以下に、本発明に係るモータ制御装置、電気掃除機およびハンドドライヤーの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るモータ制御システム1の構成を示すブロック図である。図2は、モータ12の構成を示す図である。図1に示すように、モータ制御システム1は、モータ12と、モータ12に接続され、モータ12に交流電力を出力して、モータ12を駆動するインバータ11と、インバータ11への直流電源となる電源10と、モータ12のステータ3に設けられ、モータ12のロータ4の回転位置であるロータ回転位置を検出する位置センサ21と、モータ12に流れる交流電流であるモータ電流を検出する電流検出部である電流センサ20と、ロータ回転位置とモータ電流とに基づいてインバータ11を制御するモータ制御装置2とを備える。
モータ12は、ブラシレスモータであり、環状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4とを備える。また、ロータ4は周方向に配列された複数個の永久磁石6を有する。これらの複数個の永久磁石6は、着磁方向が周方向に交互に反転するように配置され、ロータ4の複数個の磁極を形成する。また、ステータ3には巻線5が巻回されている。モータ電流は、巻線5に流れる交流電流である。以下では、永久磁石6の個数は図示例のように4個とし、磁極数は4極とするが、これ以外でもよい。
位置センサ21は、ディジタル信号である位置センサ信号をモータ制御装置2に出力する。位置センサ信号は、ロータ4の回転位置を検出する信号であり、ロータ4からの磁束の方向に応じて高低の二値を示す。従って、位置センサ信号に含まれるエッジは磁極間に相当する。
電力変換器であるインバータ11は、図示しない上下アームを構成する複数個のスイッチング素子40を組み合わせて構成される。スイッチング素子40は、トランジスタに還流ダイオードが逆並列に接続されて構成される。なお、還流ダイオードは寄生ダイオードとすることができる。インバータ11は例えば単相インバータとしているが、多相インバータでもよい。
電流センサ20は、モータ12とインバータ11との間に接続され、モータ電流を検出する。電流センサ20の検出値はアナログ信号である。
モータ制御装置2は、電流センサ20により検出されたモータ電流の検出値であるアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器30と、アナログディジタル変換器30から読み取られたモータ電流と位置センサ21からの位置センサ信号と図示しない回転数指令とに基づいてPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号を生成する制御回路25と、制御回路25から出力されたPWM信号に基づいてインバータ11を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成部32とを備える。
制御回路25は、プロセッサ31、三角波キャリア生成部33およびメモリ34を有する。制御回路25は、公知のPWM制御により、モータ12に印加すべき電圧指令を生成し、この電圧指令と三角波キャリア生成部33で生成された三角波キャリアとを比較することでPWM信号を生成する。駆動信号生成部32は、制御回路25からのPWM信号に基づいて、インバータ11のスイッチング素子40のオンまたはオフを制御する駆動信号を生成し、この駆動信号をインバータ11に出力する。
このように、制御回路25は、アナログディジタル変換器30からディジタル信号を読み取り、このディジタル信号を用いてインバータ11を駆動するためのPWM信号を生成する。なお、インバータ11も含めて制御回路25を定義することもできる。
次に、アナログディジタル変換器30の構成の一例について説明する。以下では、アナログディジタル変換器30は逐次比較型である場合について説明するが、アナログディジタル変換器30の具体的構成は逐次比較型に限定されない。また、以下では、「アナログディジタル変換器」を「AD変換器30」と略記し、「アナログディジタル変換」を「AD変換」と略記することがある。
図3は、AD変換器30の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、AD変換器30は、制御回路51、比較器52、およびDA(ディジタルアナログ)変換器53を備える。なお、図3に示すAD変換器30の動作の詳細については特開平5−152960号公報に記載されている。
制御回路51は、図示しないプロセッサを有する。比較器52は、DA変換器53からの比較信号COMとアナログ入力信号AINとの大小を比較し、比較結果を制御回路51に出力する。アナログ入力信号AINは、モータ電流に相当する。制御回路51は、比較結果に応じてアナログ入力信号AINを近似する制御信号CNをDA変換器53に出力する。DA変換器53は、制御信号CNに相当する比較信号COMを比較器52に出力する。制御回路51は、比較信号COMをアナログ入力信号AINに逐次近似する制御を実行することで、アナログ入力信号AINに相当するディジタル信号DOUTを求める。制御回路51は、ディジタル信号DOUTを図示しないレジスタに保持する。
図4は、プロセッサ31とAD変換器30との間の信号の授受の一例を示した図である。まず、プロセッサ31は、AD変換器30に起動信号S1を出力する。起動信号S1はAD変換器30にAD変換の開始を指示する信号である。プロセッサ31は、起動信号S1を出力することによりAD変換器30を起動する。
AD変換器30は、起動信号S1を受けると、アナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換処理を開始する。具体的には、AD変換器30の制御回路51が、起動信号S1を受けると、逐次比較処理を開始する。
AD変換器30は、AD変換完了後、AD変換が完了したことを示す完了信号S2をプロセッサ31に出力する。具体的には、制御回路51が完了信号S2をプロセッサ31に出力する。プロセッサ31は、AD変換器30から完了信号S2を受けた後、AD変換器30からディジタル信号を読み取る。具体的には、プロセッサ31は、制御回路51内のレジスタに記憶されたディジタルデータを読み取る。
このように、AD変換器30は、プロセッサ31から起動信号S1が入力されるとAD変換処理を開始し、AD変換処理が完了するとプロセッサ31に完了信号S2を出力して、AD変換処理を停止する。
