以下に、本発明の実施の形態にかかる消費電力量推定装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる消費電力量推定装置の構成例を示す図である。消費電力量推定装置は、モータにより駆動される機械またはモータの動作パターンを示す動作パターン情報を取得する動作パターン情報取得部11と、モータおよびモータにより駆動される機械などの運動方程式に代表されるダイナミクスを規定する情報を取得するダイナミクス情報取得部12と、後述するアンプ情報およびモータ情報を取得する回路情報取得部13と、モータおよびモータにより駆動される機械が所定の動作パターンに従って動作した時の消費電力量を算出する消費電力量算出部14と、消費電力量算出部14が算出した消費電力量の情報を外部へ出力する結果出力部15と、を備えて構成されている。図1に示した消費電力量推定装置は、シミュレーション対象の産業用機械に関する各種情報を外部から取得し、取得した情報に基づき、産業用機械における消費電力量を推定する。動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13は、消費電力量推定装置が消費電力量のシミュレーションを行うために必要な情報を使用者等が設定する際に使用される。なお、消費電力量推定装置を構成している動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12、回路情報取得部13、消費電力量算出部14および結果出力部15の詳細動作についてはフローチャートを参照しながら別途説明する。
ここで、動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13で設定された各情報は、消費電力量算出部14に送信される。
回路情報取得部13から消費電力量算出部14に送信されるアンプ情報は、モータを駆動させるアンプを構成している回生抵抗の抵抗値、平滑コンデンサの容量などの情報を含んで構成されている。また、モータ情報は、モータの巻線抵抗値、トルク定数などの情報を含んで構成されている。
消費電力量算出部14は、動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13を利用して外部から設定された情報を用いて、すなわち、動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13の各々から受信した情報を用いて、消費電力量を算出する。
結果出力部15は、消費電力量算出部14で算出された消費電力量の情報を文字情報、グラフ情報などとして、図示を省略している表示装置などの表示部へ表示させることにより外部へ出力する。また、結果出力部15は、消費電力量の情報を紙に印字して出力してもよいし、ハードディスク、メモリカードなどの記憶媒体に記録するようにしてもよい。結果出力部15は、表示部への表示および記憶媒体への記録の双方を行うなど、模擬結果である消費電力量の情報を複数の方法で出力するようにしてもよい。
消費電力量推定装置を構成している動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12、回路情報取得部13、消費電力量算出部14および結果出力部15は、各部の処理を実装したソフトウェアをパーソナルコンピュータ上で実行することにより実現可能であるが、実現方法をこれに限定するものではない。ウェブサーバ上で上記各部の処理を行い、ウェブブラウザを通じて各種情報の設定および処理結果の表示を行う構成であってもよい。また、図2に示した構成のハードウェアで消費電力量推定装置を実現することも可能である。
図2は、消費電力量推定装置を実現するためのハードウェア構成例を示す図である。消費電力量推定装置は、CPU(Central Processing Unit)、システムLSI(Large Scale Integration)などのプロセッサ31と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されるメモリ32と、入出力インタフェース33とにより実現することが可能である。プロセッサ31、メモリ32および入出力インタフェース33はシステムバス30に接続されている。
動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13は、それぞれに対応するプログラムをメモリ32に格納しておき、メモリ32に格納されているプログラムをプロセッサ31が実行することにより実現される。これらの動作パターン情報取得部11、ダイナミクス情報取得部12および回路情報取得部13は、消費電力量算出部14が消費電力量の模擬値を計算する際に使用する各情報を入出力インタフェース33経由で外部から取得する。
消費電力量算出部14は、対応するプログラムをメモリ32に格納しておき、メモリ32に格納されているプログラムをプロセッサ31が実行することにより実現される。消費電力量算出部14に設定される各種情報はメモリ32の規定の領域に格納される。
結果出力部15は、対応するプログラムをメモリ32に格納しておき、メモリ32に格納されているプログラムをプロセッサ31が実行することにより実現される。結果出力部15は、消費電力量算出部14で算出された消費電力量を入出力インタフェース33経由で外部へ出力する。
図3は、実施の形態1の消費電力量推定装置がシミュレーションにより消費電力量を求める対象の産業用機械の構成例を示す図である。図3に示した産業用機械は、モータにより駆動される機械、モータおよびアンプを備えて構成されている。本実施の形態では、図3に示した構成の産業用機械を対象として、モータを用いて位置決め動作を行う場合の消費電力量を消費電力量推定装置がシミュレーションにより求める場合の例について説明する。図3では産業用機械が位置決め制御装置である場合の例を示している。図3に示した産業用機械において、モータ101はカップリング102を介してボールネジ103に接合されている。ボールネジ103はモータ101が発生させる回転運動を並進運動に変換する。モータ101がカップリング102を介してボールネジ103を回転させることにより、ボールネジ103に取り付けられたテーブル104の位置決めを行う。図3では、機械はカップリング102、ボールネジ103およびテーブル104から構成されている。以下、説明の便宜上、カップリング102、ボールネジ103およびテーブル104をまとめて機械100と呼ぶ。モータ101には、モータ101のロータの位置、回転速度などの検出結果を示す検出信号108を出力するエンコーダ105が取り付けられている。指令生成部106は、モータ101または機械100の動作パターンを示す動作パターン信号109を生成し、モータ101を駆動させるアンプ200へ出力する。動作パターン信号109は、位置指令値、速度指令値などを含んで構成されている。ここでの位置指令値は、例えば、可動部分であるテーブル104のある時間における位置を示す情報であり、速度指令値は、例えば、ある時間におけるテーブル104の移動速度を示す情報である。アンプ200は、検出信号108が動作パターン信号109に追従するよう、すなわち、検出信号108が示すモータ101および機械100の動作が動作パターン信号109で示された動作に追随するよう、モータ101に電流107を供給する。
アンプ200は、交流電源120から供給された交流電圧121を電力変換して、電流107を出力している。アンプ200は、ダイオードなどにより構成され、交流電圧121を整流する整流器201と、整流器201で整流された後の電圧を平滑化する平滑コンデンサ202と、余剰な回生電力が発生して母線電圧210が規定値に達した場合に回生電力を消費する回生抵抗203と、母線電圧210が規定値に達している場合にオン状態となり平滑コンデンサ202に蓄えられている電力を回生抵抗203で消費させる回生トランジスタ204と、モータ101に供給する電流107を生成するインバータ205と、指令生成部106から入力された動作パターン信号109に基づき、インバータ205に与える電圧指令211を生成するサーボ制御部220と、を備えている。
アンプ200がモータ101に供給する電流107を生成する場合、まず、ダイオードなどで構成されている整流器201が交流電源120から供給された交流電圧121を半波整流し、次に、平滑コンデンサ202が、整流器201で半端整流された電圧を平滑化して母線線圧210である直流電圧に変換する。サーボ制御部220は、エンコーダ105から入力される検出信号108が指令生成部106から入力される動作パターン信号109に追従するように、PID(Proportional Integral Derivative)制御などのフィードバック制御を行い、電圧指令211を算出する。インバータ205は、母線電圧210に対しPWM(Pulse Width Modulation)演算等を行い、電圧指令211がモータ101に印加されるように電力変換することで電流107をモータ101に供給する。
アンプ200の具体例としては、回生電力を消費させるための回生抵抗、および、回生抵抗で回生電力を消費させるための回路を有するサーボアンプと、汎用インバータとにより構成されるアンプなどが該当する。なお、回生抵抗で回生電力を消費させるための回路を有するアンプは、回生電力が発生した際に回生電力を電源に戻す電源回生コンバータを備えるアンプに比べ価格が安いという特徴がある。
図4は、実施の形態1の消費電力量推定装置における消費電力量推定動作、すなわち、消費電力量推定装置がシミュレーションを行って産業用機械における消費電力量を推定する動作の一例を示すフローチャートである。
消費電力量推定装置は、シミュレーションを行って消費電力量を推定する場合、まず、外部から動作パターン情報を取得する(ステップS1)。具体的には、動作パターン情報取得部11が、位置決め動作時の移動量、速度、加速時間、減速時間、位置決め動作間の待ち時間であるドウェル時間、などの各種情報を外部から取得し、動作パターンを規定する情報である動作パターン情報として消費電力量算出部14へ送信する。消費電力量算出部14は、動作パターン情報を動作パターン情報取得部11から受信すると、受け取った動作パターン情報を保持しておく。
消費電力量算出部14は、動作パターン情報取得部11から受け取った動作パターン情報に基づき、モータ101が動作すべき指令信号を一意に定めることができる。消費電力量算出部14は、モータが動作すべき指令信号が定まると、機械100もしくはモータ101の、時間tに対する位置指令X*(t)や速度指令V*(t)を定めることができる。なお、ステップS1では、シミュレーションを行う時間Tsimも同時に動作パターン情報取得部11から消費電力量算出部14に入力されるものとする。詳細については後述するが、消費電力量算出部14は、時間0から時間Tsimにおいて、ステップS1で設定された動作パターンに従ってモータ101、機械100などが動作したときの消費電力量をシミュレーションにより算出する。
ステップS1で取得する動作パターン情報が示す動作パターンは、例えば図5に示した速度パターンである。図5において、横軸は、シミュレーション時間Tsimを示し、このシミュレーション時間Tsimは動作開始からの経過時間を示している。また、縦軸は、速度、すなわちテーブル104の移動速度を示している。速度パターンの台形および三角形の面積が位置決め動作時のテーブル104の移動量に相当する。図5で示されるように、動作パターンは、1つの位置決め動作だけで構成されるのではなく、複数の位置決め動作の間に待ち時間であるドウェル時間をはさみながら、シーケンス的に位置決めされるような動作パターンでもよい。もちろん、1つの位置決め動作で動作パターンが構成されていてもよい。図5に示した動作パターンは、3つの位置決め動作と、それらの間に挿入されたドウェル時間とにより構成されている。なお、動作パターン情報は上記に限られるものではなく、機械100もしくはモータ101の動作パターンを一意に定められるものであれば何でもよい。
