JPWO2016092872A1 - 制御装置、そのプログラム、プラント制御方法 - Google Patents

制御装置、そのプログラム、プラント制御方法 Download PDF

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Abstract

差分器(23)によって、現在の制御量y0と目標値rとの差である目標偏差現在値e0が求められる。終端応答補正部(11)は、この目標偏差現在値e0と、予め設定されているプラント応答モデルと、現在に至るまでの過去の操作変化量の時系列データ{du(t)}t)とを用いて、補正目標偏差e*を計算する。操作変化量計算部(12)は、補正目標偏差e*に基づいて、次の操作変化量duを計算する。加算器(13)によって操作変化量duが現在の操作量u0に加算されることで、次の操作量u(修正操作量us)が生成される。

Description

本発明は、プラント等の制御装置に関する。
温調制御装置や、PLC(Programmable Logic Controller)、DCS(Distributed Control System)等の制御装置や、パーソナルコンピューターや組込み制御機器上で実装された制御装置等が、産業上広く利用されている。
また、従来公知の制御工学において、制御対象の目標値追従を目的とする制御方式である、PID制御、モデル予測制御、内部モデル制御、LQG制御、H2制御、H∞制御、等の制御方式が、公知である(例えば、非特許文献1)。
また、オーバーシュートの抑制を目的とした制御方式として、以下に列挙する各方法が公知である。
・一般化予測制御(GPC)の考えに基づいて、PID制御パラメータを決定する方法(特許文献1);
・ピークが生じる時刻に応じて、目標値を整形する方法(特許文献2);
・2次遅れ伝達関数で表現されるプラントに対して、開ループをマッチングさせるようにPID制御パラメータを決定する方法(特許文献3);
また、制御対象の状態空間モデルや将来の時間応答モデルを用いて、最適化計算を逐次行うことで、望ましい応答を得るモデル予測制御が、公知である(例えば、非特許文献2)。
特開2003−195905号公報 特開2005−276169号公報 特開2007−188322号公報 「制御系設計」朝倉書店(1994) 「モデル予測制御」、東京電機大学出版局、2005 「プロセス制御工学」、朝倉書店、2002
産業プラントの制御においては、プラントの安定操業や機械動作の安全確保は重要であり、一方、目標値への迅速な追従は、プラントの運転効率を高めたり、機械動作の応答性を改善したりするためには不可欠な要求である。
しかしながら、一般に、追従性能を高めようとするとオーバーシュートを生じやすい。
オーバーシュートは時として、
・液面制御における液体のオーバーフロー;
・ボイラーの失火;
・ロボットハンドやステージの衝突;
・加熱温度超過による材料変性;
などというように、何としても避けなければならない問題(操業上の問題、安全上の問題あるいは品質上の問題など)を、生じさせることがある。
このため、安全マージンを取りたいがために制御性能を犠牲にして保守的な設定としたり、あるいは制御性能を優先するためにある程度のオーバーシュートを許容せざるを得ない等の状況が、産業プラントにおいて頻繁に起こり得る。
従来公知の制御工学においては、目標値追従性能、外乱抑制性能、ロバスト安定性能、などを2次ノルムや無限大ノルムといった目的関数を、周波数関数で表現し、目的関数の最小化による制御系設計を行う手法が一般的である(例えば、上記非特許文献1)。
周波数関数の評価においては、平均的あるいは最悪ケースでのゲインの抑制は可能であるが、実際のオンライン制御の瞬間における目標偏差を制約条件的に扱うことはできない。そのため、原理的に、オーバーシュートを抑制することは困難である。
また、従来公知のオーバーシュート抑制方法においては、PID制御パラメータの調整もしくはピークが生じそうな場合に目標値を変更するといったように、予め設計しておいたモデルベースの手法に頼っており、実際のオンライン制御の瞬間における目標偏差や操作の影響を考慮できていない。加えて、むだ時間や逆応答や2次以上の高次のモードを含むプラントに対し、一般にはPID制御では十分な制御性能が達成できない。
また、従来公知のモデル予測制御においては、制約条件を扱うことができるため、オーバーシュート抑制を制約条件として扱えるものの、各制御ステップにおいて2次計画問題などの最適化問題を解かねばならず、比較的CPU演算能力や搭載メモリ容量が豊富な制御装置でしか実装できないという課題がある。換言すれば、簡単な構成(比較的少ないメモリとCPU資源など)では、オーバーシュート抑制を実現できないという課題がある。
以上説明したように、従来公知の制御手法においては、時々刻々変化する目標偏差の状況や操作の影響に応じて、時間領域でのオーバーシュートを明確に抑制でき、しかも簡便に実装できるようにする技術は、提供されていないといえる。
本発明の課題は、簡単な構成でオーバーシュート抑制を的確に実現できる制御装置等を提供することである。
本発明では、制御対象機器に操作量を出力し、該制御対象機器の制御量を任意の目標値へと追従させる制御装置において、たとえば下記の各構成を有する。
・前記制御量と前記目標値との差分を目標偏差現在値として求める目標偏差算出手段;
・予め保持されているプラント応答モデルと、前記目標偏差現在値と、前記操作量の変化量とに基づいて、補正目標偏差を算出する補正目標偏差算出手段;
・該補正目標偏差に基づいて、新たな前記操作量を決定する操作量算出手段。
