JPWO2016088511A1 - アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法 - Google Patents

アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2016088511A1
JPWO2016088511A1 JP2016562360A JP2016562360A JPWO2016088511A1 JP WO2016088511 A1 JPWO2016088511 A1 JP WO2016088511A1 JP 2016562360 A JP2016562360 A JP 2016562360A JP 2016562360 A JP2016562360 A JP 2016562360A JP WO2016088511 A1 JPWO2016088511 A1 JP WO2016088511A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
seq
amino acid
positions
acid sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016562360A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6709169B2 (ja
Inventor
達郎 尾崎
達郎 尾崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Publication of JPWO2016088511A1 publication Critical patent/JPWO2016088511A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6709169B2 publication Critical patent/JP6709169B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/64Fats; Fatty oils; Ester-type waxes; Higher fatty acids, i.e. having at least seven carbon atoms in an unbroken chain bound to a carboxyl group; Oxidised oils or fats
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/16Hydrolases (3) acting on ester bonds (3.1)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/64Fats; Fatty oils; Ester-type waxes; Higher fatty acids, i.e. having at least seven carbon atoms in an unbroken chain bound to a carboxyl group; Oxidised oils or fats
    • C12P7/6409Fatty acids
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/64Fats; Fatty oils; Ester-type waxes; Higher fatty acids, i.e. having at least seven carbon atoms in an unbroken chain bound to a carboxyl group; Oxidised oils or fats
    • C12P7/6436Fatty acid esters
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12YENZYMES
    • C12Y301/00Hydrolases acting on ester bonds (3.1)
    • C12Y301/02Thioester hydrolases (3.1.2)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12YENZYMES
    • C12Y301/00Hydrolases acting on ester bonds (3.1)
    • C12Y301/02Thioester hydrolases (3.1.2)
    • C12Y301/02014Oleoyl-[acyl-carrier-protein] hydrolase (3.1.2.14), i.e. ACP-thioesterase