次に、消費電力量推定装置は、ダイナミクス情報を取得する(ステップS2)。具体的には、ダイナミクス情報取得部12が、モータ101および機械100のダイナミクスを規定する情報であるダイナミクス情報を外部から取得し、消費電力量算出部14へ送信する。消費電力量算出部14は、ダイナミクス情報をダイナミクス情報取得部12から受け取ると、受け取ったダイナミクス情報を保持しておく。
例えば、図3に示した産業用機械でシミュレーションする場合、ダイナミクス情報取得部12は、モータ101の回転動作に伴う機械100の可動イナーシャ、モータ101の回転動作に伴う摩擦の情報などをダイナミクス情報として取得する。機械100の可動イナーシャとは、モータ101の回転に伴い稼働する部分のイナーシャの合計値Jを指し、図3に示した産業用機械では、モータ101、カップリング102、ボールネジ103およびテーブル104の各々のイナーシャの合計値に相当する。また、モータ101の回転動作に伴う摩擦の情報としては、モータ101の回転動作を阻害する方向に、一定のトルクで作用するクーロン摩擦トルクc、モータ101の速度に比例して大きくなる粘性摩擦トルクの比例係数である粘性摩擦トルク係数dなどが考えられる。消費電力量算出部14は、ダイナミクス情報に基づき、機械100およびモータ101のダイナミクス、すなわち次式(1)で表される運動方程式を一意に定めることができる。
式(1)において、aはモータ101の加速度、τはモータ101のトルク、vはモータ101の速度である。
なお、図3に示した産業用機械ではテーブル104が水平方向に動作するため該当しないが、例えばテーブル104が上下方向に動作する構成である場合には、重力の影響を受けるため、ダイナミクス情報として重力の情報が入力されてもよい。また、ダイナミクス情報取得部12が外部から取得して消費電力量算出部14に送信する情報の例は、これらに限定されない。モータ101および機械100のダイナミクスを規定する情報であればどのようなものでもよい。
次に、消費電力量推定装置は、アンプ情報およびモータ情報を取得する(ステップS3)。具体的には、回路情報取得部13が、アンプに関する各定数情報、より詳細には、平滑コンデンサ202のコンデンサ容量値C、回生抵抗203の抵抗値Rreg、回生トランジスタ204がONする電圧値Von、整流器201の抵抗値Rcnv、交流電源120の電圧波高値Vsおよび交流電源120の電源周波数ωを外部から取得し、アンプ情報として消費電力量算出部14へ送信する。さらに、回路情報取得部13が、モータ101の巻線抵抗値Rおよびモータ101で単位電流あたりにどの程度のトルクが発生するかを表すトルク定数Ktを外部から取得し、モータ情報として消費電力量算出部14へ送信する。このとき、回路情報取得部13は、消費電力量推定装置がどの程度の時間幅でシミュレーションを行うかを表すサンプル時間Tsも併せて取得し、消費電力量算出部14へ送信する。サンプル時間Tsは微小な値が設定されるが、1μs(0.000001s)から10ms(0.01s)程度がサンプル時間Tsの好適な具体例として挙げられる。消費電力量算出部14は、アンプ情報、モータ情報およびサンプル時間Tsを回路情報取得部13から受け取ると、受け取った各情報を保持しておく。詳細については後述するが、消費電力量算出部14は、サンプル時間Tsが経過するごとに、産業用機械の消費電力量模擬値を算出する。
なお、上記のステップS1からS3を実行する順番は入れ替わっても構わない。
次に、消費電力量推定装置は、消費電力量の算出処理で使用する変数に初期値を設定する(ステップS4)。具体的には、消費電力量算出部14が、j=0、t=0、E[j]=0、Vdc[j]=Vsと設定する。ここで、変数jは配列のインデックスを表す。tは時間、すなわち上記ステップS1で取得した動作パターン情報が示す動作をモータ101、機械100およびアンプ200が開始してからの経過時間を示す。E[j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、図3に示した産業用機械における消費電力量の模擬値、Vdc[j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される母線電圧模擬値をそれぞれ表す。なお、このステップS4、後述するステップS5からステップS12は、消費電力量算出部14が実行する処理である。消費電力量算出部14は、例えば、ステップS1からS3が実行され、動作パターン情報、ダイナミクス情報、アンプ情報およびモータ情報の受信が完了した場合にステップS4およびこれに続く処理を実行する。消費電力量算出部14は、消費電力量算出処理の開始の指示を図1では記載を省略している操作部を介して使用者から受けた場合にステップS4およびこれに続く処理を実行するようにしてもよい。
消費電力量算出部14は、ステップS4を実行して変数の初期化を行うと、次に、インデックスjを1つインクリメントするとともに、時間を表すパラメータtをサンプル時間Ts分だけ増加させる。すなわち、j=j+1とするとともに、t=t+Tsとする(ステップS5)。
消費電力量算出部14は、次に、ステップS1からS3で取得した各情報を用いて、時間tにおけるモータ101の速度の模擬値およびトルクの模擬値、時間tにモータ101に流れる電流の模擬値として、速度模擬値V、トルク模擬値τおよび電流模擬値Iを算出する(ステップS6)。具体的には、消費電力量算出部14は、ステップS1で取得した動作パターン情報が速度指令パターンを示している場合には、時間tにおける速度模擬値VをV=V*(t)とする。また、速度指令V*(t)を微分することで、時間tにおける加速度模擬値Aを併せて算出する。また、ステップS1で取得した動作パターン情報が位置指令パターンを示している場合は、位置指令X*(t)を微分することで時間tにおける速度模擬値Vを算出し、算出した速度模擬値Vをさらに微分することで時間tにおける加速度模擬値Aを算出する。
また、消費電力量算出部14は、ステップS2で取得したダイナミクス情報により定められる、上述した式(1)の運動方程式と、上記算出した速度模擬値Vおよび加速度模擬値Aとを用いてトルク模擬値τを算出する。図3に示した構成の産業用機械を対象としてシミュレーションを行う場合、消費電力量算出部14は、次式(2)に従ってトルク模擬値τを算出する。
また、消費電力量算出部14は、モータ101に流れる電流模擬値Iも併せて算出する。電流模擬値Iは、上記算出したトルク模擬値τおよびモータのトルク定数Ktを用いて、I=τ/Ktにより算出する。
なお、本実施の形態では電流模擬値Iを算出するにあたり、モータのトルク定数Ktを用いる例を挙げたが、これに限られるものではない。トルク定数と誘起電圧定数は、一般に同じ値になるため、トルク定数の代わりに、誘起電圧定数を用いてトルク模擬値から電流模擬値を算出してもよい。また、サーボモータではなく、誘導モータを使用する場合を模擬するのであれば、トルクと電流の関係を表しているテーブル、あるいは、関数で記憶するなど、トルク模擬値τから電流模擬値Iを算出できる情報であれば、どのような方法であってもよい。
消費電力量算出部14は、次に、時間t=j・Tsにおける、モータ101の出力Wおよび損失Lを算出し、モータ101が単位時間あたりに消費する電力の模擬値である単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]を算出する(ステップS7)。具体的には、消費電力量算出部14は、まず、上記の速度模擬値Vおよびモータのトルク模擬値τを用いて、次式(3)に従ってモータ101の出力Wを算出する。
なお、モータ出力Wの算出方法は上記に限られるものではない。例えばモータ101のインダクタンス値の情報をさらに入力し、モータ101の抵抗値およびインダクタンス値をもとに、モータ101に印加される電圧の模擬値を算出し、電圧の模擬値と電流の模擬値とを乗ずることによって、出力Wを算出してもよい。また、上記算出方法および上式(3)による出力は、モータ101が三相モータ、二相モータいずれであっても同様に適用することができる。
さらに、消費電力量算出部14は、上記の電流模擬値Iおよびモータ101の巻線抵抗Rを用いて、次式(4)に従って損失Lを算出する。
なお、式(4)では、損失Lとして、電流値の二乗に依存する銅損を算出する例を示したが、算出する損失は銅損に限定されない。他の例としては、速度および電流値に依存する鉄損を損失Lとして算出してもよい。鉄損を算出する場合、電流模擬値Iおよび速度模擬値Vを用いる。鉄損を算出するための諸係数は、上記のステップS3で取得することとする。また、消費電力量算出部14は、鉄損および銅損の両方を算出し、これらを合計したものを損失Lとしてもよい。また、銅損、鉄損などモータに関する損失だけでなく、インバータ205に関する損失を計算して損失Lに含めてもよい。
消費電力量算出部14は、モータ101の出力Wおよび損失Lを算出後、次式(5)に従って時間t=j・Tsにおける、単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]を算出する。
以上がステップS7の処理である。
消費電力量算出部14は、次に、時間t=j・Tsにおいて、単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力の模擬値である電力模擬値Preg[j]を算出する(ステップS8)。このステップS8において、消費電力量算出部14は、回生抵抗203に通電するか否かを母線電圧模擬値Vdc[j−1]を用いて判定しながら算出する。具体的には、次式(6)に従ってPreg[j]を算出する。
消費電力量算出部14は、次に、時間t=j・Tsにおいて、単位時間あたりに整流器201が出力する電力の模擬値である、単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]を算出する(ステップS9)。このステップS9において、消費電力量算出部14は、母線電圧模擬値Vdc[j−1]と整流器201の出力電圧模擬値Vcnvとの比較結果に基づいて出力電力模擬値Pcnv[j]を算出する。具体的には、次式(7)に従ってPcnv[j]を算出する。
ここで、整流器201の出力電圧模擬値Vcnvは次式(8)に従って算出する。
なお、max(α、β、γ)はα、β、γの中の最大値を出力する関数である。
消費電力量算出部14は、次に、母線電圧210の模擬値である母線電圧模擬値Vdc[j]を更新する(ステップS10)。具体的には、消費電力量算出部14は、前サンプル時間の母線電圧値模擬値Vdc[j−1]、ステップS7で算出した単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]、ステップS8で算出した単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力模擬値Preg[j]、ステップS9で算出した単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]、平滑コンデンサ202の容量Cおよびサンプル時間Tsを用いて、次式(9)に従い母線電圧模擬値Vdc[j]を更新する。
消費電力量算出部14は、次に、産業用機械における消費電力量の模擬値である消費電力量模擬値E[j]を算出する(ステップS11)。具体的には、消費電力量算出部14は、前サンプル時間の消費電力量模擬値E[j−1]、単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]、および、サンプル時間Tsを用いて、次式(10)に従い消費電力量模擬値E[j]を算出する。次式(10)に示した処理は、単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]を積算する処理に相当している。