本例の制御装置の構成図である。 終端応答補正部の動作について説明するための図である。 終端応答補正部の動作について説明するための図(その1)である。 終端応答補正部の動作について説明するための図(その2)である。 終端応答補正部の動作について説明するための図(その3)である。 終端応答補正部の動作の具体例について説明するための図である。 操作変化量計算部が予め保持するデータの具体例を示す図(その1)である。 プラント応答モデルの具体例を示す図である。 操作変化量計算部が予め保持するデータの具体例を示す図(その2)である。 (a)〜(d)は、本手法の場合のシミュレーション結果を示す図である。 (a)〜(c)は、従来技術の場合のシミュレーション結果を示す図である。 本例の制御装置の動作を伝達関数を用いて説明する図(その1)である。 本例の制御装置の動作を伝達関数を用いて説明する図(その2)である。 比較のため、従来公知の内部モデル制御を説明するための図である。 制御装置の処理フローチャート図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の制御装置の構成図である。
制御装置1は、図示の制御対象プラント2を制御する装置である。
制御対象プラント2は、制御対象となる任意の機器/装置等の一例である。
制御装置1は、任意の目標値rに基づいて、この制御対象プラント2に対して任意の操作量uを出力し、これに応じた制御対象プラント2の状態等を示すデータである制御量yを計測し、当該計測した制御量y等に基づいて、次の操作量uを決定する。尚、制御量yは、例えば一例としては制御対象プラント2の温度であり、この例では目標値rは設定温度等となるが、この例に限らない。また、制御量yは、不図示のセンサ等の計測器で測定されるものであり、上記一例の場合は温度計よって計測される。
制御装置1は、最終的には上記制御量yが上記目標値rとなるように制御する。制御装置1は、制御量yを目標値rに追従させるために、操作量uの値を決定して制御対象プラント2へ入力させる。
制御装置1は、操作量更新部10と、タイマー21、計測部22、差分器23等を有する。
タイマー21は、所定の周期Tcを生成し、当該一定周期Tc毎に操作量更新部10と計測部22を動作させる。
計測部22は、この周期Tc毎に、上記御対象プラント2に係わる現在の操作量uと現在の制御量yとを計測する。そして、当該計測した現在の制御量yを図示の制御量yとして差分器23へ出力すると共に、当該計測した現在の操作量uを図示の操作量u0として操作量更新部10へ出力する。
上記差分器23には任意の目標値r(ユーザによる設定値等)も入力しており、制御量yと目標値rとの差である目標偏差現在値eを、以下のように計算する。
= r − y
そして、生成した目標偏差現在値eを、操作量更新部10へ入力する。
尚、この様な目標偏差現在値eを生成する構成自体は、既存の構成である。
操作量更新部10は、終端応答補正部11、操作変化量計算部12、加算器13を有する。上記目標偏差現在値eは、終端応答補正部11に入力される。また、上記操作量u0は加算器13の一方の入力となる。
終端応答補正部11は、入力された目標偏差現在値eと、予め設定されているプラント応答モデルと、“現在および過去の操作変化量{du(t)}t”(現在に至るまでの過去の操作変化量の時系列データ{du(t)}t)とを用いて、補正目標偏差e*を計算する。補正目標偏差e*は、操作変化量計算部12に入力する。
操作変化量計算部12は、入力された補正目標偏差e*に基づいて、次の操作変化量duを計算する。そして、次の操作変化量duを上記加算器13の他方の入力とする。これによって、加算器13において上記操作変化量duを現在の操作量u0に加算することで、次の操作量u(修正操作量us)が生成される。そして、この修正操作量us(次の操作量u)が、制御対象プラント2に入力される。
尚、操作変化量計算部12と加算器13とによって、補正目標偏差e*に基づいて新たな前記操作量を決定する操作量算出部(不図示)を構成するものと見做してもよい。
ここで、終端応答補正部11は、図示のように、操作変化量計算部12が生成・出力する操作変化量duを入力しており、且つ、この操作変化量duを時系列データとして蓄積しており、これが上記“現在および過去の操作変化量{du(t)}t”である。
尚、差分器23と操作量更新部10とを一体として前記操作量を決定する操作量算出部を構成するものと見做してもよい。
また、終端応答補正部11には、予めプラント応答モデルが保持されている。このプラント応答モデルの具体例が、後述する図5に示すデータ(関数S(t))である。
ここで、本手法では、予め、制御対象プラント2のステップ応答(単位ステップ入力に対する応答)を実測しており、この実測データを図5に示す関数S(t)として予め記憶しておく。また、このステップ応答が収束するときの収束値を、図5に示す終端ゲインS(∞)とする。この関数S(t)や終端ゲインS(∞)は補正目標偏差e*算出の際に利用される。詳しくは後述する。尚、ステップ応答は、単位ステップ入力に限らず、インパルス入力やランプ入力など他の形状の操作入力に対する応答から、適切な変換によって求めたものでも構わない。
終端応答補正部11は、上記予め記憶されているプラント応答モデル、上記“現在および過去の操作変化量{du(t)}t”、目標偏差現在値e等に基づいて、過去の操作による終端応答(すなわち十分未来における目標偏差の残差)を、上記補正目標偏差e*として算出する。あるいは、補正目標偏差e*は、現在に至るまでの過去の操作量u(その変化量du)に応じた制御量yの収束値の予測値と、目標値rとの差であると定義してもよい。
終端応答補正部11は、例えば不図示の操作変化量記憶部、補正目標偏差算出部等の処理機能を有するものと見做してもよい。そして、この例の場合、例えば、上記不図示の操作変化量記憶部は、操作変化量duを蓄積して時系列データとするものである。また、上記不図示の補正目標偏差算出部は、例えば、予め登録されているプラント応答モデルと、上記目標偏差現在値eと、上記操作変化量の時系列データ“{du(t)}t”とに基づいて、補正目標偏差e*を算出する。
