JPWO2015159534A1 - 検出液及びそれを用いたバイオセンシング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】貴金属ナノ粒子を標識としたバイオセンシングにおいて、特異結合反応効率及び検出精度を高める。【解決手段】検出液(1)は、貴金属ナノ粒子(10)を標識として、被測定試料(2)中に含まれる、生体物質からなる被検出物質(R)を検出するバイオセンシングに用いる検出液(1)であって、被検出物質(R)と特異結合する親水性の生体物質を含むプローブ(20)と、疎水性部(31)と親水性部(32)とを有する両親媒性のSAM(30)とが表面(10s)に固定された貴金属ナノ粒子(10)が緩衝性水溶液(40)に分散されてなり、両親媒性のSAM(30)の粒子(10)に固定されている側が、疎水性部(31)であり、プローブ(20)は表面(10s)に化学結合(Bc)により固定されている。【選択図】図1A

Description

本発明は、貴金属ナノ粒子を用いたバイオセンシングに使用する検出液及びその検出液を用いたバイオセンシング方法に関する。
バイオセンシングは、生体物質の特異的な結合(特異結合)を、光学的又は電気的な信号の変化を用いて検出することにより行われている。光学的な信号の変化を検出するバイオセンシングには、放射性同位元素や蛍光物質,貴金属ナノ粒子等を標識として被検出物質を検出する方法等がある。
大がかりな測定装置が不要で、簡易なセンシングを可能にするものとして、貴金属ナノ粒子を標識としたバイオセンシングが、免疫診断や、遺伝子解析等の分野において試みられている。例えば、特許文献1及び非特許文献1では、特定の配列を有する核酸断片を検出するバイオセンシングにおいて、一本鎖の核酸同士の塩基配列が相補的(特異的)である場合に相補性を持つ塩基対間の水素結合により二本鎖核酸を形成するハイブリダイゼーション法の標識として、貴金属ナノ粒子を用いる方法が記載されている。
特許文献1には、核酸の配列の一部と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを付着した貴金属粒子をプローブとして用い、このオリゴヌクレオチドが核酸に対してハイブリダイズした結果として生じる色の変化を検出する方法が記載されている。
非特許文献1には、互いに相補的なDNAを、表面にブラシ状に担持した金ナノ粒子同士が接近することにより生じるハイブリダイゼーションにより、金ナノ粒子の局在プラズモン共鳴波長が長波長シフトして、金ナノ粒子の呈色が変化することを利用した遺伝子診断法が記載されている。また、非特許文献1の図1には、DNAターゲットと相補鎖を形成する2種類のDNAプローブ(通常、DNAターゲットの異なる部分(概ね半分ずつ)と相補的)を、それぞれ貴金属ナノ粒子に担持する測定法も示されている。この場合、被検出物質は、貴金属ナノ粒子に担持されていないDNAターゲットである。
特開2004−515208号公報
佐藤保信、前田瑞夫、「DNA担持ナノ粒子による遺伝子診断」、ぶんせき、2008年9月号、p.468−471
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1の方法では、例えば、ゲル電気泳動法を用いた検出において、ハイブリダイゼーション前の状態で、複数のバンドが検出される等、特異結合(ハイブリダイゼーション)の検出精度が低いという問題があり、更に、特異結合反応効率も低い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貴金属ナノ粒子を標識として、被測定試料中に含まれる、生体物質からなる被検出物質を検出するバイオセンシングにおいて、特異結合反応効率が高く、検出精度の良好なバイオセンシング方法、及びそれを可能にする検出液を提供することを目的とするものである。
本発明の検出液は、貴金属ナノ粒子を標識として、被測定試料中に含まれる、生体物質からなる被検出物質を検出するバイオセンシングに用いる検出液において、
被検出物質と特異結合する親水性の生体物質を含むプローブと、疎水性部と親水性部とを有する両親媒性の自己組織化単分子膜とが表面に固定された貴金属ナノ粒子が緩衝性水溶液に分散されてなり、
自己組織化単分子膜は、粒子に固定されている側が疎水性部であり、且つ、親水性部の末端の官能基が正又は負のいずれか1種の電荷を有しており、プローブが貴金属ナノ粒子の表面に化学結合により固定されている。
本明細書において、緩衝性水溶液とは、一般に微生物の培養や化学物質、生体物質の保存、分離等に用いられる水溶液を意味し、外的要因(大気中の二酸化炭素など)あるいは内的要因(微生物自身の代謝産物など)によってほとんどpHが変動しない水溶液を意味する。
また、化学結合とは、分子同士の弱い相互作用である分子間力(イオン間相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、物理吸着)を除く、2つの原子又は分子間における電子の共有による強い相互作用による結合を意味する。具体的には、共有結合、配位結合、金属間結合、貴金属―硫黄間結合を意味するものとする。
