JPWO2016017790A1 - 被覆切削工具 - Google Patents

被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2016017790A1
JPWO2016017790A1 JP2016538457A JP2016538457A JPWO2016017790A1 JP WO2016017790 A1 JPWO2016017790 A1 JP WO2016017790A1 JP 2016538457 A JP2016538457 A JP 2016538457A JP 2016538457 A JP2016538457 A JP 2016538457A JP WO2016017790 A1 JPWO2016017790 A1 JP WO2016017790A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cutting tool
hard layer
coated cutting
layer
total
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016538457A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6390706B2 (ja
Inventor
司 城地
司 城地
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tungaloy Corp
Original Assignee
Tungaloy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tungaloy Corp filed Critical Tungaloy Corp
Publication of JPWO2016017790A1 publication Critical patent/JPWO2016017790A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6390706B2 publication Critical patent/JP6390706B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B27/00Tools for turning or boring machines; Tools of a similar kind in general; Accessories therefor
    • B23B27/14Cutting tools of which the bits or tips or cutting inserts are of special material
    • B23B27/148Composition of the cutting inserts
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23DPLANING; SLOTTING; SHEARING; BROACHING; SAWING; FILING; SCRAPING; LIKE OPERATIONS FOR WORKING METAL BY REMOVING MATERIAL, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23D61/00Tools for sawing machines or sawing devices; Clamping devices for these tools
    • B23D61/02Circular saw blades
    • B23D61/028Circular saw blades of special material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B27/00Tools for turning or boring machines; Tools of a similar kind in general; Accessories therefor
    • B23B27/14Cutting tools of which the bits or tips or cutting inserts are of special material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C14/00Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material
    • C23C14/06Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material characterised by the coating material
    • C23C14/0641Nitrides
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2222/00Materials of tools or workpieces composed of metals, alloys or metal matrices
    • B23B2222/16Cermet
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2222/00Materials of tools or workpieces composed of metals, alloys or metal matrices
    • B23B2222/28Details of hard metal, i.e. cemented carbide
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2226/00Materials of tools or workpieces not comprising a metal
    • B23B2226/12Boron nitride
    • B23B2226/125Boron nitride cubic [CBN]
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2226/00Materials of tools or workpieces not comprising a metal
    • B23B2226/18Ceramic
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2228/00Properties of materials of tools or workpieces, materials of tools or workpieces applied in a specific manner
    • B23B2228/08Properties of materials of tools or workpieces, materials of tools or workpieces applied in a specific manner applied by physical vapour deposition [PVD]
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2228/00Properties of materials of tools or workpieces, materials of tools or workpieces applied in a specific manner
    • B23B2228/10Coatings
    • B23B2228/105Coatings with specified thickness

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)

Abstract

本発明の課題は、より過酷な切削加工に供される被覆切削工具であって、耐摩耗性を低下させずに、耐欠損性を向上させた、長期間にわたって加工に供することのできる被覆切削工具を提供することである。本発明は、基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆切削工具において、前記被覆層は、(TixM1−x)N[但し、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはTi元素とM元素との合計に対するTi元素の原子比を表し、0.45≦x≦0.9を満足する。]と表される組成の硬質層を含み、前記硬質層を構成する粒子の平均粒径が200nm以上600nm以下であり、前記硬質層の粒子が所定の条件を満たす、被覆切削工具に関する。

