本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、前記したように、多官能単量体およびアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートを含有する単量体成分を重合させてなるアクリレート系重合体を含有する樹脂粒子を含有する。
本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、例えば、多官能単量体およびアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートを含有する単量体成分を乳化重合させてアクリレート系重合体を含有する樹脂粒子を製造することにより、得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、多官能単量体とアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートとが併用されていることから、活物質同士および活物質と集電体との結着性に優れ、柔軟性に優れた電極を形成する。また、本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、多官能単量体とアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートを含有するアルキルアクリレートとが併用され、単量体成分に多官能単量体が所定の含有率で含まれている場合には、活物質同士および活物質と集電体との結着性にさらに優れている。
多官能単量体としては、例えば、エチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、架橋性基を有する単量体、エチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体などが挙げられる。前記架橋性基は、加熱条件下、酸性または塩基性条件下などの条件下で架橋反応を生じる官能基である。
エチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を1個以上有し、架橋性基を有する単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有多官能単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有多官能単量体;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのエチレン性不飽和基および架橋性基を有するケイ素原子含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能単量体のなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、アミド基含有多官能単量体が好ましく、N−メチロール(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
単量体成分における多官能単量体の含有率は、樹脂粒子の強度を向上させるとともに、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
本発明においては、炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートが用いられている点に、本発明の特徴の1つがある。本発明では、このように炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートが用いられているので、活物質同士の結着性を向上させるとともに、活物質と集電体との結着性を向上させることができる。なお、炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートの代わりに、当該アルキルアクリレートに類似している炭素数が1〜3であるアルキルメタクリレートを用いた場合には、活物質同士および活物質と集電体との結着性を十分に向上させることができない。
炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレートが挙げられる。これらのアルキルアクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキルアクリレートのなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
単量体成分における炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートの含有率は、凝集力を高めるとともに、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは86質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらに一層好ましくは75質量%以下である。
なお、単量体成分には、当該単量体成分に用いられる単量体の合計量が100質量%となるようにするために、多官能単量体およびアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレートの残部に当該多官能単量体およびアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレート以外の単官能の単量体(以下、他の単量体という)を用いることができる。
他の単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、ニトリル基含有単量体、ニトリル基含有単量体以外の窒素原子含有単量体、脂環構造を有する単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボニル基含有単量体、芳香族系単量体、フッ素原子含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体のなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体およびニトリル基含有単量体が好ましい。
アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびプロピルメタクリレートが挙げられる。これらのアルキルメタクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキルメタクリレートのなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートがより好ましい。
単量体成分におけるアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルメタクリレートの含有率は、0質量%以上であるが、樹脂粒子の凝集力を高め、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、単量体成分におけるアルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルメタクリレートが含まれていないことがさらに好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレートなどのブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4〜12、なかでも4〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
単量体成分におけるアルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、樹脂粒子の柔軟性を高め、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに一層好ましくは20質量%以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体のなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、樹脂粒子の分散安定性を高め、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
ニトリル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのニトリル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ニトリル基含有単量体のなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、アクリロニトリルが好ましい。
単量体成分におけるニトリル基含有単量体の含有率は、0質量%以上であるが、樹脂粒子の凝集力を高め、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
ニトリル基含有単量体以外の窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記窒素原子含有単量体のなかでは、集電体に対する結着性を向上させる観点から、(メタ)アクリルアミド化合物および窒素原子含有(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましく、(メタ)アクリルアミドがさらに好ましい。
単量体成分におけるニトリル基含有単量体以外の窒素原子含有単量体の含有率は、0質量%以上であるが、樹脂粒子の凝集力および弾性を高め、集電体に対する結着性を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、集電体に対する結着性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
