JPWO2016052743A1 - 光軸方向走査型顕微鏡装置 - Google Patents

光軸方向走査型顕微鏡装置 Download PDF

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Abstract

中間像が光学素子に一致する位置で結像されても、中間像に光学素子の傷、異物および欠陥等が重なることを防止して鮮明な最終像を取得することを目的として、本発明の光軸方向走査型顕微鏡装置10は、光源11と、光源11からの照明光を観察対象物Aに照射する照明光学系12と、観察対象物Aからの光を集光する結像光学系13と、該結像光学系13により集光された光を撮影して画像を取得する撮像素子(光検出器)14とを備えている。最終像Iおよび少なくとも1つの中間像IIを形成する複数の結像レンズ2,3と、該結像レンズ2,3により形成されるいずれかの中間像IIよりも物体O側に配置され、物体Oからの光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子5と、該第1の位相変調素子5との間に少なくとも1つの中間像IIを挟む位置に配置され、第1の位相変調素子5により物体Oからの光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子6とを備える。

Description

本発明は、例えば光学的に光軸方向の走査を行う光軸方向走査型の顕微鏡装置に関するものである。
従来、中間像位置において光路長を調節することにより、対象物における合焦点位置を光軸に沿う方向(Z軸方向)に移動させる方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
特許第4011704号公報 特表2010−513968号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2の方法では、中間像面に平面鏡を配置するので、平面鏡の表面の傷や異物が、取得された最終像や対象物に投影された照明光に重なってしまうという不都合がある。また、特許文献2の方法は、光路長の調節手段と対象物との間に拡大された中間像が介在する光学系であるため、縦倍率は横倍率の2乗に等しくなるという光学上の基本原理により、合焦点位置の光軸に沿う方向への僅かな移動によっても、拡大された中間像はその光軸方向に大きく移動する。その結果、移動した中間像がその中間像の前後に位置していたレンズに重なると、上記と同様に、レンズの表面の傷や異物あるいはレンズ内の欠陥等が最終的な像や投影された照明光に重なってしまうという不都合がある。そしてこの種の不都合は、上記先行技術を拡大光学系である顕微鏡に適用した場合に特に顕著である。このことから、従来技術による光軸(Z軸)方向走査機能を備えた顕微鏡装置においては、Z軸方向に異なる合焦位置で観察等を行おうとすると、鮮明な最終像を得ることが困難であり、長年、光軸方向走査型の顕微鏡装置における宿命として解消できない課題であった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、中間像が光学素子に一致する位置で結像されても、中間像に光学素子の傷、異物および欠陥等が重なることを防止して鮮明な最終像を取得することができる光軸方向走査型顕微鏡装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、最終像および少なくとも1つの中間像を形成する複数の結像レンズと、該結像レンズにより形成されるいずれかの前記中間像よりも物体側に配置され、前記物体からの光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子と、該第1の位相変調素子との間に少なくとも1つの中間像を挟む位置に配置され、前記第1の位相変調素子により前記物体からの光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子とを備える結像光学系と、前記物体からの波面が前記結像光学系を通過することにより結像される像を光軸方向に走査するための走査系とを備える光軸方向走査型顕微鏡装置である。
本明細書においては、像のあり方として、「鮮明な像」および「不鮮明な像」(または「ぼやけた像」)という2つの概念を用いる。
まず「鮮明な像」とは、物体から発した光の波面に、空間的な乱れが付与されていない状態で、あるいは一旦付与された乱れが打ち消され解消された状態で、結像レンズを介して生成された像であり、光の波長と結像レンズの開口数とで決まる空間周波数帯域、あるいはそれに準ずる空間周波数帯域、あるいは目的に応じた所望の空間周波数帯域を有するものを意味する。
次に「不鮮明な像」(または「ぼやけた像」)とは、物体から発した光の波面に、空間的な乱れが付与された状態で、結像レンズを介して生成された像であり、その像の近傍に配置された光学素子の表面や内部に存在する傷や異物や欠陥等が、実質的に最終像として形成されない様な特性を有するものを意味する。
このようにして形成された「不鮮明な像」(または「ぼやけた像」)は、単に焦点の外れた像とは異なり、本来結像されるはずだった位置(すなわち仮に波面の空間的な乱れが付与されなかった場合に結像される位置)における像も含めて、光軸方向の広い範囲にわたって、像コントラストの明確なピークを持たない。「不鮮明な像」の空間周波数帯域は、「鮮明な像」の空間周波数帯域に比べて、常に狭いものとなる。
以下、本明細書における「鮮明な像」および「不鮮明な像」(または「ぼやけた像」)は、上記概念に基づくものであり、Z軸方向での中間像の移動とは、本発明ではぼやけた中間像の状態のまま移動することを意味する。また、Z軸走査とは、Z軸方向での光の移動のみに限らず、後述するようにXY上の光移動を伴なっていてもよい。また、本明細書において、Z軸方向とは光軸に沿う方向を意味する。
本態様によれば、結像レンズの物体側から入射された光は結像レンズによって集光されることにより最終像を結像する。この場合において、中間像の一つよりも物体側に配置された第1の位相変調素子を通過することにより、光の波面に空間的な乱れが付与され、結像される中間像はぼやける。また、中間像を結像した光は第2の位相変調素子を通過することにより、第1の位相変調素子によって付与された波面の空間的な乱れが打ち消される。これにより、第2の位相変調素子以降において結像される最終像が鮮明になる。
すなわち、中間像をぼやけさせることにより、中間像位置に何らかの光学素子が配置されて、該光学素子の表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等が存在していても、それら光学素子の傷、異物あるいは欠陥等が中間像に重なって、最終的に最終像の一部として形成されてしまう不都合の発生を防止することができる。また、本態様が顕微鏡光学系に適用される場合には、フォーカシング等によりZ軸方向での移動した中間像がその中間像の前後に位置していたレンズに重なったとしても、レンズの表面の傷や異物あるいはレンズ内の欠陥等が最終的な像に映りこむようなノイズ画像を生じない。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光学的に共役な位置に配置されていることとしてもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、前記結像レンズの瞳位置近傍に配置されていてもよい。
このようにすることで、光束の変動しない瞳位置近傍に配置して第1の位相変調素子および第2の位相変調素子を小型化することができる。
また、上記態様においては、いずれかの前記中間像を挟む位置に配置される2つの前記結像レンズ間の光路長を変更可能な光路長可変手段を備えていてもよい。
このようにすることで、光路長可変手段の作動により、2つの結像レンズ間の光路長を変更することにより、最終像の結像位置を光軸方向に容易に変更することができる。
また、上記態様においては、前記光路長可変手段が、光軸に直交して配置され前記中間像を形成する光を折り返すように反射する平面鏡と、該平面鏡を光軸方向に移動させるアクチュエータと、前記平面鏡により反射された光を2方向に分岐するビームスプリッタとを備えていてもよい。
このようにすることで、物体側の結像レンズにより集光された物体側からの光が平面鏡によって反射されて折り返された後、ビームスプリッタによって分岐されて像側の結像レンズに入射される。この場合において、アクチュエータを作動させて平面鏡を光軸方向に移動させることにより、2つの結像レンズ間の光路長を容易に変更することができ、最終像の結像位置を光軸方向に容易に変更することができる。
また、上記態様においては、いずれかの前記結像レンズの瞳位置近傍に、光の波面に付与する空間的な位相変調を変更することにより、前記最終像位置を光軸方向に変化させる可変空間位相変調素子を備えていてもよい。
このようにすることで、可変空間位相変調素子によって最終像位置を光軸方向に変化させるような空間的な位相変調を光の波面に付与することができる。付与する位相変調を調節することにより、最終像の結像位置を光軸方向に容易に変更することができる。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子または前記第2の位相変調素子の少なくとも一方の機能が、前記可変空間位相変調素子によって担われていてもよい。
このようにすることで、可変空間位相変調素子に最終像位置を光軸方向に変化させるような空間的な位相変調と、中間像をぼやけさせるような位相変調あるいは中間像のぼやけを打ち消すような位相変調との両方を受け持たせることができる。これにより、構成部品を少なくして簡易な結像光学系を構成することができる。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光軸に直交する1次元方向に変化する位相変調を光の波面に付与してもよい。
このようにすることで、第1の位相変調素子により光軸に直交する1次元方向に変化する位相変調を光の波面に付与して、中間像をぼやけさせることができる。そして、中間像位置に何らかの光学素子が配置されて、該光学素子の表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等が存在していても、それら光学素子の傷、異物あるいは欠陥等が中間像に重なって、最終的に最終像の一部として形成されてしまう不都合の発生を防止することができる。また、1次元方向に変化した位相変調を打ち消すような位相変調を第2の位相変調素子により光の波面に付与して、ぼやけない鮮明な最終像を結像させることができる。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光軸に直交する2次元方向に変化する位相変調を光束の波面に付与してもよい。
このようにすることで、第1の位相変調素子により光軸に直交する2次元方向に変化する位相変調を光の波面に付与して、中間像をより確実にぼやけさせることができる。また、2次元方向に変化した位相変調を打ち消すような位相変調を第2の位相変調素子により光の波面に付与して、より鮮明な最終像を結像させることができる。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を透過させる際に波面に位相変調を付与する透過型素子であってもよい。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を反射させる際に波面に位相変調を付与する反射型素子であってもよい。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子と前記第2の位相変調素子とが、相補的な形状を有していてもよい。
このようにすることで、中間像をぼやけさせる空間的な乱れを波面に付与する第1の位相変調素子と、波面に付与された空間的な乱れを打ち消すような位相変調を付与する第2の位相変調素子とを簡易に構成することができる。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、透明材料の屈折率分布によって波面に位相変調を付与してもよい。
このようにすることで、第1の位相変調素子を光が透過する際に屈折率分布に従う波面の乱れを生じさせ、第2の位相変調素子を光が透過する際に屈折率分布によって波面の乱れを打ち消すような位相変調を光の波面に付与することができる。
また、上記態様においては、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源とを備えていてもよい。
本態様によれば、物体側に配置された光源から発せられた照明光が結像光学系に入射されることにより、最終像側に配置された照明対象物に照明光を照射することができる。この場合に、第1の位相変調素子によって、結像光学系により形成される中間像がぼやけさせられるので、中間像位置に何らかの光学素子が配置されて、該光学素子の表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等が存在していても、それら光学素子の傷、異物あるいは欠陥等が中間像に重なって、最終的に最終像の一部として形成されてしまう不都合の発生を防止することができる。
また、上記態様においては、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とを備えていてもよい。
本態様によれば、結像光学系により、光学素子の表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等の像が中間像に重なることが防止されることによって形成された鮮明な最終像を光検出器によって検出することができる。
上記態様においては、前記光検出器が、前記結像光学系の最終像位置に配置され、該最終像を撮影する撮像素子であってもよい。
このようにすることで、結像光学系の最終像位置に配置された撮像素子により、鮮明な最終像を撮影して、精度の高い観察を行うことができる。
また、上記態様においては、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とを備えていてもよい。
本態様によれば、光源からの光が結像光学系によって集光されて観察対象物に照射され、観察対象物において発生した光が最終像側に配置された光検出器により検出される。これにより、中間の光学素子の表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等の像が中間像に重なることが防止されることによって形成された鮮明な最終像を光検出器によって検出することができる。
上記態様においては、前記光源および前記光検出器と前記結像光学系との間に配置されたニポウディスク型コンフォーカル光学系を備えていてもよい。
