実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
また、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略して示すことがある。
また、図面において、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
本明細書等における「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、トランジスタのソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「XとYとが接続されている」と記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、何らかの電気的作用を有するものを介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域(「チャネル形成領域」ともいう。)における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体層の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅が大きくなる。
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
そこで、本明細書では、見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density of State)が高くなることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」および「直交」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
なお、本明細書等において、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」(これらの同意語を含む)などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
また、本明細書等において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は、特段の説明がない限り、フォトリソグラフィ工程で形成したレジストマスクは、エッチング工程終了後に除去するものとする。
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」または「H電位」ともいう)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」または「L電位」ともいう)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の液晶表示装置100の構造例について、図面を参照して説明する。
液晶表示装置100は、FPC111(Flexible Printed Circuit)が接続された液晶パネル110と、バックライトユニット120を有する。図1(A)は液晶表示装置100の斜視図である。また、図1(B)は液晶表示装置100を液晶パネル110とバックライトユニット120に分離した状態を示す斜視図である。また、図1(A)および図1(B)に、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向を示す矢印を付している。X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は、それぞれが互いに直交する方向である。
液晶パネル110は、表示領域141、回路142、および回路143を有する。また、表示領域141は複数の画素114を有する(図1に図示せず。)。回路142および回路143は、複数のトランジスタにより構成されている。回路142および回路143は、FPC111を介して供給された信号を、表示領域141中のどの画素114に供給するかを決定する機能を有する。
例えば、画素114を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆるフルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、「2K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置を実現することができる。また、例えば、画素114を3840×2160(または、4096×2160など)のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」、「4K UHD」、「4K UHDTV」、「QFHD」、「4KウルトラHD」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置を実現することができる。また、例えば、画素114を7680×4320(または、8192×4320など)のマトリクス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」、「8K UHD」、「8K UHDTV」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置を実現することができる。画素数を増やすことで、16Kや32Kの解像度で表示可能な表示装置を実現することも可能である。
バックライトユニット120は、発光部122と光共鳴板121を有する。発光部122と光共鳴板121は重ねて設けられる。図1(B)において、発光部122は、光共鳴板121の下方に設けられている。また、液晶パネル110は、バックライトユニット120の光共鳴板121側に配置されている。
図2(A1)はFPC111が接続された液晶パネル110の斜視図である。図2(A2)は表示領域141中の部位115を拡大した図である。液晶パネル110は、表示領域141において複数の画素114がマトリクス状に配置されている。また、画素114は、赤色光を射出する副画素113R、緑色光を射出する副画素113G、および青色光を射出する副画素113Bを有する。また、それぞれの画素114が有する副画素113R、副画素113G、および副画素113Bは、Y軸方向に配置されている。なお、本明細書等では、液晶パネル110が有するいずれかの副画素もしくは全ての副画素について記載する場合は、単に「副画素113」と記す。
図2(B1)はバックライトユニット120の斜視図である。図2(B1)では、光共鳴板121と発光部122を分離して示している。図2(B2)は光共鳴板121中の部位125を拡大した図である。なお、図2(B2)では光共鳴板121の構成要素のうち、基板126と構造体127を示している。構造体127は、Y軸方向の断面において凸部を有する。また、構造体127は、基板126上にX軸方向に延伸して設けられている。
次に、発光部122と光共鳴板121の構造および機能について説明する。図3(A)は、図2(B1)に示す部位Y1−Y2に相当する発光部122と光共鳴板121の断面図である。
<発光部>
発光部122は、導光層149、光源123、および反射層124を有する。光源123は導光層149内に設けられている。反射層124は、導光層149の一方の面側に設けられている。光源123から発せられる光135の一部は、導光層149の他方の面側からZ軸方向に射出される。なお、本明細書などでは、光が射出する面を「射出面」という。また、光源123から発せられる光135の他の一部は、反射層124で反射されて、射出面からZ軸方向に射出される。
導光層149は、可視光の透過率が高い材料を用いて形成する。導光層149は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料や、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。また、導光層149として、空気、窒素、または希ガスなどの気体を用いてもよい。
反射層124は、可視光の反射率の高い材料を用いて形成する。反射層124は、例えば、銀(Ag)や、アルミニウム(Al)などを含む材料を用いて形成することができる。
光源123としては、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)やLED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。LEDは、白色LED、赤色LED、緑色LED、または青色LEDなどを、単独または組み合わせて用いてもよい。また、光源123として、有機EL(Electro Luminescence)素子や無機EL素子などを用いてもよい。
なお、図4(A)乃至図4(C)の斜視図に示すように、光源123を導光層149の外に設けてもよい。図4(A)は、光源123を導光層149のX軸方向の一側面に沿って設ける例を示している。光源123から発せられた光135は、当該側面から導光層149内に入射し、導光層149内で反射してZ軸方向に射出される。図4(B)は、光源123を導光層149のY軸方向の一側面に沿って設ける例を示している。なお、光源123は、導光層149のX軸方向の両側面に設けてもよいし、Y軸方向の両側面に設けてもよい。また、図4(C)に示すように、光源123を導光層149の全ての側面に設けてもよい。
また、導光層149の光135の射出面側に、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの機能性部材を設けてもよい。
<光共鳴板>
光共鳴板121は、基板126上に構造体127を有し、基板126および構造体127上に半透過層128を有する。また、半透過層128上に平坦な表面を有する導光層129を有し、導光層129上に半透過層131を有する。また、半透過層131の上に保護層132を有する。
基板126としては、透光性を有する基板を用いることができる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、基板126として、例えば、樹脂などの可樋性基板などを用いてもよい。
構造体127は、透光性を有する材料で形成する。透光性を有する材料は、絶縁性材料であってもよいし、導電性材料であってもよいし、半導体材料であってもよい。例えば、構造体127を酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁性材料で形成してもよいし、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)や亜鉛酸化物などの導電性材料で形成してもよい。また、構造体127を、樹脂材料を用いて形成してもよい。また、構造体127として、これらの材料を組み合わせて形成してもよい。
半透過層128および半透過層131は、入射した光のうち、一定割合の光を透過して一定割合の光を反射する。半透過層128および半透過層131としては、例えば、銀(Ag)を含む材料またはアルミニウム(Al)を含む材料などを用いることができる。入射した光に対する透過した光の割合(透過率)は、これらの材料の厚さにより決定することができる。
半透過層128は、可視光の透過率が半透過層131と同じか大きいことが好ましい。具体的には、半透過層128の可視光の透過率は、30%以上80%以下が好ましく、20%以上80%以下がより好ましい。また、半透過層131の可視光の透過率は、0.1%以上30%以下が好ましく、0.1%以上20%以下がより好ましい。
導光層129は、可視光の透過率が高い材料を用いて形成する。具体的には、可視光の透過率が50%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下の材料を用いる。例えば、導光層129として酸化シリコンなどの無機材料や、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機材料を用いることができる。
導光層129の形成後、導光層129の表面に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP))、やドライエッチング処理により行うことができる。また、導光層129を、平坦化機能を有する絶縁材料を用いて形成することで、研磨処理を省略することもできる。平坦化機能を有する材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等の有機材料を用いることができる。
また、導光層129として、空気、窒素、または希ガスなどの気体を用いてもよい。導光層129として気体を用いる場合、導光層129内の一部にスペーサを設けることで、半透過層131と半透過層128の間隔を一定に保つことができる。
保護層132は、例えば、導光層129と同様の材料を用いて形成すればよい。
光共鳴板121内には、構造体127により第1共鳴領域133a乃至第3共鳴領域133cが繰り返し形成されている。第1共鳴領域133a乃至第3共鳴領域133cは、それぞれの領域において半透過層128上に半透過層131が導光層129を介して重なり、かつ、半透過層128と半透過層131は互いに平行な面を有する。
また、第1共鳴領域133aにおいて、導光層129は厚さd1を有する。また、第2共鳴領域133bにおいて、導光層129厚さd2を有する。また、第3共鳴領域133cにおいて、導光層129は厚さd3を有する。d1乃至d3は、半透過層128から半透過層131までの距離に相当する。厚さd1は、導光層129の厚さで決定することができる。厚さd2および厚さd3は、導光層129の厚さと構造体127の大きさで決定することができる。
発光部122から射出された光135は光共鳴板121に入射し、構造体127および導光層129内をZ軸方向に沿って伝播する。半透過層128を超えて導光層129内に入射した光135の一部は、半透過層128と半透過層131の間で共鳴し、Z軸方向に射出される。光135の色温度は、3000K以上12000K以下が好ましい。
厚さd1乃至厚さd3を任意の値に設定することで、Z軸方向に射出される光の波長を決定することができる。例えば、第1共鳴領域133aで、光135から波長λの光を取り出して、Z軸方向に射出するには、厚さd1と導光層129の屈折率nの積(光路長)が波長λの2分の1のm倍(mは1以上の整数)になるように設定すればよい。よって、厚さd1は数式1で求めることができる。