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法を提供する。【解決手段】宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が導入されている形質転換体を培養し、培養物から脂質を採取する、脂質の製造方法。(A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。(B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、アシル−ACPチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法に関する。また、本発明は当該方法に用いるアシル−ACPチオエステラーゼ、これをコードする遺伝子、及び該遺伝子を導入した形質転換体に関する。
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の脂質を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や脂質は、食用又は工業用として広く利用されている。
例えば、炭素数12〜18前後の高級脂肪酸を還元して得られる高級アルコールの誘導体は、界面活性剤として用いられている。アルキル硫酸エステル塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩等は陰イオン性界面活性剤として利用されている。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやアルキルポリグリコシド等は非イオン性界面活性剤として利用されている。そしてこれらの界面活性剤は、いずれも洗浄剤又は殺菌剤に利用されている。同じ高級アルコールの誘導体としてアルキルアミン塩やモノ又はジアルキル4級アミン塩は、繊維処理剤や毛髪リンス剤又は殺菌剤等に日常的に利用されている。また、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩は殺菌剤や防腐剤として日常的に利用されている。さらに、炭素数18前後の高級アルコールは植物の成長促進剤としても有用である。
このように脂肪酸や脂質の利用は多岐にわたり、そのため植物等において生体内での脂肪酸や脂質の生産性を向上させる試みが行われている。さらに、脂肪酸の用途や有用性はその炭素数に依存するため、脂肪酸の炭素数、即ち鎖長を制御する試みも行われている。
例えば、ゲッケイジュ(Umbellularia californica(California bay))由来のアシル−ACPチオエステラーゼの導入により炭素数12の脂肪酸を蓄積させる方法(特許文献1、非特許文献1)等が提案されている。
近年、バイオ燃料生産に有用であるとして、藻類が注目を集めている。藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な脂質を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、藻類は、植物に比べ、高い脂質生産・蓄積能力を有するとの報告もある。
藻類の脂質合成メカニズムやそれを応用した生産技術について研究が始まってはいるが、未解明な部分も多い。例えば、上述のアシル−ACPチオエステラーゼについても、現在のところ、藻類由来のものはほとんど報告されておらず、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属等でわずかに報告例があるのみである(例えば、特許文献2)。
国際公開第92/20236号 国際公開第2014/103930号
Voelker TA,et al.,Science,1992,vol.257(5066),p.72-74
本発明は、宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が導入されている形質転換体を培養し、培養物から脂質を採取する、脂質の製造方法に関する。
(A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のタンパク質のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
また、本発明は、前記タンパク質(A)〜(C)(以下、本発明のタンパク質又はアシル−ACPチオエステラーゼともいう。)に関する。
また、本発明は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子(以下、本発明の遺伝子ともいう。)に関する。
また、本発明は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を宿主に導入してなる形質転換体に関する。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法の提供に関する。
また、本発明は、前記方法に好適に用いることができる、藻類由来の新規アシル−ACPチオエステラーゼ、及びこれをコードする遺伝子の提供に関する。
また、本発明は、前記遺伝子の発現を促進させ、脂質の生産性又は脂肪酸組成が変化した形質転換体の提供に関する。
本発明者は、藻類由来の新たなアシル−ACPチオエステラーゼについて研究を行った。その結果、クリプト藻(cryptophyte)から新規のアシル−ACPチオエステラーゼ及びこれをコードするアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を見出した。そして、当該アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を用いて形質転換を行った結果、形質転換体において、脂質中の総脂肪酸成分における特定の脂肪酸の含有率が有意に向上することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明によれば、新規アシル−ACPチオエステラーゼ、これをコードする遺伝子、及び当該遺伝子が導入されている形質転換体を提供することができる。当該形質転換体を用いた本発明の製造方法は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れる。特に、本発明の製造方法は炭素数8〜16、好ましくは炭素数8〜14、より好ましくは炭素数10〜14、より好ましくは炭素数12〜14、より好ましくは炭素数12及び14、より好ましくは炭素数12の脂肪酸、又はこれらを構成成分とする脂質の生産性に優れる。
本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ、これをコードする遺伝子、形質転換体、及び製造方法は、脂肪酸又は脂質の工業的生産に好適に用いることができる。
本発明において「脂質」には、単純脂質、複合脂質及び誘導脂質が含まれ、具体的には、脂肪酸、脂肪族アルコール類、炭化水素類(アルカン等)、中性脂質(トリアシルグリセロール等)、ろう、セラミド、リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等が含まれる。
また本明細書において、脂肪酸や脂肪酸を構成するアシル基の表記において「Cx:y」とあるのは、炭素原子数がxで二重結合の数がyであることを表す。「Cx」は炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
さらに本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
さらに本明細書において「中鎖」とは、脂肪酸又は脂肪酸残基の炭素数が8以上16以下であることをいう。
以下、本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ、これを用いた形質転換体及び脂質の製造方法について順に説明する。
1.アシル−ACPチオエステラーゼ
本発明のタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列中の少なくとも611位〜772位までのアミノ酸配列を有するタンパク質、及び当該タンパク質と機能的に均等なタンパク質である。
アシル−ACP(アシルキャリヤープロテイン)チオエステラーゼは、脂肪酸やその誘導体(トリアシルグリセロール(トリグリセリド)等)の生合成系に関与する酵素である。当該酵素は、植物体や藻類では葉緑体等の色素体内において、細菌・真菌や動物体では細胞質内において、脂肪酸生合成過程の中間体であるアシル−ACP(脂肪酸残基であるアシル基とアシルキャリヤープロテインとからなる複合体)のチオエステル結合を加水分解し、遊離の脂肪酸を生成する。アシル−ACPチオエステラーゼの作用によって、ACP上での脂肪酸合成が終了し、切り出された脂肪酸はトリアシルグリセロール等の合成に供される。
アシル−ACPチオエステラーゼには、基質であるアシル−ACPを構成するアシル基(脂肪酸残基)の炭素原子数や不飽和結合数によって異なる反応特異性を示す複数のアシル−ACPチオエステラーゼが存在していることが知られている。よってアシル−ACPチオエステラーゼは、生体内での脂肪酸組成を決める重要なファクターであると考えられている。
本発明において、「アシル−ACPチオエステラーゼ活性」とは、アシル−ACPのチオエステル結合を加水分解する活性をいう。
本発明のタンパク質として、具体的には以下のタンパク質(A)〜(C)が挙げられる。
(A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
配列番号1は、クリプト藻の1種であるグィラルディア・セータ(Guillardia theta)由来のアシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「GtTE」とも略記する)のアミノ酸配列である。
グィラルディア・セータのゲノム配列情報は公開されているが、配列番号1に示すアミノ酸配列の機能はこれまで知られていなかった。本発明者は、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質が、アシル−ACPチオエステラーゼであることを同定した。さらに、本発明者が、配列番号1のアミノ酸配列と他の公知のアシル−ACPチオエステラーゼのアミノ酸配列を比較したところ、配列同一性(相同性)が非常に低かった。
さらに、本発明者は、配列番号1のアミノ酸配列中、611位〜772位の領域がアシル−ACPチオエステラーゼとして機能するために重要で、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を示すために十分な領域であることを見出した。すなわち、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質、及び当該アミノ酸配列を含むタンパク質は、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を有する。
タンパク質(A)は、このアシル−ACPチオエステラーゼ活性にとって十分な領域からなり、アシル−ACPチオエステラーゼとして機能する。
タンパク質(B)は、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を有する。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにアシル−ACPチオエステラーゼ活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
タンパク質(B)において、アシル−ACPチオエステラーゼ活性の点から、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、96%以上がよりさらに好ましく、97%以上がよりさらに好ましく、98%以上がよりさらに好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。
また、タンパク質(B)において、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列としては、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列において1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、よりさらに好ましくは1個以上10個以下、よりさらに好ましくは1個以上8個以下、よりさらに好ましくは1個以上5個以下、よりさらに好ましくは1個以上4個以下、よりさらに好ましくは1個以上3個以下、よりさらに好ましくは1又は2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列が挙げられる。
なお、アミノ酸配列に欠失、置換、挿入、付加等の変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。塩基配列に変異を導入する方法については、後述する。
タンパク質(C)は、そのアミノ酸配列の一部として前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を含み、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を示す。タンパク質(C)は、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列以外の配列を含んでいてもよい。
タンパク質(C)を構成するアミノ酸配列中、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列以外の配列としては、例えば、配列番号1のうちの611位〜772位以外の任意のアミノ酸配列、配列番号1のうちの611位〜772位以外の任意のアミノ酸配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列、又はこれらの配列に1若しくは数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列、等が挙げられる。これらの配列は、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列のN末端側に付加されることが好ましい。
また、タンパク質(C)として、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列にタンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も好ましい。シグナルペプチドの付加の例としては、葉緑体移行シグナルペプチドのN末端への付加等が挙げられる。
前記タンパク質(C)として、配列番号1の1〜610位の任意の位置でN末端側のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
さらに、特定の脂肪酸、例えば中鎖脂肪酸の生産性の点からは、タンパク質(C)としては、下記タンパク質(C1)〜(C20)が好ましい。
(C1)配列番号1の1位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C2)配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C3)配列番号1の488位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C4)配列番号1の497位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C5)配列番号1の507位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C6)配列番号1の517位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C7)配列番号1の527位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C8)配列番号1の537位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C9)配列番号1の547位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C10)配列番号1の557位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C11)配列番号1の567位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C12)配列番号1の577位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C13)配列番号1の587位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C14)配列番号1の597位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C15)配列番号1の607位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C16)配列番号1の608位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C17)配列番号1の609位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C18)配列番号1の610位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C19)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C20)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
なお、前記タンパク質(C1)〜(C18)がアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有することは、本発明者により確認されている。
本発明のタンパク質(C)として好ましくは、前記タンパク質(C13)、前記タンパク質(C14)、前記タンパク質(C15)、前記タンパク質(C16)、前記タンパク質(C17)、前記タンパク質(C13)〜(C17)のいずれか1つのアミノ酸配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質、又は前記タンパク質(C13)〜(C17)のいずれか1つのアミノ酸配列に1若しくは数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である。
タンパク質がアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有することは、例えば、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を連結したDNAを脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入したアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子が発現する条件で培養して、宿主細胞又は培養液中の脂肪酸組成の変化をガスクロマトグラフィー解析等の方法を用いて分析することにより、確認することができる。
また、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入したアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子が発現する条件で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、Yuanらの方法(Yuan L,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,vol.92(23),p.10639-10643)によって調製した各種アシル−ACPを基質とした反応を行うことにより、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を測定することができる。