尚、上記操作変化量の時系列データ“{du(t)}t”の代わりに、後述する補正目標偏差計算の過程における中間の計算値を蓄積する記憶部(図3に示す中間計算値記憶部)を設けることで、上記操作変化量の時系列データ“{du(t)}t”そのものを蓄積することの代用としても構わない。
上記補正目標偏差e*の算出処理の具体例は後述するが、上記補正目標偏差e*について、図2を参照して説明する。
ここで、制御装置1は、例えば不図示のCPU/MPU等の演算プロセッサと、メモリ等の記憶装置等を有している。更に、制御対象プラント2に操作量uを入力させたり、制御量yを取得するための不図示の入出力インタフェース等も有している。
上記不図示の記憶装置には、予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されている。上記演算プロセッサが、このアプリケーションプログラムを実行することにより、例えば上記操作量更新部10の各種処理機能(終端応答補正部11、操作変化量計算部12等)が実現される。更に、計測部22や差分器23の動作も、ソフトウェアによって実現されてもよいが、この例に限らず、専用の回路等を用いても構わない。
図2は、終端応答補正部11の動作について説明するための図である。
図2の終端応答補正部11内において、図上の上側と下側にそれぞれ具体例を示す。下側には、操作変化量duとこれに応じた上記操作量uの時系列データの具体例を示す。
また、図2においては、図示の時間tが現在であり、この時間tよりも図上左側が過去であり、図上右側が未来である。これより、図示の例では、現在及び未来の操作変化量duは全て‘0’である(操作量uは変化しない)ものとしている。一方、過去には図示のように操作変化量duが‘0’ではなく以って操作量uが変化しているときもあったものとしている。そして、この様な過去の操作変化量{du(t)}t(操作量uの変化)に応じた制御量yの一例を、図上の上側に示している。尚、図では、過去の操作変化量{du(t)}tは、例えば図示のdu(t−Tc)、du(t−2Tc)、du(t−3Tc)等である。
この例では、まず、現在の制御量yは図示のyである。ここで、上記過去の操作変化量{du(t)}tによって制御量yが図示のように変化し続けて、最終的には図示の“y+y”へと収束するものと予測される。この制御量yの変化は、上記過去の操作変化量{du(t)}tによって生じるものである(上記の通り、現在及び未来の操作変化量{du(t)}tは全て‘0’であるので)。また、上記yは、この様な変化中の制御量yの現在値を意味することになる。そして、現在から更に図示のyの分だけ変化することで、最終的に“y+y”へと収束することになる。尚、このyを「終端応答補正値」と呼ぶものとする。
上記のように、操作量uの変化が直ちに制御量yに反映されるわけではなく、タイムラグが存在する。そして、上記の通り制御量yの現在値は図示のyであるので、目標値rとの差は図示の目標偏差現在値eとなる。尚、上記の通り、加算器13によって、この目標偏差現在値eが求められることになる。
そして、現状のままでは(制御量yの変化無しとした場合には)上記“y+y”へと収束するものと予測され、目標値rには達しないことになる。図示のように、目標値rと収束値“y+y”との差分が、上記補正目標偏差e*となる。つまり、補正目標偏差e*の意味するところは、現在に至るまでの過去の操作量変化により最終的に到達する制御量yの予測値“y+y”が、なおも目標値rとの間に有するギャップ(差分)である。従って、このギャップを埋めるように、更に操作量uを変化させればよいことになる。尚、上記予測値“y+y”は、現在に至るまでの過去の操作量変化に応じた制御量yの収束値の予測値と言うこともできる。
ここで、従来では一例としては、上記目標偏差現在値eに基づいて次の操作量u(操作変化量du)を決定していた。つまり、今現在のギャップ量(目標偏差現在値e)に応じた操作変化量duを求めていた。しかしながら、上記のように、今現在は未だ変化中の状態であり、最終的には上記“y+y”となるので、この値eではギャップ量として大き過ぎることになる。これが、上記オーバーシュートが生じる原因となっている。これに対して、本手法では、上記補正目標偏差e*を用いることで、オーバーシュートを抑制することができる。さらに、上記補正目標偏差e*を用いることで、制御量yの目標値rへの収束を保証することができる。
尚、操作変化量計算部12自体は、既存の構成であっても構わない。相違点は、従来では上記目標偏差現在値eに基づいて操作変化量duを決定していたが、本手法では補正目標偏差e*に基づいて操作変化量duを決定する点である。
補正目標偏差e*を求めることは、過去の操作変化の制御量yへの影響をプラントモデルにより予測することで、最終的に目標値rへ到達するまでのギャップ量を求めることを意味する。そして、上記操作変化量計算部12の動作は、このギャップ量e*に応じて追加すべき操作変化量を決定することを意味する。
従来のPID制御やモデル予測制御には、上記のような予測機能(補正目標偏差e*を求める機能)は無い。換言すれば、従来では、上記のような終端応答を補正した目標偏差を計算する機能はない。
本手法では、補正目標偏差を予測によって求め、操作変化量duは補正目標偏差に対する簡易な計算とする構成をとることで、従来のモデル予測制御のような高度な最適化計算を必要とせず、簡易に実装することもできる。
以下、図3、図4、図5、図6を参照して、終端応答補正部11の動作の一例について説明する。
まず、図3に示すように、当該一例の場合、上記図2に示す終端応答補正値yを求める。これによって、上記補正目標偏差e*は、上記目標偏差現在値eと終端応答補正値yとの差分によって求められることになる(e*=e−y)。
そして、終端応答補正値yは、終端応答予測ynAと、自由応答予測ynBとに基づいて、求められる。すなわち、y=ynA−ynB(ynAとynBとの差分)によって求められる。