次に、図5を参照して、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りのタイミングについて説明する。図5は、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
図5において、「位置センサ信号」は、プロセッサ31に入力された位置センサ21の出力信号を表す。なお、位置センサ信号の直下に付された角度はロータ4の機械角である。位置センサ信号は、4極のロータ4に対応して、機械角で0°、90°、180°、270°、360°にエッジを含む。
「ロータ回転角」は、ロータ4の電気角を表す。すなわち、磁極数をPとして電気角=機械角×P/2で与えられる。プロセッサ31は、位置センサ信号に基づいてロータ回転角を算出する。なお、ロータ回転角の直下に付された角度は電気角である。
「モータ電流」は、モータ電流の波形を表す。「モータ電流」は、「ロータ回転角」との比較のために示している。図5に示すように、位置センサ信号のエッジはモータ電流のゼロクロス点と同期している。ここでゼロクロス点は、信号の波形における極性の変化点であり、極性が正から負へまたは負から正へ切り替わる点である。図5では、互いに隣り合うゼロクロス点A1,A2を示している。ゼロクロス点A1からゼロクロス点A2までの期間は、ゼロクロス点A1,A2で決まるモータ電流の電気半サイクルである。このように、以下では、まず位置センサ信号のエッジをモータ電流のゼロクロス点と同期させた制御をする場合について説明する。この場合、ロータ回転角は、モータ電流の位相情報を与える。
次に、「AD変換器動作タイミング」と「三角波キャリア」について説明する。「AD変換器動作タイミング」はAD変換処理を表し、「三角波キャリア」は三角波キャリアの波形を表す。本実施の形態では、ゼロクロス点を含む一定の位相角範囲はAD変換器30の起動が禁止された禁止範囲とする。具体的には、ゼロクロス点を中心に前後それぞれαからなる合計2αの位相角範囲を禁止範囲とする。プロセッサ31は、禁止範囲内においてAD変換器30に起動信号S1を出力せず、起動信号S1が入力されないAD変換器30はAD変換処理を実行せず、AD変換処理を完了したことを示す完了信号S2を出力しない。
禁止範囲以外の範囲は、AD変換器30の起動が許可された許可範囲である。すなわち、プロセッサ31によるAD変換器30の起動は、許可範囲のみで許可される。なお、禁止範囲か許可範囲かに関係なく、AD変換器30からのディジタル信号の読み取りは許可される。許可範囲は、互いに隣り合う禁止範囲間となる。禁止範囲に相当する期間、すなわち禁止範囲を時間に読み替えたものを、以下では禁止期間という。同様に、許可範囲に相当する期間を、以下では許可期間という。禁止期間は禁止範囲と実質同一であり、許可期間は許可範囲と実質同一である。
図6は、禁止範囲を決定するためのフローチャートである。図6に示すように、プロセッサ31は、位置センサ信号からロータ回転角を算出し(S1)、算出されたロータ回転角に基づいて、モータ電流のゼロクロス点を算出し(S2)、ゼロクロス点を含む前後αの範囲を禁止範囲に設定する(S3)。禁止範囲が決まると許可範囲が決まる。
なお、モータ電流の電気サイクルである周期をTIとすると、禁止期間の長さは2×(α/360)×TIで与えられ、モータ電流の電気半サイクルである半周期中における許可期間の長さはTI/2−2×(α/360)×TIで与えられる。位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期しているので、周期TIは、モータ電流の周期であり、位置センサ信号の周期でもある。
αは0よりも大きくかつ90°未満の予め決められた角度である。図示例では、αは10°である。この場合、禁止範囲は、−10°以上かつ10°以下の範囲、170°以上かつ190°以下の範囲、350°以上かつ370°以下の範囲、530°以上かつ550°以下の範囲、710°以上かつ730°以下の範囲である。プロセッサ31は、ロータ回転角を算出した後、ロータ回転角と予め決められたαとに基づいて、禁止範囲および許可範囲を決定する。
また、本実施の形態では、プロセッサ31によるAD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りは、三角波キャリア生成部33で発生させる三角波キャリアの山点のタイミングで行うものとする。なお、AD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りは、三角波キャリアの山点以外のタイミング、例えば谷点のタイミングまたは、山点と谷点両方のタイミングで行ってもよい。また、三角波キャリアによらずにタイミングを決めてもよい。なお、1つのサンプリングデータに対するAD変換処理は、三角波キャリアの周期Tcよりも短い時間で実行されるものとする。
さらに、1つの許可期間は、三角波キャリアの周期Tcの2倍よりも大きいものとする。これにより、同一の許可範囲内には、三角波キャリアの山点が2個以上含まれるので、同一の許可範囲内で、AD変換器30の起動とAD変換器30からの読み取りが可能になる。
「AD変換器動作タイミング」について詳細に説明する。以下では、「期間」を用いて説明するが「範囲」に読み替えることもできる。プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、山点のタイミングである時刻t0が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t0は、禁止期間内にあるので、プロセッサ31は、AD変換器30の起動を行わない。
次に、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t0に続く山点のタイミングである時刻t1が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t1は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t1において、AD変換器30に起動信号S1を出力する。なお、この場合の許可期間は、ゼロクロス点A1からゼロクロス点A2まで電気半サイクル中に含まれる。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行する。図5では、AD変換中の範囲を斜線付の「AD変換」で示している。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