本実施の形態では、第1共鳴領域133aから赤の波長域を有する光136Rが射出するように厚さd1を設定する。また、第2共鳴領域133bから緑の波長域を有する光136Gが射出するように厚さd2を設定する。厚さd2は、数式1のd1をd2に読み換えて求めることができる。また、第3共鳴領域133cから青の波長域を有する光136Bが射出するように厚さd3を設定する。厚さd3は、数式1のd1をd3に読み換えて求めることができる。
また、各共鳴領域から射出されなかった光135の残りの成分は、一部が導光層129内を伝播し、他の共鳴領域から射出される。また、光135の残りの成分の一部は半透過層128を透過して発光部122に戻され、発光部122内で反射して再度光共鳴板121に入射する。
このように、光共鳴板121を用いて光135から特定の波長域の光を取り出すことにより、カラーフィルタに光を吸収させて有色光を生成する場合と比較して、光の利用効率を高めることができる。よって、表示装置の消費電力を低減することができる。
また、図3(B)に示すように、光135を保護層132側から光共鳴板121に入射し、基板126側から光136R、光136G、および光136Bを射出させてもよい。図3(B)は、図2(B1)に示す部位Y1−Y2に相当する発光部122と光共鳴板121の断面図である。
<光共鳴板の作製方法>
〔作製方法例1〕
続いて、光共鳴板121の作製方法例について説明する。図5および図6は、図2(B1)の部位Y1−Y2に相当する光共鳴板121の断面図である。
まず、基板126上に構造体127を形成するための層137を設ける(図5(A)参照。)。次に、フォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて層137上にレジストマスクを形成し、層137の一部を選択的にエッチングして層138を形成する。層138の形成後、レジストマスクを除去する(図5(B)参照。)。
次に、層138上の一部にレジストマスク139を形成する(図5(C)参照。)。レジストマスク139を用いて層138の一部を選択的に除去し、凸部を有する構造体127を形成する(図5(D)参照。)。その後、レジストマスク139を除去する。
次に、基板126および構造体127上に半透過層128を形成する(図6(A)参照。)。
次に、半透過層128上に平坦な表面を有する導光層129を設ける(図6(B)参照。)。
次に、導光層129上に半透過層131を設け、半透過層131上に保護層132を設ける(図6(C)参照。)。
なお、レジストマスクは、ハーフトーンマスクまたはグレイトーンマスクを用いて形成してもよい。
〔作製方法例2〕
作製方法例1と異なる光共鳴板121の作製方法例について説明する。図7は、図2(B1)の部位Y1−Y2に相当する光共鳴板121の断面図である。
まず、基板126上に、構造体127aを形成するための層137を設ける(図7(A)参照。)。次に、フォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて層137上にレジストマスクを形成し、層137の一部を選択的にエッチングして構造体127aを形成する。構造体127aの形成後、レジストマスクを除去する(図7(B)参照。)。
次に、構造体127a上に、構造体127bを形成するための層145を設ける(図7(C)参照。)。層145に構造体127aと異なるエッチング特性を有する材料を用いることで、層145と構造体127aの選択比を高めることが好ましい。例えば、構造体127aを酸化シリコンなどの透光性を有する無機絶縁物により形成し、層145をITOなどの透光性を有する金属酸化物で形成してもよい。エッチング特性の異なる材料を用いることで、構造体127aおよび層145(構造体127b)の厚さを制御し易くなる。
次に、層145上の一部にレジストマスク139を形成する(図7(D)参照。)。レジストマスク139を用いて層145の一部を選択的に除去し、構造体127bを形成する。構造体127aと構造体127bを積層して、凸部を有する構造体127が形成される。
次に、基板126および構造体127上に半透過層128を形成する(図7(E)参照。)。以降の作製工程は、作製方法例1と同様に行なうことができる。
なお、光共鳴板121の作製方法は上記作製方法に限定されるものではない。例えば、光共鳴板121の作製に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の作製方法を応用することも可能である。例えば、MEMSの作製方法を応用して、構造体127および半透過層128を形成した後、構造体127を除去してもよい。構造体127を除去することで、構造体127による光135の吸収がなくなるため、光135の利用効率を高めることができる。
<液晶パネルと光共鳴板の配置>
図8乃至図10は、図1(A)に示す部位M1−M2の断面図である。液晶パネル110は、トランジスタ156が設けられた素子基板150と、対向基板160を有する。
図8において、素子基板150は、基板151上に絶縁層152を介してトランジスタ156と電極153を有する。電極153はトランジスタ156と電気的に接続されている。また、電極153を覆って配向膜154が形成されている。電極153は画素電極として機能できる。
対向基板160は、基板161上に遮光層162を有し、遮光層162上にオーバーコート層163を有し、オーバーコート層163上に電極164を有し、電極164上に配向膜165を有する。
素子基板150と対向基板160は、電極153と電極164が向き合うように配置され、液晶層155を介して重なる。また、素子基板150の外側に偏光板171を有し、対向基板160の外側に偏光板172を有する。また、液晶素子157は、電極153、配向膜154、液晶層155、配向膜165、電極164により形成される。
液晶パネル110と光共鳴板121(バックライトユニット120)は、副画素113Rと第1共鳴領域133aが互いに重なるように配置されている。同様に、副画素113Gと第1共鳴領域133bが互いに重なるように配置されている。また、副画素113Bと第1共鳴領域133cが互いに重なるように配置されている。
光共鳴板121の第1共鳴領域133aから射出された光136Rは副画素113Rに入射し、液晶素子157を介して対向基板160側から外部に射出される。同様に、第1共鳴領域133bから射出された光136Gは副画素113Gに入射し、液晶素子157を介して対向基板160側から外部に射出される。また、第1共鳴領域133cから射出された光136Bは副画素113Bに入射し、液晶素子157を介して対向基板160側から外部に射出される。液晶素子157は、副画素毎に透過する光量を制御する。
また、図9に示すように、対向基板160の基板161とオーバーコート層163の間に着色層を設けてもよい。図9では、副画素113Rに赤の波長域の光を透過する着色層166Rを設け、副画素113Gに緑の波長域の光を透過する着色層166Gを設け、副画素113Bに青の波長域の光を透過する着色層166Bを設けている。なお、本明細書等では、いずれかの着色層もしくは全ての着色層について記載する場合は、単に「着色層166」と記す。
着色層を設けることで、液晶表示装置100の色再現性をより高めることができる。また、着色層を設けることで、外光の反射を抑え、液晶表示装置100の視認性をより高めることができる。また、着色層を設けることで、コントラスト比を高め、液晶表示装置100の表示品位をより高めることができる。
また、液晶素子157を備える表示装置(液晶表示装置)の駆動方法としては、例えば、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPS(In Place Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、またはTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子およびその駆動方式として様々なものを用いることができる。
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物により液晶素子157を構成してもよい。ブルー相を示す液晶を含有する液晶表示装置は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、かつ、視野角依存性が小さい。
また、液晶表示装置100をIPSモードやFFSモードなどの、いわゆる横電界モードで用いる場合は対向基板160上の電極164を設けない場合がある。
図10は、液晶表示装置100をIPSモードで用いる場合の断面図である。図10では、素子基板150に電極167が形成されている。電極167には共通の電位(コモン電位)が供給される。図10において、液晶素子157は、電極153、電極167、配向膜154、液晶層155、配向膜165により形成される。液晶素子314は、電極153および電極167間に生じる電界(基板面に対して横方向に発生する電界)により液晶の配向が制御される。また、図10では対向基板160に電極164を設けない場合を例示しているが、対向基板160に電極164を設けてもよい。
また、液晶素子157に代えて、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いた表示素子を用いてもよい。例えば、DMS(Digital Micro Shutter)素子を用いてもよい。
<表示装置の画素構成例>
ここで、カラー表示を実現するための画素構成の一例を、図11を用いて説明する。前述したように、画素114を赤、緑、青の光を射出する副画素で構成することで、フルカラー表示を実現することができる。なお、副画素が射出する光は、赤、緑、青、以外であってもよく、例えば、黄、シアン、マゼンダなどであってもよい。
また、図11(A)に示すように、1つの画素114に4つの副画素を設けてもよい。例えば、副画素113R、副画素113G、および副画素113Bに加えて、黄色の光を射出する副画素113Yを設けてもよい。1つの画素114に含まれる副画素の数を増やすことで、特に色の再現性を高めることができる。よって、表示装置の表示品位を高めることができる。
また、副画素113Yに代えて、白色光を射出する副画素113Wを設けてもよい。副画素113Wを設けることで、表示領域の発光輝度を高めることができる。なお、副画素113Wを設ける場合は、副画素113Wと重なる領域の半透過層131を設けなくてもよい。
なお、副画素の占有面積や形状などは、それぞれ同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。図11(B)に示すように、青色の光を射出する副画素113Bの面積を副画素113Rや副画素113Gより大きくしてもよい。
また、配列方法として、ストライプ配列以外の方法でもよい。例えば、デルタ配列、ベイヤー配列、マトリクス配列などを適用することもできる。マトリクス配列を適用した場合の例を、図11(C)に示す。ペンタイル配列を適用した場合の例を、図11(D)に示す。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、液晶表示装置100に用いることができる回路構成例と、副画素113に用いることができるトランジスタ156および容量素子158の断面構造例について説明する。
〔液晶表示装置のブロック図〕
図12は、液晶表示装置100の構成を説明するためのブロック図である。液晶表示装置100は、表示領域141、回路142、および回路143を有する。また、回路142は、例えば信号線駆動回路として機能する。回路143は、例えば走査線駆動回路として機能する。
また、液晶表示装置100は、各々が略平行に配設され、且つ、回路143によって電位が制御されるm本の走査線3135と、各々が略平行に配設され、且つ、回路142によって電位が制御されるn本の信号線3136と、を有する。さらに、表示領域141はm行n列のマトリクス状に配設された複数の副画素113を有する。なお、m、nは、ともに2以上の自然数である。
表示領域141において、各走査線3135は、副画素113のうち、いずれかの行に配設されたn個の副画素113と電気的に接続される。また、各信号線3136は、副画素113のうち、いずれかの列に配設されたm個の副画素113に電気的に接続される。
また、図13(A)に示すように、表示領域141を挟んで回路143と向き合う位置に、回路143aを設けてもよい。また、図13(B)に示すように、表示領域141を挟んで回路142と向き合う位置に、回路142aを設けてもよい。図13(A)および図13(B)では、回路143aを回路143と同様に走査線3135に接続する例を示している。ただし、これに限らず、例えば、走査線3135に接続する回路143と回路143aを、数行毎に変えてもよい。図13(B)では、回路142aを回路142と同様に信号線3136に接続する例を示している。ただし、これに限らず、例えば、信号線3136に接続する回路142と回路142aを、数行毎に変えてもよい。また、回路142、回路142a、回路143、および回路143aは、副画素113を駆動する以外の機能を有していてもよい。
また、回路142、回路142a、回路143、および回路143aを、「駆動回路」という場合がある。副画素113は、画素回路および表示素子を有する。画素回路3137は表示素子を駆動する回路である。駆動回路が有するトランジスタは、画素回路3137を構成するトランジスタと同時に形成することができる。また、駆動回路の一部または全部を他の基板上に形成して、液晶表示装置100と電気的に接続してもよい。例えば、駆動回路の一部または全部を、単結晶基板を用いて形成し、液晶表示装置100と電気的に接続してもよい。
〔画素回路構成例1〕
図14(A1)は、液晶表示装置100の副画素113に用いることができる回路構成の一例を示している。図14(A1)に示す画素回路3137は、トランジスタ156と、容量素子158と、を有する。また、画素回路3137は、表示素子として機能できる液晶素子157と電気的に接続されている。
液晶素子157の一対の電極の一方の電位は、画素回路3137の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子157に含まれる液晶は、ノード3436に書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、液晶素子157の一対の電極の一方に、共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、液晶素子157の一対の電極の他方はノード3436に電気的に接続される。
