JPWO2016120905A1 - ダイカスト用アルミニウム合金およびこれを用いたアルミニウム合金ダイカスト - Google Patents

ダイカスト用アルミニウム合金およびこれを用いたアルミニウム合金ダイカスト Download PDF

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Abstract

ADC12と同等の鋳造性を有すると共に、高耐力および高延性を有するダイカスト用アルミニウム合金と、当該合金でダイカストされたアルミニウム合金ダイカストとを提供する。すなわち、本発明のダイカスト用アルミニウム合金は、Si:6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満、Mg:0.10〜0.50重量%、Fe:0.30重量%以下、Mn:0.30〜0.60重量%、Cr:0.10〜0.30重量%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなることを特徴とする。

Description

本発明は、耐力と延性とを向上させたダイカスト用アルミニウム合金および当該合金を利用したアルミニウム合金ダイカストに関する。
アルミニウム合金は、軽量であると共に、成形性や量産性に優れることから、自動車や産業機械、航空機、家庭電化製品その他各種分野において、その構成部品素材として広く使用されている。
このうち、自動車用途においては、車体の軽量化を目的に、アルミニウム合金を用いた部品が数多く採用されて来ているが、その一方で、アルミニウム合金の適用を検討する部品の増加に伴い、既存合金ではかかる部品に要求される機械的性質を満足できなくなる事態も生じている。
そこで、そのような問題を解決する技術の一つとして、例えば、下記の特許文献1には、自動車のディスクホイールなどのような大きな伸びを必要とする部品に好適な材料として、5.0ないし11.0%のケイ素、0.2ないし0.8%のマグネシウム、0.3ないし1.5%のクロム及び1.2%以下の鉄を含み、且つ高い伸び率を有する鋳造用アルミニウム合金が開示されている。
この技術によれば、不純物として鉄を含有する合金でありながら高い伸びを有する鋳造用アルミニウム合金を提供することができる。
特開昭52−126609号公報
しかしながら、上記の先行技術では、さらに高い伸びや高耐力が必要な部品、例えばエンジンマウントなどへの適用が可能であるか定かではないし、エンジンマウントなどのような細かな部品の量産が可能なダイカスト適性を有しているとは言い難い。
それゆえに、この発明の主たる課題は、日本工業規格JIS H5302にて規定されたAl−Si−Cu系ダイカスト用合金のADC12(以下、単に「ADC12」と称する。)と同等の鋳造性を有すると共に、高耐力および高延性を有するダイカスト用アルミニウム合金と、当該合金でダイカストされたアルミニウム合金ダイカストとを提供することである。
本発明における第1の発明は、「Si:6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満、Mg:0.10〜0.50重量%、Fe:0.30重量%以下、Mn:0.30〜0.60重量%、Cr:0.10〜0.30重量%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる」ことを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金である。
この発明では、主にSiを6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満含有させてダイカスト時の流動性を維持しつつ伸びの低下を最小限に留め、又、合金の伸びに著しい影響を及ぼすFeの含有割合を0.30重量%以下に抑えると共に、ダイカスト時の耐焼付き性と合金の伸びを向上させる効果が有るMnを0.30〜0.60重量%含有させるようにしているので、ADC12並のダイカスト適性を有すると共に、ADC12に匹敵する耐力とADC12に比べて極めて高い伸びを持った合金を得ることができるようになる。
以上のように、本発明では、5種類の元素成分を所定の割合で含有させるだけで、ダイカスト鋳造性に加え、機械的特性とりわけ伸び(延性)と耐力とに優れたダイカスト用アルミニウム合金のインゴットを安全且つ簡便に製造することができる。
