JPWO2016152075A1 - 構造物の状態判定装置と状態判定システムおよび状態判定方法 - Google Patents
構造物の状態判定装置と状態判定システムおよび状態判定方法 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、構造物のひび割れや剥離や内部空洞などの欠陥を区別した検出を、遠隔から非接触で精度良く行うことを目的とする。本発明の状態判定装置は、構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する。
Description
本発明は、構造物に生じる欠陥などの状態を遠隔から判定する技術に関する。
トンネルや橋梁などのコンクリート構造物においては、構造物の表面に発生するひび割れ、剥離、内部空洞などの欠陥が、構造物の健全度に影響を及ぼすことが知られている。そのため、構造物の健全度を正確に判断するためには、これらの欠陥を正確に検出することが必要となる。
構造物のひび割れ、剥離、内部空洞などの欠陥の検出は、検査員による目視検査や打音検査によって行われてきており、検査のためには検査員が構造物に接近する必要がある。そのため、空中での作業ができる環境を整えることによる作業コストの増加や、作業環境設定のために交通規制をすることによる経済的機会の損失などが問題となっており、検査員が構造物を遠隔より検査する方法が望まれている。
遠隔から構造物の状態を判定する方法として画像計測による方法がある。例えば、構造物を撮像装置で撮像して得られた画像を所定の閾値で2値化処理し、この2値化した画像からひび割れに対応する画像部分を検出する技術が提案されている(特許文献1)。また、構造物の応力状態から、構造物に生じている亀裂を検出する技術が提案されている(特許文献2、特許文献3)。また、赤外線撮像装置或は可視光撮像装置とレーザ撮像装置との両方を使用して、撮像画像を自動解析して計測対象物の不具合を判定するシステム(特許文献4)や、可搬性に優れた撮像手段で撮像した画像から欠陥マップを作成する方法(特許文献5)が提案されている。さらに、非特許文献1には、構造物表面の動画像により、ひび割れ領域の動きを検出することによって、ひび割れの検出精度を高める方法が開示されている。
Z.Wang,et al.,"Crack−opening displacement estimation method based on sequence of motion vector field images for civil infrastructure deterioration inspection",映像メディア処理シンポジウム(PCSJ/IMPS2014),I−1−17,電子情報通信学会,November 12,2014.
しかしながら、前記の技術では、例えば橋梁などの構造物の下表面を撮像する場合、荷重により構造物がたわむことで、撮像する表面の位置が表面の法線方向に移動することによる変位(面外変位という)が、構造物の欠陥の情報を有する表面の面内方向の変位(面内変位という)に加算されてしまう。このため、構造物の欠陥を検出する際の精度が低下するという問題があった。
特許文献6には、測定対象物の表面に発生する歪を計測する方法において、撮像された画像の変位から面外変位量を補正する方法が提案されている。特許文献6では、面外変位量を構造物の変形前後の側面画像から読み取る。そのために、構造物の表面を撮影する第1映像装置と、側面を撮影する第2映像装置との、2台の映像装置を備えている。
しかしながら、この方法では、側面を撮影するために、表面を撮影する映像装置とは別にもう一台の映像装置が必要となり、コスト増大の課題がある。さらに、例えば橋梁などの場合、橋梁の側面の測定のためには、撮像装置を固定したり作業者の足場を確保したりする必要があるために作業性が悪く、測定精度が低下するという課題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、遠隔から非接触で構造物のひび割れや剥離や内部空洞などの欠陥を、コストを抑制しつつ精度良く検出することを可能とすることにある。
本発明の状態判定装置は、構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する。
本発明による状態判定システムは、構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する状態判定装置と、前記時系列画像を撮像し前記状態判定装置に提供する撮像部と、を有する。
本発明による状態判定方法は、構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出し、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出し、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出し、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する。
本発明によれば、遠隔から非接触で構造物のひび割れや剥離や内部空洞などの欠陥を、コストを抑制しつつ精度良く検出することが可能となる。
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
図1は、本発明の実施形態の状態判定装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の状態判定装置100は、構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部101を有する。さらに、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部102を有する。さらに、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部103を有する。さらに、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定部104を有する。なお、図1中の矢印の向きは一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
図2は、本発明の実施形態の状態判定装置の具体的な構成を示すブロック図である。状態判定装置1は、変位算出部2、補正量算出部3、変位補正部4、微分変位算出部5、異常判定部6、異常マップ作成部9を備えている。異常判定部6は、2次元空間分布情報解析部7と時間変化情報解析部8を備えている。なお、図2中の矢印の向きは一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
図3は、本発明の実施形態の状態判定システムの構成を示すブロック図である。状態判定システム10は、状態判定装置1と撮像部11とを備えている。状態判定装置1は図2に示す装置である。撮像部11は撮像用のカメラである。撮像部11は、構造物12に荷重を印加する前後の構造物12の表面を、X−Y平面の時系列画像として撮像し、撮像した時系列画像を状態判定装置1の変位算出部2に入力する。状態判定装置1は、撮像部11から時系列画像情報を取得する。図3では、被測定物である構造物12を、2点支持された梁状の構造としている。構造物12には、各種の欠陥13が存在する可能性がある。なお、図3中の矢印の向きは一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
状態判定装置1の変位算出部2は、時系列画像のX−Y平面上の各(X,Y)座標ごとの変位を算出する。すなわち、撮像部11で撮像された荷重印加前のフレーム画像を基準とし、荷重印加後の最初の時刻のフレーム画像における変位を算出する。次に、荷重印加後の次の時刻のフレーム画像の変位、さらにその次の時刻のフレーム画像の変位という具合に、時系列画像ごとに荷重印加前の画像に対する変位を算出する。変位算出部2は、画像相関演算を用いて変位を算出することができる。また、変位算出部2は、算出した変位を、X−Y平面の2次元空間分布とする変位分布図として表すこともできる。
