JP5375286B2 - 医療用ガラス容器の製造方法 - Google Patents

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本発明は、医療用ガラス容器の製造方法に関する。
医薬品などの保存に用いられるガラス製の容器は、一般に「バイアル」と称される。このバイアルは、例えば、ガラス管から成形加工される。ガラスの主原料にはアルカリ成分を含むものが多く、アルカリホウ酸などのアルカリ成分が、バイアルの内壁に付着又は凝集することが知られている。医薬品の保存容器として、つまり医療用としてバイアルを用いる場合に、このようなアルカリ成分が、バイアルに保存されている医薬品中に溶出されると、医薬品が変質するおそれがある。この問題に対して、バイアルの内面にシリコーン樹脂がコーティングされたり、硫酸アンモニウムによるサルファー処理が施されたり、シリカ膜が被着されたりする(特許文献1参照)
また、ホウケイ酸ガラス管よりバイアルを成形する工程において、底部を成形した後に、ガス炎によってバイアル内側面における加工劣化域を除去することが知られている(特許文献2参照)。
特公平6−76233号公報 国際公開第2006/123621号公報
バイアルの内面にシリコーン樹脂がコーティングされたり、硫酸アンモニウムによるサルファー処理が施されたりすることによって、バイアルからのアルカリ成分の溶出が抑制されるが、バイアルの製造工程において、新たな原料が必要とされ、更に工数も増えることから、コストアップが避けられないという問題がある。これに対して、ガス炎によってバイアル内側面における加工劣化域を除去する手法では、新たな原料を必要とせず、工数の増加も比較的少なく済むという利点がある。
しかしながら、ガス炎をバイアル内面の加工劣化域に集中させるために、ガスバーナーに細長なノズルを用いると、熱によるノズルの劣化が激しく、ノズル1本当たりのバイアルの処理数が少ないという問題が本発明者らによって見いだされた。
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療用ガラス容器の内面を加熱処理するバーナーであって、ノズル1本当たりのガラス容器の処理数を向上させることができる手段を提供することにある。
(1) 本発明に係る医療用ガラス容器の内面処理用バーナーは、燃料が流通される第1流路を有するバーナー本体と、上記バーナー本体の第1流路と連続される第2流路を有し、加工対象の医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間に挿入可能な細長形状のノズルと、を具備する。このノズルはセラミック製である。
バーナー本体の第1流路には、燃料が流通される。この燃料は、例えば、ガスと酸素との混合物である。燃料は、第1流路から第2流路へ流通され、ノズルの先端で燃焼されて炎を形成する。
ノズルは、医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間に挿入可能な細長形状である。医療用ガラス容器の中間品とは、例えば、ガラス管から医療用ガラス容器が成形加工されるのであれば、少なくともガラス管の一端側に底部が形成された状態のものであり、バイアルやアンプルが典型例として挙げられる。一般に、医療用ガラス容器は、医薬品が充填されたり、取り出されたりする口部を1カ所に有し、口部の反対側に底部が形成された円筒形状をなす。また、医療用ガラス容器の中間品であっても、ガラス管の一端側に底部が形成されると、口部が形成される他端側のみが開口された円筒形状をなす。ノズルは、この口部から医療用ガラス容器の内部空間に挿入される。ノズルの先端から噴出された炎が、医療用ガラス容器の内面に集中的に当てられる。この炎は、その流れによって、医療用ガラス容器の内面に当たり、さらに口部から外部へ噴出される。これにより、医療用ガラス容器の内部空間に挿入されたノズルが炎に包まれることとなるが、このノズルがセラミック製なので、炎の熱によるノズルの劣化が抑制される。このセラミックとして、アルミナ、マグネシア、ジルコニアなどが挙げられる。また、ノズルは、すべてがセラミック製である必要はなく、少なくとも医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間に挿入される部分がセラミック製であればよい。
(2) 上記ノズルは、内部空間の第1径より口部の第2径が小さい上記医療用ガラス容器の内部空間に挿入可能なものが好適である。
(3) 本発明は、上記医療用ガラス容器の内面処理用バーナーを用いて、内面を加熱処理した医療用ガラス容器として捉えられてもよい。