なお、本発明のダイカスト用アルミニウム合金では、Na,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種を30〜200ppm添加することや、Sbを0.05〜0.20重量%添加するのが好ましい。こうすることにより、共晶Siの粒子を細かくすることができ、アルミニウム合金の靱性や強度をより一層向上させることができる。
また、Tiを0.05〜0.30重量%添加することや、Bを1〜50ppm添加することも好ましい。こうすることにより、特にSi量が少ない場合や冷却速度の遅い鋳造方法を用いる場合であってもアルミニウム合金の結晶粒を微細化させることができ、その結果、当該アルミニウム合金の伸びを向上させることができる。
本発明における第2の発明は、上記第1の発明に記載のダイカスト用アルミニウム合金でダイカストされたことを特徴とするアルミニウム合金ダイカストである。
本発明のダイカスト用アルミニウム合金でダイカストされたアルミニウム合金ダイカストは、鋳造性よく量産できると共に、耐力や伸びに優れているため、例えば自動車用構造部品、とりわけエンジンマウントのような部品に最適である。
本発明によれば、ADC12と同等の鋳造性を有すると共に、高耐力および高延性を有するダイカスト用アルミニウム合金と、当該合金でダイカストされたアルミニウム合金ダイカストとを提供することができる。
本発明の実施例及び比較例のダイカスト用アルミニウム合金におけるMn量と合金の機械的特性との関係を示すグラフで、Fig.1(a)はMn量と合金の伸びとの関係を表し、Fig.1(b)はMn量と合金の0.2%耐力との関係を表すものである。
以下、本発明の実施の形態について具体例を示しながら詳述する。
本発明のダイカスト用アルミニウム合金(以下、単に「アルミニウム合金」とも云う。)は、主として6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満のSi(シリコン;ケイ素),0.10〜0.50重量%のMg(マグネシウム),0.30重量%以下のFe(鉄),0.30〜0.60重量%のMn(マンガン) ,0.10〜0.30重量%のCr(クロム)を含有し、残部がAl(アルミニウム)と不可避不純物とで構成されている。以下、各元素の特性について説明する。
Si(シリコン;ケイ素)は、アルミニウム合金溶融時における流動性の向上や液相線温度の低下などに寄与して鋳造性を向上させる重要な元素である。
アルミニウム合金全体の重量に対するSiの含有割合は、上述したように6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満の範囲であることが好ましい。Siの含有割合が6.00重量%以下の場合には、アルミニウム合金の溶融温度および鋳造温度が高くなると共に、アルミニウム合金を溶融した際の流動性が低下するためダイカスト時に十分な湯流れ性が確保できず、逆に、Siの含有割合が6.50重量%より多い場合にも、ダイカスト時の湯流れ性は十分に確保できるものの、得られる合金の伸びが低下するようになるからである。
Mg(マグネシウム)は、主としてアルミニウム合金中のAl母材に固溶した状態又はMgSiとして存在し、アルミニウム合金に0.2%耐力および引張強さを付与する一方で、過大量の含有により鋳造性と合金の伸びとに悪影響を及ぼす成分である。
アルミニウム合金全体の重量に対するMgの含有割合は、上述したように0.10〜0.50重量%以下の範囲であることが好ましい。かかる範囲内でのMgの存在は、鋳造性や合金の伸びに大きな影響を与えることなく、アルミニウム合金の耐力や引張強さと言った機械的特性を向上させることができる。なお、Mgの配合割合が0.50重量%より多い場合には、合金の伸びが低下し、かかる合金を用いて製造したアルミニウム合金ダイカストは品質が劣ったものとなる。
Fe(鉄)は、ダイカスト時の焼付き防止効果を有することが知られている。しかしながら、このFeは、Al−Si−Feからなる針状晶を晶出し、アルミニウム合金の伸びを著しく低下させると共に、大量に添加すると適温での溶解を困難にする。
アルミニウム合金全体の重量に対するFeの含有割合は、上述したように0.30重量%以下であることが好ましい。Feの含有割合が0.30重量%より多い場合には、上記焼付き防止効果は十分なものになるが、当該合金の伸びが顕著に低下するようになるからである。