ここでは一つの許可期間内には三角波キャリアの山点が2個以上含まれることを前提としているため、時刻t1に続く山点のタイミングである時刻t2は許可期間内にある。そこで、プロセッサ31は、時刻t2において、AD変換器30からディジタル信号を読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタル信号を制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタル信号でレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
次に、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t2に続く山点のタイミングである時刻t3が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t3は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t3において、AD変換器30からディジタル信号を読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタル信号を制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタル信号でレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
次に、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t3に続く山点のタイミングである時刻t4が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t4は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t4において、AD変換器30からディジタル信号を読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタル信号を制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタル信号でレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
さらに、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t4に続く山点のタイミングである時刻t5が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t5は禁止期間内にあるので、AD変換器30に起動信号S1を出力しない。また、プロセッサ31は、時刻t5がゼロクロス点A1からゼロクロス点A2まで電気半サイクル中にあるか否かの判定を行う。時刻t5は当該電気半サイクル中にあるので、プロセッサ31は、時刻t5において、AD変換器30からディジタル信号を読み取る。そして、プロセッサ31は、このディジタル信号を制御に使用する。
プロセッサ31は、モータ12の運転中に以上のような動作を繰り返している。
以上の説明では、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期することを前提とした。ここで、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期しない場合の制御について簡単に説明する。
モータ12は、運転開始時には、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期するようにして運転される。しかし、回転数の増加に伴い、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期しなくなる。特に、回転数が例えば7万rpm以上のようないわゆる高回転数領域に達すると、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点との非同期が生ずる。このように非同期が生ずると、図6のようにして設定した禁止範囲を再設定する必要が生ずる場合がある。
禁止範囲の再設定は以下のように実施される。プロセッサ31は、AD変換器30から読み取ったディジタル信号を時系列で監視し、同一の許可範囲内でディジタル信号の前回値と今回値とを比較し、前回値と今回値とで極性が切り替わっていないかどうかの判定をする。前回値と今回値とで極性が切り替わった場合は、許可範囲内にゼロクロス点が含まれることになるので、この場合は、検出されたゼロクロス点をもとに、禁止範囲を再設定する。禁止範囲の再設定により、許可範囲も再設定される。以後、プロセッサ31は、再設定された許可範囲内でのみAD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りを行う。
本実施の形態の効果について説明する。モータ電流のゼロクロス点ではノイズが発生することが知られている。具体的には、インバータ11のスイッチング素子40のオンまたはオフ動作に際してノイズが発生することから、電流極性が切り替わるゼロクロス点ではスイッチングに起因するノイズがモータ電流に含まれることになる。また、モータ電流のゼロクロス点では、スイッチング素子40を構成するトランジスタに逆並列に接続された還流ダイオードにリカバリー電流が流れ、このリカバリー電流もノイズの要因となる。
これに対して、本実施の形態では、モータ電流の各ゼロクロス点を含む一定の期間をAD変換器30の起動を禁止する禁止期間に設定し、禁止期間と次の禁止期間との間にAD変換器30の起動を許可する許可期間を設定している。
プロセッサ31は、許可期間内においてAD変換器30に起動信号S1を出力してAD変換器30を起動し、かつ当該許可期間を含む互いに隣り合うゼロクロス点で決まる電気半サイクル中でAD変換器30からディジタル信号を読み取る。ここで許可期間は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの電気半サイクルに含まれ、これらのゼロクロス点を含まない連続する期間である。これにより、プロセッサ31は、これらのゼロクロス点を含まない許可期間内で起動されたAD変換器30により変換処理されたディジタル信号を制御に使用することができるので、ノイズの制御への影響を抑制し、安定したモータ制御を実現することが可能となる。
また、ノイズの影響を抑制することができることから、モータ制御システム1を備えた電気機器の品質の向上を図ることができる。さらに、ノイズの影響を抑制することで、モータ制御システム1にノイズ除去用のフィルタを設ける場合でも、フィルタ定数を小さくできることから、フィルタの小型化が可能となる、部品の小型化を図ることができる。