本発明のタンパク質の取得方法については特に制限はなく、通常行われる化学的或いは遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、グィラルディア・セータから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、化学合成によりタンパク質合成を行ってもよく、遺伝子組み換え技術により組換えタンパク質を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述するアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を用いることができる。
また、グィラルディア・セータ等のクリプト藻は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することもできる。例えば、National Center for Marine Algae and Microbiota(NCMA:旧CCMP)、The culture collection of algae at University of Texas at Austin(UTEX)、独立行政法人国立環境研究所(NIES)、Culture Collection of Algae and Protozoa(CCAP)、Australian National Algae Culture Collection(CSIRO)等から入手できる。
2.アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子
本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子である。
タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の例として、配列番号2や配列番号3に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。
配列番号2に示す塩基配列は、グィラルディア・セータ由来の野生型アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の塩基配列の一例である。配列番号2の1831位〜2316位の塩基配列は、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列をコードする。なお、配列番号2の2317位〜2319位の塩基配列は終止コドンであり、アミノ酸には対応していない。
配列番号3に示す塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列情報に基づいて、大腸菌のコドン使用頻度に合わせてコドン最適化を施した塩基配列である。配列番号3の1位〜858位の塩基配列は、配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列をコードする。配列番号3の373位〜858位の塩基配列は、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列をコードする。なお、配列番号3の859位〜861位の塩基配列は終止コドンであり、アミノ酸には対応していない。
前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の具体例として、下記DNA(a)〜(f)のいずれか1つからなる遺伝子が例示できる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(a)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号3の373位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(e)配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(f)前記DNA(d)又は(e)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
DNA(b)において、アシル−ACPチオエステラーゼ活性の点から、配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、96%以上がよりさらに好ましく、97%以上がよりさらに好ましく、98%以上がよりさらに好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。
また、DNA(b)において、配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列としては、配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列において1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列が挙げられる。
DNA(e)において、アシル−ACPチオエステラーゼ活性の点から、配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、96%以上がよりさらに好ましく、97%以上がよりさらに好ましく、98%以上がよりさらに好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。
また、DNA(e)において、配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列としては、配列番号3の373位〜861位の塩基配列において1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列が挙げられる。
塩基配列に欠失、置換、挿入、付加等の変異を導入する方法としては、例えば、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCR(Horton et al.,Gene,1989,vol.77,p.61-68)を利用した方法、ODA法(Hashimoto-Gotoh et al.,Gene,1995,vol.152,p.271-276)、Kunkel法(Kunkel,T.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,vol.82,p.488)等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
さらにDNA(b)として、DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
同様に、DNA(e)として、DNA(d)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
DNA(c)は、その塩基配列の一部として前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を含み、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードする。DNA(c)は、前記DNA(a)又は(b)の塩基配列以外の配列を含んでいてもよい。
DNA(c)の塩基配列中、前記DNA(a)又は(b)の塩基配列以外の配列としては、例えば、配列番号2のうちの1831位〜2319位以外の任意の塩基配列、配列番号2のうちの1831位〜2319位以外の任意の塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列、又は配列番号2のうちの1831位〜2319位以外の任意の塩基配列に1若しくは数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列、等が挙げられる。
また、前記DNA(a)又は(b)の塩基配列以外の配列としては、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列も好ましい。シグナルペプチドとしては、前記タンパク質(C)で述べたものが挙げられる。
これらの配列は、前記DNA(a)又は(b)の塩基配列の5'末端側に付加されることが好ましい。
前記DNA(c)として、配列番号2の1〜1830位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなるDNAであってもよい。
さらに、特定の脂肪酸、例えば中鎖脂肪酸の生産性の点からは、DNA(c)としては、下記DNA(c1)〜(c20)が好ましい。
(c1)配列番号2の1位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c2)配列番号2の1459位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c3)配列番号2の1462位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c4)配列番号2の1489位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c5)配列番号2の1519位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c6)配列番号2の1549位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c7)配列番号2の1579位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c8)配列番号2の1609位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c9)配列番号2の1639位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c10)配列番号2の1669位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c11)配列番号2の1699位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c12)配列番号2の1729位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c13)配列番号2の1759位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c14)配列番号2の1789位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c15)配列番号2の1819位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c16)配列番号2の1822位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c17)配列番号2の1825位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c18)配列番号2の1828位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c19)前記DNA(c1)〜(c18)のいずれか1つの塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c20)前記DNA(c1)〜(c18)のいずれか1つの塩基配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
なお、前記DNA(c1)〜(c18)のいずれか1つからなる遺伝子がアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードしていることは、本発明者により確認されている。
DNA(f)は、その塩基配列の一部として前記DNA(d)又は(e)の塩基配列を含み、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードする。DNA(f)は、前記DNA(d)又は(e)の塩基配列以外の配列を含んでいてもよい。
DNA(f)の塩基配列中、前記DNA(d)又は(e)の塩基配列以外の配列としては、例えば、配列番号3のうちの373位〜861位以外の任意の塩基配列、配列番号3のうちの373位〜861位以外の任意の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列、又は配列番号3のうちの373位〜861位以外任意の塩基配列に1若しくは数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列、等が挙げられる。
また、前記DNA(d)又は(e)の塩基配列以外の配列としては、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列も好ましい。シグナルペプチドとしては、前記タンパク質(C)で述べたものが挙げられる。
これらの配列は、前記DNA(d)又は(e)の塩基配列の5'末端側に付加されることが好ましい。
前記DNA(f)として、配列番号3の1〜372位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなるDNAであってもよい。
さらに、特定の脂肪酸、例えば中鎖脂肪酸の生産性の点からは、DNA(f)としては、下記DNA(f1)〜(f19)が好ましい。
(f1)配列番号3の1位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f2)配列番号3の4位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f3)配列番号3の31位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f4)配列番号3の61位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f5)配列番号3の91位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f6)配列番号3の121位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f7)配列番号3の151位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f8)配列番号3の181位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f9)配列番号3の211位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f10)配列番号3の241位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f11)配列番号3の271位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f12)配列番号3の301位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f13)配列番号3の331位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f14)配列番号3の361位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f15)配列番号3の364位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f16)配列番号3の367位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f17)配列番号3の370位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f18)前記DNA(f1)〜(f17)のいずれか1つの塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(f19)前記DNA(f1)〜(f17)のいずれか1つの塩基配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
なお、前記DNA(f1)〜(f17)のいずれか1つからなる遺伝子がアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードしていることは、本発明者により確認されている。
本発明のアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の取得方法としては、特に制限されず、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号1に示すアミノ酸配列又は配列番号2や3に示す塩基配列に基づいて、人工合成により遺伝子を取得することができる。遺伝子の人工合成は、例えば、ユーロフィンジェノミクス社等のサービスを利用することができる。また、グィラルディア・セータからクローニングによって取得することもでき、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W. Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。
3.形質転換体
本発明の形質転換体は、前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体である。
当該形質転換体では、脂質の生産能、特に中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産能(中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産量、生産される全脂肪酸に占める中鎖脂肪酸の割合、生産される全脂質に占める中鎖脂肪酸を構成成分とする脂質の割合)が有意に向上する。また、当該形質転換体では、宿主と比べ、脂質中の脂肪酸組成(生産される全脂肪酸に対する特定の脂肪酸の割合、生産される全脂質に占める特定の脂肪酸を構成成分とする脂質の割合)が変化する。そのため、当該形質転換体を用いた本発明は、特定の脂質、特に中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、好ましくは炭素数8以上16以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素数8以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素数10以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素数12以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、よりさらに好ましくは炭素数12及び14の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、よりさらに好ましくは炭素数12の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、の生産に好適に用いることができる。
