本発明は、系統連系用リレーの異常検出装置及びパワーコンディショナに関する。
太陽電池や燃料電池等を備えた分散型直流電源は、商用系統に連系させて使用するために、周波数や電圧を商用系統に適合させた交流電力に変換するパワーコンディショナを備えて構成されている。
パワーコンディショナは、太陽電池や燃料電池等で発電された直流電力を所定の電圧値の直流電力に調整するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータと、DC/ACインバータの出力波形から高周波成分を除去するLCフィルタ等を備えている。
太陽電池や燃料電池等に接続されたパワーコンディショナが系統連系運転を行なっている配電線に地絡または短絡事故が発生し、或いは計画停電等によって変電所から配電線への電力の送電が停止した状態、即ち単独運転状態に至った場合には、区分開閉器の動作への影響防止及び配電線等の保全作業時の安全性を確保するために、パワーコンディショナの制御装置によって系統連系用リレーが開成され、当該分散型電源は当該配電線から解列される。
そして、その後パワーコンディショナの制御装置によって自立系統用リレーが閉成されると、商用系統から切り離された自立系統或いは商用系統とは連系することなく独立した自立系統に当該分散型電源から交流電力が供給される。
パワーコンディショナの制御装置には、系統連系時に商用系統の位相に同期した交流電流がDC/ACインバータから出力されるようにDC/ACインバータを制御する電流制御ブロックと、解列時に自立系統に所定レベルの交流電圧が出力されるようにDC/ACインバータを制御する電圧制御ブロックを備えている。
所定レベルの電圧とは、電気事業法第26条及び同法施行規則第44条に規定された低圧需要家用の電圧であり、標準電圧100Vに対して101±6V、標準電圧200Vに対して202±20V以内の電圧をいう。
商用系統から解列して自立系統に給電する自立運転を行なう場合には、商用系統への逆充電の防止及び非同期投入の防止のために、事前に系統連系用リレーの接点が正常な状態であるか否かを検出する必要があり、当該系統連系用リレーの接点が溶着する等の異常な状態である場合には、系統連系運転から自立運転への移行を阻止する必要がある。
特許文献1には、インバータ回路からの交流電力を平滑するフィルタ回路と、インバータ回路の運転状態を制御するインバータ回路制御手段と、系統連系用リレーの連系又は解列の状態の制御手段と、フィルタ回路と系統連系用リレーの間に接続され、フィルタ回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、インバータ回路制御手段によりインバータ回路が停止状態に制御されているときに、系統連系用リレーの制御状態及び電流検出手段の検出結果に基づいて系統連系装置の異常を検出する手段とを有する系統連系装置が開示されている。
当該異常検出手段は、インバータ回路を停止した状態で、商用系統からフィルタ回路のコンデンサに無効電流が流れているか否かに基づいて、系統連系用リレーの接点が溶着しているか否かを判定するように構成されている。
特許文献2には、商用系統が正常に運転されている場合に、DC/ACインバータ回路を停止状態に制御し、系統連系用リレーを開放状態に制御している時、系統連系用リレーを構成する第一の系統連系用リレー、第二の系統連系用リレーについて、第一の系統連系用リレーの入力側と第二の系統連系用リレーの出力側の電位差と、第一の系統連系用リレーの出力側と第二の系統連系用リレーの入力側の電位差をそれぞれフォトカプラ等によって検出することで、インバータ回路と商用系統が連系する前に、第一の系統連系用リレーまたは第二の系統連系用リレーが溶着しているか否かを検出する系統連系装置が提案されている。
さらに、当該系統連系装置は、商用系統が停電した場合に、インバータ回路を作動させて、同様の検出動作を行なうように構成されている。
特許文献3には、連系用開閉器及びインバータ回路部が共に正常であることを確認した後に、商用系統との連系運転を安全に開始することができる系統連系インバータ装置が開示されている。
当該系統連系インバータ装置は、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、インバータ回路部の出力電圧を検出する出力電圧検出器と、インバータ回路部と商用系統との連系を確立する連系用開閉器と、商用系統の電圧を検出する系統電圧検出器と、インバータ回路部及び連系用開閉器を制御する制御回路部とを備えている。
そして、当該制御回路部が、出力電圧検出器の検出値に基づいて連系用開閉器の開路状態を確認した後にインバータ回路部を始動させ、出力電圧検出器の検出値と系統電圧検出器の検出値とが略同等になったときに連系用開閉器を閉じる制御を行うように構成されている。
また、当該系統連系インバータ装置は、インバータ回路部と連系用開閉器との間に、インバータ回路部と商用系統との電圧差によって生じる電流を消費する電流制限抵抗と、電流制限抵抗を短絡させる抵抗短絡用開閉器とが設けられ、制御回路部が連系用開閉器を閉じた後に所定のタイミングで抵抗短絡用開閉器を閉じる制御を行うように構成されている。
特許文献4には、電力変換部と自立運転用端子との間に配置された開閉器の異常を検出できる電力変換装置が開示されている。
当該電力変換装置は、外部装置から供給される電力を所定の電力へ変換する電力変換部と、電力系統に接続される連系運転用端子と前記電力変換部との間に接続される第1開閉器と、負荷に接続される自立運転用端子と前記電力変換部との間に接続される第2開閉器と、前記自立運転用端子の電圧を検出する電圧検出部と、前記電力変換部、前記第1開閉器および前記第2開閉器を制御する制御部と、を備えている。
そして、前記制御部は、前記第1開閉器と前記第2開閉器とに対し開状態にする制御信号をそれぞれ出力し、かつ、前記電力変換部から所定の電圧を出力させた制御状態において、前記電圧検出部により検出される前記自立運転用端子の電圧に基づいて、前記第2開閉器の異常を判定する異常判定処理を実行するように構成されている。
特開2008−35655号公報
特開2011−135767号公報
特開2007−174792号公報
特開2014−64415号公報
しかし、特許文献1に開示された系統連系装置の異常検出手段では、系統連系時または解列時にインバータ回路を停止して商用系統からフィルタ回路に流れる無効電流の有無を検知する構成であるため、商用系統が停電して自立運転を起動するような場合には、系統連系用リレーの異常を検知することができないという問題があった。
また、特許文献2に開示された系統連系装置では、第一の系統連系用リレーの入力側と第二の系統連系用リレーの出力側の電位差と、第一の系統連系用リレーの出力側と第二の系統連系用リレーの入力側の電位差をそれぞれ検出するための別途の回路素子が必要になり部品コストが嵩むという問題があった。
しかも、商用系統の電圧が運用規定の適正範囲内であるか否かのみに基づいて停電検知していたため、ノイズの影響により誤検知する虞があった。そして、商用系統の停電時にDC/ACインバータ回路を作動させたときのリレー接点の前後の電圧に基づいて系統連系用リレーの異常を検知する場合、商用系統への負荷の接続状態によっては誤検知する虞があり、またハムノイズ等の影響によっても誤検知する虞があった。
また、特許文献3に開示された系統連系インバータ装置によれば、部品コストが嵩むばかりでなく、抵抗短絡用開閉器が故障すると、商用系統と連系することができなくなるという問題があった。
さらに、特許文献4に開示された電力変換装置によれば、電力変換部から所定の電圧が出力されたときに、第2開閉器に自立負荷が接続されていると、誤判定を招く可能性が相当高いという問題があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、商用系統が停電して自立運転を起動する場合に、部品コストが嵩むことなく、精度良く系統連系用リレーの異常を検知可能な系統連系用リレーの異常検出装置、及びパワーコンディショナを提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、系統連系用リレーを介して商用系統と連系する系統連系運転と自立系統用リレーを介して自立系統に給電する自立運転との何れかに切替可能に構成されるとともに直流電力を交流電力に変換するインバータと前記インバータの出力電圧から高周波成分を除去するLCフィルタを備えたパワーコンディショナに組み込まれ、自立運転への切替時に系統連系用リレーの異常を検出する系統連系用リレーの異常検出装置であって、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理と、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧を時系列で切替出力し、各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分が前記モニタ電圧に追従するか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電圧判定処理と、を実行する異常検出処理部を備えている点にある。
先ず、自立運転への切替時に商用系統電圧判定処理が実行されて商用系統電圧の有無が判定される。このとき商用系統電圧が無いと判定されると第1電圧判定処理が実行される。
第1電圧判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧が時系列に切替出力され、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分が算出される。その差分がモニタ電圧に追従して変動すると系統連系用リレーが正常であると判定される。
例えば、単一の値のモニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分で判断すると、インバータが駆動される際に商用系統側に発生するハムノイズ等の影響を受けて差分値が小さくなり、系統連系用リレーが異常であるとの誤判定を招く虞がある。
しかし、モニタ電圧の値が時系列に切替出力されてもハムノイズはモニタ電圧の変動程には大きく変動しないので、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従して切り替わる場合には系統連系用リレーが正常であると判定できるようになる。反対に各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従することなくあまり変化しない場合には、系統連系用リレーが異常であると判定できるようになる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第1電圧判定処理は、各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分の積が所定の基準値より小であるか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なうように構成されている点にある。
各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分の積を算出することにより、パワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従して切り替わるか否かの傾向を増幅して表すことができ、その結果精度よく判定できるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記第1電圧判定処理は、前記パワーコンディショナの出力可変電圧の指令値をΔE*、当該出力可変電圧の指令値ΔE*及び基準値Echkを調整する信頼係数をa、商用系統電圧EGridに対する信頼係数をbとして、少なくとも数式〔数1〕に示す出力電圧実効値の指令値の実効値Emin,Emax(但し、Emin<Emax)のモニタ電圧を時系列で切替出力したときに、サンプリング時刻kとして以下の数式〔数2〕に基づいて前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分ΔEの積ΔECSTを算出し、前記差分ΔEの積ΔECSTが前記所定の基準値Echkより小であるか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なうように構成されている点にある。尚、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの設定範囲は、数式〔数1〕に示すように設定されている。信頼係数bは商用系統電圧EGridに対する割合である。
パワーコンディショナから出力電圧実効値の指令値に対応する少なくとも数式〔数1〕に示す出力電圧実効値の指令値Emin,Emax(但し、Emin<Emax)のモニタ電圧を時系列で切替出力し、夫々の出力時にパワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分ΔEを算出し、各差分ΔEの積ΔECSTを算出する。積ΔECSTと基準値Echkとの大小関係をに基づいて系統連系用リレーが異常であるか正常であるかが判定される。具体的に、積ΔECSTが基準値Echkより大きければ系統連系用リレーが正常と判定され、積ΔECSTが基準値Echkより小さければ系統連系用リレーが異常と判定される。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三の特徴構成に加えて、前記出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxは、商用系統の定格電圧EGridに対して、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定されている点にある。
系統連系用リレーの接点が溶着した異常状態で、パワーコンディショナ側の出力電圧実効値の指令値がEmin,Emaxとの間で切り替わると、商用系統側でもその変化に追従するように略同じ値の電圧が計測される。つまり、数式〔数1〕の積ΔECSTは比較的小さな値になる。系統連系用リレーの接点が溶着していない正常状態で、パワーコンディショナ側の出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxとの間で切り替わると、商用系統側ではその変化に僅かに追従するハムノイズの電圧のみが計測される。つまり、数式〔数1〕の積ΔECSTは比較的大きな値になる。
しかし、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの差が小さい場合には、系統連系用リレーの接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTにそれほど大きな相違が認められない虞がある。そこで、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxを、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定しておけば、系統連系用リレーの接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTに顕著な相違が現れるようになる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されると、前記パワーコンディショナの出力電圧を零に設定し、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分と、前記所定の基準値に所定の信頼係数を掛けた値との大小関係に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第2電圧判定処理を実行するように構成されている点にある。
商用系統電圧が有る場合には、系統連系用リレーの接点が溶着していると、パワーコンディショナ側の電圧値と商用系統側の電圧値との差分が略零になるため、当該差分の値に基づいて系統連系用のリレーの異常の有無を判定することができるようになる。その際に、商用系統電圧判定処理の結果に基づいて、異常検出時のパワーコンディショナの出力電圧が異なる値に設定されるので、商用系統への逆充電や非同期投入という不都合が生じることが未然に回避できるようになる。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナへの入力電流の有無に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電流判定処理と、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナからの出力電流の有無に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第2電流判定処理と、を実行するように構成されている点にある。