消費電力量算出部14は、次に、時間を表すパラメータtがシミュレーション終了時間Tsimより小さいか否かを判定する(ステップS12)。tがTsimよりも小さい場合(ステップS12:Yes)、消費電力量算出部14は、ステップS5に戻り、上述したステップS5からS11の処理を再度実行する。また、tがTsim以上の場合(ステップS12:No)、消費電力量算出部14は消費電力模擬値の算出処理、すなわち上述したステップS5からS11の繰り返しを終了する。また、結果出力部15が、図1では記載を省略しているディスプレイなどの表示部に対して、消費電力量算出部14で算出された消費電力量模擬値を表示する(ステップS13)。結果出力部15が消費電力模擬値を表示部に表示する動作としては、消費電力量模擬値E[j]の時間推移をグラフとして表示する、一連の動作が終了した時間t=Tendにおける消費電力量模擬値を一連の動作パターンに必要な消費電力量として表示する、などが考えられるがこれらに限定するものではない。結果出力部15は、消費電力量模擬値の時間推移だけでなく、動作パターンと関連付けて表示部に表示するようにしてもよい。また、結果出力部15は、文字情報として表示する、消費電力量模擬値のグラフを紙に印字する、消費電力量模擬値の情報を紙に印字する、消費電力量模擬値の情報を記録媒体に記憶する、などの処理をステップS13で行うようにしてもよい。また、消費電力量模擬値を算出する処理をウェブサーバで実施する構成とした場合、結果出力部15は、消費電力量算出部14で算出された消費電力量模擬値の情報を、インターネットなどの通信回線を通して、クライアントコンピュータ(ウェブブラウザ)に送信し、そこで表示させるようにしてもよい。
このように、消費電力量推定装置は、図4のフローチャートに従い、モータ101の消費電力量およびモータ101に接続された機械100の消費電力量をシミュレーションにより算出するとともに、算出した消費電力量を表示するなどして外部に出力する。これにより、消費電力量推定装置の使用者は、機械100、モータ101などを実動作させる手間や時間をかけることなく、産業用機械を構成する機械100およびモータ101が所定の動作パターンに従って動作した場合の消費電力量を把握することができる。
つづいて、本実施の形態の効果、特に、図4のフローチャートに従って消費電力量模擬値を算出することにより、消費電力量を正確に模擬できる理由を説明する。消費電力量推定装置が図3に示した産業用機械を対象として消費電力模擬値を算出する場合を例に説明する。
モータの動作は、モータがエネルギーを消費して仕事を行う力行動作と、モータがエネルギーを生み出す回生動作とに分類される。図3に示した産業用機械においては、モータ101が回生動作を行った場合に発生する回生電力は、必ず回生抵抗203で消費されるわけではない。すなわち、モータ101が回生動作を行った場合に発生する回生電力は、回生抵抗203で消費される場合もあれば、アンプ200に備えられた平滑コンデンサ202に蓄えられ、その後、再利用される場合もある。回生電力は、もともとは、カップリング102、ボールネジ103およびテーブル104で構成されている機械100およびモータ101の運動エネルギーであり、その運動エネルギーはアンプ200が電力としてモータ101および機械100に与えたものである。よって、モータ101を用いて機械100を駆動する場合のモータ101およびアンプ200において消費される消費電力量をシミュレーションによって正確に求めるためには、回生電力がどのように処理されるかを正確に模擬する必要がある。
この回生電力の挙動を知るために、平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーに着目して解析を行う。平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーは、アンプ200中の母線電圧値210を母線電圧vdcとすると、母線電圧vdcおよび平滑コンデンサ202の容量Cを用いて、1/2・C・vdc^2で表せる。ここで、‘^2’は二乗を表しており、‘vdc^2’は母線電圧vdcの二乗を表す。平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーは、モータ101が電力を消費すれば減少する。また、回生抵抗203が電力を消費した場合にも平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーは減少する。また、平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーは、整流器201から電力が供給されると増加する。モータ101が単位時間あたりに消費する電力をp、単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力をpreg、整流器201から供給される単位時間あたりの電力をpcnvとし、エネルギー増減の時間変化という観点で上記の関係をまとめると次式(11)が成立する。
ここで、次式(12)で表される合成関数の微分の公式を利用すると、式(11)は下記の式(13)となり、母線電圧値vdcの時間変化を表す微分方程式が得られる。
式(13)の微分方程式に従って、時間t=j・Tsにおける母線電圧模擬値Vdc[j]をサンプリング周期Tsごとにシミュレーションするのが、図4のステップS10の処理である。サンプル時間Tsを用いて式(13)の左辺を離散化すると次式(14)が得られる。
式(14)で表された関係を式(13)に代入し、さらに、vdcをVdc[j]に、pをP[j]に、pregをPreg[j]に、pcnvをPcnv[j]にそれぞれ代入すると、上記の式(9)が得られる。
なお、本実施の形態では、式(13)をシミュレーションするために、微分演算をオイラー近似である式(14)の差分演算で近似したが、式(13)の関係をシミュレーションするための方法はこれに限られるものではなく、例えばルンゲクッタ法やホイン法など、どのような方法であっても同様に実施することができる。
一方、式(13)における単位時間あたりの消費電力p、単位時間あたりに回生抵抗で消費される電力preg、単位時間あたりに整流器が供給する電力pcnvは、一定値ではなく、母線電圧値およびモータ動作に応じて、時々刻々と変化していく。これらをどのように模擬するかを次に説明する。
まず、モータ101が消費する単位時間あたりの消費電力量pについて考える。モータ101が消費する単位時間あたりの消費電力量pはモータ101の出力と損失の合計で表せる。図4に示したフローチャートのステップS1およびS2において、モータ101の動作パターン、モータ101の動作に伴う運動方程式の情報が入力されるので、消費電力量算出部14は、任意の時間tにおけるモータ101の速度およびトルクがわかる。モータ101の速度およびトルクの模擬値を算出しているのがステップS6である。モータ101の速度およびトルクが分かればモータ101の出力Wは上記の式(3)に従って計算できる。また、トルクが分かれば、消費電力量算出部14は、モータ101に電流が流れることにより発生する損失を計算できる。すなわち、消費電力量算出部14は、まず、モータ101のトルクとモータ101のトルク定数Ktとを用いてモータ101に流れる電流を算出し、次に、算出した電流とモータの巻線抵抗Rとを利用して、モータ101に電流が流れることによって発生する損失Lを計算できる。損失Lは上記の式(4)に従って計算できる。消費電力量算出部14がモータ101の出力Wと損失Lの合計値に基づき、モータ101が単位時間あたりに消費する消費電力pをP[j]としてサンプリング周期Tsごとに計算する処理がステップS7である。消費電力P[j]は上記の式(5)で表される。
次に、単位時間あたりに回生抵抗203が消費する電力pregについて考える。母線電圧vdcが回生トランジスタ204のON電圧Von以上の場合、すなわち、vdc≧Vonの場合は、回生トランジスタ204が通電し、回生抵抗203には電流vdc/Rregが流れる。ここで、Rregは回生抵抗203の抵抗値である。電流と電圧の積により、単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力pregは、preg=vdc^2/Rcnvで計算できる。一方、vdc<Vonの場合は、回生トランジスタ204が通電しない。そのため、回生抵抗203には電流が流れず、電力が消費されないので、preg=0となる。単位時間あたりに回生抵抗203が消費する電力pregをサンプリング周期Tsごとに計算するのがステップS8である。なお。pregは上記の式(6)で表されるPreg[j]である。
次に、単位時間あたりに整流器201が平滑コンデンサ202およびこれよりも後段の回路に供給する電力pcnvについて考える。整流器201は、母線電圧vdcが、整流器201の出力電圧vcnvより低下すると平滑コンデンサ202側に電力を供給する。すなわち、vdc<vcnvの場合、その差分電圧(vcnv−vdc)に応じた電流が整流器201から平滑コンデンサ202側に流れる。整流器201の抵抗値Rcnvを用いると、整流器201から平滑コンデンサ202側へ流れる電流は(vcnv−vdc)/Rcnvとなる。そのため、整流器201から平滑コンデンサ202側に供給される単位時間あたりの電力pcnvは、pcnv=(vcnv−vdc)^2/Rcnvとなる。これに対して、母線電圧vdcが整流器201の出力電圧力vcnv以上、すなわち、vdc≧vcnvの場合は整流器201から平滑コンデンサ202側に電力が供給されないため、pcnv=0となる。単位時間あたりに整流器201が平滑コンデンサ202側に供給する電力pcnvをサンプリング周期Tsごとに計算するのがステップS9である。なお、pcnvは上記の式(7)で表されるPcnv[j]である。
モータ101およびアンプ200における消費電力は、整流器201から平滑コンデンサ202に供給される電力に等しい。よって、モータ101およびアンプ200における消費電力量は、単位時間あたりに整流器201から平滑コンデンサ202に供給される消費電力pcnvを積算することにより得られる。この処理に相当するのが、ステップS11であり、モータ101およびアンプ200における消費電力量は上記の式(10)で表されるE[j]である。
このように、本実施の形態の消費電力量推定装置は、外部から設定された動作パターン情報と、機械100およびモータ101のダイナミクス情報と、アンプ200を構成している平滑コンデンサ202の容量値の情報などであるアンプ情報と、モータ101の巻線の抵抗値の情報などであるモータ情報とを用いて、以上のような計算を時間0からモータ101および機械100が一連の動作が終了する時間Tsimまでの間の各時点で行い消費電力量を算出していく。そのため、消費電力量推定装置は、モータ101および機械100における正確な消費電力量をシミュレーションにより推定することができる。
また、本実施の形態の消費電力量推定装置は、消費電力量をシミュレーションにより推定する際に、インバータ205のPWM演算、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子のオン、オフ状態等の複雑な挙動の模擬を行うことなく、上記の式(9)、もしくは、これと等価な式(11)、式(13)など、アンプ200の平滑コンデンサ202に蓄えられたエネルギーの時間変化に着目した式を用いることによって、母線電圧210の挙動を含めて模擬する。これにより、消費電力量を模擬する処理の演算量が増大するのを防止できるとともに、消費電力量を高精度に推定することができる。