補正量算出部3は、変位算出部2が算出した時系列画像の変位の2次元空間分布から、変位算出部2が算出した変位に含まれている、構造物12がたわむなどして構造物12表面がその法線方向へ移動することによる変位(面外変位という)を算出する。
変位補正部4は、変位算出部2で算出された変位もしくは変位分布図から、補正量算出部3で算出された面外変位を差し引くことによって、構造物12の表面に生じている変位(面内変位という)を抽出する。変位補正部4は、抽出した面内変位を、微分変位算出部5と異常判定部6とに入力する。
微分変位算出部5は、変位もしくは変位分布図に空間微分を施し、微分変位、もしくは、算出した微分変位をX−Y平面上の2次元微分空間分布とする微分変位分布図を算出する。変位補正部4、および、微分変位算出部5の算出結果は、異常判定部6に入力される。
異常判定部6は、入力された算出結果に基づいて、構造物12の状態を判定する。すなわち、異常判定部6は、2次元空間分布情報解析部7と時間変化情報解析部8での解析結果から、構造物12の異常(欠陥13)の場所と種類を判定する。さらに、異常判定部6は、判定した構造物12の異常の場所と種類を、異常マップ作成部9に入力する。異常マップ作成部9は、構造物12の異常状態の空間分布をX−Y平面にマップ化し、異常マップとして記録し、出力する。
状態判定装置1は、PC(Personal Computer)やサーバなどの情報機器とすることができる。情報機器の有する演算資源であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶資源であるメモリやHDD(Hard Disk Drive)を用いて、CPUでプログラムを動作させることにより、状態判定装置1を構成する各部を実現することができる。
図4A〜図4Dは、構造物12の各種異常状態と表面の面内変位の関係を説明するための図である。図4Aは、2点支持された梁状の構造物12の側面図である。図4Aに示すように、図3における撮像部11は、構造物12の下表面を撮像方向(Z方向)から撮像する条件で配置されている。このとき、構造物12が健全であれば、図4Aに示すように、構造物12の上面からの垂直荷重に対し、構造物12の上面には圧縮応力が、下面には引張応力がそれぞれ働く。なお、構造物12は、同様の応力が働く条件であれば、特に2点支持された梁状の構造物でなくてもよい。
ここで構造物12が弾性体である場合、応力は歪に比例する。その比例定数であるヤング率は、構造物の材質に依存する。応力と比例する歪は単位長さあたりの変位であるので、変位補正部4で算出された結果を微分変位算出部5で空間微分することにより、歪を算出することができる。すなわち、微分変位算出部5の結果により、応力場を求めることが可能となる。
図4Bに示すように、ひび割れが存在する場合、ひび割れ部分は荷重による変位が大きい。一方で、ひび割れ部分の周辺は、ひび割れ部分により応力の伝達がないため、構造物12の下面の引張応力は、図4Aに示す健全な状態と比べ小さくなる。
また、図4Cに示すように、剥離が存在する場合、構造物12の下面から見た外観は、ひび割れの場合と同様の外観が観察される。しかしながら、剥離の場合は、剥離部分とその上部との間に応力伝達がない。そのため、荷重による変位は剥離部分においては一定方向に一定量が平行移動するだけであり、その空間微分値である歪は発生しない。よって、荷重による変位を空間微分することで得られる歪の情報を用いることで、ひび割れと剥離との区別をつけることが可能となる。
また、図4Dに示すように、内部空洞が存在する場合、内部空洞では応力の伝達が妨げられるため、構造物12の下面における応力は小さくなる。よって、画像から算出される歪も小さくなることから、構造物12の外側から直接見ることができない内部空洞を見つけることが可能である。
図4A〜図4Dで計測すべき構造物表面の変位はX-Y面内の面内変位(X方向およびY方向)である。そのため、補正量算出部3で、荷重により構造物12の表面がその法線方向に移動する際に生じる見かけの変位(面外変位)を補正量として算出し、変位補正部4で面外変位を差し引いて面内変位を抽出する。以下では、補正量算出部3で面外変位を算出する方法について説明する。
なお、表面が曲面である場合に対して法線というが、全体として大きな曲面を成していて、大きな曲面上に複数の小さな曲面を有している場合、ここでは大きな曲面に対する法線を指すものとする。また、表面が平面である場合に対しては垂線というが、以下の説明では、単純化のために法線と統一して表記することとする。
図5は、荷重により構造物12にたわみなどが発生する場合の、構造物の下面を撮像した時(図3を参照)の面外変位を説明するための図である。図5では、構造物12表面の、その法線方向(Z方向)への移動量を、構造物のたわみによるものとし、たわみ量δとして表記している。なお、表面のZ方向への移動量は、たわみ量だけには限定されず、例えば、荷重により構造物12の全体が沈み込むことで移動する量などが、含まれていても良い。
図5に示すように、荷重により構造物12にたわみ(たわみ量δ)が発生する場合、撮像部11の撮像面には、X方向で、構造物表面の変位の2次元空間分布である面内変位Δxに相当するΔxiとは別に、たわみ量δによる面外変位δxiが生じる。同様にY方向で、面内変位Δyに相当するΔyiと、たわみ量δによる面外変位δyiが生じる。面外変位δxi、δyiと、面内変位Δxi、Δyiとは、撮像距離をL、レンズ焦点距離をf、構造物表面の撮像中心を原点とする座標を(x、y)とすると、それぞれ、式1、式2、式3、式4で表される。
例えば、構造物12の荷重前後のたわみ量δが4mm、撮像距離Lが5m、レンズ焦点距離fが50mmの場合、構造物12の表面における撮像中心からの距離xが200mmにおいて、撮像面の面外変位δxiは式1より1.6μmとなる。一方、構造物12の表面に160μmの面内変位Δxが存在する場合、式3より撮像面の面内変位Δxiは1.6μmとなる。このように、変位算出部2で算出された時系列画像の変位やX−Y平面の2次元空間分布とする変位分布図には、面内変位と同等の面外変位が重畳されている場合がある。
ここで、式1と式2を面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)、式3と式4を面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)としてまとめると、それぞれ式5と式6となる。
図6は、式5と式6で示される面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)と面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)の関係を示す図である。図6において、面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)は放射状のベクトル群(図6中細実線の矢印)となり、その大きさR(x,y)は式1と式2から式7のようになる。式7によれば、たわみ量δが一定であれば、その大きさは撮像中心からの距離に比例した値となり、比例定数を式8に示すようにkと置けば、式7は式9のように表される。
ここで、変位算出部2で算出される変位分布は、面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)(図6中細実線の矢印)と面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)(図6中太実線の矢印)との合成ベクトルである計測ベクトルV(Vx,Vy)(図6中点線の矢印)である。計測ベクトルV(Vx,Vy)の大きさをRmes(x,y)とすると、式10、式11のように表される。
図7A、図7Bは、式7、式8、式9で与えられる面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)の大きさR(x,y)の値の例を示したグラフである。図7A、図7Bは、たわみ量δがそれぞれ1mm、4mmの場合の面外変位ベクトルの大きさR(x,y)を示したグラフであり、どちらのグラフもたわむ前の撮像距離Lは5000mm、焦点距離fは50mmである。図7A、図7Bのグラフを比較して分かるように、双方のグラフは相似形であり、たわみ量δが大きいとその拡大率も大きくなる。この拡大率とは、式8で与えられる比例定数kに相当する。