終端応答予測ynA(t)は、過去の操作変化量duによる制御量yの十分未来における予測値である。
自由応答予測ynB(t)は、過去の操作変化量duによる制御量yの予測値である。これは、現在時刻をtとして、
ynB(t-Δt)、ynB(t)、ynB(t+Δt)、ynB(t+2Δt)、…、ynB(T)
というように、時系列として予測している。これらの中で、現在の自由応答予測は時刻tにおけるynB(t)である。尚、上記Δtは、例えば上記Tcであるが、この例に限らない。ここで、Tは、時刻tからt+Δt、t+2Δtと未来へ時刻を進んで行った先の予測区間あるいは予測ホライゾン(例えば、非特許文献2参照)の終端時刻を表している。したがって、Tは一定の値ではなく、現在時刻tと連動して、徐々に未来にスライドする値であると言うことができる。
上記終端応答予測ynAと自由応答予測ynBは、新たな操作変化量du(t)が加わるたびに更新される。
上記終端応答予測ynA(t)と上記自由応答予測ynB(t)との差を、終端応答補正値y(t)として計算する。つまり、y(t)=ynA(t)−ynB(t)である。
ここで、図4には、終端応答予測値ynA(t)、自由応答予測値ynB(t)の具体例も示している。尚、図4は、図2をベースにして、更にynA(t)、ynB(t)を示しているものである。また、以下の説明では、現在の制御量yは図示のyとなっているものとする。
図示のように、制御量yの現在値であるy自体が、過去の操作量u(操作変化量du)による影響を受けた結果であり、図示の例では過去のある時点の制御量yから変化して現在はyとなっている。そして、このまま操作量uが変わらなければ、未来において制御量yは図示のように変化し続けて、“y(t)+y”に収束することが予測されることとなる。尚、ここでは、現在は図示の時刻tであるものとする。
そして、図示のように、上記終端応答予測値ynA(t)は、収束値“y(t)+y”と上記yとの差分である。つまり、制御量yは、図示の操作量uによって、yから現在値yを経て最終的には“y(t)+y”に収束する。上記終端応答予測値ynA(t)は、この変化量(“y(t)+y”−y)に相当すると見做して構わない。
また、現在は、上記制御量yの変化の途中であり、その値は図示のyとなっている。上記yから現在値までの変化量(y−y)が、上記自由応答予測値ynB(t)に相当すると見做してよい。
そして、これより、図示のように、終端応答予測値ynA(t)と自由応答予測値ynB(t)との差分が、上記y(t)となる。
そして、上記のように終端応答補正値y(t)を求めたら、以下のように、目標偏差現在値e(t)と終端応答補正値y(t)との差分を求めることで、補正目標偏差e*(t)を算出する。
e*(t) = e(t) −y(t)
尚、多入出力系においては、従来のモデル予測制御技術と同様、制御量y、目標値r、目標偏差e、操作変化量duおよび操作量u、など関連する信号をベクトルとみなして、上述した本例の計算方法と同様にして補正目標偏差e*(t)を算出できることは言うまでもない。その際、補正目標偏差e*から操作変化量duへの計算を、定数ゲイン行列の乗算としてもよい。
また、制御系に影響を与える外乱信号が観測できる場合、外乱モデルを加えて、補正目標偏差e*に、さらに、観測した外乱信号による影響を補正する構成としてもよい。
以上、図3について説明した。
以下、図5、図6を参照して、上記終端応答予測ynAと自由応答予測ynBの算出方法の具体例について説明する。
これらynA、ynBの算出には、上述したように、予め作成されて記憶されているプラント応答モデルを用いる。
図5に、プラント応答モデルの具体例を示す。
図5に示す関数S(t)が、プラント応答モデルの具体例である。
この関数S(t)は、プラントのステップ応答(単位ステップ入力に対する応答;インディシャル応答と呼ばれる場合もある)である。関数S(t)は、予め制御対象プラント2を用いて実測値を測定することなどで、得ることができる。すなわち、制御対象プラント2に対して単位ステップ入力を行って、制御対象プラント2の出力(制御量y)を測定する。この制御対象プラント2の出力データ(制御量yの時系列データ;時間的な変化を示すもの)が、図5に示す関数S(t)である。
ここで、ステップ応答が収束するときの収束値を、終端ゲインS(∞)とする。例えば、上記実測値(時系列データ)の最後の値が、上記終端ゲインS(∞)として用いられる。
終端応答補正部11は、例えば、上記関数S(t)、終端ゲインS(∞)を用いた図6に示す上記終端応答予測ynA(t)と自由応答予測ynB(t)の算出式によって、これらの予測値ynA(t)、ynB(t)を算出する。
ここでは、制御周期をTc、モデル区間(処理に用いる一定期間;すなわち現在から過去の一定期間)における操作変化量duのデータ数をAとする。尚、上記Tcは、操作変化量duのデータのサンプリング周期であるという一面もあると見做しても構わない。また、目標偏差現在値をe(t)、現在に至るまでの過去の所定期間の操作変化量の時系列データを{du(t)}tとする。
終端応答予測値ynA(t)は、過去の操作に応じた終端応答(制御量yの収束値の予測値;十分未来の制御量yの予測値))であり、上記終端ゲインS(∞)等を用いて下記の(1)式により計算する。(k=0.1.2.・・・)
Figure 2016092872
自由応答予測値ynB(t)は、過去の操作量u(操作変化量du)に応じた制御量yの変動量の推定値であり、特に過去から現在までの変動量の推定値であり、上記関数S(t)等を用いて下記の(2)式により計算する。
Figure 2016092872
尚、上記(1)式、(2)式における“du(t−kTc)”の具体例を、図2の下側に示している。これは、上記過去の操作変化量{du(t)}tの具体例と見做してもよい。また、この例では、例えば、A=3となっている。
