JPWO2016068217A1 - 末梢血単核球又は末梢血単核球より分泌される因子を伴う線維芽細胞を含む細胞シート - Google Patents

末梢血単核球又は末梢血単核球より分泌される因子を伴う線維芽細胞を含む細胞シート Download PDF

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Abstract

本発明は、難治性皮膚潰瘍を治療する上で有効な細胞シート及び該細胞シートを製造する方法を提供する。特に、血液循環が十分ではない虚血性の潰瘍に対し、該細胞シートを移植することにより、人工真皮等にて誘発される様な免疫拒絶反応を生じることなく、該潰瘍部位の十分な治癒改善を実現する細胞シート及びその製造方法を提供する。本発明は末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート及びトランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートである。該シートでは、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量が大幅に増加しており、該細胞シートを、糖尿病マウス背部に作製した皮膚潰瘍部位に移植したところ、線維芽細胞単独での細胞シートの移植に比して、有意な創傷部位の治癒率改善を実現した。更に、該発明に係る末梢血単核球及び線維芽細胞に、患者自身から取得した細胞を用いることにより、移植における免疫拒絶反応を抑制することができる。

Description

本発明は、末梢血単核球又は末梢血単核球より分泌される因子を伴う線維芽細胞を含む細胞シートおよび該細胞シートの製造方法に関する。
難治性皮膚潰瘍とは、皮膚にできた創(きず)において、正常であるなら治癒すべきものが、感染、血管障害、知覚障害といった異常な要因により、治り難い潰瘍状態になったもののことであり、例として、褥瘡、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、静脈不全、膠原病、血管炎等が挙げられる。わが国には、多くの難治性皮膚潰瘍で苦しむ患者が存在し、年間の難治性皮膚潰瘍患者は130万人に上る。現在、該潰瘍に対する治療法としては、主にフィブラストスプレーや人工真皮が用いられている。
フィブラストスプレーは、創傷治癒に関連する一群の成長因子の一種であるFGF−2を精製して作られた薬剤であり、患部にスプレーするだけで治療することが出来る。しかしながら、該薬剤を使用する場合、病変部に最低限の血流があることが治療効果を得るために必要であるため、虚血性の潰瘍に対する治療効果は、必ずしも十分ではない、という問題点がある。
一方、人工真皮は、豚または牛由来のコラーゲンを原材料とするコラーゲンスポンジとシリコーンシートの二層構造からなる人工の真皮様構造体であり,皮膚欠損部分に使用することで,真皮再生の足場として機能することが知られている。しかしながら、該構造体は、患者によっては免疫拒絶反応が起こる可能性がある点、虚血性潰瘍では多くの場合、感染を伴っており、こうした病変部の血流が悪い状態では生着が悪く、感染部位での使用には適していない点、更に、価格が高価である点等により、実際に使用される頻度は極めて低い。
斯様に、既存の治療法では、虚血性潰瘍に対しては十分な改善が得られない症例や潰瘍治癒までに長期間を要する症例などが多く見受けられ、特に、人工真皮による治療法においては、免疫拒絶反応が生じるといった弊害もあり、これらの課題をクリアした効果的な治療法の確立が望まれている。
細胞移植療法は様々な疾患や組織損傷に対する有効な治療手段として注目されている。発明者らは、循環器疾患に対する骨髄細胞を用いた細胞移植療法を長年に渡り研究してきており、1999年には重症下肢虚血に対する自己骨髄細胞移植治療を世界に先駆けて実施している(非特許文献1)。その後、骨髄細胞では侵襲性が高すぎるため、該治療の低侵襲化の目的の為に、移植に用いる細胞種を骨髄細胞から、採血等により容易に入手可能な末梢血単核球に変更することに成功し、基礎実験においてその有効性を確認している。
しかし、単なる移植細胞の移植では、組織に対して生着率が必ずしも高くない、といった問題点が指摘されており、より高い移植による効果を得るために、近年、移植用の生物材料として、所望の細胞をシート状に培養した細胞シートの開発が進められている。細胞シートは、所望の細胞を大量に、損傷部位に定着させることができ、更には、レシピエント組織の特性に合わせて、適度に組織化させた細胞集団を移植することも可能とする、大変有用な治療用材料である。
該細胞シートは、様々な外科領域において、標的部位での細胞生着率を向上させる技術として研究され、例えば、心臓分野では梗塞心における高い生着性とそれに伴う心筋再生誘導の促進が報告されており(非特許文献2、3)、表皮や粘膜組織の再生への応用として、例えば「角膜再生上皮シート」や食道癌除去後の組織再生を目指す「食道再生上皮シート」などへの応用が考えられている(特許文献1)。
しかしながら、通常の培養細胞にかわり、細胞シートを難治性皮膚潰瘍の治療に用いることは従来、何ら報告されておらず、該疾患の治療法としての効果はこれまで不明である。特に血流の悪い状態にある虚血性潰瘍などの疾患治療に用いた場合、該潰瘍の十分な改善・治癒を実現するためには、移植細胞シートにより何らかの形で、該潰瘍部位での血流改善の誘導が必要であり、又、人工真皮による治療法において認められるような免疫拒絶反応の発生を回避することも重要な課題である。このように、細胞シートの移植については、これまで様々な報告はあるものの、該細胞シートの機能において、その移植用生物材料としての難治性皮膚潰瘍の治療に適した構成並びにその製造条件については、未だ十分に解明されるに至っていない。
特許第4716479号
Esato et al. 2002、Cell Transplant. Vol.11, pp. 747−752 Miyahara et al. 2006、Nature Medicine Vol.12, pp.459−465 Alshammary et al. 2013, Surg. Today. Vol.43 pp.970−976
本発明は、難治性皮膚潰瘍を治療する上で有効な細胞シート及び該細胞シートを製造する方法を提供する。特に、血液循環が十分ではない虚血性の潰瘍に対して、該細胞シートを移植することにより、人工真皮等にて誘発される様な免疫拒絶反応を生じることなく、該潰瘍部位の十分な治癒改善を実現する細胞シート及びその製造方法を提供する。
発明者らは、細胞シート及びその製造方法につき鋭意研究を行った結果、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおいて、末梢血単核球及び線維芽細胞それぞれ単独での培養細胞に比べ、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量が大幅に増加していることを見出した。更に、発明者らは、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを、糖尿病マウス又は糖尿病ウサギの背部に作製した皮膚潰瘍部位に移植したところ、皮膚欠損用創傷被覆材のみ(対照群)及び線維芽細胞単独での細胞シートによる移植のいずれに対しても(末梢血単核球単独では、細胞シートを形成できず)、有意な創傷部位の治癒率の改善を見出すことにより、本発明を完成させた。
本発明では、該発明に係る末梢血単核球及び線維芽細胞に、移植を行う難治性皮膚潰瘍患者自身から取得した両細胞を用いることにより、移植における免疫拒絶反応を抑制することができる。
特に、採血等という容易且つ高額な設備の不要な方法により入手可能な末梢血単核球を用いる為、自己の細胞を用いる再生医療でありながら、低侵襲かつ安全な治療を、安価に行うことが可能となった。
更に、発明者らは、末梢血単核球及び線維芽細胞を培養基材上で共培養し、細胞シートを形成させた後、該シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養し(低酸素プレコンディショニング)、その後、該シートを培養基材から剥離することで得られる細胞シートは、該プレコンディショニング処理を行わないものに比べ、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量が大幅に増加していることを、マウスでのみならず、ヒト由来の細胞においても見出した。
発明者らは、末梢血単核球を線維芽細胞に加えた細胞シートにおいて、線維芽細胞単独での培養シートに比べ、該細胞シートより産生される血管成長因子量が増加する原因について、更に研究を進め、共存する末梢血単核球より産生されるトランスフォーミング増殖因子(Transforming Growth Factor;TGF)又は血小板由来増殖因子(Platelet−Derived Growth Factor;PDGF)が、該血管成長因子産生量の増加を誘導していることを新たに見出した。
本現象を応用して、発明者らは、線維芽細胞に末梢血単核球を加える代わりに、末梢血単核球を含まない線維芽細胞を含む細胞シートにトランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を与えることで、同様の効果(血管成長因子の産生量増加)を再現できることを見出し、更に本発明を完成させた。
本発明により、患者由来ではない他家の線維芽細胞による細胞シートと、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子のリコンビナントタンパクを用意することで、治療ツールとしての産業化の可能性が期待される。
従って、本発明は以下の(1)〜(17)である。
(1)トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シート。
(2)前記線維芽細胞が、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得したものであることを特徴とする(1)に記載の細胞シート。
(3)前記線維芽細胞の播種と同時に前記トランスフォーミング増殖因子又は前記血小板由来増殖因子による刺激開始することを特徴とする(1)又は(2)に記載の細胞シート。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の細胞シートを含有する難治性皮膚潰瘍治療用移植材料。
(5)以下の(a)〜(c)の工程を含む細胞シートを製造する方法。
(a)培養基材上で線維芽細胞を播種し、該細胞を含む細胞シートを形成させる工程、
(b)該細胞シートを、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子により刺激する工程、
(c)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
(6)前記(a)の工程と(b)の工程を同時に行うことを特徴とする(5)に記載の細胞シートを製造する方法。
(7)前記工程(a)の前に、
(a0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、線維芽細胞を取得する工程、
を含む、(5)又は(6)に記載の細胞シートを製造する方法。
(8)末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート。
(9)前記末梢血単核球及び/又は前記線維芽細胞が、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得したものであることを特徴とする(8)に記載の細胞シート。
(10)末梢血単核球及び線維芽細胞を共培養することで製造される(8)又は(9)に記載の細胞シート。
(11)末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種し、線維芽細胞を1.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種することで、前記共培養を実施することを特徴とする(10)に記載の細胞シート。
(12)前記共培養を、末梢血単核球と線維芽細胞とを同時に播種することで開始することを特徴とする(10)又は(11)に記載の細胞シート。
