以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。また、後述の任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる又は並列に実行できる。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る給電機器1及び電子機器2の概略外観図である。但し、図1(a)は、給電機器1及び電子機器2が離間状態にあるときのそれらの外観図であり、図1(b)は、給電機器1及び電子機器2が基準配置状態にあるときのそれらの外観図である。離間状態及び基準配置状態の意義については後に詳説する。給電機器1及び電子機器2によって非接触給電システムが形成される。給電機器1は、商用交流電力を受けるための電源プラグ11と、樹脂材料にて形成された給電台12と、を備える。
図2に、給電機器1と電子機器2の概略内部構成図を示す。給電機器1は、電源プラグ11を介して入力された商用交流電圧から所定の電圧値を有する直流電圧を生成して出力するAC/DC変換部13と、AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する集積回路である送電側IC100(以下、IC100とも言う)と、IC100に接続された送電側共振回路TT(以下、共振回路TTとも言う)と、を備える。AC/DC変換部13、送電側IC100及び共振回路TTを、給電台12内に配置しておくことができる。AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する回路が、IC100以外にも、給電機器1に設けられうる。
電子機器2は、集積回路である受電側IC200(以下、IC200とも言う)と、IC200に接続された受電側共振回路RR(以下、共振回路RRとも言う)と、二次電池であるバッテリ21と、バッテリ21の出力電圧に基づき駆動する機能回路22と、を備える。詳細は後述するが、IC200はバッテリ21に対して充電電力を供給することができる。IC200は、バッテリ21の出力電圧にて駆動しても良いし、バッテリ21以外の電圧源からの電圧に基づき駆動しても良い。或いは、給電機器1から受信したNFC通信(詳細は後述)のための信号を整流することで得た直流電圧が、IC200の駆動電圧となっても良い。この場合、バッテリ21の残容量が無くなってもIC200は駆動可能となる。
電子機器2は、任意の電子機器であって良く、例えば、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、携帯情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、MP3プレイヤー、歩数計、又は、Bluetooth(登録商標)ヘッドセットである。機能回路22は、電子機器2が実現すべき任意の機能を実現する。従って例えば、電子機器2がスマートホンであれば、機能回路22は、相手側機器との間の通話を実現するための通話処理部、及び、ネットワーク網を介して他機器と情報を送受信するための通信処理部などを含む。或いは例えば、電子機器2がデジタルカメラであれば、機能回路22は、撮像素子を駆動する駆動回路、撮像素子の出力信号から画像データを生成する画像処理回路などを含む。機能回路22は、電子機器2の外部装置に設けられる回路であると考えても良い。
図3に示す如く、共振回路TTは、送電側コイルであるコイルTLと送電側コンデンサであるコンデンサTCとを有し、共振回路RRは、受電側コイルであるコイルRLと受電側コンデンサであるコンデンサRCとを有する。以下では、説明の具体化のため、特に記述無き限り、送電側コイルTL及び送電側コンデンサTCが互いに並列接続されることで共振回路TTが並列共振回路として形成され、且つ、受電側コイルRL及び受電側コンデンサRCが互いに並列接続されることで共振回路RRが並列共振回路として形成されているものとする。但し、送電側コイルTL及び送電側コンデンサTCが互いに直列接続されることで共振回路TTが直列共振回路として形成されていても良いし、受電側コイルRL及び受電側コンデンサRCが互いに直列接続されることで共振回路RRが直列共振回路として形成されていても良い。
図1(b)に示す如く、電子機器2を給電台12上の所定領域内に載置したとき、磁界共鳴方式にて(即ち、磁界共鳴を利用して)、機器1及び2間における通信、送電及び受電が可能となる。磁界共鳴は、磁界共振などとも呼ばれる。
機器1及び2間における通信は、NFC(Near field communication)による無線通信(以下、NFC通信と呼ぶ)であり、通信の搬送波の周波数は13.56MHz(メガヘルツ)である。以下では、13.56MHzを基準周波数と呼ぶ。機器1及び2間におけるNFC通信は、共振回路TT及びRRを利用した磁界共鳴方式で行われるため、共振回路TT及びRRの共振周波数は、共に、基準周波数に設定されている。但し、後述されるように、共振回路RRの共振周波数は、一時的に基準周波数から変更され得る。
機器1及び2間における送電及び受電は、給電機器1から電子機器2に対するNFCによる送電と、電子機器2におけるNFCによる受電である。この送電と受電をまとめてNFC電力伝送又は単に電力伝送と称する。磁界共鳴方式によりコイルTLからコイルRLに対して電力を伝達することで、電力伝送が非接触で実現される。
磁界共鳴を利用した電力伝送では、送電側コイルTLに交流電流を流すことで送電側コイルTLに基準周波数の交番磁界を発生させる。すると、この交番磁界が、基準周波数で共鳴(換言すれば共振)する共振回路RRに伝わって受電側コイルRLに交流電流が流れる。つまり、送電側コイルTLを含む共振回路TTから受電側コイルRLを含む共振回路RRへ電力が伝達される。尚、以下では、記述が省略されることがあるが、NFC通信又は電力伝送においてコイルTL又はコイルRLにより発生する磁界は、特に記述無き限り、基準周波数で振動する交番磁界である。
電子機器2が給電台12上の所定の送電領域内に載置され(給電機器1と電子機器2が所定位置関係にあり)、上述のNFC通信及び電力伝送が実現できる状態を、基準配置状態と呼ぶ(図1(b)参照)。一方、電子機器2が給電台12から十分に離れていて上述のNFC通信及び電力伝送を実現できない状態を、離間状態と呼ぶ(図1(a)参照)。尚、図1(a)に示す給電台12では、表面が平らになっているが、載置されるべき電子機器2の形状に合わせた窪み等が給電台12に形成されていても構わない。基準配置状態は、給電機器1及び電子機器2間における電力の送受電が可能な所定の送電領域(換言すれば、送電及び受電を行うための領域)に電子機器2が存在している状態に属し、且つ、離間状態は、該送電領域に電子機器2が存在していない状態に属すると解して良い。
図4に、IC100の内部ブロック図を含む、給電機器1の一部の構成図を示す。IC100には、符号110、120、130、140、150及び160によって参照される各部位が設けられる。図5に、IC200の内部ブロック図を含む、電子機器2の一部の構成図を示す。IC200には、符号210、220、230、240及び250によって参照される各部位が設けられる。また、IC200に対し、IC200の駆動電圧を出力するコンデンサ23を接続しておいても良い。コンデンサ23は、給電機器1から受信したNFC通信のための信号を整流することで得た直流電圧を出力可能である。
切り替え回路110は、制御回路160の制御の下、NFC通信回路120及びNFC送電回路130のどちらかを共振回路TTに接続させる。共振回路TTと回路120及び130との間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路110を構成することができる。本明細書にて述べる任意のスイッチは、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子を用いて形成されて良い。
切り替え回路210は、制御回路250の制御の下、共振回路RRをNFC通信回路220及びNFC受電回路230のどちらかに接続させる。共振回路RRと回路220及び230との間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路210を構成することができる。
共振回路TTが切り替え回路110を介してNFC通信回路120に接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210を介してNFC通信回路220に接続されている状態を、通信用接続状態と呼ぶ。通信用接続状態にてNFC通信が可能となる。通信用接続状態において、NFC通信回路120は、基準周波数の交流信号(交流電圧)を共振回路TTに供給することができる。機器1及び2間のNFC通信は半二重方式で実行される。
通信用接続状態において給電機器1が送信側であるとき、NFC通信回路120が共振回路TTに供給する交流信号に任意の情報信号を重畳させることで、当該情報信号が給電機器側アンテナコイルとしてのコイルTLから送信され且つ電子機器側アンテナコイルとしてのコイルRLにて受信される。コイルRLにて受信された情報信号はNFC通信回路220にて抽出される。通信用接続状態において電子機器2が送信側であるとき、NFC通信回路220は、任意の情報信号(応答信号)を共振回路RRのコイルRLから共振回路TTのコイルTLに送信できる。この送信は、周知の如く、ISO規格(例えばISO14443規格)に基づき、コイルTL(給電機器側アンテナコイル)から見たコイルRL(電子機器側アンテナコイル)のインピーダンスを変化させる負荷変調方式にて実現される。電子機器2から伝達された情報信号はNFC通信回路120にて抽出される。
共振回路TTが切り替え回路110を介してNFC送電回路130に接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210を介してNFC受電回路230に接続されている状態を、給電用接続状態と呼ぶ。
給電用接続状態において、NFC送電回路130は送電動作を行うことができ、NFC受電回路230は受電動作を行うことができる。送電動作と受電動作にて電力伝送が実現される。送電動作において、送電回路130は、共振回路TTに基準周波数の送電用交流信号(送電用交流電圧)を供給することで送電側コイルTLに基準周波数の送電用磁界(送電用交番磁界)を発生させ、これによって、共振回路TT(送電側コイルTL)から共振回路RRに対し磁界共鳴方式で電力を送電する。送電動作に基づき受電側コイルRLにて受電された電力は受電回路230に送られ、受電動作において、受電回路230は、受電した電力から任意の直流電力を生成して出力する。受電回路230の出力電力にてバッテリ21を充電することができる。
通信用接続状態にてNFC通信を行う場合も、コイルTL又はRLにて磁界が発生するが、NFC通信における磁界強度は、所定の範囲内に収まる。その範囲の下限値及び上限値は、NFCの規格で定められ、夫々、1.5A/m、7.5A/mである。これに対し、電力伝送(即ち送電動作)において送電側コイルTLにて発生する磁界の強度(送電用磁界の磁界強度)は、上記の上限値より大きく、例えば45〜60A/m程度である。機器1及び2を含む非接触給電システムにおいて、NFC通信及び電力伝送(NFC電力伝送)を交互に行うことができ、その時の磁界強度の様子を図6に示す。
負荷検出回路140は、送電側コイルTLの負荷の大きさ、即ち、送電回路130から送電側コイルTLに交流信号が供給されるときにおける送電側コイルTLにとっての負荷の大きさを検出する。図7に、給電用接続状態における送電回路130と負荷検出回路140と共振回路TTとの関係を示す。尚、図7では、切り替え回路110の図示が省略されている(後述の図12においても同様)。
送電回路130は、一対の出力端子TM1及びTM2間に交流電圧を出力できる。共振回路TTは一対の入力端子TM3及びTM4を有し、給電用接続状態において、端子TM3、TM4は夫々端子TM1、TM2に接続される。また、共振回路TTにおいてコンデンサMTCが挿入されている。コンデンサMTCは、送電回路130から共振回路TTを見たインピーダンス値を所望値にするためのインピーダンス整合用コンデンサである。該所望値はここでは50Ωであるとする。第1実施形態におけるインピーダンスとは、特に記述無き限り、基準周波数におけるインピーダンスを指す。
端子TM3はコンデンサMTCの一端に接続され、コンデンサMTCの他端はコンデンサTC及びコイルTLの各一端に接続され、コイルTLの他端はセンス抵抗141を介してコンデンサTCの他端及び端子TM4に接続される。負荷検出回路140は、センス抵抗141、包絡線検波器142、増幅器143及びA/D変換器144を備える。
送電動作は、送電回路130が共振回路TTに(即ち端子TM3及びTM4間)に交流電圧(送電用交流電圧)を供給することで実現される。給電用接続状態において、送電回路130から交流電圧が共振回路TTに供給されると送電側コイルTLに基準周波数の交流電流が流れ、結果、センス抵抗141に交流の電圧降下が発生する。図8の実線波形は、センス抵抗141における電圧降下の電圧波形である。共振回路TTに関し、送電側コイルTLの発生磁界強度が一定の下、電子機器2を給電台12に近づけると、送電側コイルTLの発生磁界に基づく電流が受電側コイルRLに流れる一方で、受電側コイルRLに流れた電流に基づく逆起電力が送電側コイルTLに発生し、その逆起電力は送電側コイルTLに流れる電流を低減するように作用する。このため、図8に示す如く、基準配置状態におけるセンス抵抗141の電圧降下の振幅は、離間状態におけるそれよりも小さい。
包絡線検波器142は、センス抵抗141における電圧降下の信号の包絡線を検波することで、図8の電圧vに比例するアナログの電圧信号を出力する。増幅器143は、包絡線検波器142の出力信号を増幅して出力する。A/D変換器144は、増幅器143の出力電圧信号をデジタル信号に変換することでデジタルの電圧値VDを出力する。上述の説明から理解されるように、電圧値VDは、センス抵抗141に流れる電流の振幅(従って、送電側コイルTLに流れる電流の振幅)に比例する値を持つ(当該振幅の増大に伴って電圧値VDも増大する)。故に、負荷検出回路140は、送電側コイルTLに流れる電流の振幅を検出する電流振幅検出回路であるとも言え、その振幅検出値が電圧値VDであると考えることができる。尚、包絡線検波器142を増幅器143の後段に設けるようにしても良い。但し、図7に示す如く、包絡線検波器142を増幅器143の前段に設けた方が、高周波への応答性能がより低いものを増幅器143として採用可能となり有利である。
磁界を発生させる送電側コイルTLにとって、受電側コイルRLのような、送電側コイルTLと磁気結合するコイルは、負荷であると考えることができ、その負荷の大きさに依存して、負荷検出回路140の検出値である電圧値VDが変化する。このため、負荷検出回路140は電圧値VDの出力によって負荷の大きさを検出している、と考えることもできる。ここにおける負荷の大きさとは、送電の際における送電側コイルTLにとっての負荷の大きさとも言えるし、送電の際における給電装置1から見た電子機器2の負荷としての大きさとも言える。尚、センス抵抗141はIC100の内部に設けられても良いし、IC100の外部に設けられても良い。
メモリ150(図4参照)は、不揮発性メモリから成り、任意の情報を不揮発的に記憶する。制御回路160は、IC100内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路160が行う制御には、例えば、切り替え回路110の切り替え動作の制御、通信回路120及び送電回路130による通信動作及び送電動作の内容制御及び実行有無制御、負荷検出回路140の動作制御、メモリ150の記憶制御及び読み出し制御が含まれる。制御回路160は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。
電子機器2における共振状態変更回路240(図5参照)は、共振回路RRの共振周波数を基準周波数から他の所定周波数fMに変更する(変更可能な)共振周波数変更回路、又は、共振回路RRにおける受電側コイルRLを短絡する(短絡可能な)コイル短絡回路である。
図9の共振周波数変更回路240Aは、共振状態変更回路240としての共振周波数変更回路の例である。共振周波数変更回路240Aは、コンデンサ241とスイッチ242の直列回路から成り、該直列回路の一端はコンデンサRC及びコイルRLの各一端に共通接続される一方、該直列回路の他端はコンデンサRC及びコイルRLの各他端に共通接続される。スイッチ242は、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ242がオフのとき、コンデンサ241はコンデンサRC及びコイルRLから切り離されるため、共振回路RRは、寄生インダクタンス及び寄生容量を無視すれば、コイルRL及びコンデンサRCのみで形成されて、共振回路RRの共振周波数は基準周波数と一致する。即ち、スイッチ242がオフのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、コンデンサRCそのものである。スイッチ242がオンのとき、コンデンサRCにコンデンサ241が並列接続されることになるため、共振回路RRはコイルRLとコンデンサRC及び241の合成容量とで形成され、結果、共振回路RRの共振周波数は基準周波数よりも低い周波数fMとなる。即ち、スイッチ242がオンのとき、共振回路RRの共振周波数を決定する受電側容量は、上記の合成容量である。ここでは、スイッチ242がオンのとき共振回路RRが送電側コイルTLの負荷として機能しない程度に(即ち、共振回路TT及びRR間で磁気共鳴が十分に発生しない程度に)、周波数fMが基準周波数から離れているものとする。例えば、スイッチ242のオンのときにおける共振回路RRの共振周波数(即ち周波数fM)は、数100kHz〜1MHzとされる。
共振回路RRの共振周波数を周波数fMに変更できる限り、変更回路240としての共振周波数変更回路は共振周波数変更回路240Aに限定されず、周波数fMは基準周波数より高くても良い。例えば、共振周波数変更回路はコイルRL及びコンデンサRCを接続する電流ループ上に直列に挿入されたスイッチのオン、オフによって、コイルRL及びコンデンサRC間の接続、非接続を切り替える回路であっても良い(非接続とされた場合、コイルRLと配線の寄生容量等とで共振回路RRの共振周波数(>>基準周波数)が定まる)。つまり、受電側共振回路RRが直列共振回路でありうることをも考慮すれば、以下のことが言える。受電側共振回路RRは受電側コイル(RL)と受電側容量の並列回路又は直列回路を有し、受電側容量が所定の基準容量と一致しているとき、受電側共振回路RRの共振周波数fOは基準周波数と一致する。共振周波数変更回路は、必要なタイミングにおいて、受電側容量を基準容量から増加又は減少させる。これにより、受電側共振回路RRにおいて、受電側コイル(RL)と、基準容量より大きい又は小さい受電側容量とで、並列回路又は直列回路が形成され、結果、受電側共振回路RRの共振周波数fOが基準周波数から変更される。
図10のコイル短絡回路240Bは、共振状態変更回路240としてのコイル短絡回路の例である。コイル短絡回路240Bは、共振回路RRにおけるコンデンサRCの一端及びコイルRLの一端が共通接続されるノードと、共振回路RRにおけるコンデンサRCの他端及びコイルRLの他端が共通接続されるノードとの間に接続(挿入)されたスイッチ243から成る。スイッチ243は、制御回路250の制御の下、オン又はオフとなる。スイッチ243がオンとなると共振回路RRにおけるコイルRLが短絡される(より詳細にはコイルRLの両端が短絡される)。受電側コイルRLが短絡された状態では受電側共振回路RRが存在しなくなる(受電側共振回路RRが存在しない状態と等価な状態となる)。従って、受電側コイルRLの短絡中では、送電側コイルTLにとっての負荷が十分に軽くなる(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となる)。受電側コイルRLを短絡できる限り、変更回路240としてのコイル短絡回路はコイル短絡回路240Bに限定されない。
以下では、受電側共振回路RRの共振周波数fOを基準周波数から所定周波数fMに変更する動作を、共振周波数変更動作と呼び、コイル短絡回路を用いて受電側コイルRLを短絡する動作を、コイル短絡動作と呼ぶ。また、記述の簡略化上、共振周波数変更動作又はコイル短絡動作をfO変更/短絡動作と称することがある。
制御回路250(図5参照)は、IC200内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路250が行う制御には、例えば、切り替え回路210の切り替え動作の制御、通信回路220及び受電回路230による通信動作及び受電動作の内容制御及び実行有無制御、変更回路240の動作制御が含まれる。制御回路250は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。例えば、制御回路250におけるタイマは、fO変更/短絡動作による共振周波数fOの所定周波数fMへの変更又は受電側コイルRLの短絡が維持される時間の計測(即ち後述の時間TMの計測;図22のステップS207参照)を行うことできる。
ところで、給電機器1の制御回路160は、給電台12上における異物の存否を判断し、異物が無い場合にのみ送電動作を行うよう送電回路130を制御できる。第1実施形態における異物は、電子機器2及び電子機器2の構成要素(受電側コイルRLなど)と異なり、給電機器1に近づいたときに、送電側コイルTLの発生磁界に基づいて電流(異物内での電流)を発生させられる物体を含む。第1実施形態において、異物の存在とは、送電側コイルTLの発生磁界に基づく、無視できない程度の電流が異物内で流れるような位置に異物が存在することを意味する、と解して良い。尚、送電側コイルTLの発生磁界に基づき異物内で流れることになった電流は、異物に対向、結合するコイル(TLやRL)に起電力(又は逆起電力)を発生させるため、そのコイルを含む回路の特性に無視できない影響を与えうる。
図11(a)に、異物の一種である異物3の概略外形図を示し、図11(b)に異物3の概略内部構成図を示す。異物3は、コイルJL及びコンデンサJCの並列回路から成る共振回路JJと、共振回路JJに接続された異物内回路300と、を備える。共振回路JJの共振周波数は基準周波数に設定されている。異物3は、電子機器2とは異なり、給電機器1に対応しない機器である。例えば、異物3は、NFC通信に応答しない13.56MHzのアンテナコイル(コイルJL)を持つ無線ICタグを有した物体(非接触ICカード等)である。また例えば、異物3は、NFC通信機能自体は有しているものの、その機能が無効とされている電子機器である。例えば、NFC通信機能を有するスマートホンではあるが、ソフトウェア設定で当該機能をオフにされているスマートホンは、異物3となりうる。また、NFC通信機能が有効となっているスマートホンでも、受電機能を持たないスマートホンも異物3に分類される。
このような異物3が給電台12上に配置されている状態において、仮に、給電機器1が送電動作を行うと、送電側コイルTLが発生した強磁界(例えば、12A/m以上の磁界強度を持つ磁界)にて異物3が破壊されることがある。例えば、送電動作時における強磁界は、給電台12上の異物3のコイルJLの端子電圧を100V〜200Vまで増大させることもあり、そのような高電圧に耐えられるように異物3が形成されていなければ、異物3が破壊される。
[送電回路の構成例]
図12に、このような異物の存否検出に適し且つ高効率の動作を実現する送電回路130の構成例を示す。図12には、給電機器1に設けられた、送電回路130以外の幾つかの回路も示されている。図12では、図7と同様に給電用接続状態が想定されている。
図12の送電回路130は、基準周波数の矩形波信号であるクロック信号を生成及び出力する発振回路410と、発振回路410からのクロック信号に同期する信号をドライブ回路430に供給するか否かを切り替えるイネーブル回路420と、イネーブル回路420からクロック信号に同期する信号が供給されたとき、クロック信号に同期するドライブ信号をE級増幅器440に供給することでE級増幅器440を駆動するドライブ回路430と、直流電源VS1から供給される直流電圧VINを基準周波数の矩形波信号であるドライブ信号を用いてスイッチングすることにより基準周波数の交流電圧VEを生成及び出力するE級増幅器440と、E級増幅器440と送電側共振回路TTとの間に挿入され、E級増幅器440の出力電圧VE又はE級増幅器440の出力電圧VEを分圧して得た電圧を選択的に共振回路TTに供給する選択分圧回路450と、を備える。
ブロック410〜450の回路構成例について更に説明する。