このようにすることで、観察対象物に多点のスポット光を走査させて観察対象物の鮮明な画像を高速に取得することができる。
また、上記態様においては、前記光源がレーザ光源であり、前記光検出器が共焦点ピンホールおよび光電変換素子を備えていてもよい。
このようにすることで、中間像位置における傷や異物や欠陥等の像の写り込みのない、鮮明な共焦点画像による観察対象物の観察を行うことができる。
また、上記態様においては、前記光源によって照明された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器を備え、前記光源がパルスレーザ光源であってもよい。
このようにすることで、中間像位置における傷や異物や欠陥等の像の写り込みのない、鮮明な多光子励起画像による観察対象物の観察を行うことができる。
上記態様においては、光スキャナを備え、該光スキャナが、前記第1の位相変調素子、前記第2の位相変調素子および前記結像レンズの瞳に対して光学的に共役な位置に配置されていることとしてもよい。
また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光学的に非共役な位置に配置されたシリンドリカルレンズの組合せであることとしてもよい。
すなわち、適切なパワーのシリンドリカルレンズを適切な場所に配置することによって、第1の位相変調素子と第2の位相変調素子が光学的に非共役であっても、第1の位相変調素子により生じた光の波面の乱れを第2の位相変調素子により打ち消して、非点収差を生じることなく結像させることができる。これにより、たとえ空間的な制約等によって、第1の位相変調素子と第2の位相変調素子を光学的に共役に配置することが出来ない光学系であっても、中間像をぼやけさせることにより、中間像位置に配置された光学素子の表面や内部に存在する傷、異物あるいは欠陥等が中間像に重なって、最終的に最終像の一部として形成されてしまう不都合の発生を防止することができる。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子の少なくとも1つが、前記結像レンズの瞳位置近傍に配置されていることとしてもよい。
上記態様においては、いずれかの前記中間像を挟む位置に配置される2つの前記結像レンズ間の光路長を変更可能な光路長可変手段を備えていてもよい。
上記態様においては、前記光路長可変手段が、光軸に直交して配置され前記中間像を形成する光を折り返すように反射する平面鏡と、該平面鏡を光軸方向に移動させるアクチュエータと、前記平面鏡により反射された光を2方向に分岐するビームスプリッタとを備えていてもよい。
上記態様においては、いずれかの前記結像レンズの瞳位置近傍に、光の波面に付与する空間的な位相変調を変更することにより、前記最終像位置を光軸方向に変化させる可変空間位相変調素子を備えていてもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子または前記第2の位相変調素子の少なくとも一方の機能が、前記可変空間位相変調素子によって担われていてもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を透過させる際に波面に位相変調を付与する透過型素子であってもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を反射させる際に波面に位相変調を付与する反射型素子であってもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子と前記第2の位相変調素子とが、相補的な形状を有していてもよい。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、透明材料の屈折率分布によって波面に位相変調を付与してもよい。
上記態様においては、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生するための光源をさらに備えていてもよい。
上記態様においては、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器をさらに備えていてもよい。
上記態様においては、前記光検出器が、前記結像光学系の最終像位置に配置され、該最終像を撮影する撮像素子であってもよい。
上記態様においては、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とをさらに備えていてもよい。
上記態様においては、前記光源および前記光検出器と前記結像光学系との間に配置されたニポウディスク型コンフォーカル光学系を備えていてもよい。
上記態様においては、前記光源がレーザ光源であり、前記光検出器が共焦点ピンホールおよび光電変換素子を備えていてもよい。
上記態様においては、前記光源によって照明された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器を備え、前記光源がパルスレーザ光源であってもよい。
上記態様においては、光スキャナを備え、該光スキャナが、前記第1の位相変調素子、前記第2の位相変調素子および前記結像レンズの瞳に対して光学的に共役な位置に配置されていることとしてもよい。
本発明によれば、中間像が光学素子に一致する位置で結像されても、中間像に光学素子の傷、異物および欠陥等が重なることを防止して鮮明な最終像を取得することができるという効果を奏する。特に、顕微鏡のような拡大光学系においてフォーカシング等で中間像を移動させた場合、Z軸方向での移動した中間像がその中間像の前後に位置していたレンズに重なったとしても、レンズの表面の傷や異物あるいはレンズ内の欠陥等が最終的な像に映りこむようなノイズ画像を生じないことから、本発明は、長年、光軸方向走査型の顕微鏡装置において解消できなかた課題を解決できるという格別な作用効果を奏する。
本発明の顕微鏡装置に用いられる結像光学系の一実施形態を示す模式図である。 図1の結像光学系の作用を説明する模式図である。 2の物体側の瞳位置から波面回復素子までを示す拡大図である。 従来の顕微鏡装置に用いられる結像光学系を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る観察装置を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る観察装置を示す模式図である。 本発明の第3の実施形態に係る観察装置を示す模式図である。 図7の観察装置の変形例を示す模式図である。 図8の観察装置の第1の変形例を示す模式図である。 図9の観察装置のさらなる変形例を示す模式図である。 図8の観察装置の第2の変形例を示す模式図である。 図8の観察装置の第3の変形例を示す模式図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の一例としてのシリンドリカルレンズを示す斜視図である。 図13のシリンドリカルレンズを用いた場合の作用を説明する模式図である。 図14の説明に使用するガウス光学に基づく位相変調量と光学パワーの関係を説明する図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としてのバイナリ回折格子を示す斜視図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての1次元正弦波回折格子を示す斜視図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての自由曲面レンズを示す斜視図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としてのコーンレンズを示す縦断面図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての同心円型バイナリ回折格子を示す斜視図である。 位相変調素子として回折格子を用いた場合の光軸に沿う光線の作用を説明する模式図である。 位相変調素子として回折格子を用いた場合の軸上光線の作用を説明する模式図である。 波面錯乱素子として機能する回折格子の作用を説明する中央部の詳細図である。 波面回復素子として機能する回折格子の作用を説明する中央部の詳細図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての球面収差素子を示す縦断面図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての不規則形状素子を示す縦断面図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての反射型の位相変調素子を示す模式図である。 本発明の結像光学系および観察装置に使用される位相変調素子の他の例としての屈折率分布型素子を示す模式図である。 本発明の結像光学系を内視鏡的用途でもって顕微鏡的に拡大観察するための装置に適用する場合のレンズ配列の一例を示す図である。 本発明の結像光学系を、インナーフォーカス機能付き内視鏡型細径対物レンズを備えた顕微鏡に適用する場合のレンズ配列の一例を示す図である。 波面錯乱素子と波面回復素子とが共役な位置関係に配置された結像光学系をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た模式図である。 図31Aをシリンドリカルレンズのパワーがない方向から見た模式図である。 波面錯乱素子と波面回復素子とが非共役な位置関係に配置された結像光学系をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た模式図である。 図32Aをシリンドリカルレンズのパワーがない方向から見た模式図である。 波面錯乱素子と波面回復素子とが非共役な別の位置関係に配置された結像光学系をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た模式図である。 図33Aをシリンドリカルレンズのパワーがない方向から見た模式図である。 本発明の変形例に係る結像光学系のアスペクト比変換光学系を示す断面図である。 本発明の変形例に係る結像光学系のアスペクト比変換機構を示す模式図である。 本発明の変形例に係る結像光学系のアスペクト比変換回路を示す模式図である。 アスペクト比補正回路による補正前と補正後のイメージ画像の一例を示す図である。 本発明の結像光学系を組み合わせる顕微鏡の平行平板を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る観察装置を示す模式図である。 図39の照明装置を示す平面図である。 図39の照明装置を示す側面図である。 図39の波面回復素子におけるスキャン動作による光束の通過位置を示す横断面図である。 図39の対物レンズの瞳位置におけるスキャン動作による光束の通過位置を示す横断面図である。 本発明の一実施例に係る照明装置の一部を示す拡大模式図である。
本発明の顕微鏡装置(光軸方向走査型顕微鏡装置)に用いられる結像光学系1の一実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る結像光学系1は、図1に示されるように、間隔をあけて配置された2つ1組の結像レンズ2,3と、これらの結像レンズ2,3の中間結像面に配置されたフィールドレンズ4と、物体O側の結像レンズ2の瞳位置PP近傍に配置された波面錯乱素子(第1の位相変調素子)5と、像I側の結像レンズ3の瞳位置PP近傍に配置された波面回復素子(第2の位相変調素子)6とを備えている。図中、符号7は開口絞りである。
波面錯乱素子5は、物体Oから発せられ物体O側の結像レンズ2により集光された光を透過させる際に波面に乱れを付与するようになっている。波面錯乱素子5によって波面に乱れを付与することにより、フィールドレンズ4に結像される中間像が不鮮明化されるようになっている。
一方、波面回復素子6は、フィールドレンズ4により集光された光を透過させる際に、波面錯乱素子5によって付与された波面の乱れを打ち消すような位相変調を光に付与するようになっている。波面回復素子6は、波面錯乱素子5とは逆の位相特性を有し、波面の乱れを打ち消すことによって、鮮明な最終像Iを結像させるようになっている。
本実施形態に係る結像光学系1の、より一般的な概念について詳細に説明する。
図2に示される例では、結像光学系1は、物体O側および像I側に関してテレセントリックな配置になっている。また、波面錯乱素子5はフィールドレンズ4から物体O側に距離aだけ離れた位置に配置され、波面回復素子6はフィールドレンズ4から像I側に距離bだけ離れた位置に配置されている。
図2において、符号fは結像レンズ2の焦点距離、符号fは結像レンズ3の焦点距離、符号F,F´は結像レンズ2の焦点位置、符号F,F´は結像レンズ3の焦点位置、符号II,II,IIは中間像である。
ここで、波面錯乱素子5は必ずしも結像レンズ2の瞳位置PP近傍に配置されている必要はなく、波面回復素子6も必ずしも結像レンズ3の瞳位置PP近傍に配置されている必要はない。
ただし、波面錯乱素子5と波面回復素子6は、フィールドレンズ4による結像に関して、式(1)に示されるように、互いに共役な位置関係に配置されている必要がある。
1/f=1/a+1/b・・・(1)
ここで、fはフィールドレンズ4の焦点距離である。
図3は、図2の物体O側の瞳位置PPから波面回復素子6までを詳細に示す図である。
ここで、ΔLは、光が光学素子を透過することによって付与される、特定の位置(すなわち光線高さ)を透過する光線を基準とした、位相の進み量である。
また、ΔL(x)は、光が波面錯乱素子5の光軸上(x=0)を通過する場合を基準とした、波面錯乱素子5の任意の光線高さxを通過する場合の位相の進み量を与える関数である。
さらに、ΔL(x)は、光が波面回復素子6の光軸上(x=0)を通過する場合を基準とした、波面回復素子6の任意の光線高さxを通過する場合の位相の進み量を与える関数である。
ΔL(x)とΔL(x)は、下式(2)を満たしている。
ΔL(x)+ΔL(x)=ΔL(x)+ΔL(β・x)=0・・・(2)
ここで、βは、フィールドレンズ4による波面錯乱素子5と波面回復素子6の共役関係における横倍率であり、下式(3)により表される。
β=−b/a・・・(3)
このような結像光学系1に1本の光線Rが入射し、波面錯乱素子5上の位置xを通過すると、そこで、ΔL(x)の位相変調を受け、屈折、回折、散乱等による錯乱光線Rcを生じる。錯乱光線Rcは、光線Rの位相変調を受けなかった成分とともに、フィールドレンズ4によって波面回復素子6上の位置x=β・xに投影される。投影された光線はここを通過することにより、ΔL(β・x)=−ΔL(x)の位相変調を受け、波面錯乱素子5によって受けた位相変調が打ち消される。これにより、波面の乱れのない1本の光線R´に戻る。
