JPWO2015137330A1 - 多孔質膜および浄水器 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的はウイルス除去性能と透水性能を両立した多孔質膜を提供することにある。本発明に係る多孔質膜は、少なくとも一方の表面において孔の短径の平均値が10nm以上90nm以下であり、膜厚が60μm以上300μm以下であり、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能が8×109PFU/g以上である。

Description

本発明は、多孔質膜および浄水器に関する。
多孔質膜は、液体中の物質を孔の大きさによって分離する用途で使用され、例えば血液透析や血液ろ過などの医療用途、家庭用浄水器や浄水処理などの水処理用途、飲料品の除菌や果汁濃縮などの食品製造プロセスなど広い用途で用いられている。
なかでも、家庭用浄水器の分野においては、上下水道が完備されていない地域や発展途上国で、飲料用途とする水の中にウイルスや細菌が混入するリスクを回避するために、ウイルス除去性能を有するものが求められている。水道水に混入する可能性があり、健康被害を起こすおそれがあるウイルスとしては、ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスなどがある。なかでもノロウイルスはサイズが38nmと小さく、また感染力が強いため10〜100個のわずかな量でも人に感染するおそれがある。このようにウイルスは少量の混入でも食中毒などの健康被害を引き起こすため、浄水器には高い除去性能が要求される。
すなわち、家庭用浄水器用途において、ウイルスを極めて高い比率で除去できる多孔質膜が求められている。
多孔質膜を用いて不純物の除去を行う家庭用浄水器は従来から広く用いられているが、除去対象が水道水中に含まれる悪臭物質や細菌であり、濾材として活性炭および精密濾過膜を用いたものが主流となっている。しかしながら、活性炭はウイルスを吸着する性能が低く、精密濾過膜は直径100nm以上の細菌や鉄錆び等を除去の対象としており、大きさの小さいウイルスを除去できない。
ウイルスを除去するために多孔質膜の孔を小さくすると透水性能が低下し、大量の水を短時間で得る必要のある家庭用浄水器用途では大きな問題となっていた。浄水器に求められるウイルス除去性能と透水性能は、多孔質膜の表面の孔径の影響を大きく受け、孔径が小さいとウイルス除去性能が上がるが、透水性能が下がるという相反する関係にある。
孔径を小さくせずにウイルス除去性能を向上する方法としては、多孔質膜にウイルスを吸着させる方法がある。ウイルスの多くは疎水性であり、中性領域で陰性荷電を帯びており、多孔質膜との疎水性相互作用や、陽性荷電を帯びた多孔質膜との静電相互作用によって、ウイルスを吸着させることができる。
ウイルスを吸着によって除去する浄水器が特許文献1に開示されている。また、陽性荷電を有する多孔質膜が特許文献2および3に開示されている。
特開平5−84476号公報 特開2006−341087号公報 特開2010−53108号公報
特許文献1に開示された多孔質膜ではウイルスの除去性能は十分でなかった。
特許文献2では、陽性荷電物質を含有させている。しかしながらウイルスの除去に適した膜構造に関する記載がない。また、多孔質膜のウイルスの吸着能について開示されていない。
特許文献3は、陽性荷電を有する限外濾過膜を開示する。しかしながらウイルスの除去に適した膜構造および吸着性能に関する記載がない。
そして、ウイルス除去性能と透水性能を両立した多孔質膜はこれまで存在しなかった。
本発明の課題は、ウイルス除去性能と透水性能を両立した多孔質膜を提供することにある。
本発明は上記課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(1)少なくとも一方の表面において孔の短径の平均値が10nm〜90nmであり、膜厚が60μm〜300μmであり、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能が8×10PFU/g以上である多孔質膜。
(2)少なくとも一方の表面において孔の短径の平均値が10nm〜90nmであり、膜厚が60μm〜300μmであり、少なくとも一方の表面にバクテリオファージMS2水溶液を接触させて流したときの吸着能が1×1010PFU/m以上である多孔質膜。
そして上記発明の好ましい態様として以下の構成がある。
(3)膜厚方向断面の孔径が膜厚方向に変化している前記いずれかの多孔質膜。
(4)膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が0.5μm〜40μmの厚みで存在している前記いずれかの多孔質膜。
(5)表面の孔の短径の平均値が小さい側の表面付近に、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が厚み0.5μm〜20μmで存在し、前記層が孔径130nm以下、100nm以上の孔を有している前記いずれかの多孔質膜。
(6)表面の孔の短径の平均値が大きい側の表面付近に、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が厚み0.5μm〜20μmで存在し、前記層が孔径130nm以下、100nm以上の孔を有している前記いずれかの多孔質膜。
(7)膜厚方向断面に孔径130nm以下の層がある側の表面にバクテリオファージMS2水溶液を接触させて流したときの吸着能が1×1010PFU/m以上である前記いずれかの多孔質膜。
(8)膜厚方向断面の孔径が一方の表面から他方の表面にむかって増加し、少なくとも1つの極大部を通過後、孔径が減少している前記いずれかの多孔質膜。
(9)多孔質膜全体の荷電密度が−30μeq/g以上である前記いずれかの多孔質膜。
(10)親水性物質を含有し、多孔質膜全体の親水性物質の含有量が2質量%以下である前記いずれかの多孔質膜。
(11)多孔質膜の基材である第1の疎水性物質とは異なる第2の疎水性物質を含有し、多孔質膜全体の第2の疎水性物質の含有量が、第1の疎水性物質および第2の疎水性物質の合計に対し0.1質量%以上である前記いずれかの多孔質膜。
(12)2つの表面のうち少なくとも一方のpH2.5のゼータ電位が20mV以上である前記いずれかの多孔質膜。
(13)親水性物質を含有し、2つの表面のうち少なくとも一方の表面での親水性物質の含有量が18質量%以下である前記いずれかの多孔質膜。
(14)多孔質膜の基材は第1の疎水性物質および第1の疎水性物質とは異なる第2の疎水性物質を含有し、2つの表面ののうち少なくとも一方での第2の疎水性物質の含有量が5質量%以上である前記いずれかの多孔質膜。
(15)中空糸膜である前記いずれかの多孔質膜。
(16)内表面の孔の短径の平均値が外表面の孔の短径の平均値よりも小さい、前記多孔質膜。
(17)表面の孔の短径の平均値の大きい側から小さい側にむけて液体が流れる前記いずれかの多孔質膜。
(18)ウイルス除去用途である前記いずれかの多孔質膜。
(19)ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスのうちの
いずれか1つまたは複数の除去用途である前記いずれかの多孔質膜。
そして、
(20)前記いずれかの多孔質膜を内蔵する浄水器である。