さらに、本態様の形質転換体は、宿主自体に比べ、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性が有意に向上する。そのため、当該形質転換体を用いた本発明は、脂質の生産に好適に用いることができる。
なお、アシル−ACPチオエステラーゼの脂肪酸又は脂質の生産能については、実施例で用いた方法により測定することができる。また本明細書において、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させたものを「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。
アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の発現を促進させる方法としては、常法より適宜選択することができる。例えば、前記アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を宿主に導入する方法、前記アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域(プロモーター、ターミネーター等)を改変する方法、などが挙げられる。
アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
本発明で好ましく用いることができる形質転換体は、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子を、通常の遺伝子工学的方法によって宿主に導入することで得られる。具体的には、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる発現ベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製できる。
形質転換体の宿主としては特に限定されず、通常用いられるものより適宜選択することができる。例えば、微生物(藻類や微細藻類を含む)、植物体、又は動物体を用いることができる。製造効率及び得られた脂質の利用性の点から、宿主は微生物又は植物体であることが好ましく、微生物であることがより好ましい。
前記微生物は原核生物、真核生物のいずれであってもよく、エシェリキア(Escherichia)属に属する微生物、バシラス(Bacillus)属に属する微生物、シネコシスティス(Synechocystis)属の微生物、シネココッカス(Synechococcus)属の微生物等の原核生物、又は酵母や糸状菌等の真核微生物を用いることができる。なかでも、脂質生産性の観点から、エシェリキア属に属する微生物である大腸菌(Escherichia coli)、バシラス属に属する微生物である枯草菌(Bacillus subtilis)、酵母に属する微生物である赤色酵母(Rhodosporidium toruloides)、又は糸状菌に属する微生物であるモルチエレラ・エスピー(Mortierella sp.)が好ましく、大腸菌がより好ましい。
前記藻類や微細藻類としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、クラミドモナス(Chlamydomonas)属に属する藻類、クロレラ(Chlorella)属に属する藻類、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)属に属する藻類、又はナンノクロロプシス属に属する藻類が好ましく、ナンノクロロプシス属に属する藻類がより好ましい。ナンノクロロプシス属に属する藻類として具体的には、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)、等が挙げられる。なかでも、脂質生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがより好ましい。
前記植物体としては、種子に脂質を高含有する観点から、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ、ココヤシ、パーム、クフェア、又はヤトロファが好ましく、シロイヌナズナがより好ましい。
遺伝子発現用プラスミドベクター又は遺伝子発現カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で当該遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、導入する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
具体的なベクターとしては、微生物を宿主とする場合には、例えば、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pUC系ベクター(宝酒造社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T. et al.,(1986),Plasmid 15(2);p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、又はpMW218/219(ニッポンジーン社製)が挙げられる。特に、宿主が大腸菌の場合は、pBluescript II SK(-)、又はpMW218/219が好ましく用いられる。
藻類を宿主とする場合には、例えば、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Yangmin Gong,et al.,Journal of Basic Microbiology,2011,vol.51,p.666-672参照)、又はpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合は、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。また、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合には、Oliver Kilian,et al. ,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)記載の方法を参考にして、本発明の遺伝子、プロモーター及びターミネーターからなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。このDNA断片としては、例えば、PCRにより増幅したDNA断片や制限酵素切断DNA断片が挙げられる。
植物細胞を宿主とする場合には、例えば、pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、又はIN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)が挙げられる。特に、宿主がシロイヌナズナの場合は、pRI系ベクター又はpBI系ベクターが好ましく用いられる。
また、前記に組み込んだ目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調整するプロモーターやターミネーターの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導可能な誘導体に関するプロモーター、Rubiscoオペロン(rbc)、PSI反応中心タンパク質(psaAB)、PSIIのD1タンパク質(psbA)、カリフラワーモザイクウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、ナタネ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質VCP1遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)(国際公開第2014/103930号)、又はナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP(lipid droplet surface protein)遺伝子のプロモーター(Astrid Vieler,et al.,PLOS Genetics, 2012;8(11):e1003064.Doi:10.1371)が挙げられる。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、又はハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することも可能である。
目的のタンパク質をコードする遺伝子の前記ベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の通常の手法によって行うことができる。また、発現ベクターを構築する際には、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子に加え、当該遺伝子の翻訳に有用な配列、例えば開始コドンや終止コドンに相当する配列等を適宜補うことができる。
形質転換方法としては、宿主に目的遺伝子を導入しうる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法(J.Bacterial.93,1925(1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol.Gen.Genet.168,111(1979))、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol.Lett.55,135(1990))又はLP形質転換方法(T.Akamatsu,et al.,Archives of Microbiology,1987,146,p.353-357;T.Akamatsu,et al.,Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,2001,65,4,p.823-829)等を用いることができる。宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合、Randor Radakovits,et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012、に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、ベクター由来の薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域を改変して、前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
「発現調節領域」とは、プロモーターやターミネーターを示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に前述のアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して前記アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の発現を促進させることで、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
発現調節領域の改変方法としては、例えばプロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に前述のアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子を有する宿主において、当該遺伝子のプロモーター(以下、「アシル−ACPチオエステラーゼプロモーター」ともいう)を、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の発現を促進させることができる。
アシル−ACPチオエステラーゼプロモーターの入れ替えに用いるプロモーターとしては特に限定されず、アシル−ACPチオエステラーゼプロモーターよりも転写活性が高く、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産に適したものから適宜選択することができる。
前述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの常法に従い行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。
このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Besher et al.,Methods in molecular biology,1995,vol.47,p.291-302等の文献を参考に行うことができる。
4.脂質の製造方法
本発明の形質転換体は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性が、宿主と比較して向上している。したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養し、次いで得られた培養物から中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を回収すれば、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を効率よく製造することができる。
本発明の脂質の製造方法は、脂質の生産性向上の観点から、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子を導入した形質転換体を適切な条件にて培養して培養物を得る工程、及び得られた培養物から脂質を採取する工程を含むことが好ましい。
なお、本発明において形質転換体を培養するとは、微生物、藻類、植物体、動物体、及びそれらの細胞や組織を培養、生育することをいい、植物体を土壌等で栽培することも含まれる。ここで「培養物」とは、培養液の他に、培養等した後の形質転換体そのものも含まれる。
培養条件は、形質転換体の宿主に応じて適宜選択することができ、その宿主に対して通常用いられる培養条件を使用できる。
また、脂質の生産効率の点から、培地中に、例えばアシル−ACPチオエステラーゼの基質或いは脂肪酸生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はマロン酸等を添加してもよい。
一例として、大腸菌を宿主として用いた形質転換体の場合、LB培地又はOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)で、30〜37℃、0.5〜1日間培養を行うことが挙げられる。
また、シロイヌナズナを宿主として用いた形質転換体の場合、土壌で温度条件20〜25℃、白色光を連続照射又は明期16時間・暗期8時間等の光条件下で1〜2か月間栽培を行うことが挙げられる。
形質転換の宿主が藻類の場合、培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、脂質の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。培地に接種する藻類の量は特に限定されないが、生育性の点から、培地当り1〜50%(vol/vol)が好ましく、1〜10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
また、藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の照度としては、藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から、好ましくは100〜50000ルクスの範囲、より好ましくは300〜10000ルクスの範囲、さらに好ましくは1000〜6000ルクスの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期が好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜18時間、さらに好ましくは12時間である。
また、藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.03(大気条件と同程度)〜10%が好ましく、より好ましくは0.05〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%、よりさらに好ましくは0.3〜1%である。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
培養時間は特に限定されず、脂質を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、培養期間は、好ましくは3〜90日間、より好ましくは3〜30日間、さらに好ましくは7〜30日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、通気攪拌培養が好ましい。
形質転換体において産生された脂質を採取する方法としては、通常生体内の脂質成分等を単離する際に用いられる方法、例えば、前述の培養物や形質転換体から、ろ過、遠心分離、細胞の破砕、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロロホルム/メタノール抽出法、ヘキサン抽出法、又はエタノール抽出法等により脂質成分を単離、回収する方法が挙げられる。より大規模な場合は、培養物や形質転換体より油分を圧搾又は抽出により回収後、脱ガム、脱酸、脱色、脱蝋、脱臭等の一般的な精製を行い、脂質を得ることができる。このように脂質成分を単離した後、単離した脂質を加水分解することで脂肪酸を得ることができる。脂質成分から脂肪酸を単離する方法としては、例えば、アルカリ溶液中で70℃程度の高温で処理をする方法、リパーゼ処理をする方法、又は高圧熱水を用いて分解する方法等が挙げられる。
本発明のアシル−ACPチオエステラーゼは、中鎖アシル−ACP、C12〜C16アシル−ACP、特にC12アシル−ACPとC14アシル−ACPに対する特異性が高い。本発明の形質転換体では、総脂肪酸成分における中鎖脂肪酸、例えば炭素数8〜16の脂肪酸、好ましくは炭素数8〜14の脂肪酸、より好ましくは炭素数10〜14の脂肪酸、より好ましく炭素数12〜14の脂肪酸、より好ましくは炭素数12と14の脂肪酸、より好ましくは炭素数12の脂肪酸、の含有率が増加する。そのため、当該形質転換体を用いた本発明の製造方法は、脂質生産、特に中鎖脂肪酸、好ましくは炭素数8〜16の脂肪酸、より好ましくは炭素数8〜14の脂肪酸、より好ましくは炭素数10〜14の脂肪酸、より好ましく炭素数12〜14の脂肪酸、より好ましくは炭素数12及び14の脂肪酸、より好ましくは炭素数12の脂肪酸、又はこれを構成成分とする脂質の生産に好適に用いることができる。
本発明の製造方法において製造される脂質は、その利用性の点から、脂肪酸又は脂肪酸化合物を含んでいることが好ましく、脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含んでいることがさらに好ましい。具体的には本発明の製造方法において製造される脂質は、好ましくは炭素数が8以上16以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数が8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数が10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは12以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数が12及び14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数が12の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む。脂質中に含まれる脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物は、界面活性剤等への利用性から、炭素数8〜16の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物が好ましく、炭素数8〜14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、炭素数10〜14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、炭素数12〜14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、炭素数12及び14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、炭素数12の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましい。
