JPWO2015098764A1 - 抗血栓性医療材料、および該医療材料を利用した医療用具 - Google Patents

抗血栓性医療材料、および該医療材料を利用した医療用具 Download PDF

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Abstract

繰り返し単位(A)(例えば、N−ビニルアセトアミドに由来する)と、繰り返し単位(B)(例えば、アクリル酸メトキシエチルに由来する)とを有する共重合体を含む、医療材料に関する。本発明によると、血栓が形成されやすい過酷な使用条件においても、抗血栓性に優れた医療用具が提供されうる。【選択図】なし

Description

本発明は、抗血栓性医療用具、および該医療材料を利用した医療用具に関する。より具体的には、特定の繰り返し単位を有する共重合体を含む医療材料、および該医療材料を利用した医療用具に関する。
近年、各種の高分子材料を利用した医療材料の検討が進められており、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工肺用膜、人工血管、癒着防止膜、人工皮膚等への利用が期待されている。これらにおいては、生体にとって異物である合成高分子材料を生体組織や血液等の体液と接触させて使用することとなる。したがって、医療材料は、生体適合性を有することを要求される。医療材料に要求される生体適合性はその目的や使用方法によって異なるが、血液と接する材料として使用する医療材料には、血液凝固系の抑制、血小板の粘着・活性化の抑制、補体系の活性化の抑制という特性(抗血栓性)が求められる。
通常、医療用具への抗血栓性の付与は、医療用具を構成する基材を抗血栓性材料で被覆する方法や、基材の表面に抗血栓性材料を固定する方法により行われる。
例えば、特開平4−152952号公報には、血小板の粘着・活性化の抑制、補体系の活性化の抑制効果、生体内組織との親和性といった生体適合性を同時に満たす合成高分子を表面に有する生体内組織や血液と接して使用される人工臓器用膜または医療用具が開示されている。
人工血管、人工臓器等の長期間に渡って血液と接触する医療用具では、血液の凝固を防ぐ抗血栓性が非常に重要である。しかしながら、血液と接触する面に段差(段差面)を有する医療用具では、段差面のある部分(段差部)で血流が滞るため、段差部周辺に血栓が形成されやすい傾向にある。例えば、医療用具の血液流路では、医療用具に用いるチューブの接合部などの絞り部周辺で血流が滞りやすく、血栓が比較的形成されやすい。
特開平4−152952号公報に開示の発明では、血小板の粘着・活性化の抑制という点において良好な結果を示している。しかしながら、例えば、上記のように血栓が比較的形成されやすい過酷な条件では、特開平4−152952号公報に開示の発明では抗血栓性が十分ではない場合があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、特に、血栓が形成されやすい過酷な条件における抗血栓性が向上された、医療材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の繰り返し単位を有する共重合体を含む医療材料によって上記課題が解決されることを見出し、本願発明の完成に至った。本発明は、以下の内容をその骨子とする。
(1)下記式(1):
ただし、式(1)中、R11は水素原子またはメチル基である;で示される繰り返し単位(A)と、下記式(2):
ただし、式(2)中、R21は水素原子またはメチル基であり、R22は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R23は炭素数1〜4のアルキル基である;で示される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含む、医療材料。
(2) 前記共重合体の全構成単位中、前記繰り返し単位(A)が2.5〜17.0モル%である、(1)に記載の医療材料。
(3) 前記式(1)中、R11が水素原子である、(1)または(2)に記載の医療材料。
(4) 前記共重合体が、2.5〜17.0モル%の前記繰り返し単位(A)、および83.0〜97.5モル%の前記繰り返し単位(B)(前記繰り返し単位(A)、および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)で構成される、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の医療材料。
(5) 基材と、前記基材表面に、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の医療材料を含むコート層と、を有する医療用具。
図1は、実施例において使用された、両端をコネクターで接続したチューブ(段差チューブ)である。図1中、円で囲った部分は、チューブ1と、チューブ2との接合部を示す。 図2は、図1におけるチューブ1とチューブ2との接合部における長軸方向の断面を、模式的に表した拡大図である。 図3は、実施例2において製造された重合体(2)を含む医療材料を適用した段差チューブについての、抗血栓性試験直後の接合部の拡大写真である。 図4は、比較例1において製造された比較重合体(1)を含む医療材料を適用した段差チューブについての、抗血栓性試験直後の接合部の拡大写真である。 図5は、実施例3において製造された重合体(3)を含む抗血栓性材料を適用した血液循環モジュールについての、血液循環試験直後の写真である。 図6は、比較例1において製造された比較重合体(1)を含む抗血栓性材料を適用した血液循環モジュールについての、血液循環試験直後の写真である。