(13)前記細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養することを特徴とする、(8)乃至(12)のいずれかに記載の細胞シート。
(14)(8)乃至(13)のいずれかに記載の細胞シートを含有する難治性皮膚潰瘍治療用移植材料。
(15)以下の(d)〜(e)の工程を含む細胞シートを製造する方法。
(d)培養基材上で末梢血単核球と線維芽細胞を共培養し、該細胞を含むからなる細胞シートを形成させる工程、
(e)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
(16)前記工程(d)の前に、
(d0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、末梢血単核球及び/又は線維芽細胞を取得する工程、
を含む、(15)に記載の細胞シートを製造する方法。
(17)前記工程(d)と(e)の間に、
(d2)工程(d)の細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養する工程、
を含む、(15)又は(16)に記載の細胞シートを製造する方法。
本発明によって、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量を大幅に増加し、糖尿病マウスの皮膚潰瘍部位に移植することで、当創傷部位の有意な治癒率上昇を誘導する細胞シートを提供することができる。
従って、本発明により、難治性皮膚潰瘍、特に虚血性潰瘍の治療に用いることのできる移植用生物材料として、血管新生による血流改善を実現し、尚且つ、患者自身の細胞を使うことで免疫拒絶反応の生じないという利点を有する細胞シート及び/又は他家由来の線維芽細胞シート及びトランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子のリコンビナントタンパクを大量に製造し、治療ツールを提供することで、従来ない画期的な難治性皮膚潰瘍の治療法を確立することが可能となる。
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート画像。 末梢血単核球培養、線維芽細胞を含む細胞シート及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート作製の流れ(Normo&Hypo条件)及びそれぞれの血管成長因子産生能。 陰性対照、陽性対照(フィブラストスプレー処方群)、線維芽細胞を含む細胞シート及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの移植による創傷面積治癒率の変動(A)と陰性対照、陽性対照及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植群の創傷治癒状態(B)。 末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植群とフィブラストスプレー処方群の病理像解析。 マウスにおけるアロ移植実験;C57BL/6マウスから作製した、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートのC3Hマウスの背部への移植。A;末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植群(No.1、No.2)及びフィブラストスプレー処方群の創傷治癒状態(0、7、14日目)。B;コントロール群、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植群及びフィブラストスプレー処方群の創傷面積治癒率。 細胞シート残存試験;背部皮膚全層欠損した糖尿病メスC57BL/6マウスへ、オスC57BL/6マウス由来の末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを移植し(No.1−4)、3週間後の移植周辺部位でのオス由来遺伝子(SRY、ZFY1、ZFY2)の検出を行った。 ウサギ由来の末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおける血管成長因子産生能(A)及び治療効果(B)。A;末梢血単核球培養、線維芽細胞を含む細胞シート及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの培養上清における血管成長因子濃度。B;コントロール群及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植群の0日及び21日目の創傷治癒状態。 末梢血単核球培養上清(conditioned medium)による培養線維芽細胞からの血管成長因子産生誘導(A)及び培養末梢血単核球又は培養線維芽細胞から分泌されるトランスフォーミング増殖因子(B)又は血小板由来増殖因子(C)の定量。 トランスフォーミング増殖因子及び血小板由来増殖因子の血管成長因子産生誘導(A)及び抗トランスフォーミング増殖因子抗体及び抗血小板由来増殖因子抗体による末梢血単核球培養上清における血管成長因子産生の減弱(B)。 トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートによる治療効果。移植後14日目の創傷面積治癒率を示す。 ヒト由来末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの作製(A)及び血管成長因子産生能の確認(B)。 ヒト由来線維芽細胞を含む細胞シートにおける、活性化因子候補刺激による血管成長因子産生能の検討。各因子の投与濃度及び投与後の培養上清中の血管成長因子濃度を示す。 ヒト由来線維芽細胞を含む細胞シートを用いた、トランスフォーミング増殖因子、血小板由来増殖因子及び塩基性線維芽細胞増殖因子刺激による血管成長因子産生能(A)及び細胞増殖能(B)の用量依存性検討。
本発明の第1の態様は、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートである。
本発明において、「細胞シート」とは、細胞同士がシート状に結合した細胞の培養物の総称であり、該細胞シートは、1つの細胞層からなるものでも、2以上の細胞層からなるものであってもよい。
ここで「末梢血単核球(PBMNC)」とは、末梢血管より採取される血液中に含まれるリンパ球及び単球等からなる白血球の総称名であり、円形に近い核を有する細胞を多く有する為、該総称にて呼ばれる。代表的な構成細胞及び構成比としては、全細胞中、およそ70−80%がリンパ球であり、残り20−30%は単球やマクロファージ、樹状細胞等により構成され、数%程度、骨髄由来の幹細胞が存在していてもよいが、該構成細胞及び構成比に限定されるものではなく、当該技術分野において末梢血単核球画分として通常調製される条件により取得した細胞群であればよく、該調製条件や採血される個体に応じて適宜変動することもある。具体的な調製方法については実施例〔0067〕に記すが、これに限定されるものではない。
本発明に係る「線維芽細胞」とは、結合組織を構成する該組織固有の細胞である。正常組織においては特に顕著な機能を有しないが,揖傷が加わると揖傷部に遊走し,コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などを分泌することで、細胞外マトリックスの産生を開始し,細胞外マトリックスを更新する機能を有する。これ以外にも創の収縮を誘起する等,創傷治癒過程の中で重要な働きを果たしている。該細胞の調製方法については、例えば、実施例〔0068〕に記すが、これに限定されるものではなく、当該技術分野において線維芽細胞画分として通常調製される条件により取得した細胞群であればよい。
本発明の細胞シートの形成に用いられる末梢血単核球及び線維芽細胞は、該細胞を採取することの可能ないかなる動物種由来であってもよく、好ましくは哺乳類であり、特に好ましくは、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物等であり、更に好ましくはヒトである。
また、本発明に係る末梢血単核球及び線維芽細胞は、いかなる動物個体から取得してもよいが、好ましくは、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得してもよい。この様に治療対象の個体自身の細胞を用いることにより、移植時に発生する免疫拒絶反応を抑制することが可能となる。
本発明に係る細胞シートは、前記末梢血単核球及び前記線維芽細胞を含む細胞シートである。「末梢血単核球及び線維芽細胞を含む」とは、両種の細胞群を、主要な構成細胞として、同一の細胞シートに含有していればよく、その製造方法については、特に限定はしないが、例えば、該末梢血単核球及び該線維芽細胞それぞれを末梢血単核球画分及び線維芽細胞画分として、ある程度の純度で調製し、これを共培養することで製造してもよい。ここで共培養とは、2種類以上の異なる細胞を一緒に培養することであり、本発明においては、少なくとも末梢血単核球と線維芽細胞とを一緒に培養することを指す。
該共培養において、末梢血単核球及び線維芽細胞をどの様に播種するかについては、特に限定はしないが、好ましくは、両細胞を同時に播種することで開始してもよい。
本発明に係る末梢血単核球及び線維芽細胞それぞれの、培養基材上への播種密度については、特に限定はしないが、発明者らにより検討された播種条件(実施例[0069]及び〔0071〕参照のこと)によると、好ましくは、末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで、線維芽細胞を1.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種してもよく、より好ましくは、末梢血単核球を5.5x10個/cm〜1.0x10個/cmで、線維芽細胞を1.5x10個/cm〜1.0x10個/cmで播種してもよく、更に好ましくは、末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.0x10個/cmで、線維芽細胞を6.0x10個/cm〜1.0x10個/cmで播種してもよい。
本発明の第2の態様は、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを製造する方法である。該発明は、上記した末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを製造する方法であればどの様な方法でもよく、特に限定はしないが、例えば、
(d)〜(e)の工程を含む細胞シートを製造する方法であり、該工程(d)及び(e)とは;
(d)培養基材上で末梢血単核球と線維芽細胞を共培養し、該細胞からなる細胞シートを形成させる工程、
(e)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
である細胞シートの製造方法であってもよい。
ここで(d)の工程は、培養基材上で末梢血単核球と線維芽細胞の共培養を行うことで、該細胞からなる細胞シートの形成が可能であれば、いかなる方法を用いてもよく、用いられる末梢血単核球及び線維芽細胞に適した、当該技術分野において通常実施される条件等で行うことができる。例えば、培養温度は30〜40℃、好ましくは36〜38℃、CO濃度は0〜10%、好ましくは4〜6%、O濃度は大気中酸素濃度(およそ20%)の条件を挙げることができるが、この条件は限定されるものではなく、適宜、培養温度、CO濃度、O濃度を選択することができる。例えば、マウス血液から調製した末梢血単核球及びマウス尾から調製した線維芽細胞を用いて形成した細胞シートにおける培養温度は37℃、CO濃度は5%、O濃度は大気中酸素濃度(およそ20%)であってもよい。培養時間は、所望の細胞シートが形成されるために必要な時間であれば、特に限定されるものではなく、例えば、10時間〜240時間程度であってもよく、好ましくは、12時間〜168時間程度の培養時間であり、更に好ましくは、48時間〜96時間にて良好な成果を得ている。