脂肪酸エステル化合物は、生産性の点から、単純脂質又は複合脂質が好ましく、単純脂質がさらに好ましく、トリアシルグリセロールがさらにより好ましい。
本発明の製造方法、形質転換体により得られる脂肪酸や脂質は、食用として用いる他、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の方法、形質転換体、タンパク質、遺伝子を開示する。
<1> 宿主に前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が導入されている形質転換体を培養し、培養物から脂質を採取する、脂質の製造方法。
(A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
<2> 宿主に前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質転換体の細胞内で生産される脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる方法。
<3> 前記脂質が中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質である、前記<2>記載の方法。
<4> 宿主に前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して形質転換体を得る工程を含む、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
<5> 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の発現が促進されている形質転換体を培養し、培養物から脂質を採取する、脂質の製造方法。
<6> 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の発現を促進させる工程を含む、形質転換体の細胞内で生産される脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる方法。
<7> 前記脂質が中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質である、前記<6>記載の方法。
<8> 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子の発現を促進させて、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
<9> 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる、前記<5>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
<10> 前記タンパク質(B)において、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
<11> 前記タンパク質(B)が、配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、よりさらに好ましくは1又は2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質である、前記<1>〜<10>のいずれか1項記載の方法。
<12> 前記タンパク質(C)が、配列番号1の1〜610位の任意の位置でN末端側のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなる、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
<13> 前記タンパク質(C)が下記タンパク質(C1)〜(C20)のいずれか1つである、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
(C1)配列番号1の1位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C2)配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C3)配列番号1の488位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C4)配列番号1の497位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C5)配列番号1の507位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C6)配列番号1の517位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C7)配列番号1の527位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C8)配列番号1の537位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C9)配列番号1の547位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C10)配列番号1の557位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C11)配列番号1の567位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C12)配列番号1の577位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C13)配列番号1の587位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C14)配列番号1の597位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C15)配列番号1の607位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C16)配列番号1の608位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C17)配列番号1の609位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C18)配列番号1の610位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C19)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
(C20)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
<14> 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(f)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
(a)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号3の373位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(e)配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(f)前記DNA(d)又は(e)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<15> 前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、である、前記<14>項記載の方法。
<16> 前記DNA(c)が、配列番号2の1〜1830位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなる、前記<14>項記載の方法。
<17> 前記DNA(c)が、下記DNA(c1)〜(c20)のいずれか1つである、前記<14>項記載の方法。
(c1)配列番号2の1位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c2)配列番号2の1459位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c3)配列番号2の1462位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c4)配列番号2の1489位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c5)配列番号2の1519位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c6)配列番号2の1549位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c7)配列番号2の1579位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c8)配列番号2の1609位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c9)配列番号2の1639位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c10)配列番号2の1669位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c11)配列番号2の1699位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c12)配列番号2の1729位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c13)配列番号2の1759位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c14)配列番号2の1789位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c15)配列番号2の1819位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c16)配列番号2の1822位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c17)配列番号2の1825位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c18)配列番号2の1828位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
(c19)前記DNA(c1)〜(c18)のいずれか1つの塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c20)前記DNA(c1)〜(c18)のいずれか1つの塩基配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<18> 前記DNA(e)が、前記DNA(d)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1若しくは2個、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(d)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、である、前記<14>項記載の方法。
<19> 前記DNA(f)が、配列番号3の1〜372位の任意の位置で5'末端側が欠失した塩基配列からなる、前記<14>項記載の方法。
<20> 前記DNA(f)が、下記DNA(f1)〜(f19)のいずれか1つである、前記<14>項記載の方法。
(f1)配列番号3の1位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f2)配列番号3の4位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f3)配列番号3の31位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f4)配列番号3の61位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f5)配列番号3の91位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f6)配列番号3の121位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f7)配列番号3の151位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f8)配列番号3の181位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f9)配列番号3の211位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f10)配列番号3の241位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f11)配列番号3の271位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f12)配列番号3の301位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f13)配列番号3の331位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f14)配列番号3の361位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f15)配列番号3の364位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f16)配列番号3の367位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f17)配列番号3の370位〜861位の塩基配列からなるDNA。
(f18)前記DNA(c1)〜(f17)のいずれか1つの塩基配列との同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは96%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(f19)前記DNA(f1)〜(f17)のいずれか1つの塩基配列に1又は数個、好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1又は2個、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<21> 前記形質転換体の宿主が微生物である、前記<1>〜<20>のいずれか1項記載の方法。
<22> 前記微生物が大腸菌である、前記<21>項記載の方法。
<23> 前記微生物が微細藻類である、前記<21>項記載の方法。
<24> 前記微細藻類がナンノクロロプシス属に属する藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<23>項記載の方法。
<25> 前記脂質が、中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素数8以上16以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12及び14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む、前記<1>〜<24>のいずれか1項記載の製造方法。
<26> 前記<1>〜<25>のいずれか1項で規定した、タンパク質(A)〜(C)。
<27> 前記<26>項記載のタンパク質をコードする遺伝子。
<28> 前記<1>〜<25>のいずれか1項で規定した、DNA(a)〜(f)のいずれか1つからなる遺伝子。
<29> 前記<27>又は<28>項記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
<30> 前記<27>若しくは<28>項記載の遺伝子、又は前記<29>項記載の組換えベクターを、宿主に導入してなる形質転換体。
<31> 前記<27>若しくは<28>項記載の遺伝子、又は前記<29>項記載の組換えベクターを宿主に導入する、形質転換体の作製方法。
<32> 前記<27>又は<28>項記載の遺伝子の発現を促進させた形質転換体。
<33> 前記形質転換体の宿主が微生物である、前記<30>〜<32>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<34> 前記微生物が大腸菌である、前記<33>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<35> 前記微生物が微細藻類である、前記<33>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<36> 前記微細藻類がナンノクロロプシス属に属する藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<35>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<37> 脂質を製造するための、前記<26>〜<36>のいずれか1項記載のタンパク質、遺伝子、組換えベクター、形質転換体、又は形質転換体の作製方法により得られた形質転換体の使用。
<38> 前記脂質が、中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素数8以上16以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12及び14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素数12の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む、前記<37>項記載の使用。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1及び2に示す。
Figure 2016088511
Figure 2016088511
実施例1 アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の取得、大腸菌への形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)グィラルディア・セータ由来アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の取得