Description

本発明は、被覆切削工具に関するものである。
近年、切削加工の高能率化の需要が高まっている。この高まりに伴い、従来よりも工具寿命の長い切削工具が求められている。このため、工具材料の要求特性として、切削工具の寿命に関係する耐摩耗性および耐欠損性の向上が一段と重要になっている。そこで、これらの特性を向上させた被覆切削工具として、超硬合金、サーメット、cBNなどからなる基材表面にTiN層、TiAlN層などの被覆層を1層または2層以上含む被覆切削工具が広く用いられている。
前記耐摩耗性や耐欠損性の一段の向上のため、前記被覆層の特性を改善するための様々な技術が提案されている。たとえば特許文献1には、所定の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材が提案されている。当該積層被覆部材は、基材と、その上に積層された第1被膜層及び第2被膜層を有している。これら両被膜層は、TiとAlの窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物および炭窒酸化物の中の1種の単層または2種以上の多層で構成されている。そして前記第1被膜層は、(200)結晶面に最大ピーク強度を有し、前記第2被膜層は、(111)結晶面に最大ピーク強度を有する。
特許文献2には、超硬合金ボディ及び所定の被膜を含んでなる切削工具インサートが提案されている。前記被膜は、(Ti1−XAl)N(xは原子比であり、0.25〜0.50である)の単層である。また前記被膜は、配向性に関して、(200)面に配向している。
上記特許文献1および2のように、TiとAlの化合物層において、X線回折における回折強度を制御して、被覆層の特性を制御することが知られている。特に、(111)面に配向性を制御することにより、切削工具の耐剥離性および耐酸化性が向上することが知られている。また、(200)面に配向性を制御することにより、切削工具の耐摩耗性が向上することが知られている。
特開平10−330914号公報 特開2009−90452号公報
近年の切削加工では、高速化や高送り化および深切り込み化がより顕著となっている。このため、加工中に刃先にかかる負荷により工具表面から発生したクラックが基材へと進展する。また前記加工中に、刃先温度が急激に増減することにより基材から発生したクラックが被覆層中に進展する。これらに起因した工具の欠損が多々見られるようになってきた。
この様な背景により上記の従来の被覆切削工具においては、被覆層の靱性が不十分であるため、工具の欠損が生じやすいという問題がある。
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものである。すなわち本発明の課題は、より過酷な切削加工に供される被覆切削工具であって、耐摩耗性を低下させずに、耐欠損性を向上させた、長期間にわたって加工に供することのできる被覆切削工具を提供することである。
本発明者は被覆切削工具の工具寿命の延長について研究を重ねた。その結果、以下の構成により、耐摩耗性を低下させずに耐欠損性を向上させることが可能となることを見出した。これにより、被覆切削工具の工具寿命を延長することができた。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆切削工具において、
前記被覆層は、(Ti1−x)N[但し、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはTi元素とM元素との合計に対するTi元素の原子比を表し、0.45≦x≦0.9を満足する。]と表される組成の硬質層を含み、
前記硬質層を構成する粒子の平均粒径が200nm以上600nm以下であり、
前記硬質層の前記基材の表面と略平行な研磨面において、該研磨面の法線と前記硬質層の粒子の立方晶(311)面の法線とがなす角を方位差として求め、前記研磨面における、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計Aを100面積%とすると共に、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積を5度のピッチ毎に区分して、それぞれの区分における前記粒子の断面の面積の合計Bを、前記合計Aに対する比率として求めたとき、方位差が0度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する、被覆切削工具。
(2)方位差が0度以上15度未満の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計の前記合計Aに対する比率Saが、55面積%≦Sa≦90面積%である、(1)の被覆切削工具。
(3)前記硬質層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である、(1)または(2)に記載の被覆切削工具。
(4)前記硬質層は、圧縮応力を有する、(1)〜(3)のいずれかの被覆切削工具。
(5)前記硬質層は、0.2GPa以上3GPa以下の圧縮応力を有する、(1)〜(4)のいずれかの被覆切削工具。
(6)前記被覆層は、前記基材と前記硬質層との間に下部層を有し、
該下部層は、(Al1−y)N[但し、LはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、yはAl元素とL元素との合計に対するAl元素の原子比を表し、0.6≦y≦0.9を満足する。]と表される組成である、(1)〜(5)のいずれかの被覆切削工具。
(7)前記下部層の平均厚さは、0.2μm以上5μm以下である、(6)の被覆切削工具。
(8)前記被覆層の総厚さは、0.5μm以上10μm以下である、(1)〜(7)のいずれかの被覆切削工具。
(9)前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックスまたは立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである、(1)〜(8)のいずれかの被覆切削工具。
本発明の被覆切削工具は、耐摩耗性を低下させることなく耐欠損性が向上している。そのため本発明の被覆切削工具は、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏する。
実施例における発明品6の、横軸に5度のピッチの区分を取り、縦軸に、そのピッチ毎の各区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bの、合計Aに対する比率(面積率)をとったグラフである。 実施例における比較品2の、横軸に5度のピッチの区分を取り、縦軸に、そのピッチ毎の各区分における硬質層の粒子断面の面積の合計の、合計Aに対する比率(面積率)をとったグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の被覆切削工具は、基材と基材の表面に形成された被覆層とを含む。前記基材としては、被覆切削工具の基材として従来用いられているものであれば、特に限定なく使用可能である。前記基材の例として、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、高速度鋼などを挙げることができる。これらの中でも、基材が超硬合金、サーメット、セラミックスおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかであることが好ましい。本発明の被覆切削工具が耐摩耗性および耐欠損性に優れるからである。
本発明の被覆切削工具における被覆層の総厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。被覆層の総厚さが0.5μm未満であると、被覆切削工具の耐摩耗性が低下する傾向がみられる。一方、被覆層の総厚さが10μmを超えると、被覆切削工具の耐欠損性が低下する傾向がみられる。これらの観点から、被覆層の総厚さは1.5〜8.0μmであることがさらに好ましい。
なお、本発明において被覆層の総厚さは、硬質層や後述する下部層などの、被覆層を構成する各層の平均厚さの和であるものとする。
以下、本発明の被覆切削工具における被覆層を構成する各層について説明する。
前記被覆層は硬質層を含む。前記硬質層は、(Ti1−x)Nと表される組成である。この組成により、本発明の被覆切削工具に優れた耐摩耗性が付与される。硬質層は、被覆層中に2層以上存在してもよい。
なお、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。また、xはTi元素とM元素との合計に対するTi元素の原子比を表し、0.45≦x≦0.9を満足する。M元素を含むことで、本発明の被覆切削工具は、優れた耐摩耗性および耐酸化性を有する。
特にM元素がAlであることが、被覆切削工具の耐酸化性が向上することから、好ましい。これにより、クレーター摩耗が進行することによる欠損の発生を遅らせることができる。
Ti元素の原子比xが0.45未満であると、Tiの含有量が少なくなることにより、被覆切削工具の耐摩耗性が低下する。一方原子比xが0.9を超えると、M元素を含むことによる効果が得られないため、被覆切削工具の耐摩耗性および耐酸化性が低下する。