脂環構造を有する単量体において、脂環構造は、好ましくは炭素数が4〜20のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数が4〜10のシクロアルキル基である。脂環構造を有する単量体としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの単量体は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシ基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10であり、アルキル基の炭素数が1〜4であるシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂環構造を有する単量体のなかでは、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜10のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートのなかでは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリセリンモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、アラルキル(メタ)アクリレート、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分に用いられる多官能単量体以外のアルキル(メタ)アクリレートが、活物質同士および活物質と集電体との結着性に優れ、優れた柔軟性を有する電極を形成するリチウムイオン二次電池の電極用バインダーを得る観点から、アクリロイル基を有することが好ましい。
前記単量体成分のなかでは、活物質同士および活物質と集電体との結着性に優れ、優れた柔軟性を有する電極を形成するリチウムイオン二次電池の電極用バインダーを得る観点から、例えば、多官能単量体として、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有多官能単量体またはグリシジル(メタ)アクリレート0.5〜5質量%を含有し、当該多官能単量体以外の単量体として、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキルアクリレート25〜90質量%、ブチルアクリレート0〜70質量%、アクリル酸0.3〜15質量%およびアクリロニトリル0〜10質量%を含有する単量体成分が好ましい。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤、反応性乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、単重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤をフラスコ内に添加してもよい。単量体成分100質量部あたりの添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、アクリレート系重合体を含有する樹脂粒子(エマルション粒子)が得られる。
前記樹脂粒子を構成しているアクリレート系重合体は、架橋構造を有していてもよい。アクリレート系重合体の重量平均分子量は、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、さらに一層好ましくは60万以上である。アクリレート系重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、アクリレート系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
アクリレート系重合体のガラス転移温度は、電池の充放電特性を向上させる観点から、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−45℃以上、さらに好ましくは−40℃以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下、さらに一層好ましくは0℃以下である。アクリレート系重合体のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
なお、本発明において、アクリレート系重合体のガラス転移温度は、当該アクリレート系重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、メチルアクリレートの単独重合体では9℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、エチルアクリレートの単独重合体では−22℃、アクリロニトリルの単独重合体体では96℃である。
本発明においては、アクリレート系重合体のガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。アクリレート系重合体のガラス転移温度の実測値は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。アクリレート系重合体のガラス転移温度の実測値は、例えば、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)などによって測定することができる。
なお、特殊単量体、多官能単量体などのように、その単独重合体のガラス転移温度が不明である単量体については、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてアクリレート系重合体のガラス転移温度が求められる。
樹脂粒子の平均粒子径は、樹脂粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、活物質同士および活物質と集電体との結着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で30分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
以上のようにして樹脂粒子を含有する樹脂エマルションを得ることができる。当該樹脂粒子を含有する樹脂エマルションは、そのままの状態で電極用バインダーに好適に使用することができるものである。
したがって、本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、樹脂粒子が水中に分散した形態および樹脂粒子が乾燥された状態のいずれであってもよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池の電極用バインダーは、水溶性有機溶媒を含有していてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、水溶性アルコール、水溶性ケトン化合物、水溶性エーテル化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
なお、本発明の電極用バインダーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂成分および樹脂粒子が含まれていてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用水系電極組成物は、リチウムイオン二次電池の電極を形成するための水系電極組成物であり、バインダーおよび電極活物質を含有し、当該バインダーが前記電極用バインダーであることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用水系電極組成物は、例えば、前記電極用バインダー、電極活物質、および必要により他の成分を混合することによって調製することができる。
リチウムイオン二次電池用水系電極組成物には、リチウムイオン二次電池用水系正極組成物およびリチウムイオン二次電池用水系負極組成物がある。本発明の電極用バインダーは、いずれの組成物にも用いることができるが、リチウムイオン二次電池用水系正極組成物に好適に使用することができる。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物は、正極を形成する際に用いられるリチウムイオン二次電池用水系電極組成物であり、必須成分として、前記電極用バインダーのほか、正極活物質および導電助剤を含有する。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の不揮発分における電極用バインダーの不揮発分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは0.2〜3質量%、より好ましくは0.3〜2.5質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物に用いられる正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵ないし放出することができる正極活物質であることが好ましい。リチウムイオンを吸蔵ないし放出することができる化合物としては、リチウムを含有する金属酸化物が挙げられる。リチウムを含有する金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの正極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の不揮発分における正極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは70〜98.8質量%、より好ましくは80〜98.3質量%である。