本発明の検出液において、親水性部の末端の官能基の電荷と、親水性の生体物質の電荷が同種であることが好ましい。
また、自己組織化単分子膜の親水性部は、ポリエチレングリコール鎖又は糖鎖であることが好ましい。
本発明の検出液は、生体物質が抗体である場合に好適であり、断片化された抗体である場合はより好適である。生体物質が断片化された抗体の場合は、貴金属ナノ粒子との化学結合は断片化された抗体の持つジスルフィド基又はチオール基の硫黄原子と貴金属ナノ粒子表面の貴金属原子との結合であることが好ましい。
本発明のバイオセンシング方法は、貴金属ナノ粒子を標識として、被測定試料中に含まれる、生体物質からなる被検出物質を検出するバイオセンシングにおいて、
特異結合が互いに異なり、且つ、官能基の電荷が同種である2種以上の請求項1〜7いずれか一項記載の検出液を用意する検出液準備工程と、
被測定試料を含む緩衝性水溶液中に準備した2種以上の検出液を混合して反応液を調製する反応液調製工程と、
この反応液中の全てのプローブの生体物質と被検出物質とを特異結合させる反応工程と、
反応工程終了後の反応液を用いて、標識を検出することにより被測定試料中の特異結合した被検出物質の有無を検出する検出工程を有する。
検出工程において、被検出物質の有無の検出は、ゲル電気泳動や後述する光学的な検出法により実施することが好ましい。
本発明の検出液は、生体物質からなる被検出物質と特異結合する親水性の生体物質を含むプローブと、疎水性部と親水性部とを有する両親媒性の自己組織化単分子膜(SAM)とが表面に固定された貴金属ナノ粒子が緩衝性水溶液に分散されてなり、両親媒性のSAMは貴金属ナノ粒子に固定されている側が疎水性部であり、且つ、親水性部の末端基が正又は負のいずれかの電荷を有しており、プローブは貴金属ナノ粒子の表面に化学結合により固定されている。かかる構成では、正又は負のいずかの電荷を末端に有したSAMを貴金属ナノ粒子表面に備えているので、被検出物質との特異結合以外の要因による非特異的な凝集を抑制することができる。また、プローブが貴金属ナノ粒子表面に化学結合により強く固定されているため、経時や物理的な力によりプローブが貴金属ナノ粒子表面から外れて検出限界が劣化する心配もない。従って、本発明によれば、特異結合反応効率が高く、検出精度の良好なバイオセンシングを実施することができる。
更に、本発明の検出液において、SAMの粒子に固定されていない側の末端の官能基(末端基)の帯電状態が、緩衝性水溶液中において、親水性の生体物質を含むプローブの帯電状態と同じである態様では、SAMの末端基と親水性の生体物質とが反発しあうことから、より効果的な、非特異的な凝集抑制効果及び特異結合の反応効率向上効果を得ることができ、高精度なバイオセンシングを実施することができる。
左図は本発明の検出液の構成を示す概略断面模式図、右図は被測定試料の構成を示す模式図 本発明の検出液に含まれる貴金属ナノ粒子の好適な態様を示す概略断面模式図。 図1Bの貴金属ナノ粒子表面の一実施形態を示す拡大概略模式図 抗体及びその断片化処理後の構成を模式的に示した図 I〜IVは、貴金属表面に抗体とSAMが結合された態様を示す模式図であり、抗体が通常の物理結合により結合されてなる場合の経時による結合状態の変化の様子を示した図 本発明のバイオセンシング方法の検出液準備工程の好適な態様を示す概略断面模式図 本発明のバイオセンシング方法の混合工程の好適な態様を示す概略断面模式図 本発明のバイオセンシング方法の反応工程と結合工程の好適な態様を示す概略断面模式図 光偏光計測による検出に用いる装置の概略構成模式図 異方指数を用いた検出例 (粒子形状と異方指数AIとの相関)を示す図 光散乱相関分光法により得られた単量体及び二量体の自己相関関数 実施例1及び比較例1,2のゲル電気泳動法による検出結果を示す図
(検出液)
図面を参照して本発明にかかる一実施形態の検出液及びその調製方法について説明する。図1A左図は、本実施形態の検出液の構成を示す概略断面模式図、右図は被測定試料(試料液)の構成を示す模式図、図1Bは検出液に含まれる貴金属ナノ粒子の好適な態様を示す概略断面模式図である。図1Cは、図1Bに示される貴金属ナノ粒子表面の一実施形態を示す拡大概略模式図である。本明細書の概略図及び模式図では、視認しやすくするため各部の縮尺は適宜変更して示してある。
本発明者は、表面にブラシ状に生体物質を担持した貴金属ナノ粒子を用いたバイオセンシングにおいて、「背景技術」の項において述べた検出精度の低下、及び、特異結合反応効率の低下の主な要因が、被検出物質との特異結合を形成しない場合でも、貴金属ナノ粒子同士が非特異的に凝集することであることを見出した。そこで、本発明者は、正又は負のいずかの電荷を末端に有した表面修飾を貴金属ナノ粒子表面に備えることにより、貴金属ナノ粒子表面が正又は負に帯電するため、その電荷反発により上記非特異的な凝集を抑制可能であると考えた。貴金属ナノ粒子表面の、正又は負のいずれかの電荷を末端に有した表面修飾は、自己組織化単分子膜(SAM)とすることにより、単分子サイズの超薄膜(単分子膜)を貴金属ナノ粒子表面に容易に形成可能である。