なお、本発明において被覆層の組成を(M)Nと表記する場合は、当該組成において金属元素全体に対するM元素の原子比がa、L元素の原子比がbであることを意味する。例えば、(Al0.55Ti0.45)Nは、金属元素全体に対するAl元素の原子比が0.55、金属元素全体に対するTi元素の原子比が0.45であることを意味する。すなわち、金属元素全体に対するAl元素量が55原子%、金属元素全体に対するTi元素量が45原子%であるということである。
本発明の被覆切削工具における被覆層中の硬質層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。硬質層の平均厚さが0.5μm未満であると、被覆切削工具の耐摩耗性が低下する傾向を示す。一方硬質層の平均厚さが10μmを超えると、被覆切削工具の耐欠損性が低下する傾向を示す。これらの観点から、硬質層の平均厚さは1.5μm以上8μm以下であることがより好ましい。なお、硬質層の平均厚さの求め方については後述する。
本発明の被覆切削工具における硬質層を構成する粒子の平均粒径は、200nm以上600nm以下である。平均粒径が200nm未満であると、被覆切削工具の耐摩耗性が低下する。一方平均粒径が600nmを超えると、被覆切削工具の耐欠損性が低下する。これらの観点から、硬質層を構成する粒子の平均粒径は200nm以上400nm以下であることが好ましい。なお、平均粒径の求め方については後述する。
本発明の被覆切削工具における被覆層中の硬質層については、基材の表面と略平行な研磨面において、その研磨面の法線と硬質層の粒子の立方晶(311)面の法線とがなす角を方位差としたとき、以下が成り立つ。まず、前記研磨面における、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計Aを100面積%とする。一方、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積を5度のピッチ毎に区分する。このように区分すると、各区分内に存在する硬質層の前記粒子の断面の面積の合計Bが求められる。その合計Bを、前記合計A(100面積%)に対する比率(面積率)として表す。すなわち、それぞれの区分における粒子断面の面積の合計Bは、前記100面積%のうち、何面積%を占めるか、として求める。
このようにして、例えば横軸に5度のピッチの区分を取り、縦軸に、そのピッチ毎の各区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bの面積率をとったグラフを作成することができる。このグラフは、0度以上5度未満、5度以上10度未満、10度以上15度未満のように、0度を起点として方位差を5度間隔に区分して、その各区分に含まれる硬質層の粒子断面の面積の合計値(合計B)の分布を示したものである。
そして本発明の被覆切削工具においては、方位差が0度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する。
このような条件を満たす硬質層を有するため、本発明の被覆切削工具は、耐摩耗性と耐欠損性のバランスに優れる。このような観点から、方位差が5度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bの面積率が最大となる区分が存在することが、さらに好ましい。方位差が15度よりも大きい範囲内に硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在すると、被覆切削工具の耐摩耗性または耐欠損性のいずれかの性能が低下する。
なお、以上説明した、「方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積を5度のピッチ毎に区分する。・・・方位差が0度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する」とは、以下の例のような場合である。
0度以上5度未満、5度以上10度未満、15度以上20度未満のように、35度以下までの方位差を5度間隔に区分けする。なお、本発明においては5度のピッチ毎の区分は、0度を起点として行い、1度以上6度未満のような区分けは行わない。そして、5度以上10度未満の区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bが、0度以上5度未満や20度以上25度未満などの他のいずれの区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bよりも高いとする。この場合、5度以上10度未満の区分における前記合計Bが最大である。それゆえこの例は「方位差が0度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する」に該当する。
なお、各区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bは、上記方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計Aに対する比率(面積率)で表現する。それゆえ前記粒子断面の面積の合計Bは、例えば25面積%といった数値で表現される。
本発明の被覆切削工具における被覆層中の硬質層については、方位差が0度以上15度未満の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計の、前記合計Aに対する比率(面積率)をSaとしたとき、55面積%≦Sa≦90面積%であることが好ましい。この範囲であれば、被覆切削工具の耐摩耗性を低下させることなく、欠損の起点となるチッピングの発生を抑制することができるためである。Saが55面積%未満であると、被覆切削工具の耐摩耗性または耐チッピング性が低下する傾向がある。方位差が15度よりも大きい範囲内にある粒子が硬質層の大部分を占めるためである。一方、Saを90面積%を超えるほど大きくすることは、実質的に困難である。
なお、以上説明した方位差を求める際の、硬質層の研磨面とは、以下を意味する。すなわち、被覆切削工具を基材と反対側の表面から鏡面研磨していく。そして基材の表面と平行または略平行な方向に硬質層が露出するまで研磨して、得られた硬質層の面が、「硬質層の研磨面」である。このとき、硬質層の研磨量が、硬質層の平均厚さの50%を超えないようにするのが好ましい。硬質層を鏡面研磨するための方法としては、ダイヤモンドペーストまたはコロイダルシリカを用いて研磨する方法やイオンミリングなどを挙げることができる。
なお、本発明の被覆切削工具における被覆層中の硬質層の粒子断面の面積の、各方位差の区分における合計(合計B)は、以下のようにして求めることができる。まず、上記の硬質層の鏡面研磨面を用意する。走査電子顕微鏡(SEM)や電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)などに付属した電子後方散乱回折像装置(EBSD)を用いて、各粒子の断面の面積を測定することができる。EBSDを用いて硬質層を構成する粒子の各結晶の結晶方位を特定し、特定した各結晶方位の粒子断面の面積を、上記の5度のピッチ毎の区分に割り振っていく。そしてその各区分における粒子断面の面積の合計値(合計B)の、上記合計A(100面積%)に対する比率を求める。
より具体的には、以下の方法で求めることができる。硬質層を鏡面研磨して得た試料をFE−SEMにセットする。試料に70度の入射角度で、15kVの加速電圧および0.5nAの照射電流で電子線を照射する。30μm×50μmの測定範囲について、0.05μmのステップサイズというEBSDの設定で、当該範囲に存在する粒子断面の方位差を求めるのが望ましい。研磨面は、被覆切削工具の切削に関与する部位について作製し、前記30μm×50μmの測定範囲1視野について測定を行う。前記の切削に関与する部位であれば、測定視野の位置によって、各方位差の区分の粒子断面の面積の合計Bが大きく変化することはない。
本発明の被覆切削工具における被覆層中の硬質層は、圧縮応力を有することが好ましい。圧縮応力により硬質層の靱性が向上することにより、被覆切削工具の耐欠損性が向上するためである。特に、硬質層の圧縮応力は、0.2GPa以上3GPa以下であることがさらに好ましい。圧縮応力が0.2GPa未満であると被覆切削工具の耐欠損性が低下する場合がある。また、圧縮応力が3GPaを超えると、被覆層自体が基材から剥離することがある。
なお、上記圧縮応力は、X線応力測定装置を用いたsinψ法により測定することができる。そしてこのような圧縮応力は、硬質層の切削に関与する部位に含まれる任意の点10点(これらの各点は当該部位の応力を代表できるように、互いに0.5mm以上の距離を離して選択することが好ましい)の応力を該sinψ法により測定し、その平均値として求めることができる。
本発明の被覆切削工具における被覆層は、硬質層だけで構成されてもよいが、基材と硬質層との間に下部層を含むことが好ましい。基材と硬質層との密着性が向上するためである。特に、下部層は、(Al1−y)Nと表される組成であると好ましい。被覆切削工具が、耐摩耗性と基材及び硬質層の密着性とのバランスに優れるからである。なお、LはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。またyはAl元素とL元素との合計に対するAl元素の原子比を表し、0.6≦y≦0.9を満足する。下部層がL元素を含むと、被覆切削工具の耐摩耗性が向上する傾向がある。特に、L元素がTiまたはCrであると、さらに被覆切削工具の耐摩耗性が向上するため、好ましい。Al元素の原子比yは、0.6未満であると、基材と被覆層との密着性が低下する傾向がある。Alの含有量が少なくなるためである。また、原子比yが0.9を超えると、被覆切削工具の耐摩耗性が低下する傾向がある。L元素を含むことによる効果が得られにくいためである。