終端応答補正値y(t)は、上記算出した終端応答予測値ynA(t)と自由応答予測値ynB(t)とを用いて、下記の(3)式により算出する。
Figure 2016092872
補正目標偏差e*(t)は、上記目標偏差現在値e(t)と、上記算出した終端応答補正値y(t)を用いて、下記の(4)式により算出する。
Figure 2016092872
以上の処理により、終端応答補正部11によって、補正目標偏差e*(t)を得る。
但し、以上説明した処理は、補正目標偏差e*(t)を得る為の処理の一例であり、この例に限らない。例えば、前述のように、上記操作変化量の時系列データ“{du(t)}t”の代わりに、補正目標偏差計算の過程における中間の計算値を、図3の中間計算値記憶部に記憶するようにしてもよい。以下、この様な変形例について説明する。尚、それ故、上記一例の場合には、図3の中間計算値記憶部は必要ないものである。
上記一例の場合、終端応答予測値、自由応答予測値を、随時、図6に示す終端応答予測値ynA(t)の算出式と自由応答予測値ynB(t)の算出式を用いて算出していたが、変形例の場合には下記の方法を用いる。
すなわち、変形例の場合、操作変化量の時系列データではなく、現在時刻tより前に計算された終端応答予測値ynA(t)および自由応答予測値ynB(t)の計算結果と、そのときの(現在の)操作変化量を用いて算出を行うようにする。
具体的には、終端応答予測値ynA(t)は、過去の操作変化量duによる制御量yの十分未来における予測値であるので、上記一例では図6に示すように上記(1)式により計算されるが、時刻tより制御周期Tc経過後の次の時刻t+Tcにおいては、時刻t+Tcにおける操作変化量du(t+Tc)と、時刻tにおける終端応答予測値ynA(t)を用いて、
Figure 2016092872
と計算し、この算出結果を、終端応答予測値ynA(t+ Tc)としてもよい。尚、更に、この終端応答予測値ynA(t+ Tc)を上記図3の中間計算値記憶部に記憶して、その後、記憶された終端応答予測値ynA(t+ Tc)を用いて終端応答予測値ynA(t+ 2Tc)を算出するようにしてもよい。これは、自由応答予測値についても同様である。
同様に、上記一例の場合、自由応答予測値ynB(t)は、過去の操作変化量duによる制御量yを、現在時刻をtとして、
ynB(t-Δt)、ynB(t)、ynB(t+Δt)、ynB(t+2Δt)、…、ynB(T)
というように、時系列として予測している。これに対して、変形例では、時刻tから制御周期Tc経過後の次の時刻t+Tcにおいては、時刻t+Tcにおける操作変化量du(t+Tc)と、前記時刻tにおける自由応答予測値
ynB(t-Δt|t)、ynB(t|t)、ynB(t+Δt|t)、ynB(t+2Δt|t)、…、ynB(T|t)
を用いて(ただし、記号|tは時刻tにおける予測であることを示す)、
Figure 2016092872
上記(5)式(m=1,2,….)のように計算し、この計算結果からm=1として、自由応答予測値ynB(t+Tc)を得てもよい。
ここで、ynB(t+mTc|t+Tc)(m=1,2,…)は時刻t+Tcにおける自由応答予測値、
nB(t+mTc|t)(m=1,2,…)は時刻tにおける自由応答予測値であるが、
Figure 2016092872
上記(6)式(m=1,2,….)のようにも計算できる。
一方、上記中間計算値記憶部に記憶された中間の計算値と、(現在の)操作変化量とを用いて、終端応答予測値ynA(t)および自由応答予測値ynB(t)を計算する上記(5)式の計算方法では、毎回多数の積和演算を行う上記(6)式の計算方法に比べて、計算量を減少させ、高速に実行することができる。
したがって、現在時刻をt+Tcとすると、1つ前の制御時刻tに計算された終端応答予測値ynA(t)および自由応答予測値ynB(t+mTc|t)(m=1,2,…)を、補正目標偏差計算の過程における中間の計算値として、図3に示す中間計算値記憶部に記憶(蓄積)するようにしておけば、上記操作変化量の時系列データ“{du(t)}t”を記憶(蓄積)せずとも、現在時刻t+Tcにおける終端応答予測値ynA(t+Tc)および自由応答予測値ynB(t+Tc)を算出することができる。
以上の処理によって終端応答予測値ynA(t)、自由応答予測値ynB(t)を算出したら、その後は、上記一例と同様、例えば図6に示す終端応答補正値の算出式や、補正目標偏差の算出式を用いて、補正目標偏差e*(t)を算出すればよい。
上記のように、操作変化量計算部12は、この補正目標偏差e*(t)を用いて、次の操作変化量du(t)を算出する。
操作変化量計算部12は、予め、この算出処理のためのデータ(あるいは式)を記憶しており、その一例を図7に示す。
図7に、操作変化量計算部12が予め保持するデータの具体例を示す。
図示のように、このデータは、補正目標偏差e*と、操作変化量duとの関係を示すものである。これは、図示の例では、一次関数(du=a・e*+b(aは傾き、bはy切片)尚、図の例ではb=0となる)で表される。よって、図示のデータを保持してもよいし、一次関数を保持してもよい。
操作変化量計算部12は、図示のデータまたは上記一次関数等を用いて、上記終端応答補正部11によって求められた補正目標偏差e*(t)に対応する操作変化量du(t)を、求める。
また、図示の例では、更に、操作変化量duの上限値du_maxおよび下限値du_minも含まれている。これより、操作変化量計算部12は、例えば上記一次関数を用いて算出した操作変化量du(t)が、上限値du_maxを越える場合には上限値du_maxを出力し、下限値du_minを下回る場合には下限値du_minを出力する。
また、図示のデータや一次関数は、例えば開発者等が予め任意に決定して操作変化量計算部12に保持させているものである。
図8に、プラント応答モデルの具体例を示す。
