JPWO2016171196A1 - クラックの発生が抑制された医療用ガラス容器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1に示されるように、ファイアブラスト装置80は、ポイントバーナ30、ポイントバーナ移動装置40、ローラ対60及び遮蔽板51を有する。ファイアブラスト装置80は、バイアル10(ガラス容器の一例)にファイアブラストを行うための装置である。以下、ファイアブラスト装置80の構成要素が詳細に説明される。以下の説明において、図1における上下を基準に上下方向101が定義され、図1の紙面に垂直な方向を基準に左右方向102が定義され、これら上下方向101及び左右方向102と垂直な方向に、前後方向103が定義される。
図1及び図2に示されるように、ポイントバーナ30は、バーナ本体33及びノズル32を有しており、不図示のボンベ及び流量制御装置と接続されている。
ポイントバーナ移動装置40は、ポイントバーナ30をバイアル10に対して相対的に移動するためのものである。図1に示されるように、ポイントバーナ移動装置40は、回動装置41、スライド装置42及びバーナ支持部43を備える。
図3(A)及び図3(B)に示されるように、ローラ対60は、一対の第1ローラ61及び第2ローラ62である。第1ローラ61及び第2ローラ62は、それぞれが回転軸を前後方向103に対して若干傾いた状態で、左右方向102に沿って並列されている。第1ローラ61及び第2ローラ62は、ポイントバーナ30と対峙する面が反対側より上方となるように、軸線が水平方向(前後方向103)に対して傾斜している。ローラ対60の軸線は、水平方向(前後方向103)に対して0から10度傾斜している。第1ローラ61及び第2ローラ62の間隔は、バイアル10の外径に対して十分に狭い。第1ローラ61及び第2ローラ62の双方の外周面にバイアル10の外周面が接する様にして、ローラ対60の上にバイアル10が載置される。ローラ対60の上に載置されたバイアル10の軸線は、第1ローラ61及び第2ローラ62の軸線と平行である。この状態において第1ローラ61及び第2ローラ62が同じ向きへ回転すると、ローラ対60の上に載置されたバイアル10がバイアル10の軸線周りに回転される。なお、各図には示されていないが、第1ローラ61及び第2ローラ62は、モータなどの駆動源から駆動力が入力される。各図には、ローラ対60を回転可能に支持する支持機構は省略されている。
遮蔽板51は、遮蔽機構の一例である。図3(A)及び図3(B)に示されるように、遮蔽板51は前後方向103に薄い平板である。遮蔽板51は、左右方向102において下側に向かって狭まる台形の形状である。遮蔽板51の左右方向102における幅は、バイアル10の口部13の外径よりも広く設計されている。遮蔽板51は、その表裏面の一方が、上下方向101及び左右方向102に広がるようにして、前後方向103においてローラ対60とポイントバーナ30との間に位置されている。図3(A)に示されるように、遮蔽板51は、バイアル10の開口16を区画する縁部17と平行になるように前後方向103に傾けられている。遮蔽板51は、ローラ対60より若干上方に配置されている。遮蔽板51の下端は、上下方向101において、バイアル10の開口16の中心より若干上方に位置する。バイアル10側の遮蔽板51の面は、口部13における縁部17を有する端面の上側の一部と近接しつつ対面する。
バイアル10は、医療用ガラス容器の一例である。図3及び図4に示されるように、バイアル10は、底が封止された概ね円筒形状の外形の容器であり、左側から順に底部11、側面部12、首部18及び口部13を有する。バイアル10は、内部空間14を有し、口部13の一端において開口する。底部11は、平らな円盤状の形状であり、底部11の縁において側面部12と連続する。側面部12は、円筒形状である。側面部12は、軸線方向において、外径及び内径が一定に成形されている。首部18は、側面部12に連続し、側面部12からテーパー状に狭まる。首部18の内径及び外径は、側面部12より狭く成形されている。口部13は、首部18に連続し、縁部17で区画される開口16を有する。口部13の内径及び外径は、側面部12より狭く成形されている。口部13の外径は、首部18の外径において最も狭く形成された箇所より広く成形されている。