m行n列目の画素回路3137において、トランジスタ156のソース電極およびドレイン電極の一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方はノード3436に電気的に接続される。トランジスタ156のゲート電極は、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ156は、ノード3436へのデータ信号の書き込みを制御する機能を有する。
容量素子158の一対の電極の一方は、特定の電位が供給される配線(以下、「容量線CL」ともいう。)に電気的に接続され、他方は、ノード3436に電気的に接続される。また、液晶素子157の一対の電極の他方はノード3436に電気的に接続される。なお、容量線CLの電位の値は、画素回路3137の仕様に応じて適宜設定される。容量素子158は、ノード3436に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
ここで、図14(A1)の画素回路3137を有する表示装置の動作例について説明しておく。まず、回路143により各行の画素回路3137を順次選択し、トランジスタ156をオン状態にしてノード3436にデータ信号を書き込む。
次に、トランジスタ156をオフ状態としてノード3436に書き込まれたデータ信号を保持する。ノード3436に書き込まれたデータ信号に応じて、液晶素子157の透過光量が決まる。これを行毎に順次行うことにより、表示領域141に画像を表示できる。
また、図14(A2)に示すように、トランジスタ156に代えて、バックゲート電極を有するトランジスタ156aを用いてもよい。なお、バックゲート電極については他の実施の形態で詳細に説明する。
〔画素回路構成例2〕
図14(A1)に示す画素回路3137と異なる構成を有する画素回路3137について、図14(B1)を用いて説明する。また、図14(C)は図14(B1)に示す画素回路3137のレイアウト例を説明する上面図である。図14(C)は、液晶素子をIPSモードで動作させる場合のレイアウト例である。また、図14(C)は、ノード3437が容量線CLと電気的に接続する場合のレイアウト例である。
図14(B1)に示す画素回路3137は、液晶素子157に代えて並列に接続された液晶素子157aおよび液晶素子157bを有する点が、図14(A1)に示す画素回路3137と異なる。ここでは異なる構成について説明し、同様な構成については上記の説明を援用する。
図14(B1)に示す画素回路3137は、液晶素子157aの一方の電極がノード3437と電気的に接続され、他方の電極(電極E1)がノード3436と電気的に接続される。また、液晶素子157bの一方の電極(電極E2)がノード3436と電気的に接続され、他方の電極がノード3437と電気的に接続される。
一般に、液晶素子を用いた表示装置では1フレーム毎に液晶素子に印加する電圧の極性が入れ替わる。液晶表示装置100を横電界モードで用いる場合、液晶素子に印加する電圧の極性によって、液晶素子の動きに差異が生じる場合がある。また、当該差異に起因して、表示不良の一つであるフリッカー現象が生じる場合がある。特にフレームレートが遅い場合にフリッカー現象が生じやすく、表示品位が低下しやすい。
図14(B1)に示すように液晶素子157aと液晶素子157bとを並列に接続する構成により、当該差異を相殺し、フリッカー現象を生じにくくすることができる。よって、表示装置の表示品位を高めることができる。
また、図14(B2)に示すように、トランジスタ156に代えて、バックゲート電極を有するトランジスタ156aを用いてもよい。
〔トランジスタと容量素子の断面構造例1〕
副画素113は、素子基板150上に、例えば少なくとも1つのトランジスタ156と1つの容量素子158を有する。また、トランジスタ156および容量素子158は、絶縁層152上に形成されている。
図15(A)に、トランジスタ156と容量素子158を含む、素子基板150の一部の断面構造例を示す。図15(A)に示すトランジスタ156は、ボトムゲート型のトランジスタの一種であるチャネルエッチング型のトランジスタである。
図15(A)において、基板151上に絶縁層152が形成され、絶縁層152上に電極201と電極211が形成されている。また、電極201および電極211上に絶縁層202が形成され、絶縁層202上に半導体層203が形成されている。また、半導体層203の一部に接して電極204と電極205が設けられている。電極205の一部は絶縁層202を介して電極211と重なり、容量素子158が形成される。また、電極204、電極205を覆って絶縁層206が形成され、絶縁層206上に絶縁層207が形成され、絶縁層207上に絶縁層208が形成されている。また、絶縁層208の上に電極153が形成されている。電極153は絶縁層208、絶縁層207、および絶縁層206に設けられた開口部で電極205を電気的に接続されている。また、電極153上に配向膜154が形成されている。
電極201は、ゲート電極として機能できる。電極204は、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能できる。電極205は、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。また、電極211は、容量素子158の一方の電極として機能できる。また、電極205は、容量素子158の他方の電極として機能できる。
電極201および電極211は、同一の作製工程を経て形成することができる。電極204および電極205は、同一の作製工程を経て形成することができる。
<基板>
基板151として用いる材料に大きな制限はないが、少なくとも透光性を有し、かつ加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えばバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。
なお、基板151として、可撓性基板(フレキシブル基板)、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどを用いてもよい。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アラミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。
基板151に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板151に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いればよい。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
<絶縁層>
絶縁層152、絶縁層202、絶縁層206、絶縁層207、および絶縁層208は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた材料を、単層でまたは積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
特に絶縁層152および絶縁層207は、不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁材料を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、不純物が透過しにくい絶縁性材料として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化シリコンなどを挙げることができる。また、絶縁層152または絶縁層207として、絶縁性の高い酸化インジウム錫亜鉛(In−Sn−Zn酸化物)などを用いてもよい。
絶縁層152に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、基板151側からの不純物の拡散を抑制し、トランジスタの信頼性を高めることができる。絶縁層207に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁層208側からの不純物の拡散を抑制し、トランジスタの信頼性を高めることができる。
絶縁層152、絶縁層202、絶縁層206、絶縁層207、および絶縁層208として、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層して用いてもよい。絶縁層152、絶縁層202、絶縁層206、絶縁層207、および絶縁層208の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、スピンコート法などの各種形成方法を用いることができる。
例えば、熱CVD法を用いて、酸化アルミニウムを成膜する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(TMAなど)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
また、半導体層203として酸化物半導体を用いる場合、半導体層203中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁層の水素濃度を低減することが好ましい。特に、半導体層203と接する絶縁層202と絶縁層206中の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の水素濃度を、SIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、半導体層203中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の窒素濃度を低減することが好ましい。特に、半導体層203と接する絶縁層202と絶縁層206中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の窒素濃度を、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
なお、SIMS分析によって測定された濃度は、プラスマイナス40%の変動を含む場合がある。
また、半導体層203として酸化物半導体を用いる場合、絶縁層は、加熱により酸素が放出される絶縁層(「過剰酸素を含む絶縁層」ともいう。)を用いて形成することが好ましい。特に、半導体層203と接する絶縁層202と絶縁層206は過剰酸素を含む絶縁層とすることが好ましい。例えば、当該絶縁層の表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われるTDS分析において、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、あるいは3.0×1020atoms/cm3以上である絶縁層が好ましい。
また、過剰酸素を含む絶縁層は、絶縁層に酸素を添加する処理を行って形成することもできる。酸素を添加する処理は、酸素雰囲気下による熱処理や、イオン注入装置、イオンドーピング装置またはプラズマ処理装置を用いて行うことができる。酸素を添加するためのガスとしては、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガスまたはオゾンガスなどを用いることができる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。
また、絶縁層を、酸素を含む雰囲気中でスパッタリング法により成膜することで、被形成層に酸素を導入することができる。
また、一般に、容量素子は対向する二つの電極の間に誘電体を挟む構成を有し、誘電体の厚さが薄いほど(対向する二つの電極間距離が短いほど)、また、誘電体の誘電率が大きいほど容量値が大きくなる。ただし、容量素子の容量値を増やすために誘電体を薄くすると、トンネル効果などに起因して、二つの電極間に意図せずに流れる電流(以下、「リーク電流」ともいう。)が増加しやすくなり、また、容量素子の絶縁耐圧が低下しやすくなる。
トランジスタのゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層が重畳する部分は、容量素子として機能する(以下、「ゲート容量」ともいう。)。なお、半導体層の、ゲート絶縁層を介してゲート電極と重畳する領域にチャネルが形成される。すなわち、ゲート電極とチャネル形成領域が、容量素子の二つの電極として機能する。また、ゲート絶縁層が容量素子の誘電体として機能する。ゲート容量の容量値は大きいほうが好ましいが、容量値を大きくするためにゲート絶縁層を薄くすると、前述のリーク電流の増加や、絶縁耐圧の低下といった問題が生じやすい。
そこで、絶縁層202として、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz(x>0、y>0、z>0))、酸化ハフニウム、または酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いると、絶縁層202を厚くしても、絶縁層202と半導体層203間の容量値を十分確保することが可能となる。
例えば、絶縁層202として誘電率が大きいhigh−k材料を用いると、絶縁層202を厚くしても、絶縁層202に酸化シリコンを用いた場合と同等の容量値を実現できるため、電極201と半導体層203間に生じるリーク電流を低減できる。また、電極201と同じ層を用いて形成された配線と、絶縁層202を介して該配線と重畳する他の配線との間に生じるリーク電流を低減できる。なお、絶縁層202をhigh−k材料と、他の絶縁材料との積層構造としてもよい。
また、絶縁層208は、平坦な表面を有する絶縁層である。絶縁層208としては、上記絶縁性材料のほかに、ポリイミド、アクリル系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層してもよい。
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
絶縁層208の形成方法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)などを用いればよい。
また、試料表面にCMP処理を行なってもよい。CMP処理を行うことにより、試料表面の凹凸を低減し、この後形成される絶縁層や導電層の被覆性を高めることができる。
<半導体層>
半導体層203としては、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、非晶質半導体などを用いることができる。半導体材料としては、例えば、シリコンや、ゲルマニウムなどを用いることができる。また、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体などを用いることができる。