波面錯乱素子5と波面回復素子6が共役な位置関係にあり、かつ式(2)の特性を有する場合には、波面錯乱素子5上の1つの位置を経て位相変調を受けた光線は、その位置と一対一対応し、かつ波面錯乱素子5から受けた位相変調を打ち消すような位相変調を付与する波面回復素子6の特定の位置を必ず通過する。図2および図3に示される光学系は、光線Rに対して、波面錯乱素子5におけるその入射位置xや入射角に関わりなく、上記のように作用する。すなわち、あらゆる光線Rに関して、中間像IIを不鮮明化し、かつ最終像Iを鮮明に結像させることができる。
図4に、従来の結像光学系を示す。この結像光学系によれば、物体O側の結像レンズ2によって集光された光は中間結像面に配置されるフィールドレンズ4において鮮明な中間像IIを形成した後、像I側の結像レンズ3によって集光されて鮮明な最終像Iを形成する。
従来の結像光学系では、フィールドレンズ4の表面に傷や塵埃等があったり、フィールドレンズ4の内部に空洞等の欠陥があったりした場合に、フィールドレンズ4に鮮明に形成された中間像にこれらの異物の像が重なってしまい、最終像Iにも異物の像が形成されてしまうという問題が発生する。
これに対し、本実施形態に係る結像光学系1によれば、フィールドレンズ4に一致する位置に配置される中間結像面には、波面錯乱素子5によって不鮮明化された中間像IIが結像されるので、中間像IIに重なった異物の像は、波面回復素子6によって位相変調を受けて不鮮明な中間像IIが鮮明化される際に同じ位相変調によって不鮮明化される。したがって、鮮明な最終像Iに中間結像面の異物の像が重なることを防止することができる。
なお、上記説明においては、2つの結像レンズ2,3をそれぞれテレセントリックな配置として説明したが、これに限定されるものではなく、非テレセントリック系であっても同様に作用する。
また、位相進み量の関数を1次元的な関数としたが、これに代えて、2次元的な関数としても同様に作用し得る。
また、結像レンズ2と波面錯乱素子5とフィールドレンズ4の間の空間、およびフィールドレンズ4と波面回復素子6と結像レンズ3の間の空間は、必ずしも必要でなく、これらの素子の間は光学的に接合されていてもよい。
また、結像光学系1をなす各レンズ、すなわち、結像レンズ2,3およびフィールドレンズ4の各々が結像と瞳リレーの機能を明確に分担する構成としたが、実際の結像光学系においては、1つのレンズが結像と瞳リレーの両機能を同時に有するような構成も用いられている。このような場合においても、上記条件が満たされる場合には、波面錯乱素子5は波面に乱れを付与して中間像IIを不鮮明化し、波面回復素子6は波面の乱れを打ち消して最終像Iを鮮明化することができる。
次に、本発明の第1の実施形態に係る観察装置(光軸方向走査型顕微鏡装置)10について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置10は、図5に示されるように、非コヒーレントな照明光を発生する光源11と、光源11からの照明光を観察対象物Aに照射する照明光学系12と、観察対象物Aからの光を集光する結像光学系13と、該結像光学系13により集光された光を撮影して画像を取得する撮像素子(光検出器)14とを備えている。
照明光学系12は、光源11からの照明光を集光する集光レンズ15a,15bと、該集光レンズ15a,15bにより集光された照明光を観察対象物Aに照射する対物レンズ16とを備えている。
また、この照明光学系12は、いわゆるケーラー照明であり、集光レンズ15a,15bは、光源11の発光面と対物レンズ16の瞳面とが互いに共役になるように配置されている。
結像光学系13は、物体側に配置された観察対象物Aから発せられた観察光(例えば、反射光)を集光する上記対物レンズ(結像レンズ)16と、該対物レンズ16により集光された観察光の波面に乱れを付与する波面錯乱素子17と、波面に乱れを付与された光を光源11からの照明光路から分岐させる第1のビームスプリッタ18と、光軸方向に間隔を明けて配置された第1の中間結像レンズ対19と、該第1の中間結像レンズ対19の各レンズ19a,19bを通過した光を90°偏向する第2のビームスプリッタ20と、該第2のビームスプリッタ20により偏向された光を集光して中間像を結像させる第2の中間結像レンズ21と、該第2の中間結像レンズ21による中間結像面に配置された光路長可変手段22と、第2のビームスプリッタ20と第2の中間結像レンズ21との間に配置された波面回復素子23と、該波面回復素子23および第2のビームスプリッタ20を透過した光を集光して最終像を結像させる結像レンズ24とを備えている。
撮像素子14は、例えば、CCDあるいはCMOSのような2次元のイメージセンサであり、結像レンズ24による最終像の結像位置に配置された撮像面14aを備え、入射される光を撮影することにより観察対象物Aの2次元的な画像を取得することができるようになっている。
波面錯乱素子17は、対物レンズ16の瞳位置近傍に配置されている。波面錯乱素子17は、光を透過可能な光学的に透明な材料により構成され、光が透過する際に、表面の凹凸形状に従う位相変調を光の波面に付与するようになっている。本実施形態においては、観察対象物Aからの観察光を1回透過させることにより、必要な波面の乱れを付与するようになっている。
また、波面回復素子23は、第2の中間結像レンズ21の瞳位置近傍に配置されている。波面回復素子23も光を透過可能な光学的に透明な材料により構成され、光が透過する際に、表面の凹凸形状に従う位相変調を光の波面に付与するようになっている。本実施形態においては、波面回復素子23は、ビームスプリッタ20により偏向された観察光および光路長可変手段22により折り返すように反射された観察光を往復で2回透過させることにより、波面錯乱素子17により付与された波面の乱れを打ち消すような位相変調を光の波面に与えるようになっている。
光軸(Z軸)走査系としての光路長可変手段22は、光軸に直交して配置された平面鏡22aと、該平面鏡22aを光軸方向に変位させるアクチュエータ22bとを備えている。光路長可変手段22のアクチュエータ22bの作動により、平面鏡22aを光軸方向に変位させると、第2の中間結像レンズ21と平面鏡22aとの間の光路長が変化させられ、それによって、観察対象物Aにおける、撮像面14aと共役な位置、すなわち、対物レンズ16の前方の合焦点位置が、光軸方向に変化させられるようになっている。
このように構成された本実施形態に係る観察装置10を用いて観察対象物Aの観察を行うには、光源11からの照明光を照明光学系12によって観察対象物Aに照射する。観察対象物Aから発せられた蛍光、反射光、散乱光等よりなる観察光は、対物レンズ16によって集光され、波面錯乱素子17を1回透過して第1のビームスプリッタ18および中間結像光学系19を通過し、第2のビームスプリッタ20において90°偏向されて波面回復素子23を透過する。し、そして、観察光は、光路長可変手段22の平面鏡22aによって折り返されるように反射されて波面回復素子23を再度透過し、ビームスプリッタ20を透過する。これにより、結像レンズ24によって結像された最終像が撮像素子14によって撮影される。
光路長可変手段22のアクチュエータ22bを作動させて、平面鏡22aを光軸方向に移動させることにより、第2の中間結像レンズ21と平面鏡22aとの間の光路長を変化させることができ、これによって、対物レンズ16の前方の合焦点位置を光軸方向に移動させ走査することができる。そして、異なる合焦点位置において観察光を撮影することにより、観察対象物Aの奥行き方向に異なる位置に合焦させた複数の画像を取得することができる。さらに、これらの画像を加算平均によって合成した後、高域強調処理を施すことにより、被写界深度の深い画像を取得することができる。
この場合において、光路長可変手段22の平面鏡22a近傍には第2の中間結像レンズ21による中間像が結像されるが、この中間像は、波面錯乱素子17を透過することにより付与された波面の乱れが、波面回復素子23を1回透過することにより部分的に打ち消されて残った波面の乱れによって、不鮮明化されている。そして、不鮮明化された中間像を結像した後の光は、第2の中間結像レンズ21によって集光された後に、波面回復素子23を再度通過させられることにより、波面の乱れが完全に打ち消される。
その結果、本実施形態に係る観察装置10によれば、平面鏡22aの表面に傷や塵埃等の異物が存在していても、異物の像が最終像に重なって撮影されてしまうことを防止することができ、かつ、観察対象物Aの鮮明な画像を得ることができるという利点がある。
また、同様にして、観察対象物Aにおける合焦点位置を光軸方向に移動させると、第1の中間結像レンズ対19によって形成される中間像も光軸方向に大きく変動するが、その変動の結果、中間像が第1の中間結像レンズ対19の位置に重なったとしても、あるいはまた、その変動範囲内に何らかの他の光学素子が存在する場合であっても、中間像が不鮮明化されているので、異物の像が最終像に重なって撮影されてしまうことを防止することができる。本実施形態において、上述したような走査系を搭載した場合には、結像光学系に配置されるあらゆる光学素子上で、光がZ軸移動してもノイズ画像を生じない。
次に、本発明の第2の実施形態に係る観察装置30について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る観察装置10と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る観察装置30は、図6に示されるように、レーザ光源31と、該レーザ光源31からのレーザ光を観察対象物Aに集光させる一方、観察対象物Aからの光を集光する結像光学系32と、該結像光学系32により集光された光を撮影する撮像素子(光検出器)33と、光源31および撮像素子33と結像光学系32との間に配置されたニポウディスク型コンフォーカル光学系34とを備えている。
ニポウディスク型コンフォーカル光学系34は、平行間隔をあけて配置される2枚のディスク34a,34bと、該ディスク34a,34bを同時に回転させるアクチュエータ34cとを備えている。レーザ光源31側のディスク34aには、マイクロレンズ(図示略)が多数配列されており、物体側のディスク34bには、各マイクロレンズに対応する位置に多数のピンホール(図示略)が設けられている。また、2枚のディスク34a,34bの間の空間には、ピンホールを通過した光を分岐するダイクロイックミラー34dが固定されており、ダイクロイックミラー34dによって分岐された光は集光レンズ35によって集光され、撮像素子33の撮像面33aに最終像が結像されて、画像が取得されるようになっている。
結像光学系32は、第1の実施形態における第1のビームスプリッタ18と第2のビームスプリッタ20とを共通化して単一のビームスプリッタ36とし、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のピンホールを通過した光を観察対象物Aに照射するための光路と、観察対象物Aにおいて発生し、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のピンホールに入射するまでの光路とを完全に共通化している。
このように構成された本実施形態に係る観察装置30の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置30によれば、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のピンホールから結像光学系32に入射した光は、ビームススプリッタ36および位相変調素子23を透過した後に、第2の中間結像レンズ21によって集光され、光路長可変手段22の平面鏡22aによって折り返されるように反射される。そして、第2の中間結像レンズ21を通過した後に、位相変調素子23を再度透過し、ビームスプリッタ36によって90°偏向され、第1の中間結像レンズ対19および位相変調素子17を透過して対物レンズ16により観察対象物Aに集光される。
本実施形態においては、レーザ光が最初に2回透過する位相変調素子23は、レーザ光の波面に乱れを付与する波面錯乱素子として機能し、その後に1回透過する位相変調素子17は、位相変調素子23により付与された波面の乱れを打ち消すような位相変調を付与する波面回復素子として機能する。
したがって、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34によって多数の点光源状に形成された光源の像は第2の中間結像レンズ21によって平面鏡22a上に中間像として結像されるが、第2の中間結像レンズ21により形成される中間像は、位相変調素子23を1回通過することにより不鮮明化されているので、中間結像面に存在する異物の像が、最終像に重なってしまう不都合を防止できる。
また、位相変調素子23を2回透過することにより波面に付与された乱れは、位相変調素子17を1回透過することにより打ち消されるので、観察対象物Aに鮮明な多数の点光源の像を結像させることができる。そして、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のアクチュエータ34cの作動によりディスク34a,34bを回転させることにより、観察対象物Aに結像している多数の点光源の像を光軸に交差するXY方向に移動させ、高速走査を行うことができる。
一方、観察対象物Aにおける点光源の像の結像位置において発生した光、例えば、蛍光は、対物レンズ16により集光され、位相変調素子17および第1の中間結像レンズ対19を透過した後、ビームスプリッタ36によって90°偏向されて、位相変調素子23を透過し、第2の中間結像レンズ21によって集光されて、平面鏡22aによって折り返されるように反射される。その後、蛍光は、再度、第2の中間結像レンズ21によって集光され、位相変調素子23およびビームスプリッタ36を透過して、結像レンズ24により集光され、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のピンホール位置に結像される。
ピンホールを通過した光はダイクロイックミラーによって、レーザ光源からの光路から分岐され、集光レンズによって集光されて撮像素子の撮像面に最終像として結像される。
この場合において、観察対象物において多数の点状に発生した蛍光が透過する位相変調素子17は第1の実施形態と同様に波面錯乱素子として機能し、位相変調素子23は波面回復素子として機能する。