National Center for Biotechnology Information(NCBI)のタンパクデータベースに、Accession No. XP_005824882として登録されているグィラルディア・セータ由来の機能未知タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)及びこれをコードする遺伝子配列(配列番号2)を取得した。以下、このタンパク質を「GtTE」ともいい、当該タンパク質をコードする遺伝子を「GtTE遺伝子」ともいう。
次いで、配列番号2の1459〜2319位の塩基配列(配列番号1の487〜772位に相当)を、大腸菌のコドン使用頻度に合わせてコドン最適化を施した塩基配列として、配列番号3の塩基配列を取得した。なお、配列番号3の塩基配列からなる遺伝子は、オペロンバイオテクノロジー社の提供する人工遺伝子受託合成サービスを利用して取得した。
(2)GtTE遺伝子発現プラスミドの構築
配列番号3の塩基配列からなる、人工合成遺伝子を鋳型として、表1に示すプライマー番号4及びプライマー番号5のプライマー対を用いたPCRにより、配列番号3の塩基配列からなるGtTE遺伝子を取得した。
また、プラスミドベクターpBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号6及びプライマー番号7のプライマー対を用いたPCRによりpBluescriptII SK(-)を増幅し、制限酵素DpnI(東洋紡社製)処理により鋳型の消化を行った。
これら2つの断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した後に、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、常法に従い大腸菌DH5α株のコンピテントセル(タカラバイオ社製)への形質転換、プラスミド抽出、及びクローニング断片の塩基配列確認を行い、GtTE遺伝子発現プラスミドGtTE_487を構築した。
同様に、配列番号1のN末端領域を種々の長さで削除した複数のGtTE遺伝子発現プラスミドを構築した。
前記プラスミドGtTE_487を鋳型とし、表1に示すプライマー番号8〜23のいずれか1つと、プライマー番号6のプライマーとのプライマー対を用いてPCRを行い、得られた遺伝子断片を前記の方法と同様にして精製・融合し、GtTE遺伝子発現プラスミドGtTE_497、GtTE_507、GtTE_517、GtTE_527、GtTE_537、GtTE_547、GtTE_557、GtTE_567、GtTE_577、GtTE_587、GtTE_597、GtTE_607、GtTE_608、GtTE_609、GtTE_610、及びGtTE_611をそれぞれ構築した。
なお、プラスミドGtTE_487は、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側1〜486位のアミノ酸配列を除去するよう構築され、GtTE遺伝子として、配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列をコードする塩基配列及び終止コドンに対応する配列番号3の1位〜861位の塩基配列を有する。同様に、プラスミドGtTE_497、プラスミドGtTE_507、プラスミドGtTE_517、プラスミドGtTE_527、プラスミドGtTE_537、プラスミドGtTE_547、プラスミドGtTE_557、プラスミドGtTE_567、プラスミドGtTE_577、プラスミドGtTE_587、プラスミドGtTE_597、プラスミドGtTE_607、プラスミドGtTE_608、プラスミドGtTE_609、プラスミドGtTE_610、及びプラスミドGtTE_611は、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側1〜496位、1〜506位、1〜516位、1〜526位、1〜536位、1〜546位、1〜556位、1〜566位、1〜576位、1〜586位、1〜596位、1〜606位、1〜607位、1〜608位、1〜609位、又は1〜610位のアミノ酸配列をそれぞれ除去するように構築した。さらに、これらのプラスミドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側を除去した部位の上流に、プラスミドベクターpBluescriptII SK(-)由来のLacZタンパク質のN末端側1位〜29位のアミノ酸配列が融合したタンパク質を発現させるように構築した。
(3)GtTE遺伝子発現プラスミドの大腸菌への導入
前記の各種GtTE遺伝子発現プラスミドを用いて、大腸菌突然変異株であるK27株(fadD88)(Overath et al,Eur.J.Biochem.7,559-574,1969)をコンピテントセル形質転換法により形質転換した。形質転換処理をしたK27株を50μg/mLアンピシリンナトリウム含有LB寒天培地(Bacto Trypton 1%、Yeast Extract 0.5%、NaCl 1%、Agar 1.5%)に播種して30℃で一晩静置し、得られたコロニーを、2mLのOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)に接種し、30℃で振とう培養した。培養24時間後、培養液に含まれる脂質成分を、下記方法にて解析した。なお、陰性対照として、プラスミドベクターpBluescriptII SK(-)で形質転換した大腸菌K27株についても同様に実験を行った。
(4)培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
培養液1mLに、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノン(メタノール溶液)50μLを添加後、クロロホルム0.5mL、メタノール1mL及び2N塩酸10μLを培養液に添加して激しく攪拌し、10分間以上放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて5分間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5N水酸化カリウム/メタノール溶液0.7mLを添加し、80℃で30分間恒温した。続いて14%三フッ化ホウ素のメタノール溶液(SIGMA社製)1mLを添加し、80℃にて10分間恒温した。その後、ヘキサン、飽和食塩水を各1mL添加し激しく撹拌し、室温にて10分間以上放置後、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸メチルエステルを得た。
下記に示す測定条件下で、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
キャピラリーカラム:DB-1 MS(30m×200μm×0.25μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
カラム内流量:1.0mL/分
昇温プログラム:100℃(1分間)→10℃/分→300℃(5分間)
平衡化時間:1分間
注入口:スプリット注入(スプリット比:100:1)
圧力:14.49psi,104mL/分
注入量:1μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出器温度:300℃
また、脂肪酸メチルエステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準である7-ペンタデカノンのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1Lあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、各脂肪酸量の総和を総脂肪酸量とし、総脂肪酸量に占める各脂肪酸量の割合を算出した。
結果を表3に示す。なお下記の表において、「TFA」は総脂肪酸量を、「脂肪酸組成(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸の重量の割合(重量パーセント)を示す。また「Cx:y」とあるのは、炭素原子数xで二重結合数がyの脂肪酸を表し、「C17:0Δ」及び「C19:0Δ」はそれぞれcis-9,10-メチレンヘキサデカン酸(cis-9,10-Methylen-hexadecanoic acid)及びcis-11,12-メチレンオクタデカン酸(cis-11,12-Methylen-octadecanoic acid)を表す。
Figure 2016088511
表3から明らかなように、各種GtTE遺伝子発現プラスミドのいずれか1つを導入した株では、陰性対照であるプラスミドベクターpBluescriptII SK(-)導入株(表中「pBS」)と比べ、総脂肪酸に占めるC12:1脂肪酸、C12:0脂肪酸、C14:1脂肪酸、C14:0脂肪酸、C16:1脂肪酸の割合が大きく増加した。特に、C14脂肪酸(C14:1脂肪酸、C14:0脂肪酸)の割合が顕著に増加した。さらに、これらGtTE遺伝子発現プラスミドの導入株では、総脂肪酸量(TFA)も増加していた。特に、プラスミドGtTE_587、GtTE_597、GtTE_607、GtTE_608、又はGtTE_609導入株で、C12:1脂肪酸、C12:0脂肪酸、C14:1脂肪酸、C14:0脂肪酸、C16:1脂肪酸の増加、及び総脂肪酸量の増加が顕著であった。
これらの結果から、各種GtTE遺伝子発現プラスミドに導入した遺伝子がコードするタンパク質は、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を有することが確認された。また、これらのタンパク質はC12脂肪酸及びC14脂肪酸の割合及び生産量を顕著に増加させたことから、C12脂肪酸やC14脂肪酸、特にC14脂肪酸に高い特異性を持つアシル−ACPチオエステラーゼであると考えられる。
以上の結果から、配列番号1で示されるアミノ酸配列中、少なくとも611位〜772位の領域を有するタンパク質は、アシル−ACPチオエステラーゼ活性を示すと認められる。
実施例2 GtTE遺伝子によるナンノクロロプシス・オキュラータの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号24)、及び文献(Randor Radakovits,et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012)記載のナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来チューブリンプロモーター配列(配列番号25)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー番号26及びプライマー番号27のプライマー対、並びにプライマー番号28及びプライマー番号29のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びチューブリンプロモーター配列をそれぞれ増幅した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノムを鋳型として、表2に示すプライマー番号30及びプライマー番号31のプライマー対を用いてPCRを行い、ヒートショックプロテインターミネーター配列(配列番号32)を増幅した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表2に示すプライマー番号33及びプライマー番号34のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本プラスミドは、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(2)GtTE遺伝子発現用プラスミドの構築
実施例1で人工合成したGtTE遺伝子を鋳型として、表2に示すプライマー番号35〜39のいずれか1つと、プライマー番号40のプライマー対を用いたPCRを行い、配列番号3の5'側の塩基配列を種々の長さで削除したGtTE遺伝子断片を取得した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノムを鋳型として、表2に示すプライマー番号41及びプライマー番号42のプライマー対、プライマー番号43及びプライマー番号44のプライマー対、並びにプライマー番号45及びプライマー番号46のプライマー対をそれぞれ用いたPCRを行い、LDSPプロモーター配列(配列番号47)、VCP1葉緑体移行シグナル配列(配列番号48)及びVCP1ターミネーター配列(配列番号49)を取得した。
さらに、前述のゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号50及びプライマー番号34のプライマー対を用いたPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)及びpUC19配列からなる断片を増幅した。
配列番号3の5'側の塩基配列を種々の長さで削除したGtTE遺伝子断片それぞれと、LDSPプロモーター、VCP1葉緑体移行シグナル、VCP1ターミネーターの増幅断片、及びゼオシン耐性遺伝子発現カセットとpUC19配列からなる増幅断片を、前述の方法と同様の方法にて融合し、GtTE遺伝子発現用プラスミドGtTE_488-Nanno、GtTE_527-Nanno、GtTE_587-Nanno、GtTE_597-Nanno、GtTE_607-Nanno、をそれぞれ構築した。
なお、これらのプラスミドは、LDSPプロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナルを配列番号1に示すアミノ酸配列の488〜772位、527〜772位、587〜772位、597〜772位、若しくは607〜772位のアミノ酸配列をコードする塩基配列の5’末端側に連結させたGtTE遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(3)GtTE遺伝子発現カセットのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
前述のGtTE遺伝子発現用プラスミド(GtTE_488-Nanno、GtTE_527-Nanno、GtTE_587-Nanno、GtTE_597-Nanno、GtTE_607-Nanno)をそれぞれ鋳型として、表2に示すプライマー番号41及びプライマー番号31のプライマー対を用いたPCRを行い、GtTE遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端側1〜487位、1〜526位、1〜586位、1〜596位、若しくは1〜606位のアミノ酸配列をコードする塩基配列を除去したGtTE遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)をそれぞれ増幅した。
増幅した断片をそれぞれ、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約1×109細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅したGtTE遺伝子発現カセット約500ngを宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
f/2液体培地(NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、GtTE遺伝子発現カセットを含むものをPCR法により選抜した。
(4)培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株を、f/2培地の窒素濃度を15倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N15P5培地」という)20mLに播種し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLを、N15P5培地18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3週間振盪培養した。
なお、陰性対照として、野生株であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株についても同様に実験を行った。
培養液1mLに、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノン(メタノール溶液)を50μL添加後、クロロホルム0.5mL及びメタノール1mLを培養液に添加して激しく攪拌し、10分間放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて5分間間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5N水酸化カリウム/メタノール溶液0.7mLを添加し、80℃で30分間恒温した。続いて14%三フッ化ホウ素メタノール溶液(SIGMA社製)1mLを添加し、80℃にて10分間恒温した。その後、ヘキサン0.5mL、及び飽和食塩水1mLを添加し激しく撹拌し、室温にて10分間放置し、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸メチルエステルを得た。
下記に示す測定条件下で、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
分析装置:7890A(Agilent technology社製)
キャピラリーカラム:DB-WAX(10m×100μm×0.10μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
オーブン温度:100℃ 保持0.5分→100〜250℃(20℃/min昇温)→250℃ 保持3分(ポストラン:1分)
注入口温度:300℃
注入方法:スプリット注入(スプリット比:50:1)
注入量:5μL
洗浄バイアル:メタノール
検出方法:FID
検出器温度:350℃
脂肪酸メチルエステルの同定及び定量は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表4に示す。
Figure 2016088511
表4から明らかなように、GtTE遺伝子発現カセットを導入したナンノクロロプシス形質転換体(表4中の「GtTE_488-Nanno」、「GtTE_527-Nanno」、「GtTE_587-Nanno」、「GtTE_597-Nanno」、「GtTE_607-Nanno」)のいずれにおいても、野生株(表4中の「WT」)と比べ、C10:0脂肪酸、C12:0脂肪酸、C14:0脂肪酸の割合が増加していた。さらに、これらのうち2種類の形質転換体(「GtTE_587-Nanno」及び「GtTE_597-Nanno」)においては、野生株では全く検出されないC8:0脂肪酸も検出された。さらに、これらすべての形質転換体において、中鎖脂肪酸(C8〜C14脂肪酸)の生産量が野生株と比べて増加していた。
以上のように、本発明で規定するアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子の発現を促進させることで、中鎖脂肪酸の生産性及び生産される全脂肪酸の生産性を向上させた形質転換体を作製することができる。そしてこの形質転換体を培養することで、中鎖脂肪酸の生産性を向上させることができる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2014年12月5日に日本国で特許出願された特願2014-246573に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (20)