また、半導体層203として有機物半導体を用いる場合は、芳香環をもつ低分子有機材料やπ電子共役系導電性高分子などを用いることができる。例えば、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレンなどを用いることができる。
また、酸化物半導体のバンドギャップは2eV以上あるため、半導体層203に酸化物半導体を用いると、オフ電流が極めて少ないトランジスタを実現することができる。具体的には、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を室温下において1×10−20A未満、1×10−22A未満、あるいは1×10−24A未満とすることができる。よって、消費電力の少ないトランジスタを提供できる。また、消費電力の少ない表示装置や半導体装置などを提供できる。
また、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体層を用いたトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)は、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。よって、信頼性の良好なトランジスタを提供できる。また、信頼性の良好な表示装置や半導体装置などを提供できる。
本実施の形態では、半導体層203として酸化物半導体を用いる場合について説明する。半導体層203に用いる酸化物半導体は、例えば、インジウム(In)を含む酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、酸化物半導体は、元素Mを含むと好ましい。
元素Mは、好ましくは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどである。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、酸化物半導体は、亜鉛を含むと好ましい。酸化物半導体は亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
ただし、半導体層203に用いる酸化物半導体は、インジウムを含む酸化物に限定されない。酸化物半導体は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物、酸化ガリウムなどの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物、ガリウムを含む酸化物、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。
半導体層203に用いる酸化物半導体は、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物半導体を用いる。半導体層203に用いる酸化物半導体のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下である。
酸化物半導体は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、熱CVD法またはPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を含むがこれに限定されない)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法を用いて成膜すればよい。プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、または熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくく、また、欠陥の少ない膜が得られる。
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、トランジスタや半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
例えば、半導体層203として、熱CVD法でInGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム(In(CH3)3)、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)、およびジメチル亜鉛(Zn(CH3)2)を用いる。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
例えば、半導体層203として、ALD法で、InGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを用いてInGaO2層やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスで水をバブリングしたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスやトリス(アセチルアセトナト)インジウムを用いても良い。なお、トリス(アセチルアセトナト)インジウムは、In(acac)3とも呼ぶ。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスやトリス(アセチルアセトナト)ガリウムを用いても良い。なお、トリス(アセチルアセトナト)ガリウムは、Ga(acac)3とも呼ぶ。また、Zn(CH3)2ガスや、酢酸亜鉛を用いても良い。これらのガス種には限定されない。
酸化物半導体層をスパッタリング法で形成する場合、パーティクル数低減のため、インジウムを含むターゲットを用いると好ましい。また、元素Mの原子数比が高い酸化物ターゲットを用いた場合、ターゲットの導電性が低くなる場合がある。インジウムの原子数比が高い酸化物ターゲットを用いる場合、ターゲットの導電率を高めることができ、DC放電、AC放電が容易となるため、大面積の基板へ対応しやすくなる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる。
また、酸化物半導体層をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比は、In:M:Znが3:1:1、3:1:2、3:1:4、1:1:0.5、1:1:1、1:1:2、1:4:4、4:2:4.1などとすればよい。
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法で成膜すると、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の酸化物半導体層が成膜される場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも成膜された膜の原子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40atomic%以上90atomic%程度以下となる場合がある。
また、OSトランジスタに安定した電気特性を付与するためには、酸化物半導体層中の不純物及び酸素欠損を低減して高純度真性化し、半導体層203を真性または実質的に真性と見なせる酸化物半導体層とすることが好ましい。また、少なくとも半導体層203中のチャネル形成領域が真性または実質的に真性と見なせる酸化物半導体層とすることが好ましい。
また、半導体層203に酸化物半導体層を用いる場合は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)を用いることが好ましい。なお、CAAC−OSについては、実施の形態4で詳細に説明する。
また、半導体層203に用いる酸化物半導体層は、CAACでない領域が当該酸化物半導体層全体の20%未満であることが好ましい。
CAAC−OSは誘電率異方性を有する。具体的には、CAAC−OSはa軸方向およびb軸方向の誘電率よりも、c軸方向の誘電率が大きい。チャネルが形成される半導体層にCAAC−OSを用いて、ゲート電極をc軸方向に配置したトランジスタは、c軸方向の誘電率が大きいため、ゲート電極から生じる電界がCAAC−OS全体に届きやすい。よって、サブスレッショルドスイング値(S値)を小さくすることができる。また、半導体層にCAAC−OSを用いたトランジスタは、微細化によるS値の増大が生じにくい。
また、CAAC−OSはa軸方向およびb軸方向の誘電率が小さいため、ソースとドレイン間に生じる電界の影響が緩和される。よって、チャネル長変調効果や、短チャネル効果、などが生じにくく、トランジスタの信頼性を高めることができる。
ここで、チャネル長変調効果とは、ドレイン電圧がしきい値電圧よりも高い場合に、ドレイン側から空乏層が広がり、実効上のチャネル長が短くなる現象を言う。また、短チャネル効果とは、チャネル長が短くなることにより、しきい値電圧の低下などの電気特性の悪化が生じる現象を言う。微細なトランジスタほど、これらの現象による電気特性の劣化が生じやすい。
酸化物半導体層の形成後、酸素ドープ処理を行ってもよい。また、酸化物半導体層に含まれる水分または水素などの不純物をさらに低減して、酸化物半導体層を高純度化するために、加熱処理を行うことが好ましい。
例えば、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気、酸化性ガス雰囲気、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気で、酸化物半導体層に加熱処理を施す。なお、酸化性ガス雰囲気とは、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、不活性ガス雰囲気とは、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。
また、加熱処理を行うことにより、不純物の放出と同時に絶縁層202に含まれる酸素を酸化物半導体層中に拡散させ、当該酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を低減することができる。なお、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理は、酸化物半導体層の形成後であればいつ行ってもよい。
加熱処理に用いる加熱装置に特別な限定はなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であってもよい。例えば、電気炉や、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。処理時間は24時間以内とする。24時間を超える加熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
<電極>
電極201、電極211、電極204、電極205を形成するための導電性材料としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。これらの材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。
また、電極201、電極211、電極204、電極205を形成するための導電性材料に、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物などの酸素を含む導電性材料、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を適用することもできる。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。また、前述した金属元素を含む材料、酸素を含む導電性材料、および窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造とすることもできる。導電性材料の形成方法は特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの各種形成方法を用いることができる。
電極153は、ITOやインジウム亜鉛酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いて形成する。なお、対向電極上に形成される電極164も、電極153と同様に、透光性を有する導電性材料を用いて形成する。
<配向膜>
配向膜154および配向膜165は、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどの有機樹脂を用いて形成することができ、その表面には、ラビングなどの、液晶分子を一定方向に配列させるための配向処理が施されている。ラビングは、配向膜154に接するように、ナイロンなどの布を巻いたローラーを回転させて、上記配向膜の表面を一定方向に擦ることで、行うことができる。また、ラビングは、配向膜165に接するように、ナイロンなどの布を巻いたローラーを回転させて、上記配向膜の表面を一定方向に擦ることで、行うことができる。また、ラビングを行なわず、光配向技術などを用いて配向膜154および配向膜165を形成することも可能である。なお、酸化珪素などの無機材料を用い、配向処理を施すことなく、蒸着法で配向特性を有する配向膜を直接形成することも可能である。
〔トランジスタと容量素子の断面構造例2〕
図15(B)に、断面構造例1とは異なる断面構造例を示す。図15(B)に示す断面構造例2は、断面構造例1と容量素子158の構成が異なる。断面構造例2では、容量素子158の他方の電極として、半導体層203と同一の工程を経て形成された電極213を用いている。
電極213は、半導体層203と同一の工程を経て形成された後、不純物を添加することで導電率を高める。例えば、半導体層203および電極213として酸化物半導体を用いる場合、まず、電極213と重なる領域の絶縁層206の一部を除去し、電極213の表面を露出させる。次に、絶縁層207として水素を含む絶縁層を電極213の表面に接触させ、電極213中に水素を拡散させる。このようにして電極213の導電率を高めることができる。
〔トランジスタと容量素子の断面構造例3〕
図15(C)に、断面構造例1および断面構造例2とは異なる断面構造例を示す。図15(C)に示す断面構造例3は、断面構造例1および断面構造例2とはトランジスタ156と容量素子158の構成が異なる。
図15(C)に示すトランジスタ156は、絶縁層207上に電極209を有する。電極209は、他の電極と同様の材料および方法で形成することができる。また、電極209は、バックゲートとして機能できる。バックゲートについては追って詳述する。