また、細胞シートを形成すべく、最初に播種する細胞密度は、細胞培養において通常実施される条件であればよく、特に限定はしないが、状態の良好な細胞シートを製造する為には、細胞播種時にほぼコンフルエントな状態であることが好ましい。具体的には、前述した様に、好ましくは、末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで、線維芽細胞を1.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種してもよく、より好ましくは、末梢血単核球を5.5x10個/cm〜1.0x10個/cmで、線維芽細胞を1.5x10個/cm〜1.0x10個/cmで播種してもよく、更に好ましくは、末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.0x10個/cmで、線維芽細胞を6.0x10個/cm〜1.0x10個/cmで播種してもよい。また、細胞シート形成後の細胞の状態は、健康な状態であれば特に限定はしないが、好ましくは、コンフルエントな状態となっていてもよい。
ここで、「培養基材」とは細胞がその表面上で細胞シートを形成し得るものであればいかなるものであってもよく、少なくとも、細胞が接着し得るような平坦な部分を具備し、典型的には、細胞培養皿、細胞培養ボトル(又はフラスコ)であり、市販される培養用ディッシュなどが使用可能であり、材質も特に限定されない。培養基材の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
また、「培養基材」の培養表面は、温度変化等によってその物性が変化する材料(温度応答性材料)で作製されているか、あるいは、該温度応答性材料によって培養基材の培養表面が層状に被覆されていてもよい。
更に、本培養基材の培養表面上には、細胞接着性成分および/または細胞接着阻害性成分が存在していてもよい。細胞接着性成分としては、細胞培養技術において、培養表面に細胞を接着させるために通常使用される成分であればいかなるものでもよく、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、カドヘリン、ゼラチン、フィブリノゲン、フィブリン、ポリLリジン、ヒアルロン酸、多血小板血漿、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。細胞接着阻害性成分も、細胞培養技術において、培養表面への細胞の接着を阻害させるために通常使用される成分であればいかなるものでもよく、例えば、アルブミンやグロブリンなどが挙げられる。これらの成分で細胞培養基材の培養表面上を被覆する場合、各成分によって、培養表面を被覆するために使用する溶液の濃度が異なるため、予備的な実験等、当業者であれば容易に検討できる方法によって、各成分の被覆のために適当な溶液濃度を決定することができる。
本発明に係る細胞シートの製造方法において使用される培地は、培養する末梢血単核球及び線維芽細胞の由来や培養条件に適した培地を適宜選択して使用することができる。例えば、一般的に使用可能な培地として、MEM、DMEM、F12、IMEM、IMDM、RPMI−1640、Neurobasalなどを挙げることができる。これらの培地は市販のものを購入して使用してもよい。また、これらの培地は単独で用いても、また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、末梢血単核球についてはRPMI−1640を、線維芽細胞についてはDMEMを用いてもよいが、これらに限定はされない。
特にヒト由来の末梢血単核球及び線維芽細胞を培養する場合においては、限定はしないが、AIM V(登録商標)培地CTSTMを用いてもよい。
さらに、培地に対し、必要に応じて適当な添加物を加えて使用してもよい。添加物としては、例えば、L型アミノ酸類(例としては、L−アルギニン、L−シスチン、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−トリオニン、L−トリプトファン、L−チロシンなど)、ビタミン類(例えば、葉酸、リボフラビン、チアミンなど)、D−グルコース、その他、ウシ胎児血清(FBS)、ウマ血清などの動物血清などを含んでもよい。また、緩衝剤(例えば、PBS、HEPES、MES、HANK’Sなど)を適宜培地に加えてもよい。さらに、培養する細胞の由来や目的等に応じて、適宜、細胞成長因子などを添加してもよい。
特にヒト由来の末梢血単核球及び線維芽細胞を培養する場合においては、限定はしないが、該細胞を採取した被験者より血液を採血し、該血液から血清を調製し、これを用いてもよい。
例として、末梢血単核球及び線維芽細胞からなる細胞シートに用いる培地としては、末梢血単核球の培養用培地である、RPMI−1640にFBSを10%になるように加え、ペニシリン100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/ml及び1mM L−グルタミンを添加したものと、線維芽細胞用培地である、DMEMにFBSを20%になるように加え、ペニシリン100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/ml及び1mM L−グルタミンを添加したもの、を適宜混合したものでであってもよい。
(e)の工程は、前記条件にて培養後、細胞シートを培養基材から剥離する工程である。細胞シートの培養基材部からの剥離は、シート状の構造が破損されないような方法で実施することができ、例えば、シート状細胞培養物を直接ピンセットなどによって摘み、培養表面から剥離させる、あるいは、ピペッティングにより細胞を培養表面との間を剥離する等、物理的な手法を用いてもよい。あるいは、シート状構造に破損が生じない限り、トリプシン、コラゲナーゼなどの酵素処理等を行ってもよく、細胞の性質に応じて適切な方法を選択することができる。あるいは、細胞シート上面に、PVDF膜、ニトロセルロース膜のような、細胞に親和性を有する基材を被せて、細胞を膜に写し取ることによって細胞を剥離、回収することもできる。
温度応答性材料で表面を被覆した細胞培養基材を使用した場合には、容器の温度を、例えば、0〜30℃程度に下げたのちに、上記、細胞の剥離、回収を実施してもよい。
なお、前述した、(d)〜(e)の工程を含む細胞シートを製造する方法の工程(d)の前に、
(d0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、末梢血単核球及び/又は線維芽細胞を取得する工程、
を含ませてもよい。該工程を加えることによって、該製造方法によって製造された、末梢血単核球及び線維芽細胞を含む細胞シートにより、移植時の免疫拒絶反応を抑制することが可能となる。
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係る細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養することを特徴とする細胞シート及び該細胞シートの製造方法である。
これまで発明者らは、難治性皮膚潰瘍のみならず、虚血性心疾患等のその他の疾患に対する治療に有用な細胞シートの製造方法についても、長年研究を行ってきており、一旦、培養基材上で細胞を培養し、細胞シートを形成させた後、該シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養し(低酸素プレコンディショニング)、その後、該シートを培養基材から剥離することで得られる細胞シートは、該プレコンディショニング処理を行わないものに比べ、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量が大幅に増加し、更に、該処理を施した細胞シートを陳旧性心筋梗塞モデルマウスの不全心に移植したところ、未処理の細胞シートによる移植に比べ、有意な心機能(左室駆出率及び左室内径短縮率)の改善が生じることを見出している(特願2014−188322として既に出願済)。
本発明の第1の態様に係る、末梢血単核球及び線維芽細胞からなる細胞シートにおいても、低酸素プレコンディショニングを施すことで、末梢血単核球と線維芽細胞とを共培養する効果に加え、更に大幅な血管成長因子の産生量増大を確認しており(実施例〔0075〕)、予想を大きく上回る効果を見出している。
斯様な低酸素プレコンディショニングを施した、末梢血単核球及び線維芽細胞からなる細胞シートの製造方法は、特に限定はしないが、例としては、
前述した、本発明の第2の態様に係る、(d)〜(e)の工程を含む細胞シートを製造する方法の工程(d)と(e)の間に、
(d2)工程(d)の細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養する工程、
を含む、末梢血単核球及び線維芽細胞からなる細胞シートを製造する方法
であってもよい。
(d2)の工程は、工程(d)にて調製した細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養する工程である。ここで低温及び低酸素条件及び処理期間とは、細胞シートを構成する末梢血単核球及び線維芽細胞の由来や培養条件等によって異なり、予備的な実験等、当業者であれば容易に検討できる方法によって、細胞シートごとに適当な条件を決定することができるが、例えば、低酸素条件は、O濃度が0%〜8%、好ましくは0.1%〜5%、更に好ましくは2%であり、低温条件は培養温度が30℃〜36℃、好ましくは32℃〜34℃、更に好ましくは33℃であり、そして処理期間は12時間〜72時間であり、好ましくは24時間でもよい。
また、前記処理期間経過後、細胞シートは、すぐに(e)の工程に移行してもよく、一定期間通常の培養条件に戻してから(e)の工程に移行してもよい。該条件は、細胞シートごとに設定することが出来、一定期間通常の培養条件に戻す場合の一定期間についても、特に限定はしないが、例えば、0時間〜12時間であってもよく、好ましくは0時間〜6時間であり、更に好ましくは0時間(通常の培養条件に戻さない)であってもよい。
本発明に係る末梢血単核球及び線維芽細胞を含む細胞シートは、様々な動物の組織、器官、臓器等の機能不調を改善する目的で、移植を行う為の生物材料として使用することが出来る。ここで「動物」とは、特に限定はしないが、移植により機能改善がなされることが期待される動物が望ましく、具体的には、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことであり、好ましくはヒトである。
更に、本発明により製造された細胞シートを移植する組織、器官、臓器等については、特に限定はしないが、皮膚、骨格筋、血管などが挙げられ、好ましくは、皮膚である。
皮膚を対象とする場合の疾患としては、特に限定はしないが、褥瘡、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、静脈不全、膠原病、血管炎などに代表される難治性皮膚潰瘍が挙げられる。
本発明の第4の態様は、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートである。
トランスフォーミング増殖因子(Transforming growth factor、TGF)は増殖因子の1つであり、組織発生、細胞分化、胚発育等において重要な役割を果たすことが知られている。タイプはアルファ型とベータ型の2つに大別され、前者はいくつかのガンでの過剰発現や、マクロファージ、脳細胞、ケラチノサイト等での上皮の発生誘導への関与が報告されている。これに対し後者は、腎臓、骨髄、血小板等多様な細胞で産生されており、主に5種類のサブタイプ(ベータ1〜ベータ5)が存在している。
発明者らは、末梢血単核球を伴った線維芽細胞を含む細胞シート(本発明の第1の態様)において、血管成長因子の産生量が増加することの原因を解明するべく、鋭意検討を行ったところ、該血管成長因子の産生量増加は、末梢血単核球より分泌されるトランスフォーミング増殖因子(特にTGF−ベータ1)が、細胞シートを構成する線維芽細胞を活性化することで誘導されることを明らかにした(図8、9、12、13)。
ここでのトランスフォーミング増殖因子は、好ましくはベータタイプであり、特に好ましくはベータ1サブタイプであるが、これに限定されるものではない。