本発明によれば、以下に説明するとおり、ウイルス除去性能と透水性能を両立した多孔質膜を提供することができる。例えば、家庭用浄水器に内蔵することで、コンパクト性に優れ、水中の病原ウイルスを除去した安全な水を短時間で大量に得ることができる。
本発明者らは、透水性能とウイルス除去性能を高くするには、多孔質膜へのウイルスの吸着と多孔質膜の膜内部における深層ろ過とを組み合わせることが重要であることを知り、さらに、ウイルスに対する吸着能が高く、深層ろ過のおこる部分の厚みが大きい多孔質膜が必要であることを認識した。コンパクト性に優れた製品形態で多孔質膜を用いるには、単位容積中の膜面積を大きくすることが可能な中空糸形状であることが好適である。
本発明では、多孔質膜の少なくとも一方の表面において、孔の短径の平均値が10〜90nmであり、膜厚が60μm〜300μmであり、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能が8×10PFU/g以上である多孔質膜が、ウイルス除去性能と透水性能が高いことを見出した。
多孔質膜の孔による除去には、多孔質膜の表面の孔によって物質を篩い分ける表面ろ過と、多孔質膜の膜内部の孔によって粒子状物質を捕捉する深層ろ過がある。ウイルス除去用の多孔質膜はウイルス除去率99.99%以上という高率での除去が要求されるため、孔径のばらつきや欠点による除去率低下の影響を受けにくい深層ろ過が適している。多孔質膜によってウイルスが篩い分けられる際に、ウイルスは狭い流路を通るため、多孔質膜との接触機会が多くなるため吸着されやすい。深層ろ過は、表面のみでのろ過に比較して、ろ過を行う流路が長いため、結果としてウイルスの吸着による除去効果が高くなる。多孔質膜の膜厚が厚いほど、膜内部の孔が増え、ウイルス除去性能が高くなる。一方で、膜厚が厚くなると水の流路抵抗が大きくなるため、透水性能が低下する。そのため、多孔質膜の膜厚は60μm以上であることが必要であり、80μm以上が好ましい。一方で、多孔質膜の膜厚は300μm以下であることが必要であり、200μm以下が好ましい。
多孔質膜は、膜厚方向に孔径がほとんど変化しないいわゆる対称膜(以下単に「対称膜」という。)と膜厚方向に孔径が変化するいわゆる非対称膜(以下単に「非対称膜」という。)とがある。膜厚方向に孔径が変化する構造では、ウイルスの除去に寄与する孔径が小さい領域と、水の透過抵抗が低く多孔質膜の強度に寄与する孔径の大きな領域とがそれぞれあることで、ウイルス除去性能と透水性能とが高い多孔質膜が得られる。そのため、多孔質膜は膜厚方向において、孔径が変化する非対称膜であることが好ましい。非対称膜の製膜方法としては相分離法が好ましく、貧溶媒で相分離を誘起する手法や、比較的溶解性の低い溶媒を用いた高温製膜原液の冷却により相分離を誘起する手法等で非対称膜を形成させることができる。本発明のような、コンパクトな形状の製品用途の中空糸膜を得るには、貧溶媒で相分離を誘起する手法での製膜が好ましい。
貧溶媒で相分離を誘起する手法による中空糸膜の製膜は二重環ノズルを用い、二重環ノズルの外周スリット部に製膜原液を、内周部である中心パイプに例えば水のような貧溶媒を含む液体を注入する。製膜原液は、内周部の注入液体とともに二重環ノズルから吐出され、所定区間を空走した後、下流側に設けられている凝固浴に導かれる。凝固浴によって中空形状に凝固した中空糸膜は水洗され、その後巻き取られる。
この紡糸過程で、製膜原液と貧溶媒の接触によって相分離が進行する。貧溶媒が接触する表面から膜厚方向に連続的に孔径が変化するため、多孔質膜の表面の孔径が最も小さい多孔質膜となり、表面部分が密で膜内部に向かうにつれて疎となる、表面部分が緻密な構造をとり、この表面付近の層を緻密層という。緻密層の構造がウイルス除去性能に大きく影響を及ぼす。貧溶媒濃度によって孔の成長速度が異なるため、孔径や緻密層の調整は貧溶媒濃度を変更することが効果的である。濃度を調整し凝固性を上げることで、表面の孔径と緻密層の厚みを制御することができる。
ここで、乾式部の通過時間が長すぎると、凝固液と接触しない側の孔径が大きく成長してしまうため、凝固浴に速やかに浸漬することで、孔径の小さい緻密な構造を形成することができる。孔の成長は表面から膜内部に順次進行するため、膜厚を大きくすることも、緻密な構造を形成するために有効である。このとき、乾式部では、空気中の水分が相分離を誘起する。すなわち、乾式部の通過時間、膜厚、乾式部の温湿度を調整することで、凝固性の注入液体が接触しない側の表面の孔の短径と緻密層の厚みとを制御することができる。
製膜原液の組成や温度などの相分離の進行に影響する条件にもよるが、乾式部の通過時間は0.02秒以上が好ましく、0.14秒以上がより好ましい。一方で、0.40秒以下が好ましく、0.35秒以下がより好ましい。
凝固浴の貧溶媒の濃度によっても膜構造は変化するが、製膜原液の固化の観点から、貧溶媒濃度は全ての溶媒中20質量%以上が好ましく、50%質量以上がより好ましい。
貧溶媒とは、製膜温度において、主として多孔質膜の構造体となるポリマーを溶解しない溶媒である。貧溶媒は、ポリマーの種類に応じて適宜選択すればよいが、水が好適に用いられる。良溶媒は、ポリマーの種類に応じて適宜選択すればよいが、多孔質膜の構造体となるポリマーがポリスルホン系ポリマーの場合、N,N−ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。
製膜原液の粘度を上げると、相分離による孔の成長が抑制されて緻密層が厚くなる。製膜原液の粘度を上げるためには、多孔質膜の主たる構造体となるポリマーおよび/または必要に応じて添加される親水性ポリマーを増量することや、増粘剤を添加することや、原液吐出温度を下げることがあげられる。製膜原液の粘度は、吐出温度で0.5Pa・s以上が好ましく、1.0Pa・s以上がより好ましい。また、20Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以下がより好ましい。
膜厚方向断面の孔径は、孔を観察し、画像処理などにより孔の面積を算出し、その面積の円に換算したときの直径を孔径とする。多孔質膜の中央層の平均孔径が、少なくともどちらか一方の表層の平均孔径の1.5倍以上になることが好ましく、2倍以上がより好ましい。中央層とは、膜厚中心から内表面、外表面それぞれの方向に1μmとった計2μmの厚みの層とし、表層とは、外表面または内表面から膜内部方向に2μmの層とする。
ウイルスを孔の大きさによって分離するためには、多孔質膜の表面の孔の短径をウイルスの大きさより小さくする必要があり、それによりウイルス除去性能が高くなる。一方で、透水性能の観点では、表面の孔の短径が大きいほうが有利である。深層ろ過では、ウイルスの吸着による除去効果もあり、表面の孔の短径がウイルスの直径より大きくても、多孔質膜は充分にウイルスを除去でき、そのことによってウイルス除去性能と透水性能の両立が可能となる。多孔質膜の少なくとも一方の表面において、孔の短径の平均値が10nm以上であることが必要であり、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。一方で、90nm以下であることが必要であり、70nm以下であることが好ましい。