また、図15(C)に示す容量素子158では、電極211を設けずに、電極213と電極219を用いている。電極213は、断面構造例3と同様に形成することができる。また、電極219は、電極209と同一の工程を経て形成することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、液晶パネル110の構成例について、図面を用いて説明する。図16(A)、図16(B)、図17(A)、および図17(B)に示す断面図は、図2(A)に示す部位N1−N2の断面図である。
図16(A)はTNモードやVAモードなどの、いわゆる縦電界モードで用いる場合の構成例である。図16(A)において、基板151上に設けられた表示領域141、回路142、および回路143(図示せず。)を囲むようにシール材4005が設けられる。基板151、表示領域141、回路142、回路143(図示せず。)、及びシール材4005は基板161によって封止されている。図2(A)および図16(A)では回路142などの駆動回路をトランジスタ156と同じ構成を有するトランジスタ4011で形成しているが、別途、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された駆動回路を用いてもよい。また、駆動回路や表示領域141に与えられる各種信号および電位は、FPC111を介して供給されている。
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング、COG(Chip On Glass)、TCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip On Film)などを用いることができる。
図16(A)に示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC111と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。また、電極4015は、絶縁層208、絶縁層207、および絶縁層206に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。
電極4015は、電極153と同じ導電層から形成され、配線4014は、トランジスタ156のソース電極およびドレイン電極と同じ導電層で形成されている。
表示領域141と周辺回路は、トランジスタを複数有しており、図16(A)では、表示領域141に含まれるトランジスタ156と、回路142に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図16(A)では、トランジスタ156およびトランジスタ4011上に、絶縁層208、絶縁層207、および絶縁層206が設けられている。
また、図16(A)に示す表示装置は、容量素子158を有する。容量素子158は、トランジスタ156のソース電極またはドレイン電極の一方の一部と、電極211が絶縁層202を介して重なる領域を有する。電極211は、トランジスタ156のゲート電極と同じ導電層で形成されている。
表示領域に設けられる容量素子の容量は、表示領域に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間において電荷を保持できるように設定される。容量素子の容量は、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
例えば、液晶表示装置の画素部にOSトランジスタを用いることにより、容量素子の容量を、液晶容量に対して1/3以下、さらには1/5以下とすることができる。OSトランジスタを用いることにより、容量素子の形成を省略することもできる。
表示領域141に設けられたトランジスタ156は表示素子と電気的に接続する。図16(A)は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の一例である。図16(A)において、表示素子である液晶素子157は、電極153、電極164、及び液晶層155を含む。なお、液晶層155を挟持するように配向膜として機能する絶縁層154、絶縁層165が設けられている。電極164は基板161側に設けられ、電極153と電極164は液晶層155を介して重畳する。
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、電極153と電極164との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお、スペーサ4035は球状のスペーサを用いても良い。
また、本実施の形態において、1つの副画素113をいくつかの領域に分け、それぞれ別の方向に液晶が配向するよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
OSトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、トランジスタ156にOSトランジスタを用いると、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
また、液晶パネル110に、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板や光学フィルム)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板を組み合わせた円偏光板を用いてもよい。
また、図16(B)に示すように、基板161側に遮光層162、着色層166、およびオーバーコート層163などを設けてもよい。
なお、遮光層162は、トランジスタと重なるように設けることが好ましい。遮光層162をトランジスタと重ねて設けることで、トランジスタの半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタの電気特性の劣化を防ぐことができる。図16(B)では、遮光層162をトランジスタ156とトランジスタ4011に重ねて設ける例を示している。
図17(A)は、いわゆる横電界モードで用いる場合の構成例である。図17(A)は、液晶パネル110をFFSモードで動作させる場合の構成例を示している。図17(A)において、絶縁層208上に電極164が設けられ、電極164上に絶縁層159を介して櫛歯状の電極153が設けられている。
また、電極164と電極153が重なる領域が容量素子として機能するため、容量素子158の形成を省略することができる。
また、図17(B)に示すように、基板161側に遮光層162、着色層166、およびオーバーコート層163などを設けてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、酸化物半導体の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。図18(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって行うことができる。
図18(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図18(B)に示す。図18(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
図18(B)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図18(C)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図18(B)および図18(C)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC−OSのペレット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造となる(図18(D)参照。)。図18(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾きが生じている箇所は、図18(D)に示す領域5161に相当する。
また、図19(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図19(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図19(B)、図19(C)および図19(D)に示す。図19(B)、図19(C)および図19(D)より、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列した形状であるを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図20(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。より好ましいCAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図19(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図20(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図21(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図21(B)に示す。図21(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図21(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図21(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×1011個/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010個/cm3未満であり、1×10−9個/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いまたはペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
電子照射を行う試料として、a−like OS(試料Aと表記する。)、nc−OS(試料Bと表記する。)およびCAAC−OS(試料Cと表記する。)を準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図22は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例である。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図22より、a−like OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的には、図22中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさの変化が少ないことがわかる。具体的には、図22中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度であることがわかる。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した画素回路や駆動回路などに用いることができるトランジスタの一例を示す。
本発明の一態様の液晶表示装置100は、ボトムゲート型のトランジスタや、トップゲート型トランジスタなどの様々な形態のトランジスタを用いて作製することができる。よって、既存の製造ラインに合わせて、使用する半導体層の材料やトランジスタ構造を容易に置き換えることができる。
〔ボトムゲート型トランジスタ〕
図23(A1)は、ボトムゲート型のトランジスタの一種であるチャネル保護型のトランジスタ410の断面図である。トランジスタ410は、基板271上に絶縁層272を介して電極246を有する。また、電極246上に絶縁層226を介して半導体層242を有する。電極246はゲート電極として機能できる。絶縁層226はゲート絶縁層として機能できる。
また、半導体層242のチャネル形成領域上に絶縁層225を有する。また、半導体層242の一部と接して、絶縁層226上に電極244aおよび電極244bを有する。電極244aの一部、および電極244bの一部は、絶縁層226上に形成される。
絶縁層225は、チャネル保護層として機能できる。チャネル形成領域上に絶縁層225を設けることで、電極244aおよび電極244bの形成時に生じる半導体層242の露出を防ぐことができる。よって、電極244aおよび電極244bの形成時に、半導体層242のチャネル形成領域がエッチングされることを防ぐことができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタ410は、電極244a、電極244bおよび絶縁層225上に絶縁層228を有し、絶縁層228の上に絶縁層229を有する。
なお、本実施の形態で開示するトランジスタを構成する電極などの導電層、半導体層、絶縁層、基板などは、他の実施の形態に開示した材料および方法を用いて形成することができる。例えば、半導体層242は半導体層203と同様の材料および方法を用いて形成することができる。
なお、半導体層242に酸化物半導体を用いる場合、電極224aおよび電極224bの、少なくとも半導体層242と接する部分に、半導体層242の一部から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料を用いることが好ましい。半導体層242中の酸素欠損が生じた領域はキャリア濃度が増加し、当該領域はn型化し、n型領域(n+層)となる。したがって、当該領域はソース領域またはドレイン領域として機能することができる。酸化物半導体から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料の一例として、タングステン、チタン等を挙げることができる。
半導体層242にソース領域およびドレイン領域が形成されることにより、電極224aおよび電極224bと半導体層242の接触抵抗を低減することができる。よって、電界効果移動度や、しきい値電圧などの、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができる。