発振回路410は、符号411〜415によって参照される各部位を備える。発振子411は、水晶発振子又はセラミック発振子にて構成された、基準周波数の発振出力を得る発振子である。抵抗412は発振子411に並列接続される。発振子411の一端はインバータ回路(論理否定回路)413の入力端子に接続されると共にコンデンサ414を介してグランドに接続され、発振子411の他端はインバータ回路413の出力端子に接続されると共にコンデンサ415を介してグランドに接続される。グランドは0V(ボルト)の基準電位を有する。インバータ回路413の出力端子から、基準周波数の矩形波信号であって、デューティが50%のクロック信号が出力される。
イネーブル回路420は、符号421〜424によって参照される各部位を備える。トランジスタ421は、Nチャンネル型のMOSFET(MOS電界効果トランジスタ;metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として形成されている。トランジスタ421において、ゲートにはイネーブル信号ENが供給され、ドレインはインバータ回路423の入力端子に接続されると共に抵抗422を介して直流電圧LVINが加わる端子に接続され、ソースはグランドに接続される。所定の正の直流電圧値を有する直流電圧VIN、LVINは、夫々、給電機器1内(例えばIC100内)に設けられた直流電源VS1、VS2にて生成される。送電回路130内の各論理回路は直流電圧LVINに基づき駆動する。2入力のNAND回路(否定論理積回路)424の第1、第2入力端子には、夫々、インバータ回路413、423の出力信号が入力される。
ドライブ回路430は、インバータ回路431から成る。インバータ回路431の入力端子に、NAND回路424の出力信号が供給される。
E級増幅器440は、符号441〜445によって参照される各部位を備える。トランジスタ441は、Nチャンネル型のMOSFETとして形成されている。トランジスタ441において、ゲートにはインバータ回路431の出力信号が供給され、ドレインはノードNDに接続され、ソースはグランドに接続される。チョークコイル442の一端はノードNDに接続され、チョークコイル442の他端には直流電圧VINが印加される。つまり、チョークコイル442は直流電源VS1とトランジスタ441との間に直列に介在する。また、ノードNDはコンデンサ443の一端に接続され、コンデンサ443の他端はグランドに接続される。つまり、コンデンサ443はトランジスタ441に並列接続されている。加えて、ノードNDはコンデンサ444及びコイル445から成るLC共振回路の一端に接続され、該LC共振回路の他端であるE級増幅器440の出力端子446とグランドとの間にE級増幅器440の出力電圧VEが現れる。より具体的には、ノードNDはコンデンサ444の一端に接続され、コンデンサ444の他端はコイル445の一端に接続され、コイル445の他端は端子446に接続される。コンデンサ444とコイル445の配置位置を逆にしても構わない。
選択分圧回路450は、符号451〜454によって参照される各部位を備える。端子446は、スイッチ452と抵抗451との並列回路の一端に接続され、該並列回路の他端が端子TM1に接続される。また、端子446は、抵抗453とスイッチ454との直列回路の一端に接続され、該直列回路の他端はグランドに接続される。端子TM2はグランドに接続される。尚、図12では、選択分圧回路450の状態が後述の直結状態(図14(a)参照)とされている様子が示されている。
制御回路160は、ローレベル又はハイレベルのイネーブル信号ENを選択的にトランジスタ421のゲートに供給する。
トランジスタ421のゲートに供給されたイネーブル信号ENのレベルがハイレベルであるとき、トランジスタ421のオンを通じてNAND回路424からクロック信号の反転信号である反転クロック信号が出力され、結果、インバータ回路431からトランジスタ441のゲートに、基準周波数の矩形波信号であって、デューティが50%のドライブ信号が供給される。ドライブ信号は、実質的に、クロック信号と同じ信号である。
トランジスタ421のゲートに供給されたイネーブル信号ENのレベルがローレベルであるとき、トランジスタ421のオフを通じてNAND回路424の出力信号はハイレベルに維持され、結果、トランジスタ441のゲートの電位がローレベルに維持されてトランジスタ441はオフのままとなる(従ってE級増幅器440の動作が停止してE級増幅器440からは交流電圧が出力されない)。
尚、トランジスタ441は複数のトランジスタの並列回路にて構成されていても良いし、これに対応して、インバータ回路431は複数のインバータ回路の並列回路にて構成されていても良い。また、図12にて、送電回路130内の構成要素として示された部品の幾つか(例えば発振子411やE級増幅器440内のコイル)は、IC100の外部に設けられうる。
図13を参照し、E級増幅器440の動作について説明する。図13は、E級増幅器440に関連する信号の波形を表している。尚、以下では、特に記述無き限り、トランジスタ421のゲートにハイレベルのイネーブル信号ENが供給されているものとする。
トランジスタ441のゲートに供給されるドライブ信号によって、トランジスタ441はオン、オフのスイッチング動作を繰り返す。この繰り返しの中で、今、トランジスタ441がオンからオフに切り替わったとする。トランジスタ441がオフに切り替わっても、チョークコイル442の作用によりチョークコイル442からノードNDに向けて電流が流れ続けるため、コンデンサ443に電荷が溜まることでノードNDの電位が上昇する。暫くすると、ノードNDの電位上昇は収まって、ノードNDの電位が下降してゆく。これは、コンデンサ443に溜まった電荷が、コンデンサ444及びコイル445から成る共振回路に向けて流れてゆくためである。
ここで、E級増幅器440を最適な効率(換言すれば最小の損失)で動作させるためには、トランジスタ441をオフからオンに切り替える際に、以下の第1及び第2E級動作条件が満さたされている必要がある。第1E級動作条件は、トランジスタ441をオフからオンに切り替えるタイミングにおいて、ノードNDでの電位が実質的に0Vであるという条件である。第2E級動作条件は、トランジスタ441をオフからオンに切り替えるタイミングにおいて、ノードNDでの電圧波形の傾きが実質的に0であるという条件である。これらの条件が満たされるとき、正弦波の波形を有する基準周波数の交流電圧VEが、低損失にて生成される。第1及び第2E級動作条件が満たす交流電圧VEの生成動作をE級増幅動作と称する。
E級増幅動作が実現されるか否かは、コイル442及び445のインダクタンス並びにコンデンサ443及び444の静電容量に依存する。E級増幅器440を高効率(低損失)で動作させ、以ってシステム全体として高効率の電力伝送が実現されるべく、コイル442及び445のインダクタンス並びにコンデンサ443及び444の静電容量を、E級増幅動作が実現されるように予め設定しておけば良い。より具体的には例えば、基準配置状態にて電子機器2が給電台12上に配置されて送電動作が実行されているときにE級増幅動作が実現されるように、及び/又は、離間状態にてE級増幅動作が実現されるように、コイル442及び445のインダクタンス並びにコンデンサ443及び444の静電容量を予め設定しておけば良い。
図14(a)及び(b)を参照し、選択分圧回路450の動作及び機能について説明する。制御回路160は、スイッチ452及び454の夫々のオン、オフを制御することで、選択分圧回路450の状態を直結状態又は分圧状態にすることができる。図14(a)、(b)は、夫々、直結状態、分圧状態における選択分圧回路450を示している。尚、以下、直結状態、分圧状態とは、特に記述無き限り、夫々、切り替え回路110が給電用接続状態であるときの直結状態、分圧状態を意味する。
直結状態では、スイッチ452がオンとされ且つスイッチ454がオフとされる。このため、直結状態では、E級増幅器440の出力端子446が端子TM1を介して端子TM3に直接接続され(図12も参照)、結果、E級増幅器440の出力電圧VEそのものが共振回路TTに供給される。上述したように、インピーダンス整合用コンデンサMTCによって送電回路130から共振回路TTを見たインピーダンス値は50Ωとされている。故に、直結状態では、E級増幅器440から選択分圧回路450及び共振回路TTを見たインピーダンス値も、異物等の影響を無視すれば、50Ωとなる(異物等の影響については後述)。
分圧状態では、スイッチ452がオフとされ且つスイッチ454がオンとされる。このため、給電用接続状態且つ分圧状態では、E級増幅器440の出力端子446が抵抗451を介して端子TM1及びTM3に接続されるようになり(図12も参照)、結果、E級増幅器440の出力電圧VEを分圧して得た電圧(以下、分圧電圧VE’という)が共振回路TTに供給される。抵抗451、453の抵抗値は、夫々、450Ω、55Ωに設定されている。また、上述したように、インピーダンス整合用コンデンサMTCによって、送電回路130から共振回路TTを見たインピーダンス値は50Ωとされている。故に、分圧状態において、E級増幅器440から選択分圧回路450及び共振回路TTを見たインピーダンス値は、異物等の影響を無視すれば、“(1/55+1/(450+50))−1≒50”より、約50Ωとなる(異物等の影響については後述)。上述の抵抗値に基づき、分圧電圧VE’の振幅は出力電圧VEの振幅の1/10となる。そうすると、分圧状態においてE級増幅器440から共振回路TTに供給される電力は、直結状態のそれの1/100となる。尚、ここで示す分圧比(VE及びVE’間の振幅比)は例示に過ぎず、様々に変更されうる。
給電機器1では、異物の存否を検出するための異物検出処理を実行できる。異物検出処理の内、電力伝送の実行前に行われる異物検出処理をpFOD処理と称する。送電側コイルTLにて磁界を発生させているときに異物を給電台12上に載せると、送電側コイルTLの発生磁界に基づく電流が異物内に流れ、その異物内の電流の流れは共振回路TT内に電圧を発生させて送電側コイルTLの電流振幅に変化(以下、便宜上、検出対象電流振幅変化と称する)を与える。この検出対象電流振幅変化を観測することで異物の存否を判断できる。しかしながら、pFOD処理において大きな磁界を発生させると、上述したように異物の破壊等が懸念される。
そこで、送電動作の実行時における直流電圧VINと比べ、pPOD処理において、直流電圧VINを低下させ、この低下が行われた状態でE級増幅器440から出力される交流電圧VEを共振回路TTに供給するという方策(以下、VIN低下方策という)も考えられる。VIN低下方策では、第1実施形態の構成と異なり、送電回路130から選択分圧回路450が削除され、E級増幅器440の出力端子446が端子TM1及びTM3(図12も参照)に直結される。VIN低下方策によれば異物の破壊等が回避されるかもしれないが、高効率動作を実現すべく送電回路130にE級増幅器440を採用しているため、以下のような懸念が生じる。
即ち、検出対象電流振幅変化をもたらすような位置に異物が存在すると、異物及び送電側コイルTL間の磁気結合等を通じて、E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値が50Ωからずれる。E級増幅器440は、E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値が50Ωであることを前提にE級増幅動作を行うよう設計されているため、該インピーダンス値が50Ωからずれると、該インピーダンス値が50Ωであるときとの比較において、E級増幅器440の出力が変化する。ここにおける出力の変化は、E級増幅器440の出力電圧VEの振幅の変化、出力電圧VEの波形の変化を含む。上記インピーダンス値が50Ωからずれることに基づきE級増幅器440の出力が変化すると、送電側コイルTLの電流振幅に変化が生じる。このE級増幅器440の出力変化に基づく、送電側コイルTLの電流振幅変化を、便宜上、ノイズ電流振幅変化と称する。ノイズ電流振幅変化の存在は、異物検出のために本来観測されるべき検出対象電流振幅変化の検知に対し阻害要因となる。
仮に、ノイズ電流振幅変化による電流振幅の変化量及び変化方向が一意に定まっているならば、ノイズ電流振幅変化の分を加味することでpFOD処理による異物検出を高精度で行うことができる。しかしながら、実際には、異物の種類及び異物の給電台12への置き方などに依存して、ノイズ電流振幅変化による電流振幅の変化量及び変化方向は様々となる(即ち、ノイズ電流振幅変化において、送電側コイルTLの電流振幅が増大することもあるし減少することもあり、その増大量及び減少量も様々となる)。故に、ノイズ電流振幅変化はpFOD処理による異物検出の精度を低下させる。
これらを考慮し、第1実施形態では、VIN低下方策ではなく、選択分圧回路450を用いてノイズ電流振幅変化の影響を軽減する。即ち、第1実施形態では、直流電圧VINの電圧値を固定し、送電動作の実行時には選択分圧回路450の状態を直結状態にすることでE級増幅器440が出力可能な最大電力を共振回路TTに供給する一方、pFOD処理においては選択分圧回路450の状態を分圧状態とする。分圧状態において、E級増幅器440から選択分圧回路450及び共振回路TTを見たインピーダンスは、抵抗451の抵抗値:450Ωによるインピーダンス成分と、端子TM3及びTM4よりも後段の回路のインピーダンス成分(異物等の存在を無視すれば50Ω)とで構成される。概ね90%を占める前者のインピーダンス成分は異物の存否に依らず一定であるため、分圧状態において、異物の存在によるインピーダンス値(E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値)の変化は、直結状態の1/10程度となる。結果、分圧状態においてノイズ電流振幅変化が検出対象電流振幅変化に与える影響は、直結状態のそれの約1/10となる。尚、ここにおける“1/10”等の数値は、分圧比(VE及びVE’間の振幅比)の変化に伴って変化することは言うまでもない。
[pFOD処理(電力伝送前のpFOD処理)]
図15を参照し、上述の内容を踏まえたpFOD処理を説明する。図15は、pFOD処理のフローチャートである。
pFOD処理の実行時には送電回路130が共振回路TTに接続される。その上で、まずステップS11にて分圧状態とされる。そうすると、ステップS12にて分圧電圧VE’がテスト用交流電圧としてE級増幅器440から選択分圧回路450を介し共振回路TTに供給され、結果、所定のテスト強度を磁界強度Hとするテスト磁界が送電側コイルTLにて発生される。磁界強度Hは、送電側コイルTLの発生磁界強度であって、より詳しくは、送電側コイルTLが発生した基準周波数で振動する交番磁界の磁界強度を指す。テスト磁界の磁界強度であるテスト強度は、電力伝送(即ち送電動作)における送電側コイルTLの発生磁界強度(即ち送電用磁界の磁界強度;例えば、45〜60A/m)よりも相当に小さく、例えば、通信用磁界強度の下限値“1.5A/m”から上限値“7.5A/m”までの範囲内に収まる。故に、テスト磁界によって異物3が破損等するおそれは無い又は少ない。
ステップS12に続くステップS13において、制御回路160は、負荷検出回路140を用い、テスト磁界を発生させているときの電圧値VDを電流振幅検出値VpFODとして取得する。電流振幅検出値VpFODは、テスト磁界を送電側コイルTLに発生させているときの、送電側コイルTLに流れる電流の振幅に応じた値を持つ。尚、pFOD処理が実行される期間中には、NFC通信を介した給電機器1からの指示に従い電子機器2においてfO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)が実行されている。故に、共振回路RR(受電側コイルRL)は実質的に送電側コイルTLの負荷として機能せず、電流振幅検出値VpFODの減少を全く又は殆どもたらさない。
ステップS13に続くステップS14において、制御回路160は、電流振幅検出値VpFODが所定のpFOD正常範囲内に収まるか否かを判断する。そして、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まる場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していないと判定する(ステップS15)。この判定を異物無判定と称する。一方、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲を逸脱する場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していると判定する(ステップS16)。この判定を異物有判定と称する。異物無判定又は異物有判定を経て選択分圧回路450の状態が直結状態とされた後(ステップS17)、pFOD処理を終える。制御回路160は、異物無判定を成した場合、送電回路130による送電動作の実行が可能であると判断して送電動作の実行(共振回路TTを用いた送電)を許可し、異物有判定を成した場合、送電回路130による送電動作の実行が不可であると判断して送電動作の実行を禁止する。送電動作では、選択分圧回路450の状態が直結状態とされ、交流電圧VEが送電用交流電圧としてE級増幅器440から選択分圧回路450を介し共振回路TTに供給されることで、所定の送電用磁界が送電側コイルTLにて発生される。
pFOD正常範囲は、所定の下限値VpREFL以上且つ所定の上限値VpREFH以下の範囲である(0<VpREFL<VpREFH)。故に、判定不等式“VpREFL≦VpFOD≦VpREFH”が満たされる場合には異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3が存在している場合、異物3の共振回路JJ(コイルJL)が送電側コイルTLの負荷として機能し、結果、給電台12上に異物3が存在しない場合と比べて、電流振幅検出値VpFODの減少がみられる。
また、異物として、異物3と異なる異物3a(不図示)も考えられる。異物3aは、例えば、アルミニウムを含んで形成された金属体(アルミニウム箔やアルミニウム板)や銅を含んで形成された金属体である。pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3aが存在している場合、給電台12上に異物3aが存在しない場合と比べて、電気的及び磁気的な作用により、電流振幅検出値VpFODの増大がみられる。
電力伝送の実行前において、給電台12上に異物3が存在している場合には電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回るように、且つ、給電台12上に異物3aが存在している場合には電流振幅検出値VpFODが上限値VpREFHを上回るように、且つ、給電台12上に異物(3又は3a)が存在していない場合には電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まるように、実験等を介して、下限値VpREFL及び上限値VpREFHが予め設定されてメモリ150に記憶されている。
尚、給電台12上に異物3aが存在する状態で送電用磁界を発生させると、異物3aにて電力が吸収され、異物3aが発熱するおそれがある。第1実施形態では、電力伝送の搬送波周波数としての基準周波数が13.56MHzであることを想定しているため、そのような発熱のおそれは十分に少ないとも言える。故に、異物3aの存在を考慮することなく、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回った場合に限って異物有判定を行い、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFL以上であれば常に異物無判定を行うようにしてもよい(即ち上限値VpREFHを撤廃しても良い)。しかしながら、第1実施形態に係る発明において基準周波数は13.56MHzに限定されず、基準周波数を例えば数100kHz程度にした場合には、異物3aの発熱のおそれが高くなるため、下限値VpREFLだけでなく上限値VpREFHをpFOD正常範囲に定める、上述の方法の採用が望ましい。
下限値VpREFLの決定方法について説明を加えておく。下限値VpREFLは初期設定処理にて決定される。図16は、初期設定処理の動作フローチャートである。初期設定処理は、以下の初期設定環境の下でIC100により実行される。初期設定環境では、送電側コイルTLに対する負荷が全く無く又は無視できる程度に小さく、送電側コイルTLの発生磁界により電流を生じさせられる物体(送電側コイルTLに磁気結合するコイルを含む)が、給電機器1の構成部品を除いて存在しない。図1(a)の離間状態は、初期設定環境を満たすと考えても良い。初期設定環境の確保を担保すべく、例えば、給電機器1の製造時又は出荷時などにおいて初期設定処理を行うようにしても良い。但し、初期設定環境を確保できるのであれば、任意のタイミングで初期設定処理を行うことができる。
初期設定処理の実行時には送電回路130が共振回路TTに接続される。その上で、まずステップS21にて分圧状態とされる。そうすると、ステップS22にて分圧電圧VE’がテスト用交流電圧としてE級増幅器440から選択分圧回路450を介し共振回路TTに供給され、結果、所定のテスト強度を磁界強度Hとするテスト磁界が送電側コイルTLにて発生される。ステップS22に続くステップS23において、制御回路160は、負荷検出回路140を用い、テスト磁界を発生させているときの電圧値VDを電圧値VDOとして得る。その後のステップS24において、電圧値VDOに基づく下限値VpREFLをメモリ150に記憶させる。下限値VpREFLは、異物3の存在下においてのみpFOD処理にて異物有判定が成されるよう、電圧値VDOよりも低い値に設定される。例えば、“VpREFL=VDO−ΔV”、又は、“VpREFL=VDO×k”とすると良い。ΔVは、所定の正の微小値である(但し、ΔV=0とすることも可能)。kは、1未満の正の所定値を有する係数である。尚、初期設定環境下において磁界強度Hを所定のテスト強度に設定したときに得られるであろう電圧値VDを、設計段階で見積もることができる。この見積によって導出された値に基づき、初期設定処理を行うことなく、下限値VpREFLを決定してメモリ150に記憶させるようにしても良い。
図17(a)〜図17(d)を参照して、異物3の検出に関する第1〜第4ケースを考える。第1ケースでは、給電台12上に電子機器2のみが存在している。第2ケースでは、給電台12上に電子機器2及び異物3が存在している。第3ケースでは、給電台12上に異物3のみが存在している。第4ケースでは、給電台12上に電子機器2も異物3も存在していない。
上述したように、pFOD処理が実行される期間中には電子機器2においてfO変更/短絡動作が実行されているため、第1ケースでは、送電側コイルTLにとっての負荷が十分に軽くなり(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となり)、電流振幅検出値VpFODが十分に大きくなって異物無判定が成される。一方、第2ケースでは、共振回路RRの共振周波数が上記周波数fMへと変更されるものの又は受電側コイルRLが短絡されるものの、異物3は送電側コイルTLの負荷として存在し続けるため(異物3の共振回路JJの共振周波数は基準周波数のままであるため)、電流振幅検出値VpFODが十分に小さくなって異物有判定が成される。
第3及び第4ケースでは、NFC通信に応答する電子機器2が給電台12上に存在しないため、そもそも送電動作は不要であり、従ってpFOD処理自体が実行されない。給電機器1は、NFC通信により、電力伝送に対応可能な電子機器2が給電台12上に存在しているか否かを判断できる。尚、異物3が給電台12上に存在する状態は、異物3が給電台12に直接接触している状態に限定されない。例えば、図18に示す如く、給電台12上に電子機器2が直接接触する形で存在し且つ電子機器2の上に異物3が存在しているような状態も、異物有判定が成される限り、異物3が給電台12上に存在する状態に属する。
[電力伝送までの信号のやりとり:図19]
図19を参照して、電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりを説明する。第1実施形態において、以下では、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。
まず、給電機器1が送信側且つ電子機器2が受信側となり、給電機器1(IC100)が、NFC通信によって、問い合わせ信号510を給電台2上の機器(以下、給電対象機器とも言う)に送信する。給電対象機器は、電子機器2を含み、異物3を含みうる。問い合わせ信号510は、例えば、給電対象機器の固有識別情報を問い合わせる信号、給電対象機器がNFC通信を実行可能な状態にあるかを問い合わせる信号、及び、給電対象機器が電力を受け取れるか又は電力の送電を求めているかを問い合わせる信号を含む。