この例も、上記図5と同様、プラントのステップ応答(インディシャル応答)である関数S(t)を、プラント応答モデルの一例として示している。
そして、図8の例も、図5の例と同様、初期に逆応答を示し、一旦オーバーシュートした後、一定値に収束する応答(制御量y)を示している。尚、この収束値すなわち上記終端ゲインS(∞)は、図示の例では‘10’である。
また、図9に、操作変化量計算部12が予め保持するデータの具体例を示す。
この具体例も、上記図7に示す具体例と同様、補正目標偏差e*と操作変化量duとの関係を、一次関数(du=a・e*+b)の形で示している。そして、図示の具体例では、傾きa=0.085、y切片b=0となっている。更に、図7と同様、操作変化量duの上限値du_maxおよび下限値du_minも、設定されている。図示の例では、上限値du_max=5、下限値du_min=−5である。
尚、上記のように、操作変化量計算部12自体は従来と同じであってよく、従って従来でも図9に示すデータを使用しても構わない。
図10(a)、図11(a)に、図9に示すデータを用いる場合の目標値応答(目標値rと制御量yの変化)のシミュレーション結果を示す。図10(a)は本手法(例えば図1の構成)の場合、図11(a)には比較のために従来の場合について示す。尚、従来例は積分制御であり、本手法も積分制御をベースにしている。
図10(a)、図11(a)は、何れも、目標値rを図示のようにステップ状に変化させた場合の制御量yを示している。
従来では、上記終端応答補正部11は存在せず、上記補正目標偏差e*は生成されず、例えば上記目標偏差現在値e(t)を用いる。このため、図11(a)に示すように、制御量y(t)は、ステップ状の目標値r(t)への追従はできているものの、オーバーシュート量が多い。
一方、本手法の場合、図10(a)に示すように、図11(a)に示す従来技術の場合と比べて、オーバーシュート量が大幅に抑制されており、制御応答が改善できていることが分かる。これは、図10(b)に示すように、補正目標偏差e*(t)は、目標偏差現在値e(t)に比べて、終端応答を補正した分、振幅の小さい信号となっているからである。
尚、比較のため、従来技術の場合の目標偏差現在値e(t)を、図11(b)に示す。図示のように、目標偏差現在値e(t)も、図10(b)に示す本手法に比べて変動が大きい。これは、制御量y(t)の変動が大きいためである。
尚、本例では、図10(d)に示すように終端応答予測値ynA(t)、自由応答予測値ynB(t)、終端応答補正値y(t)が計算される。そして、計算された終端応答補正値y(t)に基づいて、図10(b)に示す目標偏差現在値e(t)を補正することで、同図に示す補正目標偏差e*(t)が求められている。
また、本例では、図10(b)に示す補正目標偏差e*(t)を用いて操作変化量計算部12が操作変化量du(t)を生成するので、図10(c)に示すように、操作量u(t)の変動が少ない。尚、比較のため、図11(c)に、従来技術の場合の操作変化量du(t)、操作量u(t)を示す。図10(c)と図11(c)とを比較すれば明らかなように、本手法の場合、従来技術に比べて、操作量u(t)の変動が少なくて済む。
上述した本発明によれば、下記の効果が得られる。
本発明では、プラント応答モデルを用いて、過去の操作変化量duに応じた十分未来における目標偏差の残差(補正目標偏差e*(t))を予測し、この予測した残差に基づいて操作変化量を決定する。つまり、過去の操作の影響を考慮しつつ必要最小限の変化を操作量に対して加える。このため、オーバーシュートを抑制することができる。この様なプラントの終端応答の予測に基づく高精度かつ安定度の高い制御を、簡単な構成(比較的少ないメモリとCPU資源)で実現可能である。
あるいは、従来のMPC制御方式に比べ、制御周期ごとの二次計画問題などの最適化演算を繰り返す必要がなく、極めて高速かつ低コストに予測制御を実現できる。
以上述べたことから、本発明によれば、簡単な構成で(比較的少ない演算負荷で)オーバーシュート抑制を的確に実現できるものと言える。
更に、既に設置されている制御ループに対しても、終端応答予測部分を加えるなどの工数の少ない改造で簡便に更新することができ、かつ、温調計やPLC(Programmable Logic Controller)やDCS(Distributed Control System)や組込み制御機器といった計算資源に制約のあるハードウェア上で簡便に実装することができる、という効果がある。
以下、図12〜図14を参照して、本例の制御装置と従来公知の内部モデル制御との相違について説明する。
まず、図12、図13を参照して、本例の制御装置の動作を伝達関数を用いて説明する。
ここでは、実プラント伝達関数をP*(s)、プラントモデルをP(s)、制御器をK(s)、プラントの定常ゲインをP(0)とし、制御量をy(t)、操作量をu(t)、目標値をr(t)、補正目標偏差をe*(t)とし、前記終端応答予測をynA(t)、前記過去の操作変化量のみによる制御量の予測をynB(t)とすると、本例の制御装置の構成は、図12のような伝達関数ブロックで近似的に表現することができる。
ここで、図12に示す上記制御器K(s)は、例えば上記図1における「操作変化量計算部12+加算器13」に相当すると見做しても構わない。
図12において、制御器K(s)には、上記補正目標偏差e*が入力されて、新たな操作量u(t)が生成・出力される。この操作量u(t)は、上記実プラント伝達関数P*(s)、プラントモデルP(s)、及び定常ゲインP(0)に入力される。そして、実プラント伝達関数P*(s)の出力は制御量y(t)、プラントモデルP(s)の出力は上記自由応答予測ynB(t)、定常ゲインP(0)の出力は上記終端応答予測ynA(t)であると見做してよい。
この制御量y(t)と自由応答予測ynB(t)との差分を、フィードバック信号として、終端応答予測ynA(t)に加算する。この加算結果と目標値r(t)との差分が、新たな上記補正目標偏差e*として上記制御器K(s)に入力される。