したがって、位相変調素子17を透過することにより波面に乱れが付与された蛍光は、位相変調素子23を1回透過することにより、部分的に乱れが打ち消された状態ではあるが、平面鏡22aに結像される中間像は不鮮明化されたものとなる。そして、位相変調素子23をもう1回透過することにより、波面の乱れが完全に打ち消された状態となった蛍光は、ニポウディスク型コンフォーカル光学系34のピンホールに結像し、ピンホールを通過した後にダイクロイックミラー34dによって分岐され、集光レンズ35により集光されて撮像素子33の撮像面33aに鮮明な最終像を結像する。
これにより、本実施形態に係る観察装置によれば、観察対象物Aにレーザ光を照射する照明装置としても、観察対象物Aにおいて発生した蛍光を撮影する観察装置としても、中間像を不鮮明化して中間結像面における異物の像が最終像に重なることを防止しつつ、鮮明な最終像を得ることができるという利点を有する。本実施形態において、上述したような走査系を搭載した場合には、結像光学系に配置されるあらゆる光学素子上で、光がZ軸移動してもノイズ画像を生じない。本実施形態において、上述したような走査系を搭載した場合には、結像光学系に配置されるあらゆる光学素子上で、光がZ軸移動してもノイズ画像を生じない。
次に、本発明の第3の実施形態に係る観察装置40について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る観察装置30と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る観察装置40は、図7に示されるように、レーザ走査型共焦点観察装置である。
この観察装置40は、レーザ光源41と、該レーザ光源41からのレーザ光を観察対象物Aに集光させる一方、観察対象物Aからの光を集光する結像光学系42と、該結像光学系42により集光された蛍光を通過させる共焦点ピンホール43と、該共焦点ピンホール43を通過した蛍光を検出する光検出器44とを備えている。
結像光学系42は、レーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダ45と、レーザ光を偏向し蛍光を透過するダイクロイックミラー46と、対物レンズ16の瞳と共役な位置の近傍に配置されたガルバノミラー47と、第3の中間結像レンズ対48とを第2の実施形態に係る観察装置30とは異なる構成として備えている。また、レーザ光の波面に乱れを付与する位相変調素子23をガルバノミラー47の近傍に配置している。図中、符号49はミラーである。
このように構成された本実施形態に係る観察装置40の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置40によれば、レーザ光源41から発せられたレーザ光は、ビームエキスパンダ45によってビーム径が拡大されてダイクロイックミラー46により偏向され、ガルバノミラー47によって2次元的に走査された後、位相変調素子23および第3の中間結像レンズ対48を通過してビームスプリッタ36に入射する。
ビームスプリッタ36へ入射したレーザ光は、光路長可変手段22の平面鏡22aに入射して中間像を結像するが、これに先立って位相変調素子23によって波面に乱れを付与されて中間像が不鮮明化されており、中間結像面に存在する異物の像が重なることを防止することができる。また、対物レンズ16の瞳位置に配置された位相変調素子17によって、波面の乱れが打ち消されるので、鮮明化された最終像を観察対象物Aに結像させることができる。また、最終像の結像深さは、光路長可変手段22によって任意に調節することができる。
一方、観察対象物Aにおけるレーザ光の最終像の結像位置において発生した蛍光は、対物レンズ16によって集光され、位相変調素子17を透過した後に、レーザ光とは逆の光路を辿って、ビームスプリッタ36により偏向される。そして、蛍光は、第3の中間結像レンズ対48、位相変調素子23、ガルバノミラー47およびダイクロイックミラー46を通過した後に結像レンズ24によって、共焦点ピンホール43に集光され、共焦点ピンホール43を通過した蛍光のみが光検出器44によって検出される。
この場合においても、対物レンズ16により集光された蛍光は、位相変調素子17によって波面に乱れを付与された後に中間像を結像するので、中間像が不鮮明化され、中間結像面に存在する異物の像が重なることを防止することができる。そして、位相変調素子23を透過することによって波面の乱れが打ち消されるので、鮮明化された像を共焦点ピンホール43に結像させることができ、観察対象物Aにおいてレーザ光の最終像の結像位置において発生した蛍光を効率よく検出することができる。その結果、高分解能の明るい共焦点画像を取得することができるという利点がある。本実施形態において、上述したような走査系を搭載した場合には、結像光学系に配置されるあらゆる光学素子上で、光がZ軸移動してもノイズ画像を生じない。
なお、本実施形態においては、レーザ走査型共焦点観察装置を例示したが、これに代えて、図8に示されるようにレーザ走査型多光子励起観察装置に適用してもよい。
この場合、レーザ光源41として、極短パルスレーザ光源を採用し、ダイクロイックミラー46を無くし、ミラー49に代えて、ダイクロイックミラー46を採用すればよい。
図8の観察装置50においては、極短パルスレーザ光を観察対象物Aに照射する照明装置の機能において、中間像を不鮮明化し、最終像を鮮明化することができる。観察対象物Aにおいて発生した蛍光については、対物レンズ16により集光され、位相変調素子17およびダイクロイックミラー46を透過した後に、中間像を結像することなく、集光レンズ51によって集光されて、光検出器44によりそのまま検出される。
また、上記各実施形態においては、光路を折り返す平面鏡の移動により光路長を変化させる光路長可変手段22により、対物レンズの前方の合焦点位置を光軸方向に変化させることとした。これに代えて、光路長可変手段としては、図9に示されるように、中間結像光学系61を構成するレンズ61a,61bの一方のレンズ61aをアクチュエータ62によって光軸方向に移動させることにより、光路長を変化させるものを採用した観察装置60を構成してもよい。図中、符号63は他の中間結像光学系である。
また、図10に示されるように、2次元の光スキャナを構成する2枚のガルバノミラー47の間に、他の中間結像光学系80を配置し、2つのガルバノミラー47が位相変調素子17,23および対物レンズ16の瞳に配置されている開口絞り81に対して、精度よく光学的に共役な位置関係に配置されているように構成してもよい。
また、光路長可変手段として、図11に示されるように、反射型のLCOSのような空間光変調素子(SLM)64を採用してもよい。このようにすることで、LCOSの液晶の制御によって高速に波面に与える位相変調を変化させ、対物レンズ16の前方の合焦点位置を光軸方向に高速に変化させることができる。図中、符号65は、ミラーである。
また、反射型のLCOSのような空間光変調素子64に代えて、図12に示されるように、透過型のLCOSのような空間光変調素子66を採用してもよい。反射型のLCOSと比較してミラー65が不要となるので、構成を簡易化することができる。
観察対象物Aにおける合焦点位置を光軸方向に移動させる手段としては、上記各実施例に示したもの(光路長可変手段22、あるいは中間結像光学系61とアクチュエータ62、あるいは反射型空間光変調素子64、あるいは透過型空間光変調素子66)の他にも、能動光学素子として知られるパワー可変光学素子が各種利用可能である。まず機械的可動部を有する可変光学素子として、形状可変鏡(DFM:Deformable Mirror)、液体やゲルを用いた形状可変レンズがある。そして機械的可動部を持たない同様の可変光学素子として、電界により媒質の屈折率を制御する、液晶レンズやタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN:KTa1−xNb)結晶レンズ、さらには音響光学偏向器(AOD/Acousto−Optical
Deflector)におけるシリンドリカルレンズ効果を応用したレンズ、等がある。
以上、本発明の顕微鏡としての実施形態は、いずれも観察対象物Aにおける合焦点位置を光軸方向に移動させる何らかの手段を有する。さらに、これらの合焦点位置光軸方向移動手段は、同じ目的に対する従来の顕微鏡における手段(対物レンズか観察対象物かの何れかを光軸方向に移動させる)に比較して、駆動対象物の質量が小さい、あるいは応答速度の速い物理現象を利用している、という理由により、動作速度を大幅に高めることができる。
このことには、観察対象物(例えば、生きた生体組織標本)における、より高速な現象を検出し得る、という利点がある。
また、透過型あるいは反射型のLCOSのような空間光変調素子64,66を採用する場合には、位相変調素子23の機能を空間光変調素子64,66に担わせることができる。このようにすることで、波面錯乱素子としての位相変調素子23を省略でき、構成をさらに簡易化することができるという利点がある。
また、上記例は、空間光変調素子とレーザ走査型多光子励起観察装置との組み合わせにおける、位相変調素子23の省略であるが、これと同様にして、空間光変調素子と、レーザ走査型共焦点観察装置との組み合わせにおいても、位相変調素子23を省略することが可能である。すなわち、図11,図12において、ダイクロイックプリズム36に代えてミラー49を採用し、ビームエキスパンダ45と空間光変調素子64,66との間にダイクロイックミラー46を採用して分岐光路をなし、さらに結像レンズ24、共焦点ピンホール43、および光検出器44を採用した上で、位相変調素子23の機能を空間光変調素子64,66に担わせることができる。この場合の空間光変調素子64,66は、レーザ光源41からのレーザ光に対しては、波面錯乱素子として波面に乱れを付与する一方で、観察対象物Aからの蛍光に対しては、位相変調素子17によって付与された波面の乱れを打ち消す波面回復素子として作用する。
位相変調素子としては、例えば、図13に示されるような、シリンドリカルレンズ17,23を採用することにしてもよい。
この場合には、シリンドリカルレンズ17によって中間像は非点収差によって点像が線状に伸ばされるので、この作用により、中間像を不鮮明化することができ、これと相補的な形状のシリンドリカルレンズ23により、最終像を鮮明化することができる。
図13の場合、凸レンズまたは凹レンズのいずれを波面錯乱素子として使用してもよいし、波面回復素子として使用してもよい。
位相変調素子としてシリンドリカルレンズ5,6を用いる場合の作用について、以下に詳細に説明する。図14は、図2および図3における位相変調素子としてシリンドリカルレンズ5,6を用いた例を示す。
ここでは、特に、下記条件を設定する。
(a)物体O側の位相変調素子(波面錯乱素子)5として、x方向にパワーψOを有するシリンドリカルレンズを用いる。
(b)像I側の位相変調素子(波面回復素子)6として、x方向にパワーψIを有するシリンドリカルレンズを用いる。
(c)xz平面上の軸上光線Rのシリンドリカルレンズ5における位置(光線高さ)をxとする。
(d)xz平面上の軸上光線Rのシリンドリカルレンズ6における位置(光線高さ)をxとする。
図14において、符号II0X,II0Yは中間像である。
この例における作用を説明する前に、ガウス光学に基づく位相変調量と光学パワーとの関係について、図15を用いて説明する。
図15において、高さ(光軸からの距離)xでのレンズの厚さをd(x)、高さ0(光軸上)でのレンズの厚さをdとすると、高さxの光線に沿った入射側接平面から射出側接平面までの光路長L(x)は次式(4)で表される。
L(x)=(d−d(x))+n・d(x)・・・(4)
高さxにおける光路長L(x)と高さ0(光軸上)における光路長L(0)との差は、薄肉レンズとしての近似を用いると、次式(5)で表される。
L(x)−L(0)=(−x/2)(n−1)(1/r−1/r)・・・(5)
上記光路長差L(x)−L(0)は、高さ0における射出光に対する、高さxにおける射出光の位相進み量と、絶対値が等しく符号が逆である。したがって、上記位相進み量は、式(5)の符号を反転させた次式(6)で表される。
L(0)−L(x)=(x/2)(n−1)(1/r−1/r)・・・(6)
一方、この薄肉レンズの光学パワーψは、次式(7)で表される。
ψ=1/f=(n−1)(1/r−1/r)・・・(7)
したがって、式(6)、(7)から位相進み量L(0)−L(x)と光学パワーψとの関係が次式(8)によって求められる。
L(0)−L(x)=ψ・x/2・・・(8)
ここで、図14の説明に戻る。
xz面上の軸上光線Rがシリンドリカルレンズ5において受ける軸上主光線すなわち光軸に沿った光線Rに対する位相進み量ΔLOcは、式(8)に基づいて次式(9)で表される。
ΔLOc(x)=LOc(0)−LOc(x)=ψO・x /2・・・(9)
ここで、LOc(x)はシリンドリカルレンズ5における高さxの光線に沿った、入射側接平面から射出側接平面までの光路長の関数である。
これと同様にして、xz平面上の軸上光線Rxがシリンドリカルレンズ6において受ける、軸上主光線すなわち光軸に沿った光線Rに対する位相進み量ΔLIcは、次式(10)で表される。
ΔLIc(x)=LIc(0)−LIc(x)=ψI・x /2・・・(10)
ここで、LIc(x)はシリンドリカルレンズ6における高さxの光線に沿った、入射側接平面から射出側接平面までの光路長の関数である。
上記式(2)に式(9)、(10)および(x/x)2=β の関係を適用すると、この例において、シリンドリカルレンズ5が波面錯乱、シリンドリカルレンズ6が波面回復の機能をそれぞれ果たすための条件が式(11)に示すように求められる。
ψOX/ψIX=−β ・・・(11)
すなわち、ψOXとψIXの値は互いに符号が逆であり、かつ、それらの絶対値の比はフィールドレンズ4の横倍率の2乗に比例する必要がある。
なお、ここでは軸上光線に基づいて説明したが、上記条件を満たすならば、シリンドリカルレンズ5,6は軸外光線に対しても同様に波面錯乱と波面回復の機能を果たす。
また、位相変調素子5,6,17,23(図においては、位相変調素子5,6として表示。)としては、シリンドリカルレンズに代えて、図16に示されるような1次元バイナリ回折格子、図17に示されるような1次元正弦波回折格子、図18に示されるような自由曲面レンズ、図19に示されるようなコーンレンズ、図20に示されるような同心円型バイナリ回折格子を採用してもよい。同心円型回折格子としてはバイナリ型に限定されるものではなく、ブレーズド型、正弦波型等の任意の形態を採用することができる。
ここで、波面変調素子として回折格子5,6を用いた場合について、以下に詳細に説明する。
この場合の中間像IIにおいては回折によって1つの点像が複数の点像に分離される。
この作用によって、中間像IIが不鮮明化され、中間結像面の異物の像が最終像に重なって表れることを防止することができる。