自立運転への切替時に商用系統電圧判定処理が実行されて商用系統電圧の有無が判定される。このとき商用系統電圧が有ると判定されると第1電流判定処理が実行され、商用系統電圧が無いと判定されると第2電流判定処理が実行される。
第1電流判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、商用系統からパワーコンディショナへ電流が流入するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常の有無の判定が行われる。
第2電流判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷へ電流が流出するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常の有無の判定が行われる。従って、商用系統への逆充電や非同期投入を回避しながら、適性に系統連系用リレーの異常判定を行なうことができるようになる。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記第1電流判定処理は、前記LCフィルタのコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、コンデンサ電流ic、計測値となる自立系統電圧esdとして、以下の数式〔数3〕に基づいて算出される前記コンデンサ電流icを前記入力電流として算出するように構成されている点にある。
自立系統の出力電圧を検出する既存の電圧検出回路を用いて自立系統電圧esdを計測し、その値を数式〔数3〕に代入することにより、LCフィルタのコンデンサに流入する電流値が算出されるので、別途の電流検出回路を設けなくても、商用系統から系統連系用リレーを介して電流が流入するか否かが判定できるようになる。
つまり、系統連系用リレーの接点が溶着していると、商用系統電圧の瞬時値と自立系統電圧の瞬時値とが等しくなり、コンデンサに流れる電流の変化を捉えることができる。そして、コンデンサに流れる電流の変化状態から系統連系用リレーの溶着状態を判定することができる。尚、系統連系用リレーが短絡していない場合は、コンデンサに流れる電流がほぼゼロになる。尚、sはラプラス演算子(ラプラス変数)である。
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七の特徴構成に加えて、前記第1電流判定処理は、所定のサンプリング周期で計測した前記入力電流の絶対値が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記入力電流の絶対値が大きくなる場合に、前記系統連系用リレーが異常であると判定する点にある。
所定のサンプリング周期で計測された値に基づく電流値が複数回所定の閾値以上で且つ絶対値が大きくなると、LCフィルタを構成するコンデンサに商用系統からの電流が流入していると判定される。
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の六から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記第2電流判定処理は、前記LCフィルタのコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、自立運転時の出力電圧esd、コンデンサ電流ic、計測値となるインバータ電流iinvとして、以下の数式〔数4〕に基づいて算出されるパワーコンディショナの出力電流ispを前記出力電流として算出するように構成されている点にある。
商用系統電圧が無い場合には、インバータが駆動されてパワーコンディショナから所定の自立系統電圧esdが出力され、計測されたインバータの出力電流iinvと自立系統電圧esdが数式〔数3〕に代入され、数式〔数4〕によって、パワーコンディショナからの出力電流ispが算出される。つまり、系統連系用リレーの接点が溶着していると、パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に流出する電流が検出されるようになるのである。
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第九の特徴構成に加えて、前記第2電流判定処理は、前記パワーコンディショナの前記出力電流の波高値の絶対値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記波高値の絶対値が小さくなる場合に、前記系統連系用リレーが異常であると判定する点にある。
パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に電流が流出すると、電圧降下が生じて次第に電流値が低下する。そこで、第2電流判定処理では、算出されたパワーコンディショナの出力電流の波高値の絶対値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記波高値の絶対値が小さくなる場合にパワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に電流が流出していると判定される。尚、商用系統に負荷が接続されていない場合には、パワーコンディショナの出力電流の波高値は常に一定値となる。
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の一から第十の何れかの特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記系統連系用リレーの全接点を開成制御した後に各異常検出処理を実行するとともに、一接点毎に単独で閉成制御する度に各異常検出処理を実行するように構成されている点にある。
パワーコンディショナの出力が単相であるか三相であるかによって系統連系用リレーの接点数が変動し、また何れの接点が溶着しているかによって上述の各判定処理の結果が異なる。つまり、系統連系用リレーの全接点を開成制御した後に第1電流判定処理及び第2電流判定処理を実行し、溶着していると判定されると全接点が溶着していることが明らかになる。さらに、一接点毎に単独で閉成制御する度に第1電圧判定処理及び第2電圧判定処理を実行し、溶着していると判定されると開成制御されている接点が溶着していることが明らかになる。
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の一から第十一の何れかの特徴構成に加えて、前記商用系統電圧判定処理は、予め設定されたパワーコンディショナの出力電圧設定値に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統電圧との大小関係、及び、自立系統周波数に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統周波数との大小関係に基づいて、商用系統電圧の有無を判定するように構成されている点にある。
商用系統電圧のみならず商用系統周波数をもチェックすることにより、ノイズ等による誤判定を招くことなく精度よく商用系統電圧の有無を判定できるようになる。
本発明によるパワーコンディショナの特徴構成は、同請求項12に記載した通り、系統連系用リレーを介して商用系統と連系する系統連系運転と、自立系統用リレーを介して自立系統に給電する自立運転とを切替可能な制御装置を備えている単相または三相のパワーコンディショナであって、上述した第一から第十一の何れかの特徴構成を備えた系統連系用リレーの異常検出装置が前記制御装置に組み込まれている点にある。
異常検出処理部により系統連系用リレーの接点が溶着していると判定されるような場合に、自立運転を回避して商用系統への逆充電及び非同期投入という不都合な事態の発生を未然に防止できるようになる。
以上説明した通り、本発明によれば、商用系統が停電して自立運転を起動する場合に、部品コストが嵩むことなく、精度良く系統連系用リレーの異常を検知可能な系統連系用リレーの異常検出装置、及びパワーコンディショナを提供することができるようになった。
図1はパワーコンディショナを含む分散型電源の回路ブロック構成図である。
図2は異常検出時の系統連系用リレーのオン/オフ動作の説明図である。
図3は商用系統電圧判定処理を示すフローチャートである。
図4は系統連系用リレーの異常検出方法を示すフローチャートである。
図5は第1電圧判定処理を示すフローチャートである。
図6は第1電流判定処理の説明図である。
図7は判定の閾値以上の場合の第2電流判定処理の説明図である。
図8は判定の閾値以下の場合の第2電流判定処理の説明図である。
図9(a)は第1電圧判定処理実行時のパワーコンディショナの出力電圧切替シーケンスの説明図、図9(b)は第1電圧判定処理実行時の商用系統側の電圧検出シーケンスの説明図である。
図10(a)は第1電圧判定処理実行時の接点Swの溶着検出のための接点制御処理シーケンスの説明図、図10(b)は図10(a)の接点制御処理シーケンス実行時のパワーコンディショナの出力電圧波形の説明図、図10(c)は接点Swの溶着検出時の図10(b)に対応する商用系統側電圧波形の説明図である。
図11(a)は第1電圧判定処理実行時の接点Swの溶着検出のための接点制御処理シーケンスの説明図、図11(b)は図11(a)の接点制御処理シーケンス実行時のパワーコンディショナの出力電圧波形の説明図、図11(c)は接点Swの溶着不検出時の図11(b)に対応する商用系統側電圧波形の説明図である。
以下、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置及びパワーコンディショナを図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である太陽光発電装置1が示されている。太陽光発電装置1は、太陽電池パネルSPと、太陽電池パネルSPに接続されたパワーコンディショナPCSを備えて構成されている。
太陽電池パネルSPで発電された直流電力は直流遮断器及びサージアブソーバ(図示せず)を介してパワーコンディショナPCSに供給される。
パワーコンディショナPCSは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ2と、DC/DCコンバータ2で昇圧された直流リンク電圧Vdcを所定の交流電圧に変換するDC/ACインバータ3と、DC/ACインバータ3から出力される交流電圧から高調波を除去するLCフィルタ4と、DC/DCコンバータ2及びDC/ACインバータ3を制御する制御装置5等を備えている。
パワーコンディショナPCSで変換された交流電力は、系統連系用リレーRy1を介して商用系統100と連系して交流負荷Ruwに給電され、商用系統100の停電等によって商用系統100から解列すると、その後、自立系統用リレーRy2を介して自立負荷Rsdに給電される。
図1には、系統連系用リレーRy1の接点がSu,Sw、自立系統用リレーRy2の2つの接点がSsdで示されている。
パワーコンディショナPCSの制御装置5は、マイクロコンピュータ、メモリ、AD変換部を含む入出力回路等を含む周辺回路等で構成され、マイクロコンピュータに組み込まれたCPUによって、メモリに格納された制御プログラムが実行されることにより所期の機能が実現される。
具体的に、DC/DCコンバータ2の昇圧スイッチを制御するコンバータ制御部5aと、DC/ACインバータ3のブリッジを構成するスイッチを制御するインバータ制御部5bと、系統連系用リレーRy1の異常を検知する異常検出処理部5cとして機能する各制御ブロックが制御装置5として具現化される。
コンバータ制御部5aは、DC/DCコンバータ2への入力電圧、入力電流、出力電圧をモニタして、太陽電池パネルSPを最大電力点で動作させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御等を実行しつつ、DC/DCコンバータ2を昇圧制御して所定の直流リンク電圧VdcをDC/ACインバータ3に出力するように構成されている。
インバータ制御部5bは、系統連系用リレーRy1を介して系統連系運転するようにインバータ3を制御し、または自立系統用リレーRy2を介して自立運転するようにインバータ3を制御するように構成されている。
インバータ制御部5bは、系統連系運転時に商用系統電圧の位相に同期するようにインバータ3の出力電流を制御する電流制御ブロックと、解列時に自立系統に所定電圧の交流電力を給電する電圧制御ブロックと、系統連系運転時に単独運転状態か否かを検出する単独運転検出ブロック等の機能ブロックを備えている。
異常検出処理部5cは、系統連系運転から自立運転への移行時に系統連系用リレーRy1の異常の有無を検知し、系統連系用リレーRy1に接点溶着異常が発生していることが検知されると、故障を表す警報表示を点灯するとともに、インバータ制御部5bによる自立運転制御を停止するように構成されている。即ち、異常検出処理部5cは本発明の異常検出装置として機能する。
LCフィルタ4を構成するインダクタLの下流側に設けられた電流トランスによって検知された出力電流iinvのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力されている。
さらに、自立系統用リレーRy2の上流側に設けられた抵抗分圧回路によって検知されるパワーコンディショナPCSの自立系統電圧esdのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力され、系統連系用リレーRy1の下流側に設けられた抵抗分圧回路によって検知される商用系統電圧euwのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力されている。
各AD変換部に入力された各モニタ信号に基づいて、パワーコンディショナPCSの自立系統電圧esd及び自立系統周波数fsdが得られ、商用系統電圧euw及び商用系統周波数fGridが得られる。
インバータ制御部5bは、太陽電池パネルSPの発電電力が商用系統との連系が可能な値になると系統連系用リレーRy1を閉成して系統連系運転し、太陽電池パネルSPの発電電力が低下し或いは単独運転検出ブロックにより単独運転状態であると検出すると系統連系用リレーRy1を開成して商用系統から解列する。
インバータ制御部5bは、単独運転状態が原因で商用系統から解列した場合で、太陽電池パネルSPの発電電力が自立運転に十分な値である場合は、異常検出処理部5cを起動して系統連系用リレーRy1の異常検知を行なう。
そして、インバータ制御部5bは、異常検出処理部5cにより系統連系用リレーRy1が正常であると判定されるとインバータ3を起動するとともに自立系統用リレーRy2を閉成して自立運転し、異常検出処理部5cにより系統連系用リレーRy1が異常であると判定されると自立系統用リレーRy2を閉成することなくDC/ACインバータ3を停止するように構成されている。
以下、異常検出処理部5cにより実行される系統連系用リレーRy1の異常検出方法について説明する。
異常検出処理部5cで実行される異常検出処理には、系統連系用リレーRy1の接点を開成または閉成制御する接点制御処理と、商用系統電圧判定処理と、インバータ3の出力電圧設定処理と、電圧判定処理と、電流判定処理が含まれる。
異常検出処理部5cは、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swを開成制御した後に接点が溶着しているか否かを判定する後述の電流判定処理及び電圧判定処理を実行するとともに、各接点SuまたはSw毎に閉成制御する度に電流判定処理及び電圧判定処理を実行するように構成されている。
系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swを開成制御した後に電流判定処理及び電圧判定処理を実行し、その結果、溶着していると判定できると全接点Su,Swが溶着していることが明らかになる。
この時点で正常と判定できる場合には、一接点SuまたはSw毎に単独で閉成制御する度に電流判定処理及び電圧判定処理を実行する。それぞれで溶着していると判定できると、その時に開成制御されている接点が溶着していることが明らかになる。
系統連系用リレーRy1の接点Su,Swに関するオン/オフ制御のタイミングを図2に示す。異常検出処理部5cが起動すると、全接点Su,Swを開成制御した状態で、接点Su,Swに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行ない、所定の遅延時間Tdlyの後に接点Suを閉成制御して接点Swに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行ない、さらに接点Suを開成制御し所定の遅延時間Tdlyの後に接点Swを閉成制御して接点Suに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行なう。
本実施形態では、各チェック時間が1sec.、遅延時間Tdlyが300msec.に設定されている。少なくともチェック時間Ton≧3Tdlyに設定されていればよい。このような系統連系用リレーRy1に対する開閉制御シーケンスが上述した接点制御処理ステップとなる。尚、遅延時間Tdlyは、系統連系用リレーの種類によって適宜適切な時間に変更することができる。