本発明は、特定の繰り返し単位を有する共重合体を含む医療材料、および該医療材料を利用した医療用具に関する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明に係る医療材料は、下記式(1)で示される繰り返し単位(A)と、下記式(2)で示される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含む。
式(1):
式(1)中、R11は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。R11が水素原子であることにより、抗血栓性が特に優れた医療材料が提供される。
式(2):
式(2)中、R21は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
式(2)中、R22は、炭素数1〜4の環状、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性の向上効果を考慮すると、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基またはエチレン基であることが特に好ましい。
式(2)中、R23は、炭素数1〜4の環状、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性の向上効果を考慮すると、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
[共重合体]
本発明に係る医療材料が含む共重合体は、繰り返し単位(A)を形成するモノマー(以下、「モノマーa」とも称する。)と、繰り返し単位(B)を形成するモノマー(以下、「モノマーb」とも称する。)との重合反応によって得ることができる。
モノマーaとしては、N−ビニルアセトアミド(NVA)、および/またはN−イソプロペニルアセトアミド等が挙げられるが、好ましくはN−ビニルアセトアミド(NVA)である。これらのモノマーを1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。N−ビニルアセトアミド(NVA)を用いることで、医療材料に高い抗血栓性を与えることができる。
モノマーbとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸エトキシブチル、アクリル酸プロポキシメチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸プロポキシプロピル、アクリル酸プロポキシブチル、アクリル酸ブトキシメチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブトキシプロピル、アクリル酸ブトキシブチル、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸プロポキシメチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸プロポキシプロピル、メタクリル酸プロポキシブチル、メタクリル酸ブトキシメチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸ブトキシプロピル、メタクリル酸ブトキシブチル、が挙げられる。モノマーbとしては、好ましくはアクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル(MEA)、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチルであり、入手が容易であるという観点から、より好ましくはアクリル酸メトキシエチル(MEA)である。これらのモノマーを1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。
本発明に係る医療材料が含む共重合体において、全構成単位中の繰り返し単位(A)や繰り返し単位(B)の割合は任意に設定できるが、共重合体の全構成単位(100モル%)中、繰り返し単位(A)が例えば1.0〜40.0モル%含まれ、好ましくは繰り返し単位(A)が2.5〜17.0モル%であり、より好ましくは3.0〜15.5モル%である。共重合体の全構成単位中、繰り返し単位(A)が2.5モル%以上であることにより、血栓が形成されやすい過酷な条件下においても高い抗血栓性を備えた医療材料が提供される。繰り返し単位(A)が17.0モル%以下であることにより、医療用具に適切に医療材料をコーティングでき、かつ、医療用具へ適用した医療材料が基材から剥離して血液へ混入することを防止することができる。共重合体の全構成単位中、繰り返し単位(B)は、例えば60.0〜99.0モル%含まれ、好ましくは83.0〜97.5モル%含まれ、より好ましくは84.5〜97.0モル%含まれる。