図8は、図7Bのグラフに計測ベクトルV(Vx,Vy)の大きさRmes(x,y)を重ねて表示したグラフである。図8においてRmes(x,y)は細実線で示す。Rmes(x,y)は、面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)に対して面外変位ベクトルの大きさR(x,y)が大きい場合、面外変位ベクトルの大きさR(x,y)と似た形状をしており、Rmes(x,y)から、R(x,y)の拡大率を推定することが可能となる。R(x,y)の拡大率の推定は、式12に示す評価関数E(k)を最小にする比例定数kを求めることで行う。
式12による拡大係数kの算出は、最小2乗法を用いて行う。評価関数E(k)は、Rmes(x,y)とR(x,y)の差の2乗和以外に、絶対値和や、他の累乗和等を用いてもよい。
補正量算出部3は、推定した拡大率kから、式8を用いてたわみ量δに変換する演算をして、面外変位ベクトルを推定する。変位補正部4は、変位算出部2で得られる計測ベクトルから、補正量算出部3で得られた面外変位ベクトルを補正量として減算することによって、面内変位ベクトルを抽出する。
以下、構造物12が、図4Bに示すようなY方向に沿ったひび割れを有する場合を例として、面外変位を算出し、算出した面外変位を計測した変位から差し引いて、面内変位を抽出する例を説明する。変位算出部2による変位の算出には、図3に示す構造物12の下面を、荷重印加前後で図中に示す撮像方向から撮像した時系列画像を用いている。
ここで、撮像距離は5m、構造物12は長さ20m、厚さ0.5m、幅10mのコンクリート(ヤング率40GPa)とし、10tの荷重をかけた場合と等価な条件の両持ち梁としている。画像の変位を計測する領域は、構造物12表面のひび割れ部分を画像中心として、X方向、Y方向共に±200mmの範囲としている。
例として、撮像部11のカメラのレンズ焦点距離は50mm、画素ピッチは5μmとして、撮像距離5mにおいて250μmの画素分解能が得られるようにしている。撮像部11の撮像素子は、モノクロで水平2000画素、垂直2000画素の画素数の素子を使用し、撮像距離5mにおいて0.5m×0.5mの範囲が撮像できるようにする。撮像素子のフレームレートは60Hzとする。また、変位算出部2における画像相関では、2次曲線補間によるサブピクセル変位推定を使用し、1/100画素まで変位推定ができるようにし、2.5μmの変位分解能が得られるようにすることができる。
以上の撮像部11を用いた場合、画像変位計測領域(X方向、Y方向共に−200mmから200mmの範囲)は、水平1600画素、垂直1600画素となる。この画素領域について式1から式12の演算を行う。
図9A、図9Bは、変位算出部2で得られた計測ベクトルV(Vx,Vy)のY=0mmにおけるX方向の変位分布、X=0mmにおけるY方向の変位分布をそれぞれ示す図である。図9A、図9Bは、計測ベクトルV(Vx,Vy)に含まれている面外変位は考慮せず、式6から得られた変位を、構造物12の被測定面の座標での変位としたグラフである。
X方向の変位を示す図9Aでは、撮像範囲±200mmの範囲で±170μmの変位が生じている。Y方向の変位を示す図9Bでは、撮像範囲±200mmの範囲で±160μmの変位が直線的に生じている。X方向の変位は、面内変位に面外変位が重畳された変位となっている。一方、Y方向の変位は、面外変位のみの変位となっている。
変位算出部2で得られた計測ベクトルV(Vx,Vy)を用いて、式12の評価関数E(k)を最小にする比例定数kは、最小2乗法により0.000008と求められる。この値を式8に代入すると、たわみ量δは4mmと求められる。このたわみ量δを式5に代入すると、面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)が求められ、この結果を補正量算出部3の出力として、変位補正部4に入力する。
変位補正部4では、変位算出部2で得られた計測ベクトルV(Vx,Vy)から補正量算出部3で得られた面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)を減算することで、面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)を求め、式6よりX方向、Y方向それぞれの面内変位を算出する。
図10A、図10Bは、変位補正部4の出力を示す。図10AはX方向の変位を示すグラフであり、ひび割れ部では不連続な20μmの急激な変位が生じている。一方、図10BはY方向の変位を示すグラフであり、変位は0である。図10A、図10Bのように、面外変位を分離して構造物表面の面内変位を抽出することができる。
図11は、補正量算出部3における補正量の算出方法において、構造物12に傾斜がある場合についての面外変位を説明する図である。図11に示すように、Y軸を軸として構造物12の表面の垂線がθだけ回転している場合、撮像部11の光軸をz軸とした座標と構造物表面の法線をz’とした座標と関係は、式13、式14、式15で示される。
さらに、θだけ回転した映像面のX−Y座標は式16、式17で写像される。
よって、荷重の印加により構造物12がたわむことでの座標P1(x1,y1,z1)から座標P2(x2,y2,z2)への変位による、X方向の面外変位δxi、Y方向の面外変位δyiは、各々、式18、式19で示される(図11中でY成分は図示せず)。
したがって、傾斜θがある場合、式7に式18と式19を代入した関数R(θ)が求まる。ここで、傾斜角θが未知である場合、θを0°から90°まで例えば0.5°ステップで変化させて、各角度θにおける関数R(θ)を用いて、式12の評価関数E(k)を最小にするk(θ)を求める。そして、求めた全てのk(θ)の中で評価関数E(k)を最小にする角度を傾斜角とする。この傾斜角におけるkと式8の関係からたわみ量δが求められる。求められた傾斜角とたわみ量δと式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19の関係から面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)が推定できる。
この結果を補正量算出部3の出力として、変位補正部4に入力する。変位補正部4では計測ベクトルV(Vx,Vy)から面外変位ベクトルδi(δxi,δyi)を減算することで、面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)が求められる。ここで、面内変位ベクトルΔi(Δxi,Δyi)に対して、荷重印加後表面への射影を式13、式14、式15、式16、式17を用いて計算することで、構造物の面内変位を求めることが可能となる。
なお、図11では、Y軸を軸として、構造物12表面の法線が撮像部11の撮像方向の中心の光軸に対してθだけ回転している場合を取り扱ったが、X軸やZ軸を軸とする場合も同様に考えて、補正を行うことができる。
変位補正部4の出力である構造物表面の面内変位は、微分変位算出部5で構造物表面の歪に置き換えられる。構造物表面の歪にヤング率を乗ずると応力となるので、このことから構造物表面の応力場が求まる。変位補正部4で得られた変位情報と、微分変位算出部5で得られた歪情報は、異常判定部6に入力される。
異常判定部6は、変位補正部4で得られた変位情報や微分変位算出部5で得られた歪情報に対して、欠陥の種類と場所を特定するために、2次元空間分布情報解析部7と時間変化情報解析部8とに、予め、欠陥を判定するための閾値や、欠陥の種類に対応した特徴的な変位や歪のパタンを備えている。そして、2次元空間分布情報解析部7と時間変化情報解析部8とは、変位情報や歪情報と前記閾値との比較や、前記パタンとのパタンマッチングにより、図4A〜図4Dで示したような、健全な状態、もしくは、ひび割れや剥離や内部空洞といった欠陥を判定する。
図10Aは、Y方向に沿ったひび割れが存在する場合の、荷重印加による構造物のX方向の表面の面内変位の例を示している。ひび割れ部では、不連続な20μmの急激な面内変位が生じていることが分かる。このような急激な変位は、欠陥の無い健全な状態では生じない。よって、予め不連続な変位の大きさに閾値を設けておくことで、これを上回る変位が確認されることでひび割れを検出することが可能である。