図3には、上述した商用系統電圧判定処理ステップ及び電圧設定処理ステップを実行する系統連系用リレーRy1の溶着判定準備フローが示されている。
商用系統電圧判定処理ステップでは、自立運転する必要がある場合に(S1)、系統連系用リレーRy1の全ての接点が開成制御され(S2)、系統連系用リレーRy1の下流側に設けられた抵抗分圧回路によって商用系統電圧euwがチェックされ(S3)、以下に示す数式〔数5〕に基づいて商用系統電圧の有無がチェックされる(S4)。
尚、E* sd.rmsは自立運転時の出力電圧実効値の指令値、xは判定の精度を確保するために0<x<1の範囲の値に設定される信頼係数で、本実施形態ではx=0.5に設定されている。また、自立系統周波数fsdは、商用系統周波数fGridと同じ値に設定されている。尚、本実施形態では、指令値E* sd.rmsは自立運転時の定格出力電圧実効値100Vよりも低い値40Vに設定されている。
商用系統電圧が少なくとも1周期(商用系統周波数が50Hzであれば、20msec.)計測されて最大瞬時値の絶対値|euw|が求められ、絶対値|euw|と、自立運転時の出力電圧実効値の指令値E* sd.rmsと信頼係数xとの積とが比較される。商用系統電圧を複数周期計測して各周期の最大瞬時値の絶対値|euw|の平均を求めてもよい。
さらに、商用系統周波数fGridと、自立系統周波数fsdと信頼係数xとの積とが比較される。信頼係数xの値は判断の信頼度を担保するための係数で、その値が1に近いほどノイズの影響を受け易くなるが厳しく判定でき、0に近いほどノイズの影響を受け難くなるが緩やかな判定となる。通常は中間の値0.5が好ましく用いられる。
例えば、商用系統電圧|euw|が0Vで、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rmsが40V、x=0.5の場合、〔数5〕は以下のようになる。
|euw|=0 < 0.5×40=20
fGrid =0 < 0.5×50=25
例えば、商用系統電圧|euw|が283Vで、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rmsが40V、x=0.5の場合、数式〔数5〕は以下のようになる。
|euw|=283 > 0.5×40=20
fGrid =50 > 0.5×50=25
つまり、ステップS4では、数式〔数5〕の2式が共に成立するときに商用系統電圧が有ると判断され、何れも成立しないときに商用系統電圧が無いと判断される。
上述のステップS3,S4が、予め設定されたパワーコンディショナPCSの出力電圧設定値に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統電圧との大小関係、及び、自立系統周波数に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統周波数との大小関係に基づいて、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理ステップとなる。
予め設定されたパワーコンディショナPCSの出力電圧設定値とは、自立運転時に必要な電圧値であってもよく、当該電圧値よりも低い異常検出のための専用の電圧値であってもよい。商用系統電圧と自立運転電圧とが異なる値である場合でも、出力電圧設定値と信頼係数を適切に設定することにより精度よく商用系統電圧の有無を判定することができる。
また、数式〔数5〕に示すように、商用系統電圧のみならず商用系統周波数をもチェックすることにより、ノイズ等による誤判定を招くことなく精度よく商用系統電圧の有無の判定が可能になる。
商用系統電圧判定処理ステップにより商用系統電圧が有ると判断されると、電圧判定処理で接点の溶着判断を行なう基準値Echkが商用系統電圧の実効値Euw.rmsに設定され、自立系統電圧と商用系統電圧との差分の判断を行う遅延時間Tchkが商用系統周波数の逆数に設定される(S5)。
また、商用系統電圧が無いと判断されると、異常検出時のパワーコンディショナPCSの出力電圧の指令値が設定されるとともに(S6)、接点の溶着判断を行なう基準値Echkが後述の数式〔数14〕に示す(a・ΔE*)3より小さな値に設定され、この時の遅延時間Tchkが自立系統周波数の逆数に設定される(S7)。
つまり、商用系統電圧が有ると判断されるとパワーコンディショナPCSは停止されて出力電圧は0Vとなる。上述のステップS5からステップS7が電圧設定処理ステップとなる。
上述した出力電圧の指令値e* sdは、以下の数式〔数6〕の通りである。
ここで、E* sd.rmsは自立系統電圧実効値の指令値、θsdは自立系統電圧の位相角度である。本実施形態では、E* sd.rms=40Vとの値は、系統連系用リレーRy1に対する異常検出処理時の指令値であり、正常判定後の指令値は、E* sd.rms=100Vとなる。尚、上記に示す異常検出処理の指令値及び正常判定後の指令値は一例であり、適宜設定可能である。
つまり、電圧設定処理ステップの前に商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理ステップが実行され、商用系統電圧判定処理ステップの結果に基づいて、電圧設定処理ステップではパワーコンディショナPCSの自立系統電圧及び系統連系用リレーRy1の異常判定のための基準値Echkが異なる値に設定される。
パワーコンディショナPCSは、商用系統が停電すると自立運転に移行するように制御装置5によって制御されるのであるが、一時的に商用系統電圧が低下して程なく復帰する場合もある。そのような場合に系統連系用リレーRy1が溶着していると、非同期投入状態に到る等の不都合な事態が生じ、パワーコンディショナPCSが破損する虞もある。
そこで、電圧設定処理の前に商用系統電圧判定処理を実行して、その結果に応じてパワーコンディショナPCSの自立系統電圧及び系統連系用リレーRy1の異常判定のための基準値を異なる値に設定することで、安全を確保しながらも系統連系用リレーの異常判定を精度よく行なうことができ、非同期投入や逆充電が回避できるようになる。
例えば、商用系統電圧が検知される場合には、パワーコンディショナPCSの自立系統電圧を0Vに、商用系統電圧の値を基準値に設定すれば、パワーコンディショナPCSの破損を招くことなく、精度の高い接点の溶着判定が行なえるようになる。
図4には、本発明の系統連系用リレーRy1の接点溶着判定フローが示されている。
自立運転が起動されると(S21)、上述の接点制御処理ステップが実行される(S22)。商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されていると(S23,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナPCSへの入力電流の有無に基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なう第1電流判定処理(S27)が実行される。
商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されていると(S23,N)、系統連系用リレーRy1の接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナPCSからの出力電流の有無に基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なう第2電流判定処理(S24)が実行される。
第1電流判定処理で系統連系用リレーRy1が異常と判定されない場合には(S27,N)、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの出力電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて(S28)、第2電圧判定処理が実行される(S29)。
また、第2電流判定処理で系統連系用リレーRy1が異常と判定されない場合には(S24,N)、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの出力電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて(S25)、第1電圧判定処理が実行される(S26)。
ステップS32ではエラーフラグの状態が判定され、エラーフラグがセットされていると(S32,Y)、対応するリレー接点が溶着していると判定されて、それに伴いパワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示を点灯させる等の異常対応処理が実行される(S33)。
ステップS32でエラーフラグのセットが確認されない限り(S32,N)、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swが開成制御された状態、各接点SuまたはSw毎に閉成制御された状態の三状態のそれぞれで各異常判定処理が終了するまで、ステップS22からステップS34までの処理が繰り返される。以下に各電流判定処理及び各電圧判定処理を詳述する。
第1電流判定処理(S27)では、LCフィルタ4のコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、コンデンサ電流ic、計測値となる自立系統電圧esdとして、以下の数式〔数7〕に基づいて算出されるコンデンサ電流icを入力電流として算出する。尚、sはラプラス演算子(ラプラス変数)である。
インバータの出力電圧esdを検出する抵抗分圧回路を用いて自立系統電圧esdを計測し、その値を数式〔数7〕に代入することにより、LCフィルタ4のコンデンサに流入する電流値が算出される。
つまり、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると、商用系統電圧euwの検出値と自立系統電圧esdの検出値が等しくなるような状態になると考えるのである。
図6に示すように、第1電流判定処理は、所定のサンプリング周期Tsで計測及び算出した瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|の変化状態を判断するために、少なくとも3回連続して閾値Ic.chk以上であり、且つ、その値が大きくなる傾向があるというという条件が成立する場合に(S27,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。尚、ノイズによる誤検出を考慮し、変化状態を確実に検出するために複数回判定処理を繰り返してもよい。
閾値Ic.chkは、以下の数式〔数8〕で定めることができる。但し、Psd.ratedは自立運転時の定格出力電力、E* sd.rmsは自立系統電圧実効値の指令値、yは信頼係数で、y<1の正数である。
エラーフラグがセットされると、パワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示が点灯されるように構成されている。本実施形態では、自立運転時の定格電力Psd.rated1.5kWを基準に、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rms100V、定格電流の10%(y=0.1)として設計すると、閾値Ic.chk=1A、サンプリング周期Ts=50μsec.(DC/ACインバータのスイッチング周期に相当)に設定されている。閾値は、定格電流の10%の値に設定している((0.1×1500)/(100×1.414)=1)。尚、所定のサンプリング周期Tsとは、インバータを構成するスイッチング素子の最高スイッチング周波数の逆数という条件を満たすサンプリング周期であればよい。
ステップS27で、瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|の変化状態を判断するために、少なくとも3回連続して閾値Ic.chk以上であり、且つ、その値が大きくなる傾向があるというという条件が成立しない状態が所定時間(例えば数サイクル)継続すると、商用系統からパワーコンディショナPCSのコンデンサに流れる電流が無いと判断して(S27,N)、ステップS28の電圧判定処理に移行する。但し、ノイズによる誤検出を考慮し、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。尚、商用系統電圧が有る場合、系統連系用リレーRy1の接点が溶着することなく正常であれば、瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|は常時零となる。
第2電流判定処理(S24)では、LCフィルタ4のコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、自立系統電圧esd、コンデンサ電流ic、計測値となるインバータの出力電流iinvとして、以下の数式〔数9〕に基づいて算出されるパワーコンディショナPCSの出力電流ispを商用系統に接続された負荷への出力電流として算出するように構成されている。
商用系統電圧が無い場合には、インバータ3が駆動されてパワーコンディショナPCSから所定の自立系統電圧esdが出力され、計測されたインバータ電流iinvと自立系統電圧esdから数式〔数7〕により求められたicが数式〔数9〕に代入されて、パワーコンディショナPCSからの出力電流ispが算出される。ここで、自立系統電圧esdは、インバータの出力電圧esdを検出する抵抗分圧回路により検出される値である。
つまり、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると、パワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに流出する電流が検出されるようになるのである。
図7に示すように、第2電流判定処理は、パワーコンディショナPCSの出力電流ispの最大値Isp.maxの差分の変化状態を判断するために、3回連続して所定の閾値Isp.chk以上である場合、且つ、瞬時出力電流ispの絶対値|isp|が小さくなる傾向がある場合に(S24,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。但し、ノイズによる誤検出を考慮し、且つ、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。
出力電流ispの最大値Isp.maxは、数式〔数10〕で示され、閾値Isp.chkは、数式〔数11〕で示される。尚、数式〔数11〕でE* sd.rmsは自立運転時の出力電圧の実効値の指令値である。
パワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに電流が流出すると、電圧降下が生じて次第に電流値が低下する。そこで、第2電流判定処理では、算出されたパワーコンディショナPCSの出力電流の最大値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、瞬時出力電流ispの絶対値|isp|が小さくなる傾向がある場合にパワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに電流が流出していると判定されるのである。
尚、系統連系用リレーRy1の接点が溶着することなく正常である場合、商用系統に負荷が接続されていない場合、また、商用系統に軽い負荷が接続されている場合は、図8に示すように、パワーコンディショナPCSの出力電流ispの最大値Isp.maxが常に所定の閾値Isp.chk以下となると考えられる。
ステップS31でエラーフラグがセットされると、パワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示が点灯される。本実施形態では、自立運転時の定格電力Psd.ratedは1.5kWを基準に、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rms100V、定格電流の10%(y=0.1)として設計すると、閾値Isp.chk=1A、サンプリング周期は0.5Tsdに設定されている(図6参照)。尚、自立系統周波数が50Hzである場合はサンプリング周期は10msec.となる。
ステップS27で、図8に示すように、出力電流ispの最大値Isp.maxの変化状態は、少なくとも3回連続して閾値Isp.chk未満であり、その値が大きくなる傾向があるという条件が成立しない状態が所定時間(例えば数サイクル)継続すると、商用系統に負荷が接続されていない状態、或いは、軽い負荷と接続されている状態と判断して(S27,N)、ステップS28以降の第2電圧判定処理に移行する。尚、ノイズによる誤検出を考慮し、且つ、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。