多孔質膜の表面の孔の長径が長いことで水の流路が増えて透水性が高くなる。そのため、多孔質膜の表面の孔の長径が短径の2.5倍以上であることが好ましい。
本発明では、多孔質膜のウイルスに対する吸着性能および除去性能評価に、バクテリオファージMS2を用いた。バクテリオファージMS2は直径がおよそ27nmと、ウイルスの中でも特にサイズが小さい部類である。また、疎水性で陰性荷電を帯びており、病原ウイルスと荷電状態が近い。このことから、バクテリオファージMS2に対する除去性能を指標にすることで、多くの病原ウイルスに対する多孔質膜の除去性能はバクテリオファージMS2以上の性能を有するということができる。
多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能を高くする方法としては、多孔質膜の荷電を高くすることで多孔質膜とウイルスの静電相互作用を強くする方法、多孔質膜全体の疎水性を高くして多孔質膜とウイルスの疎水性相互作用を強くする方法がある。
多孔質膜の荷電を高くし、陽性荷電とすることで、陰性荷電に帯電しているウイルスとの静電相互作用が強くなる。また、多孔質膜の荷電を中性に近づけることでも、陰性荷電同士の反発が弱まり、疎水性相互作用による吸着が促進される。一方で、陽性荷電が大きすぎると多孔質膜へのウイルス以外の共存物質の吸着が多く、吸着サイトが共存物質によって埋まってしまうためウイルスの吸着能が低下する。そのため、ウイルス除去性能を高くするには、多孔質膜の荷電密度が−30μeq/g以上であることが好ましく、0μeq/g以上であることがより好ましい。一方で、多孔質膜の荷電密度は40μeq/g以下が好ましい。
多孔質膜の荷電を高くする方法としては、多孔質膜の基材に陽性荷電の高分子を用いる方法、陽性荷電ユニットを有する共重合体を用いる方法、多孔質膜の製膜時に製膜原液に陽性荷電物質を添加する方法、多孔質膜に陽性荷電物質の溶液を接触させて吸着させる方法、多孔質膜に陽性荷電物質の溶液を接触させた後に化学固定する方法がある。なかでも、多孔質膜に陽性荷電物質を化学固定する方法が、多孔質膜の構造形成に影響を与えず、多孔質膜への通水時に陽性荷電物質の溶出による性能低下の懸念がないことから好ましい。
ここで陽性荷電物質を定義するのであれば、pH4.5において、荷電密度が1meq/g以上の物質とすることが好ましい。なかでも、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基、などの官能基を有している物質が好適に用いられる。また、2種類以上の陽性荷電物質を併用して用いてもよい。
陽性荷電物質に高分子を用いると、多孔質膜を形成する材料に高分子の主鎖の一部のみが結合することで、多孔質膜の単位面積あたり、より多くの陽性荷電基を導入することができ、荷電密度を上げることができる。そのため、陽性荷電物質としては高分子を用いることが好ましい。その分子量は1,000以上が好ましく、一方で80,0000以下が好ましい。特に限定しないが、具体例としてはポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリリジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドンとの共重合体などがあげられる。
陽性荷電物質の大きさと多孔質膜の孔径の関係によって、多孔質膜中で陽性荷電が付与される箇所が変化する。多孔質膜の両方の表面の孔径よりも大きい陽性荷電物質を用いることで、多孔質膜の表面のみに陽性荷電物質を付与することができる。多孔質膜の両方の表面の孔よりも小さい陽性荷電物質を用いることで多孔質膜の膜内部を含めた膜全体に陽性荷電物質を付与することができる。多孔質膜の片方の表面の孔よりも大きく、一方の表面の孔よりも小さい陽性荷電物質を用いることで、ひとつの表面付近に多く陽性荷電物質を付与することができる。陽性荷電物質の拡散速度を変化させることで、膜厚方向で段階的に陽性荷電物質を付与する量を変化させることができる。また、多孔質膜をモジュールにして、多孔質膜の片方の表面の孔よりも大きく、片方の表面の孔よりも小さい陽性荷電物質を、多孔質膜の表面の短径平均値の大きい側から小さい側に向けてろ過しつつ流すことで、表面の短径の平均値の小さい側に近い膜内部に陽性荷電物質を高濃度に付与することができる。逆に、表面の孔よりも大きい陽性荷電物質を多孔質膜にろ過をかけて流すことで、多孔質膜の表面に陽性荷電物質を濃縮して付与することができる。
先述のとおり、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能を高くする方法として、多孔質膜全体の疎水性を高くして多孔質膜とウイルスの疎水性相互作用を強くする方法があり、多孔質膜全体の疎水性を高くする方法としては、疎水性の高い素材を用いることや、親水性物質の含有量を低くすること、あるいは疎水性物質を添加することなどがあげられる。多孔質膜は基材となる疎水性物質のみでは、水を透過しにくいため、透水性を上げる目的で親水性物質を含有させることが好ましい。親水性物質の含有量を低くすることで多孔質膜の疎水性が高くなり、ウイルス除去性能を高くすることができる、一方で、親水性物質の含有量を高くすることで多孔質膜の疎水性が低くなり、水の透過抵抗が下がって透水性が向上する。そのため、多孔質膜全体における親水性物質の含有率は2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。一方で、多孔質膜全体の親水性物質の含有率は0.1質量%以上が好ましい。
多孔質膜に親水性物質を含有させる方法としては、多孔質膜の基材である疎水性物質との共重合体を用いる方法、多孔質膜の製膜時に製膜原液に親水性物質を添加する方法、多孔質膜に親水性物質の溶液を接触させて吸着させる方法、多孔質膜に親水性物質の溶液と接触させた後に化学固定する方法がある。なかでも、多孔質膜の製膜時に製膜原液に親水性物質を添加する方法が、多孔質膜の構造形成時に造孔剤として働き、多孔質膜の孔が増える効果があることから好ましい。
親水性物質の含有量は、その種類によって測定方法を選定する必要があるが、元素分析などの方法で測定することができる。
本発明でいうところの親水性物質は、親水性のユニットのみから形成されるホモポリマーでも、親水性のユニットを一部有するコポリマーでもよい。親水性のユニットのみからなる高分子が水に易溶な繰り返し単位であり、20℃の純水に対して10g/100g以上の溶解度を有するものが好ましい。
特に限定しないが、親水性物質の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、およびそれらの誘導体などがあげられる。また、他のモノマーと共重合していても良い。
多孔質膜の素材や溶媒との親和性によって適宜選択すればよいが、多孔質膜の素材がポリスルホン系高分子の場合、相溶性が高いことからポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
多孔質膜に、基材である第1の疎水性物質とは異なる第2の疎水性物質を添加する方法がある。ウイルスの吸着能を高める目的で、親水性物質の含有量を減らすには限界があるが、第2の疎水性物質を含有させることで、多孔質膜の疎水性を高めることができる。