問い合わせ信号510を受信した電子機器2(IC200)は、問い合わせ信号510の問い合わせ内容に答える応答信号520を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、テスト用要求信号530をNFC通信によって給電対象機器に送信する。テスト用要求信号530を受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200)は、テスト用要求信号530に対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから、速やかに、fO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)を実行する。テスト用要求信号530は、例えば、fO変更/短絡動作の実行を要求、指示する信号であり、電子機器2の制御回路250は、テスト用要求信号530の受信を契機としてfO変更/短絡動作を共振状態変更回路240に実行させる。テスト用要求信号530の受信前においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。fO変更/短絡動作の実行の契機となるならばテスト用要求信号530はどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
応答信号540を受信した給電機器1(IC100)は、上述のpFOD処理を実行する。pFOD処理の実行期間中、電子機器2(IC200)は、fO変更/短絡動作の実行を継続する。具体的には、電子機器2(IC200)は、内蔵タイマを用いて、pFOD処理の実行期間の長さに応じた時間だけfO変更/短絡動作の実行を維持してからfO変更/短絡動作を停止する。
pFOD処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100)は、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100)は、送電回路130を共振回路TTに接続して送電動作を実行し、これにより電力伝送570が実現される。上述したように、送電動作の実行時には選択分圧回路450の状態が直結状態とされる。
図17(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、図17(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、pFOD処理において給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。1回分の電力伝送570は所定時間だけ行われるものであっても良く、問い合わせ信号510の送信から電力伝送570までの一連の処理を、繰り返し実行するようにしても良い。実際には、図20に示す如く、NFC通信とpFOD処理と電力伝送(NFC電力伝送)とを順番に且つ繰り返し実行することができる。つまり、非接触給電システムでは、NFC通信を行う動作とpFOD処理を行う動作と電力伝送(NFC電力伝送)を行う動作とを、時分割で順番に且つ繰り返し行うことができる。
[給電機器及び電子機器の動作フローチャート]
次に、給電機器1の動作の流れを説明する。図21は、給電機器1の動作フローチャートである。通信回路120及び送電回路130の動作は、制御回路160の制御の下で実行される。
給電機器1が起動すると、まずステップS101において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続する。続くステップS102において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信により問い合わせ信号510を給電対象機器に送信し、その後、ステップS103において、応答信号520の受信を待機する。通信回路120にて応答信号520が受信されると、制御回路160は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に送電対象があると判断して(ステップS104のY)ステップS105に進み、そうでない場合(ステップS104のN)、ステップS102に戻る。
ステップS105において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信によりテスト用要求信号530を給電対象機器に送信し、その後、ステップS106において、応答信号540の受信を待機する。通信回路120にて応答信号540が受信されると、ステップS107において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、続くステップS108にて上述のpFOD処理を行う。
pFOD処理の後、ステップS109にて、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて通信回路120を共振回路TTに接続し、ステップS110に進む。ステップS108のpFOD処理にて、異物有判定が成されている場合にはステップS110からステップS102に戻るが、異物無判定が成されている場合にはステップS110からステップS111に進む。
ステップS111において、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TTを用いたNFC通信により認証信号550を給電対象機器に送信し、その後、ステップS112において、応答信号560の受信を待機する。通信回路120にて応答信号560が受信されると、ステップS113において、制御回路160は、切り替え回路110の制御を通じて送電回路130を共振回路TTに接続し、ステップS114に進む。
制御回路160は、ステップS114にて送電許可フラグにONを設定すると共に、送電動作及びmFOD処理を開始し、その後、ステップS115に進む。上述したように、送電動作の実行時には選択分圧回路450の状態が直結状態とされる。詳細は後述されるが、mFOD処理によって電力伝送中における異物の存否が検出され、異物が検出された場合に送電許可フラグがOFFとされる。制御回路160は、送電動作の開始時点からの経過時間を計測し、ステップS115において、その経過時間を所定の時間tA(例えば10分)と比較すると共に送電許可フラグの状態をチェックする。その経過時間が所定の時間tAに達すると、又は、mFOD処理によって送電許可フラグにOFFが設定されると、ステップS116に進む。ステップS116において、制御回路160は、送電許可フラグをONからOFFに切り替える又は送電許可フラグをOFFに維持すると共に、送電動作及びmFOD処理を停止させ、その後ステップS101に戻る。
次に、電子機器2の動作の流れを説明する。図22は、電子機器2の動作フローチャートであり、ステップS201から始まる処理は、図21に示す給電機器1の動作に連動して実行される。通信回路220及び受電回路230の動作は、制御回路250の制御の下で実行される。
電子機器2が起動すると、まずステップS201において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて通信回路220を共振回路RRに接続する。電子機器2の起動時においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。続くステップS202において、制御回路250は、通信回路220を用い、問い合わせ信号510の受信を待機する。通信回路220にて問い合わせ信号510が受信されると、ステップS203において、制御回路250は、問い合わせ信号510を解析して応答信号520を生成し、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号520を給電機器1に送信する。このとき、制御回路250は、バッテリ21の状態を確認し、バッテリ21が満充電状態でなく且つバッテリ21に異常が認められなければ、電力を受け取れる又は電力の送電を求める信号を応答信号520に含める。一方、バッテリ21が満充電状態あれば又はバッテリ21に異常が認められれば、電力を受け取れない旨の信号を応答信号520に含める。
その後のステップS204においてテスト用要求信号530が通信回路220にて受信されると、ステップS205に進む。ステップS205において、制御回路250は、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号540を給電機器1に送信し、続くステップS206にて共振状態変更回路240を用いてfO変更/短絡動作を実行する。即ち、共振周波数fOを基準周波数から周波数fMに変更する又は受電側コイルRLを短絡する。制御回路250は、fO変更/短絡動作の実行を開始してからの経過時間を計測し(ステップS207)、その経過時間が所定時間tMに達するとfO変更/短絡動作を停止する(ステップS208)。即ち、共振周波数fOを基準周波数に戻す又は受電側コイルRLの短絡を解消する。その後、ステップS209に進む。給電機器1にてpFOD処理が実行されている期間(即ちテスト磁界が発生されている期間)中、fO変更/短絡動作の実行が維持され、その期間が終了すると速やかにfO変更/短絡動作が停止されるように時間tMが予め設定されている。テスト用要求信号530の中で時間tMが指定されていても良い。
ステップS209において、制御回路250は、通信回路220を用い、認証信号550の受信を待機する。通信回路220にて認証信号550が受信されると、ステップS210において、制御回路250は、認証信号550に対する応答信号560を通信回路220を用いたNFC通信により給電機器1へ送信する。尚、異物が給電台12上に存在する場合には、認証信号550が給電機器1から送信されないので(図21のステップS110参照)、ステップS209にて認証信号550が一定時間受信されない場合にはステップS201に戻ると良い。
応答信号560の送信後、ステップS211において、制御回路250は、切り替え回路210の制御を通じて受電回路230を共振回路RRに接続し、続くステップS212にて受電回路230を用いた受電動作を開始させる。制御回路250は、受電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間と所定の時間tBとを比較する(ステップS213)。そして、その経過時間が時間tBに達すると(ステップS213のY)、ステップS214にて、制御回路250は、受電動作を停止させてステップS201に戻る。
受電動作の行われる期間が給電機器1にて送電動作が行われている期間と実質的に一致するように、時間tBは、予め定められている又は認証信号550の中で指定されている。受電動作の開始後、制御回路250は、バッテリ21への充電電流を監視し、充電電流値が所定値以下になった時点で送電動作が終了したと判断して、受電動作の停止及びステップS201への移行を行うようにしても良い。
[mFOD処理]
送電動作の開始後に異物が給電台12上に置かれることもある。mFOD処理は、電力伝送中の異物検出処理として機能し、mFOD処理により電力伝送中において異物の存否が継続監視される。
図23は、mFOD処理の動作フローチャートである。制御回路160は、送電動作を行っている期間において、図23のmFOD処理を繰り返し実行する。mFOD処理において、制御回路160は、まずステップS51にて最新の電圧値VDを電流振幅検出値VmFODとして取得する。電流振幅検出値VmFODは、送電用磁界を送電側コイルTLに発生させているときの、送電側コイルTLに流れる電流の振幅に応じた値を持つ。続くステップS52において、制御回路160は、電流振幅検出値VmFODが所定のmFOD正常範囲に属しているか否かを判断する。電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲に属している場合、異物無判定が成されて(ステップS53)ステップS51に戻りステップS51及びS52の処理が繰り返されるが、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱している場合、ステップS54にて異物有判定が成されて送電許可フラグにOFFが設定される。送電許可フラグは、制御回路160にて管理されるフラグであってON又はOFFに設定される。送電許可フラグがONのとき制御回路160は送電動作の実行を許可し、送電許可フラグがOFFのとき制御回路160は送電動作の実行を禁止する又は送電動作を停止する。
mFOD正常範囲は、所定の下限値VmREFL以上且つ所定の上限値VmREFH以下の範囲である(0<VmREFL<VmREFH)。故に、判定不等式“VmREFL≦VmFOD≦VmREFH”が満たされる場合には異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
図24(a)を参照し、例えば、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に非接触ICカードとして形成された異物3が挿入された場合を考える。この場合、電子機器2の受電側コイルRLと異物3のコイルJLが磁気的に結合して、異物3の共振回路JJの共振周波数と共に電子機器2の共振回路RRの共振周波数が基準周波数(13.56MHz)からずれる。そうすると、受電側コイルRLでの受電電力が低下して送電側コイルTLから見た送電の負荷が軽くなり、結果として、送電側コイルTLに流れる電流の振幅が大きくなる(この場合に“VmREFH<VmFOD”となるように上限値VmREFHを定めておけばよい)。
また例えば、図24(b)を参照し、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に、鉄板又はフェライトシートとしての異物3bが挿入されると、電気的及び磁気的な作用を通じて異物3b内に電流が流れ、結果として、送電側コイルTLに流れる電流の振幅が小さくなる(この場合に“VmFOD<VmREFL”となるように下限値VmREFLを定めておけばよい)。
このように、異物3及び3bを含む異物の存否により電流振幅検出値VmFODに変化が生じる。考えられる異物の種類及び配置状態を想定した実験等を介し、予め適切に決定された下限値VmREFL及び上限値VmREFHを、メモリ150に記憶させておくと良い。また、電力伝送中に、異物が存在することで電流振幅検出値VmFODがどの程度変化するのかを理論計算により推定し、その推定結果に基づき、実験を必要とすることなく、下限値VmREFL及び上限値VmREFHを定めてメモリ150に記憶させても良い。この際例えば、mFOD正常範囲の中心値を基準として電流振幅検出値VmFODを所定の変化率以上変化させるような物体を異物と定義するようにしても良い。
図7に示す増幅器143の増幅率は可変となっている。送電側コイルTLに流れる電流の振幅は、pFOD処理を行っているときよりも、送電動作及びmFOD処理を行っているときの方が随分と大きい。故に、制御回路160は、mFOD処理を行う際において増幅器143の増幅率をpFOD処理を行う際よりも小さく設定し、これによってA/D変換器144の入力信号範囲をpFOD処理及びmFOD処理間で同程度とする。
また例えば、包絡線検波器142とA/D変換器144との間に(より具体的には、包絡線検波器142と増幅器143との間に、又は、増幅器143とA/D変換器144との間に)高域低減回路(不図示)を挿入するようにしても良い。この場合、センス抵抗141の電圧降下信号に高域低減処理(換言すれば平均化処理又は低域通過フィルタリング)を施して得られる振幅情報が、A/D変換器144から電圧値VDとして得られるようになる。ここにおける高域低減処理は、センス抵抗141の電圧降下信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。高域低減処理により、ノイズや給電台12上の電子機器2の軽度な振動などによって送電禁止の制御が行われることが抑制される。
或いは例えば、包絡線検波器142及びA/D変換器144間に高域低減回路を設ける代わりに、A/D変換器144の出力信号による電圧値VDに対し演算による高域低減処理を施して高域低減処理後の電圧値VDを電流振幅検出値VmFODとして用いるようにしても良い(pFOD処理における電流振幅検出値VpFODに対しても同様であって良い)。演算による高域低減処理は、制御回路160にて実行される処理であって、A/D変換器144の出力信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。
尚、mFOD処理の役割は、異物の存否判定だけに限られない。即ち、mFOD処理は、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱するような、送電動作の継続に不適切なあらゆる状況下で、送電許可フラグをOFFとする役割を持つ。例えば、送電動作の開始後、電子機器2が給電台12上から取り去られたとき、送電側コイルTLから見た送電の負荷が軽くなって電流振幅検出値VmFODが上限値VmREFHを超えるため送電許可フラグがOFFとされる(図23のステップS54)。
このように、第1実施形態では、低損失のE級増幅器440を用いて磁界発生用の交流電圧を生成するため、電力伝送に関するシステム全体の効率を高めることができる。また、異物検出処理を通じて異物の破損等を回避することができる。電力伝送前の異物検出処理(pFOD処理)においては、上述のノイズ電流振幅変化が異物存否の検出精度に劣化をもたらしうるが、選択分圧回路450を用いた分圧によりノイズ電流振幅変化の影響が軽減されるため、異物存否の検出精度を高く維持することができる。
[E級増幅器の動作条件について]
次に、pFOD処理との関係において、E級増幅器440の適正動作条件を探るために行った実験の内容及び結果を説明する。図25は、本実験で得たデータをまとめた表である。
本実験では、選択分圧回路450の状態が分圧状態で維持されている。本実験では、E級増幅器440の出力状態を第1〜第14出力状態の何れかとした。任意の整数iに関し、第(i+1)出力状態におけるE級増幅器440の出力電圧の振幅は、第i出力状態におけるE級増幅器440の出力電圧の振幅よりも大きい。各出力状態が得られるように、本実験においては直流電圧VINを可変させた。従って、第(i+1)出力状態を得る際の直流電圧VINは第i出力状態を得る際の直流電圧VINよりも大きい。
本実験では、第1実験条件と第2実験条件が設定される。第1実験条件では上述の初期設定環境が維持される(従って後述の実験用受電基板は給電台12上における所定の送電領域に配置されていない)。第2実験条件では、第1実験条件を基準として給電台12上における所定の送電領域に実験用受電基板を配置する。実験用受電基板は受電側共振回路RRが実装された基板であるが、その受電側共振回路RRにはfO変更/短絡動作が適用されている。従って、第2実験条件を満たす状態は、fO変更/短絡動作が行われている電子機器2が給電台12上の送電領域に配置されている状態と等価と考えて良い。
本実験にて取得される値VT1は、共振回路TTへの供給電圧の振幅(即ち端子TM3及びTM4間の交流電圧の振幅:図12参照)である。但し、VT1によって示される振幅は、ボルトを単位とする、共振回路TTへの供給電圧の波高値の2倍であるとする。第1、第2実験条件で得られたVT1を、夫々、VT1A、VT1Bにて表す。本実験にて取得される値VT2は、電圧値VD(図7参照)を表す、A/D変換器144の出力デジタル値である。第1、第2実験条件で得られたVT2を、夫々、VT2A、VT2Bにて表す。DELTA及びRVT2は、“DELTA=VT2B−VT2A”、“RVT2=DELTA/VT2A”にて表される。尚、“RVT2=DELTA/VT2B”とすることも可能である。
本実験では、E級増幅器440の出力状態を第i出力状態とした上でVT1A、VT1B、VT2A、VT2B、DELTA及びRVT2の各値を求める単位処理を、第1〜第14出力状態の夫々に対して行った。その結果が図25に示されている。また、その結果に基づくグラフを図26に示す。図26において、折れ線610はVT1AとDELTAとの関係を示し、折れ線620はVT1AとRVT2との関係を示す。
実験用受電基板にて適正なfO変更/短絡動作が行われていれば、理想的には、実験用受電基板の存在は、E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値に何ら影響を与えず、結果、第1及び第2実験条件間でVT1、VT2の夫々に変化はみられないはずである。しかしながら、実際には、送電側コイルTLと実験用受電基板における受電側コイルRLとの磁気結合等を通じて上記影響が多少現れている。但し、その影響の現れ方はVT1に依存しており、VT1の値によって、DELTA及びRVT2が大きくなったり小さくなったりする。
本実験によれば以下のことが分かった。
E級増幅器440の出力状態が第3出力状態であるとき、“VT1A=1.06”となる。“VT1A=1.06”であるとき、“DELTA=0”且つ“RVT2=0”となる。VT1Aの単位はボルト、RVT2の単位は%である。
E級増幅器440の出力状態が第14出力状態であるとき、“VT1A=10.30”となる。“VT1A=10.30”であるとき、“DELTA=−1”且つ“RVT2=0.1”となる。
“VT1A<1.06”では、VT1Aが1.06から小さくなるにつれてDELTAが0から増大し且つRVT2が0から増大する。
“1.06<VT1A<10.30”では、VT1Aが1.06から大きくなるにつれてDELTAが0から減少し且つRVT2が0から減少する。VT1Aを1.06から増大させてゆくと、VT1Aが5〜6になるときにDELTA及びRVT2が極小値をとり、DELTA及びRVT2が極小値をとった後もVT1Aを10.30に向けて増大させてゆくと、DELTA及びRVT2が夫々の極小値から0に向けて減少してゆく。
つまり、“VT1A=1.06”に相当する特異点631及び“VT1A=10.30”に相当する特異点632においてのみ、DELTA及びRVT2が実質的にゼロとなり、VT1Aが特異点の電圧から離れるとDELTA及びRVT2がゼロから増大又は減少することが分かった。
pFOD処理は、異物が存在に起因する送電側コイルTLの電流振幅変化(検出対象電流振幅変化)の有無を観測することによって異物の存否を判断する処理である。この観測を行う際に、電子機器2の存在によって送電側コイルTLの電流振幅に変化が生じたならば、その変化は、異物の存否判断にとってのノイズとなる。故に、pFOD処理を行う際には、電子機器2の存在による送電側コイルTLの電流振幅変化がなるだけ小さくなるような条件でE級増幅器440を動作させた方が、異物の検出精度が上がる。つまり、図25の実験結果に基づけば、“VT1A=1.06”に相当する特異点631、若しくは、“VT1A=10.30”に相当する特異点632、又は、それらの近辺でE級増幅器440を動作させると、pFOD処理における異物の検出精度が最適化又は適正化される。
これらを考慮すれば、以下のようにすることが好ましい。
pFOD処理において、分圧電圧VE’(テスト用交流電圧)が共振回路TTに供給されているとき、分圧電圧VE’(テスト用交流電圧)が、VT2A及びVT2B間の差の絶対値(|DELTA|)を所定値以下にする振幅(VT1A又はVT1B)を有するように、或いは、VT2Aに対する該絶対値の比(|DELTA|/VT2A)又はVT2Bに対する該絶対値の比(|DELTA|/VT2B)を所定値以下にする振幅(VT1A又はVT1B)を有するように、直流電圧VINの大きさ(電圧値)を定めると良い。
換言すれば、pFOD処理において、分圧電圧VE’(テスト用交流電圧)が共振回路TTに供給されているとき、VT2A及びVT2B間の差の絶対値(|DELTA|)が所定値以下となるように、或いは、VT2Aに対する該絶対値の比(|DELTA|/VT2A)又はVT2Bに対する該絶対値の比(|DELTA|/VT2B)が所定値以下となるように、直流電圧VINの大きさ(電圧値)を定めると良い。このような直流電圧VINの大きさは、本実験で用いた回路によれば、第3又は第14出力状態における直流電圧VINの大きさである。
本実験における実験用受電基板は、fO変更/短絡動作が行われている電子機器2と等価であるため、
VT2Aは、分圧電圧VE’(テスト用交流電圧)が共振回路TTに供給されていて、且つ、送電を行うための所定の送電領域に電子機器2が存在していないときにおける電流振幅検出値VDに相当し、
VT2Bは、分圧電圧VE’(テスト用交流電圧)が共振回路TTに供給されていて、且つ、fO変更/短絡動作が行われている状態での電子機器2が上記送電領域に存在しているときにおける電流振幅検出値VDに相当する。