バイアル10の製造方法は、主として容器成形工程、ファイアブラスト工程を含む。容器成形工程は、ガラス管からバイアル10を成形する工程である。ファイアブラスト工程は、ポイントバーナ30の先端から噴出された炎31をバイアル10の内面15における加工劣化領域に衝突させる工程である。
一例として、一般的な縦型成形機を用いて、垂直に保持されて回転するガラス管を加熱することによりバイアル10が成形される。ガラス管は、バーナの炎で加熱されることにより軟化する。ガラス管の一部が軟化変形することにより、バイアル10の底部11及び口部13がガラス管から成形される。底部が成形される際に、ガラス管の原料であるホウケイ酸ガラスからアルカリホウ酸塩等が揮発する。揮発したアルカリホウ酸塩等のアルカリ成分は、バイアル10の内面15における底部11近傍に付着して加工劣化領域を生じさせる。加工劣化領域を除去するために、以下に詳細に説明するファイアブラスト工程が行われる。
ファイアブラスト工程において、ファイアブラスト装置80が用いられる。ファイアブラスト工程は、主として以下の5つの工程を含む。
(1)着火されているポイントバーナ30の先端を、ポイントバーナ30の先端から噴出する炎31がバイアル10に接触しない位置から、バイアル10の外部であってバイアル10の開口16に対向する位置へ移動する第1工程。
(2)着火されているポイントバーナ30の先端を、開口16を通じてバイアル10の内部空間14へ挿入する第2工程。
(3)バイアル10の内部空間14にポイントバーナ30の先端を保持しつつ、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31をバイアル10の内面15に衝突させる第3工程。
(4)着火されているポイントバーナ30の先端を、開口16を通じてバイアル10の内部空間14から外部へ移動する第4工程。
(5)着火されているポイントバーナ30の先端を、バイアル10の開口16に対向する位置から、ポイントバーナ30の先端から噴出する炎31がバイアル10に接触しない位置まで移動する第5工程。
第1工程において、遮蔽板51は、バイアル10の開口16付近に位置される。図4(A)に示されるようにファイアブラストが行われていない状態では、ポイントバーナ30は待機位置に位置される。待機位置において、ポイントバーナ30のノズル32は、ローラ対60に載置されたバイアル10よりも先端が上方に位置するように、その軸線が水平方向(前後方向103)に対して傾斜されている。ノズル32の軸線が水平方向(前後方向103)に対して傾斜されている角度は、バイアル10の外形やノズル32の長さに応じて設定されるが、例えば図4(A)に示されるように、約70度程度である。ポイントバーナ30は、第1工程が行われる前に着火されているが、待機位置において、ポイントバーナ30のノズル32の先端から噴出する炎31は、バイアル10に接触しない。
第2工程において、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力は、第3工程においてバイアル10の内面15に衝突させる炎31の火力より弱く調節される。図4(C)に示されるように、ノズル32の軸線がバイアル10の軸線と平行になるまで回動された後、第2工程において、着火された状態でポイントバーナ30は、スライド装置42によって、ノズル32をバイアル10の軸線と平行な方向に沿わせた状態でノズル32がバイアル10の内部空間14へ進入する向きへ水平方向(前後方向103)に沿ってスライドされる。これにより、図5に示されるように、ノズル32の先端部分が、バイアル10の開口16を通じて内部空間14へ進入する。
図6に示されるように、第3工程において、回動装置41により、ノズル32の先端がバイアル10の内面15の底部11の上端付近を向くように、ポイントバーナ30が回動される。この回動により、ポイントバーナ30のノズル32は、その先端が基端より上方となるように、軸線が水平方向(前後方向103)に対して傾斜される。この状態において、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力は、ファイアブラストをバイアル10に行うために十分な強さに調節される。ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力として、加工劣化領域に含まれるアルカリ成分等がバイアル10の外部へ除去できる強さが必要である。ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31は、バイアル10の内面15に衝突される。また、ローラ対60が回転されることにより、バイアル10は、その軸線を水平方向(前後方向103)に沿わせた状態のまま軸線周りに回転する。これにより、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31がバイアル10の内面15の周方向へ順次衝突する。これにより、バイアル10の内面15に生じた加工劣化領域が除去される。ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31により加工劣化領域が除去される処理が、ファイアブラストと称される。
第4工程において、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力は、第3工程においてバイアル10の内面15に衝突させる炎31の火力より弱く調節される。図5に示されるように、回動装置41により、ノズル32の軸線がバイアル10の軸線と平行になるまでポイントバーナ30が回動される。続いて、スライド装置42によってポイントバーナ30が前述の第2工程と逆向きへ、すなわちバイアル10から離れる向きへスライドされることにより、ノズル32がバイアル10の開口16を通じて内部空間14から外部へ移動する(図4(C)に示す状態)。
第5工程において、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力は、第3工程においてバイアル10の内面15に衝突させる炎31の火力より弱く調節される。第5工程において、ポイントバーナ30は、図4(C)に示される位置から図4(A)に示される待機位置まで回動される。ポイントバーナ30が回動される過程において、図4(B)に示されるように、ポイントバーナ30の先端から噴出する炎31は、遮蔽板51で遮蔽される。したがって、この回動において、ポイントバーナ30の先端から噴出する炎31はバイアル10に接触しない。
本実施形態によれば、第3工程において、バイアル10の内面15における加工劣化領域にポイントバーナ30の先端から噴出される炎31を衝突させることにより、バイアル10の内面15から加工劣化領域が除去される。第2工程及び第4工程において、第3工程においてバイアル10の内面に衝突させるポイントバーナ30の炎31の火力より弱い火力の炎31をポイントバーナ30の先端から噴出されるため、ポイントバーナ30の先端がバイアル10の開口16を通過するときに、バイアル10の首部18などの開口16付近に加わる熱量が抑制される。
なお、本実施形態では、遮蔽機構として遮蔽板51が採用されたが、遮蔽機構が採用されない形態であっても本発明の作用効果が奏される。例えば、遮蔽機構を設けずに、第1工程及び第5工程において、ポイントバーナ30の先端から噴出される炎31の火力を、第3工程においてバイアル10の内面15に衝突させる炎31の火力より弱く調節することによって、第1工程及び第5工程においてポイントバーナ30が回動されるときに、バイアル10の口部13付近に炎31が接触することにより口部13付近に加わる熱量を少なくすることができる。
上述の実施形態に示された容器成形工程によって、バイアル10を成形した。標準的な縦型成形機を用いて、ガラス管を加工することによりバイアル10を成形した。実施例において形成したバイアルのサイズは、外径が18mm、全長が33mm、容量が3mLである。
成形された20個のバイアル10に対して、上述の実施形態に示されたファイアブラスト工程を行った。ローラ対60により、バイアル10を回転させた。ポイントバーナ30に導入するガス及び酸素の流量は、流量制御装置によって調節した。第1工程及び第5工程において、ガスの流量は0.3L/minに、酸素の流量は0.7L/minに調節した。第2工程及び第4工程において、ガスの流量は0.4L/minに、酸素の流量は0.9L/minに調節した。第3工程におけるファイアブラストは、10〜30秒間行われた。第3工程において、ガスの流量は0.4L/min以上に、酸素の流量は0.9L/min以上に調節した。
成形された20個のバイアル10に対して、遮蔽板51を使用しなかった以外は実施例1と同様にファイアブラスト工程を行った。