すなわち、検出液1は、貴金属ナノ粒子10を標識として、被測定試料2中に含まれる、生体物質からなる被検出物質Rを検出するバイオセンシングに用いるものであり、被検出物質Rと特異結合する親水性の生体物質を含むプローブ20と両親媒性のSAM30とが表面10sに固定された貴金属ナノ粒子10が緩衝性水溶液40中に分散されてなり、SAM30は、貴金属ナノ粒子10に固定されている側が疎水性部31であり、且つ、親水性部32の末端30eの官能基が正又は負のいずれか1種の電荷を有しており、プローブ20が貴金属ナノ粒子10の表面10sに化学結合Bcにより固定されている。本実施形態では、図1B、図1Cに示されるように、プローブ20も負の電荷を有している。
検出液1において、貴金属ナノ粒子10は特に制限されず、使用する光の波長において呈色特性の良好な貴金属を選択することが好ましい。中でも金は、自然光において視認しやすい赤色の呈色を示すこと、また、チオール基やジスルフィド基と強い結合を形成しうることから好ましく利用することができる。
親水性の生体物質を含むプローブ20としては、被検出物質Rと特異結合するものであり、貴金属ナノ粒子10の表面10sと化学結合Bcにより結合可能なものであれば特に制限されない。生体物質の特異結合には、抗原―抗体結合、DNAやRNA、PNA(Peptide Nucleic Acid、ペプチド核酸)等の核酸の相補的結合(ハイブリダイゼーション)、ビオチンーアビジン結合、抗原―アプタマー結合、糖鎖―レクチン結合等があり、検出液1はいずれの特異結合にも適用可能である。
両親媒性のSAM30は、貴金属ナノ粒子10に基端30aの官能基の構成原子(硫黄原子)が貴金属ナノ粒子10の貴金属原子と結合されてなり、SAM30を構成する1分子において、貴金属ナノ粒子10が固定されている側が疎水性部31であり、且つ、親水性部32の末端30eの官能基が正又は負のいずれか1種の電荷を有している。
疎水性部31としては、基端30aに、貴金属ナノ粒子10と結合可能な官能基であるアルキル基を有することが好ましい。貴金属ナノ粒子10の貴金属原子と強固な結合を容易に形成しうる官能基としては、チオール基やジスルフィド基、メルカプト基が挙げられる。これら硫黄化合物の官能基は、金等の貴金属表面上に自発的に吸着し、アルカンチオール類やアルカンジスルフィド類は、単分子サイズの超薄膜であるSAMとなりうることで知られている。これらの官能基の表面10sへの固定方法としては、特に制限されず既存の技術を利用することができる。
親水性部32は、貴金属ナノ粒子10の表面10sが疎水性部31で覆われることにより緩衝性水溶液40における分散性の低下を改善するものである。疎水性の大きいSAMを用いた場合は、貴金属ナノ粒子10の水溶性が低くなっているため、緩衝性水溶液中に良好に分散させるためには、アルコール等の相溶性の高い溶媒を一旦介して分散させる必要がある。しかしながら、このような処理を行うことにより、抗体や核酸等の生体物質は損傷されて変性し、非特異の凝集が増えて良好なセンシングを行うことが難しくなる可能性が高い。非特異的な凝集の増加は特異結合反応の失活をも引き起こし、該反応の反応効率を低下させる。特に、疎水性部のアルキル鎖の炭素数が7以上である場合には疎水性が高いため水溶性(分散性)が非常に低くなる。
本発明者は、疎水性部31の金ナノ粒子10の固定側(基端30a)と反対側の末端に親水性部32を備え、末端30eに正又は負のいずれか1種の電荷を有しているSAM30とすることにより、貴金属ナノ粒子同士が非特異的に凝集する現象を抑制する効果を維持しつつ、緩衝性水溶液中への分散性が良く、生体物質へのダメージが殆どない検出液となることを見出した。
親水性部32としては、緩衝性水溶液中への分散性(水溶性)を良好にしうるものであれば特に制限されないが、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、糖鎖、親水性ポリエステル等が挙げられる。
親水性部32の末端基30eは特に制限されず、酸性基(負電荷)としては、ヒドロキシル基、カルボシキル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられ、塩基性基(正電荷)としては、例えば、アミノ基、第4級アンモニウム基、イミダゾール基、グアニジウム基等が挙げられる。いずれの場合も、イオン化傾向が高い官能基であることが好ましい。プローブ20が緩衝性水溶液40中において正又は負の電荷を有して帯電している場合は、親水性部32の末端基30eの電荷は、プローブ20と反発し合うように、同じ帯電状態となりうる官能基であることが好ましい。
両親媒性のSAM30としては、例えば、基端30aのジスルフィド基の硫黄原子が貴金属ナノ粒子10の貴金属原子と結合されてなり、アルキル基(炭素数11)からなる疎水性部31と、末端基30eがカルボキシル基であるポリエチレングリコール(炭素数6)からなる親水性部32とがエステル結合している単分子膜(20-(11-メルカプトウンデカンイルオキシ)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサン酸(英語名: 20-(11-Mercaptoundecanyloxy)-3,6,9,12,15,18-hexaoxaeicosanoic acid))が挙げられる。かかるSAM30の場合、単分子の長さは2.5nm〜3.0nm程度であり、そのうち疎水性部31長が約1.2nmである。わかりやすいように図1Cでは1分子のみを図示してある。なお、図1Cでは、カルボキシル基として示してあるが、緩衝性水溶液40中ではCOOとして存在する。