DELTA及びRVT2がVT1に依存する要因の1つは、受電側共振回路RRに実際に接続される回路の非直線性にある。図27は、並列共振回路として構成された共振回路RR及び共振回路RRの周辺回路を示す図である。図25及び図26の実験データを得る際、図27の回路を実験用受電基板に設けた。即ち、実験用受電基板に、共振回路RRに加えて、整流回路DD、トランジスタSS及び抵抗RSS、並びに、配線であるラインLN1〜LN4を設けた。実験用受電基板は電子機器2の全部又は一部であると考えて良く、実験用受電基板に搭載される回路は電子機器2にも搭載されると考えて良い。整流回路DDはダイオード(整流素子)D1〜D4から成る全波整流回路である。トランジスタSSは、Nチャンネル型のMOSFETとして形成されている。
図27の回路において、受電側コイルRLの一端及び受電側コンデンサRCの一端はラインLN1に共通接続される一方、受電側コイルRLの他端及び受電側コンデンサRCの他端はラインLN2に共通接続される。ラインLN1は、ダイオードD1のアノード及びダイオードD3のカソードに共通接続され、ラインLN2は、ダイオードD2のアノード及びダイオードD4のカソードに共通接続される。ダイオードD1及びD2のカソードはラインLN3に共通接続され、ダイオードD3及びD4のアノードはラインLN4に共通接続される。トランジスタSSにおいて、ドレインはラインLN3に接続され、ソースはラインLN4に接続され、ゲートは抵抗RSSを介してラインLN4に接続される。
電子機器2の制御回路250に相当する実験用受電基板の制御回路は、トランジスタSSのゲート電圧を制御することで、トランジスタSSをオン又はオフさせる。トランジスタSSがオフのとき、送電側コイルTLの発生磁界に基づき受電側コイルRLに交流電流が流れ、その交流電流に基づく電力が整流回路DDでの整流を通じてラインLN3及びLN4間に伝搬されることで、ラインLN4の電位から見てラインLN3に正の電圧が表れる。実験用受電基板において、従って電子機器2において、整流回路DD、トランジスタSS及び抵抗RSSから成る回路を、共振回路RR及び通信回路220間に、又は、共振回路RR及び受電回路230間に設けておくことができる。尚、共振回路RRと整流回路DDとの間に介在すべき切り替え回路210(図5参照)は、図27においては図示が省略されている。
一方、トランジスタSSがオンのとき、受電側コイルRLは整流回路DDを介して(より詳細には、ダイオードD1及びD4の組み合わせ又はダイオードD2及びD3の組み合わせを介して)短絡されるので、ラインLN3及びLN4間には電圧が発生しない(説明の簡略化上、トランジスタSSのドレイン−ソース間電圧をゼロと仮定)。図25及び図26の実験では、トランジスタSSがオンとされている。このように、図27のトランジスタSSは図10のスイッチ243に相当するものであるが、図27の回路では、共振回路RRとスイッチ243に相当するトランジスタSSとの間に、非線形性を持つ半導体素子(D1〜D4)にて構成された回路(DD)が介在する。
図26に示したRVT2のVT1A依存性を表す折れ線620の一部(VT1Aが概ね2以上の領域)を、近似したグラフ640を図28に示す。グラフ640において、概ね“2≦VT1A<7”が成り立つ領域641では、RVT2が負の一定値に保たれる一方、概ね“7≦VT1A”が成り立つ領域642では、VT1Aの増加に対してRVT2が負の所定値からゼロに向けて単調増加し、特異点632(図26も参照)にてRVT2が概ねゼロとなる。
VT1Aが比較的小さい領域641では、送電側コイルTLの発生磁界による共振回路RRでの発生電圧が小さいため、ダイオードD1〜D4が非導通状態にある。すると、トランジスタSSをオンにしても共振回路RRが基準周波数(13.56MHz)にて共振することになる。つまり、VT1Aが比較的小さい領域641では、共振回路RRが送電側コイルTLの負荷として機能し、DELTA(従ってRVT2)が比較的大きな値を持つようになる。
ダイオードD1〜D4が非導通状態であるときを起点としてVT1Aを増加させてゆくと、ダイオードD1〜D4が非導通状態から導通状態へと変化してゆくため、オンとされているトランジスタSSがダイオードD1〜D4を介して受電側コイルRLを短絡状態へ向かわせる。その結果、グラフ640において領域641から領域642への変化が発生する。受電側コイルRLが完全に短絡されているとみなせる状態までVT1Aが増加すると、DELTA(従ってRVT2)は実質的にゼロになると考えられる。
<<本発明の考察(その1)>>
上述の第1実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る送電装置W1は、受電装置に対し磁界共鳴方式で電力を送電可能な送電装置において、前記電力を送電するための送電側コイル(TL)を含み且つ所定の基準周波数を共振周波数として持つ送電側共振回路(TT)と、直流電源から供給される直流電圧を前記基準周波数の周期信号を用いてスイッチングすることにより前記基準周波数の交流電圧(VE)を生成及び出力するE級増幅器(440)と、前記E級増幅器と前記送電側共振回路との間に挿入され、前記E級増幅器の出力電圧を送電用交流電圧(VE)として又は前記E級増幅器の出力電圧を分圧して得た電圧をテスト用交流電圧(VE’)として選択的に前記送電側共振回路に供給する選択分圧回路(450)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路(140)と、前記選択分圧回路を制御することで前記送電側共振回路への供給電圧を制御する制御回路(160)と、を備え、前記制御回路は、前記テスト用交流電圧が前記送電側共振回路に供給されているときの前記検出回路の振幅検出値を評価値(VpFOD)として取得し、前記評価値に基づいて前記送電用交流電圧を前記送電側共振回路に供給することによる前記送電の実行可否を制御することを特徴とする。
E級増幅器の利用により高効率の電力伝送が可能となる。一方、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に異物が存在しているとき、送電側コイルの電流振幅に変化が現れるという特性がある。この特性を利用すれば、電流振幅変化に基づき異物の存否を検出し、異物の存在が検出された場合には送電の実行を禁止するといった制御が可能となる。
但し、異物が存在しているとき、E級増幅器から送電側共振回路を見たインピーダンス値に変化が生じることがあり、該インピーダンス値の変化はE級増幅器の出力変化をもたらして、結果として送電側コイルの電流振幅に変化をもたらす。インピーダンス値の変化に基づく送電側コイルの電流振幅変化(ノイズ電流振幅変化)は、異物検出のために本来観測されるべき電流振幅変化(検出対象電流振幅変化)の検知に対し阻害要因となる。
そこで、送電装置W1では、選択分圧回路を設けてノイズ電流振幅変化の影響を軽減する。即ち、送電の実行可否制御に利用される評価値は、E級増幅器の出力分圧を用いた状態で得られるため、異物の存在によるインピーダンス値の変化は分圧比に相当する分だけ軽減される。結果、ノイズ電流振幅変化が検出対象電流振幅変化に与える影響が低減され、E級増幅器による高効率電力伝送の利点を享受しつつ、高い精度での異物検出が担保される(即ち、適正な送電実行可否制御が担保される)。また、テスト用交流電圧は送電の際の送電用交流電圧よりも小さいため、評価値を得る際の送電側コイルの発生磁界強度を低くできる。結果、評価値を得る際の発生磁界による異物の破損等を回避することができる。
具体的には例えば、送電装置W1において、前記制御回路は、前記評価値(VpFOD)に基づいて、前記受電装置と異なり且つ前記送電側コイルの発生磁界に基づく電流を発生させられる異物の存否を判断し、その判断結果に基づいて前記送電の実行可否を制御すると良い。
より具体的には例えば、送電装置W1において、前記制御回路は、前記異物が存在しないと判断した場合、前記送電の実行を許可し、前記異物が存在すると判断した場合、前記送電の実行を禁止すると良い。
また例えば、送電装置W1において、前記制御回路は、前記評価値が所定範囲を逸脱しているか否かを判断することで、前記異物の存否を判断すると良い。
また例えば、送電装置W1において、前記E級増幅器(440)は、前記周期信号に応じてスイッチング動作するスイッチング素子(441)と、前記直流電源と前記スイッチング素子との間に介在する第1コイル(442)と、前記スイッチング素子に並列接続された第1コンデンサ(443)と、前記スイッチング素子と前記第1コイルとの接続点に接続された、第2コイル(445)及び第2コンデンサ(444)から成る共振回路と、を有し、該共振回路を通じて前記交流電圧を出力すると良い。
また例えば、送電装置W1に関し、前記受電装置には、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含み且つ前記基準周波数を共振周波数として持つ受電側共振回路(RR)と、前記受電側共振回路の共振周波数を前記基準周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路(240)と、が設けられ、前記評価値の取得が行われる際には、当該送電装置からの通信による信号に従い、前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われると良い。
これにより、送電側コイルの電流振幅に対する受電側共振回路の影響を抑制することができ、異物の高い検出精度を担保することが可能となる。
この際例えば、送電装置W1において、前記直流電圧(VIN)は、前記テスト用交流電圧が前記送電側共振回路に供給されているときにおいて、第1の値(VT2A)と第2の値(VT2B)の差の絶対値(|DELTA|)、又は、前記第1の値若しくは前記第2の値に対する該絶対値の比(|DELTA|/VT2A又は|DELTA|/VT2B)を所定値以下にする電圧値を有し、前記第1の値(VT2A)は、前記テスト用交流電圧が前記送電側共振回路に供給されていて、且つ、前記送電を行うための所定の送電領域に前記受電装置が存在していないときにおける前記検出回路の振幅検出値であり、前記第2の値(VT2B)は、前記テスト用交流電圧が前記送電側共振回路に供給されていて、且つ、前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態での前記受電装置が前記送電領域に存在しているときにおける前記検出回路の振幅検出値であると良い。
これにより、異物の検出精度の最適化又は適正化が可能となる。
尚、上述の第1実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の第1実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の第1実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の第1実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態でも、第1実施形態と同様、図1(a)又は図1(b)に示された給電機器1及び電子機器2から成る非接触給電システムの詳細を説明する。第2実施形態は、第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾無き限り、第1実施形態にて上述した事項が第2実施形態にも適用される。第2実施形態において、第1実施形態中の記載と第2実施形態中の記載の間で矛盾する事項に関しては、第2実施形態中の記載が優先される。
まず、図1(a)、図1(b)、図2〜図10、図11(a)及び図11(b)を参照しつつ第1実施形態にて述べた事項は、第2実施形態に適用される。但し、第2実施形態では、送電回路の回路構成が図12に示したものと異なる。
図29に、第2実施形態に係る送電回路130Aの回路図を示す。第2実施形態では、送電回路130Aが上述の送電回路130として用いられる。図29の送電回路130Aも、図12の送電回路130と同様、異物の存否検出に適し且つ高効率の動作を実現する。尚、図29には、給電機器1に設けられた、送電回路130A以外の幾つかの回路も示されている。図29では、図7と同様に給電用接続状態が想定されている。第1実施形態の記載を第2実施形態に適用する際、第1実施形態の記載中における“送電回路130”を“送電回路130A”に読み替えれば良い。
図29の送電回路130Aは、基準周波数の矩形波信号であるクロック信号を生成及び出力する発振回路410と、発振回路410からのクロック信号に同期する信号を後段回路に出力するか否かを切り替えるイネーブル回路420と、イネーブル回路420からクロック信号に同期する信号が供給されたとき、クロック信号に同期するドライブ信号をE級増幅器440に供給することでE級増幅器440を駆動するドライブ回路430と、直流電源VS1から供給される直流電圧VINを基準周波数の矩形波信号であるドライブ信号を用いてスイッチングすることにより基準周波数の交流電圧VEを生成及び出力するE級増幅器440と、イネーブル回路420からクロック信号に同期する信号が供給されたとき、その信号から基準周波数の信号成分を抽出することで基準周波数の正弦波信号を出力するBPF(バンドパスフィルタ)455と、BPF455の出力信号を所定の増幅率で増幅して出力するA級増幅器460と、E級増幅器440及びA級増幅器460と送電側共振回路TTとの間に挿入され、E級増幅器440の出力電圧VE又はA級増幅器460の出力電圧VAを選択的に共振回路TTに供給する選択回路470と、を備える。
送電回路130Aの回路構成について更に説明する。発振回路410は、符号411〜415によって参照される各部位を備える。発振子411は、水晶発振子又はセラミック発振子にて構成された、基準周波数の発振出力を得る発振子である。抵抗412は発振子411に並列接続される。発振子411の一端はインバータ回路(論理否定回路)413の入力端子に接続されると共にコンデンサ414を介してグランドに接続され、発振子411の他端はインバータ回路413の出力端子に接続されると共にコンデンサ415を介してグランドに接続される。グランドは0V(ボルト)の基準電位を有する。インバータ回路413の出力端子から、基準周波数の矩形波信号であって、デューティが50%のクロック信号が出力される。
イネーブル回路420は、符号421〜424によって参照される各部位を備える。トランジスタ421は、Nチャンネル型のMOSFET(MOS電界効果トランジスタ;metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として形成されている。トランジスタ421において、ゲートにはイネーブル信号ENが供給され、ドレインはインバータ回路423の入力端子に接続されると共に抵抗422を介して直流電圧LVINが加わる端子に接続され、ソースはグランドに接続される。所定の正の直流電圧値を有する直流電圧VIN、LVINは、夫々、給電機器1内(例えばIC100内)に設けられた直流電源VS1、VS2にて生成される。送電回路130A内の各論理回路は直流電圧LVINに基づき駆動する。2入力のNAND回路(否定論理積回路)424の第1、第2入力端子には、夫々、インバータ回路413、423の出力信号が入力される。
ドライブ回路430は、インバータ回路431から成る。インバータ回路431の入力端子に、NAND回路424の出力信号が供給される。
E級増幅器440は、符号441〜445によって参照される各部位を備える。トランジスタ441は、Nチャンネル型のMOSFETとして形成されている。トランジスタ441において、ゲートにはインバータ回路431の出力信号が供給され、ドレインはノードNDに接続され、ソースはグランドに接続される。チョークコイル442の一端はノードNDに接続され、チョークコイル442の他端には直流電圧VINが印加される。つまり、チョークコイル442は直流電源VS1とトランジスタ441との間に直列に介在する。また、ノードNDはコンデンサ443の一端に接続され、コンデンサ443の他端はグランドに接続される。つまり、コンデンサ443はトランジスタ441に並列接続されている。加えて、ノードNDはコンデンサ444及びコイル445から成るLC共振回路の一端に接続され、該LC共振回路の他端であるE級増幅器440の出力端子446とグランドとの間にE級増幅器440の出力電圧VEが現れる。より具体的には、ノードNDはコンデンサ444の一端に接続され、コンデンサ444の他端はコイル445の一端に接続され、コイル445の他端は端子446に接続される。コンデンサ444とコイル445の配置位置を逆にしても構わない。
BPF455は、NAND回路424の出力信号から基準周波数の信号成分を抽出し、抽出した信号を出力するバンドパスフィルタである。
A級増幅器460は、A級増幅動作によりBPF455の出力信号(BPF455からの入力信号)を所定の増幅率で増幅し、増幅した信号による電圧VAを出力する。尚、A級増幅器460の駆動電圧は直流電圧VINでも良いし、それ以外の直流電圧でも良い。
選択回路470は、切り替えスイッチ471から成り、E級増幅器440の出力端子446又はA級増幅器460の出力端子を選択的に端子TM1に接続する。尚、図29では、E級増幅器440の出力端子446が端子TM1に接続されている様子が示されている。
制御回路160は、ローレベル又はハイレベルのイネーブル信号ENを選択的にトランジスタ421のゲートに供給する。
トランジスタ421のゲートに供給されたイネーブル信号ENのレベルがハイレベルであるとき、トランジスタ421のオンを通じてNAND回路424からクロック信号の反転信号である反転クロック信号が出力され、結果、インバータ回路431からトランジスタ441のゲートに基準周波数の矩形波信号であってデューティが50%のドライブ信号が供給される。ドライブ信号は、実質的に、クロック信号と同じ信号である。また、NAND回路424から基準周波数の矩形波信号としての反転クロック信号が出力されるとき、BPF455からは基準周波数の正弦波信号が出力される。そうすると、A級増幅器460からは基準周波数の正弦波波形を有する交流電圧VAが出力される。
トランジスタ421のゲートに供給されたイネーブル信号ENのレベルがローレベルであるとき、トランジスタ421のオフを通じてNAND回路424の出力信号はハイレベルに維持され、結果、トランジスタ441のゲートの電位がローレベルに維持されてトランジスタ441はオフのままとなる(従ってE級増幅器440の動作が停止してE級増幅器440からは交流電圧が出力されない)。また、NAND回路424の出力信号がハイレベルに維持されるとき、A級増幅器460からは交流電圧が出力されない。
尚、トランジスタ441は複数のトランジスタの並列回路にて構成されていても良いし、これに対応して、インバータ回路431は複数のインバータ回路の並列回路にて構成されていても良い。また、図29にて、送電回路130A内の構成要素として示された部品の幾つか(例えば発振子411やE級増幅器440内のコイル)は、IC100の外部に設けられうる。
E級増幅器440の動作については、図13を参照しつつ第1実施形態にて述べた通りである。
図30(a)及び(b)を参照する。制御回路160は、切り替えスイッチ471の制御により、選択回路470の状態を第1スイッチ状態又は第2スイッチ状態にすることができる。図30(a)、(b)は、夫々、第1スイッチ状態、第2スイッチ状態における選択回路470を示している。尚、以下、第1スイッチ状態、第2スイッチ状態とは、特に記述無き限り、夫々、切り替え回路110が給電用接続状態であるときの第1スイッチ状態、第2スイッチ状態を意味する。
第1スイッチ状態では、E級増幅器440の出力端子446が端子TM1に接続され、結果、E級増幅器440の出力電圧(出力交流電圧)VEが共振回路TTに供給される。第2スイッチ状態では、A級増幅器460の出力端子が端子TM1に接続され、結果、A級増幅器460の出力電圧(出力交流電圧)VAが共振回路TTに供給される。交流電圧VAの振幅は交流電圧VEの振幅よりも小さい(例えば数分の1〜数10分の1とされる)。故に、共振回路TTに対する交流電圧VAの供給によって送電側コイルTLに発生する磁界の強度は、共振回路TTに対する交流電圧VEの供給によって送電側コイルTLに発生する磁界の強度よりも随分と小さい。
給電機器1では、異物の存否を検出するための異物検出処理を実行できる。異物検出処理の内、電力伝送の実行前に行われる異物検出処理をpFOD処理と称する。送電側コイルTLにて磁界を発生させているときに異物を給電台12上に載せると、送電側コイルTLの発生磁界に基づく電流が異物内に流れ、その異物内の電流の流れは共振回路TT内に電圧を発生させて送電側コイルTLの電流振幅に変化(当該変化は上述したように検出対象電流振幅変化と称される)を与える。この検出対象電流振幅変化を観測することで異物の存否を判断できる。しかしながら、pFOD処理において大きな磁界を発生させると、上述したように異物の破壊等が懸念される。
そこで、送電動作だけでなくpFOD処理においても交流電圧VEを共振回路TTへの供給電圧として利用するが、送電動作の実行時における直流電圧VINと比べ、pPOD処理において、直流電圧VINを低下させるという方策(当該方策が第2実施形態ではVIN低下方策と称される)も考えられる。VIN低下方策では、本実施形態の構成と異なり、送電回路130AからBPF455、A級増幅器460及び選択回路470が削除され、E級増幅器440の出力端子446が端子TM1に直結される。VIN低下方策によれば異物の破壊等が回避されるかもしれないが、高効率動作を実現すべく送電回路130AにE級増幅器440を採用しているため、以下のような懸念が生じる。
即ち、検出対象電流振幅変化をもたらすような位置に異物が存在すると、異物及び送電側コイルTL間の磁気結合等を通じて、E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値が50Ωからずれる。E級増幅器440は、E級増幅器440から共振回路TTを見たインピーダンス値が50Ωであることを前提にE級増幅動作を行うよう設計されているため、該インピーダンス値が50Ωからずれると、該インピーダンス値が50Ωであるときとの比較において、E級増幅器440の出力が変化する。ここにおける出力の変化は、E級増幅器440の出力電圧VEの振幅の変化、出力電圧VEの波形の変化を含む。上記インピーダンス値が50Ωからずれることに基づきE級増幅器440の出力が変化すると、送電側コイルTLの電流振幅に変化が生じる。このE級増幅器440の出力変化に基づく、送電側コイルTLの電流振幅変化を、便宜上、ノイズ電流振幅変化と称する。ノイズ電流振幅変化の存在は、異物検出のために本来観測されるべき検出対象電流振幅変化の検知に対し阻害要因となる。
仮に、ノイズ電流振幅変化による電流振幅の変化量及び変化方向が一意に定まっているならば、ノイズ電流振幅変化の分を加味することでpFOD処理による異物検出を高精度で行うことができる。しかしながら、実際には、異物の種類及び異物の給電台12への置き方などに依存して、ノイズ電流振幅変化による電流振幅の変化量及び変化方向は様々となる(即ち、ノイズ電流振幅変化において、送電側コイルTLの電流振幅が増大することもあるし減少することもあり、その増大量及び減少量も様々となる)。故に、ノイズ電流振幅変化はpFOD処理による異物検出の精度を低下させる。
これらを考慮し、本実施形態では、VIN低下方策ではなく、A級増幅器460及び選択回路470を用いてノイズ電流振幅変化の影響を無くす。即ち、本実施形態では、直流電圧VINの電圧値を固定し、送電動作の実行時には選択回路470の状態を第1スイッチ状態にすることでE級増幅器440を用いた高効率動作を実現する一方、pFOD処理においては選択回路470の状態を第2スイッチ状態とすることでA級増幅器460の出力電圧VAを共振回路TTに与える。A級増幅器460は、自身からみた後段回路のインピーダンス値に関係なく、自身への入力信号を所定の増幅率にて増幅して出力するという動作を実現するため、A級増幅器460の出力は異物の存否に関わらず不変であり、ノイズ電流振幅変化に相当するような電流振幅変化を発生させない。
[pFOD処理(電力伝送前のpFOD処理)]
図31を参照し、上述の内容を踏まえたpFOD処理を説明する。図31は、第2実施形態に係るpFOD処理のフローチャートである。
pFOD処理の実行時には送電回路130Aが共振回路TTに接続される。その上で、まずステップS11Aにて第2スイッチ状態とされる。そうすると、ステップS12AにてA級増幅器460の出力電圧VAがテスト用交流電圧として選択回路470を介し共振回路TTに供給され、結果、所定のテスト強度を磁界強度Hとするテスト磁界が送電側コイルTLにて発生される。磁界強度Hは、送電側コイルTLの発生磁界強度であって、より詳しくは、送電側コイルTLが発生した基準周波数で振動する交番磁界の磁界強度を指す。テスト磁界の磁界強度であるテスト強度は、電力伝送(即ち送電動作)における送電側コイルTLの発生磁界強度(即ち送電用磁界の磁界強度;例えば、45〜60A/m)よりも相当に小さく、例えば、通信用磁界強度の下限値“1.5A/m”から上限値“7.5A/m”までの範囲内に収まる。故に、テスト磁界によって異物3が破損等するおそれは無い又は少ない。