本発明に係る医療材料が含む共重合体は、抗血栓性に優れる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、このメカニズムは以下のように考えている。すなわち、構成単位(B)のみで形成される重合体に比べ、構成単位(A)を含む共重合体は親水性が高く、このような適度な親水性を備えた共重合体を含む医療材料を医療用具に適用することにより、生体適合性が高まり、血栓が形成されやすい条件で使用される場合においても、血栓の形成が抑制されるのではないかと考えられる。
したがって、本発明によれば、特に、血栓が形成されやすい過酷な条件にて使用される場合おいても、優れた抗血栓性を示す医療材料が提供される。
別の実施形態では、本発明の医療材料は、モノマーa、モノマーb、および、これらと共重合可能な他のモノマー(以下、単に「他のモノマー」とも称する。)との共重合体を任意に含む。モノマーaおよびモノマーbと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノブチルアクリレート、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、カルボキシベタインメタクリレート、エチレン、プロピレン等がある。
共重合体の全構成単位中、他のモノマーに由来する繰り返し単位の割合は、例えば0モル%を超えて、39.0モル%以下であり、好ましくは0モル%を超えて、14.5モル%以下である。
共重合体における繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、または他のモノマーに由来する繰り返し単位の割合は、重合の際に用いるモノマーの割合を変更することで、任意に調整できる。
本発明の一実施形態では、共重合体は繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)で構成される。すなわち、本発明の一実施形態では、共重合体は、2.5〜17.0モル%の前記繰り返し単位(A)、および83.0〜97.5モル%の前記繰り返し単位(B)(前記繰り返し単位(A)、および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)で構成される。
本発明の別の実施形態では、共重合体は、3.0〜15.5モル%の前記繰り返し単位(A)、および84.5〜97.0モル%の前記繰り返し単位(B)(前記繰り返し単位(A)、および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)で構成される。
共重合体の末端は特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。共重合体の構造も特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
共重合体の重量平均分子量は好ましくは10,000〜1,000,000である。上記範囲に含まれる場合には溶解性の点から好ましい。共重合体の重量平均分子量は、コート層の被覆のしやすさの点から、より好ましくは50,000〜500,000である。本発明において、「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。
本発明に係る医療材料が含む共重合体の製造方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。本発明に係る医療材料が含む共重合体の製造方法として、放射線や紫外線によるプラズマ重合などを採用し、共重合体を含むコート層を基材表面に形成しても良い。
モノマーの重合方法は、通常、上記繰り返し単位(A)に対応するモノマーa(例えば、N−ビニルアセトアミド(NVA))の一種または二種以上と、上記繰り返し単位(B)に対応する上記モノマーb(例えば、アクリル酸メトキシエチル(MEA))の一種または二種以上と、必要であれば他のモノマーとを重合溶媒中で重合開始剤と共に撹拌・加熱することにより共重合させる方法が使用される。
重合温度は、分子量の制御の点から、30℃〜100℃とするのが好ましい。重合反応は通常30分〜24時間行われる。
重合溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;などの水性溶媒であることが好ましく、特に好ましくはメタノール、エタノール、またはプロパノールである。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
重合溶媒中のモノマー濃度(固形分濃度)は、反応溶液全体に対して、通常10〜90重量%であり、好ましくは15〜80重量%である。なお、重合溶媒に対するモノマー濃度は、モノマーa、およびモノマーb、ならびに任意に含まれるこれらと共重合可能な他のモノマー(以下、「モノマーa、およびモノマーb、ならびに任意に含まれるこれらと共重合可能な他のモノマー」を、「重合モノマー」とも称する。)の総重量の濃度を指す。