第2電圧判定処理では、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの自立系統電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて、それらの差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|と、電圧設定処理ステップで設定された基準値Echkに所定の信頼係数zを掛けた値との大小関係が判定される(S29)。
例えば、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していなければ、商用系統電圧が200V、パワーコンディショナPCSの出力電圧が0Vと検知されるので、信頼係数z=0.5(zは、z<1の正数)とすれば、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|=200Vに対して比較値100V(=200×0.5)が小さくなる。
しかし、接点が溶着していれば、商用系統電圧が200V、パワーコンディショナPCSの出力電圧が200Vと検知され、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|=0Vに対して比較値100V(=200×0.5)が大きくなる。
ステップS29で、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|よりも基準値Echkに信頼係数zを掛けた値の方が大きいと判定されると、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判定して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。
差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|よりも基準値Echkに信頼係数zを掛けた値の方が小さいと判定されると、系統連系用リレーRy1が正常であると判定して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域のエラーフラグをリセットする(S30)。
遅延時間Tchkが商用系統周波数、或いは、自立系統周波数の3周期(n=3)に設定され、少なくとも3周期の間のサンプリング値に基づいて実効値が算出されるように構成されているが、遅延時間Tchkは複数周期に設定されていればよく、3周期に限るものではない。
ステップS24の第2電流判定処理で系統連系用リレーRy1の溶着が検出されない場合には(S24,OK)、ステップS25以降の第1電圧判定処理が実行される。
図5には、第1電圧判定処理の具体的な処理手順が示されている。
第1電圧判定処理では、数式〔数12〕に示すように、系統連系用リレーRy1の異常の有無を判定するための処理時間T1が設定される(S41)。
ここで、数式〔数11〕のTONは、図2に示すように、系統連系用リレーRy1の接点制御処理で系統連系用リレーRy1の各接点を開成または閉成制御して主にパワーコンディショナPCS側の電圧及び商用系統側の電圧を計測する時間であり、Tdlyは計測値に対する演算処理に要する時間である。本実施形態では、TONは1.0sec.に設定され、遅延時間Tdlyは300msec.に設定されている。
設定が完了すると、測定時刻kの初期値が「−2」に設定され、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swが開成制御された状態でパワーコンディショナPCSから数式〔数13〕に示す出力電圧実効値の指令値Esd.rmsとしてEminのモニタ電圧が出力される(S42)。
次に、商用系統側の電圧euwが計測されて実効値Euw.rmsが算出され、パワーコンディショナPCSの出力電圧実効値の指令値Eminと商用系統側の電圧実効値Euw.rmsの差分の絶対値ΔE(k)が算出されて、その値がメモリに記憶される(S43)。
処理時間T1が経過するまでの間はステップ43の処理が継続され、処理時間T1が経過すると(S44,Y)、測定時刻kに値「1」が加算されるとともに、パワーコンディショナPCSの出力電圧が数式〔数13〕に示す出力電圧実効値の指令値Emaxに更新されて出力される(S45)。
初期値k=「−2」に設定された測定時刻kが「1」になるまでステップS43からステップS45の測定処理が3回繰り返され(S46)、この間にパワーコンディショナPCSから出力されるモニタ電圧が、EminからEmaxに、さらにEminに時系列で切り替えられる。尚、ΔE*はパワーコンディショナの出力可変電圧の指令値、a,bは信頼係数で0<a<1,0<b<1の範囲に設定される値である。
ステップS46で測定時刻kが「1」になると判定されると、時刻k(k=−2,−1,0)に対応して時系列で算出された3つの差分ΔE(k)がメモリから読み出されて、各差分の積ΔECSTが算出され、その値がメモリに記憶される(S47)。
ステップS47で算出された積ΔECSTが所定の基準値Echkと比較される。積ΔECSTが所定の基準値Echkより小さい場合には、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判定されて(S48,N)、エラーフラグがセットされる(図4のステップS31)。
積ΔECSTが所定の基準値Echk以上である場合には、系統連系用リレーRy1の接点は溶着していないと判定されて(S48,Y)、エラーフラグがリセットされる(図4のステップS30)。
図9(a),(b)には、図4及び図5のフローチャートで説明した第1電圧判定処理の処理タイミングが示されている。
図9(a)に示すように、先ず、最初の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k−2)としてEminのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該最初の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k−2)が計測され、E* sd.rms(k−2)とEuw.rms(k−2)の差分がΔE(k−2)として算出されてメモリに記憶される。
図9(a)に示すように、次の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k−1)としてEmaxのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該次の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k−1)が計測され、E* sd.rms(k−1)とEuw.rms(k−1)の差分がΔE(k−1)として算出されてメモリに記憶される。
図9(a)に示すように、最後の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k)としてEminのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該最後の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k)が計測され、E* sd.rms(k)とEuw.rms(k)の差分がΔE(k)として算出されてメモリに記憶される。
その後、時間TCHKの間にメモリに記憶されたデータΔE(k−2)、ΔE(Tk−1)及びΔE(k)の積ΔECSTが数式〔数14〕に基づいて算出され、所定の基準値Echkとの比較が行なわれる。パワーコンディショナの出力電圧の指令値の可変電圧をΔE*、可変電圧ΔE*及び基準値Echkを調整する信頼係数をaとする。本実施形態では、信頼係数a=0.5、出力可変電圧の指令値ΔE*=20V、指令値E* sd.rms=40V,信頼係数b=0.1に設定されているが、これらの値は実際の設計条件等に基づいて適宜設定可能である。
出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxは、商用系統の定格電圧EGridに対して、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定されていることが好ましい。出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの差が小さい場合には、ハムノイズの影響で系統連系用リレーRy1の接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTにそれほど大きな相違が認められない虞がある。そのような場合に備えて、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxを、b×E Grid から2×a×ΔE * の範囲に入るように設定しておけば、系統連系用リレーRy1の接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTに顕著な相違が現れるようになる。
以上説明したように、本発明による系統連系用リレーRy1の異常検出装置を採用すれば、パワーコンディショナPCSの出力電圧や出力電流、商用系統電圧を検知するための回路素子は本来パワーコンディショナPCSの制御に必要な回路素子であるので、系統連系用リレーRy1の溶着を判定するために別途のセンサや回路素子を準備する必要はない。
また、交流負荷Ruwが接続されているか否かに関わらず、また商用系統電圧の有無に関わらず、確実に系統連系用リレーRy1の接点が溶着異常であるか否かが検出できるようになる。
図10(a),(b),(c)及び図11(a),(b),(c)には、本発明による第1電圧判定処理の実験結果の一例が示されている。詳述すると、図10(a)及び図11(a)に示すように、図4のステップS22の接点制御処理で、系統連系用リレーRy1の接点Su,SWのうち接点Suが閉成され、接点SWが開成された状態で、第1電圧判定処理が実行された結果、つまり接点Swに対する溶着判定結果が図10(b),(c)及び図11(b),(c)に示されている。
実験は、図2に示すチェック時間TON=1sec.、遅延時間Tdly=0.3sec.、モニタ電圧Emin=30V、Emax=50V、チェック時間T1=0.2sec.、基準値Echk=125Vの各条件で行なわれた。
図10(b)に示すように、接点SWが溶着した系統連系用リレーRy1を用いて、接点制御処理ステップで接点Suを閉成制御し、接点Swを開成制御した状態で、パワーコンディショナPCSから周期T1(=0.2sec.≒(TON−Tdly)/3)で、Emin(=30V)、Emax(=50V)、Emin(=30V)の順に時系列で電圧esdを切替出力した。
図10(c)に示すように、系統連系用リレーRy1の接点SWが溶着しているため、この電圧esdとほぼ同じ値の電圧euwが商用系統側でも検出されるようになる。そのため、各周期T1で算出したΔEの値は略零になる。その後、TchkでΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTが算出され、その値がEchk(=125V)よりも小さな値と判断され、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断された。図10(c)には、パワーコンディショナPCSから電圧が出力されていない時期に、商用系統側の電圧euw波形に僅かのハムノイズが認められる。
図11(c)に示すように、接点SWが溶着していない正常な系統連系用リレーRy1を用いて、接点制御処理ステップで接点Suを閉成制御し、接点Swを開成制御した状態で、パワーコンディショナPCSから周期T1(=0.2sec.≒(TON−Tdly)/3)で、Emin(=30V)、Emax(=50V)、Emin(=30V)の順に時系列で電圧を切替出力した。
図11(c)に示すように、系統連系用リレーRy1の接点SWは溶着されていないので、この電圧esdは商用系統側で検出されることがない。しかし、パワーコンディショナPCSから出力される電圧esdによりハムノイズの値が大きくなり、単純にΔE(k)の値のみで判定すると系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると誤判定することになる。図10(c)の差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)が図11(c)の差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)と顕著に異なる値とならないためである。
しかし、図11(b),(c)に示すように、パワーコンディショナPCSから出力される電圧esdを30Vから50Vにステップ的に変化させた場合にはハムノイズのレベルはそれほど大きく変化しない。そのため、ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTがEchk(=125V)よりも大きな値と判断され、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していないと正確に判断することができるようになった。
また、図10(b),(c)に示す系統連系用リレーRy1が溶着している場合、各差分ΔEは総合可変電圧の指令値の半分として設計する(0.5×a×ΔE*)。つまり5V程度になり、Echkを53(=125V)〜63(=216V)の範囲に設定することが適正であると評価できる。尚、Echkの値は、出力電圧実効値の指令値Emin、Emaxの各値を考慮して決定すればよい。べき数3はサンプリングされた差分の数に対応する値である。
以下、別実施形態を説明する。
上述の実施形態では、第1電圧判定処理でパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値が、EminとEmaxの2値を用いて、3周期に亘って交互に切替出力される例を説明したが、2値である必要はなく、少なくとも異なる値の電圧であればよく、また3周期ある必要はなく2周期以上であればよい。
つまり、パワーコンディショナPCSから異なる値のモニタ電圧EminとEmaxを時系列で切替出力し、各モニタ電圧EminとEmaxに対するパワーコンディショナPCS側の電圧と商用系統側の電圧との差分がモニタ電圧に追従するか否かに基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なうように構成されていればよい。
また、モニタ電圧EminとEmaxを時系列で切替出力する際に、Emin→Emax→Eminの順に切り替える以外に、Emax→Emin→Emaxの順に切り替えてもよいことはいうまでもない。つまり、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxのモニタ電圧を時系列で切替出力するように構成されていればよい。
上述した実施形態では、差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTと基準値Echkとを比較して異常または正常判定する態様を説明したが、差分毎に予め設定した基準値と比較して異常または正常判定し、全ての差分で正常と判定された場合に最終的な異常または正常判定を行なうように構成してもよい。
さらに、各モニタ電圧EminとEmaxの変化に伴って差分が同様に変化するか否かに基づいて異常または正常判定を行なうように構成してもよい。つまり、各モニタ電圧EminとEmaxを変化させたときに差分が同様に変化する場合は、系統連系用リレーRy1が正常であると判定される。一方、各モニタ電圧EminとEmaxを変化させたときに差分が変化しない場合は、系統連系用リレーRy1が異常であると判定される。
即ち、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置は、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理と、商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧を時系列で切替出力し、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分がモニタ電圧に追従するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電圧判定処理と、を実行する異常検出処理部を備えていればよい。
以上説明した実施形態では、パワーコンディショナPCSの出力が単相である場合を例に本発明を説明したが、本発明はパワーコンディショナPCSの出力が三相であり、系統連系用リレーRy1の接点がSu,Sv,Swの3接点で構成される場合も適用可能である。