  1. 宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が導入されている形質転換体を培養し、培養物から脂質を採取する、脂質の製造方法。
    (A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質転換体の細胞内で生産される脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる方法。
    (A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  3. 宿主に下記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子を導入して形質転換体を得る工程を含む、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
    (A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  4. 前記タンパク質(C)が下記タンパク質(C1)〜(C20)のいずれか1つである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
    (C1)配列番号1の1位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C2)配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C3)配列番号1の488位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C4)配列番号1の497位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C5)配列番号1の507位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C6)配列番号1の517位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C7)配列番号1の527位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C8)配列番号1の537位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C9)配列番号1の547位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C10)配列番号1の557位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C11)配列番号1の567位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C12)配列番号1の577位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C13)配列番号1の587位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C14)配列番号1の597位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C15)配列番号1の607位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C16)配列番号1の608位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C17)配列番号1の609位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C18)配列番号1の610位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C19)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C20)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  5. 前記タンパク質(A)〜(C)のいずれか1つをコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(f)のいずれか1つからなる遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
    (a)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
    (b)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (d)配列番号3の373位〜861位の塩基配列からなるDNA。
    (e)配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (f)前記DNA(d)又は(e)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 前記宿主が微生物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記微生物が大腸菌である、請求項6記載の方法。
  8. 前記微生物が微細藻類である、請求項6記載の方法。
  9. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項8記載の方法。
  10. 前記脂質が炭素数12の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 下記タンパク質(A)〜(C)。
    (A)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号1の611位〜772位のアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  12. 前記タンパク質(C)が下記タンパク質(C1)〜(C20)のいずれか1つである、請求項11記載のタンパク質。
    (C1)配列番号1の1位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C2)配列番号1の487位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C3)配列番号1の488位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C4)配列番号1の497位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C5)配列番号1の507位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C6)配列番号1の517位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C7)配列番号1の527位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C8)配列番号1の537位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C9)配列番号1の547位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C10)配列番号1の557位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C11)配列番号1の567位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C12)配列番号1の577位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C13)配列番号1の587位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C14)配列番号1の597位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C15)配列番号1の607位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C16)配列番号1の608位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C17)配列番号1の609位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C18)配列番号1の610位〜772位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (C19)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列との同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
    (C20)前記タンパク質(C1)〜(C18)のいずれか1つのアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質。
  13. 請求項11又は12記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  14. 下記DNA(a)〜(f)のいずれか1つからなる遺伝子。
    (a)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列からなるDNA。
    (b)配列番号2の1831位〜2319位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)前記DNA(a)又は(b)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (d)配列番号3の373位〜861位の塩基配列からなるDNA。
    (e)配列番号3の373位〜861位の塩基配列との同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (f)前記DNA(d)又は(e)の塩基配列を有し、かつアシル−ACPチオエステラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  15. 請求項13又は14記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  16. 請求項13若しくは14記載の遺伝子、又は請求項15記載の組換えベクターを、宿主に導入してなる形質転換体。
  17. 前記宿主が微生物である、請求項16記載の形質転換体。
  18. 前記微生物が大腸菌である、請求項17記載の形質転換体。
  19. 前記微生物が微細藻類である、請求項17記載の形質転換体。
  20. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項19記載の形質転換体。
JP2016562360A 2014-12-05 2015-11-06 アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法 Active JP6709169B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014246573 2014-12-05
JP2014246573 2014-12-05
PCT/JP2015/081357 WO2016088511A1 (ja) 2014-12-05 2015-11-06 アシル-acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2016088511A1 true JPWO2016088511A1 (ja) 2017-09-14
JP6709169B2 JP6709169B2 (ja) 2020-06-10