位相変調素子として、回折格子5,6を用いた場合における軸上主光線、すなわち、光軸に沿った光線Rの好ましい経路の一例を図21に、また、軸上光線Rの好ましい経路の一例を図22にそれぞれ示す。これらの図において、光線R,Rは回折格子5を経て複数の回折光に分離するが、回折格子6を経ることにより元通りの1本の光線になる。
この場合においても、上記式(1)から(3)を満たすことによって上記効果を達成することができる。
ここで、図21および図22に準じて、式(2)は「1本の軸上光線Rが回折格子5,6で受ける位相変調の和は、軸上主光線Rが回折格子5,6で受ける位相変調の和と常に等しい。」と言い換えることができる。
また、回折格子5,6が周期構造を有する場合、それらの形状(すなわち位相変調特性)が一周期分の領域において式(2)を満たすならば、他の領域においても同様に満たすとみなすことができる。
そこで、回折格子5,6の中央部、すなわち、光軸近傍領域に着目して説明する。図23は回折格子5の、図24は回折格子6の、それぞれ中央部の詳細図である。
ここで、回折格子5,6が式(2)を満たすための条件は以下の通りである。
すなわち、回折格子6における変調の周期pがフィールドレンズ4によって投影された回折格子5による変調の周期pと等しく、回折格子6による変調の位相がフィールドレンズ4によって投影された回折格子5による変調の位相に対して反転しており、かつ、回折格子6による位相変調の大きさと回折格子6による位相変調の大きさとが絶対値で等しくなければならない。
まず、周期pと投影された周期pとが等しくなるための条件は式(12)により表される。
=|β|・p・・・(12)
次に、回折格子6による変調の位相が投影された回折格子5による変調の位相に対して反転しているためには、上記式(12)を満たした上で、例えば、回折格子5はその山領域の中心の1つが光軸と一致するように配置されるとともに、回折格子6はその谷領域の中心の1つが光軸と一致するように配置されればよい。図23および図24はその一例に他ならない。
最後に、回折格子6による位相変調の大きさと、回折格子5による位相変調の大きさとが絶対値で等しいための条件を求める。
回折格子5の光学的なパラメータ(山領域厚さtOC、谷領域厚さtOt、屈折率n)より、回折格子5の谷領域を透過する軸上光線Rに付与される、光軸に沿った(山領域を透過する)光線Rに対する位相進み量ΔLOdtは、次式(13)で表される。
ΔLOdt=n・tOc−(n・tOt+(tOc−tOt))=(n−1)(tOt−tOt)・・・(13)
同様にして、回折格子6の光学的なパラメータ(山領域厚さtIc、谷領域厚さtIt、屈折率n)より、回折格子6の山領域を透過する軸上光線RXに付与される、光軸に沿った(谷領域を透過する)光線Rに対する位相進み量ΔLIdtは、次式(14)で表される。
ΔLIdt=(n・tIt+(tIc−tIt))−n・tIc=−(n−1)(tIc−tIt)・・・(14)
この場合、ΔLOdtの値は正、ΔLIdtの値は負なので、両者の絶対値が等しいための条件は次式(15)で表される。
ΔLOdt+ΔLIdt=(n−1)(tOc−tOt)−(n−1)(tIc−tIc)=0・・・(15)
なお、ここでは軸上光線に基づいて説明したが、上記条件を満たすならば、軸外光線に対しても、回折格子5は波面散乱、回折格子6は波面回復の機能を果たす。
また、ここでは回折格子5,6の断面形状を台形として説明したが、他の形状でも同様の機能を果たし得ることは言うまでもない。
さらに、位相変調素子5,6としては、図25に示されるような球面収差素子、図26に示されるような不規則形状素子、図27に示されるような透過型の空間光変調素子64との組み合わせによる反射型の波面変調素子、図28に示されるような屈折率分布型素子を採用してもよい。
さらにまた、位相変調素子5,6としては、多数の微小なレンズが並んだフライアイレンズやマイクロレンズアレイ、あるいは多数の微小なプリズムが並んだマイクロプリズムアレイを採用してもよい。
また、上記実施形態に係る結像光学系1を内視鏡に適用する場合には、図29に示されるように、対物レンズ(結像レンズ)70の内部に位相錯乱素子5を配置し、複数のフィールドレンズ4および集光レンズ71を含むリレー光学系72を挟んで対物レンズ70とは反対側に配置された接眼レンズ73近傍に位相回復素子6を配置すればよい。このようにすることで、フィールドレンズ4の表面近傍に形成される中間像を不鮮明化し、接眼レンズ73によって結像される最終像を鮮明化することができる。
また、図30に示されるように、アクチュエータ62によってレンズ61aを駆動するインナーフォーカス機能付き内視鏡型細径対物レンズ74内に、波面錯乱素子5を設け、顕微鏡本体75に設けられたチューブレンズ(結像レンズ)76の瞳位置近傍に波面回復素子6を配置してもよい。このように、アクチュエータ自身は公知なレンズ駆動手段(たとえば圧電素子)でもよいが、Z軸方向での中間像の移動という点では上述した実施形態と同様の観点で中間像の空間変調を実行できるよう配置であることが重要である。
〔変形例〕
次に、上記各実施形態の観察装置に用いられる結像光学系の変形例について図を参照して説明する。
上記実施形態においては、波面錯乱素子5,23と波面回復素子6,17とが互いに共役な位置関係に配置されていることとしたが、これら波面錯乱素子5,23と波面回復素子6,17とを非共役な位置関係に配置することとしてもよい。この場合、波面錯乱素子5,23および波面回復素子6,17として、シリンドリカルレンズを採用することが望ましい。
まず、図31Aおよび図31Bを参照して、波面錯乱素子5,23と波面回復素子6,17とを互いに共役な位置関係に配置した場合について、波面錯乱素子5および波面回復素子6を例示して説明する。
図31Aおよび図31Bにおいて、焦点距離f=f=f=l、波面錯乱素子5の焦点距離fPMO=2l、波面回復素子6の焦点距離fPMI=−2l、ΘOX=ΘIX、ΘOY=ΘIY、β=β=1とする。
図31Aおよび図31Bに示す例では、物体Oから像点Iへの結像横倍率はX方向(β)およびY方向(β)共に1に等しい。また、瞳面に配置された波面錯乱素子5から瞳共役面に配置された波面回復素子6までの瞳結像倍率は−1に等しい。波面回復素子6からの射出光線としての例えばマージナル光線R(O)により結像される虚像であるX方向の中間像II´は、フィールドレンズ4上に生成される。
なお、図31Aおよび図31Bに示す本実施例、および後述の図32A、図32B、図33A、および図33Bに示す実施例においては、フィールドレンズ4からの射出光が、X方向でいずれも平行光となるように、各レンズのパワーと配置を選んだ。この条件は、これらの実施例を構成する上で本質的なことではなく、これらの実施例の理解を助けるための工夫である。すなわち、これらの実施例における各波面回復素子6の、焦点距離(fPMI)と、各配置と、そして各波面回復素子6への入射光がX方向で並行光であるという上記条件とにより、各波面回復素子6からの射出光により結像される虚像であるX方向の中間像II´がフィールドレンズ4上に生成されるという特性を、図31Aに示す本実施例のみならず、図32Aおよび図33Aに示す後述の実施例においても同様に備えていることが、明らかに示される。
次に、波面錯乱素子5,23と波面回復素子6,17とを互いに非共役な位置関係に配置した場合について、波面錯乱素子5および波面回復素子6を例示して説明する。図32Aおよび図32Bは、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合よりも、波面回復素子6を物体O側寄りに配置した場合を示している。
この構成において、像Iが非点収差を生じることなく結像するためには、波面回復素子6からの射出光線としてのマージナル光線R(−)が、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合の波面回復素子6からのマージナル光線R(O)よりも広く発散する必要がある。すなわち、波面回復素子6はシリンドリカルレンズとして、より強い負のパワーを持つ必要がある。具体的には、フィールドレンズ4から波面回復素子6までの距離m(<2l)に関して、波面回復素子5の焦点距離fPMI=−mでなければならない。
このように構成することで、波面回復素子6によって像Iが非点収差を生じることなく生成される。しかしながら、波面回復素子6からのマージナル光線R(−)が、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合のマージナル光線R(O)よりも広く発散することで、像Iにおけるマージナル光線の傾きΘは、X方向のみにおいて、物体O側よりも大きくなる(ΘOX<ΘIX)。これは、X方向とY方向とで結像横倍率βに差が生じ、Y方向は等倍のまま(β=1)だが、X方向は縮小する(β<1)ことを意味する。
次に、図33Aおよび図33Bは、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合よりも、波面回復素子6を像I側寄りに配置した場合を示している。この構成において、像Iが非点収差を生じることなく結像するためには、波面回復素子6からの射出光としてのマージナル光線R(+)が、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合のマージナル光線R(O)よりも狭く発散する必要がある。すなわち、波面回復素子6はシリンドリカルレンズとして、より弱い負のパワーを持つ必要がある。具体的には、フィールドレンズ4から波面回復素子6までの距離n(>2l)に関して、波面回復素子6の焦点距離fPMI=−nでなければならない。これにより、マージナル光線R(+)により結像される中間像II´をフィールドレンズ4上に生成させることができる。
このように構成することで、波面回復素子6によって像Iが非点収差を生じることなく生成される。しかしながら、波面回復素子6からのマージナル光線R(+)が、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを互いに共役な位置関係に配置した場合のマージナル光線R(O)よりも狭く発散することで、像Iにおけるマージナル光線の傾きΘは、X方向のみにおいて、物体O側よりも小さくなる(ΘOX>ΘIX)。これは、X方向とY方向とで結像横倍率βに差が生じ、Y方向は等倍のまま(β=1)だが、X方向は拡大する(β>1)ことを意味する。
以上の通り、波面錯乱素子5と波面回復素子6とが共役な位置関係に配置されていなくても、波面錯乱素子5と波面回復素子6としてのシリンドリカルレンズのパワーをそれぞれ適切に選択することにより、非点収差を生じさせることなく像Iを結像させることができる。すなわち、波面錯乱素子5で生じた波面の乱れを波面回復素子6によって打ち消すことができる。
ただし、この場合、X方向の結像倍率とY方向の結像倍率とに差が生じる。そこで、X方向とY方向との結像倍率の差を解消する手段を採用することが望ましい。このようにすることで、波面錯乱素子5と波面回復素子6とを共役な位置関係に配置しない場合であっても、非点収差を生じさせることなく結像させつつ、最終的に観察される像における、X方向とY方向の倍率も一致させることができる。X方向とY方向の結像倍率差を解消する手段としては、画像のいわゆるアスペクト比を変換することができるものであればよい。
X方向とY方向の結像倍率差を光学的に解消する手段として、例えば、図34に示すように、シリンドリカルレンズまたはトロイダルレンズにより構成されるアスペクト比変換光学系121を採用することとしてもよい。図34に示す例では、アスペクト比変換光学系121は、凸形状のシリンドリカルレンズ123Aと、凹形状のシリンドリカルレンズ123Bとを備え、例えば、撮像素子33(図6参照。)の前に配置されている。
アスペクト比変換光学系121は、X方向の倍率が不変で、Y方向の倍率を拡大するものであり、焦点位置はX方向とY方向とで一致するようになっている。すなわち、アスペクト比変換光学系121は、X方向とY方向とで倍率が変わるが焦点位置は変わらないようになっている。図34において、アスペクト比変換光学系121から撮像素子33に入射する光線の内、実線はY方向の光線を示し、破線はX方向の光線を示している。
次に、結像倍率差を機械的に解消する手段として、例えば、図35に示すように、ガルバノミラー47(図7参照)によりX方向およびY方向に走査するサンプリング機能が光学系に組み合わされている場合に、所定のサンプリング数に対するX走査とY走査の振り幅の比率を変更することにより、画像のアスペクト比を変換可能なアスペクト比変換機構125を採用することとしてもよい。
アスペクト比変換機構125は、X方向の信号源127Aと、Y方向の信号源127Bと、可変抵抗129A,129Bと、ドライブアンプ131A,131Bとを備えている。X方向の信号源127AおよびY方向の信号源127Bは、それぞれ鋸波状の信号を出力するようになっている。X方向の信号源127AとY方向の信号源127Bとからの各信号がドライブアンプ131A,131Bに入力する前に,可変抵抗129A,129Bを介して各信号の電圧を相対的に調整することで、ガルバノミラー47のX方向の振れ幅とY方向の振れ幅とをそれぞれ変更することができる。
続いて、結像倍率差を電気的に解消する手段として、例えば、図36に示すように、観察装置10(図5参照)により取得された画像情報にアスペクト比補正処理を施すことにより、画像のアスペクト比を変換可能なアスペクト比変換回路133またはアスペクト比変換プログラムを採用することとしてもよい。アスペクト比変換回路133により、図37に示すように、例えば観察対象物Aが円形である場合、楕円形状に取得された画像イメージを円形状の画像イメージに補正することができる。
シリンドリカルレンズよりなる位相変調素子と位相復調素子の組である波面錯乱素子5と波面回復素子6を光学的に非共役な位置関係に配置した場合について説明した上記性質は、図32Aおよび図32B、図33Aおよび図33Bの構成に限られるものではなく、基本配置がいわゆる4f光学系である場合も含め、また、あらゆるパワーのレンズとあらゆるパワーのシリンドリカルレンズを組み合わせた場合も含めて、上述した説明の延長線上に載るものすべてに共通である。
本変形例に係る波面錯乱素子5と波面回復素子6は、上記各実施形態の顕微鏡としての観察装置10,30,40,50,60に適用することができる。また、本変形例に係る波面錯乱素子5と波面回復素子6をその他の顕微鏡各種と組み合わせることとしてもよい。
なお、波面錯乱素子5と波面回復素子6とが互いに共役な位置関係に配置される前記各実施形態は、既述の通り顕微鏡としての観察装置10,30,40,50,60に適用し得るのみならず、その他の顕微鏡各種と組み合わせることも可能であるのは、言うまでもない。