また、本実施の形態の消費電力量推定装置は、モータ101で発生した回生電力が、回生抵抗203で消費されるのか、もしくは、回生抵抗203で消費されずに平滑コンデンサ202に蓄えられるのかを考慮して消費電力を模擬するので、正確に消費電力量を算出することができる。実際にモータ101を用いて機械100を動作させた場合に、モータ101が回生動作を行うと、アンプ200の母線電圧210が上昇し、母線電圧210がある一定値を超えると、回生トランジスタ204が通電し、回生抵抗203が回生電力を消費する現象が発生する。本実施の形態の消費電力量推定装置においても、モータ101のトルクと速度の符号が互いに異なり、モータ101の出力Wが負になり、さらに、モータ201の出力Wの絶対値が損失Lを上回ると、単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]が負になり回生電力が発生することを模擬する。単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]が負になると、図4に示したステップS10において上記の式(9)を用いて求める母線電圧模擬値Vdc[j]は大きくなる方向に変化する。これは、回生電力が平滑コンデンサ202に蓄えられる動作を模擬していることに相当する。さらに、回生電力が発生し続けると母線電圧模擬値Vdc[j]は上昇し続け、母線電圧模擬値Vdc[j]が回生トランジスタ204のON電圧Vonまで上昇すると、図4のステップS8の処理により、単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力模擬値Preg[j]が正になることを模擬する。また、単位時間あたりに回生抵抗203で消費される電力模擬値Preg[j]が正になると、ステップS10において、母線電圧模擬値Vdc[j]が小さくなる方向に変化する。これは、平滑コンデンサ202に蓄えられた回生電力の一部が回生抵抗203で消費されたことを模擬していることに相当する。
一般に、モータを用いて位置決め動作を行うと、加速動作および一定の速度を維持する動作は力行動作になり、減速動作は回生動作となる。本実施の形態の消費電力量推定装置によれば、図5に例示した動作パターンに従って動作する際の消費電力量、すなわち、力行動作と回生動作を交互に繰り返しながらモータが動作する際の消費電力量を正確に模擬できる。実際には、モータ101で回生動作を実行した直後は、発生したすべての回生電力が回生抵抗203で消費されるわけではない。回生電力の発生に伴い母線電圧210が上昇し、母線電圧210が回生トランジスタ204のON電圧Vonまで上昇した場合に、回生抵抗203で回生電力が消費される。モータ101が回生動作を行っても、回生トランジスタ204のON電圧Vonまで母線電圧210が上昇しないような場合、すなわち、母線電圧210がある程度大きい場合においては、モータ101の力行動作を行うと、平滑コンデンサ202に蓄えられたエネルギーが力行動作のエネルギーとして使用されるため、アンプ200、モータ101および機械100における消費電力量がそれほど大きくならないという現象が生じる。この現象に関しても、本実施の形態の消費電力量推定装置によれば、母線電圧模擬値Vdc[j]が、整流器201の出力電圧Vcnvより大きければ、図4のステップS9の処理では、単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値が0、すなわちPcnv[j]=0になり、ステップS11でPcnv[j]を積算して得られる消費電力量模擬値E[j]も小さくなる。
なお、本実施の形態では、図3に示した構成の産業用機械、すなわち、回転モータがボールネジを利用してテーブルの位置決め制御を行う産業用機械の消費電力量を模擬する場合の例を説明したが、この例に限定するものではない。例えば、タイミングベルト、ラックアンドピニオン、コンベアなどを使用する構成の産業用機械の消費電力量をシミュレーションにより求めるようにしてもよい。また、ロボットアームのような機構の消費電力量をシミュレーションにより求めるようにしてもよい。消費電力量を求める対象の産業用機械がどのような構成であっても、そのダイナミクス情報を上述したステップS2において外部から入力すれば、上述した手順と同様の手順により消費電力量を求めることが可能であり、同様の効果を奏することができる。また、位置決め制御を行う装置の消費電力量を求める場合だけに限定するものではない。例えば、位置決め制御ではなく動作パターンが特定できる速度制御やトルク制御を行う産業用機械の消費電力量を求めることもできる。
実施の形態2.
実施の形態1では、モータを1つだけ使用する構成の産業用機械の消費電力量をシミュレーションにより求める場合について説明を行ったが、1つの産業用機械の中に複数のモータが使用され、複数のアンプで駆動する場合であっても本発明を適用することが可能である。本実施の形態では、この例について説明を行う。なお、本実施の形態の消費電力量推定装置の構成は実施の形態1と同様である。
図6は、実施の形態2の消費電力量推定装置がシミュレーションにより消費電力量を求める対象の産業用機械の構成例を示す図である。本実施の形態では、図6に示した構成の産業用機械を対象として、複数のモータを用いて位置決め動作を行う場合の消費電力量を消費電力量推定装置がシミュレーションにより求める場合の例について説明する。
図6に示した産業用機械は、モータにより駆動される機械を複数備えている。具体的には、図6に示した産業用機械は、カップリング302、ボールネジ303およびテーブル304により構成された機械300と、カップリング502、ボールネジ503およびテーブル504により構成された機械500とを備えている。これら2つの機械300および500は、いずれも、モータの回転運動がカップリングおよびボールネジを介してテーブルを駆動するものである。また、産業用機械は、機械300を駆動するためのモータ301および機械500を駆動するためのモータ501と、モータ301に電流を供給するアンプ400およびモータ501に電流を供給するアンプ600と、アンプ400および600に対して動作パターン信号309および509を出力する指令生成部106aとを備えている。このように、図6に示した産業用機械は、機械および機械を駆動するモータのペアと、モータを駆動するアンプとの組を複数備えて構成されている。
図6に示した産業用機械において、指令生成部106aは、モータ301またはテーブル304の動作パターンを動作パターン信号309としてアンプ400に与えるとともに、モータ501またはテーブル504の動作パターンを動作パターン信号509としてアンプ600に与える。
図6に示した産業用機械のアンプ400および600には交流電源120から交流電圧121が供給されている。アンプ400および600の構成は、図3に示した産業用機械のアンプ200と同じとする。すなわち、アンプ400および600は、アンプ200が備えている整流器201、平滑コンデンサ202、回生抵抗203、回生トランジスタ204、インバータ205およびサーボ制御部220と同様の構成要素を備え、アンプ200と同様に動作する。具体的には、アンプ400は、モータ301に取り付けられたエンコーダ305から出力される、モータ301のロータの位置、回転速度などの検出結果を示す検出信号308が動作パターン信号309に追従するように、モータ301に電流307を与える。アンプ600は、モータ501に取り付けられたエンコーダ505から出力される、モータ501のロータの位置、回転速度などの検出結果を示す検出信号508が動作パターン信号509に追従するように、モータ501に電流507を与える。
なお、これ以降の説明では、便宜上、モータ301をモータ#1、モータ501をモータ#2と呼ぶ場合がある。また、アンプ400をアンプ#1、アンプ600をアンプ#2と呼び、機械300を機械#1、機械500を機械#2と呼ぶ場合がある。
つづいて、本実施の形態の消費電力量推定装置が図6に示した産業用機械における消費電力量を模擬する処理の流れを、図7に示すフローチャートを用いて説明する。図7は、実施の形態2の消費電力量推定装置における消費電力量推定動作、すなわち、消費電力量推定装置がシミュレーションを行って産業用機械における消費電力量を推定する動作の一例を示すフローチャートである。なお、図7のフローチャートには、図4のフローチャートと類似している箇所がある。そのため、図7に示した処理のうち、図4に示した処理と類似しているものについては説明を省略、または簡略化する場合がある。また、図7においては、図4に示した処理と同じ処理に図4と同じステップ番号を付している。図7に示した処理のうち、図4と同じステップ番号の処理につては説明を省略する。
実施の形態2の消費電力量推定装置は、シミュレーションを行って消費電力量を推定する場合、まず、外部から複数軸の動作パターン情報、すなわち、複数のモータ各々の回転軸の動作パターンを示す動作パターン情報を取得する(ステップS21)。具体的には、動作パターン情報取得部11が、モータ#1およびモータ#2の各々についての、テーブルの位置決め動作時の移動量、速度、加速時間、減速時間、位置決め動作間の待ち時間であるドウェル時間、などの各種情報を外部から取得し、動作パターン情報として消費電力量算出部14へ送信する。消費電力量算出部14は、モータ#1および#2の各々に対応する合計2つの動作パターン情報を動作パターン情報取得部11から受け取ると、受け取った各動作パターン情報を保持しておく。
動作パターン情報取得部11が外部から取得する、モータ#1および#2の各々に対応する動作パターン情報が示す動作パターンは、例えば図8に示した速度パターンとなる。図8の上段に示した速度パターンがモータ#1に対応するものであり、下段に示した速度パターンがモータ#2に対応するものである。各速度パターンの構成は、図5に示した速度パターンと同様であるため、詳細説明は省略する。
消費電力量算出部14は、動作パターン情報取得部11から受け取った動作パターン情報に基づき、モータ#1および#2が動作すべき指令信号を一意に定めることができる。消費電力量算出部14は、モータ#1および#2が動作すべき指令信号が定まると、モータ#1の時間tに対する位置指令X1*(t)および速度指令V1*(t)、モータ#2の時間tに対する位置指令X2*(t)および速度指令V2*(t)を定めることができる。
次に、消費電力量推定装置は、複数軸のダイナミクス情報、すなわち複数のモータ各々の回転軸の動作に伴うダイナミクス情報を取得する(ステップS22)。具体的には、ダイナミクス情報取得部12が、モータ#1および機械#1のダイナミクスを規定する情報であるモータ#1に対応するダイナミクス情報と、モータ#2および機械#2のダイナミクスを規定する情報であるモータ#2に対応するダイナミクス情報と、を外部から取得し、消費電力量算出部14へ送信する。消費電力量算出部14は、各モータに対応するダイナミクス情報をダイナミクス情報取得部12から受け取ると、受け取ったダイナミクス情報を保持しておく。ダイナミクス情報は、実施の形態1で説明したものと同様であり、モータ#1に対応するダイナミクス情報は、モータ#1の回転動作に伴う機械#1の可動イナーシャ、モータ#1の回転動作に伴う摩擦の情報などである。モータ#2に対応するダイナミクス情報は、モータ#2の回転動作に伴う機械#2の可動イナーシャ、モータ#2の回転動作に伴う摩擦の情報などである。消費電力量算出部14は、ダイナミクス情報に基づき、機械#1およびモータ#1の運動方程式などのダイナミクス、機械#2およびモータ#2の運動方程式などのダイナミクスを一意に定めることができる。