ステップS12Aに続くステップS13において、制御回路160は、負荷検出回路140を用い、テスト磁界を発生させているときの電圧値VDを電流振幅検出値VpFODとして取得する。電流振幅検出値VpFODは、テスト磁界を送電側コイルTLに発生させているときの、送電側コイルTLに流れる電流の振幅に応じた値を持つ。尚、pFOD処理が実行される期間中には、NFC通信を介した給電機器1からの指示に従い電子機器2においてfO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)が実行されている。故に、共振回路RR(受電側コイルRL)は実質的に送電側コイルTLの負荷として機能せず、電流振幅検出値VpFODの減少を全く又は殆どもたらさない。
ステップS13に続くステップS14において、制御回路160は、電流振幅検出値VpFODが所定のpFOD正常範囲内に収まるか否かを判断する。そして、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まる場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していないと判定する(ステップS15)。この判定を異物無判定と称する。一方、電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲を逸脱する場合、制御回路160は、異物3が給電台12上に存在していると判定する(ステップS16)。この判定を異物有判定と称する。異物無判定又は異物有判定を経て選択回路470の状態が第1スイッチ状態とされた後(ステップS17A)、pFOD処理を終える。制御回路160は、異物無判定を成した場合、送電回路130Aによる送電動作の実行が可能であると判断して送電動作の実行(共振回路TTを用いた送電)を許可し、異物有判定を成した場合、送電回路130Aによる送電動作の実行が不可であると判断して送電動作の実行を禁止する。送電動作では、選択回路470の状態が第1スイッチ状態とされ、E級増幅器440の出力電圧VEが送電用交流電圧として選択回路470を介し共振回路TTに供給されることで、所定の送電用磁界が送電側コイルTLにて発生される。
pFOD正常範囲は、所定の下限値VpREFL以上且つ所定の上限値VpREFH以下の範囲である(0<VpREFL<VpREFH)。故に、判定不等式“VpREFL≦VpFOD≦VpREFH”が満たされる場合には異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3が存在している場合、異物3の共振回路JJ(コイルJL)が送電側コイルTLの負荷として機能し、結果、給電台12上に異物3が存在しない場合と比べて、電流振幅検出値VpFODの減少がみられる。
また、異物として、異物3と異なる異物3a(不図示)も考えられる。異物3aは、例えば、アルミニウムを含んで形成された金属体(アルミニウム箔やアルミニウム板)や銅を含んで形成された金属体である。pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3aが存在している場合、給電台12上に異物3aが存在しない場合と比べて、電気的及び磁気的な作用により、電流振幅検出値VpFODの増大がみられる。
電力伝送の実行前において、給電台12上に異物3が存在している場合には電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回るように、且つ、給電台12上に異物3aが存在している場合には電流振幅検出値VpFODが上限値VpREFHを上回るように、且つ、給電台12上に異物(3又は3a)が存在していない場合には電流振幅検出値VpFODがpFOD正常範囲内に収まるように、実験等を介して、下限値VpREFL及び上限値VpREFHが予め設定されてメモリ150に記憶されている。
尚、給電台12上に異物3aが存在する状態で送電用磁界を発生させると、異物3aにて電力が吸収され、異物3aが発熱するおそれがある。本実施形態では、電力伝送の搬送波周波数としての基準周波数が13.56MHzであることを想定しているため、そのような発熱のおそれは十分に少ないとも言える。故に、異物3aの存在を考慮することなく、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFLを下回った場合に限って異物有判定を行い、電流振幅検出値VpFODが下限値VpREFL以上であれば常に異物無判定を行うようにしてもよい(即ち上限値VpREFHを撤廃しても良い)。しかしながら、本実施形態に係る発明において基準周波数は13.56MHzに限定されず、基準周波数を例えば数100kHz程度にした場合には、異物3aの発熱のおそれが高くなるため、下限値VpREFLだけでなく上限値VpREFHをpFOD正常範囲に定める、上述の方法の採用が望ましい。
下限値VpREFLの決定方法について説明を加えておく。下限値VpREFLは初期設定処理にて決定される。図32は、第2実施形態に係る初期設定処理の動作フローチャートである。初期設定処理は、以下の初期設定環境の下でIC100により実行される。初期設定環境では、送電側コイルTLに対する負荷が全く無く又は無視できる程度に小さく、送電側コイルTLの発生磁界により電流を生じさせられる物体(送電側コイルTLに磁気結合するコイルを含む)が、給電機器1の構成部品を除いて存在しない。図1(a)の離間状態は、初期設定環境を満たすと考えても良い。初期設定環境の確保を担保すべく、例えば、給電機器1の製造時又は出荷時などにおいて初期設定処理を行うようにしても良い。但し、初期設定環境を確保できるのであれば、任意のタイミングで初期設定処理を行うことができる。
初期設定処理の実行時には送電回路130Aが共振回路TTに接続される。その上で、まずステップS21Aにて第2スイッチ状態とされる。そうすると、ステップS22AにてA級増幅器460の出力電圧VAがテスト用交流電圧として選択回路470を介し共振回路TTに供給され、結果、所定のテスト強度を磁界強度Hとするテスト磁界が送電側コイルTLにて発生される。ステップS22Aに続くステップS23において、制御回路160は、負荷検出回路140を用い、テスト磁界を発生させているときの電圧値VDを電圧値VDOとして得る。その後のステップS24において、電圧値VDOに基づく下限値VpREFLをメモリ150に記憶させる。下限値VpREFLは、異物3の存在下においてのみpFOD処理にて異物有判定が成されるよう、電圧値VDOよりも低い値に設定される。例えば、“VpREFL=VDO−ΔV”、又は、“VpREFL=VDO×k”とすると良い。ΔVは、所定の正の微小値である(但し、ΔV=0とすることも可能)。kは、1未満の正の所定値を有する係数である。尚、初期設定環境下において磁界強度Hを所定のテスト強度に設定したときに得られるであろう電圧値VDを、設計段階で見積もることができる。この見積によって導出された値に基づき、初期設定処理を行うことなく、下限値VpREFLを決定してメモリ150に記憶させるようにしても良い。
図17(a)〜(d)及び図18を参照して第1実施形態にて述べた事項は、第2実施形態においても同様である。
[電力伝送までの信号のやりとり]
電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりについては、図19に示したものと同様であるが、第2実施形態での当該信号のやりとりについて以下に説明する。尚、第2実施形態において、以下では、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。
図19を参照して、まず給電機器1が送信側且つ電子機器2が受信側となり、給電機器1(IC100)が、NFC通信によって、問い合わせ信号510を給電台2上の機器(以下、給電対象機器とも言う)に送信する。給電対象機器は、電子機器2を含み、異物3を含みうる。問い合わせ信号510は、例えば、給電対象機器の固有識別情報を問い合わせる信号、給電対象機器がNFC通信を実行可能な状態にあるかを問い合わせる信号、及び、給電対象機器が電力を受け取れるか又は電力の送電を求めているかを問い合わせる信号を含む。
問い合わせ信号510を受信した電子機器2(IC200)は、問い合わせ信号510の問い合わせ内容に答える応答信号520を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号520を受信した給電機器1(IC100)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、テスト用要求信号530をNFC通信によって給電対象機器に送信する。テスト用要求信号530を受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200)は、テスト用要求信号530に対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから、速やかに、fO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)を実行する。テスト用要求信号530は、例えば、fO変更/短絡動作の実行を要求、指示する信号であり、電子機器2の制御回路250は、テスト用要求信号530の受信を契機としてfO変更/短絡動作を共振状態変更回路240に実行させる。テスト用要求信号530の受信前においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。fO変更/短絡動作の実行の契機となるならばテスト用要求信号530はどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
応答信号540を受信した給電機器1(IC100)は、上述のpFOD処理を実行する。pFOD処理の実行期間中、電子機器2(IC200)は、fO変更/短絡動作の実行を継続する。具体的には、電子機器2(IC200)は、内蔵タイマを用いて、pFOD処理の実行期間の長さに応じた時間だけfO変更/短絡動作の実行を維持してからfO変更/短絡動作を停止する。
pFOD処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100)は、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100)は、送電回路130Aを共振回路TTに接続して送電動作を実行し、これにより電力伝送570が実現される。上述したように、送電動作の実行時には選択回路470の状態が第1スイッチ状態とされる。
図17(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、図17(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、pFOD処理において給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。1回分の電力伝送570は所定時間だけ行われるものであっても良く、問い合わせ信号510の送信から電力伝送570までの一連の処理を、繰り返し実行するようにしても良い。実際には、図20に示す如く、NFC通信とpFOD処理と電力伝送(NFC電力伝送)とを順番に且つ繰り返し実行することができる。つまり、非接触給電システムでは、NFC通信を行う動作とpFOD処理を行う動作と電力伝送(NFC電力伝送)を行う動作とを、時分割で順番に且つ繰り返し行うことができる。
[給電機器及び電子機器の動作フローチャート]
第2実施形態に係る給電機器1の動作フローチャートは、図21に示すものと同様であり、第1実施形態にて説明した給電機器1の動作の流れが第2実施形態の給電機器1にも適用される。但し、第2実施形態において、送電動作の実行時には選択回路470の状態が第1スイッチ状態とされる。また、上述したように、第1実施形態の記載を第2実施形態に適用する際、第1実施形態の記載中における“送電回路130”を“送電回路130A”に読み替えれば良い。
第2実施形態に係る電子機器2の動作フローチャートは、図22に示すものと同様であり、第1実施形態にて説明した電子機器2の動作の流れが第2実施形態の電子機器2にも適用される。
[mFOD処理]
送電動作の開始後に異物が給電台12上に置かれることもある。mFOD処理は、電力伝送中の異物検出処理として機能し、mFOD処理により電力伝送中において異物の存否が継続監視される。制御回路160は、送電動作を行っている期間において、mFOD処理を繰り返し実行する。mFOD処理にて利用される下限値VmREFL及び上限値VmREFHの内容及び決定方法を含むmFOD処理の内容は、図23、図24(a)及び(b)を参照しつつ第1実施形態で説明したものと同様であるため、重複する説明を省略する。
尚、mFOD処理の役割は、異物の存否判定だけに限られない。即ち、mFOD処理は、電流振幅検出値VmFODがmFOD正常範囲を逸脱するような、送電動作の継続に不適切なあらゆる状況下で、送電許可フラグをOFFとする役割を持つ。例えば、送電動作の開始後、電子機器2が給電台12上から取り去られたとき、送電側コイルTLから見た送電の負荷が軽くなって電流振幅検出値VmFODが上限値VmREFHを超えるため送電許可フラグがOFFとされる(図23のステップS54)。
このように、本実施形態では、低損失のE級増幅器440を用いて送電用の交流電圧を生成するため、電力伝送に関するシステム全体の効率を高めることができる。また、異物検出処理を通じて異物の破損等を回避することができる。E級増幅器440を用いて電力伝送前の異物検出処理(pFOD処理)をも行おうとした場合には上述のノイズ電流振幅変化が異物存否の検出精度に劣化をもたらしうるが、本実施形態では、A級増幅器460を用いて電力伝送前の異物検出処理(pFOD処理)を行うようにしているため、異物存否の検出精度を高く維持することができる。
尚、pFOD処理において交流電圧VAを共振回路TTに供給するための増幅器(460)は、基準周波数の入力交流信号を、正の信号成分に対しても負の信号成分に対しても増幅して出力できる増幅器であるならば、A級増幅器でなくても良く、例えばB級プッシュプル増幅器であっても良い。
<<本発明の考察(その2)>>
上述の第2実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る送電装置W2は、受電装置に対し磁界共鳴方式で電力を送電可能な送電装置において、前記電力を送電するための送電側コイル(TL)を含み且つ所定の基準周波数を共振周波数として持つ送電側共振回路(TT)と、直流電源から供給される直流電圧を前記基準周波数の周期信号を用いてスイッチングすることにより前記基準周波数の送電用交流電圧(VE)を生成及び出力するE級増幅器(440)と、前記基準周波数の入力交流信号を増幅することで前記基準周波数のテスト用交流電圧(VA)を生成及び出力する入力信号増幅器(460)と、前記送電用交流電圧又は前記テスト用交流電圧を選択的に前記送電側共振回路に供給する選択回路(470)と、前記送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路(140)と、前記選択回路を制御することで前記送電側共振回路への供給電圧を制御する制御回路(160)と、を備え、前記制御回路は、前記テスト用交流電圧が前記送電側共振回路に供給されているときにおける前記検出回路の振幅検出値を評価値(VpFOD)として取得し、前記評価値に基づいて前記送電用交流電圧を前記送電側共振回路に供給することによる前記送電の実行可否を制御することを特徴とする。
E級増幅器の利用により高効率の電力伝送が可能となる。一方、送電側コイルの発生磁界に応答する場所に異物が存在しているとき、送電側コイルの電流振幅に変化が現れるという特性がある。この特性を利用すれば、電流振幅変化に基づき異物の存否を検出し、異物の存在が検出された場合には送電の実行を禁止するといった制御が可能となる。
但し、異物が存在しているとき、E級増幅器から送電側共振回路を見たインピーダンス値に変化が生じることがあり、該インピーダンス値の変化はE級増幅器の出力変化をもたらして、結果として送電側コイルの電流振幅に変化をもたらす。インピーダンス値の変化に基づく送電側コイルの電流振幅変化(ノイズ電流振幅変化)は、異物検出のために本来観測されるべき電流振幅変化(検出対象電流振幅変化)の検知に対し阻害要因となる。
そこで、送電装置W2では、E級増幅器とは別に入力信号増幅器を設け、送電の実行前では入力信号増幅器を用いて電流振幅検出値(評価値)を取得するようにする。これにより、E級増幅器による高効率電力伝送の利点を享受しつつ、高い精度での異物検出が担保される(即ち、適正な送電実行可否制御が担保される)。
具体的には例えば、送電装置W2において、前記制御回路は、前記評価値(VpFOD)に基づいて、前記受電装置と異なり且つ前記送電側コイルの発生磁界に基づく電流を発生させられる異物の存否を判断し、その判断結果に基づいて前記送電の実行可否を制御すると良い。
より具体的には例えば、送電装置W2において、前記制御回路は、前記異物が存在しないと判断した場合、前記送電の実行を許可し、前記異物が存在すると判断した場合、前記送電の実行を禁止すると良い。
また例えば、送電装置W2において、前記制御回路は、前記評価値が所定範囲を逸脱しているか否かを判断することで、前記異物の存否を判断すると良い。
また例えば、送電装置W2において、前記E級増幅器(440)は、前記周期信号に応じてスイッチング動作するスイッチング素子(441)と、前記直流電源と前記スイッチング素子との間に介在する第1コイル(442)と、前記スイッチング素子に並列接続された第1コンデンサ(443)と、前記スイッチング素子と前記第1コイルとの接続点に接続された、第2コイル(445)及び第2コンデンサ(444)から成る共振回路と、を有し、該共振回路を通じて前記交流電圧を出力すると良い。
また例えば、送電装置W2において、前記テスト用交流電圧の振幅は、前記送電用交流電圧の振幅よりも小さいと良い。
これにより、評価値を得る際の送電側コイルの発生磁界強度が相対的に低くなり、結果、評価値を得る際の発生磁界による異物の破損等を回避することができる。
また例えば、送電装置W2において、前記E級増幅器への前記周期信号及び前記入力信号増幅器への前記入力交流信号は、前記基準周波数を有する共通の信号に基づいて生成されても良い。
また例えば、送電装置W2に関し、前記受電装置には、前記電力を受電するための受電側コイル(RL)を含み且つ前記基準周波数を共振周波数として持つ受電側共振回路(RR)と、前記受電側共振回路の共振周波数を前記基準周波数から変更する又は前記受電側コイルを短絡する変更/短絡回路(240)と、が設けられ、前記評価値の取得が行われる際には、当該送電装置からの通信による信号に従い、前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われると良い。
これにより、送電側コイルの電流振幅に対する受電側共振回路の影響を抑制することができ、異物の高い検出精度を担保することが可能となる。
尚、上述の第2実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の第2実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の第2実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の第2実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態でも、第1実施形態と同様、図1(a)又は図1(b)に示された給電機器1及び電子機器2から成る非接触給電システムの詳細を説明する。第3実施形態は、第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾無き限り、第1実施形態にて上述した事項が第3実施形態にも適用される。第3実施形態において、第1実施形態中の記載と第3実施形態中の記載の間で矛盾する事項に関しては、第3実施形態中の記載が優先される。また、第3実施形態は、第2実施形態を基礎とする実施形態であっても良く、第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾無き限り、第2実施形態にて上述した事項が第3実施形態にも適用されても良い。この場合、第3実施形態において、第2実施形態中の記載と第3実施形態中の記載の間で矛盾する事項に関しては、第3実施形態中の記載が優先される。
まず、図1(a)、図1(b)、図2及び図3を参照しつつ第1実施形態にて述べた事項は、第3実施形態にも適用される。但し、第3実施形態における送電側IC100を、以下では送電側IC100B又は単にIC100Bと称し、第3実施形態における受電側IC200を、以下では送電側IC200B又は単にIC200Bと称する。
故に(図1(b)及び図2参照)、第3実施形態に係る給電機器1は、電源プラグ11を介して入力された商用交流電圧から所定の電圧値を有する直流電圧を生成して出力するAC/DC変換部13と、AC/DC変換部13の出力電圧を用いて駆動する集積回路である送電側IC100Bと、IC100Bに接続された送電側共振回路TTと、を備えて構成されることになり、第3実施形態に係る電子機器2は、集積回路である受電側IC200Bと、IC200Bに接続された受電側共振回路RRと、二次電池であるバッテリ21と、バッテリ21の出力電圧に基づき駆動する機能回路22と、を備えて構成されることになる。
基準配置状態及び離間状態の定義については第1実施形態に示した通りであるが、第3実施形態では、以下のように表現することもできる。
電子機器2が給電台12上の所定範囲内に載置され、上述のNFC通信及び電力伝送が実現できる状態を、基準配置状態と呼ぶ(図1(b)参照)。磁気共鳴を利用した場合、相手側距離との距離が比較的大きくても通信及び電力伝送が可能であるが、電子機器2が給電台12から相当距離離れれば、NFC通信及び電力伝送は実現できなくなる。電子機器2が給電台12から十分に離れていて、上述のNFC通信及び電力伝送を実現できない状態を、離間状態と呼ぶ(図1(a)参照)。尚、図1(a)に示す給電台12では、表面が平らになっているが、載置されるべき電子機器2の形状に合わせた窪み等が給電台12に形成されていても構わない。
図33に、IC100Bの内部ブロック図を含む、給電機器1の一部の構成図を示す。IC100Bには、符号110B、120、130B、140、150及び160によって参照される各部位が設けられる。第3実施形態に係る給電機器1にはn個の共振回路TTが設けてられており、該n個の共振回路TTがIC100Bに接続される。n個の共振回路TTを互いに区別する必要がある場合、n個の共振回路TTを記号TT[1]〜TT[n]にて参照する。nは2以上の任意の整数である。共振回路TT[1]〜TT[n]の夫々は、第1実施形態で述べた共振回路TTと同じ構成を有する。共振回路TT[1]〜TT[n]の共振周波数は全て基準周波数に設定されている。以下の説明において、単に送電側コイルTL、送電側コンデンサTCといった場合、それらは、夫々、共振回路TT[1]〜TT[n]の任意の何れかにおける送電側コイルTL、送電側コンデンサTCを指す。
図34に、IC200Bの内部ブロック図を含む、電子機器2の一部の構成図を示す。IC200Bには、符号210B、220、230、240及び250によって参照される各部位が設けられる。また、IC200Bに対し、IC200Bの駆動電圧を出力するコンデンサ23を接続しておいても良い。コンデンサ23は、給電機器1から受信したNFC通信のための信号を整流することで得た直流電圧を出力可能である。
切り替え回路110Bは、制御回路160の制御の下、共振回路TT[1]〜TT[n]の内の1以上の共振回路をNFC通信回路120及びNFC送電回路130Bのどちらかに接続させる。共振回路TT[1]〜TT[n]と回路120及び130Bとの間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路110Bを構成することができる。本明細書にて述べる任意のスイッチは、電界効果トランジスタ等の半導体スイッチング素子を用いて形成されて良い。
切り替え回路210Bは、制御回路250の制御の下、共振回路RRをNFC通信回路220及びNFC受電回路230のどちらかに接続させる。共振回路RRと回路220及び230との間に介在する複数のスイッチにて、切り替え回路210Bを構成することができる。