図12Aと図12Bは、Y方向に沿ったひび割れがある場合の、微分変位算出部5で算出されるひび割れ部の周りの応力場の分布を示した図である。図12Aに示すように、ひび割れにより応力方向が曲げられるため、図12AにおけるX方向に引張応力が構造体の両端に働いている場合でも、ひび割れ近傍の応力方向は図12Bに示すようにY方向の成分が発生する。したがって、このY方向の成分の有無の検出によってもひび割れを検出できる。なお、このようなひび割れ周りの応力場は、線形応答を示す弾性体においては応力拡大係数としてその分布が知られているので、その情報を利用することも可能である。
図13A〜13Dに、ひび割れ周りの変位量の2次元変位分布の例を示す。図13Aと図13Bは、それぞれ、図4Bにおける水平方向(X方向)と図4Bにおける紙面に垂直な方向(Y方向)の変位量等高線である。図13Aに示すように、X方向に関して、ひび割れがない領域よりひび割れ周りでは変位量等高線の密度が疎となる。これは、図10Aに示したひび割れ部分での急激な変位の、外側の緩やかな変位の部分に相当する。この部分での変位は、ひび割れが無いときの変位よりも緩やかとなる。
また、図13Bに示すように、Y方向に関して、ひび割れ部分の周辺に変位のY方向の成分が生じる。これは、図12Bに示した、応力場(歪)のY方向の成分に対応する。
図13Cと図13Dは、それぞれ、図13Aと図13Bの場合よりひび割れが深い場合を示す。この場合、X方向、Y方向それぞれに関してひび割れ周りでは変位量等高線の密度がより疎になる。この疎密の情報から、ひび割れの深さを知ることも可能である。
以上のひび割れの判定は、図2における異常判定部6内の2次元空間分布情報解析部7で行われる。
ひび割れがある場合、図10Aに示したように、ひび割れ部では、ひび割れの開きが大きくなることに対応して変位量が急増する。よって、X方向もしくはY方向の単位長さ当りの変位量の閾値を、各々、予め設けておくことで、閾値を超える変位量が検出された場所にひび割れがあると推定することができる。
また、X方向の歪は、ひび割れ部では急激に増大する。このことから、X方向の歪の値に閾値を予め設けておくことで、閾値を上回る歪が検出された場所にひび割れがあると推定することができる。
また、図12A、図12Bに示したように、ひび割れがある場合、Y方向の歪が生じる。よって、Y方向の歪の値に閾値を予め設けておくことで、閾値を上回る歪が検出された場所にひび割れがあると推定することができる。
以上の各閾値は、構造物と同様の寸法や材質を用いてのシミュレーションや、縮小模型による実験などにより設定することができる。さらに、実際の構造物を長期間にわたって測定し蓄積されたデータから設定することもできる。
以上の判定は、以上のような数値による比較によらずとも、以下に説明する様なパタンマッチング処理によっても可能である。
図14A〜14Cは、2次元空間分布情報解析部7による変位分布のパタンマッチング処理を説明する図である。変位補正部4や微分変位算出部5によれば、図13A〜13Dに示したように、X−Y平面に変位量を変位分布図として表すことができる。2次元空間分布情報解析部7は、図14Aに示すように、予め記憶されたひび割れ周りの変位のX方向のパタンを回転、拡大縮小して、変位補正部4で得られた変位分布図とのパタンマッチングにより、ひび割れの方向と深さを判定することができる。ここで、予め記憶されたひび割れ周りの変位のX方向のパタンは、ひび割れの深さや幅ごとに予めシミュレーションなどにより作成しておくことができる。
また、2次元空間分布情報解析部7は、図14Bに示すように、予め記憶されたひび割れ周りの変位のY方向のパタンを回転、拡大縮小して、変位補正部4で得られた変位分布図とのパタンマッチングにより、ひび割れの方向と深さを判定する。ここで、予め記憶されたひび割れ周りの変位のY方向のパタンは、ひび割れの深さや幅ごとに予めシミュレーションなどにより作成しておくことができる。
また、2次元空間分布情報解析部7は、図14Cに示すように、予め記憶されたひび割れ周りの変位の微分ベクトル場のパタンを回転、拡大縮小して、微分変位算出部5で得られた微分ベクトル場(応力場に相当)とのパタンマッチングにより、ひび割れの方向と深さを判定する。ここで、予め記憶されたひび割れ周りの変位の微分ベクトル場のパタンは、ひび割れの深さや幅ごとに予めシミュレーションなどにより作成しておくことができる。
前記パタンマッチングには相関演算を用いている。パタンマッチングにはその他の各種統計的演算手法を用いてもよい。
以上、構造物12がひび割れを有する場合について説明を行ってきたが、以下に、内部空洞を有する場合と剥離を有する場合とについて説明を行う。
図15Aと図15Bは、図4Dに示すような内部空洞が存在する場合の撮像方向から見た面の応力の2次元分布を示す。図15Aは斜視図であり、図15Bは平面図である。図15Bに示すように、荷重によって図のX方向に応力が働くが、空洞部分では応力場が曲がるため、応力に図のY方向の成分が存在する。
図16A〜16Cは、内部空洞が存在する場合の撮像方向から見た面の変位の等高線及び応力場を示した図であり、変位のX成分の等高線を図16Aに、変位のY成分の等高線を図16Bに、応力場を図16Cにそれぞれ示す。
空洞部分では、図4Dの説明で述べた通り歪量が小さくなるので、図16Aに示す変位のX成分の等高線の密度が小さくなる。また、図16Bに示す変位のY成分の等高線は閉じた曲線となる。さらに、図16Cに示す、変位の微分である応力場は空洞部分で曲がることとなる。表面の応力場は空洞部分が表面に近いほどその影響が顕著になるため、応力場の曲がり方から空洞部分の表面からの深さを推定することもできる。
ここで、2次元空間分布情報解析部7で予め記憶された空洞周りの変位のX方向の変位のパタン、空洞周りの変位のY方向の変位のパタン、および微分ベクトル場(応力場に相当)を、ひび割れを判定した時と同様に、図14Aに図16Aを、図14Bに図16Bを、図14Cに図16Cを適用すると、内部空洞の位置および深さの状態判定をすることができる。前記パタンマッチングには相関演算を用いているが、その他の統計的演算手法を用いてもよい。
また、内部空洞を有する場合も、Y方向の変位量やY方向の歪の特徴から、これらの変位量や歪に閾値を予め設けて、これを上回る場合に内部空洞があると推定することもできる。
図17Aと図17Bは、内部空洞がある構造体に荷重を短時間与えた場合(インパルス刺激という)の応答を説明する図である。インパルス刺激は、例えば、荷重を掛ける位置に掛けることができる。このインパルス刺激に対する、図17Aに示すA、B、Cの表面の各点での変位の時間応答を、図17Bに示す。内部空洞がないA点では、応力伝達が早く変位の振幅も大きい。一方、C点では、内部空洞中は応力が伝達しないため、応力は空洞の周辺から伝達するため、応力伝達が遅くかつ変位の振幅が小さい。また、A点とC点の中間にあるB点での応力伝達時間と振幅は、A点とC点の中間の値となる。従って、構造体を撮像方向から見た面の面内における変位分布を、異常判定部6内の時間変化情報解析部8で周波数解析をすると、共振周波数近傍の振幅と位相とから内部空洞の領域を特定できる。また、共振周波数のずれから内部空洞を判定してもよい。
なお、荷重を長時間与えた場合であっても、荷重を与えた初期段階では図17Bに相当する変位の変動が確認される。但しこの場合、変位の収束値はゼロではなく荷重にバランスする値となる。よって、荷重を長時間与えた場合も、時間変化情報解析部8により内部空洞の領域を特定できる。
以上の変位の時間応答の処理は、時間変化情報解析部8において高速フーリエ変換を用いた周波数解析により行われる。また、周波数解析にはウェーブレット変換等の各種周波数解析法を用いてもよい。
図18A〜18Cは、剥離が存在する場合の撮像方向から見た面の変位の等高線及び応力場を示した図であり、変位のX成分の等高線を図18Aに、変位のY成分の等高線を図18Bに、応力場を図18Cにそれぞれ示す。