次に、消費電力量推定装置は、複数軸のアンプ情報およびモータ情報、すなわち各アンプのアンプ情報および各モータのモータ情報を取得する(ステップS23)。具体的には、回路情報取得部13が、各アンプのアンプ情報として、各アンプに関する各定数情報、より詳細には、アンプ#1を構成している平滑コンデンサのコンデンサ容量値、回生抵抗の抵抗値、回生トランジスタがONする電圧値および整流器の抵抗値と、アンプ#2を構成している平滑コンデンサのコンデンサ容量値、回生抵抗の抵抗値、回生トランジスタがONする電圧値および整流器の抵抗値とを外部から取得するとともに、交流電源120の電圧波高値および電源周波数を外部から取得する。また、回路情報取得部13が、各モータのモータ情報として、モータ#1の巻線抵抗値およびモータ#1で単位電流あたりにどの程度のトルクが発生するかを表すトルク定数と、モータ#2の巻線抵抗値およびモータ#2で単位電流あたりにどの程度のトルクが発生するかを表すトルク定数とを外部から取得する。回路情報取得部13は、取得した各アンプのアンプ情報および各モータのモータ情報を消費電力量算出部14へ送信する。このとき、回路情報取得部13は、どの程度の時間幅でシミュレーションを行うかを表すサンプル時間Tsも併せて取得し、消費電力量算出部14へ送信する。
なお、上記のステップS21からS23を実行する順番は入れ替わっても構わない。
次に、消費電力量推定装置は、消費電力量の算出処理で使用する変数に初期値を設定する(ステップS24)。具体的には、消費電力量算出部14が、j=0、t=0、E[1,j]=0、E[2,j]=0、Etotal[j]=0、Vdc[1,j]=Vs1、Vdc[2,j]=Vs2と設定する。ここで、変数jは配列のインデックス、tは時間を表す。E[1,j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、モータ#1およびアンプ#1の消費電力量模擬値、E[2,j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、モータ#2およびアンプ#2の消費電力量模擬値、Vdc[1,j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、アンプ#1の母線電圧模擬値、Vdc[2,j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、アンプ#2の母線電圧模擬値、をそれぞれ表す。また、Etotal[j]は、時間t=j・Tsにおいてシミュレーションによって算出される、複数のモータ、アンプおよび機械で消費される電力量の模擬値、すなわち、図6に示した産業用機械における消費電力量の模擬値を表す。
消費電力量算出部14は、ステップS24を実行して変数の初期化を行うと、次に、インデックスjを1つインクリメントするとともに、時間を表すパラメータtをサンプル時間Ts分だけ増加させる。すなわち、j=j+1とするとともに、t=t+Tsとする。また、消費電力量算出部14は、複数存在しているモータ、アンプおよび機械の組の中の1つを表すインデックスkをk=1とする(ステップS25)。なお、k=1はモータ#1、アンプ#1および機械#1の組を表し、k=2はモータ#2、アンプ#2および機械#2の組を表すものとする。
ステップS26からS31は、実施の形態1で説明した、図4のフローチャートにおけるステップS6からS11と同様の処理である。すなわち、ステップS26からS31において、消費電力量算出部14は、モータ#k、アンプ#kおよび機械#kを対象として、図3に示したステップS6からS11の処理を実行し、時間t=j・Tsにおいてアンプ#kおよびモータ#kが消費する電力量の模擬値である電力量模擬値E[k,j]を算出する。
消費電力量算出部14は、ステップS31でE[k,j]を算出後、k=2か否かを確認し(ステップS32)、k=2ではない場合(ステップS32:No)、k=2に設定し(ステップS33)、ステップS26からS31を実行してE[k,j]を算出する。一方、k=2の場合(ステップS32:Yes)、消費電力量算出部14は、時間t=j・Tsにおける産業用機械の消費電力量の模擬値である消費電力量模擬値Etotal[j]を算出する(ステップS34)。具体的には、消費電力量算出部14は、Etotal[j]=E[1,j]+E[2,j]を求める。
消費電力量算出部14は、次に、時間を表すパラメータtがシミュレーション終了時間Tsimより小さいか否かを判定する(ステップS12)。tがTsimよりも小さい場合(ステップS12:Yes)、消費電力量算出部14は、ステップS25に戻り、上述したステップS25からS34の処理を再度実行する。また、tがTsim以上の場合(ステップS12:No)、消費電力量算出部14は消費電力模擬値の算出処理、すなわち上述したステップS25からS34の繰り返しを終了する。また、結果出力部15が、ディスプレイなどの表示部に対して、消費電力量算出部14で算出された消費電力模擬値の情報、すなわちEtotal[j]を表示する(ステップS13a)。結果出力部15がEtotal[j]を表示する方法は、実施の形態1と同様である。
このように、消費電力量推定装置は、図7のフローチャートに従い、産業用機械を構成している複数のモータ、機械およびアンプの組の各々について、動作パターンに基づいて動作をシミュレーションし、消費電力量の模擬値を算出する。また、算出した模擬値を表示部に表示するなどして外部に出力する。これにより、消費電力量推定装置の使用者は、機械300および500、モータ301および501などを実動作させる手間や時間をかけることなく、産業用機械を構成する機械300および500、モータ301および501が所定の動作パターンに従って動作した場合の消費電力量を把握することができる。
なお、産業用機械を構成するモータ、機械およびアンプが2組の場合について説明したが、3組以上の場合も図7のフローチャートと同様のフローチャートに従って消費電力量の模擬値を算出可能である。モータ、機械およびアンプが3組以上の場合、消費電力量推定装置は、図7に示したステップS26からS31の処理を各組について実行して各組の消費電力量模擬値を算出し、ステップS34では、各組の消費電力量模擬値を加算して産業用機械全体の消費電力量模擬値を求めればよい。なお、ステップS32およびS33については、モータ、機械およびアンプの組数に応じて変更する。
つづいて、図7のフローチャートに従って消費電力量模擬値を算出することにより図6に示した構成の産業用機械における消費電力量を正確に模擬できる理由を説明する。
図6に示した構成の産業用機械においては、アンプ400とアンプ600がエネルギーのやりとりを行わないので、モータ301で発生した回生電力をモータ501で使用したり、逆に、モータ501で発生した回生電力をモータ301で使用したりすることができない。そのため、モータ301で発生した回生電力は、アンプ400内の平滑コンデンサに蓄えられるか、アンプ400内の回生抵抗で消費されることになる。同様に、モータ501で発生した回生電力は、アンプ600内の平滑コンデンサに蓄えられるか、アンプ600内の回生抵抗で消費されることになる。よって、図6に示したような、複数のモータを使用し、各モータをそれぞれに対応するアンプで駆動する構成の場合には、モータとこれを駆動するアンプの組み合わせを単位として消費電力量を個別に、すなわちモータとアンプの組み合わせごとに算出し、モータとアンプの組み合わせごとに算出した消費電力量を合計すれば、産業用機械のトータルの消費電力量を算出することができる。
図7に示したフローチャートに従った動作では、まず、k=1に設定し、実施の形態1で説明したステップS6からS11と同様の処理であるステップS26からS31を実行することにより、1組目のモータ#1とアンプ#1の消費電力量模擬値を算出する。1組目の消費電力量模擬値を算出した後は、ステップS33においてk=2に設定し、ステップS26からS31を再度実行することにより、2組目のモータ#2とアンプ#2の消費電力量模擬値を算出する。その後、ステップS34において、1組目と2組目の消費電力量模擬値を合計することで、複数のモータ、各モータを駆動する複数のアンプのトータルの消費電力量、すなわち産業用機械のトータルの消費電力量の模擬値である消費電力量模擬値Etotal[j]を算出する。このように、複数のモータ、アンプおよび機械の組が、組ごとに個別の動作パターンに従って動作した時の消費電力量を算出することができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、複数のモータおよびモータと同数のアンプを備えた構成の産業用機械の消費電力量をシミュレーションにより求める場合について説明を行ったが、本実施の形態では、1台のアンプで複数のモータを駆動させる構成の産業用機械の消費電力量をシミュレーションにより求める場合について説明する。なお、本実施の形態の消費電力量推定装置の構成は実施の形態1と同様である。
図9は、実施の形態3の消費電力量推定装置がシミュレーションにより消費電力量を求める対象の産業用機械の構成例を示す図である。本実施の形態では、図9に示した構成の産業用機械を対象として、複数のモータを用いて位置決め動作を行う場合の消費電力量を消費電力量推定装置がシミュレーションにより求める場合の例について説明する。
図9に示した産業用機械は、モータにより駆動される機械を複数備えている。具体的には、図9に示した産業用機械は、図6に示した産業用機械と同様に、カップリング302、ボールネジ303およびテーブル304により構成された機械300と、カップリング502、ボールネジ503およびテーブル504とにより構成された機械500とを備えている。これら2つの機械300および500は、いずれも、モータの回転運動がカップリングおよびボールネジを介してテーブルを駆動するものである。また、産業用機械は、機械300を駆動するためのモータ301および機械500を駆動するためのモータ501と、モータ301および501に電流を供給するアンプ200aと、アンプ200aに対して動作パターン信号309および509を出力する指令生成部106aとを備えている。このように、図9に示した産業用機械は、機械および機械を駆動するモータのペアを複数備え、各ペアのモータは1つのアンプにより駆動される。
図9に示した産業用機械において、指令生成部106aは、モータ301およびテーブル304の動作パターンを動作パターン信号309としてアンプ400に与えるとともに、モータ501およびテーブル504の動作パターンを動作パターン信号509としてアンプ600に与える。
図9に示した産業用機械は、図6に示した産業用機械のアンプ400および600をアンプ200aに置き換えたものに相当する。また、アンプ200aは、図3に示した産業用機械のアンプ200に対してサーボ制御部260およびインバータ255を追加したものに相当する。サーボ制御部260は、サーボ制御部220と同様の動作を行う。すなわち、サーボ制御部260は、エンコーダ505から入力される検出信号508が指令生成部106aから入力される動作パターン信号509に追従するようにフィードバック制御を行い、電圧指令261を算出する。インバータ255は、インバータ205と同様の動作を行う。すなわち、インバータ255は、母線電圧210に対しPWM演算等を行い、電圧指令261がモータ501に印加されるように電力変換することで電流507をモータ501に供給する。
なお、これ以降の説明では、便宜上、モータ301をモータ#1、モータ501をモータ#2と呼ぶ場合がある。また、機械300を機械#1、機械500を機械#2と呼ぶ場合がある。
つづいて、本実施の形態の消費電力量推定装置が図9に示した産業用機械における消費電力量を模擬する処理の流れを、図10に示すフローチャートを用いて説明する。図10は、実施の形態3の消費電力量推定装置における消費電力量推定動作、すなわち、消費電力量推定装置がシミュレーションを行って産業用機械における消費電力量を推定する動作の一例を示すフローチャートである。なお、図10のフローチャートには、図4または図7のフローチャートと類似している箇所がある。そのため、図10に示した処理のうち、図4または図7に示した処理と類似しているものについては説明を省略、または簡略化する場合がある。また、図10においては、図4または図7に示した処理と同じ処理に図4または図7と同じステップ番号を付している。図10に示した処理のうち、図4または図7と同じステップ番号の処理につては説明を省略する。