血小板由来増殖因子(Platelet−Derived Growth Factor、PDGF)は主に間葉系細胞(線維芽細胞、平滑筋細胞、グリア細胞等)の遊走および増殖などの調節に関与する増殖因子であり、PDGF/VEGFファミリーに属する。主に巨核球によって産生されるほか、血小板のアルファ顆粒中にも含まれ、更に、上皮細胞や内皮細胞など様々な細胞において産生される。PDGFにはPDGF−A、B、CおよびDの少なくとも4種類が存在し、A鎖およびB鎖はジスルフィド結合を形成することによりホモあるいはヘテロ2量体構造をとり3種類のアイソフォーム(PDGF−AA、AB、BB)を有している。
発明者らは、トランスフォーミング増殖因子と同様に、末梢血単核球より分泌される血小板由来増殖因子(特にPDGF−BB)によって、細胞シートを構成する線維芽細胞が活性化され、血管成長因子の産生量増加が誘導されることを明らかにした(図8、9、12、13)。また、ヒト由来末梢血単核球及び線維芽細胞の細胞混合シートにおいてのみ特異的に分泌上昇している因子の中にPDGF−AAが含まれていることを見出した(図12)。
本発明におけるトランスフォーミング増殖因子は、特に限定はしないが、好ましくはPDGF−AA又はPDGF−BBであり、特に好ましくはPDGF−BBである。
本発明において「トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた」とは、該因子を、刺激の受容対象である線維芽細胞を含む細胞シートに直接接触させることにより、該細胞上の各因子に対する受容体に、該因子が結合することによって該受容体に係る情報伝達系が作動することである。
ここで、該因子による刺激の伝達方式としては、特に限定はしないが、該因子を、細胞シートを培養中の培地に投与する、該因子を徐放的に放出する物質を該細胞シート近傍に添加する、該因子を産生する細胞等を該細胞シートと共培養する、等が例として挙げられ、好ましくは、培地に直接投与する方式である。
本発明に係る、前記トランスフォーミング増殖因子又は前記血小板由来増殖因子による刺激は、前記線維芽細胞の播種と同時に開始してもよく、一度細胞シートが形成された後に刺激を加えてもよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、播種と同時に開始する刺激であってもよい。
また、前記線維芽細胞を、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得してきてもよい。該個体から取得した線維芽細胞から細胞シートを作製することにより、移植時の免疫拒絶反応を抑制することが可能となる。
本発明第4の態様に係る線維芽細胞の由来、調製方法、培養基材上への播種密度などは本発明の第1の態様に準ずるものであり、一例を実施例〔0068〕−〔0069〕に記すが、これに限定されるものではない。
本発明の第5の態様は、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子により刺激した線維芽細胞を含む細胞シートを製造する方法であり、該発明は、特に限定はしないが、例えば、
(a)〜(c)の工程を含む細胞シートを製造する方法であり、該工程(a)〜(c)とは;
(a)培養基材上で線維芽細胞を播種し、該細胞を含む細胞シートを形成させる工程、
(b)該細胞シートを、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子により刺激する工程、
(c)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
である細胞シートの製造方法であってもよい。
ここで(a)の工程は、培養基材上で線維芽細胞の培養を行うことで、該細胞を含む細胞シートの形成が可能であれば、いかなる方法を用いてもよく、用いられる線維芽細胞に適した、当該技術分野において通常実施される条件等で行うことができる。具体的な例としては、〔0068〕〜〔0069〕に記した本発明第2の態様に関する記載の内、線維芽細胞についての部分が挙げられる。
該工程(a)の前に、
(a0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、線維芽細胞を取得する工程、
を含ませてもよい。該工程を加えることによって、該製造方法によって製造された、線維芽細胞を含む細胞シートにより、移植時の免疫拒絶反応を抑制することが可能となる点は、〔0037〕に記載した本発明第2の態様における工程(d0)と同様である。
(b)の工程は、工程(a)にて形成した細胞シートを、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子により刺激する工程であり、刺激する方式として特に限定はなく、例えば、該因子を、細胞シートを培養中の培地に投与してもよい。
この場合の、投与されるトランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子の濃度としては、形成された細胞シートを構成する線維芽細胞に存在する、該因子に対する受容体の情報伝達系が活性化されるのに十分な濃度であればよく、個々の培養条件によっても異なる為、特に限定はしないが、例えば、トランスフォーミング増殖因子においては0.25ng/mL以上、好ましくは2.5mg/mL以上であり、血小板由来増殖因子においては5ng/mL以上、好ましくは10ng/mL以上である。
なお、(a)の工程は、前記(b)の工程を同時に行ってもよく、具体的には、線維芽細胞を含む細胞シートを形成させるべく、培養基材上に線維芽細胞を播種するのと同時に、所定量のトランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子を添加するのでもよい。
(c)の工程は、(b)の工程後に細胞シートを培養基材から剥離する工程であり、〔0041〕に記載された本発明の第2の態様における工程(e)に準じるものである。
本発明の第6の態様は、上記本発明第1の態様又は第4の態様に係る細胞シート又は第2の態様、第3の態様又は第5の態様のいずれかに係る細胞シートの製造方法によって製造される細胞シートを含有する難治性皮膚潰瘍治療用移植材料である。
下記実施例に記すように、該細胞シートを、難治性皮膚潰瘍の疾患モデルに該当する、糖尿病モデル動物(マウス・ウサギ)背部での皮膚全層欠損に移植したところ、対照群に対して顕著な治療効果(創傷面積治癒率の上昇)を確認している(図3、5、7、10)。このことから、本発明に係る細胞シートは、難治性皮膚潰瘍の治療用移植材料として用いることが出来る。
本発明の第7の態様は、上記した本発明第1の態様又は第4の態様に係る細胞シート、又は本発明第2の態様、第3の態様又は第5の態様のいずれかに係る細胞シートの製造方法によって製造された細胞シートを用いた治療方法である。
上記の通り、発明者らは、該細胞シートを、難治性皮膚潰瘍の動物モデルに用いることで、該疾患の治療に有効であることを確認しており、このことから、本発明に係る細胞シートが、所定の疾患に対する治療方法に用いることが出来ることを見出した。
所定の疾患としては、特に限定はしないが、好ましくは皮膚にて発症する疾患であり、例えば、褥瘡、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、静脈不全、膠原病、血管炎などに代表される難治性皮膚潰瘍が挙げられる。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔材料と試薬〕
1)マウス
C57BL/6NCrSlc(日本エスエルシー株式会社)から購入。
2)末梢血単核球用培地
RPMI−1640(Gibco)にFBS(Gibco)が10%になるように加え、最終濃度がペニシリンは100ユニット/mLおよびストレプトマイシンは100μg/mLになるようにPenicillin−Streptomycin,Liquid (Gibco)が添加されている。
3)線維芽細胞用培地
DMEM(Gibco)にFBS(Gibco)が20%になるように加え、非必須アミノ酸(Gibco)と最終濃度がペニシリンは100ユニット/mLおよびストレプトマイシンは100μg/mLになるようにPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)が添加されている。
〔末梢血からの単核球の分離〕
1mLのシリンジに26Gの針をつけて、ヘパリンを約0.10mL取り、腹部の大静脈から採血を行った。15mLチューブにLympholyte−Mammal (CEDARLANE) を3mL入れて、PBSで2倍希釈した血液を加えて、800g、20分、ノーブレーキで遠心を行った。遠心後、単核球の層を、新しい15mLチューブに移し、PBSを加えて10mLとして、2000g、5分、ノーブレーキで遠心を行った。PBSでの洗いは合計2回行い、その後、末梢血単核球用培地で1回洗いを行った。細胞シート作製や培養のために、細胞を数えて、末梢血単核球用培地を用いて末梢血単核球の濃度を2x10cells/mLに調整した。
〔線維芽細胞の分離〕
70%エタノールを噴霧したキムワイプでマウスの尾を拭き、先端約1cmを切断し、線維芽細胞用培地(ペニシリンは500U/mLおよびストレプトマイシンは500μg/mL)に10分間浸けた後に、PBSでゆすいだ。そして、コラゲナーゼ(和光純薬工業)を線維芽細胞用培地で溶かして500U/mLに調整した溶液に、使い捨てメスを用いて細かく切り刻んだ尾を入れて、37℃で一晩培養した。細かく切り刻んだ尾を15mLチューブに移し、1200rpm、2分で遠心した。遠心後、上清を吸引除去し、ペレットを6−well plateの1ウェルに移し、線維芽細胞用培地を5mL入れて、2−4日間、37℃、5%COで培養した。Trypsin−EDTA(Gibco) で細胞を剥がし、40μm Cell Strainer(BD Falcon)に透して、1200rpm、2分で遠心した。遠心後、上清を吸引除去し、ペレットを10cm dishに移し、線維芽細胞用培地を10mL入れて37℃、5%COで培養した。細胞シート作製には、線維芽細胞用培地を用いて線維芽細胞を1.25x10 cells/mLに調製した。
〔細胞シート(線維芽細胞単独/線維芽細胞+末梢血単核球)作製と末梢血単核球単独培養〕
1)線維芽細胞単独の細胞シート(培養条件検討)
UpCell 24−well plate(セルシード株式会社)の1ウェルに、線維芽細胞用培地を用いて、上記方法にて分離してきた線維芽細胞を、表1中のNo.1〜8に記載した細胞数ずつ加え、48時間、37℃、20%O、5%CO条件下で培養した後、細胞シートの形成具合を確認した。
No.5〜8の各条件で播種された線維芽細胞を、UpCellの24wellプレートの各ウェルにて一晩培養した段階で観察すると、1.25x10個以上(No.5)ではウェルに隙間は残っていなかった。
いずれにおいても細胞シートの形成を確認できたので、該細胞シートを剥がしつつ、顕微鏡により該シートの剥離状態を観察したところ、No.1〜4の各条件にて形成された細胞シートにおいて、プレートからの剥離時に、該シートに開裂が生じることを観察した。
以上の結果に基づき、線維芽細胞を含む細胞シートの作製には、該細胞を1.25x10 cells/well(=6.58x10cell/cm)の条件にて播種することとした。即ち、1.25x10 cells/mLに調整した細胞懸濁液1mLと末梢血単核球用培地1mLを入れて合計2mLとした。
2)線維芽細胞単独の細胞シート(各条件での培養上清回収)
上記の条件にて播種した線維芽細胞を、48時間、37℃、20%O、5%COで培養した後に、同条件にて更に24時間培養を継続する群(Normo条件群)と、33℃、2%O、5%COに条件を変更し、24時間培養した群(Hypo条件群)との2群に分けた。各ウェルの培養上清を回収して、3000rpm、5分で遠心し、その上清中に含まれる血管成長因子(VEGF)をELISA法で測定した。
3)末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート作製(条件検討)
続いて、上記播種条件の線維芽細胞と共に、どの程度の細胞数の末梢血単核球を播種すれば安定した末梢血単核球及び線維芽細胞を含む細胞シートの形成が可能か条件検討を行った。
