれば、一般印刷におけるインク密着性や地汚れの改善、インクジェット印刷における印刷品質や耐水密着性の改善に効果があることを示している。
各実施例および比較例の印刷媒体におよび樹脂層にカチオン性ポリウレタン樹脂(a)およびエチレンイミン系樹脂(b)が含まれることは、赤外吸収分析(IR;infrared absorption spectrometry)により確認できる。各実施例および比較例の印刷媒体におよび樹脂層に酸性pH調整剤(c)が含まれることは、印刷媒体を水に漬けて酸性pH調整剤(c)を抽出することにより、確認できる。
本発明の印刷媒体は、表面筋が少なく、紫外線硬化型インクを用いた一般印刷を行った場合に高温高湿環境下で保管した後のインク密着性に優れ、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録を行った場合に高温高湿環境下で保管した後の印刷品質および耐水密着性に優れる印刷媒体である。そのため、耐水性が求められる用途における印刷媒体や、ラベル用印刷媒体、オンデマンド用印刷媒体として好適である。

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、
    カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む樹脂層を有する印刷媒体。
  2. 前記樹脂層が、固形分として0.01g/m〜5g/mである請求項1に記載の印刷媒体。
  3. 前記酸性pH調整剤(c)が20℃、1気圧において固体状態である請求項1または2に記載の印刷媒体。
  4. 前記酸性pH調整剤(c)が遊離酸としてpKaが−0.2〜6.8の酸を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷媒体。
  5. 前記酸性pH調整剤(c)が炭素数9〜18の1価の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ホウ酸類およびリン酸類から選択される1以上の酸を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷媒体。
  6. 前記樹脂層が、塗工液から形成された塗工層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷媒体。
  7. 熱可塑性樹脂を主成分として含む支持体の少なくとも一方の表面に、
    カチオン性ポリウレタン樹脂(a)、エチレンイミン系樹脂(b)および酸性pH調整剤(c)を含む塗工液を塗工して樹脂層を形成する工程を含む印刷媒体の製造方法。
  8. 前記塗工液のpHが1.0〜7.4である請求項7に記載の印刷媒体の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷媒体の前記樹脂層の上に紫外線硬化型インクを有する印刷物。
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