半導体層242にシリコンなどの半導体を用いる場合は、半導体層242と電極224aの間、および半導体層242と電極224bの間に、n型半導体またはp型半導体として機能する層を設けることが好ましい。n型半導体またはp型半導体として機能する層は、トランジスタのソース領域またはドレイン領域として機能することができる。
絶縁層229は、外部からのトランジスタへの不純物の拡散を防ぐ、または低減する機能を有する材料を用いて形成することが好ましい。なお、必要に応じて絶縁層229を省略することもできる。
なお、半導体層242に酸化物半導体を用いる場合、絶縁層229の形成前または形成後、もしくは絶縁層229の形成前後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行うことで、絶縁層229や他の絶縁層中に含まれる酸素を半導体層242中に拡散させ、半導体層242中の酸素欠損を補填することができる。または、絶縁層229を加熱しながら成膜することで、半導体層242中の酸素欠損を補填することができる。
なお、一般に、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法などに分類できる。
また、一般に、蒸着法は、抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、IAD(Ion beam Assisted Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などに分類できる。
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、MOCVD法や蒸着法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくく、また、欠陥の少ない膜が得られる。
また、一般に、スパッタリング法は、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、RFスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法などに分類できる。
対向ターゲットスパッタリング法では、プラズマがターゲット間に閉じこめられるため、基板へのプラズマダメージを低減することができる。また、ターゲットの傾きによっては、スパッタリング粒子の基板への入射角度を浅くすることができるため、段差被覆性を高めることができる。
図23(A2)に示すトランジスタ411は、絶縁層229上にバックゲート電極として機能できる電極223を有する点が、トランジスタ410と異なる。電極223は、電極246と同様の材料および方法で形成することができる。
一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位(GND電位)や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
電極246および電極223は、どちらもゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層226、絶縁層225、絶縁層228、および絶縁層229は、それぞれがゲート絶縁層として機能することができる。なお、電極223は、絶縁層228と絶縁層229の間に設けてもよい。
なお、電極246または電極223の一方を、「ゲート電極」という場合、他方を「バックゲート電極」という。例えば、トランジスタ411において、電極223を「ゲート電極」と言う場合、電極246を「バックゲート電極」と言う。また、電極223を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ411をトップゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極246および電極223のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
半導体層242を挟んで電極246および電極223を設けることで、更には、電極246および電極223を同電位とすることで、半導体層242においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ411のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
したがって、トランジスタ411は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ411の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気などに対する電界遮蔽機能)を有する。なお、バックゲート電極を半導体層よりも大きく形成し、バックゲート電極で半導体層を覆うことで、電界遮蔽機能を高めることができる。
また、電極246および電極223は、それぞれが外部からの電界を遮蔽する機能を有するため、絶縁層272側もしくは電極223上方に生じる荷電粒子等の電荷が半導体層242のチャネル形成領域に影響しない。この結果、ストレス試験(例えば、ゲートに負の電荷を印加する−GBT(Gate Bias−Temperature)ストレス試験)による劣化が抑制される。また、ドレイン電圧の大きさにより、オン電流が流れ始めるゲート電圧(立ち上がり電圧)が変化する現象を軽減することができる。なお、この効果は、電極246および電極223が、同電位、または異なる電位の場合において生じる。
なお、BTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化(経年変化)を短時間で評価することができる。特に、BTストレス試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変動量は、信頼性を調べるための重要な指標となる。しきい値電圧の変動量が少ないほど、信頼性が高いトランジスタであるといえる。
また、電極246および電極223を有し、且つ電極246および電極223を同電位とすることで、しきい値電圧の変動量が低減される。このため、複数のトランジスタにおける電気特性のばらつきも同時に低減される。
また、バックゲート電極を有するトランジスタは、ゲートに正の電荷を印加する+GBTストレス試験前後におけるしきい値電圧の変動も、バックゲート電極を有さないトランジスタより小さい。
また、バックゲート電極を、遮光性を有する導電膜で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧がシフトするなどの電気特性の劣化を防ぐことができる。
本発明の一態様によれば、信頼性の良好なトランジスタを実現することができる。また、信頼性の良好な半導体装置を実現することができる。
図23(B1)に、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネル保護型のトランジスタ420の断面図を示す。トランジスタ420は、トランジスタ410とほぼ同様の構造を有しているが、絶縁層225が半導体層242を覆っている点が異なる。
絶縁層229を設けることで、電極244aおよび電極244bの形成時に生じる半導体層242の露出を防ぐことができる。よって、電極244aおよび電極244bの形成時に半導体層242の薄膜化を防ぐことができる。また、半導体層242と重なる絶縁層225の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層242と電極244aが電気的に接続している。また、半導体層242と重なる絶縁層225の一部を選択的に除去して形成した他の開口部において、半導体層242と電極244bが電気的に接続している。絶縁層225の、チャネル形成領域と重なる領域は、チャネル保護層として機能できる。
図23(B2)に示すトランジスタ421は、絶縁層229上にバックゲート電極として機能できる電極223を有する点が、トランジスタ420と異なる。
また、トランジスタ420およびトランジスタ421は、トランジスタ410およびトランジスタ411よりも、電極244aと電極246の間の距離と、電極244bと電極246の間の距離が長くなる。よって、電極244aと電極246の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極244bと電極246の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現できる。
図23(C1)に示すトランジスタ425は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタである。トランジスタ425は、絶縁層225を設けずに、半導体層242に接して電極244aおよび電極244bを形成する。このため、電極244aおよび電極244bの形成時に露出する半導体層242の一部がエッチングされる場合がある。一方、絶縁層229を設けないため、トランジスタの生産性を高めることができる。
図23(C2)に示すトランジスタ426は、絶縁層229上にバックゲート電極として機能できる電極223を有する点が、トランジスタ420と異なる。
〔トップゲート型トランジスタ〕
図24(A1)に、トップゲート型のトランジスタの一種であるトランジスタ430の断面図を示す。トランジスタ430は、基板271の上に絶縁層272を介して半導体層242を有し、半導体層242および絶縁層272上に、半導体層242の一部に接する電極244a、および半導体層242の一部に接する電極244bを有し、半導体層242、電極244a、および電極244b上に絶縁層226を有し、絶縁層226上に電極246を有する。
トランジスタ430は、電極246および電極244a、並びに、電極246および電極244bが重ならないため、電極246および電極244aの間に生じる寄生容量、並びに、電極246および電極244bの間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極246を形成した後に、電極246をマスクとして用いて不純物255を半導体層242に導入することで、半導体層242中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる(図24(A3)参照)。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。
なお、不純物255の導入は、イオン注入装置、イオンドーピング装置またはプラズマ処理装置を用いて行うことができる。
不純物255としては、例えば、第13族元素または第15族元素のうち、少なくとも一種類の元素を用いることができる。また、半導体層242に酸化物半導体を用いる場合は、不純物255として、希ガス、水素、および窒素のうち、少なくとも一種類の元素を用いることも可能である。
図24(A2)に示すトランジスタ431は、電極223および絶縁層227を有する点がトランジスタ430と異なる。トランジスタ431は、絶縁層272の上に形成された電極223を有し、電極223上に形成された絶縁層227を有する。電極223は、バックゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層227は、ゲート絶縁層として機能することができる。絶縁層227は、絶縁層226と同様の材料および方法により形成することができる。
トランジスタ411と同様に、トランジスタ431は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ431の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
図24(B1)に例示するトランジスタ440は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ440は、電極244aおよび電極244bを形成した後に半導体層242を形成する点が、トランジスタ430と異なる。また、図24(B2)に例示するトランジスタ441は、電極223および絶縁層227を有する点が、トランジスタ440と異なる。トランジスタ440およびトランジスタ441において、半導体層242の一部は電極244a上に形成され、半導体層242の他の一部は電極244b上に形成される。
トランジスタ411と同様に、トランジスタ441は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ441の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
図25(A1)に例示するトランジスタ442は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ442は、絶縁層229上に電極244aおよび電極244bを有する。電極244aおよび電極244bは、絶縁層228および絶縁層229に形成した開口部において半導体層242と電気的に接続する。
また、電極246と重ならない絶縁層226の一部が除去されている。また、トランジスタ442が有する絶縁層226の一部は、電極246の端部を越えて延伸している。
電極246と絶縁層226をマスクとして用いて不純物255を半導体層242に導入することで、半導体層242中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる(図25(A3)参照)。
この時、半導体層242の電極246と重なる領域には不純物255が導入されず、電極246と重ならない領域に不純物255が導入される。また、半導体層242の絶縁層226を介して不純物255が導入された領域の不純物濃度は、絶縁層226を介さずに不純物255が導入された領域よりも低くなる。よって、半導体層242中の電極246と隣接する領域にLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成される。
図25(A2)に示すトランジスタ443は、半導体層242の下方に電極223を有する点がトランジスタ442と異なる。また、電極223は絶縁層272を介して半導体層242と重なる。電極223は、バックゲート電極として機能することができる。
また、図25(B1)に示すトランジスタ444および図25(B2)に示すトランジスタ445のように、絶縁層226の電極246と重ならない領域を全て除去してもよい。また、図25(C1)に示すトランジスタ446および図25(C2)に示すトランジスタ447のように、絶縁層226の開口部以外を除去せずに残してもよい。
トランジスタ444、445、446、447も、電極246を形成した後に、電極246をマスクとして用いて不純物255を半導体層242に導入することで、半導体層242中に自己整合的に不純物領域を形成することができる。