第3実施形態においては、共振回路TT[1]が切り替え回路110Bを介してNFC通信回路120に接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210Bを介してNFC通信回路220に接続されている状態を、通信用接続状態と呼ぶ。通信用接続状態にてNFC通信が可能となる。通信用接続状態において、NFC通信回路120は、基準周波数の交流信号(交流電流)を共振回路TT[1]に供給することができる。機器1及び2間のNFC通信は半二重方式で実行される。
通信用接続状態において給電機器1が送信側であるとき、NFC通信回路120が共振回路TT[1]に供給する交流信号に任意の情報信号を重畳させることで、当該情報信号が給電機器側アンテナコイルとしての共振回路TT[1]のコイルTLから送信され且つ電子機器側アンテナコイルとしての共振回路RRのコイルRLにて受信される。コイルRLにて受信された情報信号はNFC通信回路220にて抽出される。通信用接続状態において電子機器2が送信側であるとき、NFC通信回路220は、任意の情報信号(応答信号)を共振回路RRのコイルRLから共振回路TT[1]のコイルTLに送信できる。この送信は、周知の如く、ISO規格(例えばISO14443規格)に基づき、共振回路TT[1]のコイルTL(給電機器側アンテナコイル)から見た共振回路RRのコイルRL(電子機器側アンテナコイル)のインピーダンスを変化させる負荷変調方式にて実現される。電子機器2から伝達された情報信号はNFC通信回路120にて抽出される。
第3実施形態においては、共振回路TT[1]〜TT[n]が切り替え回路110Bを介してNFC送電回路130Bに接続され、且つ、共振回路RRが切り替え回路210Bを介してNFC受電回路230に接続されている状態を、給電用接続状態と呼ぶ。給電用接続状態における共振回路TT[1]〜TT[n]とNFC送電回路130Bとの接続方法の詳細については後述される。
給電用接続状態において、NFC送電回路130Bは送電動作を行うことができ、NFC受電回路230は受電動作を行うことができる。送電動作と受電動作にて電力伝送が実現される。送電動作において、送電回路130Bは、共振回路TT[1]〜TT[n]に基準周波数の送電用交流電圧(送電用交流信号)を供給することで共振回路TT[1]〜TT[n]の送電側コイルTLに基準周波数の送電用磁界(送電用交番磁界)を発生させ、これによって、共振回路TT[1]〜TT[n]の送電側コイルTLから共振回路RRに対し磁界共鳴方式で電力を送電する。送電動作における送電用磁界は、共振回路TT[1]〜TT[n]の送電側コイルTLの全てによる合成発生磁界である。但し、詳細は後述の説明から明らかとなるが、送電は主として共振回路TT[1]により実現され、送電用磁界の主たる発生元は共振回路TT[1]の送電側コイルTLである。故に、送電動作において、共振回路TT[1]に供給される送電用交流電圧の振幅は共振回路TT[2]〜TT[n]に供給される送電用交流電圧の振幅よりも相当に大きくされる。送電動作に基づき受電側コイルRLにて受電された電力は受電回路230に送られ、受電動作において、受電回路230は、受電した電力から任意の直流電力を生成して出力する。受電回路230の出力電力にてバッテリ21を充電することができる。
通信用接続状態にてNFC通信を行う場合も、コイルTL又はRLにて磁界が発生するが、NFC通信における発生磁界強度は、所定の範囲内に収まる。その範囲の下限値及び上限値は、NFCの規格で定められ、夫々、1.5A/m、7.5A/mである。これに対し、送電用磁界の磁界強度は、上記の上限値より大きく、例えば45〜60A/m程度である。機器1及び2を含む非接触給電システムにおいて、NFC通信及び電力伝送(NFC電力伝送)を交互に行うことができ、その時の磁界強度の様子を図6に示す。
負荷検出回路140は、各送電側コイルTLの負荷の大きさ、即ち、送電回路130Bから各送電側コイルTLに交流信号(交流電流)が供給されるときにおける各送電側コイルTLにとっての負荷の大きさを検出する。磁界を発生させる送電側コイルTLにとって、受電側コイルRLのような、送電側コイルTLと磁気結合するコイルは、負荷であると考えることができ、その負荷の大きさに依存して、送電側コイルTLに流れる電流の振幅(以下、単に電流振幅とも言う)が変化する。第3実施形態に係る負荷検出回路140は、共振回路TT[1]〜TT[n]ごとに、送電側コイルTLの電流振幅を検出することで当該送電側コイルTLにとっての負荷の大きさを検出することができる。
図35に示す如く、例えば、共振回路TT[i]において、送電側コイルTLに流れる電流と同じ電流がセンス抵抗141に流れるよう、送電側コイルTLに対しセンス抵抗141を直列接続しておき、センス抵抗141の電圧降下を検出することで送電側コイルTLの電流振幅を検出することができる(iは任意の整数)。第3実施形態において、図8の実線波形は、共振回路TT[i]のセンス抵抗141における電圧降下の波形を表す。共振回路TT[i]に関し、送電側コイルTLの発生磁界強度が一定の下、電子機器2を給電台12に近づけると、送電側コイルTLの発生磁界に基づく電流が受電側コイルRLに流れる一方で、受電側コイルRLに流れた電流に基づく逆起電力が送電側コイルTLに発生し、その逆起電力は送電側コイルTLに流れる電流を低減するように作用する。このため、図8に示す如く、基準配置状態におけるセンス抵抗141の電圧降下の振幅(図8のvに相当する)は、離間状態におけるそれよりも小さくなる。つまり、送電側コイルTLの電流振幅に相当するセンス抵抗141の電圧降下の振幅を検出すれば、送電側コイルTLにとっての負荷の大きさを検出することができる。
メモリ150(図33参照)は、不揮発性メモリから成り、任意の情報を不揮発的に記憶する。制御回路160は、IC100B内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路160が行う制御には、例えば、切り替え回路110Bの切り替え動作の制御、通信回路120及び送電回路130Bによる通信動作及び送電動作の内容制御及び実行有無制御、負荷検出回路140の動作制御、メモリ150の記憶制御及び読み出し制御が含まれる。制御回路160は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。
電子機器2における共振状態変更回路240(図34参照)は、共振回路RRの共振周波数を基準周波数から他の所定周波数fMに変更可能な共振周波数変更回路、又は、共振回路RRにおける受電側コイルRLを短絡可能なコイル短絡回路である。
図9の共振周波数変更回路240Aは、共振状態変更回路240としての共振周波数変更回路の例であり、回路240Aの構成及び動作は第1実施形態で述べた通りである。ここでは、スイッチ242がオンのとき共振回路RRが送電側コイルTLの負荷として機能しない程度に(即ち、共振回路TT[i]及びRR間で磁気共鳴が十分に発生しない程度に)、周波数fMが基準周波数から離れているものとする(iは整数)。例えば、スイッチ242のオンのときにおける共振回路RRの共振周波数(即ち周波数fM)は、数100kHz〜1MHzとされる。但し、第1実施形態でも述べたように、共振回路RRの共振周波数を周波数fMに変更できる限り、変更回路240としての共振周波数変更回路は共振周波数変更回路240Aに限定されず、周波数fMは基準周波数より高くても良い。
図10のコイル短絡回路240Bは、共振状態変更回路240としてのコイル短絡回路の例であり、回路240Bの構成及び動作は第1実施形態で述べた通りである。受電側コイルRLを短絡できる限り、変更回路240としてのコイル短絡回路はコイル短絡回路240Bに限定されない。
第1実施形態と同様、受電側共振回路RRの共振周波数fOを基準周波数から所定周波数fMに変更する動作を、共振周波数変更動作と呼び、コイル短絡回路を用いて受電側コイルRLを短絡する動作を、コイル短絡動作と呼ぶ。また、記述の簡略化上、共振周波数変更動作又はコイル短絡動作をfO変更/短絡動作と称することがある。
制御回路250(図34参照)は、IC200B内の各部位の動作を統括的に制御する。制御回路250が行う制御には、例えば、切り替え回路210Bの切り替え動作の制御、通信回路220及び受電回路230による通信動作及び受電動作の内容制御及び実行有無制御、変更回路240の動作制御が含まれる。制御回路250は、タイマ(不図示)を内蔵しており任意のタイミング間の時間長さを計測できる。例えば、制御回路250におけるタイマは、fO変更/短絡動作による共振周波数fOの所定周波数fMへの変更又は受電側コイルRLの短絡が維持される時間の計測(即ち後述の時間TMの計測;図44のステップS207B参照)を行うことできる。
ところで、給電機器1の制御回路160は、給電台12上における異物の存否を判断し、異物が無い場合にのみ送電動作を行うよう送電回路130Bを制御できる。第3実施形態における異物は、電子機器2及び電子機器2の構成要素(受電側コイルRLなど)と異なる物体であって、且つ、給電機器1に近づいたときに、各共振回路TTの送電側コイルTLの発生磁界に基づいて電流(異物内での電流)を発生させられる物体を含む。本実施形態において、異物の存在とは、各共振回路TTの送電側コイルTLの発生磁界に基づく、無視できない程度の電流が異物内で流れるような位置に異物が存在することを意味する、と解して良い。尚、送電側コイルTLの発生磁界に基づき異物内で流れることになった電流は、異物に対向、結合するコイル(TLやRL)に起電力(又は逆起電力)を発生させるため、そのコイルを含む回路の特性に無視できない影響を与えうる。
図11(a)及び(b)に示した異物3は、第3実施形態における異物の一種である。
このような異物3が給電台12上に配置されている状態において、仮に、給電機器1が送電動作を行うと、送電側コイルTLが発生した強磁界(例えば、12A/m以上の磁界強度を持つ磁界)にて異物3が破壊されることがある。例えば、送電動作時における強磁界は、給電台12上の異物3のコイルJLの端子電圧を100V〜200Vまで増大させることもあり、そのような高電圧に耐えられるように異物3が形成されていなければ、異物3が破壊される。
異物3が存在するとき、異物3のコイルJLが送電側コイルTL及び/又は受電側コイルRLと磁気結合する結果、送電側コイルTLの電流振幅に変化がみられる。この特性を利用して、該電流振幅に基づき異物3の存否判断を行うことができる。但し、異物3が持つアンテナコイル(コイルJL)の形状として様々な形状が存在し、その形状に依存して、異物3の存在による上記電流振幅の変化が様々となる。
図36(a)〜(f)を参照し、これについて説明を加える。AT1〜AT6の夫々は、非接触ICカードに搭載されるべきアンテナコイルとして、ISO14443の規格にて定められたリファレンスアンテナコイルを表している。アンテナコイルAT1〜AT6の何れかを図11(b)のコイルJLとして有する非接触ICカードは異物3となりうる。アンテナコイルAT1〜AT6の形状は互いに異なり、基本的に、AT1からAT6に向かうにつれてアンテナコイルの大きさが小さくなっている。本明細書において、コイルの形状とは、コイルの大きさを含む概念である。故に、第1のコイルと第2のコイルとの間で相似の関係があっても、それらの大きさが異なれば第1のコイルと第2のコイルとの間で形状が異なる。任意のコイルに関し、コイルの大きさとは、コイルの中心軸に直交する方向においてコイルの外周が占有する面積を表すと考えて良い。コイルがループアンテナを形成している場合には、そのループアンテナのループ面(即ち、当該コイルの巻線が配置されている面)における、当該コイルの巻線に囲まれた部分の面積が当該コイルの大きさに相当する。
NFC通信及び電力伝送で用いられる共振回路TT[1]の送電側コイルTLは、アンテナコイルAT1〜AT6の何れであっても良いし或いはアンテナコイルAT1〜AT6と異なるアンテナコイルであっても良いが、ここでは、アンテナコイルAT6と同じアンテナコイルが共振回路TT[1]の送電側コイルTLとして用いられているものとする。これに対応して、アンテナコイルAT6と同じアンテナコイル又はアンテナコイルAT6と近似したアンテナコイルが電子機器2における受電側コイルRLとして用いられると良い。
アンテナコイルAT6と同じアンテナコイルが共振回路TT[1]の送電側コイルTLとして用いられる場合において、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT6であるときには、共振回路TT[1]の送電側コイルTLと異物3のコイルJLとの磁気結合度合いが比較的大きく、共振回路TT[1]の送電側コイルTLの電流振幅を利用した異物3の存否検出感度が十分に高くなる(異物3が有る時と無いときとで図8の電圧vの変化が比較的大きくなる)。しかし、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT1であるときには、共振回路TT[1]の送電側コイルTLと異物3のコイルJLとの磁気結合度合いが比較的小さくなるため、共振回路TT[1]の送電側コイルTLの電流振幅を利用した異物3の存否検出感度が低下し(異物3が有る時と無いときとで図8の電圧vの変化が比較的小さくなり)、異物3の存否検出の精度が落ちる。
これを考慮し、本実施形態では、共振回路TT[1]に加えて共振回路TT[2]〜TT[n]を給電機器1に設け、共振回路TT[1]〜TT[n]を用いて異物の存否を検出する。共振回路TT[1]〜TT[n]における計n個の送電側コイルTLは、互いに異なる形状(上述したように大きさを含む)を持つアンテナコイルであり、例えば、n=6とする場合、共振回路TT[2]〜TT[6]における送電側コイルTLは、夫々、アンテナコイルAT1〜AT5と同じ形状を有していて良い。
以下では、説明の具体化のため、主として“n=2”であると考える。ここでは、共振回路TT[1]の送電側コイルTLがアンテナコイルAT6と同じ形状を有しているのに対し、共振回路TT[2]の送電側コイルTLはアンテナコイルAT3と同じ形状を有しているものとする。従って、共振回路TT[1]の送電側コイルTLの大きさは、共振回路TT[2]の送電側コイルTLの大きさよりも小さい。
図37は、送電回路130Bと共振回路TT[1]及びTT[2]の回路図である。図37に示す各回路及び各部品が給電機器1に設けられる。尚、図37では、給電用接続状態が想定されており、切り替え回路110Bの図示が省略されている。任意の整数iに関し、共振回路TT[i]におけるコイルTL及びコンデンサTCを夫々特に記号TL[i]及びTC[i]にて参照する。
任意の整数iに関し、共振回路TT[i]にはインピーダンス整合用のコンデンサMTC[i]が設けられる。負荷検出回路140は、共振回路TTごとに設けられた単位検出回路を有する。共振回路TT[i]に対して設けられた単位検出回路を記号140[i]にて表す。任意の整数iに関し、検出回路140[i]は、符号141[i]〜144[i]によって参照される各部位を備え、電圧値VDET[i]を出力する。また、スイッチSW1a、SW1b、SW2a、SW2b、SW3、SW4及びSW5から成るスイッチ回路が給電機器1には設けられ、当該スイッチ回路を構成する各スイッチは制御回路160によってオン、オフが制御される。当該スイッチ回路の全部又は一部は、切り替え回路110Bの構成要素であると考えても良い。また、給電機器1において、スイッチSW3に対して直列に分圧用抵抗RDVが設けられている。
送電回路130Bは、基準周波数の正弦波信号を生成する信号生成器131と、信号生成器131にて生成された正弦波信号を増幅し、これによって得た正弦波状の交流電圧V0を所定のグランド電位を基準としてライン133に出力する増幅器(パワーアンプ)132と、を備える。信号生成器131が生成する正弦波信号の信号強度は一定値に固定されているが、増幅器132の増幅率は制御回路160により可変設定される。つまり、交流電圧V0の大きさ(振幅)は制御回路160により可変制御される。
給電用接続状態において、ライン133はスイッチSW4の一端及びスイッチSW5の一端に接続され、スイッチSW4の他端、スイッチSW5の他端は、夫々、ラインLN[1]、ラインLN[2]に接続される。ラインLN[1]にはスイッチSW3の一端が接続され、スイッチSW3の他端は分圧用抵抗RDVを介してラインLN[2]に接続される。
共振回路TT[1]において、コンデンサTC[1]の一端は、コンデンサMTC[1]を介してラインLN[1]に接続されると共にスイッチSW1aを介してコイルTL[1]の一端に接続され、且つ、コンデンサTC[1]の他端は、センス抵抗141[1]及びスイッチSW1bの直列回路を介してコイルTL[1]の他端に接続される。また、コンデンサTC[1]の他端とセンス抵抗141[1]との接続点にはグランド電位が与えられる。
共振回路TT[2]において、コンデンサTC[2]の一端は、コンデンサMTC[2]を介してラインLN[2]に接続されると共にスイッチSW2aを介してコイルTL[2]の一端に接続され、且つ、コンデンサTC[2]の他端は、センス抵抗141[2]及びスイッチSW2bの直列回路を介してコイルTL[2]の他端に接続される。また、コンデンサTC[2]の他端とセンス抵抗141[2]との接続点にはグランド電位が与えられる。
単位検出回路140[1]及び140[2]は互いに同じ回路構成を有し、互いに同じ動作を実現する。単位検出回路140[1]又は140[2]である回路140[i]において、包絡線検波器142[i]は、センス抵抗141[i]における電圧降下の信号の包絡線を検波することで図8の電圧vに比例するアナログの電圧信号を出力し、増幅器143[i]は、包絡線検波器142の出力信号を増幅して出力し、A/D変換器144[i]は、増幅器143[i]の出力電圧信号をデジタル信号に変換することでデジタルの電圧値VDET[i]を出力する。上述の説明から理解されるように、電圧値VDET[i]は、センス抵抗141[i]に流れる電流の振幅(従って、送電側コイルTL[i]に流れる電流の振幅)に比例する値を持つ(当該振幅の増大に伴って電圧値VDET[i]も増大する)。故に、単位検出回路140[i]は、送電側コイルTL[i]に流れる電流の振幅を検出する電流振幅検出回路であるとも言え、その振幅検出値が電圧値VDET[i]であると考えることができる。尚、包絡線検波器142[i]を増幅器143[i]の後段に設けるようにしても良い。但し、図37に示す如く、包絡線検波器142[i]を増幅器143[i]の前段に設けた方が、高周波への応答性能がより低いものを増幅器143[i]として採用可能となり有利である。
V1は、ラインLN[1]に加わる電圧であって、共振回路TT[1]への供給電圧を表す。V2は、ラインLN[2]に加わる電圧であって、共振回路TT[2]への供給電圧を表す。コンデンサMTC[i]は、送電回路130Bから共振回路TT[i]を見たインピーダンス値を所望値にするためのインピーダンス整合用コンデンサである。該所望値はここでは50Ωであるとする。本実施形態におけるインピーダンスとは、特に記述無き限り、基準周波数におけるインピーダンスを指す。
図38は、スイッチSW1a、SW1b、SW2a、SW2b、SW3、SW4及びSW5のオン/オフ状態並びに送電回路130Bから共振回路TT[1]及びTT[2]への供給電圧の状態を示したものであり、給電機器1では、第1〜第3電圧供給状態の何れかの状態をとりうる。第1〜第3電圧供給状態の夫々は給電用接続状態の一形態である。スイッチSW1a、SW1b、SW2a、SW2b、SW3、SW4及びSW5の内、第1電圧供給状態ではスイッチSW1a、SW1b及びSW4のみがオンとされ(従って他のスイッチはオフとされ)、第2電圧供給状態ではスイッチSW2a、SW2b及びSW5のみがオンとされ(従って他のスイッチはオフとされ)、第3電圧供給状態ではスイッチSW1a、SW1b、SW2a、SW2b、SW3及びSW4のみがオンとされる(従ってスイッチSW5はオフとされる)。
また、第1及び第2電圧供給状態では、増幅器(パワーアンプ)132の出力交流電圧V0が所定振幅を有する交流電圧V0Lとされる。従って、第1電圧供給状態では、交流電圧V0Lが電圧V1として共振回路TT[1]に供給される一方で共振回路TT[2]への供給電圧V2はゼロとなり、且つ、第2電圧供給状態では、交流電圧V0Lが電圧V2として共振回路TT[2]に供給される一方で共振回路TT[1]への供給電圧V1はゼロとなる。
第3電圧供給状態では、増幅器(パワーアンプ)132の出力交流電圧V0が所定振幅を有する交流電圧V0Hとされる。ここで、交流電圧V0Hは交流電圧V0Lよりも大きな交流電圧である。即ち、交流電圧V0Hの振幅は交流電圧V0Lの振幅よりも大きい。例えば、交流電圧V0Hの振幅は交流電圧V0Lの振幅の数倍程度とされる。第3電圧供給状態では、交流電圧V0Hが電圧V1として共振回路TT[1]に供給される一方で交流電圧(kDV×V0H)が電圧V2として共振回路TT[2]に供給される。第3電圧供給状態において、共振回路TT[2]への供給電圧(kDV×V0H)は、共振回路TT[1]への供給電圧V0Hの分圧に相当する。kDVは、送電回路130Bから見た分圧用抵抗RDVのインピーダンス値と共振回路TT[2]のインピーダンス値との比に基づいて定まる分圧比であり、当然に1より小さい。例えば、kDVが数10分の1〜数分の1程度になるように、分圧用抵抗RDVの抵抗値を定めておけば良い。電圧(kDV×V0H)の振幅は電圧V0Lの振幅と同一であって良い又は類似していて良い。
本実施形態に係る非接触給電システムでは、負荷検出回路140の出力値であるVDET[1]及びVDET[2]を用いて異物の存否を検出する異物検出処理を実行できる。異物検出処理として、pFOD処理及びmFOD処理がある。pFOD処理は、電力伝送前に実行される異物検出処理であり、mFOD処理は、電力伝送中に実行される異物検出処理である。
[pFOD処理(電力伝送前の異物検出処理)]
図39を参照し、第3実施形態に係るpFOD処理を説明する。図39は、第3実施形態に係るpFOD処理のフローチャートである。図39のpFOD処理において、制御回路160は、まずステップS11Bにて第1電圧供給状態を実現することで共振回路TT[1]にのみ比較的小さな交流電圧V0Lを供給する。これにより、送電側コイルTL[1]にてテスト磁界が発生する。テスト磁界は、所定のテスト強度を磁界強度として有し且つ基準周波数で振動する交番磁界である。テスト強度は、電力伝送(即ち送電動作)中にて発生する送電用磁界の磁界強度(例えば、45〜60A/m)よりも相当に小さく、通信用磁界強度の下限値“1.5A/m”から上限値“7.5A/m”までの範囲内に収まる。故に、テスト磁界によって異物3が破損等するおそれは無い又は少ない。
ステップS11Bに続くステップS12Bにおいて、制御回路160は、送電側コイルTL[1]にてテスト磁界を発生させているときの電圧値VDET[1]を電流振幅検出値VpFOD[1]として取得する。電流振幅検出値VpFOD[1]は、テスト磁界を送電側コイルTL[1]にて発生させているときの、送電側コイルTL[1]の電流振幅に応じた値を持つ。尚、pFOD処理が実行される期間中には、NFC通信を介した給電機器1からの指示に従い電子機器2においてfO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)が実行されている。故に、共振回路RR(受電側コイルRL)は実質的に送電側コイルTL[1]の負荷として機能せず、電流振幅検出値VpFOD[1]の減少を全く又は殆どもたらさない。
ステップS12Bに続くステップS13Bにおいて、制御回路160は、電流振幅検出値VpFOD[1]が所定の第1のpFOD正常範囲内に収まるか否かを判断する。そして、電流振幅検出値VpFOD[1]が第1のpFOD正常範囲内に収まる場合、ステップS14Bに進む(第1のpFOD正常範囲については後述)。
ステップS14Bにおいて、制御回路160は、第2電圧供給状態を実現することで共振回路TT[2]にのみ比較的小さな交流電圧V0Lを供給する。これにより、送電側コイルTL[2]にてテスト磁界が発生する。
ステップS14Bに続くステップS15Bにおいて、制御回路160は、送電側コイルTL[2]にてテスト磁界を発生させているときの電圧値VDET[2]を電流振幅検出値VpFOD[2]として取得する。電流振幅検出値VpFOD[2]は、テスト磁界を送電側コイルTL[2]にて発生させているときの、送電側コイルTL[2]の電流振幅に応じた値を持つ。上述したように、pFOD処理が実行される期間中には、NFC通信を介した給電機器1からの指示に従い電子機器2においてfO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)が実行されている。故に、共振回路RR(受電側コイルRL)は実質的に送電側コイルTL[2]の負荷として機能せず、電流振幅検出値VpFOD[2]の減少を全く又は殆どもたらさない。
ステップS15Bに続くステップS16Bにおいて、制御回路160は、電流振幅検出値VpFOD[2]が所定の第2のpFOD正常範囲内に収まるか否かを判断する。そして、電流振幅検出値VpFOD[2]が第2のpFOD正常範囲内に収まる場合、ステップS17Bに進む。