実施の形態3の消費電力量推定装置は、ステップS21およびS22を実行した後、アンプ情報およびモータ情報を取得する(ステップS43)。具体的には、回路情報取得部13が、アンプ情報として、アンプ200aを構成している平滑コンデンサ202のコンデンサ容量値C、回生抵抗203の抵抗値Rreg、回生トランジスタ204がONする電圧値Vonおよび整流器201の抵抗値Rcnvを外部から取得するとともに、交流電源120の電圧波高値Vsおよび電源周波数ωを外部から取得する。また、回路情報取得部13が、モータ情報として、モータ#1の巻線抵抗値R1およびモータ#1で単位電流あたりにどの程度のトルクが発生するかを表すトルク定数Kt1と、モータ#2の巻線抵抗値R2およびモータ#2で単位電流あたりにどの程度のトルクが発生するかを表すトルク定数Kt2とを外部から取得する。回路情報取得部13は、取得したアンプ情報およびモータ情報を消費電力量算出部14へ送信する。このとき、回路情報取得部13は、どの程度の時間幅でシミュレーションを行うかを表すサンプル時間Tsも併せて取得し、消費電力量算出部14へ送信する。
消費電力量推定装置は、ステップS43に続いてステップS4およびS5を実行し、次に、ステップS21、S22およびS43で取得した各情報を用いて、時間tにおける各モータの速度模擬値、トルク模擬値および電流模擬値を算出する(ステップS46)。具体的には、消費電力量算出部14が、モータ#1の時間tにおける速度模擬値V1、トルク模擬値τ1および電流模擬値I1と、モータ#2の時間tにおける速度模擬値V2、トルク模擬値τ2および電流模擬値I2とを算出する。
すなわち、消費電力量算出部14は、ステップS21で取得した動作パターン情報が速度指令パターンを示している場合には、時間tにおけるモータ#1の速度模擬値V1をV1=V1*(t)、モータ#2の速度模擬値V2をV2=V2*(t)とする。また、速度指令V1*(t)およびV2*(t)をそれぞれ微分することで、時間tにおけるモータ#1の加速度模擬値A1およびモータ#2の加速度模擬値A2を併せて算出する。ステップS21で取得した動作パターン情報が位置指令パターンを示している場合、消費電力量算出部14は、位置指令X1*(t)およびX2*(t)をそれぞれ微分することで、時間tにおけるモータ#1の速度模擬値V1およびモータ#2の速度模擬値V2を算出し、算出した各速度模擬値をさらに微分することで、時間tにおけるモータ#1の加速度模擬値A1およびモータ#2の加速度模擬値A2を算出する。
消費電力量算出部14は、時間tにおける各モータの速度模擬値V1,V2および加速度模擬値A1,A2を算出後、さらに、ステップS22で取得した複数のモータ各々の回転軸の動作に伴うダイナミクス情報と、速度模擬値V1,V2および加速度模擬値A1,A2とを用いて、時間tにおけるモータ#1のトルク模擬値τ1およびモータ#2のトルク模擬値τ2を算出する。ここで、消費電力量算出部14は、実施の形態1で説明したステップS6においてトルク模擬値τを算出する場合と同様の方法により、トルク模擬値τ1およびτ2を算出する。消費電力量算出部14は、さらに、トルク模擬値τ1をトルク定数Kt1で除することにより、時間tにおけるモータ#1の電流模擬値I1を算出し、トルク模擬値τ2をトルク定数Kt2で除することにより、時間tにおけるモータ#2の電流模擬値I2を算出する。
消費電力量算出部14は、次に、時間tにおける各モータの単位時間あたりの消費電力模擬値を算出し、算出した消費電力模擬値を合計することにより、産業用機械が備えているモータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]を算出する(ステップS47)。具体的には、消費電力量算出部14は、まず、上記ステップS46で算出した各モータの速度模擬値V1,V2およびトルク模擬値τ1,τ2を用いて、時間tにおける、モータ#1の出力W1およびモータ#2の出力W2を次式(15)に従って算出する。
また、消費電力量算出部14は、上記ステップS46で算出した各モータの電流模擬値I1,I2と、上記ステップS43で取得した各モータの巻線抵抗値R1,R2とを用いて、時間tにおける、モータ#1の損失L1およびモータ#2の損失L2を次式(16)に従って算出する。
消費電力量算出部14は、次に、各モータの出力W1,W2および損失L1,L2を用いて、時間tにおける、モータ#1の単位時間あたりの消費電力模擬値P1[j]およびモータ#2の単位時間あたりの消費電力模擬値P2[j]を次式(17)に従って算出する。
消費電力量算出部14は、次に、次式(18)に示したように、時間tにおける各モータの単位時間あたりの消費電力模擬値の合計値を算出することにより、産業用機械が備えているモータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]を算出する。
消費電力量算出部14は、消費電力模擬値P[j]を算出した後は、実施の形態1で説明したステップS8からS11を実行して消費電力量模擬値E[j]を算出し、t=0からTsimまでの期間における消費電力量模擬値E[j]の算出が終了すると、ステップS13において、結果出力部15が消費電力量模擬値E[j]を表示する。
このように、本実施の形態の消費電力量推定装置は、複数のモータの各々における単位時間あたりの消費電力の模擬値を算出し、各モータの消費電力の模擬値を合算することにより、産業用機械が備えているモータ全体の単位時間あたりの消費電力の模擬値を算出する。また、実施の形態1と同様の手順でアンプにおける単位時間あたりの消費電力の模擬値を算出し、モータ全体の単位時間あたりの消費電力の模擬値とアンプにおける単位時間あたりの消費電力の模擬値の加算結果を積算することにより、産業用機械全体としての消費電力量の推定値を求める。
つづいて、図10のフローチャートに従って消費電力量模擬値を算出することにより図9に示した構成の産業用機械における消費電力量を正確に模擬できる理由を説明する。
図9に示した構成の産業用機械において、アンプ200a内のインバータ205および255は共通の母線からエネルギーが供給され、モータ301および501に電力を供給する。そのため、モータ301で発生した回生電力をモータ501が使用したり、逆にモータ501で発生した回生電力をモータ301で使用したりすることが可能である。よって、消費電力量の模擬値を算出するにあたり、このことを考慮して行う必要がある。アンプ200aの母線電圧210が上昇するか、下降するかは、各モータの単位時間あたりの消費電力だけでは決まらず、各モータの単位時間あたりの消費電力の合計値に影響される。図9に示したような、1つのアンプで2つのモータを個別に駆動させる構成の場合、一方のモータが回生動作を行い、かつ他方のモータが力行動作を行う場合、すなわち、一方のモータの単位時間あたりの消費電力が負になり、かつ他方のモータの単位時間あたりの消費電力が正になる場合、回生動作を行っているモータの回生電力を、力行動作を行っているモータのエネルギーとして使用することができる。
図10に示したフローチャートのステップS47では、上述したように、各モータの単位時間あたりの消費電力模擬値P1[j]およびP2[j]を算出し、これらを合計したものをモータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]として算出する。これにより、あるモータが力行動作を行い、別のモータが回生動作を行うと、これらを相殺するようにモータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値が算出されるので、モータ全体の単位時間あたりの消費電力を正確に模擬することができる。
また、図9に示した構成の産業用機械が実動作を行った場合、各モータにおける力行エネルギーと回生エネルギーの合計が正であれば、モータ全体としてエネルギーを使用しているので、平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーは減少し、その結果、母線電圧値210は減少する方向に変化する。逆に、各モータにおける力行エネルギーと回生エネルギーの合計が負で有れば、モータ全体としてエネルギーを生み出しているので、平滑コンデンサ202に蓄えられているエネルギーは増加し、その結果、母線電圧210は上昇する方向に変化する。図10に示したフローチャートのステップS10では、モータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]が正だと母線電圧模擬値Vdc[j]が下降する方向に算出され、逆にP[j]が負だとVdc[j]が上昇する方向に働くので、この状況を正確に模擬することができる。
また、図9に示したアンプ200aにおいても、母線電圧210が回生トランジスタ204のON電圧Vonを超えると、回生トランジスタ204が通電し、平滑コンデンサ202に蓄えられたエネルギーの一部を回生抵抗203が消費する。図10に示したフローチャートのステップS8では、母線電圧模擬値Vdc[j]がVonを超えると、単位時間あたりの回生抵抗203で消費される電力Preg[j]を算出する。よって、ステップS8で算出するPreg[j]が正になって、母線電圧模擬値Vdc[j]が下がる方向に変化し、平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーが減少することを正確に模擬することができる。
また、図9に示したアンプ200aでは、母線電圧210が、整流器201の出力電圧Vcnvを下回ると、整流器201から電力が供給される。図10のフローチャートのステップS9では、母線電圧模擬値Vdc[j]が整流器201の出力電圧Vcnvを下回ると、整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]が正の値として算出される。さらに、Pcnv[j]が正の値になることにより、ステップS11では、母線電圧模擬値Vdc[j]が正の方向に上昇することを正確に模擬し、さらに、平滑コンデンサ202に蓄えられるエネルギーが増加することもまた正確に模擬している。
これらの現象を正確に模擬し、図10のフローチャートのステップS11において単位時間あたりの整流器201の出力電力模擬値Pcnv[j]を積算することにより、図9に示したような構成の産業用機械が実際に動作した際の消費電力量を正確に算出することができる。
なお、図9では、機械を駆動するのにモータが2つで、これら2つのモータが、母線電圧を共通とする、複数のインバータを備えるアンプにより駆動される例を示したが、この構成に限定するものではない。母線電圧を共通とする3つ以上のインバータを備え、各インバータがそれぞれ異なるモータを駆動させる構成のアンプについては、本実施の形態で説明した手順と同様の手順により消費電力量の模擬値を算出することが可能である。この場合、消費電力量推定装置は、ステップS21において、使用する複数のモータそれぞれの動作パターンを示す動作パターン情報を取得し、ステップS22において、各モータに関するダイナミクス情報を取得し、ステップS43において、各モータのモータ情報と、アンプ情報とを取得する。そして、消費電力量推定装置は、ステップS47において、複数のモータそれぞれの単位時間あたりの消費電力を算出し、算出した消費電力を合計することで、モータ全体の単位時間あたりの消費電力模擬値P[j]を求める。
実施の形態4.