例えば、図38に示すような、平行平板135を備え、平行平板135の厚さ切り替え方式を採用して焦点位置を変更する光学系と組み合わせてもよい。その場合、図38の光学系を、顕微鏡としての観察装置10,30,40,50,60と組み合わせ、これに波面錯乱素子5と波面回復素子6を共役に配置して適用してもよいし、非共役に配置して適用してもよい。平行平板135は、厚さが異なる段付き形状を有するガラス部材により形成され、互いに向い合うレンズ139A,139Bの焦点位置近傍に配置されている。
この平行平板135は、モータ137により軸線回りに回転させられることで、レンズ139A,139Bの焦点位置近傍に配置される平行平板135の厚さを変更することができるようになっている。モータ137により、レンズ139A,139Bの焦点位置に配置される平行平板135の厚さを変更することで、光路長を高速で変化させることができる。
また、特開平10−282010号公報や特開2006−53542号公報に記載のマルチスポット・スキャン方式(ライン走査方式)の顕微鏡と組み合わせてもよい。その場合、上記ラインスキャン方式の顕微鏡における照明装置、X軸走査装置、および観察光検出装置を、前記観察装置30においてニポウディスク型コンフォーカル光学系34と置き換えた観察装置や、あいは前記観察装置40においてレーザ光源41、結像光学系42、共焦点ピンホール43、および光検出器44と置き換えた観察装置に、波面錯乱素子5と波面回復素子6を共役に配置して適用してもよいし、非共役に配置して適用してもよい。
また、特許第4334801号公報に記載されているようなスリットパターン付きディスク方式の顕微鏡や、非特許文献“Ultrafast superresolution fluorescent imaging with spinning disk confocal microscope optics”, Molecular Biology of the Cell, vol.26, p.1743−1751, May 1, 2015 に記載されているようなスリットパターン付きディスク方式の超解像顕微鏡と組み合わせてもよい。その場合、上記スリットパターン付きディスク方式の顕微鏡における照明装置、回転走査装置、および観察光検出装置を、前記観察装置30においてニポウディスク型コンフォーカル光学系34と置き換えた観察装置に、波面錯乱素子5と波面回復素子6を共役に配置して適用してもよいし、非共役に配置して適用してもよい。
また、非特許文献“Breaking the diffraction resolution limit by stimulated emission: stimulated−emission−depletion fluorescence microscopy” Optics Letters, Vol.19, p.780−782, 1994に記載されているようなSTED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡と組み合わせてもよい。その場合、上記STED顕微鏡における照明装置を、前記観察装置40,50,60においてレーザ光源41と置き換えた観察装置に、波面錯乱素子5と波面回復素子6を共役に配置して適用してもよいし、非共役に配置して適用してもよい。
以上に説明した実施形態は、Z軸方向での中間像および最終像の移動という観点で、位相変調による中間像の不鮮明化を観察装置の結像光学系に適用する方法を論じたものである。結像光学系における他の観点であるXY軸方向(あるいは像面上)での中間像および最終像の移動に関して、以下に論ずる。したがって、本発明は、Z軸方向での光走査だけでなく、XY軸方向での光走査についても含まれる。さらに、本発明は、Z軸方向およびXY軸方向での両方向の中間像および最終像の移動を組合せた三次元的な観察にも適用できる。以下の態様は、XY軸方向での中間像および最終像の移動について詳しく述べる。以下では、Z軸方向での中間像の移動のみを実行するための移動手段と区別するために、XY軸方向での中間像および最終像の移動のみを実行するための移動手段をスキャナと称する。
本発明の一態様は、最終像および少なくとも1つの中間像を形成する複数の結像レンズと、該結像レンズにより形成されるいずれかの前記中間像よりも物体側に配置され、前記物体からの光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子と、該第1の位相変調素子との間に少なくとも1つの中間像を挟む位置に配置され、前記第1の位相変調素子により前記物体からの光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子とを備える結像光学系と、該結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、光軸方向に間隔をあけて配置され、前記光源からの照明光を走査する第1のスキャナおよび第2のスキャナと、前記結像光学系の最終像位置に配置された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とを備え、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、前記光源側に配置された前記第1のスキャナと光学的に共役な位置に配置されるとともに、前記第1のスキャナによる照明光の走査方向に一致する方向に変化する一次元的な位相分布特性を有する観察装置を提供する。
本態様によれば、光源から発せられた照明光が結像レンズの物体側から入射されると、結像レンズによって集光されることにより最終像を結像する。この過程において、中間像の一つよりも物体側に配置された第1の位相変調素子を通過することにより、照明光の波面に空間的な乱れが付与され、結像される中間像はぼやけて不鮮明化する。また、中間像を結像した照明光は第2の位相変調素子を通過することにより、第1の位相変調素子によって付与された波面の空間的な乱れが打ち消される。これにより、第2の位相変調素子以降においてなされる最終像の結像においては、鮮明な像を得ることができる。
すなわち、中間像をぼやけさせ不鮮明化させることにより、表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等が存在する光学素子の近傍に中間像が位置する場合であっても、該傷や異物あるいは欠陥等が中間像に重なって、最終的に最終像の一部として形成されてしまう不都合の発生を防止することができる。
また、光源からの照明光は第1のスキャナおよび第2のスキャナによって二次元的に走査されることにより、観察対象物に結像された最終像を二次元的に走査させることができる。この場合において、第1のスキャナを作動させると、照明光の光束は一次元的な直線方向に移動するが、第1のスキャナと第2の位相変調素子とが光学的に共役な位置に配置されているために、第2の位相変調素子を通過する光束の位置は変動しない。
一方、第1のスキャナに対して光軸方向に間隔をあけた第2のスキャナは、第2の位相変調素子とは光学的に共役な位置関係に配置されないため、第2のスキャナを作動させると、照明光の光束は、第2の位相変調素子の通過位置を変化させるように移動する。第2の位相変調素子の位相分布特性の変化する方向が第1のスキャナによる照明光の走査方向に一致するので、これに直交する方向すなわち第2のスキャナによる照明の走査方向には、位相分布特性が変化しておらず、照明光の光束の通過位置が変化しても照明光に付与される位相の変調は変化しない。
したがって、本態様によれば、光軸方向に間隔をあけた第1のスキャナおよび第2のスキャナのどちらを作動させても、照明光の走査の状態から影響を受けることなく、第2の位相変調素子による位相変調を変化させずに一定の状態を保つことが可能であり、第1の位相変調素子によって付与された波面の空間的な乱れを完全に打ち消すことができる。
上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がレンチキュラー素子であってもよい。また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がプリズムアレイであってもよい。また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が回折格子であってもよい。また、上記態様においては、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がシリンドリカルレンズであってもよい。
本発明の一実施形態に係る観察装置101について、図面を参照して以下に説明する。本実施形態に係る観察装置101は、例えば、多光子励起顕微鏡である。観察装置101は、図39に示されるように、観察対象物Aに極短パルスレーザ光(以下、単にレーザ光(照明光)という。)を照射する照明装置102と、該照明装置102によるレーザ光の照射により観察対象物Aにおいて発生する蛍光を光検出器105に導く検出器光学系104と、該検出器光学系104により導かれた蛍光を検出する光検出器105とを備えている。
照明装置102は、レーザ光を発生する光源106と、該光源106からのレーザ光を観察対象物Aに照射する結像光学系103とを備えている。結像光学系103は、光源106からのレーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダ107と、該ビームエキスパンダ107を通過したレーザ光を集光して中間像を結像しその結像位置を光軸Sに沿う方向に移動させるZ走査部108と、該Z走査部108を通過して中間像を結像したレーザ光を略平行光にするコリメートレンズ109とを備えている。
また、結像光学系103は、コリメートレンズ109により略平行光となったレーザ光を通過させる位置に配置された波面錯乱素子(第1の位相変調素子)110と、Z走査部108により形成された中間像をリレーする複数対のリレーレンズ対(結像レンズ)111,112と、該リレーレンズ対111,112間に配置された光源106側のガルバノミラー(第1のスキャナ)113aと観察対象物A側のガルバノミラー(第2のスキャナ)113bとからなるXY走査部113と、リレーレンズ対111,112を通過して略平行光となったレーザ光を通過させる位置に配置された波面回復素子(第2の位相変調素子)114と、該波面回復素子114を通過したレーザ光を集光して観察対象物Aに照射する一方、観察対象物Aにおけるレーザ光の
集光点(最終像IF)において発生した蛍光を集光する対物レンズ(結像レンズ)115とを備えている。
Z走査部108は、ビームエキスパンダ107によりビーム径を拡大させられたレーザ光を集光する集光レンズ108aと、該集光レンズ108aを光軸Sに沿う方向に移動させるアクチュエータ108bとを備えている。アクチュエータ108bにより集光レンズ108aを光軸Sに沿う方向に移動させることで、その結像位置を光軸Sに沿う方向に移動させることができるようになっている。
波面錯乱素子110は、光を透過可能な光学的に透明な材料により構成されたレンチキュラー素子である。波面錯乱素子110は、レーザ光が透過する際に、表面116の形状に従って光軸Sに直交する一次元方向に変化する位相変調をレーザ光の波面に付与するようになっている。本実施形態においては、光源106からのレーザ光を1回透過させることにより、必要な波面の乱れを付与するようになっている。
リレーレンズ対111は、コリメートレンズ109によって略平行光となったレーザ光を一方のレンズ111aによって集光して中間像IIを形成した後に、拡散するレーザ光を他方のレンズ111bによって再度集光して略平行光に戻すようになっている。本実施形態においては、2つのリレーレンズ対111,112はXY走査部113を光軸Sに沿う方向に挟むように間隔をあけて配置されている。
ガルバノミラー113a,113bは、それぞれ光軸Sに直交して互いにねじれの位置関係にある軸線回りに揺動可能に設けられている。これらのガルバノミラー113a,113bは、揺動させられることによって、レーザ光の傾き角度を光軸Sに直交する二次元方向に変化させ、対物レンズ115による最終像Iの位置を光軸Sに交差する二次元方向に走査させることができるようになっている。
波面回復素子114は、光を透過可能な光学的に透明な材料により構成された、波面錯乱素子110とは逆の位相分布特性を有するレンチキュラー素子である。波面回復素子114は、レーザ光が透過する際に、表面117の形状に従って光軸Sに直交する一次元方向にのみ変化する位相変調を光の波面に付与し、波面錯乱素子110により付与された波面の乱れを打ち消すようになっている。
本実施形態においては、2つのガルバノミラー113a,113bは、光軸Sに沿う方向に間隔をあけて配置され、かつ、それらの中間位置113cが、対物レンズ115の瞳位置POBと光学的に略共役な位置となるように配置されている。
また、光源106側のガルバノミラー113aは、波面錯乱素子110および波面回復素子114と光学的に共役な位置に配置されている。これにより、光源106側のガルバノミラー113aが揺動させられてレーザ光に傾き角度が付与されても、図40に示されるように、該レーザ光の光束Pの中心光線Raは、波面回復素子114の表面117において、光軸Sと交わる。すなわち、レーザ光の光束Pは波面回復素子114における通過位置を変化させることなく、同一領域を通過させられるようになっている。
そして、このガルバノミラー113aは、その揺動方向(図40における矢印Xの方向)を、波面回復素子114の位相分布特性が変化する方向に一致させて配置されている。
上述したようにガルバノミラー113aの揺動に関わらず、レーザ光の光束Pが波面回復素子114の同一領域を通過するので、ガルバノミラー113aが揺動してもレーザ光に付与する位相変調を変化させずに済むようになっている。
一方、観察対象物A側のガルバノミラー113bは、波面回復素子114とは光学的に非共役な位置に配置されている。これにより、観察対象物A側のガルバノミラー113bが揺動させられてレーザ光に傾きが付与されると、図41に示されるように、該レーザ光の光束Pの中心光線Rbは、波面回復素子114の表面において光軸Sから離れることになる。そしてこのガルバノミラー113bは、その揺動方向(図41における矢印Yの方向)を、波面回復素子114の位相分布特性が変化する方向に直交する方向(位相分布特性が変化しない方向)に一致させて配置されている。これにより、観察対象物A側のガルバノミラー113bが揺動させられてこの揺動に対応する傾きが光源106側のガルバノミラー113aからのレーザ光に付与されると、図42に示されるように、レーザ光に付与された傾きによって、波面回復素子114におけるレーザ光の光束Pの通過位置が波面回復素子114の位相分布特性が変化しない方向に移動するようになっている。