導電助剤は、リチウムイオン二次電池の出力を向上させるために用いられる。導電助剤には、主として導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの導電助剤の中では、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物には、他の成分として、必要により、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマーなどの非フッ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマーなどのポリマー、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤;スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドンなどの高分子分散剤などの分散剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、アルカリ可溶型(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの増粘剤、防腐剤などを含有させてもよい。リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
粘度計〔東機産業(株)製、品番:TVB−10〕を用い、25±1℃の温度で30rpmの条件で測定したときのリチウムイオン二次電池用水系正極組成物の粘度は、塗工作業性を向上させる観点から、好ましくは1〜20Pa・sであり、より好ましくは2〜15Pa・sである。リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の粘度は、当該リチウムイオン二次電池用水系正極組成物に含有される水の量、増粘剤の量などを調製することにより、容易に調節することができる。
また、リチウムイオン二次電池用水系正極組成物の25℃でのpHは、集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは6〜11である。なお、前記pHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定したときの値である。
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物は、例えば、電極用バインダー、正極活物質、導電助剤および必要により他の成分を混合し、ビーズミル、ボールミル、攪拌型混合機などを用いて分散させることによって得ることができる。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物には、本発明の電極用バインダーおよび前記導電助剤を用いることができる。リチウムイオン二次電池用水系負極組成物は、負極を形成する際に用いられるリチウムイオン二次電池用水系電極組成物であり、必須成分として、前記電極用バインダーのほか、負極活物質を含有する。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物の不揮発分における電極用バインダーの不揮発分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは0.3〜4質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物に用いられる負極活物質としては、例えば、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料、ポリアセン系導電性ポリマー、チタン酸リチウムなどの複合金属酸化物、リチウム合金、シリコン系材料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの負極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの負極活物質のなかでは、炭素材料および/またはチタン酸リチウムが好ましい。負極活物質における炭素材料および/またはチタン酸リチウムの含有率は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物の不揮発分における負極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは85〜99.7質量%、より好ましくは90〜99.5質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物には、必要により、例えば、分散剤、増粘剤、防腐剤などの他の成分を含有させてもよい。リチウムイオン二次電池用水系負極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性および電気特性を向上させる観点から、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
リチウムイオン二次電池用水系負極組成物は、例えば、電極用バインダー、負極活物質、導電助剤および必要により他の成分を混合し、ビーズミル、ボールミル、攪拌型混合機などを用いて分散させることによって得ることができる。
リチウムイオン二次電池用電極は、集電体および電極合材層を含み、当該電極合材層が集電体上に形成されており、当該電極合材層が前記リチウムイオン二次電池用水系電極組成物から形成されている。リチウムイオン二次電池用電極には、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池用負極が含まれる。
リチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体上にリチウムイオン二次電池用水系正極組成物から形成された正極合材層を有する。正極は、例えば、正極集電体にリチウムイオン二次電池用水系正極組成物を塗布し、乾燥させて電極合材層を形成させることによって製造することができる。なお、正極には、必要により、例えば、金型プレス、ロールプレスなどを用いて加圧処理を施してもよい。
正極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられるが、これらのなかではアルミニウムが好ましい。なお、正極集電体の形状や寸法は、特に制限されない。
リチウムイオン二次電池用負極は、負極集電体上にリチウムイオン二次電池用水系負極組成物から形成された負極合材層を有する。負極は、例えば、負極集電体にリチウムイオン二次電池用水系負極組成物を塗布し、乾燥させて電極合材層を形成させることによって製造することができる。なお、負極には、必要により、例えば、金型プレス、ロールプレスなどを用いて加圧処理を施してもよい。負極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などがあげられるが、これらのなかでは銅が好ましい。なお、負極集電体の形状や寸法は特に制限されない。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂からなるフィルムを用いることができる。
電解液には、支持電解質を有機溶媒に溶解させた電解液を用いることができる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(FSO2)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLiなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどのカーボネート、γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、得られた積層体を電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより、容易に製造することができる。電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
二次電池の充放電を50回繰り返した50サイクル後の電気容量維持率は、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、メチルアクリレート705質量部、ブチルアクリレート250質量部、アクリル酸20質量部およびN−メチロールアクリルアミド25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションAを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、粘度計〔東機産業(株)製、品番:TVB−10〕を用い、25±1℃の温度で30rpmの条件で測定したときの樹脂エマルションAの粘度は、2310mPa・sであった。また、得られた樹脂エマルションAに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−10℃であった。
製造例2
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、ブチルアクリレート250質量部、メチルアクリレート345質量部、メチルメタクリレート360質量部、アクリル酸20質量部およびN−メチロールアクリルアミド25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションBを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションBに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は15℃であった。
製造例3
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、ブチルアクリレート640質量部、メチルアクリレート290質量部、アクリル酸20質量部、アクリロニトリル25質量部およびN−メチロールアクリルアミド25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションCを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションCに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−35℃であった。
製造例4