貴金属ナノ粒子10へのSAM30の固定温度及びその固定に要する反応時間は、単分子膜の材料に応じて適宜設定すればよく、20-(11-メルカプトウンデカンイルオキシ)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサン酸の場合は、50℃前後の温度にて3時間程反応させることにより形成することができる。
SAM30の検出液1中の濃度(単分子の濃度)は、感度の良い検出が可能であれば特に制限されないが、10nmol/l以上1000nmol/l以下の範囲が好ましく、貴金属ナノ粒子の材質や粒子径、および生体物質の種類によって最適化することが好ましい。
本発明者は、当初、正又は負のいずれかの電荷を末端に有したSAM30を貴金属ナノ粒子表面10sに備えた構成とすれば、貴金属ナノ粒子表面10sが帯電するため、その電荷反発により上記粒子同士の非特異的な凝集を抑制し、特異結合の反応効率向上効果を得ることができると考えていた。しかしながら、このようなSAM30を形成するだけでは、充分な効果が得られない特異結合があることが判明した。
特異結合の検出を行う生化学分析において、プローブ20と貴金属ナノ粒子10との結合は、その物質それぞれに対して通常好適とされている方法があることが知られている。本発明者の検討の結果、プローブ20が抗体である場合等、貴金属ナノ粒子10への結合を常法により実施すると、その結合が物理吸着となる特異結合において、非特異結合の抑制効果は充分得られるものの、検出限界が経時によって劣化することがわかった。
抗原抗体反応による生化学分析において、貴金属ナノ粒子に抗体を固定させることはこれまでに種々実施されている。抗体の金属への固定は、Fc領域の末端部分の疎水性部分が、他の末端部分に比べて金属膜上に結合されやすいことから、特開2008−197038号公報の段落[0037]に記載されているように、貴金属ナノ粒子と抗体とを緩衝溶液中にて混合し、自然に物理吸着させる方法により通常行われている。
しかしながら、通常の物理吸着によりFc末端を貴金属ナノ粒子に結合させた場合、後記する比較例2に示すように、検出液を調製直後の測定では特異結合反応効率が高く、検出精度の良好なバイオセンシングを実施できるが、数時間等の経時後に同様の検出を実施したところ、検出されるべき特異結合を検出することができなかった。
そこで本発明者らは、かかる現象のメカニズムについて検討を行い、その結果、貴金属ナノ粒子10への結合が常法に於いて物理吸着であるような物質をプローブ20として用いる場合においても、貴金属ナノ粒子10への結合を化学結合とすることにより、上記経時により検出限界を劣化させることなく、上記粒子同士の非特異的な凝集を抑制し、特異結合の反応効率向上効果が得られることを見出した。
物理吸着により結合されたプローブ20において、経時により検出限界の劣化を生じる原因は、SAMの自己組織化のメカニズムに基づくものであると本発明者は考えている。
SAMの形成は、非特許文献”田中啓文ら著、表面科学Vol.25,No.10,pp. 650-655,2004”等に記載されているように、貴金属原子(金原子)と硫黄原子等との非常に早い段階に起こる結合と、それに続く炭化水素鎖の稠密配列化(再配列)の二段階からなり、後半の再配列は、エンタルピー項に関わるファンデルワールス力、及び、エントロピー項に関わる疎水化による溶媒排除のために、時間の経過(経時)と共に炭化水素基の結晶化により起こることが知られている。
本発明者らの考えによれば、かかるSAMの2段階の自己組織化メカニズムにおける再配列により、結合力の弱い物理吸着による結合が解かれて、貴金属ナノ粒子10に結合されている抗体(プローブ)20の絶対量が減るために、検出限界の劣化を生じる。図3は、上記推察に基づいて、抗体20が通常の方法により結合されてなる貴金属ナノ粒子10に、SAM形成溶液を添加して検出液1を調製する工程を段階的に示した模式図である。図3においてIはSAM形成溶液添加直後、IIは検出液調製完了直後、IIIはSAM再配列開始時、IVはSAM再配列完了後である。
図3のI〜IIは、上記した金原子と硫黄原子との結合段階であり、検出液1の調製完了直後のIIでは、金ナノ粒子10の表面は負の電荷を有するSAMが再配列せずに結合されている。この場合、金ナノ粒子10は負に帯電されているため、金ナノ粒子10同士は表面の電荷による反発により、非特異結合による凝集を生じることなく、良好な検出を行うことができる。