多孔質膜の基材となる基本的な疎水性物質(別に第2の疎水性物質を含有させる場合には第1の疎水性物質)としては、具体的に、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。この中でも、ポリスルホン系高分子は、多孔質膜を形成させやすいことから、好適に用いられる。ポリスルホン系高分子とは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつものであり、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホンなどが挙げられる。例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 2015137330
多孔質膜に第2の疎水性物質を含有させる方法としては、多孔質膜の製膜時に製膜原液に第2の疎水性物質を添加する方法、多孔質膜に第2の疎水性物質の溶液を接触させて吸着させる方法、多孔質膜に親水性物質の溶液と接触させた後に化学固定する方法がある。
本発明でいうところの第2の疎水性物質は、疎水性のユニットのみから形成されるホモポリマーでも、疎水性のユニットを一部有するコポリマーでもよい。疎水性のユニットのみからなる高分子が水に難溶な物質であり、20℃の純水に対して10g/100gより低い溶解度を有するものが好ましい。
第2の疎水性物質を含ませるとき、その含有量は、第1の疎水性物質および第2の疎水性物質の合計の0.1%以上であることが好ましい。第2の疎水性物質の含有量は、その種類によって測定方法を選定する必要があるが、元素分析などの方法で測定することができる。
第2の疎水性物質としては第1の疎水性物質として使用したものと異なるものが使用されるが、第1の疎水性物質で説明した高分子が使用できる。その他にポリスルホン、ポリスチレン、酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレートおよびそれらの誘導体などがあげられる。また、他のモノマーと共重合していても良い。
多孔質膜の膜内部でおこるウイルスの深層ろ過による除去は、膜内部のなかでもウイルスの篩い分けが可能な孔径の層で大部分おこる。病原ウイルスであるノロウイルスの直径である38nmの物の除去に寄与可能な最大の孔径はおよそ130nmであり、膜厚方向深部にもある孔径130nm以下の層で大部分ウイルスの深層ろ過がおこる。そのため、孔径130nm以下の層にウイルス吸着能があることで、ウイルス除去性能を上げることができる。多孔質膜の膜厚方向断面を観察した場合、表面の孔径が小さく、膜内部に向けて徐々に孔径が大きくなる構造においては、130nm以下の層は表面付近に存在する。そのため、多孔質膜のバクテリオファージMS2に対する吸着能を、表面付近に有することが、より好ましい。具体的には、少なくとも一方の表面にバクテリオファージMS2水溶液を接触させて流したときの吸着能が1×1010PFU/m以上であることが必要であり、2×1010PFU/m以上であることが好ましい。家庭用浄水器のような小型化が必要な製品形態では、膜面積を大きくとることができるため、外表面から内表面方向にろ過することが好ましく、また外表面にウイルスを接触させて流したときの吸着能を高くすることが好ましい。
ウイルス除去性能を安定して高くするには、先述の膜表面付近での吸着性能に加え、膜内部の吸着性能との組み合わせ、つまりは膜全体で所定以上のウイルス吸着能を有することで、より効果を発揮する。具体的には、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能が8×10PFU/g以上であることが必要であり、1×1010PFU/g以上であることが好ましい。
また、上記吸着能のある表面が、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層がある側の表面であることがより好ましい。多孔質膜のバクテリオファージMS2の水溶液を一方の表面にのみ接触するように濾過をかけずに流すが、実質的には拡散によって膜内にバクテリオファージMS2が入り込むため、表面および深層濾過に寄与する表面近傍の層の吸着能を測定することになる。
多孔質膜表面の荷電状態を示すゼータ電位を高くすることで、多孔質膜表面のバクテリオファージMS2に対する吸着能を高くすることができる。一方で、ゼータ電位が高すぎると多孔質膜へのウイルス以外の共存物質の吸着が多くなる。吸着サイトに共存物質が吸着することでウイルスの吸着能が低下する。2つの表面のいずれか一方または両方のpH2.5のゼータ電位が20mV以上であることが好ましく、25mV以上がより好ましい。一方で、2つの表面のいずれか一方または両方のpH2.5のゼータ電位は50mV以下が好ましく、35mV以下がより好ましい。
ゼータ電位の測定をpH2.5で行うことで、多孔質膜表面に存在する陰性荷電基の影響を打ち消し、陽性荷電基量の影響を受けやすくなる。ゼータ電位は多孔質膜表面の平均的な荷電を示すが、多孔質膜表面には陰性荷電基と陽性荷電が混在しており、局所的に存在する陽性荷電基とウイルスが相互作用をおこす。そのため、多孔質膜表面のウイルス吸着能を把握するには、より陽性荷電基量の影響を受けやすいpH2.5のゼータ電位値が必要となる。
多孔質膜表面の親水性物質の含有量を低くすることで多孔質膜表面のバクテリオファージMS2に対する吸着能を高くすることができる。2つの表面のいずれか一方または両方の親水性物質の含有量が18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下がより好ましい。
表面の親水性物質の含有量は、その種類によって測定方法を選定する必要があるが、XPS法などの方法で測定することができる。
多孔質膜表面の第2の疎水性物質の含有量を高くすることで多孔質膜表面のバクテリオファージMS2に対する吸着能を高くすることができる。2つの表面のうち少なくとも一方の表面において、第2の疎水性物質の含有量が、表面の基材中5質量%以上であることが好ましく、7%以上がより好ましい。
表面の第2の疎水性物質の含有量は、その種類によって測定方法を選定する必要があるが、XPS法などの方法で測定することができる。
膜厚方向断面において深層ろ過のおこる孔径130nm以下の層を厚くすることでウイルス除去性能が高くなる。一方で、孔径130nm以下の層を薄くすることで、水の透過抵抗が下がるために透水性能が高くなる。そのため、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が0.5μm以上あることが好ましく、1μm以上がより好ましい。一方で、膜厚方向断面の孔径130nm以下の層が40μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
ウイルス除去性能を高めるためには、膜厚方向断面における孔径130nm以下の層が、膜の両面の表面付近にあることが好ましい。すなわち、膜方向断面の一方の表面から他方の表面に向かって孔径が大きくなり、少なくとも1つの極大孔径をもつ部分を通過後、孔径が小さくなる構造が好ましい。
孔の短径の平均値が小さい側の表面付近で、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層の厚みは厚さ0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましい。一方で、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。前記層は孔径130nm以下、100nm以上の孔を有していることが好ましい。