上述した実施形態では、太陽電池パネルSPと、太陽電池パネルSPに接続されたパワーコンディショナPCSを備えた分散型電源を例に系統連系用リレーの異常検出装置を説明したが、分散型電源に組み込まれる発電装置は太陽電池パネルSPに限るものではなく、風力発電装置や燃料電池等の任意の発電装置であってもよい。
以上説明した複数の実施形態は、本発明による系統連系用リレーの異常検出方法及びパワーコンディショナの一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される限り、具体的な回路構成や異常検出アルゴリズムは適宜変更設計可能なことは言うまでもない。
1:分散型電源
2:DC/DCコンバータ
3:DC/ACインバータ
4:LCフィルタ
5:制御装置
5a:コンバータ制御部
5b:インバータ制御部
5c:異常検出処理部
PCS:パワーコンディショナ
Ry1:系統連系用リレー
Ry2:自立系統用リレー
Su,Sw:接点
本発明は、系統連系用リレーの異常検出装置及びパワーコンディショナに関する。
太陽電池や燃料電池等を備えた分散型直流電源は、商用系統に連系させて使用するために、周波数や電圧を商用系統に適合させた交流電力に変換するパワーコンディショナを備えて構成されている。
パワーコンディショナは、太陽電池や燃料電池等で発電された直流電力を所定の電圧値の直流電力に調整するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータと、DC/ACインバータの出力波形から高周波成分を除去するLCフィルタ等を備えている。
太陽電池や燃料電池等に接続されたパワーコンディショナが系統連系運転を行なっている配電線に地絡または短絡事故が発生し、或いは計画停電等によって変電所から配電線への電力の送電が停止した状態、即ち単独運転状態に至った場合には、区分開閉器の動作への影響防止及び配電線等の保全作業時の安全性を確保するために、パワーコンディショナの制御装置によって系統連系用リレーが開成され、当該分散型電源は当該配電線から解列される。
そして、その後パワーコンディショナの制御装置によって自立系統用リレーが閉成されると、商用系統から切り離された自立系統或いは商用系統とは連系することなく独立した自立系統に当該分散型電源から交流電力が供給される。
パワーコンディショナの制御装置には、系統連系時に商用系統の位相に同期した交流電流がDC/ACインバータから出力されるようにDC/ACインバータを制御する電流制御ブロックと、解列時に自立系統に所定レベルの交流電圧が出力されるようにDC/ACインバータを制御する電圧制御ブロックを備えている。
所定レベルの電圧とは、電気事業法第26条及び同法施行規則第44条に規定された低圧需要家用の電圧であり、標準電圧100Vに対して101±6V、標準電圧200Vに対して202±20V以内の電圧をいう。
商用系統から解列して自立系統に給電する自立運転を行なう場合には、商用系統への逆充電の防止及び非同期投入の防止のために、事前に系統連系用リレーの接点が正常な状態であるか否かを検出する必要があり、当該系統連系用リレーの接点が溶着する等の異常な状態である場合には、系統連系運転から自立運転への移行を阻止する必要がある。
特許文献1には、インバータ回路からの交流電力を平滑するフィルタ回路と、インバータ回路の運転状態を制御するインバータ回路制御手段と、系統連系用リレーの連系又は解列の状態の制御手段と、フィルタ回路と系統連系用リレーの間に接続され、フィルタ回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、インバータ回路制御手段によりインバータ回路が停止状態に制御されているときに、系統連系用リレーの制御状態及び電流検出手段の検出結果に基づいて系統連系装置の異常を検出する手段とを有する系統連系装置が開示されている。
当該異常検出手段は、インバータ回路を停止した状態で、商用系統からフィルタ回路のコンデンサに無効電流が流れているか否かに基づいて、系統連系用リレーの接点が溶着しているか否かを判定するように構成されている。
特許文献2には、商用系統が正常に運転されている場合に、DC/ACインバータ回路を停止状態に制御し、系統連系用リレーを開放状態に制御している時、系統連系用リレーを構成する第一の系統連系用リレー、第二の系統連系用リレーについて、第一の系統連系用リレーの入力側と第二の系統連系用リレーの出力側の電位差と、第一の系統連系用リレーの出力側と第二の系統連系用リレーの入力側の電位差をそれぞれフォトカプラ等によって検出することで、インバータ回路と商用系統が連系する前に、第一の系統連系用リレーまたは第二の系統連系用リレーが溶着しているか否かを検出する系統連系装置が提案されている。
さらに、当該系統連系装置は、商用系統が停電した場合に、インバータ回路を作動させて、同様の検出動作を行なうように構成されている。
特許文献3には、連系用開閉器及びインバータ回路部が共に正常であることを確認した後に、商用系統との連系運転を安全に開始することができる系統連系インバータ装置が開示されている。
当該系統連系インバータ装置は、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、インバータ回路部の出力電圧を検出する出力電圧検出器と、インバータ回路部と商用系統との連系を確立する連系用開閉器と、商用系統の電圧を検出する系統電圧検出器と、インバータ回路部及び連系用開閉器を制御する制御回路部とを備えている。
そして、当該制御回路部が、出力電圧検出器の検出値に基づいて連系用開閉器の開路状態を確認した後にインバータ回路部を始動させ、出力電圧検出器の検出値と系統電圧検出器の検出値とが略同等になったときに連系用開閉器を閉じる制御を行うように構成されている。
また、当該系統連系インバータ装置は、インバータ回路部と連系用開閉器との間に、インバータ回路部と商用系統との電圧差によって生じる電流を消費する電流制限抵抗と、電流制限抵抗を短絡させる抵抗短絡用開閉器とが設けられ、制御回路部が連系用開閉器を閉じた後に所定のタイミングで抵抗短絡用開閉器を閉じる制御を行うように構成されている。
特許文献4には、電力変換部と自立運転用端子との間に配置された開閉器の異常を検出できる電力変換装置が開示されている。
当該電力変換装置は、外部装置から供給される電力を所定の電力へ変換する電力変換部と、電力系統に接続される連系運転用端子と前記電力変換部との間に接続される第1開閉器と、負荷に接続される自立運転用端子と前記電力変換部との間に接続される第2開閉器と、前記自立運転用端子の電圧を検出する電圧検出部と、前記電力変換部、前記第1開閉器および前記第2開閉器を制御する制御部と、を備えている。
そして、前記制御部は、前記第1開閉器と前記第2開閉器とに対し開状態にする制御信号をそれぞれ出力し、かつ、前記電力変換部から所定の電圧を出力させた制御状態において、前記電圧検出部により検出される前記自立運転用端子の電圧に基づいて、前記第2開閉器の異常を判定する異常判定処理を実行するように構成されている。
特開2008−35655号公報
特開2011−135767号公報
特開2007−174792号公報
特開2014−64415号公報
しかし、特許文献1に開示された系統連系装置の異常検出手段では、系統連系時または解列時にインバータ回路を停止して商用系統からフィルタ回路に流れる無効電流の有無を検知する構成であるため、商用系統が停電して自立運転を起動するような場合には、系統連系用リレーの異常を検知することができないという問題があった。
また、特許文献2に開示された系統連系装置では、第一の系統連系用リレーの入力側と第二の系統連系用リレーの出力側の電位差と、第一の系統連系用リレーの出力側と第二の系統連系用リレーの入力側の電位差をそれぞれ検出するための別途の回路素子が必要になり部品コストが嵩むという問題があった。
しかも、商用系統の電圧が運用規定の適正範囲内であるか否かのみに基づいて停電検知していたため、ノイズの影響により誤検知する虞があった。そして、商用系統の停電時にDC/ACインバータ回路を作動させたときのリレー接点の前後の電圧に基づいて系統連系用リレーの異常を検知する場合、商用系統への負荷の接続状態によっては誤検知する虞があり、またハムノイズ等の影響によっても誤検知する虞があった。
また、特許文献3に開示された系統連系インバータ装置によれば、部品コストが嵩むばかりでなく、抵抗短絡用開閉器が故障すると、商用系統と連系することができなくなるという問題があった。
さらに、特許文献4に開示された電力変換装置によれば、電力変換部から所定の電圧が出力されたときに、第2開閉器に自立負荷が接続されていると、誤判定を招く可能性が相当高いという問題があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、商用系統が停電して自立運転を起動する場合に、部品コストが嵩むことなく、精度良く系統連系用リレーの異常を検知可能な系統連系用リレーの異常検出装置、及びパワーコンディショナを提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、系統連系用リレーを介して商用系統と連系する系統連系運転と自立系統用リレーを介して自立系統に給電する自立運転との何れかに切替可能に構成されるとともに直流電力を交流電力に変換するインバータと前記インバータの出力電圧から高周波成分を除去するLCフィルタを備えたパワーコンディショナに組み込まれ、自立運転への切替時に系統連系用リレーの異常を検出する系統連系用リレーの異常検出装置であって、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理と、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧を時系列で切替出力し、各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分が前記モニタ電圧に追従するか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電圧判定処理と、を実行する異常検出処理部を備えており、前記第1電圧判定処理は、各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分の積が所定の基準値より小であるか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なうように構成されている点にある。
先ず、自立運転への切替時に商用系統電圧判定処理が実行されて商用系統電圧の有無が判定される。このとき商用系統電圧が無いと判定されると第1電圧判定処理が実行される。
第1電圧判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧が時系列に切替出力され、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分が算出される。その差分がモニタ電圧に追従して変動すると系統連系用リレーが正常であると判定される。
例えば、単一の値のモニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分で判断すると、インバータが駆動される際に商用系統側に発生するハムノイズ等の影響を受けて差分値が小さくなり、系統連系用リレーが異常であるとの誤判定を招く虞がある。
しかし、モニタ電圧の値が時系列に切替出力されてもハムノイズはモニタ電圧の変動程には大きく変動しないので、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従して切り替わる場合には系統連系用リレーが正常であると判定できるようになる。反対に各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従することなくあまり変化しない場合には、系統連系用リレーが異常であると判定できるようになる。
各モニタ電圧に対する前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分の積を算出することにより、パワーコンディショナ側での電圧と商用系統側での電圧の差分がモニタ電圧に追従して切り替わるか否かの傾向を増幅して表すことができ、その結果精度よく判定できるようになる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第1電圧判定処理は、前記パワーコンディショナの出力可変電圧の指令値をΔE*、当該出力可変電圧の指令値ΔE*及び基準値Echkを調整する信頼係数をa、商用系統電圧EGridに対する信頼係数をbとして、少なくとも数式〔数1〕に示す出力電圧実効値の指令値Emin,Emax(但し、Emin<Emax)のモニタ電圧を時系列で切替出力したときに、サンプリング時刻kとして以下の数式〔数2〕に基づいて前記パワーコンディショナ側電圧と前記商用系統側電圧との差分ΔEの積ΔECSTを算出し、前記差分ΔEの積ΔECSTが前記所定の基準値Echkより小であるか否かに基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なうように構成されている点にある。尚、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの設定範囲は、数式〔数1〕に示すように設定されている。信頼係数bは商用系統電圧EGridに対する割合である。
パワーコンディショナから出力電圧実効値の指令値に対応する少なくとも数式〔数1〕に示す出力電圧実効値の指令値Emin,Emax(但し、Emin<Emax)のモニタ電圧を時系列で切替出力し、夫々の出力時にパワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分ΔEを算出し、各差分ΔEの積ΔECSTを算出する。積ΔECSTと基準値Echkとの大小関係をに基づいて系統連系用リレーが異常であるか正常であるかが判定される。具体的に、積ΔECSTが基準値Echkより大きければ系統連系用リレーが正常と判定され、積ΔECSTが基準値Echkより小さければ系統連系用リレーが異常と判定される。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxは、商用系統の定格電圧EGridに対して、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定されている点にある。
系統連系用リレーの接点が溶着した異常状態で、パワーコンディショナ側の出力電圧実効値の指令値がEmin,Emaxとの間で切り替わると、商用系統側でもその変化に追従するように略同じ値の電圧が計測される。つまり、数式〔数1〕の積ΔECSTは比較的小さな値になる。系統連系用リレーの接点が溶着していない正常状態で、パワーコンディショナ側の出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxとの間で切り替わると、商用系統側ではその変化に僅かに追従するハムノイズの電圧のみが計測される。つまり、数式〔数1〕の積ΔECSTは比較的大きな値になる。
しかし、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの差が小さい場合には、系統連系用リレーの接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTにそれほど大きな相違が認められない虞がある。そこで、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxを、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定しておけば、系統連系用リレーの接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTに顕著な相違が現れるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されると、前記パワーコンディショナの出力電圧を零に設定し、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分と、前記所定の基準値に所定の信頼係数を掛けた値との大小関係に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第2電圧判定処理を実行するように構成されている点にある。
商用系統電圧が有る場合には、系統連系用リレーの接点が溶着していると、パワーコンディショナ側の電圧値と商用系統側の電圧値との差分が略零になるため、当該差分の値に基づいて系統連系用のリレーの異常の有無を判定することができるようになる。その際に、商用系統電圧判定処理の結果に基づいて、異常検出時のパワーコンディショナの出力電圧が異なる値に設定されるので、商用系統への逆充電や非同期投入という不都合が生じることが未然に回避できるようになる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナへの入力電流の有無に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電流判定処理と、前記商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、前記系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、前記パワーコンディショナからの出力電流の有無に基づいて前記系統連系用リレーの異常判定を行なう第2電流判定処理と、を実行するように構成されている点にある。