重合モノマーを添加した重合溶媒は、重合開始剤の添加前に、脱気処理を行ってもよい。脱気処理は、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスにて、重合モノマーを添加した重合溶媒を0.5〜5時間程度バブリングすればよい。脱気処理の際は、重合モノマーを添加した重合溶媒を30℃〜100℃程度に加温しても良い。
共重合体の製造には、従来公知の重合開始剤を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等の酸化剤に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等が使用できる。
重合開始剤の配合量は、共重合体の製造に用いる全モノマー(1モル)に対して、例えば0.0001〜1モルとなる量である。
さらに、必要に応じて、連鎖移動剤、重合速度調整剤、界面活性剤、およびその他の添加剤を、重合の際に適宜使用してもよい。
重合反応を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等で行うこともできる。また、重合反応中は、反応液を攪拌しても良い。
重合後の共重合体は、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することができる。
精製後の共重合体は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、または加熱乾燥等、任意の方法によって乾燥することもできるが、重合体の物性に与える影響が小さいという観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
得られた共重合体における繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、または他のモノマーに由来する繰り返し単位の割合は、NMR法や、赤外線スペクトル解析等により確認すればよい。例えば、繰り返し単位(A)、および繰り返し単位(B)で構成される共重合体の場合、H−NMR測定における積分比によって共重合体における、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との割合を解析できる。また、H−NMRの測定において、ピークが重なる場合は、13C−NMRを用いて算出することができる。
得られた共重合体に含まれる、未反応の重合モノマーは、共重合体全体に対して0.01重量%以下であることが好ましい。未反応の重合モノマーは少ないほど好ましいので、下限は特段制限されないが、例えば0重量%である。残留モノマーの含量は、例えば高速液体クロマトグラフィーなど、当業者に知られた方法により測定できる。
本発明における医療材料は、得られた共重合体からなる形態で用いても良く、ゲル状、溶液状等に加工して用いることもできる。例えば、共重合体を溶媒に溶解させたコーティング剤の形態で、医療材料として用いることもできる。
コーティング剤の形態で用いる場合、用いる溶媒としては共重合体を溶解できるものであれば特に制限されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン、ベンゼン等の非プロトン供与性の有機溶媒が例示できる。上記溶媒は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。混合溶媒としては、水−アルコール系溶媒が好ましく、特に、水−メタノール混合溶媒が好ましい。
コーティング剤に含まれる共重合体の量は、任意に設定でき、共重合体を飽和量まで溶解させた溶液として用いることもできるが、例えば、コーティング剤全体に対して0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。
コーティング剤は、共重合体と上記溶媒とによって構成されても良いが、任意に、架橋剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等、他の成分を含んでも良い。架橋剤を含むことにより、共重合体がより強固に基材表面へ固定化されうる。
[医療用具]
本発明の一実施形態では、上記医療材料を用いた医療用具が提供される。すなわち、本発明の一実施形態は、基材と、前記基材表面に、上記医療材料を含むコート層と、を有する医療用具が提供される。
本発明に係る医療用具としては、例えば、体内埋入型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、カテーテル、ガイドワイヤー等を例示できる。具体的には、血管や管腔内へ挿入若しくは置換される人工血管、人工気管、ステント人工皮膚、人工心膜等の埋入型医療器具;人工心臓システム、人工肺システム、人工心肺システム、人工腎臓システム、人工肝臓システム、免疫調節システム等の人工臓器システム;留置針、IVHカテーテル、薬液投与用カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーター若しくはイントロデューサー等の血管内に挿入若しくは留置されるカテーテル;、または、これらのカテーテル用のガイドワイヤー、スタイレット等;胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用(ED)チューブ、尿道カテーテル、導尿カテーテル、バルーンカテーテル、気管内吸引カテーテルをはじめとする各種の吸引カテーテルや排液カテーテル等の血管以外の生体組織に挿入若しくは留置されるカテーテル類;が例示できる。特に、大量の血液と接する人工肺システム、または人工心肺システムとして好適に使用される。