本発明の被覆切削工具において、前記下部層の平均厚さは、0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。基材と被覆層との密着性が向上する傾向を示すためである。なお、下部層の平均厚さの求め方については、後述する。
本発明の被覆切削工具においては、硬質層の表面に上部層を形成してもよい。上部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、SiおよびYからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、C、N、BおよびOからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とから構成される化合物(但し、硬質層と組成が異なる)の単層または多層であることが好ましい。このような構造であると、被覆切削工具が耐摩耗性に優れるからである。
本発明の被覆切削工具において、基材上に以上説明した被覆層を形成する方法は、特に限定されるものではない。その例としてイオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法、イオンミキシング法などの物理蒸着法を挙げることができる。これらの中でもアークイオンプレーティング法が好ましい。この方法で被覆層を形成すると、被覆層と基材の密着性が優れているからである。
本発明の被覆切削工具の製造方法について、具体例を用いて説明する。なお、本発明の被覆切削工具の製造方法は、当該被覆切削工具の構成を達成し得る限り特に制限されるものではない。
工具形状に加工した基材を物理蒸着装置の反応容器内に入れる。さらに金属蒸発源を反応容器内に設置する。その後、反応容器内を圧力1×10−2Pa以下になるまで真空引きする。続いて、反応容器内のヒーターで基材の温度が200〜800℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にArガスを導入して圧力を0.5〜5.0Paとする。
圧力0.5〜5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−200〜−1000Vのバイアス電圧を印加し、反応容器内のタングステンフィラメントに5〜20Aの電流を流して、基材の表面に対してArガスによるイオンボンバードメント処理をする。基材の表面をイオンボンバードメント処理した後、圧力1×10−2Pa以下になるまで真空引きする。
次いで、必要に応じて基材の温度が300℃〜500℃になるまで加熱する。窒素ガスなどの反応ガスを反応容器内に導入し、反応容器内の圧力を0.5〜5.0Paにする。
その後、核形成工程を行う。当該工程では、基材に−10〜−80Vのバイアス電圧を印加し、被覆層における硬質層の金属成分に応じた金属蒸発源を、60〜100Aのアーク放電により蒸発させる。これにより、基材の表面に硬質層の核を20〜100nmの厚さで分散して形成する。
なお、以上説明した核形成工程において、金属蒸発源の蒸発と停止を繰り返すことで核の成長速度を変化させることにより、微細な粒子の核と粗大な粒子の核を分散して形成することができる。より具体的には、本発明の被覆切削工具における硬質層の金属成分に応じた金属蒸発源に対するアーク放電について、0.5〜2分間のアーク放電と、0.5〜2分間のアーク放電の停止とを交互に繰り返す。このような間欠放電を行うと、微細な粒子の核と粗大な粒子の核とを分散して形成することができる。なお、アーク放電の時間またはアーク放電の停止の時間のいずれかが、0.5分間よりも短いと、核の成長速度の変化が小さいため、微細な粒子の核と粗大な粒子の核とを分散して形成することができない。一方、アーク放電の時間またはアーク放電の停止の時間のいずれかが、2分間よりも長いと、核の形成時間が長くその厚さが100nmを超えるため、有益でない。なお、硬質層の核の厚さは、核形成工程における、単位時間当たりの成長速度から求めることができる。
核形成工程を経た後、成膜工程を行うと、方位差が0度以上15度未満の範囲内に粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する、本発明の条件を満足する硬質層を得ることができる。当該工程では、基材に−40〜−150Vのバイアス電圧を印加し、各層の金属成分に応じた金属蒸発源を80〜150Aのアーク放電により蒸発させる。これにより硬質層が成膜される。
前記硬質層における、方位差が0度以上15度未満の範囲にある硬質層の粒子断面の面積の合計の面積率(Sa)を大きくするには、上記で説明した所定の下部層を形成し、該下部層の表面に硬質層の核を形成するとよい。前記下部層は、Al元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を0.6以上とする窒化物からなる。
本発明の被覆切削工具における硬質層に所定の圧縮応力を付与するには、成膜工程において、基材に印加するバイアス電圧の絶対値を大きくするとよい。より具体的には、バイアス電圧が−40Vと−100Vの場合を比較すると、−100Vの方がバイアス電圧の絶対値が大きいため、硬質層に付与される圧縮応力は、−100Vの場合の方が大きい。
本発明の被覆切削工具における硬質層を構成する粒子の平均粒径を制御するには、成膜工程において、基材の温度を調整するとよい。成膜工程において、基材の温度を高くすると、硬質層の粒子の平均粒径は、小さくなる。そのため、成膜工程における基材の温度を400℃以上600℃以下とすることによって、硬質層の粒子の平均粒径を200nm以上600nm以下にすることができる。
次に、本発明における各層の厚さの求め方等について説明する。
本発明の被覆切削工具における被覆層を構成する各層(硬質層、下部層、上部層など)の厚さは、被覆切削工具の断面組織から光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて、平均厚さとして測定することができる。この平均厚さは、以下のようにして求めることができる。金属蒸発源に対向する面の刃先から、当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所以上の断面を観察する。これらの各断面における各層の厚さを測定する。得られた3つの測定値の平均値を計算することで、平均厚さを求めることができる。
また、本発明の被覆切削工具における被覆層を構成する各層の組成は、当該工具の断面組織からエネルギー分散型X線分析装置(EDS)や波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
本発明において、硬質層を構成する粒子の平均粒径は、硬質層の断面組織を観察して求められる。具体的には、以下の通りである。基材の表面に対して略平行な面の硬質層の表面が露出するまで鏡面研磨する。または、上部層と硬質層との界面から内部に向かって、硬質層の凹凸が無くなるまで鏡面研磨する。得られた鏡面研磨面を断面組織とする。硬質層の粒子の平均粒径を求める際には、硬質層の表面近傍の断面組織を観察してもよく、硬質層の内部の断面組織を観察してもよい。硬質層を鏡面研磨する方法としては、ダイヤモンドペーストまたはコロイダルシリカを用いて研磨する方法やイオンミリングなどを挙げることができる。直径100nm以上のドロップレットを除いた断面組織をFE−SEM、TEM、電子線後方散乱回折装置(EBSD)などで観察する。得られた画像において、硬質層を構成する各粒子の面積と等しい面積の円の直径をその粒子の粒径とする。硬質層の断面組織から粒径を求めるときに画像解析ソフトを用いてもよい。なお、硬質層の断面組織において、直径100nm以上のドロップレットとドロップレット以外の部分は容易に区別できる。断面組織を観察すると、ドロップレットは円形であり、ドロップレットの周りには幅数nm〜数十nmの空隙ができている。また、ドロップレットは鏡面研磨中に硬質層から抜け落ちることがあり、その場合は硬質層に円形の孔が生じる。そのため、硬質層の断面組織において直径100nm以上のドロップレットとドロップレット以外の部分は容易に区別することができる。ドロップレットを除いた各粒子の粒径を求め、その平均を、本発明における硬質層を構成する粒子の平均粒径として求める。
なお、断面組織を観察する際の視野は、後述するとおり例えば30μm×50μmの1視野である。切削に関与する部位であれば、観察する視野の位置によって平均粒径が大きく変化することはない。
本発明の被覆切削工具の種類として具体的には、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削インサート、ドリル、エンドミルなどを挙げることができる。
基材としてISO規格CNMG120408インサート形状のP20相当の超硬合金を用意した。アークイオンプレーティング装置の反応容器内に、下記表1および表2に示す各層の組成になる金属蒸発源を配置した。用意した基材を反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定した。