一般に、プロセッサ31は、第1の期間中に、AD変換器30を起動し、第2の期間中に、AD変換器30からディジタル信号を読み取る。ここで、第2の期間は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの電気半サイクルである。第1の期間は、第2の期間に含まれ、ゼロクロス点および次のゼロクロス点を含まない連続する期間、すなわち、許可期間である。また、ゼロクロス点を含む禁止期間を第3の期間とし、次のゼロクロス点を含む禁止期間を第4の期間とすると、第1の期間は第3の期間と第4の期間との間の期間である。
図5の対応では、ゼロクロス点および次のゼロクロス点の組を例えばゼロクロス点A1,A2とした場合に、第1の期間はゼロクロス点A1,A2間の許可期間、第2の期間はゼロクロス点A1からゼロクロス点A2までの電気半サイクル、第3の期間はゼロクロス点A1を含む一定の期間である禁止期間、第4の期間はゼロクロス点A2を含む一定の期間である禁止期間である。第1から第4の期間は、ゼロクロス点および次のゼロクロス点の組に対して決まる。
なお、プロセッサ31が、第1の期間中に、AD変換器30を起動し、かつ、AD変換器30からディジタル信号を読み取るようにしてもよい。すなわち、同一の第1の期間中に、AD変換器30の起動、およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りがなされるようにしてもよい。
ここで、禁止期間内におけるモータ制御について説明する。本実施の形態では、禁止期間内は、プロセッサ31はAD変換器30の起動を行わないが、禁止期間の直前の許可期間で得られたモータ電流の検出値からモータ電流の電流値を推定し、この推定された電流値を用いてモータ制御を行う。
図7は、禁止期間内でのモータ電流の電流値の推定方法を説明するための図である。図7において、「位置センサ信号」および「モータ電流」は図5と同様である。「検出電流」は、実際に検出された「検出値」と禁止期間内で推定された「推定値」とからなる。なお、「検出値」は黒丸で、「推定値」は白丸で示している。点N−3から点N−1は禁止期間の直前の許可期間で検出された3点を示している。これらの検出値は、直前の許可期間を含む電気半サイクル中にAD変換器30から読み取られたディジタル信号を示している。ここで、電気半サイクルは、隣り合うゼロクロス点で決まる電気半サイクルである。また、点N+2および点N+3は禁止期間の直後の許可期間で検出された2点を示している。点Nおよび点N+1は、禁止期間で推定された2点を示している。「推定値」は次のようにして求めることができる。禁止期間内にはゼロクロス点が存在するので、モータ電流は直線で近似可能である。そこで、禁止期間の直前の許可期間で検出された直近の2点N−2および点N−1を通る直線を求め、当該直線上に電流値が存在すると推定して点Nおよび点N+1を求めることができる。
なお、禁止期間内でのモータ電流の推定方法は上記した例に限定されない。例えば禁止期間の直前の許可期間で実測された直近の複数点を用いて、多項式近似により、点Nおよび点N+1を推定してもよい。
また、モータ制御において、モータ電流を直交2軸のdq軸に分解して制御するベクトル制御を用いる場合、モータ電流を直流成分として扱うことができるため、上記した電流値の推定を精度良く行うことが可能となる。
次に、本実施の形態の変形例を示す。図8は、本実施の形態の変形例に係るモータ制御システムの構成を示すブロック図である。図8では、図1に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付している。
図8に示すように、本変形例に係るモータ制御システム1は、図1に示す構成に加えて、モータ12とインバータ11との間でモータ12の両端の電圧であるモータ電圧を検出する電圧センサ23と、電圧センサ23により検出されたモータ電圧の検出値であるアナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換器35とを備える。
AD変換器35は、AD変換器30と同一の機能を有する。プロセッサ31からの起動信号S1によりAD変換器35にAD変換処理を開始させ、AD変換器35からの完了信号S2を受けてプロセッサ31がAD変換器35からディジタル信号を読み取る点も同様である。プロセッサ31は、AD変換器30から読み取ったディジタル信号およびAD変換器35から読み取ったディジタル信号を用いてインバータ11を駆動する。
プロセッサ31は、AD変換器35の起動およびAD変換器35からの読み取りを以下のようにする。すなわち、プロセッサ31は、許可期間中に、AD変換器35を起動し、当該許可期間を含む電気半サイクル中に、AD変換器35の起動により変換されたディジタル信号をAD変換器35から読み取る。ここで、電気半サイクルは、モータ電圧の電気半サイクルであり、モータ電圧のゼロクロス点からモータ電圧の次のゼロクロス点までの期間である。また、許可期間は、モータ電圧のゼロクロス点からモータ電圧の次のゼロクロス点までの期間に含まれ、これらのゼロクロス点を含まない連続する期間である。禁止期間は、許可期間と次の許可期間との間の期間である。
モータ電圧のゼロクロス点でもノイズが発生することが知られているので、モータ電圧のゼロクロス点を含まない連続する期間内で起動されたAD変換器35により変換処理されたモータ電圧のディジタル信号を制御に使用することで、ノイズの制御への影響を抑制し、安定したモータ制御を実現することが可能となる。
本変形例のその他の構成、動作および効果は本実施の形態で説明した通りである。
なお、本変形例において、プロセッサ31が、許可期間中に、AD変換器35を起動し、当該許可期間を含む電気半サイクル中に、AD変換器35からディジタル信号を読み取る動作において、本実施の形態のように、電気半サイクルをモータ電流の互いに隣り合うゼロクロス点から定め、許可期間を当該電気半サイクル中の許可期間とすることもできる。この場合は、モータ電圧のディジタル信号へのモータ電流のゼロクロス点で発生するノイズの影響を抑制することができる。
また、本変形例において、プロセッサ31が、許可期間中に、AD変換器30を起動し、当該許可期間を含む電気半サイクル中に、AD変換器30からディジタル信号を読み取る動作において、電気半サイクルをモータ電圧の互いに隣り合うゼロクロス点から定め、許可期間を当該電気半サイクル中の許可期間とすることもできる。この場合は、モータ電流のディジタル信号へのモータ電圧のゼロクロス点で発生するノイズの影響を抑制することができる。