図4Cに示すように、剥離が存在する場合、梁状の構造物の下面から見た外観ではひび割れと同様の外観が観察される。しかしながら、剥離部分とその上部との間には応力伝達がないため、荷重前後の変位は剥離部分において一定方向に一定量が平行移動するだけであり、その空間微分値である歪は発生しない。
図18Aは、変位のX成分の等高線を示す。剥離部分は歪がなく一定方向に移動するため等高線が存在しない。この特徴を用いて、異常判定部6は剥離が存在すると判定する。また、図中のA点の部分は剥離による断裂で応力が伝達しづらいので、健全部分であるB点に比べて等高線が疎になる。異常判定部6はこの性質を用いて剥離部分と健全部分とを判定してもよい。
図18Bは、変位のY成分の等高線を示す。剥離部分の外周の外側にはY方向の変位が生じる。この特徴を用いて、異常判定部6は剥離が存在すると判定することができる。また、図18Cに示す変位の微分である応力場は、剥離部分では0かその近傍の値となる。この特徴を用いて、異常判定部6は剥離が存在すると判定することができる。
ここで、2次元空間分布情報解析部7で予め記憶された剥離周りの変位のX方向の変位のパタン、空洞周りの変位のY方向の変位のパタン、および微分ベクトル場(応力場に相当)を、ひび割れの深さを判定した時と同様に、図14Aに図18Aを、図14Bに図18Bを、図14Cに図18Cを適用すると、剥離の位置の判定をすることができる。前記パタンマッチングには相関演算を用いているが、その他の統計的演算手法を用いてもよい。
図19は、剥離を有する構造体がインパルス刺激を受けた場合の時間応答を示す図である。時間応答では、剥離部分と健全部分とでは変位の方向が逆、すなわち位相が180°異なる波形となる。また、剥離部分は軽くなっているため振幅が大きい。構造体を撮像方向から見た面の面内における変位分布を時間変化情報解析部8で周波数解析をすることで、振幅と位相から剥離部分を特定できる。また、剥離部分は構造体全体から浮いているため、構造体全体とは別の周波数成分を含んでいる場合があるため、共振周波数のずれから剥離部分を判定してもよい。
以上の処理において時間変化情報解析部8における周波数解析は高速フーリエ変換を用いている。周波数解析にはウェーブレット変換等の各種周波数解析法を用いてもよい。
図20は、図2の状態判定装置1の状態判定方法を示すフローチャートである。
ステップS1で、状態判定装置1の変位算出部2は、撮像部11で撮像された荷重を印加する前後での構造物12の表面の時系列画像において、荷重を印加する前後での変位量を算出する基準となる荷重印加前のフレーム画像を取り込み、さらに、荷重印加後のフレーム画像を時系列に取り込む。
さらに、変位算出部2は、基準となる荷重印加前の画像に対する荷重印加後の画像のX、Y方向の変位量を算出する。さらに、算出した変位量の2次元分布をX−Y平面に表示した変位分布図(変位量の等高線)としてもよい。さらに、変位算出部2は、算出した変位量もしくは変位分布図を、補正量算出部3と変位補正部4に入力する。
ステップS2で、補正量算出部3は、変位算出部2が算出した時系列画像の変位の2次元空間分布から、荷重により構造物12がたわむなどして構造物12表面がその法線方向へ移動する距離情報と、撮像部11の光軸と構造物12の表面の法線とのなす角度の傾斜情報とを推定する。
ステップS3で、補正量算出部3は、距離情報と傾斜情報とから、面外変位を算出する。
ステップS4で、変位補正部4は、変位算出部2で得られた変位量から補正量算出部3で得られた面外変位を減算して面内変位を抽出する。すなわち、変位補正部4は、基準となる荷重印加前に対する、荷重印加後の構造物12の表面のX−Y方向の面内変位を算出する。さらに、算出した面内変位の2次元分布をX−Y平面に表示した変位分布図(変位量の等高線)としてもよい。変位補正部4は、算出した結果を微分変位算出部5と異常判定部6に入力する。
ステップS5で、微分変位算出部5は、変位補正部4から入力された面内変位もしくは変位分布図を空間微分して、微分変位量(応力値)もしくは微分変位分布図(応力場)を算出する。微分変位算出部5は、算出した結果を異常判定部6に入力する。
以下のステップS6、ステップS7、ステップS8は、異常判定部6の2次元空間分布情報解析部7が構造体の欠陥であるひび割れ、剥離、内部空洞を判定するステップである。判定方法としては、前述したパタンマッチングによる方法と、閾値による方法を挙げて説明する。
ステップS6で、異常判定部6の2次元空間分布情報解析部7は、入力されたX方向の変位量もしくは変位分布図から、ひび割れ、剥離、内部空洞の状態を判定する。
まず、パタンマッチングによる判定方法を説明する。2次元空間分布情報解析部7は、図14A、図16A、図18Aに示すような、ひび割れや内部空洞や剥離の幅や深さなどに対応して予め作成された変位分布パタンをデータベースとして備えている。2次元空間分布情報解析部7は、変位補正部4から入力されたX方向の変位分布図に対して、これらの変位分布パタンを回転、拡大縮小してパタンマッチングし、X−Y平面における欠陥の位置や種類を判定する。
次に、変位量の閾値による判定方法を説明する。2次元空間分布情報解析部7は、入力されたX方向の変位量に基づいて、例えば、変位量の連続性を判定する。すなわち、図10Aに示したように、変位量の閾値以上の急峻な変化の有無により、連続性の無し有りを判定する。2次元空間分布情報解析部7は、X−Y平面上のいずれかの箇所に連続性が無い急峻な変化がある場合、当該箇所にひび割れや剥離が存在する可能性があると判定し、不連続フラグDisC(x,y,t)に1をセットするとともに、急峻な変化がある箇所の変位量データを数値情報として記録する。ここでtは、ステップS1で取り込んだフレーム画像の時系列画像上の時刻である。
異常判定部6は、パタンマッチングにより判定した欠陥の情報、もしくは、変位量の閾値により判定した不連続フラグDisC(x,y,t)や数値情報を、異常マップ作成部9に入力する。
ステップS7で、異常判定部6の2次元空間分布情報解析部7は、入力されたY方向の変位量もしくは変位分布図から、ひび割れ、剥離、内部空洞の状態を判定する。
まず、パタンマッチングによる判定方法を説明する。2次元空間分布情報解析部7は、図14B、図16B、図18Bに示すような、ひび割れや内部空洞や剥離の幅や深さなどに対応して予め作成された変位分布パタンをデータベースとして備えている。2次元空間分布情報解析部7は、変位補正部4から入力されたY方向の変位分布図に対して、これらの変位分布パタンを回転、拡大縮小することによってパタンマッチングし、X−Y平面における欠陥の位置や種類を判定する。
次に、変位量の閾値による判定方法を説明する。ひび割れ、剥離、内部空洞の欠陥がある場合、Y方向にも変位量が発生する。よって、2次元空間分布情報解析部7は、予め定められた閾値より大きい変位量を検知した場合、当該箇所に欠陥があると判定して、直交フラグortho(x,y,t)に1をセットするとともに、閾値より大きい変位量を検知した箇所の変位量データを数値情報として記録する。
異常判定部6は、パタンマッチングにより判定した欠陥の情報、もしくは、変位量により判定した直交フラグortho(x,y,t)や数値情報を、異常マップ作成部9に入力する。
ステップS8で、異常判定部6の2次元空間分布情報解析部7は、入力された微分変位量(応力値)もしくは微分変位分布図(応力場)から、ひび割れ、剥離、内部空洞の状態を判定する。
まず、パタンマッチングによる判定方法を説明する。2次元空間分布情報解析部7は、図14C、図16C、図18Cに示すような、ひび割れや内部空洞や剥離の幅や深さなどに対応して予め作成された変位分布パタンをデータベースとして備えている。2次元空間分布情報解析部7は、微分変位算出部5から入力された微分変位分布図に対して、これらの変位分布パタンを回転、拡大縮小することによってパタンマッチングし、X−Y平面における欠陥の位置や種類を判定する。
次に、微分変位量の閾値による判定方法を説明する。例えば、X方向の歪は、ひび割れ部では変位の微分値が発散するため、急増する。このことから、歪の値に閾値を予め設けておくことで、閾値を上回る歪が検出された箇所にひび割れがあると判定することができる。2次元空間分布情報解析部7は、入力された微分変位量に基づいて、当該箇所にひび割れが存在すると判定し、微分値フラグDiff(x,y,t)に1をセットするとともに、欠陥箇所の微分変位量データを数値情報として記録する。