ここで、制御器K(s)は、操作変化量を毎回加算する動作であるため、
Figure 2016092872
のように、積分器で近似することができる。尚、kは、積分ゲインである。
図13を用いて、本例の制御装置の動作を、更に詳細に説明する。
仮に、実プラント伝達関数P*(s)と、プラントモデルP(s)が一致しているとする。このとき、y(t)=ynB(t)が成り立つので、上記フィードバック信号が0となる。ここで、制御器K(s)とプラント定常ゲインP(0)が成すローカルループを、目標値r(t)から操作量u(t)への入出力特性を表す伝達関数F(s)としてまとめると、伝達関数F(s)は、
Figure 2016092872
と計算され、目標値r(t)から制御量y(t)への入出力特性は、P(s)F(s)で計算される。
ここで、P(s)F(s)の0極限をとれば、
Figure 2016092872
となるため、閉ループの定常ゲインが1となり、最終的な目標値追従が定常状態で達成されることが分かる。これより、本手法では、オーバーシュートの抑制だけでなく目標値追従を達成することができることが分かる。
一方、図14に、従来公知の内部モデル制御の手法(例えば、非特許文献3の88頁〜93頁参照)を示す。
図14に示す例では、実プラント伝達関数P*(s)に対し、プラントモデルP(s)を並列に配置し、それらの出力の差に対して目標偏差が計算され、さらに制御器Q(s)を介しフィードバック信号が生成される。
制御器Q(s)への入力は、上記目標偏差現在値e(t)に相当する。制御器Q(s)は、この目標偏差現在値e(t)に応じた操作量u(t)を、生成・出力する。この操作量u(t)は、上記実プラント伝達関数P*(s)とプラントモデルP(s)とに入力される。そして、実プラント伝達関数P*(s)の出力は、制御量y(t)であり、プラントモデルP(s)の出力は、図示のy(t)である。このy(t)と制御量y(t)との差分が、フィードバックされることになる。つまり、目標値r(t)とフィードバック値との差分が、上記目標偏差現在値e(t)として、制御器Q(s)へ入力されることになる。
尚、上記制御器Q(s)は、実プラント伝達関数の最小位相要素の逆数、すなわち不安定要素を除いたプラントの逆モデルから、設計する手法が公知である。また、実プラント伝達関数が、1次遅れ系、2次遅れ系、積分系など簡易に表現できる場合に限り、内部モデル制御のブロック線図を適切に変換することにより、内部モデル制御と等価なPID制御へと変換し、PIDパラメータを導出する設計手法が公知である。
以上のように、内部モデル制御は、制御ループに、プラントモデルを含め、さらにプラントの部分的な逆モデルを含めることにより、制御量の目標値への良好な追従を実現することを目的とする制御手法である。
図12〜図13に示す本例の制御装置の近似動作は、図14と類似しているが、図示の通り両者を比較すれば明らかな相違がある。図14に示す従来公知の内部モデル制御の制御ブロックと、図12に示す本例の制御装置の制御ブロックとを比較すれば、両者の相違は明らかである。すなわち、図12の本手法の制御ブロックが、図14の内部モデル制御器Q(s)と比較して、上記終端応答予測であるynA(t)を有する点で相違することが分かる。
つまり、伝達関数表現により近似したブロック線図によれば、本例の制御装置は、内部モデル制御の機能に加え、オーバーシュート抑制を目的として上記終端応答予測の機能をさらに加えたことに理論上は相当すると見做しても構わない。
ただし、本例の制御装置は、従来公知の内部モデル制御のように実プラント伝達関数の逆モデルなどを用いる必要がなく、より簡便に実現できる。
また、本例の制御装置では、上述したように、任意の波形のステップ応答モデルを用いることができるため、内部モデル制御に基づくPID制御とは異なり、逆応答や無駄時間やその他3次以上の高次の成分を含む実プラントに対しても、容易に適用することができる。
尚、上記プラント応答モデルは、上記ステップ応答に限らず、例えばインパルス応答モデルまたは伝達関数モデルまたは状態空間モデル等であってもよい。
また、終端応答予測値ynAは、現在に至るまでの過去の操作量変化に応じた、制御量yの過去値(y)から収束値(y+y)までの変化量に相当すると言うこともできる。
また、自由応答予測値ynBは、現在に至るまでの過去の操作量変化に応じた、制御量yの過去値(y)から現在値(y)までの変化量に相当すると言うこともできる。
尚、上記プラント応答モデルは、上記インパルス応答モデルの例に限らず、たとえば伝達関数モデルや状態空間モデル等であってもよい。
最後に、図15に、制御装置1の処理フローチャート図を示す。
ここでは、図15(a)には、特に操作量更新部10の処理フローチャート図を示す。
ここで、制御装置1は、例えば図15(b)に示すように、CPU/MPU等である演算プロセッサ31、メモリ等の記憶装置32等を有している。この記憶装置32には予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されている。演算プロセッサ31が、このアプリケーションプログラムを実行することで、上述して制御装置1(特にその操作量更新部10)の各種処理機能が実現され、以って図15(a)のフローチャートの処理が実現される。
以下、図15(a)に示すフローチャート図の処理について説明される。
この処理は、定周期で実行される(ここでは上記周期Tc毎に実行される)。
ここで、上記周期Tc毎に、操作量更新部10には、上記目標偏差現在値eと、現在の操作量u0が入力される。また、上記のように、操作量更新部10には、過去の操作変化量(現在に至るまでの過去の操作変化量の時系列データ{du(t)}t))が保持されている。また、操作量更新部10には、予め上記プラント応答モデル(ここでは、上記、プラントのステップ応答の関数S(t)、終端ゲインS(∞))が、登録されている。