なお、上述したように、ガルバノミラー113a,113bはいずれもが、対物レンズ115の瞳位置POBに対して非共役な位置に配置されているので、ガルバノミラー113a,113bの揺動によって、レーザ光の光束Pは、対物レンズ115の瞳位置POBにおいて、図43に示されるように、矢印Xおよび矢印Yの二次元方向に移動する。しかしながら、その移動範囲は、対物レンズ115の瞳位置POBに配置されている開口絞り118の開口部118aに蹴られることなく通過可能な微小範囲の移動に留められる。
検出器光学系104は、対物レンズ115によって集光された蛍光をレーザ光の光路から分岐するダイクロイックミラー119と、該ダイクロイックミラー119によって分岐された蛍光を集光する2つの集光レンズ104a,104bとを備えている。
光検出器105は、例えば、光電子増倍管であり、入射された蛍光の強度を検出するようになっている。
このように構成された本実施形態に係る観察装置101の作用について以下に説明する。 本実施形態に係る観察装置101を用いて観察対象物Aを観察するには、光源106から発せられたレーザ光を結像光学系103によって観察対象物Aに照射する。レーザ光は、まず、ビームエキスパンダ107によってビーム径が拡大され、Z走査部108、コリメートレンズ109および波面錯乱素子110を通過させられる。
レーザ光は、Z走査部108の集光レンズ108aによって集光され、アクチュエータ108bの作動によって集光位置を光軸Sに沿う方向に調節することができる。また、レーザ光は、波面錯乱素子110を通過させられることにより、波面に空間的な乱れが付与される。
レーザ光はその後、2つのリレーレンズ対111,112とXY走査部113とを通過させられることにより、中間像IIを形成しながら光束Pの傾き角度を変化させられて、ダイクロイックミラー119を通過する。そして、ダイクロイックミラー119を通過したレーザ光は、波面回復素子114を通過して波面錯乱素子110によって付与された空間的な乱れを打ち消されて対物レンズ115により集光され、最終像Iが観察対象物Aに結像される。
結像光学系103によって結像される最終像Iの位置であるレーザ光の合焦点位置は、アクチュエータ108bの作動によって集光レンズ108aを移動させることで、光軸Sに沿う方向に移動させられる。これにより、観察対象物Aの観察深さを調節することができる。また、ガルバノミラー113a,113bの揺動によって、観察対象物Aにおけるレーザ光の合焦位置を光軸Sに直交する方向に二次元的に走査させることができる。
波面錯乱素子110によって波面の空間的な乱れが付与されたレーザ光は、リレーレンズ対111,112によって複数の中間像IIが形成されても、波面錯乱素子110をなすレンチキュラー素子すなわちシリンドリカルレンズアレイの作用により、一つの光束Pが多数の小光束に分割された上で非点収差が付与される。これにより、本来は一つである点像が、一直線上に並んだ多数の円形像、あるいは楕円形像、あるいは線形像の集まりとして、不鮮明化されて結像される。そして、レーザ光は、波面回復素子114を通過することにより、波面錯乱素子110によって付与された波面の空間的な乱れが打ち消されるので、波面回復素子114以降において結像される最終像Iが鮮明になる。
すなわち、中間像IIが不鮮明化されてぼやけることにより、表面や内部に傷、異物あるいは欠陥等が存在する光学素子の近傍に中間像IIが位置する場合であっても、該傷や異物あるいは欠陥等が中間像IIに重なって、観察対象物Aに形成される最終像Iが不鮮明になることを防止することができる。その結果、最終像Iとして極めて小さいスポットを結像させることができる。
この場合において、光源106側のガルバノミラー113aが揺動させられても、レーザ光の光束Pは一次元的な直線方向に移動するが、このガルバノミラー113aと光学的に共役な位置関係にある波面回復素子114における光束Pは、矢印Xの方向において同一領域を通過する。したがって、ガルバノミラー113aの揺動に関わらず、波面回復素子114によってレーザ光に付与される位相変調を変化させずに済む。
一方、観察対象物A側のガルバノミラー113bが揺動させられると、このガルバノミラー113bの揺動によってレーザ光の光束Pの傾きが変動させられて波面回復素子114における光束Pの通過位置が矢印Yの方向に移動する。矢印Yの方向は波面回復素子114の位相分布特性が変化しない方向に一致するので、光束Pの通過位置の移動によって波面回復素子114の矢印Yの方向において異なる領域を通過しても付与される位相変調は変化しない。したがって、ガルバノミラー113bが揺動しても、波面回復素子114によってレーザ光に付与される位相変調を変化させずに済む。
このことは、次のように換言できる。
本実施例のように、中間にリレーレンズ対を配置せずにガルバノミラー113a,113bを近接させて配置する構成の場合、ガルバノミラー113a,113bの両方に対して光学的に共役な位置は存在しない。すなわち、波面錯乱素子110と波面回復素子114をたとえ共役に配置しても、ガルバノミラー113a,113bの揺動による光の二次元方向の走査に伴って、通常ならば波面錯乱素子110と波面回復素子114が相補的になるための位置関係が崩れ、その結果として波面錯乱素子110によって付与された波面の乱れが波面回復素子114によって打ち消すことが出来なくなる。しかしながら本実施例では、波面錯乱素子110と波面回復素子114の形状と配置を工夫することによって、ガルバノミラー113a,113bが揺動しても、波面錯乱素子110と波面回復素子114が相補的になる位置関係が実質的には保たれ、その結果として波面錯乱素子110によって付与された波面の乱れを波面回復素子114によって常に完全に打ち消すようにできるのである。
そして、観察対象物Aに極めて小さいスポットが結像されることにより、極めて小さい領域において光子密度を高めて蛍光を発生させることができ、発生した蛍光を対物レンズ115によって集光し、ダイクロイックミラー119によって分岐し、検出器光学系104によって蛍光を光検出器105へ導くことによって検出することができる。
光検出器105によって検出された蛍光強度が、ガルバノミラー113a,113bによる矢印X,Yの方向の位置およびアクチュエータ108bによる光軸Sに沿う方向の位置によって三次元的なレーザ光の走査位置と対応付けて記憶されることにより、観察対象物Aの蛍光画像が取得される。すなわち、本実施形態に係る観察装置101によれば、各走査位置において、極めて小さいスポットの領域において蛍光を発生させるので、空間分解能の高い蛍光画像を取得することができるという利点がある。
また、本実施形態に係る観察装置101は、2つのガルバノミラー113a,113b間にリレーレンズ対を配置する必要がないため、装置の部品点数を少なくすることができる。また、リレーレンズ対を配置せずにガルバノミラー113a,113bを近接させて配置する構成を取ることによって、装置の小型化を図ることができる。
なお、本実施形態においては波面錯乱素子110および波面回復素子114として、レンチキュラー素子を例示したが、これに代えて、一次元的な位相分布特性を有するものを採用してもよい。例えば、プリズムアレイ、回折格子、あるいはシリンドリカルレンズ等を採用してもよい。
また、本実施形態においては、XY軸上での中間像の移動手段である第1のスキャナおよび第2のスキャナとしてガルバノミラー113a,113bを例示したが、これらのうちの片方または両方に別の種類のスキャナを代えて用いてもよい。例えば、ポリゴンミラー、AOD(音響光学素子)、KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶等を採用してもよい。
また、本実施形態に係る観察装置101は、多光子励起顕微鏡を例示したが、これに代えて、共焦点顕微鏡に適用してもよい。
これによれば、鮮明化された最終像Iとして観察対象物Aに極めて小さいスポットが結像されることにより、極めて小さい領域において光子密度を高めて蛍光を発生させることができ、共焦点ピンホールを通過する蛍光を増加させて明るい共焦点画像を取得することができる。
さらにまた、共焦点顕微鏡として共焦点ピンホールを通過する蛍光を検出するのに代えて、共焦点ピンホールを通過する、観察対象物Aにおいて反射または散乱した光を検出することとしてもよい。
次に、本実施形態の照明装置102における光学的条件の具体例について、図39および図44を用いて以下に説明する。
図39に示される、本実施形態の照明装置102における光学的条件の具体例は、光源106側のガルバノミラー113aと光源106との間のガルバノミラー113aと光学的に共役な位置に波面錯乱素子110を配置し、対物ンズ115の後ろ側の光源106側のガルバノミラー113aと光学的に共役な位置に、波面回復素子114を配置する。波面回復素子114は、その位相分布特性が、ガルバノミラー113aによるレーザ光の走査方向(矢印Xの方向)に一致するように配置する。
この方法によれば、ガルバノミラー113a,113bの揺動角度に関わらず、波面錯乱素子110によって付与された波面の空間的な乱れを波面回復素子114によって常に打ち消すことができる。したがって、中間像IIが不鮮明化されて中間像II結像位置にある異物の像が中間像IIに重なることを防止し、かつ最終像Iを常に鮮明化することができる。
次に、本実施形態に係る照明装置102における光学的条件の具体例を、特にガルバノミラー113a,113bから対物レンズ115までの各光学素子の配置に着目し、図44に基づいて説明する。
図4における、対物レンズ115の瞳位置POBから波面回復素子114までの距離aは、式(16)の条件を満足する。
a=b(fTL/fPL・・・(16)
ここで、bは2つのガルバノミラー113a,113bに挟まれて位置する対物レンズ115の瞳位置POBに略共役な位置113cから光源106側のガルバノミラー113aまでの距離、fPLはリレーレンズ対112の光源106側のレンズ112aの焦点距離、fTLはリレーレンズ対112の観察対象物A側のレンズ112bの焦点距離を示している。また、対物レンズ115の取り付けねじ後端から波面回復素子114までの距離cは、式(17)の条件を満足する。
c=a−(d+e)・・・(17)
ここで、dは対物レンズ115の取り付けねじの突出量、eは対物レンズ115の胴付面から対物レンズ115の瞳位置POBまでの距離を示している。
本実施例における各値は以下の通りである。
b=2.7(mm)
PL=52(mm)
TL=200(mm)
d=5(mm)
e=28(mm)
となる。
したがって、式(16)よりa=39.9(mm)が算出され、式(17)よりc=6.9(mm)が算出される。その結果、波面回復素子114は、対物レンズ115の外枠後端すなわち取り付けねじに接触することなく、対物レンズ115の後ろ側の光源106側のガルバノミラー113aと光学的に共役な位置に配置される。
以上のXY軸方向での中間像および最終像の移動に関する上記態様によれば、本発明は、Z軸方向での中間像および最終像の移動に関する上記態様と組合せることが顕微鏡観察を一層有益なものとする。したがって、本発明は、図1から図38で参照されるようなZ軸方向で移動する中間像の不鮮明化という観点に対し、図39から図44で例示された、互いに共役には配置されていない一組のガルバノミラーによるXY軸方向でのスキャンに対して、波面錯乱素子と波面回復素子との相補性の維持という観点に基づき、次のような付記項も含まれる。
(付記項1) 最終像および少なくとも1つの中間像を形成する複数の結像レンズと、該結像レンズにより形成されるいずれかの前記中間像よりも物体側に配置され、前記物体からの光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子と、該第1の位相変調素子との間に少なくとも1つの中間像を挟む位置に配置され、前記第1の位相変調素子により前記物体からの光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子とを備える結像光学系と、
該結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、光軸方向に間隔をあけて配置され、前記光源からの照明光を走査する第1のスキャナおよび第2のスキャナと、前記結像光学系の最終像位置に配置された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とを備え、前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、前記光源側に配置された前記第1のスキャナと光学的に共役な位置に配置されるとともに、前記第1のスキャナによる照明光の走査方向に一致する方向に変化する一次元的な位相分布特性を有する、光軸方向走査型顕微鏡装置に適用される観察装置。
(付記項2) 第1の位相変調素子および第2の位相変調素子が、物体側に配置された第2のスキャナと光学的に共役な位置に配置されるとともに、該第2のスキャナによる照明光の走査方向に一致する方向に変化する一次元的な位相分布特性を有し、それ以外の構成は、付記項1に記載の観察装置に準じる、光軸方向走査型顕微鏡装置に適用される観察装置。
(付記項3) 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がレンチキュラー素子である付記項1に記載の観察装置。
(付記項4) 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がプリズムアレイである付記項1に記載の観察装置。
(付記項5) 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が回折格子である付記項1に記載の観察装置。
(付記項6) 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子がシリンドリカルレンズである付記項1に記載の観察装置。
また、上記付記項によれば、次のように上記態様を要約することもできる。
すなわち、上記付記項においては、中間像が光学素子に一致する位置で結像されても、中間像に光学素子の傷、異物および欠陥等が重なることを防止して鮮明な最終像を取得することが技術的課題であるといえる。また、上記付記項による技術課題を解決する手段は、概して図39に示されるように、最終像Iと中間像IIとを形成する結像レンズ111,112,115と、いずれかの中間像IIより物体側に配置され光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子110と、1以上の中間像IIより最終像I側に配置され光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子114とを備える結像光学系103と、物体側に配置される光源106と、光軸S方向に間隔をあけて配置された第1および第2のスキャナ113a,113bを備えるXY走査部113と、光を検出する光検出器105とを備え、2つの位相変調素子110,114が光源106側に配置された第1のスキャナ113aと光学的に共役な位置に配置され、前記第1のスキャナ113aによる照明光の走査方向に一致する方向に変化する一次元的な位相分布特性を有する、観察装置101を提供する。