実施の形態1から3では、機械を動作させるためのモータおよびアンプが指定された動作パターンで動作を行う場合の消費電力量を、実際に機械およびモータを動作させることなく、模擬算出する発明について説明した。本発明によれば、単一の動作パターンだけではなく、同じ機械、同じモータ、同じアンプを使用しながら、異なる複数の動作パターンで動作した際の消費電力量を算出し、動作パターンの違いによる消費電力量の違いを比較することも可能である。本実施の形態は、この例について説明を行う。本実施の形態では、図3に示した構成の産業用機械を異なる複数の動作パターンで動作させた場合の消費電力量をシミュレーションにより求める例を説明する。なお、本実施の形態の消費電力量推定装置の構成は実施の形態1と同様である。
図11は、実施の形態4の消費電力量推定装置の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図11においては、図4に示した処理と同じ処理に図4と同じステップ番号を付している。図11に示した処理のうち、図4と同じステップ番号の処理につては説明を省略する。
消費電力量推定装置は、まず、外部から複数の動作パターン情報を取得する(ステップS61)。具体的には、動作パターン情報取得部11が、異なる複数の動作パターン情報を取得し、消費電力量算出部14へ送信する。
このステップS61において、動作パターン情報取得部11は、例えば、図12から図14に示した動作パターンをそれぞれ示す3つの動作パターン情報を取得する。図12から図14に示した動作パターンは、いずれも、3つの位置決め動作と、その間に待ち時間であるドウェル時間とにより構成されている。図12の動作パターンの1番目の位置決め動作における移動量、図13の動作パターンの1番目の位置決め動作における移動量、図14の1番目の位置決め動作における移動量は同じであるとする。また、各動作パターンの2番目の位置決め動作における移動量、各動作パターンの3番目の位置決め動作における移動量も、図12から図14の動作パターンの間でそれぞれ同じであるとする。また、位置決め動作の間の待ち時間であるドウェル時間の長さも図12から図14の動作パターンの間でそれぞれ同じであるとする。ただし、図12から図14の動作パターンの間で位置決め動作時の速度は異なる。図示したように、図12はモータの速度が1000rpmの動作パターン、図13はモータの速度が1500rpmの動作パターン、図14はモータの速度が800rpmの動作パターンである。動作速度が異なるため、それぞれの位置決め動作時間の速度が大きいほど、それぞれの位置決め動作の位置決め時間が短くなり、一連の動作パターンが終了するのも短くなる。図12から図14の動作パターンでは、3つの位置決め動作と2つの待ち動作を行う一連の動作が終了するまでの所要時間である動作完了時間が、それぞれ、30秒、25秒、35秒となっている。
図12の動作パターンを、ある機械の搬送動作パターンと見なせば、図13の動作パターンは、搬送移動量が図12の動作パターンと同じで図12の動作パターンより速度の大きい搬送動作パターン、図14の動作パターンは、搬送移動量が図12の動作パターンと同じで図12の動作パターンより速度の小さい搬送動作パターンと見なすことができる。
ステップS61に続くステップS2およびS3において、消費電力量推定装置は、実施の形態1で説明したように、ダイナミクス情報、アンプ情報およびモータ情報を取得する。
次に、消費電力量推定装置は、ステップS61で取得した複数の動作パターン情報の中の1つを選択する(ステップS64)。このステップS64および後述するステップS65からS68の処理は消費電力量算出部14が実行する。ステップS64において、消費電力量算出部14は、例えば、図12の動作パターンを示す動作パターン情報を選択する。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS64で選択した動作パターン情報に従って動作した場合の消費電力量模擬値を算出する(ステップS65)。消費電力量算出部14は、実施の形態1で説明したステップS4からS12と同様の処理を実行することにより、消費電力量模擬値を算出する。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS64で選択した動作パターン情報とステップS65で算出した消費電力量模擬値とを関連付けて記憶する(ステップS66)。消費電力量算出部14は、例えば、動作速度および動作完了時間と、算出した消費電力量模擬値とを関連付けて記憶する。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS61で取得した動作パターン情報が示す全ての動作パターンについての消費電力量模擬値の算出が完了したか否かを確認する(ステップS67)。模擬値の算出が完了していない場合(ステップS67:No)、消費電力量算出部14は、別の動作パターン情報、すなわち消費電力量模擬値の算出が完了していない動作パターンを示す動作パターン情報の中の1つを選択し(ステップS68)、ステップS65およびS66を実行する。一方、全ての動作パターンについての消費電力量模擬値の算出が完了した場合(ステップS67:Yes)、消費電力量算出部14は、ステップS66で記憶した動作パターン情報と消費電力量模擬値を読み出して結果出力部15へ出力し、結果出力部15が、消費電力量算出部14から受け取った動作パターン情報が示す動作パターンと消費電力量模擬値とを表示部に表示する(ステップS69)。このステップS69では、図15または図16に示した内容の表示を行う。ただし、表示内容をこれらに限定するものではない。図15は、横軸にモータの動作速度、縦軸に消費電力量模擬値を示した表示例であり、モータの動作速度と消費電力量模擬値の関係を表示したものである。また、図16は、横軸に動作完了時間、縦軸に消費電力量模擬値を示した表示例であり、動作完了時間と消費電力量模擬値の関係を表示したものである。
本実施の形態で得られる効果について説明する。まず、本実施の形態においても、実施の形態1から3と同様の手順で消費電力量模擬値を算出するので、複数の動作パターンに対する消費電力量を、機械およびモータを実際に動作させることなく、正確に算出することができる。
また、一般に、動作パターンの速度を大きくするなど、動作が完了までの時間を短くすると、産業用機械が工業製品の生産設備として使用された場合に、時間当たりの生産性が向上する。一方、モータの速度を大きくするなどして動作時間を短くすると、モータおよびアンプが消費する消費電力量は大きくなる傾向がある。言い換えれば、機械の動作時間と消費電力量はトレードオフの関係にある。本実施の形態によれば、複数の動作パターン条件を設定し、それぞれの条件に対し、消費電力量模擬値を算出し、図15,図16に示したように、複数の動作パターンの情報と関連付けて表示を行う。これにより、消費電力量推定装置の利用者は、機械およびモータを実際に動作させる手間や時間をかけることなく、消費電力量と動作パターンのトレードオフ関係を容易に把握することができる。
また、図16に示したように動作完了時間と消費電力量模擬値を関連付けて表示する場合、消費電力量推定装置の利用者は、生産時間と電気料金とのトレードオフ関係を視覚的に把握できる。これにより、消費電力量推定装置の利用者は、生産時間と電気料金とのトレードオフ関係を考慮して、最適な機械の動作時間を決定することができる。
なお、本実施の形態では、位置決め動作の速度を変えた場合の条件を例に挙げて説明を行ったが、これに限定するものではない。動作パターンが異なればどのような場合であってもよい。例えば、位置決め動作の速度ではなく、位置決め動作時の加速度、加減速時間が異なる動作パターンであっても同様に、本実施の形態を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
また、速度、加速度などの数値だけではなく、位置決め動作の動作形状を複数個用意し、動作形状ごとの消費電力量の違いをシミュレーションしてもよい。例えば、速度パターンが台形になるような直線加減速パターンと、直線的に加減速を行わずにS字的に加減速を行うS字加減速パターンとを複数の動作条件として適用してもよい。この場合、S字加減速は一般に直線的に加減速する台形指令に比べショックや振動を生じさせにくいが、直線加減速パターンとS字加減速パターンとで、同じ移動量を同じ位置決め時間で動作させようとすると、S字加減速パターンの方が、ピーク加速度が大きくなり、消費電力量も大きくなる傾向がある。ある動作パターン内の位置決め動作を直線加減速パターンで行うか、S字加減速パターンで行うかを利用者が決めるにあたり、消費電力量推定装置がそれぞれで動作させた際の消費電力量を模擬し、これらを関連付けて表示することにより、機械やショックの低減程度と消費電力量削減効果のトレードオフを考慮しながら、指令形状の選択の判断材料を利用者に提供することができる。
また、本実施の形態では図3に示した産業用機械のように1つのモータのみを使用する場合について説明を行ったが、複数のモータを使用する構成の産業用機械であっても、同様に実施することができる。複数のモータの各々の動作パターンを複数通り設定し、それぞれの場合に対して、消費電力量の模擬算出を行い、複数設定した動作パターン、例えば、位置決め動作の速度、加速度、加減速時間、指令形状などと、算出した消費電力量模擬値とを関連付けて表示する。これにより、利用者は、複数設定した動作パターンと消費電力量の関係を、実際に機械およびモータを動作させることなく把握することができ、さらに、複数設定した動作パターンと消費電力量の関係を考慮して、適切な動作パターンを選択することができる。
なお、本実施の形態では、機械を1つのモータ、1つのアンプで、複数の動作パターンで動作させた場合のそれぞれの消費電力量をシミュレーションし、動作パターンと消費電力量のシミュレーション値を関連付けて表示することを説明した。このように複数の動作パターンとこれに対応する消費電力量シミュレーション値を関連付けるのは、機械を1つのモータ、1つのアンプで動作させる場合に限られるものではない。実施の形態2、3で説明したように、複数のモータを複数のアンプで、もしくは、複数のモータを1つの母線共通のアンプで動作させる場合に対しても適用することができる。この場合、複数のモータに対する動作パターンを複数組予め用意し、この複数組の動作パターンに従って機械を動作させた際の消費電力量をシミュレーションし、その後、複数組の動作パターンと、それぞれに対応する消費電力量シミュレーション値を関連付けて表示するなどすればよい。
実施の形態5.