Family

ID=56091463

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016562360A Active JP6709169B2 (ja) 2014-12-05 2015-11-06 アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20170335353A1 (ja)
JP (1) JP6709169B2 (ja)
AU (1) AU2015356285A1 (ja)
WO (1) WO2016088511A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2013367325B2 (en) 2012-12-27 2019-12-19 Kao Corporation Acyl-ACP thioesterase
US10066248B2 (en) 2014-03-03 2018-09-04 Kao Corporation Method of producing lipid by using β-ketoacyl-ACP synthase
WO2015194628A1 (ja) 2014-06-20 2015-12-23 花王株式会社 脂質の製造方法
JP6568718B2 (ja) 2015-05-22 2019-08-28 花王株式会社 脂質の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2013367325B2 (en) * 2012-12-27 2019-12-19 Kao Corporation Acyl-ACP thioesterase
AU2014288484B2 (en) * 2013-07-12 2020-04-23 Kao Corporation Acyl-ACP thioesterase
JP6319889B2 (ja) * 2014-03-19 2018-05-09 花王株式会社 アシル−acpチオエステラーゼ改変体を用いた脂質の製造方法
JP6332855B2 (ja) * 2014-06-23 2018-05-30 花王株式会社 アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20170335353A1 (en) 2017-11-23
WO2016088511A1 (ja) 2016-06-09
JP6709169B2 (ja) 2020-06-10
AU2015356285A1 (en) 2017-05-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6491881B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼ
JP6310544B2 (ja) β−ケトアシル−ACPシンターゼを用いた脂質の製造方法
JP6592434B2 (ja) 脂質の製造方法
JP6629749B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法
JP6779652B2 (ja) 脂質の製造方法
JP6381139B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼ
US10337037B2 (en) Method of producing lipid
JP6319889B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼ改変体を用いた脂質の製造方法
JP6709169B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法
JP6779664B2 (ja) 脂質の製造方法
JP6580912B2 (ja) 脂質の製造方法
JP6587468B2 (ja) 脂質の製造方法
JP6332855B2 (ja) アシル−acpチオエステラーゼを用いた脂質の製造方法
WO2017022587A1 (ja) 脂質の製造方法
JP2019216643A (ja) 脂質の製造方法
JP2020031561A (ja) 脂質の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181002

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20181002

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191105

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191213

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200114

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20200228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200318

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200428

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200522

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6709169

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250