同様にして、モータ電流をモータ12に関連する交流信号に置き換えることで、本実施の形態を一般化することができる。
本実施の形態では、禁止範囲を規定するαを例えば10°としたが、これに限定されない。ただし、αをあまり大きくすると、禁止範囲内で推定する電流値の個数が多くなり、αをあまり小さくすると、ゼロクロス点で発生するノイズの影響を受ける可能性がある。そこで、αは例えば5°以上かつ15°以下の範囲から選択するとよい。また、禁止範囲はゼロクロス点に対して非対称でもよい。
なお、本実施の形態では、モータ12に位置センサ21を設け、位置センサ21からの位置センサ信号に基づいてロータ回転角を算出しているが、位置センサ21によらずに位置センサ信号を推定してもよい。いわゆるセンサレスモータにおける回転位置の推定については、例えば、特許5619195号公報に記載されている。
複数のスイッチング素子40のうちの少なくとも1つは、ワイドバンドギャップ半導体を含んでいる。ワイドギャップ半導体は、例えばGaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化珪素)またはダイヤモンドである。スイッチング素子40にワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子40の耐電圧性および許容電流密度が高くなるため、スイッチング素子40の小型化が可能であり、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。また、ワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化も可能になる。
実施の形態2.
図9は、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。なお、本実施の形態の構成は、図1から図3に示す構成と同じとする。
図9において、「位置センサ信号」、「三角波キャリア」は図5と同様である。なお、「ロータ回転角」、「モータ電流」も図5と同様であるが、図示は省略している。位置センサ信号の周期はTHであり、三角波キャリアの周期はTCである。図9に示すように、TH/2>TCである。すなわち、位置センサ信号の周期THは、三角波キャリアの周期TCの2倍よりも長い。
「AD変換器動作タイミング」では、プロセッサ31は、時刻t1において、AD変換器30に起動信号S1を出力し、AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行する。AD変換中の範囲を斜線付の「AD変換」で示している点は図5と同様である。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
次に、プロセッサ31は、時刻t2において、AD変換器30からディジタル信号を読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタル信号でレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
次に、プロセッサ31は、時刻t3において、AD変換器30からディジタル信号を読み取るだけで、AD変換器30に起動信号S1を出力しない。
時刻t4から時刻t6も同様であり、プロセッサ31は、時刻t4では「起動」、時刻t5では「読み取り」および「起動」、時刻t6では「読み取り」を実施する。同様に、プロセッサ31は、時刻t7では「起動」、時刻t8では「読み取り」および「起動」、時刻t9では「読み取り」を実施する。同様に、プロセッサ31は、時刻t10では「起動」、時刻t11では「読み取り」および「起動」、時刻t12では「読み取り」を実施する。
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、プロセッサ31は、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りを行う。実際、図9では、AD変換器30は、位置センサ信号のエッジでは動作しないように制御されている。
本実施の形態では、TH/2>TCとしているので、位置センサ信号の半周期内、すなわちモータ電流の電気半サイクル中に、山点もしくは谷点がそれぞれ3点以上含まれることとなる。ここで、電気半サイクルはゼロクロス点から次のゼロクロス点までの期間である。そうすると、プロセッサ31は、この電気半サイクル中に、AD変換器30からディジタル信号の読み取りを2回以上行うことができる。
一般に、電気半サイクル中でのディジタル信号の読み取りの回数が多いほど、モータ電流の検出精度が高くなる。従って、本実施の形態のように、電気半サイクル中でのAD変換器30からのディジタル信号の読み取り回数を2回以上とすることで、安定したモータ制御を実現することができる。
位置センサ信号の周期THは、モータ12の回転速度に応じて変化する。モータ12の回転速度が高速になればなるほど周期THは小さくなるため、TH>2TCを満たすためには、モータ12の回転速度に応じて三角波キャリアの周期TCも小さくする必要がある。モータ12の回転速度によらずにTH>2TCを満たすためには、モータ12の最大回転数Nmaxに対応する位置センサ信号の周期THmaxの半分よりもTcが小さければよい。こうすることで、すべての回転数において位置センサ信号の半周期内に2回以上のタイミングでAD変換器30からディジタル信号を読み取ることが可能になる。
なお、AD変換器30からのディジタル信号の読み取り回数が多いほど信号の検出精度が上がる一方で、AD変換器30の起動の回数およびAD変換器30からの読み取りの回数の増加は消費電力の増加につながる。モータ12の回転数範囲が例えば0から10万rpmまでのように広範囲に及ぶ場合には、低速領域よりも高速領域でより精度が要求される。そこで、低速領域では、AD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りの少なくとも一方の動作が可能なすべてのタイミングで当該動作を実施するのではなく、タイミングを選択して当該動作を実施する。すなわち、低速領域では、AD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りについて間引きを行う。実際には、モータ回転数が増加するにつれて間引き回数が小さくなるように制御をすることで、消費電力を削減しつつ、安定したモータ制御を実現することが可能となる。
なお、本実施の形態のその他の構成、動作および効果は実施の形態1と同様である。また、本実施の形態と実施の形態1とを組み合わせることもできる。
実施の形態3.