異常判定部6は、パタンマッチングにより判定した欠陥の情報、もしくは、微分変位量により判定した微分値フラグDiff(x,y,t)や数値情報を、異常マップ作成部9に入力する。
ステップS9で、変位算出部2は、時系列画像の各フレーム画像の処理が完了したかを判定する。すなわち、時系列画像のフレーム数がn枚であった場合、n枚目の処理が終わったか否かを判定する。処理がn枚に満たない場合(NO)、ステップS1からの処理を繰り返す。これをn枚が終了するまで繰り返す。なお、nは全フレーム数には限定されず、任意の数に設定することができる。処理がn枚を終了した場合(YES)、ステップS10に進む。
ステップS10で、異常判定部6の時間変化情報解析部8は、n枚のフレーム画像に対応した時系列の変位量もしくは変位分布図から、図17Bや図19に示したような変位の時間応答を解析する。すなわち、n枚の変位分布図I(x,y,n)から、時間周波数分布(時間周波数をfとする)が振幅A(x,y,f)、位相P(x,y,f)として算出される。時間変化情報解析部8は、時間周波数分布が図17Bのように場所によって位相が異なる特徴を有する場合、位相ずれを生じている箇所に内部空洞があると判定する。また、図19のように変位の極性が反転している場合、その間の箇所に剥離があると判定する。時間変化情報解析部8は、以上の時間周波数分布の算出結果と欠陥の判定結果を、異常マップ作成部9に入力する。
ステップS11で、異常マップ作成部9は、以上のステップで入力された情報に基づいて、異常マップ(x,y)を作成する。2次元空間分布情報解析部7および時間変化情報解析部8から送られた結果は、X-Y座標上の点(x,y)に関与するデータ群である。これらのデータは、異常判定部6内の2次元空間分布情報解析部7および時間変化情報解析部8にて、構造物の状態が判定されている。
これらの判定は、X方向の変位量もしくは変位分布図、Y方向の変位量もしくは変位分布図、微分変位量もしくは微分変位分布図、さらには変位や微分変位の時間応答についてなされている。そのため、異常マップ作成部9は、例えば、Y方向の変位量での判定が付かないなどのデータの欠落を生じたとしても、X方向の変位量と微分変位量での判定が付いていることによって、X−Y座標中の当該の箇所の状態を決定できる。そして、この決定に基づいて、異常マップ(x,y)を作成することができる。
また、欠陥状態の判定に際しては、X方向変位、Y方向変位、微分変位の判定が喰い違った場合、多数決により決定しても良い。また、判定基準である閾値と最も差の大きい項目に決定しても良い。
また、異常マップ作成部9は、前述の各種数値情報に基づいて、欠陥の程度を表現することができる。例えば、ひび割れの幅や深さ、剥離の寸法、内部空洞の寸法や表面からの深さなどを表現することができる。
また、異常判定部6内の2次元空間分布情報解析部7および時間変化情報解析部8で行う構造物の欠陥状態の判定を、異常マップ作成部9が異常マップ(x,y)を作成する際に行うようにすることもできる。すなわち、2次元空間分布情報解析部7および時間変化情報解析部8からは解析データを入手し、解析データに基づく欠陥状態の判定を、異常マップ作成部9が行うようにしても良い。
また、異常マップ作成部9の結果出力は、人が表示装置で直接可視化できる形態の情報でもよいし、機械が読み込むための形態の情報でもよい。
本実施形態において、例えば、撮像部11のレンズ焦点距離は50mm、画素ピッチは5μmとして、撮像距離5mにおいて500μmの画素分解能が得られるようにすることができる。撮像部11の撮像素子は、モノクロで水平2000画素、垂直2000画素の画素数のものを使用し、撮像距離5mにおいて、1m×1mの範囲が撮像できるようにすることができる。撮像素子のフレームレートは60Hzとすることができる。
また、変位算出部2における画像相関では、2次曲線補間によるサブピクセル変位推定を使用し、1/100画素まで変位推定ができるようにし、5μmの変位分解能が得られるようにすることができる。画像相関におけるサブピクセル変位推定には、以下の各種方法を用いることができる。また、変位微分において微分時のノイズ削減のために平滑フィルタを使用することができる。
サブピクセル変位推定には、2次曲面、等角直線などによる補間を使用してもよい。また、画像相関演算には、SAD(Sum of Absolute Difference)法、SSD(Sum of Squared Difference)法、NCC(Normalized Cross Correlation)法、ZNCC(Zero−mean Normalized Cross Correlation)法などの各種方法を用いてもよい。また、これらの方法と前述のサブピクセル変位推定法とのいかなる組み合わせを用いてもよい。
撮像部11のレンズ焦点距離、撮像素子の画素ピッチ、画素数、フレームレートは、測定対象に応じて適宜変更してもよい。
本実施形態において、例えば、梁状構造物は橋梁に、荷重は走行車両に相当するとすることができる。以上の説明では、梁状構造物上に荷重をかけて説明したが、荷重が走行車両のように橋梁上を移動する場合でも、同様に、ひび割れ、内部空洞、剥離の検出が可能である。また、材料力学的に以上の説明と同様の挙動を呈するものであれば、他の材料やサイズや形状を有する構造物、構造物に荷重を載せるのとは異なる荷重方法、例えば、荷重を吊り下げるなどの荷重方法によるものにも適用することができる。
また、構造物の表面変位の空間2次元分布の時系列信号を計測できるものであれば、時系列画像に限らず、アレイ状のレーザドップラセンサや、アレイ状の歪ゲージ、アレイ状の振動センサ、アレイ状の加速度センサ等を用いてもよい。これらアレイ状のセンサから得られる空間2次元の時系列信号を画像情報として扱ってもよい。
本実施形態では、構造物表面の法線方向への移動による面外変位を算出するための距離情報や傾斜情報を、荷重印加前後での構造物表面を撮像した画像から取得することができる。構造物表面の法線方向への移動量は、構造物の側面方向から、荷重によるたわみ量を測定することによって得ることが原理的には可能である。しかしながら、例えば、構造物が橋梁などの場合、橋梁の側面からの測定は作業をする上で極めて困難であり、そのため、測定精度も低くなる。本実施形態は、この作業上の問題も解決できるので、構造物表面の画像の変位を高い精度で補正することができる。また、本実施形態では、側面方向からたわみ量を測定するための装置や設備も必要ないことから、コストの増大を抑制できる。
以上のように、本実施形態によれば、遠隔から非接触で構造物のひび割れや剥離や内部空洞などの欠陥を、コストを抑制しつつ精度良く検出することが可能となる。
本発明は上記実施形態に限定されることなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものである。
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する、状態判定装置。
(付記2)
前記補正量算出部は、前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記1記載の状態判定装置。
(付記3)
前記構造物表面の変位の2次元空間分布から2次元微分空間分布を算出する微分変位算出部を有し、前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1または2記載の状態判定装置。
(付記4)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1から3の内の1項記載の状態判定装置。
(付記5)
前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記3または4記載の状態判定装置。
(付記6)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1から5の内の1項記載の状態判定装置。
(付記7)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記3から6の内の1項記載の状態判定装置。
(付記8)