その後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下になるまで真空引きした。真空引き後、反応容器内のヒーターで基材の温度が500℃になるまで加熱した。加熱後、反応容器内の圧力が5.0PaになるようにArガスを導入した。
圧力5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−800Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のタングステンフィラメントに10Aの電流を流して、基材の表面に対してArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間行った。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下になるまで真空引きした。
真空引き後、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にした。
下記表1に記載の発明品1〜9については、基材に−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流120Aのアーク放電により表1に示す組成となる金属蒸発源を蒸発させて、下部層を形成した。
次いで、発明品1〜9について核形成工程を実施した。具体的には、基材に表3に示すバイアス電圧を印加して、金属蒸発源に対して、下記表3に示すアーク放電と放電停止とを交互に繰り返す間欠放電を行った。これにより、所望の厚さの硬質層の核を下部層の表面に分散して形成した。
下記表1に記載の発明品10については、下部層を形成せずに、核形成工程を実施した。すなわち、下部層を形成していない基材に表3に示すバイアス電圧を印加して、金属蒸発源に対して、表3に示すアーク放電と放電停止とを交互に繰り返す間欠放電を行った。これにより、所望の厚さの硬質層の核を基材の表面に分散して形成した。
核形成工程を経た後、発明品1〜10について、表3に示す条件で、成膜工程を行い、硬質層を成膜した。その後、発明品1、3、4、6、7、9については、基材に−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流120Aのアーク放電により表1に示す条件(組成及び平均厚さ)で、上部層を形成した。
下記表2に記載の比較品1〜10については、下記表4に示す条件により、表2に示す組成となる金属蒸発源を蒸発させて、基材上に各層を形成した。
基材の表面に表1および表2に示す所定の厚さまで各層を形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料(それぞれ発明品1〜10および比較品1〜10)を取り出した。
Figure 2016017790
Figure 2016017790
Figure 2016017790
Figure 2016017790
得られた試料の各層の平均厚さは、以下のようにして求めた。すなわち、被覆切削工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から、当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所の断面をTEM観察した、これらの各断面における各層の厚さを測定した。得られた3つの測定値の平均値を計算することで、平均厚さを求めた。また、得られた試料の各層の組成は、被覆切削工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から、当該面の中心部に向かって50μmまでの位置の近傍の断面において、EDSを用いて測定した。それらの結果も、上記表1および2にあわせて示す。なお、表1および2の各層の金属元素の組成比は、各層を構成する金属化合物における金属元素全体に対する各金属元素の原子比を示す。
得られた試料について、硬質層の表面から深さ100nmまで、ダイヤモンドペーストで研磨して、さらにコロイダルシリカを用いて鏡面状に研磨した。発明品1、3、4、6、7、9については、硬質層が露出するまで上部層の表面から内部に向かって研磨した。そして硬質層に凹凸があるものについては、それが無くなるまで鏡面研磨した。鏡面になった硬質層の表面組織をEBSDで観察して、硬質層の粒子の平均粒径を測定した。EBSDは、ステップサイズが0.05μm、測定範囲が30μm×50μm、方位差が5度以上の境界を粒界とみなすという設定にした。硬質層のある1つの結晶粒の面積と等しい面積の円の直径をその結晶粒の粒径とした。同様の方法により、観察した視野中に含まれる結晶粒の粒径を求め、その平均値を硬質層の構成粒子の平均粒径とした。比較品の平均粒径については、平均厚さが最も厚い層について、平均粒径を求めた。各試料の平均粒径の測定結果を、下記表5に示した。
Figure 2016017790
得られた試料の硬質層の研磨面をFE−SEMで観察し、FE−SEMに付属したEBSDを用いて、方位差0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の合計面積Aを測定した。そして、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積を5度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する硬質層の粒子断面の面積の合計Bを求めた。これら各区分の合計Bを、前記合計A(100面積%)に対する比率として表した。比較品についても同様に行ったが、平均厚さが最も厚い層について、方位差の各区分における層の粒子断面の合計面積を求めた。以上の測定結果を下記表6に示した。また、このような測定により得られた発明品6の、横軸に5度のピッチの区分を取り、縦軸に、そのピッチ毎の各区分における硬質層の粒子断面の面積の合計Bの、前記合計Aに対する比率(面積率)をとったグラフを図1に示す。比較品2についての同様のグラフを図2に示す。
なお、EBSDによる測定は、以下のようにして行った。硬質層を研磨した試料をFE−SEMにセットした。試料に70度の入射角度で、15kVの加速電圧および0.5nA照射電流で電子線を照射した。測定範囲30μm×50μmにて、0.05μmのステップサイズというEBSDの設定で、各粒子の方位差及び断面積の測定を行った。測定範囲内における硬質層の粒子断面の面積は、その面積に対応するピクセルの総和とした。ステップサイズが0.01μmの場合、ピクセル1つあたりの面積は0.0065μmとなる。すなわち、硬質層の粒子の、方位差に基づいた5度ピッチ毎の各区分おける粒子断面の面積の合計Bは、各区分に該当する粒子断面が占めるピクセルを集計し、面積に換算して求めた。そしてこれの、上記合計A(100面積%)に対する比率を求めた。
Figure 2016017790
得られた試料について、X線応力測定装置を用いたsinψ法により、硬質層の圧縮応力を測定した。圧縮応力は、切削に関与する部位に含まれる任意の点10点の応力を測定し、その平均値として求めた。比較品の圧縮応力は、平均厚さが最も厚い層について、同様に求めた。その結果を、下記表7に示した。
Figure 2016017790
得られた試料を用いて、以下の切削試験1および切削試験2を行い、試料の耐欠損性および耐摩耗性を評価した。
[切削試験1 耐欠損性評価]
被削材:S45C、
被削材形状:φ105mm×220mmの円柱(長さ方向に2本の溝が入っている。)、
切削速度:140m/min、
送り:0.4mm/rev、
切り込み:1.5mm、
クーラント:有り、
評価項目:試料が欠損(試料の切れ刃部に欠けが生じる)したときを工具寿命とし、切削開始から工具寿命に至るまでの加工長を測定した。
[切削試験2 耐摩耗性評価]
被削材:S45C、
被削材形状:φ105mm×220mmの円柱、
切削速度:220m/min、
送り:0.3mm/rev、
切り込み:2.0mm、
クーラント:有り、
評価項目:最大逃げ面摩耗幅が0.2mmに至ったときを工具寿命とし、切削開始から工具寿命に至るまでの加工時間を測定した。
なお、切削試験1の工具寿命に至るまでの加工長について、5m以上を○、3m以上5m未満を△、3m未満を×として評価した。また、切削試験2の工具寿命に至るまでの加工時間について、5min以上を○、3min以上5min未満を△、3min未満を×とした。この評価では、(優)○>△>×(劣)という順位である。それゆえ、○を有することが、試料の切削性能が優れていることを示す。得られた評価の結果を下記表8に示した。
Figure 2016017790
表8の結果より、発明品の耐欠損性試験の評価および耐摩耗性試験の評価はすべて○である。一方比較品は、耐欠損性試験の評価または耐摩耗性試験の評価のいずれかにおいて、△または×を有していた。以上の結果より、発明品の被覆切削工具においては、耐摩耗性を低下させずに耐欠損性が向上しており、これにより工具寿命が長くなっていることが分かる。
本発明の被覆切削工具は、耐摩耗性および耐欠損性に優れることにより、従来よりも延長された工具寿命を有しているので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (9)