孔の短径の平均値が大きい側の表面付近で、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層の厚みは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましい。一方で、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。前記層は孔径130nm以下、100nm以上の孔を有していることが好ましい。
多孔質膜の両面の表面近傍の孔径と厚みをそれぞれ制御する方法としては、両面から起こる相分離による孔形成を制御して、一体構造で孔径が連続的に変化した膜構造とする方法と、異なる材料または異なる組成の層を2層以上形成して複合膜とする方法がある。膜構造が一体構造の多孔質膜は、複合膜に比べて層の界面といった構造が弱い部分がなく、高い水圧でも構造が破壊されにくい。そのため、膜構造は一体構造であることが好ましい。
ウイルスの深層ろ過では膜内部にウイルスが入りこむことで、ろ過と同時に、膜へのウイルス吸着がおこるため、ウイルスを含む水を表面の孔の短径の平均値が大きい側から表面の孔の短径の平均値が小さい側に向けて流すことが好ましい。
多孔質膜の空孔率が小さいと、多孔質膜とウイルスとの接触面積が増えることで多孔質膜へのウイルスの吸着がおこりやすくなり、ウイルス除去性能が高くなる。一方で、空孔率を高くすることで、水の透過抵抗が小さくなるため透水性能が高くなる。そのため、多孔質膜の空孔率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。一方で、空孔率は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。
多孔質膜の空孔率は、寸法で表される見かけの体積に対する、空孔部の体積の百分率の値である。多孔質膜の寸法から計算されるみかけの体積ならびに多孔質膜の質量と密度とから計算される多孔質膜の材料の真の体積から計算できる。
多孔質膜の表面の開孔率が低いと、表面におけるウイルスとの接触面積が大きくなるため、ウイルスの吸着がおこりやすくなり、ウイルス除去性能が高くなる。一方で、表面の開孔率が高いと水の流路が増えるため透水性能が高くなる。そのため、表面の孔の短径の平均値が小さい側の表面において、表面開孔率が0.5%以上であることが好ましく1%以上がより好ましい。一方で、表面開孔率は15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
開孔率を高くするには、製膜原液に添加する親水性物質の量を増やすことが有効である。
表面の開孔率は多孔質膜表面をSEMで観察した像から測定できる。10000倍で観察した像を画像処理して構造体部分を明輝度、孔の部分を暗輝度として二値化処理し、その測定面積に対する暗輝度の面積の百分率を算出して開孔率とする。
膜断面の孔径が膜厚方向に変化する多孔質膜とする場合には、ウイルス除去性能への影響が大きい孔の短径の平均値の小さい側の表面の構造を制御しやすくするため、中空糸膜の内表面の孔の短径の平均値が外表面の孔の短径の平均値よりも小さいことが好ましい。
多孔質膜が中空糸膜の場合は、耐圧性は膜厚と内径の比に相関を示し、膜厚/内径が大きいと、耐圧性が高くなる。内径および膜厚を小さくすると、多孔質膜が組み込まれた浄水器を小型にすることができ、耐圧性も向上する。しかしながら、内径を小さくしすぎると、透水性が下がるため、小型製品において所望する透水量を得ることが難しくなる。浄水器を小型にし、かつウイルス除去性能、透水性、耐圧性を上げるには、中空糸膜の膜厚/内径は0.35以上が好ましい。一方で、中空糸膜の膜厚/内径は1.00以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。
本発明は、ウイルス除去性能と透水性能が高い多孔質膜であるため、ウイルスを除去する用途に好適に用いられる。なかでも、ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスのうちのいずれか1つまたは複数を除去する目的で使用することに好適に用いられる。また、本発明の多孔質膜は浄水器に内蔵され、短時間で大量の水を処理する用途に好適に用いられる。
本発明の多孔質膜は、膜厚方向断面の孔径が膜厚方向に変化する場合は、多孔質膜の表面の孔の短径の平均値の大きい側から小さい側にむけて液体を流すことが、より多くのウイルスが膜内部に入り込み、ウイルス吸着能が有効に発揮されるため、好ましい。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(1)透水性能の測定
多孔質膜が中空糸膜の場合の測定例を示す。両端に還流液用の孔を備えた内径5mmのハウジングに中空糸膜有効長が17cmとなるように充填し、外表面の膜面積が0.004mとなるように糸本数を調整した。膜面積は下記の式で算出される。
膜面積(m)=外径(μm)×π×17(cm)×糸本数×0.00000001
両端をコニシ(株)製エポキシ樹脂系化学反応形接着剤“クイックメンダー”(商品名)でポッティングし、カットして開口することによって、中空糸膜モジュールを作製する。次いで、該モジュールの中空糸膜の内側および外側を蒸留水にて、100ml/minで1時間洗浄した。中空糸膜外側に水圧13kPaをかけ、内側へ流出してくる単位時間当たりの濾過量を測定した。透水性能(UFR)は(1)式で算出した。
UFR(ml/hr/Pa/m)=Q/(P×T×A) (1)
ここで、Q:濾過量(mL)、T:流出時間(hr)、 P:圧力(Pa)、A:膜面積(m)である。
(2)ウイルス除去性能の測定
多孔質膜が中空糸膜である場合の測定例を示す。(1)の評価を終えたモジュールを使用して評価した。
ウイルス原液は、大きさが約27nmのバクテリオファージMS2(Bacteriophage MS−2 ATCC 15597−B1)を約1.0×10PFU/mlの濃度を含有する様に蒸留水中で調製した。ここで蒸留水は純水製造装置“オートスチル”(登録商標)(ヤマト科学製)の蒸留水を121℃で20分間高圧蒸気滅菌したものを用いた。温度約20℃、400kPaの条件でウイルス原液を外表面から中空部に向けて送液し、全ろ過した。濾過液の採取は、透過液初流150mlを破棄した後、測定用の透過液を5ml採取し、0、100、10000、100000倍に蒸留水で希釈した。Overlay agar assay、Standard Method 9211−D(APHA、1998、Standard methods for the examination of water and wastewater, 18th ed.)の方法に基づいて、希釈した透過液1mlを検定用シャーレに接種し、プラークを計数することによってバクテリオファージMS2の濃度を求めた。プラークとは、ウイルスが感染して死滅した細菌の集団で、点状の溶菌斑として計数することができる。ウイルス除去性能をウイルス対数除去率(LRV)で表した。例えばLRVが2であるとは−log10x=2すなわち0.01のことであり、残存濃度が100分の1(除去率99%)であることを意味する。また透過液中にプラークがまったく計測されない場合、LRV7.0とした。