しかしながら、二段階目の再配列が開始されると(図3III)、SAMの再配列によるファンデルワールス力と溶媒排除力により、抗体20と金ナノ粒子表面10sとの弱い物理吸着による結合が切れて、抗体が金ナノ粒子表面10sから剥がされてしまう。その結果、再配列完了後には金ナノ粒子10に結合された抗体の数が減り、検出限界が大幅に劣化する。
かかる考察に基づき、検出液1では、抗体20を、金ナノ粒子表面10sに化学結合により強固に結合させる態様とすることにより、SAMの再配列による検出限界の劣化を抑制し、検出液の調製直後のみならず、特異結合反応効率が高く、検出精度の良好なバイオセンシングを可能とした(後記実施例を参照)。
抗体を化学結合により貴金属ナノ粒子に化学結合させる方法としては、Fc末端にチオール基やジスルフィド基等を付与するなどして官能化してもよいし、抗体を断片化処理により形成される、末端部にジスルフィド基又はチオール基等を備えた断片化抗体を用いてもよい。図1Cは、プローブ20として断片化抗体F(ab’)用い、20-(11-メルカプトウンデカンイルオキシ)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサン酸をSAM30として用いた場合について、貴金属ナノ粒子表面10sの拡大模式図示したものである。断片化抗体F(ab’)末端には、抗原(Ant)のエピトープと特異結合するパラトープBsを備えている。
図2は、抗体及びその断片化処理後の構成を模式的に示した図である。抗体は、図2の左図に示されるように、Y字型の4本鎖構造を基本構造としており、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなる。この重鎖と軽鎖がジスルフィド結合で結びついてヘテロダイマーを形成し、更にこのヘテロダイマー同士が2つのジスルフィド結合を含むヒンジ部により結びついてY字型のヘテロテトラマーを形成している。Y字型の上半分のV字部分をFab領域(Fabフラグメント)、下半分の直線部分をFc領域(Fcフラグメント)といい、Fab領域の先端にはパラトープBsを有している。
適切に断片化処理された抗体は、ジスルフィド結合及び/又はチオール基が露出されており、貴金属ナノ粒子表面10sとSAM等を介さずに直接結合させることができるため好ましい。図2に示されるように、断片化抗体は、タンパク質分解酵素パパインで処理されることにより、2つのFabフラグメントとFcフラグメントに分解され、またタンパク質分解酵素ペプシンで処理されることにより、2つのFabフラグメントがジスルフィド結合により結合されたF(ab’)フラグメントと断片化されたFcフラグメントに分解される。F(ab’)フラグメントを更に2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)等の還元剤で処理することによりF(ab’)フラグメントに分解されると同時に、末端にチオール基が露出される。
これら以外にも、抗体フラグメントを作製する酵素としては、フィシン,リシルエンドペプチターゼ,V8プロテアーゼ,ブロメライン,クロストリパイン,メタロエンドペプチターゼ,パパインを活性化処理した活性化パパイン等がある。
上記した酵素を用いた断片化以外にも、化学処理や遺伝子工学的手法による断片化も採用することができる。
抗体の断片化は、例えば、K.L.Brogan et al. Analytica Chimica Acta 496 (2003) 73-80等の公知の方法にて実施することができる。
図1Cに示されるように、プローブ20が抗体である場合は、プローブ20が断片化抗体F(ab’)であり、チオール基の硫黄原子と、貴金属ナノ粒子表面10sの貴金属原子とが化学結合Bcにより結合されてなる。かかる態様とすることにより、後記実施例1に示すように、経時による検出限界の劣化を生じることなく、粒子同士の非特異的な凝集を抑制し、特異結合の反応効率向上効果が得ることができる。
以上述べたように、検出液1は、生体物質からなる被検出物質Rと特異結合する親水性の生体物質を含むプローブ20と、疎水性部31と親水性部32とを有する両親媒性の自己組織化単分子膜(SAM)30とが表面10sに固定された貴金属ナノ粒子10が緩衝性水溶液40に分散されてなり、両親媒性のSAM30は貴金属ナノ粒子10に固定されている側が疎水性部31であり、且つ、親水性部32の末端基30eが正又は負のいずれかの電荷を有しており、プローブ20は貴金属ナノ粒子10の表面10sに化学結合により固定されている。かかる構成では、正又は負のいずかの電荷を末端に有したSAM30を貴金属ナノ粒子表面10sに備えているので、被検出物質Rとの特異結合以外の要因による非特異的な凝集を抑制することができる。また、プローブ20が貴金属ナノ粒子表面10sに化学結合により強く固定されているため、経時や物理的な力によりプローブが貴金属ナノ粒子表面10sから外れて検出限界が劣化する心配もない。従って、検出液1によれば、特異結合反応効率が高く、検出精度の良好なバイオセンシングを実施することができる。
(バイオセンシング方法)
上記本発明の検出液を用いて、実施する本発明のバイオセンシング方法について、図4A〜図4Cを参照して説明する。図4A〜図4Cはサンドイッチ法により貴金属ナノ粒子10により標識して被検出物質Rの量を検出する構成の例を示している。