電流振幅検出値VpFOD[1]が第1のpFOD正常範囲内に収まり且つ電流振幅検出値VpFOD[2]が第2のpFOD正常範囲内に収まる場合に限って移行するステップS17Bにおいて、制御回路160は、異物が給電台12上に存在していないと判定する。この判定を異物無判定と称する。一方、電流振幅検出値VpFOD[1]が第1のpFOD正常範囲内を逸脱する場合又は電流振幅検出値VpFOD[2]が第2のpFOD正常範囲内を逸脱する場合には、ステップS18Bへの移行が発生する。ステップS18Bにおいて、制御回路160は、異物が給電台12上に存在していると判定する。この判定を異物有判定と称する。制御回路160は、異物無判定を成した場合、送電回路130Bによる送電動作の実行が可能であると判断して送電動作の実行開始を許可し、異物有判定を成した場合、送電回路130Bによる送電動作の実行が不可であると判断して送電動作の実行開始を禁止(制限)する。
第1のpFOD正常範囲は、所定の下限値VpREFL[1]以上且つ所定の上限値VpREFH[1]以下の範囲である(0<VpREFL[1]<VpREFH[1])。第2のpFOD正常範囲は、所定の下限値VpREFL[2]以上且つ所定の上限値VpREFH[2]以下の範囲である(0<VpREFL[2]<VpREFH[2])。故に、判定不等式“VpREFL[1]≦VpFOD[1]≦VpREFH[1]”及び“VpREFL[2]≦VpFOD[2]≦VpREFH[2]”の双方が満たされる場合に限って異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。第1のpFOD正常範囲と第2のpFOD正常範囲は、互いに同じでありうるし、下限値及び/又は上限値において互いに異なりうる。
pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3が存在している場合、異物3の共振回路JJ(コイルJL)が送電側コイルTL[i]の負荷として機能し、結果、給電台12上に異物3が存在しない場合と比べて、電流振幅検出値VpFOD[i]の減少がみられる。本実施形態では、大きさの異なる複数の送電側コイルの電流振幅検出値を用いて異物3の存否を判断するため、異物3の検出精度の向上が図られる。
また、異物として、異物3と異なる異物3a(不図示)も考えられる。異物3aは、例えば、アルミニウムを含んで形成された金属体(アルミニウム箔やアルミニウム板)や銅を含んで形成された金属体である。pFOD処理の実行時において、給電台12上に異物3aが存在している場合、給電台12上に異物3aが存在しない場合と比べて、電気的及び磁気的な作用により、電流振幅検出値VpFOD[i]の増大がみられる。
電力伝送の実行前において、給電台12上に異物3が存在している場合には電流振幅検出値VpFOD[i]が下限値VpREFL[i]を下回るように、且つ、給電台12上に異物3aが存在している場合には電流振幅検出値VpFOD[i]が上限値VpREFH[i]を上回るように、且つ、給電台12上に異物(3又は3a)が存在していない場合には電流振幅検出値VpFOD[i]が第iのpFOD正常範囲内に収まるように、実験又は計算等を介して、下限値VpREFL[i]及び上限値VpREFH[i]が予め設定されてメモリ150に記憶されている。
尚、給電台12上に異物3aが存在する状態で送電用磁界を発生させると、異物3aにて電力が吸収され、異物3aが発熱するおそれがある。本実施形態では、電力伝送の搬送波周波数としての基準周波数が13.56MHzであることを想定しているため、そのような発熱のおそれは十分に少ないとも言える。故に、異物3aの存在を考慮することなく、第1及び第2のpFOD正常範囲における上限値を撤廃しても良い(この場合、VpREFH[1]及びVpREFH[2]が無限大であると考えることができる)。しかしながら、本実施形態に係る発明において基準周波数は13.56MHzに限定されず、基準周波数を例えば数100kHz程度にした場合には、異物3aの発熱のおそれが高くなるため、下限値VpREFL[i]だけでなく上限値VpREFH[i]を第iのpFOD正常範囲に定める、上述の方法の採用が望ましい。
尚、第1電圧供給状態では、共振回路TT[1]についての検出値VpFOD[1]を取得する際に、スイッチSW2a及びSW2bがオフとされて実質的に共振回路TT[2]が形成されなくなるので、送電側コイルTL[2]が異物3のコイルTJのように振る舞うことが防止される。第2電圧供給状態についても同様である。
下限値VpREFL[i]の決定方法について説明を加えておく。下限値VpREFL[i]は初期設定処理にて決定される。図40は、第3実施形態に係る初期設定処理の動作フローチャートである。第3実施形態に係る初期設定処理は、以下の初期設定環境の下でIC100Bにより実行される。初期設定環境では、各送電側コイルTL[i]に対する負荷が全く無く又は無視できる程度に小さく、各送電側コイルTL[i]の発生磁界により電流を生じさせられる物体(送電側コイルTL[i]に磁気結合するコイルを含む)が、給電機器1の構成部品を除いて存在しない。図1(a)の離間状態は、初期設定環境を満たすと考えても良い。初期設定環境の確保を担保すべく、例えば、給電機器1の製造時又は出荷時などにおいて初期設定処理を行うようにしても良い。但し、初期設定環境を確保できるのであれば、任意のタイミングで初期設定処理を行うことができる。
初期設定処理において、制御回路160は、まずステップS21Bにて第1電圧供給状態を実現することで共振回路TT[1]にのみ比較的小さな交流電圧V0Lを供給する。これにより、送電側コイルTL[1]にてテスト磁界が発生する。ステップS21Bに続くステップS22Bにおいて、制御回路160は、送電側コイルTL[1]にてテスト磁界を発生させているときの電圧値VDET[1]を電圧値VINIT[1]として取得し、電圧値VINIT[1]に基づく下限値VpREFL[1]をメモリ150に記憶させる。続くステップS23Bにて第2電圧供給状態を実現することで共振回路TT[2]にのみ比較的小さな交流電圧V0Lを供給する。これにより、送電側コイルTL[2]にてテスト磁界が発生する。ステップS23Bに続くステップS24Bにおいて、制御回路160は、送電側コイルTL[2]にてテスト磁界を発生させているときの電圧値VDET[2]を電圧値VINIT[2]として取得し、電圧値VINIT[2]に基づく下限値VpREFL[2]をメモリ150に記憶させる。
下限値VpREFL[i]は、異物3の存在下においてのみpFOD処理にて異物有判定が成されるよう、電圧値VINIT[i]よりも低い値に設定される。例えば、“VpREFL[i]=VINIT[i]−ΔV”、又は、“VpREFL[i]=VINIT[i]×k”とすると良い。ΔVは、所定の正の微小値である(但し、ΔV=0とすることも可能)。kは、1未満の正の所定値を有する係数である。尚、初期設定環境下においてテスト磁界を送電側コイルTL[i]にて発生させたときに得られるであろう電圧値VINIT[i]を、設計段階で見積もることができる。この見積によって導出された値に基づき、初期設定処理を行うことなく、下限値VpREFL[i]を決定してメモリ150に記憶させるようにしても良い。
図17(a)〜図17(d)を参照して第1〜第4ケースを考える。第1ケースでは、給電台12上に電子機器2のみが存在している。第2ケースでは、給電台12上に電子機器2及び異物3が存在している。第3ケースでは、給電台12上に異物3のみが存在している。第4ケースでは、給電台12上に電子機器2も異物3も存在していない。
上述したように、pFOD処理が実行される期間中には電子機器2においてfO変更/短絡動作が実行されているため、第1ケースでは、送電側コイルTLにとっての負荷が十分に軽くなり(即ち、あたかも、給電台12上に電子機器2が存在しないかのような状態となり)、検出値VpFOD[1]及びVpFOD[2]が夫々のpFOD正常範囲に収まる結果、異物無判定が成される。一方、第2ケースでは、共振回路RRの共振周波数が上記周波数fMへと変更されるものの又は受電側コイルRLが短絡されるものの、異物3は送電側コイルTL[i]の負荷として存在し続けるため(異物3の共振回路JJの共振周波数は基準周波数のままであるため)、検出値VpFOD[1]及びVpFOD[2]の一部又は全部が十分に小さくなり、結果、異物有判定が成される。
第3及び第4ケースでは、NFC通信に応答する電子機器2が給電台12上に存在しないため、そもそも送電動作は不要であり、従ってpFOD処理自体が実行されない。給電機器1は、NFC通信により、電力伝送に対応可能な電子機器2が給電台12上に存在しているか否かを判断できる。尚、異物3が給電台12上に存在する状態は、異物3が給電台12に直接接触している状態に限定されない。例えば、図18に示す如く、給電台12上に電子機器2が直接接触する形で存在し且つ電子機器2の上に異物3が存在しているような状態も、異物有判定が成される限り、異物3が給電台12上に存在する状態に属する。
[mFOD処理(電力伝送中の異物検出処理)]
次に、第3実施形態に係るmFOD処理を説明する。mFOD処理は、その処理の中で異物有判定が成されない限り、電力伝送中において繰り返し実行される。第3実施形態において、電力伝送中は第3電圧供給状態が維持されるため、mFOD処理は第3電圧供給状態にて実行されることになる。第3電圧供給状態では、共振回路TT[1]に交流電圧V0Hが供給されると共に共振回路TT[2]に交流電圧(kDV×V0H)が供給され、これにより、送電側コイルTL[1]及びTL[2]にて送電用磁界が発生せしめられる。この送電用磁界は、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の全てによる合成発生磁界であるが、送電用磁界の主たる発生主体は、相対的に大きな電圧が供給された共振回路TT[1]の送電側コイルTL[1]である。つまり、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の内、送電電力の大半は送電側コイルTL[1]から出力され、送電側コイルTL[2]からの送電電力は送電側コイルTL[1]のそれよりも相当に小さい。
電子機器2における受電側コイルRLの形状は、送電側コイルTL[1]のそれと同じである又は送電側コイルTL[2]よりも送電側コイルTL[1]に近似している。コイルの形状とは大きさを含む概念であるので、別言すれば、受電側コイルRLの大きさは、送電側コイルTL[1]の大きさと一致している、或いは、送電側コイルTL[2]の大きさよりも送電側コイルTL[1]の大きさに近い。結果、コイルTL[2]及びコイルRL間よりも、コイルTL[1]及びコイルRL間の磁気結合が強いため、コイルTL[1]を主として用いて送電を行った方が電力伝送の効率が高い。また、コイルRLに対する磁気結合の度合いが比較的低いコイルTL[2]に対して大きな電圧を供給すると、コイルTL[2]からの不要輻射が大きくなりすぎることがあるが、共振回路TT[2]への供給電圧を比較的小さくすることで該不要輻射の増大が抑制される。
図41は、第3実施形態に係るmFOD処理のフローチャートである。第3実施形態に係るmFOD処理において、制御回路160は、まずステップS31Bにて最新の電圧値VDET[1]及びVDET[2]を夫々電流振幅検出値VmFOD[1]及びVmFOD[2]として取得する。電流振幅検出値VmFOD[i]は、第3電圧供給状態にて電力伝送が行われているときにおける、送電側コイルTL[i]の電流振幅に応じた値を持つ。ステップS31Bの後、ステップS32B及びS33Bにおいて、制御回路160は、電流振幅検出値VmFOD[1]が第1のmFOD正常範囲内に収まる否かを判断すると共に、電流振幅検出値VmFOD[2]が第2のmFOD正常範囲内に収まる否かを判断する。検出値VmFOD[1]が第1のmFOD正常範囲内に収まり且つ検出値VmFOD[2]が第2のmFOD正常範囲内に収まる場合に限って、異物無判定が成されて(ステップS34B)ステップS31Bに戻りステップS31Bから始まる処理が繰り返されるが、検出値VmFOD[1]及びVmFOD[2]の内、少なくとも一方が対応するmFOD正常範囲を逸脱している場合には、ステップS35Bにて異物有判定が成されて送電許可フラグにOFFが設定される。送電許可フラグは、制御回路160にて管理されるフラグであってON又はOFFに設定される。送電許可フラグがONのとき制御回路160は送電動作の実行を許可し、送電許可フラグがOFFのとき制御回路160は送電動作の実行を禁止する(送電動作が実行中であれば送電動作が停止せしめられる)。
第1のmFOD正常範囲は、所定の下限値VmREFL[1]以上且つ所定の上限値VmREFH[1]以下の範囲である(0<VmREFL[1]<VmREFH[1])。第2のmFOD正常範囲は、所定の下限値VmREFL[2]以上且つ所定の上限値VmREFH[2]以下の範囲である(0<VmREFL[2]<VmREFH[2])。故に、判定不等式“VmREFL[1]≦VmFOD[1]≦VmREFH[1]”及び“VmREFL[2]≦VmFOD[2]≦VmREFH[2]”の双方が満たされる場合に限って異物無判定が成され、そうでない場合には異物有判定が成される。
図24(a)を参照し、例えば、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に非接触ICカードとして形成された異物3が挿入された場合を考える。この場合、電子機器2の受電側コイルRLと異物3のコイルJLが磁気的に結合して、異物3の共振回路JJの共振周波数と共に電子機器2の共振回路RRの共振周波数が基準周波数(13.56MHz)からずれる。そうすると、受電側コイルRLでの受電電力が低下して送電側コイルTL[i]から見た送電の負荷が軽くなり、結果として、送電側コイルTL[i]の電流振幅が大きくなる(この場合に“VmREFH[i]<VmFOD[i]”となるように上限値VmREFH[i]を定めておけばよい)。
受電側コイルRLと異物3のコイルJLとの磁気結合の関係から送電側コイルTL[i]の電流振幅への影響を考えたが、図24(a)の例では、送電側コイルTL[i]自体も受電側コイルRL及びコイルJLと磁気結合し、コイルTL[i]及びJL間の磁気結合状態はコイルTL[i]の形状とコイルJLの形状との関係に依存する。従って、図24(a)のケースにおいて、例えば、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT6である場合とアンテナコイルAT3である場合とで、送電側コイルTL[i]の電流振幅の変化量が異なる。結果例えば、検出値VmFOD[2]を取得せずに検出値VmFOD[1]のみに頼ってmFOD処理を行うと仮定した場合、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT6であるときには、検出値VmFOD[1]の第1のmFOD正常範囲からの逸脱が観測されるが、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT3であるときには、該逸脱が観測されないといったことが生じえる。逆に例えば、検出値VmFOD[1]を取得せずに検出値VmFOD[2]のみに頼ってmFOD処理を行うと仮定した場合、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT3であるときには、検出値VmFOD[2]の第2のmFOD正常範囲からの逸脱が観測されるが、異物3のコイルJLがアンテナコイルAT6であるときには、該逸脱が観測されないといったことが生じえる。本実施形態に係るmFOD処理では、大きさの異なる送電側コイルTL[1]及びTL[2]の電流振幅を用いて異物の存否検出を行うため、異物の検出精度の向上が見込める。つまり、コイルTL[1]の検出値VmFOD[1]では検出が難しい異物の検出を、コイルTL[2]の検出値VmFOD[2]を用いることで補完することが可能となる。
また例えば、図24(b)を参照し、送電動作が実行されているときに、給電機器1の給電台12と電子機器2との間に、鉄板又はフェライトシートとしての異物3bが挿入されると、電気的及び磁気的な作用を通じて異物3b内に電流が流れ、結果として、送電側コイルTL[i]の電流振幅が小さくなる(この場合に“VmFOD[i]<VmREFL[i]”となるように下限値VmREFL[i]を定めておけばよい)。
このように、異物3及び3bを含む異物の存否により電流振幅検出値VmFOD[i]に変化が生じる。考えられる異物の種類及び配置状態を想定した実験等を介し、予め適切に決定された下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]を、メモリ150に記憶させておくと良い。また、電力伝送中に、異物が存在することで電流振幅検出値VmFOD[i]がどの程度変化するのかを理論計算により推定し、その推定結果に基づき、実験を必要とすることなく、下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]を定めてメモリ150に記憶させても良い。この際例えば、第iのmFOD正常範囲の中心値を基準として電流振幅検出値VmFOD[i]を所定の変化率以上変化させるような物体を異物と定義するようにしても良い。
また、下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]を以下のように定めるようにしても良い。電力伝送の実行中、制御回路160は、第3電圧供給状態にて電流振幅検出値VmFOD[i]を周期的に次々と取得するが、周期的に取得された電流振幅検出値VmFOD[i]の移動平均値を順次求めることができる。ここでは、連続する16個のVmFOD[i]の移動平均値を求められるものとする。
制御回路160は、電力伝送の開始後、直近過去に得られた16個のVmFOD[i]の移動平均値を基準値VmREF[i]に設定する。そして、制御回路160は、基準値VmREF[i]に基づいて下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]を設定する。具体的には、(VmREF[i]−ΔVmREF)及び(VmREF[i]+ΔVmREF)を夫々下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]に設定する、或いは、(VmREF[i]−kmREF・VmREF[i])及び(VmREF[i]+kmREF・VmREF[i])を夫々下限値VmREFL[i]及び上限値VmREFH[i]に設定する。ΔVmREFは正の所定値であり、kmREFは1未満の正の所定係数である。初回の基準値VmREF[i]の設定後、新たにVmFOD[i]が取得される度に、その新たなVmFOD[i]を含む16個のVmFOD[i]の移動平均値にて基準値VmREF[i]が更新される。尚、電力伝送の開始後におけるVmFOD[i]の取得個数が16個未満である場合においては、電力伝送の開始後に取得された全てのVmFOD[i]の平均値を基準値VmREF[i]に設定すると良い。また、電力伝送の開始後、最初に取得されたVmFOD[i]に対しては図41のステップS32B〜S35Bの処理は非実行とされる(基準値VmREF[i]が未設定であるため)。
本方法を用いれば、過去に取得された1以上の電流振幅検出値VmFOD[i]を用いてVmREFL[i]及びVmREFH[i]が設定されることになる。mFOD処理は、電力伝送の開始後、電力伝送の途中にて挿入されうる異物の存否を判断するものであって、当該判断は、過去のVmFOD[i]に基づく基準値VmREF[i]からの変化分を監視すれば実現できる。また、移動平均を利用することで、ノイズ等の突発的な変動による誤動作を抑制することが可能である。尚、電力伝送の開始直後に得られた16個のVmFOD[i]の移動平均値を基準値VmREF[i]に設定した後、当該電力伝送中において基準値VmREF[i]を固定するようにしても良い(即ち基準値VmREF[i]の更新を行わないようにしても良い)。
また、増幅器143[1]及び143[2](図37参照)の内、少なくとも増幅器143[1]の増幅率は可変となっている。送電側コイルTL[1]の電流振幅は、供給電圧V1が相対的に小さいpFOD処理における検出値VpFOD[1]の取得時よりも、供給電圧V1が相対的に大きいmFOD処理における検出値VmFOD[1]の取得時の方が随分と大きい。故に、制御回路160は、mFOD処理を行う際において増幅器143[1]の増幅率をpFOD処理を行う際よりも小さく設定し、これによってA/D変換器144[1]の入力信号範囲をpFOD処理及びmFOD処理間で同程度とすると良い。また、pFOD処理における検出値VpFOD[2]の取得時よりも、mFOD処理における検出値VmFOD[2]の取得時の方が、送電側コイルTL[2]の電流振幅が大きい場合(即ち “(kDV×V0H)>V0L”の場合)においても、制御回路160は、mFOD処理を行う際において増幅器143[2]の増幅率をpFOD処理を行う際よりも小さく設定し、これによってA/D変換器144[2]の入力信号範囲をpFOD処理及びmFOD処理間で同程度とすると良い。
また例えば、単位検出回路140[i]において、包絡線検波器142[i]とA/D変換器144[i]との間に(より具体的には、包絡線検波器142[i]と増幅器143[i]との間に、又は、増幅器143[i]とA/D変換器144vとの間に)高域低減回路(不図示)を挿入するようにしても良い。この場合、センス抵抗141[i]の電圧降下信号に高域低減処理(換言すれば平均化処理又は低域通過フィルタリング)を施して得られる振幅情報が、A/D変換器144[i]から電圧値VDET[i]として得られるようになる。ここにおける高域低減処理は、センス抵抗141[i]の電圧降下信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。高域低減処理により、ノイズや給電台12上の電子機器2の軽度な振動などによって送電禁止の制御が行われることが抑制される。
或いは例えば、包絡線検波器142[i]及びA/D変換器144[i]間に高域低減回路を設ける代わりに、A/D変換器144[i]の出力信号による電圧値VDET[i]に対し演算による高域低減処理を施して高域低減処理後の電圧値VDET[i]を電流振幅検出値VmFOD[i]として用いるようにしても良い(pFOD処理における電流振幅検出値VpFOD[i]に対しても同様であって良い)。演算による高域低減処理は、制御回路160にて実行される処理であって、A/D変換器144[i]の出力信号における比較的低い周波数の信号成分を通過させる一方で比較的高い周波数の信号成分を低減(減衰)させる処理である。
尚、mFOD処理の役割は、異物の存否判定だけに限られない。即ち、mFOD処理は、電流振幅検出値VmFOD[i]が第iのmFOD正常範囲を逸脱するような、送電動作の継続に不適切なあらゆる状況下で、送電許可フラグをOFFとする役割を持つ。例えば、送電動作の開始後、電子機器2が給電台12上から取り去られたとき、送電側コイルTL[i]から見た送電の負荷が軽くなって電流振幅検出値VmFOD[i]が上限値VmREFH[i]を超えるため送電許可フラグがOFFとされる(図41のステップS35B)。
[電力伝送までの信号のやりとり]
電力伝送が行われるまでの機器1及び2間の信号のやりとりについては、図19に示したものと同様であるが、第3実施形態での当該信号のやりとりについて以下に説明する。尚、第3実施形態において、以下では、特に記述無き限り、電子機器2が基準配置状態(図1(b))にて給電台12上に存在していることを想定する。
図19を参照して、まず給電機器1が送信側且つ電子機器2が受信側となり、給電機器1(IC100B)が、NFC通信によって、問い合わせ信号510を給電台2上の機器(以下、給電対象機器とも言う)に送信する。給電対象機器は、電子機器2を含み、異物を含みうる。問い合わせ信号510は、例えば、給電対象機器の固有識別情報を問い合わせる信号、給電対象機器がNFC通信を実行可能な状態にあるかを問い合わせる信号、及び、給電対象機器が電力を受け取れるか又は電力の送電を求めているかを問い合わせる信号を含む。
問い合わせ信号510を受信した電子機器2(IC200B)は、問い合わせ信号510の問い合わせ内容に答える応答信号520を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号520を受信した給電機器1(IC100B)は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に、テスト用要求信号530をNFC通信によって給電対象機器に送信する。テスト用要求信号530を受信した給電対象機器としての電子機器2(IC200B)は、テスト用要求信号530に対する応答信号540をNFC通信によって給電機器1に送信してから、速やかに、fO変更/短絡動作(共振周波数変更動作又はコイル短絡動作)を実行する。テスト用要求信号530は、例えば、fO変更/短絡動作の実行を要求、指示する信号であり、電子機器2の制御回路250は、テスト用要求信号530の受信を契機としてfO変更/短絡動作を共振状態変更回路240に実行させる。テスト用要求信号530の受信前においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。fO変更/短絡動作の実行の契機となるならばテスト用要求信号530はどのような信号でも良く、問い合わせ信号510に内包されるものであっても良い。