これより、操作量更新部10は、まず、上記過去の操作変化量や終端ゲインS(∞)等を用いて、上記終端応答予測値ynA(t)を算出する(ステップS11)。更に、上記過去の操作変化量や関数S(t)等を用いて、上記自由応答予測値ynB(t)を算出する(ステップS12)。そして、これら算出した終端応答予測値ynA(t)及び自由応答予測値ynB(t)と、上記目標偏差現在値eを用いて、上記補正目標偏差e*(t)を算出する(ステップS13)。
そして、算出された補正目標偏差e*(t)に基づいて、操作変化量du(t)を算出する(ステップS14)。
上記現在の操作量u0に、当該算出した操作変化量du(t)を加えることで、次の操作量u(t)が決定されて、これが制御対象プラント2へ出力される。
本発明の制御装置等によれば、簡単な構成でオーバーシュート抑制を的確に実現できる。

Claims (11)

  1. 制御対象機器に操作量を出力し、該制御対象機器の制御量を任意の目標値へと追従させる制御装置において、
    前記制御量と前記目標値との差分を目標偏差現在値として求める目標偏差算出手段と、
    予め保持されているプラント応答モデルと、前記目標偏差現在値と、前記操作量の変化量とに基づいて、補正目標偏差を算出する補正目標偏差算出手段と、
    該補正目標偏差に基づいて、新たな前記操作量を決定する操作量算出手段とを有し、
    前記補正目標偏差は、現在に至るまでの過去の前記操作量の変化に応じた前記制御量の収束値の予測値と、前記目標値との差であることを特徴とする制御装置。
  2. 前記操作量の変化量である操作変化量を蓄積する操作変化量記憶手段を更に有し、
    前記補正目標偏差算出手段は、該操作変化量記憶手段に蓄積される過去の操作変化量に基づいて、前記補正目標偏差を算出することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
  3. 補正目標偏差算出手段で補正目標偏差を算出する過程における中間の計算値を蓄積する中間計算値記憶手段を更に有し、
    前記補正目標偏差算出手段は、該中間計算値記憶手段に蓄積される過去の中間計算値に基づいて、前記補正目標偏差を算出することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
  4. 前記プラント応答モデルは、予め前記制御対象機器を用いて実測されるステップ応答であることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
  5. プラント応答モデルは、前記ステップ応答の関数と該ステップ応答の収束値である終端ゲインであり、
    前記補正目標偏差算出手段は、前記終端ゲインを用いて終端応答予測値を求めると共に前記関数を用いて自由応答予測値を求めて、該終端応答予測値と自由応答予測値との差分である終端応答補正値を求め、前記目標偏差現在値と該終端応答補正値との差分を前記補正目標偏差とすることを特徴とする請求項4記載の制御装置。
  6. 前記終端応答予測値は、前記過去の操作量の変化に応じた前記制御量の過去から前記収束値までの変化量に相当し、
    前記自由応答予測値は、前記過去の操作量の変化に応じた前記制御量の過去から現在までの変化量に相当することを特徴とする請求項5記載の制御装置。
  7. 前記ステップ応答の関数をS(t)、前記終端ゲインをS(∞)とし、前記過去から現在までの前記操作変化量のデータ数をAとし、該データのサンプリング周期をTcとした場合、
    終端応答予測値は、下記の(1)式により算出され、
    Figure 2016092872
    前記自由応答予測値は、以下の(2)式により算出される
    Figure 2016092872
    ことを特徴とする請求項6記載の制御装置。
  8. 前記補正目標偏差と前記操作変化量との対応関係を示すデータまたは式が、予め設定されて記憶されており、
    前記操作変化量算出手段は、前記対応関係を示すデータまたは式を用いて、前記補正目標偏差算出手段によって算出された前記補正目標偏差に対応する操作変化量を求めることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の制御装置。
  9. 前記プラント応答モデルは、インパルス応答モデルまたは伝達関数モデルまたは状態空間モデルであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の制御装置。
  10. 制御対象機器に操作量を出力し、該制御対象機器の制御量を任意の目標値へと追従させる制御装置のコンピュータを、
    前記制御量と前記目標値との差分を目標偏差現在値として求める目標偏差算出手段と、
    予め保持されているプラント応答モデルと、前記目標偏差現在値と、前記操作量の変化量とに基づいて、補正目標偏差を算出する補正目標偏差算出手段と、
    該補正目標偏差に基づいて、新たな前記操作量を決定する操作量算出手段、
    として機能させるためのプログラム。
  11. 制御対象機器に操作量を出力し、該制御対象機器の制御量を任意の目標値へと追従させる制御装置に係わるプラント制御方法であって、
    前記制御量と前記目標値との差分を目標偏差現在値として求め、
    予め保持されているプラント応答モデルと、前記目標偏差現在値と、前記操作量の変化量とに基づいて、現在に至るまでの過去の前記操作量の変化に応じた前記制御量の収束値の予測値と前記目標値との差である補正目標偏差を算出し、
    該補正目標偏差に基づいて、新たな前記操作量を決定することを特徴とするプラント制御方法。
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