(3)多孔質膜全体としてのウイルス吸着能測定
バクテリオファージMS−2濃度1×10PFU/mlの水溶液40mlに多孔質膜0.05gを浸漬し、20℃150rpmで30min振とうした。吸着実験前後の液をサンプリングした。サンプルを0、100、10000、100000倍に蒸留水で希釈した。Overlay agar assay、Standard Method 9211−D(APHA、1998、Standard methods for the examination of water and wastewater, 18th ed.)の方法に基づいて、希釈した透過液1mlを検定用シャーレに接種し、プラークを計数することによってバクテリオファージMS2の濃度を求めた。プラークとは、ウイルスが感染して死滅した細菌の集団で、点状の溶菌斑として計数することができる。ウイルス吸着能を(2)式で算出した。
吸着能(PFU/g)=(Cp−Ca)×40ml/m (2)
ここで、Cp:吸着前の濃度(PFU/ml)、Ca:吸着後の濃度(PFU/ml)、m:多孔質膜質量(g)である。
(4)一方の多孔質膜表面にウイルスを接触させて流したときのウイルス吸着能測定
多孔質膜が中空糸膜である場合の測定例を示す。
両端に還流液用の孔を備えた内径10mmのハウジングに中空糸膜有効長が10cmとなるように充填し、外表面の膜面積が0.03mとなるように糸本数を調整した。膜面積は下記の式で算出される。
膜面積(m)=外径(μm)×π×10(cm)×糸本数×0.00000001
両端をコニシ(株)製エポキシ樹脂系化学反応形接着剤“クイックメンダー”(商品名)でポッティングし、カットして開口することによって、中空糸膜モジュールを作製する。
次いで、バクテリオファージMS2濃度1×10PFU/mlの水溶液40mlを片側の還流液用の孔からもう一方の還流液用の孔方向に、中空糸膜の外表面にのみ接触するように濾過をかけずに、20℃、2ml/minで30min循環させた。循環前後のサンプルを0、100、10,000、100,000倍に蒸留水で希釈した。Overlay agar assay、Standard Method 9211−D(APHA、1998、Standard methods for the examination of water and wastewater, 18th ed.)の方法に基づいて、希釈したサンプル1mlを検定用シャーレに接種し、プラークを計数することによってバクテリオファージMS2の濃度を求めた。プラークとは、ウイルスが感染して死滅した細菌の集団で、点状の溶菌斑として計数することができる。ウイルス吸着能を(3)式で算出した。
吸着能(PFU/m)=(Cp−Ca)×40ml/A (3)
ここで、Cp:循環前の濃度(PFU/ml)、Ca:循環後の濃度(PFU/ml)、A:多孔質膜外表面の膜面積(m)である。
(5)表面の孔径の測定
多孔質膜の両側の表面をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)(S−5500、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)にて50,000倍で観察し、像をコンピュータに取り込んだ。取り込んだ画像のサイズは640ピクセル×480ピクセルだった。多孔質膜が中空糸膜で、その内表面を観察する際には、中空糸膜を半円状に切断して観察を行った。
SEM像を1μm×1μmの範囲に切り取り、画像処理ソフトにて画像解析を行った。二値化処理によって構造体部分を明輝度に、それ以外の部分が暗輝度となるように閾値を決め、明輝度部分を白、暗輝度部分を黒とした画像を得た。画像内のコントラストの差によって、構造体部分とそれ以外の部分を分けられない場合、コントラストが同じ部分で画像を切り分けてそれぞれ二値化処理をした後に、元の通りに繋ぎ合わせて一枚の画像に戻した。画像にはノイズが含まれ、連続したピクセル数が5個以下の暗輝度部分については、ノイズと孔の区別がつかないため、構造体として明輝度部分として扱った。ノイズを消す方法としては、連続したピクセル数が5以下の暗輝度部分をピクセル数の計測時に除外した。楕円状の暗輝度部分の短径を孔の短径値、暗輝度部分の長径を孔の長径値とした。1μm×1μmの範囲の全ての孔について計測した。計測した孔の総数が50個以上になるまで、1μm×1μmの範囲の計測を繰り返して、データを追加した。孔が深さ方向に二重に観察された場合は、奥の方の孔の露出部で測定した。孔の一部が計測範囲から外れる場合は、その孔を除外した。平均値と標準偏差を算出した。
(6)表面の開孔率の測定
多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡SEM(S−5500、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)にて50,000倍で観察し、像をコンピュータに取り込んだ。取り込んだ画像のサイズは640ピクセル×480ピクセルだった。SEM像を6μm×6μmの範囲に切り取り、画像処理ソフトにて画像解析を行った。二値化処理によって構造体部分を明輝度に、それ以外の部分が暗輝度となるように閾値を決め、明輝度部分を白、暗輝度部分を黒とした画像を得た。画像内のコントラストの差によって、構造体部分とそれ以外の部分を分けられない場合、コントラストが同じ部分で画像を切り分けてそれぞれ二値化処理をした後に、元の通りに繋ぎ合わせて一枚の画像に戻した。画像にはノイズが含まれ、連続したピクセル数が5個以下の暗輝度部分については、ノイズと孔の区別がつかないため、構造体として明輝度部分として扱った。ノイズを消す方法としては、連続したピクセル数が5以下の暗輝度部分をピクセル数の計測時に除外した。暗輝度部分のピクセル数を計測し、解析画像の総ピクセル数に対する百分率を算出して開孔率とした。10枚の画像で同じ測定を行い、平均値を算出した。
(7)孔径130nm以下の層の厚みの測定
多孔質膜を水に5分間つけて濡らした後に液体窒素で凍結して速やかに折り、断面の観察試料とした。多孔質膜の断面をSEM(S−5500、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)にて10000倍で観察し、像をコンピュータに取り込んだ。取り込んだ画像のサイズは640ピクセル×480ピクセルだった。SEMで観察して断面の孔が閉塞している場合は試料作成をやりなおした。孔の閉塞は、切断処理時に応力方向に多孔質膜が変形しておこる場合がある。SEM像を多孔質膜の表面と平行に6μm、膜厚方向に任意の長さとなるように切り取り、画像処理ソフトにて画像解析を行った。解析範囲の膜方向の長さは、孔径130nm以下の層がおさまる長さであればよい。測定倍率の観察視野で緻密層がおさまらない場合は、孔径130nm以下の層がおさまるように2枚以上のSEM像を合成した。二値化処理によって構造体部分を明輝度に、それ以外の部分が暗輝度となるように閾値を決め、明輝度部分を白、暗輝度部分を黒とした画像を得た。画像内のコントラストの差によって、構造体部分とそれ以外の部分を分けられない場合、コントラストが同じ部分で画像を切り分けてそれぞれ二値化処理をした後に、元の通りに繋ぎ合わせて一枚の画像に戻した。または、構造体部分以外を黒で塗りつぶして画像解析をした。孔が深さ方向に二重に観察された場合は、浅い方の孔で測定した。孔の一部が計測範囲から外れる場合は、その孔を除外した。画像にはノイズが含まれ、連続したピクセル数が5個以下の暗輝度部分については、ノイズと孔の区別がつかないため、構造体として明輝度部分として扱った。ノイズを消す方法としては、連続したピクセル数が5以下の暗輝度部分をピクセル数の計測時に除外した。画像内で既知の長さを示しているスケールバーのピクセル数を計測し、1ピクセル数あたりの長さを算出した。孔のピクセル数を計測し、1ピクセル当たりの長さを2乗することで、孔面積を求めた。(4)式で、孔面積に相当する円の直径を算出し、孔径とした。孔径130nmとなる孔面積は1.3×10(nm)である。