  1. 基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆切削工具において、
    前記被覆層は、(Ti1−x)N[但し、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはTi元素とM元素との合計に対するTi元素の原子比を表し、0.45≦x≦0.9を満足する。]と表される組成の硬質層を含み、
    前記硬質層を構成する粒子の平均粒径が200nm以上600nm以下であり、
    前記硬質層の前記基材の表面と略平行な研磨面において、該研磨面の法線と前記硬質層の粒子の立方晶(311)面の法線とがなす角を方位差として求め、前記研磨面における、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計Aを100面積%とすると共に、方位差が0度以上35度以下の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積を5度のピッチ毎に区分して、それぞれの区分における前記粒子の断面の面積の合計Bを、前記合計Aに対する比率として求めたとき、方位差が0度以上15度未満の範囲内に、硬質層の粒子断面の面積の合計Bが最大である区分が存在する、被覆切削工具。
  2. 方位差が0度以上15度未満の範囲内にある硬質層の粒子断面の面積の合計の前記合計Aに対する比率Saが、55面積%≦Sa≦90面積%である、請求項1に記載の被覆切削工具。
  3. 前記硬質層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載の被覆切削工具。
  4. 前記硬質層は、圧縮応力を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  5. 前記硬質層は、0.2GPa以上3GPa以下の圧縮応力を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  6. 前記被覆層は、前記基材と前記硬質層との間に下部層を有し、
    該下部層は、(Al1−y)N[但し、LはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SiおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、yはAl元素とL元素との合計に対するAl元素の原子比を表し、0.6≦y≦0.9を満足する。]と表される組成である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  7. 前記下部層の平均厚さは、0.2μm以上5μm以下である、請求項6に記載の被覆切削工具。
  8. 前記被覆層の総厚さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  9. 前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックスまたは立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
JP2016538457A 2014-08-01 2015-07-31 被覆切削工具 Active JP6390706B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014157251 2014-08-01
JP2014157251 2014-08-01
PCT/JP2015/071747 WO2016017790A1 (ja) 2014-08-01 2015-07-31 被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2016017790A1 true JPWO2016017790A1 (ja) 2017-04-27
JP6390706B2 JP6390706B2 (ja) 2018-09-19