Mn(マンガン)は、主として鋳造時におけるアルミニウム合金と金型との焼付きを防止するためのものである。
アルミニウム合金全体の重量に対するMnの配合割合は、上述したように0.30〜0.60重量%、より好ましくは0.40〜0.60重量%の範囲であることが好ましい。Mnの配合割合が0.30重量%未満の場合には、アルミニウム合金をダイカストする際にアルミニウム合金と金型との間で焼付きが生じるようになり、逆に、Mnの配合割合が0.60重量%より多い場合には、ダイカスト時に焼付きの問題は生じないものの、合金の伸びが低下するようになるからである。
なお、本発明のアルミニウム合金では、上述のようにMnの配合割合を合金全体の重量に対して最大で0.6重量%まで許容しているので、アルミ缶回収材料などMn含有量が高いAl−Mn系スクラップを合金原料の一部として使用することができる。
Cr(クロム)は、主としてアルミニウム合金が溶融している時には溶融状態で、また、固体の時にはAl相に固溶した状態あるいはAl−Si−Cr相やAl−Si−Cr−Fe相として晶出した状態で存在し、ダイカスト時におけるアルミニウム合金と金型との焼付きを防止するためのものである。
アルミニウム合金全体の重量に対するCrの配合割合は、上述したように0.10〜0.30重量%の範囲であることが好ましい。Crの配合割合が0.10重量%未満の場合には、アルミニウム合金をダイカストする際にアルミニウム合金と金型との間で焼付きが生じるようになり、逆に、Crの配合割合が0.30重量%より多い場合には、ダイカスト時の焼付きは解消するものの、アルミニウム合金の伸びが急激に低下するようになるからである。
以上の含有割合に従って、Si,Mg,Fe,Mn及びCrの含有割合を調整すると、ADC12と同等の鋳造性を有すると共に、高耐力および高延性を有するダイカスト用アルミニウム合金地金を得ることができる。
ここで、鋳放し状態の上記ダイカスト用アルミニウム合金において、その伸び(破断伸度)は11%以上であるのが好ましく、同時に0.2%耐力は125MPa以上であるのが好ましい。かかる機械的性質を持ったダイカスト用アルミニウム合金であれば、自動車用エンジンマウントのダイカスト材料として特に好適となるからである。
なお、上述した各元素成分のほかに、Na(ナトリウム),Sr(ストロンチウム),Ca(カルシウム)およびSb(アンチモン)から選ばれる少なくとも1種を改良処理材として添加するようにしてもよい。このような改良処理材を添加することによって共晶Siの粒子を細かくすることができ、アルミニウム合金の靱性や強度をより一層向上させることができる。
ここで、アルミニウム合金全体の重量に対する改良処理材の添加割合は、当該改良処理材がNa,SrおよびCaの場合には30〜200ppm、Sbの場合には0.05〜0.20重量%の範囲であることが好ましい。改良処理材の添加割合が30ppm(Sbの場合には0.05重量%)未満の場合には、アルミニウム合金中の共晶Siの粒子を微細化するのが困難となり、逆に、改良処理材の添加割合が200ppm(Sbの場合には0.20重量%)より多い場合には、アルミニウム合金中の共晶Siの粒子は十分に微細化されており、これ以上添加量を増やしても添加効果が上がらなくなるからである。
また、上記改良処理材に代えて、或いは改良処理材と共に、Ti(チタン)およびB(硼素)の少なくとも一方を添加するようにしてもよい。このようにTiおよびBの少なくとも一方を添加することによってアルミニウム合金の結晶粒が微細化され、当該合金の伸びを向上させることができる。なお、かかる効果は、特にSi量が少ない場合や冷却速度の遅い鋳造方法を用いる場合に顕著となる。
アルミニウム合金全体の重量に対するTiおよびBの添加割合は、Tiの場合には0.05〜0.30重量%、Bの場合には1〜50ppmの範囲であることが好ましい。Tiの添加割合が0.05重量%未満或いはBの添加割合が1ppm未満の場合には、アルミニウム合金中の結晶粒を微細化するのが困難となり、逆に、Tiの添加割合が0.30重量%より多い場合或いはBの添加割合が50ppmより多い場合には、アルミニウム合金中の結晶粒は十分に微細化されており、これ以上添加量を増やしても添加効果が上がらなくなるからである。