成形された19個のバイアル10に対して、ファイアブラスト工程中のガス及び酸素の流量を一定にし、かつ遮蔽板51を使用しなかった以外は実施例と同様にファイアブラスト工程を行った。ファイアブラスト工程において、ガスの流量は0.6L/minに、酸素の流量は1.34L/minに調節した。すなわち、第1工程から第5工程まで、ガス及び酸素の流量は一定に調節した。
実施例1、実施例2及び比較例で得られたバイアル10を比較すると、実施例1で得られた20個のバイアル10のうち、いずれもクラックが観察されなかった。また、実施例2で得られた20個のバイアル10のうち、1個は首部18にクラックが観察されたが、他の19個はクラックが観察されなかった。これに対して、比較例で得られた19個のバイアル10のうち、9個は首部18にクラックが観察されたが、他の10個はクラックが観察されなかった。このため、実施例1、実施例2ともに、比較例に比べてクラックの発生が明らかに抑制された。また、実施例1のように遮蔽板51を使用した場合は、実施例2のように遮蔽板51を使用しなかった場合に比べて、さらにクラックの発生が抑制されることが確認された。
11・・・底部
13・・・口部
15・・・内面
16・・・開口
17・・・縁部
18・・・首部
30・・・ポイントバーナ
31・・・炎
32・・・ノズル
51・・・遮蔽板(遮蔽機構)
60・・・ローラ対
103・・・前後方向
Claims (7)
- 着火されているポイントバーナの先端を、当該ポイントバーナの先端から噴出する炎が当該ガラス容器に接触しない位置から、当該ガラス容器の外部であって当該ガラス容器の開口に対向する位置へ移動する第1工程と、
着火されている当該ポイントバーナの先端を、開口を通じて当該ガラス容器の内部空間へ挿入する第2工程と、
当該ガラス容器の内部空間に当該ポイントバーナの先端を保持しつつ、当該ポイントバーナの先端から噴出される炎を当該ガラス容器の内面に衝突させる第3工程と、
着火されている当該ポイントバーナの先端を、開口を通じて当該ガラス容器の内部空間から外部へ移動する第4工程と、
着火されている当該ポイントバーナの先端を、当該ガラス容器の開口に対向する位置から、当該ポイントバーナの先端から噴出する炎が当該ガラス容器に接触しない位置まで移動する第5工程と、を含み、
少なくとも当該第2工程及び当該第4工程において、当該第3工程において当該ガラス容器の内面に衝突させる当該ポイントバーナの炎の火力より弱い火力の炎を当該ポイントバーナから噴出する医療用ガラス容器の製造方法。 - 少なくとも上記第1工程及び上記第5工程において、上記ガラス容器の開口付近に遮蔽機構を位置させて、当該遮蔽機構により上記ポイントバーナの先端から噴出する炎が上記ガラス容器に接触することを遮蔽する請求項1に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
- 上記各工程において、上記ガラス容器の開口が水平方向より上方を向くように支持し、
少なくとも上記第2工程及び上記第4工程において、上記ポイントバーナの先端を構成するノズルを上記ガラス容器の軸線と平行な方向に沿わせた状態として上記ガラス容器に対して移動させる請求項1又は2に記載の医療用ガラス容器の製造方法。 - 上記第3工程において、上記ガラス容器を一対のローラで支持し、上記ポイントバーナの先端から噴出される炎を上記ガラス容器の内面に衝突させつつ、当該ローラの回転により上記ガラス容器を回転させる請求項3に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
- 上記遮蔽機構として上記ポイントバーナの先端から噴出される炎を遮蔽できる遮蔽板を用い、上記第1工程及び上記第5工程において、上記ガラス容器の開口を区画する縁部の一部と上記ポイントバーナの先端との間に上記遮蔽板を位置させる請求項2に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
- 上記第1工程及び上記第5工程において、上記ガラス容器の縁部の上側と上記ポイントバーナの先端との間に上記遮蔽板を位置させる請求項5に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
- 上記第1工程及び上記第5工程において、上記ポイントバーナを回動することにより上記ポイントバーナの先端を上記ガラス容器に対して移動させる請求項1から6のいずれかに記載の医療用ガラス容器の製造方法。
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