本実施形態のバイオセンシング方法は、貴金属ナノ粒子10を標識として、被測定試料2中に含まれる、生体物質からなる被検出物質Rを検出するバイオセンシングにおいて、
特異結合が互いに異なり、且つ、官能基の電荷が同種である2種以上の検出液(1a,1b)を用意する検出液準備工程と、
緩衝性水溶液中に被測定試料2と準備した2種以上の検出液(1a,1b)を混合して反応液3を調製する反応液調製工程と、
反応液3中の全てのプローブ20(A,B)の生体物質と被検出物質Rとを特異結合させる反応工程と、
反応工程終了後の反応液3を用いて、標識を検出することにより被測定試料2中の特異結合した被検出物質Rの有無を検出する検出工程を有する。
ここでも、被検出物質Rが抗原であり、この抗原と特異結合する2種の抗体20(A)と20(B)がプローブである場合を例に説明する。
<検出液準備工程>
検出液1は、図4Aに示されるように、検出液準備工程(A−1)〜(A−3),(B−1)〜(B−3)の工程を実施することにより製造することができる。(A−1)〜(A−3)と(B−1)〜(B−3)は、プローブの種類が異なるだけで工程は同じであるので、(A−1)〜(A−3)についてのみ説明する。
まず、緩衝性水溶液40をビーカー等の容器に所定の量注入し、更にその中に複数の貴金属ナノ粒子10を添加する(A−1)。(A−1)は非加熱にて実施してよい。
貴金属ナノ粒子10の大きさは、光の照射により局在プラズモンを誘起可能な大きさであれば特に制限されず、個々の粒径は光の波長の半分以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
検出液1中の貴金属ナノ粒子10の濃度は、感度の良い検出が可能であれば特に制限されないが、検出したい非検出物質の濃度(定量領域)に応じて、適宜、0.1pmol/l以上10000 pmol/l以下の範囲に調整することが好ましい。
次に、抗体20(A)を貴金属ナノ粒子10の表面10sに化学結合により固定する(A−2)。貴金属ナノ粒子10と結合する側の官能基は、貴金属ナノ粒子10の金属と結合可能な官能基であれば特に制限されず、チオール基以外では、ジスルフィド基、メルカプト基等が挙げられる。抗体20(A)として断片化抗体を用いることにより、断片化抗体の持つチオール基及びジスルフィド基により容易に結合させることができる。これらの官能基の固定方法としては、特に制限されず既存の技術を利用することができる。
次に、抗体20(A)が固定された貴金属ナノ粒子10の表面10sに、疎水性部31と親水性部32とを有する両親媒性のSAM30を、疎水性部31側の基端30aが金ナノ粒子10の表面10sに固定されて、標識Aが緩衝性水溶液40中に分散されてなる検出液1aを得る(A−3)。また、同様の工程にて、標識Bが緩衝性水溶液40中に分散されてなる検出液1bを得る。
<反応液調製工程>
次に、図4Bに示されるように、緩衝性水溶液S中に被検出物質(抗原)Rが分散されてなる被測定試料2を準備し、準備した2種(以上)の検出液(1a,1b)を混合して反応液3を調製する(反応液調製工程)。
<反応工程>
次に、図4C左図に示されるように、得られた反応液3を、反応液3中の全てのプローブ20(A,B)の生体物質と被検出物質である抗原Rとを特異結合させる。反応条件は、抗原抗体反応の種類に応じて適宜好適な条件とする。このように2種の抗体で抗原をサンドイッチ法により検出することにより、貴金属ナノ粒子10が二量体となり、後工程の検出工程にて被検出物質(抗原)Rの有無を精度良く検出することができる。
<検出工程>
検出工程は、反応工程にて反応後の反応液3を用いて、二量体となった貴金属ナノ粒子標識の有無を検出することにより特異結合の有無を検出し、被測定試料2中の被検出物質Rの有無を検出する工程である。
検出工程における検出方法は特に制限されないが、図4C右図には、被検出物質(抗原)Rの有無の検出を、ゲル電気泳動により実施する態様について、ゲル電気泳動装置100の概略構成と、バンドDの検出例を示す上面模式図を示してある。
ゲル電気泳動装置100は、容器内にゲルマトリックス102が設置されてなり、検出する試料を分注するウェル101と電圧印加手段とを備えている。
本実施形態では、反応工程にて反応後の反応液3をウェル101に分注し、ウェル101側がマイナスとなるように電圧を印加して電気泳動を実施する。電圧印加の際の方向は被検出物質の帯電状態によって決定する。
電気泳動では、ゲルマトリックス中を被検出物質や標識等が移動する際、その分子量よって移動度が変化するため、重いもの、すなわち特異結合を形成しているものほど移動量が少なく手前側(ウェル側)となり、一本鎖はより遠くまで移動するため、一定時間電圧を印加した後に貴金属ナノ粒子10にプラズモンを誘起可能な波長の光を含む光を照射することにより、赤色に呈色したバンドDとなって特異結合(抗原抗体反応)の有無、すなわち、被検出物質(抗原)Rの有無を検出することができる。