孔径=(孔面積/円周率)0.5×2 (4) 。
孔径が130nmを超える孔を特定し、多孔質膜の表面から垂直方向に130nmを超える孔がない層の厚みを測定した。緻密層が多孔質膜の表面に接していない場合は、多孔質膜の表面に対して垂線を引き、その垂線上で孔径130nmを超える孔が存在しない区間の距離のうち、最も長い距離を測定した。また、緻密層が多孔質膜の表面に接している場合は、多孔質膜の表面から最も近い孔径130nmを超える孔と多孔質膜表面との距離となる。同じ画像の中で5箇所測定を行った。10枚の画像で同じ測定を行い、計50の測定データの平均値を算出した。
(8)多孔質膜全体の空孔率の測定
多孔質膜が中空糸膜である場合の測定例を示す。
多孔質膜を長手方向10cmに切断し、質量m(g)を測定した。多孔質膜の素材の密度a(g/ml)、内周半径r(cm)、外周半径r(cm)から、(5)式によって空孔率P(%)を算出した。試料10個について測定を行い、平均値を求めた。
P=(1−((m/a)÷((r ×π−r ×π)×10)))×100 (5)。
(9)多孔質膜全体の荷電量測定
中空糸膜の乾燥質量を測定した。このとき、約0.05gを量りとった。荷電量が多く、滴定できない場合は適宜、質量を小さくすればよい。秤量した中空糸膜を0.1Nの水酸化ナトリウム20mlで洗浄した後、蒸留水で洗浄した。洗浄後の蒸留水に1%フェノールフタレイン溶液を滴下して着色しなくなるまで蒸留水での洗浄をくりかえした。洗浄後の中空糸膜を恒量になるまで凍結乾燥法で乾燥した。乾燥後の中空糸膜を、容積50mlの遠沈管に入れた。0.001Nの塩酸20mlを、中空糸膜が塩酸に浸かりきるように加えた。30℃、1分間に150回の速度で24時間振盪した。振盪後の液の上清10mlを0.001Nの水酸化ナトリウムで滴定した。なお、指示薬として1%フェノールフタレイン溶液を2滴添加した。この滴定結果より陽性荷電密度を求めた。また、水酸化ナトリウムの滴下量が2μmol未満で滴定が完了した場合は、中空糸膜の質量を減らし、再度測定を行った。滴定値が10mlを超えると結果が負の値となる場合は、陰性荷電を帯びているため、塩酸と水酸化ナトリウムを逆にした評価を行った。すなわち、0.001Nの水酸化ナトリウム水溶液20mlを、中空糸膜が水酸化ナトリウム水溶液に浸かりきるように加え、0℃、1分間に150回の速度で24時間振盪し、振盪後の液の上清10mlを0.001Nの塩酸で滴定した。
多孔質膜全体の荷電密度は、(6)式より算出した。
E=(V×N−V×N)×2/m (6)
ここで、E:荷電密度(μeq/g)、V:塩酸量(ml)、N:塩酸の規定度(μeq/ml)、V:滴定値(ml)、N:水酸化ナトリウムの規定度(μeq/ml)、m:中空糸膜乾燥質量(g)である。
(10)中空糸膜内表面のゼータ電位
中空糸膜50本を束ねて内径15mmの円筒状のセルに充填し、ポット材で筒の端部に固定した。このときのポット材は日本ポリウレタン工業社製ポリウレタン:KC256,KN503を用いた。ポット材で固定した後、1日後に端面をカットして、長さ4.5cmから5cm程度のセルとした。ゼータ電位の測定はAnton Peer社製のゼータ電位測定装置EKA型で測定した。本測定では、測定液の比導電率と、セルに測定液を流したときのセル両端の圧力差と電位差を測定することによって、計算よりゼータ電位を算出した。そのときの測定液は0.001Nの塩化カリウム、測定液容量は500ml、測定pHは2.5とした。測定前に、0.001Nの塩化カリウム水溶液をポットに一晩入れてから測定した。
(実施例1)
ポリスルホン(ソルベイ社製“ユーデル” (登録商標)ポリスルホンP−3500)20質量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K30:重量平均分子量4万)11質量部をN,N’−ジメチルアセトアミド68質量部と水1質量部の混合溶媒に加え、90℃で6時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を二重管円筒型口金の環状スリットから吐出した。環状スリットの外径は0.59mm、内径は0.23mmとした。注入液としてN,N’−ジメチルアセトアミド75質量部および水25質量部からなる溶液を内側の管より吐出した。口金は30℃に保温した。吐出された製膜原液は、露点26℃(温度30℃、湿度80%)の乾式部80mmを0.16秒で通過した後、40℃の水浴(凝固浴)に導き固化させた。そのまま50℃で水洗し、30m/minでカセに巻き取り、糸径が内径180μm、膜厚95μmの中空糸膜状の多孔質膜を得た。長手方向に20cmに切断し、85℃で5時間熱水洗浄を行った後に100℃で2時間熱処理を施した。熱処理後の得られた多孔質膜を分子量1万のポリエチレンイミンの1質量%水溶液に浸漬し、27kGyのγ線を照射した。85℃で5時間熱水洗浄を行った後に100℃で2時間熱処理した。
透水性能測定、ウイルス除去性能測定、多孔質膜全体としてのウイルス吸着能測定、一方の多孔質膜表面にウイルスを接触させて流したときのウイルス吸着能測定、表面の孔径の測定、表面の開孔率の測定、孔径130nm以下の層の厚みの測定、多孔質膜全体の空孔率の測定、多孔質膜全体の荷電量測定、中空糸膜内表面のゼータ電位測定を行い、結果を表1および表2に示した。
多孔質膜全体の荷電量およびゼータ電位が高く、ウイルス吸着能が高く、膜厚が厚く、内表面の孔の短径が小さいため、ウイルス除去性能と透水性能が高い多孔質膜を得られた。
(実施例2)
注入液としてN,N’−ジメチルアセトアミド71質量部および水29質量部からなる溶液を用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
多孔質膜全体の荷電量が高く、ウイルス吸着能が高く、膜厚が厚く、内表面の孔の短径が小さいため、ウイルス除去性能と透水性能が高い多孔質膜を得られた。ただし、実施例2の多孔質膜の内表面の短径の平均値が実施例1の多孔質膜のそれと比較し小さいものであったため、実施例2の多孔質膜の透水性能は、実施例1の多孔質膜のそれと比べるとやや劣るものであった。
(実施例3)
γ線照射をする際に、浸漬する溶液を分子量1万のポリエチレンイミンの0.1質量%水溶液にした以外は、実施例2と同様の実験を行った。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