自立運転への切替時に商用系統電圧判定処理が実行されて商用系統電圧の有無が判定される。このとき商用系統電圧が有ると判定されると第1電流判定処理が実行され、商用系統電圧が無いと判定されると第2電流判定処理が実行される。
第1電流判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、商用系統からパワーコンディショナへ電流が流入するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常の有無の判定が行われる。
第2電流判定処理では、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷へ電流が流出するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常の有無の判定が行われる。従って、商用系統への逆充電や非同期投入を回避しながら、適性に系統連系用リレーの異常判定を行なうことができるようになる。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五の特徴構成に加えて、前記第1電流判定処理は、前記LCフィルタのコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、コンデンサ電流ic、計測値となる自立系統電圧esdとして、以下の数式〔数3〕に基づいて算出される前記コンデンサ電流icを前記入力電流として算出するように構成されている点にある。
自立系統の出力電圧を検出する既存の電圧検出回路を用いて自立系統電圧esdを計測し、その値を数式〔数3〕に代入することにより、LCフィルタのコンデンサに流入する電流値が算出されるので、別途の電流検出回路を設けなくても、商用系統から系統連系用リレーを介して電流が流入するか否かが判定できるようになる。
つまり、系統連系用リレーの接点が溶着していると、商用系統電圧の瞬時値と自立系統電圧の瞬時値とが等しくなり、コンデンサに流れる電流の変化を捉えることができる。そして、コンデンサに流れる電流の変化状態から系統連系用リレーの溶着状態を判定することができる。尚、系統連系用リレーが短絡していない場合は、コンデンサに流れる電流がほぼゼロになる。尚、sはラプラス演算子(ラプラス変数)である。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記第1電流判定処理は、所定のサンプリング周期で計測した前記入力電流の絶対値が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記入力電流の絶対値が大きくなる場合に、前記系統連系用リレーが異常であると判定する点にある。
所定のサンプリング周期で計測された値に基づく電流値が複数回所定の閾値以上で且つ絶対値が大きくなると、LCフィルタを構成するコンデンサに商用系統からの電流が流入していると判定される。
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の五から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記第2電流判定処理は、前記LCフィルタのコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、自立運転時の出力電圧esd、コンデンサ電流ic、計測値となるインバータ電流iinvとして、以下の数式〔数4〕に基づいて算出されるパワーコンディショナの出力電流ispを前記出力電流として算出するように構成されている点にある。
商用系統電圧が無い場合には、インバータが駆動されてパワーコンディショナから所定の自立系統電圧esdが出力され、計測されたインバータの出力電流iinvと自立系統電圧esdが数式〔数3〕に代入され、数式〔数4〕によって、パワーコンディショナからの出力電流ispが算出される。つまり、系統連系用リレーの接点が溶着していると、パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に流出する電流が検出されるようになるのである。
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第八の特徴構成に加えて、前記第2電流判定処理は、前記パワーコンディショナの前記出力電流の波高値の絶対値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記波高値の絶対値が小さくなる場合に、前記系統連系用リレーが異常であると判定する点にある。
パワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に電流が流出すると、電圧降下が生じて次第に電流値が低下する。そこで、第2電流判定処理では、算出されたパワーコンディショナの出力電流の波高値の絶対値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、計測する度に前記波高値の絶対値が小さくなる場合にパワーコンディショナから商用系統に接続された負荷に電流が流出していると判定される。尚、商用系統に負荷が接続されていない場合には、パワーコンディショナの出力電流の波高値は常に一定値となる。
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記異常検出処理部は、前記系統連系用リレーの全接点を開成制御した後に各異常検出処理を実行するとともに、一接点毎に単独で閉成制御する度に各異常検出処理を実行するように構成されている点にある。
パワーコンディショナの出力が単相であるか三相であるかによって系統連系用リレーの接点数が変動し、また何れの接点が溶着しているかによって上述の各判定処理の結果が異なる。つまり、系統連系用リレーの全接点を開成制御した後に第1電流判定処理及び第2電流判定処理を実行し、溶着していると判定されると全接点が溶着していることが明らかになる。さらに、一接点毎に単独で閉成制御する度に第1電圧判定処理及び第2電圧判定処理を実行し、溶着していると判定されると開成制御されている接点が溶着していることが明らかになる。
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の一から第十の何れかの特徴構成に加えて、前記商用系統電圧判定処理は、予め設定されたパワーコンディショナの出力電圧設定値に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統電圧との大小関係、及び、自立系統周波数に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統周波数との大小関係に基づいて、商用系統電圧の有無を判定するように構成されている点にある。
商用系統電圧のみならず商用系統周波数をもチェックすることにより、ノイズ等による誤判定を招くことなく精度よく商用系統電圧の有無を判定できるようになる。
本発明によるパワーコンディショナの特徴構成は、同請求項11に記載した通り、系統連系用リレーを介して商用系統と連系する系統連系運転と、自立系統用リレーを介して自立系統に給電する自立運転とを切替可能な制御装置を備えている単相または三相のパワーコンディショナであって、上述した第一から第十の何れかの特徴構成を備えた系統連系用リレーの異常検出装置が前記制御装置に組み込まれている点にある。
異常検出処理部により系統連系用リレーの接点が溶着していると判定されるような場合に、自立運転を回避して商用系統への逆充電及び非同期投入という不都合な事態の発生を未然に防止できるようになる。
以上説明した通り、本発明によれば、商用系統が停電して自立運転を起動する場合に、部品コストが嵩むことなく、精度良く系統連系用リレーの異常を検知可能な系統連系用リレーの異常検出装置、及びパワーコンディショナを提供することができるようになった。
図1はパワーコンディショナを含む分散型電源の回路ブロック構成図である。
図2は異常検出時の系統連系用リレーのオン/オフ動作の説明図である。
図3は商用系統電圧判定処理を示すフローチャートである。
図4は系統連系用リレーの異常検出方法を示すフローチャートである。
図5は第1電圧判定処理を示すフローチャートである。
図6は第1電流判定処理の説明図である。
図7は判定の閾値以上の場合の第2電流判定処理の説明図である。
図8は判定の閾値以下の場合の第2電流判定処理の説明図である。
図9(a)は第1電圧判定処理実行時のパワーコンディショナの出力電圧切替シーケンスの説明図、図9(b)は第1電圧判定処理実行時の商用系統側の電圧検出シーケンスの説明図である。
図10(a)は第1電圧判定処理実行時の接点Swの溶着検出のための接点制御処理シーケンスの説明図、図10(b)は図10(a)の接点制御処理シーケンス実行時のパワーコンディショナの出力電圧波形の説明図、図10(c)は接点Swの溶着検出時の図10(b)に対応する商用系統側電圧波形の説明図である。
図11(a)は第1電圧判定処理実行時の接点Swの溶着検出のための接点制御処理シーケンスの説明図、図11(b)は図11(a)の接点制御処理シーケンス実行時のパワーコンディショナの出力電圧波形の説明図、図11(c)は接点Swの溶着不検出時の図11(b)に対応する商用系統側電圧波形の説明図である。
以下、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置及びパワーコンディショナを図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である太陽光発電装置1が示されている。太陽光発電装置1は、太陽電池パネルSPと、太陽電池パネルSPに接続されたパワーコンディショナPCSを備えて構成されている。
太陽電池パネルSPで発電された直流電力は直流遮断器及びサージアブソーバ(図示せず)を介してパワーコンディショナPCSに供給される。
パワーコンディショナPCSは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ2と、DC/DCコンバータ2で昇圧された直流リンク電圧Vdcを所定の交流電圧に変換するDC/ACインバータ3と、DC/ACインバータ3から出力される交流電圧から高調波を除去するLCフィルタ4と、DC/DCコンバータ2及びDC/ACインバータ3を制御する制御装置5等を備えている。
パワーコンディショナPCSで変換された交流電力は、系統連系用リレーRy1を介して商用系統100と連系して交流負荷Ruwに給電され、商用系統100の停電等によって商用系統100から解列すると、その後、自立系統用リレーRy2を介して自立負荷Rsdに給電される。
図1には、系統連系用リレーRy1の接点がSu,Sw、自立系統用リレーRy2の2つの接点がSsdで示されている。
パワーコンディショナPCSの制御装置5は、マイクロコンピュータ、メモリ、AD変換部を含む入出力回路等を含む周辺回路等で構成され、マイクロコンピュータに組み込まれたCPUによって、メモリに格納された制御プログラムが実行されることにより所期の機能が実現される。
具体的に、DC/DCコンバータ2の昇圧スイッチを制御するコンバータ制御部5aと、DC/ACインバータ3のブリッジを構成するスイッチを制御するインバータ制御部5bと、系統連系用リレーRy1の異常を検知する異常検出処理部5cとして機能する各制御ブロックが制御装置5として具現化される。
コンバータ制御部5aは、DC/DCコンバータ2への入力電圧、入力電流、出力電圧をモニタして、太陽電池パネルSPを最大電力点で動作させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御等を実行しつつ、DC/DCコンバータ2を昇圧制御して所定の直流リンク電圧VdcをDC/ACインバータ3に出力するように構成されている。
インバータ制御部5bは、系統連系用リレーRy1を介して系統連系運転するようにインバータ3を制御し、または自立系統用リレーRy2を介して自立運転するようにインバータ3を制御するように構成されている。
インバータ制御部5bは、系統連系運転時に商用系統電圧の位相に同期するようにインバータ3の出力電流を制御する電流制御ブロックと、解列時に自立系統に所定電圧の交流電力を給電する電圧制御ブロックと、系統連系運転時に単独運転状態か否かを検出する単独運転検出ブロック等の機能ブロックを備えている。
異常検出処理部5cは、系統連系運転から自立運転への移行時に系統連系用リレーRy1の異常の有無を検知し、系統連系用リレーRy1に接点溶着異常が発生していることが検知されると、故障を表す警報表示を点灯するとともに、インバータ制御部5bによる自立運転制御を停止するように構成されている。即ち、異常検出処理部5cは本発明の異常検出装置として機能する。
LCフィルタ4を構成するインダクタLの下流側に設けられた電流トランスによって検知された出力電流iinvのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力されている。
さらに、自立系統用リレーRy2の上流側に設けられた抵抗分圧回路によって検知されるパワーコンディショナPCSの自立系統電圧esdのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力され、系統連系用リレーRy1の下流側に設けられた抵抗分圧回路によって検知される商用系統電圧euwのモニタ信号が制御装置5のAD変換部に入力されている。
各AD変換部に入力された各モニタ信号に基づいて、パワーコンディショナPCSの自立系統電圧esd及び自立系統周波数fsdが得られ、商用系統電圧euw及び商用系統周波数fGridが得られる。
インバータ制御部5bは、太陽電池パネルSPの発電電力が商用系統との連系が可能な値になると系統連系用リレーRy1を閉成して系統連系運転し、太陽電池パネルSPの発電電力が低下し或いは単独運転検出ブロックにより単独運転状態であると検出すると系統連系用リレーRy1を開成して商用系統から解列する。
インバータ制御部5bは、単独運転状態が原因で商用系統から解列した場合で、太陽電池パネルSPの発電電力が自立運転に十分な値である場合は、異常検出処理部5cを起動して系統連系用リレーRy1の異常検知を行なう。
そして、インバータ制御部5bは、異常検出処理部5cにより系統連系用リレーRy1が正常であると判定されるとインバータ3を起動するとともに自立系統用リレーRy2を閉成して自立運転し、異常検出処理部5cにより系統連系用リレーRy1が異常であると判定されると自立系統用リレーRy2を閉成することなくDC/ACインバータ3を停止するように構成されている。
以下、異常検出処理部5cにより実行される系統連系用リレーRy1の異常検出方法について説明する。
異常検出処理部5cで実行される異常検出処理には、系統連系用リレーRy1の接点を開成または閉成制御する接点制御処理と、商用系統電圧判定処理と、インバータ3の出力電圧設定処理と、電圧判定処理と、電流判定処理が含まれる。
異常検出処理部5cは、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swを開成制御した後に接点が溶着しているか否かを判定する後述の電流判定処理及び電圧判定処理を実行するとともに、各接点SuまたはSw毎に閉成制御する度に電流判定処理及び電圧判定処理を実行するように構成されている。
系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swを開成制御した後に電流判定処理及び電圧判定処理を実行し、その結果、溶着していると判定できると全接点Su,Swが溶着していることが明らかになる。
この時点で正常と判定できる場合には、一接点SuまたはSw毎に単独で閉成制御する度に電流判定処理及び電圧判定処理を実行する。それぞれで溶着していると判定できると、その時に開成制御されている接点が溶着していることが明らかになる。
系統連系用リレーRy1の接点Su,Swに関するオン/オフ制御のタイミングを図2に示す。異常検出処理部5cが起動すると、全接点Su,Swを開成制御した状態で、接点Su,Swに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行ない、所定の遅延時間Tdlyの後に接点Suを閉成制御して接点Swに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行ない、さらに接点Suを開成制御し所定の遅延時間Tdlyの後に接点Swを閉成制御して接点Suに対するチェックである電流判定処理及び電圧判定処理を行なう。