応答信号540を受信した給電機器1(IC100B)は、上述のpFOD処理を実行する。pFOD処理の実行期間中、電子機器2(IC200B)は、fO変更/短絡動作の実行を継続する。具体的には、電子機器2(IC200B)は、内蔵タイマを用いて、pFOD処理の実行期間の長さに応じた時間だけfO変更/短絡動作の実行を維持してからfO変更/短絡動作を停止する。
pFOD処理において、給電台12上に異物が無いと判断すると、給電機器1(IC100B)は、認証信号550をNFC通信により給電対象機器に送信する。認証信号550は、例えば、これから送電を行うことを給電対象機器に通知する信号を含む。認証信号550を受信した電子機器2(IC200B)は、認証信号550に対応する応答信号560を、NFC通信によって給電機器1に送信する。応答信号560は、例えば、認証信号550が示す内容を認識したことを通知する信号又は認証信号550が示す内容に許可を与える信号を含む。応答信号560を受信した給電機器1(IC100B)は、送電回路130Bを共振回路TTに接続して(詳細には第3電圧供給状態にして)送電動作を実行し、これにより電力伝送570が実現される。
図17(a)の第1ケースでは、上記の流れで電力伝送570が実行されるが、図17(b)の第2ケースの場合においては、応答信号540の送受信まで処理が進行するものの、pFOD処理において給電台12上に異物があると判断されるため、電力伝送570が実行されない。1回分の電力伝送570は所定時間だけ行われるものであっても良く、問い合わせ信号510の送信から電力伝送570までの一連の処理を、繰り返し実行するようにしても良い。実際には、図42に示す如く、NFC通信とpFOD処理と電力伝送(NFC電力伝送)とを順番に且つ繰り返し実行することができる。つまり、非接触給電システムでは、NFC通信を行う動作とpFOD処理を行う動作と電力伝送(NFC電力伝送)を行う動作とを、時分割で順番に且つ繰り返し行うことができる。
[給電機器及び電子機器の動作フローチャート]
次に、給電機器1の動作の流れを説明する。図43は、給電機器1の動作フローチャートである。通信回路120及び送電回路130Bの動作は、制御回路160の制御の下で実行される。
給電機器1が起動すると、まずステップS101Bにおいて、制御回路160は、切り替え回路110Bの制御を通じて通信回路120を共振回路TT[1]に接続する。続くステップS102Bにおいて、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TT[1]を用いたNFC通信により問い合わせ信号510を給電対象機器に送信し、その後、ステップS103Bにおいて、応答信号520の受信を待機する。通信回路120にて応答信号520が受信されると、制御回路160は、応答信号520を解析し、給電対象機器がNFC通信を可能であって且つ電力を受け取れる又は電力の送電を求めている場合に送電対象があると判断して(ステップS104BのY)ステップS105Bに進み、そうでない場合(ステップS104BのN)、ステップS102Bに戻る。
ステップS105Bにおいて、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TT[1]を用いたNFC通信によりテスト用要求信号530を給電対象機器に送信し、その後、ステップS106Bにおいて、応答信号540の受信を待機する。通信回路120にて応答信号540が受信されると、ステップS107Bにおいて、制御回路160は、切り替え回路110Bの制御を通じて共振回路TT[1]、TT[2]への接続先を通信回路120から送電回路130Bに切り替え、続くステップS108Bにて上述のpFOD処理を行う。
pFOD処理の後、ステップS109Bにて、制御回路160は、切り替え回路110Bの制御を通じて通信回路120を共振回路TT[1]に接続し、ステップS110Bに進む。ステップS108BのpFOD処理にて、異物有判定が成されている場合にはステップS110BからステップS102Bに戻るが、異物無判定が成されている場合にはステップS110BからステップS111Bに進む。
ステップS111Bにおいて、制御回路160は、通信回路120及び共振回路TT[1]を用いたNFC通信により認証信号550を給電対象機器に送信し、その後、ステップS112Bにおいて、応答信号560の受信を待機する。通信回路120にて応答信号560が受信されると、ステップS113Bにおいて、制御回路160は、切り替え回路110Bの制御を通じて共振回路TT[1]、TT[2]への接続先を通信回路120から送電回路130Bに切り替え、且つ、上述の第3電圧供給状態を実現する(図37及び図38参照)。その後、ステップS114Bに進む。
制御回路160は、ステップS114Bにて送電許可フラグにONを設定すると共に、送電動作及びmFOD処理を開始し、その後、ステップS115Bに進む。上述の如く、mFOD処理によって電力伝送中における異物の存否が検出され、異物が検出された場合に送電許可フラグがOFFとされる(図41参照)。制御回路160は、送電動作の開始時点からの経過時間を計測し、ステップS115Bにおいて、その経過時間を所定の時間tA(例えば10分)と比較すると共に送電許可フラグの状態をチェックする。その経過時間が所定の時間tAに達すると、又は、mFOD処理によって送電許可フラグにOFFが設定されると、ステップS116Bに進む。ステップS116Bにおいて、制御回路160は、送電許可フラグをONからOFFに切り替える又は送電許可フラグをOFFに維持すると共に、送電動作及びmFOD処理を停止させ、その後ステップS101Bに戻る。
次に、電子機器2の動作の流れを説明する。図44は、電子機器2の動作フローチャートであり、ステップS201Bから始まる処理は、図43に示す給電機器1の動作に連動して実行される。通信回路220及び受電回路230の動作は、制御回路250の制御の下で実行される。
電子機器2が起動すると、まずステップS201Bにおいて、制御回路250は、切り替え回路210Bの制御を通じて通信回路220を共振回路RRに接続する。電子機器2の起動時においてfO変更/短絡動作は非実行とされている。続くステップS202Bにおいて、制御回路250は、通信回路220を用い、問い合わせ信号510の受信を待機する。通信回路220にて問い合わせ信号510が受信されると、ステップS203Bにおいて、制御回路250は、問い合わせ信号510を解析して応答信号520を生成し、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号520を給電機器1に送信する。このとき、制御回路250は、バッテリ21の状態を確認し、バッテリ21が満充電状態でなく且つバッテリ21に異常が認められなければ、電力を受け取れる又は電力の送電を求める信号を応答信号520に含める。一方、バッテリ21が満充電状態あれば又はバッテリ21に異常が認められれば、電力を受け取れない旨の信号を応答信号520に含める。
その後のステップS204Bにおいてテスト用要求信号530が通信回路220にて受信されると、ステップS205Bに進む。ステップS205Bにおいて、制御回路250は、通信回路220を用いたNFC通信により応答信号540を給電機器1に送信し、続くステップS206Bにて共振状態変更回路240を用いてfO変更/短絡動作を実行する。即ち、共振周波数fOを基準周波数から周波数fMに変更する又は受電側コイルRLを短絡する。制御回路250は、fO変更/短絡動作の実行を開始してからの経過時間を計測し(ステップS207B)、その経過時間が所定時間tMに達するとfO変更/短絡動作を停止する(ステップS208B)。即ち、共振周波数fOを基準周波数に戻す又は受電側コイルRLの短絡を解消する。その後、ステップS209Bに進む。給電機器1にてpFOD処理が実行されている期間(即ちテスト磁界が発生されている期間)中、fO変更/短絡動作の実行が維持され、その期間が終了すると速やかにfO変更/短絡動作が停止されるように時間tMが予め設定されている。テスト用要求信号530の中で時間tMが指定されていても良い。
ステップS209Bにおいて、制御回路250は、通信回路220を用い、認証信号550の受信を待機する。通信回路220にて認証信号550が受信されると、ステップS210Bにおいて、制御回路250は、認証信号550に対する応答信号560を通信回路220を用いたNFC通信により給電機器1へ送信する。尚、異物が給電台12上に存在する場合には、認証信号550が給電機器1から送信されないので(図43のステップS110B参照)、ステップS209Bにて認証信号550が一定時間受信されない場合にはステップS201Bに戻ると良い。
応答信号560の送信後、ステップS211Bにおいて、制御回路250は、切り替え回路210Bの制御を通じて受電回路230を共振回路RRに接続し、続くステップS212Bにて受電回路230を用いた受電動作を開始させる。制御回路250は、受電動作の開始時点からの経過時間を計測し、その経過時間と所定の時間tBとを比較する(ステップS213B)。そして、その経過時間が時間tBに達すると(ステップS213BのY)、ステップS214Bにて、制御回路250は、受電動作を停止させてステップS201Bに戻る。
受電動作の行われる期間が給電機器1にて送電動作が行われている期間と実質的に一致するように、時間tBは、予め定められている又は認証信号550の中で指定されている。受電動作の開始後、制御回路250は、バッテリ21への充電電流を監視し、充電電流値が所定値以下になった時点で送電動作が終了したと判断して、受電動作の停止及びステップS201Bへの移行を行うようにしても良い。
このように、制御回路160は、送電動作によって電力の送電が行われているとき、mFOD処理にて電流振幅検出値がmFOD正常範囲を逸脱しているか否かを監視することで送電の継続是非を制御する。これにより、送電動作の開始後に異物が給電台12上に置かれた場合など、送電動作の継続に不適切な状況下で、mFOD処理を通じて送電動作が停止されるため、送電動作の継続による異物の破損等を回避することができる。この際、大きさが互いに異なる複数の送電側コイルの電流振幅検出値を用いるため、異物の検出精度(検出感度)の向上が図られる。
[送電側コイルの配置例]
次に、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の配置例を説明する。この配置例の説明に先立ち、図45に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。X軸及びY軸は給電台12の載置面に平行であり、従ってZ軸は給電台12の載置面に直交している。給電台12の載置面は電子機器2が載置されるべき面であり、該載置面上に電子機器2及び異物3が載置されうる。
図46(a)は、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の概略的な上面視図であり、図46(b)は、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の概略的な斜視図である。図46(c)は、Y軸及びZ軸に平行な断面による送電側コイルTL[1]及びTL[2]の概略的な断面図である。図46(a)及び(b)では、図示の簡略化及び煩雑化防止のため、各送電側コイルTL[i]の巻線を二重四角枠にて表現している。コイルの図示を含む図面において、コイルを表す二重四角枠から側方に伸びる線分はコイルの引き出し線を表している。
送電側コイルTL[1]及びTL[2]の夫々はループアンテナを形成しており、それらのループアンテナのループ面(即ち、送電側コイルTL[1]及びTL[2]の巻線が配置されている面)はX軸及びY軸に平行である。送電側コイルTL[1]の大きさは送電側コイルTL[2]の大きさよりも小さい。上述したように例えば、送電側コイルTL[1]はアンテナコイルAT6と同じものであり、送電側コイルTL[2]はアンテナコイルAT3と同じものである(図36(f)及び(c)参照)。
例えば、送電側コイルTL[1]のループアンテナとしての中心軸と送電側コイルTL[2]のループアンテナとしての中心軸は互いに一致しており、Z軸方向から見た場合、送電側コイルTL[2]の巻線の配置位置の内側に送電側コイルTL[1]の巻線が配置される。但し、図46(c)に示す如く、送電側コイルTL[2]の巻線が配置される平面と、送電側コイルTL[1]の巻線が配置される平面とは互いに平行であるものの、Z軸方向において所定距離だけ離れている。図46(b)及び(c)に示されるものとは異なるが、送電側コイルTL[2]の巻線と送電側コイルTL[1]の巻線とを同一平面上に配置するようにしても構わない。この場合、送電側コイルTL[2]の巻線の引き出し線と送電側コイルTL[1]の巻線の引き出し線のみを上下方向(Z軸方向)に分離して配置すると良い。
電子機器2の受電側コイルRLの形状もアンテナコイルAT6のそれと同じであることが想定され、電子機器2を給電台12の載置面上に置いたとき(即ち基準配置状態において)、受電側コイルRLとしてのループアンテナのループ面(即ち、受電側コイルRLの巻線が配置されている面)は、X軸及びY軸に平行となる。これにより、送電側コイルTL[i]と受電側コイルRLとの磁気結合度合いが高まる。また、非接触ICカードに代表される異物3を給電台12の載置面上に置いたとき、異物3のコイルJLとしてのループアンテナのループ面(即ち、コイルJLの巻線が配置されている面)も、X軸及びY軸に平行となる。
尚、上述の想定では、送電側コイルTL[2]の大きさの方が送電側コイルTL[1]の大きさよりも大きいが、それらの大きさの関係は逆であっても良い。
また、上述したように送電側コイルTLの個数(即ちnの値)は3以上でも良い。“n=3”である場合、図37の共振回路TT[2]と同じ構成を有する共振回路TT[3]をスイッチSW5と同等のスイッチを介してライン133に接続すると共に、共振回路TT[3]の送電側コイルTL[3]の電流振幅を検出して検出値をVDET[3]として出力する単位検出回路140[3]を追加する。そして、pFOD処理では、増幅器(パワーアンプ)132からの交流電圧V0Lを共振回路TT[1]〜TT[3]に順次供給して、各単位検出回路140[i]からのVDET[i]をVpFOD[i]として取得し、VpFOD[1]〜VpFOD[3]に基づき異物無判定又は異物有判定を通じて送電の開始を許可又は制限すれば良い。送電動作の開始後には、共振回路TT[1]に対して増幅器(パワーアンプ)132から交流電圧V0Hを供給し且つ共振回路TT[2]及びTT[3]の夫々に対して交流電圧V0Hの分圧(kDV×V0H)を供給する。その状態で実行されるmFOD処理では、各単位検出回路140[i]からのVDET[i]をVmFOD[i]として取得し、VmFOD[1]〜VmFOD[3]に基づき異物無判定又は異物有判定を通じて送電の継続是非を制御すれば良い。
<<本発明の考察(その3)>>
上述の第3実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る送電装置W3は、受電装置に対し磁界共鳴方式で電力を送電可能な送電装置において、送電側コイルを各々に含む複数の送電側共振回路(TT[1]〜TT[n])と、各送電側共振回路に交流電圧を供給可能な送電回路(130B)と、各送電側コイルに流れる電流の振幅を検出する検出回路(140)と、各送電側共振回路への前記交流電圧の供給状態を制御することで前記電力の送電制御を行う制御回路(160)と、を備え、前記複数の送電側共振回路に含まれる複数の送電側コイル(TL[1]〜TL[n])は、互いに異なる大きさを有し、前記制御回路は、前記複数の送電側共振回路に前記交流電圧を供給することで前記送電を開始した後、前記検出回路によって検出された前記複数の送電側コイルに対する複数の振幅検出値(VmFOD[1]〜VmFOD[n])に基づいて前記送電の継続是非を制御することを特徴とする。
送電装置W3によれば、送電動作の開始後において送電側コイルの発生磁界がおよぶ位置に異物が存在するようになった場合など、送電動作の継続に不適切な状況下で、送電動作を停止するといったことが可能となるため、例えば、送電の継続による異物の破損等を回避することができる。この際、大きさが互いに異なる複数の送電側コイルの振幅検出値を用いるため、異物の検出精度(検出感度)の向上が図られる。
具体的には例えば、送電装置W3において、前記制御回路は、前記送電が行われているとき、前記送電側コイルごとに前記振幅検出値が所定の基準範囲(mFOD正常範囲)を逸脱しているか否かを監視することで前記送電の継続是非を制御すると良い。
より具体的には例えば、送電装置W3において、前記制御回路は、前記送電が行われている際において、前記複数の送電側コイルにおける少なくとも1つの送電側コイルの振幅検出値が前記基準範囲を逸脱しているとき、前記送電を停止させると良い。
検出回路の振幅検出値が所定の基準範囲から逸脱する状況は、送電側コイルの発生磁界がおよぶ位置に異物が存在するようになった場合など、送電動作の継続に不適切な状況に相当すると考えられる。このような状況下において送電を停止することで、例えば、送電の継続による異物の破損等を回避することが可能となる。
また具体的には例えば、送電装置W3において、前記制御回路は、前記送電が行われているとき、前記送電側コイルごとに前記振幅検出値が前記基準範囲を逸脱しているか否かを判断することで、前記受電装置と異なり且つ各送電側コイルの発生磁界に基づく電流を発生させられる異物の存否を判断し、前記異物が存在すると判断した場合に前記送電を停止させると良い。
この際例えば、送電装置W3において、前記制御回路は、前記送電が行われているとき、前記送電側コイルごとに前記振幅検出値が前記基準範囲の上限値を超えているか否かを判断することで、前記異物としての、コイルを含んだ異物の存否を判断すると良い。
また例えば、送電装置W3において、 前記基準範囲は、前記送電側コイルごとに設定されていると良い。
また例えば、送電装置W3において、前記複数の送電側共振回路は、少なくとも第1送電側共振回路(TT[1])及び第2送電側共振回路(TT[2])を有し、前記送電が行われているとき、前記送電回路から前記第1送電側共振回路に対し所定の第1交流電圧(V0H)が供給され且つ前記第2送電側共振回路に対し前記第1交流電圧よりも小さな第2交流電圧(kDV×V0H)が供給されると良い。
これにより、第1及び第2送電側共振回路の内、電力の送電は、主に、第1送電側共振回路から行われるようになる。第1送電側共振回路の送電側コイルの大きさを、受電装置における受電側コイルのそれと同一としておけば又は近似させておけば、電力伝送効率の向上が図られる。
具体的には例えば、送電装置W3において、前記送電が行われているとき、前記第1交流電圧の分圧が前記第2交流電圧として前記第2送電側共振回路に供給されるようにしても良い。
本発明の一側面に係る非接触給電システムW3Aは、送電装置W3と、受電装置と、を備え、前記送電装置及び前記受電装置間において磁界共鳴方式で前記電力の送受電が可能であることを特徴とする。
例えば、非接触給電システムW3Aにおいて、前記受電装置は、受電を行うための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)と、前記送電装置からの電力の受電に先立ち、前記受電側共振回路の共振周波数を前記受電の際の共振周波数から変更可能な又は前記受電側コイルを短絡可能な変更/短絡回路(240)を備え、前記制御回路(160)は、前記送電装置からの通信による信号に従い前記受電装置にて前記受電側共振回路の共振周波数の変更又は前記受電側コイルの短絡が行われている状態で、前記送電に先立ち、前記第1交流電圧(V0H)よりも小さな第3交流電圧(V0L)を前記複数の送電側共振回路に順次供給させて前記検出回路から前記複数の送電側コイルに対する複数の送電前振幅検出値(VpFOD[1]〜VpFOD[n])を取得し、前記複数の送電前振幅検出値に基づいて、前記送電の開始を許可又は制限すると良い。
これにより、送電側コイルの発生磁界がおよぶ位置に異物が存在する場合など、送電の開始に不適切な状況下で、送電の開始を制限するといったことが可能となるため、例えば、送電の開始による異物の破損等を回避することができる。この際、大きさが互いに異なる複数の送電側コイルの送電前振幅検出値を用いるため、異物の検出精度(検出感度)の向上が図られる。
本発明の一側面に係る非接触給電システムW3Bは、送電装置W3と、受電装置と、を備え、前記送電装置及び前記受電装置間において磁界共鳴方式で前記電力の送受電が可能な非接触給電システムであって、前記受電装置は、受電を行うための受電側コイル(RL)を含む受電側共振回路(RR)を備え、前記受電側コイルの大きさは、前記第1送電側共振回路の送電側コイルの大きさと一致する、又は、前記第2送電側共振回路の送電側コイルの大きさよりも前記第1送電側共振回路の送電側コイルの大きさに近いことを特徴とする。
この際、送電装置W3において前記送電が行われているとき、前記送電回路から前記第1送電側共振回路に対し所定の第1交流電圧(V0H)が供給され且つ前記第2送電側共振回路に対し前記第1交流電圧よりも小さな第2交流電圧(kDV×V0H)が供給されるようにしておけば、第1及び第2送電側共振回路の内、電力の送電は、主に第1送電側共振回路から行われるようになり、電力伝送効率の向上が図られる。
本発明に係る受電装置に、複数の受電側コイル(従って各々に受電側コイルを含む複数の受電側共振回路)が設けられていても良い。
また、上述の第3実施形態における給電機器1そのものが本発明に係る送電装置として機能しても良いし、上述の第3実施形態における給電機器1の一部が本発明に係る送電装置として機能しても良い。同様に、上述の第3実施形態における電子機器2そのものが本発明に係る受電装置として機能しても良いし、上述の第3実施形態における電子機器2の一部が本発明に係る受電装置として機能しても良い。
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1〜注釈4を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
[注釈1]
上述の実施形態では、各種の信号の周波数や共振周波数を、基準周波数としての13.56MHzに設定することを述べたが、13.56MHzは設定の目標値であって、実際の機器における、それらの周波数には誤差が含まれる。
[注釈2]
本発明をNFCの規格に沿って具現化したものを実施形態中に示したため、基準周波数が13.56MHzであると述べたが、基準周波数は13.56MHz以外でも構わない。これに関連するが、本発明が適用される給電機器及び電子機器間の通信及び電力伝送は、NFC以外の規格に沿った通信及び電力伝送であっても良い。
本発明に係る非接触給電システムの基準周波数が13.56MHz以外の周波数(例えば、6.78MHz)に設定されていて且つ非接触ICカードとして形成された異物3における共振回路JJの共振周波数が13.56MHzである場合にも、異物3が給電台12に置かれた際には、pFOD処理又はmFOD処理にて電圧値VD又はVDETに相応量の変化がみられるため、そのような場合にも、上述の方法により異物3の検出が可能である。
[注釈3]
上述の実施形態で例示した各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。従って例えば、図12及び図29にてMOSFETとして示したトランジスタ421及び441を、接合型FET又はバイポーラトランジスタに置き換えても良い。
[注釈4]
本発明に係る受電装置又は送電装置である対象装置を、集積回路等のハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。対象装置にて実現される機能の全部又は一部である任意の特定の機能をプログラムとして記述して、該プログラムを対象装置に搭載可能なフラッシュメモリに保存しておいても良い。そして、該プログラムをプログラム実行装置(例えば、対象装置に搭載可能なマイクロコンピュータ)上で実行することによって、その特定の機能を実現するようにしてもよい。上記プログラムは任意の記録媒体に記憶及び固定されうる。上記プログラムを記憶及び固定する記録媒体は対象装置と異なる機器(サーバ機器等)に搭載又は接続されても良い。