(基材)
本発明の医療用具は、上記の医療材料を基材表面に有する。基材の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや変性ポリオレフィン;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン(PVDC);ポリカーボネート;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等の各種高分子材料、SUS等の金属、セラミック、カーボン、およびこれらの複合材料等が例示できる。
基材の形状は医療用具の用途等に応じて適宜選択され、例えば、チューブ状、シート状、ロッド状等の形状をとりうる。基材の形態は、上記のような材料を単独で用いた成型体に限定されず、ブレンド成型物、アロイ化成型物、多層化成形物などでも使用可能である。基材は単層であっても、積層されていてもよい。この際、基材が積層されている場合には、各層の基材は同じものであっても、異なるものであってもよい。ただし、溶媒で基材を膨潤させて共重合体を強固に固定化したい場合、少なくとも基材表面に存在させる材料としては、上記高分子材料が溶媒により良好に膨潤し得るため好ましい。
本発明において、「基材表面」とは、生体組織や血液等の体液と対する基材面である。共重合体を有するコート層が基材表面に形成されることにより、基材表面の抗血栓性が向上する。本発明に係る医療用具においては、生体組織や血液等の体液と対する基材面に共重合体を有するコート層が形成されていればよいが、コート層がその他の面にも形成されることを妨げるものではない。
コート層の基材表面への安定性を高めるため、基材表面にコート層を形成する前に、基材を表面処理しても良い。基材の表面処理の方法としては、例えば、活性エネルギー線(電子線、紫外線、X線等)を照射する方法、アーク放電やコロナ放電、グロー放電等のプラズマ放電を利用する方法、高電界を印加する方法、極性液体(水等)を介した超音波振動を作用させる方法、オゾンガスにより処理する方法等が挙げられる。
(コート層)
本発明に係る医療用具においては、上記医療材料を含むコート層が、基材表面に形成される。
基材表面へのコート層の形成は、上記医療材料を含む塗布液(例えば、上記のコーティング剤)を塗布することによって基材表面を被覆する、または、上述のように、重合モノマーを含む重合溶媒を基材表面に適用してプラズマ重合を行っても良い。製造の容易さの観点から、上記医療材料を含む塗布液によって基材表面を被覆することにより、コート層を形成することが好ましい。なお、「被覆」とは、基材の表面全体がコート層により完全に覆われている形態のみならず、基材の表面の一部がコート層により覆われている形態、すなわち、基材表面の一部にコート層が付着した形態をも含むものとする。
医療材料を含む塗布液によって基材表面を被覆することにより、コート層を形成する場合、医療材料を含む塗布液の調製方法については、上述のコーディング剤の調製方法が適宜参酌される。
医療材料を含む塗布液を基材表面へ塗布する方法は公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、ディップコーティング、噴霧、スピンコーティング、滴下、ドクターブレード、刷毛塗り、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート等が挙げられる。
塗布液の厚さは医療用具の用途によって適宜調整すればよく、特に制限されるものではないが、例えば0.1μm〜1mmである。
共重合体を含む塗布液を塗布した基材表面を乾燥させることにより、基材表面にコート層が形成される。乾燥工程は、基材のガラス転移温度等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば15〜50℃である。乾燥工程における雰囲気は特に制限されず、大気中、または窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[実施例1:NVAとMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):1.5モル%)]
アクリル酸メトキシエチル(MEA)5g(38.4mmol)とN−ビニルアセトアミド(NVA)0.055g(0.6mmol)とをメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収した。なお、回収した共重合体の重量平均分子量は、195,000であった。
[実施例2:NVAとMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):3.3モル%)]
MEA 5g(38.4mmol)とNVA 0.11g(1.3mmol)とをメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収した。なお、回収した共重合体の重量平均分子量は、192,000であった。