本実施形態では、各チェック時間が1sec.、遅延時間Tdlyが300msec.に設定されている。少なくともチェック時間Ton≧3Tdlyに設定されていればよい。このような系統連系用リレーRy1に対する開閉制御シーケンスが上述した接点制御処理ステップとなる。尚、遅延時間Tdlyは、系統連系用リレーの種類によって適宜適切な時間に変更することができる。
図3には、上述した商用系統電圧判定処理ステップ及び電圧設定処理ステップを実行する系統連系用リレーRy1の溶着判定準備フローが示されている。
商用系統電圧判定処理ステップでは、自立運転する必要がある場合に(S1)、系統連系用リレーRy1の全ての接点が開成制御され(S2)、系統連系用リレーRy1の下流側に設けられた抵抗分圧回路によって商用系統電圧euwがチェックされ(S3)、以下に示す数式〔数5〕に基づいて商用系統電圧の有無がチェックされる(S4)。
尚、E* sd.rmsは自立運転時の出力電圧実効値の指令値、xは判定の精度を確保するために0<x<1の範囲の値に設定される信頼係数で、本実施形態ではx=0.5に設定されている。また、自立系統周波数fsdは、商用系統周波数fGridと同じ値に設定されている。尚、本実施形態では、指令値E* sd.rmsは自立運転時の定格出力電圧実効値100Vよりも低い値40Vに設定されている。
商用系統電圧が少なくとも1周期(商用系統周波数が50Hzであれば、20msec.)計測されて最大瞬時値の絶対値|euw|が求められ、絶対値|euw|と、自立運転時の出力電圧実効値の指令値E* sd.rmsと信頼係数xとの積とが比較される。商用系統電圧を複数周期計測して各周期の最大瞬時値の絶対値|euw|の平均を求めてもよい。
さらに、商用系統周波数fGridと、自立系統周波数fsdと信頼係数xとの積とが比較される。信頼係数xの値は判断の信頼度を担保するための係数で、その値が1に近いほどノイズの影響を受け易くなるが厳しく判定でき、0に近いほどノイズの影響を受け難くなるが緩やかな判定となる。通常は中間の値0.5が好ましく用いられる。
例えば、商用系統電圧|euw|が0Vで、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rmsが40V、x=0.5の場合、〔数5〕は以下のようになる。
|euw|=0 < 0.5×40=20
fGrid =0 < 0.5×50=25
例えば、商用系統電圧|euw|が283Vで、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rmsが40V、x=0.5の場合、数式〔数5〕は以下のようになる。
|euw|=283 > 0.5×40=20
fGrid =50 > 0.5×50=25
つまり、ステップS4では、数式〔数5〕の2式が共に成立するときに商用系統電圧が有ると判断され、何れも成立しないときに商用系統電圧が無いと判断される。
上述のステップS3,S4が、予め設定されたパワーコンディショナPCSの出力電圧設定値に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統電圧との大小関係、及び、自立系統周波数に所定の信頼係数を掛けた値と、商用系統周波数との大小関係に基づいて、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理ステップとなる。
予め設定されたパワーコンディショナPCSの出力電圧設定値とは、自立運転時に必要な電圧値であってもよく、当該電圧値よりも低い異常検出のための専用の電圧値であってもよい。商用系統電圧と自立運転電圧とが異なる値である場合でも、出力電圧設定値と信頼係数を適切に設定することにより精度よく商用系統電圧の有無を判定することができる。
また、数式〔数5〕に示すように、商用系統電圧のみならず商用系統周波数をもチェックすることにより、ノイズ等による誤判定を招くことなく精度よく商用系統電圧の有無の判定が可能になる。
商用系統電圧判定処理ステップにより商用系統電圧が有ると判断されると、電圧判定処理で接点の溶着判断を行なう基準値Echkが商用系統電圧の実効値Euw.rmsに設定され、自立系統電圧と商用系統電圧との差分の判断を行う遅延時間Tchkが商用系統周波数の逆数に設定される(S5)。
また、商用系統電圧が無いと判断されると、異常検出時のパワーコンディショナPCSの出力電圧の指令値が設定されるとともに(S6)、接点の溶着判断を行なう基準値Echkが後述の数式〔数14〕に示す(a・ΔE*)3より小さな値に設定され、この時の遅延時間Tchkが自立系統周波数の逆数に設定される(S7)。
つまり、商用系統電圧が有ると判断されるとパワーコンディショナPCSは停止されて出力電圧は0Vとなる。上述のステップS5からステップS7が電圧設定処理ステップとなる。
上述した出力電圧の指令値e* sdは、以下の数式〔数6〕の通りである。
ここで、E* sd.rmsは自立系統電圧実効値の指令値、θsdは自立系統電圧の位相角度である。本実施形態では、E* sd.rms=40Vとの値は、系統連系用リレーRy1に対する異常検出処理時の指令値であり、正常判定後の指令値は、E* sd.rms=100Vとなる。尚、上記に示す異常検出処理の指令値及び正常判定後の指令値は一例であり、適宜設定可能である。
つまり、電圧設定処理ステップの前に商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理ステップが実行され、商用系統電圧判定処理ステップの結果に基づいて、電圧設定処理ステップではパワーコンディショナPCSの自立系統電圧及び系統連系用リレーRy1の異常判定のための基準値Echkが異なる値に設定される。
パワーコンディショナPCSは、商用系統が停電すると自立運転に移行するように制御装置5によって制御されるのであるが、一時的に商用系統電圧が低下して程なく復帰する場合もある。そのような場合に系統連系用リレーRy1が溶着していると、非同期投入状態に到る等の不都合な事態が生じ、パワーコンディショナPCSが破損する虞もある。
そこで、電圧設定処理の前に商用系統電圧判定処理を実行して、その結果に応じてパワーコンディショナPCSの自立系統電圧及び系統連系用リレーRy1の異常判定のための基準値を異なる値に設定することで、安全を確保しながらも系統連系用リレーの異常判定を精度よく行なうことができ、非同期投入や逆充電が回避できるようになる。
例えば、商用系統電圧が検知される場合には、パワーコンディショナPCSの自立系統電圧を0Vに、商用系統電圧の値を基準値に設定すれば、パワーコンディショナPCSの破損を招くことなく、精度の高い接点の溶着判定が行なえるようになる。
図4には、本発明の系統連系用リレーRy1の接点溶着判定フローが示されている。
自立運転が起動されると(S21)、上述の接点制御処理ステップが実行される(S22)。商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が有ると判定されていると(S23,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナPCSへの入力電流の有無に基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なう第1電流判定処理(S27)が実行される。
商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されていると(S23,N)、系統連系用リレーRy1の接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナPCSからの出力電流の有無に基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なう第2電流判定処理(S24)が実行される。
第1電流判定処理で系統連系用リレーRy1が異常と判定されない場合には(S27,N)、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの出力電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて(S28)、第2電圧判定処理が実行される(S29)。
また、第2電流判定処理で系統連系用リレーRy1が異常と判定されない場合には(S24,N)、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの出力電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて(S25)、第1電圧判定処理が実行される(S26)。
ステップS32ではエラーフラグの状態が判定され、エラーフラグがセットされていると(S32,Y)、対応するリレー接点が溶着していると判定されて、それに伴いパワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示を点灯させる等の異常対応処理が実行される(S33)。
ステップS32でエラーフラグのセットが確認されない限り(S32,N)、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swが開成制御された状態、各接点SuまたはSw毎に閉成制御された状態の三状態のそれぞれで各異常判定処理が終了するまで、ステップS22からステップS34までの処理が繰り返される。以下に各電流判定処理及び各電圧判定処理を詳述する。
第1電流判定処理(S27)では、LCフィルタ4のコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、コンデンサ電流ic、計測値となる自立系統電圧esdとして、以下の数式〔数7〕に基づいて算出されるコンデンサ電流icを入力電流として算出する。尚、sはラプラス演算子(ラプラス変数)である。
インバータの出力電圧esdを検出する抵抗分圧回路を用いて自立系統電圧esdを計測し、その値を数式〔数7〕に代入することにより、LCフィルタ4のコンデンサに流入する電流値が算出される。
つまり、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると、商用系統電圧euwの検出値と自立系統電圧esdの検出値が等しくなるような状態になると考えるのである。
図6に示すように、第1電流判定処理は、所定のサンプリング周期Tsで計測及び算出した瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|の変化状態を判断するために、少なくとも3回連続して閾値Ic.chk以上であり、且つ、その値が大きくなる傾向があるというという条件が成立する場合に(S27,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。尚、ノイズによる誤検出を考慮し、変化状態を確実に検出するために複数回判定処理を繰り返してもよい。
閾値Ic.chkは、以下の数式〔数8〕で定めることができる。但し、Psd.ratedは自立運転時の定格出力電力、E* sd.rmsは自立系統電圧実効値の指令値、yは信頼係数で、y<1の正数である。
エラーフラグがセットされると、パワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示が点灯されるように構成されている。本実施形態では、自立運転時の定格電力Psd.rated1.5kWを基準に、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rms100V、定格電流の10%(y=0.1)として設計すると、閾値Ic.chk=1A、サンプリング周期Ts=50μsec.(DC/ACインバータのスイッチング周期に相当)に設定されている。閾値は、定格電流の10%の値に設定している((0.1×1500)/(100×1.414)=1)。尚、所定のサンプリング周期Tsとは、インバータを構成するスイッチング素子の最高スイッチング周波数の逆数という条件を満たすサンプリング周期であればよい。
ステップS27で、瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|の変化状態を判断するために、少なくとも3回連続して閾値Ic.chk以上であり、且つ、その値が大きくなる傾向があるというという条件が成立しない状態が所定時間(例えば数サイクル)継続すると、商用系統からパワーコンディショナPCSのコンデンサに流れる電流が無いと判断して(S27,N)、ステップS28の電圧判定処理に移行する。但し、ノイズによる誤検出を考慮し、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。尚、商用系統電圧が有る場合、系統連系用リレーRy1の接点が溶着することなく正常であれば、瞬時コンデンサ電流icの絶対値|ic|は常時零となる。
第2電流判定処理(S24)では、LCフィルタ4のコンデンサ容量Cinv、内部抵抗Rc、自立系統電圧esd、コンデンサ電流ic、計測値となるインバータの出力電流iinvとして、以下の数式〔数9〕に基づいて算出されるパワーコンディショナPCSの出力電流ispを商用系統に接続された負荷への出力電流として算出するように構成されている。
商用系統電圧が無い場合には、インバータ3が駆動されてパワーコンディショナPCSから所定の自立系統電圧esdが出力され、計測されたインバータ電流iinvと自立系統電圧esdから数式〔数7〕により求められたicが数式〔数9〕に代入されて、パワーコンディショナPCSからの出力電流ispが算出される。ここで、自立系統電圧esdは、インバータの出力電圧esdを検出する抵抗分圧回路により検出される値である。
つまり、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると、パワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに流出する電流が検出されるようになるのである。
図7に示すように、第2電流判定処理は、パワーコンディショナPCSの出力電流ispの最大値Isp.maxの差分の変化状態を判断するために、3回連続して所定の閾値Isp.chk以上である場合、且つ、瞬時出力電流ispの絶対値|isp|が小さくなる傾向がある場合に(S24,Y)、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。但し、ノイズによる誤検出を考慮し、且つ、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。
出力電流ispの最大値Isp.maxは、数式〔数10〕で示され、閾値Isp.chkは、数式〔数11〕で示される。尚、数式〔数11〕でE* sd.rmsは自立運転時の出力電圧の実効値の指令値である。
パワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに電流が流出すると、電圧降下が生じて次第に電流値が低下する。そこで、第2電流判定処理では、算出されたパワーコンディショナPCSの出力電流の最大値の差分が複数回連続して所定の閾値以上であり、且つ、瞬時出力電流ispの絶対値|isp|が小さくなる傾向がある場合にパワーコンディショナPCSから商用系統に接続された負荷Ruwに電流が流出していると判定されるのである。
尚、系統連系用リレーRy1の接点が溶着することなく正常である場合、商用系統に負荷が接続されていない場合、また、商用系統に軽い負荷が接続されている場合は、図8に示すように、パワーコンディショナPCSの出力電流ispの最大値Isp.maxが常に所定の閾値Isp.chk以下となると考えられる。
ステップS31でエラーフラグがセットされると、パワーコンディショナPCSの表示パネルに異常表示が点灯される。本実施形態では、自立運転時の定格電力Psd.ratedは1.5kWを基準に、自立系統電圧の実効値の指令値E* sd.rms100V、定格電流の10%(y=0.1)として設計すると、閾値Isp.chk=1A、サンプリング周期は0.5Tsdに設定されている(図6参照)。尚、自立系統周波数が50Hzである場合はサンプリング周期は10msec.となる。
ステップS27で、図8に示すように、出力電流ispの最大値Isp.maxの変化状態は、少なくとも3回連続して閾値Isp.chk未満であり、その値が大きくなる傾向があるという条件が成立しない状態が所定時間(例えば数サイクル)継続すると、商用系統に負荷が接続されていない状態、或いは、軽い負荷と接続されている状態と判断して(S27,N)、ステップS28以降の第2電圧判定処理に移行する。尚、ノイズによる誤検出を考慮し、且つ、変化状態を確実に検出するために、複数回判定処理を繰り返してもよい。