本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。また、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
〔s−channel型トランジスタ〕
図26に、半導体層242として酸化物半導体を用いたトランジスタ構造の一例を示す。図26に例示するトランジスタ450は、半導体層242aの上に半導体層242bが形成され、半導体層242bの上面、半導体層242bの側面、および半導体層242aの側面が半導体層242cに覆われた構造を有する。図26(A)はトランジスタ450の上面図である。図26(B)は、図26(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。図26(C)は、図26(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
また、トランジスタ450は、ゲート電極として機能する電極243を有する。電極243は、電極246と同様の材料および方法で形成することができる。本実施の形態では、電極243を2層の導電層の積層としている。
半導体層242a、半導体層242b、および半導体層242cは、InもしくはGaの一方、または両方を含む材料で形成する。代表的には、In−Ga酸化物(InとGaを含む酸化物)、In−Zn酸化物(InとZnを含む酸化物)、In−M−Zn酸化物(Inと、元素Mと、Znを含む酸化物。元素Mは、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfから選ばれた1種類以上の元素で、Inよりも酸素との結合力が強い金属元素である。)がある。
半導体層242aおよび半導体層242cは、半導体層242bを構成する金属元素のうち、1種類以上の同じ金属元素を含む材料により形成されることが好ましい。このような材料を用いると、半導体層242aおよび半導体層242bとの界面、ならびに半導体層242cおよび半導体層242bとの界面に界面準位を生じにくくすることができる。よって、界面におけるキャリアの散乱や捕獲が生じにくく、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧のばらつきを低減することが可能となる。よって、良好な電気特性を有する半導体装置を実現することが可能となる。
半導体層242aおよび半導体層242cの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、半導体層242bの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
また、半導体層242bがIn−M−Zn酸化物であり、半導体層242aおよび半導体層242cもIn−M−Zn酸化物であるとき、半導体層242aおよび半導体層242cをIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、半導体層242bをIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きくなるように半導体層242a、半導体層242c、および半導体層242bを選択することができる。好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上大きくなるように半導体層242a、半導体層242c、および半導体層242bを選択する。さらに好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きくなるように半導体層242a、半導体層242c、および半導体層242bを選択する。より好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以上大きくなるように半導体層242a、半導体層242cおよび半導体層242bを選択する。y1がx1以上であるとトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、y1がx1の3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y1はx1の3倍未満であると好ましい。半導体層242aおよび半導体層242cを上記構成とすることにより、半導体層242aおよび半導体層242cを、半導体層242bよりも酸素欠損が生じにくい層とすることができる。
なお、半導体層242aおよび半導体層242cがIn−M−Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのInと元素Mの含有率は、好ましくはInが50atomic%未満、元素Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、元素Mが75atomic%以上とする。また、半導体層242bがIn−M−Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いての1nと元素Mの含有率は好ましくはInが25atomic%以上、元素Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、元素Mが66atomic%未満とする。
例えば、InまたはGaを含む半導体層242a、およびInまたはGaを含む半導体層242cとしてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:6:4、または1:9:6などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物や、In:Ga=1:9などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga酸化物や、酸化ガリウムなどを用いることができる。また、半導体層242bとしてIn:Ga:Zn=3:1:2、1:1:1、5:5:6、または4:2:4.1などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。なお、半導体層242a、半導体層242b、および半導体層242cの原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
半導体層242bを用いたトランジスタに安定した電気特性を付与するためには、半導体層242b中の不純物および酸素欠損を低減して高純度真性化し、半導体層242bを真性または実質的に真性と見なせる酸化物半導体層とすることが好ましい。また、少なくとも半導体層242b中のチャネル形成領域が真性または実質的に真性と見なせる半導体層とすることが好ましい。
なお、実質的に真性と見なせる酸化物半導体層とは、酸化物半導体層中のキャリア密度が、8×1011個/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010個/cm3未満であり、1×10−9個/cm3以上である酸化物半導体層をいう。
図27に、半導体層242として酸化物半導体を用いたトランジスタ構造の一例を示す。図27に例示するトランジスタ422は、半導体層242aの上に半導体層242bが形成されている。トランジスタ422は、バックゲート電極を有するボトムゲート型のトランジスタの一種である。図27(A)はトランジスタ422の上面図である。図27(B)は、図27(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。図27(C)は、図27(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
絶縁層229上に設けられた電極223は、絶縁層226、絶縁層228、および絶縁層229に設けられた開口247aおよび開口247bにおいて、電極246と電気的に接続されている。よって、電極223と電極246には、同じ電位が供給される。また、開口247aおよび開口247bは、どちらか一方を設けなくてもよい。また、開口247aおよび開口247bの両方を設けなくてもよい。開口247aおよび開口247bの両方を設けない場合は、電極223と電極246に異なる電位を供給することができる。
[酸化物半導体のエネルギーバンド構造]
ここで、半導体層242a、半導体層242b、および半導体層242cの積層により構成される半導体層242の機能およびその効果について、図31(A)および図31(B)に示すエネルギーバンド構造図を用いて説明する。図31(A)は、図26(B)にD1−D2の一点鎖線で示す部位のエネルギーバンド構造図である。図31(A)は、トランジスタ450のチャネル形成領域のエネルギーバンド構造を示している。
図31(A)中、Ec382、Ec383a、Ec383b、Ec383c、Ec386は、それぞれ、絶縁層272、半導体層242a、半導体層242b、半導体層242c、絶縁層226の伝導帯下端のエネルギーを示している。
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(例えば、HORIBA JOBINYVON社 UT−300)を用いて測定できる。また、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(例えば、PHI社 VersaProbe)を用いて測定できる。
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.4eV、電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:6のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.3eV、電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:6:2のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.9eV、電子親和力は約4.3eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:6:8のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約4.4eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:6:10のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.2eV、電子親和力は約4.7eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物のエネルギーギャップは約2.8eV、電子親和力は約5.0eVである。
絶縁層272と絶縁層226は絶縁物であるため、Ec382とEc386は、Ec383a、Ec383b、およびEc383cよりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)。
また、Ec383aは、Ec383bよりも真空準位に近い。具体的には、Ec383aは、Ec383bよりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下真空準位に近いことが好ましい。
また、Ec383cは、Ec383bよりも真空準位に近い。具体的には、Ec383cは、Ec383bよりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下真空準位に近いことが好ましい。
また、半導体層242aと半導体層242bとの界面近傍、および、半導体層242bと半導体層242cとの界面近傍では、混合領域が形成されるため、伝導帯下端のエネルギーは連続的に変化する。即ち、これらの界面において、準位は存在しないか、ほとんどない。
従って、当該エネルギーバンド構造を有する積層構造において、電子は半導体層242bを主として移動することになる。そのため、半導体層242aと絶縁層224との界面、または、半導体層242cと絶縁層226との界面に準位が存在したとしても、当該準位は電子の移動にほとんど影響しない。また、半導体層242aと半導体層242bとの界面、および半導体層242cと半導体層242bとの界面に準位が存在しないか、ほとんどないため、当該領域において電子の移動を阻害することもない。従って、上記酸化物半導体の積層構造を有するトランジスタ134は、高い電界効果移動度を実現することができる。
なお、図31(A)に示すように、半導体層242aと絶縁層272の界面、および半導体層242cと絶縁層226の界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位390が形成され得るものの、半導体層242a、および半導体層242cがあることにより、半導体層242bと当該トラップ準位とを遠ざけることができる。
特に、本実施の形態に例示するトランジスタ134は、半導体層242bの上面と側面が半導体層242cと接し、半導体層242bの下面が半導体層242aと接して形成されている。このように、半導体層242bを半導体層242aと半導体層242cで覆う構成とすることで、上記トラップ準位の影響をさらに低減することができる。
ただし、Ec383aまたはEc383cと、Ec383bとのエネルギー差が小さい場合、半導体層242bの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁層の界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
従って、Ec383a、およびEc383cと、Ec383bとのエネルギー差を、それぞれ0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができるため、好ましい。
また、半導体層242a、および半導体層242cのバンドギャップは、半導体層242bのバンドギャップよりも広いほうが好ましい。
図31(B)は、図27(B)にD3−D4の一点鎖線で示す部位のエネルギーバンド構造図である。図31(B)は、トランジスタ422のチャネル形成領域のエネルギーバンド構造を示している。
図31(B)中、Ec387は、絶縁層228の伝導帯下端のエネルギーを示している。半導体層242を半導体層242aと半導体層242bの2層とすることで、トランジスタの生産性を高めることができる。なお、半導体層242cを設けない分、トラップ準位390の影響を受けやすくなるが、半導体層242を単層構造とした場合よりも高い電界効果移動度を実現することができる。