Family

ID=55217685

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016538457A Active JP6390706B2 (ja) 2014-08-01 2015-07-31 被覆切削工具

Country Status (5)

Country Link
US (1) US10300533B2 (ja)
EP (1) EP3195959B1 (ja)
JP (1) JP6390706B2 (ja)
CN (1) CN106573312B (ja)
WO (1) WO2016017790A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6037255B1 (ja) 2016-04-08 2016-12-07 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
US11220760B2 (en) 2016-04-14 2022-01-11 Sumitomo Electric Hardmetal Corp. Surface-coated cutting tool and method of producing the same
JP6037256B1 (ja) * 2016-04-14 2016-12-07 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP2018030206A (ja) 2016-08-25 2018-03-01 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
US10502550B2 (en) * 2016-12-21 2019-12-10 Kennametal Inc. Method of non-destructive testing a cutting insert to determine coating thickness
CN107150139A (zh) * 2017-05-26 2017-09-12 苏州市汇峰机械设备有限公司 一种高硬度防腐蚀铣刀
JP6642836B2 (ja) * 2017-09-19 2020-02-12 株式会社タンガロイ 被覆ドリル
JP6857299B2 (ja) * 2017-09-29 2021-04-14 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP7353591B2 (ja) * 2020-05-25 2023-10-02 株式会社タンガロイ 被覆切削工具