多孔質膜全体の荷電量が高く、ウイルス吸着能が高く、膜厚が厚く、内表面の孔の短径が小さいため、ウイルス除去性能と透水性能が高い多孔質膜を得られた。ただし、実施例3の多孔質膜の内表面の短径の平均値が、実施例1の多孔質膜のそれと比較し小さいものであったため、実施例3の多孔質膜の透水性能は、実施例1の多孔質膜のそれと比べるとやや劣るものであった。
(比較例1)
ポリエチレンイミンでの処理をしない以外は実施例1と同様の実験を行った。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
多孔質膜全体の荷電量およびゼータ電位が低く、ウイルス吸着能が低いため、ウイルス除去性能の低い多孔質膜だった。
(比較例2)
ポリエチレンイミンでの処理を行わない以外は実施例2と同様の実験を行った。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
多孔質膜全体の荷電量が低く、ウイルス吸着能が低いため、ウイルス除去性能の低い多孔質膜だった。
(比較例3)
γ線照射をする際に、浸漬する溶液を分子量600のポリエチレンイミンの1質量%水溶液にした以外は、実施例2と同様の実験を行った。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
処理に用いたポリエチレンイミンの分子量が小さいことで、多孔質膜全体の荷電量が低く、ウイルス吸着能が低く、ウイルス除去性能の低い多孔質膜だった。
(比較例4)
ポリスルホン(ソルベイ社製“ユーデル” (登録商標)ポリスルホンP−3500)15質量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K90:重量平均分子量120万)7質量部をN,N’−ジメチルアセトアミド75質量部と水3質量部の混合溶媒に加え、90℃で6時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を二重管円筒型口金の環状スリットから吐出した。環状スリットの外径は1mm、内径は0.7mmとした。注入液としてポリビニルピロリドン(BASF社製K30:重量平均分子量4万)30質量部、N,N’−ジメチルアセトアミド55質量部、グリセリン15質量部からなる溶液を内側の管より吐出した。口金は40℃に保温した。吐出された製膜原液は、露点26℃(温度30℃、湿度80%)の乾式部80mmを0.16秒で通過した後、40℃の水浴(凝固浴)に導き固化させた後に、50℃で水洗し、30m/minでカセに巻き取った。長手方向に20cmに切断し、85℃で5時間熱水洗浄を行った後に100℃で2時間熱処理した。熱処理後の糸径が内径300μm、膜厚90μmの中空糸膜状の多孔質膜が得られた。
得られた多孔質膜を分子量1万のポリエチレンイミンの1質量%水溶液に浸漬し、27kGyのγ線を照射した。85℃で5時間熱水洗浄を行った後に100℃で2時間熱処理した。
そして実施例1と同じ項目の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
多孔質膜全体の荷電量およびゼータ電位が高く、ウイルス吸着能が高いが、内表面および外表面の孔の短径が大きく、130nm以下の層の厚みも薄いため、ウイルス除去性能の低い多孔質膜であった。
Figure 2015137330
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Claims (20)

  1. 少なくとも一方の表面において孔の短径の平均値が10nm〜90nmであり、膜厚が60μm〜300μmであり、多孔質膜全体のバクテリオファージMS2に対する吸着能が8×10PFU/g以上である多孔質膜。
  2. 少なくとも一方の表面において孔の短径の平均値が10nm〜90nmであり、膜厚が60μm〜300μmであり、少なくとも一方の表面にバクテリオファージMS2水溶液を接触させて流したときの吸着能が1×1010PFU/m以上である多孔質膜。
  3. 膜厚方向断面の孔径が膜厚方向に変化している請求項1または2に記載の多孔質膜。
  4. 膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が0.5μm〜40μmの厚みで存在している請求項3に記載の多孔質膜。
  5. 表面の孔の短径の平均値が小さい側の表面付近に、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が厚み0.5μm〜20μmで存在し、前記層が孔径100nm以上130nm以下の孔を有している請求項3または4に記載の多孔質膜。
  6. 表面の孔の短径の平均値が大きい側の表面付近に、膜厚方向断面に孔径130nm以下の層が厚み0.5μm〜20μmで存在し、前記層が孔径100nm以上130nm以下の孔を有している請求項3から5のいずれかに記載の多孔質膜。
  7. 膜厚方向断面に孔径130nm以下の層がある側の表面にバクテリオファージMS2水溶液を接触させて流したときの吸着能が1×1010PFU/m以上である請求項5から6のいずれかに記載の多孔質膜。
  8. 膜厚方向断面の孔径が一方の表面から他方の表面に向かって増加し、少なくとも1つの極大部を通過後、孔径が減少している請求項3から7のいずれかに記載の多孔質膜。
  9. 多孔質膜全体の荷電密度が−30μeq/g以上である請求項1から8のいずれかに記載の多孔質膜。
  10. 親水性物質を含有し、多孔質膜全体の親水性物質の含有量が2質量%以下である請求項1から9のいずれかに記載の多孔質膜。
  11. 多孔質膜の基材である第1の疎水性物質とは異なる第2の疎水性物質を含有し、多孔質膜全体の第2の疎水性物質の含有量が、第1の疎水性物質および第2の疎水性物質の合計に対し0.1質量%以上である請求項1から10のいずれかに記載の多孔質膜。
  12. 2つの表面のうち少なくとも一方のpH2.5のゼータ電位が20mV以上である請求項1から8のいずれかに記載の多孔質膜。
  13. 親水性物質を含有し、2つの表面のうち少なくとも一方の表面での親水性物質の含有量が18質量%以下である請求項1から12のいずれかに記載の多孔質膜。
  14. 多孔質膜の基材は第1の疎水性物質および第1の疎水性物質とは異なる第2の疎水性物質を含有し、2つの表面のうち少なくとも一方での第2の疎水性物質の含有量が5質量%以上である請求項1から13のいずれかに記載の多孔質膜。
  15. 中空糸膜である請求項1から14のいずれかに記載の多孔質膜。
  16. 内表面の孔の短径の平均値が外表面の孔の短径の平均値よりも小さい請求項15に記載の多孔質膜。
  17. 表面の孔の短径の平均値の大きい側から小さい側にむけて液体が流れる請求項3から16のいずれかに記載の多孔質膜。
  18. ウイルス除去用途である請求項1から17のいずれかに記載の多孔質膜。
  19. ノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスのうちのいずれか1つまたは複数の除去用途である請求項1から18のいずれかに記載の多孔質膜。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載の多孔質膜を内蔵する浄水器。
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