UpCell 24−well plateの1ウェルに、末梢血単核球用培地を用いて、上記方法にて分離してきた末梢血単核球を、線維芽細胞(1.25x10cells/well)と共に、表2中のNo.1〜6に記載した細胞数ずつ加え、37℃、20%O、5%CO条件下で培養した。
上記培養条件及びNo.1〜6の細胞数で一晩培養後、細胞シートの形成具合を確認したところ、全ての組み合わせで細胞シートが形成し、該シートを剥離することが可能であることを確認した。
以上の結果に基づき、末梢血単核球及び線維芽細胞を含む細胞シートの作製には、線維芽細胞単独での細胞シート作製時に播種する細胞数(1.25x10cells/well)と同数の線維芽細胞と共に、末梢血単核球を2x10cells/well(=10.53x10cell/cm)の条件にて播種することとした。即ち、末梢血単核球用培地を用いて末梢血単核球の濃度を2x10cells/mLに調製した細胞懸濁液1mLと、線維芽細胞用培地を用いて線維芽細胞を1.25x10cells/mLに調製した細胞懸濁液1mLを、UpCell 24−well plateの1ウェルに加えて合計2mLとした。
4)末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート作製(各条件での培養上清回収
上記の条件にて播種した末梢血単核球及び線維芽細胞を、48時間、37℃、20%O、5%COで培養した後に、同条件にて更に24時間培養を継続する群(Normo条件群)と、33℃、2%O、5%COに条件を変更し、24時間培養した群(Hypo条件群)との2群に分けた。各ウェルの培養上清を回収して、3000rpm、5分で遠心し、その上清中に含まれるVEGFをELISA法で測定した。
なお、両細胞を播種後、72時間後の様子を図1に示す。丸い形状の末梢血単核球と扁平な線維芽細胞により細胞シートが形成されていることが見て取れる。
5)末梢血単核球培養(各条件での培養上清回収
UpCell 24−well plateの1ウェルに、末梢血単核球用培地を用いて末梢血単核球の濃度を2x10cells/mLに調整した細胞懸濁液1mLと線維芽細胞用培地1mLを入れて合計2mLとした。
上記の条件にて播種した末梢血単核球を、48時間、37℃、20%O、5%COで培養した後に、同条件にて更に24時間培養を継続する群(Normo条件群)と、33℃、2%O、5%COに条件を変更し、24時間培養した群(Hypo条件群)との2群に分けた。各ウェルの培養上清を回収して、3000rpm、5分で遠心し、その上清中に含まれるVEGFをELISA法で測定した。
なお、末梢血単核球を構成する細胞の多くは、培養基材に接着しにくい浮遊細胞であるリンパ球であるため、末梢血単核球単独培養で細胞シートは形成されなかった。これまで末梢血単核球と他の細胞を組合せて細胞シートを作製した例はなく、該細胞単独では形成出来ない細胞シートが、線維芽細胞と組み合わせることによって初めて可能となること(図1)を見出した点は、いわゆる当業者の予想しうる範囲を大きく上回る特筆すべき効果の一つである。
〔細胞シートのVEGF産生能〕
1)ELISA法による上清中に含まれるVEGF濃度測定
Mouse VEGF Quantikine ELISA Kit(R&D systems)を用いて細胞培養上清中に含まれるVEGF濃度を測定した。吸光度の測定と濃度計算には、iMark Microplate Reader (BIO−RAD) とMPM6.exe(BIO−RAD)を使用した。
2)結果と考察
Normo条件群における、A)末梢血単核球単独培養、B)線維芽細胞単独細胞シート及びC)末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの各上清中に含まれるVEGF濃度を測定したところ、B)に比べ、C)にて有意なVEGF濃度の上昇が認められ、A)の上清中にはVEGFは検出されなかった(図2)。
このことから、末梢血単核球と線維芽細胞からなる細胞シートは、末梢血単核球及び線維芽細胞それぞれ単独での培養細胞や細胞シートに比べ、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量を大幅に増加することが明らかとなった。
更に、A)、B)、C)それぞれで、Normo条件群に対するHypo条件群でのVEGF濃度変化を測定したところ、A)においてはNormo条件群と同様、検出限界以下であったが、B)及びC)においては、Normo条件群に対して有意なVEGF濃度上昇を確認し、特にC)において著しい濃度上昇が認められた(図2)。
このことより、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養することで(低酸素プレコンディショニング)、該プレコンディショニング処理を行わないものに比べ、血管成長因子の産生量が大幅に増加することが明らかとなった。
〔細胞シート移植による創傷面積治癒率〕
1)糖尿病マウス
生理食塩水に溶かしたストレプトゾトシン(SIGMA−ALDRICH)をC57BL/6NCrSlcマウスに200mg/kgで投与し、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスを作製した。
2)細胞シート移植
糖尿病マウスの背部に約8mmの皮膚全層欠損を外科的手法で作製し、その箇所に細胞シートを移植した。その上からアブソキュア(登録商標)−ウンド(日東メディカル)で覆い、粘着包帯(ニチバン)で固定した。施術群は以下の4群とした;
a)コントロール群;細胞シート移植なし+アブソキュア(登録商標)−ウンド
b)線維芽細胞シート群;線維芽細胞単独細胞シート移植+アブソキュア(登録商標)−ウンド
c)末梢血単核球+線維芽細胞シート群;末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植+アブソキュア(登録商標)−ウンド
d)フィブラストスプレー群;難治性皮膚潰瘍などの疾患に対する現行の治療剤であるフィブラストスプレー(科研製薬;塩基性線維芽細胞造辱因子(bFGF)組換えタンパク質を主成分とするスプレータイプの治療剤)を陽性対象とした。皮膚全層欠損箇所にフィブラストスプレーを噴霧し、1分後に非固着性ガーゼで覆い、粘着包帯(ニチバン)で固定した。
なお、ここで使用する線維芽細胞単独細胞シート及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートはいずれも前記Hypo条件群の細胞シートを用いた。
3)創傷治癒評価
上記の要領にて、外科的手法により皮膚全層欠損を作製し、細胞シート移植前にデジタルカメラで創傷面を撮影してこれを0日とした。細胞シートを移植して、7、14日後に創傷面を撮影し、ImageJ(NIH)を使用して創傷面積を計算し、0日の創面を基準として治癒率で評価した。
4)結果と考察
移植後7日後、14日後の両時点において、c)ではa)及びb)のいずれに対しても有意な創傷治癒率の上昇が生じていた(図3A)。
この様に、本発明に係る末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを用いた群では、臨床的に実使用されているハイドロコロイドドレッシング材(創傷部の湿潤環境を維持することにより、身体が本来持つ治癒力のみで傷口の治癒を促す材)単独使用の群は勿論の事、従来技術に基づき、当業者が容易に想達し得る範疇である線維芽細胞単独での細胞シートによる群と比しても、有意な治癒率の改善を示したことから、該発明に係る末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートは、難治性皮膚潰瘍などの疾患に対して極めて有効な治療材料であることが示唆された。
一方、陽性対照であるファイブラストスプレー群と、本発明に係る末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの群との比較においては、ファイブラストスプレー群においても、末梢血単核球+線維芽細胞シート群と同程度の創傷面積治癒率が確認された為(図3A,B)、少なくとも創傷面積治癒率を指標とした両群間での明確な差異は確認されなかった。
〔末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植とフィブラストスプレー治療における治療部位の病理像比較〕
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植と、既存の治療方法であるフィブラストスプレー治療において、創傷面積治癒率を指標とした場合、両群間に明確な差異を確認出来なかった為、両処理における治療部位の病理像比較を行った。
1)病理像解析
治療開始後17日目に皮膚欠損部位が閉じた為、両処理による治療マウスを犠牲死させた後、治療部位の組織を採取し、10%中性ホルマリンにて固定した。該組織をパラフィン包埋し、組織を薄切後、常法に従いHE染色を行った。
2)結果と考察
両群とも、皮膚欠損創の組織が治癒している病理像が確認できた(図4)。しかしながら、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート移植では、組織は自然な治癒組織となっていたが、フィブラストスプレー治療群での組織では、不良肉芽と浸潤炎症細胞が観察された。
この様に、本発明に係る末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを治療に用いた群では、臨床的に実使用されているフィブラストスプレーによる治療群に対し、見かけの治癒率の改善は同程度であっても、質的には顕著な差異が存在していた。
このことから、該発明に係る末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートは、既存の治療(フィブラストスプレーによる治療)と比しても、難治性皮膚潰瘍などの疾患において極めて有効な治療材料であることが示唆された。
〔マウスを用いたアロ移植評価〕
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを治療用材料として患者に移植するにあたり、他人の細胞を該患者に移植するケース(アロ移植)においても拒絶反応などの何らかの不具合が生じないかを確認した。
1)アロ移植
C57BL/6マウスより末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを作製し、該細胞シートを、他系であるC3Hマウスによる糖尿病モデルの背部に移植した。
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートは〔0071〕に従い調製した。糖尿病モデル動物は、C3Hマウスを〔0076〕に準じて作製し、〔0077〕及び〔0081〕に従い、該細胞シートの移植及びフィブラストスプレー治療(陽性対照)を施した。処置後14日目における創傷治療評価(創傷面積治癒率)は〔0078〕に準じた。
2)結果と考察
C57BL/6マウスより末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを作製し、該細胞シートを、他系であるC3Hマウスによる糖尿病モデルの背部に移植した場合においても、同系統マウス間での移植による創傷面積治癒率(図3)とほぼ同程度の効果を確認した(図5A、B)。
以上より、患者自身の由来ではない末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを治療に用いたとしても、必ずしも免疫拒絶反応が生じるわけではない可能性が示唆された。
〔移植細胞シートの組織への残存評価〕
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを移植した場合、該シートが移植した組織に生着するのか検討した。
1)オスマウス由来の細胞シートの調製及びメスマウス糖尿病モデルへの移植
既報〔0067〕−〔0068〕に従い、オスのC57BL/6マウスより末梢血単核球及び線維芽細胞を調製した後、該細胞を含む細胞シートを作製した〔0071〕。また、〔0076〕に準拠してC57BL/6マウス(メス)を用いて糖尿病モデルを作製し、〔0077〕に記載の手法に従い、該糖尿病マウス背部に施した皮膚全層欠損に対して、該細胞シートを移植した。
2)移植周辺組織より抽出したDNAでのY染色体特異的遺伝子の検出