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
また、例えば、図39から図44に示す観察装置101においても、波面錯乱素子110および波面回復素子114を非共役な位置関係に配置することとしてもよい。この場合、波面錯乱素子110および波面回復素子114としてシリンドリカルレンズを採用することとすればよい。また、第1のスキャナ113aと波面回復素子114を共役に配置し、第1のスキャナ113aと波面錯乱素子110を非共役に配置すればよい。また、アスペクト比変換光学系121、振り幅比率変更機構125およびアスペクト比補正回路133のようなX方向の結像倍率とY方向の結像倍率との差を解消する手段を採用することとすればよい。
I 最終像
II 中間像
O 物体
PP,PP 瞳位置
1,13,32,42 結像光学系
2,3 結像レンズ
5 波面錯乱素子(第1の位相変調素子)
6 波面回復素子(第2の位相変調素子)
10,30,40,50,60 観察装置
11,31,41 光源
14,33 撮像素子(光検出器)
17,23 位相変調素子
20,36 ビームスプリッタ
22 光路長可変手段
22a 平面鏡
22b アクチュエータ
34 ニポウディスク型コンフォーカル光学系
43 共焦点ピンホール
44 光検出器(光電子変換素子)
61a レンズ(光路長可変手段)
62 アクチュエータ(光路長可変手段)
64 空間光変調素子(可変空間位相変調素子)
101 観察装置
103 結像光学系
105 光検出器
106 極短パルスレーザ光(光源)
110 波面錯乱素子(第1の位相変調素子)
111,112 リレーレンズ対(結像レンズ)
113 XY走査部
113a ガルバノミラー(第1のスキャナ)
113b ガルバノミラー(第2のスキャナ)
114 波面回復素子(第2の位相変調素子)
115 対物レンズ(結像レンズ)

Claims (39)

  1. 最終像および少なくとも1つの中間像を形成する複数の結像レンズと、該結像レンズにより形成されるいずれかの前記中間像よりも物体側に配置され、前記物体からの光の波面に空間的な乱れを付与する第1の位相変調素子と、該第1の位相変調素子との間に少なくとも1つの中間像を挟む位置に配置され、前記第1の位相変調素子により前記物体からの光の波面に付与された空間的な乱れを打ち消す第2の位相変調素子とを備える結像光学系と、
    前記物体からの波面が前記結像光学系を通過することにより結像される像を光軸方向に走査するための走査系とを備える光軸方向走査型顕微鏡装置。
  2. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光学的に共役な位置に配置されている請求項1に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  3. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、前記結像レンズの瞳位置近傍に配置されている請求項1または請求項2に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  4. いずれかの前記中間像を挟む位置に配置される2つの前記結像レンズ間の光路長を変更可能な光路長可変手段を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  5. 前記光路長可変手段が、光軸に直交して配置され前記中間像を形成する光を折り返すように反射する平面鏡と、該平面鏡を光軸方向に移動させるアクチュエータと、前記平面鏡により反射された光を2方向に分岐するビームスプリッタとを備える請求項4に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  6. いずれかの前記結像レンズの瞳位置近傍に、光の波面に付与する空間的な位相変調を変更することにより、前記最終像位置を光軸方向に変化させる可変空間位相変調素子を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  7. 前記第1の位相変調素子または前記第2の位相変調素子の少なくとも一方の機能が、前記可変空間位相変調素子によって担われる請求項6に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  8. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光軸に直交する1次元方向に変化する位相変調を光束の波面に付与する請求項1から請求項7のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  9. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光軸に直交する2次元方向に変化する位相変調を光束の波面に付与する請求項1から請求項7のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  10. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を透過させる際に波面に位相変調を付与する透過型素子である請求項1から請求項9のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  11. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を反射させる際に波面に位相変調を付与する反射型素子である請求項1から請求項9のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  12. 前記第1の位相変調素子と前記第2の位相変調素子とが、相補的な形状を有する請求項1から請求項11のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  13. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、透明材料の屈折率分布によって波面に位相変調を付与する請求項10に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  14. 請求項1から請求項13のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生するための光源をさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  15. 請求項1から請求項13のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器をさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  16. 前記光検出器が、前記結像光学系の最終像位置に配置され、該最終像を撮影する撮像素子である請求項15に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  17. 請求項1から請求項13のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とをさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  18. 前記光源および前記光検出器と前記結像光学系との間に配置されたニポウディスク型コンフォーカル光学系を備える請求項17に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  19. 前記光源がレーザ光源であり、
    前記光検出器が共焦点ピンホールおよび光電変換素子を備える請求項17に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  20. 前記光源によって照明された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器を備え、
    前記光源がパルスレーザ光源である請求項14に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  21. 光スキャナを備え、
    該光スキャナが、前記第1の位相変調素子、前記第2の位相変調素子および前記結像レンズの瞳に対して光学的に共役な位置に配置されている請求項19または請求項20に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  22. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光学的に非共役な位置に配置されたシリンドリカルレンズの組合せである請求項1に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  23. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子の少なくとも1つが、前記結像レンズの瞳位置近傍に配置されている請求項22に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  24. いずれかの前記中間像を挟む位置に配置される2つの前記結像レンズ間の光路長を変更可能な光路長可変手段を備える請求項22から請求項23のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  25. 前記光路長可変手段が、光軸に直交して配置され前記中間像を形成する光を折り返すように反射する平面鏡と、該平面鏡を光軸方向に移動させるアクチュエータと、前記平面鏡により反射された光を2方向に分岐するビームスプリッタとを備える請求項24に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  26. いずれかの前記結像レンズの瞳位置近傍に、光の波面に付与する空間的な位相変調を変更することにより、前記最終像位置を光軸方向に変化させる可変空間位相変調素子を備える請求項22または請求項23に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  27. 前記第1の位相変調素子または前記第2の位相変調素子の少なくとも一方の機能が、前記可変空間位相変調素子によって担われる請求項26に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  28. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を透過させる際に波面に位相変調を付与する透過型素子である請求項22から請求項27のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  29. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、光を反射させる際に波面に位相変調を付与する反射型素子である請求項22から請求項27のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  30. 前記第1の位相変調素子と前記第2の位相変調素子とが、相補的な形状を有する請求項22から請求項29のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  31. 前記第1の位相変調素子および前記第2の位相変調素子が、透明材料の屈折率分布によって波面に位相変調を付与する請求項28に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  32. 請求項22から請求項31のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生するための光源をさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  33. 請求項22から請求項31のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器をさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  34. 前記光検出器が、前記結像光学系の最終像位置に配置され、該最終像を撮影する撮像素子である請求項33に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  35. 請求項22から請求項31のいずれかに記載の光軸方向走査型顕微鏡装置において、前記結像光学系の物体側に配置され、該結像光学系に入射させる照明光を発生する光源と、前記結像光学系の最終像側に配置され、観察対象物から発せられた光を検出する光検出器とをさらに備える、光軸方向走査型顕微鏡装置。
  36. 前記光源および前記光検出器と前記結像光学系との間に配置されたニポウディスク型コンフォーカル光学系を備える請求項35に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  37. 前記光源がレーザ光源であり、
    前記光検出器が共焦点ピンホールおよび光電変換素子を備える請求項35に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  38. 前記光源によって照明された観察対象物から発せられた光を検出する光検出器を備え、
    前記光源がパルスレーザ光源である請求項32に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
  39. 光スキャナを備え、
    該光スキャナが、前記第1の位相変調素子、前記第2の位相変調素子および前記結像レンズの瞳に対して光学的に共役な位置に配置されている請求項37または請求項38に記載の光軸方向走査型顕微鏡装置。
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