前記異常判定部の判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する異常マップ作成部を有する、付記1から7の内の1項記載の状態判定装置。
(付記9)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記1から8の内の1項記載の状態判定装置。
(付記10)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記9記載の状態判定装置。
(付記11)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記1から10の内の1項記載の状態判定装置。
(付記12)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する状態判定装置と、
前記時系列画像を撮像し前記状態判定装置に提供する撮像部と、を有する、状態判定システム。
(付記13)
前記補正量算出部は、前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記12記載の状態判定システム。
(付記14)
前記構造物表面の変位の2次元空間分布から2次元微分空間分布を算出する微分変位算出部を有し、前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12または13記載の状態判定システム。
(付記15)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12から14の内の1項記載の状態判定システム。
(付記16)
前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記14または15記載の状態判定システム。
(付記17)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12から16の内の1項記載の状態判定システム。
(付記18)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記14から17の内の1項記載の状態判定システム。
(付記19)
前記異常判定部の判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する異常マップ作成部を有する、付記12から18の内の1項記載の状態判定システム。
(付記20)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記12から19の内の1項記載の状態判定システム。
(付記21)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記20記載の状態判定システム。
(付記22)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記12から21の内の1項記載の状態判定システム。
(付記23)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出し、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、状態判定方法。
(付記24)
前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記23記載の状態判定方法。
(付記25)
前記2次元空間分布から前記2次元空間分布の2次元微分空間分布を算出し、
前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23または24記載の状態判定方法。
(付記26)
前記2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23から25の内の1項記載の状態判定方法。
(付記27)
前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記25または26記載の状態判定方法。
(付記28)
前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23から27の内の1項記載の状態判定方法。
(付記29)
前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記25から28の内の1項記載の状態判定方法。
(付記30)
前記判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する、付記23から29の内の1項記載の状態判定方法。
(付記31)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記23から30の内の1項記載の状態判定方法。
(付記32)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記31記載の状態判定方法。
(付記33)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記23から32の内の1項記載の状態判定方法。
(付記1)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する、状態判定装置。
(付記2)
前記補正量算出部は、前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記1記載の状態判定装置。
(付記3)
前記構造物表面の変位の2次元空間分布から2次元微分空間分布を算出する微分変位算出部を有し、前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1または2記載の状態判定装置。
(付記4)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1から3の内の1項記載の状態判定装置。
(付記5)
前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記3または4記載の状態判定装置。
(付記6)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記1から5の内の1項記載の状態判定装置。
(付記7)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記3から6の内の1項記載の状態判定装置。
(付記8)
前記異常判定部の判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する異常マップ作成部を有する、付記1から7の内の1項記載の状態判定装置。
(付記9)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記1から8の内の1項記載の状態判定装置。
(付記10)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記9記載の状態判定装置。
(付記11)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記1から10の内の1項記載の状態判定装置。
(付記12)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出部と、前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正部と、前記構造物表面の変位の2次元空間分布と予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて前記構造物の欠陥を特定する異常判定部と、を有する状態判定装置と、
前記時系列画像を撮像し前記状態判定装置に提供する撮像部と、を有する、状態判定システム。
(付記13)
前記補正量算出部は、前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記12記載の状態判定システム。
(付記14)