(4) 本発明は、セラミック製のノズルを有するバーナーを医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間へ挿入し、当該ノズルから噴出された燃料によって形成される炎を当該医療用ガラス容器又はその中間品に対して噴出することによって、加工劣化域を除去する医療用ガラス容器の製造方法として捉えられてもよい。
本発明によれば、医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間に挿入可能な細長形状のノズルがセラミック製にされたので、医療用ガラス容器又はその中間品の内面を加熱処理するために、その内部空間に挿入されたノズルが炎に曝されても、炎の熱によってノズルが劣化することが抑制される。これにより、ノズル1本当たりの医療用ガラス容器の処理数が向上されて、アルカリ成分の溶出が抑制された医療用ガラス容器が低コストで量産される。
図1は、本発明の実施形態にかかるポイントバーナー10の外観構成を示す正面図である。 図2は、ポイントバーナー10が用いられてバイアル50にファイアブラストが施される工程を説明するための図である。 図3は、ポイントバーナー10が用いられてバイアル50にファイアブラストが施される工程を説明するための図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
[ポイントバーナー10]
図1に示されるポイントバーナー10が、本発明に係る医療用ガラス容器の内面処理用バーナーに相当する。このポイントバーナー10は、バイアル50の内面を処理するために用いられる。バイアル50は、本発明に係る医療用ガラス容器の一例であり、バイアル50の形状については後述される。
ポイントバーナー10は、主として、バーナー本体11とノズル12とに大別される。バーナー本体11は、混合ガスが流通される第1流路13を有する管形状のものである。混合ガスは、ガスと酸素との混合物であり、公知の手法によって生成された混合ガスがバーナー本体11の第1流路13に所定の流速で流通される。この混合ガスが、本発明における燃料に相当する。
ノズル12は、バーナー本体11の先端側に設けられている。ノズル12は、ノズル部14と連結部15とに大別される。連結部15は、その内面に雌ネジが形成された円錐形状の部材である。図1には詳細に示されていないが、連結部15に形成された雌ネジが、バーナー本体11の先端に形成された雄ネジに螺合されて、バーナー本体11の先端にノズル12が連結される。これにより、ノズル12は、バーナー本体11に対して取り替え可能に構成されている。
連結部15の頂点側にはノズル部14が設けられている。ノズル部14は、ストロー形状の細長な部材であり、連結部15の頂点側から、バーナー本体11の軸線方向へ延出するように設けられている。ノズル部14は、セラミック製である。このノズル部14の外径R1及び軸線方向の長さL1は、処理対象であるバイアル50の口部51の内径R2や、バイヤル50の深さL2などを考慮して設定される。ノズル部14の外径R1は、少なくとも、バイアル50の口部51から内部空間52へ、その先端側が挿入可能に設定される。具体的には、ノズル部14の外径R1は、口部51の内径R2より十分に小さい。また、ノズル部14の軸線方向の長さL1は、ノズル部14の先端から吹き出される炎20が、バイアル50の底部53付近へ到達可能な長さに設定される。具体的には、ノズル部14の長さL1は、バイアル50の深さL2より長い。
ノズル部14の内部空間である第2流路16は、連結部15の内部空間を介してバーナー本体11の第1流路13と連続されている。これにより、第1流路13に所定の流速で流通される混合ガスが第2流路16を通じてノズル部14の先端から噴出される。この混合ガスが燃焼することによって炎20が形成される。
[バイアル50]
バイアル50は、ガラス管が加工されることによって、口部51及び底部53が形成されたものである。バイアル50の内部空間52の内径R3は、口部51の内径R2より大きい。つまり、バイアル50は、いわゆる細口のガラス容器である。このバイアル50は、医薬品の保存容器として用いられる。この内径R3が、本発明における第1径に相当する。また、内径R2が、本発明における第2径に相当する。
[ファイアブラスト]
以下、本発明に係る医療用ガラス容器の製造方法としてのポイントバーナー10を用いたファイアブラストが説明される。ファイアブラストとは、比較的速い流速で流通される混合ガスによる炎20が、バイヤル50の内面54に対して集中的に噴出されることによって、内面54に生じた加工劣化域を除去する工法である。このファイアブラストが、本発明における加熱処理に相当する。なお、図2及び図3においては、炎20の流れが1点鎖線で示されている。
図2に示されるように、バイアル50の底部53付近の内面に加工劣化域が存在する場合には、ポイントバーナー10のノズル部14の先端側がバイアル50の口部51から内部空間52へ挿入されて、ノズル部14の先端から噴出される炎20が底部53付近の加工劣化域に当たるように、バイヤル50に対してポイントバーナー10の位置が固定される。なお、ポイントバーナー10は、バイアル50に対して接離可能である。