移植3週間後に、移植した周辺組織よりゲノムDNAを抽出し、移植した細胞シート(オス由来)にのみ含まれているはずのY染色体にコードされているSRY、ZFY1、ZFY2及びX染色体にコードされているZFXのゲノムDNAに特異的なプライマーを用いてPCR法を行った。
具体的には、移植3週間後に移植周辺部位の組織を採取し、RNAlater(登録商標)Solution(Ambion)に浸漬して4℃保存したものから、AllPrepDNA/RNAMiniKit(Qiagen)を用いてDNAを抽出した。該DNAに対して、KOD FX(ToYoBo)及びSRY、ZFY1、ZFY2(Y染色体特異的遺伝子)ZFX(X染色体特異的遺伝子)及びACTB(ベータ−actin)に対するプライマーを用いてPCRを行った。PCR反応の条件は、94℃2分処理後、98℃10秒、60℃30秒、68℃30秒を1サイクルとし、40サイクル実施した。
3)結果と考察
上記方法に従い、オスマウス由来の末梢血単核球及び線維芽細胞を含む細胞シートを、同系統メスマウス由来の糖尿病モデル背部への皮膚全層欠損に対して移植したところ、移植3週間後の移植周辺部位の組織には、ACTB及びZFXは検出されたが、細胞シート由来(Y染色体)の遺伝子は検出されなかった(図6)。このことより、該細胞シートは移植した組織には生着していないことが明らかとなった。
〔ウサギ由来の末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートVEGF産生能と移植による治療効果〕
マウス以外の動物においても、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートが有益であることを確認するべく、ウサギ由来の該細胞シートを調製し、VEGF産生能と移植による治療効果を検討した。
1)ウサギ由来の末梢血単核球と線維芽細胞の調製
線維芽細胞は〔0068〕の方法に準じて、ウサギの耳から採取した組織から調製した。末梢血単核球は、あらかじめヘパリンを約1〜1.5mL分取しておいた20mLのシリンジにGの翼状針をつけて、ウサギの耳動脈から採血を行い、これを15mLチューブに移した後、Lympholyte−M (CEDARLANE)3mLを添加した。これ以降の方法は〔0067〕に準じた。
2)末梢血単核球の単独培養、線維芽細胞のみの細胞シート及び両細胞を含む細胞シートの作製
末梢血単核球は、マウス末梢血単核球用培地を用いて2x10cells/mLに調製し、線維芽細胞は、マウス線維芽細胞用培地を用いて1.25x10cells/mLに調製した。
末梢血単核球の単独培養は、UpCell 6−well plateの1ウェルに、上記末梢血単核球縣濁液4mLを分取した後、マウス線維芽細胞用培地4mLを添加して合計8mLとすることで開始した。
線維芽細胞のみの細胞シートは、UpCell 6−well plateの1ウェルに、上記線維芽細胞懸濁液4mLを分取した後、マウス末梢血単核球用培地4mLを添加して合計8mLとすることで開始した。
末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートは、UpCell 6−well plateの1ウェルに、上記末梢血単核球縣濁液4mLと上記線維芽細胞懸濁液4mLを添加して合計8mLとすることで開始した。
3)各培養上清中のVEGF定量
上記3種類の培養細胞を、〔0072〕に記載したHypoの条件にて培養した。該細胞の培養上清を1.5mLチューブに分取し、3000rpmにて5分間遠心した後、該上清中に含まれるVEGFを、Human VEGF Quantikine ELISA Kit(R&D systems)を用いた、〔0074〕に準拠したELISA法にて測定した。
4)細胞シートの移植
生理食塩水に溶かしたアロキサン(SIGMA−ALDRICH)をNew Zealand whiteラビットに120mg/kgの条件で投与し、アロキサン誘発糖尿病ウサギを作製した。該糖尿病ウサギの背部に約4cmの皮膚全層欠損を外科的手法にて処置した。以降の操作は〔0077〕に準じた。
5)結果と考察
本検討によって、マウスのみならずウサギにおいても、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを調製することは可能であり、マウスでの結果と同様に、該細胞シートは、線維芽細胞単独での細胞シートに比べ、有意にVEGF産生量が高く(図7A)、該細胞シートを糖尿病ウサギ背部の皮膚全層欠損部位に移植したところ、顕著な改善効果を有することが確認された(図7B)。
〔末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおけるVEGF産生能亢進の要因解明〕
線維芽細胞単独の細胞シートに比して、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートが如何なる機序によってVEGF産生能を亢進させるのか解明すべく、末梢血単核球の単独培養の培養細胞上清を線維芽細胞単独の細胞シートに添加することで、同様の効果が得られるか検証した。更に、末梢血単核球単独及び線維芽細胞単独の培養細胞上清中に、VEGF産生能上昇を誘導する候補因子であるTGF−ベータ1及びPDGF−BBが含まれているかをそれぞれ確認した。
1)末梢血単核球単独培養の培養上清中におけるVEGF産生能亢進因子の有無検討
マウス末梢血単核球を末梢血単核球用培地〔0066〕にて2x10cells/mLに調製し、24 well plateに1mL添加した後、Normo条件(37℃ 20%O 5%CO)にて48時間培養した。培養後、培養液を1.5mLチューブに分取し、3000rpmにて5分間遠心し、上清を新規の1.5mLチューブに分取し、培養上清として以下の実験に使用した。
既報〔0068〕に従い、マウス線維芽細胞を採集し、線維芽細胞用培地にて1.25x10cells/500マイクロLとなる様、細胞調製液を準備する。該細胞調製液及び末梢血単核球用培地を用いて、
コントロールmedium群;末梢血単核球用培地 500マイクロL + 線維芽細胞 1.25x10cells/500マイクロL
末梢血単核球Conditioned medium群;末梢血単核球培養上清 500マイクロL + 線維芽細胞 1.25x10cells/500マイクロL
からなる2群の細胞懸濁液を調製し、該懸濁液を、24 well plateに1mL/wellずつ播種した後、Normo条件にて48時間培養した。
48時間培養後、各群の培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清中のVEGF濃度をELISA〔0074〕にて測定した。
2)末梢血単核球単独及び線維芽細胞単独の培養細胞上清中でのTGF−ベータ1の定量
通常の培養に使用されるFBSには大量のTGF−ベータ1が含有されており、TGF−ベータ1測定に使用するMouse/Rat/Porcine/Canine TGF−beta 1 Quantikine ELISA Kit (R&D systems)ではFBSに含有されるTGF−ベータ1を検出されてしまう。この為、TGF−ベータ1測定用の培地として、xeno−freeであるCTSTM AIM V(登録商標) Medium(Life Technologies)を用いた。
既報〔0067〕−〔0068〕に従い、マウスより末梢血単核球及び線維芽細胞を採取し、CTSTM AIM V(登録商標) Mediumを用いて、
マウス線維芽細胞群:線維芽細胞 1.25x10cells/2mL CTSTM AIM V(登録商標) Medium
マウス末梢血単核球群:末梢血単核球 2x10cells/2mL CTSTM AIM V(登録商標) Medium
からなる2群の細胞懸濁液を調製し、該懸濁液を、24 well plateに2mL/wellずつ播種した後、Normo条件にて48時間培養した。
48時間培養後、各群の培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清中のTGF−ベータ1濃度を、Mouse/Rat/Porcine/Canine TGF−beta 1 Quantikine ELISA Kitを用いたELISAにて測定した。
3)末梢血単核球単独及び線維芽細胞単独の培養細胞上清中でのPDGF−BBの定量
既報〔0067〕−〔0068〕に従い、マウスより線維芽細胞及び末梢血単核球群をそれぞれ採取し、前者を線維芽細胞用培地にて1.25x10cells/1mLとなる様に、後者を末梢血単核球用培地にて2x10 cells/1mLとなる様に、それぞれの細胞調製液を準備する。該細胞調製液及び末梢血単核球用培地又は線維芽細胞用培地を用いて、
マウス線維芽細胞群:線維芽細胞 1.25x10 cells/1mL(線維芽細胞用培地) + 末梢血単核球用培地 1mL
マウス末梢血単核球群:末梢血単核球 2x10 cells/1mL(末梢血単核球用培地) + 線維芽細胞用培地 1mL
からなる2群の細胞懸濁液を調製し、該懸濁液を、24 well plateに2mL/wellずつ播種した後、Normo条件にて48時間培養した。
48時間培養後、各群の培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清中のPDGF−BB濃度を、Mouse/Rat PDGF−BB Quantikine ELISA Kit (R&D systems)を用いたELISAにて測定した。
4)結果と考察
線維芽細胞単独の細胞シートに比して、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートが如何なる機序によってVEGF産生能を亢進させるのか解明すべく、末梢血単核球の単独培養の培養上清を線維芽細胞単独の細胞シートに添加したところ(末梢血単核球Conditioned medium群)、対照群(コントロールmedium群)に対して有意なVEGF量の上昇を確認した(図8A)。更に、末梢血単核球単独及び線維芽細胞単独の培養細胞上清中に、VEGF産生能上昇を誘導する候補因子であるTGF−ベータ1及びPDGF−BBが含まれているかを測定したところ、いずれの因子も、末梢血単核球単独での培養細胞上清にのみ発現していた(図8B、C)。
以上の事象より、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおける、線維芽細胞からのVEGF産生能亢進の機序は、末梢血単核球から分泌されるTGF−ベータ1及び/又はPDGF−BBによることが推測された。
〔TGF−ベータ1及びPDGF−BBによる、線維芽細胞単独の細胞シートにおけるVEGF産生への効果及び両因子に対する中和抗体による、末梢血単核球単独培養上清によって誘導される線維芽細胞単独の細胞シートにおけるVEGF産生能への影響〕
線維芽細胞単独の細胞シートにTGF−ベータ1又はPDGF−BBを用量変動させて添加することにより、該細胞シートからのVEGF産生量への効果を検討した。併せて、末梢血単核球単独培養の培養上清に、TGF−ベータ1又はPDGF−BBに対する中和抗体を添加することにより、該上清の有する線維芽細胞単独の細胞シートからのVEGF産生誘導効果が抑制されるかについて検討した。
1)TGF−ベータ1又はPDGF−BBの用量を変動させた添加条件における、線維芽細胞単独の細胞シートからのVEGF産生量の測定
TGF−ベータ1(R&D systems)リコンビナントタンパク質を末梢血単核球培地〔0066〕により 500、1000、2000、10000、20000、40000pg/mLに希釈調製し、24 well plateの各ウェルにそれぞれ500mLずつ分取した。
PDGF−BB(Sigma−Aldrich)リコンビナントタンパクを末梢血単核球培地により 500、1000、2000、10000、20000、40000 pg/mLに希釈調製し、24 well plateの各ウェルにそれぞれ500mLずつ分取した。
既報〔0067〕−〔0068〕に従い、マウスより末梢血単核球及び線維芽細胞を採取し、線維芽細胞用培地〔0066〕にて1.25x10 cells/500mLとなる様に細胞調製液を準備する。該調製液を、TGF−ベータ1各濃度液を入れた24 well plateの各ウェルに500mLずつ添加し、合計1mLにした後、Normo条件にて48時間培養した。