前記構造物表面の変位の2次元空間分布から2次元微分空間分布を算出する微分変位算出部を有し、前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12または13記載の状態判定システム。
(付記15)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12から14の内の1項記載の状態判定システム。
(付記16)
前記異常判定部は、前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記14または15記載の状態判定システム。
(付記17)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記12から16の内の1項記載の状態判定システム。
(付記18)
前記異常判定部は、前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記14から17の内の1項記載の状態判定システム。
(付記19)
前記異常判定部の判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する異常マップ作成部を有する、付記12から18の内の1項記載の状態判定システム。
(付記20)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記12から19の内の1項記載の状態判定システム。
(付記21)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記20記載の状態判定システム。
(付記22)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記12から21の内の1項記載の状態判定システム。
(付記23)
構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出し、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、状態判定方法。
(付記24)
前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、付記23記載の状態判定方法。
(付記25)
前記2次元空間分布から前記2次元空間分布の2次元微分空間分布を算出し、
前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23または24記載の状態判定方法。
(付記26)
前記2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23から25の内の1項記載の状態判定方法。
(付記27)
前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記25または26記載の状態判定方法。
(付記28)
前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記23から27の内の1項記載の状態判定方法。
(付記29)
前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、付記25から28の内の1項記載の状態判定方法。
(付記30)
前記判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する、付記23から29の内の1項記載の状態判定方法。
(付記31)
前記欠陥の種類は、ひび割れ、剥離、内部空洞を含む、付記23から30の内の1項記載の状態判定方法。
(付記32)
前記予め備えられた変位の空間分布と前記予め備えられた微分変位の微分空間分布は、前記ひび割れ、前記剥離、前記内部空洞の情報に基づく、付記31記載の状態判定方法。
(付記33)
前記2次元空間分布は、前記変位のX−Y平面におけるX方向の変位の分布、前記変位のX−Y平面におけるY方向の変位の分布を含む、付記23から32の内の1項記載の状態判定方法。
この出願は、2015年3月20日に出願された日本出願特願2015−057047を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本発明は、トンネルや橋梁などの構造物に発生するひび割れや剥離や内部空洞などの欠陥を、遠隔から観察して検出する装置やシステムへの利用が可能である。
1、100 状態判定装置
2 変位算出部
3 補正量算出部
4 変位補正部
5 微分変位算出部
6 異常判定部
7 2次元空間分布情報解析部
8 時間変化情報解析部
9 異常マップ作成部
10 状態判定システム
11 撮像部
12 構造物
13 欠陥
2 変位算出部
3 補正量算出部
4 変位補正部
5 微分変位算出部
6 異常判定部
7 2次元空間分布情報解析部
8 時間変化情報解析部
9 異常マップ作成部
10 状態判定システム
11 撮像部
12 構造物
13 欠陥
Claims (10)
- 構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出する変位算出手段と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出する補正量算出手段と、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出する変位補正手段と、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する異常判定手段と、を有する、状態判定装置。 - 前記補正量算出手段は、前記時系列画像から前記構造物の傾斜角度を推定し、前記傾斜角度で補正した前記移動量に基づいて前記補正量を算出する、請求項1記載の状態判定装置。
- 前記構造物表面の変位の2次元空間分布から2次元微分空間分布を算出する微分変位算出手段を有し、前記異常判定手段は、前記2次元微分空間分布と、予め備えられた微分変位の微分空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、請求項1または2記載の状態判定装置。
- 前記異常判定手段は、前記構造物表面の変位の2次元空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、請求項1から3の内の1項記載の状態判定装置。
- 前記異常判定手段は、前記2次元微分空間分布の時間変化に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、請求項3または4記載の状態判定装置。
- 前記異常判定手段は、前記構造物表面の変位の変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、請求項1から5の内の1項記載の状態判定装置。
- 前記異常判定手段は、前記構造物表面の変位の微分変位量と、予め備えられた閾値との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、請求項3から6の内の1項記載の状態判定装置。
- 前記異常判定手段の判定結果に基づいて、前記欠陥の場所と種類を示す異常マップを作成する異常マップ作成手段を有する、請求項1から7の内の1項記載の状態判定装置。
- 請求項1から8の内の1項記載の状態判定装置と、
前記時系列画像を撮像し前記状態判定装置に提供する撮像手段と、を有する、状態判定システム。 - 構造物表面の荷重印加前後の時系列画像から、前記時系列画像の変位の2次元空間分布を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から、前記荷重印加による前記構造物表面の法線方向への移動量に基づく補正量を算出し、
前記時系列画像の変位の2次元空間分布から前記補正量を差し引いて、前記構造物表面の変位の2次元空間分布を抽出し、
前記構造物表面の変位の2次元空間分布と、予め備えられた変位の空間分布との比較に基づいて、前記構造物の欠陥を特定する、状態判定方法。
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2016
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