実施の形態4では、複数の動作パターンに対して、それぞれ消費電力量のシミュレーションを行い、それぞれの動作パターンに対する消費電力量の違いを表示する例について説明を行った。しかし、動作パターンだけではなく、機械を駆動するモータまたはアンプの構成を変えた時の消費電力量の違いを把握することもできる。本実施の形態では、図3のような機械、モータ、アンプの構成に対し、使用するモータの種類を変えた場合に消費電力量がどのように変わるかをシミュレーションする例について説明を行う。なお、本実施の形態の消費電力量推定装置の構成は実施の形態1と同様である。
図17は、実施の形態5の消費電力量推定装置の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図17においては、図4に示した処理と同じ処理に図4と同じステップ番号を付している。図17に示した処理のうち、図4と同じステップ番号の処理につては説明を省略する。
消費電力量推定装置は、まず、外部から動作パターン情報およびダイナミクス情報を取得する(ステップS1,S2)。
次に、消費電力量推定装置は、外部からアンプ情報および複数のモータ情報を取得する(ステップS73)。具体的には、回路情報取得部13が、アンプ情報を取得し、消費電力量算出部14へ送信する。さらに、回路情報取得部13が、機械100を駆動することが可能な複数種類のモータのモータ情報を取得し、消費電力量算出部14へ送信する。ここでは、回路情報取得部13がモータA、BおよびCのモータ情報を取得するものとする。これらのモータA、BおよびCは、それぞれ異なる巻線抵抗値、異なるトルク定数を有するものとする。回路情報取得部13は、モータA、BおよびCの各々の巻線抵抗値およびトルク定数値をモータ情報として取得する。
次に、消費電力量推定装置は、ステップS73で取得した複数のモータ情報の中の1つを選択する(ステップS74)。このステップS74および後述するステップS75からS78の処理は消費電力量算出部14が実行する。ステップS74において、消費電力量算出部14は、例えば、モータAのモータ情報を選択する。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS74で選択したモータ情報を用いて、このモータ情報に対応するモータを使用した場合の消費電力量模擬値を算出する(ステップS75)。消費電力量算出部14は、実施の形態1で説明したステップS4からS12と同様の処理を実行することにより、消費電力量模擬値を算出する。具体的には、消費電力量算出部14は、ステップS74で選択したモータ情報に対応するモータがステップS1で取得した動作パターンに従って動作した場合の消費電力量の模擬値を算出する。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS74で選択したモータ情報とステップS75で算出した消費電力量模擬値とを関連付けて記憶する(ステップS76)。
次に、消費電力量算出部14は、ステップS73で取得した複数のモータ情報が示すモータの各々を使用した場合の消費電力量模擬値の算出が完了したか否かを確認する(ステップS77)。模擬値の算出が完了していない場合(ステップS77:No)、消費電力量算出部14は、別のモータ情報、すなわち、消費電力量模擬値の算出が完了していないモータのモータ情報の1つを選択し(ステップS78)、選択したモータ情報を使用してステップS75およびS76を実行する。一方、模擬値の算出が完了した場合(ステップS77:Yes)、消費電力量算出部14は、ステップS76で記憶したモータ情報と消費電力量模擬値を読み出して結果出力部15へ出力し、結果出力部15が、消費電力量算出部14から受け取ったモータ情報が示すモータを使用した場合の消費電力量模擬値を表示部に表示する(ステップS79)。このステップS79において、結果表示部15は、各モータと消費電力量模擬値を関連付け、図18に示したような内容の表示を行う。図18は、横軸にモータ種類の種類、縦軸に各モータを使用した場合の消費電力量模擬値を示した表示例である。図18の例では、モータBを使用した場合に消費電力量模擬値が最も大きくなっている。
本実施の形態で得られる効果について説明する。ある機械を動作させるモータを選定するにあたり、モータ本体のコストは高いが、効率が良いすなわち消費電力量が小さいモータ、あるいは、モータ本体のコストは低いが、効率が悪いすなわち消費電力量が大きいモータを選ぶという選択肢がある場合がある。どのモータを使用するかは、モータ本体のコストと、そのランニングコストの要因となる消費電力量を考慮して選択することが、トータルのコストを小さくする上で重要である。本実施の形態の消費電力量推定装置によれば、実際にモータを機械に取り付けて運転させることなく、その機械に使用する可能性のある各モータを所定の動作パターンに従って使用した場合の消費電力量の模擬値を算出できる。また、消費電力量推定装置は、各モータを使用した場合の消費電力量の模擬値と各モータとを関連付けて表示するので、利用者は、トータルのコストを考慮しながらモータを選択することが可能となる。
また、本実施の形態では、複数種類のモータの各々を使用した場合の消費電力量の模擬値をシミュレーションにより求め、モータと消費電力量の模擬値とを関連付けて表示する例について説明したが、複数種類のアンプを使用可能な場合に、使用可能な各アンプを使用した場合の消費電力量の模擬値を求めるようにすることも可能である。例えば、アンプの平滑コンデンサの容量値を変更した場合における、容量値ごとの消費電力量の模擬値を求めるようにすることが可能である。消費電力量推定装置は、例えば、平滑コンデンサの容量値CがそれぞれC=100μF、200μF、300μF、400μFである4種類のアンプの各々について、各アンプを使用してモータおよび機械を所定の動作パターンに従って動作させる場合のアンプごとの消費電力量模擬値を算出し、平滑コンデンサの容量値と、それぞれの平滑コンデンサを使用した場合の消費電力量模擬値の関係を図19に示したように表示してもよい。図19は、横軸に平滑コンデンサの容量値、縦軸に各平滑コンデンサを使用した場合の消費電力量模擬値を示した表示例である。
容量値が大きい平滑コンデンサを備えたアンプを用いると、アンプ本体のコストアップにつながる。そのため、消費電力量推定装置が図19に示した内容の表示を行うようにした場合、利用者は、アンプ本体のコストとランニングコストのトレードオフ関係を考慮しながらアンプを選択することが可能となる。
また、一般に、アンプが備えている平滑コンデンサの容量を大きくすればするほど、蓄えることのできる回生電力が大きくなるので、消費電力量は小さくなる傾向にあるが、平滑コンデンサの容量を大きくすれば、必ず消費電力量が小さくなるわけではない。これは、動作パターンや機械、モータの構成によっては、それほど大きく回生電力が発生しないことがあるためである。回生電力がそれほど発生しない場合、小さな平滑コンデンサをもつアンプで駆動しても、消費電力量はそれほど大きくならない。
図19に示した例の場合、平滑コンデンサの容量値をC=100μFからC=200μF、さらに、C=300μFと増やすにつれて、消費電力量模擬値が小さくなる。しかし、平滑コンデンサ容量値をC=300μFからC=400μFに増やしても消費電力量模擬値は小さくならない。これは、平滑コンデンサの容量が300μFあれば、モータ動作時の回生電力を平滑コンデンサ内に蓄積できることを意味し、平滑コンデンサの容量値を300μFよりも大きくしても消費電力量を低減することができないことがわかる。平滑コンデンサの容量値を増やせば、アンプのコストが高くなるので、図19の例において、消費電力量の小ささを重視してアンプの種類を選定する場合であっても、容量が400μF以上の平滑コンデンサを備えたアンプを選定することは得策でないことがわかる。
以上のように、消費電力量推定装置は、平滑コンデンサの容量値が異なる複数のアンプそれぞれを用いて、モータおよび機械を所定の動作パターンで動作させた場合の消費電力量模擬値を算出する。また、平滑コンデンサの容量値と、その平滑コンデンサ容量値のアンプを使用してモータおよび機械を動作させた場合の消費電力量模擬値とを関連付けて表示する。これにより、利用者は、上記のような判断、すなわち、アンプを構成する平滑コンデンサの容量の選定を簡単に行うことが可能となる。
実施の形態6.
これまでに説明した各実施の形態では、モータの種類や、平滑コンデンサの容量値をさまざまに変更し、それぞれを使用した場合の、モータ情報やアンプ情報の条件をさまざまに変えて、それぞれに対応する消費電力量をシミュレーションすることを説明したが、条件をさまざまに変えて、これに対応する消費電力量をシミュレーションするのは、これらの例に限られるものではない。例えば、図3の100で示すような機械の構成において、テーブル104の材質が変わったときに、消費電力量がどのように変わるかをシミュレーションすることもできる。テーブル104の材質が変わることによって、機械イナーシャの可動イナーシャ値Jが変わる。この材質によって変わる可動イナーシャ値Jを予め複数用意し、それぞれの可動イナーシャ値Jに対し、所定の動作パターンに従ったときの消費電力量をシミュレーションする。テーブルの材料に軽いものを使用すれば、可動イナーシャ値Jが小さくなり消費電力量は一般的に小さくなる。逆に、重い材料を使用すれば、可動イナーシャ値Jが大きくなり消費電力量は大きくなる。一般に、ある程度の強度を確保したまま、軽い材料を使用すると機械のコストは高くなる。逆に、重い材料を使用すると、機械のコストは安くなる。つまり、機械材料のコストと消費電力量はトレードオフ関係になる。本発明によれば、材質によって変わる可動イナーシャ値Jと、これに対応する消費電力量をシミュレーションし、対応づけて表示することにより、このトレードオフ関係を定量的、かつ、視覚的に把握することができる効果がある。
なお、テーブル104の材質が変わることによって、可動イナーシャ値Jが変わることを例示したが、複数のダイナミクス情報を予め用意し、これに対応する消費電力量をシミュレーションするようにしてもよい。他の例では、使用するボールネジ103を変えた時の消費電力量をシミュレーションすることもできる。ボールネジの種類が変わると、可動イナーシャ値Jや摩擦係数が変化する。そのため、ボールネジが変わることによる、可動イナーシャ値や摩擦係数の値を複数用意し、それぞれのボールネジで動作させた場合の消費電力量をシミュレーションする。これにより、使用するボールネジの種類により、機械が消費する消費電力量がどのように変わるかを把握することができる。
なお、本実施の形態では、機械を1つのモータ、1つのアンプで、機械を動作させた際に消費電力量のシミュレーション値を算出することを説明した。しかし、この場合に限られるものではなく、機械を複数のモータ及び複数のアンプ、もしくは、複数のモータ及び1つの母線共通のアンプで動作させる場合であっても同様に適用することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。