図10は、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタル信号の読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。なお、本実施の形態の構成は、図1から図3と同じである。
実施の形態1では、AD変換器30は、プロセッサ31からの起動信号S1を受けてAD変換処理を開始し、AD変換完了後は完了信号S2をプロセッサ31に出力し、AD変換処理を停止する。本実施の形態では、AD変換器30がプロセッサ31からの起動信号S1を受けてAD変換処理を開始する点は実施の形態1と同様であるが、AD変換器30を一度起動した後は、AD変換器30は、プロセッサ31から出力された停止信号を受けるまでは、一定の周期でAD変換処理を繰り返すものとする。なお、AD変換器30がAD変換処理を繰り返す周期はプロセッサ31から設定可能である。以下では、この周期をAD変換周期TADという。
図10では、「モータ運転状態」により、モータ12が「停止」状態から「運転」状態に移行することが示されている。「AD変換器動作タイミング」に示すように、AD変換器30は、モータ12の運転開始前に起動している。すなわち、モータ制御装置2には電源10とは異なる図示しない装置電源から電源が供給され、プロセッサ31は、モータ12の運転開始前に、AD変換器30に起動信号S1を出力する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換周期TADでAD変換処理を繰り返す。なお、実際にAD変換処理をする範囲は斜線付の「AD変換」で示した範囲である。従って、AD変換器30は、AD変換完了後の一定の期間、AD変換後のディジタルデータを保持している。時刻t0およびt1は運転開始前であり、時刻t2から時刻t6は運転開始後である。モータ制御に使用されるディジタル信号は時刻t2以降にAD変換器30から読み取られる信号である。
また、AD変換周期TADは、三角波キャリアの周期TCの半分に設定されている。プロセッサ31は、AD変換器30からディジタル信号を読み取り、読み取られたディジタル信号を制御に使用する。
従来のAD変換器の起動およびAD変換器からの読み取りは、位置センサ信号のエッジ、またはモータ電流もしくはモータ電圧のゼロクロス点に同期して行うことが一般的であるが、この場合、周期的に発生するノイズによる影響を常に受けることになるので、安定したモータ制御を実現することが容易ではない。
本実施の形態は、位置センサ信号のエッジ、およびモータ電流またはモータ電圧のゼロクロス点とは非同期に、モータ12の運転開始前にAD変換器30を一度だけ起動すると共に、AD変換器30の起動後でかつモータ12の運転開始後は、AD変換周期TADでAD変換器30から最新のディジタル信号を読み取るようにしている。これにより、周期的に発生するノイズによる影響を抑制することができ、安定したモータ制御を実現することができる。
実施の形態4.