バンドDにおける各バンドの同定は、バンドを切り出してTEM観察することにより実施することができる。図8は、後記実施例1及び比較例1,比較例2にて検出されたバンドの上面写真である。図示されるように、より移動度の大きかった下流のバンドでは特異結合が形成されていない1個の貴金属ナノ粒子10が観察され、上流側に行くにつれ、金ナノ粒子10が2個、3個と増えていき、抗原Rの有無を確認することができる。
ゲル電気泳動による検出は、比較的高濃度の検体が必要となるため、微量な検体の検出には、より高感度な検出方法により検出する必要がある。本発明者らは、図5に概略構成が示される光学異方性検出装置200を用い、2つの略等方性の貴金属ナノ粒子が抗原にそれぞれ特異結合して二量体を形成することにより出現する異方性を検出することによって抗原の有無を検出する方法により、高感度な検出が可能となることを見出した。
光学異方性検出装置200は、試料(混合溶液)3を設置する透明の試料台210と、レーザ230と、ビームスプリッター221と対物レンズ222とからなる照射受光光学系220と、λ/2板240と、P偏光とS偏光に分離する偏光ビームスプリッタ250と、各偏光をそれぞれ検出するフォトダイオード261,262と、検出信号を表示するオシロスコープ270とから構成されている。
具体的には、倒立顕微鏡(例えば、Nikon社製)等を用いて図5に示される検出装置を構成して測定を行う。まず、半導体レーザ230を対物レンズ222にて試料台210上の被測定試料2内に集光して微小スポットを形成し、微小スポットをブラウン運動により回転しながら単量体や二量体粒子が通過することにより生じる散乱光を対物レンズ222にて集光し、集光された光を偏光ビームスプリッタ250で直交する偏光成分に分離する。分離された散乱光をそれぞれフォトダイオード261,262にて受光してオシロスコープ270にその強度の時間トレースを表示させ、それを下記式(1)で表される偏光異方指数AIの時間トレースと照合することにより、試料内の貴金属ナノ粒子の光学異方性を定量化して特異結合(抗原)の有無を検出する。
AI=(Ix−Iy)/(Ix+Iy) ・・・ (1)
(Ixはx方向の散乱光強度,Iyはx方向に直交する散乱光強度,x方向は入射光の偏光方向である)
微小スポットを通過する際、単量体や二量体の粒子は充分な回数回転するので、光の偏光方向に対してあらゆる配置をとることができる。従って、偏光異方指数AIの最大値に着目し、該AI値を与える時間における各偏光強度及びその位相のずれから、二量体の有無、すなわち特異結合の有無を検出する。
実際の単量体と二量体に上記方法による各偏光強度の測定を実施し、偏光異方指数AIを計算した結果を図6に示す。
図6に示されるように、偏光異方指数AI=1.3を境に、単量体と二量体とを明確に区別することができる。
微量な検体の検出は、上記の方法以外に、蛍光相関分光法における蛍光の代わりに、貴金属ナノ粒子のプラズモン共鳴による強い散乱光を用いた光散乱相関分光法により、貴金属ナノ粒子の試料液中での回転運動の時定数から検出することも可能である。
光散乱相関分光法により得られた単量体及び二量体の自己相関関数を図7(左側は単量体(単体)、右側は二量体)に示す。二量体の回転拡散速度は単量体の約4倍程度であることが理論的に予測されており、図7に示される自己相関関数の減衰時間の差はその差を反映したものと考えられる。
更に、検出液1及び本発明のバイオセンシング方法は、工程(D)において、被検出物質Rの有無を、貴金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴波長シフトにより検出する態様にも好適である。
本発明のバイオセンシング方法は、上記本発明の検出液を用いてセンシングを行うものであるので、本発明の検出液と同様の効果を奏する。
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。本発明者は、生化学分析に用いる検出液としては、非特異的な凝集抑制効果及び特異結合の反応効率向上効果の双方の効果を安定して得られる必要があると考え、これらの効果について、検出液1の調製直後と24時間経過後(翌日)についての評価を実施した。
(実施例1)
直径40nmの金ナノコロイド溶液(田中貴金属製0.17pM金コロイド溶液)が貯留された反応容器を2つ用意した。また、1次抗体として抗hCGモノクローナルIgG抗体(Anti-hCG 5008 SP-5、Medix Biochemica社)を用い、上記したK.L.Broganらと同様にして、酢酸ナトリウム緩衝性水溶液中にてペプシンと、メルカプトメチルアミンにより断片化してIgGを断片化処理した後、末端基をチオール化し、金ナノコロイド溶液が貯留された反応容器内に50pMとなるように添加し、52℃の温度で約1時間反応させた。次にこの検出液及び測定試料の入った反応容器に、20-(11-メルカプトウンデカンイルオキシ)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサエイコサン酸 試薬(同仁化学社製)を50nMの濃度となるように添加し、52℃の温度で約3時間反応させて検出液1aを調製した。また、同様にして、2次抗体として抗hCGモノクローナルIgG抗体(Anti-Alpha subunit 6601 SPR-5、Medix Biochemica社)を用い、同様にして検出液1bを調製した。