本発明のダイカスト用アルミニウム合金を製造する際には、まず、Al,Si,Mg,Fe,Mn及びCrの各元素成分が上述した所定の割合となるように含有させた原料を準備する。続いて、この原料を前炉付溶解炉や密閉溶解炉などの溶解炉に投入し、これらを溶解させる。溶解させた原料すなわちアルミニウム合金の溶湯は、必要に応じて脱水素処理および脱介在物処理などの精製処理が施される。そして、精製された溶湯を所定の鋳型などに流し込み、固化させることによって、アルミニウム合金の溶湯を合金地金インゴットなどに成形する。
また、本発明のダイカスト用アルミニウム合金を用いてアルミニウム合金ダイカストを鋳造した後、必要に応じて溶体化処理及び時効処理などが施される。このようにアルミニウム合金ダイカストに溶体化処理および時効処理などを施すことによってアルミニウム合金ダイカストの機械的特性を改良することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、所定の実施例および比較例における各機械的特性(引張強さ,伸び,0.2%耐力)は、次の方法で測定した。すなわち、型締力135トンの通常のダイカストマシン(東芝機械(株)社製・DC135EL)を用いて、射出速度1.0m/秒、鋳造圧力60MPaでダイカスト鋳造し、ASTM(American Society for Testing and Material)規格に準拠した丸棒試験片を作製した。そして、鋳放しの状態のかかる丸棒試験片について、(株)島津製作所社製の万能試験機(AG−IS 100kN)を用いて、引張強さ,伸び(破断伸度),0.2%耐力を測定した。
また、ダイカスト鋳造した丸棒試験片の成分分析には、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の固体発光分光分析装置(Thermo Scientific(登録商標) ARL 4460)を使用した。
さらに、各合金の鋳造性評価として、上記ダイカスト鋳造時における溶湯の流動性及び金型への焼き付きの有無(耐焼付き性)を目視により観察し、○(良)、△(可)、×(不可)の3段階で評価した。
表1は、本発明の対象となるアルミニウム合金の実施例1及び2と比較例1乃至3の元素組成、機械的特性及びダイカスト適性を示したものである。なお、比較例1はダイカスト用アルミニウム合金として広く使用されているADC12に相当するものである。
表1より、本発明合金である実施例1及び2と、ADC12に相当する比較例1とを比較すると、両者は同等の鋳造性(すなわちダイカスト適性)を有しているにもかかわらず、実施例1及び2の合金の伸びは、ADC12に相当する比較例1に比べて著しく高いことが窺える。
また、Mnの含有割合のみが異なる実施例1及び2と比較例2及び3とを比較すると、図1及び表1に示すように、Mn量0.3重量%を境として、Mnをそれ以上含有する実施例1及び2では、ダイカスト時の焼付きを効果的に防止することができると共に、合金の伸びや0.2%耐力が向上することが分かる。

Claims (6)

  1. Si:6.00重量%より多く且つ6.50重量%未満、Mg:0.10〜0.50重量%、Fe:0.30重量%以下、Mn:0.30〜0.60重量%、Cr:0.10〜0.30重量%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなることを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金。
  2. Na,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種を30〜200ppm添加したことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  3. Sbを0.05〜0.20重量%添加したことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  4. Tiを0.05〜0.30重量%添加したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  5. Bを1〜50ppm添加したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のダイカスト用アルミニウム合金でダイカストされたことを特徴とするアルミニウム合金ダイカスト。
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