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008105164A (ja) * 2006-10-27 2008-05-08 Kyocera Corp 表面被覆切削工具
JP2009113125A (ja) * 2007-11-02 2009-05-28 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5261018B2 (ja) * 2008-04-30 2013-08-14 住友電気工業株式会社 表面被覆切削工具

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3460287B2 (ja) 1994-01-21 2003-10-27 住友電気工業株式会社 耐摩耗性に優れた表面被覆部材
JP3420024B2 (ja) 1997-05-28 2003-06-23 東芝タンガロイ株式会社 結晶配向性硬質膜を含む積層被膜部材
JP3658949B2 (ja) * 1997-11-04 2005-06-15 住友電気工業株式会社 被覆超硬合金
JP2002205204A (ja) * 2001-01-10 2002-07-23 Hitachi Tool Engineering Ltd 多層被覆工具
JP3849135B2 (ja) 2001-12-27 2006-11-22 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層が重切削条件で被削材に対して良好な食いつき性を示す表面被覆超硬合金製切削工具
EP1536041B1 (en) * 2003-11-25 2008-05-21 Mitsubishi Materials Corporation Coated cermet cutting tool with a chipping resistant, hard coating layer
SE531971C2 (sv) 2007-08-24 2009-09-15 Seco Tools Ab Belagt skärverktyg för allmän svarvning i varmhållfast superlegeringar (HRSA)
US8415033B2 (en) * 2008-01-29 2013-04-09 Kyocera Corporation Cutting tool
JP4753144B2 (ja) * 2009-12-21 2011-08-24 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具
WO2012018063A1 (ja) * 2010-08-04 2012-02-09 株式会社タンガロイ 被覆工具
JP5839037B2 (ja) * 2011-08-01 2016-01-06 三菱日立ツール株式会社 表面改質wc基超硬合金部材、硬質皮膜被覆wc基超硬合金部材、及びそれらの製造方法
EP2604720A1 (en) * 2011-12-14 2013-06-19 Sandvik Intellectual Property Ab Coated cutting tool and method of manufacturing the same
EP2823080A1 (en) * 2012-03-07 2015-01-14 Seco Tools AB A body with a metal based nitride layer and a method for coating the body
JP5939508B2 (ja) * 2012-07-25 2016-06-22 三菱マテリアル株式会社 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
WO2014025057A1 (ja) 2012-08-10 2014-02-13 株式会社タンガロイ 被覆工具

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008105164A (ja) * 2006-10-27 2008-05-08 Kyocera Corp 表面被覆切削工具
JP2009113125A (ja) * 2007-11-02 2009-05-28 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5261018B2 (ja) * 2008-04-30 2013-08-14 住友電気工業株式会社 表面被覆切削工具

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
A.KARIMI, W.KALSS: "「Off-axis texture in nanostructured Ti1-xAlxN thin films」", SURFACE AND COATINGS TECHNOLOGY, vol. vol.202, JPN6017034997, 2008, pages 241 - 2246 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP6390706B2 (ja) 2018-09-19
EP3195959A4 (en) 2018-03-21
WO2016017790A1 (ja) 2016-02-04
EP3195959B1 (en) 2020-11-25
EP3195959A1 (en) 2017-07-26
US10300533B2 (en) 2019-05-28
US20170216929A1 (en) 2017-08-03
CN106573312B (zh) 2019-08-06
CN106573312A (zh) 2017-04-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6390706B2 (ja) 被覆切削工具
WO2014163081A1 (ja) 表面被覆切削工具
JP6590255B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP2017013223A (ja) 表面被覆切削工具
JP6519952B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
KR102216988B1 (ko) 표면 피복 질화붕소 소결체 공구
JP6406592B2 (ja) 被覆切削工具
JP6071100B1 (ja) 被覆切削工具
US20160017499A1 (en) Coated cutting tool
JP2020040175A (ja) 被覆切削工具
JPWO2017170603A1 (ja) 被覆切削工具
JP2019038097A (ja) 被覆切削工具
JP6602672B2 (ja) 被覆工具
JP6635347B2 (ja) 被覆切削工具
JP6198137B2 (ja) 表面被覆切削工具
US10751805B2 (en) Coated cutting tool
JP2016221672A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP6555514B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5983878B2 (ja) 被覆切削工具
JP4936211B2 (ja) 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2019119045A (ja) 硬質被覆層が優れた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
WO2016208663A1 (ja) 表面被覆切削工具
JP2019098502A (ja) 硬質被覆層が優れた耐熱亀裂性を備える表面被覆切削工具
JP2017024136A (ja) 被覆切削工具
JP2014188593A (ja) ダクタイル鋳鉄等の高速切削加工で硬質被覆層が優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170912

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171102

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180403

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180625

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20180703

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180724

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180806

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6390706

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250