実施の形態1から3では、モータ制御装置2、インバータ11およびモータ12を備えたモータ制御システム1について説明した。本実施の形態では、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を備えた電気機器について説明する。電気機器としては、特に電気掃除機とハンドドライヤーについて説明する。
図11は、電気掃除機61の構成の一例を示す図である。電気掃除機61は、延長管62、吸込口体63、電動送風機64、集塵室65、操作部66、バッテリー67およびセンサ68を備える。電動送風機64は、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を備える。電気掃除機61は、バッテリー67を電源として電動送風機64を駆動し、吸込口体63から吸込みを行い、延長管62を介して集塵室65へごみを吸引する。使用の際は操作部66を持ち、電気掃除機61を操作する。
操作部66は、図示しない電源スイッチおよび加速スイッチを有している。ここで、電源スイッチはバッテリー67から図示しない主回路および制御回路へ電源供給をするためのスイッチである。また、加速スイッチは、電動送風機64を低速回転から定常回転まで加速させるためのスイッチである。
なお、低速回転とは、定常回転数の1/10以下の回転をいう。例えば定常回転数が10万rpmの場合、1万rpm以下の回転が低速回転である。
上記した電源スイッチをオンしバッテリー67から主回路および制御回路へ電源供給が開始されることでセンサ68も同時に検出を開始する。
センサ68は、電気掃除機61の動きまたは人の動きを検知する。センサ68から電気掃除機61の動きまたは人の動きを検知した信号が電動送風機64内に入力されたことをトリガーとして、電動送風機64内の図示しないモータが低速起動される。
低速起動後に上記した加速スイッチをオンすることでモータは低速回転から定常回転数まで加速する。なお、電源スイッチをオンするより前に加速スイッチをオンしていた場合は、電源スイッチをオンすることで起動から定常回転数まで加速されて通常動作となる。
また、定常回転数で回転している状態から加速スイッチのみをオフした場合、モータは停止せずに低速回転で運転し続ける。モータが低速回転で運転し続けることで、掃除の合間の移動で、蓄積された塵埃が集塵室65から延長管62を伝って排出される可能性を抑制することができる。
センサ68は、電気掃除機61の動きを検知するジャイロセンサまたは人の動きを検知する人感センサである。どちらを用いて起動する場合でも定常回転数までの到達時間を短縮することが可能となる。この際、電気掃除機61に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より高速な応答においても制御の安定化が可能となる。
モータが回転する際に発生するトルクTは、次式のように、トルク定数Ktとモータ電流Iaとの積により決定される。
T=Kt×Ia
このように、トルクTはモータ電流Iaに比例するため、加速時間をより短くするためにはより大きなトルクTを発生させる必要があり、モータ電流Iaもより大きくする必要がある。より大きなモータ電流Iaを流すことで、消費電力がより大きくなり、加速時間がより短くなることのメリットが低減し、またバッテリー67を含む部品の信頼性を損ねる。
このような問題を解決するため、加速レートをコントロールすることが一般的である。例えばモータが通常回転数に至るまでの加速時間を延長させることで、加速時間の延長と部品の信頼性を向上させることができる。この際、電気掃除機61に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、加速時間をコントロールするときに、モータの回転速度の振動を抑制することが可能となる。
さらに、起動時に流れる電流を抑えることで、部品の発熱量を抑えることができることから、部品の信頼性も向上する。
また、加速を緩やかにすることで回転数が緩やかに上昇する形となるので、急加速による振動を抑えることができる。振動を抑えることで人体への不快感および周辺装置への影響を抑えることが可能となる。また、振動を抑えることで、機器から発生する音も抑制することが可能である。
なお、上記のような方法により静止状態から起動する場合は、起動時により大きな力が必要となるため、より多くの電流が必要となる。よって電流のピークを抑えるためには、この起動時の加速度を小さくコントロールすることがより効果的である。電気掃除機61に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、加速度を細かくコントロールすることができる。
また、これらの加速方法は、使用者が切り替えることができるように切り替えスイッチを設け、使用者が設定できるようにしてもよい。
ここで、ジャイロセンサを用いた場合の動作について説明する。まず、手動で電源スイッチをオンすることにより、ジャイロセンサが電気掃除機61の動きを検知した信号を出力開始する。ジャイロセンサから電気掃除機61の動きを検知した信号が出力されたときに低速回転が開始される。手動により加速スイッチをオンすることにより低速回転から定常回転数まで回転数が加速される。掃除が一部完了し、次の掃除場所へ移動する際は、手動により加速スイッチをオフすることにより低速回転が再開される。再度掃除する場合は、手動で加速スイッチをオンすることにより定常回転数まで加速され、掃除終了する場合は、手動により電源スイッチをオフすることで回転が停止される。
ジャイロセンサは、電気掃除機61に取り付けられることで、電気掃除機61の使用の際に生ずる電気掃除機61の動きを検知する。電気掃除機61は使用直前に必ず本体が動く。そこで、電気掃除機61にジャイロセンサを取り付けることで、電気掃除機61の動きを検知して電気掃除機61を予め起動することができる。この際、電気掃除機61に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より早く定常回転数まで加速することができる。
図12は、ハンドドライヤー70の構成の一例を示す図である。ハンドドライヤー70は、ケーシング71、手検知センサ72、水受け部73、ドレン容器74、カバー76、センサ77、および吸気口78を備える。ここで、センサ77は、ジャイロセンサおよび人感センサのいずれかである。ハンドドライヤー70では、ケーシング71内に図示しない電動送風機を有する。電動送風機は、実施の形態1から3のいずれかのモータ制御システム1を有する。ハンドドライヤー70では、水受け部73の上部にある手挿入部79に手を挿入することで電動送風機による送風で水を吹き飛ばし、水受け部73からドレン容器74へと水を溜めこむ構造となっている。