具体的には、図2に示されるように、バイアル50は、口部51と底部53とを水平方向(図2における左右方向)へ対向させた姿勢で、つまり、いわゆる横向きで支持具21に固定される。この支持具21は、横向きのバイアル50を水平方向を軸線として回転可能に支持している。支持具21に支持されて水平方向へ開口した口部51へ、バイヤル50の下方からポイントバーナー10のノズル部14が挿入されている。このノズル部14の軸線は、バイアル50の底部53付近の内面54の上側へ向いている。つまり、ノズル部14から噴出される炎20は、バイアル50の底部53付近の内面54の上側に当たる。
支持具21が動作されてバイアル50が回転され、ポイントバーナー10に混合ガスが流通され、ノズル部14の先端に炎20が形成される。この炎20は、バイアル50の底部53付近の内面54の上側に当たって内部空間52を口部51側へ流れ、口部51からバイアル50の外部へ流れ出る。バイアル50が回転されているので、炎20が底部52付近の内面54に均等に噴出されて、この内面54における加工劣化域が除去される。これにより、バイアル50の内面54からのアルカリ成分の溶出が抑制される。
図3に示されるように、バイアル50の内面54の別の部分においてファイアブラストが施される場合には、バイヤル50の下方から口部51へ挿入されるポイントバーナー10のノズル部14の角度が変更される。図3においては、ノズル部14の軸線は、バイアル50の口部51側の肩付近の内面54の上側へ向いている。このようにして、バイアル50の内面54の任意の箇所にファイアブラストが行われる。
[本実施形態の作用効果]
前述されたポイントバーナー10によれば、バイアル50の内部空間52に挿入可能なノズル部14がセラミック製にされたので、バイアル50の内面54がファイアブラストされてノズル部14が炎20に曝されても、炎20の熱によってノズル部14が劣化することが抑制される。これにより、1本のノズル12当たりのバイアル50の処理数が向上されて、アルカリ成分の溶出が抑制されたバイアル50が低コストで量産される。
また、細長なノズル部14が、内部空間52の内径R3より口部51の内径R2が小さいバイアル50の内部空間52に挿入されてファイアブラストされると、口部51からバイアル50の外部へ放出される炎20にノズル部14が必ず曝されることとなる場合に、本実施形態にかかるポイントバーナー10が特に有用である。
なお、本実施形態では、ガラス管からバイアル50が成形加工された後にポイントバーナー10が用いられてファイアブラストが施される態様が示されているが、ガラス管に対して口部51及び底部53を形成してバイアル50とする工程もポイントバーナー10によって行われてもよい。
また、本実施形態では、バイアル50に対してポイントバーナー10が用いられてファイアブラストが施される態様が示されているが、バイアル50の中間品に対してポイントバーナー10が用いられてファイアブラスが施されてもよい。例えば、バイアル50の原材料であるガラス管の一端側に底部53が形成され、他端側に口部51が未だ形成されていない中間品に対して、その他端側の開口からポイントバーナー10のノズル12が内部空間52に挿入されてファイアブラストが施される態様であっても、前述と同様の作用効果が奏される。
10・・・ポイントバーナー(医療用ガラス容器の内面処理用バーナー)
11・・・バーナー本体
12・・・ノズル
13・・・第1流路
16・・・第2流路
50・・・バイアル(医療用ガラス容器)
51・・・口部
52・・・内部空間
54・・・内面

Claims (3)

  1. セラミック製のノズルを有するバーナーの当該ノズルを医療用ガラス容器又はその中間品の内部空間へ挿入し、当該ノズルから噴出された燃料によって形成される炎を当該医療用ガラス容器又はその中間品の内面に対して噴出することによって、当該医療用ガラス容器又はその中間品の加工劣化域を除去する医療用ガラス容器の製造方法。
  2. 上記医療用ガラス容器又は中間品の口部と底部とを水平方向へ対向させ、上記ノズルを上記医療用ガラス容器又は中間品の下方から口部を介して水平方向と交差させて内部空間へ挿入する請求項1に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
  3. 上記医療用ガラス容器又は中間品を水平方向を軸線として回転させながら、上記ノズルから当該医療用ガラス容器又は中間品の内面に炎を噴出する請求項2に記載の医療用ガラス容器の製造方法。
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