第2電圧判定処理では、所定の遅延時間n・Tchk(nは正整数)の間にパワーコンディショナPCSの自立系統電圧esdと商用系統電圧euwの実効値が計測されて、それらの差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|と、電圧設定処理ステップで設定された基準値Echkに所定の信頼係数zを掛けた値との大小関係が判定される(S29)。
例えば、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していなければ、商用系統電圧が200V、パワーコンディショナPCSの出力電圧が0Vと検知されるので、信頼係数z=0.5(zは、z<1の正数)とすれば、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|=200Vに対して比較値100V(=200×0.5)が小さくなる。
しかし、接点が溶着していれば、商用系統電圧が200V、パワーコンディショナPCSの出力電圧が200Vと検知され、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|=0Vに対して比較値100V(=200×0.5)が大きくなる。
ステップS29で、差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|よりも基準値Echkに信頼係数zを掛けた値の方が大きいと判定されると、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判定して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域にフラグをセットする(S31)。
差分の絶対値|Esd.rms−Euw.rms|よりも基準値Echkに信頼係数zを掛けた値の方が小さいと判定されると、系統連系用リレーRy1が正常であると判定して、メモリに設定されたエラーフラグ記憶領域のエラーフラグをリセットする(S30)。
遅延時間Tchkが商用系統周波数、或いは、自立系統周波数の3周期(n=3)に設定され、少なくとも3周期の間のサンプリング値に基づいて実効値が算出されるように構成されているが、遅延時間Tchkは複数周期に設定されていればよく、3周期に限るものではない。
ステップS24の第2電流判定処理で系統連系用リレーRy1の溶着が検出されない場合には(S24,OK)、ステップS25以降の第1電圧判定処理が実行される。
図5には、第1電圧判定処理の具体的な処理手順が示されている。
第1電圧判定処理では、数式〔数12〕に示すように、系統連系用リレーRy1の異常の有無を判定するための処理時間T1が設定される(S41)。
ここで、数式〔数11〕のTONは、図2に示すように、系統連系用リレーRy1の接点制御処理で系統連系用リレーRy1の各接点を開成または閉成制御して主にパワーコンディショナPCS側の電圧及び商用系統側の電圧を計測する時間であり、Tdlyは計測値に対する演算処理に要する時間である。本実施形態では、TONは1.0sec.に設定され、遅延時間Tdlyは300msec.に設定されている。
設定が完了すると、測定時刻kの初期値が「−2」に設定され、系統連系用リレーRy1の全接点Su,Swが開成制御された状態でパワーコンディショナPCSから数式〔数13〕に示す出力電圧実効値の指令値Esd.rmsとしてEminのモニタ電圧が出力される(S42)。
次に、商用系統側の電圧euwが計測されて実効値Euw.rmsが算出され、パワーコンディショナPCSの出力電圧実効値の指令値Eminと商用系統側の電圧実効値Euw.rmsの差分の絶対値ΔE(k)が算出されて、その値がメモリに記憶される(S43)。
処理時間T1が経過するまでの間はステップS43の処理が継続され、処理時間T1が経過すると(S44,Y)、測定時刻kに値「1」が加算されるとともに、パワーコンディショナPCSの出力電圧が数式〔数13〕に示す出力電圧実効値の指令値Emaxに更新されて出力される(S45)。
初期値k=「−2」に設定された測定時刻kが「1」になるまでステップS43からステップS45の測定処理が3回繰り返され(S46)、この間にパワーコンディショナPCSから出力されるモニタ電圧が、EminからEmaxに、さらにEminに時系列で切り替えられる。尚、ΔE*はパワーコンディショナの出力可変電圧の指令値、a,bは信頼係数で0<a<1,0<b<1の範囲に設定される値である。
ステップS46で測定時刻kが「1」になると判定されると、時刻k(k=−2,−1,0)に対応して時系列で算出された3つの差分ΔE(k)がメモリから読み出されて、各差分の積ΔECSTが算出され、その値がメモリに記憶される(S47)。
ステップS47で算出された積ΔECSTが所定の基準値Echkと比較される。積ΔECSTが所定の基準値Echkより小さい場合には、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判定されて(S48,N)、エラーフラグがセットされる(図4のステップS31)。
積ΔECSTが所定の基準値Echk以上である場合には、系統連系用リレーRy1の接点は溶着していないと判定されて(S48,Y)、エラーフラグがリセットされる(図4のステップS30)。
図9(a),(b)には、図4及び図5のフローチャートで説明した第1電圧判定処理の処理タイミングが示されている。
図9(a)に示すように、先ず、最初の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k−2)としてEminのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該最初の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k−2)が計測され、E* sd.rms(k−2)とEuw.rms(k−2)の差分がΔE(k−2)として算出されてメモリに記憶される。
図9(a)に示すように、次の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k−1)としてEmaxのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該次の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k−1)が計測され、E* sd.rms(k−1)とEuw.rms(k−1)の差分がΔE(k−1)として算出されてメモリに記憶される。
図9(a)に示すように、最後の処理時間T1の間にパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値E* sd.rms(k)としてEminのモニタ電圧が出力される。
図9(b)に示すように、当該最後の処理時間T1の間に商用系統側の電圧実効値Euw.rms(k)が計測され、E* sd.rms(k)とEuw.rms(k)の差分がΔE(k)として算出されてメモリに記憶される。
その後、時間TCHKの間にメモリに記憶されたデータΔE(k−2)、ΔE(Tk−1)及びΔE(k)の積ΔECSTが数式〔数14〕に基づいて算出され、所定の基準値Echkとの比較が行なわれる。パワーコンディショナの出力電圧の指令値の可変電圧をΔE*、可変電圧ΔE*及び基準値Echkを調整する信頼係数をaとする。本実施形態では、信頼係数a=0.5、出力可変電圧の指令値ΔE*=20V、指令値E* sd.rms=40V,信頼係数b=0.1に設定されているが、これらの値は実際の設計条件等に基づいて適宜設定可能である。
出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxは、商用系統の定格電圧EGridに対して、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定されていることが好ましい。出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxの差が小さい場合には、ハムノイズの影響で系統連系用リレーRy1の接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTにそれほど大きな相違が認められない虞がある。そのような場合に備えて、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxを、b×EGridから2×a×ΔE*の範囲に入るように設定しておけば、系統連系用リレーRy1の接点が溶着している場合と溶着していない場合とで積ΔECSTに顕著な相違が現れるようになる。
以上説明したように、本発明による系統連系用リレーRy1の異常検出装置を採用すれば、パワーコンディショナPCSの出力電圧や出力電流、商用系統電圧を検知するための回路素子は本来パワーコンディショナPCSの制御に必要な回路素子であるので、系統連系用リレーRy1の溶着を判定するために別途のセンサや回路素子を準備する必要はない。
また、交流負荷Ruwが接続されているか否かに関わらず、また商用系統電圧の有無に関わらず、確実に系統連系用リレーRy1の接点が溶着異常であるか否かが検出できるようになる。
図10(a),(b),(c)及び図11(a),(b),(c)には、本発明による第1電圧判定処理の実験結果の一例が示されている。詳述すると、図10(a)及び図11(a)に示すように、図4のステップS22の接点制御処理で、系統連系用リレーRy1の接点Su,SWのうち接点Suが閉成され、接点SWが開成された状態で、第1電圧判定処理が実行された結果、つまり接点Swに対する溶着判定結果が図10(b),(c)及び図11(b),(c)に示されている。
実験は、図2に示すチェック時間TON=1sec.、遅延時間Tdly=0.3sec.、モニタ電圧Emin=30V、Emax=50V、チェック時間T1=0.2sec.、基準値Echk=125Vの各条件で行なわれた。
図10(b)に示すように、接点SWが溶着した系統連系用リレーRy1を用いて、接点制御処理ステップで接点Suを閉成制御し、接点Swを開成制御した状態で、パワーコンディショナPCSから周期T1(=0.2sec.≒(TON−Tdly)/3)で、Emin(=30V)、Emax(=50V)、Emin(=30V)の順に時系列で電圧esdを切替出力した。
図10(c)に示すように、系統連系用リレーRy1の接点SWが溶着しているため、この電圧esdとほぼ同じ値の電圧euwが商用系統側でも検出されるようになる。そのため、各周期T1で算出したΔEの値は略零になる。その後、TchkでΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTが算出され、その値がEchk(=125V)よりも小さな値と判断され、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると判断された。図10(c)には、パワーコンディショナPCSから電圧が出力されていない時期に、商用系統側の電圧euw波形に僅かのハムノイズが認められる。
図11(c)に示すように、接点SWが溶着していない正常な系統連系用リレーRy1を用いて、接点制御処理ステップで接点Suを閉成制御し、接点Swを開成制御した状態で、パワーコンディショナPCSから周期T1(=0.2sec.≒(TON−Tdly)/3)で、Emin(=30V)、Emax(=50V)、Emin(=30V)の順に時系列で電圧を切替出力した。
図11(c)に示すように、系統連系用リレーRy1の接点SWは溶着されていないので、この電圧esdは商用系統側で検出されることがない。しかし、パワーコンディショナPCSから出力される電圧esdによりハムノイズの値が大きくなり、単純にΔE(k)の値のみで判定すると系統連系用リレーRy1の接点が溶着していると誤判定することになる。図10(c)の差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)が図11(c)の差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)と顕著に異なる値とならないためである。
しかし、図11(b),(c)に示すように、パワーコンディショナPCSから出力される電圧esdを30Vから50Vにステップ的に変化させた場合にはハムノイズのレベルはそれほど大きく変化しない。そのため、ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTがEchk(=125V)よりも大きな値と判断され、系統連系用リレーRy1の接点が溶着していないと正確に判断することができるようになった。
また、図10(b),(c)に示す系統連系用リレーRy1が溶着している場合、各差分ΔEは総合可変電圧の指令値の半分として設計する(0.5×a×ΔE*)。つまり5V程度になり、Echkを53(=125V)〜63(=216V)の範囲に設定することが適正であると評価できる。尚、Echkの値は、出力電圧実効値の指令値Emin、Emaxの各値を考慮して決定すればよい。べき数3はサンプリングされた差分の数に対応する値である。
以下、別実施形態を説明する。
上述の実施形態では、第1電圧判定処理でパワーコンディショナPCSからの出力電圧実効値の指令値が、EminとEmaxの2値を用いて、3周期に亘って交互に切替出力される例を説明したが、2値である必要はなく、少なくとも異なる値の電圧であればよく、また3周期ある必要はなく2周期以上であればよい。
つまり、パワーコンディショナPCSから異なる値のモニタ電圧EminとEmaxを時系列で切替出力し、各モニタ電圧EminとEmaxに対するパワーコンディショナPCS側の電圧と商用系統側の電圧との差分がモニタ電圧に追従するか否かに基づいて系統連系用リレーRy1の異常判定を行なうように構成されていればよい。
また、モニタ電圧EminとEmaxを時系列で切替出力する際に、Emin→Emax→Eminの順に切り替える以外に、Emax→Emin→Emaxの順に切り替えてもよいことはいうまでもない。つまり、出力電圧実効値の指令値Emin,Emaxのモニタ電圧を時系列で切替出力するように構成されていればよい。
上述した実施形態では、差分ΔE(k−2)、ΔE(k−1)及びΔE(k)の積ΔECSTと基準値Echkとを比較して異常または正常判定する態様を説明したが、差分毎に予め設定した基準値と比較して異常または正常判定し、全ての差分で正常と判定された場合に最終的な異常または正常判定を行なうように構成してもよい。
さらに、各モニタ電圧EminとEmaxの変化に伴って差分が同様に変化するか否かに基づいて異常または正常判定を行なうように構成してもよい。つまり、各モニタ電圧EminとEmaxを変化させたときに差分が同様に変化する場合は、系統連系用リレーRy1が正常であると判定される。一方、各モニタ電圧EminとEmaxを変化させたときに差分が変化しない場合は、系統連系用リレーRy1が異常であると判定される。
即ち、本発明による系統連系用リレーの異常検出装置は、商用系統電圧の有無を判定する商用系統電圧判定処理と、商用系統電圧判定処理により商用系統電圧が無いと判定されると、系統連系用リレーの接点が開成制御された状態で、パワーコンディショナから異なる値のモニタ電圧を時系列で切替出力し、各モニタ電圧に対するパワーコンディショナ側の電圧と商用系統側の電圧との差分がモニタ電圧に追従するか否かに基づいて系統連系用リレーの異常判定を行なう第1電圧判定処理と、を実行する異常検出処理部を備えていればよい。
以上説明した実施形態では、パワーコンディショナPCSの出力が単相である場合を例に本発明を説明したが、本発明はパワーコンディショナPCSの出力が三相であり、系統連系用リレーRy1の接点がSu,Sv,Swの3接点で構成される場合も適用可能である。
上述した実施形態では、太陽電池パネルSPと、太陽電池パネルSPに接続されたパワーコンディショナPCSを備えた分散型電源を例に系統連系用リレーの異常検出装置を説明したが、分散型電源に組み込まれる発電装置は太陽電池パネルSPに限るものではなく、風力発電装置や燃料電池等の任意の発電装置であってもよい。
以上説明した複数の実施形態は、本発明による系統連系用リレーの異常検出方法及びパワーコンディショナの一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される限り、具体的な回路構成や異常検出アルゴリズムは適宜変更設計可能なことは言うまでもない。
1:分散型電源
2:DC/DCコンバータ
3:DC/ACインバータ
4:LCフィルタ
5:制御装置
5a:コンバータ制御部
5b:インバータ制御部
5c:異常検出処理部
PCS:パワーコンディショナ
Ry1:系統連系用リレー
Ry2:自立系統用リレー
Su,Sw:接点
本発明によるパワーコンディショナの特徴構成は、同請求項12に記載した通り、系統連系用リレーを介して商用系統と連系する系統連系運転と、自立系統用リレーを介して自立系統に給電する自立運転とを切替可能な制御装置を備えている単相または三相のパワーコンディショナであって、上述した第一から第十の何れかの特徴構成を備えた系統連系用リレーの異常検出装置が前記制御装置に組み込まれている点にある。