[実施例3:NVAとMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):6.3モル%)]
MEA 5g(38.4mmol)とNVA 0.22g(2.6mmol)とをメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収した。なお、回収した共重合体の重量平均分子量は、188,000であった。
[実施例4:NVAとMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):15.0モル%)]
MEA 5g(38.4mmol)とNVA 0.58g(6.8mmol)とをメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収した。なお、回収した共重合体の重量平均分子量は、167,000であった。
[実施例5:NVAとMEAとの共重合体(繰り返し単位(A):19.7モル%)]
MEA 5g(38.4mmol)とNVA 0.80g(9.4mmol)とをメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した共重合体を回収した。なお、回収した共重合体の重量平均分子量は、148,000であった。
[比較例1:MEAの(単独)重合体(繰り返し単位(A):0モル%)]
MEA 5g(38.4mmol)をメタノール25.5gに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。
その後、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)0.006gをメタノール1mLに溶解した溶液を、重合モノマーを溶解したメタノール溶液に加え、50℃で5時間重合させた。重合液をジエチルエーテルに滴下し、析出した重合体を回収した。なお、回収した重合体の重量平均分子量は、130,000であった。
実施例または比較例で得られた、上記共重合体または上記重合体を、再沈殿法によって精製した。その後、これらの共重合体または重合体を減圧乾燥によって乾燥し、以下の試験に供した。
[試験例1.ポリマー(共重合体または重合体)の溶解性試験]
実施例または比較例で得られた、上記共重合体または上記重合体をそれぞれ0.1gずつ量り採り、それぞれ別のガラス製試験管に入れた。
上記試験管に生理食塩水を5g加えて撹拌し、ポリマーの溶解性を調べた。目視で観察したとき、ポリマーがガラス試験管に入れた時の形態を維持していた場合は、水に不溶であるとみなした。不溶成分がない、または若干濁っているが分散している場合は水に溶解しているとみなした。
表1の結果は、親水性の高い繰り返し単位(A)を含む共重合体であっても、共重合体の全構成単位中、前記繰り返し単位(A)が17.0モル%以下であれば生理食塩水へ溶解しないことを示している。
この結果より、共重合体の全構成単位中、前記繰り返し単位(A)が17.0モル%以下であれば、医療用具に適切に医療材料をコーティングでき、かつ、医療材料が基材から剥離して血液へ混入することをより有効に防止できることが分かる。
[試験例2.抗血栓性試験]
(コーティング剤の調製)
実施例または比較例で得られた、上記共重合体または上記重合体それぞれについて、0.5重量%のメタノール溶液を調製し、コーティング剤とした。
(医療用具の作製)
全長30cm×内径8mmの軟質塩化ビニルチューブ(チューブ1)の両端にそれぞれ、全長5cm×内径6mm×外径9mmの軟質塩化ビニルチューブ(チューブ2)の端部1cmを挿入し、段差チューブを作製した。
図1は、作製した段差チューブである。図1中、円で囲った部分は、チューブ1とチューブ2との接合部を示す。
図2は、図1におけるチューブ1とチューブ2との接合部を模式的に表した拡大図である。チューブ2の内径は、チューブ1の内径よりも細いため、段差面3が形成されている。段差チューブに血液を通液した場合、段差面3において非常に血栓が形成されやすい。
作製した段差チューブを基材として用い、上記のコーティング剤を段差チューブに通液し、基材表面へコーティング剤を塗布した。その後、段差チューブを室温(25℃)で乾燥し、医療材料を含むコート層を基材表面(段差チューブ内腔面)に形成した。
(抗血栓性試験)
血栓が形成されやすい過酷な条件における医療材料の抗血栓性を評価するため、コート層を形成した上記段差チューブを用いて、以下のような試験系を構築した。
すなわち、コート層を形成した上記段差チューブの内腔を、生理食塩水でヒト新鮮血を2倍に希釈した液(希釈血液)6mlで満たした。段差チューブの両端をコネクターで接続、円筒型回転装置に固定し、40rpmで2時間回転させた。その後、段差チューブから循環血液を除去し、チューブ1とチューブ2との接合部(段差面)への血栓付着状態を目視で観察した。ここで、新鮮血とは、全血輸血により健常人ドナーから採取した血液で、30分以内のものをいう。なお、新鮮血には抗凝固薬を添加していない。
図3は実施例2において製造された共重合体を、図4は比較例1において製造された重合体を、それぞれ含む医療材料を適用した段差チューブについての、抗血栓性試験直後の接合部の拡大写真である。本発明に係る共重合体を適用した段差チューブでは血栓形成が認められなかった(図3)。一方、比較例1の重合体を適用した段差チューブでは、接合部において血栓4が観察された(図4)。