48時間培養後、各群の培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清中のVEGF濃度をELISA〔0074〕にて測定した。
2)TGF−ベータ1又はPDGF−BBに対する中和抗体添加時の、末梢血単核球単独培養上清を添加した線維芽細胞単独の細胞シート産生VEGF量の測定
既報〔0067〕に従い、マウスより末梢血単核球を採取し、末梢血単核球用培地にて2x10 cells/1mLとなる様に細胞調製液を準備した。該懸濁液を、24 well plateに1mL/ウェルずつ播種した後、Normo条件にて48時間培養した。48時間培養後、培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清をconditioned mediumとして以下の実験に供した。
上記conditioned medium及び各種抗体を用いて、以下3種の培地を準備した;
Control; conditioned medium 250マイクロL + anti−ATM antibody(1mg/mL abcam ab78) 5マイクロL
アルファ−TGF−ベータ1; conditioned medium 250マイクロL + anti−TGF−ベータ1 antibody(1mg/mL abcam ab64715) 5マイクロL
アルファ−PDGF−BB; conditioned medium 250マイクロL + anti−PDGF−BB antibody (0.2mg/mL R&D AF−220−NA) 20マイクロL
上記3種の培地を1.5mLチューブ中で4℃、90分間反応させた後、各培地を、48 well plateの1wellずつに全量移した。
既報〔0068〕に従い、マウス線維芽細胞を採集し、線維芽細胞用培地にて1.25x10cells/mLとなる様、細胞調製液を準備、上記3種の培地を入れたwellそれぞれに250mL添加した後、Normo条件にて48時間培養した。
48時間培養後、各群の培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmにて5分間遠心した後、上清を新規の1.5mLチューブに分取、該上清中のVEGF濃度をELISA〔0074〕にて測定した。
3)結果と考察
線維芽細胞単独の細胞シートにTGF−ベータ1又はPDGF−BBを用量変動させて添加したところ、いずれの因子においても、用量依存的な該細胞シートからのVEGF産生量の上昇を確認した(図9A)。
また、末梢血単核球単独培養の培養上清(conditioned medium)に、TGF−ベータ1又はPDGF−BBに対する中和抗体を添加したところ、該mediumが本来有する、線維芽細胞単独の細胞シートに対するVEGF産生誘導効果が、いずれの抗体においても抑制された(図9B)
以上のことから、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおける、線維芽細胞からのVEGF産生能亢進の機序は、末梢血単核球から分泌されるTGF−ベータ1及び/又はPDGF−BBによる可能性が強く示唆された。
また、該因子によって刺激を与えた線維芽細胞単独での細胞シートは、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートと同様に、移植に関連する医療分野、特に難治性皮膚潰瘍において、有効な治療用移植材料となりうることが期待される。
〔トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートによる治療効果〕
トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートが、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートと同様に、移植に関連する医療分野、特に難治性皮膚潰瘍において、有効な治療用移植材料となりうるか明確にするべく、糖尿病マウス背部の皮膚全層欠損への移植による治療効果を検討した。
1)細胞シート移植及び創傷治癒評価
糖尿病マウス作製及び創傷治癒評価は〔0076〕−〔0078〕に準拠した。糖尿病マウス背部の皮膚全層欠損部位への処置群は以下の4通りとした:
コントロール群:糖尿病マウス背部の皮膚全層欠損部位に何ら治療を施さない群
末梢血単核球+線維芽細胞シート群:上記部位に末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートを移植する群
PDGF−BB+線維芽細胞シート群;上記部位に、線維芽細胞播種時に10ng/mL PDGF−BBを添加して作製した細胞シートを移植する群
TGF−ベータ1+線維芽細胞シート群;上記部位に、線維芽細胞播種時に5ng/mL TGF−ベータ1を添加して作製した細胞シートを移植する群
2)結果と考察
TGF−ベータ1又はPDGF−BBによる刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートを糖尿病マウス背部の皮膚全層欠損部位へ移植したところ、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートと同様に、創傷面積治癒率において、良好な結果を確認した(図10)。
このことより、該因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートは、難治性皮膚潰瘍などの疾患に対して極めて有効な治療材料であることが示唆された。
〔ヒト由来の末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート作製法及びVEGF産生能比較〕
本発明に係る細胞シートは、ヒト疾患に対する治療用材料として用いることが出来れば、大変有益である。この為、ヒト由来の末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの作製法を確立し、併せて該細胞シートのVEGF産生能について検討した。
1)ヒト由来の末梢血単核球単独培養、線維芽細胞単独の細胞シート及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの作製方法
ヒト由来の細胞系を培養するにあたり、培地はAIM V Medium CTS (Life Technologies)を用い、血清は発明者らの自己血清を調製した。具体的には、セルエイド(株式会社ジェイ・エム・エス)を使用して、採血した自己の血液から血清を作製した。
ヒト由来の線維芽細胞は以下の方法で調製した。AIM V Medium CTS 10mLとPenicillin−Streptomycin, Liquid 200μLを50mLチューブに入れ、採取した口腔内組織を該50mLチューブに入れた。6cm−dishに該組織をピンセットにて移動し、使い捨てメスにて組織を細断、6−well plateに該細断組織片を押し付けて接着させ、10分間、37℃、5%COの条件で培養した。その後、乾燥を防ぐために、該組織周辺にAIM V Medium CTSを散布し、4時間、37℃、5%COで培養を続けた。その後、 6−well plateの1wellにAIM V Medium CTS 5mL、自己血清 250 μL、 Penicillin−Streptomycin, Liquid 200 μLを入れて、3−4週間、37℃、5%COで培養した。Trypsin−EDTA(Gibco)で細胞を剥離させ、40μm Cell Strainer(BD Falcon)に透過させた後、1200rpm、2分間遠心した。遠心後、上清を吸引除去し、ペレットを10cm dishに移し、培地(AIM V Medium CTS 9.5mL + 自己血清 0.5mL)を10mL添加して、37℃、5%COで培養した。
口腔内組織から単離・培養した上記細胞が線維芽細胞であることを確認するべく、以下の方法に従い、線維芽細胞のマーカーであるVimentinを用いた免疫染色を行った。培地(AIM V Medium CTS 9.5mL + 自己血清 0.5mL)で 1.25x10 cells/mLに調製したヒト由来線維芽細胞を、24−well plateの1ウェルに1mL分取し、37℃、5%COにて培養後、蛍光免疫染色を行なった。1次抗体としてVimentin(D21H3)XP(登録商標) Rabbit mAb (Cell Signaling)、2次抗体としてanti−Rabbit IgG (H+L)Secondary Antibody,Alexa Fluor(登録商標) 488 conjugate(Life Technologies)を使用し、これに加えて、DAPIによる核染色を行なった。
ヒト由来の末梢血単核球の分離は以下の方法で行った。BDバキュティナ採血管に約4mLの血液を分取し、3000rpm、20分、ノーブレーキにて遠心を行った。遠心後、単核球の層を、新規の15mLチューブに回収し、PBSを加えて10mLとして、1500rpm、3分、ノーブレーキにて再度遠心を行った。その後、AIM V Medium CTSで1回洗浄を行った。細胞シート作製又は単独培養のために、細胞数をカウントし、培地(AIM V Medium CTS 9.5mL + 自己血清 0.5mL)を用いて該末梢血単核球を2x10cells/mLに調製した。
細胞シート作製スケジュールはマウス由来の場合と同じ細胞濃度、培養期間とし、Normo条件、Hypo条件も同様としたが、培地については、全てAIM V Medium CTSに5%自己血清を添加したものを使用した。
培養上清中のVEGF濃度測定は、Human VEGF Quantikine ELISA Kit(R&D systems)を用いて、〔0074〕に準じて測定した。
2)結果と考察
本検討により、ヒト口腔内組織より純度の高い線維芽細胞の採取及び細胞シートの調製が可能であることが明らかとなった(図11A)。
また、該線維芽細胞と、同じくヒト由来の末梢血単核球を含む細胞シートにおいて、該線維芽細胞単独の細胞シートよりも多くのVEGFが産生されており、該VEGF産生能は、Hypo条件(33℃、2%O、5%COにて24時間培養)により、更に顕著な亢進が認められた(図11B)。
〔ヒト由来の線維芽細胞単独の細胞シートでのVEGF産生を活性化する因子の探索〕
既にマウス由来の細胞については、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートにおける、線維芽細胞からのVEGF産生能亢進の機序に、末梢血単核球から分泌されるTGF−ベータ1及び/又はPDGF−BBが関与していることを示してきた。そして、該因子によって刺激を与えた線維芽細胞単独での細胞シートが、末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートと同様に、移植に関連する医療分野、特に難治性皮膚潰瘍において、有効な治療用移植材料となりうる可能性を示してきた。
このマウス由来の細胞で見出されたTGF−ベータ1及びPDGF−BBの様な活性化因子が、ヒト由来の細胞でも見出すことが出来れば、ヒト疾患に対する治療用材料としての利用上、大変有益であると共に、例えば、他家(患者以外)由来の線維芽細胞の細胞シートを大量に培養する際に、該活性化因子をリコンビナントタンパク質として添加することにより、所望する量の難治性皮膚潰瘍治療細胞シートの生産が可能となり得る。
以上より、ヒト由来の線維芽細胞単独の細胞シートでのVEGF産生を活性化する因子の探索を行った。具体的には、末梢血単核球単独培養、線維芽細胞単独の細胞シート、及び末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シートの培養上清を比較し、該末梢血単核球のみが分泌する因子を特定した。
1)使用細胞の採取及びサンプルの調製
ヒト由来の末梢血単核球及び線維芽細胞の分離は既報〔0112〕及び〔0114〕に従って行い、前者を1x10cells/mL、後者を1.25x10cells/mLの細胞縣濁液(培地として AIM V Medium CTS 9.5mL + 自己血清 0.5mLを使用)として調製した。
上記細胞懸濁液及び培地を用いて、サンプルを以下の4群で準備した:
培地群;培地(AIM V Medium CTS 9.5mL + 自己血清 0.5mL)を24−well plateの1ウェルに2mL入れ、Normo条件にて培養。
末梢血単核球群;上記末梢血単核球の細胞懸濁液1mLと上記培地1mLを24−well plateの1ウェルにて混合して合計2mLとし、Hypo条件にて培養。
線維芽細胞群:上記線維芽細胞の細胞懸濁液1mLと上記培地1mLを24−well plateの1ウェルにて混合して合計2mLとし、Hypo条件にて培養。
末梢血単核球+線維芽細胞群:上記末梢血単核球の細胞懸濁液1mLと上記線維芽細胞の細胞懸濁液1mLを24−well plateの1ウェルにて混合して合計2mLとし、Hypo条件にて培養。
上記培養の培養液をそれぞれ1.5mLチューブに移し、3000rpmで5分間遠心した後、その上清をサンプルとして回収した。
2)培養上清中の因子測定
Proteome Profiler Human XL Cytokine Array Kit(R&D systems)及びProteome Profiler Human Angiogenesis Array Kit(R&D systems)を用いて、上記各サンプル中に存在する因子を測定した。バンドの検出にはAmersham Imager 600(GE Healthcare)を使用した。
3)結果と考察
上記4群のサンプルを上記Array Kitにて測定し、末梢血単核球のみが分泌する因子を特定したところ、
Cytokine Array Kitにて検出された因子は、IL−1ra,CXCL1,CXCL5,CXCL10,CCL3,CCL4 の6因子
Angiogenesis Array Kitにて検出された因子は、PDGF−AA,HB−EGF,CXCL16,CCL2,CCL3の4因子
であった。
これにマウス由来の細胞系にて活性化因子として働いている可能性の高いTGF−ベータ及びPDGF−BBを含めた計12因子を活性化因子候補とした。
〔活性化因子候補の線維芽細胞におけるVEGF産生能検討1〕
上記評価により、末梢血単核球から分泌され、線維芽細胞単独の細胞シートを活性化することで、VEGF産生を誘導する因子(活性化因子)の候補として12種類を見出した。そこで、該活性化因子候補を線維芽細胞単独の細胞シートに添加することにより、VEGF産生量が上昇するかを検討した。
1)線維芽細胞単独の細胞シートへの活性化因子候補の処理及びVEGF定量
ヒト由来の線維芽細胞の分離は既報〔0112〕に従って行い、1.25x10cells/mLの細胞縣濁液(培地として AIM V Medium CTS 9.0mL + 自己血清 1mLを使用)として調製し、該細胞懸濁液を0.5mLずつ48−well plateの各ウェルに分取した。
培地(AIM V Medium CTS)を用いて、PDGF−BB(eBioscience)は200ng/mL、TGF−ベータ1(R&D systems)は20 ng/mL、PDGF−AA(Wako)は200ng/mL、HB−EGF(R&D systems)は200ng/mL、CXCL16(Pepro Tech)は200ng/mL、CXCL1(R&D systems)は600ng/mL、CCL2(eBioscience)は200ng/mL、IL−1ra(R&D systems)は80ng/mL、CCL4(R&D systems)は20ng/mL、CXCL5(Gene Tex)は200ng/mL、CXCL10(Gene Tex)は100ng/mL、CCL3(R&D systems)は20ng/mLに調製し、それぞれ0.5mLずつ、先に細胞懸濁液を分取した上記48−well plateの各ウェルに添加して合計1mLとした後、72時間Normo条件にて培養した。なお、コントロールは上記培地0.5mLを細胞懸濁液が分取されている48−well plateの1ウェルに入れて合計1mLとし、同様に72時間Normo条件にて培養した。
培養した培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmで5分間遠心し、その上清中に含まれるVEGF濃度を、既報に従い〔0115〕、ELISA法で測定した。
2)結果と考察
評価した12個の活性化因子候補の内、PDGF−BB及びTGFベータ1において著しいVEGF濃度上昇が生じ、PDGF−AA、HB−EGF及びCXCL16にて濃度上昇の傾向が認められた(図12)。
〔活性化因子候補の線維芽細胞におけるVEGF産生能検討2〕
ヒト由来の末梢血単核球から分泌され、線維芽細胞単独の細胞シートを活性化することで、VEGF産生を誘導する因子(活性化因子)候補12種類のうち、上記評価において特に高い誘導活性を示したPDGF−BB及びTGFベータ1につき、より詳細な効果を検討するべく、該VEGF産生誘導活性との用量相関性を検討した。併せて、該因子によるVEGF産生誘導活性が、線維芽細胞の増殖によるものではないことを確認するべく、該因子の細胞増殖能についても検討した。
1)PDGF−BB及びTGFベータ1におけるVEGF産生能の用量相関性検討
ヒト由来の線維芽細胞の分離は既報〔0112〕に従って行い、1.25x10cells/mLの細胞縣濁液(培地として AIM V Medium CTS 9.0mL + 自己血清 1mLを使用)として調製し、該細胞懸濁液を0.5mLずつ48−well plateの各ウェルに分取した。
AIM V Medium CTSにてTGF−ベータ1(R&D systems)、PDGF−BB(eBioscience)、bFGF(Sigma−Aldrich)各因子を、40、20、15、10、5、2、1.5、1、0.5、0.2、0.1ng/mLに調製し、それぞれ0.5mLを、細胞懸濁液を分取した該48−well plateの各ウェルに添加して合計1mLとした後、72時間Normo条件にて培養した。bFGFは、対照剤であるフィブラストスプレーの主要成分である為、評価対象に加えた。コントロールはAIM V Medium CTS 0.5mLを、細胞懸濁液を分取している48−well plateの1ウェルに入れて合計1mLとした後、72時間Normo条件で培養した。
培養した培養液を1.5mLチューブに移し、3000rpmで5分間遠心し、その上清中に含まれるVEGF濃度を、既報に従い〔0115〕、ELISA法で測定した。
2)PDGF−BB及びTGFベータ1の線維芽細胞における細胞増殖能
1mLあたりTGF−ベータ1(R&D systems)、PDGF−BB(eBioscience)、bFGF(Sigma−Aldrich)リコンビナントタンパクが5、7.5、10、20ng/mL、ヒト由来の線維芽細胞の細胞濃度が1x10 cells/mL、自己血清が5%になるようにAIM V Medium CTSにより調製し、96−well plateの1ウェル当たり100μLずつ分取して、3日間、37℃、5%COで培養した。培養開始後3日目に CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assayを1ウェルに10μLずつ投与し、4時間、37℃、5%COで培養した後、2030 ArvoX4 (パーキンエルマー)にて吸光度を測定した。なお、データは、コントロールで得られた吸光度分を補正している。
3)結果と考察
マウスと同様に、ヒト由来の線維芽細胞単独の細胞シートにおいても、PDGF−BB、TGFベータ1共、該細胞シートに処理することで、用量依存的なVEGF産生誘導活性を有していることが明らかとなった(図13A)。
また、両因子共、線維芽細胞に対する増殖能は有しておらず(図13B)、図13AにみられるVEGF産生誘導活性は、線維芽細胞の増殖によるものではないことが確認された。
以上より、ヒト由来の線維芽細胞においても、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シートは、難治性皮膚潰瘍治療用移植材料として大変有益な発明であることが明らかとなった。
本発明は、血管新生に重要な働きを果たす血管成長因子の産生量を大幅に増加し、皮膚創傷部位への移植により、該創傷部位の有意な治癒率上昇を誘導する細胞シートを提供することから、移植に関連する医療分野、特に難治性皮膚潰瘍における利用性が高く、更に、移植を受ける患者由来の末梢血単核球及び線維芽細胞(いずれも低侵襲的に採取が可能)にて作製された細胞シートは、免疫拒絶反応を生じないという点で極めて有用であり、該医療分野の発展に大きく貢献するものである。

Claims (17)

  1. トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子による刺激を受けた線維芽細胞を含む細胞シート。
  2. 前記線維芽細胞が、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得したものであることを特徴とする請求項2に記載の細胞シート。
  3. 前記線維芽細胞の播種と同時に前記トランスフォーミング増殖因子又は前記血小板由来増殖因子による刺激開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞シート。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の細胞シートを含有する難治性皮膚潰瘍治療用移植材料。
  5. 以下の(a)〜(c)の工程を含む細胞シートを製造する方法。
    (a)培養基材上で線維芽細胞を播種し、該細胞を含む細胞シートを形成させる工程、
    (b)該細胞シートを、トランスフォーミング増殖因子又は血小板由来増殖因子により刺激する工程、
    (c)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
  6. 前記(a)の工程と(b)の工程を同時に行うことを特徴とする請求項5に記載の細胞シートを製造する方法。
  7. 前記工程(a)の前に、
    (a0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、線維芽細胞を取得する工程、
    を含む、請求項5又は6に記載の細胞シートを製造する方法。
  8. 末梢血単核球と線維芽細胞を含む細胞シート。
  9. 前記末梢血単核球及び/又は前記線維芽細胞が、治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体から取得したものであることを特徴とする請求項8に記載の細胞シート。
  10. 末梢血単核球及び線維芽細胞を共培養することで製造される請求項8又は9に記載の細胞シート。
  11. 末梢血単核球を5.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種し、線維芽細胞を1.0x10個/cm〜1.5x10個/cmで播種することで、前記共培養を実施することを特徴とする請求項10に記載の細胞シート。
  12. 前記共培養を、末梢血単核球と線維芽細胞とを同時に播種することで開始することを特徴とする請求項10又は11に記載の細胞シート。
  13. 前記細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養することを特徴とする、請求項8乃至12のいずれかに記載の細胞シート。
  14. 請求項8乃至13のいずれかに記載の細胞シートを含有する難治性皮膚潰瘍治療用移植材料。
  15. 以下の(d)〜(e)の工程を含む細胞シートを製造する方法。
    (d)培養基材上で末梢血単核球と線維芽細胞を共培養し、該細胞を含むからなる細胞シートを形成させる工程、
    (e)該細胞シートを培養基材から剥離する工程
  16. 前記工程(d)の前に、
    (d0)治療を施す対象である、難治性皮膚潰瘍を患う個体より、末梢血単核球及び/又は線維芽細胞を取得する工程、
    を含む、請求項15に記載の細胞シートを製造する方法。
  17. 前記工程(d)と(e)の間に、
    (d2)工程(a)の細胞シートを、低温及び低酸素条件にて、所定の期間培養する工程、
    を含む、請求項15又は16に記載の細胞シートを製造する方法。
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