次に、測定試料として抗原hCG(Human chorionic gonadotropin:女性ホルモンの一つ)を酢酸ナトリウム緩衝性水溶液中に分散させたものを用意し、測定試料と検出液1a及び検出液1bを混合し、室温にて8時間反応させて反応液とした。
(比較例1)
1次抗体及び2次抗体として、断片化しないままのIgGを用い、他の工程は実施例1と同様にして反応液を調製した。
(比較例2)
1次抗体及び2次抗体として、断片化しないままのIgGを用い、実施例1と同様の金ナノコロイド溶液中に添加し、52℃の温度で約1時間反応させ、金ナノコロイドの表面に抗体を物理吸着させた。次にこの検出液及び測定試料の入った反応容器に、1%ポリエチレングリコール+2%BSA(Bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)水溶液を加えて攪拌し検出液を調製した。以降の工程は実施例1と同様にして反応液を調製した。SAM試薬として、ウンデシルメルカプタン(英語名:Undecyl Mercaptan)を用いた以外は実施例1と同様にして反応液を調製した。
(評価)
実施例1、比較例1,2の各例の反応液について、アガロースゲル電気泳動装置に分注し、175Vの電圧にて15分間電気泳動を実施後に自然光にてそのバンドを観察した。その結果を図8に示す。
図8には、わかりやすくするために、各例の右列に●により金ナノ粒子の単量体のバンド位置、二量体のバンド位置を示してある。実施例1では、検出液調製(調液)当日、及び24時間経過後の翌日の両方とも、抗原無しにおいて二量体のバンドは検出されず、非特異結合は検出されなかった。また、抗原有りにおいても、両方とも二量体のバンドがはっきりと検出できたことが確認され、精度の高いセンシングを実施することができた。
一方、負電荷を有するSAMを配した比較例1では、検出液の調製当日及び翌日共に非特異結合を良好に抑制していることが確認された。一方、抗原がある場合においては、検出液調製当日は抗原の2量体について良好に検出されているが、翌日は検出されないという結果が得られた。比較例2では、抗原無しにおいても、複数のバンドが検出されており、非特異結合による凝集を生じており、精度の低いセンシングとなった。
以上のようにして、本発明の有効性が確認された。

Claims (11)

  1. 貴金属ナノ粒子を標識として、被測定試料中に含まれる、生体物質からなる被検出物質を検出するバイオセンシングに用いる検出液であって、
    前記被検出物質と特異結合する親水性の生体物質を含むプローブと、疎水性部と親水性部とを有する両親媒性の自己組織化単分子膜とが表面に固定された前記貴金属ナノ粒子が緩衝性水溶液に分散されてなり、
    前記自己組織化単分子膜は、前記粒子に固定されている側が前記疎水性部であり、且つ、
    前記親水性部の末端の官能基が正又は負のいずれか1種の電荷を有しており、
    前記プローブが前記表面に化学結合により固定されている検出液。
  2. 前記親水性部の末端の官能基の電荷と、前記親水性の生体物質の電荷が同種である請求項1に記載の検出液。
  3. 前記親水性部がポリエチレングリコール鎖である請求項1又は2いずれか一項記載の検出液。
  4. 前記親水性部が糖鎖である請求項1又は2いずれか一項記載の検出液。
  5. 前記生体物質が抗体である請求項1〜4いずれか一項記載の検出液。
  6. 前記生体物質が断片化された抗体である請求項1〜4いずれか一項記載の検出液。
  7. 前記化学結合が断片化された抗体の持つジスルフィド基又はチオール基の硫黄原子と前記表面の貴金属原子との結合である請求項1〜6いずれか一項記載の検出液。
  8. 貴金属ナノ粒子を標識として、被測定試料中に含まれる、生体物質からなる被検出物質を検出するバイオセンシングにおいて、
    前記特異結合が互いに異なり、且つ、前記官能基の電荷が同種である2種以上の前記請求項1〜7いずれか一項記載の検出液を用意する検出液準備工程と、
    前記被測定試料を含む緩衝性水溶液中に前記2種以上の検出液を混合して反応液を調製する反応液調製工程と、
    該反応液中の全ての前記プローブの生体物質と前記被検出物質とを特異結合させる反応工程と、
    該反応工程後の前記反応液を用いて、前記標識を検出することにより前記被測定試料中の前記特異結合した前記被検出物質の有無を検出する検出工程を有するバイオセンシング方法。
  9. 前記検出工程において、前記被検出物質の有無の検出を、ゲル電気泳動により実施する請求項8に記載のバイオセンシング方法。
  10. 前記検出工程において、前記被検出物質の有無を、散乱光の偏光異方指数により検出する請求項8に記載のバイオセンシング方法。
  11. 前記検出工程において、前記被検出物質の有無を、光散乱相関分光法 により検出する請求項8記載のバイオセンシング方法。
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