表2、図3、および図4に示す通り、本発明に係る医療材料は高い抗血栓性を示している。
とりわけ、共重合体における繰り返し単位(A)が2.5モル%以上であることにより、特に高い抗血栓性が得られることが分かる。なお、実施例5については、医療材料の溶解性が高かったため、医療用具に適切にコーティングできなかった。そのため、抗血栓性を評価することができなかった。
[試験3:模擬製品形態を用いた血液循環試験]
上記実施例3で得られた重合体(3)、および比較例1で得られた比較重合体(1)をコートした基材について、下記方法に従って、抗血栓性を評価した。
(コーティング剤の調製)
重合体(3)、および比較重合体(1)をそれぞれ、0.2重量%の濃度で、水−アルコール(メタノール)混合溶液に溶解させ、コーティング剤とした。
(医療用具の作製)
上記コーティング剤を、模擬製品形態(血液循環モジュール:特開平11−114056号公報に開示された実施例1に係る血液外部灌流型中空糸膜人工肺を、特開2009−219936号公報の図4に開示された構造を有する人工肺としたもの;血液循環経路を構成する基材として、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、SUSを含む)に血液インポート側から充填し、120秒間静置した後に除去し、室温(25℃)で240分間、送風乾燥した。
(評価)
上記血液循環モジュールを接続チューブ(軟質塩化ビニル製、全長約100cm×内径8mm)を用いて貯血槽と接続することによって体外循環回路中に組み込んだ。続いて、乳酸リンゲル液200mlを上記体外循環回路に充填し、その後、ヘパリン添加ヒト新鮮血200mlを添加した。循環血液中のへパリン濃度は、0.5単位/mlとした。室温(25℃)、500ml/minで6時間循環させた。循環開始から120分後に、それぞれの血液循環回路から血液をサンプリングし、血液凝固系の活性化指標であるトロンビンアンチトロンビン複合体(TAT)の濃度を測定した。TAT濃度は、EIA法による測定キットを用いた。高いTAT濃度は、凝固活性化状態にあることを示し、血栓が生じやすいといえる。
実施例3の重合体(3)をコートした血液循環モジュールにおいては、TAT濃度が、比較例1の比較重合体(1)をコートした血液循環モジュールよりも低かった。すなわち、血液凝固系の活性化が低く優れた抗血栓性を有していることが確認できた。
さらに6時間循環後、血液の循環経路をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、血液が停滞しやすい部位を観察した。実施例3の重合体(3)をコートした血液循環モジュールにおいては、血栓付着が殆どみられなかった。一方、比較例1の比較重合体(1)をコートした血液循環モジュールにおいては、血栓(図6中、符号「4」で示されるもの)の付着が確認された。実施例3の重合体(3)は模擬製品においても優れた抗血栓性を有することが確認できた。
以上より、本発明に係る医療材料は、血栓が形成されやすい過酷な条件下において使用される場合でも、高い抗血栓性を備えていることが分かる。本発明に係る医療材料は、例えばチューブの接合部のような絞り部を備える医療用具など、血液と接触する面に段差を有するような使用条件において、特に有用である。
さらに、本出願は、2013年12月27日に出願された日本特許出願番号2013−270970号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
1 チューブ1、
2 チューブ2、
3 段差面、
4 血栓。

Claims (5)

  1. 下記式(1):
    ただし、式(1)中、R11は水素原子またはメチル基である;
    で示される繰り返し単位(A)と、
    下記式(2):
    ただし、式(2)中、R21は水素原子またはメチル基であり、R22は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R23は炭素数1〜4のアルキル基である;
    で示される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含む、医療材料。
  2. 前記共重合体の全構成単位中、前記繰り返し単位(A)が2.5〜17.0モル%である、請求項1に記載の医療材料。
  3. 前記式(1)中、R11が水素原子である、請求項1または2に記載の医療材料。
  4. 前記共重合体が、2.5〜17.0モル%の前記繰り返し単位(A)、および83.0〜97.5モル%の前記繰り返し単位(B)(前記繰り返し単位(A)、および前記繰り返し単位(B)の合計量は100モル%である)で構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療材料。
  5. 基材と、
    前記基材表面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療材料を含むコート層と、を有する医療用具。
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