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、エチルアクリレート855質量部、アクリロニトリル100質量部、アクリル酸20質量部およびN−メチロールアクリルアミド25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションDを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションDに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−12℃であった。
製造例5
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、ブチルアクリレート270質量部、メチルアクリレート645質量部、アクリロニトリル25質量部、アクリル酸20質量部およびN−メチロールアクリルアミド40質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションEを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションEに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−10℃であった。
製造例6
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、ブチルアクリレート250質量部、メチルアクリレート705質量部、アクリル酸20質量部およびグリシジルメタクリレート25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションFを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションFに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−10℃であった。
比較製造例1
製造例1において、N−メチロールアクリルアミドを使用しなかったこと以外は、製造例1と同様にして不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションGを得た。得られた樹脂エマルションGに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−10℃であった。
比較製造例2
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水494.5質量部を投入した。フラスコの内温を75℃に維持しながら攪拌下で緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
2.7%ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩水溶液366.3質量部と、ブチルアクリレート575質量部、メチルメタクリレート355質量部、アクリロニトリル25質量部、アクリル酸20質量部およびN−メチロールアクリルアミド25質量部からなる単量体成分とを均一な組成となるように混合することにより、プレエマルションを調製した。
過硫酸アンモニウム3.5質量部をイオン交換水66.5質量部に溶解させ、重合開始剤水溶液を調製した。また、二亜硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水58.5質量部に溶解させ、還元剤水溶液を調製した。
フラスコ内の温度を75℃に保ちながら、前記で得られたプレエマルション、開始剤水溶液および還元剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内温を75℃に保ちながら、さらに1.5時間攪拌を続けた後、冷却することにより、反応を終了し、不揮発分含量50質量%の樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションに5%水酸化リチウム一水和物の水溶液およびイオン交換水を加え、撹拌することにより、樹脂エマルションの25℃におけるpHを6.7に調整し、不揮発分含量が40質量%である樹脂エマルションHを得た。なお、樹脂エマルションの25℃におけるpHは、ガラス電極式水素イオン温度計〔(株)堀場製作所製、品番:F−21〕を用いて測定した。また、得られた樹脂エマルションHに含まれる樹脂粒子(エマルション粒子)を構成しているアクリル系ポリマー重合体のガラス転移温度は−10℃であった。
なお、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、以下の方法に基づいて測定した。
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量の測定方法〕
樹脂エマルション約1gをアルミニウム製の皿に秤量し、150℃の熱風乾燥機中で30分間乾燥させ、乾燥前後の質量から、式:
[不揮発分含量(質量%)]=[(乾燥後の質量)÷(乾燥前の質量)]×100
に基づいて求めた。
実施例1
2質量%カルボキシメチルセルロース〔第一工業製薬(株)製、商品名:セロゲンBSH−6〕水溶液75質量部と、アセチレンブラック粉末〔電気化学工業(株)製〕7質量部とを均一な組成となるように混合することにより、混合物を得た。
前記で得られた混合物に、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム〔日本化学工業(株)製、商品名:セルシードNMC111〕100質量部を添加し、均一な組成となるように混合し、さらにイオン交換水9.1質量部および前記で得られた樹脂エマルションA3.8質量部を添加することにより、リチウムイオン二次電池用水系正極組成物を得た。
前記で得られたリチウムイオン二次電池用水系正極組成物を用い、以下の方法に基づいてサンプルの剥離強度を測定したところ、当該剥離強度は、42N/mであった。
〔剥離強度の測定方法〕
リチウムイオン二次電池用水系正極組成物をアプリケーターで集電体であるアルミニウム箔に塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、ロールプレス機にて線圧5kNでプレスすることにより、正極を作製した。
次に、前記で得られた正極を80℃の雰囲気中で減圧乾燥させることにより、密度が15mg/cm2であるサンプルを得た。前記で得られたサンプルを幅25mm、長さ100mmに裁断し、アルミニウム板に貼り付け、23℃の雰囲気中にて引張試験機〔テスター産業(株)製〕を用いて剥離方向90°、剥離速度20mm/分における剥離強度を測定した。
また、前記で得られた正極の柔軟性を以下の柔軟性の試験方法に基づいて調べた。その結果、当該正極には異常が認められなかった。
〔柔軟性の試験方法〕
正極を直径10mmの金属棒に沿って円弧を描くようにして折り曲げ角度を90°に設定して折り曲げ、折り曲げ部の曲面の表面状態を目視で観察し、異常がないかどうかを調べた。
実施例2
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションBを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、31N/mであった。
また、前記で得られた正極の柔軟性を前記柔軟性の試験方法に基づいて調べたところ、当該正極に使用上支障のない程度の若干の割れが認められた。
実施例3
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションCを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、30N/mであった。
また、前記で得られた正極の柔軟性を前記柔軟性の試験方法に基づいて調べたが、当該正極には異常が認められなかった。
実施例4
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションDを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、33N/mであった。
また、前記で得られた正極の柔軟性を前記柔軟性の試験方法に基づいて調べたが、当該正極には異常が認められなかった。
実施例5
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションEを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、39N/mであった。
また、前記で得られた正極の柔軟性を前記柔軟性の試験方法に基づいて調べたが、当該正極には異常が認められなかった。
実施例6
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションFを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、34N/mであった。
また、前記で得られた正極の柔軟性を前記柔軟性の試験方法に基づいて調べたが、当該正極には異常が認められなかった。
比較例1
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションGを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、22N/mであり、当該剥離強度が低かったことから、柔軟性を調べることを中止した。
比較例2
実施例1において、樹脂エマルションAの代わりに樹脂エマルションHを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し、その剥離強度を調べた。その結果、前記で得られたサンプルの剥離強度は、22N/mであり、当該剥離強度が低かったことから、柔軟性を調べることを中止した。
以上の結果から、各実施例によれば、比較例1および2と対比して、活物質同士および活物質と集電体との結着性に優れ、リチウムイオン二次電池の電極に好適に用いることができるリチウムイオン二次電池の電極用バインダーが得られることがわかる。また、各実施例で得られた電極用バインダー、なかでも実施例1および実施例3〜6で得られた電極用バインダーは、柔軟性に優れている電極を形成することがわかる。