本発明の一態様によれば、電気特性のばらつきが少ないトランジスタを実現することができる。よって、電気特性のばらつきが少ない半導体装置を実現することができる。本発明の一態様によれば、信頼性の良好なトランジスタを実現することができる。よって、信頼性の良好な半導体装置を実現することができる。
また、酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、可視光に対する透過率が大きい。また、酸化物半導体を適切な条件で加工して得られたトランジスタにおいては、オフ電流を使用時の温度条件下(例えば、25℃)において、100zA(1×10−19A)以下、もしくは10zA(1×10−20A)以下、さらには1zA(1×10−21A)以下とすることができる。このため、消費電力の少ない半導体装置を提供することができる。
本発明の一態様によれば、消費電力が少ないトランジスタを実現することができる。よって、消費電力が少ない表示素子や表示装置などの半導体装置を実現することができる。または、信頼性の良好な表示素子や表示装置などの半導体装置を実現することができる。
図26に示すトランジスタ450の説明にもどる。絶縁層272に設けた凸部上に半導体層242bを設けることによって、半導体層242bの側面も電極243で覆うことができる。すなわち、トランジスタ450は、電極243の電界によって、半導体層242bを電気的に取り囲むことができる構造を有している。このように、導電膜の電界によって、チャネルが形成される半導体層を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。また、s−channel構造を有するトランジスタを、「s−channel型トランジスタ」もしくは「s−channelトランジスタ」ともいう。
s−channel構造では、半導体層242bの全体(バルク)にチャネルを形成することもできる。s−channel構造では、トランジスタのドレイン電流を大きくすることができ、さらに大きいオン電流を得ることができる。また、電極243の電界によって、半導体層242bに形成されるチャネル形成領域の全領域を空乏化することができる。したがって、s−channel構造では、トランジスタのオフ電流をさらに小さくすることができる。
なお、絶縁層272の凸部を高くし、また、チャネル幅を小さくすることで、s−channel構造によるオン電流の増大効果、オフ電流の低減効果などをより高めることができる。また、半導体層242bの形成時に、露出する半導体層242aを除去してもよい。この場合、半導体層242aと半導体層242bの側面が揃う場合がある。
また、図28に示すトランジスタ451のように、半導体層242の下方に、絶縁層を介して電極223を設けてもよい。図28(A)はトランジスタ451の上面図である。図28(B)は、図28(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図28(C)は、図28(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
また、図29に示すトランジスタ452のように、電極243の上方に絶縁層275を設け、絶縁層275上に層214を設けてもよい。図29(A)はトランジスタ452の上面図である。図29(B)は、図29(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図29(C)は、図29(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
なお、図29では、層214を絶縁層275上に設けているが、絶縁層228上、または絶縁層229上に設けてもよい。層214を、遮光性を有する材料で形成することで、光照射によるトランジスタの特性変動や、信頼性の低下などを防ぐことができる。なお、層214を少なくとも半導体層242bよりも大きく形成し、層214で半導体層242bを覆うことで、上記の効果を高めることができる。層214は、有機物材料、無機物材料、又は金属材料を用いて作製することができる。また、層214を導電性材料で作製した場合、層214に電圧を供給してもよいし、電気的に浮遊した(フローティング)状態としてもよい。
図30に、s−channel構造を有するトランジスタの一例を示す。図30に例示するトランジスタ448は、前述したトランジスタ447とほぼ同様の構成を有する。トランジスタ448は、絶縁層272が有する凸部の上に半導体層242が形成されている。トランジスタ448はバックゲート電極を有するトップゲート型のトランジスタの一種である。図30(A)はトランジスタ448の上面図である。図30(B)は、図30(A)中のX1−X2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図30(C)は、図30(A)中のY1−Y2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
図30では、トランジスタ448を構成する半導体層242にシリコンなどの無機半導体層を用いる場合を例示する。図30において、半導体層242は、ゲート電極と重なる領域に半導体層242iと、2つの半導体層242tと、2つの半導体層242uとを有する。半導体層242iは、2つの半導体層242tの間に配置されている。また、半導体層242iと2つの半導体層242tは、2つの半導体層242uの間に配置されている。
トランジスタ448がオン状態の時に半導体層242iにチャネルが形成される。よって、半導体層242iはチャネル形成領域として機能する。また、半導体層242tは低濃度不純物領域(LDD)として機能する。また、半導体層242uは高濃度不純物領域として機能する。なお、2つの半導体層242tのうち、一方または両方の半導体層242tを設けなくてもよい。また、2つの半導体層242uのうち、一方の半導体層242uはソース領域として機能し、他方の半導体層242uはドレイン領域として機能する。
絶縁層229上に設けられた電極244aは、絶縁層226、絶縁層228、および絶縁層229に設けられた開口247cにおいて、半導体層242uの一方と電気的に接続されている。また、絶縁層229上に設けられた電極244bは、絶縁層226、絶縁層228、および絶縁層229に設けられた開口247dにおいて、半導体層242uの他方と電気的に接続されている。
絶縁層226上に設けられた電極243は、絶縁層226、および絶縁層272に設けられた開口247aおよび開口247bにおいて、電極223と電気的に接続されている。よって、電極246と電極223には、同じ電位が供給される。また、開口247aおよび開口247bは、どちらか一方を設けなくてもよい。また、開口247aおよび開口247bの両方を設けなくてもよい。開口247aおよび開口247bの両方を設けない場合は、電極223と電極246に異なる電位を供給することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、液晶表示装置100を用いた半導体装置の一例として、表示モジュールについて説明する。図32に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6003に接続されたタッチセンサ6004、液晶表示装置100、フレーム6009、プリント基板6010、バッテリ6011を有する。なお、バッテリ6011、タッチセンサ6004などは、設けられない場合もある。
上部カバー6001および下部カバー6002は、タッチセンサ6004や液晶表示装置100などのサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
タッチセンサ6004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを液晶表示装置100に重畳して用いることができる。液晶表示装置100にタッチセンサの機能を付加することも可能である。例えば、液晶表示装置100が有する液晶パネル110の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、静電容量方式のタッチパネル機能を付加することなども可能である。または、液晶パネル110の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサの機能を付加することなども可能である。
フレーム6009は、液晶表示装置100の保護機能の他、プリント基板6010側から発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。また、フレーム6009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号およびクロック信号を出力するための信号処理回路などを有する。電源回路に電力を供給する電源としては、バッテリ6011であってもよいし、商用電源であってもよい。なお、電源として商用電源を用いる場合には、バッテリ6011を省略することができる。
また、表示モジュール6000に、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本明細書等に開示したトランジスタや表示装置などを含む半導体装置を用いた電子機器の一例について説明する。
本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、自動車電話、携帯電話、携帯情報端末、タブレット型端末、携帯型ゲーム機、パチンコ機などの固定式ゲーム機、電卓、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、二次電池からの電力を用いた電動機や、燃料を用いたエンジンにより推進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれる場合がある。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
図33(A)に示す携帯型ゲーム機2900は、筐体2901、筐体2902、表示部2903、表示部2904、マイクロホン2905、スピーカ2906、操作キー2907等を有する。なお、図29(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部2903と表示部2904とを有しているが、表示部の数は、これに限定されない。表示部2903は、入力装置としてタッチスクリーンが設けられており、スタイラス2908等により操作可能となっている。
図33(B)に示す情報端末2910は、筐体2911に、表示部2912、マイク2917、スピーカ部2914、カメラ2913、外部接続部2916、および操作用のボタン2915等を有する。表示部2912には、可撓性基板が用いられた表示パネルおよびタッチスクリーンを備える。情報端末2910は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット型情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、電子書籍端末等として用いることができる。
図33(C)に示すノート型パーソナルコンピュータ2920は、筐体2921、表示部2922、キーボード2923、およびポインティングデバイス2924等を有する。
図33(D)に示すビデオカメラ2940は、筐体2941、筐体2942、表示部2943、操作キー2944、レンズ2945、および接続部2946等を有する。操作キー2944およびレンズ2945は筐体2941に設けられており、表示部2943は筐体2942に設けられている。そして、筐体2941と筐体2942は、接続部2946により接続されており、筐体2941と筐体2942の間の角度は、接続部2946により変えることが可能な構造となっている。筐体2941に対する筐体2942の角度によって、表示部2943に表示される画像の向きの変更や、画像の表示/非表示の切り換えを行うことができる。
図33(E)にバングル型の情報端末の一例を示す。情報端末2950は、筐体2951、および表示部2952等を有する。表示部2952は、曲面を有する筐体2951に支持されている。表示部2952には、可撓性基板を用いた表示パネルを備えているため、フレキシブルかつ軽くて使い勝手の良い情報端末2950を提供することができる。
図33(F)に腕時計型の情報端末の一例を示す。情報端末2960は、筐体2961、表示部2962、バンド2963、バックル2964、操作ボタン2965、入出力端子2966などを備える。情報端末2960は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部2962の表示面は湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部2962はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部2962に表示されたアイコン2967に触れることで、アプリケーションを起動することができる。操作ボタン2965は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、情報端末2960に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2965の機能を設定することもできる。
また、情報端末2960は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、情報端末2960は入出力端子2966を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子2966を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子2966を介さずに無線給電により行ってもよい。
図33(G)に家庭用電気製品の一例として電気冷蔵庫を示す。電気冷蔵庫2970は、筐体2971、冷蔵室用扉2972、冷凍室用扉2973、および表示部2974等を有する。
図33(H)は、自動車の一例を示す外観図である。自動車2980は、車体2981、車輪2982、ダッシュボード2983、およびライト2984等を有する。
本実施の形態に示す電子機器には、上述したトランジスタまたは上述した表示装置などが搭載されている。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。