センサ77が人感センサである場合の動作を説明する。まず、センサ77により、周囲に人が来たことが検知されてハンドドライヤー70が低速で起動する。人が手を乾かすためにハンドドライヤー70に手をかざしたところで定常回転数まで加速される。乾かしが終わり、手挿入部79から手が外に出たところで低速運転が再開される。低速運転中に次の人の手が検出されると回転数は再度定常回転数まで加速される。周囲の人を検知しなければ運転停止状態が維持される。
センサ77は、例えば赤外線、超音波、または可視光を検知するセンサである。この他に、温度センサまたはカメラ認識で人を検知するセンサを用いてもよい。
人感センサをハンドドライヤー70に取り付けることで、使用者がハンドドライヤー70に近づいたことを検知してハンドドライヤー70を予め起動することができる。この際、ハンドドライヤー70に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より早く定常回転数まで加速することができる。
また、電気掃除機61およびハンドドライヤー70に共通して、一般的にモータは起動時に大きな電流が流れることから、起動回数が増加するに伴ってバッテリーおよび使用素子の信頼性が低下する。よって、モータを停止させることなく低速で回転させ続けることで起動回数を低減することが望まれる。電気掃除機61またはハンドドライヤー70に実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、安定した低速回転を実現することができ、信頼性を向上させることが可能となる。
さらに、低速起動から定常回転数までの到達時間が大幅に短くなることから、回転数を細目に低速回転まで落とすことで消費電力を削減することも可能となる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1によれば、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、モータの回転速度の振動を抑制でき、無駄な消費電力を削減することが可能となる。
一般に、電気掃除機61では、操作部66のスイッチをオンすることで、起動から定常回転数まで到達するが、予め低速運転させておくモードを設けることで、操作部66のスイッチをオンして実際に使用するときまでの時間を大幅に低減することが可能となる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、モータの回転速度の振動を抑制でき、無駄な消費電力を削減することが可能となる。
例えば、電源供給開始から2000rpmまで回転させる時間が1sであり、2000rpmから定常回転数である10万rpmまで回転させる時間が0.4sであるとすると、起動から定常回転数に到達するまでに1.4s必要となる。よって時間がかかる起動を予め行っておくことで、実際に使用する際はスイッチオンから定常回転数までわずか0.4sで実現することが可能となる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より短い起動時間を実現することが可能となる。
また、入力電流の急峻な立ち上がりが発生する起動時においては、加速レートを低めに設定し急峻な立ち上がりを抑制することで、バッテリーの信頼性を向上させることが可能となる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、急峻な立ち上がりが懸念される起動時においても迅速な電流遮断を実現することが可能となる。
また、低速運転までの加速レートを下げることにより起動時のモータへ流れる電流も小さくなることから半導体素子の発熱を抑制することで部品の発熱を抑えることができ、部品の信頼性の向上につながる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、低い加速レート時の振動を抑制することが可能となる。
半導体素子の発熱除去は、通常であれば熱伝導の良い放熱フィンを素子表面に取り付けるか、あるいは表面実装素子を使用して実装基板へ熱を分散させる方法がとられる。また、放熱用のファンを設けて半導体素子に風を当てて冷やすか、あるいは水冷で冷却する方法もあるが、冷却にかかるコストおよび設置体積の増加から、これらの方法は小型の装置には適さない。しかしながら、本実施の形態で説明した電動送風機を備えた電気機器であれば、電動送風機が発生させる風の通り道にこれらの発熱素子を配置することで追加部品を備えることなく、現状の構成で熱を逃がすことが可能となる。
また、追加部品が必要ないことからコストの増加を抑えることが可能となること、および追加部品を備える分のスペースも必要なくなることから更なる小型化を達成することが可能となる。さらに、小型化が可能な分のスペースをバッテリーに割り当てることで運転時間を延長させることも可能となる。このとき、実施の形態1から3のいずれかに記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、運転に不必要な無駄な電力を消費することが少なくなり、より運転時間を延長させることが可能となる。
なお、本実施の形態では、電気掃除機61およびハンドドライヤー70について説明したが、実施の形態1から3のいずれかのモータ制御システム1は、モータが搭載された電気機器一般に適用することができる。モータが搭載された電気機器は、例えば、焼却炉、粉砕機、乾燥機、集塵機、印刷機械、クリーニング機械、製菓機械、製茶機械、木工機械、プラスチック押出機、ダンボール機械、包装機械、熱風発生機、またはOA機器のような電動送風機を備えた機器である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るモータ制御装置は、インバータにより駆動されるモータに用いられるモータ制御装置であって、前記モータに流れる交流電流の検出値であるアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、前記アナログディジタル変換器から前記ディジタル信号が入力され、前記ディジタル信号を用いて前記インバータを駆動する制御回路と、を備え、第1の期間中に、前記アナログディジタル変換器を起動し、第2の期間中に、前記アナログディジタル変換器から前記ディジタル信号を前記制御回路へ入力し、前記第2の期間は、前記交流電流の極性の変化点から前記交流電流の極性の次の変化点までの期間であり、前記第1の期間は、前記第2の期間に含まれ、前記変化点および前記次の変化点を含まない連続する期間である。